令和4(ワ)25601 発信者情報開示請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年6月30日 東京地方裁判所
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令和5年6月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第25601号発信者情報開示請求事件口頭弁論終結日令和5年4月18日判決原告A 同訴訟代理人弁護士田中圭祐 遠藤大介 吉永雅洋 蓮池純 神田竜輔 鈴木勇輝被告KDDI株式会社同訴訟代理人弁護士今井和男 小倉慎一 山本一生 小俣拓実 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録2記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録1記載の各情報を開示せよ。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者が、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)において、原告の作成した別紙原告文章目録記載の文章(以下「本件原告文章」という。)を複製又は翻案して作成した別紙投稿文章目録記載の文章(以下「本件投稿文章」という。)を投稿(以下「本件投稿」という。)したことにより、本件原告文章に係る原告の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)が侵害されたことが明らかであり、上記氏名不詳者に対する損害賠償請求権等の行使のため、被告が保有する侵害関連通信に係る発信者情報である別紙発信者情報目録1記載の各情報(以下「本件 一性保持権)が侵 害されたことが明らかであり、上記氏名不詳者に対する損害賠償請求権等の行使のため、被告が保有する侵害関連通信に係る発信者情報である別紙発信者情報目録1記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。) 5条2項に基づき、本件発信者情報の開示を求める(別紙ログイン情報目録記載1ないし3の各ログインに係る送信から把握される発信者情報に係る請求の選択的併合)事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(特記しない限り、枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 当事者ア原告は、「B」との変名により、インターネット上の作品投稿サイト「pixiv」(以下「本件作品投稿サイト」という。)に、自身が作成した文章を投稿している者である(甲8、9、11)。 イ被告は、電気通信事業を営む株式会社である。 本件原告文章の作成原告は、令和4年1月10日、「B」との変名により、本件作品投稿サイトに、自身が作成した本件原告文章を投稿した(甲8、9、11の3、弁論の全趣旨)。 本件投稿 氏名不詳者は、本件投稿文章の全文を画像化した上、令和4年6月27日 午後11時18分(日本時間。特記しない限り、以下同じ。)、ツイッターにおいて、別紙投稿記事目録記載のユーザー名により特定されるアカウント(以下「本件アカウント」という。)を利用し、当該画像を添付して同目録記載の内容の本件投稿をした。なお、本件投稿に当たり、原告の氏名も変名も記載されていなかった。(甲1) 本件アカウントへのロ 下「本件アカウント」という。)を利用し、当該画像を添付して同目録記載の内容の本件投稿をした。なお、本件投稿に当たり、原告の氏名も変名も記載されていなかった。(甲1) 本件アカウントへのログイン本件アカウントには、別紙ログイン情報目録記載1ないし3のログイン日時欄の各日時に、被告の用いる電気通信設備を経由して、各IPアドレスを送信元とするログイン(以下、番号に従って「本件ログイン1」などといい、これらを総称して「本件各ログイン」という。)がされた(甲4ないし6)。 本件発信者情報の保有被告は、本件発信者情報を保有している。 3 争点本件投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか(争点2) 本件各ログインに係る送信は侵害情報の送信と相当の関連性を有するものか(争点3) 4 当事者の主張争点1(本件投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について (原告の主張)ア本件原告文章の著作物性原告は、令和3年に公開された映画「クレヨンしんちゃん謎メキ!花の天カス学園」(以下「本件映画」という。)を参考にして、本件原告文章を作成した。具体的には、本件原告文章のうち、キャラクター名、舞台設 定、「エリートポイント」との概念及び呼称、本件原告文章の末尾の台詞は、 本件映画を参考にしている。また、一部の台詞は、TVアニメ「クレヨンしんちゃん」をオマージュしたものである。 本件映画では、登場人物は5歳児で、舞台として生徒会室が登場せず、全年齢向けの映画作品であることから性描写は存在しない。これに対し、本件原告文章において、登場人物を中学生にしていること、舞台が生徒 本件映画では、登場人物は5歳児で、舞台として生徒会室が登場せず、全年齢向けの映画作品であることから性描写は存在しない。これに対し、本件原告文章において、登場人物を中学生にしていること、舞台が生徒会 室であること、登場人物が性行為を行っているとの設定や性行為の具体的内容のほか、個々の文章表現は全て原告が創作したものである。すなわち、本件原告文章は、本件映画のストーリー等を単に組み合わせるなどしたものではなく、作者である原告の考えや気持ちを具体的に表現しつつ、登場人物の振る舞いや感情の形容の仕方、叙述方法及び全体的な記述の順序・ 構成などにおいて、原告の個性が発揮されている。 したがって、本件原告文章は、原告の「思想又は感情を創作的に表現した」「言語の著作物」(著作権法2条1項1号、10条1項1号)に当たる。 イ本件原告文章に係る原告の著作権が侵害されたことは明らかであること(ア) 本件原告文章の冒頭部分(別紙原告文章目録の1枚目8行目から21 行目。以下同じ。)と本件投稿文章の冒頭部分(別紙投稿文章目録の1枚目4行目から16行目まで。以下同じ。)及び本件原告文章の末尾部分(別紙原告文章目録の6枚目18行目から7枚目7行目まで。以下同じ。)と本件投稿文章の末尾部分(別紙投稿文章目録の5枚目16行目から6枚目6行目。以下同じ。)のみを対比しても、その記述内容及び順序にお いて共通する部分があり、かつ、これらの共通部分における登場人物の心情の形容の仕方や叙述方法に原告の個性ないし独自性が表れており、表現上の創作性がある。このように、本件投稿文章は、本件原告文章の表現上の本質的な特徴が維持されており、これに接する者が本件原告文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものである。 また、本件 。このように、本件投稿文章は、本件原告文章の表現上の本質的な特徴が維持されており、これに接する者が本件原告文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものである。 また、本件原告文章と本件投稿文章との間に、上記のような共通部分 があることからすると、本件投稿文章は、本件原告文章に依拠して作成されたものといえる。 したがって、本件投稿は、本件原告文章を複製又は翻案するものである。 (イ) また、本件投稿は、本件投稿文章をツイッターへアップロードし、も って公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録するものであるから、本件原告文章の送信可能化に該当する(著作権法2条1項9号の5イ、同項9号の4、同項7号の2)。 (ウ) 氏名不詳者は、あたかも本件原告文章の著作者であるかのように振舞 っており、このような本件投稿の悪質性に照らせば、本件投稿について、引用による利用等の権利制限規定の適用がないことは明らかである。 このほか、氏名不詳者が本件投稿をしたことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。 (エ) したがって、氏名不詳者によって、本件原告文章に係る原告の著作権 (複製権、翻案権及び公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。 ウ本件原告文章に係る原告の著作者人格権が侵害されたことは明らかであること(ア) 前記イ(ア)のとおり、本件投稿文章は、本件原告文章を複製又は翻案したものである。 (イ) しかし、本件投稿により本件原告文章を公衆へ提供するに際し、原告の変名を著作者名として表示していない。 また、氏名不詳者は、原告の意に反して、本件原告文章の表現の一部を切除し、これに変更を加えている。 (ウ により本件原告文章を公衆へ提供するに際し、原告の変名を著作者名として表示していない。 また、氏名不詳者は、原告の意に反して、本件原告文章の表現の一部を切除し、これに変更を加えている。 (ウ) 本件原告文章は、原告の努力によって作成されたもので、「著作物の利 用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を 害するおそれがない」(著作権法19条3項)とは到底いえないから、氏名表示を省略することは許されない。 さらに、本件投稿をすることに必要性、合理性はなく、「やむを得ない改変」(同法20条2項4号)といえないことは明らかである。 このほか、氏名不詳者が本件投稿をしたことに関し、違法性阻却事由 に該当する事実は存在しない。 (エ) したがって、氏名不詳者によって、本件原告文章に係る原告の著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)が侵害されたことは明らかである。 (被告の主張) ア複製権、翻案権及び同一性保持権を侵害するとの主張について(ア) 表現上の本質的な特徴が維持されていないこと本件原告文章のような短い小説においては、会話やいわゆる地の文における内容や順番の差違は、仮に大きな差違でなかったとしても、個性の発現に当たって重要な要素となる。 本件原告文章と本件投稿文章とを対比すると、両者には上記の点において大きな差違があるから、本件投稿文章において、本件原告文章の表現上の本質的な特徴が維持されているとはいえない。 (イ) 本件投稿文章が本件原告文章に依拠したものであるかが明らかでないこと 仮に、本件投稿文章において、本件原告文章の表現上の本質的な特徴が維持されているとしても、以下のとおり、本件投稿文章が本件原告文章に依拠したものであるかは明らかでない が明らかでないこと 仮に、本件投稿文章において、本件原告文章の表現上の本質的な特徴が維持されているとしても、以下のとおり、本件投稿文章が本件原告文章に依拠したものであるかは明らかでない。 すなわち、本件投稿の本文に「pixivに上げていた小説」と記載されていることからすると、本件投稿をした氏名不詳者も本件作品投稿 サイトに本件投稿文章を投稿していたと考えられるから、本件投稿文章 は、本件原告文章よりも先に投稿され、本件原告文章に依拠することなく作成された可能性がある。また、仮に、本件原告文章の方が先に公表されていたとしても、本件投稿の発信者は、本件小説を知らずに、本件投稿に係る小説を創作した可能性もある。 (ウ) 小括 したがって、本件投稿によって、本件原告文章に係る原告の複製権、翻案権及び同一性保持権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 イ公衆送信権及び氏名表示権を侵害するとの主張について前記ア(ア)のとおり、本件投稿文章は、本件原告文章と同一の内容でない以上、本件投稿は本件原告文章を投稿したものとはいえない。 したがって、本件投稿によって、本件原告文章に係る原告の公衆送信権及び氏名表示権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について(原告の主張) ア原告は、本件投稿をした氏名不詳者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求等を予定しており、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 イ被告は、本件原告文章は本件映画の二次的著作物であるから、本件映画の著作権者から許諾を得ていない限り、本件投稿によって原告に損害が生 じないと主張する。 し けるべき正当な理由がある。 イ被告は、本件原告文章は本件映画の二次的著作物であるから、本件映画の著作権者から許諾を得ていない限り、本件投稿によって原告に損害が生 じないと主張する。 しかし、二次的著作物の著作者は、原著作物の著作者とは独立して権利行使できるから、この点についての被告の主張は失当である。 (被告の主張)原告は、氏名不詳者に対し、本件原告文章に係る著作権が侵害されたとし て損害賠償請求等をする予定であると主張する。 この点に関し、原告は、本件原告文章について、本件映画の二次創作であると主張しているところ、仮に、原告が、本件原告文章の作成に当たって、本件映画の著作権者から許諾を得ていなければ、二次的著作物である本件原告文章の作成は、本件映画の著作権者の翻案権及び同一性保持権を侵害する違法な行為となる。そうすると、違法な行為を行った原告に損害は発生して いないし、万が一、原告に生じた損害が観念できるとしても、氏名不詳者の故意又は過失による違法行為との因果関係を欠くことは明らかである。 したがって、原告が、本件原告文章の作成に当たって、本件映画の著作権者から許諾を得ていなければ、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとはいえない。 争点3(本件各ログインに係る送信は侵害情報の送信と相当の関連性を有するものか)について(原告の主張)アツイッターにおいては、登録されたアカウントにログインしなければ権利侵害情報を送信できない。 イ被告は、本件アカウントに異なるプロバイダを経由してのログインがされていることを指摘して、複数のユーザーが本件アカウントにログインしている可能性が高いと主張する。 しかし、昨今、携帯電話回線と固定回線とで異なるプロバ トに異なるプロバイダを経由してのログインがされていることを指摘して、複数のユーザーが本件アカウントにログインしている可能性が高いと主張する。 しかし、昨今、携帯電話回線と固定回線とで異なるプロバイダを利用している者も多くいること、公衆無線LANが普及していることなどから、 同じユーザーが複数のプロバイダを経由して本件アカウントにログインすることは容易に想定できる。特に、本件投稿の直前直後にされたログインは、全て被告を経由してされたものであるから、少なくとも本件投稿は被告を経由プロバイダとして送信された可能性が極めて高い。 また、被告は、別紙ログイン情報目録記載の情報により特定される契約 者(以下「本件契約者」という。)に対して意見照会をしたところ、本件投 稿について全く身に覚えがないと回答したことなどを根拠として、別紙ログイン情報目録記載の情報により特定される通信は、本件投稿、すなわち侵害情報の送信と相当の関連性を有しないと主張する。 しかし、本件契約者の回答を裏付ける客観的証拠はなく、その回答内容が直ちに信用できるものであるとはいえない。 ウ以上によれば、本件各ログインに係る送信は、侵害情報の送信と相当の関連性を有する。 したがって、本件各ログインに係る送信は、プロバイダ責任制限法5条3項、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則(以下、単に「施行規則」という。)5条2号所定 の侵害関連通信に当たるから、本件発信者情報は、プロバイダ責任制限法5条2項柱書所定の「当該侵害関連通信に係る発信者情報」に当たる。 (被告の主張)ア本件アカウントには、被告の管理していないIPアドレスを接続元とするログインもされているところ、これは、ユーザーが異なるプ 所定の「当該侵害関連通信に係る発信者情報」に当たる。 (被告の主張)ア本件アカウントには、被告の管理していないIPアドレスを接続元とするログインもされているところ、これは、ユーザーが異なるプロバイダを 経由して本件アカウントにログインしたことを意味する。ユーザーは、端末を変更しても、従前利用していたプロバイダを引き続き利用することが通常であるから、本件において異なるプロバイダを経由して本件アカウントにログインがされているということは、複数のユーザーが本件アカウントにログインしている可能性が高い。 また、被告が本件契約者に意見照会をしたところ、本件契約者は、「B」という人物は知らないし、本件投稿について全く身に覚えがないと回答した。 これらの事情に照らせば、本件契約者は本件投稿をしていない上、プライバシー権及び通信の自由の重要性も考慮すると、本件各ログインの送信 は、本件投稿、すなわち侵害情報の送信と相当の関連性を有しない。 イしたがって、本件発信者情報は、プロバイダ責任制限法5条2項柱書所定の「当該侵害関連通信に係る発信者情報」に当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について 本件原告文章の著作物性について弁論の全趣旨によれば、原告は、キャラクター名、舞台設定、「エリートポイント」との概念及び呼称並びに末尾の台詞について、本件映画を参考にして本件原告文章を作成したことが認められるものの、他方で、本件映画は全年齢を対象としたものと認められるから、その内容に性的な描写を含んでい ないものと考えられる。 以上を前提に本件原告文章を検討すると、登場人物が性的行為を行っている状況を描写するものであって、その 対象としたものと認められるから、その内容に性的な描写を含んでい ないものと考えられる。 以上を前提に本件原告文章を検討すると、登場人物が性的行為を行っている状況を描写するものであって、その具体的な動作や会話の内容、感情の叙述のほか、全体的な記述の順序及び構成において工夫がされていると認めることができ、その表現には原告の個性が表れているといえる。 したがって、本件原告文章は、原告の「思想又は感情を創作的に表現したものであつて」「文芸」「の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)といえ、「言語の著作物」(同法10条1項1号)に当たるというべきである。 本件投稿文章が本件原告文章を複製又は翻案したものかについてア言語の著作物の「複製」(著作権法2条1項15号)とは、既存の著作物 に依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。 また、言語の著作物の「翻案」(同法27条)とは、既存の著作物に依拠 し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうと解される(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民 集55巻4号837頁参照)。 そして、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参 高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民 集55巻4号837頁参照)。 そして、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作 物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらないと解される。 イ本件原告文章の冒頭部分と本件投稿文章の冒頭部分とは、天下統一カスカベ学園は入学すると皆エリートになることができる評判の学校であるとの紹介、歯を立てると夕飯抜きとなる旨の台詞、登場人物が生徒会室で性 的行為に及んでいること、オツムンは気を利かせているのか黙っていること、事が終わった後にポイントを減点するのだろうが、当該ポイントは無用の長物であることを表現している点において、その内容及び順序がほぼ共通していることが認められる。 このような本件投稿文章の冒頭部分における表現上の共通性に照らせば、 本件投稿文章の冒頭部分は、本件原告文章の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しており、かつ、本件原告文章の表現上の本質的な特徴を感得することができるものといえる。 そして、本件投稿文章の冒頭部分における記述のうち、特に登場人物が性的行為を一向に止めないとの動作の描写には、本件原告文章と差異があ るところ、この差異部分における記述の内容及び方法には、作者の新たな 思想又は感情が創作的に表現されているものといえる。 ウ次に、本件原告文章の末尾部分と本件投稿文章の末尾部分とは、どんなことをされても言うことを聞くのは、風間くんだからと述べているこ 思想又は感情が創作的に表現されているものといえる。 ウ次に、本件原告文章の末尾部分と本件投稿文章の末尾部分とは、どんなことをされても言うことを聞くのは、風間くんだからと述べていること、主人公が「しんのすけ」を突き飛ばしたこと、唇を許すと躾という建前が崩れること、青春や恋愛のような無駄なものは必要がないこと、主人公が 「お願いだから」と述べること、主人公が敵意を込めて「しんのすけ」を睨みつけたこと、「しんのすけ」が主人公の耳元で「風間くんを」「諦めない」と述べたことを表現している点において、その内容及び順序がほぼ共通していることが認められる。 このような本件投稿文章の末尾部分における上記の表現上の共通性(な お、本件原告文章のうち、末尾の「オラは、風間くんを絶対諦めない」との台詞は、本件映画を参考にしたものであると認められ(前記(1))、この部分には原告の表現上の創作性があるとはいい難いから、この点における共通性は考慮しない。)に照らせば、本件投稿文章の末尾部分は、本件原告文章の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しており、かつ、本件原告文 章の表現上の本質的な特徴を感得することができるものといえる。 そして、本件投稿文章の末尾部分における記述のうち、特に主人公が、あの頃の自分はここにいないと述べることや、「しんのすけ」の瞳に僕の表情が映る様子を描写している点において、本件原告文章と差異があるところ、この差異部分における記述の内容及び方法には、作者の新たな思想又 は感情が創作的に表現されているものといえる。 エ前記イ及びウにおいて説示した本件原告文章と本件投稿文章の各冒頭部分及び各末尾部分の表現上の共通性に鑑みれば、本件原告文章に接することなく独自に本件投稿文章を作成することは極めて困難と考え 。 エ前記イ及びウにおいて説示した本件原告文章と本件投稿文章の各冒頭部分及び各末尾部分の表現上の共通性に鑑みれば、本件原告文章に接することなく独自に本件投稿文章を作成することは極めて困難と考えられる上、氏名不詳者は、本件投稿に当たり、本件作品投稿サイトに上げていた小説 であると述べていること(前提事実(3))からすると、本件作品投稿サイト の存在を認識していたと認められ、本件原告文章に接する機会があったといえる。これらの事情を考慮すると、本件投稿文章は本件原告文章に依拠して作成されたものと認めるのが相当である。 オ以上によれば、本件投稿文章は、本件原告文章を翻案したものと認められる。 本件投稿により原告の著作権又は著作者人格権が侵害されたかについて前提事実(3)のとおり、氏名不詳者は、本件投稿により、本件投稿文章の全文を送信可能化(著作権法2条1項9号の5イ、同項9号の4、同項7号の2)したと認められ、前記(2)において説示したとおり、本件投稿文章は、本件原告文章を翻案したものであるから、本件原告文章の表現上の本質的な特 徴を感得できる部分についても送信可能化されたと評価できる。 そして、本件全証拠によっても、本件投稿について違法性阻却事由が存在することは全くうかがわれない。 したがって、本件投稿により、少なくとも本件原告文章に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。 2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について(1) 弁論の全趣旨によれば、原告は、氏名不詳者に対し、本件原告文章に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として損害賠償請求等をする意思を有しており、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必 全趣旨によれば、原告は、氏名不詳者に対し、本件原告文章に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として損害賠償請求等をする意思を有しており、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必 要があると認められる。 したがって、原告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 (2) これに対し、被告は、本件映画の著作権者の許諾がない限り、本件映画の二次的著作物である本件原告文章の作成は違法な行為であるから、原告に損 害は発生していないし、万が一、原告に生じた損害が観念できるとしても、 氏名不詳者の故意又は過失による違法行為との因果関係を欠くと主張する。 そこで検討すると、前記1(2)アのとおり、既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらない と解される。 前記1(1)において認定したとおり、原告は、キャラクター名、舞台設定、「エリートポイント」との概念及び呼称並びに末尾の台詞について、本件映画を参考にするとともに、一部の台詞については、TVアニメ「クレヨンしんちゃん」をオマージュして、本件原告文章を作成したことが認められる。 しかし、本件映画やTVアニメ「クレヨンしんちゃん」(以下、これらを合わせて「本件映画等」ということがある。)のうち、原告が参考にした部分の具体的な内容を認めるに足りる証拠はなく、原告が自認する事項についても、これらが、アイデアなど表現それ自体でないか、表現上の創作性がない部分である可能性を否定できない。このほか、本件全証拠によっても、本件原告 文章について、本件 、原告が自認する事項についても、これらが、アイデアなど表現それ自体でないか、表現上の創作性がない部分である可能性を否定できない。このほか、本件全証拠によっても、本件原告 文章について、本件映画等の表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が本件映画等の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものであるとは認められない。 そうすると、本件証拠上、原告が本件文章を作成した行為が、本件映画等を複製又は翻案するものであって、著作権を侵害する違法なものであるとい うことはできない。 したがって、被告の上記主張は、その前提を欠くものであって、採用することはできない。 3 争点3(本件各ログインに係る送信は侵害情報の送信と相当の関連性を有するものか)について (1) プロバイダ責任制限法5条3項が、発信者情報開示の対象となる侵害関連 通信について、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものであることを明示して求めるとともに、施行規則5条柱書及び同2号が、侵害情報の送信と相当の関連性を有するログインに係る送信に限って上記侵害関連通信と定めているのは、権利侵害を伴う投稿をした時の通信とは異なるログイン時の通信から把握される発信者情報を開示の対象とすることによ り、権利侵害を伴う投稿とは関連性の薄い他の通信の秘密やプライバシーを侵害するおそれが高くなる上、開示関係役務提供者に過度な負担を強いるおそれがあることから、開示の対象とするログイン時の通信を、侵害情報の発信者の特定のために必要最小限度のものに限定する趣旨と解される。この趣旨に照らせば、ログインに係る送信と侵害情報の送信とが相当の関連性を有 するか否かは、当該ログインに係る送信と当該侵害情報の送信との時間的近接 要最小限度のものに限定する趣旨と解される。この趣旨に照らせば、ログインに係る送信と侵害情報の送信とが相当の関連性を有 するか否かは、当該ログインに係る送信と当該侵害情報の送信との時間的近接性、当該ログインに伴って行われた投稿内容と当該侵害情報の内容の一連性ないし一体性の有無のほか、当該侵害情報の発信者を特定する他の手段、方法等の有無を総合考慮して判断すべきと解するのが相当である。 これを前提として、本件各ログインに係る送信が本件投稿に係る送信との 間で相当の関連性を有するかを検討すると、前提事実(4)のとおり、本件ログイン3は、本件投稿のわずか約14分前にされたものであることが認められ、本件投稿と時間的に極めて近接しているといえる。これに対し、本件ログイン1及び2は、本件投稿の後にされたもので、かつ、本件ログイン3と比較すると、本件投稿から時間的に離れたものであると認められる。そして、本 件ログイン3に係る送信から把握される情報のほかに本件発信者を特定する適切な手段があるとは認められない。これらの事情に鑑みれば、本件証拠上、本件ログイン3に伴って行われた投稿の有無及びその内容が明らかではないことを考慮しても、少なくとも本件ログイン3に係る送信は本件投稿に係る送信と相当の関連性を有するものと認めるのが相当である。 したがって、少なくとも本件ログイン3に係る送信は、施行規則5条2号 所定の侵害関連通信に当たるから、別紙発信者情報目録2記載の各情報は、プロバイダ責任制限法5条2項柱書所定の「当該侵害関連通信に係る発信者情報」に当たるというべきである。 (2) 被告は、異なるプロバイダを経由して本件アカウントにログインがされていることから、複数のユーザーが本件アカウントにログインしている可能性 に係る発信者情報」に当たるというべきである。 (2) 被告は、異なるプロバイダを経由して本件アカウントにログインがされていることから、複数のユーザーが本件アカウントにログインしている可能性 が高い上、本件契約者が意見照会に対して身に覚えがないとの回答をしていることを踏まえると、本件各ログインの送信は、本件投稿に係る送信と相当の関連性を有しないと主張する。 しかし、ツイッターにおいてはアカウントによる管理がされているところ(前提事実(3)及び(4))、こうしたアカウントに係るパスワードを第三者に教 えたり、第三者との間で共有したりすることは通常考え難い。そして、本件全証拠によっても、本件アカウントが複数人によって共有されていることをうかがわせる事情は何ら認められないことからすると、本件投稿をした者と本件各ログインをした者は同一人物であると認められる。 また、本件契約者に対する意見照会の回答についても、その回答が真実で あることを裏付ける客観的な証拠はなく、前記判断を左右するものとはいえない。 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。 第4 結論よって、原告の請求は理由があるから認容することとして、主文のとおり判 決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 間明宏充 裁判官 木村洋一 (別紙)発信者情報目録1 別紙ログイン情報目録記載1ないし3のログイン日時欄の各日時頃に、IPアドレス欄の各IPアドレスを割り当てられた電気通信設備から別紙投稿記事目録の接続先IPアドレス欄記載のIPアドレスに対して通信を行った電気通信回線を使用した者に関する情報であって、次に掲げる情報。 1 氏名又は名称 2 住所 3 電話番号 4 電子メールアドレス以上 (別紙)発信者情報目録2 別紙ログイン情報目録記載3のログイン日時欄の日時頃に、IPアドレス欄のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から別紙投稿記事目録の接続先IPアドレス欄記載のIPアドレスに対して通信を行った電気通信回線を使用した者に関する情報であって、次に掲げる情報。 1 氏名又は名称 2 住所 3 電話番号 4 電子メールアドレス以上 (別紙)ログイン情報目録 ログイン日時ログイン日時(日本時間)IPアドレス 2022/6/28 23:28:272022/6/29 08:28:27省略 2022/6/27 23:47:482022/6/28 08:47:48省略 2022/6/27 14:04:422022/6/27 23:04:42省略以上 (別紙)投稿記事目録 URL https:// 主文 (別紙)投稿記事目録 URL https://以下省略内容 pixiv に上げていた小説誰かに止められちゃったからここで載せます。なんか国語のテストみたいでかっこイイね! ※内容はR18です。天カス学園ネタバレありますのでご注意を。年齢操作、性的描写などあります。添付画像の文字起こし別紙投稿文章目録記載のとおり ユーザー名 C 接続先 IP アドレス以下のうちいずれか。IP アドレスは省略 以上 (別紙原告文章目録省略)(別紙投稿文章目録省略)

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