平成28年12月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第6627号職務発明対価請求事件口頭弁論終結日平成28年10月28日判決原告甲 同訴訟代理人弁護士伊藤真悟同澤井 裕被告ソニー損害保険株式会社同訴訟代理人弁護士熊倉禎男同田和彦同相 良 由里子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成26年10月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告の在職中に職務上行った発明につき,特許を受ける権利を被告に譲渡したことについて,被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項及び4項に基づき,相当の対価として,その未払分●(省略)●円のうち1000万円及びこれに対する催告の日の翌日である平成26年10月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者等ア原告は,被告の元従業員であって,平成11年7月に被告に入社し,平成13年10月から商品企画部に在籍したものの,平成17年10月に被告を退社した者である。 イ被告は,損害保険業等を業とする株式会社である 被告の元従業員であって,平成11年7月に被告に入社し,平成13年10月から商品企画部に在籍したものの,平成17年10月に被告を退社した者である。 イ被告は,損害保険業等を業とする株式会社である。 訴外ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)は,電子・電気機械器具の製造,販売及び金融業等を業とする株式会社であり,平成16年4月まで被告の親会社であったものである。 (2) 被告における職務発明の取扱いに関する諸規定被告の就業規則である「GS社員就業規則」(乙2)では,職務発明について特許を受ける権利は被告に帰属するものとされている(65条1項)。 そして,被告の「発明考案規程」(乙3)では,被告の従業員は職務発明について特許を受ける権利を被告に譲渡しなければならないこと(2条1項),被告は当該権利をソニーに譲渡することができること(2条4項)が定められているほか,職務発明をした従業員に対する褒賞金の額が定められている(4条,5条)。 (3) 原告の職務発明原告及びA(以下「A」という。)は,平成16年6月頃までに,自動車保険料計算システム,自動車保険料計算装置及び自動車保険料計算プログラムに関する発明をした(以下「本件職務発明」という。)。同発明は,被告の業務範囲に属し,かつ,原告及びAの職務に属する発明であった。 (4) 出願経緯等ア原告及びAは,平成16年6月23日,被告に対し,本件職務発明について特許を受ける権利を譲渡した。 被告は,同日,ソニーに当該権利を譲渡し,ソニーは被告に対して本件職務発明の通常実施権を許諾した。(乙4ないし6,弁論の全趣旨)イソニーは,同年10月15日に本件職務発明に関し特許出願をし,平成19年9月5日に手続補正書を提出したところ,平成21年12月22日付けで拒 常実施権を許諾した。(乙4ないし6,弁論の全趣旨)イソニーは,同年10月15日に本件職務発明に関し特許出願をし,平成19年9月5日に手続補正書を提出したところ,平成21年12月22日付けで拒絶理由通知書を受けた。 そこで,ソニーは,平成22年2月15日,手続補正書及び意見書を提出したところ,同年3月3日付けで特許査定を受け,同年4月9日,設定登録された(以下,登録された特許権ないし特許を「本件特許権」ないし「本件特許」という。)。(甲2,乙7,9,16ないし18)(5) 本件特許権の内容本件特許権の内容は,次のとおりである(請求項の数10。以下,特許請求の範囲請求項1ないし10の発明を「本件発明1」ないし「本件発明10」などといい,併せて「本件各発明」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は別紙特許公報記載のとおりである。)。(甲2)特許番号特許第4487723号発明の名称自動車保険料計算システム,自動車保険料計算装置,及び自動車保険料計算プログラム出願日平成16年10月15日登録日平成22年4月9日特許請求の範囲【請求項1】所定の保険期間中に車両が走行すると予測される予測走行距離を保険期間ごとに端末装置から受信するとともに積算距離計開始値および積算距離計終了値を前記保険期間ごとに前記端末装置から受信する入出力インタフェースと, 前記入出力インタフェースによって受信された前記予測走行距離を取得する予測走行距離取得手段と,前記取得した予測走行距離を用いて前記所定の保険期間中の基準保険料を計算する基準保険料設定手段と,前記基準保険料を計算した保険期間の直前の保険期間に車両が実際に走行した実績走行距離を, 前記取得した予測走行距離を用いて前記所定の保険期間中の基準保険料を計算する基準保険料設定手段と,前記基準保険料を計算した保険期間の直前の保険期間に車両が実際に走行した実績走行距離を,前記入出力インタフェースによって受信された前記直前の保険期間における前記積算距離計開始値および前記積算距離計終了値を用いて計算する実績走行距離取得手段と,前記入出力インタフェースによって受信された前記直前の保険期間の予測走行距離と,実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離との差分から,調整保険料を決定する調整保険料決定手段と,前記基準保険料に前記調整保険料を加算または減算することによって保険料を算出する保険料算出手段と,を具備し,前記入出力インタフェースは,前記積算距離計開始値が計測された日を示す開始値計測日および前記積算距離計終了値が計測された日を示す終了値計測日を前記端末装置からさらに受信し,前記自動車保険料計算装置は,前記入出力インタフェースによって受信された前記開始計測日が前記直前の保険期間の始期日と一致しない場合,または,前記入出力インタフェースによって受信された前記終了計測日が前記直前の期間の終了日と一致しない場合に,前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段を具備し,前記調整保険料決定手段は,前記推定手段で推定した実績走行距離を用いて調整保険料を決定し,前記推定手段は, 前記実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離を用いて,前記開始値計測日および前記終了値計測日から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する,自動車保険料計算装置。 【請求項2】 いて,前記開始値計測日および前記終了値計測日から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する,自動車保険料計算装置。 【請求項2】前記推定手段は,前記取得した実績走行距離の計測開始点と前記直前の保険期間の開始点,又は,前記取得した実績走行距離の計測終了点と前記直前の保険期間の終了点,のうち,少なくとも一方を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項3】前記実績走行距離取得手段は,前記直前の保険期間内において保険対象の車両が入替られた場合,前記直前の保険期間に保険対象であった各車両の保険対象期間中の走行距離を累計して実績走行距離を取得する,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項4】前記実績走行距離取得手段は,前記直前の保険期間内において前記車両が保険対象とならない期間があった場合,前記車両が保険対象であった際に走行した走行距離の累計値と,前記車両が保険対象であった期間の累計値を用いて,前記直前の保険期間での実績走行距離を算出する,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項5】前記車両と他の車両との関連づけを記憶する関連づけ記憶手段を具備し,前記保険料算出手段は,前記直前の保険期間に対して取得した前記車両の予測走行距離と,前記取得した前記車両の実績走行距離との差分を用いて,前記関連づけられた他の車両の保険料を算出する,請求項1に記載の自動車 保険料計算装置。 【請求項6】前記調整保険料決定手段は,前記車両の調整保険料を計算するための予測走行距離と実績走行距離の差分のうち,前記関連する他の車両の保険料を計算するのに用いた部分を 保険料計算装置。 【請求項6】前記調整保険料決定手段は,前記車両の調整保険料を計算するための予測走行距離と実績走行距離の差分のうち,前記関連する他の車両の保険料を計算するのに用いた部分を除いて前記調整保険料を決定する,請求項5に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項7】前記差分計算手段で計算した差分の累積値を複数の保険期間に渡って記憶する累積差分記憶手段と,前記記憶した差分の累積値のうち,調整保険料の計算に用いる部分の指定を受け付ける部分指定手段と,を具備し,前記調整保険料決定手段は,前記差分の累積値のうち,前記指定を受け付けた部分を用いて調整保険料を決定し,前記累積差分記憶手段は,累積値から当該調整保険料の決定に用いた部分を減じる,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項8】通信回線を介して接続した端末に,予測走行距離と,実績走行距離と,を入力する入力画面を提供し,前記予測走行距離取得手段は,前記提供した入力画面に対して前記端末から送信されてきた予測走行距離を取得し,前記実績走行距離取得手段は,前記提供した入力画面に対して前記端末から送信されてきた実績走行距離を取得する,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項9】通信回線を介して接続した端末に,前記調整保険料決定手段が決定した調 整保険料を表示するための調整保険料表示画面を提供する,請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項10】コンピュータを,所定の保険期間中に車両が走行すると予測される予測走行距離を保険期間ごとに端末装置から受信するとともに積算距離計開始値および積算距離計終了値を前記保険期間ごとに前記端末装置から受信する入出力インタフェースと,前 が走行すると予測される予測走行距離を保険期間ごとに端末装置から受信するとともに積算距離計開始値および積算距離計終了値を前記保険期間ごとに前記端末装置から受信する入出力インタフェースと,前記入出力インタフェースによって受信された前記予測走行距離を取得する予測走行距離取得手段と,前記取得した予測走行距離を用いて前記所定の保険期間中の基準保険料を計算する基準保険料設定手段と,前記基準保険料を計算した保険期間の直前の保険期間に車両が実際に走行した実績走行距離を,前記入出力インタフェースによって受信された前記直前の保険期間における前記積算距離計開始値および前記積算距離計終了値を用いて計算する実績走行距離取得手段と,前記入出力インタフェースによって受信された前記直前の保険期間の予測走行距離と,実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離との差分から,調整保険料を決定する調整保険料決定手段と,前記基準保険料に前記調整保険料を加算または減算することによって保険料を算出する保険料算出手段と,を具備し,前記入出力インタフェースは,前記積算距離計開始値が計測された日を示す開始値計測日および前記積算距離計終了値が計測された日を示す終了値計測日を前記端末装置からさらに受信し, 前記自動車保険料計算装置は,前記入出力インタフェースによって受信された前記開始計測日が前記直前の保険期間の始期日と一致しない場合,または,前記入出力インタフェースによって受信された前記終了計測日が前記直前の期間の終了日と一致しない場合に,前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段を具備し,前記調整保険料決定手段は,前記推定手段で推定した実績走行距離を用いて調整保険料を決定し, 期間の終了日と一致しない場合に,前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段を具備し,前記調整保険料決定手段は,前記推定手段で推定した実績走行距離を用いて調整保険料を決定し,前記推定手段は,前記実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離を用いて,前記開始値計測日および前記終了値計測日から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する,自動車保険料計算装置として機能させるための自動車保険料計算プログラム。 (6) 4種類の補正方法本件明細書等には,「積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日にずれが生じる場合の補正方法」(段落【0078】)として,以下のとおり,「第1の補正方法」から「第4の補正方法」まで4種類の補正方法が記載されている。 ア第1の補正方法実績走行距離の計測期間から求められる単位期間当たりの走行距離に保険期間を乗じて保険期間中の実績走行距離を推定する方法(段落【0080】~【0092】,【図8(a)】)イ第2の補正方法実績走行距離の計測開始点と保険期間の開始点を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする方法(段落【0093】~【0101】,【図8(b)】) ウ第3の補正方法実績走行距離の計測終了点と保険期間の終了点を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする方法(段落【0102】~【0110】,【図8(c)】)エ第4の補正方法積算距離計開始値とその計測日及び予測走行距離から始期日での積算距離計の値を推定し,さらに積算距離計終了値とその計測日及び実際に走行した距離から終期日での積算距離計の値を推定する方法(段落【0111】~【0118】, の計測日及び予測走行距離から始期日での積算距離計の値を推定し,さらに積算距離計終了値とその計測日及び実際に走行した距離から終期日での積算距離計の値を推定する方法(段落【0111】~【0118】,【図8(d)】)(7) 既払額等被告は,平成16年11月10日,原告に対し,本件職務発明に係る発明報告褒賞金として●(省略)●円を支払った。(甲3,乙23)また,被告は,平成17年8月,原告に対し,本件職務発明に係る発明考案褒賞金として●(省略)●円を支払った。(乙19)(8) 被告の保険商品被告は,平成16年11月,被告の自動車保険において,自動車保険料計算装置を用いて,「契約時に設定した距離で算出した保険料」と「実際に走った距離で算出した保険料」の差額を実績走行距離を推定する手段によって算出し,それを翌年の保険料から割り引くことによって次年度の調整保険料を設定する「くりこし割引」と題する自動車保険サービス(以下「被告サービス」という。)の適用を開始した。(甲8,弁論の全趣旨)(9) 職務発明対価の請求原告は,被告に対し,平成26年10月28日付け通知書をもって本件職務発明に対する相当の対価の支払を請求し,同通知書は同月29日に被告に到達した。 (10) 本件特許の出願に先立つ公知技術 本件特許の出願に先立つ公知技術が記載された刊行物として,以下の文献が存在する。 アビクトリア・トランスポート・ポリシー・インスティチュート「走行距離に基づく自動車保険」(インターネットアーカイブが保存した日2004年〔平成16年〕7月23日。乙10。以下「乙10文献」という。)イ特開2001-331648号公報(公開日平成13年11月30日。 乙11。以下「乙11文献」という。)ウ特表2001-52 〔平成16年〕7月23日。乙10。以下「乙10文献」という。)イ特開2001-331648号公報(公開日平成13年11月30日。 乙11。以下「乙11文献」という。)ウ特表2001-521226号公報(公表日平成13年11月6日。 乙12。以下「乙12文献」という。)エ特開2002-297910号公報(公開日平成14年10月11日。 乙13。以下「乙13文献」という。) 3 争点(1) 本件各発明の実施等の有無ア本件発明1の実施の有無イ本件発明1の均等実施の成否ウ本件発明2の実施の有無(2) 相当の対価の算定ア被告が受けるべき利益の額イ原告の貢献度ウ共同発明者間の寄与割合エ原告が受けるべき相当の対価の額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(本件発明1の実施の有無)について〔原告の主張〕本件発明1は,本件特許の特許請求の範囲請求項1(以下,単に「請求項1」 などという。)のとおり,「前記入出力インタフェースによって受信された前記開始計測日が前記直前の保険期間の始期日と一致しない場合〔中略〕に,前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段を具備」するとともに,「前記実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離を用いて,前記開始値計測日および前記終了値計測日から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する」という発明である。 これに対し,被告サービスは,積算距離計(オドメータ)の開始値計測日が保険始期日と一致しない場合における推定手段を具備している。すなわち,被告のウェブサイト(乙20)の例でいえば,保険始期日の60日前(開始値計測日)に申告した積算距離計の値が1万㎞,契 始値計測日が保険始期日と一致しない場合における推定手段を具備している。すなわち,被告のウェブサイト(乙20)の例でいえば,保険始期日の60日前(開始値計測日)に申告した積算距離計の値が1万㎞,契約距離区分の上限値が7000㎞,積算距離計の終了値が1万8000㎞である場合,当該保険期間における実績走行距離は,8000㎞(18,000㎞-10,000㎞=8,000㎞)ではなく,保険始期日における積算距離計開始値を1万1150㎞として,6850㎞(18,000㎞-11,150㎞=6,850㎞)と推定されることになるのであるから,本件発明1にいう「積算距離計の開始値計測日」が「保険期間と一致しない場合」における「実績走行距離の推定手段」を具備しているといえる。 また,上記推定手段は,裏を返せば,実績走行距離(18,000㎞-10,000㎞=8,000㎞)から,日割計算により算定した調整距離(7,000㎞÷365日×60日=1,150㎞)を差し引いて求める方法といえるのであるから,本件発明1にいう「実績走行距離」を用いて「積算距離計の開始値計測日」から求められる「単位期間当たりの走行距離」に保険始期日までの期間を乗じた数値をもって調整し,その結果として,「保険期間中の実績走行距離を推定する手段」を具備しているといえる。 したがって,被告サービスは,本件発明1を実施したものである。 〔被告の主張〕被告サービスにおける「積算距離計の計測日と契約期間の始期日にずれが生じる場合」の補正方法は,保険始期日の積算走行距離(実績走行距離)を,申込日の積算走行距離と,契約者が選択した契約距離区分の上限値をもとに推定する方法である。 被告のウェブサイト(乙20)の例に従えば,契約者が契約距離区分7000㎞以下で申し込みを行った場合 ,申込日の積算走行距離と,契約者が選択した契約距離区分の上限値をもとに推定する方法である。 被告のウェブサイト(乙20)の例に従えば,契約者が契約距離区分7000㎞以下で申し込みを行った場合で,申込日の積算距離計の数値が1万㎞であり,申込日が保険始期日の60日前であった場合,契約者が選択した契約距離区分の上限値7000㎞に,申込日(積算距離計の計測日)と契約始期日までの日数60日/365日を乗じた数値(1,150㎞)を,申込日のオドメータの数値(10,000㎞)に足し,その結果(11,150㎞)を保険始期日のオドメータの数値として,そこから契約距離である7000㎞のカウントを始める,という方法を採用している。 さらに,被告サービスにおいては,保険始期日の積算走行距離については上記推定方法を採用するが,契約終了時の積算走行距離については,継続手続日における計測値をそのまま使用して,契約期間中の実績走行距離を算定している。契約者は契約終了日よりも前に継続手続を行うのが通常であるが,その場合であっても,契約終了日の実績走行距離を補正するために推定することはしていない。 したがって,被告サービスは,本件発明1を実施したものではない。 2 争点(1)イ(本件発明1の均等実施の成否)について〔原告の主張〕仮に,被告サービスが本件発明1と形式的には異なるとしても,実質的には,請求項1の技術的範囲に属する方法を実施しているといえる。 すなわち,職務発明について使用者が受けるべき利益は,当該発明を独占的に実施し,あるいは他者による実施を排除して得られるべき利益と解されるが, 使用者は特許の技術的範囲に属する他者の実施を排除し,独占して実施することができる一方,発明した従業者にはその相当の対価請求権が認められないとする 排除して得られるべき利益と解されるが, 使用者は特許の技術的範囲に属する他者の実施を排除し,独占して実施することができる一方,発明した従業者にはその相当の対価請求権が認められないとするのでは著しく衡平にもとる結果となる。そこで,いわゆる均等論から認められる特許の技術的範囲の実施は,職務発明の実施と同視されるべきであり,その実施によって得られた利益は使用者が受けた利益とすることが衡平にかなうといえる。 そして,本件においては,以下の(1)ないし(5)に照らし,被告は本件発明1を均等実施しているというべきである。 (1) 均等の第1要件(非本質的部分)について均等論における特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで,「当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分」又は「当該特許発明特有の作用効果を生じるための部分」であるとされ,換言すれば,「右部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分」であると解されている。 この点,本件発明1により解決される課題(効果)は,「特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定すること」及び「当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定すること」にある(本件明細書等の段落【0007】【0009】)。このような効果を得るため,本件発明1では,まず顧客から申告を受けた予測走行距離に応じて保険料を設定し,実績走行距離との差分は次年度の保険料をもって調整するという手段により,「当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定すること」を可能とし,また,実績走行距離については顧客から申告を受ける積算距離計数値をベースとして算定することで「特別な車載装置を用いなくても走行距離によって 走行距離が計測される前に保険料を確定すること」を可能とし,また,実績走行距離については顧客から申告を受ける積算距離計数値をベースとして算定することで「特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定すること」を可能としている。 そのため,「課題解決手段を基礎付ける部分」又は「特有の作用効果を生 じるための部分」は,予測走行距離により当年度の保険料を設定し,顧客から申告を受けた積算距離計数値から実績走行距離を算出し,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する,という方法を構成する点にあるといえる。かかる構成部分こそが課題解決に必要不可欠なものであり,本件発明1の技術的思想の核心である。当該部分が他の構成に置き換えられてしまうと,全体として本件発明1の技術的思想とは別個のものと評価されてしまうことは明らかであり,したがって,当該部分が本件発明1の本質的部分である。 そして,被告は上記方法を実施しているのであり,本件発明1の本質的部分を実施しているといえる。 (2) 均等の第2要件(置換可能性)について上記(1)のとおり,本件発明1の目的は「特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定すること」及び「当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定すること」にあり,この目的を達成するために必要かつ代替不可能な構成要件(本質的部分)は,「予測走行距離により当年度の保険料を設定し,顧客から申告を受けた積算距離計数値から実績走行距離を算出し,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」という構成部分にある。 したがって,仮に被告が実施する推定方法が本件発明1の請求の範囲に記載された方法とは形式的に異なるとしても,当該推定方法に関する構成部分を置換したところで 料を調整する」という構成部分にある。 したがって,仮に被告が実施する推定方法が本件発明1の請求の範囲に記載された方法とは形式的に異なるとしても,当該推定方法に関する構成部分を置換したところで,上記目的を達成できることに変わりはなく,また,本件発明1と同一の作用効果を有するため,実質的には本件発明1を実施しているというべきである。 (3) 均等の第3要件(置換容易性)について被告によれば,被告サービスでは,積算距離計の開始値計測日と保険始期日が異なる場合に,被保険者に対して設定された契約距離区分の上限値を3 65日で除して,開始値計測日から保険始期日までの日数を乗じて推定するという方法を採用しているとのことである。 しかるに,そもそも車両の走行距離ごとに区分を設けて保険料を設定することは,現在の自動車損害保険業界において既に数社が実施している方法であり,また,日割りでの距離計算という方法についてもごく一般的な手法である。本件発明1にも「単位期間あたりの走行距離」をもって計算する方法が記載されており,少なくとも当該特許請求の範囲を見た当業者にとっては,被告の推定方法は容易に想到可能である。 (4) 均等の第4要件(対象方法の容易推考性)について本件特許出願当時,実績走行距離を用いて保険料を算出するには,車両に走行距離を計測するための特別な車載装置を搭載する必要があった。そのため,そもそも積算距離計の計測日と契約期間にずれが生じる場合に実績走行距離を推定計算する必要がなく,現在被告が採用している推定方法が,当時の公知技術であったとか,当業者にとり容易に推考できたといった事情は存在しない。 (5) 均等の第5要件(特段の事情)について本訴において,被告は,本件明細書等に記載されている具体的な推定方法を実 技術であったとか,当業者にとり容易に推考できたといった事情は存在しない。 (5) 均等の第5要件(特段の事情)について本訴において,被告は,本件明細書等に記載されている具体的な推定方法を実施しているものではないと主張している。そうだとすれば,本件特許の出願から成立までの間において特許請求の範囲につき補正がされたとしても,現在被告が実施している推定方法を意識的に除外していることはあり得ない。 〔被告の主張〕以下のとおり,被告が被告サービスで実施する方法は,均等の第1要件及び第5要件を充足しないから,その他の要件を検討するまでもなく,被告による実施態様が本件発明1の均等実施に該当することはない。 (1) 均等の第1要件(非本質的部分)について原告は,被告による実施態様が本件発明1のどの要件を充足せず,かつ, それがどのような構成に置き換えられるのかについて明確に特定していないが,いずれにしても,原告が本質的部分と主張する部分は本件発明1の本質的部分ではないし,被告は本件発明1の本質的部分を実施していない。 すなわち,そもそも本件発明1は,特許庁の拒絶理由通知において,第1の補正方法により実績走行距離を推定する点にのみ進歩性があるとされたのであるから,本件発明1の本質的部分は第1の補正方法そのものにあると考えられる。しかるに,被告は第1の補正方法を実施していないから,被告の実施方法が本件発明1の本質的部分を実施していないことは明白である。 よって,被告の実施する方法が,均等の第1要件を充足することはあり得ない。 (2) 均等の第5要件(特段の事情)についてソニーは本件発明1を拒絶理由通知において進歩性が認められた第1の補正方法に係る発明に限定したものであるところ,被告の実施する方法は第1の補正方法に (2) 均等の第5要件(特段の事情)についてソニーは本件発明1を拒絶理由通知において進歩性が認められた第1の補正方法に係る発明に限定したものであるところ,被告の実施する方法は第1の補正方法には該当しないから,ソニーは被告の実施する方法を意識的に除外したものであって,均等の第5要件を充足することはない。 3 争点(1)ウ(本件発明2の実施の有無)について〔原告の主張〕(1) 仮に被告が本件発明1を実施していないとしても,被告は本件発明2を実施している。 すなわち,被告が被告サービスで実施している方法は,保険期間開始日の積算距離計数値を「契約者が選択した契約距離区分の上限値」をもって推定し,他方で,保険期間終了日の積算距離計数値については,計測日(申告日)が終了日と異なるとしても推定せずに,申告された数値をそのまま用いて,両数値の差分から保険期間中の実績走行距離を計算するというものである。 そして,「契約距離区分」とは,顧客が一定の幅をもって予測した保険期間中の走行距離であり,その「上限値」とは顧客が予測した走行距離(契約 距離区分)の中での上限の値を示すものにほかならない。つまりは,「顧客が申告した予測走行距離」をもって,保険期間開始日の積算距離計の数値を推定し,保険期間終了日の計測値は申告された値を用いる方法であり,本件明細書等に記載された第2の補正方法と一致し,あるいは少なくともこれと同視できる方法といえる。 そして,本件発明2は第2の補正方法を含むものであるから,被告は本件発明2を実施しているというべきである。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件特許の請求項2(本件発明2)は請求項1(本件発明1)の従属項であるから,被告が本件発明1を実施していない以上,本件発明2を実施 る。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件特許の請求項2(本件発明2)は請求項1(本件発明1)の従属項であるから,被告が本件発明1を実施していない以上,本件発明2を実施することもあり得ないと主張している。 しかし,確かに請求項2は請求項1を引用しているが,その記載内容及び出願の経緯からすれば,請求項2は,請求項1における実績走行距離の推定方法に関する記載部分(「前記推定手段は」以下の部分)について,これを置換した内容と解釈されるべきである。 すなわち,請求項2の書き出しは,請求項1の上記記載部分と同様,「前記推定手段は」であり,この「前記推定手段」とは,請求項1記載の「直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段」を指している。つまり,請求項2では,請求項1記載の「推定手段」と並んで,いわば同列的な方法として,実績走行距離の「推定手段」が記載されているのであって,請求項1に記載の方法とは異なる別の補正方法(第2ないし第4の補正方法)を内容とするものといえる。 また,本件特許の出願経緯からすれば,ソニーは第2ないし第4の補正方法を請求項2に含ませて解釈するために,あえて請求項2を外さずに残し,明細書の記載もそのままの形で設定登録したと考えるのが自然かつ合理的である。そのため,現在の請求項1における実績走行距離の推定手段の実施例 が第1の補正方法であるとすれば,請求項2における推定手段の実施例は,第2ないし第4の補正方法にほかならない。 〔被告の主張〕本件特許の請求項2(本件発明2)は請求項1(本件発明1)の従属項であるから,被告が本件発明1を実施していない以上,本件発明2を実施することはあり得ない。 この点に関して原告は,請求項2における推定手段の実施例が第2ないし第4の補 項1(本件発明1)の従属項であるから,被告が本件発明1を実施していない以上,本件発明2を実施することはあり得ない。 この点に関して原告は,請求項2における推定手段の実施例が第2ないし第4の補正方法であると主張する。 しかし,ソニーが請求項2を請求項1の従属項としたのは,現在の請求項2に係る発明が,その当時の記載のままでは拒絶理由を克服できなかったために,請求項1の従属項としたのであって,原告が主張するような意図によるものではない。現在の請求項2が第2ないし第4の補正方法を示しているとの原告の主張は,現在の請求項2が,第1の補正方法を内容とする請求項1の従属項である,という客観的事実に明らかに反する主張といわざるを得ない。 4 争点(2)ア(被告が受けるべき利益の額)について〔原告の主張〕(1) 被告サービスの販売前である平成16年度の被告の利益は174億2100万円であり,当該利益額と以後の各年度の利益額との差額が被告サービスによる増益分となる。平成17年度から平成25年度までの増益分合計額の合計は,別表右欄記載のとおり,823億2100万円である。 そして,本件サービスは,その発表後から注目を浴びており,被告も販売開始から現在に至るまでCM及びホームページ等で大々的に宣伝し,本件各発明の存在が被告の集客に大きく貢献していることからすれば,上記増益分に対する本件各発明の寄与率は50%を下回るものではなく,また,本件各発明の実施料率は低くとも5%と見込まれる。 以上を前提とすれば,本件各発明により被告がこれまでに受けている利益 (独占の利益)は,20億5802万5000円となる。 (計算式)82,321,000,000×50%×5%=2,058,025,000(2) 被告の主張に対する反論被告は,本 (独占の利益)は,20億5802万5000円となる。 (計算式)82,321,000,000×50%×5%=2,058,025,000(2) 被告の主張に対する反論被告は,本件各発明による独占の利益が被告に発生していない(使用者等が受けるべき利益がない)と主張する。 しかし,本件各発明に係る被告サービスにつき,被告はその販売当初から広く宣伝を行い,他社を排して利益を得ていたのであって,本件各発明による「使用者等が受けるべき利益」が否定される理由はない。 そして,被告サービスの販売を開始した平成17年度以降,被告における自動車保険の売上げ(正味保険料収入-正味支払保険金)は顕著に増加しており,これは被告サービスの販売効果によるものにほかならない。 したがって,本件各発明による独占の利益が発生していないとする被告の主張は,誤りである。 〔被告の主張〕被告の平成16年度の利益額が174億2100万円であること,原告の主張する内容の計算を行えば平成17年度から平成25年度までの増益分合計額が823億2100万円となることについては認め,その余は否認ないし争う。 被告が被告サービスを大々的に宣伝したことはないし,被告サービスによっても契約当初に契約者の支払う保険料が著しく安価になることはないから,その存在が「集客に大きく貢献している」ことはないのであって,増益分に対する本件各発明の寄与度が50%以上などということはあり得ない。 また,被告サービスは,既に契約した契約者が保険契約を継続する場合に限り適用されるサービスにすぎず,それも,実際に被告が実施している被告サービスは,保険期間中に「走った距離」が契約距離区分の上限キロ数を「1,000km以上」下回る場合に,その差額保険料に相当する額を翌契約年度の保 ビスにすぎず,それも,実際に被告が実施している被告サービスは,保険期間中に「走った距離」が契約距離区分の上限キロ数を「1,000km以上」下回る場合に,その差額保険料に相当する額を翌契約年度の保険料から減額する場合があるという,本来的なサービスに付随する契約継続時 の割引サービスにすぎないから,損害保険会社の利益に大きな影響を及ぼすとはいい難い。 さらに,本件各発明は,被告サービスそのものの発明ではなく,被告サービスの前提となる,実績走行距離の補正方法に関するものにすぎないから,この意味においても,被告の利益に影響を及ぼすとは到底考えられない。 被告サービスは平成16年11月に発表され,これが実際に適用されるようになったのは平成17年2月1日からであるが,当該時期前後の被告の利益額の変化を見ても,緩やかな増加傾向が続いているのみで,何らの劇的な変化も見られない。 したがって,本件各発明の内容は,およそ被告の利益に影響を及ぼすものではない。 5 争点(2)イ,ウ及びエ(原告の貢献度,共同発明者間の寄与割合,相当の対価の額)について〔原告の主張〕(1) 原告の貢献度原告は,Aとともに本件各発明の原案を考案・作成し,原告において過去の保険契約に関する膨大なデータを解析した上で,経営委員会において本件各発明を説明して保険商品化への道筋を示し,さらに資料及びデータをそろえて監督官庁に対する商品化の許可を求め,その許可を得たことで,被告において本件各発明を商品化するに至ったものである。また,Aは被告サービスの約款案を作成している。 このような原告及びAによる多大な貢献からすれば,被告による宣伝広告等の営業努力を考慮しても,本件各発明に係る発明者寄与率は8%を下回るものではない。 (2) 共同発明者間の寄与割 している。 このような原告及びAによる多大な貢献からすれば,被告による宣伝広告等の営業努力を考慮しても,本件各発明に係る発明者寄与率は8%を下回るものではない。 (2) 共同発明者間の寄与割合Aは原告とともに本件各発明を発案し,自ら約款案を作成したものの,原 告は,過去の保険契約に関する膨大なデータを集めて分析し,経営委員会において商品化のメリット等を説明するとともに保険商品としての販売を提案し,また,監督官庁に対する許可申請の手続を自ら行ったのであり,本件各発明の商品化については独自に多大な貢献をしている。 そのため,共同発明者間における原告の寄与割合は,どれだけ少なく見積もっても70%を下回るものではない。 (3) 相当の対価の額以上のような原告の寄与率等を前提とすれば,原告が受けるべき相当の対価の額は1億1524万9400円となるから,原告は,受領済みの●(省略)●万円を控除した残額●(省略)●円の請求権を有する。 (計算式)2,058,025,000×8%×70%=115,249,400〔被告の主張〕Aが約款案を作成した事実は認め,その余は否認ないし争う。 なお,前記第2,2(7)のとおり,被告は●(省略)●円のほか発明考案褒賞金●(省略)●円を支払っているから,仮に相当の対価の額が認定される場合は,控除されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明1及び2の意義(1) 本件明細書等には,以下の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,自動車保険料計算システム,自動車保険料計算装置,及び自動車保険料計算プログラムに関し,詳しくは,契約者が申告した車両の予測走行距離と,実際に走行した実績走行距離の差を用いて,次年度の自動車保険料を割増引きするものに関する。」(段落【0001】) び自動車保険料計算プログラムに関し,詳しくは,契約者が申告した車両の予測走行距離と,実際に走行した実績走行距離の差を用いて,次年度の自動車保険料を割増引きするものに関する。」(段落【0001】)イ背景技術・「一般的に,自動車などの車両には,事故時の損害を補填するために 損害保険(以下,自動車保険と記す)が設定されている。 自動車保険の保険料は,補償内容や,契約者の年齢,性別,職業,といった個人情報など,各種の条件を用いて決定される。 このように自動車保険の保険料を設定する発明として次の車両保険料算出システム,車載装置,及びサーバ装置がある。」(段落【0002】)・「また,近年,車両の走行距離を用いて保険料を設定する商品も発売されるようになってきた。 このようなものとしては,GPS(Global Positioning System)などの技術を用いて車載装置により車両の走行距離を計測し,計測した距離を用いて保険料の調整を当年度保険料で行うものがある。 走行距離が長いほど事故に遭う確率が高くなるので,走行距離を用いることにより保険料を合理的に設定することができる。」(段落【0005】)ウ発明が解決しようとする課題・「ところで,走行距離を用いて保険料を設定する場合,車両に走行距離を計測するための車載装置を搭載する必要があった。 また,実際に走行した走行距離を用いて保険料を設定するため,当年度の走行距離の計測が完了するまで保険料を確定することができなかった。」(段落【0006】)・「そこで,本発明の目的は,特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定することを第1の目的とする。 また,当年度が始まるまでに,即ち,当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定 「そこで,本発明の目的は,特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定することを第1の目的とする。 また,当年度が始まるまでに,即ち,当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定することを第2の目的とする。」(段落【0007】)エ発明の効果 ・「本発明によると,車載装置を用いなくても走行距離により保険料を設定することができると共に,車両が実際に走行する前に保険料を確定することができる。」(段落【0009】)オ発明を実施するための最良の形態・「(1)実施の形態の概要本実施の形態の自動車保険料計算システムは,保険期間の始まる前に当該保険期間中に車両が走行すると予測される予測走行距離を顧客(自動車保険の契約者)から申告を受け,これを用いて基準保険料を設定する。 顧客が支払う保険料は,保険契約の初年度に関しては基準保険料とし,次年度以降に関しては,前年度の予測走行距離と前年度に実際に走行した実績走行距離との差分により,今年度の基準保険料を調整した額を保険料とする。」(段落【0010】)・「より詳細には,予測走行距離が実績走行距離よりも大きかった場合は,その差分に対応する金額を基準保険料から割引いた金額を保険料とし,実績走行距離が予測走行距離を上回った場合は,その差分に対応する金額を基準保険料に割増した金額を保険料とする。 実績走行距離の計測は,保険期間の始期日(開始日)と終期日(終了日)において顧客に車両の積算距離計(オドメータ)の値を申告してもらい,その積算距離計終了値から積算距離計開始値を減算することにより行う。」(段落【0011】)・【図1】 ・「以上の概要による情報処理手順を図1のフローチャートに示す。 保険契約の初年度に関しては,自動車保険料計算 開始値を減算することにより行う。」(段落【0011】)・【図1】 ・「以上の概要による情報処理手順を図1のフローチャートに示す。 保険契約の初年度に関しては,自動車保険料計算システムは,顧客から当該初年度の予測走行距離の申告を受ける(ステップ5)。」(段落【0012】)・「また,自動車保険料計算システムは,初年度の終了時に実績走行距離を計算するために初年度開始時点での積算距離計の値(積算距離計開始値)の申告も顧客から受ける(ステップ10)。 そして,自動車保険料計算システムは,顧客から取得した予測走行距離を用いて初年度の保険料を決定する(ステップ15)。」(段落【0013】)・「初年度が終了すると,自動車保険料計算システムは,顧客から初年度終了時点での積算距離計の値(積算距離計終了値)の申告を受ける(ステップ20)。 自動車保険料計算システムは,ステップ20で取得した積算距離計の値からステップ10で取得した積算距離計の値を減算して前年度(図1の初年度に対応)の実績走行距離を計算する(ステップ25)。」(段落【0014】)・「また,自動車保険料計算システムは,顧客から当年度(図1の次年度に対応)の予測走行距離の申告も受ける(ステップ30)。 そして,自動車保険料計算システムは,当年度の予測走行距離から当年度の基準保険料を計算する(ステップ33)。基準保険料は,割増引きする前の保険料である。」(段落【0015】)・「次に,自動車保険料計算システムは,ステップ5で取得した予測走行距離とステップ25で計算した実績走行距離の大小を比較する(ステップ35)。 比較の結果,予測走行距離が実績走行距離よりも大きかった場合は,前年度の予測走行距離と前年度の実績走行距離の差分を計算し とステップ25で計算した実績走行距離の大小を比較する(ステップ35)。 比較の結果,予測走行距離が実績走行距離よりも大きかった場合は,前年度の予測走行距離と前年度の実績走行距離の差分を計算し,差分値に応じた金額を当年度の基準保険料から割引いて(ステップ40)当年度の保険料を決定する(ステップ50)。」(段落【0016】)・「逆に比較の結果,実績走行距離が予測走行距離よりも大きかった場合は,前年度の予測走行距離と前年度の実績走行距離の差分を計算し,差分値に応じた金額を当年度の基準保険料に割増して(ステップ45)当年度の保険料を決定する(ステップ50)。 比較の結果,予測走行距離と実績走行距離が等しかった場合は,割増引きせずに基準保険料を保険料とする(ステップ50)。 次年度以降も自動車保険を継続する場合は,ステップ20~ステップ50を繰り返す。」(段落【0017】)・「以上のように,本実施の形態の自動車保険料計算システムは,顧客から申告された積算距離計の値を用いて車両の走行距離を計測するため,走行距離を計測するための車載装置を必要としない。 また,予測走行距離と実績走行距離の差分に相当する金額を次年度の保険料に繰り越す方式としているため,顧客の申告に基づいて当年度の保険料を確定することができる。」(段落【0018】)カ積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日にずれが生じる場合・「次に,積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日にずれが生じる場合の補正方法について説明する。 積算距離計の値の計測は,保険期間の始期日と終期日に行うと最も正確な値が得られるが,顧客4の便宜性を考えて申告期間を設定し,その期間内に申告するようになっている。」(段落【0078】)・「そのため,走行距離を の計測は,保険期間の始期日と終期日に行うと最も正確な値が得られるが,顧客4の便宜性を考えて申告期間を設定し,その期間内に申告するようになっている。」(段落【0078】)・「そのため,走行距離を計測した期間と保険期間にずれが生じる場合,即ち,実績走行距離の計測期間が対応する保険期間と一致しない場合がある。この場合,申告された値から保険期間中の走行距離を推定して補正する必要がある。 以下では,4つの補正方法を,それぞれ図8(a)~(d)を用いて説明する。 何れの補正方法を採用するかは,保険会社の事業方針により決めることができる。そして,顧客4が申告した実績走行距離そのものではなく,これを補正した走行距離を用いて保険料の割増引金額を計算することは,予め顧客4に定款にて通知するものとする。 なお,自動車保険料計算システム1では,顧客4の申告日を以て積算距離計の計測日とするが,申告時に積算距離計の計測日を申告し,この計測日を用いてもよい。」(段落【0079】)キ第1の補正方法・【図8(a)】 ・「図8(a)は,第1の補正方法を説明するための概念図である。 第1の補正方法では,実績走行距離開始値・終了値の計測日から保険期間中の実績走行距離を推定する。」(段落【0080】)・「図8(a)において,水平方向は時間の推移を表しており,矢線50~56は実績走行距離計算の対象期間を表している。 矢線50~56の両端に記されている黒丸印のうち,始期日側の黒丸印は積算距離計開始値の計測日を表し,終期日側の黒丸印は積算距離計終了値の計測日を表している。以下,図8(b)~(d)の黒丸印も同様である。」(段落【0081】)・「図8(a)に示したように積算距離計開始値の計測日と始 測日を表し,終期日側の黒丸印は積算距離計終了値の計測日を表している。以下,図8(b)~(d)の黒丸印も同様である。」(段落【0081】)・「図8(a)に示したように積算距離計開始値の計測日と始期日の前後関係,及び積算距離計終了値と終期日の前後関係により矢線50~56で表したような4つの計測パターンがある。 即ち,矢線50の場合は,始期日前に積算距離計開始値を計測し,終 期日前に積算距離計終了値を計測する場合であり,矢線52は,始期日前に積算距離計開始値を計測し,終期日後に積算距離計終了値を計測する場合である。 また,矢線54は,始期日後に積算距離計開始値を計測し,終期日前に積算距離計終了値を計測する場合であり,矢線56は,始期日後に積算距離計開始値を計測し,終期日後に積算距離計終了値を計測する場合である。」(段落【0082】)・「補正方法1では,何れの計測パターンにおいても保険期間に対する実際に走行した期間を係数(実際走行期間係数)とし,計測日における走行距離を按分計算する。 即ち,実績走行距離の計測期間から求められる単位期間当たりの走行距離に保険期間を乗じて保険期間中の実績走行距離を推定する。 例えば,保険期間が1年(365日)の場合,実際走行期間係数は次の式(1)で表される。」(段落【0083】)・「実際走行期間係数=365÷(積算距離計終了値の計測日-積算距離計開始値の計測日)・・・(1)」(段落【0084】)・「そして,保険期間中の実績走行距離の推定値は,次の式(2)で推定される。」(段落【0085】)・「実績走行距離の推定値=(申告日時点での積算距離計終了値-申告日時点での積算距離計開始値+保険期間中に車両入替があった場合は,その直前までの積算距離計の累計値)×実際走行期間係 【0085】)・「実績走行距離の推定値=(申告日時点での積算距離計終了値-申告日時点での積算距離計開始値+保険期間中に車両入替があった場合は,その直前までの積算距離計の累計値)×実際走行期間係数・・・(2)」(段落【0086】)ク第2の補正方法・【図8(b)】 ・「次に,図8(b)を参照して第2の補正方法について説明する。 第2の補正方法では,計測日における実績走行距離開始値と予測走行距離を用いて始期日の積算距離計の値を推定する。終期日における計測値は申告された値を用いる。 即ち,実績走行距離の計測開始点(積算距離計開始値の計測日)と保険期間の開始点(始期日)を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする。 矢線60,及び矢線62のように,積算距離計開始値の計測日が始期日以前の場合は,次の式(5)のように,顧客4が申告した予測走行距離を用いて波線部分の走行距離を推定し,始期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0093】)・「始期日での積算距離計の推定値=計測日での積算距離計開始値+予測走行距離×計測日から始期日までの日数÷365・・・(5)」(段落【0094】)・「ただし,保険期間を1年としている。閏年により1年間の日数が366日の場合は366で除する。また,保険期間が1年単位でない場合は,保険単位の日数を用いる。保険期間に関しては以下同様とする。 また,矢線64,及び矢線66のように,積算距離計の値の計測日が 始期日以降の場合は,次の式(6)のように,顧客4が申告した予測走行距離を用いて波線部分の走行距離を推定し,始期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0095】)・「始期日での積算距離計の推定値=計測日での積算距 の式(6)のように,顧客4が申告した予測走行距離を用いて波線部分の走行距離を推定し,始期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0095】)・「始期日での積算距離計の推定値=計測日での積算距離計開始値-予測走行距離×始期日から計測日までの日数÷365・・・(6)」(段落【0096】)・「以上,式(5)又は式(6)により始期日での積算距離計の値を推定値を用い,保険期間中の実績走行距離の推定値は,次の式(7)により推定する。」(段落【0097】)・「実績走行距離の推定値=計測日での積算距離計終了値-始期日での積算距離計の推定値+保険期間中に車両入替があった場合は,その直前までの積算距離計の累計値・・・(7)」(段落【0098】)ケ第3の補正方法・【図8(c)】 ・「次に,図8(c)を用いて第3の補正方法について説明する。 第3の補正方法では,計測日における実績走行距離終了値と実際に走行した距離を用いて終期日の積算距離計の値を推定する。始期日における計測値は申告された値を用いる。 即ち,実績走行距離の計測終了点(積算距離計終了値の計測日)と保険期間の終了点(終期日)を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする。 矢線70,及び矢線74のように,積算距離計終了値の計測日が終期日以前の場合は,次の式(8)のように,申告による実績走行距離を用いて波線部分の走行距離を推定し,終期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0102】)・「終期日での積算距離計の推定値=計測日での積算距離計終了値+(積算距離計終了値-積算距離計開始値)×積算距離計終了値の計測日から終期日までの日数÷365・・・(8)」(段落【0103】)・「また,矢線72,及び矢線76の 値=計測日での積算距離計終了値+(積算距離計終了値-積算距離計開始値)×積算距離計終了値の計測日から終期日までの日数÷365・・・(8)」(段落【0103】)・「また,矢線72,及び矢線76のように,積算距離計の値の計測日が終期日以降の場合は,次の式(9)のように,申告による実績走行距離を用いて波線部分の走行距離を推定し,終期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0104】)・「終期日での積算距離計の推定値=計測日での積算距離計終了値-(積算距離計終了値-積算距離計開始値)×終期日から積算距離計終了値の計測日までの日数÷365・・・(9)」(段落【0105】)・「以上,式(8)又は式(9)により求めた終期日での積算距離計の値を推定値を用い,保険期間中の実績走行距離の推定値は,次の式(10)により推定する。」(段落【0106】)・「実績走行距離の推定値=終期日での積算距離計の推定値-計測日での積算距離計開始値+保険期間中に車両入替があった場合は,その直前までの積算距離計の累計値・・・(10)」(段落【0107】)コ第4の補正方法・【図8(d)】 ・「次に,図8(d)を用いて第4の補正方法について説明する。 第4の補正方法では,積算距離計開始値とその計測日,及び予測走行距離から始期日での積算距離計の値を推定し,更に,積算距離計終了値とその計測日,及び実際に走行した距離から終期日での積算距離計の値を推定する。」(段落【0111】)・「始期日での積算距離計の値は第2の補正方法と同じ方法により推定し,終期日での積算距離計の値は第3の補正方法と同じ方法により推定する。 そして,保険期間中の実績走行距離は,次の式(11)により推定する。」(段落【0112】)・ 法と同じ方法により推定し,終期日での積算距離計の値は第3の補正方法と同じ方法により推定する。 そして,保険期間中の実績走行距離は,次の式(11)により推定する。」(段落【0112】)・「実績走行距離の推定値=終期日での積算距離計の推定値-始期日での積算距離計の推定値+保険期間中に車両入替があった場合は,その直前までの積算距離計の累計値・・・(11)」(段落【0113】)(2) 前記第2,2(5)及び上記(1)の本件明細書等の記載によれば,本件発明1及び2の意義は,以下のとおりと認められる。 ア一般に,自動車等の車両には,事故時の損害を補填するために損害保険が設定されており,その保険料は各種の条件を用いて決定されている。 近年は,車両の走行距離を用いて保険料を設定する商品も発売されて いるが,その場合,車両に走行距離を計測するための車載装置を搭載する必要があり,また,実際に走行した走行距離を用いて保険料を設定するために当年度の走行距離の計測が完了するまで保険料を確定することができなかった。 本件発明1及び2は,特別な車載装置を用いなくても走行距離によって保険料を設定することと,当年度の走行距離が計測される前に保険料を確定することを目的とするものである。 イ本件発明1及び2の自動車保険料計算システムにおいては,顧客から申告された積算距離計の値を用いて車両の走行距離を計測することにより,走行距離を計測するための車載装置を必要としないものとし,また,予測走行距離と実績走行距離の差分に相当する金額を次年度の保険料に繰り越す方式としていることにより,顧客の申告に基づいて当年度の保険料を確定するものとした上,積算距離計の値の計測を顧客に委ねることにより生じる積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日とのずれ 繰り越す方式としていることにより,顧客の申告に基づいて当年度の保険料を確定するものとした上,積算距離計の値の計測を顧客に委ねることにより生じる積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日とのずれについては,実績走行距離の計測期間から求められる単位期間当たりの走行距離に保険期間を乗じて保険期間中の実績走行距離を推定する方法(第1の補正方法)を採用した上(本件発明1),さらに,実績走行距離の計測開始点と保険期間の開始点を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする方法(第2の補正方法),実績走行距離の計測終了点と保険期間の終了点を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とする方法(第3の補正方法),積算距離計開始値とその計測日及び予測走行距離から始期日での積算距離計の値を推定し,さらに積算距離計終了値とその計測日及び実際に走行した距離から終期日での積算距離計の値を推定する方法(第4の補正方法)を採用することとした(本件発明2)ものである。 2 争点(1)ア(本件発明1の実施の有無)について (1) 被告サービスの構成被告のウェブサイト(乙20)には,「保険開始日のオドメータ〔判決注:積算距離計〕の値は申込日から保険開始日までの日数に応じて自動的に計算します。」との記載とともに,例として,「保険始期日の60日前に契約距離区分『7,000km以下』で申込みを行った場合」には,「申込日に申告したオドメータの値に60日間で走行すると仮定した距離1,150kmを足した数字を保険始期日のオドメータの値とします。」とし,計算式として,「契約距離区分の上限値7,000km×60日(申込日から保険始期日までの日数)/365日=1,150km」との記載がある。 したがって,被告サービスにおいては,契約距離区分の上限値を 式として,「契約距離区分の上限値7,000km×60日(申込日から保険始期日までの日数)/365日=1,150km」との記載がある。 したがって,被告サービスにおいては,契約距離区分の上限値を申込日から保険始期日までの日数で日割計算し,これを申込日の積算距離計の値に加えることにより,保険始期日の積算距離計の値を推定しているのであるから,「保険始期日の積算走行距離(実績走行距離)を,申込日の積算走行距離と,契約者が選択した契約距離区分の上限値をもとに推定する方法」(第2の補正方法に相当)を採用しているものと認められる。 (2) 実施の有無ア前記第2,2(5)のとおり,本件特許の請求項1(本件発明1)には,「前記実績走行距離取得手段によって計算された前記実績走行距離を用いて,前記開始値計測日および前記終了値計測日から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する」との記載がある(第1の補正方法に相当)。 これに対し,被告サービスにおいては,このような第1の補正方法は採用していない。 すなわち,被告サービスにおいては,本件発明1にいう「実績走行距離」(継続手続日での積算距離計の数値から申込日に申告した積算距離 計の値を差し引いた距離)を用いておらず,そのため,これを前提とした「単位期間当たりの走行距離」を計算していないし,さらに,この「単位期間当たりの走行距離」に「直前の保険期間」を乗じるという計算もしていないところである。 したがって,被告サービスにおいては,本件発明1を実施していないというべきである。 イこの点に関して原告は,被告サービスは実績走行距離(18,000㎞-10,000㎞=8,000㎞)から日割計算により算定した調整距離(7, ては,本件発明1を実施していないというべきである。 イこの点に関して原告は,被告サービスは実績走行距離(18,000㎞-10,000㎞=8,000㎞)から日割計算により算定した調整距離(7,000㎞÷365日×60日=1,150㎞)を差し引いて求める方法といえるのであるから,本件発明1にいう「実績走行距離」を用いて「積算距離計の開始値計測日」から求められる「単位期間当たりの走行距離」に保険始期日までの期間を乗じた数値をもって調整し,その結果として,「保険期間中の実績走行距離を推定する手段」を具備しているといえるなどと主張する。 しかし,原告も上記主張の中で自認するとおり,被告サービスにおいて求められる「単位期間当たりの走行距離」は,「実績走行距離」(上記の例でいえば8,000km)を日割計算したものではなく,「予測走行距離申告」(被告サービスにおける「契約距離区分」。上記の例でいえば7,000km)を日割計算したものにすぎない。また,上記アのとおり,被告サービスにおいては,「単位期間当たりの走行距離」に「直前の保険期間」を乗じるという計算は一切行っていない。 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 (3) 以上によれば,争点(1)アにおける原告の主張は,理由がない。 3 争点(1)イ(本件発明1の均等実施の成否)について(1) 均等論について ア特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等する製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても,①その部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),②その部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),③そのよ ①その部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),②その部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),③そのように置き換えることに,特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 イ第1要件に関する特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に 明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。 ける従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に 明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。 ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。そのような場合には,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載のみから認定される場合に比べ,より特許請求の範囲の記載に近接したものとなり,均等が認められる範囲がより狭いものとなると解される。 また,第1要件の判断,すなわち対象製品等との相違部分が非本質的部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,そのことは第1要件の充足を否定する理由とはならないと解すべきである(知的財産高等裁判所平成28年3月25日(平成27年(ネ)第10014号)特別部判決参照)。 ウ以上を前提に,本件の原告の主張について検討する。 (2) 本件特許の出願経過証拠(乙7,9,16ないし18)によれば,以下の事実が認められる。 ア平成19年9月5日付け手続補正書の記載ソニーは平成16年10月15日に本件特許を出願し,平成19年9月5日に手続補正書(乙7)を提出するとともに,審査請求をした。 上記手続補正 る。 ア平成19年9月5日付け手続補正書の記載ソニーは平成16年10月15日に本件特許を出願し,平成19年9月5日に手続補正書(乙7)を提出するとともに,審査請求をした。 上記手続補正書における請求項の数は12であり,このうち請求項1ないし4は以下のとおり記載されていた(以下,上記手続補正書におけ る請求項を「旧請求項1」などという。)。 「【請求項1】所定の保険期間中に車両が走行すると予測される予測走行距離を取得する予測走行距離取得手段と,前記取得した予測走行距離を用いて前記所定の保険期間中の基準保険料を設定する基準保険料設定手段と,前記基準保険料を設定した保険期間の直前の保険期間に車両が実際に走行した実績走行距離を取得する実績走行距離取得手段と,前記直前の保険期間に対して取得した予測走行距離と,前記取得した実績走行距離との差分から,調整保険料を決定する調整保険料決定手段と,前記基準保険料と前記調整保険料とから保険料を算出する保険料算出手段と,を具備することを特徴とする自動車保険料計算装置。 【請求項2】前記取得した実績走行距離の計測期間が前記直前の保険期間と一致しない場合に,前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定する推定手段を具備し,前記調整保険料決定手段は,前記推定手段で推定した実績走行距離を用いて調整保険料を決定することを特徴とする請求項1に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項3】前記推定手段は,前記取得した実績走行距離を用いて,当該実績走行距離の計測期間から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定することを特徴とする請求項2に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項4】 から求められる単位期間当たりの走行距離に前記直前の保険期間を乗じて前記直前の保険期間中の実績走行距離を推定することを特徴とする請求項2に記載の自動車保険料計算装置。 【請求項4】前記推定手段は,前記取得した実績走行距離の計測開始点と前記直前の保険期間の開始点,又は,前記取得した実績走行距離の計測終了点と前記直前の保険期間の終了点,のうち,少なくとも一方を一致させた場合の走行距離を実績走行距離の推定値とすることを特徴とする請求項2に記載の自動車保険料計算装置。」イ拒絶理由通知ソニーは,平成21年12月22日,特許庁から拒絶理由通知書(乙9)の発送を受けた。 上記拒絶理由通知書では,旧請求項1,2,4ないし12に係る発明は進歩性を欠く旨の指摘があった。そして,その理由として,次のような記載があった(〔〕内の記載は本判決による。)。 「文献1〔乙10文献〕や2〔乙11文献〕では当期つまり『直前の保険期間』における『予測走行距離』と『実績走行距離』との『差分』からその『直前の保険期間』の保険料を調整するモデルが扱われており,文献3〔乙12文献〕や4〔乙13文献〕では次期や翌年つまり『所定の保険期間』の保険料に対するボーナスや繰り越しのモデルが扱われており,また,次期に繰り越しをするようなインセンティブのモデル自体さまざまな業種における一般的なモデルであるから,請求項1にあるような処理は組み合わせや類推により得られることといえる。請求項2と4の『推定』処理については,文献3〔乙12文献〕で随時に手続きができるとされていることから,任意のあるいは始期からの『推定』を含んだ処理は考察できるといえる。」ウ平成22年2月15日付け手続補正書及び意見書上記イの拒絶理由通知書を受けて,ソニーは,平成22年2月 ていることから,任意のあるいは始期からの『推定』を含んだ処理は考察できるといえる。」ウ平成22年2月15日付け手続補正書及び意見書上記イの拒絶理由通知書を受けて,ソニーは,平成22年2月15日,手続補正書(乙16)及び意見書(乙17)を特許庁に提出した。 このうち手続補正書は,旧請求項1及び2に旧請求項3を結合させて新たな請求項1(本件発明1)とし,旧請求項4を請求項2(本件発明2)とするなどの補正をしたものであった。 また,意見書には,「本願請求項1~3を結合する補正を行いましたので,本願補正後の請求項1は,十分に進歩性を有するものと思量〔判決注:原文ママ〕いたします。」との記載があった。 エ特許査定特許庁は,平成22年3月3日,上記ウの手続補正書に基づき,これを本件特許として特許査定をした。 (3) 乙10文献ないし乙13文献の記載本件特許の出願に先立つ刊行物である乙10文献ないし乙13文献には,以下の記載がある。 ア乙10文献・「走行距離に基づく自動車保険」(表題)・「マイルに応じたプレミアム」(11頁1行目)・「自動車運転者は当該期間中に運転すると予想される距離/時間に対して,一括でも分割でもよいので,予め費用を支払う。例えば,期間の始期に12500マイルについて支払う自動車運転者もいれば,5000マイルについて支払った上で,必要に応じて追加分を支払う者もいる。 全体のプレミアムは,実績走行距離に基づいて当該期間の終期に計算される。自動車所有者は未使用の距離/時間についてクレジットを得るか,未払い分について支払う。」(11頁6~11行目)イ乙11文献・「【請求項1】申込者が該当車輌の将来の走行距離を設定し,その走行距離他諸条件に応じて自動車保険料金を算出する方法」 を得るか,未払い分について支払う。」(11頁6~11行目)イ乙11文献・「【請求項1】申込者が該当車輌の将来の走行距離を設定し,その走行距離他諸条件に応じて自動車保険料金を算出する方法」・「【請求項3】申込時の走行距離・契約距離・契約満了の予定日(過 去の走行ペースから算出)・階級・年齢他申込に必要な条件を入力すると,自動車保険料金見積書(以下見積書という)・自動車保険加入申込書(以下申込書という)・自動車保険契約書(以下契約書という)などを作成できると同時に,それらの情報を保険会社に伝達するシステム」・「【発明の実施の形態】①保険会社が店舗と代理店契約を締結する。 ②代理店である店舗の従業員が店舗敷地内又は顧客の指定する場所に出向き,該当車輌の走行距離メーターを目視により確認する。 ③店舗の従業員が契約距離・契約満了の予定日・階級・年齢他見積もりに必要な条件を顧客から聞いて,端末中のソフトに入力し,見積書発行後,顧客に検討してもらう。 ④顧客が申込の意思表示をした場合は,店舗従業員はソフトに蓄積される見積書発行データから該当申込者の情報を抽出し,“申込書発行”メニューを選択する。 ⑤発行される申込書には②で確認した走行距離以外の見積書発行時のデータが印字され,店舗の従業員が再度②の方法により該当車輌の申込時点の走行距離を確認,記入,捺印し,それ以外の項目は,記載内容を顧客が確認した上で捺印してもらう。 ⑥店舗の従業員が申込書を回収後,保険会社に送付し,保険会社が顧客から保険料を徴収する。尚,保険会社は見積書・申込書などの店舗で入力したデータを照会することが可能である。 〔中略〕▲10▼契約の終了は契約距離に到達した時点とし,契約距離の▲11▼延長は契約開始後何時にても可能とする。又,契約距離に 申込書などの店舗で入力したデータを照会することが可能である。 〔中略〕▲10▼契約の終了は契約距離に到達した時点とし,契約距離の▲11▼延長は契約開始後何時にても可能とする。又,契約距離に満たない時点での解約の場合は,残りの距離を計算し相当額を被保険者に払い戻すこととする。」(段落【0005】)ウ乙12文献 ・「本発明は,陸上車両,船舶又は航空機,また人間,及び保険証券でカバーされる他の物又は動物に適用される保険料の消費を,そのコスト及び効率を最適化するために,管理できる電子装置に関する。」(段落【0001】)・「被保険者に利用できるものは,カードの情報を読取り及び書込みできる装置と保険会社とにより有効化される2つのスマートカードである。 ・・・期間の終わり又は随時に,使用者は承認オフィスでカードを読み取ってもらい,価格低減又は次の期間での“ボーナス”の利益を得ることができる。」(段落【0004】)エ乙13文献・「このような従来の課題を考慮し,本発明は,自動車保険の契約者が,契約者毎の実際の運転の状況に即して保険料が決定されるとともに,自動車の使用の状況を速やかに保険料に反映できるシステムを提供することを課題とするものである。」(段落【0006】)・「すなわち,請求項1では,保険会社の保険会社サーバと,自動車に備えられる車載端末とが,ネットワークを介して接続され,車載端末には,乗車する運転者の年齢,乗車人数等の自動車の使用情報を申告入力して保険会社サーバに送信する使用情報送信手段と,自動車を元に乗車中の走行速度,急加減速,急ハンドル等の運転情報を取得して保険会社サーバに送信する運転情報送信手段とが備えられ,保険会社サーバには,予め支払われた自動車保険の契約保険料からこの乗車により消費された 中の走行速度,急加減速,急ハンドル等の運転情報を取得して保険会社サーバに送信する運転情報送信手段とが備えられ,保険会社サーバには,予め支払われた自動車保険の契約保険料からこの乗車により消費された保険料分を,申告された使用情報と取得された運転情報とに基づき算出する消費保険料算出手段とが備えられる。」(段落【0008】)・「この手段では,乗車に際し車載端末から,自動車の使用情報が申告入力され,一方運転情報が自動車を元に取得されて保険会社サーバに送信されると,保険会社サーバでは,この乗車で算出された保険料が,予 め契約時に支払われていた保険料から消費されたとして差し引かれる。」(段落【0009】)・「上述の動作が繰り返された結果,保険の契約の満期日の時点で,追加保険料20000円は全部消費されなかったため,残保険料が生じた。 この残保険料は,翌年の契約に繰り越しても,あるいは契約者に払い戻してもいずれでもよい。」(段落【0082】)・「このように実施の形態(1)の変動消費型保険システム1では,自動車保険に契約した自動車の乗車毎に,誰が乗るか,何人乗るか,いつ,どこを走行するか,走行距離はどの程度か,安全運転しているか,といった種々の情報に基づいて保険料を計算し,あらかじめ支払った保険料を消費している。」(段落【0083】)(4) 本件発明1の本質的部分以上を前提に,本件発明1の本質的部分について検討する。 ア本件明細書等においては,走行距離を用いて保険料を設定する場合,車両に走行距離を計測するための車載装置を搭載する必要があり,また,当年度の走行距離の計測が完了するまで保険料を確定することができなかったとの記載がある。 そして,本件明細書等には,顧客から申告を受けた積算距離計数値から実績走行距離を算出する 要があり,また,当年度の走行距離の計測が完了するまで保険料を確定することができなかったとの記載がある。 そして,本件明細書等には,顧客から申告を受けた積算距離計数値から実績走行距離を算出するため,走行距離を計測するための車載装置を必要としないこと,及び,実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整するため,当年度の保険料を確定することができるとの記載がある。 そうすると,これらの本件明細書等の記載のみに照らせば,本件発明1の本質的部分とは,「積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」ことにあるようにみえなくもない。 しかし,ここにいう「積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」との部分は,審査請求時における旧請求項1及び2(前記(2)ア参照)に係る発明に相当するところ,当該発明は,拒絶理由通知書において,乙10文献等に照らし進歩性を欠く旨の指摘を受けていたものである。 そして,この旧請求項1及び2については,旧請求項3(第1の補正方法。なお,この旧請求項3の発明については,進歩性を欠く旨の指摘はなかった。)が結合され,新たに請求項1(本件発明1)へと補正されたところ,ようやく特許査定を受けたというのである。 そうすると,上記補正後の本件発明1に関しては,上記の「積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」との部分は,そもそも従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるといえるのかどうか疑問があるといわざるを得ないから,以下検討する。 イ(ア) まず,乙 翌年度の保険料を調整する」との部分は,そもそも従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるといえるのかどうか疑問があるといわざるを得ないから,以下検討する。 イ(ア) まず,乙10文献には,「自動車運転者は当該期間中に運転すると予想される距離」に対して「予め費用を支払」い,「全体のプレミアムは,実績走行距離に基づいて当該期間の終期に計算され」,「自動車所有者は未使用の距離」について「クレジットを得るか,未払い分について支払う」との記載がある。 また,乙11文献には,「申込者が該当車輌の将来の走行距離を設定し,その走行距離他諸条件に応じて自動車保険料金を算出する方法」として,代理店である店舗の従業員が保険契約締結の際に「該当車輌の走行距離メーターを目視により確認」し,「契約距離・契約満了の予定日」等を顧客から聞くこととし,契約の終了は「契約距離に到達した時点」とし,「契約距離に満たない時点での解約の場合は,残りの距離を計算 し相当額を被保険者に払い戻すこととする。」との記載がある。 したがって,乙10文献及び乙11文献においては,直前の保険期間における予測走行距離と実績走行距離の差分から,その直前の保険期間の保険料を調整するモデルが開示されているということができる。 (イ) さらに,乙12文献及び乙13文献には,それぞれ,「期間の終わり又は随時に,・・・次の期間での“ボーナス”の利益を得ることができる。」(乙12文献),「この残保険料は,翌年の契約に繰り越しても・・・よい。」(乙13文献)との記載がある。 したがって,乙12文献及び乙13文献においては,所定の保険期間の保険料に対して将来の保険料の調整をする旨開示されているということができる。 (ウ) そうすると,本件発明1のうち「積算距離計数 したがって,乙12文献及び乙13文献においては,所定の保険期間の保険料に対して将来の保険料の調整をする旨開示されているということができる。 (ウ) そうすると,本件発明1のうち「積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」との部分は,拒絶理由通知書でも指摘されているとおり,乙10文献ないし乙13文献に記載された事項を組み合わせることなどにより得られる程度の事項でしかないものというべきである。 ウ以上によれば,本件明細書等に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところは,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分というべきである。 そして,本件明細書等に記載されていない従来技術も参酌すると,本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分としては,「積算距離計数値から実績走行距離を算出するとともに,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」との部分だけでは足りず,これに,出願経過において結合された部分,すなわち,積算距離計の計測日と契約期間の始期日・終期日とのずれについて「実績走行距離の計測期間から求められ る単位期間当たりの走行距離に保険期間を乗じて保険期間中の実績走行距離を推定する」部分(第1の補正方法)まで含まれるものと解するのが相当である。 エこの点を被告サービスにおいてみると,前記2(2)のとおり,被告サービスにおいては第1の補正方法を採用していないのであるから,本件発明1と被告サービスの異なる部分が特許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,本件においては,均等の要件のうち第1要件を満たさないから,その余の点について判断する ら,本件発明1と被告サービスの異なる部分が特許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,本件においては,均等の要件のうち第1要件を満たさないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の均等実施の主張は理由がない。 オこの点に関して原告は,本件発明1の本質的部分は「予測走行距離により当年度の保険料を設定し,顧客から申告を受けた積算距離計数値から実績走行距離を算出し,その実績走行距離と予測走行距離の差分から翌年度の保険料を調整する」という構成部分であると主張する。 しかし,これまで論じてきたとおり,出願時の従来技術に照らせば,当該部分のみでは従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分ということができないのであって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 小括以上によれば,争点(1)イにおける原告の主張は理由がない。 4 争点(1)ウ(本件発明2の実施の有無)について(1) 原告は,仮に被告が本件発明1を実施していないとしても,被告サービスにおいて第2の補正方法を行っており,第2の補正方法は本件発明2に含まれるから,被告は本件発明2を実施していると主張する。 しかし,本件特許の請求項2には「請求項1に記載の自動車保険料計算装置」と記載されているのであって,同請求項が請求項1の従属項であること は明らかである。そして,前記2のとおり,被告は請求項1の発明(本件発明1)を実施していないのであるから,その従属項である請求項2の発明(本件発明2)もまた実施していないといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (2) この点に関して原告は,請求項2の記載内容及び出願の経緯からすれば,請求項2は請求項1における実績走行距離の推定方法に関する記載部 るを得ない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (2) この点に関して原告は,請求項2の記載内容及び出願の経緯からすれば,請求項2は請求項1における実績走行距離の推定方法に関する記載部分(「前記推定手段は」以下の部分)について,これを置換した内容と解釈されるべきであると主張する。 しかし,請求項2においては,例えば「請求項1記載の推定手段に代えて」などといった置換を意図するような文言は一切見当たらない。原告は請求項2の書き出しが「前記推定手段は」と記載されていることや,ソニーが拒絶理由通知を受けた後も請求項2(審査請求時の請求項4)を外さずに残したことなどからすれば,置換の趣旨であることは明らかである旨主張するが,いずれも独自の見解をいうものにすぎない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,争点(1)ウにおける原告の主張は理由がない。 なお,原告は,本件発明3ないし10については,被告が実施しているとする具体的事実を何ら主張立証しないから,被告がこれらの発明を実施していると認めることはできない。 5 結論以上のとおり,本件においては,被告が,原告の本件職務発明に係る特許発明である本件各発明を実施しているとは認められない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来 保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 別紙「特許公報」は省略
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