平成15年10月22日宣告平成15年(わ)第864号判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。 千葉地方検察庁で保管中の包丁1丁(平成15年千葉検領1253号符号1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 A(当時25歳)を殺害して,同人が所持する株式会社B経営に係る「C店」の従業員出入口のかぎや金庫のかぎ等が束ねられたかぎ束を強取しようと企て,平成15年4月7日午前1時30分ころ,千葉市a区bc丁目d番e先路上に停車中の普通乗用自動車内において,同人に対し,殺意をもって,所携の筋切り包丁(刃体の長さ14.55センチメートル)で,その右前腕部及び右前頸部を各1回突き刺し,よって,そのころ,同所に停車中又は同所付近路上を走行中若しくは同所付近路上に停車中の同車両内において,同人を頸部刺創により失血死させて殺害した上,同人管理に係る上記かぎ束1個を強取し第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,同日午前1時30分ころ,同区bc丁目d番e先路上に停車中の前記車両内において,前記筋切り包丁1丁(平成15年千葉検領1253号符号1)を携帯し第3 金員窃取の目的で,同日午前1時48分ころ,前記強取したかぎ束のかぎ等を使用して,同区bf丁目g番地h所在の「C店」店長Dが看守する同店内に,同店従業員出入口ドアの施錠を外して侵入し,同人管理に係る現金約99万5233円,小切手1枚(額面5万5791円)ほか2点を窃取し第4 同日午前2時30分ころ,同区i町j番k山林前公道上において,前記Aの死体を前記普 て侵入し,同人管理に係る現金約99万5233円,小切手1枚(額面5万5791円)ほか2点を窃取し第4 同日午前2時30分ころ,同区i町j番k山林前公道上において,前記Aの死体を前記普通乗用自動車に乗せたまま放置し,もって死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,消費者金融業者等に対する借金の返済に窮した被告人が,かつて勤務していた飲食店(「C店」)の売上金を領得しようと企て,かつての同僚であり,同店従業員出入口のかぎや金庫のかぎ等が束ねられたかぎ束(以下「本件かぎ束」という。)を所持していた当時25歳の男性(以下「被害者」という。)を筋切り包丁で刺殺して同人から本件かぎ束を強取し(判示第1),その際,同包丁1丁を不法に携帯し(判示第2),強取した本件かぎ束のかぎ等を使用して上記飲食店に侵入して売上金等を窃取し(判示第3),さらに,被害者の死体を普通乗用自動車に乗せたまま山林内に放置して遺棄した(判示第4),という事案である。 被告人が本件各犯行を決意するに至った動機ないし経緯は,以下のとおりである。すなわち,被告人は,平成10年夏ころから,パチスロ代や交際相手との飲食費等の遊興費に充てるため消費者金融業者から借金を重ね,平成11年4月「C店」で勤務を始めたころには,毎月18万円くらいの手取り額のうち10万円くらいを借金の返済に充てていたところ,その後も好意を抱いたホステスの勤めるパブに通い詰めるなどして,平成14年12月ころには,多数の消費者金融業者のほか,高金利の金融業者からも借金をするようになった。やがて,金融業者に対する毎月の支払いが滞り勝ちになり,平成15年2月初めころから勤務先の「C店」にまで金融業者の督促の電話がかかって来るよ ほか,高金利の金融業者からも借金をするようになった。やがて,金融業者に対する毎月の支払いが滞り勝ちになり,平成15年2月初めころから勤務先の「C店」にまで金融業者の督促の電話がかかって来るようになったため,被告人は,同月中旬ころ,その返済資金に窮して同店の売上金から3万円を抜き取った。そのときは,勤務先関係者の取り計らいにより,同月25日付けで退職扱いとして退職金を支払われた上,その後も系列店である「E店」でアルバイト従業員として稼働できることとなったものの,同店には数日間勤務したのみで,以後出勤しなかった。そして,勤務先に対する借金が残っていたことから同年3月5日の給料日に給料が支払われず,同日予定していた金融業者に対する返済ができなかったため,同月10日過ぎころから,金融業者から被告人方や被告人の携帯電話に以前にも増して厳しい督促の電話が立て続けにかかって来るようになった。同年4月初め当時金融業者に対する借金は12社合計368万円余りに上っていたが,同居している母からも,以前から援助を受けていた上無断で母の預金を払い戻したりしたこともあったため,もはや更なる援助を得ることは困難であったことから,被告人は,同月7日期限の返済資金の工面について思い悩むうち,週末で多額の売上金が保管されている「C店」の金庫から同売上金を窃取しようと考え,そのためには,被告人と入れ替わりに同店に勤務するようになった被害者を殺害して同人の所持する本件かぎ束を奪うほかないと決意し,本件各犯行に及んだものである。 このように,被告人は,自己の無計画さから陥った経済的窮状を打開するため,何ものにも代え難い人の生命を犠牲とすることについてさしてためらうことなく,本件強盗殺人等を決意して実行に及んだもので,余りにも自己中心的かつ短絡的で利 計画さから陥った経済的窮状を打開するため,何ものにも代え難い人の生命を犠牲とすることについてさしてためらうことなく,本件強盗殺人等を決意して実行に及んだもので,余りにも自己中心的かつ短絡的で利欲的な本件犯行の動機ないし経緯に酌量の余地は全くない。 一連の犯行の態様等をみるに,被告人は,被害者の携帯電話に誘い出しのメールを送信した上,自宅にあった本件筋切り包丁を隠し持って自宅近くの路上で被害者と待ち合わせ,何の疑いも抱いていない被害者とレストランで飲食するなどした後,被害者運転の普通乗用自動車で被告人方に向かう途中,被害者も知っている「C店」の従業員から電話がかかってきたように装って被害者に同車両を停止させ,そのすきを見ていきなり上記筋切り包丁でその胸部を目掛けて続けざまに2回突き刺し,間もなく被害者を失血死させて殺害した上,同人が所持していた本件かぎ束を強取するや,直ちに被害者を乗せたまま同車両で「C店」へ向かい,計画どおり同かぎ束のかぎ等を使用して同店内に侵入し,手早く現金99万円余り等を窃取した後,被害者の死体を上記車両で山林内まで運搬し,同死体を同車両に乗せたまま放置して遺棄したものである。 売上金を領得する手段として,かつて「C店」で被告人と一緒に勤務したことがあり,被告人に殺害されるそのときまで職場の先輩であった被告人に全幅の信頼を寄せていた被害者を,鋭利な包丁でほとんど即死の状態で殺害したのは,誠に冷酷かつ残忍であり,被害者の尊い一命を奪った結果が極めて重大であることはいうまでもない。その上,被告人は,売上金を窃取した後,被害者を無慈悲にも山林内に遺棄し,さらには,その際,自己の刑責を免れるため,窃取した現金のうち10万円を被害者の財布に入れて,被害者が売上金を窃取し,それを苦に自殺をしたかのよ 金を窃取した後,被害者を無慈悲にも山林内に遺棄し,さらには,その際,自己の刑責を免れるため,窃取した現金のうち10万円を被害者の財布に入れて,被害者が売上金を窃取し,それを苦に自殺をしたかのように工作するなどしており,そこには,被害者を殺害したことに対する自責の念など全くうかがわれない。 被害者は,婚約者と共に将来の結婚生活に備えて本件被害に遭う1年くらい前から計画的に貯蓄をするなど,まじめに稼働していた青年であり,婚約者との幸せな結婚や家庭を夢見ていた矢先,信頼していた被告人の全く予期しない凶行により,「Fさん,信じてたのに」という言葉を残して,25歳の若さで突如生命を奪われ,前途ある将来を失ったもので,被害者の無念には言葉もない。また,変わり果てた姿の被害者と対面せざるを得なかった被害者の両親等の遺族や婚約者の深い悲嘆と被告人に対する激しい怒りの念も察するに余りあり,被告人に対して極刑を望む被害者の母らの心情や被告人を殺してやりたいという婚約者の切なる思いは十分理解できる。しかるに,被告人は,被害者の両親に謝罪文を送った以外には遺族等に対し慰謝の措置を講じてはいない。 加えて,本件窃盗については,被害が多額であるだけでなく,上記強盗殺人と密接に結び付いた極めて悪質な犯行であることも量刑上軽視できない。 以上の諸点に照らすと,被告人の刑責は誠に重大であり,判示第3の窃盗について窃取した金員の一部が押収されていること,反省,悔悟の情が認められること,前科がないこと,若年であることなど,被告人のため酌むべき事情を十分考慮しても,本件が酌量減軽をすべき事案であるとまではいえず,被告人に対しては無期懲役刑をもって臨むほかない。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役,包丁1丁没収)平成15年10月22日 ても,本件が酌量減軽をすべき事案であるとまではいえず,被告人に対しては無期懲役刑をもって臨むほかない。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役,包丁1丁没収)平成15年10月22日千葉地方裁判所刑事第1部裁判長裁判官金谷暁裁判官土屋靖之裁判官齊藤貴一
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