平成19(行コ)375 第二次納税義務告知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第290号)

裁判年月日・裁判所
平成20年2月27日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文3,955 文字)

-1-主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 関東信越国税局長が控訴人に対し平成18年6月19日付けでした,6748万4523円を限度とする納税者Aの原判決別紙滞納税金目録記載の滞納国税及び滞納処分費に係る第二次納税義務の告知処分を取り消す。 第2事案の概要 控訴人の父であるAは,原判決別紙滞納税金目録記載の滞納国税等の納付義務を負っていた。Aの妻で,控訴人の母であるBが平成▲年▲月▲日に死亡し,同女の法定相続人は夫のA,子の控訴人及びCの3名であったところ,同女の2億円余りの遺産について分割協議をした結果,Aはその法定相続分(2分の1)を大きく下回る1割以下に相当する相続財産を取得するにとどまり,他方,控訴人はその法定相続分(4分の1)を大きく上回る6割以上に相当する相続財産を取得することとなった。処分行政庁である関東信越国税局長は,控訴人が遺産分割協議により法定相続分を超える財産を取得したことは,国税徴収法(以下「徴収法」という)39条が規定する「滞納者がその財産につき。 行った・・・第三者に利益を与える処分」に当たるとして,控訴人の受けた利益6748万4523円を限度として,控訴人に対し,上記滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨の告知処分をした。 本件は,控訴人が,遺産分割協議は徴収法39条の規定する財産の譲渡,処分等に当たらないなどと主張して,関東信越国税局長がした上記告知処分の取消しを求めた事案である。 本件の前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次項のとおり-2-当審における主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1項ないし3項に記載されたとおりであるから,これを引用する 点及び争点に関する当事者双方の主張は,次項のとおり-2-当審における主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1項ないし3項に記載されたとおりであるから,これを引用する。 当審における主張(控訴人の主張)(1)遺産分割協議が徴収法39条にいう「その他第三者に利益を与える処分」に該当するとの原判決の判断は,同法の解釈を誤ったものである。 近代法において,私人間の法律行為は財産行為と身分行為に大別されるが,遺産分割協議は身分行為であり,身分行為は一身専属的なものであって,他人に強制されるものではないという特質があるから,徴税機関としての国家においても強制力を行使することはできないのであって,そもそも身分行為である遺産分割協議に徴収法39条が適用される余地はない。遺産分割協議について,民法906条は,必ずしも法定相続分どおりの取得をすることを要請していないのであり,遺産分割協議に徴収法39条を適用できるとすると,一律に法定相続分どおりの相続を強制する結果となるのであって,徴収法にそのような民法の規定を改変する権限は与えられていない。 また,民法上の詐害行為取消権は,債務者が積極的に固有の財産を他に譲渡,流失しようとする場合に,それを抑止できる権限として債権者に与えられた権利であり,債務者が消極的に他から資産を取得しないという場合に,債権者がその取得を強制することはできない。そもそも相続財産は,相続人の債権者にとって偶然の幸運によって取得される財産であり,相続人に対して受領を強制したり,あるいは放棄させたりするなどということは,債権者の越権行為である。この理は,私人間のみならず,国家と納税者の関係でも同様であり,徴収法39条が民法424条の詐害行為取消権の要件を超えて,相続などの身分行為にまで適用されるとい いうことは,債権者の越権行為である。この理は,私人間のみならず,国家と納税者の関係でも同様であり,徴収法39条が民法424条の詐害行為取消権の要件を超えて,相続などの身分行為にまで適用されるという余地はない。 (2)徴収法39条は,私人間の詐害行為取消権を,徴税上の便宜のため,裁判所での訴えによることなしに,行政庁である税務官署の一方的な通知処分-3-により行うこととした規定であるから,詐害行為取消権の行使要件より厳格に解釈されるべきである。したがって,詐害行為取消権の要件には詐害の意思が必要であるから,徴収法39条の実質的要件としても,これと別異に解釈すべき理由はない。 (3)本件遺産分割協議に徴収法39条が適用される余地はなく,この点に関する原判決の判断は誤りである。 最高裁平成11年判決は,遺産分割協議を詐害行為取消権の対象としたが,その具体的事案は,かなり限定された特殊な財産行為であったのであり,しかも,最高裁昭和49年判決との整合性を検討すれば,遺産分割協議であっても,積極的に債務者の財産を減少させるものであり,消極的にその増加を妨げるにすぎないものではないと評価されなければならない。本件において,この点の主張立証は何らされていない。 控訴人やAは,民法906条が定めるとおり,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して,本件遺産分割協議をしたのであって,その適法な遺産分割が近代法の大原則に反してまで,徴収法という行政法規で取り消されなければならないことはない。 (被控訴人の主張)(1)およそ身分行為に該当するものについて徴収法39条が適用されない旨の控訴人の主張は,独自の見解にすぎないし,かつ,遺産分割協議も詐害行為取消権の対象になるとした最高裁平成11年判決の趣旨からして,失当なもの 行為に該当するものについて徴収法39条が適用されない旨の控訴人の主張は,独自の見解にすぎないし,かつ,遺産分割協議も詐害行為取消権の対象になるとした最高裁平成11年判決の趣旨からして,失当なものである。また,遺産分割協議に徴収法39条が適用されるとしても,その効果は,滞納者が行った協議について第三者に利益を与える処分に該当する場合に限って,その受けた利益の限度において受益者に第二次納税義務を負わせるものにとどまり,すべての相続に法定相続分どおりの遺産の取得を強制するわけではないし,民法906条で要請されている個別的具体的事情の考慮が無視されることになるわけでもない。 -4-(2)最高裁平成11年判決は,一般論として遺産分割協議が詐害行為取消権行使の対象となることを認めており,同判決の射程が当該事案ないしそれに類似した例外的な場合に限定されると解する余地はないから,控訴人の主張は明らかに失当である。 第3当裁判所の判断当裁判所も,本件遺産分割協議は徴収法39条の規定する滞納者が第三者に利益を与える処分に該当し,処分行政庁である関東信越国税局長が控訴人に対してした本件告知処分は適法であって,控訴人の本件請求は理由がないから,棄却されるべきものであると判断する。その理由は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」に記載されたとおりであるから,これを引用する。 原判決23頁13行目から14行目にかけての「その意味では」の次に,「熟慮期間内の申述により滞納者が初めから相続人とならず,一切の相続財産を承継しない相続放棄とは法的性質が異なるというべきであり」を加え,同,17行目の「通達は」から18行目の「ものではないから」までを「以上によれば」に改める。 原判決23頁末行の次に行を改め, を承継しない相続放棄とは法的性質が異なるというべきであり」を加え,同,17行目の「通達は」から18行目の「ものではないから」までを「以上によれば」に改める。 原判決23頁末行の次に行を改め,次のとおり加える。 「(ウ)また,原告(控訴人)は,遺産分割協議は身分行為であるから,そもそも徴収法39条が適用される余地はないと主張する。しかし,遺産分割協議が身分行為としての面を持っていることは否定できないとしても,最高裁平成11年判決が説示するように,財産権を目的とする法律行為としての性質を持つことも明らかであるから,その点に着目すれば,遺産分割協議が徴収法39条の適用対象になると解したとしても,決して不合理ではない。また,遺産分割協議に徴収法39条が適用されるとしても,その効果は,共同相続人のうちに滞納者が含まれ,かつ,その滞納者が第三者に利益を与える処分をしたと評価される場合において,受益者に第二次納-5-税義務を負わせるにとどまるのであり,すべての相続に際して法定相続分どおりの遺産の取得を強制するものではないし,もとより,民法906条の規定に従った遺産分割協議を否定するものでもないから,原告の指摘は全く当たらないというほかない」。 原判決24頁14行目の「時期及び対象を」の次に「詐害行為取消権の行使の場合と比較して狭く」を加える。 原判決25頁下から2行目の「いうものであり」の次に「この一事をもっ,てしても,本件遺産分割協議が徴収法39条の適用を受けることは明らかであるというべきであるが」を加える。 , 原判決26頁17行目から18行目にかけての「事案のものに限られるというべきであり」を「事案のものに限られるとし」に改める。 第4 結論 よって,控訴人の本件請求を棄却した原判決は正当であって,本件控訴は理由がない 第4 結論 よって、控訴人の本件請求を棄却した原判決は正当であって、本件控訴は理由がない。東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官鈴木健太裁判官内藤正之裁判官後藤健

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