主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告A令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の福岡県選挙区における選挙を無効とする。 2 原告B令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の佐賀県選挙 区における選挙を無効とする。 3 原告C令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の長崎県選挙区における選挙を無効とする。 4 原告D 令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の熊本県選挙区における選挙を無効とする。 5 原告E令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の大分県選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和4年7月10日施行の参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について、福岡県選挙区、佐賀県選挙区、長崎県選挙区、熊本県選挙区及び大分県選挙区の各選挙人である原告らが、公職選挙法14条1項、別表第三の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下、数次の改正の 前後を通じ、平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め、「定数配分 規定」といい、本件選挙に適用される議員定数配分規定を「本件定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙のうち前記各選挙区における選挙(以下「本件各選挙区選挙」という。)も無効であると主張して提起した、公職選挙法204条による選挙無効訴訟である。 2 前提事実 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 当事者原告Aは福岡県選挙区の、原告Bは佐賀県 提起した、公職選挙法204条による選挙無効訴訟である。 2 前提事実 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 当事者原告Aは福岡県選挙区の、原告Bは佐賀県選挙区の、原告Cは長崎県選挙区の、原告Dは熊本選挙区の、原告Eは大分県選挙区の各選挙人である。 被告らは前記各選挙区の選挙管理委員会である。 ⑵ 本件選挙の概要ア本件選挙は、公職選挙法14条1項、別表第三の選挙区及び議員定数の定め(本件定数配分規定)に従い、令和4年7月10日に施行された。 イ本件選挙施行日における参議院の定数は248人であり、うち148人が選挙区選出議員であり、100人が比例代表区選出議員であった。 ウ本件選挙において、選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差は、選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神奈川県選挙区は、3.03(以下、較差に関する数値は全て概数である。)であり、福岡県選挙区は2.22、佐賀県選挙区は1.06、長崎県選挙区は1.74、熊本県選挙区は2. 28、大分県選挙区は1.50であった。(乙1)⑶ 本件選挙までの定数配分規定の改正の経緯等ア参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選 出されるものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選 挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めている 挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていることに応じて、各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の 人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、前記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで、前記定数配分 規定に変更はなかった。なお、昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により、参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の 名称が変更されたものにすぎない。その後、平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により、参議院議員の総定数が242人とされ、比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。 イ参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の 最大較差(以下、各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この人口の最大較差をいう。)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」といい、この通常選挙を の最大較差」というときは、この人口の最大較差をいう。)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」といい、この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、 各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この選挙人数の最 大較差をいう。)が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減する措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。 その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減する措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」 という。)における4選挙区の定数を4増4減する措置の前後を通じて、平成7年から同19年までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。 最高裁判所大法廷は、定数配分規定の合憲性に関し、最高裁昭和58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下「昭和58年 大法廷判決」という。)において、後記ケの基本的な判断枠組みを示した後、平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙については、前記の状態に至って いたとはいえない旨判示した(最高裁平成10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改 9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常選挙のいずれについても、最高裁判 所大法廷は、前記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することなく、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、最高裁平成18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁、最高裁平成21年9月30日大法廷判決 ・民集63巻7号1520頁)。もっとも、これらの最高裁大法廷判決 においては、選挙区間の最大較差が5倍前後で推移する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 ウ平成22年7月11日、通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は5.00倍であった。 最高裁平成24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと 解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数 まりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とす る仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし、それにもかかわらず平成18年改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま平成22年選挙に至ったことなどの事情を総合考慮すると、同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値 の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 エ平成24年11月16日、公職選挙法の一部を改正する法律(平成24 年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された。同法は、平成25年7月に施行される通常選挙に向けた改正として選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減することなどを内容とするものであり、その附則には、同28年に施行される通常選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、 結論を得るものとする旨の規定が置かれていた。 オ平成25年7月21日、通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。 平成25年9月、参議院において、平成2 定が置かれていた。 オ平成25年7月21日、通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。 平成25年9月、参議院において、平成28年の通常選挙に向けた参議院選挙制度改革について協議するため、選挙制度の改革に関する検討会 の下に選挙制度協議会が設置され、平成26年4月には、合区を含む座長案が示されたが、各会派の意見が一致せず、同年12月26日、各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。 このような協議がなされている中で、最高裁平成26年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」 という。)は、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による前記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については前記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、投票価値の不均衡について違憲の問 題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず、したがって、同法による前記の措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど の具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、 現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって前記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 カ選挙制度の改革に関する検討会は、前記オの報告書を受けて協議したが、各会派が一致する 制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって前記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 カ選挙制度の改革に関する検討会は、前記オの報告書を受けて協議したが、各会派が一致する結論を得られず、各会派において法案化作業を行うこととされた。その結果、各会派の意見は、4県2合区を含む10増10減の 改正案と、20県10合区による12増12減の改正案とにおおむね集約され、平成27年7月23日、これら各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出され、同月28日、公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」といい、この改正を「平成27年改正」という。)が成立して、同年11 月5日に施行された。同法は、前者の意見に基づく改正案に係るものであり、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われる通 常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。平成27年改正により、平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった。 キ平成28年7月10日、通常選挙(以下「平成28年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった。 最高裁平成29年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」と 下「平成28年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった。 最高裁平成29年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、人口の少ない選 挙区について、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間 にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷 判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則において、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を規定しており、今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう 配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、同規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとした。 ク平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く 3県では、投票率が当時における過去最低となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県では全国最高となった。全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下など様々な弊害が 、投票率が当時における過去最低となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県では全国最高となった。全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下など様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を採択した。 また、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町 村会及び全国町村議会議長会も、合区の早急な解消に向けた決議等が行われ、多くの地方議会でも同様の決議等がされた。 平成29年2月に、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査する選挙制度に関する専門委員会が設けられた。同委員会は、一票 の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の 枠組み等について協議した上で、選挙区を都道府県単位とすること、一部合区を含む都道府県単位とすること、又は選挙区の単位を都道府県より広域の選挙区(ブロック選挙区)とすることの各案や、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含む選挙制度の在り方等を議論したが、議論の上で示された各会派の意見の内容は、選挙区 の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがあった。同委員会は、平成30年5月、前記協議会に対し、これらの協議結果についての報告書を提出した。 同年6月、前記協議会において、自由民主党が、選挙区の単位を都道府県とし、平成27年改正による4県2合区は維持し、選挙区選出議員の 定数を2人増員すること等を内容とする案を示したが、各会派間の意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなって、 等を内容とする案を示したが、各会派間の意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなって、前記自由民主党の案と他の案とが提出され、同年7月、同委員会において、前記自由民主党の提案内容に沿った公職 選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」という附帯決議がされた。 平成30年7月18日、前記法律案どおりの公職選挙法の一部を改正す る法律(平成30年法律第75号。以下「平成30年改正法」といい、この改正を「平成30年改正」という。)が成立し、同年10月25日に施行された。同法は、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正法による4県2合区を維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分すること、比例代表選出議員の定数を 4人増員するとともに、政党等が優先的に当選人となるべき候補者を定 めることができる特定枠制度を導入することなどを内容とするものであった。平成30年改正により、平成27年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった。なお、平成30年改正法には参議院議員選挙制度の見直しに関する附則はなかった。 ケ令和元年7月21日、平成30年改正後の定数配分規定の下での初めての通常選挙(以下「前回選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった。投票率は約48.8%(平成28年選挙は約54.7%)で、合区の対象となった県では、高知県が約46.34%で前回選挙を上回ったが、徳島 行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった。投票率は約48.8%(平成28年選挙は約54.7%)で、合区の対象となった県では、高知県が約46.34%で前回選挙を上回ったが、徳島県は約38.59%、鳥取県は 約49.98%、島根県は約54.04%と、いずれも前回選挙を下回り、徳島県は全国最低であった。(乙4の2)最高裁令和2年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)は、前回選挙につき、要旨以下のとおり判示した。 参議院議員の選挙制度の仕組みは、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)とに分け、前者については全国の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものであるが、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動 の結果、前記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、定数配分規定が憲法に違反する状態に至るものと解するべきであり、累次の大法廷判決の趣旨とするこの基本的な判断枠組みを変更する必要はない。 平成30年改正法は、総定数を増やした上で、選挙区選出議員について は、平成27年改正による4県2合区を維持したまま、埼玉県選挙区を2人増員することを内容とするものであり、この合区は、総定数を大幅に増やす方法を採ることにも制約があった中、半数改選という憲法上の要請を踏まえて各選挙区の定数を偶数で設定しつつも選挙区間の較差を縮小することを可能とするものであったが、その対象となった県におけ に増やす方法を採ることにも制約があった中、半数改選という憲法上の要請を踏まえて各選挙区の定数を偶数で設定しつつも選挙区間の較差を縮小することを可能とするものであったが、その対象となった県におけ る投票率の低下及び無効投票率の上昇と合区との関連性を指摘し、その解消を強く望む意見も存在した。このような状況の下、平成28年選挙施行後、参議院改革協議会の下に設置された選挙制度に関する専門委員会において、一票の較差、選挙制度の枠組み、議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について議論が行われ、合区制度の是非や、都道府県を単 位とする選挙区に代えてブロック選挙区を導入すること等の見直し案についても幅広く議論が行われたが、各会派の意見の隔たりは大きく、一致する結論を得ることができないまま、平成30年改正法が成立した。 同改正法の内容は、結果として、選挙区選出議員に関しては1選挙区の定数を2人増員する措置を講ずるにとどまり、同法には、平成27年改 正法附則7条(前記カ)のような規定が設けられておらず、平成30年改正法の審議において、参議院選挙制度改革について憲法の趣旨にのっとり引き続き検討する旨述べる附帯決議がされたが、その中では選挙区間における較差の是正等について明確には言及されていない。憲法の趣旨等(後記第3の2⑴参照)との調和の下に投票価値の平等が実現され るべきことは平成29年大法廷判決等でも指摘されているのであるから、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正においてこうした取組が大きな進 展を見せているとはいえない。しかし、平成 拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正においてこうした取組が大きな進 展を見せているとはいえない。しかし、平成30年改正は、参議院議員 の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持して僅かではあるが較差を是正しており、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を前記の程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、ま た、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面がある。そうすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはでき ない。以上のような事情を総合すれば、本件選挙当時、平成30年改正法施行後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 ⑷ 定数配分規定改正に関する前回選挙後の状況等ア平成27年改正以降、全国知事会等や、中国地方や四国地方の地方公共団体の首長等から合区の解消を求める決議ないし提案が続いていたが、前回選挙後も合区の解消を求める決議ないし提案が続いた。合区の対象である鳥取県、島根県、徳島県及び高知県の各知事は、令和元年7月2 3日、憲法改正などによる合区の解消を求める緊急共同声明を発出し、全国知 合区の解消を求める決議ないし提案が続いた。合区の対象である鳥取県、島根県、徳島県及び高知県の各知事は、令和元年7月2 3日、憲法改正などによる合区の解消を求める緊急共同声明を発出し、全国知事会は、同月24日、令和の新たな時代を迎え、地方の多様な意見が国政でしっかりと反映されるよう、引き続き、最高裁の判例を踏まえ、十分な国民的議論のもとで憲法改正等の抜本的対応により、合区の確実な解消を強く求める意見を表明する決議をした。その後、全国都道 府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町 村議会議長会、中国地方知事会、四国四県町村会及び町村議会議長会等は、合区の解消を求める決議ないし決定をしたほか、合区の対象となった4県が所在する中国地方及び四国地方の地方公共団体の知事又は議会、知事又は議会の議長により構成される団体を中心に、合区の解消を求める決議ないし提案が続いた。(乙24の7、乙25の7、乙26の4、 乙27の7、乙28の8、乙29の5、乙31の2・236~259)イ令和3年5月14日、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため、参議院改革協議会が設置され、同月から令和4年6月まで、合計13回にわたり、各会派からなる14名の協議員により、参議院の在り方、参議院議員選挙制度の改革、議員の身分保障等に関する検討が 行われた。参議院議員選挙制度の改革に関しては、参考人から意見や提言を聴取したほか、各協議員間で意見交換が重ねられた。議論の中で、投票価値の平等を最大限に尊重すべきであることに異論は出なかったが、現行制度を維持するとの意見、完全比例区制を導入するとの意見、都道府県選挙制をブロック制に移行するとの意見等が出され、最終的に各会 派の意見の一致には至らなかった。 ことに異論は出なかったが、現行制度を維持するとの意見、完全比例区制を導入するとの意見、都道府県選挙制をブロック制に移行するとの意見等が出され、最終的に各会 派の意見の一致には至らなかった。 参議院改革協議会は、令和4年6月8日、論点に関する議論を整理した参議院改革協議会報告書を取りまとめて参議院議長に提出した。同報告書においては、参議院制度に関し、本件選挙後、新たな会派構成の下で、議長に各会派の協議の場を設けた上で、次の協議会に引き継ぐものとし、 次期協議会では、本協議会での議論を土台として、継続的な取組が求められる新たな参議院選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について、速やかに協議を開始し、更に議論を深めていくことを切望するものとされ、議論を継続することが確認されたが、具体的な選挙制度の改革案が取りまとめられることはなく、各会派の具体的な選挙制度の改革案も示 されなかった。(甲154、乙34) ウ令和4年5月及び6月に開催された参議院憲法審査会において、参議院選挙制度に関し、合区問題を中心として、参考人から意見を聴取するともに、各会派による意見交換が行われた。この場においても、各会派から、合区の解消を求める意見に加え、全国11ブロックに分けた大選挙区制の導入を求める意見、比例代表を中心とした選挙制度への見直しを 求める意見などが述べられ、二院制を採用した憲法の趣旨を踏まえ、いかなる具体的な選挙制度によって、その趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させるかについて議論が行われたが、成案を得るには至らなかった。(乙35の1・2)⑸ 本件選挙の施行 前回選挙以降定数配分規定の改正が行われないまま、令和4年7月11日、平成30年改正による本件定数配分規定の下での 成案を得るには至らなかった。(乙35の1・2)⑸ 本件選挙の施行 前回選挙以降定数配分規定の改正が行われないまま、令和4年7月11日、平成30年改正による本件定数配分規定の下での2回目の通常選挙である本件選挙が施行された。本件選挙当日における最大較差は1対3.03であった。 全国の投票率は約52.05%で、前回選挙の約48.80%を上回った。 合区対象県では、徳島県が約45.72%、鳥取県が約48.93%、島根県が約56.27%、高知県が約47.36%で、徳島県は全国最低であった。また、無効投票率は、全国平均が約2.71%、鳥取県が約3. 94%、島根県が約2.76%、徳島県が約3.41%、高知県が約3. 65%であった。(乙2) 3 争点及び当事者の主張⑴ 本件選挙時点で投票価値の著しい不平等状態が生じていたか否か(原告らの主張)本件選挙時点で、本件定数配分規定は、憲法の要求する人口比例選挙に反して違憲であり、少なくとも同規定による投票価値の不均衡は、違憲の問題 が生ずる程度の著しい不平等状態にあった。 ア憲法56条2項、1条、前文1項1文後段、前文1項1文前段は、人口比例選挙を要求している。 国民主権(憲法1条、前文1項1文後段)の下、国民は、主権の行使として選挙権を行使し、正当に選挙された国会議員は、主権を有する国民を代表し(憲法前文1項1文前段)、両議院の議事は、出席議員の過半数で これを決する(憲法56条2項)。これらの規定は、両議院の議事が、正当な選挙により、出席議員の過半数で按分される主権を有する全国民から選出される各院の出席議員の過半数により決定することを求めている。しかるところ、人口比例選挙の下では、各院の出席議員の過半数が 、正当な選挙により、出席議員の過半数で按分される主権を有する全国民から選出される各院の出席議員の過半数により決定することを求めている。しかるところ、人口比例選挙の下では、各院の出席議員の過半数が、出席議員の過半数の比率の全国民から選出されることが保障されるが、非人口比 例選挙の下では、全人口の半数未満から過半数の議員が選出されることがあり得るから、これが保障されない。非人口比例選挙の下での国家は、主権を有する全国民の過半数から選出された全国会議員の半数未満の投票が、全国民の半数未満から選出された全国会議員の過半数の投票に劣後することが起こり得るので、国民主権国家ではなく、国会議員主権国家である。 そして、本件定数配分規定により施行された本件選挙における選挙区間の最大較差は3.03倍に達していたのであるから、本件定数配分規定は、本件選挙時点で、全体として、憲法の要求する人口比例選挙に反し、違憲である。 イ本件選挙の違法性の判断の基準時は、本件選挙の施行日である。 最高裁昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁は、昭和47年12月10日施行の衆議院議員選挙について、未施行であった昭和50年法律第63号による改正を考慮せずに、当該選挙が違法である旨判示しており、この判断は、先例として拘束力を有する。令和2年大法廷判決は、立法府の検討過程において較差を指向する姿勢が失われるに至 っていないことを、投票価値の不均衡が著しい不平等状態には至っていな いことの根拠として挙げているが、これは、前回選挙より後の選挙に適用される法律が立法される可能性があるという、前回選挙後の事情を考慮したものであって、そもそも不当であるし、判例変更であることを明示せず、かつ、説得的理由を付して 、これは、前回選挙より後の選挙に適用される法律が立法される可能性があるという、前回選挙後の事情を考慮したものであって、そもそも不当であるし、判例変更であることを明示せず、かつ、説得的理由を付していないから、判例変更の仕方としても不当である。 ウ令和2年大法廷判決が示した判断基準によっても、本件定数配分規定による投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた。 本件選挙の時点では、立法府において、較差の是正を指向する姿勢は失われていた。すなわち、令和3年から令和4年にかけて、改憲派の各政党 にとって、憲法改正が具体的な問題として視野に入るようになり、改憲反対派の各政党にとっても、参議院選挙で全議席の3分の1を占める見通しが立たず、憲法改正の国会発議が成立し得る政治状況が生じており、投票価値の不均衡の問題も、改憲によって対応することが可能であるという考え方が生じていた。このような状況の下で、参議院は、令和3年5月に参 議院改革協議会を設置したものの、いずれの政党も具体的な改革案を作成せず、具体的な選挙制度の改革案に関する議論を怠り、各会派ないし各政党の具体的な選挙制度改革案が提示されたことはなかった。 エ投票価値の平等からのかい離が合理的であることの立証責任は、被告らが負う。 (被告らの主張)本件選挙時点で、本件定数配分規定による投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない。 ア投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との 関連において調和的に実現されるものである。国会が定めた具体的な選挙 制度がその裁量権の行使として合 、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との 関連において調和的に実現されるものである。国会が定めた具体的な選挙 制度がその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定限度譲歩することが求められることとなっても、違憲状態にはならない。 都道府県単位の選挙制度は、憲法制定当時から参議院議員の選挙制度における国会の裁量権行使の一態様として想定されており、都市と地方との 格差が顕著なものとなった今日の社会状況の下では、重要性が格段に高まっている。都道府県は、長年にわたる歴史を通じて、一つの行政単位として歴史的、政治的、経済的、社会的及び文化的な一体感が醸成されており、選挙制度の決定に際し、国会が考慮することができる基本的な要素の一つである。また、選挙区割りの決定に際し、既に存在する行政区画を考慮す ることにより、選挙区割りの恣意性(いわゆるゲリマンダーの弊害)を避けることにも資する。そして、衆議院の小選挙区制度においては、1人別枠方式が廃止され、厳格な人口比率に基づく選挙制度が取られているところ、参議院において都道府県単位を原則とする選挙制度が維持されることにより、両議院の選挙制度全体として、地方公共団体の種類や特色を踏ま えた多角的な民意の反映が可能となり、二院制を採用した趣旨にも沿うといえる。さらに、人口の多い都市部に居住する多数者のみならず、山間部等のいわゆる過疎地域を含む地域に住む少数者の意見も十分に国政に届くような定数配分規定を定めることもまた、国会において考慮し得る政策的目的ないし理由となる。 イ本件定数配分規定の合憲性の判断に当たり、立法府の検討過程において較差を指向する姿勢が失われるに至っていな 定を定めることもまた、国会において考慮し得る政策的目的ないし理由となる。 イ本件定数配分規定の合憲性の判断に当たり、立法府の検討過程において較差を指向する姿勢が失われるに至っていないことを考慮すべきではないとの原告らの主張は争う。 ウ平成27年改正により合区が創設されるなどした結果、選挙区間における人口の最大較差は2.97倍となり、平成24年大法廷判決及び平成2 6年大法廷判決が指摘した違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は 解消された。そして、平成30年改正法は、平成27年改正による選挙区割りを維持しつつ、埼玉県選挙区の定数を2人増員するものであり、これにより選挙区間における人口の最大較差は2.99倍に縮小した。平成30年改正は、国会において正当に考慮し得る政策的目的ないし理由に基づき国会に認められた立法裁量の範囲内で、合憲と判断された平成28年選 挙時における選挙区間の投票価値の不均衡の更なる是正を実現したものであり、平成27年改正法及び平成30年改正法により実現された定数配分規定の合憲性は本件選挙時においても維持されていた。 参議院は、憲法上、3年ごとに半数が改選されるものとされているから、選挙区ごとの定数を偶数配分しており、衆議院と比べて選挙制度の改革 に様々な制約が存在する。そうした中で、立法府は、平成27年改正により一部の選挙区で合区を導入したが、合区の対象となった県相互間の課題や利害等が一致するとは限らず、前回選挙及び本件選挙においては、合区の対象となった県の多くで投票率の低下が見られるなど、合区の導入による弊害が指摘されており、反対意見が根強く存在する。 しかし、立法府においては、平成27年改正法に参議院選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結 が見られるなど、合区の導入による弊害が指摘されており、反対意見が根強く存在する。 しかし、立法府においては、平成27年改正法に参議院選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るものとする旨の附則を置いたり、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会により、平成30年改正後も参議院選挙制度改革に向けた検討を引き続き行う旨の附帯決議を付すなどしている。 また、令和2年大法廷判決後も、参議院改革協議会が組織されて参議院選挙制度の改革に関する議論を行い、本件選挙後も議論を継続することを確認しているほか、参議院憲法審査会においても、合区問題を中心に、各会派による意見交換や専門家からの意見聴取等が行われている。選挙制度の改革には様々な困難が伴うにもかかわらず、国会は、選挙制度の 改革や較差の是正に向け、真摯な取組を継続している。 エ本件定数配分規定は、投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、これを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えた場合に初めて違憲となる。 ⑵ 投票価値の著しい不平等状態が生じたとして、これを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えるか否か (原告らの主張)本件定数配分規定が人口比例選挙に反し、あるいは少なくとも、当該規定による投票価値の不均衡が著しい不平等状態に至った以上、その是正に関する国会の裁量権を論ずるまでもなく、憲法98条1項により違憲である。 また、投票価値の著しい不平等状態が相当期間継続しているにもかかわら ずこれを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超える場合に違憲になると解したとしても、前記⑴(原告らの主張)ウのとおり、本件では、立法府の検討過程において較差の是正を志向する姿勢 ずこれを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超える場合に違憲になると解したとしても、前記⑴(原告らの主張)ウのとおり、本件では、立法府の検討過程において較差の是正を志向する姿勢が失われたことが明らかであって、国会が是正措置を講じないことは国会の裁量権の限界を超えている。 (被告らの主張)本件定数配分規定による投票価値の不均衡が著しい不平等状態に至ったとしても、同規定が直ちに違憲となるものではなく、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等となったことを認識し得た時期を基準として、国会が是正措置をとらなかったことが国会の裁量権の限界を超えた場合に初めて 違憲となる。 合区を導入するなどした平成27年改正により、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の不平等状態は解消されており、同改正後に施行された平成28年選挙につき、平成29年大法廷判決は、定数配分規定が違憲状態にはない旨判示した。平成30年改正後の定数配分規定の下 で施行された前回選挙についても、令和2年大法廷判決は、定数配分規定 が違憲状態にはない旨判示した。本件選挙は、平成30年改正後の定数配分規定に基づいて施行されたが、平成21年大法廷判決までの累次の最高裁判決において合憲とされた選挙区間の最大較差を大幅に下回り、合憲と判断された前回選挙時の最大較差とほぼ同じであったのであるから、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っ ているとは考え難い状況であった。これらの事実によれば、国会が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得たとは認められず、国会における是正の実現に向けた取組みが裁量権の行使の限界を超えるものとも認められない。 ⑶ 事情判決の当否 の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得たとは認められず、国会における是正の実現に向けた取組みが裁量権の行使の限界を超えるものとも認められない。 ⑶ 事情判決の当否 (原告らの主張)本件定数配分規定が違憲である以上、本件各選挙区選挙は無効である。本件において事情判決の法理は妥当しない。 本件選挙の無効判決により選挙区選出の参議院議員の地位が失われる場合でも、判決の効力は遡及しない上、本件選挙については全45選挙区で 各原告が選挙無効訴訟を提起しており、選挙区ごとに地位の帰すうが異なることはないし、比例代表選挙により選出された100人の参議院議員が存在し、参議院の定足数を満たすから、参議院における国会活動は有効に行うことができる。このように、本件選挙の無効判決が言い渡されても、社会的混乱や不都合は生じないから、本件において事情判決の法理は妥当 しない。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 憲法14条1項が法の下の平等を定めていること等に鑑みると、憲法は、選 挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する 影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。他方で、憲法43条2項、47条が、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定める旨を規定していることに鑑みると、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の具体的な仕組みについて、法律で定めるものとし、国会の裁量に委ねているものと解される。 これらの諸規定によれば、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由と 委ねているものと解される。 これらの諸規定によれば、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求め られることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。参議院議員の選挙制度の仕組み(前記第2の2⑶ア)は、 このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制定当時において、このよう な選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかし、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、前記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界 を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至る ものと解するのが相当である(令和2年大法廷判決参照)。 原告 を是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界 を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至る ものと解するのが相当である(令和2年大法廷判決参照)。 原告らは、憲法56条2項、1条、前文1項1文後段、前文1項1文前段が人口比例選挙を要求しており、これに反する選挙は違憲である旨主張するが、前記のとおり、憲法43条2項、47条が、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項はこれを法律で定めるものとし、それ以上の 具体的な定めを置いていないことからすれば、原告らが指摘する諸規定によっても、憲法が、投票価値の平等以外の要素を考慮することを否定するものと解することはできない。また、投票価値の平等からのかい離が認められる場合でも、それが合理的であることの立証責任を被告らが負うものとは解されないことは、前記説示から明らかである。 2 争点⑴(本件選挙時点で投票価値の著しい不平等状態が生じていたか否か)⑴ 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、 参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そして、いかなる具体的な選挙制度によって、前記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議 院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいか 制度によって、前記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議 院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合 理的行使として是認し得るものと考えられる。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏ま えた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 ⑵ 参議院議員選挙法制定当時2.62倍であった選挙区間の最大較差は、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年選挙当時6.59倍に達し、平成6年改正、平成12年改正及び平成18年改正が行われたが、平成7年から 平成19年までに施行された通常選挙における選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。 昭和58年大法廷判決から平成21年大法廷判決までの累次の大法廷判決は、各選挙につきいずれも違憲ではない旨判示した(ただし、平成8年大法廷判決では、平成4年選挙について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等 状態が生じていた旨判示した。)が、前記の最大較差を前提に、較差の状況について投票価 ない旨判示した(ただし、平成8年大法廷判決では、平成4年選挙について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等 状態が生じていた旨判示した。)が、前記の最大較差を前提に、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 そして、選挙当時の選挙区間の最大較差が5.00倍であった平成22年選挙について、平成24年大法廷判決は、参議院議員の選挙であること自体 から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難いこと、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っていることなどを指摘して、同選挙当時の選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道 府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改 めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 また、平成26年大法廷判決は、選挙区間の最大較差が4.77倍であった平成25年選挙について、平成24年改正法による前記4増4減の措置を 経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって前記の不平等状態が 解消される必要がある旨を指摘した。 その後、平成29年大法廷 約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって前記の不平等状態が 解消される必要がある旨を指摘した。 その後、平成29年大法廷判決は、合区を創設するなどした平成27年改正法の下で施行され、選挙区間の最大較差が3.08倍に縮小した平成28年選挙につき、投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない旨判示した。ただし、同大法廷判決は、平成2 7年改正法を、長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに、更なる較差の是正を指向するものとして積極的に評価し、また、投票価値の不均衡が著しい不平等状態にあったとはいえないことの根拠として、同改正法の附則が、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る 旨を規定していることをも挙げている。したがって、平成29年大法廷判決は、上記の最大較差の数値をもって直ちに、平成27年改正の時点で投票価値の不均衡による著しい不平等状態が解消され、立法府において較差の更なる是正を図る取組を続ける必要性がなくなったと判断したのではなく、是正の対象となる較差がなお存在することを前提に、立法府において次回の通常 選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しに関する検討を行い必ず結論を得る としたことも考慮して、投票価値の不均衡が著しい不平等状態にあったとはいえないと判断したものと解される。 また、令和2年大法廷判決は、合区を維持しつつ埼玉県選挙区の定数を増加した平成30年改正の下で施行され、選挙区間の最大較差が2・99倍に縮小した前回選挙につき、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあ ったとはいえない旨判示 持しつつ埼玉県選挙区の定数を増加した平成30年改正の下で施行され、選挙区間の最大較差が2・99倍に縮小した前回選挙につき、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあ ったとはいえない旨判示した。同判決は、平成27年改正法附則7条にいう選挙制度の抜本的な見直しに関する結論が得られたとは認め難い状況下において、立法府においては、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているが、平成30年改正において、こうした取組が大 きな進展を見せているとはいえない旨を指摘している。これは、平成29年大法廷判決が、平成27年改正法附則7条における、投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意及び再び大きな較差を生じさせることのないようにするための配慮をもって、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の 著しい不平等状態にあったことを否定する根拠の一部としたにもかかわらず、平成30年改正の内容及び同改正に至る立法府の取組が、このような方向性、決意及び配慮に照らして満足すべきものでないと評価したものというべきである。令和2年大法廷判決は、平成30年改正について、様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も 存在する中で、合区を維持し僅かながら較差を是正したことを、平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものと評価し、参議院選挙制度の改革に際しては、事柄の性質上慎重な考慮を要し、実現は漸進的にならざるを得ない面があることなどを挙げて、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとした 改革に際しては、事柄の性質上慎重な考慮を要し、実現は漸進的にならざるを得ない面があることなどを挙げて、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとしたが、 投票価値の平等という問題の性質と前記附則7条の内容に照らし、同条にい う抜本的な見直しについて結論を得る時期が、同条が設定した平成31年通常選挙という目標から大きくかい離することは、令和2年大法廷判決の前記判示を前提としても、認め難いと解される。 そうすると、本件選挙において、前回選挙から較差が有意に縮小して投票価値の不均衡による著しい不平等状態が改善されておらず、かつ、前回選挙 以降立法府において較差の更なる是正及びその持続のための取組が進展したと認められないのであれば、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態の存在を否定することはできない。 ⑶ 前回選挙後、令和3年5月14日に参議院改革協議会が設置され、同月から令和4年6月までの間、参議院議員選挙制度の改革等に関する議論が重ね られたが、最終的に各会派の意見が一致せず、同月取りまとめられた報告書においても、本件選挙後、参議院議員選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について協議を開始するものとされただけで、具体的な選挙制度の改革案の取りまとめはされず、本件選挙は前回選挙と同じく平成30年改正法に基づいて実施された。なお、前記協議会において各会派の具体的な選挙制度 の改革案が示されることもなかった。また、令和4年5月及び同年6月に開かれた参議院憲法審査会において、合区問題を中心に、参考人の意見聴取が行われたほか、各会派による意見交換が行われたが、各会派の意見の内容についての具体的な議論がなされたとはいい難く、結果的に成案を得るには至っておらず、これを て、合区問題を中心に、参考人の意見聴取が行われたほか、各会派による意見交換が行われたが、各会派の意見の内容についての具体的な議論がなされたとはいい難く、結果的に成案を得るには至っておらず、これをもって投票価値の較差の是正に向けた取組として特段の 進展があったということはできない。 このような事実を前提とすると、本件選挙時点で、投票価値の較差の是正に向けた具体的な選挙制度改革の方向性が示されている状況にあったとはいえない。そして、令和元年7月の前回選挙から令和4年7月の本件選挙までの間、定数配分規定の改正は行われず、本件選挙は平成30年改正法による 本件定数配分規定の下で施行され、選挙日における選挙区間の最大較差は3. 03倍と、前回選挙から是正されず、かえってわずかながら拡大した。 前記のとおり、平成27年改正法においては、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直して合区が創設され、選挙区間の最大較差が3.08倍まで縮小し、かつ、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しに ついて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨の附則が置かれていたこと、平成30年改正法においても、合区を維持しつつ埼玉県選挙区の定員を増加し、最大較差は3.00倍となり、わずかではあるが較差の是正が図られ、平成30年改正の審議において、参議院選挙制度改革について憲法の趣旨にのっとり引き続き検討する旨の附帯決議がされていたこととの比較において、前 回選挙以降の立法府における取組は、選挙制度の仕組みの抜本的見直しも、較差を是正するための定数配分規定の改正(部分的なものを含め)も行われないというものであり、また、今後も参議院の選挙制度改革の議論が続けられることは見込 る取組は、選挙制度の仕組みの抜本的見直しも、較差を是正するための定数配分規定の改正(部分的なものを含め)も行われないというものであり、また、今後も参議院の選挙制度改革の議論が続けられることは見込まれるとはいえ、改革の方向性も特段示されていないといわざるを得ない。したがって、前回選挙以後の取組がそれ以前の取組から進展 したとはいえず、むしろ、投票価値の較差を是正する指向は後退したと評価せざるを得ない。 ⑷ 令和2年大法廷判決も指摘するとおり、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑 みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面がある。また、合区に関しては、全国知事会のほか、合区の対象となった県が所在する中国地方や四国地方の地方公共団体の知事ないし議会等を中心に、反対意見が強く出されている状況にある。 しかし、選挙制度に関する立法府の裁量を前提としても、今後も不断に人 口変動が生じる中で、立法府における較差の是正に向けた取組に無制限の時 間的猶予が認められるとは解されない。そして、前記のとおり、平成27年改正法附則7条が平成31年選挙に向けて、較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、必ず結論を得ると定めたことに鑑みると、平成31年の更に約3年後に実施された本件選挙までの間に一定の結論を得ることが不可能であったとまでは解し難い。そして、その間、前 記協議会などにおいて、二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等に関し、具体的な選挙制度改革に資するような議論が行われたと認めるに足りる証拠はない。 なお、全国知事会等の意見も、令和元年7月24日 おいて、二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等に関し、具体的な選挙制度改革に資するような議論が行われたと認めるに足りる証拠はない。 なお、全国知事会等の意見も、令和元年7月24日付けの全国知事会の決議が、地方の多様な意見が国政でしっかりと反映されるよう、引き続き、最 高裁の判例を踏まえ、十分な国民的議論のもとで憲法改正等の抜本的対応により、合区の確実な解消を強く求めるというものであった(乙24の7)ように、飽くまで合区の解消を求めるものであって、立法府における較差の是正に向けた取組を否定する趣旨のものとは解されない。また、4県2区の合区を採用した平成30年改正後の通常選挙で、合区対象地域における投票率 の低下や無効投票率の上昇などが一定程度みられることは前記のとおりであるが、これらと合区との因果関係が明らかになったとまでは認められない上、今後合区が定着すれば状況が改善するという可能性も否定できないから、少なくとも、合区の採用による弊害の存在や程度は明らかとはいえない。 ⑸ 以上のような事情を総合すれば、本件定数配分規定による投票価値の不均 衡は、本件選挙時点で、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたと認めるのが相当である。 3 争点⑵(投票価値の著しい不平等状態が生じたとして、これを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えるか否か)について⑴ 前記のとおり、平成29年大法廷判決は、合区を導入するなどした平成2 7年改正による定数配分規定の下で施行された平成28年選挙につき、また、 令和2年大法廷判決は、合区を維持しつつ、埼玉県選挙区の定数を増加した平成30年改正による本件定数配分規定の下で施行された前回選挙につき、いずれも当該選挙当時の投票価値の不均衡が違 、また、 令和2年大法廷判決は、合区を維持しつつ、埼玉県選挙区の定数を増加した平成30年改正による本件定数配分規定の下で施行された前回選挙につき、いずれも当該選挙当時の投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない旨判示した。同判決は、平成30年改正について、参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容 易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持して僅かではあるが較差を是正しており、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を前記の程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組み などから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面があるとして、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとしたものであり、平成30年改正に対する一定の肯定的評価を含むものであった。そして、前回選 挙後の令和3年5月14日には、参議院改革協議会が設置され、合計13回にわたり、各会派からなる14名の協議員により、参議院の在り方や参議院議員選挙制度の改革等に関する検討が行われた。 また、本件選挙は、前回選挙と同じく、平成30年改正後の本件定数配分規定の下で施行されたが、最大較差は3.03倍で、平成21年大法廷判決 までの累次の最高裁大法廷判決において違憲ではないと判断された最大較差を大幅に下回るものであり、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない 1年大法廷判決 までの累次の最高裁大法廷判決において違憲ではないと判断された最大較差を大幅に下回るものであり、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえないと判断された前回選挙時の最大較差を上回ったものの、その差はわずかであった。 これらの事実によれば、国会において、本件選挙の時点においても、本件 定数配分規定が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを 認識し得たとまでは認められず、本件選挙までにこれを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えるものとは認められない。 ⑵ 原告らは、本件定数配分規定が著しい不平等状態に至っていれば、国会の合理的な裁量を超えるか否かを論ずるまでもなく、直ちに憲法98条1項により違憲である旨主張するが、国会の裁量が認められることは前記のとおり であり、採用することができない。 4 小括以上のとおり、本件定数配分規定が、本件選挙当時、憲法に違反するに至っていたということはできない。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官久保田浩史 裁判官水野正則 裁判官穗苅学
▼ クリックして全文を表示