平成12(ワ)691 損害賠償請求事件(第1事件),売買代金請求事件(第2事件)

裁判年月日・裁判所
平成15年9月29日 岐阜地方裁判所
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判決文本文6,449 文字)

主文 1 原告の第1事件における請求を棄却する。 2 原告は被告に対し,160万3292円及びこれに対する平成12年12月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じ,原告の負担とする。 4 この判決は,第2項及び第3項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件被告は原告に対し,614万2000円及びこれに対する平成12年11月11日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 第2事件主文第2項と同旨第2 事案の概要原告と三菱電機冷熱設備株式会社(平成11年10月1日合併により被告が債権債務を承継した。以下,承継前の会社も含めて「被告」という。)とは,平成10年ころからの取引があり,第1事件は,被告から原告が買い受けた空調機器に欠陥があるとして,原告が債務不履行(不完全履行)に基づく損害賠償を請求している事件であり,第2事件は,従来の取引による売買代金を被告が原告に対して請求している事件である。 1 当事者間に争いがない事実(1) 平成10年11月17日,原告は被告との間で,A電機氷蓄熱パッケージエアコン(以下「本件機械」という。)を代金241万円で購入する売買契約を締結し,同月18日までに,被告は,設置場所である岐阜県郡上郡a村にある中華ファミリーレストラン「B」(C経営。以下「本件ラーメン店」という。)において本件機械を引き渡した。 (2) 原告は被告との間で,別紙売上目録記載の「売渡日」欄記載の日に,同目録「品名(形名等)」欄記載の物件を,原告が被告から同目録「合計(円)」欄記載の代金額で購入する売買契約を締結し,同日ころ,被告は原告に各物件を引き渡した。 上目録記載の「売渡日」欄記載の日に,同目録「品名(形名等)」欄記載の物件を,原告が被告から同目録「合計(円)」欄記載の代金額で購入する売買契約を締結し,同日ころ,被告は原告に各物件を引き渡した。 (3) 本件機械が本件ラーメン店に設置された後,原告は,本件機械が品質の欠陥によって本来の効能を果たさない(暖房効果を発揮しない)と主張して,被告に機械の入れ替えを要求したが,被告はこれを拒否した。その後,原告は,本件機械を本件ラーメン店から撤去し,平成11年7月30日,有限会社アサヒ化成(以下「アサヒ化成」という。)に設置した。原告は,なお本件機械の所有権を有し,アサヒ化成に使用させている。 (4) 本件に関し,岐阜簡易裁判所の調停において,原告と被告とが話し合ったが,調停不成立となり,平成12年11月2日,原告が第1事件の訴えを提起し,平成12年12月4日,被告が第2事件の訴えを提起した(訴えについては顕著な事実)。 2 原告の主張(1) 原告の第1事件における主張は,別紙「原告の主張」欄に記載のとおりであり,要するに,本件機械には,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべき熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となるため,暖房の際に,コンプレッサーを作動させて生じる熱に依存する割合が相対的に高くなり,電気代が高くなるという瑕疵があり,同じ暖房効果を得るために要するコストが高く,カタログに記載された性能を本件機械が有していないため,そのことによって被った(2)の損害の賠償を求めるというものである。 (2) 損害ア本件機械代金 265万円原告は本件ラーメン店を経営するCに対して,本件機械を代金265万円で売却したが,本件機械に欠陥があったため,本件機械を引き揚げざるを得 件機械代金 265万円原告は本件ラーメン店を経営するCに対して,本件機械を代金265万円で売却したが,本件機械に欠陥があったため,本件機械を引き揚げざるを得ないことになり,代金265万円が回収不能になった。 イ本件機械の設置費用 140万2000円原告が本件ラーメン店に本件機械を設置するために要した費用が回収不能になった。 ウ本件機械の撤去費用 25万5000円原告がCから要請を受けて,一旦設置した本件機械を撤去せざるを得なかった。 エストーブ等購入費用 11万7600円Cから本件機械の暖房によっても「温度が上昇しない」との苦情があり,原告はストーブ及び灯油を購入して対応した。 オサービス代行工事費用 22万1000円原告は,暖房の能率を上げるために,被告の依頼を受けて,機械室断熱工事,レターングリル工事,7.5kwヒーター取付け及び取外し,10kwヒーター取付け及び取外し及び風量変更一式の工事を行った。 カサービス費用 136万円原告は,Cからの苦情を被告に取り次いだところ,被告が原告に対して調査依頼をしたので,点検及びデータ収集に要したサービス費用として,1時間当たり5000円,1日4時間,68日分を要した。 キ雑費及び経費一式 13万6400円原告がCからの苦情を受けてから本件機械を取り外すまでの間,被告に連絡をしたり,本件機械に修理の余地を探ったり,石油ストーブを持ち込んで本件ラーメン店の室内温度を上げたりして対応し,その経費を要した。 ( らの苦情を受けてから本件機械を取り外すまでの間,被告に連絡をしたり,本件機械に修理の余地を探ったり,石油ストーブを持ち込んで本件ラーメン店の室内温度を上げたりして対応し,その経費を要した。 (3) 原告は,訴訟外で,第1事件における損害賠償請求権によって,第2事件の売掛金債務と相殺したと主張している(第2事件における被告の平成12年12月4日受付上申書)が,訴訟上,相殺の抗弁を提出していない。 3 被告の主張(1) 原告の主張に対する被告の認否及び主張は,別紙「被告の主張」及び「契約との関係」欄に記載のとおりであり,要するに,本件機械には,原告の主張するような瑕疵はなく,暖房性能も十分であるというものである。本件機械の暖房性能が正常であっても,室内の暖房効果は,本件機械の設置場所の状況(寒冷地か否か,外気侵入負荷の大小,部屋の面積の大小,建屋の構造(例えば,壁が断熱構造であるか否か。)),本件機械の設置方法(本件機械に接続されたダクトの直径),吸入空気温度などの条件により異なる。本来,機械を選定する前に,本件ラーメン店の状況に基づいて,必要な熱負荷計算をすべきであるが,原告は,これを行わずに機械を選定した。そのため,本件機械の能力が本件ラーメン店における状況に合っておらず,暖房効果が得られなかったと考えられる。 (2) 原告主張の損害については,いずれも争う。 (3) 原告が第2事件の売掛金債務の弁済をしないのは,第1事件における損害賠償請求権によって相殺したと主張しているからであるが,前記のとおり,損害賠償請求権は存在しないから,全額を支払うべきである。 4 争点本件機械が品質の欠陥によって本来の効能を果たさない(暖房効果を発揮しない)ものであるか否か。 第3 判断 1 乙第9号証及び検証の結果によれば,本件 ら,全額を支払うべきである。 4 争点本件機械が品質の欠陥によって本来の効能を果たさない(暖房効果を発揮しない)ものであるか否か。 第3 判断 1 乙第9号証及び検証の結果によれば,本件機械は,平成15年2月28日の時点において,吸い込んだ空気よりも温度の高い空気を吹き出す(吹出温度は最高43.1℃)ことができ,その熱量は,運転開始から10分間隔で2時間運転したときの平均値が47360kcal/hであることが認められる。平成10年11月17日ころ本件機械が本件ラーメン店に設置されたときから検証のときまでに,本件機械に修繕や改造が行われたと認めるべき証拠はないから,本件機械の暖房能力は,本件ラーメン店に設置されたときと比較して特段の変化は生じていないものと推認される。 2 原告は,平成10年11月17日ころ本件ラーメン店に設置し運転したとき(甲第5号証)も,アサヒ化成に設置し運転したとき(甲第8号証)も,暖房効果が発揮されなかったと主張する。 暖房効果(暖房装置の運転により室内の気温が上昇すること)が生ずるためには,暖房装置が運転によって放出する熱量の方が運転中に失われる熱量を上回る必要がある。すなわち,暖房装置の暖房能力だけでなく,設置された場所の状況(寒冷地か否か,外気侵入負荷の大小,部屋の面積の大小,建屋の構造(例えば,壁が断熱構造であるか否か。)),本件機械の設置方法(本件機械に接続されたダクトの直径),吸入空気温度等の条件によって失われる熱量をも考慮(熱負荷計算)しなければ,暖房効果が生ずるか否かは判断することができない。 原告は,本件ラーメン店について行った平成11年3月29日付け熱負荷計算書(甲第7号証)を根拠に,熱負荷を考慮しても本件機械のカタログ上の暖房能力からすれば,暖房効果が得られるはずであると 。 原告は,本件ラーメン店について行った平成11年3月29日付け熱負荷計算書(甲第7号証)を根拠に,熱負荷を考慮しても本件機械のカタログ上の暖房能力からすれば,暖房効果が得られるはずであると主張する。 甲第6号証並びに乙第2号証,第3号証及び第5号証によれば,原告の熱負荷計算(甲第7号証)では,本件ラーメン店の厨房に設置されたレンジフードファン(換気扇)の存在を前提にした換気量が条件とされておらず,必要換気負荷によって計算していることが認められる。本件ラーメン店には,昭和55年ころ森冷機株式会社が施工した10馬力の空冷ヒートポンプエアコンが設置されており,平成10年11月ころ原告が施工して本件機械に入れ替えたが,暖房効果が得られないため,平成11年3月ころ,これを撤去して,森冷機株式会社から独立した有限会社モリレイシステムに機械入替の工事が依頼されたところ,同社の調査で「厨房レンジフード用ファンが取り替えられて風量が増加していた」ことが分かり,同社は,「レンジフード用のファンの風量を絞り外気進入負荷を軽減」するシステムを併用して15馬力の機械を導入することを提案し,Cが了承したため,これを施工した(乙第7号証)。また,乙第7号証によれば,原告が本件ラーメン店に本件機械を設置したときには,既存の10馬力用のダクトに接続していたことも認められる。 前記のとおり,原告は,平成10年11月17日ころ本件ラーメン店に本件機械を設置した時点では,本件機械が15馬力相当で従来の10馬力を上回ることから,詳細な熱負荷計算をせず,漫然と暖房効果を発揮するものと考えていたと推認され,後に行った熱負荷計算(甲第7号証)でも厨房レンジフード用ファンによる換気量を過小評価していたことが認められる。したがって,本件ラーメン店において暖房効果が得られ 発揮するものと考えていたと推認され,後に行った熱負荷計算(甲第7号証)でも厨房レンジフード用ファンによる換気量を過小評価していたことが認められる。したがって,本件ラーメン店において暖房効果が得られなかったのは,本件機械の設置場所の状況から算出される熱負荷に比して,本件機械の暖房能力が低かったことによると推認される。 3 原告は,本件機械には,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべき熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となる欠陥があると主張する。 検証の結果によれば,設定された条件(冷媒配管温度が-6℃になるとデフロスト運転を開始する。)以外のときにデフロスト運転が起きる現象,すなわちデフロストの誤作動は現認されなかったことが認められる。甲第8号証には,「着霜が視認できないのにデフロストを開始する」との記載があるが,同号証の記載は,原告の訴えによるものであって確認されたものではないし,原告が冷媒配管温度を正確に測定していたとは限らないから,同号証の記載には信用性がない。他に,本件機械において,デフロストの誤作動が生じたと認めるに足りる証拠はない。 デフロストの誤作動がないとしても,原告は,本件機械の蓄熱槽の水温が40℃まで上昇せず,蓄熱が不十分であると主張する。 蓄熱運転によって蓄熱槽の水温が40℃まで上昇すると原告が主張する根拠は,甲第12号証26頁にあるが,同号証71頁によると,40℃は蓄熱槽の上限として設定された温度であって,40℃まで常に蓄熱する性能を保証したものではない。また,同号証148頁によれば,蓄熱槽の水温が15℃以上であれば,10時間の放熱運転が可能であることが認められる。検証のときにも,約8時間の蓄熱運転の後,本件機械の蓄熱槽の水温は25.2℃まで上昇していたことが認められる。理論上,蓄熱 の水温が15℃以上であれば,10時間の放熱運転が可能であることが認められる。検証のときにも,約8時間の蓄熱運転の後,本件機械の蓄熱槽の水温は25.2℃まで上昇していたことが認められる。理論上,蓄熱槽の水温が40℃から30℃に下がるときに放出される熱量と30℃から20℃に下がる時に放出される熱量は等しいから,蓄熱が不十分ならば,蓄熱槽から放出される熱が早く尽きてしまい,長時間の運転においてコストが悪化するはずであり,蓄熱が不十分なため,暖房開始時に「立ち上がり能力を発揮しない」とする原告の推論は成り立たないと考えられる。 以上のとおり,本件機械に,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべき熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となる欠陥があるとは認められない。 4 原告は,本件機械の欠陥により第2の2(2)記載の損害を被ったと主張する。 このうち,原告からCへの売買代金額を損害としている点については,原告とCとの間の売買契約は解除されたとしても,原告と被告との本件機械の売買契約が解除されたとの主張はないから,原告が被告との本件機械の売買契約を解除せず,本件機械の所有権を有する状態のままで,この代金額相当の損害の賠償を求めることはできない。 また,原告は本件機械の欠陥により,蓄熱が不十分となるため,暖房の際に,コンプレッサーを作動させて生じる熱に依存する割合が相対的に高くなり,電気代が高くなるという瑕疵があり,同じ暖房効果を得るために要するコストが高くなると主張する。しかし,本件機械の所有権が現在原告にあるとしても,本件機械はアサヒ化成に設置され,原告が運転による電気代を負担していると認めるに足りる証拠はないから,コスト(電気代)が高くなるという損害との間の因果関係がない。 5 第2事件については,原告は被告との間 はアサヒ化成に設置され,原告が運転による電気代を負担していると認めるに足りる証拠はないから,コスト(電気代)が高くなるという損害との間の因果関係がない。 5 第2事件については,原告は被告との間で,別紙売上目録記載の「売渡日」欄記載の日に,同目録「品名(形名等)」欄記載の物件を,原告が被告から同目録「合計(円)」欄記載の代金額で購入する売買契約を締結し,同日ころ,被告は原告に各物件を引き渡したことに争いはない。原告が第2事件の売掛金債務の弁済をしないのは,第1事件における損害賠償請求権によって相殺したと主張しているからであるが,前記のとおり,損害賠償請求権は存在しないから,全額を支払うべきである。 6 よって,第1事件における原告の請求は理由がないから棄却し,第2事件における被告の請求は理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法第61条,仮執行の宣言について同法第259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判官古閑裕二※ 「別紙」は掲載省略

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