令和6(わ)846 業務上横領、背任

裁判年月日・裁判所
令和7年10月21日 さいたま地方裁判所
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判決文本文10,802 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中300日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は、第1 A市PTA協議会(以下「A市PTA」という。)の会長としてA市PTAを代表するとともにその資産を管理するなどの職務に従事していたB及び株式会社Cの経営者Dと共謀の上、さいたま市(住所省略)の株式会社E銀行F支店に開設された「A市PTA協議会互助会」名義の普通預金口座の預金をBがA市PTAのために業務上預かり保管中、令和4年4月11日、前記F支店において、被告人及びBの用途に充てる目的で、同普通預金口座から、現金100万円を出金して着服するとともに、現金385万円を株式会社G銀行H支店に開設されたDが管理する株式会社C名義の普通預金口座に振込送金し、もって横領し、第2 令和4年6月21日から令和5年6月23日までの間、公益社団法人日本PTA全国協議会(以下「日本PTA」という。)の参与の役職にあり、日本PTAが所有する東京都港区(住所省略)のIビルに係る外壁等修繕工事(以下「本件工事」という。)について、日本PTA会長の命を受けて、その発注及び工事代金の支払等に関する事務を処理し、かつ、当該事務を処理するに当たっては、無用な支出等により日本PTAに損失を与えないよう日本PTAのために誠実にその職務を遂行すべき任務を有していたものであるが、日本PTAが、Jが経営する株式会社Kに対し本件工事を発注して工事代金を支払うに当たり、株式会社Kが工事価格として正規に見積もった価格に自己の利得分を上乗せした金額を株式会社Kに支払った上、上乗せ分を自己が株式会社Kから受領しようと考え、Jと共謀の上、自己の利益を図る目的で、前記任務に背き、株式会社 Kが正規に見積もった工事価格が 得分を上乗せした金額を株式会社Kに支払った上、上乗せ分を自己が株式会社Kから受領しようと考え、Jと共謀の上、自己の利益を図る目的で、前記任務に背き、株式会社 Kが正規に見積もった工事価格が673万3100円であったのに、別紙別表1番号1ないし6及び8ないし10記載のとおり、令和4年8月10日から令和5年1月20日までの間、9回にわたり、修繕費の名目で、Iビルにおいて、事情を知らない日本PTA事務局員をして、インターネットバンキングを用いて、L銀行M支店に開設された日本PTA名義の普通預金口座からN信用金庫O支店に開設された株式会社K名義の普通預金口座に、自己の利得分等を上乗せした代金合計1878万2000円を振込送金させ、日本PTAに前記工事価格との差額相当額合計1204万8900円の財産上の損害を加えた。 (判示第2の背任について、事実認定の補足説明)第1 争点弁護人は、判示第2の背任罪の構成要件中、損害の発生及び同損害に係る工事代金送金の任務違背性を争い、被告人は同背任について無罪である旨主張する。 日本PTAと株式会社Kの間で、Iビルの本件工事の請負契約が成立し、株式会社Kが同工事を実施したことに争いはない。日本PTAから株式会社Kに対して同判示のとおり合計1878万2000円の送金がされ、これらの送金が被告人の指示によるものであることにも争いがない。 本件の争点は、日本PTAが株式会社Kに支払うべき正当な請負代金は、673万3100円に限られると認められるか、その反面として、同額を超える差額相当額(合計1204万8900円)の支払は、日本PTAに損害を与える任務違背行為と認められるか、である。 第2 前提事実被告人は、令和元年頃から日本PTAの理事の地位にあり、令和4年6月から日本PTAの参与の地位 900円)の支払は、日本PTAに損害を与える任務違背行為と認められるか、である。 第2 前提事実被告人は、令和元年頃から日本PTAの理事の地位にあり、令和4年6月から日本PTAの参与の地位にあった。日本PTAでは、その事務所を置くIビルの雨漏りに対する補修工事が問題となり、被告人は、令和4年頃、日本PTAの会長であるPの了解を得て、本件工事の施工業者の選定や交渉を担当することとなった。 被告人は、令和4年8月、地元である埼玉県の業者であるQから紹介を受けたJ の株式会社Kに本件工事を担当させることにした。 被告人は、日本PTAの経理担当者に指示し、本件工事の代金として、令和4年8月から令和5年1月にかけ、別表1記載のとおり、10回にわたり、日本PTAから株式会社Kに対し、合計1953万2000円(うち起訴されたものは同番号1ないし6及び8ないし10の合計1878万2000円)を振込送金させた。Jは、令和5年3月31日、別表1番号7と同額の75万円を日本PTAに返金した。 Jは、株式会社Kの預金口座から、被告人の兄が代表取締役を務める株式会社Rの預金口座に、別表2記載の現金を振込送金し、被告人は、これらの現金を払戻して、自ら費消した。 被告人とJの間では、株式会社Kから日本PTAに対する、工事金額が555万円(消費税55万5000円と併せて見積金額610万5000円)の令和4年8月17日付「御見積書」と題する書面(以下「610万円の見積書」という。)、工事金額が560万円(消費税56万円と併せて見積金額616万円)の同月23日付「御見積書」と題する書面(以下「616万円の見積書」という。)、工事金額が612万1000円(消費税61万2100円と併せて見積金額673万3100円)の同年11月12日付「御見積書」と題 3日付「御見積書」と題する書面(以下「616万円の見積書」という。)、工事金額が612万1000円(消費税61万2100円と併せて見積金額673万3100円)の同年11月12日付「御見積書」と題する書面(以下「673万円の見積書」という。)が授受されている一方、工事金額が750万円(消費税75万円と併せて見積金額825万円)の同年8月10日付「御見積書(概算)」と題する書面(以下「825万円の見積書」という。)、工事金額が1150万円(消費税115万円と併せて見積金額1265万円)の同日付「御見積書」と題する書面(以下「1265万円の見積書」という。)、工種として追加工事等を内容とし、工事金額370万円(消費税37万円を併せて407万円)の同年9月25日付「御見積書」と題する書面(以下「407万円の見積書」という。)が授受されている。そのほかにも、本件工事の請負契約書、株式会社Kから日本PTAに対する請求書、第三者作成の見積書等の書類が授受されている。 第3 争点の検討 1 証人Jの供述の骨子は以下のとおりである。 令和4年8月19日の打合せで被告人らに説明した610万円の見積書は、下請業者に支払うべき本件工事の原価及び株式会社Kが得るべき利益に基づいて算出した正規の見積書であり、工法を調査した上で修正した616万円の見積書も正規のものである。その後、追加工事を踏まえて同年11月に作成した673万円の見積書も正規の見積書であって、その金額が、株式会社Kが日本PTAから本件工事代金として支払を受けるべき正規の最終的な請負代金額である。 日本PTAから株式会社Kに送金された別表1の各金額及び株式会社Kから株式会社Rに送金した別表2の各金額は、その都度、事前に、被告人がJに一方的に決めて連絡してきた指示に従ったものである。 る。 日本PTAから株式会社Kに送金された別表1の各金額及び株式会社Kから株式会社Rに送金した別表2の各金額は、その都度、事前に、被告人がJに一方的に決めて連絡してきた指示に従ったものである。別表1の合計額のうち、株式会社Rに送金した別表2の合計額は、正規の請負代金には含まれないものであり、被告人の指示に従うままに送金しており、その趣旨等について具体的な説明は受けていなかったが、被告人かQが取得していると考えていた。 825万円の見積書は、被告人が事前に決めて同年8月9日の打合せで指示してきた金額に従って作成したものである。1265万円の見積書及び407万円の見積書は、被告人が事前に決めて同年12月3日の打合せで指示してきた金額に従って作成したものである。 2 被告人の供述の骨子は以下のとおりである。 令和4年5月半ばか終わり頃、以前から知っていたQに依頼して本件工事の見積りを依頼し、株式会社Sの1430万円の見積書の提示を受けたが、1000万円の修繕積立金を超えており、その後、Jの紹介を受け、同年8月7日以前のいずれかで打合せを行い、同内容の工事を前提に1265万円の見積り、一部の工事を省いた825万円の見積りを得た。 同月10日に日本PTA内部で会議があり、Jから取得した1265万円の見積書、一部の工事を省いて安くした825万円の見積書、前記1430万円の相見積書を提示し、Pの決裁を得て、825万円の見積書に基づいて本件工事を発注する ことになった。 別表1番号1の70万円の送金は、手付金として送金したものであり、同番号2の450万円はJとの間で締結した工事請負契約書に従って支払い、同番号3の300万円は、工事は完了していなかったが、同年9月中か10月半ばに完成する見込みを前提に支払ったものである。別表2の 番号2の450万円はJとの間で締結した工事請負契約書に従って支払い、同番号3の300万円は、工事は完了していなかったが、同年9月中か10月半ばに完成する見込みを前提に支払ったものである。別表2の株式会社Kから株式会社Rへの送金は、事前のJとの打合せで、自らの資金繰りのために依頼し了承を得て貸し付けてもらったものであり、株式会社Kが下請けに工事代金を支払う工事完了の1、2か月後までに返済するものであり、同年11月に銀行から融資を受けて返済する予定であった。 同年9月24日、Jから追加工事が必要とのメールを受け、1265万円の見積書と同内容の追加工事が必要との説明を受け、Pと協議し、少なくとも1150万円の支出が必要であり、更に追加分も要することについて、了承を得た。407万円の見積書は、追加分の工事費用と理解した。別表1番号4、5も、日本PTAの決裁を得て送金しており、別表2番号4、5について、Jに依頼して貸し付けてもらった。別表1番号6及び別表2番号6も同様であり、Jから下請業者への支払期日はまだであった。 Jの貸付金を返済するための銀行からの融資を受けられず、同年12月3日の打合せで、Jを説得して貸付金の返済を伸ばしてもらった。別表1番号7は825万円の見積書の消費税分であり、株式会社Rの資金が枯渇していたことから、依頼して、別表2番号7のとおり同額を貸し付けてもらった。別表1番号8ないし10は、その都度、Jから請求や説明を受けて支払った工事代金であり、別表2番号8ないし10も貸し付けてもらったものである。 3 J供述及び被告人供述の信用性について(1) 株式会社Rへの送金別表2の株式会社Kから株式会社Rに対する送金は、別表1の日本PTAから株式会社Kに対する送金と連動しており、別表1各番号の送金の全額又は相当部分が の信用性について(1) 株式会社Rへの送金別表2の株式会社Kから株式会社Rに対する送金は、別表1の日本PTAから株式会社Kに対する送金と連動しており、別表1各番号の送金の全額又は相当部分が 別表2の各送金に充てられている。しかも、被告人は、株式会社Rに送金された額を払い戻して自ら費消している。これらは、別表1の送金のうち、別表2の送金に相当する部分については、株式会社Kに支払われる本件工事の代金ではなく、被告人が自ら領得するために、日本PTAに送金させたことを強く推認させる。 別表1の送金総額と別表2の送金総額の差額は、728万5000円であるが、Jは、令和5年3月30日、被告人に対し、株式会社Kが49万7665円過分に受け取っていることからこれを清算する旨のメールを送信し、被告人もこれを了承する旨の返信をしている。同メールは、株式会社Kが支払いを受けるべき金額は、673万3100円にその後に生じた雑費合計5万4235円を加えた金額であることを前提としており、673万3100円及び5万4235円並びに前記49万7665円の合計は728万5000円となることから、673万円の見積書の金額が正規の工事金額である旨のJの供述を強く裏付けている。 被告人は、別表2の各送金について、工事代金の中からJの厚意により融資として貸付を受けた消費貸借契約である旨供述する。しかし、被告人は、貸付を受けたと供述する金額について、一切株式会社Kに返済をしていない。株式会社Kにおいて、正規の請負代金として支払を受け、自社の利益や下請業者への支払に充てるべき金の相当部分を、取引関係のない株式会社Rや被告人に対して、返済の担保もなく貸し付けるべき合理的な理由はない。被告人とJの間で、そのような消費貸借契約を締結した旨の文書やこれをうかがわせるメ るべき金の相当部分を、取引関係のない株式会社Rや被告人に対して、返済の担保もなく貸し付けるべき合理的な理由はない。被告人とJの間で、そのような消費貸借契約を締結した旨の文書やこれをうかがわせるメッセージの授受などはなく、多額の消費貸借契約が成立したというには不自然である。かえって、被告人とJとの間で授受されたメッセージによれば、例えば、被告人は、Jに対し、別表1番号2と別表2番号2の各送金について、同年8月30日「明日の入金はJのとこには250万円残せばいいの?」と送信し、また、別表1番号4と別表2番号4の各送金について、「その中から55万を引いた、176万を以前のこちらの法人に振替をお願いしたいので連絡お願いいたします」と送信して、それぞれ従わせている。別表2の各送金額は、被告人が一方的に決めてJに指示していることがうかがわれ、被告人 がJの厚意にすがって貸付を受けているような関係は認められない。Jは、別表2の各送金が被告人や株式会社Rに対する貸付金であることを否定し、かえって、被告人に対し、株式会社Kにおける経理処理のために、株式会社Rから株式会社Kに対する請求書を発行するよう求めていたのに、応じてもらえなかった旨供述しており、このことは、同年9月22日付のJの「3回分の請求書をいただきたいです」とのメールによって裏付けられており、その供述に疑いはない。 弁護人は、同年12月6日のメールで、Jが「差額908万円の4%程で35万円を請負金額とは別途頂くことは可能でしょうか。」と被告人に求めていることは、利息の請求であって、差額に相当する別表2の各送金が株式会社Kから株式会社Rに対する貸付金であることを推認させる旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。 しかし、同メールには、差額908万円が貸付金であることを明示するような記載 当する別表2の各送金が株式会社Kから株式会社Rに対する貸付金であることを推認させる旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。 しかし、同メールには、差額908万円が貸付金であることを明示するような記載はないし、これが貸付金であるなら、まず元金の返済要求があるのが自然であるのに、そのような記載もない。Jは、同メールについて、別表2の送金について、株式会社Rからの請求書を得られず、株式会社Kの経理処理上使途不明金となっていることへの一種の手数料を求めた趣旨である旨供述しており、同供述の方が合理的である。 被告人は、Jとの間で振込書を消費貸借契約書の代わりにする旨合意していた旨供述するが、裏付けを欠いている上、そのような合意は不合理であり、また、令和4年11月に金融機関から融資を受けてJに返済する予定であったのに融資を受けられなかったなどとも供述するが、弁護人が提出する証拠は時期が異なり、裏付けとはいえず、いずれも、被告人の供述の信用性を回復する説明とはいえない。別表2の送金が、Jから被告人に対する貸付金である旨の被告人の供述は信用できず、別表1のうち別表2の送金に充てられた分の送金は、被告人が自ら領得するために送金させた旨の前記推認に疑いを容れない。 (2) 見積書の説明Jの供述は、本件工事について、前記のとおり610万円の見積書、616万円 の見積書及び673万円の見積書と、825万円の見積書、1265万円の見積書及び407万円の見積書が授受された経緯を合理的に説明するものである。被告人は、825万円の見積書が正しく、616万円の見積書は株式会社Kが実質的な元請であるQに納める金額と認識した旨供述するが、仮に、616万円の見積書が株式会社Kから元請となるQに対して請求する金額であるなら、同見積書が株式会社Kから日本PTAに 積書は株式会社Kが実質的な元請であるQに納める金額と認識した旨供述するが、仮に、616万円の見積書が株式会社Kから元請となるQに対して請求する金額であるなら、同見積書が株式会社Kから日本PTAに宛てた体裁であることや取引当事者でない被告人に送付されたことを合理的に説明できない。さらに、被告人は、形式上は株式会社Kと契約したが、同年8月当初の時点では実質的な元請はQと思っていたとか、JはQをけん制する趣旨で616万円の見積書を被告人に送付した、とも供述するが、証拠上Qが元請であることをうかがわせる事情は見当たらず、Jの供述に疑いを生じさせる説明ではない。 1265万円の見積書は、作成日付は令和4年8月10日であるものの、メールの送信記録によれば、同年12月6日に407万円の見積書とともに、Jから被告人に送信されていることが認められる。Jは、同月3日の打合せで、既に振り込まれた金額に合わせるために被告人から指示されて作成した旨供述しており、同供述は、8月10日から12月7日までの送金額を整理したとうかがわれる記載や、株式会社Kが受けるべき工事金額は税込み673万3100円であるが、見積書に記載する金額は「1150万+370万+税」である趣旨とうかがわれる記載のあるJ作成のノートによって強く裏付けられている。被告人は、1265万円の見積書を、同年8月10日の日本PTAの会議までにJから受け取っていたものの、必要があって同年12月に改めて送付してもらった旨供述するが、この供述を裏付ける証拠はなく、信用性に乏しい。 以上のとおり、673万円の見積書が最終的な正規の金額を記載したものである旨のJの供述の信用性に疑問はない一方、825万円の見積書や1265万円の見積書が正規の金額である旨の被告人の供述は、信用性に問題がある。しかも、前記( 積書が最終的な正規の金額を記載したものである旨のJの供述の信用性に疑問はない一方、825万円の見積書や1265万円の見積書が正規の金額である旨の被告人の供述は、信用性に問題がある。しかも、前記(1)の検討のとおり、別表1の送金額と別表2の送金額の差額から、673万円の見 積書の金額が正規の工事金額であることが強く推認できることを考慮すると、上記Jの供述の信用性は強固である。 (3) 虚偽供述の動機Jは、株式会社Rに対する別表2の各送金について、その趣旨の説明を受けていなかった旨供述するが、多数回、多額の送金について、その趣旨を理解せずに被告人からの送金の指示に従っていたとは考えられず、少なくとも暗黙の裡に理解するなどして、被告人が、本件工事代金の名目で、日本PTAに過大な支出をさせて、その差額を領得する意図であったことを認識していたと考えられ、本件背任について共犯としての責任を負うと認められる。 その上で、仮に、被告人が供述するとおり、1265万円の見積書及び407万円の見積書が本件工事の正規の見積書であり、別表1の送金が正規の請負代金の送金であるなら、同額を正当に受領する権利のあるJが、わざわざこれを否定して放棄するとは考え難い。さらに、Jも背任の責任を負わないことになるのに、わざわざこれを否定し、自らも共犯としての責任を負ってまで被告人を罪に陥れるような虚偽供述に及ぶことも考え難い。そもそも、前記検討のとおり、別表2の各送金の事実とこれが貸付金ではないこと、673万円の見積書が正規の工事代金であることについて、客観的な証拠によって十分裏付けられており、これらの点についてJの虚偽供述を疑う余地はない。 4 結論以上の検討によれば、別表2の各送金は貸付金ではなく、したがって、別表1の各送金のうち別表2の各送金に充 よって十分裏付けられており、これらの点についてJの虚偽供述を疑う余地はない。 4 結論以上の検討によれば、別表2の各送金は貸付金ではなく、したがって、別表1の各送金のうち別表2の各送金に充てられた分は被告人が個人的に領得するために水増しして送金させたものと認められ、また、本件工事の正規の工事代金は、673万円の見積書の金額であると認められる。判示のとおり、別表1番号1ないし6及び8ないし10の合計額1878万2000円から673万3100円を差し引いた1204万8900円分の振込送金は、日本PTAが本来支出する必要のない、被告人が利得する水増し分等であって、日本PTAに同額の財産上の損害を加えた 任務違背行為と認められる。 (量刑の理由)判示第1 の横領は、A市PTAの預金通帳を管理していた会長のBが預金から払い戻して出金及び送金を実行したものであるが、被告人は、具体的な計画や出金額を自ら決めてBやDに指示して従わせており、中心的な役割を担っている。被告人は、出金した100万円は、A市PTAが納付する事業税の原資であり、被告人とBとで40万円と60万円に分けて取得し、その後、更にBから20万を受け取っており、受け取った合計60万円はA市PTAのために保管したものである旨説明する。また、振込送金した385万円は、A市PTAから株式会社Cに対する防災事業の業務委託費であったが、Dが全額を払い戻して被告人が受け取り、その全額を株式会社Cからの貸付金としてBに渡した旨説明する。これに対し、Bは、払い戻した100万円について、被告人とBがそれぞれ60万円と40万円を取得し、更に20万円を被告人に渡した旨供述し、振込送金した385万円について、被告人から100ないし120万円を貸し付けられたにとどまる旨供述する。出金、振込 人とBがそれぞれ60万円と40万円を取得し、更に20万円を被告人に渡した旨供述し、振込送金した385万円について、被告人から100ないし120万円を貸し付けられたにとどまる旨供述する。出金、振込送金の趣旨についての被告人の説明は曖昧で信用できず、分配額についての説明も、信用性に疑問がある上、これらの点を措いて、被告人の説明を前提としても、A市PTAの多額の資金を個人的に保管し、あるいは送金先から受け取ることを正当化する説明とはいえず、A市PTAの貴重な多額の資金を無用に流出させたことに変わりはなく、犯情は悪質である。 判示第2の背任は、日本PTA会長らから信頼を得ていたことを奇貨とし、本件工事の発注先であるJに協力させ各種の書類を整えさせて発覚を困難にし、大幅に水増しした工事代金を日本PTAから支払わせ、水増し分である1200万円余りの多額の損害を加えて、同額を自ら領得したというもので、背信的であるとともに、計画的で手の込んだ犯行であり、また、判示のとおり多数回繰り返されており、常習性が認められる。被告人は、日本PTAの貴重な資金を私物化して食い物にしたものであって、厳しい非難が相当する。犯情は非常に悪質である。 以上の検討、特に判示第2の背任の犯情によれば、被告人の刑事責任は重い。 以上に加えて、被告人が、曖昧ながら判示第1について犯罪の成立を認めたこと、判示第2について不合理な弁解に終始していること、判示第1のA市PTAの損害に関し、支払の趣旨が曖昧であるものの、Bとともに第三者から資金を借り入れて、余罪を含めた損害の補填として1079万円を支払ったこと、前科がないこと等の事情も考慮すると、主文のとおりの実刑が相当である。 よって、主文のとおり、判決する。 (求刑-懲役3年6か月)令和7年10月21日 填として1079万円を支払ったこと、前科がないこと等の事情も考慮すると、主文のとおりの実刑が相当である。よって、主文のとおり、判決する。 (求刑-懲役3年6か月)令和7年10月21日さいたま地方裁判所第3刑事部 裁判官井下田英樹 (別紙)別表1(日本PTAから株式会社Kに対する送金) 年月日振込送金額(円) 令和4年8月10日700,000 令和4年8月31日4,500,000 令和4年9月22日3,000,000 令和4年10月12日2,310,000 令和4年10月17日660,000 令和4年10月31日1,100,000 令和4年12月7日750,000 令和4年12月23日242,000 令和4年12月28日4,070,000 令和5年1月20日2,200,000 1~10 の合計19,532,000 1~6、8~10 の合計18,782,000 別表2(株式会社Kから株式会社Rに対する送金) 年月日振込送金額(円) 令和4年8月10日700,000 令和4年8月31日2,000,000 令和4年9月22日3,000,000 令和4年10月12日1,768,000 令和4年10月17日660,000 令和4年10月31日1,100,000 令和4年12月7日750,000 令和4年12月23日242,000 令和4年12月28日1,400,000 令和5年1月6日187, 令和4年12月7日750,000 令和4年12月23日242,000 令和4年12月28日1,400,000 令和5年1月6日187,000 令和5年1月20日440,000 合計12,247,000

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