平成26(行ウ)8 行政処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年4月21日 千葉地方裁判所
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判決文本文28,819 文字)

平成26年(行ウ)第8号行政処分取消請求事件平成27年4月21日千葉地方裁判所民事第3部判決口頭弁論終結日平成26年12月1日 主文 1 千葉刑務所長が原告に対し平成24年12月12日付けでなしたEへの年賀状の発信を禁止する処分を取り消す。 2 千葉刑務所長が原告に対し平成24年12月18日付けでなしたF事務局からの絵葉書の受信を禁止する処分を取り消す。 3 千葉刑務所長が原告に対し平成24年12月27日付けでなしたEへの信書の発信を禁止する処分を取り消す。 4 千葉刑務所長が原告に対し平成25年1月10日付けでなしたEからの信書の受信を禁止する処分を取り消す。 5 千葉刑務所長が原告に対し平成25年9月17日付けでなしたF事務局からの信書の受信を禁止する処分を取り消す。 6 千葉刑務所長が原告に対し平成26年1月8日付けでなしたF事務局に対する信書の発信を禁止する処分を取り消す。 7 千葉刑務所長が原告に対し平成26年1月9日付けでなしたHに対する信書の発信を禁止する処分を取り消す。 8 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 本件は,千葉刑務所に収容中の受刑者である原告が,Fの関係者らとの間の信書の発受信を処分行政庁がそれぞれ禁止したのは違法であると主張して,被告に対し,上記各処分の取消しを求めた事案である。 1 前提事実等(1) 関係法令の定めア刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」という。)126条刑事施設の長は,受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。 以下この目において同じ。)に対し,この目,第148条第3項又は次節の規定により禁止される場合を (以下「法」という。)126条刑事施設の長は,受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。 以下この目において同じ。)に対し,この目,第148条第3項又は次節の規定により禁止される場合を除き,他の者との間で信書を発受することを許すものとする。 イ法127条(ア) 同条1項刑事施設の長は,刑事施設の規律及び秩序の維持,受刑者の矯正処遇の適切な実施その他の理由により必要があると認める場合には,その指名する職員に,受刑者が発受する信書について,検査を行わせることができる。 (イ) 同条2項次に掲げる信書については,前項の検査は,これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし,第3号に掲げる信書について,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合は,この限りでない。 一受刑者が国又は地方公共団体の機関から受ける信書二受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関に対して発する信書 三受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人を含む。以下この款において同じ。)との間で発受する信書ウ法128条刑事施設の長は,犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより,刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(受刑者の親族を除く。)については,受刑者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし,婚姻関係の調整,訴訟の遂行,事業の維持その他の受刑者の身分上,法律上又は業務上の ある者(受刑者の親族を除く。)については,受刑者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし,婚姻関係の調整,訴訟の遂行,事業の維持その他の受刑者の身分上,法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合は,この限りでない。 エ法129条(ア) 同条1項刑事施設の長は,第127条の規定による検査の結果,受刑者が発受する信書について,その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には,その発受を差し止め,又はその該当箇所を削除し,若しくは抹消することができる。同条第2項各号に掲げる信書について,これらの信書に該当することを確認する過程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も,同様とする。 一暗号の使用その他の理由によって,刑事施設の職員が理解できない内容のものであるとき。 二発受によって,刑罰法令に触れることとなり,又は刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがあるとき。 三発受によって,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。 四威迫にわたる記述又は明らかな虚偽の記述があるため,受信者を 著しく不安にさせ,又は受信者に損害を被らせるおそれがあるとき。 五受信者を著しく侮辱する記述があるとき。 六発受によって,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。 (イ) 同条2項前項の規定にかかわらず,受刑者が国又は地方公共団体の機関との間で発受する信書であってその機関の権限に属する事項を含むもの及び受刑者が弁護士との間で発受する信書であってその受刑者に係る弁護士法第三条第一項に規定する弁護士の職務に属する事項を含むものについては,その発受の差止め又はその事項に係る部分の削除 項を含むもの及び受刑者が弁護士との間で発受する信書であってその受刑者に係る弁護士法第三条第一項に規定する弁護士の職務に属する事項を含むものについては,その発受の差止め又はその事項に係る部分の削除若しくは抹消は,その部分の全部又は一部が前項第1号から第3号までのいずれかに該当する場合に限り,これを行うことができる。 (2) 当事者等ア原告は,千葉刑務所に収容されている受刑者である。 イ被告は,千葉刑務所の運営主体である。 ウ本件各処分に係る信書の相手方が関係するFは,昭和55年に,死刑廃止に向けた活動をする「I」として結成された。その代表は,代々死刑確定者が務め,現在は,Jが代表者である。Kが事務局とされており,事務局代表は,Lで,事務局には,他にH牧師及びMが所属している。Fには,現在,刑事施設に収容されている被収容者である会員(以下「被収容者会員」という。)約300人以上と,被収容者でない一般会員約250人以上がいる。 Jは,強盗致死等の罪により死刑判決を受け,平成25年3月16日に同判決が確定し,東京拘置所に収容されている。 Fの主な活動は,死刑廃止運動の他,被収容者との文通,被収容者に対する書籍の送付,会報であるF通信「和解」の発行などであり,文通支援 者が約80人おり,F事務局を通して被収容者会員と文通している。文通においては,更生に反することと個人情報に関する事項については書かないなどのルールがあり,Fは,文通を希望する被収容者会員に対し,それに従うことの同意書の提出を求めている。「和解」には,Jによる実名記事が掲載される他,被収容者会員,一般会員を問わず投稿することができ,いずれもペンネームで掲載される。 (3) 原告の収容状況及び処遇要領等ア収容に至る経過原告は,平成17 名記事が掲載される他,被収容者会員,一般会員を問わず投稿することができ,いずれもペンネームで掲載される。 (3) 原告の収容状況及び処遇要領等ア収容に至る経過原告は,平成17年3月23日,東京地方裁判所において,航空機の強取等の処罰に関する法律違反,殺人及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪により,無期懲役の判決を受け,同判決は,同年4月7日に確定した。 原告は,上記の確定判決の懲役刑執行のため,平成17年9月14日以降,現在に至るまで千葉刑務所に収容されている。 イ処遇要領千葉刑務所長は,原告に対する矯正処遇の目標として,①大勢の人を巻き添えにして死の恐怖感や絶望感を与え,社会を震かんさせる事件を起こしたことを深く反省し,真しに罪を償う,②犯した罪の重さを自覚し,犯罪に及んだ自分の問題点を整理して考え,問題意識を持って自己改善に努める,③社会復帰を目指して,忍耐強く,地道に受刑生活に取り組む,と定め,この目標を達成するために,被害者の視点を取り入れた教育を行っている。 (4) 本件各処分に係る信書の送付に至るまでの経過ア原告は,平成22年6月2日付けで,K(F)宛に,Fの入会届を送付した。 原告は,同年7月21日以降,FのボランティアスタッフであるEとの間で,同事務局を介して信書の発受(文通)を行うようになった。 イ熊本刑務所収容中の受刑者Cは,平成24年3月1日,岐阜刑務所収容中の受刑者Dは,同年2月28日にそれぞれF事務局に対して,それぞれ宛名を「FJ」「J」とする信書を発信し,これらを受け取ったF事務局は,J(当時未決勾留中であった。)に対し,3月9日,転送した。Jは,F事務局のL事務局長に対し,同月12日,受刑者C及びDの上記各信書を発信した。 ウ る信書を発信し,これらを受け取ったF事務局は,J(当時未決勾留中であった。)に対し,3月9日,転送した。Jは,F事務局のL事務局長に対し,同月12日,受刑者C及びDの上記各信書を発信した。 ウ Mは,平成24年6月29日,Jと面会し,Mが「Nさんの手紙とか入らないんだって」と言い,Jが「岐阜は,厳しいんですよ」という会話がなされた。 エ千葉刑務所収容中の他の受刑者Aは,平成24年9月19日,F事務局M宛の信書の発信を申請した。 同刑務所の副看守長は,法127条に基づき,この信書の内容等の検査を実施したところ,同信書には,「Jさんには『小鳥の歌』のお礼をよろしくお伝え下さい。」との記載や「J代表,Mさん,L修道士のご指導を仰ぎながら運営委員の仕事を頑張って参ります。」との記載がされていた。 上記の信書に記載されたJとは,上記(2)ウのとおり,強盗致死等の罪により死刑判決を受け,東京拘置所に収容されていたJであり,この当時は上告中であった。副看守長は,このことと受刑者AがFの運営委員として積極的にFの運営に参加する旨を記載していることなどから,上記の信書を発信させることにより,受刑者AがFの運営活動に熱中し,改善更生の意欲を減退させかねず,その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるものと認めた。 そこで,副看守長は,平成24年9月20日,受刑者Aに対し,この信書の書き直しをするよう指導し,受刑者Aはこれに応じて申請を取り下げた。 オ受刑者Aは,同年10月17日,Mから,Fの会報「和解」を送付され た。千葉刑務所書信係がこの内容を精査したところ,F代表代理としてJという記載があることから,JがFの代表であることを認めた。 カ同月18日,Mから受刑者A宛の信書が千葉刑務所に到達した。 この信書には「刑務所 この内容を精査したところ,F代表代理としてJという記載があることから,JがFの代表であることを認めた。 カ同月18日,Mから受刑者A宛の信書が千葉刑務所に到達した。 この信書には「刑務所の受刑者A(削除されているが,受刑者Aであることは争いがないため,以下この表記とする。)さんがきびしい中で続けられるように皆でお祈りしていきます。Jさんのペンネーム運営委員○○(削除されている)でいいのでしょうか。10月末で原稿を〆切ります。 受刑者Aさんの案がありましたらお知らせください。」と記載されていた。 また,この信書には,東京拘置所の検印が押印され,「私へのJさんからの手紙です。」と付記された便せん1枚が同封されていた。同便せんには,「受刑者Aさんの和解への表記名を私たちで決めましょう。私の案としては,(運営委員○○)。Mさんの案ありますか。」,「受刑者Aさんの提案は,運委就任決定をしてから,受刑者Aさんにこのプロジェクトリーダーをやってもらおうと思います。」という記載があった。 そこで,千葉刑務所の書信係は,Fの実情を調査したところ,Fとは,前記前提事実(2)ウのとおり,昭和55年にIとして結成され,現在は,Kが事務局とされており,刑事施設に収容されている被収容者が被収容者会員として加入していることが判明した。 千葉刑務所長は,同年11月27日,法128条に基づき,矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあることから,受刑者AとMとの間の上記信書の受信を禁止することを決定した。 キ後記クに係る信書に同封されていたパンフレットの名義人であるOは,同年9月7日以降,Jと面会や信書の発受を行っていたところ,同年11月12日には,Jと面会し,Oが「法務副大臣の写真を載せて,全国の受刑者に送って現状報告をするので,送りたいと考え 義人であるOは,同年9月7日以降,Jと面会や信書の発受を行っていたところ,同年11月12日には,Jと面会し,Oが「法務副大臣の写真を載せて,全国の受刑者に送って現状報告をするので,送りたいと考えていて」「『F』とか『P』という名を出してきて」「代表の名前だけだと,岐阜刑は入らない ので先生の名前で入れるので,写真は抹消しないように言ってあります」などと話し,Jが「そうですか」と応じる会話があった。 ク同年12月11日,F事務局から千葉刑務所収容中の受刑者(受刑者Aとは別の受刑者であり,以下「受刑者B」という。)宛の信書が到達し,当該信書のほかにP代表Oから「連絡書」と題する収容者(被拘禁者)の皆さまへというパンフレット一部が同封されていた。なお,同様のパンフレットが千葉刑務所収容中の他の受刑者14名にも届いている。 Vのホームページに掲載されていた記事内容によれば,Oは,同年7月28日,受刑者たちとの文通や面会を通じて人間的なつながりを持ち,出所後の元受刑者たちのケアを目的として,Pを創設し,同団体の代表を務める一方,自らがG刑務所を出所したと述べていたことから,調査したところ,平成8年2月2日から平成13年11月9日までの間,府中刑務所で受刑し(満期釈放),平成16年2月24日から平成23年12月30日までの間,岐阜刑務所で受刑するなどし(満期釈放),受刑を繰り返している者であることが判明した。 (5) 本件各処分等ア請求の趣旨第1項に係る処分について原告は,平成24年12月4日,F事務局が所在する住所に名宛人をEとした信書(以下「本件信書1」という。)の発信を申請した。 (ア) 本件信書1は,新年の挨拶が記載されている年賀状である。 (イ) 千葉刑務所長は,同月12日,法128条に基づい とした信書(以下「本件信書1」という。)の発信を申請した。 (ア) 本件信書1は,新年の挨拶が記載されている年賀状である。 (イ) 千葉刑務所長は,同月12日,法128条に基づいて,本件信書1について原告及びE間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第1項に係る処分。以下「本件処分1」という。)をした。 その理由は,Fが,死刑判決を受けて上訴中のJが代表であること,刑事施設に収容中の死刑確定者や死刑判決を受けて上訴中の者等が会員であり,刑事施設に収容されている被収容者らが被収容者会員であるこ とから,Fと原告との信書の発受を認めることは,Fの代表であるJや他の刑事施設の被収容者である被収容者会員との交流を認めることとなり,原告の矯正処遇の目標(前記前提事実(3)イの①ないし③)に反することとなり,矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあると認められる上,本件各信書の内容が,法128条ただし書にも該当しない,というものであった。 イ請求の趣旨第2項に係る処分について同月11日,F事務局から原告宛の信書(以下「本件信書2」という。)が千葉刑務所に到達した。 (ア) 本件信書2は,「よいクリスマスを祈ります。」と記載されている絵葉書1枚である。なお,原告の他に14名の受刑者にも届けられている。 (イ) 千葉刑務所長は,同月18日,法128条に基づき,本件信書2について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第2項に係る処分。以下「本件処分2」という。)をした。 その理由は,本件処分1と同様,Fと原告との信書の発受を認めることは,Fの代表であるJや他の刑事施設の被収容者である被収容者会員との交流を認めることとなり,原告の矯正処遇の目標に反することとなり,矯 の理由は,本件処分1と同様,Fと原告との信書の発受を認めることは,Fの代表であるJや他の刑事施設の被収容者である被収容者会員との交流を認めることとなり,原告の矯正処遇の目標に反することとなり,矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあると認められる上,本件各信書の内容が,法128条ただし書にも該当しない,というものであった。 なお,原告の矯正処遇の適切な実施のため特に必要があると認められるときは,相手方の氏名を告知しないことができるところ(5),本件信書2はこれに該当すると判断され,原告に対し,相手方の氏名は告知されていない。 ウ請求の趣旨第3項に係る処分について 原告は,同月19日,F事務局が所在する住所に名宛人をEとした信書(以下「本件信書3」という。)の発信を申請した。 (ア) 本件信書3には,「Fとの手紙不許可の件は,母を通して事務局に知らせました。」,「翌週の教誨時,先生も会を良くご存じなので話してもらうように頼み,正式な申し入れとご推薦の準備をしていたところ,どうしてもクリスマスに間に合わせるため,教誨の日に話した事を推薦と見なして新たな信書申告書を出しました。」,「禁止処分に対しては,当然,不服申立中ですが,推薦という新たな事情の中での新たな申請が,つい2週間前の決定と異なる結論であっても,行政法上一応矛盾しません。」などの記載があった。 (イ) 千葉刑務所長は,同月27日,法128条に基づき,本件信書3について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第3項に係る処分。以下「本件処分3」という。)をした。 その理由は,上記の本件処分1と同様,原告の処遇目標に反し,矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあると認められる上,本件各信書の内容が,法128条ただし書に 件処分3」という。)をした。 その理由は,上記の本件処分1と同様,原告の処遇目標に反し,矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあると認められる上,本件各信書の内容が,法128条ただし書にも該当しない,というものであった。 エ請求の趣旨第4項に係る処分について平成25年1月4日,Eから原告宛の信書(以下「本件信書4」という。)が千葉刑務所に到達した。 (ア) 本件信書4は,新年の挨拶と「おバカな私ですが,今后ともよろしくお願いいたします。」との記載がある年賀状である。 (イ) 千葉刑務所長は,同月10日,法128条に基づき,本件信書4について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第4項に係る処分。以下「本件処分4」という。)をした。 その理由は,本件処分1ないし3とほぼ同様であり,原告の処遇目標 に反し,矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあると認められる上,本件各信書の内容が,法128条ただし書にも該当しない,というものであった。 なお,原告の矯正処遇の適切な実施のため特に必要があると認められるときは,相手方の氏名を告知しないことができるところ(依命通達記12(5)),本件信書4はこれに該当すると判断され,原告に対し,相手方の氏名は告知されていない。 オ請求の趣旨第5項に係る処分について同年9月9日,F事務局から原告宛の信書(以下「本件信書5」という。)が千葉刑務所に到達した。 (ア) 本件信書5は,「お誕生日おめでとうございます。」,「日々,新たに生きましょう!Q。」,「おすこやかに!R。」等と記載のあるF事務局関係者からの寄せ書き(葉書)である。 (イ) 千葉刑務所長は,同月17日,法128条に基づき,本件信書5について原告及びF事務局間の信書発受禁 Q。」,「おすこやかに!R。」等と記載のあるF事務局関係者からの寄せ書き(葉書)である。 (イ) 千葉刑務所長は,同月17日,法128条に基づき,本件信書5について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第5項に係る処分。以下「本件処分5」という。)をした。 その理由は,本件処分1ないし4とほぼ同様の理由であった。 カ請求の趣旨第6項に係る処分について原告は,同年12月4日,名宛人をF事務局とした信書(以下「本件信書6」という。)の発信を申請した。 (ア) 本件信書6には,「本来は色々安否の件も書きたいのですが,法第128条但書で禁止できない訴訟の遂行,法律上の用務処理に限ってお便りします。」「東京矯正管区による棄却裁決の理由は,第一に死刑被告が代表であること。そして第二が不良交友になるおそれです。」,「再審査申請と訴訟でのポイントは,(ⅰ)一律に形式のみ捉えて実体を見ず,部分だけ見て全体から個々の判断をしていない点。」,「これ らを中心に闘って参ります。今や法的強制力を伴う手続きしか残されていません。ただ,死刑被告人代表問題だけは,この反動,悪性の時世,どうしても貴会にご協力いただかないと見通しは非常に厳しく,再審査申請でも今後の改善の必要を認める旨記しました。」,「私が身柄の不利益を冒してでも訴訟へ進む目的は,Fスタイルのボランティアの芽を摘ませることなく伸ばすこと。」,「獄中会員間交流云々についてなら私も精一杯反撃しますが,(中略)最低限の妥協として獄中会員以外の方に代表をお願いできませんか。」,「S弁護士からお聞きの通り,当分「和解」送付はお見合わせ下さい。矯正管区長への審査申請の条文が「被収容者」でなく「次に掲げる刑事施設の等と長の措置に不服がある者」となっているのだから,ダメモトで 「S弁護士からお聞きの通り,当分「和解」送付はお見合わせ下さい。矯正管区長への審査申請の条文が「被収容者」でなく「次に掲げる刑事施設の等と長の措置に不服がある者」となっているのだから,ダメモトで貴会も申請してみて下さい。矯正管区段階では却下か,受理されても棄却,次の法務大臣への再審査請求に証拠書類・文書をしっかり携えて合流していただければとても助かります。」等との記載がある。 (イ) ところで,本件信書6を発信申請した経緯は,以下のとおりである。すなわち,平成25年9月9日,F事務局一同から原告宛に本件信書5の受信があり,同月17日,本件処分5が決定され,これが原告に告知されたのに対し,原告が,同月20日,後記前提事実(6)エのとおり,本件処分5について,東京矯正管区長に対し,審査の申請をしたものの,同年10月31日,棄却裁決の告知及び裁決書の交付がなされた。そのため,原告は,F事務局宛に,法128条ただし書で禁止できない,訴訟の遂行,受刑者の法律上の重大な利害に係る用務の処理の内容であるとして,「裁決書の内容,当該禁止措置に係る訴訟提起に向けての決意,Fの代表の変更に関する意見,会報「和解」の送付に関する要望(第三者を解して連絡済みであるとしている。),審査の申請の勧め」等を内容とする発信申請をした。 なお,原告の過去の信書の発受歴によれば,Fとの信書の発受が禁止されたことについて,法テラス千葉,救援連絡センター,弁護士等と信書の発受を行い,訴訟提起の準備をしている事実が認められた。 (ウ) 千葉刑務所長は,平成26年1月8日,法128条に基づき,本件信書6について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第6項に係る処分。以下「本件処分6」という。)をした。 その理由 刑務所長は,平成26年1月8日,法128条に基づき,本件信書6について原告及びF事務局間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第6項に係る処分。以下「本件処分6」という。)をした。 その理由は,本件処分1ないし5とほぼ同様の理由であった。 キ請求の趣旨第7項に係る処分について原告は,同月6日,名宛人をHとした信書(以下「本件信書7」という。)の発信を申請した。 (ア) 本件信書7には,「素晴らしい模範を示し続けておられるフランシスコ聖下と共にクリスマスを喜び祝い,共にフィリピンで被災した子どもたちのことを思う,このようなパパ様をいただいたお恵みに心から感謝します。」などの記載があった。 (イ) 千葉刑務所長は,同月9日,法128条に基づき,本件信書7について原告及びM間の信書発受禁止処分(請求の趣旨第7項に係る処分。 以下「本件処分7」という。)をした。 その理由は,平成25年4月30日に原告宛に届いたHからの信書は,その住所はFと異なるものであり,差出人氏名はKと記載されていたところ,原告が信書の発受の相手方に関する届出書に記載されている住所は,Fと同じ住所でK,知り合った場所はFと記載されており,KとFは同一の住所であることから,HはFの関係者であると認められるとした上,Fについては,本件処分1ないし6と同様のおそれが生じるというものであった。 (6) 本件処分1以後の経緯等ア Mは,平成25年1月7日,Jと面会し,Jが「Nさんは何をやってい るんですか。信仰は良いですよ。それはそれで」などという会話があった。 イ Mは,同年2月7日,Jと面会し,Mが「Nさんの件は読みました」と発言したのに対し,Jが「手紙で話し合いましょう。ボクも日々反省ですよ」と応じ,さらにMが「私は,Nさんの 会話があった。 イ Mは,同年2月7日,Jと面会し,Mが「Nさんの件は読みました」と発言したのに対し,Jが「手紙で話し合いましょう。ボクも日々反省ですよ」と応じ,さらにMが「私は,Nさんの,Jさんの提案いいと思うの」などと述べた。 ウ原告は,本件処分1について平成24年12月11日付け,本件処分2について同月27日付け,本件処分3について同月29日付け及び本件処分4について平成25年1月12日付けで,それぞれ,東京矯正管区長に対する審査の請求を行ったところ,いずれも,同年10月22日,これらを棄却する旨の裁決がなされた。 エまた,原告は,本件処分5について同年9月20日付けで東京矯正管区長に対する審査の請求を行ったところ,同年10月28日,これを棄却する旨の裁決がなされた。 2 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点は,本件各処分の適法性であり,具体的には,法128条の要件該当性である。 (1) 被告の主張本件各処分は,以下のとおり,法128条に基づく適法な処分である。したがって,本件各処分に係る刑務所長の判断に合理性はある。 ア Fとの信書の授受は,法128条に規定する「犯罪性のある者」に該当する刑事施設に収容されている受刑者同士の意思疎通を図る脱法的手段となっており,F関係者が「犯罪性のある者」又は「信書の発受により,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者」に該当すること(ア) Fには,死刑確定者,死刑判決を受けて上訴中の者及び刑事施設に収容されている被収容者が加入している。また,Fの代表は,強盗致 死等の罪により死刑判決が確定し,現在刑事施設に収容されているJであり,Fの規約及び会報「和解」には,いずれもJがFの「代表」として記載されている。 が加入している。また,Fの代表は,強盗致 死等の罪により死刑判決が確定し,現在刑事施設に収容されているJであり,Fの規約及び会報「和解」には,いずれもJがFの「代表」として記載されている。Fの代表であるJは死刑確定者であり,「犯罪性のある者」に該当する。 (イ) 前記前提事実(4)エのとおり,受刑者AからMに対する信書には,Jに依頼する伝言の内容やJの指導を受けてFの運営委員として積極的に参加する旨の意向が記載されていた。これに対し,Fの事務局員であるMは,前記前提事実(4)カのとおり,受刑者A宛の信書にJからの便せん1枚を同封し,その内容は,Jが,運営委員として会報「和解」等で使用する受刑者Aの標記名に関する意向を確認し,受刑者Aにプロジェクトリーダーを依頼するものであった。このように,Mは,Jと受刑者Aとの間で意思疎通を図っている。 また,Jの書信表及び面会表によれば,Mは,Fの活動及び運営に積極的に参加し,Fの中心的存在としてJと頻繁に発受や面会を行い,互いの意思疎通にとどまらず,Jと他の刑事施設の受刑者との意思疎通を図っている。例えば,Mは,Jと面会した際,前記前提事実(4)ウのとおり「Nさんの手紙とか入らないんだって」と話しており,岐阜刑務所に収容されていた受刑者であり「犯罪性のある者」と認められるNとの交流も図っている。 さらに,Mは,岐阜刑務所に収容されている受刑者宛にJに関する信書を発信したり,同刑務所に収容されている別の受刑者宛にJとの意思疎通を仲介する信書のほか,他の刑事施設に収容されている受刑者の動向を伝達する信書を発信したりしている。 (ウ) Eは,Fの活動に賛同したり,共感を抱いたりしている者であると認められるところ,上記(イ)のとおり,MがJと受刑者Aらとの伝言を仲介してい 向を伝達する信書を発信したりしている。 (ウ) Eは,Fの活動に賛同したり,共感を抱いたりしている者であると認められるところ,上記(イ)のとおり,MがJと受刑者Aらとの伝言を仲介している事実や,F関係者が頻繁にJと信書のやりとりや面会 をするなどして同人と受刑者との意思疎通を図っている事実からすれば,Eを介して,J及び他の刑事施設に収容されている受刑者と原告との間において意思疎通が図られる蓋然性も認められる。 (エ) また,Hについても,Mを含むF関係者と共にJと複数回面会を行い,同人と積極的に意思疎通を図っていたり,少なくとも千葉刑務所収容受刑者4名とも信書の発受を行っていたりするなど,積極的にJや刑事施設に収容されている受刑者との間で交流を深めようとしている事実が認められるところ,上記(ウ)と同様の事実に照らすと,Hを介して,J及び他の刑事施設に収容されている受刑者と原告との間において意思疎通が図られる蓋然性も認められる。 (オ) また,Fを介して行われる受刑者間の信書の発受による意思疎通自体,相手方ボランティアの住所も明かされず,偽名の使用も可能となり,素性の判然としない者との外部交通を実現させるものである以上,Fの意図するところか否かをおくとしても,本来,外部交通を禁止すべき者との外部交通を可能ならしめるとともに,通常の外部交通と比べて不正の発覚を極めて困難とする手段となるのであって,この点においても適正な外部交通を潜脱するものであるから,かかる制度を利用する者との外部交通が適正な者とはいえず,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある。 (カ) Oは,性犯罪による実刑前科3犯を有し,わいせつ目的誘拐及び強姦により懲役9年に処せられ,平成16年2月24日から平成23年11月 刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある。 (カ) Oは,性犯罪による実刑前科3犯を有し,わいせつ目的誘拐及び強姦により懲役9年に処せられ,平成16年2月24日から平成23年11月9日までの間,岐阜刑務所で受刑し,その間に合計14回の懲罰を科せられ,満期釈放された「犯罪性のある者」である。 また,前記前提事実(4)キのとおり,JとOは自らの個人名義文書は岐阜刑務所では受刑者が受信できないことを前提に文書の名義をどうするかを話し合っている。 なお,Jの面会表並びに書信表によれば,Pの理事及び相談役であることがうかがわれるT及びUは,いずれもMとともにJと積極的に面会をしたり,信書の発受を行ったりしており,F関係者であることが強く推認される。そして,Oの岐阜刑務所受刑中の書信表によれば,F事務局やUらがOと積極的に信書の発受を行っていることが認められる。 これらのことから,F関係者は,OやPとも密接な関係があると認められるから,原告とF関係者との信書の発受を認めることは,F関係者を介して,Oとのつながりも認めることになりかねない。 (キ) 上記前提事実(4)イのとおり,F関係者は,受刑者C及び受刑者DからF事務局に発信されたこれらの信書をJに転送していたことは明らかである。 (ク) なお,千葉刑務所は,重大犯罪を犯した長期受刑者を収容するいわゆるLA指標施設である。本来禁止されるべき「犯罪性のある者」との外部交通が,仲介者を通じて許可されたとの情報が,同刑務所の受刑者で伝播した場合,原告以外の多数の受刑者も同様の方法で本来禁止されるべき上記の外部交通を試みることが考えられ,その影響は長年にわたって継続し,施設全体に波及していくことから,適切な矯正処遇の実施及び所内の規律及び秩序の維持が非 の受刑者も同様の方法で本来禁止されるべき上記の外部交通を試みることが考えられ,その影響は長年にわたって継続し,施設全体に波及していくことから,適切な矯正処遇の実施及び所内の規律及び秩序の維持が非常に困難となるという特殊性がある。 (ケ) このように,Fの実体は,純粋に受刑者の更生支援を目的に行われているとは言い難く,通常,外部交通が認められないJをはじめとする刑事施設に収容されている受刑者同士が交流を深めているにすぎず,法128条の「犯罪性のある者」である受刑者同士の意思疎通を図る脱法的手段となっているというべきである。 イ本件処分6は,法128条ただし書に該当しないこと法128条ただし書は,同条本文に該当する場合であっても,「婚姻関 係の調整,訴訟の遂行,事業の維持その他の受刑者の身分上,法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合」は,信書の発受を禁止することはできない旨規定する。この趣旨は,たとえ犯罪性のある者等との外部交通であっても,人道上の要請や重要用務の処理を妨げるべきではないという考慮が優先されているものと解される。 本件信書6については,原告が「法128条但書で禁止できない訴訟の遂行,法律上の用務処理に限ってお便りします。」などと記載しているものの,その内容は,F事務局に対し,裁決書の内容,Fとの信書発受禁止処分に係る訴訟提起に向けての決意,Fの代表の変更に関する意見,会報『和解』の送付に関する要望,審査の申請の勧めを伝達している内容にすぎず,訴訟の遂行に関わるものとは到底認められない。さらに,本件信書6の発信申請の際に,訴訟の遂行に関する的確な疎明資料も提出されておらず,本件信書の内容を踏まえても,これを基礎づける具体的な事実関係は判然とせず,法律上又は業務上重大な利 れない。さらに,本件信書6の発信申請の際に,訴訟の遂行に関する的確な疎明資料も提出されておらず,本件信書の内容を踏まえても,これを基礎づける具体的な事実関係は判然とせず,法律上又は業務上重大な利害に係る用務処理のための発信であるとも認められない。 したがって,本件信書6の発受は,法128条ただし書に該当するとは認められない。 ウ F関係者との信書の発受により,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があり,その制限は必要かつ合理的な範囲内のものであること(ア) 千葉刑務所長は,前記前提事実(3)イのとおり,原告に対する矯正処遇の目標を定め,この処遇目標を達成するために,被害者の視点を取り入れた同教科改善に厳しく取り組んでいる。 原告は,無期懲役に処された長期受刑者であり,その受刑の根拠となった航空機の強取等の処罰に関する法律違反,殺人及び銃砲刀剣類所持等取締法違反事件の内容は,原告が,自身を除いて合計516名の乗員 ・乗客らが搭乗し,航行中の羽田空港発新千歳空港行きの大型旅客機の機内において,客室乗務員に洋包丁を突きつけるなどして操縦室に押し入り,同機の機長及び副操縦士に対し,同包丁を突きつけて同機長らを脅迫し,副操縦士を同室から退室させ,機長の右上胸部等を突き刺すなどの暴行を加え,その暴行によって同機内で同機長を死亡させ殺害するとともに,自ら副操縦士席に座って同機を操縦するなどして同機の運航を支配したという,我が国の犯罪史上類を見ない危険かつ悪質なハイジャック事件である。その各犯行態様や動機等からすれば,原告の暴力的かつ自己中心的性格は相当根深いものがあると認められ,原告の犯罪傾向は深刻かつ重大であって,その矯正処遇には相当の困難を伴うものであり,長期間にわたる矯正教育 行態様や動機等からすれば,原告の暴力的かつ自己中心的性格は相当根深いものがあると認められ,原告の犯罪傾向は深刻かつ重大であって,その矯正処遇には相当の困難を伴うものであり,長期間にわたる矯正教育を施す必要がある。F関係者との交流を増やすことは,「犯罪性のある者」である受刑者との交流を持つことやFの運営への参画に傾注することによって,矯正教育からの逃避を促すもので,矯正教育の実を挙げることが困難となる。 したがって,原告とF関係者との間の信書の発受を許せば,原告の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められるというべきである。 (イ) そして,前記アのとおり,F関係者との信書の授受が受刑者同士の交流を深めるための法128条の脱法的手段であることからすれば,原告とF関係者との間で信書の発受を禁止することも,上記(ア)の障害発生防止のために必要かつ合理的な範囲内にとどまるものといえる。 (ウ) 原告は,信教の自由は,憲法で保障された重要な権利であるから,宗教関係者について,法128条の該当性判断においては特に慎重さが求められるとして,本件各処分が違法である旨も主張する。 しかし,千葉刑務所長は,本件各処分を行うにあたり,F関係者が宗教関係者であることを前提に法128条の該当性を判断したのではなく, 上記の原告の主張は,前提が誤っており失当である。仮に,Fの活動に宗教的側面があったとしても,本件各処分による制限は,必要かつ合理的なものである。 (エ) なお,法128条と法129条は,異なる観点からの規制であって,適用場面を異にするから,法128条の措置の適法性の判断に先立ち,法129条の措置によることを検討しなければならないとする論理的必要性はない。 (2 と法129条は,異なる観点からの規制であって,適用場面を異にするから,法128条の措置の適法性の判断に先立ち,法129条の措置によることを検討しなければならないとする論理的必要性はない。 (2) 原告の主張Fとの信書の発受は,以下のとおり,法128条の要件を満たさない。したがって,本件各処分に係る刑務所長の判断に合理性はなく,本件各処分は取り消されるべきである。 ア Fとの信書の授受は,「犯罪性のある者」との信書の授受には当たらず,受刑者同士の意思疎通を図るものではない上,千葉刑務所の規律や秩序を害するとはいえず,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障が生じるおそれがあるともいえないから,F関係者は「犯罪性のある者」にも「信書の発受により,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者」にも該当しないこと(ア) Fは,被収容者の更生支援を主たる目的とする団体であり,犯罪等,反社会的な活動には一切関わっていない。 また,Fの代表者の一人は,死刑囚として東京拘置所に収容されているJであるが,このことから直ちにF全体としての犯罪性を帯びるものではない。 そして,Fの活動内容からして,Fとの信書の発受を禁止する処分が,原告の改善更生のために好ましくない社会関係を遮断するという意味を持たないことは明らかである。また,Fの性質やこれまでの信書の授受の状況からして,刑事施設内の規律及び秩序の維持上放置することので きない程度の障害が生じる相当の蓋然性も認められない。 よって,Fは,「犯罪性のある者」に該当しない。 また,Fの活動は,更生支援に向けられたものであり,キリスト教の思想に基づくという宗教的な意義もある。キリスト教関係の書籍の送付についても,宗教的な側面からの更生支援を志したものであり,特定の受刑者等との の活動は,更生支援に向けられたものであり,キリスト教の思想に基づくという宗教的な意義もある。キリスト教関係の書籍の送付についても,宗教的な側面からの更生支援を志したものであり,特定の受刑者等との関わりを促進するものではない。文通については,ルールが定められており,被収容者同士の意思疎通を仲介するようなことはない。本件各信書の内容も,年賀状やクリスマスに関する絵葉書,誕生日のお祝い等のほかは,Fとの発受信が不許可となったこと等に関する連絡であり,被収容者間の意思疎通を仲介するような意図は見いだせない。 会報も,被収容者の投稿は原則としてペンネームで行われており,投稿内容も特定の被収容者間での意思疎通となるようなものではない。 (イ) Mは,Fの事務局を務める女性である。MがJと頻繁に信書の授受や面会をしていた目的は,Fの運営等について話し合うためであり,Mが,Jとの信書の発受や面会において,Jと他の受刑者との意思疎通を図ったことはない。また,法務事務官作成の報告書によれば,Mが岐阜刑務所受刑者に対し,「意思疎通を仲介する内容」や「受刑者の動向を伝達する」内容の信書を発信したとのことであるが,これらは作成者の評価にすぎない。 前記前提事実(4)カのとおり,Mは,受刑者Aに対する信書に,Jからの便せんを同封したことがあったが,これについてもFの運営についての相談を行うものであった。乙●には,マスキング部分が多く,正確な文意は不明であるが,連絡内容がFの運営に関するものであり,個人的な連絡の仲介等でないことは明らかである。 さらに,前記前提事実(4)ウのMとJとのやりとりにおける「Nさん」とは,Fの会員であるNのことである。Nは,岐阜刑務所で受刑し ていたが,平成24年6月初旬に出所しており,この当時,Nは刑事施設被収容者 提事実(4)ウのMとJとのやりとりにおける「Nさん」とは,Fの会員であるNのことである。Nは,岐阜刑務所で受刑し ていたが,平成24年6月初旬に出所しており,この当時,Nは刑事施設被収容者ではなかったので,被告の主張はその前提を欠いているし,その内容も,Nが岐阜刑務所内の受刑者に対して手紙の送付を試みたが届かなかったことを伝えたにすぎず,これをもってMがJと他の受刑者との意思疎通を図ったとはいえない。 (ウ) Eは,Fのボランティアスタッフとして受刑者と文通を行っている者であり,前科はなく,犯罪的行為に関わったこともないから,「犯罪性のある者」に該当しないことは明らかである。 これに加え,これまでの原告との信書の授受の状況からして,「受刑者が信書を発受することにより刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生じるおそれがある者」にも該当しない。 (エ) Hは,キリスト教の神父であり,犯罪歴等も有していないから,「犯罪性のある者」には該当しない。 これに加え,これまでの原告との信書の授受の状況からして,「受刑者が信書を発受することにより刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生じるおそれがある者」にも該当しない。 さらに,原告がキリスト教徒であり,H神父との信書の授受は,原告の信仰との関係で重要な意義を有していた。そのため,H神父への信書の発信を禁止する本件処分7は,原告の信教の自由を直接的に制約するものであるところ,それだけの根拠がないことは明白であるから,この点からしても本件処分7の違法性は明らかである。 (オ) 被告は,Fのボランティアと被収容者との文通が「通常の外部交通と比べて不正の発覚を極めて困難とする手段となる」としており,その根拠とし この点からしても本件処分7の違法性は明らかである。 (オ) 被告は,Fのボランティアと被収容者との文通が「通常の外部交通と比べて不正の発覚を極めて困難とする手段となる」としており,その根拠として,ボランティアの住所が明かされず,偽名の使用が可能で あると指摘する。 しかし,こうした点は,通常の信書の発受においても生じ得る事態と考えられる(少なくとも,被告の提出する「信書検査処理票」には,相手方の住所を記載する欄はなく,通常の信書の発受の場合に偽名の使用等が困難になる事情は立証されていない。)のであって,Fのボランティアと被収容者との間に特有の事情とはいえず,被告の主張は失当である。 (カ) F事務局から受刑者B宛の信書に同封されていたパンフレットの名義人であるOには実刑前科があるが,前科前歴があっても,十分に更生しており,再犯のおそれが認められないような場合には,法128条にいう「犯罪性のある者」には該当しないというべきである。 この点,Oは,刑事施設収容中にキリスト教の信仰を深め,平成23年12月30日に岐阜刑務所を出所後,キリスト教の教えに従って受刑者の更生支援の活動を行うことを決意し,平成24年4月8日,任意団体としてPを立ち上げた。その後,OはP代表者として精力的に活動し,受刑者の更生支援等の活動を行うとともに,正式に洗礼を受けるなどしてキリスト教の信仰を深め,種々のボランティア活動なども行うなどしている。このように,本件各処分当時,Oは十分に更生しており,再犯のおそれがないことは明らかであるから,「犯罪性のある者」には該当しない。 また,被告が主張するOとJとの面談時のやりとりは,公的機関と連携した更生支援活動についての報告を目的とするものであると考えられる。 さらに,そもそも本件で問題となっている 」には該当しない。 また,被告が主張するOとJとの面談時のやりとりは,公的機関と連携した更生支援活動についての報告を目的とするものであると考えられる。 さらに,そもそも本件で問題となっているのは,原告とF関係者の信書の発受であって,Oとの信書の発受ではない。被告の主張する論理を前提とすれば,Oと密接な関係を有する人物については,その人物の属 性にかかわらず,常に原告との信書の発受が認められないことになるが,その結論の不当性は明らかである。 (キ) 被告が主張するJが受信した受刑者C及び受刑者Dからの各信書は,Jの書信表の記載から明らかなとおり,東京拘置所において,当該信書が受刑者からのものであることは把握されており,それを前提に信書の授受が許されている。これらの信書の発受がFを通じて行われていたのだとしても,Fにおいて,発信者の身分を秘匿して信書の仲介を試みたのではなく,受刑者からの信書であると明らかにした上で信書を転送していた。よって,FやJの態度に,法128条を潜脱しようという意図はない。 また,これらの信書の内容も,『カトリック生活』等の書籍送付のお礼や,Fへの入会希望であり,東京拘置所において,これらの信書が「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じさせるおそれ」(法136条が準用する法129条1項3号)がないと判断したものと推測される。 さらに,これらの信書を受信した平成24年当時,Jは,未決の状態であり,Jにかかる信書の発受に法128条の規制は及んでいなかった。 そうすると,法128条の規定が適用されない以上,その潜脱というのも想定できないのであって,被告の主張はその前提を欠く。 (ク) 信書の発受の制限に関する適法性の判断が,刑務所毎に区々となることは適切ではな 8条の規定が適用されない以上,その潜脱というのも想定できないのであって,被告の主張はその前提を欠く。 (ク) 信書の発受の制限に関する適法性の判断が,刑務所毎に区々となることは適切ではない。 (ケ) 被告の指摘するFメンバー間のやりとりでは,Fを通して被収容者間の意思疎通が図られているというには足りない。 かえって,Fの更生支援活動の結果,更生を果たした元被収容者は多く存在すると推測され,Fの活動は,被収容者間の意思疎通などではなく,被収容者の更生支援に向けられたものであるといえる。 イ本件処分6は法128条ただし書に該当すること本件信書6は,原告が,Fに対し,信書の発受禁止処分に関する審査の申請を行うことを求める内容である。 仮に,Fにより法157条に基づく審査の申請が行われ,これが認められれば,原告に対する処分が取り消されることになる。したがって,Fが信書の発受信禁止処分に関する審査の申請を行うか否かは,原告の重大な法律上の利害に関する問題である。この点からして,本件信書6は原告の法律上の重大な利害に関する信書であることは明らかである。 また,仮に,Fが法157条に基づく審査の申請について申立適格を有しなかったとしても,Fにおいて,日弁連や各弁護士会への人権救済の申立てを行うことや,国家賠償請求を行うことは可能と解される。そのため,原告がFに審査の申請を行うよう求めることで,別の手段により原告に対する発受信禁止処分が取り消されることがあり得るといえる。したがって,Fが審査の申請の申立適格を有していなかったとしても,そのことによって,本件信書6が原告の法律上重大な利害に関する信書であることは否定されない。その内容の重要性にかんがみれば,本件信書6の発信は法128条ただし書の場合に該当 していなかったとしても,そのことによって,本件信書6が原告の法律上重大な利害に関する信書であることは否定されない。その内容の重要性にかんがみれば,本件信書6の発信は法128条ただし書の場合に該当する。 ウ F関係者との信書の発受により,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとはいえず,その制限は必要かつ合理的な範囲を超えたものであること(ア) 原告の前科に関する被告の指摘は,事案の重大性にのみ集中しているが,原告が犯行時に心神耗弱だったと認定されているから,事案の重大性のみを指摘することは正当ではない。 原告に対する適切な矯正教育が必要なのは被告が主張するとおりであるが,だからこそ,Fによる支援が原告には必要である。Fの活動は,前記ア(ア)のとおり,被収容者の更生支援を真摯に志向するものであ って,原告にとって必要性が高い。 (イ) 原告とF関係者との間で従前発受されていた信書の内容等からして,Fの活動に宗教的意義があったことは,千葉刑務所長において,明らかであったと思われるから,原告とF関係者の間の信書の発受を禁止するに当たり,Fの活動の宗教的意義にも配慮すべきであった。しかるに,千葉刑務所長は,そうした配慮を欠いたまま本件各処分を行った。 また,他の宗教的行事への参加が認められたからといって,本件各処分による原告の信教の自由への制約の有無に影響はない。 そうすると,本件各処分による原告の信教の自由に対する制約は,必要かつ合理的な範囲を超えている。 (ウ) 仮に,原告とF関係者の間の信書の発受を認めることにより被告が主張するような障害が生じうるとしても,その場合には法129条の措置によって防ぐことが可能であって,具体的な信書の内容から被収容者間の交 仮に,原告とF関係者の間の信書の発受を認めることにより被告が主張するような障害が生じうるとしても,その場合には法129条の措置によって防ぐことが可能であって,具体的な信書の内容から被収容者間の交流に結びつかないような場合にまで信書の発受を禁止する必要はない。年賀状(本件信書1)やクリスマスの連絡(本件信書2)まで禁止するのは,目的との関係で行き過ぎた手段である。よって,本件各処分は必要かつ合理的な手段とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 法128条の解釈・適用に関する基本的な考え方法126条は,個々の規定により禁止される場合を除き,受刑者が他の者との間で信書を発受することを許しているが,法128条は,この例外の1つとして,犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより,刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者との信書の発受を禁止することができる旨規定している。 ここで,表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的にかんがみると,受刑者のその親族でない者との信書の発受は,受刑者の性向,行状,刑務 所内の管理,保安の状況,当該信書の内容その他の具体的状況の下で,これを許すことにより,刑務所内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許されるものというべきであり,その場合においても,その制限の程度は,上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであることを要する。 もっとも,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生じる相当の蓋然性が存するかどうか,及びこれを防止するためにどのような内容 理的な範囲にとどまるものであることを要する。 もっとも,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生じる相当の蓋然性が存するかどうか,及びこれを防止するためにどのような内容,程度の制限措置が必要と認められるかについては,刑事施設内の諸事情に通暁し,直接その衝にあたる刑事施設の長による個々の場合の具体的状況の下における裁量的判断にまつべき点が少なくないから,障害発生の相当の蓋然性があるとした刑事施設の長の認定に合理的根拠があり,その防止のために当該制限措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り,刑事施設の長の当該措置は適法として是認すべきものと解される(最高裁判所昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁判所平成18年3月23日第一小法廷判決・集民219号947頁参照)。 法128条の解釈・適用は,この基本的な考え方を踏まえて行われるべきである。 2 判断枠組み千葉刑務所長は,本件各信書の発受は,上記の法128条が規定する者との信書の発受に該当すると判断して,同条に基づき本件各処分をなした(前記前提事実(5))。 前記の基本的な考え方を踏まえると,同条にいう「犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより,刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者」とは,犯罪を犯す傾向を有している者など当該受刑者がその者と信書の発受という方法で交流す ること自体により(すなわち,その信書の内容如何にかかわらず),刑事施設の規律秩序を害し,又は矯正処遇の適切な実施に放置することのできない程度の支障を生ずる相当の蓋然性がある者というと解するのが相当である。 したがって,千葉刑務所長の上記判断が適法か否かは,原告との関係でF関係 ,又は矯正処遇の適切な実施に放置することのできない程度の支障を生ずる相当の蓋然性がある者というと解するのが相当である。 したがって,千葉刑務所長の上記判断が適法か否かは,原告との関係でF関係者が上記のような者に該当するとした判断が合理的な根拠に基づくか否か,そして,F関係者との信書の発受を禁止する必要があるとした判断に合理性があるか否かという観点から判断すべきことになる。 3 本件各処分の適法性の有無(1) 本件各処分理由は,前記前提事実(5)のとおりであり,その主要な争点は,Fの代表者Jは,本件処分1ないし4当時は死刑判決を受け上訴中の者,本件処分5ないし7当時は死刑確定者であり,またFの会員には刑事施設の被収容者(被収容者会員)も含まれているところ,F関係者(事務局,E,H)との信書の発受を認めることは,Jや被収容者会員との交流を認めることになり,原告の矯正処遇に支障を生じるおそれがあるかという点にあるので,その認定に合理的根拠があるか否か,そして,その支障の発生防止のために本件各処分が必要であるとした判断に合理性があるか否かを中心に検討する。 (2) 上記の点を判断する前提として,原告の当時の矯正処遇の状況をみると,原告に対しては,平成17年9月14日以降,千葉刑務所において,前記前提事実(3)イのとおりの処遇目標が掲げられ,矯正教育が施されてきた。原告は,平成18年6月22日に正当な理由なく工場での作業を拒否したことを理由として閉居7日,同年7月6日に上記の懲罰終了後,共同室での生活ができないとして工場での作業を拒否したことを理由として閉居7日及び報奨金500円削減の各懲罰を科された。その後,平成20年8月9日に定められた時間内に喫食すべき甘味品を隠匿し,喫食時間外である就寝時間中に喫食したことを理由として閉居7 とを理由として閉居7日及び報奨金500円削減の各懲罰を科された。その後,平成20年8月9日に定められた時間内に喫食すべき甘味品を隠匿し,喫食時間外である就寝時間中に喫食したことを理由として閉居7日,平成23年8月29日に工場就 業中,本人も転業できると思ったとして,担当職員に対し,転業がまだであれば就業を拒否する旨述べ,同職員から説諭されるも納得せず,我慢できなかったとして非常ベルを作動させ,施設等の機能を妨害したことを理由として閉居20日の各懲罰を科されている。 (3) 前記前提事実,乙●及び弁論の全趣旨によれば,①Fの代表者Jは,死刑判決を受け,平成25年3月16日に同判決が確定した者であること,②Jは,Fの運営方針について同事務局と意見交換をし,会報「和解」に投稿するなどFの運営に関わっていたこと,③Fの会員には,刑事施設に収容されている被収容者の会員約300人以上が含まれていること,④F事務局は,岐阜刑務所収容中の受刑者D及び熊本刑務所収容中の受刑者Cから受信した各信書をJに転送したことがあったこと,⑤千葉刑務所収容中の受刑者AからMへ宛てた信書の中にJへの言付けとも読める文面が含まれていたこと(指導により発信の申請は取り下げられた。),⑥Mから受刑者Aに対する信書の中にJのM宛の手紙が同封されていたこと(受信は禁止された。),⑦Mは,Jと面会することも多く,Fの運営にも深く関与していること,⑧MはJとの面会において,受刑歴があるNについての話をしたこと,⑨Fから受刑者B宛の信書に,Pのパンフレットが同封されていたが,同パンフレットの名義人であるOは,強姦罪など実刑三犯を有する者であり,Jとの面会や信書の発受を行っていたこと,⑩Pの理事であるTと相談役であるUは,Jと面会等をしていたこと(Mと共に面会することもあっ フレットの名義人であるOは,強姦罪など実刑三犯を有する者であり,Jとの面会や信書の発受を行っていたこと,⑩Pの理事であるTと相談役であるUは,Jと面会等をしていたこと(Mと共に面会することもあった)などが認められる。なお,Mが受刑者Dに対し,Jからの伝言を記載した信書を発信した旨が記載された旨の報告書もある(その信書の具体的内容は明らでない。)。 他方で,㋐Fの主な活動は,発足当初の目的である死刑制度への反対の他,キリスト教の教え等を基に,被収容者の改善更生や社会復帰を支援する点にあること(なお,これらの活動のうち,何を主眼に置くかについて内部で考え方の違いがあることが窺われる。),㋑Fの会員には,被収容者以外の一 般会員約250人以上がいるほか,事務局や被収容者会員との文通を行うボランティアスタッフが約80人おり,原告と直接の信書のやりとりをしたE、Hを含め,それらの者自身に犯罪性があるとは認められないこと,㋒Fは,ボランティアスタッフによる文通,面会及び会報「和解」の発行を通じて,被収容者の改善更生や社会復帰を支援する活動を行っていること,㋓被収容者とFのボランティアスタッフとの文通は,更生に反することや個人情報に関することを書いてはいけないことなどのルールを設定して行われていること,○オ原告は,Fのボランティアスタッフとの文通を平成22年7月以降,多数回行ってきたが,本件各処分に至るまで,Jや他の被収容者会員との交流をうかがわせる事態は生じていなかったこと,○カ本件各信書は,いずれもF事務局員,E及びHを相手方とする手紙であり,内容に照らしても,実質的にJや他の被収容者会員とやり取りするものと解し得るものではなかったこと,○キ(上記④について)F事務局によってJに転送された受刑者C及び同Dの信書は,J宛に発信さ あり,内容に照らしても,実質的にJや他の被収容者会員とやり取りするものと解し得るものではなかったこと,○キ(上記④について)F事務局によってJに転送された受刑者C及び同Dの信書は,J宛に発信された書籍ないし会報のお礼とFへの入会希望であり,また,当時のJは未決勾留中であり,法128条の規定の適用はなかったこと,そして,東京拘置所も発信者が受刑者B及び同Cであり,Fから転送されたものであることやその内容を把握した上で受信を許可していること,○クFの会報「和解」には,被収容者である会員から多くの投稿がされているが,ペンネームで掲載され,他の被収容者に対する個人的な私信は掲載されておらず,その内容も基本的には被収容者自身の反省や更生に向けた決意を表明するものが多いこと,○ケFとPとは目的を共通にするところはあるが,名実共に別団体であること,○コOは,平成23年12月30日に岐阜刑務所を出所後,平成24年4月8日,P(平成26年5月23日,特定非営利活動法人として法人格を取得した。)を設立して更生支援活動を行うとともに,キリスト教の洗礼を受け,各種ボランティア活動を行っている者であり,刑務所の実情に対し批判的な見解を有しているものの,本件各処分時点 で犯罪を犯す傾向を有している者とも受刑者の矯正処遇の実施に放置することができない程度の支障をもたらす者ともいえないこと,○コ(⑧について)JとMがNの話をしていたのは,FがNの出所後の更生支援に関わっていたためであり,その話の内容も,Nが岐阜刑務所内の受刑者に手紙を出したが届かなかったことを伝えたもので,JとNの意思疎通を図るものではなかった(本件処分1後のやり取り〔第2,1(6)ア,イ〕についても同様であった)ことなども認められる。 (4) 上記各事実を踏まえれば,Fは,死 ことを伝えたもので,JとNの意思疎通を図るものではなかった(本件処分1後のやり取り〔第2,1(6)ア,イ〕についても同様であった)ことなども認められる。 (4) 上記各事実を踏まえれば,Fは,死刑確定者のJが代表者であるが,㋐~㋔○クのとおり,Fが実際に行っている活動は,犯罪性を有するものでも,被収容者の矯正を阻害するものでもなく,被収容者との文通も犯罪性のない事務局員やボランティアスタッフにより,その更生支援活動として行われているもので,Jが個々の文通に関与するものでもない。また,これまでの原告とFとの信書のやりとりにおいて,原告とJや他の被収容者との間の意思疎通を図ろうとした事実もうかがわれない。確かに,④,⑥の事例におけるF事務局やMの行動は不用意なものであるが(もっとも,④についてはの事情もある。),Fの事務局員やボランティアスタッフと被収容者会員との間で行われてきた多数の信書のやりとりの中で見れば,ごく一部で生じたものにすぎない。また,MはJと面会する機会は多いものの(⑦),それがJと他の受刑者との意思疎通を図るためのものであったことを認めるに足りる証拠もない。Nのことが話題に出た(⑧)理由は㋙のとおりであり,その会話の内容に照らしてもJとNとの意思疎通を図ったものとは認められない。 また,FとPとの間には目的を共通にする点もあることから,それぞれの思わくの中で,互いに協力を求めるなど一定のつながりがあることは窺われる(⑨⑩)が,それ以上の密接な関係にあることを示す証拠はないし,そもそもOが,本件各処分当時,犯罪を犯す傾向を有している者等ともいえない。 (5) 以上によれば,Fが,本件各処分当時,外部交通が制限されているJ や被収容者同士の交流のための脱法的な手段であったと認めることはできず,したがって,原告と している者等ともいえない。 (5) 以上によれば,Fが,本件各処分当時,外部交通が制限されているJ や被収容者同士の交流のための脱法的な手段であったと認めることはできず,したがって,原告とFとの信書の発受を認めることが,Jや被収容者会員(更にはO)との交流を認めることになり,原告の矯正処遇に支障を生じる相当の蓋然性があるともいえない。上記のとおり,一部の事務局員の行為に不用意な点があったことは確かであり,千葉刑務所長は,この点も踏まえて,FをJや被収容者同士の交流のための脱法的な手段であると認定したものであるが,前記で認定したFの活動内容や文通活動の実績などを併せて考えれば,このような認定をするに足りる合理的根拠があるとはいえない。 そして,Fの文通においてJや被収容者会員間の意思疎通が試みられる危険性は否定できないとしても,信書の内容がJや他の受刑者に伝わることを前提としたものや,Jや他の受刑者からの意思伝達を内容とするものについては,実質的にはJや受刑者との信書の発受と認め,発受信者の名義如何を問わず,法128条によって制限することができるほか,原告の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある内容の信書については法129条によって個別に制限できるのであり(⑤⑥の信書は,上記いずれかの理由で制限することができるし,乙●で言及されている信書についても,その具体的内容次第では同様である。),上記のような試みがされる一般的な危険性があるからといって,本件各信書のように,そのような試みとはいえない信書について,その発受の相手方がF関係者であることを理由に,信書の発受を禁じる必要があるとした判断に合理性があるとはいえない。このことは,本件各処分によって,事務局員による寄せ書きの誕生日カード,Eからの年賀状,Hへのクリスマス 関係者であることを理由に,信書の発受を禁じる必要があるとした判断に合理性があるとはいえない。このことは,本件各処分によって,事務局員による寄せ書きの誕生日カード,Eからの年賀状,Hへのクリスマスカードも含めて発受が禁止されているという結果から見ても明らかだと思われる。 (6) 上記の各判断は,千葉刑務所がLA指標施設であるからといって変わるものではない。被告は,「犯罪性のある者」との外部交通が仲介者を通じて許されたという情報が受刑者間に伝播する危惧があると主張するが,本件 各信書について,文通の相手方であるEやHらが「犯罪性のある者」とはいえないこと,また,本件各信書が原告とJや他の被収容者との外部交通であるともいえないことは前記のとおりであり,上記主張は,その前提を欠く。 (7) 被告は,原告とF関係者との信書の発受を許し,その関係者との交流を増やすことは,Fの運営への参画に傾注することなどにより,原告の改善,更生の点で放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとも主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。原告は,平成22年7月以降,Eとの間で文通を続けてきたものの,上記のような障害が生ずる傾向が見られたことを窺わせる証拠はないし,原告の矯正処遇の状況(前記3(2))も,Eとの文通が原告の矯正に悪影響を及ぼしていることを窺わせるものではない。 (8) Fを介して行われる受刑者間の信書の発受による意思疎通自体,相手方ボランティアの住所も明かされず,偽名の使用も可能となり,素性の判然としない者との外部交通を実現させるものである以上,適正な外部交通を潜脱するものであるから,かかる制度を利用する者との外部交通が適正な者とはいえず,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとも主張する。 確か るものである以上,適正な外部交通を潜脱するものであるから,かかる制度を利用する者との外部交通が適正な者とはいえず,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとも主張する。 確かに,Fの文通制度は,F事務局を介して行われることから,ボランティアスタッフの住所は明らかにされることはない。しかし,このような文通方式は,ボランティアスタッフのプライバシー保護などの趣旨からすれば,不合理なものではなく,千葉刑務所も,必要に応じて,Fに照会することも可能である。また,偽名の使用の可能性を排除できないことは,信書の授受において一般に生じ得ることであり,Fの文通制度特有の問題とはいえない。 したがって,Fの文通制度について,脱法的な手段と考えることは正当ではなく,ボランティアスタッフが,Fの文通制度を利用する者であるからといって,不正な意図を有する者であることを推認できるわけではなく,受刑者 の矯正処遇に障害が生ずる相当の蓋然性があるものともいえない。 (9) 以上によれば,本件各処分は,千葉刑務所長に裁量権があることを考慮しても,法128条の要件を充たすとした千葉刑務所長の判断に合理的根拠や合理性があるものとはいえず,違法であり,取り消されるべきである。 第4 結論よって,原告の請求は,いずれも理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官廣谷章雄裁判官瀬戸啓子裁判官内山香奈)

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