- 1 -主文 被告が平成15年5月26日付けで,原告に対してした,行政文書部分開示決定(宮内秘発甲第345号)のうち,別紙開示文書目録第1記載の各文書における「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分を開示しないこととした部分を取り消す。 被告が平成16年2月20日付けで,原告に対してした,行政文書部分開示決定(宮内秘発甲第72号)のうち,別紙開示文書目録第2記載の各文書における「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分を開示しないこととした部分を取り消す。 被告が平成16年2月20日付けで,原告に対してした,行政文書部分開示決定(宮内秘発甲第73号)のうち,別紙開示文書目録第3記載の各文書における「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分を開示しないこととした部分を取り消す。 被告が平成16年12月20日付けで,原告に対してした,行政文書部分開示決定(宮内秘発甲第774号)のうち,別紙開示文書目録第4記載の各文書における「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分を開示しないこととした部分を取り消す。 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づいて,宮内庁病院に納入された風邪の治療薬の商品名及び納入実数が判明する文書の開示を求めたところ,一部開示決定を受けたため,同決定の不開示部分の取消しを求めている事案である。 - 2 - 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告による公文書開示請求原告は,被告 決定の不開示部分の取消しを求めている事案である。 - 2 - 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告による公文書開示請求原告は,被告に対し,情報公開法4条1項に基づき,いずれも文書名を「宮内庁病院に納入された風邪(インフルエンザを含む。)の治療薬(予防薬を含む。)の商品名及び納入実数が判明する文書」とし,治療薬が納入された期間を各項掲記の期間にそれぞれ限定した上で,以下のアからエまでのとおり,行政文書開示請求をした。 ア請求をした日付平成15年4月23日納入された期間平成14年9月から12月までイ請求をした日付平成16年1月18日納入された期間平成15年1月から3月までウ請求をした日付平成16年1月18日納入された期間平成15年4月から12月までエ請求をした日付平成16年11月17日納入された期間平成16年1月から3月まで(2)被告による一部開示決定被告は,(1)アからエまでの各請求に対して,以下のアからエまでのとおり,開示すべき文書を各項掲記のように特定した上,その各文書のうち,「「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分」については,各項掲記の理由により不開示とし,その余の部分のみを開示する旨の決定をした(以下,アからエまでの各一部開示決定を「本件各決定」と,本件各決定により開示すべきものとして特定された文書を「本件各文書」と,本件各決定により不開示とされた部分を「本件各不開示部分」と,それぞれ総称する。)。 ア(1)アの請求に対する一部開示決定(宮内秘発甲第345号)- 3 -日付平成15年5月26日開示すべき文書の特定別紙開示文書目録1記載の各文書不開示の理由情報公開法5条2号及び4号に該当 1)アの請求に対する一部開示決定(宮内秘発甲第345号)- 3 -日付平成15年5月26日開示すべき文書の特定別紙開示文書目録1記載の各文書不開示の理由情報公開法5条2号及び4号に該当イ(1)イの請求に対する一部開示決定(宮内秘発甲第72号)日付平成16年2月20日開示すべき文書の特定別紙開示文書目録2記載の各文書不開示の理由情報公開法5条2号及び4号に該当ウ(1)ウの請求に対する一部開示決定(宮内秘発甲第73号)日付平成16年2月20日開示すべき文書の特定別紙開示文書目録3記載の各文書不開示の理由情報公開法5条2号及び4号に該当エ(1)エの請求に対する一部開示決定(宮内秘発甲第774号)日付平成16年12月20日開示すべき文書の特定別紙開示文書目録4記載の各文書不開示の理由情報公開法5条2号に該当なお,本件各文書は,いずれも医薬品販売業者等が「支出負担行為担当官宮内庁長官官房主計課長」あてに作成した,宮内庁病院に納入する医薬品の「見積書」であって,「納入者住所氏名印欄」に業者の記名印,法人印及び代表者印又は支店長印の印影があり,納入品目(商品名)とその品目ごとの数量,単価及び金額,全体の合計金額の記載があるほか,宮内庁側において,注文月日,納期,納入月日,検査月日が記載され,「検査印」欄にはその担当者個人名の印鑑の印影がある。 本件各決定は,上記「納入者住所氏名印欄」の業者の法人印及び代表者印又は支店長印の印影を不開示としたものであり,原告は,本件各文書の写しであって本件各不開示部分に黒塗りを施したものの交付を受けている(甲8から36まで)。 - 4 -(3)原告による異議の申立て及び本訴の提起等ア原告は,被告に対し,平成15年6月6日,前記(2)アの一部開示決定について, りを施したものの交付を受けている(甲8から36まで)。 - 4 -(3)原告による異議の申立て及び本訴の提起等ア原告は,被告に対し,平成15年6月6日,前記(2)アの一部開示決定について,平成16年3月1日,前記(2)イ及びウの各一部不開示決定について,それぞれ異議の申立てをした。 イ被告は,平成16年6月3日,上記アの各異議申立てについて,情報公開審査会に諮問をした(諮問の日について乙8から10まで)。 ウ情報公開審査会は,平成16年11月19日,前記(2)アからウまでの各一部不開示決定は妥当である旨の意見を答申した。 エ被告は,平成16年12月3日付けで,前記アの各異議申立てを棄却する旨の決定をし,同決定は同月6日原告に到達した。 オ原告は,平成17年3月4日,本訴を提起した。 争点 本件の争点は,本件各不開示部分に,情報公開法5条2号イ又は4号所定の不開示情報が記載されているか否かであり,これらの点についての当事者の主張は別紙「争点に対する当事者の主張」記載のとおりである。 第3争点に対する判断 情報公開法5条2号イ該当性について(1)情報公開法1条は,同法の目的について,「国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」と規定している。そして,行政機関の保有する行政文書一般の開示を請求する権利をすべての者に付与しつつ(同法3条),同法5条各号に列挙された情報(不開示情報)が記録されている行政文書に限り,開示の対象から除外できるものとしている。 さらに,同法5条2号柱書本文及びイは,「法人 すべての者に付与しつつ(同法3条),同法5条各号に列挙された情報(不開示情報)が記録されている行政文書に限り,開示の対象から除外できるものとしている。 さらに,同法5条2号柱書本文及びイは,「法人その他の団体(国,独立- 5 -行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。」「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。」と規定している。すなわち,同法は,「公にすることにより,法人等の正当な利益を害するおそれがある情報」であれば,不開示情報に当たり,開示請求の対象から除外される旨規定している。 (2)被告は,本件各不開示部分の印影は,それが公にされた場合には,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,本件各文書を作成した法人等の財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれが強いから,不特定多数の者に開示されることを許容する性質のものではないとして,情報公開法5条2号イに該当すると主張する。 しかし,前記第2の1(2)のとおり,本件各文書は,宮内庁担当官あてに作成された医薬品の納入に係る「見積書」であることから,本件各不開示部分の印影に係る印章は,当該「見積書」を作成した医薬品販売業者である法人等がその業務上広く日常的に使用していることが推認できるところである。 そうすると,契約書その他の文書の作成名義やその権限の所在について一定の認証的機能を果たしているものということはできるものの,被告が主張するように,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,本件各文書を作成した法人等の財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれがあるとまでは認め難い。 また,法人等 できるものの,被告が主張するように,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,本件各文書を作成した法人等の財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれがあるとまでは認め難い。 また,法人等の印影が公にされることにより,それを模した印影を再現することが物理的に容易になることは否定できないが,私文書偽造や詐欺等の手段として印影を偽造する場合を考えてみると,そうした犯罪行為は真正な印章による印影を正確に模することによって初めて可能となるものではない。 真正な印章による印影がいかなるものかを認識しており,受領した又は呈示- 6 -された書類等に表れた印影が真正な印章によるものであるか否かについて常時注意を払っている者に対して,偽造文書を交付し又は呈示するなどして,欺罔行為をする場合に限れば,真正な印章による印影を正確に模することが犯罪の実行方法として実質的な意味を伴うものとなる。しかし,そうでなければ,偽造文書上の印影が真正な印章による印影に酷似していようがいまいが大きな意味は持たないからである。前者の典型例は,金融機関に預金口座を設けている場合の届出印であるが,それ以外の私人間の取引関係において,同様の状況が生ずることは必ずしも一般的ではない。仮に,書類上の印影について上記のような注意を払っている取引先等があったとしても,それを外部から把握した上,時宜をとらえて標的とし,首尾よく犯罪行為を実行することなど他の様々な要因が重なり合って生じた偶然の産物というほかなく,当該印影が公にされたこととの間に社会通念上相当因果関係があるものと評価するのは困難である。このような事態が生ずる可能性があることをもって,法人等の正当な利益を害するおそれがある不開示情報に該当するとするのは,前記(1)でみた情報公開法の目的,行政文書を原則公開とし,同法5 は困難である。このような事態が生ずる可能性があることをもって,法人等の正当な利益を害するおそれがある不開示情報に該当するとするのは,前記(1)でみた情報公開法の目的,行政文書を原則公開とし,同法5条各号に掲げる事由がある場合に限って不開示とすることを認めた同法の趣旨に照らして,相当でないというべきである。 そして,本件各不開示部分の印影についても,被告が主張するような偽造による不法な侵害の生ずるおそれの存否という観点からは,法人等の使用する印章の印影一般と選ぶところがなく,金融機関に対する届出印のような特別な事情が存するものとは認められないことから,結局,法人等の正当な利益を害するおそれがある場合について規定した情報公開法5条2号イには該当しないものというべきである。 なお,甲5から7までによれば,本件各文書を作成した法人等は,前記第2の1(3)ウの審査において,情報公開審査会に対し,本件各不開示部分の印影に係る印章について,社内規定を設け,商取引上重要度の高いものに使用- 7 -を限定するなど,厳重に管理している旨の意見書を提出していることが認められる。しかしながら,本件各文書を作成した法人等が当該印章を実際にどのように管理しているかは必ずしも明らかでない上,仮に,実際の管理状況が上記意見書記載のとおりであったとしても,上記のとおり,偽造による不法な侵害の生ずるおそれがあるとは認められない以上,法人等の正当な利益を害するおそれにはつながらないのであって,上記結論を左右するものではない。 情報公開法5条4号該当性について(1)情報公開法5条4号は,「犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行」(以下「列挙項目」という。)を列挙した上で,これに続けて「その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が 開法5条4号は,「犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行」(以下「列挙項目」という。)を列挙した上で,これに続けて「その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と規定している。 したがって,列挙項目は,「公共の安全と秩序の維持」を例示したものであって,「公共の安全と秩序の維持」は,列挙項目以外にもこれに類するものを含む趣旨ではあるが,列挙項目の性質や相互の関係を全体的にみれば,同号は,適用対象として,刑事司法の関係諸機関の活動が阻害され,警察作用,行刑作用を含む刑事司法の作用の適正かつ円滑な執行に支障が生ずる場合を予定した規定とみるべきである。 そして,同号は,個人(事業を営んでいるかどうかを問わない。)や法人その他の団体(以下「個人等」という。)に関する情報を公にすることにより,それが個人的法益を侵害する犯罪行為を誘発し,当該個人等が個別的に被害を受ける場合等を予定したものではないとみるのが相当である。こうした情報を公にすることにより当該個人等が犯罪の被害を受けるおそれがある場合については,当該個人等の利益を保護することを直接の目的として,同法5条1号柱書本文及び2号イが別途規定されており,これとは別に,その文言上,不開示事由該当性の第一次的な判断を行政機関の裁量にゆだねた趣- 8 -旨と解される同法5条4号の適用対象とする必要性・合理性は見いだし難いからである。 (2)被告は,本件各不開示部分の印影は,本件各文書を作成した法人等の社会生活上又は経済活動上,極めて重要な機能を有する印章の印影であり,これを公にすることにより有印私文書偽造や偽造文書を用いた詐欺等の犯罪に悪用されることを挙げて,「犯罪の予防」に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条4号の不 重要な機能を有する印章の印影であり,これを公にすることにより有印私文書偽造や偽造文書を用いた詐欺等の犯罪に悪用されることを挙げて,「犯罪の予防」に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条4号の不開示情報に該当すると主張する。 しかし,被告の主張するところは,専ら印章を所有・使用する法人等に生じる可能性がある不利益を指摘するにとどまり(偽造犯罪の被害者が当該法人以外の者にわたることも起こり得るが,そうした場合でも,「自己の印章の印影が偽造され,犯罪に供されない利益」は,当該法人固有の利益とみることができ,同法5条2号イ該当性を問題にすれば足り,この点の判断は前記1のとおりである。),刑事司法の関係諸機関の活動が阻害され,その作用の適正かつ円滑な執行に支障が生ずることを基礎付ける事情とはいい難いから,結局,本件各不開示部分は,同法5条4号の不開示情報には当たらないというべきである。 結論 以上のとおり,本件各文書において被告が不開示とした部分は,いずれも情報公開法5条2号イ又は4号の不開示情報に該当しないから,これを不開示とした本件各処分はいずれも違法であって取り消されるべきである。原告の請求は理由がある。 東京地方裁判所民事第2部大門匡裁判長裁判官- 9 -田徹裁判官吉矢口俊哉裁判官- 10 -(別紙)争点に対する当事者の主張(1)情報公開法5条2号イ該当性についてア被告の主張情報公開法5条2号イは,法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは不開示とする旨規定している。 これは,法人等に関する情報には,営業秘密等,開示すると当該法人等の権利利益を害するおそれのあるも 該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは不開示とする旨規定している。 これは,法人等に関する情報には,営業秘密等,開示すると当該法人等の権利利益を害するおそれのあるものがあるが,原則として,法人等が有する正当な権利利益は開示することにより害されるべきではないとの考え方に基づき規定されたものであって,「その他正当な利益」とは,ノウハウ,信用等,法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含む。また,「害するおそれ」の判断に当たっては,法人等には様々な種類,性格のものがあり,その権利利益にも様々なものがあるので,当該法人等の性格や権利利益の内容,性質等に応じ,当該法人等の憲法上の権利の保護の必要性,当該法人等と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。 本件各文書は,いずれも,法人である医薬品の販売業者が,宮内庁に提出するために私人の立場で作成した医薬品の見積書であり,販売単価,販売総額,すなわち売上額等が記載されていることを考えれば,不特定多数の者を相手に開示されることを予定した文書ではなく,交付される相手,すなわち宮内庁あるいは会計検査院等の関係省庁の担当職員のみに閲読されることを予定した文書といえる。 そして,そこに押捺された印章は,法人等の社印及び代表者印又は支店- 11 -長印であって,法人が作成した書面の作成名義及び記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有するのみならず,契約書等の処分証書にも用いられ,当該法人にとって,社会生活上及び経済活動上極めて重要な機能を有するものである。 したがって,その印影が不特定多数の者に公にされた場合には,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,その財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれが強いといわざるを得ず,不特定多数 ある。 したがって,その印影が不特定多数の者に公にされた場合には,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,その財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれが強いといわざるを得ず,不特定多数の者に対し公にすることを許容する性質のものではない。本件各文書に押印されている代表者印等の印影が,文書に押捺されること等によって当該法人等の団体の外部に示される機会があるとはいえ,当該法人等の団体の内部で厳格に管理される情報であることは明らかである。 なお,本件各不開示部分の印影を開示することによって,情報公開法の目的にそった,行政機関の諸活動を明らかにし,国民の知る権利や国民主権に資するというような利益があるとは認められない。同法5条各号の不開示情報は,開示することにより得られるこうした利益と,個人,法人等の権利利益や国の安全,公共の利益等,開示しないことにより得られる利益とを適切に調整するために定められたものであるから,開示することによる利益が認められないことは,不開示情報該当性の判断に当たり,十分に考慮されるべきである。 よって,本件各文書に表れた印影は,情報公開法5条2号イの不開示情報に該当するものである。 イ原告の主張情報公開法5条2号イに規定する「おそれ」とは,一般的抽象的なものでは足りず,具体的な不利益が生ずる蓋然性がなければならないというべきである。 印鑑は,我が国においては,社会生活で幅広く利用されており,印鑑が- 12 -押捺される場面は,重要な法律行為についての処分証書への押捺のような場面から,回覧板の回覧印の押捺のような単純な事実行為まで,実に多種多様に存在する。 したがって,法人の文書に押捺されている印影が公にされた場合に,法人に具体的な不利益が生ずる蓋然性が存するか否かは,当該印影の性質,形状,使用状況等を 単純な事実行為まで,実に多種多様に存在する。 したがって,法人の文書に押捺されている印影が公にされた場合に,法人に具体的な不利益が生ずる蓋然性が存するか否かは,当該印影の性質,形状,使用状況等を個別具体的に検討する必要がある。 本件各不開示部分の印影は,見積書に押捺されたものであって,当該文書の作成の真正を認証するものであり,認証する文書は,商品の納入という事実行為と代金の催告という準法律行為の性質を有するものを表していて,一定の重要な性質を有すものではあるが,一般に,薬品卸問屋業を営む会社が発行した見積書は,特定の病院や診療所内で,一定の担当者だけが閲覧できるような厳重な管理状況に置かれているわけではなく,また,そこに表れた印影に係る印章も請求書・見積書等多数の書類に使用されている。 さらに,これまで以下の行政庁及び独立行政法人が納品書や請求書に押捺された印影を開示している。 ①労働福祉事業団,②岐阜大学長,③群馬大学長,④東京医科歯科大学長,⑤徳島大学長,⑥名古屋大学総長,⑦高知県知事,⑧静岡県知事,⑨厚生労働省大阪検疫所長,⑩京都大学総長,⑪大分大学長,⑫筑波大学長,⑬香川大学長,⑭宮崎大学長こうした他の行政庁等の開示状況に照らしても,本件各不開示部分の印影は,一般人に秘密にされているような利用状況にはなく,使用目的・範囲・使用方法等が厳格に定められているとはいい難いのであって,これを開示しても,当該法人に具体的な不利益が生ずる蓋然性はないというべきである。 (2)情報公開法5条4号該当性について- 13 -ア被告の主張情報公開法5条4号は,「公にすることにより,犯罪の予防・・に支障を及ぼすおそれがある・・情報」を不開示とする旨を規定している。この「犯罪の予防」とは,犯罪の発生を未然に防止することをいう。また,同号 公開法5条4号は,「公にすることにより,犯罪の予防・・に支障を及ぼすおそれがある・・情報」を不開示とする旨を規定している。この「犯罪の予防」とは,犯罪の発生を未然に防止することをいう。また,同号は,「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」と規定しており,その該当性判断においては,行政庁に比較的広範な裁量権が付与されており,これに対する司法審査は,処分の存在を前提として,当該処分に社会通念上著しく妥当性を欠くなど裁量権を逸脱,濫用したと認められる点があるかどうかを審査する方法によるべきであって,原告が当該裁量権行使がその範囲を超え,又は濫用であったことを基礎づける事実を主張立証すべきである。 本件において不開示とされた各印影は,当該法人の社会生活上又は経済活動上,極めて重要な機能を有する印章の印影であり,これを公にすることにより有印私文書偽造や偽造文書を用いた詐欺等の犯罪に悪用され,犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがある。 したがって,本件各不開示部分の印影が情報公開法5条4号の不開示情報に該当することは明らかである。 イ原告の主張被告の主張するように情報公開法5条4号該当性を広く解釈し,広範な裁量権を認めてしまえば,およそすべての情報は不開示とされることになる。けだし,どんな情報であっても,その情報が悪用され,犯罪に利用される危険性を払拭することはできないからである。 したがって,同法5条4号の対象となる情報とは,刑事法の執行を中心とした情報に限定されるべきであり,具体的には,①当該書類が刑事訴訟法47条に規定する訴訟に関する書類であること又はそれに準ずる秘密指定がされた文書であること,②秘密は非公知のものであり,秘密として保- 14 -護する必要性・相当性があることが必要である。そして,行政機関の裁量の 訟に関する書類であること又はそれに準ずる秘密指定がされた文書であること,②秘密は非公知のものであり,秘密として保- 14 -護する必要性・相当性があることが必要である。そして,行政機関の裁量の対象は,①行政機関が秘密指定をしたこと,②秘密としての保護の必要性及び相当性があると判断したことに求められるべきである。本件では,薬品の見積書に秘密指定がされているとは考えられず,秘密としての保護の必要性及び相当性ともに認め難いから,被告の判断には,裁量権の逸脱又は濫用があるというべきである。
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