平成17年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第25621号解約精算金請求事件口頭弁論終結日平成17年1月12日判決 主文 1 被告は,原告に対し,31万0486円及びこれに対する平成16年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,被告が開設する外国語会話教室に入学したが,中途解約をした原告から被告に対し,上記中途解約によって上記入学時などに原告が被告に前払いした受講料などの精算を求めるとともに,上記精算金に対する本件訴状送達の日の翌日である平成16年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠等によって認定した事実は末尾に当該証拠等を掲記する。)(1) 被告は,外国語会話教室を業とする会社である。被告が開設する外国語会話教室は,「A」という校名であり,特定商取引に関する法律41条2項における「特定継続的役務」に該当する(乙2,乙3,乙5の1ないし3の2,弁論の全趣旨)。 (2) 原告は,平成13年9月13日,被告王子校において,600ポイントのレッスンポイントを75万6000円(消費税込み)で購入し,さらに10枚のVOICEチケットを2万1000円(消費税込み)で購入して,同校に入学した。被告が発行するコースガイド(乙3)並びに「APPLICATIONFORM」(登録申込書・乙2)の2枚目の生徒控及び3枚目のメモの裏面に記載された約款(乙5の2の2,乙5の3の2)によると,「A」に入学するには,あらかじめレッスンを受講するためのレッスンポイントを一括して購入しなければな 2)の2枚目の生徒控及び3枚目のメモの裏面に記載された約款(乙5の2の2,乙5の3の2)によると,「A」に入学するには,あらかじめレッスンを受講するためのレッスンポイントを一括して購入しなければならず,受講者はこれによって1ポイント当たり1回のレッスンを受講できるというシステムとなっている。また,受講者は,上記レッスンとは別に被告の開設するVOICEルームで外国人スタッフと会話練習をすることもできるが,その場合もこれを利用するためのVOICEチケットをあらかじめ一括して購入しなければならないシステムとなっている。 (3) 原告は,被告王子校入学後,10ポイントのレッスンポイントを3万1500円(消費税込み)で3回にわたって購入した。したがって,原告が購入したレッスンポイントの価格は,前記(2)の金額と合わせて78万7500円となる。 (4) また,原告は,同じく被告王子校入学後,50枚のVOICEチケットを8万4780円(消費税込み)で購入した。したがって,原告が購入したVOICEチケットの価格は,前記(2)の金額と合わせて10万5780円となる。 (5) 原告は,被告に対し,平成16年7月24日にあらかじめ電話で中途解約の意思を伝えた上,同月30日,中途解約の意思表示をした(甲1,甲2,弁論の全趣旨)。 (6) 上記解約申入れの時までに原告が消化したレッスンポイントは386ポイントであり,同じく原告が消化したVOICEチケットは25枚であった。 (7) 原告が入校した当時,レッスンポイントの料金については,以下のとおり購入したポイント数が多くなるに従いポイント単価が安くなる制度となっていた。 ア契約ポイント数600ポイントの場合 1ポイント当たり1200円イ契約ポイント数500ポイントの場合 1ポイント当たり1350円ウ契約ポイント に従いポイント単価が安くなる制度となっていた。 ア契約ポイント数600ポイントの場合 1ポイント当たり1200円イ契約ポイント数500ポイントの場合 1ポイント当たり1350円ウ契約ポイント数400ポイントの場合 1ポイント当たり1550円エ契約ポイント数300ポイントの場合 1ポイント当たり1750円オ契約ポイント数250ポイントの場合 1ポイント当たり1850円カ契約ポイント数200ポイントの場合 1ポイント当たり1950円キ契約ポイント数150ポイントの場合 1ポイント当たり2050円ク契約ポイント数110ポイントの場合 1ポイント当たり2100円ケ契約ポイント数80ポイントの場合 1ポイント当たり2300円上記の内容は,被告の発行するコースガイド(乙3)に表示されている。原告が入校した時に購入したポイントは,前記のとおり600ポイントであったから,ポイント単価は1200円であり,1200円×600ポイント=72万円に消費税3万6000円を足した75万6000円がポイント購入料となった。 (8) 原告が入校した当時,被告が定めた約款には,中途解約時における精算について,精算の際に差し引かれるべき消化済み受講料のポイント単価及び消化済みVOICE利用料のチケット単価について要旨以下のとおり定められていた(乙3,乙5の2の2,乙5の3の2)。 ア消化済み受講料消化済み受講料を算定する際に用いるべきポイント単価は,役務提供済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価とし,デイタイム登録,スタンダード登録,24時間登録の登録種別に該当する単価とする。ただし,消化済み受講料は役務提供済みポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする。 イ消化済みVOICEチケット利用料VOICE 録,24時間登録の登録種別に該当する単価とする。ただし,消化済み受講料は役務提供済みポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする。 イ消化済みVOICEチケット利用料VOICEチケット利用済み回数に2000円を掛けた金額(9) 被告が定めた前記約款には,中途登録解除手数料について,前記差引計算後の金額の2割(ただし,5万円を上限とする)とする旨の規定が存在する。 2 争点本件の争点は,原告の中途解約の際に前払金から精算されるべき消化済み受講料のポイント単価及び消化済みVOICEチケット利用料の単価がいくらになるべきかという点である。被告は,約款の定めの適用を主張し,原告は,上記約款の定めは,特定商取引に関する法律49条2項1号イに違反するものであるから同項の定める上限額以上の金額を精算することはできないと主張している。争点に関する当事者双方の主張の要旨は以下のとおりである。 (1) 消化済み受講料のポイント単価について(原告の主張)ア特定商取引に関する法律49条2項1号は,役務提供開始後に中途解約された際に精算できる金額を「イ提供された特定継続的役務の対価に相当する額」及び「ロ当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として第41条第2項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」にこれらに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額と限定しており,役務提供事業者は,特定継続的役務の提供を受ける者に対し,これを超える額の金銭の支払を請求することはできないと定めている。なお,上記ロの政令で定める額は,「語学の教授」については,5万円又は契約残額の100分の20に相当する金額のいずれか低い額とされている。 イ特定商取引に関する法律には,前記の「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」に ,「語学の教授」については,5万円又は契約残額の100分の20に相当する金額のいずれか低い額とされている。 イ特定商取引に関する法律には,前記の「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」につき,購入した時の単価と異なる単価で精算することを認める規定はない。前記第2,1(2)及び同(7)のとおり,原告は,入校時,1ポイント当たりの単価を1200円としてレッスンポイントを購入したのであるから精算に当たっても上記単価に消化済みポイントを掛けた金額を「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」として差し引くべきであり,これと異なる単価に基づく金額を精算することはできない。 ウ既に消化したレッスンポイントに応じた料金の精算に当たり,ポイント料金を購入した際のポイント単価に従って算定する方が社会通念に沿う。特定商取引に関する法律の「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」は,社会通念によって解釈されるべきである。 エ被告は,価格表記をするに当たり,レッスンポイント購入数に応じた1ポイント当たりの単価のみを表示している。このようにポイント単価を強調してレッスンポイントを販売した以上,受講者が中途解約に際しても購入時の単価で精算をしてもらえると信じるのは当然である。特定商取引に関する法律は,役務提供事業者が中途解約における前払金の精算に際して控除する金額を限定しようとしているものであるところ,上記のようにポイント単価のみをことさら強調している本件にあっては,少なくとも購入時のポイント単価よりも受講者に不利なポイント単価を使用することは,同法の趣旨に沿わないことは明らかである。 オ被告が指摘するJR定期券やNHKテレビ受信料は,受けるサービスの内容が本件と異なり,特定商取引に関する法律の適用を受けるものではない。このように前提を異にす 趣旨に沿わないことは明らかである。 オ被告が指摘するJR定期券やNHKテレビ受信料は,受けるサービスの内容が本件と異なり,特定商取引に関する法律の適用を受けるものではない。このように前提を異にする制度をもって被告の約款の合理性を論じることはできない。 カ以上によれば,被告が消化済み受講料として前払金から控除できるのは,前記第2,1(7)アの1ポイント当たり1200円(消費税を含めると1ポイント当たり1260円)に,消化済みレッスンポイント(386ポイント)を掛けた48万6360円となる。 (被告の主張)ア特定商取引に関する法律49条2項1号イは,特定継続的役務提供契約が中途解約された際に役務提供事業者が役務提供を受ける者に請求できる金額を「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」と定めているのみであって,その算定の基礎となる単価については,何も規定しておらず,個々の契約に委ねている。したがって,本件においては,被告が定めた約款中にある前記第2,1(8)アの定めが適用されるべきである。 イ本件のように一度の購入量が多ければ多いほど割引率が大きくなるという大量購入に伴う割引制度は,一般によく見られる料金体系であり,それ自体,何ら不合理な点はない。そして,そのような料金体系の下で前記第2,1(8)のように,中途解約に際して消化済みポイント数(すなわち,現に提供を受けた役務の数量)に応じたポイント単価により「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を算定してこれを前払金から控除できるとすることにも十分な合理性がある。 ウすなわち,「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を仮に当初大量購入した際のポイント単価により算定しなければならないとすると,たとえば同じ200ポイントを消化する場合でも,当初から200ポイントだけ購入した された特定継続的役務の対価に相当する額」を仮に当初大量購入した際のポイント単価により算定しなければならないとすると,たとえば同じ200ポイントを消化する場合でも,当初から200ポイントだけ購入した者は,前記第2,1(7)カのとおり,ポイント単価1950円で総額39万円で受講することになるのに対し,当初600ポイント購入して200ポイント消化後に中途解約する者は,前記第2,1(7)アのとおり,ポイント単価1200円で総額24万円を前払金から控除されるのみとなり,結果的には割引料金でレッスンを受講できたということになる。かかる帰結は,同じポイント分だけレッスンを受講した者の間で不公平を生じる。そればかりでなく,このような制度の下では,最初から200ポイント分しか使うつもりがなくても,とりあえず600ポイントを購入して,200ポイントを消化した時点で中途解約をすれば,ポイント単価1200円で受講するということが可能となり,そもそも被告が設けている大量購入に伴う割引制度の意義が無に帰する結果を生じる。このような帰結が是認されるのであれば,実質的に大量購入に伴う割引制度それ自体を否定する結果となり,その不合理は明らかである。 エこのように将来期間分を一括支払をした者が中途解約する際に一括支払による割引単価ではなく,使用済み期間に応じた単価で精算をするという制度は,JR定期券の中途解約,NHKテレビ受信料の中途解約においても見られるところであり,この点からも被告の定める約款の合理性が裏付けられる。 オ以上によれば,被告が控除できる金額は,前記第2,1(8)アの約款の定めにより,原告が消化したレッスンポイントである386ポイント以下で最も近いコースである同(7)エの300ポイント購入コースのポイント単価である1ポイント1750円に,消化したレッ 8)アの約款の定めにより,原告が消化したレッスンポイントである386ポイント以下で最も近いコースである同(7)エの300ポイント購入コースのポイント単価である1ポイント1750円に,消化したレッスンポイントである386ポイントを掛け,消費税を合算した金額である70万9275円となるべきところ,この金額は,上記約款のただし書きにより,役務提供済みポイント数以上の最も近いコースである同ウの400ポイント購入コースの購入ポイント総額である65万1000円と比べるとこれを上回っているので,結局,控除額は65万1000円となる。 (2) 消化済みVOICEチケット利用料について(原告の主張)ア前記第2,1(6)のとおり,原告が中途解約の意思表示をした時点で原告が消化したVOICEチケットは25枚であったところ,その購入代金は当初の10枚が2万1000円(消費税込み),追加購入分の50枚が8万4780円であるから,消化済みのVOICEチケット代金は,当初購入した10枚分の2万1000円と追加購入分8万4780円の50分の15に当たる2万5434円の合計4万6434円となるイ被告は,これを上回る金額の控除を主張しているが,被告の定めた約款は,特定商取引に関する法律49条2項1号に違反するものであり,被告は,上記金額を超えた金額を控除することはできない。 (被告の主張)ア前記第2,1(8)イのとおり,被告の定めた約款によれば消化済みVOICEチケット利用料は,VOICEチケット利用済み回数に2000円を掛けた金額とすることになっているから,本件における原告の消化済みVOICEチケット代金は,既消化分の25枚に2000円を掛けた金額に消費税を合算した5万2500円となる。 イ VOICEチケットについても前記第2,2(1)(被告の主張)アのと ける原告の消化済みVOICEチケット代金は,既消化分の25枚に2000円を掛けた金額に消費税を合算した5万2500円となる。 イ VOICEチケットについても前記第2,2(1)(被告の主張)アのとおり,被告の上記約款の定めは,特定商取引に関する法律に違反するものではない。 第3 争点に対する判断 1 特定商取引に関する法律による特定継続的役務提供契約に対する規制の趣旨等(1) 特定商取引に関する法律は,もともと訪問販売法という名称の法律であり,訪問販売,通信販売,連鎖販売取引(マルチ商法)を規制対象として,これらの販売形態における一定のルールを定めることにより,消費者被害の防止を図ることを目的として昭和51年に制定された(その後,同法は,規制対象の多様化に伴い,平成12年の改正(平成13年6月1日施行)によって,その名称を特定商取引に関する法律と改めた。)。 (2) 同法制定後,サービス取引の多様化に伴い,エステティックサロン,外国語会話教室,学習塾,家庭教師派遣等の継続的役務取引において,解約を巡るトラブルが多発するという事態が目立つようになってきた。これら取引においては,長期多数回のコース契約を締結する例が多いところ,実際にサービスを受けてみると広告や勧誘時における説明の際に受けたイメージと異なり,当初期待した成果が得られないなどの理由で中途解約を申し出た者に対し,業者が中途解約制限特約,多額の違約金特約などの適用を主張し,紛争が生じるという例が多発した。そこで,平成11年の同法改正(平成11年10月22日施行)により,同法の新たな規制対象として「特定継続的役務提供」の章が設けられ,政令により,エステティックサロン,外国語会話教室,学習塾,家庭教師派遣の4業種が規制対象として指定された。これら業種に共通する「特定継続的役務」の性格 として「特定継続的役務提供」の章が設けられ,政令により,エステティックサロン,外国語会話教室,学習塾,家庭教師派遣の4業種が規制対象として指定された。これら業種に共通する「特定継続的役務」の性格として,同法41条2項は,①役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われるもの(同項1号),②役務の性質上,前号に規定する目的が実現するかどうか確実でないもの(同項2号)の2点を掲げている。 (3) 同法による規制の一つとして,クーリングオフ期間経過後に利用者側が中途解約をした場合の違約金等の上限規制がある。その内容は,前記第2,2(1)(原告の主張)アのとおりであり,要するに中途解約に際して事業者が前払いを受けた役務の対価に相当する金額を精算するに当たって請求,控除できる金額の上限を規制しようとするものである。この規制の趣旨は,前記のとおり,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,継続的役務提供業者が,多額の違約金特約などの適用を主張し,紛争が生じるという例が多発していたため,このような上限規制を設けることにより,利用者側が違約金等の請求を恐れて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするということにある。したがって,上記規定を現実の事例に適用するに当たっては,中途解約の際の精算について業者の定める特約の内容が合理的なものであるか,また,その内容が利用者側の中途解約権の行使を必要以上に制限する内容となっていないかといった観点からその適用の有無を判断し,これに反する特約は,その効力を否定する(同法49条7項)ことにより,上記規制の趣旨を活かすべきである。 (4) 前記違約金等の上限規制の中で事業者 ていないかといった観点からその適用の有無を判断し,これに反する特約は,その効力を否定する(同法49条7項)ことにより,上記規制の趣旨を活かすべきである。 (4) 前記違約金等の上限規制の中で事業者が請求,控除できる金額として「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」が掲げられている。これは,中途解約の効果が非遡及的なものであることから中途解約の時点で既に提供済みの役務の対価相当額については事業者が正当に請求,控除することが可能であることを確認的に記載したものである。したがって,事業者が役務の対価を前払金として受領していて,その中から既に提供された役務の対価に相当する部分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていた場合は,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出するのが原則と解すべきであり,合理的な理由なくこれと異なる単価を用いて上記「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を控除することは,提供済み役務の対価の精算の趣旨を超えて,事実上,違約金を収受するに等しいものとして上記制限規定に触れるというべきである。この点,被告は,前記第2,2(1)(被告の主張)アのとおり,上記規定は,「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を請求,控除できると定めているのみであって,その算定の基礎となる単価については何も規定していないのであるから,個々の契約に委ねる趣旨であると主張している。しかし,いかなる単価も自由に定めることができるというのであれば,中途解約の際の精算に際して非常に高額な単価に基づき「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を算定し,事実上,違約金の上限規定を潜脱することも許すということにつながりかねないのであり,相当でない。したがって,上記のとおり,利用者が前払金を 「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を算定し,事実上,違約金の上限規定を潜脱することも許すということにつながりかねないのであり,相当でない。したがって,上記のとおり,利用者が前払金を支払ったときは,中途解約に当たっても「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を前払時の単価をもって算定することを原則とし,合理的な理由があり,利用者側の中途解約権の行使を必要以上に制限する内容となっていない場合に限り,これと異なる定めを約款等の中に置くことが許されると解すべきである。 2 争点(1)について(1) そこで,上記のような観点に立って,本件において被告が主張する消化済み受講料のポイント単価についての約款の内容の合理性について検討する。 ア被告主張の約款をみると,その内容は,契約当初の単価よりも高額な単価に基づく役務提供分の対価を算定する点において,中途解約をしようとする者に不利に働くことは否めない。その単価の差は,最大で1.9倍を超えるのであり,利用者側が中途解約をしようとする場合に,上記約款の存在がこれを制約する機能を果たすことも容易に推認できるところである。 イ被告は,前記約款の趣旨として,前記第2,2(1)(被告の主張)ウのとおり,大量購入に伴う割引制度を悪用して,当初から購入したポイントを全部受講する意思がないのに,これを偽って割引価格で大量購入をして,中途解約により,割引価格をもって少数回の受講だけをすることを防止し,上記制度の意義を無にすることがないようにするということを挙げる。 ウしかしながら,大量購入をしながら中途解約を申し出る者がすべて上記のような目的をもって解約の意思表示をするとは限らない。前記第3,1(2)のとおり,特定商取引に関する法律41条2項が「特定継続的役務提供」業種(エステティックサロン, 解約を申し出る者がすべて上記のような目的をもって解約の意思表示をするとは限らない。前記第3,1(2)のとおり,特定商取引に関する法律41条2項が「特定継続的役務提供」業種(エステティックサロン,外国語会話教室,学習塾,家庭教師派遣等)に共通する「特定継続的役務」の性格として,①役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われるもの(同項1号)とともに,②役務の性質上,前号に規定する目的が実現するかどうか確実でないもの(同項2号)を掲げていることからも裏付けられるように,上記業種は,いずれも利用者側からみて,契約時においては,期待するようなサービスが受けられるか否か,サービスを受けた結果として期待するような成果が得られるか否かについて必ずしも明らかでないことに特徴があるのであり,上記業種において,現実に利用を開始したところ,期待したようなサービスが受けられない,あるいは期待していた成果が得られないといった理由で中途解約権を行使しようとする者が相当数いることも推認するに難くない。また,長期にわたる利用を前提として多額の利用料を前払いしたもののやむを得ない都合により中途で利用を断念せざるを得ない者が一定割合いることも考えられる。だからこそ,同法は,中途解約権を保障し(同法49条1項),さらに精算に当たっての違約金等の上限規制などを通じてその実質的な保障を図ろうとしているものと解される。仮に被告主張のように,大量購入に伴う割引制度を悪用する者がいるとしても,中途解約をしようとする者がすべてそのような者とは限らない以上,被告主張のような約款の存在は,被告主張の目的を超えて,同法が想定し,保障しようとしている中途解約権の行使を制約する方向に働く結果となる。 解約をしようとする者がすべてそのような者とは限らない以上,被告主張のような約款の存在は,被告主張の目的を超えて,同法が想定し,保障しようとしている中途解約権の行使を制約する方向に働く結果となる。 したがって,被告主張の約款の内容は,その目的との関係において必要以上に中途解約権を制約するものといわざるを得ない。 エ被告は,当初から少量のポイントを購入して受講した者と大量購入をして中途解約をした者との公平を図る必要があるとも主張している。しかし,当初,多額の前払金を納入した者がそのことによって優遇された単価で受講できることが不公平とはいえないのと同様に,その者が中途解約をするに際しても既に多額の前払金を支払っていたという理由によって優遇された単価で提供済み役務の対価を受けたとしてもあながち不公平とは言い得ない。したがって,上記の被告の主張は本件約款の合理性を基礎付けるものとはいえない。 オさらに,被告は,同様の制度は,JR定期券の中途解約,NHKテレビ受信料の中途解約においても見られるところであり,この点からも被告の定める約款の合理性が裏付けられると主張する。しかし,特定商取引に関する法律の規制対象となる業種によって提供される役務とJR定期券若しくはNHKテレビ受信料によって提供される役務とでは,役務の内容に関する予測可能性を含めその性質を異にするのであり,これによって被告の約款の合理性を基礎付けることもできない。 (2) 以上によれば,被告の約款は,合理的な理由があるとはいえず,その実質的機能において利用者側が中途解約権を行使するに当たってこれを制約する役割を果たす点において前記の特定商取引に関する法律49条2項1号の定める上限規制に反する。したがって,被告が,本件において,原告に返還する金額から控除できるのは,前払金支払時の単価である 制約する役割を果たす点において前記の特定商取引に関する法律49条2項1号の定める上限規制に反する。したがって,被告が,本件において,原告に返還する金額から控除できるのは,前払金支払時の単価である1ポイント当たり1200円(消費税を含めると1ポイント当たり1260円)に消化したレッスンポイントである386ポイントを掛けた48万6360円であり,これを超える金額を控除することは許されない(同法49条2項,同7項)。 3 争点(2)について(1) 争点(1)において判断した理由は,レッスンポイントのみならず,消化済みVOICEチケット利用料についても当てはまる。被告が中途解約の際の精算に当たって,既に提供されたVOICEチケットによる役務の対価を算定する際に,購入時の単価にかかわらず,単価2000円にVOICEチケット利用済み回数を掛けて算定した金額とする約款は,合理性がなく,その実質的機能において利用者側が中途解約権を行使するに当たってこれを制約する役割を果たす点において前記の特定商取引に関する法律49条2項1号の定める上限規制に反する。 (2) したがって,被告が,本件において,原告に返還する金額から控除できるのは,原告が中途解約の意思表示をした時点で既に消化していた25枚のVOICEチケットの購入代金に相当する金額(当初の10枚が2万1000円(消費税込み),その余の15枚については追加購入分の50枚分の代金である8万4780円の50分の15に当たる2万5434円,以上合計4万6434円)であり,これを超える金額を控除することは許されない(同法49条2項,同7項)。 4 以上によれば,被告が原告から支払を受けたレッスンポイントの購入代金78万7500円から控除可能な提供済み役務の対価48万6360円を差し引いた金額(30万1140円) 法49条2項,同7項)。 4 以上によれば,被告が原告から支払を受けたレッスンポイントの購入代金78万7500円から控除可能な提供済み役務の対価48万6360円を差し引いた金額(30万1140円)とVOICEチケットの購入代金10万5780円から同じく控除可能な提供済み役務の対価4万6434円を差し引いた金額(5万9346円)の合計は,36万0486円である。したがって,前記第2,1(9)の約款の定めにより,被告が原告に請求できる中途登録解除手数料は,前記36万0486円の2割に相当する金額が同法49条2項1号ロ(前記第2,2(1)(原告の主張)ア)の上限額5万円を超えるため,5万円となる。よって,被告が原告に精算すべき金額は,前記36万0486円から5万円を差し引いた31万0486円となる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第48部裁判官水野邦夫
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