平成12(行ケ)150

裁判年月日・裁判所
平成13年4月25日 東京高等裁判所
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判決文本文13,754 文字)

平成12年(行ケ)第150号特許取消決定取消請求事件(平成13年4月16日口頭弁論終結)判決原告三菱マテリアルシリコン株式会社原告三菱マテリアル株式会社両名訴訟代理人弁理士安倍逸郎被告特許庁長官及川耕造指定代理人加藤浩一同内野春喜同山口由木同宮川久成 主文 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら特許庁が平成11年異議第70880号事件について平成12年3月14日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告らは、名称を「COPを低減した張り合わせ半導体基板およびその製造方法」とする特許第2796666号発明(平成6年8月9日特許出願、平成10年7月3日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。 平成11年3月8日及び同月10日、上記特許につき特許異議の申立てがされ、平成11年異議第70880号事件として特許庁に係属したところ、原告らは、平成11年8月10日に明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求をし、同年11月29日に訂正請求書の補正をした(以下、この補正後の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」と 平成11年8月10日に明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求をし、同年11月29日に訂正請求書の補正をした(以下、この補正後の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。)。 特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、平成12年3月14日、「特許第2796666号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は同年4月6日原告らに送達された。 2 特許請求の範囲の記載(1) 設定登録時の明細書の特許請求の範囲の記載【請求項1】2枚の半導体基板の主面同士を重ね合わせた張り合わせ半導体基板において、その表面に存在する0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下としたCOPを低減した張り合わせ半導体基板。 【請求項2】2枚の半導体基板の主面同士を重ね合わせて1枚の張り合わせ半導体基板を製造する張り合わせ半導体基板の製造方法において、上記張り合わせ後の熱処理を、その表面に存在する0.1μm以上の大きさのCOPが0.3個/㎝2以下とする条件で行った張り合わせ半導体基板の製造方法。 【請求項3】上記熱処理は1200℃以上で行った請求項2に記載した張り合わせ半導体基板の製造方法。 (2) 本件訂正に係る明細書(以下「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。)【請求項1】2枚の鏡面研磨したシリコンウェーハの主面同士を重ね合わせた後、1200℃以上の温度で熱処理を行った張り合わせ半導体基板であって、その表面に存在する0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下としたCOPを低減した張り合わせ半導体基板。 (請求項 度で熱処理を行った張り合わせ半導体基板であって、その表面に存在する0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下としたCOPを低減した張り合わせ半導体基板。 (請求項2、3は上記(1)と同じ。) 3 本件決定の理由本件決定は、別添決定謄本写し記載のとおり、①訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「訂正発明」という。)は、平成6年5月20日株式会社培風館発行の「アドバンストエレクトロニクスシリーズⅠ-4 バルク結晶成長技術」60頁~70頁(本訴甲第12号証、以下「引用例1」という。)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正は、特許法126条4項の規定により認められないとし、②本件発明の要旨を設定登録時の明細書の特許請求の範囲の記載のとおり認定した上、その請求項1~3記載の各発明(以下、請求項の番号に対応して「登録時発明1~3」などと表記する。)は、いずれも特開平5-345699号公報(本訴甲第3号証の5、以下「引用例2」という。)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものとした。 第3 原告ら主張の本件決定取消事由本件決定の理由中、引用例1、2の記載事項の認定(決定謄本2頁24行目~3頁30行目、6頁7行目~7頁7行目)、訂正発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点の認定(同3頁32行目~4頁4行目)、登録時発明1~3と引用例2記載の発明との一致点及び相違点の認定(同7頁10行目~22行目、8頁15行目~30行目、9頁24行目~末行)は認める。 本件決定は、本件訂正の許否の判断において、訂正発明と引用例1記載の発明と 発明との一致点及び相違点の認定(同7頁10行目~22行目、8頁15行目~30行目、9頁24行目~末行)は認める。 本件決定は、本件訂正の許否の判断において、訂正発明と引用例1記載の発明との相違点1、2についての認定判断を誤り(取消事由1、2)、登録時発明1~3と引用例2との各相違点1、2についての認定判断を誤った(取消事由3~5)結果、本件特許が特許法29条2項の規定に違反してされたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(訂正発明に係る相違点1についての認定判断の誤り)本件決定は、訂正発明と引用例1記載の発明との相違点1、すなわち、訂正発明は「2枚の鏡面研磨したシリコンウェーハの主面同士を重ね合わせた後、1200℃以上の温度で熱処理を行った張り合わせ半導体基板のCOP密度を低減した発明であるのに対して、上記刊行物(注、引用例1)には、張り合わせ基板について記載されていない点」(決定謄本3頁35行目~38行目)について、「熱処理すればCOPが減少し、熱処理温度を1200℃以上とすることによりCOPをなくすことは周知である」(同4頁15行目~17行目)との認定に基づき、「周知の張り合わせ半導体基板に上記刊行物(注、引用例1)に記載された発明を適用して、COP密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」(同4頁19行目~21行目)と判断するが、上記認定及び判断は誤りである。 すなわち、本件決定が上記周知性の認定の根拠として挙げる引用例1(甲第12号証)には、熱処理をすればCOPが減少するとの記載はあるものの、1200℃以上の温度での熱処理でCOPをなくすことについては記載も示唆もない。さらに、引用例1の発行日は、本件発明の特許出願日よりわず 証)には、熱処理をすればCOPが減少するとの記載はあるものの、1200℃以上の温度での熱処理でCOPをなくすことについては記載も示唆もない。さらに、引用例1の発行日は、本件発明の特許出願日よりわずか2か月程度早いだけであるから、引用例1の記載事項が本件特許の出願当時周知であったということはできない。 なお、被告は、乙第1~第5号証を追加周知例として提出するが、乙1号証は、FPD欠陥に関し、FPDとCOPとは関連するとの解釈が示されているにとどまるものであり、乙第2号証も、COPについて直接示すものではなく、乙第3号証は、微少ビット(微少欠陥核)が熱処理により低減されることを示すのみであり、乙第5号証は、単にCOPを紹介する記事であり、いずれも1200℃の熱処理でCOPがなくなることを示すものではない。 以上のとおり、「1200℃の熱処理でCOPをなくすこと」は周知ではないから、張り合わせ半導体基板にこれを適用してCOP密度を低減することが、当業者にとって容易ということはできず、この点についての本件決定の判断は誤りである。 2 取消事由2(訂正発明に係る相違点2についての認定判断の誤り)本件決定は、訂正発明と引用例1記載の発明との相違点2、すなわち、訂正発明では「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下としているのに対して、上記刊行物(注、引用例1)では、熱処理によって5インチウェーハの10回洗浄後の0.20~0.25μmのパーティクル数をほぼ0とすることができることが記載されているのみである点」(決定謄本3頁末行~4頁3行目)について、「表面に許容されるCOP欠陥の密度は、必要とされる酸化膜耐圧に応じて当業者が適宜決定し得る設計事項」(同4頁24行目~25行目)であるとの認定に基づいて、「0 謄本3頁末行~4頁3行目)について、「表面に許容されるCOP欠陥の密度は、必要とされる酸化膜耐圧に応じて当業者が適宜決定し得る設計事項」(同4頁24行目~25行目)であるとの認定に基づいて、「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下とするように規定することに格別の困難は認められない」(同4頁27行目~28行目)と判断するが、上記認定及び判断は誤りである。 すなわち、訂正発明は、1200℃以上の熱処理を張り合わせ半導体基板に与えることにより、COPを所定値以下として酸化膜耐圧を向上させるとともに、その接合強度を高めるという予期し得ない効果を奏するものである。また、酸化膜耐圧の値については、従来より、各モード試験によりデバイスの関係で定められるところ、各種の欠陥(例えばOSF)の密度などによりその耐圧値を定めた例はなく、COP密度の数値は設計事項ではない。 3 取消事由3(登録時発明1に係る相違点1についての認定判断の誤り)本件決定は、登録時発明1と引用例2記載の発明との相違点1、すなわち、登録時発明1は「2枚の半導体基板の主面同士を重ね合わせた張り合わせ半導体基板のCOP密度を低減したものであるのに対して、上記刊行物10(注、引用例2)にはそのような構成について記載されていない点」(決定謄本7頁13行目~15行目)について、「『加熱することによりCOPが低減し、それに伴って酸化膜耐圧が向上すること』は周知である」(同7頁33行目~34行目)との認定に基づいて、「周知の張り合わせ半導体基板に上記刊行物10(注、引用例2)に記載された発明を適用して、COP密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」(同7頁37行目~8頁1行目)と判断するが、上記認定及び判断は誤りである。 す 例2)に記載された発明を適用して、COP密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」(同7頁37行目~8頁1行目)と判断するが、上記認定及び判断は誤りである。 すなわち、引用例2(甲第3号証の5)には、所定温度で所定時間の熱処理をシリコンウェーハに施すとCOP核が消滅するとの趣旨の記載があるにすぎないが、登録時発明1は、単なる加熱ではなく、所定条件での加熱が必要である。さらに、本件発明の出願当時、半導体基板の張り合わせ技術に関してCOPに言及された刊行物はないから、上記相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものでない。 4 取消事由4(登録時発明1に係る相違点2についての認定判断の誤り)本件決定は、登録時発明1と引用例2記載の発明との相違点2、すなわち、登録時発明1は「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下としているのに対して、上記刊行物10(注、引用例2)に記載された発明におけるCOPの低減の程度は、『洗浄液として、NH4OH/H2O2/H2O(1:1:5)液を用い、エッチング作用を強くするために通常よりも高温である85℃で、20分間程度洗浄する工程を10回繰り返したとき、シリコンウェーハの表面に、直径0. 2μm程度のエッチピットが形成されることはない。』程度である点」(決定謄本7頁16行目~22行目)について、「『COPが低減すると酸化膜耐圧が向上すること』は周知である。してみれば、表面に許容されるCOP欠陥の密度は、必要とされる酸化膜耐圧に応じて当業者が適宜決定し得る設計事項であ」る(同8頁4行目~6行目)との認定に基づき、「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下とするように規定することに格別の困難は認められない」(同8頁8行目~9行目)と判断するが、 であ」る(同8頁4行目~6行目)との認定に基づき、「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下とするように規定することに格別の困難は認められない」(同8頁8行目~9行目)と判断するが、上記認定及び判断は誤りである。 すなわち、COPの低減による酸化膜耐圧の向上が周知の知見といえないことは上記のとおりであり、COP密度の数値設定は設計事項ではない。 5 取消事由5(登録時発明2、3の各相違点1、2についての認定判断の誤り)本件決定は、登録時発明2、3の各相違点1、2についても、加熱することによりCOPが低減すること、COPの低減に伴って酸化膜耐圧が向上することは周知であるとの認定(決定謄本9頁3行目~4行目、12行目~13行目、10頁12行目~13行目、21行目~22行目)に基づき、これらの各相違点は当業者が容易に想到することができたものであると判断するが、この周知性の認定が誤りであり、その結果、容易想到性の判断を誤ったことは上述したところと同一である。 第4 被告の反論本件決定の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。 1 取消事由1(訂正発明に係る相違点1についての認定判断の誤り)について原告らは、「熱処理をすればCOPが減少し、熱処理温度を1200℃以上とすることによりCOPをなくすことは周知である」とした本件決定の認定は誤りである旨主張するが、引用例1(甲第12号証)には、「高温のデバイスプロセスでCOP欠陥は消滅していく」(68頁21行目~末行)、「調べた温度範囲では、どの場合にもパーティクル数の減少が認められる。そして、この変化は、おおむね高温での熱処理ほど短時間でおきている。このことは高温でCOP欠陥が分解していくことを示唆する」(67頁19行目~68頁1行目 の場合にもパーティクル数の減少が認められる。そして、この変化は、おおむね高温での熱処理ほど短時間でおきている。このことは高温でCOP欠陥が分解していくことを示唆する」(67頁19行目~68頁1行目)との記載があり、図2.24には、800℃で約16時間、1050℃で約8時間、1150℃で約2時間の熱処理により、5インチウェーハの10回洗浄後の0.20~0.25μmのパーティクル数をほぼ0とすることができることが図示されている。これらの記載から、シリコンウェーハを800℃以上の高温で熱処理をすることによりCOP欠陥が消滅することが示されていることは明らかである。 さらに、平成6年5月20日株式会社培風館初版発行の「アドバンストエレクトロニクスシリーズⅠ-5 シリコン結晶成長とウェーハ加工」(乙第1号証)、SEMICONDUCTORSCIENCEANDTECHNOLOGYVol.7 No.1「RecognitionofDdefectsinsiliconsinglecrystalsbypreferentialetchingandeffectongateoxideintegrity」(1992年)(乙第2号証)、特開平3-233936(乙第3号証)、Inst.Phys.Conf.Ser.No.135:Chapter1「Characteristicsoftheas-growndefectsinaCZsiliconsinglecrystal」(1993年)(乙第4号証)及び平成6年7月29日株式会社リアライズ社発行の「ULSI製造のための分析ハンドブック」(乙第5号証)にもこれに沿う記載があり、本件決定が「熱処理をすればCOPが減少し、熱処理温度を1200℃以上とすることによりCO 日株式会社リアライズ社発行の「ULSI製造のための分析ハンドブック」(乙第5号証)にもこれに沿う記載があり、本件決定が「熱処理をすればCOPが減少し、熱処理温度を1200℃以上とすることによりCOPをなくすことは周知である」とした認定に誤りはない。 そして、半導体基板において、酸化膜耐圧の向上は、半導体基板の種類に関わらない一般的な課題であるから、半導体の一種である張り合わせ半導体基板においても、酸化膜耐圧が優れていることが望ましいことは当然であり、さらに、引用例1(甲第12号証)には「熱処理してCOP欠陥を減少させると、酸化膜耐圧が向上するという例も報告されている」(68頁末行~69頁1行目)と記載されており、熱処理をしてCOP欠陥を減少させると酸化膜耐圧が向上するとの知見が示されている。そして、この知見が張り合わせ半導体基板において当てはまらないとする特別な理由は存在しないから、「熱処理をすればCOPが減少すること」及び「熱処理を1200℃以上とすることによりCOPをなくすこと」という知見を活用して、張り合わせ半導体基板のCOP密度を低減することは当業者が適宜し得たことである。 よって、訂正発明に係る相違点1についての本件決定の認定判断に誤りはない。 2 取消事由2(訂正発明に係る相違点2についての認定判断の誤り)について原告らは、1200℃以上の熱処理を張り合わせ半導体基板に与えることにより、COPを所定値以下として酸化膜耐圧を向上させるとともに、その接合強度を高めるという予期し得ない効果を奏する旨主張するが、平成5年9月30日丸善株式会社発行の「半導体シリコン結晶工学」(甲第4号証の5)の「2枚のシリコンウエーハは表面酸化膜を介し圧着されるだけで室温でさえも接合する。しかし、一定以上の接合強度を が、平成5年9月30日丸善株式会社発行の「半導体シリコン結晶工学」(甲第4号証の5)の「2枚のシリコンウエーハは表面酸化膜を介し圧着されるだけで室温でさえも接合する。しかし、一定以上の接合強度を得るためには700℃以上、接合面に気泡などによる未接合部分を残さず接合後の研磨に十分耐え得る強度を得るためには1000℃以上での接着が必要である」(230頁16行目~19行目)との記載並びに図5.15及び図5.17の図示からも明らかなように、1200℃以上の熱処理を張り合わせ半導体基板に与えると接合強度が高まることは、当業者が予測し得た効果にすぎない。 そして、熱処理によってCOP欠陥を減少させると酸化膜耐圧が向上することが引用例1に示されていることは上記のとおりであるから、1200℃以上の熱処理を張り合わせ基板に与えると、COPが減少し、酸化膜耐圧が向上することも、当業者が当然に予測し得たことである。さらに、表面に許容されるCOP欠陥の密度について、0.1μm以上のCOPを0.3個/㎝2以下とするという値に臨界的な意義もないから、当該値に規定することに格別の困難性はないというべきである。 したがって、訂正発明に係る相違点2についての本件決定の認定判断に誤りはない。 3 取消事由3(登録時発明1に係る相違点1についての認定判断の誤り)について原告らは、本件決定の、加熱することによりCOPが低減し、それに伴って酸化膜耐圧が向上することは周知であるとした認定及び張り合わせ半導体基板に引用例2記載の発明を適用して、COP密度を低減することは当業者が容易にし得たことであるとの判断は誤りである旨主張する。 しかし、引用例2(甲第3号証の5)には、「シリコンウェーハを1250℃以上で30分間以上熱処理する。これ 度を低減することは当業者が容易にし得たことであるとの判断は誤りである旨主張する。 しかし、引用例2(甲第3号証の5)には、「シリコンウェーハを1250℃以上で30分間以上熱処理する。これによりCOP(CrystalOriginatedParticle)核を消滅させるものである。この後、このシリコンウェーハを当該温度から4℃/分以上の速度で冷却する。この結果、シリコンウェーハにおいてCOP核の再発生を防止することができる。・・・測定の結果、酸化膜の絶縁破壊耐圧が向上している」(【0007】)と記載されており、これによれば、加熱によりCOPが低減し、それに伴って酸化膜耐圧が向上するとの知見が記載されているといえる。さらに、引用例1、乙第1~第5号証にも同様の知見が記載されていることは上記のとおりである。したがって、「加熱することによりCOPが低減し、それに伴って酸化膜耐圧が向上する」という知見が周知であったとする本件決定の認定は誤りはない。 そして、上記知見が、2枚の半導体基板の主面同士を重ね合わせた張り合わせ半導体基板に当てはまらないとする特別な理由も存在しないから、これを張り合わせ半導体基板に適用して、COP密度を低減することは当業者が適宜し得たことであって、この点の本件決定の判断にも誤りはない 4 取消事由4(登録時発明1に係る相違点2についての認定判断の誤り)について原告らは、本件決定が「COPが低減で酸化膜耐圧が向上することが周知である」とした認定及び「表面に許容されるCOP欠陥密度は、必要とされる酸化膜耐圧に応じて当業者が適宜決定し得る設計事項」とした判断は誤りである旨主張するが、「COPが低減すると酸化膜耐圧が向上することが周知」であること、表面に許容されるCOP欠陥の密度について、0.1 膜耐圧に応じて当業者が適宜決定し得る設計事項」とした判断は誤りである旨主張するが、「COPが低減すると酸化膜耐圧が向上することが周知」であること、表面に許容されるCOP欠陥の密度について、0.1μm以上のCOPを0.3個/㎝ 以下にするという値に臨界的な意義も認められないことは上記のとおりであり、この点の本件決定の認定判断に誤りはない。 5 取消事由5(登録時発明2、3の各相違点1、2についての認定判断の誤り)について登録時発明1の相違点に関して本件決定の認定判断に誤りはないから、上記3、4と同様の取消事由を挙げる登録時発明2、3の各相違点1、2に関しても、本件決定に誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(訂正発明に係る相違点1についての認定判断の誤り)について(1) 原告らは、「熱処理をすればCOPが減少し、熱処理温度を1200℃以上とすることによりCOPをなくすことは周知である」とする本件決定の認定は誤りである旨主張する。 しかし、引用例1(甲第12号証)は、「結晶に起因して発生し、パーティクルカウンターでパーティクルとして計数されるもの(実体はピット)」を「Crystal-OriginatedParticle(COP)」と、「COPの原因となる欠陥」を「COP欠陥」と呼ぶこととした(62頁末行~63頁3行目)上、「高温のデバイスプロセスでCOP欠陥は消滅していく」(68頁21行目~22行目)、「調べた温度範囲では、どの場合にもパーティクル数の減少が認められる。そして、この変化は、おおむね高温での熱処理ほど短時間でおきている。このことは高温でCOP欠陥が分解していくことを示唆する」(67頁19行目~68頁1行目)と記載するものであり、また、図2.24には、800℃で約16時間、1050℃で 熱処理ほど短時間でおきている。このことは高温でCOP欠陥が分解していくことを示唆する」(67頁19行目~68頁1行目)と記載するものであり、また、図2.24には、800℃で約16時間、1050℃で約8時間、1150℃で約2時間の熱処理により、5インチウェーハの10回洗浄後の0.20~0.25μmのパーティクル数をほぼ0とすることができることが示されていること、引用例2(甲第3号証の5)には、「CZ法により引き上げたシリコン単結晶から通常の工程を経てシリコンウェーハを作製する。そして、このシリコンウェーハを1250℃以上で30分間以上熱処理する。これによりCOP(CrystalOriginatedParticle)核を消滅させるものである。この後、このシリコンウェーハを当該温度から4℃/分以上の速度で冷却する。この結果、シリコンウェーハにおいてCOP核の再発生を防止することができる。・・・測定の結果、酸化膜の絶縁破壊耐圧が向上している」(【0007】)との記載があること、平成6年5月20日株式会社培風館初版発行の「アドバンストエレクトロニクスシリーズⅠ-5 シリコン結晶成長とウェーハ加工」(乙第1号証)には、「COPとFPDCZ結晶の成長速度と酸化膜耐圧(timezerodielectricbreakdown:TZDB)の見事な関係が発表され、また、成長速度とCOPあるいはFPDの密度の相関も明らかである。図11.30はこれらの関係を説明しているが、高温の熱処理によってFPDが消滅することも示している」(281頁1行目~末行)との記載があること、COPとFPDを同一視することができることは、平成6年7月29日株式会社リアライズ社発行の「ULSI製造のための分析ハンドブック」(乙第5号証)の「サンプルを攪拌せずに・・・エ との記載があること、COPとFPDを同一視することができることは、平成6年7月29日株式会社リアライズ社発行の「ULSI製造のための分析ハンドブック」(乙第5号証)の「サンプルを攪拌せずに・・・エッチングを行った時に観察される楔形の模様(フローパターン:FP)・・・は先端部に存在する欠陥がエッチングされる際に発生する気泡が原因でできるエッチング段差であるが、この欠陥部分がフローパターン欠陥(FPD)と呼ばれている」(144頁18行目~22行目)、「COPsとFPDは発生分布等に若干の相違点はあるが、同じ欠陥を別の方法で検出していると考えられている」(144頁33行目~34行目)との記載から認められること、特開平3-233936(乙第3号証)には、「一定の熱処理を施すことにより、シリコンウエーハ中の微少欠陥を大幅に低減することができる。この結果、電気的特性が向上したシリコンウエーハを得ることができる。 例えばポリシング工程の後において、シリコンウエーハを、酸素ガスまたは窒素ガスの雰囲気中において800℃~1250℃の間の温度に10時間以下加熱したものである」(208頁左上欄17行目~右上欄7行目)との記載があること、Inst.Phys.Conf.Ser.No.135:Chapter 1「Characteristicsoftheas-growndefectsinaCZsiliconsinglecrystal」(乙第4号証)には、Fig.7(a)において、ウェーハのCOP密度が乾燥酸素雰囲気中における1200℃、1時間の熱処理において、0㎝-2となることが示されていることが明らかである。 以上の記載からすれば、シリコンウェーハに熱処理をすればCOPが減少すること及びこれによって酸化膜の絶縁耐力が向上するとの知見が、一 て、0㎝-2となることが示されていることが明らかである。 以上の記載からすれば、シリコンウェーハに熱処理をすればCOPが減少すること及びこれによって酸化膜の絶縁耐力が向上するとの知見が、一般的な技術文献を含めて幅広く開示されており、これらの知見は、本件特許出願当時、当業者に周知であったものと認めるに足りる。そして、当該熱処理温度についても、1150℃(引用例1)、1250℃(引用例2)、800℃~1250℃(乙第3号証)、1200℃(乙第4号証)との数値が示されていることは前示のとおりであるから、訂正発明のように1200℃以上と規定することに格別の困難性があるとはいえない。 なお、原告らは、引用例1の発行日が本件発明の特許出願日よりわずか2か月程度早いにすぎない旨主張するが、引用例1の一般的な技術書としての性格及び引用例1以外の上記各刊行物の存在を考えると、上記の認定判断を何ら妨げるものではない。 (2) 次に、原告らは、「上記周知の張り合わせ半導体基板に上記刊行物に記載された発明を適用して、COPの密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」とした本件決定の判断は誤りである旨主張するが、シリコンウェーハに関する上記(1)の周知の知見を、同じ半導体ウェーハとして周知である張り合わせ半導体基板に適用することを妨げるべき理由を見いだすことはできず、当業者であれば、張り合わせ半導体基板に上記の周知の知見を適用することに格別の困難性があるとはいえない。 したがって、本件決定が「上記周知の張り合わせ半導体基板に上記刊行物に記載された発明を適用して、COPの密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」とした判断に誤りはない。 2 取消事由2(訂正発明に係る相違点2についての認 基板に上記刊行物に記載された発明を適用して、COPの密度を低減することは当業者が容易になし得たことであると認められる」とした判断に誤りはない。 2 取消事由2(訂正発明に係る相違点2についての認定判断の誤り)について原告らは、1200℃以上の熱処理を張り合わせ半導体基板に与えることにより、COPを所定値以下として酸化膜耐圧を向上させるとともに、その接合強度を高めるという予期し得ない効果を奏する旨主張する。 しかし、まず、酸化膜耐圧に関しては、前示の引用例2及び乙第1号証の記載並びに平成6年7月29日株式会社リアライズ社発行の「ULSI製造のための分析ハンドブック」(甲第4号証の1)の「(3)酸化膜に影響を及ぼす欠陥とプロセス表5にゲート酸化膜特性に影響する要因とそのプロセスを改善のための技術について示す。絶縁耐圧に影響する要因としてはパーティクル、結晶欠陥、Si表面ラフネスなどを挙げているが、実際には原因の明確になっていないも多くある。・・・さらに最近では非常に小さい欠陥(SMD:SurfaceMicroDefect,FP:FlowPattern, COP:CrystalOriginetedParticle)などが観察されている。松下らはSMDと絶縁耐圧に影響していることを示す」(16頁22行目~27行目)との記載から、COP欠陥と酸化膜耐圧とは相関関係があり、COP密度を減少させると酸化膜耐圧が向上することは周知と認められるから、原告らの主張する効果が予期し得ないようなものであるとはいえない。 また、接合強度に関しても、平成5年9月30日丸善株式会社発行の「半導体シリコン結晶工学」(甲第4号証の5)には、「2枚のシリコンウエーハは表面酸化膜を介して圧着されるだけで室温でさえも接合する。しかし 、接合強度に関しても、平成5年9月30日丸善株式会社発行の「半導体シリコン結晶工学」(甲第4号証の5)には、「2枚のシリコンウエーハは表面酸化膜を介して圧着されるだけで室温でさえも接合する。しかし、一定以上の接合強度を得るためには700℃以上、接合面に気泡などによる未接合部分を残さず接合後の研磨に十分耐え得る強度を得るためには1000℃以上での接着が必要である」(230頁16行目~19行目)と記載されており、これに熱処理温度と接合強度の相関関係を示す図5.15の図示を総合すれば、原告らの主張する上記の効果は、当業者が容易に予測することのできたものにすぎないというべきである。 そして、訂正発明が、COP密度について、0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下に限定したことによる臨界的な意義も訂正明細書に記載されておらず、かつ、これを認めるに足りる証拠もないから、「0.1μm以上の大きさのCOPを0.3個/㎝2以下とするように規定することに格別の困難は認められない」とした本件決定の判断に誤りはないというべきである。 よって、原告らの取消事由2の主張も理由がない。 3 取消事由3~5について原告らは、登録時発明1~3に係る相違点について、本件決定の認定判断に誤りがあるとして、取消事由3~5を主張するが、その趣旨とするところは、「加熱することによりCOPが低減し、それに伴って酸化膜耐圧が向上することは周知である」との認定の誤りをいうとともに、その認定を前提とした容易想到性の判断の誤りをいうものであって、これを採用することができないことは、上記1、2で判断したところに照らして明らかである。 よって、原告らの取消事由3~5の主張もいずれも理由がない。 4 以上のとおり、原告ら主張の本件決定取消事由はいずれ ることができないことは、上記1、2で判断したところに照らして明らかである。 よって、原告らの取消事由3~5の主張もいずれも理由がない。 4 以上のとおり、原告ら主張の本件決定取消事由はいずれも理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告らの請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官長沢幸男裁判官宮坂昌利

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