- 1 -平成26年10月29日判決言渡平成25年(行ウ)第126号行政機関保有個人情報不開示決定処分取消等請求事件 主文 1 本件訴えのうち,金融庁長官が原告に対して平成25年4月30日付けでした行政機関保有個人情報一部不開示決定に係る不開示情報の開示決定の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 金融庁長官が原告に対して平成25年4月30日付けでした行政機関保有個人情報一部不開示決定(以下「本件一部不開示決定」という。)のうち,別紙2~37の各文書について,別紙1「不開示部分目録」の「不開示部分」欄記載の各部分に記載された情報(以下「本件不開示情報」という。)を不開示とした部分を取り消す。 2 金融庁長官は,原告に対し,本件不開示情報を開示する旨の決定をせよ。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,原告が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)に基づき,金融庁長官に対し,A株式会社(以下「A」という。)等の保険会社に関する原告の苦情申出に係る個人情報の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行ったところ,金融庁長官から本件一部不開示決定を受けたため,本件一部不開示決定のうち,本件不開示情報を不開示とした部分が違法であるとしてその取消しを求めるとともに,本件不開示部分を開示する旨の決定の義務付けを求める事案である。 - 2 - 2 法の定め(1) 個人情報等の定義ア 「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう(法2条2項)。 イ 「保 人情報等の定義ア 「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう(法2条2項)。 イ 「保有個人情報」とは,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして,当該行政機関が保有しているものをいう(同条3項本文)。 ウ個人情報について「本人」とは,個人情報によって識別される特定の個人をいう(同条5項)。 (2) 開示請求何人も,法の定めるところにより,行政機関の長に対し,当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる(法12条1項)。 (3) 開示義務行政機関の長は,法12条1項の規定による保有個人情報の開示請求があったときは,開示請求に係る保有個人情報に法14条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが含まれている場合を除き,開示請求をした者(以下「開示請求者」という。)に対し,当該保有個人情報を開示しなければならない(法14条柱書き)。 (4) 不開示情報法14条各号に定められている不開示情報のうち,本件に関係する部分は以下のとおりである。 ア開示請求者以外の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(2号本文)。 - 3 -イ法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,開示することにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの(3号イ)。 ウ国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行 報であって,開示することにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの(3号イ)。 ウ国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,開示することにより,当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの(7号柱書き)。 3 前提事実(証拠等により容易に認められる事実等)(1) 本件開示請求原告は,平成25年2月18日,金融庁長官に対し,本件開示請求を行った。なお,本件開示請求に係る保有個人情報開示請求書の「開示を請求する保有個人情報」欄には,「私が金融庁に対し,A株式会社及びB株式会社について苦情を申立てた件で,保険課,金融サービス利用者相談室,企画課調査室及び法令等遵守調査室が保有する文書(開示請求の決裁を含む)全て」(原告が,金融庁からの補正要請に従い,当初の記載につき,補正した後のもの)と記載されていた。(甲1,乙1)(2) 本件一部不開示決定金融庁長官は,平成25年4月30日,原告に対し,別紙2から37の各文書につき,別紙1「不開示部分目録」の「不開示部分」欄記載の各部分には,法14条2号,同条3号イ又は同条7号柱書きに該当する不開示情報が記載されているとして,同各部分を不開示とし,これらを除く部分を開示する旨の本件一部不開示決定をした。(甲1)(3) 本件訴訟の提起原告は,平成25年6月13日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 4 争点及び当事者の主張 - 4 -本件の争点は,①別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報が原告を本人とする保有個人情報か(争点1),②別紙10~20,22~24,26~29,31,32 - 4 -本件の争点は,①別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報が原告を本人とする保有個人情報か(争点1),②別紙10~20,22~24,26~29,31,32,34及び36の各文書の不開示部分のうち黄色で着色された部分(以下「本件不開示部分1」という。)に記載された情報が法14条2号本文に該当するか(争点2),③別紙2~9,15,18~24,27~29,32,34及び36の各文書の不開示部分のうち,赤色で着色された部分(以下「本件不開示部分2」という。)に記載された情報が法14条3号イに該当するか(争点3),④本件不開示部分2と,別紙10~37の各文書の不開示部分のうち青色で着色又は枠囲みされた部分(以下「本件不開示部分3」という。)とに記載された情報が法14条7号柱書きに該当するか(争点4)である。 これらの争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点1(原告を本人とする保有個人情報か)(原告の主張)別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報は,原告を本人とする保有個人情報である。 (被告の主張)別紙10~16及び26の各文書は,原告以外の者が行ったA等に関する苦情申出に係る近畿財務局等作成の文書であるから,その不開示部分に記載された情報は,原告を本人とする保有個人情報ではない。 (2) 争点2(法14条2号本文該当性)(被告の主張)本件不開示部分1に記載された情報は,Aの担当者の氏名等,原告以外の特定の個人を識別できる情報であるから,法14条2号本文に該当する。 (原告の主張)上記(被告の主張)は争う。 - 5 -(3) 争点3(法14条3号イ該当性)(被告の主張)ア本件不開示部分2には,原告その他の者が 4条2号本文に該当する。 (原告の主張)上記(被告の主張)は争う。 - 5 -(3) 争点3(法14条3号イ該当性)(被告の主張)ア本件不開示部分2には,原告その他の者が行ったAに関する苦情申出の具体的内容が記載されているところ,仮にこれが開示されると,当該申出がなされた経緯や当該申出に係る事実の存否にかかわらず,Aに何らかの業務運営上の問題があるとの憶測を招き,Aの社会的評価が低下して顧客が減少するおそれがある。 また,本件不開示部分2には,上記申出についてのAの認識内容や対応方針等も記載されているところ,これらは,Aが適正に業務運営を行うために蓄積してきたノウハウに当たり,開示されれば,競合他社に当該ノウハウが流用されるなどして,Aの競争力が低下するおそれがある。 イしたがって,本件不開示部分2に記載された情報は,開示によってAの権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であり,法14条3号イに該当する。 なお,原告が引用する「ISO10002」は,苦情対応プロセスの設計等について一般的な指針を提供するものにすぎず,同規格への適合宣言をしていることをもって,Aのノウハウが流用されるおそれがないとはいえない。また,「ISO10002」は,個別の苦情申出に対する対応方針等を公開すべきものとはしていない。 (原告の主張)ア法が保有個人情報の開示を原則としていることに照らせば,法14条3号イにいう「法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」とは,一般的抽象的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性を意味するところ, 被告の主張は一般的抽象的な可能性を述べるものにすぎない。 また,Aやその競合他社は,いずれも,苦情対応に係る国際規格で - 6 -ある「IS 的保護に値する蓋然性を意味するところ, 被告の主張は一般的抽象的な可能性を述べるものにすぎない。 また,Aやその競合他社は,いずれも,苦情対応に係る国際規格で - 6 -ある「ISO10002」への適合宣言をしており,同水準の苦情対応システムを構築しているはずであるから,仮に苦情申出に対する認識内容や対応方針等がAのノウハウに当たるとしても,競合他社がそれを流用するとは考え難い。さらに,「ISO10002」は苦情対応の方針等の公開を原則としている。 イ以上に照らせば,本件不開示部分2に記載された情報が法14条3号イに該当するとはいえない。 (4) 争点4(法14条7号柱書き該当性)(被告の主張)ア本件不開示部分2について上記(3)の(被告の主張)記載のとおり,本件不開示部分2には,開示によってAの正当な利益を害するおそれがある情報が記載されているところ,当該情報は,公開されないとの前提の下に,Aから金融庁等に対して任意に報告されており,他の保険会社からも同様の報告がされている。 したがって,仮に当該情報のような保険会社の報告内容が開示されることになれば,以後,A等の保険会社は,自社の利益が損なわれることを防ぐため,金融庁等に対して任意の報告を行うことに消極的な態度をとるようになり,金融庁等が迅速かつ的確に保険会社の業務実態を把握することが困難となる。 したがって,本件不開示部分2に記載された情報は,開示によって金融庁等の保険会社に対する監督事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報であり,法14条7号柱書きに該当する。 イ本件不開示部分3について本件不開示部分3には,原告その他の者によるA等に関する苦情申出の内容,当該申出に係るA等の近畿財務局等の監督行政庁への報告内容及び 条7号柱書きに該当する。 イ本件不開示部分3について本件不開示部分3には,原告その他の者によるA等に関する苦情申出の内容,当該申出に係るA等の近畿財務局等の監督行政庁への報告内容及びそれらに対する近畿財務局等の対応内容が記載されている。 - 7 -このうち,苦情申出の内容や当該申出に係るA等の報告内容は,開示によってA等の正当な利益を害するおそれがある情報であり,公開されないとの前提の下に近畿財務局等に対して任意に報告された情報であるから,上記ア同様,これを開示すれば,以後,A等の保険会社が任意の報告に消極的な態度をとるようになって,近畿財務局等の監督事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法14条7号柱書きに該当する。 また,近畿財務局等の対応内容は,仮にこれが開示されると,保険会社一般に対して監督行政庁の具体的な対応方針等が明らかとなり,保険会社が規制を逃れるための対応策を講じることが可能になるから,開示によって金融庁等の保険会社に対する監督事務に支障を及ぼすおそれがあり,法14条7号柱書きに該当する。 したがって,本件不開示部分3に記載された情報は,法14条7号柱書きに該当する。 (原告の主張)ア本件不開示部分2について本件不開示部分2に記載された情報は,開示によってAの正当な利益を害するおそれがある情報ではないから,これを開示してもA等の保険会社が金融庁等に対する任意の報告に消極的な態度をとるということはできない。 また,金融庁長官は保険会社に対してその業務等に関し報告又は資料の提出を求める権限(保険業法313条1項,128条1項)を有しており,この権限は罰金(同法317条2号)等の規定により担保されていることからも,保険会社から任意の協力が得られなくなることはない。 したがっ める権限(保険業法313条1項,128条1項)を有しており,この権限は罰金(同法317条2号)等の規定により担保されていることからも,保険会社から任意の協力が得られなくなることはない。 したがって,本件不開示部分2に記載された情報は,開示によって金融庁等の保険会社に対する監督事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとはいえず,法14条7号柱書きに該当しない。 - 8 -イ本件不開示部分3について本件不開示部分3に記載された情報のうち,A等に関する苦情申出の内容や,当該申出についてのA等の報告内容は,開示によってA等の正当な利益を害するおそれがある情報ではなく,これを開示してもA等の保険会社が金融庁等に対する任意の報告に消極的な態度をとるようになるということはできないから,法14条7号柱書きに該当しない。 また,本件不開示部分3に記載された情報のうち,近畿財務局等の対応内容に係る情報は,その相手方である保険会社には既に知られている情報である以上,もはや秘匿されるべき情報ではなく,法14条7号柱書きに該当しない。 したがって,本件不開示部分3に記載された情報は法14条7号柱書きに該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 判断の基礎となる事実証拠(乙2の1~3,3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 金融庁等の保険会社に対する監督事務ア保険会社の監督行政庁に当たる金融庁や近畿財務局は,保険会社との十分な意思疎通を確保し,保険会社の自主的な努力を尊重することをその監督事務の指針としており,保険会社から随時,任意に業務状況に係る報告を受けることで,保険会社の業務実態を速やかに把握している。 イ A等の保険会社は,上記アの指針を受け,顧客からの苦情申出やそれへの対応 の指針としており,保険会社から随時,任意に業務状況に係る報告を受けることで,保険会社の業務実態を速やかに把握している。 イ A等の保険会社は,上記アの指針を受け,顧客からの苦情申出やそれへの対応に係る情報について,金融庁等の監督行政庁に報告しており,後記(3)ア・エ記載のAの報告も,その一環として行われたものである。 (2) 原告とAとの関係等ア原告は,自ら,Aとの間で火災保険契約を締結していたほか,その父や - 9 -原告が代表者を務める会社も,火災保険,自動車保険,介護費用保険等に係る保険契約を締結していた。 イ原告は,平成19年6月,Aに対し,介護費用保険契約に係る保険金を請求したが,同社は,約款所定の支払事由を欠くことを理由として,その支払を拒否したことがあった。その後,原告は,平成23年4月,上記介護費用保険契約や自動車保険契約について,Aの対応に問題があるとして,Cに苦情申出をし,その頃から,Aや近畿財務局へも同様の問題等について苦情申出をするようになり,Aに対する苦情申出は,遅くとも平成24年6月頃まで,近畿財務局に対する苦情申出は,平成23年12月頃まで続いた。その間,平成23年12月には,上記苦情申出に関連して,大阪地方裁判所に対し,Aを被告として,上記介護費用保険契約の保険料の返還を求める訴訟を提起した。同裁判所は,平成25年7月26日,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡し,原告はこれを不服として控訴したが,控訴審でも,平成26年1月24日,控訴棄却の判決が言い渡された。 (3) 別紙2~37の各文書の概要ア別紙2~9の各文書は,Aが,原告から受けた前記(2)イ記載の苦情申出について,金融庁長官の保険会社に対する監督上参考になると考えられる内容を記録し,金融庁監督局保険課に対して任意に提出 概要ア別紙2~9の各文書は,Aが,原告から受けた前記(2)イ記載の苦情申出について,金融庁長官の保険会社に対する監督上参考になると考えられる内容を記録し,金融庁監督局保険課に対して任意に提出した文書である。 イ別紙10~16及び26の各文書は,原告以外の者が行ったA等に関する苦情申出について,近畿財務局等が,当該申出の内容,当該申出に係るA等の報告内容及びそれらに対する近畿財務局等の対応内容を記録した文書である。 ウ別紙17,19~21,23,25,30,33,35及び37の各文書は,近畿財務局が,前記(2)イ記載の原告のAに関する苦情申出を受けて,当該申出の内容及びこれに対する対応等を記録した文書である。 エ別紙18,22,24,27~29,31,32,34及び36の各文 - 10 -書は,Aの担当者が,近畿財務局を訪れて,同社に対する原告の苦情申出に関する事項で,当局の保険会社に対する監督上参考になると考えられる内容を任意に報告したことを受け,近畿財務局が,その報告の内容及びこれに対する近畿財務局の対応等を記録した文書である。 2 争点1(原告を本人とする保有個人情報か)について法12条1項によれば,同項に基づき開示を求めることができるのは,自己を本人とする保有個人情報に限られるところ,原告が開示を求めることができるのは,原告を本人(個人情報によって識別される特定の個人〔法2条5項〕)とする保有個人情報に限られる。 前記1(3)イの認定事実及び弁論の全趣旨によれば,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載されているのは,原告以外の者が行ったA等に関する苦情申出の内容,当該申出に係るA等の報告内容及びそれらに対する近畿財務局等の対応内容であると認められるところ,これらが原告を本人とする保有個人情報 されているのは,原告以外の者が行ったA等に関する苦情申出の内容,当該申出に係るA等の報告内容及びそれらに対する近畿財務局等の対応内容であると認められるところ,これらが原告を本人とする保有個人情報でないことは明らかである。 したがって,本件一部不開示決定のうち,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報を不開示とした部分は,その余の点について判断するまでもなく適法である。 3 争点2(法14条2号本文該当性)について前記2のとおり,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報を不開示としたことは適法であるから,以下では,本件不開示部分1のうち,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分以外の部分(別紙17~20,22~24,27~29,31,32,34及び36の各文書の不開示部分のうち黄色で着色された部分。以下「本件不開示部分1-①」という。)に記載された情報について,法14条2号本文該当性を判断する。 前記1(3)ウ・エの認定事実及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分1-①には,Aの担当者の氏名が記載されていることが認められる。 - 11 -そうすると,本件不開示部分1-①に記載された情報は,法14条2号本文に該当し,原告はこれらの情報が同号ただし書イ~ハ所定の除外事由に該当することについての主張立証をしないから,本件不開示部分1-①に記載された情報は,同号本文所定の不開示情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分1-①に記載された情報を不開示とした部分は適法である。 4 争点3(法14条3号イ該当性)について本件不開示部分2のうち,別紙19~21,23の各文書の不開示部分(以下「本件不開示部分2-①」という。)について,法14条3号イ 部分は適法である。 4 争点3(法14条3号イ該当性)について本件不開示部分2のうち,別紙19~21,23の各文書の不開示部分(以下「本件不開示部分2-①」という。)について,法14条3号イ該当性を検討する(なお,本件不開示部分2のうち,上記各文書の不開示部分以外の部分については,後記5〔争点4に係る判断部分〕において検討する。)。 前記1(3)ウの認定事実及び弁論の全趣旨によると,本件不開示部分2-①には,原告が近畿財務局に対してしたAに関する苦情の申出の具体的内容が記載されていることが認められる。 このような苦情申出の具体的内容が開示されれば,当該申出に係る事実の存否にかかわらず(なお,前記認定のとおり,原告は,Aに関する苦情申出に関連して,Aを被告として訴訟を提起しているが,第1審で請求棄却の判決を受け,控訴も棄却されていることからすると,原告の苦情申出が果たして事実に基づくものであるか疑問なしとしない。),Aに業務運営上の問題があるとの憶測を招くなど,Aの信用に悪影響を与え,競争上の地位を害するおそれがあることは十分考えられ,本件不開示部分2-①に記載された情報は,法14条3号イ所定の不開示情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分2-①に記載された情報を不開示とした部分は適法である。 5 争点4(法14条7号柱書き該当性)について(1) 判断対象について - 12 -前記2のとおり,本件一部不開示決定のうち,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報を不開示とした部分は適法であり,また,前記4のとおり,本件不開示部分2-①に記載された情報を不開示とした部分も適法である。そこで,以下では,本件不開示部分2のうち別紙15の文書の不開示部分 た情報を不開示とした部分は適法であり,また,前記4のとおり,本件不開示部分2-①に記載された情報を不開示とした部分も適法である。そこで,以下では,本件不開示部分2のうち別紙15の文書の不開示部分及び本件不開示部分2-①以外の部分(別紙2~9,18,22,24,27~29,32,34及び36の各文書の不開示部分のうち赤色で着色された部分。以下「本件不開示部分2-②」という。)と,本件不開示部分3のうち別紙10~16及び26の各文書の不開示部分以外の部分(別紙17~25及び27~37の各文書に係る不開示部分のうち青色で着色又は枠囲みされた部分。以下「本件不開示部分3-①」という。)とに記載された情報について,法14条7号柱書き該当性を判断する。 (2) 本件不開示部分2-②についてア前記1(3)ア・エの各認定事実及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分2-②には,Aが金融庁又は近畿財務局に対し,原告によるAに関する苦情申出の具体的内容や当該申出に係るAの対応について,報告した内容が記載されていることが認められる。 イ(ア) 前記1(1)ア・イの認定事実に照らせば,これらの情報は,保険会社の監督行政庁である金融庁等の保険会社に対する監督事務に関する情報であるから,法14条7号柱書き所定の「国の機関…が行う事務…に関する情報」に該当するものと認められる。 (イ) そして,本件不開示部分2-②に記載された情報のうち原告による苦情申出の具体的内容については,前記4のとおり,これが開示されれば,当該申出に係る事実の存否にかかわらず,Aに業務運営上の問題があるとの憶測を招くなど,Aの信用に何らかの悪影響を与え,競争上の地位を害するおそれがあることは否定できない。 また,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,①Aは,前記1(1) 務運営上の問題があるとの憶測を招くなど,Aの信用に何らかの悪影響を与え,競争上の地位を害するおそれがあることは否定できない。 また,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,①Aは,前記1(1) - 13 -イの監督行政庁への報告が公表されないとの前提の下に,当該情報が会社にとって有利か不利かを問わず,ありのままの事象を迅速に報告していること,②同社は,個別の顧客対応事例を蓄積して顧客対応業務を行うための非公開のノウハウを構築し,それが同社の市場における競争力の源泉ともなっており,原告からの苦情申出についても,そのようなノウハウに基づき対応し,監督行政庁にこれを報告しているものであり,その報告内容には,苦情申出に対する同社の対応方針等の内部管理情報が含まれているとの認識を有していること,③同社は,その報告内容が開示されることになれば,競合他社によって上記ノウハウが利用され,同社の市場での競争上の地位の優位性が損なわれるとの認識を有していることがそれぞれ認められる。 そうすると,仮に本件不開示部分2-②に記載された情報が開示されることになれば,Aは,自社の信用への悪影響や顧客からの苦情対応に係るノウハウの流出を危惧し,今後,金融庁等の監督行政庁に対する報告に消極的な態度をとるようになり,ありのままの報告を避けたり,報告内容の精査に時間をかけて迅速な報告を行わなくなったりするおそれも十分考えられ(なお,そのようなおそれは,Aだけでなく,他の保険会社との関係でも,生じ得る。),それによって金融庁等の監督行政庁による適正な監督事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるというべきであるから,本件不開示部分2-②に記載された情報は,法14条7号柱書き所定の不開示情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本 行に支障を及ぼすおそれがあるというべきであるから,本件不開示部分2-②に記載された情報は,法14条7号柱書き所定の不開示情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分2-②に記載された情報を不開示とした部分は適法である。 ウ(ア) なお,原告は,Aの競合他社は,Aと同水準の苦情対応システムを確立していると考えられることから,Aの苦情申出についての対応方針等を開示しても,Aのノウハウが流用されるとは考え難いし,そもそも, - 14 -苦情への対応方針等は公開されるべきものである旨主張する。 しかし,Aとその競合他社の苦情対応システムが同水準であることを認めるに足りる証拠はないし,仮に同水準であったとしても,同一のものではなく,各会社が独自に改良を重ねて確立したものであると考えられるから,開示されることによって,Aのノウハウが競合他社により流用される可能性は否定できない。保険会社の個別の苦情への対応方針等が公開されるべきものであることを認めるに足りる証拠もない。そもそも,Aが,上記イ(イ)の③記載のような認識を有している以上,競合他社の苦情対応システムの水準いかんにかかわらず,開示により,監督行政庁への報告について消極的な態度をとるようになるおそれは否定できないものといわざるを得ず,原告の上記主張は,採用することができない。 (イ) また,原告は,金融庁長官が保険会社に対して報告又は資料の提出を求める権限(保険業法313条1項,128条1項)を有しており,その違反に対して罰金が科されること(同法317条2号)等が定められているから,保険会社から任意の協力が得られなくなる可能性はないと主張する。 しかし,たとえ罰金等の定めによって任意の協力が促されるとしても,保険会社から れること(同法317条2号)等が定められているから,保険会社から任意の協力が得られなくなる可能性はないと主張する。 しかし,たとえ罰金等の定めによって任意の協力が促されるとしても,保険会社からありのままの,また,迅速な報告がなされなくなることによって,監督行政庁の監督事務の適正な遂行に具体的な支障を及ぼすおそれがあることは否定できず,原告の上記主張は,採用することができない。 (3) 本件不開示部分3-①についてア前記1(3)ウ・エの各認定事実及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分3-①には,原告のAに関する苦情申出や当該申出についてのAの報告に係る近畿財務局の対応内容(以下「本件対応内容」という。)が記載され - 15 -ていることが認められる。 イ本件対応内容は,保険会社の監督行政庁である近畿財務局の保険会社に対する監督事務に係る情報であるから,法14条7号柱書き所定の「国の機関…が行う事務…に関する情報」に該当するものと認められる。 そして,本件対応内容からは,保険会社に関する苦情申出がされた場合における近畿財務局の具体的な対応方針を読み取ることができるものと認められるところ,これが開示されれば,A以外の保険会社が,明らかとなった監督行政庁の具体的な対応方針を踏まえ監督行政庁の規制を逃れるための対応策を講じることが可能となり,それによって,近畿財務局等の監督行政庁による適正な監督事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるというべきであるから,本件不開示部分3-①に記載された情報は,法14条7号柱書き所定の不開示情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分3-①に記載された情報を不開示とした部分は適法である。 ウなお,原告は,監督行政庁の対応に係る情報は 情報に該当するものと認められる。 したがって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分3-①に記載された情報を不開示とした部分は適法である。 ウなお,原告は,監督行政庁の対応に係る情報は既に相手方保険会社の知るところとなっているから,これを公開することによって保険会社に対する監督事務に支障が出るおそれがあるとはいえない旨主張する。しかし,当該対応に係る情報は保険会社一般には知られていない情報であり,これが公開されることによって上記のような弊害が生じるおそれがあると認められるから,原告の上記主張は,採用することができない。 6 小括以上によれば,本件不開示情報のうち,別紙10~16及び26の各文書の不開示部分に記載された情報は原告を本人とする保有個人情報に該当せず,別紙2~9,17~25及び27~37の各文書の不開示部分に記載された情報は,法14条2号本文,同条3号イ又は同条7号柱書き所定の不開示情報に該当するから,本件不開示情報を不開示とした本件一部不開示決定は,適法であ - 16 -ると認められる。 7 本件不開示情報の開示決定の義務付けを求める訴えの適法性について本件訴えのうち,本件不開示情報の開示決定の義務付けを求める部分は,行政事件訴訟法3条6項2号所定の申請型の義務付け訴訟であるところ,本件一部不開示決定が取り消されるべきものでないことは前示のとおりであるから,上記部分は,同法37条の3第1項2号の要件を満たさない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち上記部分は,不適法なものとして却下を免れない。 8 結論以上によれば,本件訴えのうち,本件不開示情報の開示決定の義務付けを求める部分は不適法であるから却下し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することと 法なものとして却下を免れない。 結論以上によれば,本件訴えのうち,本件不開示情報の開示決定の義務付けを求める部分は不適法であるから却下し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官斗谷匡志 裁判官狹間巨勝
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