- 1 - 主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中80日をその刑に算入する。 A地方検察庁で保管中の中途解約申込書1枚(平成17年領第2098号符号3)の偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は第1B(当時82歳)から貸金名下に金銭を詐取しようと企て,平成15年9月5日ころから同月10日ころまでの間,神戸市C区D町a丁目b番c号所在の同女方において,同女に対し返済する意思も能力もないのにあるように装い必ず返すので180万円を,,「貸してほしい旨繰り返し告げた上同月10日同所において同女に対し約束どお。」,,,,り返済する意思も能力もないのにあるように装い11月か12月に必ず返すので180,「。」,,,,万円を貸してほしい旨虚偽の事実を告げ同女をしてその旨誤信させよって同日同所において,同女から貸金名下に現金180万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第2Bから貸金名下に金銭を詐取しようと企て,平成15年9月14日ころから同月19日ころまでの間,同所において,同女に対し,返済する意思も能力もないのにあるように装い「お金がいるので200万円貸してほしい」旨繰り返し告げた上,同月19日,,。 ,,,「同所において同女に対し約束どおり返済する意思も能力もないのにあるように装い1年間で返すので200万円を貸してほしい旨虚偽の事実を告げ同女をしてその旨誤。」,信させ,よって,同日,同所において,同女から現金200万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第3Bから貸金名下に金銭を詐取しようと企て,平成15年9月25日ころから同月30日ころまでの間,同所において,同女に対し,返済する意思も能力もないのにあるように装い「180万 て財物を交付させた第3Bから貸金名下に金銭を詐取しようと企て,平成15年9月25日ころから同月30日ころまでの間,同所において,同女に対し,返済する意思も能力もないのにあるように装い「180万円を貸してほしい」旨繰り返し告げた上,同月30日,同所において,。 同女に対し約束どおり返済する意思も能力もないのにあるように装い今年中に絶対,,,「増やして返すので180万円を貸してほしい旨虚偽の事実を告げ同女をしてその旨誤。」,信させ,よって,同日,同所において,同女から現金180万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第4Bと株式会社Eとの間の投資契約を同女に無断で解除して,同契約に基づく預託金を契約解除に伴う返還金として同女の預金口座に入金させようと企て,平成15年10月24日ころから同月28日ころまでの間,神戸市F区G町d丁目e番f号Hg号の当時の被告人方及びB方において,行使の目的をもって,ほしいままに,黒色ボールペンで中途解約申込書の満期日欄にH 5月末日名義欄にB振込あかり価格欄に¥「、、」,「」,「百萬,住所欄に「兵庫県神戸市I区,氏名欄に「B」などと各冒書した上,上記申込書」」に「B」と刻した印鑑を冒捺し,もって,B作成名義の中途解約申込書1通(平成17年領第2098号符号3)を偽造し,そのころ,東京都新宿区Jh丁目i番j号所在のEに対し,真正に成立したもののように装って,上記偽造に係る中途解約申込書を郵送して提出し,もって,上記偽造に係る中途解約申込書を行使した- 2 -ものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(判示第4の事実に関する補足説明-詐欺罪の成立を認めなかった理由) 判示第4の事実に関する公 -ものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(判示第4の事実に関する補足説明-詐欺罪の成立を認めなかった理由) 判示第4の事実に関する公訴事実(平成17年10月25日付け起訴状記載公訴事実)は,判示の有印私文書偽造,同行使罪のほか,これらを手段とするEに対する詐欺罪からなっているところ詐欺罪に関する部分の要旨は被告人はBに無断で前記契約を解,,「,除して,Eから同契約解除に伴う返還金として金銭を騙し取ろうと企て,同社に対し,偽造に係る前記中途解約申込書が真正に成立したもののように装い,同申込書を郵送して提出行使するとともに上記契約の中途解約を申し入れ,同社常務取締役Kをして,中途解約申込書が真正に作成され,同女本人が上記契約の中途解約を申し込んだものと誤信させて,上記契約の中途解約を決定させ,同年11月5日午前10時37分ころ,株式会社L銀行M支店において,Eの従業員をして,同行N営業部に開設されたE名義の普通預金口座から株式会社O銀行P支店に開設された同女名義の普通預金口座に現金50万円を振込入金させ,もって,人を欺いて財物を交付させた」というものである。当裁判所は,本件の事実関係の下においては,既遂であれ未遂であれ,上記詐欺罪の成立を認めることができないと判断したので,以下,その理由を補足説明する。 関係各証拠によれば(1)被告人は判示第1ないし第3の各犯行平成17年11月,,(22日付け起訴状記載各公訴事実)に見られるように,Bから何度も多額の金員を詐取するなどした結果同女が有する預金口座以下本件口座というの預金残高がほとん,(「」。)どなくなったことから,同女とE間の投資契約を勝手に解約し,同社からの返還金50万円を本件口座 るなどした結果同女が有する預金口座以下本件口座というの預金残高がほとん,(「」。)どなくなったことから,同女とE間の投資契約を勝手に解約し,同社からの返還金50万円を本件口座に振込入金させた上,同女にこれを払い戻させてその交付を受けようと考え判示の有印私文書偽造同行使の犯行に及んだこと(2)被告人は上記犯行に及んだ数,,,,日後,預り証を交付するのと引き替えにBからその預金通帳を取り上げて,そのままでは同女が預金の払戻しを受けられない状態にしたこと(3)被告人は更にその数日後である,,同年11月5日,Bを連れて上記O銀行P支店に行き,同女が自宅から持参した銀行届出印と同女に返還した上記預金通帳とを係員に提出させるなどして50万円の払戻しを受けさせた上「約束どおり50万円貸してね」などと告げて,同女からその交付を受けたこ,。 とがそれぞれ認められる。 なお上記(2)に関し被告人は捜査段階から一貫してBから本件口座の預金通帳,,,,を預かったことはないと弁解している。しかしながら,上記認定に沿うBの供述(甲45)は,内容が自然で客観的証拠とも合致しており,その信用性に疑いを差し挟むべき事情がないのに対し,被告人の弁解は,その内容が客観的証拠と合致せず,不自然かつ不合理といわざるを得ないから,信用することができない。 以上の事実関係を前提に検討すると,上記投資契約を勝手に解約し,Eをして返還金50万円を本件口座に振込入金させた被告人の行為(以下「本件行為」ということがあるはBから50万円を詐取するための準備行為として同女がEに対して有する預託金。),,返還請求権を勝手に銀行に対する預金債権に転換したというものにすぎず,別途同女に対する欺罔行為を行って50万円の交付を受けること 取するための準備行為として同女がEに対して有する預託金。),,返還請求権を勝手に銀行に対する預金債権に転換したというものにすぎず,別途同女に対する欺罔行為を行って50万円の交付を受けることが当然の前提となっているのであるから,本件行為のみをもってしては,同女を道具ないし代理人として被告人自身がEから5- 3 -0万円の交付を受けたものとは考え難いし,最終的にB自身に領得させようという意思が被告人にあったものとも考え難い。 要するに,本件の事実関係の下においては,追起訴に係る判示第1ないし第3の各犯行におけるのと同様に,被告人がBから50万円の交付を受ける行為そのものについて,Bに対する詐欺罪の成立を観念すれば足りるのであって,既遂であれ未遂であれ,別途Eに対する詐欺罪も成立するとみるべきではない。換言すれば,本件にあっては,欺罔行為者以外の第三者に財物を交付させるなどした場合に詐欺罪の成立を認めるのに必要と解されている特別の事情が存するとまではいえないし,不法領得の意思に着目するとすれば,被告人とBのいずれへの領得を考えるにせよ,本件行為自体はいまだ不法領得の意思に基づくものとまではいえないと考える。 ,,,, 他方検察官は当裁判所の求釈明に対し(1)被告人とBの従来の関係に照らすと本件口座に入金された50万円は事実上専ら被告人の意思にゆだねられた状態にあった,(2)被告人とBの間では上記50万円の払戻しに先立って利息付き消費貸借契約が成立し,ており,同女としては50万円を直ちに被告人に交付すべき立場にあったなどとして,本件口座に入金された50万円が当然に被告人に渡るという状況が存したから,詐欺罪の成立に必要な上記特別の事情があるといえると主張するしかしながら(1)については預。 ,,金通帳は取り上げ 本件口座に入金された50万円が当然に被告人に渡るという状況が存したから,詐欺罪の成立に必要な上記特別の事情があるといえると主張するしかしながら(1)については預。 ,,金通帳は取り上げたものの,銀行届出印はなおBの保管下にあったから,もともと被告人単独では払戻しを受け得る状態になかったし,被告人自身としても,銀行係員に対する払戻請求手続そのものはBに行わせた上で,同女から50万円の交付を受けることを予定していたのであるから,仮に同女が交付の求めに応じることがほぼ確実であったとしても,本件口座に50万円が入金されれば被告人に交付されたも同然とまで評価することはできないまた(2)については要するに被告人がBを欺罔して50万円を交付するように。 ,,,約束させていたということに帰着するのであるから,それをBからの50万円の詐取の過程としてそのまま構成すれば足りるのであって,本件口座への50万円の入金それ自体をEからの50万円の詐取として構成することには,やはり無理があるといわざるを得ない。 したがって,判示第4の事実に関する公訴事実のうち,詐欺罪については,既遂であれ未遂であれ,その成立を肯認することができないが,これは判示有印私文書偽造,同行使罪と牽連犯の関係にあるとして起訴されたものと認められるから,主文において特に無罪の言渡しをしない。 (法令の適用)被告人の判示第1ないし第3の各所為はいずれも刑法246条1項に,判示第4の所為のうち有印私文書偽造の点は刑法159条1項に,同行使の点は同法161条1項,159条1項にそれぞれ該当するが,判示第4の有印文書偽造とその行使との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断することとし,以上は同法 にそれぞれ該当するが,判示第4の有印文書偽造とその行使との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断することとし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をし(ただし,短期は判示第4の罪の刑のそれによる,その刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処。)し,同法21条を適用して未決勾留日数中80日をその刑に算入し,A地方検察庁で保管中の中途解約申込書1通(平成17年領第2098号符号3)の偽造部分は,判示第4の- 4 -偽造有印私文書行使の犯罪行為を組成した物で,何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,知人の女性から貸金名下に現金を詐取した詐欺3件と,同女と健康食品開発販売業者との間の投資契約を勝手に解約し,その返還金を同女の預金口座に入金させようと企て,同女名義の中途解約申込書1通を偽造,行使したという有印私文書偽造,同行使各1件からなる事案である。 その利欲的な動機,経緯に酌量の余地がないこと,独居老人である被害者の信頼を裏切った卑劣な犯行であって,態様,手口も悪質であること,被害金額が合計560万円と相当の多額に達するのに,これに対する被害弁償が十分なされたとはいえないこと,被告人が多額の借財をしている知人はB以外にも何人かいる上,浪費癖のあることもうかがわれ,生活態度が芳しくないことなどに照らすと,被告人の刑責は重いといわざるを得ない。 なお,被害弁償について付言すると,被告人の供述等によれば,余罪も含めたBからの入手金合計 費癖のあることもうかがわれ,生活態度が芳しくないことなどに照らすと,被告人の刑責は重いといわざるを得ない。 なお,被害弁償について付言すると,被告人の供述等によれば,余罪も含めたBからの入手金合計1594万円に対し,合計543万1000円(判示第4の犯行に関連する50万円を含むを返済しあるいは弁償するなどしたというのであるから被告人も自認。),,するとおり,なお1050万円余りが未返済・未弁償のままで残っているものの,本件被害金額については,少なくともその3分の1程度の弁償がなされているとみるべきものと考えられる。 そして,以上の諸事情に照らすと,他方で,上記のとおり,ある程度弁償の努力をしていること,被告人がおおむね事実を認めて反省の態度を示していること,前科前歴を有しないこと,内縁の夫が被告人に対する今後の監督を約束していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,なお本件は執行猶予が相当な事案とはいえず,主文の程度の実刑は免れないところである。 よって,主文のとおり判決する。 平成18年3月8日神戸地方裁判所第1刑事部裁判官的場純男
▼ クリックして全文を表示