平成26(行ウ)646 被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成30年1月17日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文24,235 文字)

平成30年1月17日判決言渡平成26年(行ウ)第646号被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求事件(第1事件本訴)平成27年(行ウ)第96号不当利得返還請求反訴事件(第1事件反訴)平成27年(行ウ)第108号不当利得返還請求事件(第2事件) 主文 1 第1事件本訴原告らの請求をいずれも棄却する。 2 第1事件反訴被告らは,第1事件反訴原告に対し,それぞれ別表の各「支給金額(円)」欄に記載の金員及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第2事件被告は,第2事件原告に対し,150万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用中,第1事件に係るものは,本訴反訴を通じて,第1事件本訴原告(反訴被告)らの負担とし,第2事件に係るものは第2事件被告の負担とする。 5 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 第1事件本訴請求第1事件本訴被告が平成25年4月26日付けで第1事件本訴原告らに対し てした被災者生活再建支援金の支給決定の全部を取り消す旨の各決定をいずれも取り消す。 2 第1事件反訴請求主文第2項と同旨 3 第2事件請求 主文第3項と同旨 第2 事案の概要仙台市α区に所在する建物であるAに居住する住民であり平成23年3月11日に発生した東日本大震災に被災した第1事件本訴原告(反訴被告)ら及び第2事件被告(以下「本件当事者住民」という。)は,被災者生活再建支援法(以下「支援法」 Aに居住する住民であり平成23年3月11日に発生した東日本大震災に被災した第1事件本訴原告(反訴被告)ら及び第2事件被告(以下「本件当事者住民」という。)は,被災者生活再建支援法(以下「支援法」という。)の規定に基づき宮城県から被災者生活再建支援金(以下 「支援金」という。)の支給に関する事務の全部の委託を受けた第1事件本訴被告(反訴原告)兼第2事件原告(以下「都道府県会館」という。)から,同建物の被害の程度を大規模半壊とする仙台市α区長による同年8月30日付けり災証明を前提に,同法所定の被災世帯(大規模半壊世帯)の世帯主に該当するとして支援金の支給決定を受けたが,その後,当該支援金の支給後にされた,同 建物の被害の程度を一部損壊とする仙台市α区長による平成24年2月10日付けり災証明を契機として,都道府県会館から上記支援金の支給決定の全部を取り消す旨の各決定(以下「本件各処分」という。)を受けた。 第1事件本訴は,本件当事者住民(第2事件被告を除く。)が,都道府県会館を相手に,上記建物の被害の程度は大規模半壊に当たるなどとして本件各処分 (第2事件被告に対するものを除く。)には違法があると主張し,その取消しを求める事案であり,第1事件反訴及び第2事件は,都道府県会館が,行政事件訴訟法4条の公法上の法律関係に関する訴訟として,本件当事者住民に対し,本件各処分によって支援金支給決定の効力が失われたことにより,支援金の支給を受けた本件当事者住民が法律上の原因なく当該支援金に相当する額の利益 を受け,都道府県会館に同額の損失を及ぼしたとして,同額の不当利得の返還及び都道府県会館が定めた返還期限の翌日から支払済みまでの民法所定の利率による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙 の損失を及ぼしたとして,同額の不当利得の返還及び都道府県会館が定めた返還期限の翌日から支払済みまでの民法所定の利率による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙1「関係法令等の定め」に記載のとおりである(同別紙における略称は, 以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠(以下では特に記載のない限り第1事件の証拠番号により証拠を特定する。)等により認められる。)(1) 当事者ア本件当事者住民は,いずれも仙台市(住所省略)に所在するA(14階建て(甲45)。以下「本件マンション」といい,本件当事者住民を含む本 件マンションの住民が居住する個々の住戸を総称して「本件建物」という。)に居住する住民である。なお,本件マンションは,Fという名称の合計9棟から成るマンション群のうちの1棟である(乙1)。 イ都道府県会館は,自然災害により被災した都道府県民の生活再建支援,都道府県行政の活動支援,その他地方自治の円滑な運営と進展に寄与する 事業を行うことにより,災害による被害者の支援及び国政の健全な運営の確保に資することを目的とする公益財団法人であり,支援法人として支援金の支給業務等を行っており,宮城県から支援法4条1項に基づき支援金の支給に関する事務の全部の委託を受けている(乙4)。 (2) 事実経過 ア仙台市α区は,平成23年5月11日,同年3月11日に発生した東日本大震災による本件マンションの被災状況の調査(以下「本件第1回調査」という。)を実施し(甲39),仙台市α区長は,本件第1回調査の結果に基づき,本件当事者住民を含む本件マンションの住民に対し,本件建物につき被害の程度を一部損壊とする の調査(以下「本件第1回調査」という。)を実施し(甲39),仙台市α区長は,本件第1回調査の結果に基づき,本件当事者住民を含む本件マンションの住民に対し,本件建物につき被害の程度を一部損壊とする同年5月27日付けり災証明書(以下 「本件第1回り災証明書」という。)を発行した。 イ(ア) その後,本件第1回り災証明書の交付を受けた者(本件当事者住民以外の者)から,仙台市α区に対してその被害の程度について再調査の申請がされ,これを受けた仙台市α区は,平成23年8月20日,本件マンションの被災状況の調査(以下「本件第2回調査」という。)を実施 した。仙台市α区長は,本件第2回調査の結果に基づき,本件当事者住 民に対し,本件建物につき被害の程度を大規模半壊とする同月30日付けり災証明書(以下「本件第2回り災証明書」という。)を発行した。 (イ) 本件当事者住民は,平成23年8月30日以降,都道府県会館に対し,支援金の支給を申請し,当該各申請に本件第2回り災証明書を被災世帯であることを証する書面として添付した。都道府県会館は,当該各 申請に対し,本件当事者住民が大規模半壊世帯の世帯主に該当するとして,同年9月26日から同年12月13日までの間に,順次,支援金を支給する旨の決定(以下「本件各原決定」という。)を行い,第1事件本訴原告(反訴被告)らに対して別表の各「支給金額(円)」欄に記載の金額の支援金を,第2事件被告に対して150万円の支援金をそれぞれ支 給した(以下,本件各原決定に基づき支給された支援金を「本件各支援金」という。)。 ウ(ア) 仙台市α区は,平成23年12月15日,本件マンションの被災状況の調査(以下「本件第3回調査」という。)を実施したところ,本件建物の被害の程度が一部 「本件各支援金」という。)。 ウ(ア) 仙台市α区は,平成23年12月15日,本件マンションの被災状況の調査(以下「本件第3回調査」という。)を実施したところ,本件建物の被害の程度が一部損壊に当たると判定された(甲41の1,2)。 (イ) 仙台市α区では,平成24年2月15日,同月25日及び同年3月10日に,本件マンションの住民に対して,本件第2回り災証明書において大規模半壊とされた本件建物の被害の程度が,本件第3回調査の結果,一部損壊に修正されること等に関して住民説明会を実施した(甲6~9)。 (ウ) 仙台市α区長は,本件第3回調査の結果に基づき,本件建物につき被害の程度を一部損壊とする平成24年2月10日付けり災証明書(以下「本件第3回り災証明書」という。)を発行し,仙台市α区は,同年3月26日,本件当事者住民に対して本件第3回り災証明書を送付した。 エ都道府県会館は,平成25年4月26日付けで,本件当事者住民に対し て,本件各原決定を取り消す旨の決定(本件各処分)をし,併せて,同日 付け「被災者生活再建支援金返還請求書」により,本件各支援金を同年7月31日までに都道府県会館に返還するよう請求し,本件各処分に係る通知書及び当該返還請求書は,遅くとも同日までには本件当事者住民に到達した(弁論の全趣旨)。 (3) 本件訴訟に至る経緯 ア第1事件本訴原告(反訴被告)らは,平成25年6月25日,宮城県に対して,本件各処分(第2事件被告に対するものを除く。)の取消しを求めて審査請求をしたが,平成26年4月28日,当該審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を受けた。 イ第1事件本訴原告(反訴被告)らは,平成26年7月7日,仙台地方裁 判所に,本件各処分(第2事件被 査請求をしたが,平成26年4月28日,当該審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を受けた。 イ第1事件本訴原告(反訴被告)らは,平成26年7月7日,仙台地方裁 判所に,本件各処分(第2事件被告に対するものを除く。)の取消しを求める訴え(第1事件本訴)を提起し,その後同事件は東京地方裁判所に移送された(顕著な事実)。 ウ都道府県会館は,平成27年2月26日,東京地方裁判所に,第1事件反訴及び第2事件の訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件各処分は,本件当事者住民が大規模半壊世帯の世帯主に該当するとしてされた本件各原決定につき,本件当事者住民は大規模半壊世帯の世帯主に該当せず支給要件を欠いた違法な処分であるとして,都道府県会館においてこれを取り消したというものである。 そうすると,まず,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当すれば,本件各原決定に違法はなく本件各処分はこれを取り消す理由を欠くことになるから違法であるといえ,また,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当するとはいえないとしても,本件各原決定を取り消すことができる場合でなければ本件各処分は違法となり得る。 以上を踏まえると,本件の争点を次のとおり整理することができる。 (1) 本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当するか(2) (争点(1)につき消極である場合に)本件各原決定を取り消すことの可否 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当するか)について (本件当事者住民の主張)ア本件建物の被害の程度が大規模半壊に該当すること本件マンションの共用部分には,コンクリートの表面に仕上げとして塗られて るか)について (本件当事者住民の主張)ア本件建物の被害の程度が大規模半壊に該当すること本件マンションの共用部分には,コンクリートの表面に仕上げとして塗られているモルタルのみならず,コンクリート造の梁本体の底部の一部にも剥離が発生している上,梁上部にも深刻な損傷が確認されており,その 他にも無数のひび割れが存在する。本件マンションに採用されているラーメン架構では,通常,大梁の端に柱が,大梁の上下側に壁が付くのに対し,本件マンションでは,柱・壁とは別の構造体である床版(RC階段スラブ)が梁の側面全面に斜めに増しコンによって接合されており,ラーメン架構の構造計算の対象にない形状となっているために,地震によって,柱から ではない作用が梁に加わり,また同部は水平床が抜けている状態で梁の水平拘束がないため斜め方向の圧力による梁へのねじりを伴う圧力がかかったことにより,上記のような梁の損傷が生じたものである。 この梁の損傷は,仙台市がり災証明のために用いている第1次調査票における「②柱・耐力壁・基礎」の項目の「損傷程度Ⅲ」の「大きなひび割 れ」又は「一部で剥離が発生(鉄筋露出なし)」に該当するものであり,その損害割合は30%とされる。これを第1次調査票における本件マンションの他の部位別損害割合と合計すると46%となり,大規模半壊に相当する被害の程度となる。 したがって,本件建物の被害の程度は大規模半壊に当たるから,本件当 事者住民の世帯は大規模半壊世帯に該当する。 イ本件第3回調査の違法性等仙台市には,内閣府が定める災害の被害認定基準等や仙台市が定めるり災証明等取扱要領等に従ってり災証明を行うべき義務があるところ,これらの規定等によれば,地震 イ本件第3回調査の違法性等仙台市には,内閣府が定める災害の被害認定基準等や仙台市が定めるり災証明等取扱要領等に従ってり災証明を行うべき義務があるところ,これらの規定等によれば,地震により被災した住家に対する第2次調査は,第1次調査を実施した住家の被災者からの申請があった場合に限り実施すべ き義務があるといえる。しかしながら,本件第3回調査は,本件マンションの住民や管理会社から何ら申請なく職権により実施されたものであり,上記の義務に反し違法である。 また,本件第3回調査は,F群9棟の調査結果を比較し,本件建物の被害の程度のみが突出していたことを端緒として行われたという特異な経緯 によるものであることや,仙台市では,第1次調査と第2次調査との結果が異なった場合,最も被害の程度が大きい結果を採用し,一旦されたり災証明の判定を引き下げることは回避するという運用がされていたことからすれば,本件第3回調査に基づき本件第2回り災証明書の被害の程度を一部損壊に修正することは,平等取扱いの原則や適正手続の原則に違反する。 したがって,本件第3回調査の結果に基づく本件第3回り災証明書には瑕疵があり,これに基づき本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当しないものとしてされた本件各処分は違法・無効である。 (都道府県会館の主張)支援金の支給申請は,当該世帯が被災世帯であることを証する書面を添付 してしなければならない(支援法施行令4条1項)ところ,支援金の支給に関する事務の委託を受けたにすぎない都道府県会館としては,独自に当該世帯の被災状況の調査を行う権限や能力を有しておらず,上記の書面をもって被災世帯に該当するか否かを判断することとなる。 本件の場合,本件各原決定に係る申請に添付 府県会館としては,独自に当該世帯の被災状況の調査を行う権限や能力を有しておらず,上記の書面をもって被災世帯に該当するか否かを判断することとなる。 本件の場合,本件各原決定に係る申請に添付された本件第2回り災証明書 につき,これを発行した仙台市α区長が,本件第3回り災証明書によって被 害の程度を一部損壊に修正し,本件第2回り災証明書を失効させたのであるから,都道府県会館において,これに基づき本件建物の被害の程度は大規模半壊には当たらず,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯には該当しないと判断したものであり,その判断に誤りはない。 (2) 争点(2)(本件各原決定を取り消すことの可否)について (本件当事者住民の主張)ア都道府県会館は,内閣総理大臣により指定を受けることにより初めて都道府県から支援金支給業務の委託を受ける権限を有することとなるため,その権限の範囲は,内閣総理大臣により認可された業務規程により画定されることとなる。 そして,業務規程11条は,支援金の支給決定の全部又は一部を取り消すことができる場合として,偽りその他不正の手段により支援金の支給を受けたとき(1号),その他支援金の支給の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反し,又は同規程に基づく請求に応じないとき(2号)を定めるところ,本件当事者住民はこのいずれにも該当しない。 したがって,本件各原決定を取り消すことはその要件を欠くためできず,本件各処分は,都道府県会館の権限を逸脱したものとして違法・無効である。 イ(ア) また,支援金の支給決定は,被災者に対して使途を定めず金銭を支給することにより,被災者の生活再建を支援し,被災住民の生活の安定 と経済活動を通じて被災地の速や 無効である。 イ(ア) また,支援金の支給決定は,被災者に対して使途を定めず金銭を支給することにより,被災者の生活再建を支援し,被災住民の生活の安定 と経済活動を通じて被災地の速やかな復興に資するためのものであり,支給決定が安易に取り消されるとすれば,被災者は安心して支援金を支出できず,上記支援金の趣旨に反することとなる上,支援金を受給した被災者の生活再建や生活の安定が害されるから,その取消しは,通常の授益的処分よりも極めて慎重かつ限定的にされなければならない。 (イ) 本件において,被害の程度を大規模半壊とする本件第2回り災証明 書が発行されたことにつき本件当事者住民に帰責性はなく,その瑕疵の原因は専ら仙台市にあった一方,本件各原決定について法律上の利害関係を有する第三者は存在せず,本件各原決定を取り消すべき公益上の利益は,せいぜい他の被災住民との平等・公平であるが,前記(1)(本件当事者住民の主張)イのとおり本件第3回調査こそが不平等・不公平なも のであったのだから,他の被災住民との平等・公平を殊更重視することは不合理かつ不相当である。 また,本件当事者住民は,家財や住戸の専用部分について多岐に,広範かつ甚大な損害を受けており,本件各支援金を,その修繕や家財等の買替えの費用に当てるなどしている。このような本件当事者住民の支援 金の使途は,支援金制度が予定したものであり,また,本件当事者住民の多くは支援金のうち加算部分がなければ住戸のリフォームをせずに生活再建をしていたはずであるから,支援金の返還を求めることは不意打ちであり,本来支出するはずのなかった支出を余儀なくされ,その分の返還を強いられるという経済的損失を被るものである。 (ウ) 以上によれば あるから,支援金の返還を求めることは不意打ちであり,本来支出するはずのなかった支出を余儀なくされ,その分の返還を強いられるという経済的損失を被るものである。 (ウ) 以上によれば,本件各原決定の取消しによって生ずる不利益と,これを取り消さないことによって既に生じた効果をそのまま維持する不利益とを比較考量し,本件各原決定を放置することが公共の福祉の要請に照らして著しく不当であるとはいえず,本件各原決定を取り消すことはできないから,本件各処分は違法・無効である。 (都道府県会館の主張)ア法治主義の下,違法な行政処分は取り消されることが原則であり,法の一般原則によりこれを取り消し得るところ,業務規程11条は,同規程12条及び13条と一体となって同条所定の加算金や延滞金発生の効力を有する支援金の取消しについて定めるにすぎず,これ以外の場合に支援金の 支給決定を取り消すことが禁止されるものではない。 イ(ア) 本件各原決定によって,支援金の支給要件に該当しない者に対して支援金が支給されており,この状態を放置すれば,相互扶助の観点から設計されている支援金制度に対する不信や支援金の受給者一般への疑惑が生ずるなど,その制度の存在意義が問われることになりかねず,本件各原決定を取り消すことは,支援法の目的の実現,維持のために必要で ある。 また,東日本大震災のような大規模災害における被災者支援では,支援の平等性が強く要請されるところ,支給要件を欠く者に対して支援金が支給されているのであれば,これを取り消すことはその要請に適うものである上,本件では9棟のマンション群のうち本件マンション以外に 大規模半壊とされた建物はないのであるから,この不平等を放置することは,住民相互 あれば,これを取り消すことはその要請に適うものである上,本件では9棟のマンション群のうち本件マンション以外に 大規模半壊とされた建物はないのであるから,この不平等を放置することは,住民相互の強い不満や支援金制度自体への不信を招くことになる。 さらに,支援金の原資は国民の負担により成り立っており,支給要件を欠く違法な支給決定を取り消すことは,公正な行政や国民の信頼を確保するためにも必要である。 (イ) 他方,支給要件を欠くにもかかわらず被災者が受給した支援金は,本来は得られるはずのないものであるから,本件当事者住民においてこれを保持する利益が大きいとはいえない。本件当事者住民が,本件各支援金の支給を契機として什器備品の購入や住戸の修理費用等の支出をしていたとしても,不要な支出をしたとは考えられず,生活の支障の除去 や財産価値の上昇等の経済的利益を享受している。さらに,り災証明書には,被害の程度が変更となった場合はそれより前に発行された証明書の効力が失われる旨記載されているほか,住民説明会を通じて,遅くとも平成24年3月10日までには,本件各原決定が取り消される可能性のあることが明らかになっている。 (ウ) 以上によれば,本件各原決定を取り消さないことにより既に生じた 効力を維持することの不利益は,本件各原決定の取消しによって生ずる不利益と比較して極めて大きく,本件各原決定を取り消さなければ公共の福祉の要請に照らして著しく不当であり,本件各原決定を取り消すことができるから,本件各処分に違法はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(前記前提事実のほか掲記の証拠等により認められる。)(1) 災害に係る住家の被害認定基準運用指針(甲33。以下「運用指針」 件各処分に違法はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(前記前提事実のほか掲記の証拠等により認められる。)(1) 災害に係る住家の被害認定基準運用指針(甲33。以下「運用指針」という。)及び仙台市における被害認定調査票(甲38の1,2)についてア運用指針について運用指針は,行政が災害による被害の把握や対応のために用いていた従 来の災害の被害認定基準につき,その内容を実状に合うように見直すとともに,当該基準のうちの住家に係る部分が,市町村においてり災証明を発行するための被害調査の基準として活用されるようになり,当該基準に基づいた被害調査結果によるり災証明に記載された住家の被害の程度が,支援法の適用や支援金の支給等の判断材料となるなど,各種支援策と密接に 関連するようになってきたという状況を踏まえて,住家の被害認定に係る標準的な調査方法及び判定方法を示すことを目的として,平成13年に内閣府により作成され,その後平成21年6月に改訂されたものである。 運用指針は,住家の被害の程度を「全壊」「大規模半壊」「半壊」「半壊に至らない」の4つに区分しており,このうち「大規模半壊」の認定基 準を,「居住する住宅が半壊し,構造耐力上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難なもの。具体的には,損壊部分がその住家の延床面積の50%以上70%未満のもの,または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し,その住家の損害割合が40%以上50%未満のものとする。」として いる。 また,運用指針は,地震による被害について,第1次調査と第2次調査の2段階で実施し,第2次調査は第1次調査を実施した住家の被災者から申請があった場合に実施する 」として いる。 また,運用指針は,地震による被害について,第1次調査と第2次調査の2段階で実施し,第2次調査は第1次調査を実施した住家の被災者から申請があった場合に実施するものとし,いずれの調査についても,外観目視調査(第2次調査の場合にはこれに加えて内部立入調査)により,外観の損傷状況の目視による把握,住家の傾斜の計測及び部位ごとの損傷程度 等の目視による把握を行い,調査により把握した住家の外観の損傷状況,住家の傾斜及び部位ごとの損傷程度等により,住家の損害割合を算定し,被害認定基準等に照らして住家の被害の程度を判定するものとしている。 このうちの非木造の住家につき柱又は梁の損傷により判定する場合に関して,ひび割れやコンクリートの剥落,鉄筋の露出,変形等の外観上の所 見を例示しており,梁(構成比60%)の程度Ⅲ(損傷程度50%)の損傷として,鉄筋コンクリート造につき,「比較的大きなひび割れ(幅約1㎜~2㎜)が生じているが,コンクリートの剥落は極わずかであり,鉄筋は露出していない。」と例示している。 イ仙台市における被害認定調査票について 仙台市における東北地方太平洋沖地震被災建物被害認定第1次調査票〈非木造建物〉(甲38の1。以下「第1次調査票」という。)及び同第2次調査票〈非木造建物〉(甲38の2。以下「第2次調査票」という。)は,運用指針の内容を基にして,簡易で効率的な運用を可能とするために仙台市において作成したものである(甲44,69,70)。また,仙台市財政 局税務部資産税課が作成した「建物被害認定調査のポイント」(甲43)によれば,第2次調査は,第1次調査後に発行するり災証明の損害の程度について第2次調査の申請があった場合のみ実施するものとされている。 が作成した「建物被害認定調査のポイント」(甲43)によれば,第2次調査は,第1次調査後に発行するり災証明の損害の程度について第2次調査の申請があった場合のみ実施するものとされている。 第1次調査票では,①「外観」の項目により全壊に該当するか否かを判定し,全壊に相当しない場合に,②「柱・耐力壁・基礎」,③「屋根・外部 仕上」,④「設備等」の各項目の部位別損害割合の合計により損害割合を算 定することとされている。そして,例えば,②「柱・耐力壁・基礎」の項目の「損傷程度Ⅲ」の欄においては,地震による鉄筋コンクリート造(RC)の建物の損傷につき「大きなひび割れ」及び「一部で剥離が発生(鉄筋の露出なし)」と例示され,これらに該当するときの部位別損害割合は30%とされている。 また,第2次調査票では,①「外観」の項目により全壊に該当するか否かを判定し,全壊に相当しない場合に,②「柱・耐力壁・基礎」,③「屋根・外部仕上」,④「設備等」,⑤「床・梁」,⑥「天井・内部仕上」,⑦「建具」の各項目の部位別損害割合の合計により損害割合を算定することとされている。 そして,第1次調査票,第2次調査票とも,損害割合が,0%では損害が認められないものと,20%未満では一部損壊と,20%以上39%以下では半壊と,40%以上49%以下では大規模半壊と,50%以上では全壊とそれぞれ判定されることになる。 (2) 本件第1回調査の結果について(甲39) 本件第1回調査では,第1次調査票が用いられ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損害のうち,②「柱・耐力壁・基礎」の項目については損傷が確認されなかったが,③「屋根・外部仕上」の項目について,外部仕上げの明ら ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損害のうち,②「柱・耐力壁・基礎」の項目については損傷が確認されなかったが,③「屋根・外部仕上」の項目について,外部仕上げの明らかなひび割れ(損傷程度Ⅱ。損害割合6%)が,④「設備等」の項目について,高架水槽・受水槽の損傷及びエレベータ ーの損傷(損害割合合計10%)がそれぞれ確認された。 その結果,本件建物は,部位別損害割合の合計が16%であり,一部損壊に該当するものと判定された。 (3) 本件第2回調査についてア本件第2回調査の契機(甲77) 本件第1回り災証明書の交付を受けた本件マンションの住民(本件当事 者住民以外の者)から,平成23年7月23日,仙台市α区に対し,同証明書において被害の程度が一部損壊とされたことにつき再調査の申請があった。 イ本件第2回調査の経過及び概要(甲40,57,66)本件第2回調査は,平成23年8月20日午後1時30分頃から午後3 時50分頃にかけて,いずれも建築士の資格を持たない3名の調査員(仙台市α区職員)により行われた。 本件第2回調査は,当初,2名の調査員(一般職員と係長)により行われた。当該調査員らが,調査を終えた後に上記アの再調査を申請した住民に対して,一部損壊であるとの調査結果を伝えたところ,当該住民が,当 該調査員らに対して,第1次調査(本件第1回調査)で一部損壊との結果が出ているのに,何故また同じ一部損壊となるのかと尋ねるとともに,当該調査員らが第2次調査票を持参していなかったことにつき,おかしいのではないかと指摘した。そして,当該住民の自宅から仙台市α区固定資産税課に電話をし,当該住民は,同課の職員に対して,第2次調査票を持参 第2次調査票を持参していなかったことにつき,おかしいのではないかと指摘した。そして,当該住民の自宅から仙台市α区固定資産税課に電話をし,当該住民は,同課の職員に対して,第2次調査票を持参 してきちんと調査をするようにと伝えた。 その後,もう1名の調査員(固定資産税課長)が合流し,3名によって調査が行われた。 本件第2回調査は,本件マンションの外観や共用部分の損傷を目視により確認する方法で行われ,住戸の専用部分への立入調査はされなかった。 ウ本件第2回調査の結果(甲40,57)(ア) 本件第2回調査では,第1次調査票が用いられ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損害のうち,②「柱・耐力壁・基礎」の項目について,一部で剥離が発生(鉄筋の露出なし)との損傷(損傷程度Ⅲ。損害割合30%)が,③「屋根・外部仕上」の 項目について,外部仕上げの明らかなひび割れ(損傷程度Ⅱ。損害割合 6%)が,④「設備等」の項目について,高架水槽・受水槽の損傷及びエレベーターの損傷(損害割合合計10%)がそれぞれ確認された。 その結果,本件建物は,部位別損害割合の合計が46%であり,大規模半壊に該当するものと判定された。 (イ) 上記(ア)の②「柱・耐力壁・基礎」の項目の損傷は,具体的には, 本件マンションの共用部分の階段底部と梁の接合部分に剥離を認めたことによるものであった。 (4) 本件第3回調査等についてア他のマンションについての再調査(甲57,乙2)仙台市α区では,Fのマンション群のうち本件マンション以外の8棟の 建物の管理組合から再調査の申請を受け,平成23年11月13日,当該8棟の建物について改めて被害の程度 7,乙2)仙台市α区では,Fのマンション群のうち本件マンション以外の8棟の 建物の管理組合から再調査の申請を受け,平成23年11月13日,当該8棟の建物について改めて被害の程度の調査を行ったところ,その結果は,いずれも大規模半壊に至らないものであった。 イ H一級建築士(以下「H建築士」という。)による調査(ア) 調査の契機及び概要(甲56,57,61) 本件第2回調査及び上記アの調査のいずれにも携わった仙台市α区固定資産税課長は,上記アの他のマンションの被害の程度がいずれも大規模半壊に至らないものにとどまったことから,本件第2回調査による大規模半壊との判定に疑問を抱き,本件マンションの被害認定につき専門家としての意見を求めるため,仙台市役所(本庁)の財務局税務部資産 税課に相談したところ,同課から日本建築家協会宮城地域会への協力依頼を経て,仙台市α区に対してH建築士が紹介された。 H建築士による本件マンションの調査は,平成23年11月22日に行われ,仙台市α区や仙台市本庁の職員5~6名も同行した。調査時間は,本件マンション以外のマンションを確認する時間を含めて2時間程 度であり,本件マンション自体の調査は30分以上は行われた。 (イ) H建築士の意見の概要(甲15,56,59)上記(ア)の調査に基づくH建築士の意見の概要は,次のとおりである。 “本件マンションの共用部分の階段下部(底部)には,増しコン及び梁にそれぞれ一部の欠け落ちが認められるところ,当該損傷は,増しコンが相当な重量となっており無筋であるために地震の影響を受けやすく, 東日本大震災の揺れにより増しコンが梁方向にぶつかり,その衝撃で一部が剥離して落下 落ちが認められるところ,当該損傷は,増しコンが相当な重量となっており無筋であるために地震の影響を受けやすく, 東日本大震災の揺れにより増しコンが梁方向にぶつかり,その衝撃で一部が剥離して落下し,これに追従して梁の一部も剥離し落下して生じたものであると考えられる。 そして,運用指針において鉄筋コンクリート造の梁の損傷程度Ⅲとして例示されている損傷は,建築の構造的な見地から構造体として受けた 曲げやせん断力によって生じた亀裂や剥離を想定しており,第1次調査票も運用指針と同様の視点から作成されたものと考えられるため,第1次調査票にRC造の損傷程度Ⅲとして記載される「一部で剥離が発生(鉄筋の露出なし)」は,構造体として受けた曲げやせん断力により比較的大きなひび割れが起こった結果,一部で剥離が発生したものを指すと解す べきである。本件マンションにおいては,階段下部の梁にはひび割れはなく,増しコンの剥離に追従して起こった一部の欠けがあるのみで,当該欠けは梁のごく一部に起こったもので構造耐力上の影響はほとんどないから,損傷程度Ⅲと同等の損傷とはいえない。 そして,本件マンションの被害としては,雑壁や床の損傷が確認され たものの,全体を調査した結果として,一部損壊とするのが妥当な判定である。”ウ本件第3回調査の概要(甲8,57,61)本件第3回調査は,平成23年12月15日に実施され,仙台市α区固定資産税課の職員のほか,同区建設部街並み形成課の一級建築士の資格を 有する職員を加えて行われた。 エ本件第3回調査の結果(甲41の1,2)(ア) 本件第3回調査では,第1次調査票が用いられ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損 。 エ本件第3回調査の結果(甲41の1,2)(ア) 本件第3回調査では,第1次調査票が用いられ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損害のうち,②「柱・耐力壁・基礎」の項目については損傷がなしとされ,③「屋根・外部仕上」の項目について,外部仕上げの明らかなひび割れ(損傷程度Ⅱ。損 害割合6%)が,④「設備等」の項目について,高架水槽・受水槽の損傷及びエレベーターの損傷(損害割合合計10%)がそれぞれ確認された。 その結果,本件建物は,部位別損害割合の合計が16%であり,一部損壊に該当するものと判定された。 (イ) また,本件第3回調査では,第2次調査票も用いられ,①「外観」の項目について全壊に相当する被害は確認されず,部位別の損害のうち,②「柱・耐力壁・基礎」の項目について,一部でひび割れが発生との損傷(損傷程度Ⅰ。損害割合5%)が,③「屋根・外部仕上」の項目について,外部仕上げの明らかなひび割れ(損傷程度Ⅱ。損害割合3%)が, ④「設備等」の項目について,高架水槽・受水槽の損傷及びエレベーターの損傷(損害割合合計4%)が,⑤「床・梁」の項目について,亀裂有・コンクリートの剥離無との損傷(損傷程度Ⅱ。損害割合3%)がそれぞれ確認され,⑥「天井・内部仕上」の項目については損傷が確認されず,⑦「建具」の項目について,開閉が困難との損傷(損傷程度Ⅰ。 損害割合1%)が確認された。 その結果,本件建物は,部位別損害割合の合計が16%であり,一部損壊に該当するものと判定された。 (5) 各住戸の専用部分の被害の概要及び本件各支援金の使途等本件当事者住民の各住戸の専用部分の被害の概要及び本件各支援金の使途 6%であり,一部損壊に該当するものと判定された。 (5) 各住戸の専用部分の被害の概要及び本件各支援金の使途等本件当事者住民の各住戸の専用部分の被害の概要及び本件各支援金の使途 等は,別紙2「各住戸の専用部分の被害の概要及び本件各支援金の使途等」 に記載のとおりである。 2 争点(1)(本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当するか)について(1)ア支援法2条2号ニは,大規模半壊世帯につき,自然災害によりその居住する住宅が半壊し,基礎,基礎ぐい,壁,柱等であって構造耐力上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住すること が困難であると認められる世帯と定めているところ,この規定の文言に照らせば,大規模半壊世帯に該当するためには,その居住する住宅が半壊し,柱,梁等の構造耐力上主要な部分(支援法施行令2条,建築基準法施行令1条3号参照)について補修を行わなければ居住が困難な状態にあることが客観的に認められる必要があると解される。 イ(ア) ところで,前記認定事実(1)アのとおり,内閣府の運用指針は,市町村におけるり災証明に記載された住家の被害の程度が支援法の適用等による各種支援策と密接に関連するようになってきたという状況を踏まえ,住家の被害認定に係る標準的な調査方法及び判定方法を示すことを目的として作成されたものであり,その中で「大規模半壊」の認定基準を「居 住する住宅が半壊し,構造耐力上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難なもの」としているのは,支援法2条2号ニの大規模半壊世帯に該当する住宅の被害の程度と対応させるためであると解される。また,前記認定事実(1)イのとおり,仙台市における第1次調査票及び第2 とが困難なもの」としているのは,支援法2条2号ニの大規模半壊世帯に該当する住宅の被害の程度と対応させるためであると解される。また,前記認定事実(1)イのとおり,仙台市における第1次調査票及び第2次調査票は,運用指針を基にして,こ れを簡易かつ効率的に運用することを目的として作成されたものであり,運用指針による調査及び判定と第1次調査票及び第2次調査票による調査及び判定とは,外観の損傷状況や部位ごとの損傷程度等の目視による把握を行い,これにより住家の損害割合を算定して被害の程度を判定するという基本的な手法や,部位ごとの構成比,損傷程度,損害割合の数 値に共通性があるから,第1次調査票及び第2次調査票の内容は運用指 針の内容と質的に異なるものではないといえる。 そして,運用指針や第1次調査票及び第2次調査票が,例えば,地震による被害を受けた鉄筋コンクリート造の住家における柱や梁の外観上の損傷の所見について,ひび割れやコンクリートの剥離等に着目しているのは,地震による力が作用して柱や梁の構造耐力を低下させる程度の 損傷が生じた場合には,その損傷の程度に応じて,ひび割れや剥離,変形といった外観上の所見が順次現れるという構造力学上の理論ないし経験則に基づくものと解されるところ(甲56参照),このような専門的知見に裏付けられた被害の程度の判定の在り方は,上記アに説示した大規模半壊世帯と認められるために必要とされる構造耐力上主要な部分に ついて補修を行わなければ居住が困難な状態にあるか否かを判断する方法として合理性を有するということができる。 そうすると,運用指針に準拠し,あるいは第1次調査票ないし第2次調査票を用いて行われた調査の結果に基づいて,住家の被害の程度を大規模半壊に至らないものとするり災証明書が発 するということができる。 そうすると,運用指針に準拠し,あるいは第1次調査票ないし第2次調査票を用いて行われた調査の結果に基づいて,住家の被害の程度を大規模半壊に至らないものとするり災証明書が発行されたという事実は, 当該調査の内容においてその信用性に疑いを差し挟むような事情がない限りは,当該世帯が大規模半壊世帯に該当しないことを推認させる重要な間接事実となるというべきである。 なお,本件当事者住民は,第1次調査票(ないし第2次調査票)と運用指針とは実質的に同一のものとはいえない旨の主張をするものの,第 1次調査票ないし第2次調査票の部位別損害割合による判定の方法や内容自体の合理性について特段争う主張をしておらず,第1次調査票ないし第2次調査票を用いた調査の結果をもって大規模半壊世帯の要件該当性を判断することの合理性は上記のとおりであるから,本件当事者住民の当該主張は上記の判断を左右するものではない。 (イ) そして,本件第3回調査の結果,そこで用いられた第1次調査票及 び第2次調査票のいずれにおいても,本件建物は,部位別損害割合により一部損壊に該当するものと判定され(前記認定事実(4)エ),この結果に基づき,本件建物の被害の程度を一部損壊とする本件第3回り災証明書が発行されている(前記前提事実(2)ウ(ウ))ところ,本件第3回調査は,一級建築士の資格を有する職員を加えて行われており(前記認定事 実(4)ウ),建築士の資格を持たない職員のみによって行われた本件第2回調査(前記認定事実(3)イ)よりも,建築の専門的知見に基づいた調査・判定が可能な体制で実施されたといえること,本件第3回調査に先立ち行われたH建築士による調査によっても本件建物は一部損壊に相当するとの意見であり(前記認定事実( も,建築の専門的知見に基づいた調査・判定が可能な体制で実施されたといえること,本件第3回調査に先立ち行われたH建築士による調査によっても本件建物は一部損壊に相当するとの意見であり(前記認定事実(4)イ(イ)),本件第3回調査の結果と整 合するところ,当該意見において梁底部の剥離は構造耐力上の影響がほとんどなく損傷程度Ⅲに当たらないとして損傷の構造耐力への影響を考慮している点は,上記アの大規模半壊世帯に該当するために必要な構造耐力上主要な部分に補修を行わなければ居住が困難な状態にあるか否かを判断するという観点からは合理的であるといえること,その他に本件 第3回調査の内容自体について疑義を生じさせるような事情がうかがわれないことからすれば,本件第3回調査の内容においてその信用性に疑いを差し挟むような事情は認められない。 (ウ) この点につき,本件当事者住民は,本件第3回調査が住民等からの申請なく職権で行われたことが違法である旨主張するところ,確かに運 用指針や仙台市のり災証明等取扱要領(甲36),建物被害認定調査のポイント(甲43)等において職権による再調査や第2次調査についての定めはないが,調査の契機と実際に行われた調査内容の信用性とは別問題であり,上記の運用指針等の所定の契機によらずに調査が開始されたことから当然にその調査が信用できないとはいえないし,また,本件 マンションと同じマンション群にある他のマンションとの比較において 本件建物の被害の程度の判定に疑問を抱いたため(すなわち,本件第2回調査の内容においてその信用性に疑いを差し挟むような事情が認められたため)専門家も加えて調査をした(前記認定事実(4)アないしウ)という本件第3回調査に至る契機・経過それ自体についても,格別不自然,不 の内容においてその信用性に疑いを差し挟むような事情が認められたため)専門家も加えて調査をした(前記認定事実(4)アないしウ)という本件第3回調査に至る契機・経過それ自体についても,格別不自然,不合理であるとはいえず,本件第3回調査が不当な動機や目的により行 われたものともいえないから,本件第3回調査の内容自体に疑義を生じさせるものということはできない。また,上記のような契機・経過をもって職権により行われる再調査が,運用指針や仙台市の取扱要領等によって禁止されているとも解されない。さらに,本件当事者住民は,仙台市では一旦されたり災証明の判定を引き下げることは回避するという運 用がされていたとも主張するが,本件第3回調査の内容そのものに関係するものではなく,また,そのような運用は,その結果として採用された判定が,その基礎となった調査においてその信用性に疑いを差し挟むような事情がない限りにおいて,正当性が認められるものというべきであるから,仮にそのような運用があったとしても,上記判断を左右する ものではない。 (エ) したがって,本件第3回調査の結果に基づき本件建物の被害の程度を一部損壊とする本件第3回り災証明書が発行されたという事実をもって,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当しないことが推認されるというべきである。 (2) これに対し,本件当事者住民は,本件マンションの共用部分の階段と梁底部の接合部分にコンクリートの剥離があり,当該損傷は梁自体の損傷であるから,本件建物の被害の程度が大規模半壊に当たる旨主張する。 しかしながら,本件マンションの写真(甲54等)によっても,上記本件当事者住民の指摘する剥離は,その大半が階段底部の増しコン部分につき認 められ,梁の部分に生じた剥離は梁全体のうち る。 しかしながら,本件マンションの写真(甲54等)によっても,上記本件当事者住民の指摘する剥離は,その大半が階段底部の増しコン部分につき認 められ,梁の部分に生じた剥離は梁全体のうちの狭い範囲にとどまっており, 当該接合部分以外には一見して梁に剥離等の損傷が認められないのであって,これらの外観上の所見に基づいて大規模半壊に当たらないものとした本件第3回調査の結果やH建築士の意見が不合理であるとはいえないから,当該梁の損傷をもって,本件建物の被害の程度が大規模半壊に当たると認めることはできない。なお,本件当事者住民は本件マンションの梁には多数のひび割 れがあったと主張するが,本件当事者住民の摘示する証拠(甲53~56,58,65~67等)によっても,具体的に梁のどの箇所にどの程度のひび割れがあるのか不明であるし,これがあるとして本件建物の構造耐力上どのような影響があるのかは明らかでない。 また,本件当事者住民は,J一級建築士の意見書(甲46,60,84) に依拠して,梁と床版(RC階段スラブ)の接合がラーメン架構の構造計算の対象にない形状となっており,梁に斜めの方向のねじりを伴う圧力が加わり損傷が生じたとみられ,梁の上部にも,梁の下部と同じ作用の結果として損傷が生じている旨の主張をする。しかし,これらの推論も可能性としてあり得るというものにすぎず,本件第3回調査の結果やH建築士の意見を覆す に足りる実証的な証拠に基づくものではないし,当該意見書で指摘される梁上部の損傷についても,具体的にその箇所や性状,内容,本件建物の構造耐力への影響の程度等が明らかでないことからすれば,当該意見書に指摘される点を踏まえても,本件建物の被害の程度が大規模半壊に当たると認めることはできない。 (3) 内容,本件建物の構造耐力への影響の程度等が明らかでないことからすれば,当該意見書に指摘される点を踏まえても,本件建物の被害の程度が大規模半壊に当たると認めることはできない。 (3) 以上によれば,本件第3回り災証明書により本件建物の被害の程度が一部損壊であるとされたことをもって,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当しないことが推認され,他に特段の立証はないから,本件当事者住民の世帯が大規模半壊世帯に該当すると認めることはできない。 そうすると,本件各原決定は,大規模半壊世帯(被災世帯)の世帯主でな い者に対して支援金の支給決定をしたものであり,その支給要件を欠いてさ れた違法なものであるといえる。 そこで,以下において本件各原決定を取り消すことの可否につき検討する。 3 争点(2)(本件各原決定を取り消すことの可否)について(1) 本件各原決定を取り消すことの法律上の根拠の要否等(業務規程11条によらずに本件各原決定を取り消すことの可否)について 一般に,行政処分は適法なものでなければならず,一旦された行政処分も,後にそれが違法であることが明らかになった場合には,法律による行政の原理又は法治主義の要請に基づき,行政の適法状態を回復するため,法律上の特別の根拠なく,処分をした行政庁が自ら職権により当該処分を取り消すことができるというべきであるところ,都道府県会館は,宮城県から支援金の 支給に関する事務の全部の委託を受け(前記前提事実(1)イ),自ら処分行政庁として行政処分である支援金の支給決定を行うものであって,上記と別異に解すべき理由はないから,本件各原決定が違法であることが明らかになった場合に,法律上の特別の根拠なく,職権によりこれを取り消し得るといえる。 る支援金の支給決定を行うものであって,上記と別異に解すべき理由はないから,本件各原決定が違法であることが明らかになった場合に,法律上の特別の根拠なく,職権によりこれを取り消し得るといえる。 この点につき,本件当事者住民は,業務規程11条に該当する場合でなければ,都道府県会館において支援金の支給決定を取り消すことができない旨主張するが,同規程には,本件各処分のような職権による違法な支給決定の取消しを明示的に禁止した規定はなく,また,後記(2)イ(ア)において説示するとおり,支給要件を欠いてされた支給決定の効力をそのまま維持すること による公益上の不利益が重大であることからすれば,同規程11条において支援金の支給決定を取り消すことができる事由が定められているとしても,これをもって本件各処分のような職権による取消しを制限する趣旨のものではないと解すべきである。 したがって,都道府県会館において,本件各原決定が支給要件を欠く違法 なものであることが明らかになったことにより,特別の法律上の根拠なく, これを職権で取り消し得るというべきである。 (2) 本件各原決定を取り消すことの可否についてアもっとも,本件各原決定のような授益的な行政処分については,これが取り消されることによって,当該処分による既得の権利利益や当該処分が適法であり有効に存続するものと期待した当該処分の相手方の信頼を害 することとなるから,こうした利益や信頼の保護などの見地から,当該処分の違法が明らかになったとしても,その取消しが許されず,又は制限される場合があるというべきである。 そこで,授益的な行政処分の取消しについては,当該処分の取消しによって処分の相手方に生ずる不利益と,取消しをしないことによって当該処 れず,又は制限される場合があるというべきである。 そこで,授益的な行政処分の取消しについては,当該処分の取消しによって処分の相手方に生ずる不利益と,取消しをしないことによって当該処 分に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの公益上の不利益とを比較考量し,当該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときには,処分行政庁は職権でこれを取り消すことができると解するのが相当である。 イ(ア) 支援法は,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に 対する生活の再建の支援等を目的とする(同法1条)ところ,自然災害(同法2条1号)による被害は広域にわたり得るものであり,同法の適用の有無が検討されるべき対象者が多数となり,地理的にも広範となり得るものといえる。そして,同法3条1項は,被災世帯に該当するか否かにより支援金の支給の有無を画し,さらに同条2項及び5項は,被災 世帯のうちでも,大規模半壊世帯か否か,単数世帯か否か,所定の加算事由があるか否かに応じて区分して,それぞれの支援金の額を画一的に定めているところ,かかる規定は早期にまとまった額の金銭的支援を可能とする一方で,本来,自然災害による実際の被害の程度やそれに対する支援の要否・程度は個別具体的な事情によって様々であるにもかかわ らず,上記のようにある程度一律の基準によって支援金の支給の有無や 金額が画一的に定められていることから,その制度の性質上,支給の有無や金額について,被害の実情や実感とのそご等に起因する不満や不公平感が生ずる可能性をはらむものであるともいうことができる。このような制度において,多数かつ広範にわたる者に対し上記のような不満等を回避しつつ適正な支援を行うためには,同法に所定 起因する不満や不公平感が生ずる可能性をはらむものであるともいうことができる。このような制度において,多数かつ広範にわたる者に対し上記のような不満等を回避しつつ適正な支援を行うためには,同法に所定の支給要件・基準 が遵守されることが特に重要であり,同法の適用の公正・公平が特に強く求められるといえ,支給要件を欠く者に対して支援金が支給されているという状態は,制度上,看過し得ない事態であるというべきである。 また,支援法における支援業務は,基本的に都道府県が拠出した資金による基金により運営され(同法9条),支援金は,当該基金と国からの 補助(同法18条)により賄われているところ,最終的には国民一般の負担となる限りある財源の下で支援金の支給等の支援業務を運営する必要があるという側面からも,支給要件を欠いてされた支援金の支給決定を是正する必要性があるということができる。 したがって,支給要件を欠いてされた本件各原決定を放置することは, 支援法による支援金制度の仕組みや趣旨にもとるものといえ,その効力をそのまま維持することによる公益上の不利益は重大である。 (イ) 他方,本件各原決定が取り消されることになれば,本件当事者住民において,自身が取得できるものと信頼していた本件各支援金の返還を求められることになり,既にこれを費消しているような場合には,返還 を求められた時点において金銭の出捐を要するといった不利益を被ることになるといえる。 しかしながら,前記2のとおり本件各原決定は支給要件を欠いてされたものであるから,本来的には本件当事者住民において本件各支援金を保持することができる法的根拠はないといわざるを得ず,他にも東日本 大震災に被災したが住家の被害の程度が一部損壊や半壊にとどまったた であるから,本来的には本件当事者住民において本件各支援金を保持することができる法的根拠はないといわざるを得ず,他にも東日本 大震災に被災したが住家の被害の程度が一部損壊や半壊にとどまったた めに支援金の支給を受けることができなかった被災者も多数存在することが容易にうかがわれる状況下において,上記の本件当事者住民の信頼や利益が本件各原決定を維持することによって特に保護すべきものであるとはいえない。 また,確かに本件当事者住民においては,一旦された支給決定が事後 に取り消されることにより,当初から支給決定がされなかった場合には生ずることのなかった混乱や困惑,負担等を受けることになるということはできる。しかし,前記認定事実(5)(別紙2)によれば,本件当事者住民の本件各支援金の使途等は,大別すると,①住戸の修繕や物品の買替え,②生活費,③返還を求められているために使用できない(あるい は貯蓄している)というものであるところ,③の場合には返還を求められることによって実害が生ずるとはいい難く,①及び②についても,支援金の支給を受けることができなかった被災者であっても同様に必要となる支出や費用の範疇にとどまるものというべきであり,また本件当事者住民は当該支援金の使用によりその分の経済的利益を享受していると いえることからすれば,本件当事者住民の支援金の使途等に鑑みても,本件当事者住民の信頼や利益を本件各原決定を維持することによって保護する必要性が高いということは困難である。 この点につき本件当事者住民は,支援金の支給によって,これがなければしなかったであろう支出(リフォーム費用等)を余儀なくされた旨 主張するところ,確かに支援金を原資とすることができるからこそ当該支出をしたという側面は は,支援金の支給によって,これがなければしなかったであろう支出(リフォーム費用等)を余儀なくされた旨 主張するところ,確かに支援金を原資とすることができるからこそ当該支出をしたという側面は否定できないものの,無用な支出を強いられる結果となったというものではないし,当該支出によって享受した経済的利益を超えるような実害が支援金の返還によって生ずることとなるといった事情もうかがわれないことからすれば,当該本件当事者住民の主張 を考慮しても,本件各原決定の効力が維持されることの信頼や利益の要 保護性が高いということはできない。 ウ以上によれば,本件においては,本件各原決定の取消しによって本件当事者住民に生ずる不利益と,取消しをしないことによって本件各原決定に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの公益上の不利益とを比較考量すると,本件各原決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし 著しく不当であるものと認められるから,都道府県会館において,これを取り消すことができるといえる。 (3) 小括よって,本件各原決定を取り消した本件各処分が違法・無効であるということはできない。 4 不当利得返還請求の成否について本件各処分によって本件各原決定が取り消されたことにより,本件当事者住民は,法律上の原因なく,受給した支援金相当額の利得を受け,都道府県会館には同額の損失が生じているといえるから,都道府県会館は,本件当事者住民に対し,それぞれ第1事件本訴原告(反訴被告)らにつき別表の各「支給金額 (円)」欄に記載の金員,第2事件被告につき150万円の不当利得返還請求権を有しており,また,都道府県会館が本件当事者住民に対して当該各金員の返還を求めた際に定めた返還期限の翌日であ 給金額 (円)」欄に記載の金員,第2事件被告につき150万円の不当利得返還請求権を有しており,また,都道府県会館が本件当事者住民に対して当該各金員の返還を求めた際に定めた返還期限の翌日である平成25年8月1日以降においては,本件当事者住民は上記各金員の支払義務について履行遅滞にあるといえる。 5 まとめ 以上によれば,本件各処分(第2事件被告に対するものを除く。)の取消しを求める第1事件本訴原告(反訴被告)らの請求についてはいずれも理由がないからこれらを棄却し,都道府県会館の本件当事者住民に対する不当利得返還請求についてはいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官古屋勇児(別紙2省略)

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