- 1 -平成27年12月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第2587号不正競争防止法違反行為差止等請求事件(以下「第1事件」という。)平成27年(ワ)第7096号不正競争防止法に基づく差止請求権等不存在確認等請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成27年9月17日判決 新潟市<以下略>第1事件原告・第2事件被告株式会社アクアデザインアマノ (以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士高橋賢一 同訴訟代理人弁理士吉井 剛 同 吉井雅栄 大阪府大東市<以下略>第1事件被告・第2事件原告有限会社マツダ (以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士髙橋譲二 主文 1 原告は,別紙被告製品目録記載の製品の形態が別紙原告製品目録記載の製品の形態を模倣し,又は同一若しくは類似であるとして,被告による上記被告製品目録記載の製品の販売行為が不正競争に該当するとの事実を告知し,又はこれを記載した文書を配布してはならない。 2 原告は,被告に対し,20万円及びこれに対する平成27年1月22日から支払済みまで年5分 載の製品の販売行為が不正競争に該当するとの事実を告知し,又はこれを記載した文書を配布してはならない。 2 原告は,被告に対し,20万円及びこれに対する平成27年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の第1事件請求及び被告のその余の第2事件請求をいずれ- 2 -も棄却する。 4 訴訟費用は第1事件及び第2事件を通じてこれを10分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求(第1事件) 1 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,それぞれを同目録の番号により「被告製品1」などといい,これらを「被告各製品」と総称する。)を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。 2 被告は,被告各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,543万1200円及びこれに対する平成27年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (第2事件) 1 主文第1項同旨 2 原告は,被告に対し,100万円及びこれに対する平成27年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要第1事件は,観賞用水槽内の水を排出するための吸水パイプである別紙原告製品目録記載の各製品(以下,それぞれを同目録の番号により「原告製品1」などといい,これらを「原告各製品」と総称する。)を販売する原告が,同様の吸水パイプである被告各製品を販売する被告に対し,被告各製品の形態は原告の商品等表示として広く認識されている原告各製品の形態と類似しており,その販売は不正競争防止法(平成27年法律第54号による改正前のもの。以下「法」という。)2条 被告に対し,被告各製品の形態は原告の商品等表示として広く認識されている原告各製品の形態と類似しており,その販売は不正競争防止法(平成27年法律第54号による改正前のもの。以下「法」という。)2条1項1号所定の不正競争に当たると主張- 3 -して,法3条に基づき被告各製品の譲渡等の差止め及び廃棄を,法4条に基づき損害賠償金543万1200円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 第2事件は,被告が,原告が多数の小売店等に対し被告各製品の販売が不正競争に当たる旨の文書を送付した行為が虚偽事実の告知として法2条1項14号所定の不正競争に当たると主張して,原告に対し,法3条1項に基づき上記事実の告知等の差止めを,法4条に基づき損害賠償金100万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)当事者原告は,水草の栽培及び器具類の製造,販売等を目的とする株式会社である。 被告は,観賞魚その他小動物の観賞用及び飼育用機器の製造,販売並びに輸出入等を目的とする株式会社(特例有限会社)である。 原告各製品(甲1,46,検甲1~3)ア原告各製品はいずれも,魚,水草等の観賞用水槽に用いる吸水パイプである。その形態はそれぞれ別紙原告製品目録記載1~3のとおりであり,いずれも一定の太さで断面が円形の無色透明なガラス製パイプを逆J字状に形成したもので,水槽の外側に配される短い方のパイプの下方内側には突起が設けられ,その先には吸盤が付いており,同パイプの下端は開口している。水槽の内側に配される長い方のパイプの下方外面にはパイプの軸線に対して直交するスリット状の吸水口が多数並設され,下端は閉塞して丸まっている。 パイプの径及び高さ 同パイプの下端は開口している。水槽の内側に配される長い方のパイプの下方外面にはパイプの軸線に対して直交するスリット状の吸水口が多数並設され,下端は閉塞して丸まっている。 パイプの径及び高さは,原告製品1が17㎜及び300㎜,原告製品2が13㎜及び300㎜,原告製品3が13㎜及び230㎜である。原- 4 -告各製品はいずれも短い方のパイプの長さが長い方の半分以上あり,原告製品1及び2では短い方のパイプが長い方の約6割,原告製品3では約8割となっている。 イ原告は,平成15年頃から原告各製品を販売している。 被告各製品ア被告各製品は,原告各製品と同様に用いられる吸水パイプである。その形態はそれぞれ別紙被告製品目録記載1及び2のとおりであり,いずれも一定の太さで断面が円形の無色透明なガラス製パイプを逆J字状に形成したもので,短い方のパイプの下端は開口しているが,突起及び吸盤は設けられていない。長い方のパイプの下方外面にはパイプの軸線に対して約45度傾斜するスリット状の吸水口が多数並設され,下端は閉塞して丸まっている。 パイプの径及び高さは,被告製品1が17㎜及び380㎜,被告製品2が13㎜及び300㎜である。被告各製品はいずれも短い方のパイプの長さが長い方の半分未満であり,被告製品1では短い方のパイプが長い方の約4分の1,被告製品2ではこれが約3分の1となっている。 イ被告は,平成26年9月頃以降被告各製品を販売している。 原告による小売店等への文書送付(乙12,13)原告は,平成26年11月頃,原告各製品を含む原告の製品を取り扱う問屋に対し同月1日付け「類似製品の取り扱いについて」と題する文書を,小売店(原告の販売特約店)に対し同日付け「類似製品の取り扱いについて」と題する文書を送付した。両文書の内 む原告の製品を取り扱う問屋に対し同月1日付け「類似製品の取り扱いについて」と題する文書を,小売店(原告の販売特約店)に対し同日付け「類似製品の取り扱いについて」と題する文書を送付した。両文書の内容はほぼ同旨であり,いずれにも「特に悪質な類似製品を販売する業者について,弊社では例えば,以下のように法的措置を含めた断固とした態度で対応して参りました。」,「訴訟では不正競争防止法に基づき,弊社製品の有名性が認められ勝訴となっております。」,「今回,新たに,有限会社マツダ(判決注,被告)- 5 -に対して,ニューリリィパイプの模倣品の販売中止と,損害賠償,在庫の破棄を求め,代理人を通じて警告文を送付しております。」と記載されている(以下,両文書を併せて「本件文書」という。)。 2 争点(第1事件) 法2条1項1号の不正競争の成否ア原告各製品の形態が商品等表示に当たるかイ原告各製品の形態が周知であるかウ被告各製品の形態が原告各製品の形態に類似するかエ被告各製品の販売が原告各製品と混同を生じさせるか原告の損害額(第2事件)法2条1項14号の不正競争の成否被告の損害額 3 争点に関する当事者の主張 ア原告各製品の形態が商品等表示に当たるか(原告の主張)原告各製品は,共通して,①全体が無色透明な逆J字状のガラス製パイプである,②長い方の下端が丸まって閉塞している,③長い方の下端外面に水平なスリット状の吸水口が複数並設され,これにより長い方の下方外面に縞模様があるかのように見えるという特徴的な形態を有している。 従前,吸水パイプは,プラスチック製のパイプを逆J字状に形成し,小さい魚の誤引を防ぐため吸水部分にプラスチック製のメッシュ状のキャップを取り付けたものであ るという特徴的な形態を有している。 従前,吸水パイプは,プラスチック製のパイプを逆J字状に形成し,小さい魚の誤引を防ぐため吸水部分にプラスチック製のメッシュ状のキャップを取り付けたものであった。原告は,これを無色透明のガラ- 6 -ス製として水槽内に溶け込み美観を損なわないようにし,吸水口をスリット状にすることで高い機能性に加えてデザイン性を達成したのであり,上記形態は他に類をみない斬新,画期的なものであって,現在も被告各製品以外に類似品はない。 水草業界は,熱狂的な支持者と水草栽培関連業者に限定される狭い特殊な世界である。原告はその中で,平成15年5月頃の原告各製品発売開始以来,原告各製品と同様の各種ガラス製品を用いた水草レイアウトのデモンストレーション,原告の製品の総合カタログや月刊情報誌の幅広い頒布,原告の製品を紹介するインターネットサイトの開設を行った。また,原告各製品を含む原告のガラス製品は,知名度の高い注目製品等を紹介する一般雑誌や多数の新聞に掲載された。原告はこれまで原告各製品を含む製品のため多額の宣伝広告費を支出しており,原告各製品は,この種の製品にしては驚異的な販売実績を上げている。 さらに,原告の前代表者である亡A(以下「原告前代表者」という。)は,水槽内に石,流木及び水草をレイアウトし,水草と魚が共存する水景を作り上げる「ネイチャーアクアリウム」を提唱した水草業界では世界的な有名人である。また,原告各製品を含むガラス製の「ADA」ブランド製品は,その高い意匠性と品質で消費者から絶大な支持を集め,水草業界では知らぬ者がない。原告と原告前代表者,そして原告の各種ガラス製品を含む「ネイチャーアクアリウム」は需要者において一体のものとして認識されており,原告や原告前代表者の著名性は原告各製品の 水草業界では知らぬ者がない。原告と原告前代表者,そして原告の各種ガラス製品を含む「ネイチャーアクアリウム」は需要者において一体のものとして認識されており,原告や原告前代表者の著名性は原告各製品の周知性と密接不可分に結び付いている。 たる。 (被告の主張)- 7 -原告各製品の形態は,断面が一定の太さの円形で逆J字状の何らデザイン,色彩等が施されていない透明なパイプという,どの事業者も数十年前から共通して採用している極めて単純で何ら独自の特色がないものである。下端が丸まって閉塞している点も極めて平凡な形態であり,特徴的ではない。また,スリットにより縞模様があるように見えるともいえない。 さらに,原告各製品の機能・使用目的は,いずれも水槽内の水を効果的に排出することにあるところ,水を吸い上げ水槽の壁を越えて外部の排水導管に効率的に導くには逆J字状にならざるを得ず,パイプ製造のコスト,簡便性,壊れにくさ,水の流れやすさ等を考慮すると断面は一定の太さの円形になる。水槽内の水草や小魚の吸い込みを防止するには,別部品を装着しない以上吸水口はスリットにならざるを得ないのであって,原告主張の商品形態は,いずれも技術的機能を果たすために選択されたにすぎない。 原告各製品の販売量が原告提出証拠のとおりであったとしても,そのシェアは吸水パイプ市場全体の2~5%程度にすぎず,多量に販売されたとはいえない。また,原告の広告宣伝は,原告のイメージアップや原告前代表者の紹介,原告の他の製品の紹介にほとんどの紙幅が費やされ,原告各製品はその形状の概要を辛うじて看取できる程度の小さな写真がごく簡単な説明と共にカタログ等の一部に掲載されているにすぎない。原告や原告前代表者の著名性は原告各製品の著名性を推認させる間接事実にすらならない。 の概要を辛うじて看取できる程度の小さな写真がごく簡単な説明と共にカタログ等の一部に掲載されているにすぎない。原告や原告前代表者の著名性は原告各製品の著名性を推認させる間接事実にすらならない。 したがって,原告主張の商品形態は法2条1項1号にいう商品等表示に当たらない。 イ原告各製品の形態が周知であるか(原告の主張)- 8 - 被告各製品の販売が開始された平成26年9月頃までに需要者の間に周知となっている。 (被告の主張) ウ被告各製品の形態が原告各製品の形態に類似するか(原告の主張)前記前提事実のとおり,原告各製品と被告各製品はいずれも無色透明のガラス製パイプを逆J字状に形成し,短い方のパイプの下端が開口し,長い方のパイプの下方外面にスリット状の吸水口が多数並設され,下端は閉塞して丸まっているという基本的形態が共通しており,両者は実質的に同一である。 被告の主張する相違点のうち,スリットの傾斜の有無については,原告各製品における吸水口の斬新さはスリット状である点及び多数のスリットが並設されている点にあるのであり,スリットが傾斜しているか否かは微差にすぎない。また,吸盤の有無も,被告各製品は使用に際し水槽の壁に係止して逆J字状で使用され,その際には市販の吸盤を使用することもできるし,被告各製品が吸盤を無くしたのは単にコスト削減のためであるから,類否判断において重要度は低い。長いパイプと短いパイプの長さの比率も微差というべきである。 (被告の主張)前記前提事実のとおり,被告各製品には吸盤と突起がなく,スリットの形状も傾斜しており,原告各製品と大きく異なる。また,原告各製品と被告各製品は長い方のパイプと短い方のパイプの長さの比率も異なっている。原告各製品のようなシンプルな形態を比較する際 なく,スリットの形状も傾斜しており,原告各製品と大きく異なる。また,原告各製品と被告各製品は長い方のパイプと短い方のパイプの長さの比率も異なっている。原告各製品のようなシンプルな形態を比較する際には,このような差異も極めて重要であり,両者の形態が類似しているとはいえない。 - 9 -エ被告各製品の販売が原告各製品と混同を生じさせるか(原告の主張) する製品は存在せず,被告は,被告各製品に無色透明なガラス製のパイプを採用する必要も吸水口をスリット状にする必然性もなかった。それにもかかわらず,被告各製品には原告各製品の形態上の特徴がそのまま取り込まれており,原告各製品との出所の混同が生じることは明らかであって,包装容器等が異なることはこの点の判断を左右するものではない。 (被告の主張)原告各製品の形態が商品等表示性を有していないこと,被告各製品が原告各製品と類似していないことは前記ア,ウの各(被告の主張)のとおりである。しかも,被告各製品の包装容器には「クリスタルパイプシリーズ」という製品名及び「ウィスナ」という発売元が明記されているのに対し,原告各製品の包装箱には「LILYPIPE」等の製品名及び「ADANATUREAQUARIUM」という原告のブランド名が明記されているから,出所の誤認混同は生じない。 (原告の主張)被告は,平成26年9月~12月末の間に被告各製品を400本ずつ販売したから,原告の損害は,次の計算式のとおり合計493万1200円である(法5条1項)。 800本×{6848円(原告製品1の利益額)+5480円(原告製品2の利益額)}÷2=493万1200円また,原告は被告の不正競争により本件訴訟を余儀なくされたから,弁護士費用50万円も被告の行為と相当因果関係のある損害 製品1の利益額)+5480円(原告製品2の利益額)}÷2=493万1200円また,原告は被告の不正競争により本件訴訟を余儀なくされたから,弁護士費用50万円も被告の行為と相当因果関係のある損害である。 - 10 -よって,原告は,被告に対し,法4条に基づき,上記損害額合計543万1200円及びこれに対する不正競争の後の日である平成27年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。 (被告の主張) たらないにもかかわらず,原告は約400もの原告各製品取扱店等に対し告が不正競争に及んでいることは間違いないと受け取らせるものであり,その送付行為は法2条1項14号の不正競争に該当する。 (原告の主張)本件文書は類似品に対する原告の基本的姿勢を現実に原告が取り扱った事例を摘示して述べた文書であり,虚偽の事実を告知するものではない。 また,本件文書は被告という特定の者を非難する書面ではなく,その送付は社会通念上許される正当行為であって不正競争に当たらない。 (被告の主張)被告各製品は本来1本当たり1000円程度で年間2000~3000本の販売が期待されたが,本件文書の送付により取引が大きく減少した。 これにより被告が受けた損害額(逸失利益)は100万円を下らない。 よって,被告は,原告に対し,法4条に基づき,上記損害金100万円及びこれに対する不正競争の後の日である平成27年1月22日(第2事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による- 11 -遅延損害金の支払を求める。 (原告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 原告は,原告各製品が共通して有する「①全体が無色透明な逆J字状のガラス製パ 合による- 11 -遅延損害金の支払を求める。 (原告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 原告は,原告各製品が共通して有する「①全体が無色透明な逆J字状のガラス製パイプである,②長い方の下端が丸まって閉塞している,③長い方の下端外面に水平なスリット状の吸水口が複数並設され,これにより長い方の下方外面に縞模様があるかのように見えるという特徴的な形態」が原告の商品等表示(法2条1項1号)に該当する旨主張する。 そこで判断するに,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告各製品の販売が開始された平成15年5月頃から現在までを通じて,魚,水草等の観賞用水槽に用いる吸水パイプの形状としては,断面が一定の径の円形で,全体が逆J字状であるものが多数存在する。ただし,その材質はプラスチックやステンレスが多く,吸水時の水草や魚の誤引を防止するために水中に入れる側のパイプの先端開口部にストレーナー(メッシュ状になったキャップ様の部材)を装着して使用するのが一般的であって,無色透明のガラス製のものや,ストレーナーを用いずパイプ自体にスリットを設けて吸水口としその先端を閉塞したものは原告各製品及び被告各製品以外に見当たらない。(甲67,乙18~25)イ原告各製品の発売開始(平成15年5月)から平成26年12月(原告製品3は平成27年4月)までの間の出荷本数は,原告製品1が1865本,原告製品2が1633本,原告製品3が5821本である。 (甲2,45)- 12 -ウ原告は,原告各製品の発売開始以前から多額の費用を支出して水草レイアウトのデモンストレーション,原告製品の総合カタログの頒布,情報誌の発行,専門誌への広告掲載,インターネットサイトの開設等の宣伝広告活動を行ってい 品の発売開始以前から多額の費用を支出して水草レイアウトのデモンストレーション,原告製品の総合カタログの頒布,情報誌の発行,専門誌への広告掲載,インターネットサイトの開設等の宣伝広告活動を行っているが,これらのうち写真等により原告各製品の形態が示されているのはわずかである(2015年6月30日付け原告準備書面(第2回)で指摘されているのは,原告のカタログのほか,雑誌の記事ないし広告13点にとどまる。)。しかも,これらは全て原告各製品のうちいずれかの写真が数点又は10点以上の他の原告の製品と共に掲載されているものであって,原告各製品のみを取り上げた記事等はない。また,これら記事等に掲載された原告各製品の写真は各1点(側方又は斜め側方から撮影したもの)のみで,大きさは3~10㎝程度である。(甲1,2,5の1~36,6の1~14,甲44,68,73~78)上記事実関係によれば,原告各製品の形態は,従来の同種製品に比し,無色透明のガラス製で,パイプに多数のスリットを並設した点においてそれなりの独自性を有するということができるが,原告各製品が大量に販売されたとは認められず(年間平均900本程度であり,市場規模や占有率は証拠上明らかでないが,これを多数と評価すべき事情があることはうかがわれない。),原告各製品の形態上の特徴を強調した宣伝広告ないし販売活動がされたと認めるべき証拠もない。そうすると,原告各製品の形態が需要者の間においてその出所を表示するものとして認識されていたとはにいう商品等表示に当たるということはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の第1事件請求は理由がない。 これに対し,原告は,① 原告各製品の形態は他に類をみない画期的なものであり,② 原告各製品はこの種の製品としては驚異的な出荷本数を について判断するまでもなく,原告の第1事件請求は理由がない。 これに対し,原告は,① 原告各製品の形態は他に類をみない画期的なものであり,② 原告各製品はこの種の製品としては驚異的な出荷本数を- 13 -記録しており,③ その形態は多額の費用を掛けた宣伝広告活動によって周知となっている上,④ 原告の会社自体及び原告前代表者が著名であったことからも原告各製品の形態の商品等表示性が裏付けられると主張する。 要者にとって,原告の強調するスリットによる縞模様など原告各製品の具体的な形態が認識されるとは考え難い。さらに,上記④の主張について,本件で問題となるのは,原告のブランド名又は「ネイチャーアクアリウム」ないしガラス製の水槽用品シリーズといった製品のイメージではなく,具体的な原告各製品の形態であり,原告又は原告前代表者が有名であるからといって,これをもって原告各製品の形態の商品等表示性が基礎付けられることはないというべきである。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 上,これを受領した問屋及び小売店に対し,被告の販売する製品は原告の製品の模倣品であり,その販売が不正競争に当たる旨の事実を告知するものと認められる。ところが,被告による被告各製品の販売が法2条1項1号の不正競争に当たらないことは前記1のとおりであり,その他被告の行為が違法であると認めるべき根拠はない。そうすると,本件文書は被告の信用を害する虚偽の事実を告知するものというほかない。そして,原告と被告は観賞用水槽の吸水パイプという同一用途の商品を扱うものとして競争関係にあるから,原告による本件文書の送付は法2条1項14号の不正競争に該当すると認められる。 したがって,被告は,法3条1項に基づき,原告に対し,被告各製品の形態が原告各製 扱うものとして競争関係にあるから,原告による本件文書の送付は法2条1項14号の不正競争に該当すると認められる。 したがって,被告は,法3条1項に基づき,原告に対し,被告各製品の形態が原告各製品の形態を模倣し,又は同一若しくは類似であり,被告各製品- 14 -の販売が不正競争に該当する旨の事実の告知及びその旨を記載した文書の配布の差止めを求めることができる。 被告は,原告による本件文書の送付により被告各製品の売上げが激減し,逸失利益は100万円を下らない旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲1,乙12,13,28,29)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件文書は平成26年11月頃に原告各製品を取り扱う問屋十数件及び小売店約400店に送付されたこと,② 上記問屋及び小売店の多くは被告の製品も取り扱っていること,③ 被告各製品の販売本数は,平成26年9月及び10月には合計約500本(月250本程度)であったが,同年11月から平成27年7月までの販売本数は合計約300本(月33本程度)であったこと,④ 平成26年9月に複数回被告各製品を購入しながら,その後一切の購入を止めたり,数か月間注文を控えたりした取引先が複数あること,⑤ 被告における被告各製品の仕入れ及び販売価格は,被告製品1が約640円及び約1000円,被告製品2が約610円及び約950円であること,以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,上記③の本件文書の送付前後での販売本数の減少の少なくとも一部は本件文書の送付を原因とするものとみるのが相当である。 そして,これによる被告の損害額は20万円(販売本数の減少1000本,1本当たりの利益200円)と認めることができ,これを上回る損害額を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告は,原告に対し,法4条に これによる被告の損害額は20万円(販売本数の減少1000本,1本当たりの利益200円)と認めることができ,これを上回る損害額を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告は,原告に対し,法4条に基づき,損害賠償金20万円及びこれに対する不正競争行為の後の日(第2事件訴状送達の日の翌日)である平成27年1月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論- 15 -以上のとおり,原告の第1事件請求はいずれも理由がなく,被告の第2事件請求は上記の限度で理由があるから,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官藤原典子 裁判官中嶋邦人
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