平成19(ワ)3993 労働契約上の地位確認等請求事件(通称 福岡県私立大学教授懲戒解雇)

裁判年月日・裁判所
平成21年6月18日 福岡地方裁判所 その他
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判決文本文44,704 文字)

- 1 -主文 被告は,原告に対し,平成19年3月から平成21年3月まで,毎月25日限り,1か月56万1430円の割合による金員(合計1403万5750円)及びこれらに対する各支払日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成19年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,1887万8400円及びこれに対する平成21年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,81万3600円及びこれに対する平成19年8月1日から,108万4800円及びこれに対する平成20年1月1日から,81万3600円及びこれに対する同年8月1日から,108万4800円及びこれに対する平成21年1月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 ただし,被告が3000万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実 及び理由第1請求 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,平成19年3月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,1か月56万1430円の割合による金員及びこれらに対する各支払日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 被告は,原告に対し,800万円及びこれに対する平成19年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 主文第3項及び第4項と同旨第2事案の概要本件の原告は 。 - 2 - 被告は,原告に対し,800万円及びこれに対する平成19年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 主文第3項及び第4項と同旨第2事案の概要本件の原告は,被告の経営するA大学(以下「被告大学」という。)の教員であったところ,被告から懲戒解雇とされたことから,原告が,その懲戒解雇は無効であると主張して,被告における地位確認を求めるとともに,懲戒解雇後の未払給与,賞与及び退職金の支払を求め,併せて,違法な懲戒解雇による慰謝料の支払を請求する事案である。 争いのない事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実を含む。)㨯被告(平成19年4月変更前の旧名称・学校法人B学園)は,昭和31年に設立され,被告大学ほか複数の短期大学,高等学校,中学校を設置・運営する学校法人である。 被告大学は,昭和42年に設立され,環境デザイン工学科,情報学科及び医療電子工学科の3学科からなる工学部のみの単科大学である。 被告大学は,平成19年度から,新規の学生募集を停止している。 㨯原告は,昭和57年4月,被告との間で労働契約を締結し,被告大学の教職員として採用され,同月から,被告大学建設工学科建築学専攻の助教授として,昭和62年4月から,同大学同科(後の環境デザイン工学科)建築学専攻(後の建築・住環境デザインコース。以下,これらを「建築学教室」という。)の教授として勤務してきた(甲27)。 平成18年3月,被告大学の教職員が中心になって,被告大学教職員組合(以下「本件組合」という。)が組織され,原告は,後記の本件解雇当時,本件組合の委員長の地位にあった。 㨯被告は,原告に対し,平成19年2月19日,原告が被告の規則に従わず,- 3 -被告に損害を与え,かつ,被告の服務に違反したにもかかわらず,自己 本件解雇当時,本件組合の委員長の地位にあった。 㨯被告は,原告に対し,平成19年2月19日,原告が被告の規則に従わず,- 3 -被告に損害を与え,かつ,被告の服務に違反したにもかかわらず,自己の行為の正当性を主張して,反省しないとの理由により,懲戒解雇した(甲1。 以下,被告の原告に対する当該解雇の意思表示を「本件解雇」という。)。 本件解雇の内容は,同月20日,新聞報道された(甲26の1・2)。 㨯本件解雇当時の被告の就業規則(甲2)では,懲戒解雇事由として,以下の事由が規定されていた。 「(懲戒解雇)第62条次の各号の一に該当する場合は,懲戒解雇に処する。ただし,情状によっては,通常解雇又は減給若しくは出勤停止にとどめることがある。」(以下,該当条項以外の記載は省略)「5. 学園の重大な命令及び重大な規則に従わず,また服務規律,秩序違反が極めて重大なとき8. 故意又は重過失により災害又は営業上の事故を発生させ,学園に重大な損害を与えたとき10. 故意に本規則又は規程等を無視し,若しくは所属長の命令に違反して学園の秩序を乱し,学園の業務を妨害し,名誉や信用を著しく傷つけた時(パワーハラスメント及びセクシャルハラスメントのケースを含む。)。 11. 第34条から第42条までの規定に違反した場合であって,その事案が重篤なとき17. その他前各号に準ずる程度の不都合な行為を行ったとき」㨯被告が本件解雇の際に原告に交付した解雇通知書(甲1)によれば,本件解雇は,被告の就業規則の上記第62条1項5号,8号,10号,11号及び17号を適用したものであった。 㨯原告が本件解雇以前に被告から支給されていた給与額は,1か月56万1430円であり(甲25),その支払は,被告の給与規程によれば,毎月月- 4 -末締めの当月25日払いであ したものであった。 㨯原告が本件解雇以前に被告から支給されていた給与額は,1か月56万1430円であり(甲25),その支払は,被告の給与規程によれば,毎月月- 4 -末締めの当月25日払いである(甲61)。 㨯原告は,福岡地方裁判所に対し,被告を相手方として,被告における地位確認等を求める仮処分(平成19年㨯第123号地位保全及び金員仮払い仮処分申立事件)を申し立て,同裁判所は,平成19年9月18日,原告の給与相当額に当たる金員の仮払いを認める決定をした(甲53)。 㨯被告大学教員(解雇された者を含む。)と被告との間では,教員の解雇や賞与の不支給を巡って,本件以外にも,別の訴訟や仮処分が係属していた(甲30,37,54)。 争点及びこれに対する当事者の主張㨯争点①被告の原告に対する本件解雇の有効性【被告の主張】ア懲戒解雇事由について被告は,原告が,①被告大学の新規学生の募集停止決定後,被告大学における建築学関係の非常勤講師による講座開講に協力せず,むしろことごとく積極的に妨害し,その後の被告が設置した「非常勤講師の依頼過程に関する調査委員会」(以下「調査委員会」という。)の調査及び被告理事からの事情聴取においても,自己の行為の正当性を主張するのみで,無反省であったこと,②被告大学が学生募集停止を決定するまでの経過において,被告大学の学部改編計画を阻止しようとし,本来非公開である教授会の議事内容をマスコミにリークしたことを理由として,原告を懲戒解雇した。 イ原告による非常勤講師の講座開講の妨害㨯被告大学では,新規学生の募集停止を決定した後,平成18年10月に20名の教員の解雇を行い(以下,これを「教員の大量解雇」といい,当該解雇の対象となった教員を「被解雇教員」という。),被解雇教員の担当科目については,残留教 集停止を決定した後,平成18年10月に20名の教員の解雇を行い(以下,これを「教員の大量解雇」といい,当該解雇の対象となった教員を「被解雇教員」という。),被解雇教員の担当科目については,残留教員,特任教員及び非常勤講師で対応する- 5 -予定であった。 しかし,原告を含む建築学教室の教員らは,建築学関係の非常勤講師の選定に協力しないのみでなく,被告大学が選定した非常勤講師の委嘱に難色を示し,さらには積極的な妨害行為をするようになった。 すなわち,当時,被告大学の非常勤講師等として,一旦は就任の承諾をした他大学の教員から,その名前が被告大学内で周知されるや,就任を辞退されるという事態が続いた。これは,本件組合委員長である原告が,同じく組合員である被解雇教員と連携して,他大学の教員へ不当に働きかけたためと考えるのが自然である。その原告の意図は,専門的な立場から良かれと思って行うものでは到底なく,被告が行った新規学生募集停止,教員の大量解雇に対する反発や,被告理事会及び管理職に,科目が不開講になった場合の責任を追及すること,被解雇教員の復職を容易にすること等を意図した不合理なものであった。このため,被告大学では,開講直前まで,非常勤講師の担当者を秘匿せざるを得ない異常な状況になった。 㨯さらに,原告は,被告が,被告大学でかつて教授として勤務していたC氏(以下「C元教授」という。)に対し,建築材料実験の担当を委嘱したことを了解せず,積極的な妨害行為を行った。 すなわち,原告は,平成19年1月17日午後9時過ぎ,C元教授に電話し(以下,同日の電話を「本件架電」という。),C元教授に対し「建築材料実験を引き受けたのか」と問い,C元教授がこれを肯定すると,「これで退職したD先生とE先生の復職はなくなった。あなたは退職した2名の生活を脅かす 話を「本件架電」という。),C元教授に対し「建築材料実験を引き受けたのか」と問い,C元教授がこれを肯定すると,「これで退職したD先生とE先生の復職はなくなった。あなたは退職した2名の生活を脅かすつもりか」「なぜ受諾したのだ」「建築材料実験は,土木材料実験と異なり,木材なども扱うので,C元教授が担当するのはどうかと思う」などと述べた。さらに,原告は,C元教授からの質問に対し,F教授や建築学教室で非常勤講師を選定することも可能- 6 -である,4年生の卒業延期も考えられる等と述べた。 C元教授は,自らの科目担当能力に異議を述べられたことへの憤慨等もあったのか,建築材料実験の非常勤講師を辞退することとし,翌18日朝,被告大学側に対し,その旨を伝えてきた。 原告は,被告大学において,建築学教室の非常勤講師を委嘱するには,事前に建築学教室の教室会議に諮って,非常勤講師を決めるとの付帯条件があったと主張するが,そのような付帯条件が被告大学教授会で決定,決議されたとの事実はない。 さらに,被告がC元教授に委嘱するために行った手続は,被告大学の建築学教室が代替講師の選任に全く協力せず,妨害行為まで行っていた状況下では,緊急避難的に許容又は要請されるところである。 㨯その後,最終的には,被告大学側がC元教授に謝罪し,C元教授もこれを受け入れて,建築材料実験が開講されることになった。 しかしながら,原告は,C元教授に対して謝罪することはなく,被告大学に設置された調査委員会からの事情聴取でも,C元教授に対する自らの発言内容について,C元教授の科目担当能力を否定したことはない等と述べ,無反省な態度に終始した。さらに,被告のG理事(以下「G理事」という。)が,原告から直接事情を聞いたが,原告は,開講妨害について自らの非を認めなかった。 ウ原告による教授会 たことはない等と述べ,無反省な態度に終始した。さらに,被告のG理事(以下「G理事」という。)が,原告から直接事情を聞いたが,原告は,開講妨害について自らの非を認めなかった。 ウ原告による教授会議事内容のリーク㨯被告大学では,文系学部の新設等による学部改組が検討され,被告理事会は,平成18年5月,被告大学教授会にその計画を示したが,教授会は改組計画に反対して,工学部の存置に固執し,同年6月以降は,教授会が正式に開催できないほどの混乱状態となった。 そして,平成18年6月26日から同月28日にかけて,原告のリークにより,被告大学の学部改組に関する記事が新聞紙上で報道された。 - 7 -その新聞報道の内容からして,被告大学教授会の構成員からのリークであることは明らかであり,原告以外にこのようなリークをする人物は想定できない。また,原告は,本件組合委員長として,マスコミとの窓口になっていたから,原告がこのマスコミへのリークに関与していたことは明白である。 㨯これは,本来非公開であるはずの教授会の議事内容が,被告大学にとって何ら利益にならない形で外部に公開されたものであり,被告大学学長が,この点を問題にしたが,教授会は全く聞き入れなかった。 原告は,このマスコミへのリークによって被告大学が被るマイナスイメージについて顧慮することなく,教授会の議事内容をリークし,その結果,被告大学の改組計画は頓挫を余儀なくされることが決定的となり,被告大学は学生募集停止と廃学に至らざるを得なくなったのであり,被告は甚大な損害を被った。 エ本件解雇の合理性上記イ及びウのような原告による非協力行為や妨害行為は,学生の開講に対する期待を裏切るもので,教員として許されない非違行為であり,被告に対しても著しい損害を与えるものである。 また,原告は,調査委員会の イ及びウのような原告による非協力行為や妨害行為は,学生の開講に対する期待を裏切るもので,教員として許されない非違行為であり,被告に対しても著しい損害を与えるものである。 また,原告は,調査委員会の調査の過程でも,全く反省を見せず,今後とも受講妨害が繰り返されるおそれが高かった。 したがって,被告として,本件解雇をやむを得ないと判断したのは,相当である。 オ本件解雇の解雇手続について被告は,本件解雇に先立ち,7名の教員からなる調査委員会を設け,同委員会において,原告から事情を聞く機会を設け,その後には,G理事が,原告から,長時間にわたり事情を聞いた上で,原告の態度を踏まえ,やむなく懲戒解雇に至ったものであり,本件解雇における適正手続は十分に尽- 8 -くされている。 カ本件解雇の不当労働行為性本件解雇は,原告の非違行為を理由にするもので,不当労働行為ではない。 被告が,本件解雇以前に,被告大学又は被告が経営する他の学校において行った解雇その他の処分には,合理的理由がある。 本件解雇前の団体交渉の場におけるG理事の発言は,組合員をねらい撃ちした解雇でないことを比喩的に表現したものにすぎず,不当労働行為意思を推認させるものでは到底ない。 また,本件解雇時点では,原告が指摘する本件組合による街頭署名・ビラ配布活動について,被告は把握しておらず,仮に,把握していたとしても,それを受けて翌日に解雇することなど不可能である。 【原告の主張】ア懲戒解雇事由は存在しないこと本件解雇は,何ら根拠なく行われたもので,原告に懲戒解雇事由は存在せず,本件解雇は,被告の解雇権の濫用であり,不当労働行為である。 イ原告による非常勤講師の講座開講の妨害について㨯原告は,被告が平成18年10月に教員の大量解雇をした後,学生のためを考え,被解雇教員が担当す は,被告の解雇権の濫用であり,不当労働行為である。 イ原告による非常勤講師の講座開講の妨害について㨯原告は,被告が平成18年10月に教員の大量解雇をした後,学生のためを考え,被解雇教員が担当する予定であった講義や卒業研究指導の担当を多数引き受けた。また,非常勤講師の委嘱についても,原告は,被解雇教員に対し,これを担当するよう働きかけるなどして協力してきた。原告が,建築材料実験以外の科目について,被告による非常勤講師の委嘱を妨害したという事実は,全くない。 そもそも,被告は,本件解雇の理由として,本件解雇後当初の説明では,本件架電の件以外の事実は主張していなかったのであり,被告が主張するような原告の妨害行為は一切ない。 - 9 -㨯平成18年10月26日の被告大学教授会において,今後は,建築学関係の講義を非常勤講師に委嘱するに当たっては,事前に建築学教室の教室会議に諮る旨の付帯条件が決議されており,原告がC元教授に電話をかけた(本件架電)のは,建築材料実験の集中講義に関して,その付帯条件が守られていたかを確認するためであった。C元教授への建築材料実験の委嘱について,原告は事前に知らされていなかったが,そもそも,被告大学の規程によれば,非常勤講師の採用に当たっては,学科で選考し,教授会の事前承認を得るという手続が求められている。 それにもかかわらず,上記付帯条件や規程が遵守されなかったことから,原告は,その確認のためC元教授に電話をかけたのであり,教員としての正当な業務遂行であって,その後,建築学教室の教室会議において,C元教授への非常勤講師の委嘱を了承して,C元教授に正式に依頼したのであるから,原告が被告大学の業務を妨害したことはない。 㨯本件架電の内容としては,原告が,C元教授に対し,平成19年1月17日午後8時ころ,電話を 講師の委嘱を了承して,C元教授に正式に依頼したのであるから,原告が被告大学の業務を妨害したことはない。 㨯本件架電の内容としては,原告が,C元教授に対し,平成19年1月17日午後8時ころ,電話をして「なぜ,10月の教授会決議があるのに,建築に相談しないで非常勤講師を引き受けられたのか。コンクリートは是非,やっていただきたい」と質問した。これに対し,C元教授は「学長と教務部長と建築の主任のF先生が頼みに来たので引き受けた。 建築学教室の決定と思っていた。教室会議の決定でなければ引き受けなかった」「10月の教授会の決議は全く知らされていない」等と返答しただけである。原告がC元教授に電話したのは,上記教授会の付帯条件の点を確認する目的であり,何ら非難に値するものではない。そして,その電話の結果,上記教授会の付帯条件は守られておらず,C元教授は,建築学教室の総意に基づいて委嘱されたと誤解していることが判明した。 本件架電の際に,原告が,C元教授に対し,C元教授の科目担当能力に異議を述べたり,「退職した2名の先生の生活を脅かすつもりか」- 10 -「4年生の卒業延期も考えられる」等と発言したことはなく,これらは,C元教授の誤解である。原告は,C元教授が非常勤講師に就任することを前提として,C元教授と話していた。 㨯その後,C元教授が非常勤講師の委嘱を断ったことが判明したことから,原告は呼びかけて,建築学教室の教室会議を開き,教授会の付帯条件に沿う形で正式な非常勤講師の依頼と準備を行った上,C元教授に再度依頼して了解を得て,最終的に,平成19年1月25日の教授会でC元教授の科目担当が正式に承認されている。 㨯このように原告が被告大学の業務を妨害したことはなく,結果的にC元教授は非常勤講師として建築材料実験を担当し,当初の日程どおり,建築材 5日の教授会でC元教授の科目担当が正式に承認されている。 㨯このように原告が被告大学の業務を妨害したことはなく,結果的にC元教授は非常勤講師として建築材料実験を担当し,当初の日程どおり,建築材料実験も実施されたのであり,原告は,被告に対し,何らの損害も与えていないし,これにより被告大学の秩序を乱したこともない。 ウ原告による教授会議事内容のリークについて原告が,被告大学教授会の議事内容について,マスコミにリークしたことはない。被告が問題にする新聞報道は,被告大学の存続という原告の希望に真っ向から反する内容であり,原告がそのような情報をリークする動機は全くない。当該新聞報道の内容からすれば,被告理事会側の人物によるリークであることがうかがわれる。仮に,被告において,原告がマスコミへリークしたと判断したのであれば,その後直ちに懲戒手続が採られるはずであるが,被告は,被告大学廃学の方針を示してから半年以上が経過した平成19年5月30日になって初めて,マスコミへのリークの問題を原告の懲戒解雇事由として主張し始めており,それ自体,この問題が事実無根であることを示している。 また,被告が主張するマスコミへのリークと被告大学の改組計画の頓挫は,因果関係がなく,改組計画の頓挫と被告大学の廃学との因果関係も全く不明である。 - 11 -そもそも,マスコミへのリークの問題は,被告が,本件解雇時点では懲戒解雇事由ではないとしていた事実を,事後的に懲戒解雇事由として追加するものであり,許されない。すなわち,マスコミへのリークの問題は,被告の解雇通知書に全く触れられておらず,本件解雇から1か月後の団体交渉の際にも,G理事は,マスコミへのリークの問題が懲戒解雇事由でないと明言していた。 エ本件解雇の不合理性について万が一,被告が解雇事由として主張する れられておらず,本件解雇から1か月後の団体交渉の際にも,G理事は,マスコミへのリークの問題が懲戒解雇事由でないと明言していた。 エ本件解雇の不合理性について万が一,被告が解雇事由として主張する事実が全面的に認められたとしても,これらの事実のみでは,およそ懲戒解雇の事由たり得ない。 しかも,被告は,本件解雇をしておきながら,3か月以上も懲戒解雇事由を明らかにせず,その主張する事由も軽微なものであり,本件解雇後,被告が解雇事由を具体的に主張し始めるのに時間を要したことからも,本件解雇の違法無効を推認させる。 そして,原告はこれまで長期間にわたり,被告大学での講義や学生に対する指導等を通じて,被告に多大な貢献をし,本件解雇以前に,被告から懲戒処分を受けたこともないのであり,本件架電のみを理由に本件解雇をいう被告の主張は,権利の濫用である。現に,被告が主張する本件架電や原告の開講妨害等により,被告大学には何ら実害は生じておらず,被告大学の卒業予定者にも留年者は出ていないのであり,懲戒解雇である本件解雇を正当化できる理由は何らない。 オ本件解雇の手続の違法本件解雇に先立ち,被告では,調査委員会を設置し,原告について調査を行ったというが,実際には,調査委員会は,原告からC元教授への電話の有無などを形式的に確認するだけで,解雇事由の調査等といえるものではなく,原告には弁明の機会が与えられなかった。また,その後のG理事との面談は,G理事が一方的に組合活動に支配干渉を及ぼそうとしたもの- 12 -でしかなかった。 さらに,被告が主張するその他の解雇事由については,原告に弁明の機会が全く与えられていない。 したがって,本件解雇は,適正手続も経ていない。 カ本件解雇は不当労働行為であること本件解雇に至るまでの本件組合と被告との労使対立の状況,原告 については,原告に弁明の機会が全く与えられていない。 したがって,本件解雇は,適正手続も経ていない。 カ本件解雇は不当労働行為であること本件解雇に至るまでの本件組合と被告との労使対立の状況,原告が本件組合委員長であり,上記労使対立の最前線に立っていたこと,団体交渉等における被告側の組合敵視の言動,本件解雇が本件組合による街頭署名・ビラ配布活動の直後にされたこと等の事実経過に照らせば,本件解雇の理由が,原告による非常勤講師の講義開講の妨害というのは虚言であり,本件解雇は,本件組合委員長である原告をねらい撃ちにした解雇である。したがって,労働組合法7条1号の「労働者が労働組合の組合員であること」及び「労働組合の正当な行為をしたこと」を理由として,「その労働者を解雇」した不当労働行為であることは明らかであるから,本件解雇は,同号に違反し,無効である。 すなわち,被告大学では,平成18年7月以降,教員に対する夏期賞与の支給保留,平成19年度からの学生募集停止,教員の大量解雇が行われ,本件組合では,被告の異常な学園経営や本件組合への弾圧に対抗するため,団体交渉や署名・街頭ビラ配布活動等を行っていたが,被告は,本件組合との団体交渉を当初は拒否し,これに応じた後も組合敵視・組合排除の言動を繰り返すなど,不当労働行為意思を露骨に表した。そして,平成18年9月以降の本件組合との団体交渉の席上で,被告のG理事は,本件組合委員長である原告に対する露骨な嫌悪感を示したり,解雇を意識した発言を行った。 また,G理事は,平成19年2月15日,原告と面談した際,組合活動をしても良い結果にはならない等と発言した。 - 13 -さらに,本件組合は,同月18日,「被告大学教員大量不当被解雇者の地位保全の決定の要望署名」の街頭署名・ビラ配布活動を行い,翌日には,こ 動をしても良い結果にはならない等と発言した。 - 13 -さらに,本件組合は,同月18日,「被告大学教員大量不当被解雇者の地位保全の決定の要望署名」の街頭署名・ビラ配布活動を行い,翌日には,これがマスコミで大きく報じられたが,本件解雇は,上記街頭署名・ビラ配布活動が報道された翌19日午後2時ころに行われたもので,上記本件組合の活動に激昂した被告が,不当労働行為意思に基づき行ったものであることは明らかである。 そのことは,本件解雇の理由や経過に関するG理事の説明がつじつまが合わず,本件解雇後には,被告が,原告に対し,原告の研究室への立入りを禁止するなど異常な対応に出ていること,被告では他の学校でも同時期に,不当労働行為に当たる解雇を続けて行っていたこと,被告は,別件裁判で,明らかにねつ造した被告理事会の議事録を証拠として提出するなど,本件組合潰しのためになりふり構わぬ行動に出ていることからも,裏付けられる。 㨯争点②(本件解雇が無効である場合の)原告の賞与請求権の有無【原告の主張】ア本件解雇は無効であり,原告は,引き続き,被告の教員としての地位にある。したがって,原告が被告を定年退職する時期(平成21年3月31日)までの賞与(平成19年4月以降の呼称は勤勉手当)請求権のうち,別件訴訟で争われているものを除き,以下の平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各賞与請求権を有する。 㨯平成19年及び平成20年7月支給分各81万3600円㨯平成19年及び平成20年12月支給分各108万4800円イ被告では,被告大学教員に対し,平成19年及び平成20年,一律の支給率による賞与が支払われており,原告も同様の計算により算出される賞与の具体的請求権を有する。 ウ被告では,賞与の支給に関し,従前から,教職員別に査定して,支給率 平成19年及び平成20年,一律の支給率による賞与が支払われており,原告も同様の計算により算出される賞与の具体的請求権を有する。 ウ被告では,賞与の支給に関し,従前から,教職員別に査定して,支給率- 14 -等に差異を設ける運用は行っておらず,給与規程においても,個別の査定による教職員ごとの裁量的支給を予定した定めは置かれていないから,被告理事会が賞与支給率を定めることによって,原告を含む被告大学の教職員は,一律の基準による具体的賞与請求権を取得することになる。 【被告の主張】ア原告は,本件解雇により懲戒解雇されており,解雇後の賞与請求権が発生することはない。 イ仮に,本件解雇が無効であるとしても,本件解雇後の期間について,原告に賞与請求権が発生するとは考え難い。 本件解雇後に,被告理事会が,被告大学の教職員に対する賞与支給率を決定したことがあったとしても,その決定に含まれる意思解釈として,原告に対する支給の意思が含まれていたとは考えられない。 㨯争点③(本件解雇が無効である場合の)原告の退職金請求権の有無【原告の主張】ア原告は,本件訴訟係属中の平成21年3月31日をもって,定年退職(63歳)となり,被告の退職金規程(甲60)により,被告に対する退職金請求権を取得した。 そして,被告の退職金規程により計算すれば,原告の退職金額は1887万8400円であり,その支払時期は平成21年4月30日である。 イ被告が主張する定年年齢の引下げについては,労働条件の不利益変更に当たるところ,原告はその引下げに同意したことはなく,告知すらされていない。また,被告は,教職員に対する周知義務を尽くしておらず,被告が主張する定年年齢引下げの効力は生じていない。 【被告の主張】ア原告は,本件解雇により懲戒解雇されており,被告の退職金規程(甲6 ない。また,被告は,教職員に対する周知義務を尽くしておらず,被告が主張する定年年齢引下げの効力は生じていない。 【被告の主張】ア原告は,本件解雇により懲戒解雇されており,被告の退職金規程(甲60)に基づく退職金請求権は発生しない。 - 15 -イ仮に,本件解雇が無効であるとしても,被告は,平成19年4月1日に定年規則を改正し(乙22),定年年齢は満60歳に変更され,平成19年4月1日時点で既に定年に達している職員の定年退職日は,平成20年3月31日となった。そこで,原告についても,平成20年3月31日で定年退職となっているから,原告の主張はその前提において間違っている。 ウ上記定年年齢の引下げに関し,被告は,平成19年4月上旬,全教職員に対する説明をした後,コピーを配布している。 そして,被告の経営収支の悪化にかんがみれば,定年年齢引下げには,人件費削減のための高度の必要性があったのであり,被告が導入した60歳定年制は,他の多くの企業における取扱いに照らしても,十分に相当性を有するものである。 また,被告では,定年年齢引下げの規則変更をするに当たり,従業員代表の意見聴取をしているが,定年年齢引下げについて特段問題とされることはなかった。 㨯争点④本件解雇についての不法行為の成否及びその損害額【原告の主張】ア被告は,原告に何らの懲戒解雇事由がないにもかかわらず,不当労働行為意思に基づいて本件解雇に及んでおり,本件解雇は不法行為(民法709条)を構成する。 本件解雇は,原告が本件組合委員長であること及びその組合活動を理由にされたものであり,目的の不当性は明らかであり,また,被告は,本件解雇に際し,原告に十分な弁解の機会を与えず,教員としての引継ぎや荷物をまとめる時間すら与えずに被告大学を退去させるなど,不当な手段を用いている あり,目的の不当性は明らかであり,また,被告は,本件解雇に際し,原告に十分な弁解の機会を与えず,教員としての引継ぎや荷物をまとめる時間すら与えずに被告大学を退去させるなど,不当な手段を用いている。さらに,被告は,本件解雇の解雇事由として,推測にすぎない事由や後付けの解雇事由を主張し続けるなど悪質である。 イ原告及びその家族は,被告から支払われる賃金を唯一の収入として生活- 16 -しており,その不払いが原告及びその家族の生活に与える影響及び精神的苦痛は極めて深刻である。 また,原告は違法な本件解雇により,就労の機会を奪われたのみならず,教育研究の機会及びその蓄積の機会を奪われており,それにより多大な精神的苦痛を被り続けている。 さらに,本件解雇は懲戒解雇であり,原告は,大学教員としての名誉及び社会的信用を著しく毀損された。 原告は,本件解雇による精神的ストレスから,平成19年8月には脳梗塞を発症し,後遺症が残り,研究者生命を絶たれる事態となっている。 ウこれら原告が被った精神的苦痛を慰謝するために必要な金額は,800万円を下らない。 【被告の主張】本件解雇に合理的理由があること,不当労働行為には当たらないことは,上記㨯【被告の主張】記載のとおりであり,不法行為は成立しない。 第2当裁判所の判断 本件解雇の解雇理由について本件解雇の有効性を判断する前提として,懲戒解雇である本件解雇の解雇理由の内容が問題になるところ,被告は,本件解雇の理由として,原告が①被告大学における非常勤講師の講座開講に協力せず,積極的妨害を行ったこと,②被告大学教授会の議事内容をマスコミにリークしたことを主張する。 このうち,①の本件架電の件については,被告が本件解雇の直接の理由としていたことは明らかである(甲38)が,本件架電の件以外の積極的妨害行為と 教授会の議事内容をマスコミにリークしたことを主張する。 このうち,①の本件架電の件については,被告が本件解雇の直接の理由としていたことは明らかである(甲38)が,本件架電の件以外の積極的妨害行為と,マスコミへのリークの問題については,被告が本件解雇当時,懲戒解雇の理由としていたか否かは,必ずしも明らかでない。 この点,使用者が労働者を懲戒解雇した場合に,懲戒解雇当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該解雇の理由とされ- 17 -たものではないことが明らかであるから,その存在をもって当該解雇の有効性を基礎付けることはできないと解される。 本件においては,本件解雇の際に原告に交付された解雇通知書(甲1)では,本件解雇の理由として,原告が被告の規則に従わず,被告に損害を与え,かつ,被告の服務に違反したにもかかわらず,自己の行為の正当性を主張して,反省しないと記載されているが,その判断の前提となった原告の具体的言動,違反行為等は特定されておらず,本件解雇後の平成19年3月14日に行われた本件組合と被告との団体交渉でのやりとり(甲38)によれば,被告のG理事が,本件解雇の理由に関し,マスコミへのリークの問題が理由か否かを問われたのに対し,「それではないです。今は,ないです。」「例えば新聞社にリークする話とか,ろうかの話とかは入っていません」と答えている部分があり,G理事が「懲戒の一番の理由は」として,本件架電の件に言及しており,G理事は,本件解雇の理由として,本件架電の件を主に念頭に置いていたと考えられる。 その一方で,G理事は,本件解雇の理由に関する別の質問に対しては,「今回も一連のことであるということじゃないですか」「今回のことだけでなくて,今までも度々やっているという部分が出てきた」「過去にそういう風な邪魔を 事は,本件解雇の理由に関する別の質問に対しては,「今回も一連のことであるということじゃないですか」「今回のことだけでなくて,今までも度々やっているという部分が出てきた」「過去にそういう風な邪魔をされたというのね,妨害をされたということがあるし」と回答しており,他にも「我々で,一番大きなものは,教授会の中身がリークされたんだとか,という話もあったじゃないですか」「新聞社にわざわざ話したり,出したりすることもないだろうし」と発言している部分も認められる。 そして,上記団体交渉でのやりとり(甲38)を全体としてみれば,原告側が,本件解雇の具体的理由の開示を求めたのに対し,G理事の対応は曖昧で,一貫しているともいい難い面があり,解雇理由の明示が求められる法の趣旨からすれば,必要十分な説明が尽くされたとは評価し難いものである。 しかしながら,本件解雇の解雇通知書(甲1)の記載内容や,上記団体交渉でのやりとり(甲38)からすれば,被告は,本件解雇当時に,被告が本件訴- 18 -訟において解雇事由として主張する各事実(上記①②)をいずれも認識していたことは明らかであり,解雇事由として除外することが明示的に表明されていたとまではいえない。 確かに,証拠(証人H,同I)によれば,本件解雇前の被告による調査や原告からの事情聴取は,もっぱら本件架電の件を中心に行っていたことがうかがわれ,被告としても,本件解雇の理由として,本件架電の件を念頭に置いて,懲戒解雇手続を進めていたと考えられるが,これらは,本件解雇における適正手続の問題として別途,検討するのが相当と解される。 そこで,以下,被告が本件解雇の理由として主張する各事由の存否及びその評価について,検討する。 本件架電以外の積極的妨害行為について㨯被告は,原告を含む建築学教室の教員が,被告大学の選定 る。 そこで,以下,被告が本件解雇の理由として主張する各事由の存否及びその評価について,検討する。 本件架電以外の積極的妨害行為について㨯被告は,原告を含む建築学教室の教員が,被告大学の選定した非常勤講師の委嘱に難色を示し,さらには積極的な妨害行為をしたと主張する。 㨯この点,争いのない事実及び証拠(乙12ないし15,証人H,同I)によれば,被告大学では,平成18年9月までに,平成19年度の新規学生募集の停止を決定するとともに,20名の教員に対する解雇予告通知が行われていたことから,平成18年度後期以降の授業を開講するために,複数の非常勤講師を確保する必要があったと認められる。 そして,証拠(甲20,21の1ないし3,56,乙12,14,15,証人H,同I)によれば,被告大学の環境デザイン工学科では,必修科目であるなどの理由で平成18年度中の開講が不可欠な科目を含め,複数の科目について,担当する非常勤講師が直前まで決まらず,場合によっては,開講時期を変更せざるを得ない状況にあったことが認められる。 㨯しかしながら,被告大学がそのような非常勤講師の選任に困難を来す状態であったのが,原告の妨害行為によるものであったとの被告の主張は,これを認めるに足りる証拠がないものといわなければならない。 - 19 -すなわち,被告は,J大学のK氏(以下「K氏」という。)への委嘱及びその辞退に関する経緯を指摘して,原告の妨害行為があったと主張するが,証拠(乙10,12,14,証人I)に照らしても,K氏が,平成19年1月に一旦は被告大学の非常勤講師就任を承諾したものの,その後の同年2月2日に,電話で「自分の不徳の致すところ,事情はお察しの通りです」との連絡があり,就任を辞退したという事実が認められるにすぎず,その辞退に至る過程において,原告又は原 諾したものの,その後の同年2月2日に,電話で「自分の不徳の致すところ,事情はお察しの通りです」との連絡があり,就任を辞退したという事実が認められるにすぎず,その辞退に至る過程において,原告又は原告の意向を受けた者がK氏に対して辞退に向けた働きかけをしたと認めるべき証拠はない。 被告は,原告らが働きかけたとみるのが自然であると主張するが,平成19年2月ころは,被告理事会と本件組合が,教員の大量解雇問題等を巡って対立状況にあり,被告大学においても,講義を担当する非常勤講師の確保すらままならない状態が続いていた(甲56,乙10,12,14)のであり,K氏としては,自らが被告大学の非常勤講師に就任することで,そのような対立状態に巻き込まれることを懸念し,これを回避するために非常勤講師を辞退した可能性も十分に考えられるのであり,原告らからの直接の妨害行為がなければ,K氏が辞退することはなかったと当然に認められるものではない。 また,被告が主張するように,原告が,被告理事会に反発し,理事会に対して責任追及する意向を持っていたことや,被解雇教員の復職を目指していたことがあったとしても,それのみにより,原告による積極的妨害行為が推認されるものとも解されない。 㨯その他,被告は,被告大学において,非常勤講師の就任辞退が相次いだとして,原告からの働きかけがあったと主張するが,K氏以外については,その具体的事例や内容は十分に明らかになっておらず(証拠〔乙12〕でうかがわれるL氏に関する具体的経緯等も,明らかとはいえない。),原告による積極的妨害行為があったと認めるに足りる証拠はない。 - 20 -証拠(乙11,12,14,15,証人H)によれば,被告大学では,平成18年度後期の科目については,開講直前まで,非常勤講師の担当者を明らかにしない取扱いが採 めるに足りる証拠はない。 - 20 -証拠(乙11,12,14,15,証人H)によれば,被告大学では,平成18年度後期の科目については,開講直前まで,非常勤講師の担当者を明らかにしない取扱いが採られていたこと,一旦は非常勤講師への就任を承諾した者から辞退の申出があったことは認められるが,これら非常勤講師の辞退について,原告の積極的妨害行為によるものとの被告側の供述等(乙10,12,14,証人H,同I)は,いずれも推測の域を超えるものではなく,非常勤講師の担当者を明らかにしないとの被告大学の取扱いは,被告側の判断として行われたものにすぎない。 その他,証拠(甲51,乙12,14,15,証人H,同I,原告本人)によれば,原告を含む建築学教室の教員は,被告が進めていた非常勤講師の委嘱に必ずしも全面的に協力したわけではなかったことがうかがわれるが,非常勤講師の選定自体,最終的には被告側の責任で行われるべきものであり,被告が,原告に対し,非常勤講師の候補者を選定するよう業務命令を出したようなこともないこと(証人H,同I),原告は,本件組合委員長として,被告が行った教員の大量解雇を争い,被解雇教員の復職を求める立場にあったこと,被告大学において新たな非常勤講師を確保する必要が生じたのは,被告が,本件組合の了解を得ることなく,一方的に教員の大量解雇を行った結果であり,そもそも被告の責任において対応すべきことが予定されていたといえること,原告においても,教員の大量解雇後,被解雇教員が担当する予定であった複数の科目を担当するなど,建築学教室の講義実施のために相応の協力をしていたことからすれば,非常勤講師の選任等に関する原告の対応に,非違行為又は懲戒の対象と認めるべき行動は認められない。 㨯以上によれば,本件架電以外の積極的妨害行為として被告が主張す 相応の協力をしていたことからすれば,非常勤講師の選任等に関する原告の対応に,非違行為又は懲戒の対象と認めるべき行動は認められない。 㨯以上によれば,本件架電以外の積極的妨害行為として被告が主張するところは,その主張の前提となる妨害行為自体が認められず,本件解雇の理由となり得ないものである。 本件架電について- 21 -㨯争いのない事実及び証拠(甲11,20,21の1ないし3,22,23及び24の各1・2,27,36,38,50,乙8ないし16,18,証人H,同I,原告本人)によれば,本件架電について,以下の事実が認められる。 ア被告は,平成18年8月,被告大学について,平成19年度の学生募集停止を決定し,その上で,同年10月,被告大学における20名の専任教員を解雇した。これにより,原告が所属していた建築学教室でも多数の教員が解雇され,教員は従前の半数の5名となった。 被告では,教員の大量解雇以前には,解雇後の教員の欠員の手当について具体的に検討しておらず,大量解雇後,被解雇教員に対し,非常勤講師として勤務する意思はないか打診したが,建築学教室ではこれに応じる被解雇教員はいなかった。 そのため,被告大学では,新たな非常勤講師に委嘱して講義を実施することが必要となり,建築学教室の担当科目である建築材料学については,被告大学の建設工学科土木工学専攻にかつて所属し,被告大学学長を務めたこともあったC元教授に,非常勤講師を委嘱することになった。C元教授による建築材料学の講義は,教授会の事前承認を得ないまま,平成18年9月下旬から開始された。 イその後,同年10月26日の教授会において,事後的に,建築材料学の非常勤講師をC元教授が担当することにつき承認が求められた。これにつき同教授会で議論されたところ,原告は,建築未開講科目の教授 。 イその後,同年10月26日の教授会において,事後的に,建築材料学の非常勤講師をC元教授が担当することにつき承認が求められた。これにつき同教授会で議論されたところ,原告は,建築未開講科目の教授を学科で見つけることは困難であるとして,教員の大量解雇につき学長等の責任を追及する姿勢を示すなどし,また,原告から,今後は,建築学教室の教室会議に諮って非常勤講師を決めるべきであるという意見が出された。議論の結果,結局,C元教授が建築材料学の非常勤講師を担当することは,教授会で承認された。 - 22 -(なお,この点につき,原告は,上記教授会において,今後は,建築学教室の開講科目の非常勤講師を決めるに当たって,事前に建築学教室の教室会議に諮る旨の付帯条件が決議されたと主張する。 しかしながら,上記教授会の議事録(乙9)には,そのような条件が決議された旨の記載はなく,非常勤講師の委嘱について,「別紙「平成18年度非常勤講師委嘱者(案)」に基づき,非常勤講師委嘱者について承認を求め,承認された。」旨の記載があるにすぎず,その他,「報告・連絡事項」として「後期授業の未開講科目については該当学科の協力を得て,学生の不利益にならないように手当てを行う。」と記載されているのみで,原告の主張する付帯条件に関する具体的記載は一切ない。また,上記教授会の議事を録音したもの(甲22)によっても,原告の主張する点は,明確な合意又は条件として決定されたとはいえず,原告が指摘する,当時のM学長(以下「M元学長」という。)による「今後はそういうことで,やっていきたいと思います」「今後はその点については十分に配慮していくということで,お願いしたいと思う」旨の発言は,学長の立場から,以後の非常勤講師の委嘱に当たって,専門性を十分考慮した選任を行うよう努めること,その ます」「今後はその点については十分に配慮していくということで,お願いしたいと思う」旨の発言は,学長の立場から,以後の非常勤講師の委嘱に当たって,専門性を十分考慮した選任を行うよう努めること,そのためには,学科の意見にも配慮することを確認する趣旨と理解するのが自然であり,それ以上に委嘱への条件や手続を厳密に定めたものとまでは評価できず,証拠(乙19,20)に照らしても,原告の主張は採用できない。 この点,原告は,C元教授の陳述内容(乙16)を指摘して,C元教授は,非常勤講師の委嘱に当たっての付帯条件を認識していたと主張するが,上記陳述書(乙16)の内容は,建築材料学の非常勤講師委嘱に関する件で,教授会で異論が出されたことを述べるにすぎず,それ以上の委嘱の条件にまで言及するものではなく,原告の主張が裏付けられるものとはいえない。)- 23 -ウ被告大学における教員の大量解雇以降,被告大学では,代替の非常勤講師を確保するため,被告大学のH教務部長(以下「H教務部長」という。)等が中心になって,新たな非常勤講師の委嘱作業を進めていた。 これに対し,被告大学の原告を含む建築学教室の教員は,理事会がした教員の大量解雇を不当と考え,解雇の撤回,被解雇者の復職を目指す活動をしていたため,新たな非常勤講師の選定に必要な候補者をリストアップするなどの積極的協力をすることはなかった。 また,被告大学では,他大学の教員等に対しても,非常勤講師への就任を打診したが,一旦承諾した教員もその後辞退するなど,なかなか成果は得られなかった。H教務部長等は,非常勤講師の就任につき原告ら本件組合側が妨害していると考え,開講直前まで,非常勤講師の担当者を秘匿するようになった。 エ被告大学の建築学教室では,在学中の4年生が卒業するために平成18年度中に開講しなければ 任につき原告ら本件組合側が妨害していると考え,開講直前まで,非常勤講師の担当者を秘匿するようになった。 エ被告大学の建築学教室では,在学中の4年生が卒業するために平成18年度中に開講しなければならない必修科目に「建築材料実験」があったが,平成19年1月上旬まで,担当する教員又は非常勤講師が決まっていない状態が続いていた。 そこで,I学長(平成18年7月から被告大学学生部長,同年12月から被告大学学長。以下「I学長」という。)及びH教務部長は,平成19年1月12日,F建築学教室主任教授(以下「F教授」という。)に対し,C元教授へ建築材料実験の非常勤講師を依頼する旨の提案をした。 F教授は,この案に賛同したものの,これを事前に建築学教室に諮ると,原告らから反対意見が出ることが予想されたことから,事前にこれを諮ることをしなかった。そして,F教授は,I学長やH教務部長に対しても,個人としての立場で,C元教授に依頼することはできるが,建築学教室主任教授としての立場では依頼できない旨を説明し,了解を得ていた。 オI学長,H教務部長及びF教授は,平成19年1月12日午後,C元教- 24 -授を訪れ,既に担当が決まっていた土木材料実験とともに,4年生を対象とした建築材料実験を,非常勤講師として担当してくれるよう依頼した。 その際,I学長らは,C元教授に対し,C元教授に依頼することについて建築学教室の事前了解は得られていない旨を説明することはなかった。 また,C元教授は,自らが建築材料実験を担当することについて,建築学教室の事前了解が得られているか否かを,I学長らに直接確認することはなかったが,建築学教室主任のF教授が同行していたことから,当然,建築学教室の了解が得られた上での依頼であると考えていた。 C元教授は,同日の依頼に対して,当初は拒否し,そ 学長らに直接確認することはなかったが,建築学教室主任のF教授が同行していたことから,当然,建築学教室の了解が得られた上での依頼であると考えていた。 C元教授は,同日の依頼に対して,当初は拒否し,その後のI学長らの説得に対しても,その場では即答しなかったが,翌13日,H教務部長に電話して,建築材料実験の非常勤講師を受諾する旨連絡した。 その後,C元教授は,H教務部長と打ち合わせるなどして,建築材料実験を同月29日から開講するよう,日程の掲示等の必要な準備を進めていた。 カF教授は,同月17日,建築学教室の教室会議において,建築材料実験の非常勤講師がC元教授に決定されたことを報告した。 しかしながら,同教室会議では,原告らが,非常勤講師の委嘱については教室会議に諮るとの付帯条件が教授会で決議されていたものと理解していたことから,同決議があるにもかかわらず,これが履行されず,建築学教室に相談がなく非常勤講師が選任されたことにつき,不満が出された。 これに対し,F教授は,何ら説明することはなかった。 原告は,このようなF教授の対応に不満を持ち,建築材料実験の担当を引き受けたC元教授の対応に疑問を持った。しかしながら,同日の教室会議において,原告が,C元教授に直接連絡することについて,教室会議の了解を求めたり,教室会議がそのようなことを原告に依頼,承認することはなかった。 - 25 -なお,原告は,本件架電以前,C元教授の自宅に電話連絡をしたことはなかった。 キ原告は,同月17日午後9時ころ,C元教授の自宅に電話をかけ(本件架電),教授会で付帯条件が決議されていたのに,なぜ事前の相談なく建築材料実験の非常勤講師を引き受けたのか問いただしたところ,C元教授は,F教授らが頼みに来たから引き受けたものであり,そのような決議は知らされていない旨回答 決議されていたのに,なぜ事前の相談なく建築材料実験の非常勤講師を引き受けたのか問いただしたところ,C元教授は,F教授らが頼みに来たから引き受けたものであり,そのような決議は知らされていない旨回答した。 その際,原告が,建築学と土木工学との専門性の違いを述べたり,F教授や他の非常勤講師でも,建築材料実験の担当が可能である等の発言したため,C元教授は,自らの科目担当能力に疑問を持たれていると感じた。 さらに,原告が,C元教授に対し,被告大学の被解雇教員に関する意見を求める発言をしたため,C元教授は,自らが非常勤講師を引き受けることが,被解雇教員の復職を阻害する結果となり,建築学教室に歓迎されず,反感を持たれるものと感じた。 本件架電の内容は,全体として,原告が,C元教授に対して,単に事実関係を確認するに止まらず,原告がある程度強い口調で,非常勤講師の委嘱に関する従前からの経緯や,他の被解雇教員に関する事情等に言及するものであり,一旦は非常勤講師を担当することを決めていたC元教授に,不快感,不信感を抱かせるものであった。 本件架電における原告の発言を受けて,C元教授は,一旦は引き受けた建築材料実験の担当を撤回することを決め,原告に対し,その旨を伝えた上で,本件架電は終了した。 本件架電は,時間にして1時間弱にも及ぶものであった。 クC元教授は,翌18日午前7時ころ,H教務部長に電話をかけ,原告からの本件架電の内容を伝えて,建築材料実験の委嘱について,事前に建築学教室の教室会議に諮っていないことを理由に,非常勤講師を引き受ける- 26 -ことを辞退する旨申し出た。 H教務部長は,C元教授からの申出を,同日の教務委員会において報告した。 さらに,C元教授は,同日,I学長に対し,C元教授が原告からの本件架電により不快の念を感じたこと,建築材料実 する旨申し出た。 H教務部長は,C元教授からの申出を,同日の教務委員会において報告した。 さらに,C元教授は,同日,I学長に対し,C元教授が原告からの本件架電により不快の念を感じたこと,建築材料実験を担当する意向はないこと等を説明した。 その時点では,I学長らとしては,C元教授の辞退の意向が強いため,C元教授に建築材料実験を改めて委嘱することは難しいと考えるようになった。 一方,原告は,同日,C元教授が非常勤講師を辞退したことを知り,被解雇教員であったD元教授(以下「D教授」という。)と対応を協議し,D教授が同日夜,C元教授に電話で事情を確認することがあった。 ケ同月19日,原告も出席して,建築学教室の臨時教室会議が開かれ,結論としては,建築学教室として,C元教授に対し,建築材料実験を担当してもらうよう依頼することが決定された。原告は,建築材料実験をC元教授に委嘱することについて,反対の意見を述べることはなかった。 そして,同日,F教授及びN助教授が,C元教授に対し,建築材料実験の非常勤講師を引き受けるよう改めて依頼し,C元教授の承諾を得た。その後,同月25日の教授会において,建築材料実験の非常勤講師をC元教授に委嘱することが正式に承認された。 C元教授は,当初の日程どおり,同月29日から同年2月28日まで,建築材料実験の集中講義を行った。 コ被告理事会では,本件架電に関する一連の経過の報告を受け,事実関係を調査することが必要と考えたため,同年2月,本件架電の件に関する調査委員会を設け,同委員会は,同月7日,原告から事情聴取をした。その際,原告は,C元教授に電話した事実自体は認めたものの,原告が,C元- 27 -教授に対し,C元教授の科目担当能力に疑問を呈したり,C元教授が担当することは必要でない旨の発言をしたことは否定し,原告が 原告は,C元教授に電話した事実自体は認めたものの,原告が,C元- 27 -教授に対し,C元教授の科目担当能力に疑問を呈したり,C元教授が担当することは必要でない旨の発言をしたことは否定し,原告が,本件架電の件について,反省したり謝罪することはなかった。 その後,調査委員会は,事情聴取した内容をもとに事実関係や言い分をまとめた報告書を作成し,被告理事長に提出した。 原告は,同月15日,G理事と面談したが,その際にも,G理事から,本件架電について謝罪するよう求められたが,これに応じなかった。 サその後,被告は,同月19日,原告を懲戒解雇とした(本件解雇)。 㨯以上の認定によれば,被告が平成18年10月に行った被告大学教員の大量解雇後,代替となる非常勤講師の確保に困難を来している中,I学長らが中心になって,C元教授に非常勤講師として建築材料実験を担当してくれるよう依頼し,C元教授も一旦は了解していたものを,原告が行った本件架電により,C元教授は,担当を辞退することになっており,その後,最終的には,C元教授が再度了解するに至ったものの,当時の被告大学の置かれていた状況からすれば,本件架電は,I学長らが行っていた非常勤講師の手配,確保を妨害する結果を招いた行為と評価できる。 また,本件架電において原告がC元教授に対してした発言は,上記認定のとおり,建築学教室の事前了解の有無という単なる事実確認に止まらず,C元教授の授業担当能力や,C元教授が建築材料実験を担当する必要性にも疑問を指摘するものであり,さらには,C元教授が建築材料実験を担当することで,被解雇教員の復職が困難になるかのごとき印象をC元教授に与えたものといえ,C元教授としては,本件架電における原告の発言内容や態度を理由の1つとして,建築材料実験の担当を辞退する意思決定をしたと認めるの 雇教員の復職が困難になるかのごとき印象をC元教授に与えたものといえ,C元教授としては,本件架電における原告の発言内容や態度を理由の1つとして,建築材料実験の担当を辞退する意思決定をしたと認めるのが相当である。 これに対し,原告は,本件架電でのやりとりについて,原告としては,C元教授が建築材料実験を担当することに反対する動機はなく,C元教授が講- 28 -義を担当することを前提に原告がした発言を,C元教授が誤解したにすぎないと主張する。 しかしながら,仮に,原告が,C元教授において建築材料実験を担当することを了解し,それを前提としていたのであれば,平成19年1月17日の建築学教室の教室会議でC元教授に委嘱する旨を知ったその日の夜に,それほど密な親交関係にないC元教授に直接電話までして,長時間にわたり事情を確認して意見を述べるまでの必要性があったとは考え難い。他方,原告が,本件架電において被解雇教員に言及していることや,原告は,本件組合委員長として,被告による教員の大量解雇に反対し,撤回を求める活動をしていたこと,原告は,それ以前にも,教授会において,C元教授の建築材料学の担当を巡り,その委嘱までの手続を問題視して,異議を述べたことがあったこと等からすれば,原告は,建築学教室の承認なく,C元教授が建築材料実験を担当することに決まったことに憤慨し,そのような対応をとった被告側への反発や抵抗意識等から,C元教授に対し,非常勤講師を受けないよう直接働きかける目的を有していたことは十分に考えられる。 また,本件架電の内容に関するC元教授の陳述(乙13,16,18)は,相当に具体的で一貫しており,被告と継続的な雇用関係になく,直接的に利害関係があるともいえないC元教授が,本件架電についてあえて虚偽の事実関係を述べるとは考え難いことからして,同陳 16,18)は,相当に具体的で一貫しており,被告と継続的な雇用関係になく,直接的に利害関係があるともいえないC元教授が,本件架電についてあえて虚偽の事実関係を述べるとは考え難いことからして,同陳述の信用性は高いと考えられ,本件架電の際のやりとりは,基本的にC元教授の陳述に基づいて認定することができるというべきであり,これに反する原告の供述等は採用しない。この点,原告は,C元教授との間で年賀状のやりとり(甲57)等の親交があり,本件架電での事実確認が許される関係であった等と主張するが,原告とC元教授は,夜間に電話でやりとりし合う関係にはなかったのであり(乙16,原告本人),本件架電によりC元教授が抱いた不快感等からして,本件架電が,大学教員である原告と非常勤講師であるC元教授との関係において,- 29 -通常なされるような内容,態様のものであったとは考えられない。 㨯そうすると,本件架電は,原告が,I学長らが委嘱した非常勤講師であるC元教授に対し,その担当能力や必要性に疑問を呈し,さらには,C元教授が非常勤講師として科目を担当することで,被解雇教員の復職を困難になるといった事情を述べるもので,それを聞いたC元教授としては,自らが非常勤講師を担当することが,建築学教室の意向に合わず,原告ら教員にとって望ましいものでないと認識するとともに,原告の発言に違和感,不快感を抱き,一旦は引き受けた非常勤講師を辞退することを決めたものであり,被告大学が本件架電当時,非常勤講師の確保に困難を来していた事情や,原告が非常勤講師の委嘱について直接の権限を有する者ではなかったこと,原告は,本件架電以前に,F教授に詳しく事情を追及したり,I学長やH教務部長に事実確認することなく,直ちにC元教授に連絡しており,本件架電を通して非常勤講師を辞退する旨を申し る者ではなかったこと,原告は,本件架電以前に,F教授に詳しく事情を追及したり,I学長やH教務部長に事実確認することなく,直ちにC元教授に連絡しており,本件架電を通して非常勤講師を辞退する旨を申し出るようになったC元教授に対しても,それを慰留するような態度には何ら出ていないことからすれば,原告が本件架電をしたこと及びその結果は,原告の被告大学における教員としての正当な権限行使の範囲を超えているというべきである。そうすると,原告が本件組合委員長として,被解雇教員の復職を目指すべき立場にあったことや,原告が,平成18年10月の教授会において,非常勤講師の委嘱について付帯条件が付されたと誤解していた可能性があることを考慮したとしても,C元教授に対して上記認定のような発言をしたことは,被告大学における非常勤講師の委嘱を妨害する可能性のある行為であったことは明らかであり,行きすぎた問題行動というべきである。 そして,上記認定によれば,C元教授が非常勤講師を辞退した後,建築学教室で再度検討した結果,建築学教室として改めてC元教授に依頼することとなり,最終的にはC元教授の了解が得られ,当初の予定に従って,建築材料実験が開講されたと認められ,本件架電により,建築材料実験の開講が不- 30 -可又は遅延する事態は避けられているが,被告大学としては,当初はC元教授に決まった建築材料実験の開講通知を一旦は取り消さざるを得なくなった上,非常勤講師となるC元教授の感情を害し,被告大学としてその対応を要したほか,本件架電後には,被告大学教員が改めて,C元教授に非常勤講師を依頼し,了解を得る必要があったことなど,本件架電の結果として,被告及び建築学教室が本来必要のない負担を要したことは軽視できない。 そうすると,被告の内部規定では,非常勤講師選任の手続として,新 師を依頼し,了解を得る必要があったことなど,本件架電の結果として,被告及び建築学教室が本来必要のない負担を要したことは軽視できない。 そうすると,被告の内部規定では,非常勤講師選任の手続として,新規の非常勤講師は,当該学科で選考し,教授会の承認を得ることになっていた(甲33,34)としても,建築材料実験に関する当時の被告大学の状況からすれば,学生の卒業のためには建築材料実験の開講が必要な一方で,建築学教室は具体的人選に積極的に協力する態度に出ていなかったことからして,通常の学科と教授会との円滑な協力関係を前提とする上記規程を形式的に適用することが困難な状況といわざるを得ず(乙19,20),平成18年10月の教授会における議論(甲22)があったとしても,それらが尊重されないことを理由に,教授会での議論の具体的内容,経緯などは詳細に知り得るはずもないC元教授に対し,直接電話して,威圧的な発言をし,暗に辞退を促すような指摘をした原告の対応は,軽率であり,被告の就業規則(甲2)にいう「職務上の権限を超え又は権限を濫用して専断的な行為をすること」(42条2号)又は「教員としてふさわしくない行為をすること」(同条10号)に当たるものであり,懲戒の対象となり得る非違行為というべきである。 しかしながら,本件架電について原告に上記のような問題があったとしても,それを理由に懲戒解雇という強度の懲戒処分を選択することが許容されるか否かは別途の検討が必要である。 そして,本件では,上記認定のとおり,本件架電により,C元教授は一旦は非常勤講師を辞退したものの,最終的には,再度の説得に応じ,建築材料- 31 -実験は予定どおりに開講されたこと,原告が本件架電をした動機は,建築学教室の担当科目に関する非常勤講師の委嘱について,建築学教室の意向が全く反映され 的には,再度の説得に応じ,建築材料- 31 -実験は予定どおりに開講されたこと,原告が本件架電をした動機は,建築学教室の担当科目に関する非常勤講師の委嘱について,建築学教室の意向が全く反映されなかったことを理由とするもので,その動機自体は,教授会における従前の議論からすれば,不合理なものとはいえず,むしろ原告が本件架電を要したのは,I学長らが,建築学教室の意向を確認することなく,C元教授に建築材料実験の非常勤講師を委嘱することとし,F教授も,この件を原告ら建築学教室に事前に説明しなかったのみでなく,事後的にも何ら説明に応じなかったことが大きく影響していると考えられ,その点では,I学長やF教授の不十分な対応も,相当に影響していると考えられること,本件架電の中で,穏当を欠く言動が原告にあったことは上記認定のとおりであるが,脅迫行為や名誉毀損行為にまで及んでいるものではなく,原告の被告大学教員及び本件組合委員長としての立場からすれば,興奮した原告がC元教授に対して不適切な発言をしたことは,何ら理由のないものとはいえないこと,本件架電は一回限りのものであり,その他,原告には,本件解雇以前に,被告において懲戒処分を受けたことはなく(原告本人),本件架電以前にも,被告大学の教員大量解雇による学生への影響を軽減するため,平成18年度後期には,被解雇教員に代わって科目を担当するなど被告大学への貢献も認められること(甲27,証人H,原告本人),被告大学の学長や建築学教室の教員が,本件解雇以前に,原告の懲戒解雇を特に要望した事実も認められないこと(甲14,証人I)等を勘案すれば,本件架電後の被告からの事情聴取に対し,原告が反省や謝罪の態度を示していなかったことを考慮しても,本件架電のみを理由に直ちに懲戒解雇とすることは,処分として重きに失し,非違 証人I)等を勘案すれば,本件架電後の被告からの事情聴取に対し,原告が反省や謝罪の態度を示していなかったことを考慮しても,本件架電のみを理由に直ちに懲戒解雇とすることは,処分として重きに失し,非違行為と処分との均衡を欠くものというほかない。 そうすると,本件架電については,原告に,被告大学教員として,懲戒の対象となる非違行為があったとはいい得るものの,懲戒処分として最も重く,労働者としての地位を直ちに剥奪する懲戒解雇が相当な処分とは到底いえず,- 32 -本件架電の事実のみで,原告を懲戒解雇とすることは,被告の懲戒権の濫用であり,許容されないものといわなければならない。 マスコミへのリークの問題について㨯被告は,原告が,教授会の議事内容をマスコミにリークし,被告大学を混乱させ,学生募集停止を余儀なくさせたと主張する。 㨯この点,証拠(乙3ないし5)によれば,平成18年6月26日から同月28日までの3日間に,新聞紙面に,被告大学の学部改組に関する記事が掲載されたこと(以下,これらの記事を「本件新聞記事」という。),本件新聞記事のうち,平成18年6月26日付け紙面には「A大工学部廃止検討」「定員割れで学部を再編」「名称も「純真大」に」との見出しの記事が,同月27日付け紙面には「A大学再編」「教授会開催できず」「反対派「時間切れ」懸念」等の見出しの記事が,同月28日付け紙面には「再編を一部断念」との見出しの記事がそれぞれ掲載されたことが認められる。 そして,本件新聞記事には,被告大学の学生募集停止の方針や工学部の廃止を検討していたこと,文系学部の新設を断念したことが記載されているほか,被告大学教員の対応として,上記のような被告の方針に教職員らは反発していることや,工学部廃止には教員の強い抵抗があることが記載され,被告大学が教授会を開 部の新設を断念したことが記載されているほか,被告大学教員の対応として,上記のような被告の方針に教職員らは反発していることや,工学部廃止には教員の強い抵抗があることが記載され,被告大学が教授会を開催できなくなっていたことや,平成18年4月以降の教授会の審議状況,教員側が,理事会や学長の意向に反発して,独自に教授会メンバーが集まり,会合を開いて決議したことや,学長の解任を求めたこと,学部改組の断念の理由について,被告理事会側は,新聞報道されたことが理由である旨コメントし,教員側は,それに反発するコメントを出したこと等が記載されていると認められる。 㨯以上の認定及び証拠(甲5の2,6の1,27,51,59,乙2,6,7,原告本人)により認められる,本件新聞記事の掲載当時における被告大学改組に関する理事会と被告大学教授会の協議状況等からすれば,本件新聞- 33 -記事は,被告大学として積極的に公表できる段階の内容ではなく,また,学生募集停止の方針など被告大学内で方針が確定していない事項について,あたかも方針が確定したかのような報道がされており,本件新聞記事には,被告大学における当時の客観的状況に合致しない内容も含まれていたと認められる。さらに,本件新聞記事は,被告大学の改組に関する理事会の方針に教員が反発し,さらに教授会が正常に機能せず,分裂した状態になっていることをうかがわせるなど,被告及び被告大学の信用を低下させ,被告大学の教育体制に不安感を抱かせるに十分な内容といえるものである。 そうすると,本件新聞記事の内容は,被告大学にとって不利益となる可能性が高いものである。 㨯その上で,被告は,本件新聞記事の内容をマスコミにリークしたのが被告大学教員,とりわけ原告であると主張するが,本件証拠に照らしても,本件新聞記事について,原告が教授 る可能性が高いものである。 㨯その上で,被告は,本件新聞記事の内容をマスコミにリークしたのが被告大学教員,とりわけ原告であると主張するが,本件証拠に照らしても,本件新聞記事について,原告が教授会の議事内容を違法又は不当に漏洩した結果であると認定することは困難といわなければならない。 この点,確かに,上記認定の本件新聞記事の内容,とりわけ平成18年6月27日付け記事(乙4)及び同月28日付け記事(乙5)では,被告大学教員がマスコミの取材に対応して発言した具体的内容が記載されていること,教授会と学長との具体的なやりとりについて詳細に記載されていること等からすれば,本件新聞記事の取材源として,被告大学教員が何らかの関与をしていることがうかがわれる。 しかしながら,本件新聞記事はその取材源を特定しているものではないし,被告において,リークした被告大学教員が原告であると特定できてはいない(甲59,乙2,証人H,同I)。そして,原告本人は,本件新聞記事が原告のリークしたものではないと供述等しており(甲51,原告本人),本件全証拠によっても,原告が本件新聞記事に関する情報をリークしたと認めるに足りない。 - 34 -そもそも,本件新聞記事が掲載された当時は,被告大学の改組計画を巡って関係者の利害が対立している状態であり,マスコミにおいて必要な取材を行った上で(上記26日付け記事等では,現に理事会側が取材を受けたことがうかがわれる。),これを記事にしたことも十分考えられ,本件新聞記事が,被告大学教員からの一方的なリークに基づくものと即断することはできない。 㨯したがって,本件新聞記事に関し,原告が違法又は不当なリークを行ったものであると認めることはできない。さらに,本件新聞記事が掲載された時期やそれ以前の被告大学改組に関する状況からして,本件 い。 㨯したがって,本件新聞記事に関し,原告が違法又は不当なリークを行ったものであると認めることはできない。さらに,本件新聞記事が掲載された時期やそれ以前の被告大学改組に関する状況からして,本件新聞記事が,被告大学の改組計画を断念することになった主原因であるとも認められない。そうすると,本件新聞記事を理由に,被告が原告を不利益に取り扱うことは,合理的理由がなく,本件解雇の理由になるものとは認められない。 㨯これに対し,被告は,原告が本件組合委員長として,マスコミとの窓口になっていたから,原告がこのマスコミへのリークに関与していたことは明白であると主張するが,本件新聞記事について,原告が漏洩又は関与していたと認めるに足りる証拠がないことは上記判示のとおりであり,証拠(甲47,48,原告本人)によれば,原告は,本件新聞記事以前にマスコミの取材に応じた場合には,自らの氏名を明らかにして取材に応じていたと認められることからしても,被告の主張は採用できない。 被告は,原告の学会での研究発表内容(乙21の1・2)を問題にするが,これにより,本件新聞記事に関する原告の違法又は不当なリークが推認されるとはいえない。 㨯以上によれば,本件解雇の理由としてマスコミへのリークの問題を挙げる被告の主張は,その主張の前提となる原告によるリーク自体が認められず,本件解雇の理由となり得ないものである。 本件解雇の解雇理由に関する評価(違法性)- 35 -以上,2ないし4までの上記各判断を前提にすると,被告が本件解雇の理由として主張する事実のうち,原告による非違行為として認定できるのは,本件架電のみであり,本件架電についても,その事実関係をもって懲戒解雇を基礎付けるものとは認められない。 したがって,被告が本件解雇をしたことは,解雇を基礎付ける根拠を欠くも 為として認定できるのは,本件架電のみであり,本件架電についても,その事実関係をもって懲戒解雇を基礎付けるものとは認められない。 したがって,被告が本件解雇をしたことは,解雇を基礎付ける根拠を欠くものであり,解雇権の濫用として,違法無効なものと認められる。 本件解雇の適正手続違反について㨯原告は,本件解雇に先立ち,原告には被告から弁明の機会が与えられず,本件解雇は適正手続を経ておらず,手続違反があると主張する。 㨯この点,証拠(甲11,27,乙14,15,証人H,同I)によれば,被告では,本件架電に関しては,平成19年2月,被告理事会からの要請があり,調査委員会を設置し,I学長,M元学長,H教務部長等がその構成員になったこと,調査委員会は,原告に対し,平成19年2月7日,本件架電に関する事情聴取を行ったこと,その事情聴取は,調査委員会の質問に対して,原告が結論をイエス・ノーで簡潔に答えることを基本とする形で行われたこと,この中で,原告は,平成18年10月の教授会における付帯条件について言及することがあったこと,調査委員会は,原告からの事情聴取の内容も踏まえ,事実関係をまとめた報告書を作成し,被告理事長に提出したこと,G理事は,同月15日,原告と面談し,本件架電に関する件について,改めて原告の意向を確認したこと等が認められる。 そうすると,被告では,本件解雇に先立ち,被告が直接の解雇理由とした本件架電の件については,調査委員会が原告から事情を聴取し,弁明の機会を与えたと認められるので,本件解雇に先立つ手続において,原告に弁明の機会を与えなかったとの違法があったとは認められない。 この点,原告は,調査委員会の事情聴取は,原告に結論の回答のみを求め,自由な発言を許すものでなかった,G理事との面談は,G理事が自らの考え- 36 -を一 かったとの違法があったとは認められない。 この点,原告は,調査委員会の事情聴取は,原告に結論の回答のみを求め,自由な発言を許すものでなかった,G理事との面談は,G理事が自らの考え- 36 -を一方的に述べるものであった等と主張し,原告には実質的に弁明の機会が与えられなかったというが,証拠(乙14,15,証人H,同I)によれば,調査委員会は,原告に対し,本件架電に関する事実関係についての原告の言い分は確認しており,原告の弁解する本件架電の内容とC元教授の説明では事実関係についての言い分が異なることを認識した上で,上記報告書を作成したと認められ,原告には,本件架電に関する事実関係について否認し,原告の考えを示す一応の機会は与えられたといえる。この点,原告に完全に自由に発言する機会を与えなかった(甲27,証人I)としても,それのみにより弁解の機会を付与しなかったと評価されるものではない。また,G理事との面談においても,原告は,本件架電について自らには落ち度,責任がない旨を発言していると認められ,そうすると,原告の発言についてG理事が何ら理解を示さなかったとしても,原告の言い分自体は表明する機会が与えられていたといい得るものである。 その他,原告が主張する,調査委員会の報告書が証拠として提出されていないことや,本件解雇を決定した被告理事会の議事録が証拠として提出されていないことは,いずれも本件架電を理由とする本件解雇の手続違反を直ちに推認させるものとはいえない。 㨯しかしながら,被告は,本件解雇の理由として,本件架電のみならず,それ以外の原告による非常勤講師の委嘱に関する積極的妨害行為及びマスコミへのリークの問題を挙げるところ,これらの事実については,本件解雇に先立ち,被告が,原告に対し,弁明の機会を与えたと認めるに足りる証拠はない。 る非常勤講師の委嘱に関する積極的妨害行為及びマスコミへのリークの問題を挙げるところ,これらの事実については,本件解雇に先立ち,被告が,原告に対し,弁明の機会を与えたと認めるに足りる証拠はない。 逆に,証拠(甲11,38,証人H,同I)によれば,調査委員会は,もっぱら,本件架電に関する事実関係を確認するために原告から事情聴取を行ったのみで,それ以外の事実関係については何ら聴取していないこと,その後,G理事が平成19年2月15日に原告と面談した際にも,本件架電以外- 37 -の件には話が及んでいないこと,逆に,本件解雇後の同年3月14日の団体交渉の場において,原告は,本件架電以外の事実が本件解雇の理由になっているとは聞いていない旨繰り返し述べており,それに対し,G理事は一応否定する発言はするものの,明確な反論はできない態度に終始していることが認められる。 そうすると,被告は,本件架電以外の原告の積極的妨害行為及びマスコミへのリークの問題についても,本件解雇の解雇理由と主張しながら,一方で,本件架電以外の解雇理由については,本件解雇以前に,原告に弁明の機会を付与していないと認められ,また,証拠(甲27,51,原告本人)によれば,原告はこれらの解雇理由のいずれについても,その事実関係を争う立場にあったのであるから,この点に関する被告の懲戒解雇手続は違法である。 本件解雇の不当労働行為性について㨯以上のとおり,本件解雇は被告の解雇権の濫用として違法無効と認めるべきものであるが,原告はさらに,本件解雇は,原告が本件組合委員長であり,かつ,本件組合が教員の大量解雇の撤回等を求める組合活動をしたことを理由にされたものであり,不当労働行為に当たると主張する。 㨯この点,争いのない事実及び証拠(甲4,5の1ないし16,6の1ないし4,7,8, 合が教員の大量解雇の撤回等を求める組合活動をしたことを理由にされたものであり,不当労働行為に当たると主張する。 㨯この点,争いのない事実及び証拠(甲4,5の1ないし16,6の1ないし4,7,8,9の1ないし3,12,13の1ないし3,19,20,22,27,51,59,乙1,2,12,14,15,証人H,同I,原告本人)によれば,本件解雇に至るまでの事実経過として,以下の事実が認められる。 ア被告理事会は,平成18年度における被告大学の募集学生数の定員割れ等の事態を受け,平成18年4月,被告大学工学部を理工学部にし,他に文系学部を設置するという大学改組案を教授会に提出し,また,その後,理工学部を生命理工学部へ変更する等の複数の改組案を提案した。被告大学教授会は,この提案に直ちには応じず,同年5月以降,次第に反対する- 38 -ようになり,教授会自体が正常に開催されない状態となった。 本件組合は,同年6月5日から,B学園の理事会に団体交渉を申し入れたが,同理事会はこれに応じなかったため,本件組合と被告理事会は対立関係になった。 被告理事会は,結局,同年6月末,被告大学の改組を断念した。 また,被告大学の大学改組を巡る理事会と教授会の対立については,同年6月26日以降,新聞紙上で報道されるようになった。 イ被告大学は,同年7月末ころ,平成19年度の学生募集停止を決定した。 ウ平成18年7月11日開催の臨時教授会において,当時の被告大学学長であるM元学長から,教授会が正常化するまで,大学教員のみ夏期賞与の支給を保留することが理事会で決定された旨報告された。また,同月27日開催の教授会において,M元学長から,同月24日の理事会で,平成19年度の学生募集を停止することが決定された旨の報告があった。そこで,本件組合は,学生の募集再開を求める 報告された。また,同月27日開催の教授会において,M元学長から,同月24日の理事会で,平成19年度の学生募集を停止することが決定された旨の報告があった。そこで,本件組合は,学生の募集再開を求める活動を行った。 エ被告大学は,平成19年度の学生募集停止決定を受け,被告大学教員を解雇することとし,被解雇教員が後期授業で担当予定の科目については,残留教員や非常勤講師を委嘱することにより対処しようと考えた。 そして,被告は,平成18年8月25日から同年9月5日までに,被告大学の合計20名の教員に対して解雇予告通知をした。 オ本件組合は,これを受けて,被告理事会と団体交渉を行い,また,裁判支援活動及び署名・街頭ビラ配布活動等を行い,被告大学教員の解雇の撤回を求める活動を行った。 これにより本件組合は,被告理事会との緊張関係を一層深めていった。 カ本件組合は,G理事等との間で,平成18年8月23日,同年9月5日,同月15日,団体交渉を行い,被告大学の学生募集停止や教員の大量解雇の問題について協議した。本件組合は,教員の大量解雇の理由の説明や解- 39 -雇の撤回を求めたが,G理事と意見が対立し,紛糾する状態になることがあった。 キ被告大学では,教員の大量解雇後,被解雇教員に代わる非常勤講師が必要となり,被解雇教員や他大学の教員等に対し,非常勤講師への就任を打診したが,一旦承諾した教員もその後辞退するなど,なかなか成果は得られなかった。I学長らは,非常勤講師の獲得につき原告ら本件組合の関係者が妨害していると考え,開講直前まで,非常勤講師の担当者を秘匿するようになった。 ク本件組合は,平成19年2月18日,福岡市中央区天神の街頭において,被告大学教員の解雇撤回,地位保全の仮処分の早期決定を求める街頭署名及びビラ配布活動を行い,翌19日,上記 するようになった。 ク本件組合は,平成19年2月18日,福岡市中央区天神の街頭において,被告大学教員の解雇撤回,地位保全の仮処分の早期決定を求める街頭署名及びビラ配布活動を行い,翌19日,上記活動がテレビ及び新聞に報道された。 ケ原告は,同月15日,G理事と面談し,その際,G理事は,本件架電について原告から事情を聞き,謝罪するよう勧めたほか,原告や本件組合の活動について批判的な発言をした。 コ本件解雇は,同月19日,G理事が原告に対して直接伝える方法によりなされた。 㨯以上の認定によれば,本件解雇以前から,被告理事会と被告大学教授会及び本件組合は厳しく対立しており,特に,被告理事会が,被告大学教授会の了解なく,学生募集停止を決定した以降は,理事会側と教授会側との対立は著しいものとなり,理事会側は,被告大学教員を大量解雇し,教授会側との間で,被告大学の在り方について協議,検討する姿勢を示すことはなかった一方,教授会側も,本件組合を中心として,理事会側の対応を厳しく糾弾し,学外での活動を展開するなど,理事会側に対しては厳しい対立姿勢で臨んでいたと認められる。 そして,上記認定の原告や本件組合と被告との関係からすれば,原告が本- 40 -件組合委員長の地位にあり,被告理事会との交渉等を直接担当する立場であったほか,本件組合の活動についてイニシアティブをとるべき立場にあったこと,被告が,非常勤講師の確保等に関する本件組合や原告の姿勢,対応を快く感じていなかったことは容易に推察されるところであり,被告が,原告や本件組合に対して悪感情を有していた可能性は高いと考えられる。 しかしながら,被告が原告に対してした本件解雇に関しては,上記判示のとおり,本件架電の件を直接の契機として,被告が調査委員会を設け,原告からの事情聴取を含む事実調査を いた可能性は高いと考えられる。 しかしながら,被告が原告に対してした本件解雇に関しては,上記判示のとおり,本件架電の件を直接の契機として,被告が調査委員会を設け,原告からの事情聴取を含む事実調査を行った上で,懲戒解雇とすることを決定したものであり,被告では,教職員を懲戒解雇する場合に必要な手続は一応履践されていたと認められるほか,本件架電自体は,被告大学教員のとった行動として,相当に軽率であり,問題のあるものであったことは,上記3で認定のとおりである。 そうすると,被告が本件架電等を理由として原告を懲戒解雇としたことは,上記5で認定のとおり,解雇権の濫用と認めるべきものであるとしても,明らかに何らの根拠もないものとはいえず,解雇権の行使の前提となる一応の根拠事実はあったといえる。 さらに,上記判示のとおり,本件解雇以前から,本件組合又は原告と被告理事会は,厳しい対立関係にあったが,本件解雇については,原告が組合員であることから特に懲戒の対象としたであるとか,実質的には本件組合の組合活動を理由にしたものであると認めるに足りる証拠はないというべきである。 この点,上記認定及び証拠(甲9の1ないし3,10,11)によれば,被告側,特にG理事は,本件解雇以前から,原告及び本件組合に対し,穏当でない態度や言動に出ることがあり,また,被告理事会側は,本件組合の団体交渉の要求に対して直ちに応じることはなかったことが認められるが,本件解雇は,その直接の主たる原因は,平成19年1月17日の本件架電であ- 41 -り,被告が本件解雇に先立ち,本件解雇の実質的理由が原告や本件組合の組合活動を理由とするものであることをうかがわせるような言動をとったと認めるに足りる証拠はない。 これに対し,原告は,G理事が,組合敵視・組合排除の言動を繰り返すなど不当労働行 由が原告や本件組合の組合活動を理由とするものであることをうかがわせるような言動をとったと認めるに足りる証拠はない。 これに対し,原告は,G理事が,組合敵視・組合排除の言動を繰り返すなど不当労働行為意思を露骨に表したと主張するが,仮に,G理事にそのような意向があったとしても,本件解雇自体は,G理事の単独の意思のみで決定されたものではなく,被告としての判断でされたものと考えられ,G理事の本件組合に対する悪感情が発現した結果と直ちに認めることはできない。 また,原告は,G理事が,団体交渉の席上で,原告の解雇を意識した発言を行ったと主張するが,証拠(甲9の2)によれば,原告の指摘する,G理事の「意図的であれば,委員長を最初に解雇する」との発言は,被告が行った被告大学教員の大量解雇について,本件組合の組合員を意図的に対象にしたものではなく,不当労働行為ではないことを説明する趣旨で発言されたものにすぎず,その時点では,原告に対する懲戒解雇が既に決定されていたとも考え難いことからして,本件解雇が,本件架電以前から既に決定されていたとも認められない。 なお,G理事は,平成19年2月15日,本件解雇に先立ち,原告と面談しており,その際の発言内容(甲11)からすれば,G理事が,本件組合の活動や本件組合と被告との対立関係について,苦言や見直しを求める趣旨の発言をしていたとは認められるものの,本件組合の活動や原告の本件組合委員長としての立場と,本件架電の件やそれによる懲戒解雇を直ちに結びつけて話をしているとまでは認められない。 さらに,原告は,本件解雇が,本件組合が教員の大量解雇の撤回を求める街頭署名・ビラ配布活動を行い,翌日にマスコミで大きく報じられたのと同日になされたことを理由に,本件解雇前日の本件組合の活動を理由として行われたものである旨主張するが, 教員の大量解雇の撤回を求める街頭署名・ビラ配布活動を行い,翌日にマスコミで大きく報じられたのと同日になされたことを理由に,本件解雇前日の本件組合の活動を理由として行われたものである旨主張するが,本件解雇に先立っては,平成19年2月7- 42 -日に調査委員会が原告を事情聴取し,同月15日には,G理事が原告と面談するなどしていたのであり,被告では,本件解雇以前の時期から,本件架電を理由として原告に対する懲戒処分をすることを念頭に置いた手続が進められていたといえ,本件解雇が,本件解雇の前日の本件組合の街頭署名・ビラ配布活動を理由としてされたものとも認められない。 その他,原告が主張する本件解雇後の事情や,被告の他の学校での紛争等の事情によっても,本件解雇が,実質的には,原告が本件組合委員長であることや,本件組合の活動を理由としてされたものであると認めるまでの証拠はなく,本件解雇については,上記3で認定のとおり,原告が本件架電をした行為及びその後の原告の態度を重くみた被告が,処分との均衡等に慎重に配慮することなく,懲戒解雇を決定したにすぎないものであり,被告のこのような性急な判断の背景としては,それ以前の原告又は本件組合と被告との厳しい対決関係があったとしても,本件解雇自体は,原告の具体的言動を捉えてなされたものとみるのが自然であり,被告の不当労働行為意思に基づいてされたものとまでは認められない。 㨯したがって,本件解雇が不当労働行為であるとの原告の主張は,採用できない。 以上の認定によれば,本件解雇は,被告の解雇権の濫用として違法無効なものであり,被告は,本件解雇以降も,被告における労働者としての地位を有することになる。 そうすると,本件解雇後に,原告が被告において現実に就労を提供することができないのは,被告が違法な本件解雇を行 のであり,被告は,本件解雇以降も,被告における労働者としての地位を有することになる。 そうすると,本件解雇後に,原告が被告において現実に就労を提供することができないのは,被告が違法な本件解雇を行い,原告の労務の提供を拒絶している結果と認められるから,原告は,本件解雇以後も,被告との間の雇用契約に基づく賃金請求権を有することになる。 もっとも,原告は,遅くとも本件口頭弁論終結日である平成21年4月13日までには,被告の就業規則(甲2)に基づく定年退職時期を経過していたこ- 43 -とは,当事者間に争いがない(原告も,その前提で,退職金請求をしている。)から,被告における地位確認を求める原告の主張は理由がない。 また,原告は,本件解雇後,被告を定年退職となり,その地位を喪失する平成21年3月末までの間(原告の定年退職時期についての判断は,後記11のとおりである。),被告に対して賃金請求権を有することになり,証拠(甲25)によれば,この期間中の原告の賃金額は,本件解雇時の直近の賃金額である月額56万1430円と認めるのが相当である。 そこで次に,本件解雇が無効であることから,原告の本件解雇後の賞与請求権及び退職金請求権が認められるかが問題となる。 争点②(賞与請求権の有無)について㨯原告は,無効である本件解雇の後から原告の定年退職時期までの賞与請求として,平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の賞与支給を請求し,原告には,被告大学の教員たる地位に基づき,他の被告大学教職員と同一の支給率による賞与請求権があると主張し,これに対し,被告は,上記各賞与の支給について,被告理事会が決定した被告大学教職員に対する賞与支給率の決定には,原告に対する支給の意思が含まれていない等として,支給義務自体を争う。 㨯この点,証拠(甲2,61 告は,上記各賞与の支給について,被告理事会が決定した被告大学教職員に対する賞与支給率の決定には,原告に対する支給の意思が含まれていない等として,支給義務自体を争う。 㨯この点,証拠(甲2,61)によれば,被告の本件解雇当時の就業規則は,「教員の給与及び退職金について,その決定,計算及び支払い方法その他必要な事項は,別に定める給与規程及び退職金規程による。」と規定しており,被告の給与規程は,賞与について,以下のとおり,規定していることが認められる。 「賞与は,学園の予算を勘案して7月1日,および12月1日(これらの日を基準日という)にそれぞれ在職する職員に対して,7月,および12月に支給する。 ②賞与の算定基礎額は,基本給,および役職手当の月額の合計額とする。 - 44 -③賞与は,前項の基礎額に,理事会で決定した支給率を乗じて得た額とする。」以上の給与規程の定めによれば,被告の被告大学教職員に対する賞与支給は,理事会が決定した支給率により変動し得るものであるが,理事会は,各教職員の算定基礎額に乗ずる支給率を決定することのみが予定されており,個別の査定により教職員ごとに裁量的支給をすることは予定されていないと認められる。 また,弁論の全趣旨によれば,平成19年及び平成20年の被告大学教職員に対する賞与は,一律の支給率による支給がなされたとの原告の主張に対し,被告がこれを具体的に争う主張をしていないことが認められ,そうすると,被告は,平成19年及び平成20年の被告大学教職員に対する賞与について,教職員ごとに個別に査定して,支給率等に差異を設ける運用は行っていなかったと認められる。 したがって,被告においては,被告大学教職員に対する賞与の支給に当たり,その支給率の決定については,相当に広範な裁量を持ち得るものといえるが,一旦決定 を設ける運用は行っていなかったと認められる。 したがって,被告においては,被告大学教職員に対する賞与の支給に当たり,その支給率の決定については,相当に広範な裁量を持ち得るものといえるが,一旦決定した支給率については,被告大学の各教職員に対して一律に適用することが予定され,そのような運用が採られていたと認められる以上,これと異なり,特定の被告大学教職員についてのみ別の扱いとすることには相応の合理的根拠と必要な手続を経ることが必要と解するのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告理事会は,平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各賞与の支給に関し,夏期については1.5,冬期については2.0の支給率とする決定をしたと認められるところ,その理事会決定に際し,明示的に原告を支給の対象から外すことを合意又は決定していたと認めるに足りる証拠はない。したがって,上記8で認定のとおり,本件解雇が無効であって,原告が被告大学教員としての地位を継続している以上,被告が原告に対してのみ賞与支給を拒絶する理由はないというべきで- 45 -ある。 これに対し,被告は,被告理事会の決定には,原告に対する賞与支給の意思は含まれていないと主張するが,理事会でそのように明示的に決定したとは認められないことは上記判示のとおりであり,仮に,理事会が黙示的にそのような意思決定をしたとしても,もとより賞与支給に関する使用者の裁量は無制約のものではなく,その支給に関する判断が合理性を欠き,労働者の賞与請求権を不当に侵害したり,労働者間に不合理な差別を生じさせるものと認められる場合には,裁量の範囲を逸脱したものとして,違法無効の評価を受けることがあるというべきであり,本件についても,上記認定のように,本件解雇以前に原告に問題行動があったとしても,それに対して被告 められる場合には,裁量の範囲を逸脱したものとして,違法無効の評価を受けることがあるというべきであり,本件についても,上記認定のように,本件解雇以前に原告に問題行動があったとしても,それに対して被告は許される裁量を逸脱した違法な本件解雇を行ったのであり,その結果として,原告が被告から就労を拒絶され,著しい不利益,損害を被ったことにかんがみれば,本件解雇後の平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各賞与について,被告が,本件解雇を理由として,原告に対する支給を拒絶することは,著しく信義に反する態度であり,許容されないというべきであって,また,その手続においても,黙示的に不支給を決定したと認めるに十分な事情は認められない。 この点,平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各期間について,原告がそれ以前に被告から本件解雇をされた以上,原告は被告において現に労働を提供しておらず,その結果として,被告が原告の勤務状況等を査定・評価することはなかったことは明らかであるが,上記のような被告における賞与支給に関する規程の内容や従前の運用からすれば,賞与支給について,各教職員に対する個別の査定・評価を要するとはいえないのであり,被告大学教職員は,特段の事情がない限り,その地位にある以上,被告理事会の定める支給率に基づく賞与支給権があるというべきであり,被告が違法な本件解雇を行った結果として,原告に現実の就労の機会が与えられず,原告- 46 -が現実の労務の提供をできなかったことは,上記特段の事情には当たらないというべきである。 なお,証拠(甲62)によれば,被告において平成19年4月から実施されたとする新しい給与規則(甲62)により,賞与に関する規定は削除され,同様の性格を有する手当として,勤勉手当が設けられていること,勤勉手当の支給に )によれば,被告において平成19年4月から実施されたとする新しい給与規則(甲62)により,賞与に関する規定は削除され,同様の性格を有する手当として,勤勉手当が設けられていること,勤勉手当の支給については,基礎となる月額合計額に,勤務成績に応じて理事長の定める率を乗じて得た金額を支給するとされていること,勤勉手当は,職員の在職期間や欠勤日の数により,職員ごとに変動することが予定されていることが認められる。しかしながら,本件解雇後になされたという被告の上記規定の変更については,その変更の有効性や原告に対する適用関係を認めるべき的確な証拠がない上,仮に,被告において平成19年4月から新しい給与規則が適用され,賞与に代わって勤勉手当が支給されることになっていたとしても,上記認定によれば,被告大学では,平成19年夏期以降も,教職員ごとの区別なく一律の支給率による賞与(勤勉手当)が支給されていたことになり,教職員別に勤務成績による個別の査定等がされるように運用が変更されたと認めるに足りる証拠はない。そうすると,平成19年4月以降についても,被告における賞与(勤勉手当)の趣旨,支給実態は,それ以前と変わるものではないと考えるほかなく,給与規則が改定され,勤勉手当に名称が変更されていたとしても,それで被告における一時金の性格が変じたとはいえず,原告の賞与請求権を否定すべき事情に当たるとは認められない。 㨯以上によれば,原告は,平成19年及び平成20年の夏期・冬期の各賞与について,他の被告大学教職員と同様の支給率により算定される賞与請求権を有すると認められる。 そして,被告大学教職員について,被告理事会が決定した平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各賞与の支給率は,夏期が1.5,冬期が2.0であったことは上記判示のとおりであり,被告の給与 る。 そして,被告大学教職員について,被告理事会が決定した平成19年夏期・冬期及び平成20年夏期・冬期の各賞与の支給率は,夏期が1.5,冬期が2.0であったことは上記判示のとおりであり,被告の給与規程に基づき- 47 -原告について算定した賞与額が,夏期について各81万3600円,冬期について各108万4800円となることは,当事者間に争いがない(被告も,その算定式と金額自体は争わない。)。 したがって,原告は,被告に対し,雇用契約に基づき,平成19年及び平成20年の夏期の賞与として各81万3600円,平成19年及び平成20年の冬期の賞与として各108万4800円の各賞与請求権を有することになり,証拠(甲61,62)によれば,その支給は,夏期賞与については7月中に,冬期賞与については12月中にされるべきものと認められるから,原告についてこれら各賞与が支給されることなく上記期日を経過した8月1日及び翌1月1日から,原告の請求する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権を有することになる。 争点③(退職金請求権の有無)について㨯原告は,無効である本件解雇の後に,定年退職時期が経過したとして,退職金を請求するところ,原告の定年退職時期については,当事者間に争いがある。 㨯この点,証拠(甲2)によれば,本件解雇当時の被告の就業規則で定める定年年齢は,満63歳と認められ,原告についてみれば,定年に達した日の属する学年度の終了日である平成21年3月31日が定年退職日と認められる。 これに対し,被告は,本件解雇後に,被告の定年規則を改定したと主張し,改定後の定年規則を適用した結果,原告の定年退職日は平成20年3月31日になると主張する。 しかしながら,定年年齢の引下げは,被告大学の教職員にとっては労働条件の不利益変更に当たる 定したと主張し,改定後の定年規則を適用した結果,原告の定年退職日は平成20年3月31日になると主張する。 しかしながら,定年年齢の引下げは,被告大学の教職員にとっては労働条件の不利益変更に当たるものであり,その有効性が肯定されるためには,労働者の同意か,それに代わる合理性の要件(規則の変更手続が履践され,変更後の規則の内容に合理性があること)を充足することが必要である。 - 48 -本件では,就業規則の変更に必要な手続が履践されたと認めるに足りる十分な証拠はなく,証拠(乙24)によっても,被告が主張する定年年齢引下げは,平成19年4月1日から実施されるものである(乙22)にもかかわらず,被告の従業員代表からの意見書(乙24)は,その後の同月23日に提出されたものであり,かつ,同意見書には,定年年齢引下げに関する記載が一切されていないことからして,同意見書の求意見の対象に定年年齢引下げの問題が含まれていたか否か明らかでないなど,被告において定年年齢引下げのための規則改定に必要な手続が履践されたと認めるに十分ではない。 その他,被告は,定年年齢引下げについて,全教職員に対する説明をした,コピーを配布した等と主張するが,これを裏付けるに足りる証拠を何ら提出しない。 また,被告は,他の企業における定年年齢の実情を示して(乙23),被告の定年年齢引下げに十分な相当性があると主張するが,他の企業との比較や定年年齢引下げの必要性のみから,定年年齢引下げの効力が直ちに肯定されることにならないのはいうまでもない。 㨯以上によれば,被告における原告の定年退職日は,平成21年3月31日と認められる。 そして,その退職日を前提に,被告の退職金規程に基づいて計算した退職金額が1887万8400円となることは,当事者間に争いがなく,また,証拠(甲60)によれ は,平成21年3月31日と認められる。 そして,その退職日を前提に,被告の退職金規程に基づいて計算した退職金額が1887万8400円となることは,当事者間に争いがなく,また,証拠(甲60)によれば,その支払は,平成21年4月30日限りでなすべきものと認められる。 したがって,原告は,被告に対し,雇用契約に基づく退職金請求権として,被告の退職金規程に基づく退職金1887万8400円と,その支払うべき日の翌日である平成21年5月1日から,原告の請求する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権を有することになる。 争点④(不法行為の成否及びその損害額)について- 49 -㨯原告は,本件解雇について,被告が,何らの懲戒解雇事由がないにもかかわらず,不当労働行為意思に基づいて懲戒解雇に及んだもので,原告に対する不法行為を構成すると主張する。 㨯この点,被告による本件解雇に裁量の逸脱があり,解雇権の濫用と認めるべきことは上記判示のとおりであり,上記認定によれば,被告には,本件解雇の根拠とした判断に明らかな事実誤認と評価の誤りがあること,本件解雇は,被告の主張する複数の解雇事由を前提とすると,懲戒解雇に至る原告への弁解の機会付与が不十分であり,手続上の違法も認められること,本件解雇以前から,原告が委員長を務める本件組合と被告理事会が,被告大学の改組や被解雇教員に対する解雇撤回を巡って,厳しい対立状態にあったことからすれば,本件解雇は,上記のとおり,不当労働行為と認められるものではないとしても,被告が,本件組合や原告に対する悪感情や嫌悪感を端緒として,懲戒解雇を性急に進めた可能性は否定できないこと,被告は,本件解雇の際,原告に対し,懲戒解雇事由を具体的に説明しておらず,その後の本件組合との団体交渉でも,本件解雇の理由やその具体 感を端緒として,懲戒解雇を性急に進めた可能性は否定できないこと,被告は,本件解雇の際,原告に対し,懲戒解雇事由を具体的に説明しておらず,その後の本件組合との団体交渉でも,本件解雇の理由やその具体的裏付けを明らかにしたり,関連資料を提示するなどしておらず,原告や本件組合に対して本件解雇に関する誠意ある説明を尽くしたとは認められないことからすれば,本件解雇は,その裁量の逸脱及び濫用の程度が著しく,相当の違法性を有するものというべきであり,本件解雇を違法無効として,本件解雇がない前提での権利関係を原告に認めるに止まらず,原告に対して不法行為を成立させるまでの違法性を帯びるものというべきである。 㨯そして,証拠(甲27,51,52,55,原告本人)によれば,原告は,本件解雇により,生活上及び研究活動上の不利益を著しく被ったとともに,被告からこのような処遇を受けたことで,著しい精神的苦痛を被り,心身を害することにより,研究者としての研究活動を継続することが困難な状態に追い込まれたこと,原告の収入を生計の基礎としていた原告の家族の生活に- 50 -も相応の影響があったこと,本件解雇により,原告がその社会的信用を著しく害され,本件解雇が広く報道されたために,原告の信用及び名誉は回復が相当に困難な程度に毀損されたと考えられること,原告は,本件解雇後,職場復帰を希望したものの,本件訴訟中に定年退職時期を迎え,被告大学に実際に復帰することなく,退職を余儀なくされたこと等を考慮すれば,本件解雇により原告が被った損害は,相当なものがあり,本件解雇をした被告の判断の不合理性や不十分な手続,本件解雇後の不誠実な対応など本件解雇に関する一連の事情を勘案すれば,原告について100万円の慰謝料を認めるのが相当である。 第3 結論 以上によれば,原告の本件請求は 断の不合理性や不十分な手続,本件解雇後の不誠実な対応など本件解雇に関する一連の事情を勘案すれば,原告について100万円の慰謝料を認めるのが相当である。 第3 結論 以上によれば,原告の本件請求は,①本件解雇から原告の定年退職日までの賃金及びその遅延損害金(主文第1項),②本件解雇による慰謝料100万円及びその遅延損害金(主文第2項),③定年退職日の経過による退職金及びその遅延損害金(主文第3項),④本件解雇後の賞与及びその遅延損害金(主文第4項)の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文を,主文第1項ないし第4項の仮執行宣言及びその免脱宣言について同法259条1項,3項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部裁判官藤田正人

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