令和3年9月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年第14636号詐害行為取消請求事件口頭弁論終結日令和3年6月9日判決主文 1 C株式会社と被告株式会社A銀行が平成29年6月30日にした別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物についての根抵当権設定契約を取り消す。 2 C株式会社と被告株式会社B銀行が平成29年6月30日にした別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物についての根抵当権設定契約を取り消 す。 3 被告株式会社A銀行は,別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物について,別紙登記事項目録の符号登記1記載の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。 4 被告株式会社A銀行は,別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物につ いて,別紙登記事項目録の符号登記2-2記載の根抵当権一部移転登記の抹消登記手続をせよ。 5 被告株式会社B銀行は,別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物について,別紙登記事項目録の符号登記2-1記載の根抵当設定登記の抹消登記手続をせよ。 6 訴訟費用は,被告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文と同旨。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は,C株式会社に対して租税債権を有すると主張する原告が,C株式会社が被告らとの間で別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物に係る各根抵当権設定契約(以下「本件各根抵当権設定契約」という。)を締結したことが詐害行為に該当すると主張して,国税通則法42条及び平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)424条の規定による詐 害行為取消権に基づき,被告株式会社A銀行に対しては,本件各根抵当権設定契約の取消し並びに別紙登記事項目録の符号登記1及び による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)424条の規定による詐 害行為取消権に基づき,被告株式会社A銀行に対しては,本件各根抵当権設定契約の取消し並びに別紙登記事項目録の符号登記1及び2-2記載の根抵当権設定登記及び根抵当権一部移転登記の抹消登記手続を求め,被告株式会社B銀行に対しては,本件各根抵当権設定契約の取消し及び別紙登記事項目録の符号登記2-1記載の根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める事案である。 2 前提事実(本判決において枝番を明記しない証拠は枝番を含む。)⑴ 当事者等ア被告株式会社A銀行は,預金又は定期積金の受入れ,資金の貸付け又は手形の割引並びに為替取引等を目的とする株式会社である(甲7)。 イ被告株式会社B銀行は,銀行法その他の法律により銀行が営むことので きる業務等を目的とする株式会社である(甲8)。 ウ C株式会社は,ラジオ,テレビジョン,電化器具及びその部品の販売,金地金,貴金属,宝石,貴石,半貴石の輸出入及び販売等を目的とする株式会社であり,東京都千代田区ab丁目cd番e号に本店を有し,その代表取締役は,D(以下「D」社長という。)である(甲1)。 C株式会社は,本件各根抵当権設定契約が締結された当時,別紙不動産目録1記載の各土地及び各建物(以下「本件各不動産」という。),同目録2記載の土地及び建物(以下「E物件」という。),同目録3記載の各土地及び建物(以下「F物件」という。),同目録4記載の土地及び建物(以下「G物件」という。)の共有持分各4分の1,同目録5記載の土 地及び建物(以下「H物件」という。)を所有していた(甲3から6,2 3,弁論の全趣旨)。 なお,本件各不動産には,別途,根抵当権者を被告株式会社A銀行とし,極度額を2億円とする 地及び建物(以下「H物件」という。)を所有していた(甲3から6,2 3,弁論の全趣旨)。 なお,本件各不動産には,別途,根抵当権者を被告株式会社A銀行とし,極度額を2億円とする第1順位の根抵当権及び根抵当権者をI信用金庫とし,極度額を27億円とする第2順位の根抵当権も設定されていた(甲3)。 ⑵ C株式会社と被告らとの間のコミットメントライン契約の締結等ア C株式会社は,平成27年頃から,自社で経営する輸出物品販売場において,金製品を免税対象商品として販売する事業(以下「金事業」という。)を行っていた。C株式会社は,金事業の開始に伴い,消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の課税期間1箇月ごとに,消費税 等の確定申告を行い,C株式会社が仕入時に負担した消費税等の控除不足額の還付を求め(消費税法52条,地方税法附則9条の7),J税務署長からその還付を受けていた(争いがない)。 イ C株式会社は,平成28年3月31日,被告らとの間で,借入人をC株式会社,エージェントを被告株式会社A銀行,貸付人を被告らとして,C 株式会社からの個別の申込みに基づき被告らが貸付極度額の範囲内で貸付義務を負う旨のコミットメントライン契約(以下「旧コミットメントライン契約」という。)を締結した。旧コミットメントライン契約においては,総貸付極度額が50億円(被告株式会社A銀行につき30億円,被告株式会社B銀行につき20億円),コミットメント期限(被告らが貸付義務を 負う期限)が平成29年3月31日まで,貸付金の使途が金事業に係る運転資金とされ,また,被告らのために,C株式会社がJ税務署長に対して有する平成28年2月1日から同月28日までの課税期間(以下「平成28年2月課税期間」という。以下,他の課税期間 途が金事業に係る運転資金とされ,また,被告らのために,C株式会社がJ税務署長に対して有する平成28年2月1日から同月28日までの課税期間(以下「平成28年2月課税期間」という。以下,他の課税期間についても同様に表記する。)から平成29年3月課税期間の消費税等の各還付請求権に譲渡担保 権を設定するものとされていた。(甲9) ウ J税務署長は,平成28年8月,平成28年7月課税期間の消費税等の還付を保留し,同年9月1日,C株式会社について課税調査を開始した。 J税務署長は,同日以降,C株式会社が消費税等の還付申告を行うたびに,当該申告に係る消費税等の還付を保留した。(争いがない)エ旧コミットメントライン契約に基づく融資の貸付期間は1箇月間であっ たため,被告ら及びC株式会社は,毎月,旧融資の返済と新融資の実行を差引計算で行う借換新貸付を繰り返していた(争いがない)。旧コミットメントライン契約に基づくC株式会社への毎月の融資実行額は,平成29年3月31日時点で,貸付極度額の50億円に達していた(甲10)。 オ C株式会社及び被告らは,平成29年3月31日,旧コミットメントラ イン契約におけるコミットメント期限が到来したため,新たなコミットメントライン契約(以下「新コミットメントライン契約」という。)を締結した。C株式会社と被告らとの間では,平成29年4月以降も,新コミットメントライン契約に基づき,50億円の融資の借換新貸付が毎月実行された(争いがない)。新コミットメントライン契約においては,被告らの ために,C株式会社がJ税務署長に対して有する平成28年7月課税期間から平成30年3月課税期間の消費税等の還付請求権に譲渡担保権を設定するものとされ,また,以下の条項が新たに加えられた(甲11)。 担保 C株式会社がJ税務署長に対して有する平成28年7月課税期間から平成30年3月課税期間の消費税等の還付請求権に譲渡担保権を設定するものとされ,また,以下の条項が新たに加えられた(甲11)。 担保供与に関する特則(第32条⑶。以下「本件担保供与条項」という。) 平成29年7月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出されるべき期限において,平成28年8月(同年7月申告分)以降申告済の消費税のうち還付された金額が50億円に満たない場合,借入人(C株式会社)は,平成29年8月末日を実行希望日とする貸付の実行日と同日付で,各貸付人(被告ら)との間で根抵当権設定契約証 書を締結し,各貸付人のために,本件各不動産に根抵当権を設定し, 設定仮登記手続を行う。 貸付義務に関する特則(第34条⑴。以下「本件貸付義務条項」という。)平成29年5月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出されるべき期限において,平成28年7月申告分以降,累計50億円 の消費税還付金の還付が行われていない場合,全貸付人の貸付義務は停止する。但し,貸付人は,平成29年6月末日以降(同日を含む。)の貸付について,都度全貸付人の決定に基づき実行することができる。 ⑶ 原告による課税処分ア C株式会社は,平成29年6月30日時点で,平成28年7月課税期間 から平成29年4月課税期間に係る消費税等について,合計74億4444万3122円の還付申告をしていた(甲23)。 J税務署長は,同日,C株式会社に対し,平成26年6月1日から平成27年5月31日までの事業年度に係る法人税並びに同年6月1日から平成28年5月31日までの事業年度・課税事業年度に係る法人税及 び地方法人税についての各更正処分(甲16の1及び2,甲17) 成27年5月31日までの事業年度に係る法人税並びに同年6月1日から平成28年5月31日までの事業年度・課税事業年度に係る法人税及 び地方法人税についての各更正処分(甲16の1及び2,甲17)を行った。同税務署長は,同時に,C株式会社が消費税法8条1項に規定する非居住者に対する物品の譲渡に該当するため消費税等の免税の対象となるとして課税標準額の計算に含めていない金工芸品の売上額について,非居住者に対して譲渡されたものとは認められず,平成28年4月課税 期間から平成29年2月課税期間(以下「本件対象課税期間」という。)における金事業の売上は,免税の対象とならないとして,本件対象課税期間に係る消費税等の各更正処分及び各重加算税賦課決定処分(以下,これらの課税処分を併せて「本件各課税処分」という。)を行った。(甲18) イ原告は,平成29年6月30日,本件各課税処分により確定したC株式 会社の納付税額に,C株式会社が原告に対して有していた消費税等の還付金請求権合計71億2850万8715円(同日時点でC株式会社が還付申告していた金額のうち,平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消費税等の還付金請求権69億7779万3215円〔甲23〕,同還付金に係る還付加算金請求権337万9100円,平成27年6月1 日から平成28年5月31日までの事業年度の法人税の還付金請求権1億4112万6900円〔甲16の2〕及び同事業年度の地方法人税の還付金請求権620万9500円〔甲17〕の合計額)を充当した(以下「本件充当」という。)。 ⑷ 本件各根抵当権設定契約の締結等 ア本件各課税処分に係る通知書は,平成29年6月30日午前11時16分までに,D社長に対して交付されることにより,C株式会社に送達 充当」という。)。 ⑷ 本件各根抵当権設定契約の締結等 ア本件各課税処分に係る通知書は,平成29年6月30日午前11時16分までに,D社長に対して交付されることにより,C株式会社に送達された(甲19)。 イ被告らは,平成29年6月30日午後3時から午後5時頃,C株式会社との間で,それぞれ,本件各不動産について,被担保債権の範囲を銀行取 引,手形債権,小切手債権及び電子記録債権,被告株式会社A銀行については極度額を30億円,被告株式会社B銀行については極度額を20億円,債務者をC株式会社とする根抵当権設定契約(本件各根抵当権設定契約。 以下,同契約に基づき設定された各根抵当権を「本件各根抵当権」という。)を締結した(甲13,14,20,21)。 ウ C株式会社及び被告らは,平成29年6月30日午後5時13分,本件各不動産について,別紙登記事項目録の符号登記1及び2-1記載の各根抵当権設定登記(以下「本件各根抵当権設定登記」という。)をオンラインで申請し,同日受付でこれを了した(甲3,20,21)。 また,本件各根抵当権のうち,被告株式会社B銀行を抵当権者とする 根抵当権については,平成29年12月15日付けの債権一部譲渡(譲 渡額3億7103万9462円)を原因として,被告株式会社A銀行に別紙登記事項目録2-2記載の根抵当権一部移転登記が了された(甲3,22)。 エ C株式会社及び被告らは,平成29年7月3日,E物件,F物件及びG物件について,それぞれ,被告らを権利者とする抵当権設定仮登記を了し, 同月11日から同年8月4日までの間に順次当該仮登記の本登記を了した(甲4から6)。 ⑸ 原告による差押え原告は,平成29年9月12日,別紙租税債権目録1記載の各租税債権を徴収するため 同月11日から同年8月4日までの間に順次当該仮登記の本登記を了した(甲4から6)。 ⑸ 原告による差押え原告は,平成29年9月12日,別紙租税債権目録1記載の各租税債権を徴収するため,国税徴収法47条1項及び68条に基づき,本件各不動産, E物件,F物件及びG物件を差し押さえ(甲25から28),同日,それぞれの登記を了した(甲3から6)。 ⑹ C株式会社による取消訴訟の提起(弁論の全趣旨)C株式会社は,平成30年8月7日,東京地方裁判所に対し,本件各課税処分の取消しを求めて訴訟を提起した(東京地方裁判所平成30年(行ウ) 第321号消費税等更正処分等取消請求事件)。 東京地方裁判所は,令和2年6月19日,C株式会社の請求をいずれも棄却する判決を言い渡した。これに対し,C株式会社は,控訴を提起した(東京高等裁判所令和2年(行コ)第146号消費税等更正処分等取消請求事件。 以下,当該訴訟を,第1,2審を通じて「別件税務訴訟」という。)。 3 争点⑴ 被保全債権の存否(争点1)⑵ 本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性(争点2)⑶ 本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性に関する被告らの認識の有無(争点3) 4 争点に対する当事者の主張 ⑴ 争点1(被保全債権の存否)について(原告の主張)C株式会社は,本件各課税処分により,本件対象課税期間に係る消費税等の本税77億7172万7700円及び重加算税27億2008万8000円並びに平成26年6月1日から平成27年5月31日までの事業年度の法 人税の本税5200円の合計104億9182万0900円の納付税額が確定した。そして,原告は,前記納付税額に,C株式会社が原告に対して有していた還付金請求権合計71億2850万871 年度の法 人税の本税5200円の合計104億9182万0900円の納付税額が確定した。そして,原告は,前記納付税額に,C株式会社が原告に対して有していた還付金請求権合計71億2850万8715円を充当した(本件充当)。本件充当後の納付税額に,平成29年6月30日までに確定した延滞税720万8500円を加算すると,C株式会社の本件各課税処分後の滞納 税額は,別紙租税債権目録1のとおり,33億7052万0685円となる。 したがって,原告は,平成29年6月30日当時,C株式会社に対し,同金額の租税債権(未確定延滞税を除く。以下「本件各租税債権」という。)を有していた。 本件各租税債権の根拠となる本件各課税処分が無効であると解すべき事由 は存在せず,公定力によって,本件各租税債権の存在を否定することはできない。 (被告株式会社A銀行の主張)ア C株式会社は,本件各課税処分の取消しを求めて別件税務訴訟を提起し,同訴訟は現に係属中であり,本件各租税債権の存在は立証されていない。 イ仮に,原告が主張する本件各租税債権を所与のものとして原告の詐害行為取消請求が認容され,その後に別件税務訴訟において本件各課税処分が取り消された場合,真実は被保全債権が存在しなかったにもかかわらず,本件根抵当権設定契約が詐害行為として取り消される結果となり,不当である。 また,本件各課税処分に公定力が認められるとしても,行政行為の法 効果を攻撃しない限り,取消訴訟以外の訴訟で当該行政行為について争うことは可能である。本件訴訟において,原告が被保全債権として主張する本件各租税債権の全部又は一部の不存在が認定されたとしても,それによって本件各課税処分の法効果が失われるわけではないから,被告らが本件各租税債権の存在を争う において,原告が被保全債権として主張する本件各租税債権の全部又は一部の不存在が認定されたとしても,それによって本件各課税処分の法効果が失われるわけではないから,被告らが本件各租税債権の存在を争うことは,本件各課税処分の公定力の有 無にかかわらず可能である。 したがって,本件訴訟において,本件各租税債権の存否は,その実態から判断されなければならず,本件各租税債権の存在を所与のものとして扱うことはできない。 (被告株式会社B銀行の主張) 否認又は争う。 C株式会社は,本件各課税処分の取消しを求めて別件税務訴訟を提起し,同訴訟は現に係属中である。 ⑵ 争点2(本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性)について(原告の主張) ア詐害行為該当性の判断基準債務者による一部の債権者に対する担保供与行為は,それにより他の債権者の共同担保が減少し,債務者の残余財産では他の債権者に対して十分な弁済ができなくなるときは,他の債権者は従前より不利益な地位に立たされその利益を害されることから,債務者がこれを知りながらあ えて担保を設定した場合には,当該担保供与行為は,原則として詐害行為に該当すると解するのが相当である。通謀や害意が要求されるべき理由はない。 イ詐害行為該当性の判断の基準時詐害行為該当性については,本件各根抵当権設定契約が締結された平 成29年6月30日を基準として判断すべきである。 すなわち,本件担保供与条項に基づく根抵当権の設定は,同年7月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出されるべき期限よりも後,消費税の還付金額が50億円に満たないことを要件とし,同年8月末日を実行希望日とする貸付の実行日と同日付けで行われることが予定されていたものである。そして,同年7 ートが提出されるべき期限よりも後,消費税の還付金額が50億円に満たないことを要件とし,同年8月末日を実行希望日とする貸付の実行日と同日付けで行われることが予定されていたものである。そして,同年7月末日を基準日とする融資実 行上限額算定シートの提出期限は,「作成基準日の属する月の翌月第10営業日」(新コミットメントライン契約19条1項8号)である同年8月15日であった。同年6月30日に締結された本件各根抵当権設定契約は,上記の要件を満たさないものであり,本件担保供与条項において予定されていた設定日よりも前倒しにして締結されたものである。 したがって,本件各根抵当権設定契約は,新コミットメントライン契約における本件担保供与条項に基づき締結されたものではなく,詐害行為該当性については同日を基準として判断すべきである。 ウ詐害行為該当性以下のとおり,C株式会社は,自社が無資力であり,総債権者への弁済 ができなくなることを認識しながら,あえて本件各租税債権に優先する時期に本件各根抵当権設定契約を締結したというべきであるから,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は,詐害行為に該当する。 C株式会社の平成29年6月度の残高試算表では,資産は合計125億0731万5879円とされているところ,これに,①本件各不動産 に係る前記試算表上の簿価と被告株式会社B銀行が本件当時に算定していた本件各不動産の担保評価額(38億3191万4000円)との差額合計33億8184万3873円を加算し,②本件各課税処分により確定した納付税額に充当(本件充当)された,平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消費税等の還付金請求権の額69億77 79万3215円を減算すると,平成29年6月30日時点の り確定した納付税額に充当(本件充当)された,平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消費税等の還付金請求権の額69億77 79万3215円を減算すると,平成29年6月30日時点のC株式会 社の資産は,合計89億1136万6537円となる。他方,前記残高試算表では,負債は合計95億7856万9413円とされており,これに本件各租税債権の額合計33億7052万0685円を加算すると,同日時点のC株式会社の負債は,合計129億4909万0098円となる。 したがって,同日時点のC株式会社の純資産額はマイナス40億3772万3561円であることから,C株式会社は,本件各根抵当権設定契約を締結した時点で既に無資力であった。 仮に,本件各不動産の評価額として,被告株式会社B銀行が算定した担保評価額(38億3191万4000円)を採用することができな いとしても,本件各不動産の評価額は,原告提出の不動産鑑定書(以下「原告鑑定評価書」という。甲39)による鑑定評価額のとおり,53億1000万円である。同鑑定評価額を前提としても,本件各根抵当権設定契約を締結した時点におけるC株式会社の純資産額はマイナス25億5963万7561円であることから,同社が既に無資力 であったとの結論に変わりはない。 本件各租税債権の法定納期限等は,いずれも平成29年6月30日であるから(国税徴収法15条),同日受付の本件各根抵当権登記が経由された本件各根抵当権の被担保債権は,本件各租税債権に優先する(同法16条)。したがって,本件各根抵当権設定契約の締結により, 本件各租税債権への配当見込額は減少することになった。 D社長及び同人の息子でありC株式会社の常務取締役であるK(以下「K常務」といい,D社長と併せて 本件各根抵当権設定契約の締結により, 本件各租税債権への配当見込額は減少することになった。 D社長及び同人の息子でありC株式会社の常務取締役であるK(以下「K常務」といい,D社長と併せて「D社長ら」という。)は,本件各課税処分に係る調査の際に,C株式会社が破産する可能性がある旨を述べていたことなどを踏まえれば,遅くともJ税務署の職員らから 本件各課税処分に係る調査結果の説明を受けた平成29年6月23日 時点では,本件各租税債権の存在を認識し,C株式会社が債務超過になることを認識していたというべきである。 (被告株式会社A銀行の主張)ア詐害行為該当性の判断基準平成29年法律第44号による改正後の民法(以下「改正後民法」と いう。)424条の3は,債権者は,債務者による担保供与行為が,①債務者が支払不能の時に行われたものであるか(1項1号)又は債務者の義務に属せず若しくはその時期が債務者の義務に属しない行為であって,支払不能になる前30日以内に行われたものであること(2項1号),②債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた ものであること(1項2号,同条2項2号)のいずれにも該当する場合に限り,詐害行為取消請求をすることができると規定している。改正後民法が,破産法上の否認権制度を参考にしつつ,改正前民法424条に関する判例法理も踏まえて規定されたという立法経緯に鑑みれば,改正前民法424条の解釈においても改正後民法の上記規定を参照すべきで ある。 したがって,債務者による一部の債権者に対する担保供与行為は,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた場合に初めて詐害行為該当性が肯定されると解するのが相当である。 イ詐害行為該当性の判断の基 る一部の債権者に対する担保供与行為は,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた場合に初めて詐害行為該当性が肯定されると解するのが相当である。 イ詐害行為該当性の判断の基準時 以下の事実からすれば,被告らとC株式会社の間では,新コミットメントライン契約が締結された平成29年3月31日時点で,本件各根抵当権設定契約の締結が実質的に合意されていたというべきであるから,詐害行為該当性については,同日を基準として判断すべきである。そして,同日時点において,C株式会社は無資力ではなく,また,被保全債 権である本件各租税債権も発生していなかったのであるから,詐害行為 取消権の要件は充足しないことが明らかである。 被告株式会社A銀行は,C株式会社が平成28年7月課税期間以降の消費税の還付を留保されている状況の下では,何ら債権保全が図られないまま同社に対する融資を継続することは困難であったことから,新コミットメントライン契約の締結に際して,C株式会社に対し,本 件各不動産を担保として供与するよう求めた。その結果,被告らとC株式会社の間では,本件各不動産について根抵当権を設定することが合意され,担保供与の時期は消費税の還付が留保されてから1年後を目途とし,還付金額が50億円に満たなかった場合に担保設定手続(契約書の締結及び登記)を行うこととして,新コミットメントライ ン契約に本件担保供与条項が追加された。 このような経緯からすれば,C株式会社は,債権保全のために速やかに担保を供与する必要があることを理解していたというべきである。 本件担保供与条項では,平成29年7月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出されるべき期限において,平成28年8月 (7月分申告)以降申 あることを理解していたというべきである。 本件担保供与条項では,平成29年7月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出されるべき期限において,平成28年8月 (7月分申告)以降申告済の消費税のうち還付された金額が50億円に満たない場合という条件が付され,担保設定手続の時期については平成29年8月末日を実行希望日とする貸付の実行日と同日付とされている。これは,前記担保供与の条件が充足される場合には,本件貸付義務条項に基づき被告らの貸付義務が停止するものの,留保されて いた還付が順次行われているか,又は還付されることが確実である場合には,本件貸付義務条項ただし書に基づき,被告らがC株式会社に対する貸付けを実行することが可能であるため,このような場面を想定して規定されたものにすぎない。 ウ詐害行為該当性 仮に本件各根抵当権設定契約が締結された平成29年6月30日を基 準として詐害行為該当性を判断するとしても,以下の事情からすれば,本件各根抵当権設定契約の締結は詐害行為に該当しない。 以下のとおり,C株式会社は,平成29年6月30日時点においても,10億円程度の資産超過であり,無資力ではなかった。 a 被告株式会社B銀行が本件当時に査定した評価額は,銀行による 担保評価額として極めて保守的に見積もられたものである。C株式会社の資力の判断においては,このような担保評価額ではなく,市場価格を基準として判断されるべきである。 そして,被告株式会社A銀行が提出した査定報告書(以下「被告株式会社A銀行査定報告書」という。乙12)によれば,本件各不動産 の市場価格は,78億4000万円から87億1100万円前後である。そして,本件各不動産の市場価格についてこの中央値である82億7550 行査定報告書」という。乙12)によれば,本件各不動産 の市場価格は,78億4000万円から87億1100万円前後である。そして,本件各不動産の市場価格についてこの中央値である82億7550万円を採用すると,本件各不動産以外については原告の試算を前提としても,C株式会社は4億0586万2439円の資産超過であったというべきである。 b また,F物件,E物件及びG物件についても,市場価格を基準として評価すると,F物件については4億3893万6500円(原告による試算に用いられた額との差額1億2293万6500円),E物件については1億0500万円(原告による試算に用いられた額との差額800万円),G物件については3637万5000円(原告 による試算に用いられた額との差額87万5000円)であり,原告の試算より資産が合計1億3181万1500円増加する。 c さらに,本件各課税処分を前提とした場合,C株式会社は,平成28年並びに平成29年5月期事業年度に係る法人税,源泉所得税,地方法人税,法人事業税,地方法人特別税及び法人都民税の過誤納金 合計6億0966万7577円の還付を受けることができるため,原 告の試算より更に資産が増加する。 また,次の各事情によれば,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結は詐害性を有しない。 aC株式会社については,平成29年6月上旬頃までに,本件貸付義務条項の条件が充足され,被告らのC株式会社に対する貸付義務が 停止した。このため,C株式会社は,被告らに対し,同月30日までに,新コミットメントライン契約に基づく貸金返還債務の全額を現実に弁済する必要があった。したがって,本件各根抵当権設定契約の締結は,被担保債権の弁済期になされた担保提供である。そして 同月30日までに,新コミットメントライン契約に基づく貸金返還債務の全額を現実に弁済する必要があった。したがって,本件各根抵当権設定契約の締結は,被担保債権の弁済期になされた担保提供である。そして,一部の債権者に対する弁済が原則として詐害行為に該当しないとされてい ることを踏まえれば,このような弁済期になされた担保提供についても,原則として詐害行為にならないというべきである。 b 前記のとおり,C株式会社と被告らとの間では,新コミットメントライン契約の本件担保供与条項において,本件各不動産に対する根抵当権の設定が実質的に合意されており,かかる合意を踏まえて本件 各根抵当権設定契約が締結されたものである。 cC株式会社は,本件各根抵当権設定契約の締結当時,本件各不動産以外にもE物件,G物件等の財産を有しており,本件各不動産はC株式会社の唯一の財産ではなかった。 dC株式会社は,平成29年6月30日までに,被告らに対し,新 コミットメント契約に基づく貸金返還債務の全額を弁済する必要があり,事業を継続するために被告らに元本返済の猶予を了承してもらう必要があった。被告株式会社A銀行は,本件各不動産の担保価格を約30億円と評価して根抵当権の設定を受けているところ,かかる担保評価額は被告らの貸付総額50億円に満たないものである。そうする と,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は,事業継 続のためにやむを得ない担保供与であり,かつ,合理的な限度を超えないというべきである。 また,以下のとおり,C株式会社及び被告株式会社A銀行について,詐害行為取消しの主観的要件も充足しない。 aC株式会社は,被告らから新コミットメントライン契約による貸 付元本の返済猶予を得るために,やむを得ず本件 株式会社及び被告株式会社A銀行について,詐害行為取消しの主観的要件も充足しない。 aC株式会社は,被告らから新コミットメントライン契約による貸 付元本の返済猶予を得るために,やむを得ず本件各根抵当権設定契約を締結した。また,被告株式会社A銀行においても,新コミットメントライン契約における本件担保供与条項の条件を充足することが確実となった状況において,債権の保全を図ろうとすることは当然であるし,担保の提供を受けずに元本返済を猶予することはできないため本 件各根抵当権設定契約を締結したにすぎない。したがって,C株式会社及び被告株式会社A銀行は,通謀して他の債権者を害する意図を有していない。 bC株式会社は,本件各課税処分がされればそれに対する不服を申し立てる意向を示していたのであるし,その後,現に,別件税務訴訟 を提起して本件各課税処分の効力を争っているのであるから,平成29年6月30日の時点でC株式会社が債務超過の状態にあることが確定していたとはいえない。また,D社長は,本件各不動産の評価額が約100億円を超えるものと認識していた。 したがって,C株式会社は,自社には十分な資力があると考えてお り,本件各根抵当権設定契約を締結しても他の債権者を害することにはならないと考えていたから,詐害の意思はない。 エ本件充当の違法無効について被告ら及びC株式会社は,平成29年3月31日,原告がC株式会社に対して有していた租税債権への充当(本件充当)を主張する還付金請 求権のうち,平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消 費税等の還付金請求権及び同還付金に係る還付加算金請求権について,譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定した。本件譲渡担保権は,債権譲渡登記により第三者 9年2月課税期間の消 費税等の還付金請求権及び同還付金に係る還付加算金請求権について,譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定した。本件譲渡担保権は,債権譲渡登記により第三者対抗要件が具備されていることに加え,C株式会社の原告に対する債権譲渡通知により債務者対抗要件も具備されている。 したがって,原告による本件充当は違法無効である。そうすると,原告が充当したと主張する上記各課税期間の消費税等の還付金(還付加算金を含む。)は,本件譲渡担保権に基づき,被告株式会社A銀行に対して支払われなければならず,かかる支払がされれば,本件各根抵当権に係る被担保債権は完済され,本件各根抵当権は消滅することになるから, 本件各租税債権が害されることはない。 (被告株式会社B銀行の主張)ア詐害行為該当性の判断基準破産法上の否認権制度は,経済的危機に直面した債務者と取引をする相手方が否認権行使の可能性を意識して萎縮するおそれがあること に鑑み,平成16年法律第75号による改正によって,支払不能前の義務的な担保供与行為や,融資と同時になされた担保供与行為が否認の対象ではないことが明確化された(同法162条1項)。否認権の当該要件は,改正後民法424条の3においても,詐害行為取消権の要件として採用されている。 したがって,支払不能前にされた義務的な担保供与行為及び融資と同時になされた担保供与行為(いわゆる同時交換的行為)は,詐害行為取消権の対象とはならないと解するのが相当である。 改正後民法424条の3第1項2号においては,主観的要件として,債務者と受益者との通謀詐害意図が必要であるとされており,改正前 民法424条の条項を解釈するに当たっても,この考えが採り入れら れるべきで 第1項2号においては,主観的要件として,債務者と受益者との通謀詐害意図が必要であるとされており,改正前 民法424条の条項を解釈するに当たっても,この考えが採り入れら れるべきで,本件でも主観的要件として,通謀詐害意図が必要であるというべきである。 イ詐害行為該当性C株式会社については,平成29年5月末日を基準日とする融資実行上限額算定シートが提出される期限において,消費税の還付金額が 50億円に満たなかったことから,新コミットメントライン契約における被告らの貸付義務は既に停止していたものであり,同年6月末日に実行された個別貸付は,被告らにおいて新たな与信判断を行った上で実行されたものである。そして,この与信判断においては,当該個別貸付と本件各根抵当権設定契約の締結が同時に行われることが当然 の前提とされていた。 このように,本件各根抵当権設定契約は,既存の債務を担保するためのものではなく,新たな与信判断の下,担保権の設定と同時になされた新規の個別貸付債権のみを担保するものであるから,本件各根抵当権設定契約の締結は,同時交換的行為として詐害行為に該当しない。 また,本件各根抵当権設定契約の締結について,C株式会社と被告らとの間に通謀詐害意図はない。 本件各課税処分は,別件税務訴訟において,その一部又は全部が取り消される可能性がある。 また,被告株式会社B銀行が提出した不動産鑑定評価書(以下「被 告株式会社B銀行鑑定評価書」という。丙4)によれば,令和2年11月1日時点の本件各不動産の鑑定評価額は,72億0500万円であるところ,当該評価額は新型コロナウィルス感染症が拡大する中での賃料をベースとするものであり,近い将来賃料の増額も見込めることからすれば,本件各不動産の 不動産の鑑定評価額は,72億0500万円であるところ,当該評価額は新型コロナウィルス感染症が拡大する中での賃料をベースとするものであり,近い将来賃料の増額も見込めることからすれば,本件各不動産の本来的な価値は72億円を大きく上回 ることが明らかである。 以上によれば,本件各根抵当権設定契約の締結当時,C株式会社は無資力ではない可能性が高い。 本件各根抵当権設定契約の締結は,本件担保供与条項に基づくものであることから,本件各不動産は,新コミットメントライン契約が締結された平成29年3月31日時点で,被告らのみが優先弁済を受け る財産となり,他の債権者の共同担保ではなくなっていたというべきである。したがって,本件各根抵当権設定契約の締結行為は,新たに共同担保を減少させるものとはいえず,詐害行為に該当しない。 C株式会社が営業を継続していくために新規融資を受けるに当たっては,被告らの新たな与信判断の下,融資の実行までに本件各根抵当 権設定契約が締結されていることが条件とされたものである。本件各根抵当権設定契約は,C株式会社が被告らから新規融資を受け,営業を継続していくために必要不可欠な行為であったものであるから,詐害行為に該当しないというべきである。 ⑶ 争点3(本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性に関する被告らの認識 の有無)について(被告株式会社A銀行の主張)前記のとおり,C株式会社については,遅くとも平成29年6月上旬頃までに,本件貸付義務条項の条件が充足されたため,被告らのC株式会社に対する貸付義務が停止した。しかし,被告らは,C株式会社から,引き続き融 資の継続を要請されたため,債権保全措置の一環として本件各根抵当権設定契約を締結したにすぎず,本件各租税債権に優先して貸 する貸付義務が停止した。しかし,被告らは,C株式会社から,引き続き融 資の継続を要請されたため,債権保全措置の一環として本件各根抵当権設定契約を締結したにすぎず,本件各租税債権に優先して貸付債権の回収を図る意図は有していなかった。また,被告株式会社A銀行は,本件各根抵当権設定契約の締結に際し,O銀行株式会社から本件各不動産の市場実勢価格が約94億5000万円であるとの情報を聴取しており,また,C株式会社から も本件各不動産の評価額は100億円を超える旨の情報を聴取しており,C 株式会社が十分な資力を有するものと認識していた。 以上のとおり,被告株式会社A銀行は,本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当することを認識していなかった。 (被告株式会社B銀行の主張)被告らは,平成29年6月30日,本件各不動産だけでなく,C株式会社 が所有するその他の不動産についても根抵当権設定契約を締結したが,同日中に登記までを了したものは本件各不動産のみであった。仮に,被告らが,本件各租税債権に優先させる意図で本件各根抵当権設定契約を締結したのであれば,同日中に本登記までを了さなければ何ら意味がなかったのであるから,被告らがそのような意図を有していなかったことは明らかである。 また,被告株式会社B銀行は,本件各根抵当権設定契約の締結当時,C株式会社が法に従った免税取引を行っていたものと認識していたため,本件各課税処分にかかわらず,いずれは消費税等の還付金も還付されるものと考えており,C株式会社が無資力であるとの認識は有していなかった。 (原告の主張) D社長らは,平成29年6月23日,J税務署の職員らから,本件対象課税期間における金事業の売上が課税売上に該当するため,申告に係る消費税等の還付額 識は有していなかった。 (原告の主張) D社長らは,平成29年6月23日,J税務署の職員らから,本件対象課税期間における金事業の売上が課税売上に該当するため,申告に係る消費税等の還付額合計約88億円のうち,正当な還付額約10億円との差し引き約78億円が否認されること,約27億円の重加算税が賦課されることなどの説明を受け,同日,被告株式会社B銀行の行員らに対し,同調査結果を報告 した。また,被告らは,遅くとも同月26日までに,C株式会社から,同月末に課税処分された場合に本件対象課税期間における消費税等の本税額が合計約77億7100万円,重加算税額が合計約27億2000万円になる旨が記載された会計資料を交付された。さらに,被告らは,同月29日,D社長らから,同月30日午前11時頃にJ税務署の職員が課税処分に係る通知 をC株式会社に持参する予定であるとの報告を受けた。以上の事実によれば, 被告らは,遅くとも同月29日までに,本件各課税処分の予定と,本件各租税債権の額を認識したというべきである。 また,被告らが,遅くとも同月30日までに,C株式会社の信用格付けを破綻懸念先と評価し,同社が債務超過の状態にあるとの試算表等を作成していたことからすれば,被告らは,遅くとも同日までに,C株式会社が実質的 に債務超過の状態にあることを認識していたというべきである。 以上によれば,被告らは,本件各根抵当権設定契約の締結によって本件各租税債権が害されることを知りながら,本件各租税債権に優先することを意図して本件各根抵当権設定契約を締結したというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件各根抵当権設定契約の締結に係る事実 契約を締結したというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件各根抵当権設定契約の締結に係る事実経過ア D社長らは,平成29年6月23日,J税務署の職員らから,C株式会社が免税販売したとする金工芸品の販売は,外国人旅行客ではなく国内の 事業者に対するものであり,税務調査対象の課税期間である平成28年4月課税期間から平成29年2月課税期間(本件対象課税期間)における金事業の売上は課税売上に該当するため,本件各課税処分により,当時までの申告に係る消費税等の還付額合計約88億円のうち,正当な還付額約10億円との差し引きである約78億円が否認され,約27億円の重加算税 や延滞税等が賦課される結果,C株式会社に約40億円の追加納税義務が生じる旨の説明を受け,同内容が記載された資料を交付された(甲12)。 D社長らは,同日,被告株式会社B銀行の行員らに対し,前記調査結果を報告した(甲13)。 イ C株式会社は,J税務署の職員らから税務調査の結果に関する説明を受 けた後,会計事務所に対し,本件各課税処分がされた場合の納税額の計算 を依頼し,平成29年6月26日頃,同会計事務所から,「◎C株式会社H29.6月末更正決定の場合の納税集計」と題する資料(以下「本件会計資料」という。)を受領した。本件会計資料には,同月末日に課税処分がされた場合,本件対象課税期間における消費税等の本税額が合計約77億7100万円,重加算税額が合計約27億2000万円となる旨が記載 されていた。(甲15)C株式会社は,遅くとも同月26日までに,被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らに対し,本件会計資料を交付した(同)。 ウ 7億2000万円となる旨が記載 されていた。(甲15)C株式会社は,遅くとも同月26日までに,被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らに対し,本件会計資料を交付した(同)。 ウ被告株式会社B銀行の行員らは,平成29年6月26日,被告株式会社A銀行の行員らに対し,税務調査の結果を報告した。また,被告株式会社 B銀行の行員らは,その際,本件担保供与条項では同年8月末日に根抵当権設定の仮登記手続を行うこととされているが,早急に債権保全を図る必要があるとの意見を述べた。(甲14)被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らは,同日,D社長らに対し,本件担保供与条項では同年8月末日に根抵当権設定の仮登 記手続を行うこととされているが,現状を踏まえ,予定よりも早く担保を提供することができないか検討を依頼した(甲13,14)。 エ被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らは,平成29年6月29日,K常務から,同月30日午前11時頃に課税処分に係る通知が交付される予定である旨の報告を受けた(甲13,14)。 オ被告株式会社B銀行は,平成29年6月29日,C株式会社について,同年5月期の予想貸借対照表を作成した。同貸借対照表では,予想純資産額がマイナス75億4700万円とされていた。(甲13)また,被告株式会社B銀行は,同年6月30日,C株式会社の格付けを破綻懸念先に変更する旨の稟議を決裁した(同)。 カ被告株式会社A銀行は,平成29年6月30日,C株式会社について, 同年4月時点での含み損益確認表を作成した。同確認表では,C株式会社の実質自己資本(自己資本+劣後債務+税効果勘案後含み損益)がマイナス66億4700万円とされていた。(甲32)また,被告株式会社A銀行は 点での含み損益確認表を作成した。同確認表では,C株式会社の実質自己資本(自己資本+劣後債務+税効果勘案後含み損益)がマイナス66億4700万円とされていた。(甲32)また,被告株式会社A銀行は,遅くとも同日までに,C株式会社が課税処分により実質債務超過に陥る懸念があるとして,同社の信用格付け を破綻懸念先に変更した(甲30,31)。 キ C株式会社は,平成29年6月30日午前11時16分までに,J税務署から,本件各課税処分に係る通知書を交付された(前提事実⑷ア)。 D社長らは,同日午後2時30分頃,被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らに対し,本件各課税処分の内容及び滞納税額につ いて説明するとともに,J税務署の職員らから,分割納付を選択する場合には,原告において被告らに優先する担保権を設定する旨の説明を受けたことを報告した。被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らは,前記説明を受けた後,D社長らに対し,本件各不動産を含むC株式会社所有の不動産に根抵当権を設定するよう改めて依頼し,D社長 らはこれを了承した。(甲14,15)ク被告らは,平成29年6月30日午後3時から午後5時頃,C株式会社との間で,それぞれ,本件各根抵当権設定契約を締結した(前提事実⑷イ)。 被告ら及びC株式会社は,同日午後5時13分,本件各不動産につい て,本件各抵当権設定登記をオンラインで申請し,同日受付でこれを了した(前提事実⑷ウ)。 被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行の行員らは,本件各根抵当権設定登記を申請するまでの間,かなり慌てた様子であり,「時間がない,やばいやばい」と繰り返し,「何時何分までなら間に合うか」,「何時 何分までに書類を渡せばよいか」などと連絡を取り合っていた(甲15)。 するまでの間,かなり慌てた様子であり,「時間がない,やばいやばい」と繰り返し,「何時何分までなら間に合うか」,「何時 何分までに書類を渡せばよいか」などと連絡を取り合っていた(甲15)。 ⑵ 平成29年6月30日時点におけるC株式会社の資産状況ア資産について C株式会社の平成29年6月度の残高試算表(以下「平成29年6月度試算表」という。甲24)によれば,C株式会社の当月の資産は合計125億0731万5879円とされている。 平成29年6月度試算表では,C株式会社所有の各不動産については,合計19億5857万0127円(建物7億0495万2152円,建物附属設備5660万5398円,構築物315万6707円,土地11億9385万5870円)が計上されているが,当該額はいずれも簿価による金額である(甲24。これらの各不動産の市場性に即した評価 額については,後記⑶及び3⑶のとおり。)。 また,平成29年6月度試算表では,未収金の当月残高として合計76億3053万0626円が計上されているが,当該未収金には,本件充当の対象とされた平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消費税等の還付請求権の合計69億7779万3215円 も含まれている(甲23)。 イ負債について平成29年6月度試算表によれば,C株式会社の当月の負債は合計95億7856万9413円とされているが,同試算表には,本件各租税債権が負債として計上されていない(甲23,24)。 ⑶ C株式会社所有の各不動産についての評価ア本件各不動産について原告鑑定評価書(甲39)は,平成30年2月21日時点における本件各不動産の正常価格について,収益還元法(DCF法及び直接還元法)及び原価法 の各不動産についての評価ア本件各不動産について原告鑑定評価書(甲39)は,平成30年2月21日時点における本件各不動産の正常価格について,収益還元法(DCF法及び直接還元法)及び原価法を適用して各試算価格を求め,これらを比較検討し て鑑定評価額を決定するという方針の下に算定している。その上で, 原告鑑定評価書は,本件各不動産を収益還元法(DCF法)により53億1000万円,収益還元法(直接還元法)により56億2000万円と算定し,このうち将来のキャッシュフロー変動を明示することができるDCF法の方が説明性が高いとしてDCF法による値を収益価格として採用している。他方,原価法については,本件各不動産の 内の土地の積算価格(更地価格)を合計29億7900万円,建物の積算価格を合計3億4600万円,付帯費用の積算価格を4億1200万円とした上で,対象建物が容積率を超過し,完了検査も行われていないなど遵法性に問題があることも考慮して一体減価を施し合計価格を29億9000万円としている。その上で,本件各不動産は賃貸 物件であり,本件各不動産に係る市場参加者は費用性よりも収益性を重視して価格を決定するため,収益還元法よりも原価法の規範性は劣るとして,収益還元法による試算価格を採用し,最終的に本件各不動産の評価額を収益還元法(DCF法)による53億1000万円と決定している。 被告株式会社A銀行査定報告書(乙12)は,令和2年10月20日時点における本件各不動産の評価額を78億4000万円から87億1100万円前後と査定している。 被告株式会社A銀行査定報告書は,表紙を含めてわずか3丁と極めて簡素なものである上に,その査定は,不動産の鑑定評価に関する法律 に基づく正式な鑑定評価ではない。 00万円前後と査定している。 被告株式会社A銀行査定報告書は,表紙を含めてわずか3丁と極めて簡素なものである上に,その査定は,不動産の鑑定評価に関する法律 に基づく正式な鑑定評価ではない。また,被告株式会社A銀行査定報告書は,収益還元法のみを適用して査定評価額を決定しており,具体的な査定内容についても,費用を控除する前の年間賃料を表面利回りで除して評価額を算出するものの,「表面利回りで4.5~5.0%前後と推察されます」とするのみでその具体的な算出根拠が何ら示され ていない。 被告株式会社B銀行鑑定評価書(丙4)は,令和2年11月1日時点における本件各不動産の正常価格を収益還元法(直接還元法)と原価法による値を参酌することによって算定している。被告株式会社B銀行鑑定評価書は,収益還元法(直接還元法)による評価額については74億0600万円と算定し,原価法による評価額は,本件各不動 産の内の土地の更地価格を57億円,建物の積算価格を2億9000万円,付帯費用を0円とした上で,一体減価を施し53億9100万円と算定している。その上で,同評価書は,収益還元法による試算価格を重視し,最終的に本件各不動産の評価額を72億0500万円と決定している。 被告株式会社B銀行は,本件各根抵当権設定契約の当時,本件各不動産の価格を38億3191万4000円と評価していた(甲23)。 イその余の各不動産について(甲23,29)本件当時,被告株式会社A銀行は,E物件を9700万円と,被告株式会社B銀行は,7612万6000円と評価していた。 本件当時,被告株式会社A銀行は,F物件を3億1600万円と,被告株式会社B銀行は,3億0333万9000円と評価していた。 本件当時,被告株式会社A銀 2万6000円と評価していた。 本件当時,被告株式会社A銀行は,F物件を3億1600万円と,被告株式会社B銀行は,3億0333万9000円と評価していた。 本件当時,被告株式会社A銀行は,G物件(ただし,土地建物の全体。)を3550万円と評価していた。 H物件は,本件の後である平成29年9月27日,第三者に10 億6000万円で売却された。 2 争点1(被保全債権の存否)について⑴ 前提事実⑶アのとおり,C株式会社は,平成29年6月30日時点で,平成28年7月から平成29年4月課税期間に係る消費税等について,合計74億4444万3122円の還付申告をしていたが,同日,J税務署長から, 本件各課税処分を受けたものである。これにより,C株式会社について,本 件対象課税期間の消費税等の本税77億7172万7700円及び重加算税27億2008万8000円並びに平成26年6月1日から平成27年5月31日までの事業年度の法人税の本税5200円の合計104億9182万0900円の納付税額が確定した(甲12,16から18)。 また,前提事実⑶イのとおり,原告は,前記納付税額に,C株式会社が原 告に対して有していた還付金請求権合計71億2850万8715円を充当(本件充当)しており,本件充当後の納付税額に,平成29年6月30日時点までに確定した延滞税の額720万8500円を加算すると,C株式会社の本件各課税処分後の滞納税額は,別紙租税債権目録1記載のとおり,33億7052万0685円であることになる(甲2の1)。 したがって,原告は,同日当時,C株式会社に対し,合計33億7052万0685円の本件租税債権を有していたものと認められる。 ⑵アこれに対し,被告らは,別件税務訴訟が現に係属中であるこ したがって,原告は,同日当時,C株式会社に対し,合計33億7052万0685円の本件租税債権を有していたものと認められる。 ⑵アこれに対し,被告らは,別件税務訴訟が現に係属中であることから,原告が主張する本件各租税債権の存在は立証されていない旨主張する。 しかし,行政処分は,たとえ違法であっても,その違法が重大かつ明 白で当該処分を当然無効ならしめるものと認めるべき場合を除いては,適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解するのが相当である(30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2070頁参照)ところ,被告らにおいて,本件各課税処分に重大かつ明白な違法があることを何ら主張するもので はなく,また,本件全証拠によっても,本件各課税処分につき,重大かつ明白な違法と評価される事情は認められない。そうすると,本件各課税処分は完全にその効力を有するものと解されるところ,同処分の効力を前提とした場合に原告が本件各租税債権を有するものと認められることは,前記⑴のとおりである。 したがって,被告らの前記主張は採用することができない。 イまた,被告株式会社A銀行は,原告が主張する本件各租税債権を所与のものとして原告の詐害行為取消請求が認容され,その後に別件税務訴訟において本件各課税処分が取り消された場合,真実は被保全債権が存在しなかったにもかかわらず,本件根抵当権設定契約が詐害行為として取り消される結果となり,不当であるとか,本件各課税処分に公定力が認められる としても,行政行為の法効果を攻撃しない限り,取消訴訟以外の訴訟で当該行政行為について争うことは公定力に抵触するものではない等と主張する。 しかし,後に別件税務訴訟で本件各課税処分が取り消された場合には,再審事由 の法効果を攻撃しない限り,取消訴訟以外の訴訟で当該行政行為について争うことは公定力に抵触するものではない等と主張する。 しかし,後に別件税務訴訟で本件各課税処分が取り消された場合には,再審事由(民訴法338条1項8号)に該当すると解する余地があるこ とに加えて,被告株式会社A銀行は,本件訴訟において,本件各課税処分の違法事由を何ら主張立証しておらず,本件各租税債権の存在を疑わせる事情は窺われないのであるから,本件訴訟においては本件各租税債権が存在するものとして判断するほかない。 3 争点2(本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性)について ⑴ 詐害行為該当性の判断基準ア債務者がある債権者のために根抵当権を設定するときは,当該債権者は,担保の目的物につき他の債権者に優先し,被担保債権の弁済を受けることができる一方で,他の債権者の共同担保が減少することになる。その結果,債務者の残余財産では,他の債権者に対し,十分な弁済をなし得ないこと になるときは,他の債権者は,従前より不利益な地位に立つことになり,その利益を害されることとなる。このため,債務者が,これを知りながらあえて根抵当権を設定することは,詐害行為として取消しの対象になると日第二小法廷判決・民集11巻12号1832頁参照)。 イこれに対し,被告らは,破産法の否認権制度との均衡や改正後民法にお ける詐害行為取消請求の立法経緯及び要件等を根拠に,改正前民法424条の解釈においても,改正後民法424条の3の規定を参照すべきであるなどとして,一部の債権者に対する担保供与行為は,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた場合に初めて詐害性が肯定されると主張する。 しかし,本件各根抵当権設定契約の締結は,改正後民 の債権者に対する担保供与行為は,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた場合に初めて詐害性が肯定されると主張する。 しかし,本件各根抵当権設定契約の締結は,改正後民法423条の3の規定の施行日(令和2年4月1日)の前に行われた行為であるところ,平成29年法律第44号の附則19条においては,施行日前になされた詐害行為に係る詐害行為取消権については,なお従前の例によるとされていることも踏まえると,本件各根抵当権設定契約の締結について,直 ちに改正後民法の規定を参照すべきものということはできない。また,担保提供行為は債務者の義務ではない以上,これを弁済と同視することもできず,債務者と受益者の間の通謀や害意まで必要とされると解することはできない。 被告株式会社B銀行は,義務的な担保提供行為及び融資と同時にされ た担保提供行為(いわゆる同時交換的行為)は詐害行為取消権の対象とならないとも主張するが,本件各根抵当権設定契約の締結が詐害行為に該当するかの判断の一事情として考慮するのが相当である。 ⑵ 詐害性行為該当性の判断の基準時ア本件各根抵当権設定契約は,平成29年6月30日に締結されたもので あるが,被告株式会社A銀行は,被告らとC株式会社との間では,新コミットメントライン契約が締結された同年3月31日時点で,本件各根抵当権契約の締結が実質的に合意されていたとして,詐害行為該当性については,同日を基準として判断すべきである旨主張するため,この点について検討する。 イ 基準日とする融資実行上限額算定シートの提出期限である同年8月15日(新コミットメントライン契約第19条⑴⑧)において,平成28年以降に申告済みの消費税のうち還付された金額が50億円に満たないことを条 準日とする融資実行上限額算定シートの提出期限である同年8月15日(新コミットメントライン契約第19条⑴⑧)において,平成28年以降に申告済みの消費税のうち還付された金額が50億円に満たないことを条件に,平成29年8月末日付けで抵当権設定契約を締結することを約するものであり,当該約定日に先立つ根抵当権の設定については何ら規定され ていない。 また,D社長が被告株式会社A銀行に対し担保提供を申し出た同年6月30日付けの依頼書(甲15別添5)においても,本件各根抵当権設定契約の締結が本件担保供与条項に基づくものであることを窺わせる記載は一切存しない上,被告株式会社A銀行が同年9月26日付けで作成したC株 式会社に関する突発破綻発生要因検証シート(甲33)においても,C株式会社が本件各課税処分を受けた際には本件担保供与条項が発動されなかった旨が記載されている。 以上に加え,被告株式会社B銀行の行員であるL(以下「L」という。)は,本件各課税処分後に東京国税局で実施された事情聴取において,予定 された時期よりも早く担保供与を受けるためにはC株式会社との個別交渉が必要となり,同社から同意を得られなければ根抵当権を設定できなかった旨供述すること(甲13),被告株式会社A銀行の行員である証人Mも,本件各担保供与条項の内容として約定日に先立つ根抵当権の設定は予定されていなかった旨証言する(証人M・23から24頁)ことも併せ考える と,被告らとC株式会社の間でも,本件担保供与条項の内容として前記約定日に先立ち根抵当権を設定することは想定されていなかったというべきである。 ウ以上によれば,平成29年6月30日になされた本件各根抵当権設定契約の締結が,新コミットメントライン契約が締結された時点で実質的に合 意されて は想定されていなかったというべきである。 ウ以上によれば,平成29年6月30日になされた本件各根抵当権設定契約の締結が,新コミットメントライン契約が締結された時点で実質的に合 意されていたということはできず,同日時点での新たな合意に基づきなさ れたものと認めるのが相当である。したがって,被告株式会社A銀行の前記主張は採用することができず,詐害行為該当性の有無を判断するに当たっては,同日を基準として判断すべきである。 ⑶ C株式会社所有の各不動産の価格ア本件各不動産について 本件各不動産について,原告鑑定評価書は平成30年2月21日時点における価格を53億1000万円と,被告株式会社A銀行査定報告書は令和2年10月20日時点における価格を78億4000万円から87億1100万円前後と,被告株式会社B銀行鑑定評価書は令和2年11月1日時点における価格を72億0500万円とそれぞれ 査定しており,被告株式会社B銀行は本件各根抵当権設定契約当時38億3191万4000円と評価していた(認定事実⑶ア)。 この点,原告鑑定評価書の算定の過程は認定事実⑶アに記載のとおりであって,その算定の過程や根拠となる数値に特段不合理な点は見受けられない。 他方,被告株式会社A銀行査定報告書による査定は,不動産鑑定評価基準に準拠したものでない上に,収益還元法のみを適用して評価額を決定しているにもかかわらず,採用する表面利回りの具体的算出根拠が示されていないなど(認定事実⑶ア),その査定の客観性には多大な疑問があり,およそ採用できない。 被告株式会社B銀行鑑定評価書は,収益還元法(直接還元法)と原価法による値を参酌しているところ(認定事実⑶ア),原告鑑定評価書の直接還元法による収益価格は があり,およそ採用できない。 被告株式会社B銀行鑑定評価書は,収益還元法(直接還元法)と原価法による値を参酌しているところ(認定事実⑶ア),原告鑑定評価書の直接還元法による収益価格は56億2000万円であり,被告株式会社B銀行鑑定評価書の直接還元法による収益価格は74億0600万円となっている。このような差異が生じた主たる原因は,原告鑑 定評価書では還元利回りが5.4%とされているのに対し,被告株式 会社B銀行鑑定評価書では還元利回りが4.0%とされていることにあるものと認められる。そこで,両者の還元利回りの算定根拠を検討するに,原告鑑定評価書は,本件各不動産の周辺地域における還元利回りを参照して基準利回りを算定(3.6%)した上,用途(0. 2%),立地(0.2%),築年数等(0.6%)及び建物の遵法性等 (0.8%)を考慮して当該基準利回りの数値を修正して,還元利回りの数値が決定されている。他方で,被告株式会社B銀行鑑定評価書は,本件各不動産の周辺地域における不動産信託投資物件の利回りを参照して本件各不動産の還元利回りの数値を決定しているが,本件各不動産の遵法性については不明な部分があると指摘するのみで,この 点が還元利回りの算定に勘案された形跡は認められないし,築年数をどのように還元利回りに反映させたのかも明らかではない。このように,両者が算定した還元利回りは,建物の遵法性や築年数等を勘案した修正の有無によって差異が生じたものと推察されるところ,一般に建物の遵法性や築年数等が不動産の収益の確実性に影響を与えること は否定し得ないことからすれば,被告株式会社B銀行鑑定評価書の採用する還元利回りの相当性には疑問があるところで,その信用性は,原告鑑定書に比して劣るものと言わざるを得ない に影響を与えること は否定し得ないことからすれば,被告株式会社B銀行鑑定評価書の採用する還元利回りの相当性には疑問があるところで,その信用性は,原告鑑定書に比して劣るものと言わざるを得ない(なお,被告株式会社B銀行鑑定評価書の還元利回りに,原告鑑定評価書と同様,建物の遵法性等による0.8%の上方修正を加え,本件各不動産の周辺地 (東京都千代田区fg丁目h番外)の1㎡当たりの単価が平成29年7月から令和2年7月までの間に12.7%上昇したこと(甲43)を踏まえ,当該比率を用いて時点修正した場合,その収益価格は約53億8000万円と試算されることになり,原告鑑定評価書の直接還元法による収益価格と近似する。)。 被告株式会社B銀行の担保評価額である38億3191万4000 円については,その根拠も明らかではなく,採用できない。 以上によれば,本件各不動産の価格は原告鑑定評価書を基準に決定すべきところ,原告鑑定評価書の評価時点が平成30年2月21日であることに加え,本件各不動産の内の土地の価格については平成29 年以降上昇基調にあると考えられること(甲43)を考慮すれば,本件根抵当権設定契約が詐害行為に該当するかを判断するに当たっては,平成29年6月30日時点における本件各不動産の評価額が53億1000万円を上回らないものとして検討するのが相当である。 イその他の各不動産について E物件,F物件及びG物件については,被告株式会社A銀行及び被告株式会社B銀行が本件当時それぞれ算定していた評価額のうち高いもの(E物件について9700万円,F物件について3億1600万円,G物件を3550万円。G物件については,共有持分によらず全体。)を採用することとし,H物件については,C株式会社が平 額のうち高いもの(E物件について9700万円,F物件について3億1600万円,G物件を3550万円。G物件については,共有持分によらず全体。)を採用することとし,H物件については,C株式会社が平成29年9月27日 に第三者に売却したところ,当該売却代金を採用する(甲23,29)こととする。この点について,被告株式会社A銀行は,自身が提出した査定報告書(乙18から20)に基づき,本件各不動産以外の各不動産の評価額はさらに高額である旨主張するが,前記アで説示したと同様にこれらの査定報告書を採用することはできない。 ⑷ 詐害行為該当性以上を前提として,本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当するか否かを検討する。 まず,本件各根抵当権設定契約の締結当時のC株式会社の資産状況についてみるに,認定事実⑵アのとおり,C株式会社の平成29年6月 度試算表では,C株式会社の当月の資産は合計125億0731万58 79円とされている。 この点,平成29年6月度試算表におけるC株式会社所有の各不動産の勘定科目には合計19億5857万0127円が計上されているが,当該額はいずれも簿価による金額であることから,資産の算出に際しては,同試算表に計上された各不動産の額と市場性に即した評価額と の差額を計算し,これを同試算表に計上された資産の合計額に加算する必要がある。そして,前記⑶のとおり,平成29年6月30日時点の本件各不動産の評価額は53億1000万円を上回らず,また,本件各不動産以外のC株式会社所有の各不動産の評価額は合計15億0850万円(E物件につき9700万円,F物件につき3億1600 万円,G物件につき3550万円,H物件につき10億6000万円)であると認められるから,C株 の各不動産の評価額は合計15億0850万円(E物件につき9700万円,F物件につき3億1600 万円,G物件につき3550万円,H物件につき10億6000万円)であると認められるから,C株式会社所有の各不動産に係る評価額と平成29年6月度試算表に計上された額との差額は,48億5992万9873円(C株式会社所有の各不動産の評価額合計68億1850万円-同不動産の勘定科目の額合計19億5857万0127円) を超えないと認められる(①)。 また,認定事実⑵アのとおり,平成29年6月度試算表の未収入金の当月残高には合計76億3053万0626円が計上されているが,当該未収入金には,本件充当の対象とされた平成28年7月課税期間から平成29年2月課税期間の消費税等の還付金請求権の額合計69 億7779万3215円も含まれているため,C株式会社の資産を算出するに際しては,前記未収入金の計上額から当該充当額を控除する必要がある(②)。 以上を踏まえると,平成29年6月30日時点でのC株式会社の資産は合計103億8945万2537円(125億0731万5879 円〔平成29年6月度試算表上の資産〕+48億5992万9873 円〔前記①〕-69億7779万3215円〔前記②〕)を超えないと認められる。 他方,認定事実⑵イのとおり,平成29年6月度試算表によれば,C株式会社の当月の負債は合計95億7856万9413円とされているが,平成29年6月度試算表には本件各租税債権が負債として計 上されていないことから,負債の計上額に本件各租税債権の額合計33億7052万0685円を加算する必要がある(③)。そうすると,平成29年6月30日時点でのC株式会社の負債は,合計129億4909万0098円(95億7 ,負債の計上額に本件各租税債権の額合計33億7052万0685円を加算する必要がある(③)。そうすると,平成29年6月30日時点でのC株式会社の負債は,合計129億4909万0098円(95億7856万9413円〔平成29年6月度試算表上の負債〕+33億7052万0685円〔前記③〕)である と認められる。 以上によれば,C株式会社は,平成29年6月30日時点において,少なくとも25億5963万7561円の債務超過であったものと認められる。 したがって,C株式会社は,本件各根抵当権設定契約を締結した時点 で既に無資力であったと認められることから,本件各根抵当権設定契約の締結行為が被告ら以外の他の債権者の利益を害するものであることは明らかというべきである。 なお,被告株式会社A銀行は,本件各課税処分を前提とした場合,C株式会社は,平成28年並びに平成29年5月期事業年度に係る法人 税,源泉所得税,地方法人税,法人事業税,地方法人特別税及び法人都民税の過誤納金合計6億0966万7577円の還付を受けることができる旨を主張するが,減額更正等がされた訳ではない上に,仮に前記過納金をC株式会社の資産に加算したとしても,なお負債の額が上回ることが明らかであるから,このことをもって前記認定判断が左 右されるものではない。 イそして,認定事実⑴ア及びイのとおり,C株式会社は,平成29年6月23日にJ税務署の職員らから本件各課税処分の見通しについて説明を受け,同月26日には,同説明内容を踏まえて会計事務所において作成された本件会計資料を入手していた。また,K常務は,本件各課税処分後に東京国税局で実施された事情聴取において,J税務署の職員らから税務調査 の結果を説明された同月23日以降は,D社長も自 て作成された本件会計資料を入手していた。また,K常務は,本件各課税処分後に東京国税局で実施された事情聴取において,J税務署の職員らから税務調査 の結果を説明された同月23日以降は,D社長も自身もC株式会社が破産するしかないと考えていた旨を供述している(甲15)。これらの事実を踏まえると,C株式会社は,遅くとも同月30日時点までには,本件各課税処分により自社が無資力の状態に陥る可能性を具体的に認識していたと認められる。これに加え,本件各不動産がC株式会社の総資産の半分以上 を占める優良資産であることからすれば,C株式会社においても,その具体的な評価額までは認識していなかったとしても,本件各不動産が自社の債権者にとって重要な引当資産であり,本件各不動産以外の資産のみでは被告ら以外の債権者らに対して十分な弁済ができなくなることについては認識していたものと認めるのが相当である。 したがって,C株式会社は,残余の財産では債権者に対して十分な弁済をすることができなくなることを認識しながら,本件各根抵当権設定契約を締結したことが認められる。 ウ以上によれば,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は,詐害行為に該当するといえる。 エ以上に対し,被告らは,①担保に供された本件各不動産がC株式会社の唯一の財産ではないこと,②C株式会社と被告らとの間では,本件担保供与条項において,本件各不動産に対する根抵当権の設定が実質的に合意されており,かかる合意を踏まえて本件各根抵当権設定契約が締結されたたものであること,③本件各根抵当権設定契約の締結が,C株式会社の事業 継続のためにやむを得ない担保供与であり,かつ,合理的な限度を超えな いものであること,④融資と同時にされた担保提供行為(いわゆる同時交 各根抵当権設定契約の締結が,C株式会社の事業 継続のためにやむを得ない担保供与であり,かつ,合理的な限度を超えな いものであること,④融資と同時にされた担保提供行為(いわゆる同時交換的行為)に該当することや弁済期にされた担保提供であること等を指摘し,本件各根抵当権設定契約の締結は詐害行為に該当しない旨主張するため,以下検討する。 前記①について 前提事実⑴ウのとおり,C株式会社は,本件各不動産以外にも,E物件,F物件,G物件及びH物件を所有していたものの,前記⑶のとおり,本件各不動産の評価額は53億1000万円を超えず,本件各根抵当権設定登記が了された時点で既に第1順位の根抵当権(極度額2億円)及び第2順位の根抵当権(極度額27億円)が設定されていた (前提事実⑴ウ)ことを考慮しても,なお20億円を超える担保価値を有していたものであり,本件各根抵当権設定契約の締結行為は,他の債権者の共同担保を相当に減少させる行為であったというべきである。 このことを踏まえれば,本件各不動産がC株式会社の唯一の財産では なかったことをもって,本件各根抵当権設定契約の締結行為の詐害性を否定すべき事情と評価することはできない。 前記②について前記⑵に説示したとおり,本件各根抵当権設定契約は,本件担保供与条項に基づき締結されたものではなく,平成29年6月30日時点で の新たな合意に基づき締結されたものと認めるのが相当であり,本件担保供与条項において,本件各根抵当権設定契約の締結が実質的に合意されていたと認めることはできない。 前記③についてa 本件各租税債権は,法定納期限等が平成29年6月30日であるこ とから(国税徴収法15条),同日までに納税者の財産上に設定され た根抵当権 ことはできない。 前記③についてa 本件各租税債権は,法定納期限等が平成29年6月30日であるこ とから(国税徴収法15条),同日までに納税者の財産上に設定され た根抵当権の被担保債権との関係では劣後する(同法16条)。 前提事実⑷イ及びウのとおり,被告ら及びC株式会社は,本件各租税債権の法定納期限等の当日に本件各根抵当権設定契約を締結し,その登記を了したところ,これにより,被告らが有する貸付債権は本件各租税債権との関係で優先する結果になったものであるが,仮に本件 各根抵当権の設定登記を了するのが1日でも遅れていれば,本件各租税債権に劣後する結果になっていたものである。 そして,認定事実⑴エからクのとおり,被告らは,同月29日,C株式会社から,同月30日午前11時頃に本件各課税処分に係る通知が交付される予定である旨の報告を受け,同日には,かなり慌てた様 子で,「時間がない,やばいやばい」と繰り返し,「何時何分までなら間に合うか」,「何時何分までに書類を渡せばよいか」などと連絡を取り合いながら,オンラインによる登記申請の最終受付時刻である午後5時15分(甲37)の直前に,本件各抵当権設定登記をオンライン申請したことが認められる。 以上の事実によれば,被告らは,同日中に本件各根抵当権の設定登記を了さなければ,被告らの有する貸付債権が本件各租税債権に劣後する結果となることを認識しており,本件各租税債権に優先して債権回収を図ることを主たる目的として本件各根抵当権設定契約を締結したと認めるのが相当である。 本件各根抵当権設定契約の締結は,他の債権者の共同担保を相当に減少させる行為であったというべきであり(前記),このように本件各租税債権に優先して債権回収を図ることを主たる目的として本件 本件各根抵当権設定契約の締結は,他の債権者の共同担保を相当に減少させる行為であったというべきであり(前記),このように本件各租税債権に優先して債権回収を図ることを主たる目的として本件各根抵当権設定契約を締結したとの担保供与の動機・目的も踏まえると,本件各根抵当権設定契約の締結は,債権保全の手段・方法として の相当性を欠くものであったと言わざるを得ない。 b これに対し,被告株式会社B銀行は,仮に,被告らが,本件各租税債権に優先することを意図して根抵当権設定契約を締結したのであれば,平成29年6月30日中に登記を了する必要があったが,被告らは,本件各不動産以外の不動産については同日以降に登記を了しており,不自然である旨を主張する。確かに,前提事実⑷エのとおり, 被告ら及びC株式会社は,同年7月11日から同年8月4日までの間に,E物件,F物件及びG物件について,それぞれ,被告らを権利者とする抵当権設定本登記を了したものである。しかし,被告株式会社A銀行の行員である宮坂は,登記申請の時期に差異が生じた原因について,時間的に間に合わなかったためである旨を証言するところ(証 人L・17頁),当該証言は,前記のとおり,本件各根抵当権設定登記の申請が最終受付時刻のわずか2分前であったこととも整合するものである。そして,被告らは,上記各不動産について,同年6月30日の翌営業日である同年7月3日に被告らを権利者とする抵当権設定の仮登記を了していた(前提事実⑷エ)ことも踏まえると,被告らは, 登記申請が最終受付時刻に間に合わなかったため,E物件,F物件及びG物件について同年6月30日中に登記申請ができなかったものであり,仮に時間的余裕があれば,上記各不動産についても同日に抵当権設定の登記が了されてい 付時刻に間に合わなかったため,E物件,F物件及びG物件について同年6月30日中に登記申請ができなかったものであり,仮に時間的余裕があれば,上記各不動産についても同日に抵当権設定の登記が了されていたものと考えるのが自然であるから,被告株式会社B銀行の主張するところをもって,前記認定判断が左右され るものではない。 c 以上によれば,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結は,その動機・目的や手段・方法において,詐害性を否定すべき事情があるとはいえない。 前記④について C株式会社の被告らに対する新コミットメントライン契約に基づく 貸金債務は平成29年4月以降毎月末日限り返済期限が到来しており(前提事実⑵エ),本件各根抵当権設定契約が締結された同年6月末にも,旧債務の返済と新たな貸付が行われているところ,本件各根抵当権設定契約もこの際に締結されている。 もっとも,コミットメントライン契約に基づく融資は,旧コミット メントライン契約の当時から,毎月,旧融資の返済と新融資の実行を差引計算で行われていたものであって(前提事実⑵エ),被告らのC株式会社に対する貸付は同年3月31日までには貸付極度額の50億円に達し,新たな貸付はされなくなっていた。そうすると,毎月末日に形式的には行われていた旧融資の返済と新たな貸付は,その実質にお いては,旧融資の返済期を繰り延べたことと径庭がないものである。 本件貸付義務条項による被告らの貸付義務は同年6月末日までには停が,貸付が義務的であるかは以上のような実質を左右しない。 このような実質に加えて,本件各根抵当権設定契約の締結は,銀行 取引等を被担保債権の範囲とする根抵当権であることも考慮すれば,本件各根抵当権設定契約の締結は,同日以前に存在 左右しない。 このような実質に加えて,本件各根抵当権設定契約の締結は,銀行 取引等を被担保債権の範囲とする根抵当権であることも考慮すれば,本件各根抵当権設定契約の締結は,同日以前に存在した旧来の債務について担保を提供したことと何ら変わるものではないというべきで,融資と同時にされた担保提供行為(いわゆる同時交換的行為)に該当するとはいえない。同様に,このような実質に加えて,担保提供は債 務者の義務ではないことを併せ考えれば,弁済期にされた担保提供であるとしても詐害行為となるというべきである。 オ以上の他にも,被告株式会社A銀行においては本件充当が違法無効であるとも主張する。しかし,仮に本件充当が無効であれば原告の有する租税債権の額が増えることとなる上に,本件根抵当権の被担保債権が当然に消 滅するものでもなく,本件各根抵当権設定契約が締結されたことで原告を 含む他の債権者の共同担保が減少したことにも変わりがない。本件充当の有効性は,原告と被告らの間で別途解決されるべき問題であって,本件の帰趨に影響するものではない。その余にも被告らは本件各根抵当権設定契約の締結が詐害行為に該当しないことを縷々主張するが,以上に説示したところに照らし,いずれの主張を考慮しても,本件各根抵当権設定契約の 締結の詐害性が否定されるものとはいえない。 ⑸ 小括以上によれば,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は,原告との関係で詐害行為に該当するものと認められる。 4 争点3(本件各根抵当権設定契約の詐害行為該当性に関する被告らの認識の 有無)について被告らは,①被告らのC株式会社に対する貸付義務が停止したことに伴い,債権保全措置として本件各根抵当権設定契約を締結したにすぎず,本件各租税債権に優 に関する被告らの認識の 有無)について被告らは,①被告らのC株式会社に対する貸付義務が停止したことに伴い,債権保全措置として本件各根抵当権設定契約を締結したにすぎず,本件各租税債権に優先して貸付債権の回収を図る意図は有していなかった,②本件各根抵当権設定契約を締結した時点において,C株式会社が十分な資力を有するもの と認識していたとして,本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当することを認識していなかった旨主張する。 ⑴ しかし,前記3⑷エのとおり,被告らは,本件各租税債権に優先して債権回収を図ることを主たる目的として本件各根抵当権設定契約を締結したものと認められるのであって,被告らの前記①の主張は,採用することができ ない。 ⑵ また,認定事実⑴カのとおり,被告株式会社A銀行は,本件各根抵当権設定契約が締結された平成29年6月30日と同日に,C株式会社について,同年4月時点での含み損益確認表を作成しており,同確認表では,C株式会社の実質自己資本(自己資本+劣後債務+税効果勘案後含み損益) がマイナス66億4700万円とされていたこと,遅くとも同日までに, C株式会社が課税処分により実質債務超過に陥る懸念があるとして,同社の信用格付けを破綻懸念先に変更したことが認められる。また,同オのとおり,被告株式会社B銀行は,同年6月29日,C株式会社について,同年5月期の予想貸借対照表を作成しており,同貸借対照表では,予想純資産額がマイナス75億4700万円とされていたこと,同月30日,C株 式会社の格付けを破綻懸念先に変更する旨の稟議を決裁したことが認められる。これらの事実を踏まえると,被告らは,本件各根抵当権設定契約を締結した時点で,C株式会社が無資力であることを認識していたものと認 会社の格付けを破綻懸念先に変更する旨の稟議を決裁したことが認められる。これらの事実を踏まえると,被告らは,本件各根抵当権設定契約を締結した時点で,C株式会社が無資力であることを認識していたものと認めるのが相当である。 これに対し,被告株式会社A銀行は,本件各根抵当権設定契約の締結に 際し,O銀行株式会社及びC株式会社から,本件各不動産の評価額が100億円程度であるとの情報を聴取しており,これらの情報を踏まえてC株式会社は無資力ではないものと認識していた旨主張する。しかし,被告株式会社A銀行が本件各不動産の評価額に関する前記情報を聴取したのは同年6月29日であるところ(乙17),これは,被告株式会社A銀行が,前 記含み損確認表を作成し,C株式会社の信用格付けを破綻懸念先に変更した前日である。そうすると,被告株式会社A銀行は,C株式会社らから聴取した情報を希望的観測以上のものとしては受け止めておらず,これも踏まえた上で,被告らから報告を受けた税務調査の結果(認定事実⑴ア)や本件会計資料(同イ)と併せて,C株式会社の実質自己資本(自己資本+ 劣後債務+税効果勘案後含み損益)をマイナスと判断し,同社の信用格付けを破綻懸念先に変更したと認めるのが相当である。したがって,被告株式会社A銀行の前記主張は採用することができない。 また,被告株式会社B銀行は,C株式会社が法に従った免税取引を行っていると認識していたため,本件各課税処分にかかわらず,いずれは消費 税等の還付金も還付されるものと考えており,C株式会社が無資力である との認識は有していなかった旨を主張する。しかし,被告株式会社B銀行が本件各租税債権に優先させる意図で本件各根抵当権設定契約を締結したと認められることは既に判示のとおりであって,当該事実から との認識は有していなかった旨を主張する。しかし,被告株式会社B銀行が本件各租税債権に優先させる意図で本件各根抵当権設定契約を締結したと認められることは既に判示のとおりであって,当該事実からすれば,被告株式会社B銀行が,本件各課税処分の効力を前提として本件各根抵当権設定契約を締結したことは明らかというべきである。したがって,被告株 式会社B銀行の前記主張は採用することができない。 ⑶ 以上によれば,被告らが,C株式会社による本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当することを認識していなかったものとは認められない。 第4 結論 よって,原告の請求はいずれも理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第26部 裁判長裁判官小田真治 裁判官芦田泰裕 裁判官中原諒也 (別紙)不動産目録1,(別紙)不動産目録2,(別紙)不動産目録3,(別紙)不動産目録4,(別紙)不動産目録5,(別紙)登記事項目録及び(別紙)租税債権目録1はいずれも記載省略
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