- 1 -主文 原告が被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,29万0003円及びこれに対する平成17年12月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,平成18年1月から本判決確定に至るまで毎月25日限り48万8900円及びこれらに対する毎月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 本件訴えのうち,本判決確定後の賃金の支払を求める部分を却下する。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決は,第2項及び第3項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告が原告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,29万0003円及びこれに対する平成17年12月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,平成18年1月から毎月25日限り48万8900円及びこれらに対する毎月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が被告に対し,商号変更前の被承継人センチュリー証券株式会社(以下「旧センチュリー証券」という。)のした懲戒解雇は無効であると主張して,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及びこれを前提とした未払賃金の支払を求めた事案である。 原告は,本件解雇は,就業規則の定める懲戒解雇事由に該当せず懲戒解雇の手続的要件も充たさないから無効であると主張し,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,平成17年12月分賃- 2 -金残金29万0003円及びこれに対する同月26日から支払済みまで商法所定の年6分の割合による遅延損害金並びに平成18年1月から毎月25日限り の確認を求めるとともに,平成17年12月分賃- 2 -金残金29万0003円及びこれに対する同月26日から支払済みまで商法所定の年6分の割合による遅延損害金並びに平成18年1月から毎月25日限り賃金48万8900円及びこれらに対する毎月26日から支払済みまで商法所定の年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 争いのない事実(1) 旧センチュリー証券は,昭和23年4月に設立された有価証券の自己売買,顧客からの売買注文の受託業務,有価証券の引受,売出業務,有価証券の募集,取扱業務など証券業務全般及びその他の附帯業務を行う証券会社であり,全国に6支店(行田,大阪,芦屋,津山,新潟,長岡),1営業所(α)を有している。 なお,旧センチュリー証券は,もともと大和証券系列の証券会社であったが,平成16年1月,商品先物取引を業とする日本ユニコムが,株式の公開買付により株式の約95パーセントを取得し,同年6月の株主総会で日本ユニコム出身の取締役が全面的に経営を行うようになったものである。 その後,平成18年6月5日,旧センチュリー証券は,同社を分割会社とし,日産證券株式会社を承継会社とする旧商法374条ノ16に定める吸収分割を行い,これにより旧センチュリー証券の個人営業業務,法人営業業務等は日産證券株式会社に承継し統合され,日産證券株式会社は日産センチュリー証券株式会社と商号変更された。また,旧センチュリー証券は,サンライズキャピタル証券株式会社に商号変更し,投資銀行業務,トレーディング業務等に特化して証券業務を行う会社となった。 以上の経緯により,平成18年12月15日,日産センチュリー証券株式会社は,本件における被告の地位を承継し,サンライズキャピタル証券株式会社は本件訴訟から脱退した(以下,本件においては,商号変更及び承継前の旧 より,平成18年12月15日,日産センチュリー証券株式会社は,本件における被告の地位を承継し,サンライズキャピタル証券株式会社は本件訴訟から脱退した(以下,本件においては,商号変更及び承継前の旧センチュリー証券についても,「被告」ということがある。)。 (2) 原告は,昭和▲年生まれで,昭和60年に大学卒業後,同年4月に被告に- 3 -入社し,以後専ら本店で営業社員として稼働してきた。 (3) 被告には,被告に雇用された労働者で組織されているセンチュリー証券労働組合(以下「組合」という。)があり,同組合は,証券会社の労働組合の協議会である全国証券労働組合協議会に加盟している。 (4) 平成16年8月27日,被告は,原告に対し,それまでの本店営業部第1課から本店営業部第3課への配置換えをした。 (5) 平成16年11月29日,被告は,原告に対し,新潟県三条市に新設する新潟県央支店への配置転換(以下「本件配転」という。)を内示し,同年12月1日に発令した。 (6) 平成16年12月15日,組合は,被告に対し,原告の新潟県央支店への配置転換等について団体交渉の申入れをしたが,被告は,同月16日付けで,「人事異動は会社と本人との問題であり,会社の専管事項である」ことを理由として団体交渉を拒否した。 (7) 組合及び原告は,平成17年1月17日,本件配転の撤回を求めて,東京都労働委員会(以下「都労委」という。)に不当労働行為救済の申立てをした(平成17年(不)第2号事件)。 (8) 上記事件の平成17年11月2日の審問期日において,原告は,顧客情報が記載された原告の営業日誌の平成16年11月29日の分を書証として提出しようとしてその写し(以下「本件写し」という。)を都労委及び被告代理人に交付したが,直ちに提出を撤回し,いったん交付した本件写しを回収 れた原告の営業日誌の平成16年11月29日の分を書証として提出しようとしてその写し(以下「本件写し」という。)を都労委及び被告代理人に交付したが,直ちに提出を撤回し,いったん交付した本件写しを回収した。 (9) 被告は,平成17年12月5日,原告に対し,原告の上記(8)記載の行為及びこれに先立ち上司の許可なく被告所有のコピー機で営業日誌の写しを取り,これを自宅に持ち帰り,新潟県央支店への異動後も引き続き保管を続けたことが就業規則87条1号(個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)16条1項,23条1項,金融分野における個人情報保護- 4 -に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項,就業規則36条,41条2項,47条,従業員服務規程3条,6条,23条1項16号),3号及び4号に違反するとして,退職願の提出期限を平成17年12月8日正午までとして諭旨退職処分(就業規則85条8号により「退職願を提出させて解雇する。但し,提出しないときは懲戒解雇する。」とされているもの)とする旨を通知した。 (10)被告は,原告が平成17年12月8日までに退職願を提出しなかったため,同月12日,原告に対し,懲戒解雇とする旨を通知した(以下,これを「本件解雇」という。)。 (11)原告の賃金は,毎月48万8900円であり,支払日は毎月25日であったが,平成17年12月分について被告は,同月12日までの日割分19万8897円を支給した。 被告の主張(1) 本件写しには,本店営業部の個人顧客14名分の顧客情報として,氏名,居住地(一部),取引内容(具体的な商品名,数量,一株の金額を含む売買内容,取引時刻,顧客との連絡方法)や原告から顧客への投資勧誘の内容等が記 ,本店営業部の個人顧客14名分の顧客情報として,氏名,居住地(一部),取引内容(具体的な商品名,数量,一株の金額を含む売買内容,取引時刻,顧客との連絡方法)や原告から顧客への投資勧誘の内容等が記載されていた。そして,補佐人及び傍聴人として期日に参加していた被告の従業員も本件写しを見ることになった。被告は,本件写しを実際に見て,顧客情報の詳細が掲載されている重大な問題点に気付いた。そこで,被告代理人は,重大な顧客情報なので直ぐにやめるよう警告した。午後2時40分ころ,被告のa証人の尋問が終了し,約10分間の休憩が設けられた際,被告は,原告代理人から本件写しを,原告が所持している1枚を含む9枚回収した。 (2) 被告は,同期日終了後,直ちに午後3時50分から,原告から,情報漏えいに関する事情聴取を行った。原告は,「上尾担当時代の営業日誌の写しは- 5 -新潟県央支店の自分の部屋にあり,11月29日分について,自分の部屋のファックスで弁護士宛に送った。やってはいけないことをしたと思う。」と述べた。同月11月4日,新潟県央支店において,平成16年11月29日以外の営業日誌の写し(合計62日分)がすべて回収された。 また,同日,原告の赴任先の新潟県央支店に電話を架けて事情聴取した結果,原告は,「上尾担当時代は,ほぼ毎日日誌をコピーして家に持ち帰っていた。誰の許可も取っていない。平成17年10月14日から同月24日の間に弁護士の事務所にファックスで送った。」と述べた。 同年11月7日,被告は,再び原告から事情を聞き,ファックスの日時が同年10月27日午後8時であること,送信先が原告代理人の事務所であることを確認した。このことは,原告代理人にも電話して確認した。 同年11月25日,被告は,さらに原告から事実の確認を行ったところ,原告は,代理人弁護 後8時であること,送信先が原告代理人の事務所であることを確認した。このことは,原告代理人にも電話して確認した。 同年11月25日,被告は,さらに原告から事実の確認を行ったところ,原告は,代理人弁護士から,証人として証言したb本店長の証言(以下,同人を「b本店長」といい,都労委における同人の証言を「b証言」という。)を弾劾する証拠はないかとの問いかけがあり,自らの意思で本件写しを提出したこと,被告の守秘義務及び個人情報保護に関するルールについて認識があったことを認めた。 (3) 原告は,本店営業部第3課に配属されていた平成16年8月から11月までの3か月間にわたり,上司の許可なく,営業日誌62日分につき被告所有のコピー機で写しを取った。そして,原告は,これを無断で自宅に持ち帰り,保管を続けた。また,同年12月13日に新潟に異動になった際,新潟に持参して行った。そして,約1年後の平成17年11月4日に回収されるまで保管を続けた。 原告は,代理人弁護士から都労委におけるb証言を弾劾する証拠はないのかとの問いかけに対し,自らの意思で,新潟の自宅から本件写しを原告代理人の事務所にファックスで送信した。そして,本件写しは都労委に提出され,- 6 -都労委によって受理され,平成17年11月2日の収受印が押され,同日の審問期日,審問の場において現実に顕出された。そして,その審問の場で,被告代理人が本件写しを受領し,補佐人及び傍聴人として期日に参加していた被告の担当者も本件写しを見たのである。審問期日当日本件写しが顕出されたことは明らかである。 その後,被告は,本件写しに記載された14名の顧客に対してできうる限り訪問して事情を説明して謝罪し詫び状を渡した。その際,顧客の中には情報の漏えいを遺憾に思い,被告との取引を中止する者もあった。また,被告は, は,本件写しに記載された14名の顧客に対してできうる限り訪問して事情を説明して謝罪し詫び状を渡した。その際,顧客の中には情報の漏えいを遺憾に思い,被告との取引を中止する者もあった。また,被告は,本件について,監督官庁である金融庁に対して報告する手続を取らざるを得なかった。これらにより,被告は信用上の損害等有形無形の損害を被った。 (4) 就業規則87条1号(個人情報保護法16条1項,23条1項,金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項,就業規則36条,41条2項,47条,従業員服務規程3条,6条,23条1項16号),87条3号に該当する行為についてア営業日誌の写しを取って保管を続けた行為まず,原告が営業日誌の写しを取って保管を続けた行為は,就業規則87条(従業員が次の各号の一に該当するときは,諭旨退職又は行政官庁の認定を受けた懲戒解雇に処する。)1号(証券取引法その他法令諸規則に従わないとき)及び3号(会社又は取引先の機密を社外に洩らし,又は洩らそうとしたとき)に該当する。 (ア) 営業日誌の記載内容が「機密」及び「秘密」等に該当することまず,営業日誌に記載された内容は,就業規則87条3号,36条(従業員は会社及び取引先の機密を他に洩らしてはならない。)の定める「機密」及び従業員服務規程6条(従業員は,職務上知り得た秘密を- 7 -洩らしてはならない。),23条1項16号(職務上知り得た秘密を漏洩すること。)の定める「秘密」に該当する。就業規則87条3号の趣旨は,顧客の情報の機密性の保持,被告の財産,情報に対する被告の管理体制による保護にある。とするならば,持ち帰ったのが写しであっても,本件写しには顧客の情報が紛れもなく記 る。就業規則87条3号の趣旨は,顧客の情報の機密性の保持,被告の財産,情報に対する被告の管理体制による保護にある。とするならば,持ち帰ったのが写しであっても,本件写しには顧客の情報が紛れもなく記載されており,その機密性の保持,被告の財産,情報に対する被告の管理体制による保護は害されるのであるから,原本の場合と同様に評価しなければならず,本条の「機密」に該当する。 そして,本件写しを含む営業日誌に記載されている顧客情報についてみると,社外に持ち出し流出することは全く予定されておらず,その管理については従業員に研修を行うなどして徹底して周知させており,顧客情報は厳密に管理されている。そして,公然と知られている情報ではない。また,その情報の内容は,被告においても秘密情報であるが,第一次的には顧客自身の情報であり,顧客から被告に対して秘密扱いを強く求められており,顧客と被告との間で秘密を厳守するという契約と絶対的な相互の信頼の下に預けられている情報である。したがって,「機密」及び「秘密」に該当することは明らかである。 さらに,営業日誌に記載されている情報は,個人情報保護法施行(平成17年4月)後であれば,同法上の「個人情報」,「個人データ」にも該当する。個人情報保護法16条は,個人情報取扱事業者に対し,利用目的の達成に必要な範囲を超えて「個人情報」を取り扱うことを原則として禁止している。ここにいう「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう(同法2条1項)。本件写しに記載された事- 8 -項は,上記(1)のとおりであり,これらはまさ 容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう(同法2条1項)。本件写しに記載された事- 8 -項は,上記(1)のとおりであり,これらはまさに生存する個人に関する情報である。そして,記載されている氏名,居住地,そして担当者である原告の名前により特定の個人を容易に識別することができるから,営業日誌には「個人情報」が記載されていることが明らかである。また,原告によりコピーされ持ち出されていた営業日誌合計62日分全体も,ほぼ同様のレベルの顧客の個人情報であり,そこに記載されている顧客の個人情報は数百件に上る量である。 また,個人情報保護法23条1項は,個人情報取扱事業者に対し,あらかじめ本人の同意を得ないで,個人データを第三者に提供することを原則として禁止している。ここにいう「個人データ」とは,個人情報データベース等を構成する個人情報をいい(同法2条4項),個人情報データベース等とは,個人情報を含む情報の集合物であって,特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるものをいう(同法同条2項)。被告において,営業社員は,実際の顧客とのやり取りや外出などの行動を,営業日誌に記録することが求められている。この営業日誌は,特定の取引の受発注と営業社員の行動とを照合するための日ごとの時系列的行動表としての意味を有し,社内外の検査の際の確認書類とされ,また,被告が社員の営業活動や行動をチェックし監督するためにも必要,有益な書面である。 営業社員は,市場が開かれている時間帯は,電話で顧客からの株式の注文を受けると,発注端末の画面を開き,その画面上で顧客の注文を受けると,発注端末を開き,その画面上で顧客の注文を入力し,注文を画面で確認して取引が成 が開かれている時間帯は,電話で顧客からの株式の注文を受けると,発注端末の画面を開き,その画面上で顧客の注文を受けると,発注端末を開き,その画面上で顧客の注文を入力し,注文を画面で確認して取引が成立したか否かを顧客に電話する。営業社員は,市場が開かれている時間中は,その都度行動を日誌に記載することもあるが,顧客との電話の対応,端末へ入力することによる発注等に追われる場合,通常はその日の業務終了後(あるいは翌日業務開始前)に,コンピュー- 9 -ターシステムには記録されている顧客からの注文及び成立した取引のデータを画面上に呼び出して,そのデータを見ながら営業日誌を作成することが多い。したがって,営業日誌に記載された顧客からの受発注及び成立した取引の情報は,顧客ごとに,コンピューターシステムに,検索可能な形でデータ化されている(ただし,営業日誌の顧客情報のうち,受発注,成立等取引以外の情報は入力されない情報である。)。よって,本件写しを含む営業日誌に記載された取引情報は,被告のコンピューターシステム等に,検索可能な形で入力されているから,個人情報データベース等を構成する個人情報であり,個人データに該当するのである。 (イ) 写しを取って自宅に持ち帰った行為そして,写しを取ってこれを自宅に持ち帰った行為は,物理的に被告の管理する施設外に持ち出しており,それだけで「洩らし」たといえるが,原告から更に外部に流出する以前の段階であっても,情報に対する被告の管理体制を離れ,外部流出する危険にさらされていたのであるから,原告の行為は,少なくとも機密を「社外に」「洩らそうとしたとき」に当たるのは明らかである。次に,営業日誌の写しを持ち出した行為についても,原告は,営業目的以外の意図に基づいて持ち出したのであり,返還までの間に外部に流出している可能 外に」「洩らそうとしたとき」に当たるのは明らかである。次に,営業日誌の写しを持ち出した行為についても,原告は,営業目的以外の意図に基づいて持ち出したのであり,返還までの間に外部に流出している可能性も否定できず,雇用契約に基づく原告との信頼関係を根底から破壊するものとして「洩らそうとしたとき」に該当することは明らかである。 また,写しを取って自宅に持ち帰った行為は,就業規則41条2項(退勤の場合,帳簿又は簿表書類及び備品機器類を整理整頓,格納しなければならない。),47条(従業員は会社の施設物品は一切これを持出し又は私用に当ててはならない。)にも該当する。就業規則41条2項の意味するところは,原本そのものを整理整頓,格納していればその写しを持ち帰ってよいというのであれば,この規定は全く意味のない規- 10 -定になる。また,本件写しも会社の施設物品であるばかりでなく,素材である用紙とこれに化体されている顧客の個人情報,取引情報等が合体したものであって,その価値は媒体に化体されている顧客の個人情報,取引情報等に負うものであり,秘密保持を要するものである。したがって,被告及びその従業員は情報の化体された媒体を厳重に保管する義務があるのみならず,媒体と媒体に化体されている情報が合体したもの全体の財産価値を保持する義務がある。このように,上記規定は,単に媒体物のみならず媒体物に化体している情報並びにその価値全体の持出しも厳重に禁止しているのである。 加えて,同行為は,顧客の資産管理,運用という情報の本来の目的外の使用であるから,個人情報保護法16条1項,23条1項,さらには金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項にも該当し,就業規則8 条1項,23条1項,さらには金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項にも該当し,就業規則87条1号に該当する。 (ウ) 写しの保管を継続した行為原告は,単に営業日誌の写しを持ち帰ってそれを継続的に保管していたというだけでなく,東京本店営業部第3課時代に住んでいた自宅から新潟県央支店への異動時にもあえて持参したのであり,それまでに自宅で保管していたのとは別個の意思に基づいて行った別個の行為と評価すべき行為が含まれている。 したがって,この保管を続けた行為もまた,就業規則87条3号に該当するばかりでなく,同36条,41条2項,47条,従業員服務規程6条,23条1項16号,個人情報保護法16条1項,23条1項,さらには金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項にも該当するから,就業規則87条1号に該- 11 -当する。 イ本件写しをファックス送信し,都労委に顕出させた行為本件写しに記載された情報が会社の機密情報に該当することは前記のとおりであり,これを弁護士及び都労委という社外に漏えいしたのであるから,就業規則87条3号,36条,47条,従業員服務規程6条,23条1項16号に該当することは明らかである。 また,営業日誌の写しに記載された情報が個人情報保護法16条1項の「個人情報」,23条1項の「個人データ」に当たることは前述したとおりであり,原告は,顧客の同意なく,都労委の審問において証人の証言を弾劾するという,本来の目的以外の利用のために利用するとともに弁護士及び都労委という第三者に提供したのであるから,個人情報保護法16条 り,原告は,顧客の同意なく,都労委の審問において証人の証言を弾劾するという,本来の目的以外の利用のために利用するとともに弁護士及び都労委という第三者に提供したのであるから,個人情報保護法16条1項,23条1項,金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項に違反し,就業規則87条1号に該当する。 なお,個人情報保護法16条3項には,「法令に基づく場合」という除外事由が規定され,金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条3項1号にも同様の規定がある。しかし,この「法令に基づく場合」とは,例えば,所得税法234条1項等に基づいて税務当局が行う質問検査及び国税犯則取締法1条に基づいて収税官吏,徴税吏員の行う犯則事件の任意調査に応ずる場合,刑事訴訟法197条に基づく捜査関係事項照会に応ずる場合等を意味する。したがって,本件のように,情報を保有している者が自ら積極的に弁護士や都労委の証拠として提出する場合は,この除外事由に該当しない。 ウ原告が故意に被告に損害を与えた行為- 12 -原告の行為は,顧客の被告に対する信用を失わせ,また,信用を著しく低減させるという損害を与えたものであり,実際に顧客の中には取引の中止等の行動に出た者もおり,しかも過失ではなく積極的な故意によりなされたものであるから,就業規則87条4号(故意又は重大な過失により会社に損害を与えたとき)に該当する。 (5) 以上により,原告の行為は,就業規則87条1号,3号,4号に該当し,諭旨退職,懲戒解雇の合理的理由が存在する。 (6) 証券会社において,顧客の取引に関連する情報管理を徹底的に厳格に行うこと (5) 以上により,原告の行為は,就業規則87条1号,3号,4号に該当し,諭旨退職,懲戒解雇の合理的理由が存在する。 (6) 証券会社において,顧客の取引に関連する情報管理を徹底的に厳格に行うことは,顧客との信頼関係を得,顧客との契約を締結,維持するためには必須であり,その管理が不徹底であるとの評価を受けた場合や疑問をもたれた場合,その業態に関していえば死命を制せられるほどの決定的な重要性を有するものである。いうなれば,証券会社において,顧客から具体的財産と同価値又はそれ以上の取引情報を得,これを預かり,市場につなぎ,その成果を顧客に還元するのである。したがって,仮に顧客の取引情報が漏えいしたとなれば,証券会社に対する信頼が失われ,会社の存立が危うくなるのである。また,証券市場は,匿名性を何よりの前提条件として成り立っており,証券会社の顧客の取引情報の管理が完全でなければ,証券市場に対する信頼も失われ,証券市場そのものの基盤を脅かしかねないのである。この意味で,顧客の情報の漏えいは,証券会社にとってあってはならない行為であり,社員の横領行為などのような会社に金銭的損害を与えた場合とは同列に扱うことができないはるかに深刻な事件なのである。 個人情報保護法の制定により,顧客は自己の情報の管理について極めて敏感になっている。そして,被告もそれに対応して社内研修の機会を多く設け,従業員の個人情報への意識の徹底を図っていたのであり,それにもかかわらず引き起こされた今回の事件について,今後の情報漏えいの防止のためにも,被告は極めて厳正な態度で望むことが要求される。 - 13 -さらに,本件写しは,都労委の審問期日において顕出されている。都労委の審問手続は,多数の傍聴人が見守る公開の場で行われるのであり,現に本件写しが提出された期日にも多くの傍聴 求される。 - 13 -さらに,本件写しは,都労委の審問期日において顕出されている。都労委の審問手続は,多数の傍聴人が見守る公開の場で行われるのであり,現に本件写しが提出された期日にも多くの傍聴人が存在した。すなわち,本件写しの内容は,特定の第三者ではなく,不特定多数の者に対して知れ渡る可能性があったのである。今回,被告によるその場での抗議の結果,本件写しの内容が広く第三者に知れ渡ることは防がれたが,もし被告の迅速な抗議がなければ,不特定多数の者に対して知れ渡り,流出する事態となったことは明らかである。その違反は,単発的なものにとどまらず,62日間分写しを取り続け,その後1年間いつでも写しを返却できるのにそれをしないで所持,保管を続けていた。62日間分の日誌の顧客情報は,数百件に上る膨大なものである。これが社外に出されていたものであり,流出の危険に長期間さらされていたことになる。 被告は,日本ユニコムによる友好的TOBの結果,平成16年6月10日,定時株主総会及び取締役会において,c代表取締役社長が選任され就任し,新たな経営陣による経営体制をスタートさせた。新たな経営体制となって会社は生まれ変わり,企業を発展させるため,経営の抜本的改革を進め,従業員の規律をこれまでになく高めているのであり,従業員の不祥事に対しても厳しく対応している。累積損が続いた過去の時代を克服し,持続的収益を確保し,全従業員の雇用を長期的に継続させていくためには,従業員自らに厳しい規律が求められている。 さらに,被告は,平成15年の個人情報保護法が成立した前後から,各従業員に対して,情報管理の重要性を訴え,研修を行い,法令,規則,ルールの周知を徹底して行っていた。平成17年の同法施行後も再三この重要性を教育,指導してきた。原告は,個人情報の取扱いの重要性を重々 業員に対して,情報管理の重要性を訴え,研修を行い,法令,規則,ルールの周知を徹底して行っていた。平成17年の同法施行後も再三この重要性を教育,指導してきた。原告は,個人情報の取扱いの重要性を重々承知していたはずである。それにもかかわらず,原告は,各行為に及んで違反を重ね続けていたのであり,これらは極めて悪性が強い行為であるといわざるを得な- 14 -い。 以上のように,原告の行為が極めて重大な問題を引き起こす行為であって,しかも原告の行為が極めて悪質であることにかんがみると,原告に対する諭旨退職処分及びそれに基づく懲戒解雇は相当であることは明らかである。 (7) 被告は,原告に対して,都労委の期日である平成17年11月2日を含め3回にわたりヒアリングを行い,関係者の調査をし,社内調査を重ねた。 そして,同年12月1日には制裁審査会,翌2日には取締役会を開催して原告を諭旨退職処分とした上で,原告が定められた期間に退職願を提出せず,原告の意思も確認したので,改めて同月8日に制裁審査会,翌9日に取締役会を開催し,再度慎重に検討した結果,就業規則の規定に従ってやむなく懲戒解雇としたものであり,本件解雇は適正な手続に従って行われたものである。 被告の主張に対する原告の認否及び反論(1) 被告の主張(1)のうち,被告が原告代理人から本件写し9枚を回収したことは認め,その余は否認する。 (2) 被告の主張(2)のうち,平成17年11月4日の原告の発言は否認し,その余は認める。 (3) 被告の主張(3)のうち,第1段は認め,第2段については本件写しが現実に顕出されたこと及び補佐人その他の者がこれを見たとの点は否認し,その余は認め,第3段については被告が損害を被ったことは争い,その余は不知。 (4) 被告の主張(4)は,被告の挙げる就業規則その他の に顕出されたこと及び補佐人その他の者がこれを見たとの点は否認し,その余は認め,第3段については被告が損害を被ったことは争い,その余は不知。 (4) 被告の主張(4)は,被告の挙げる就業規則その他の諸規定の存在及び内容を除きすべて争う。 アアについてまず,保護されるべき「秘密」とは,①秘密として客観的に管理されているもの(秘密管理性),②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性),③非公知性の3要件を具備していることが必要であ- 15 -るところ,被告は,営業日誌を社外に持ち出して流出させることを全く予定しておらず,又,社員に研修するなどして厳重に管理していたと主張するが,全く事実に反する。被告においては,平成16年当時,顧客勘定元帳などの帳票は管理部管理となっているものの,営業日誌については管理手順もなく,すべて営業社員の個人管理とされていた。また,営業日誌の扱いについての研修もなかった。したがって,営業日誌は,上記のうちの「秘密管理性」に欠け,「秘密」には該当しない。 次に,個人情報保護法16条1項にいう「個人情報」に当たるかについてであるが,原告の記憶によると,本件写しの原本である平成16年11月29日の営業日誌には,当日実際に顧客方を訪問した2名を除く12名の顧客については,氏名のみのメモであり,生年月日,住所も一切記載されていない。また,実際に訪問した2名についても括弧書きで「〇〇市」と在住している「市」の記載があるだけで,具体的な住所や生年月日は記載されていない。したがって,本件写しにより「特定の個人を識別することができる」ということには大きな疑義がある。 また,同法23条1項にいう「個人データ」に当たるかについて,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)2条は,「個人情報データベース等 ことができる」ということには大きな疑義がある。 また,同法23条1項にいう「個人データ」に当たるかについて,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)2条は,「個人情報データベース等」について,個人情報を含む情報の集合物であって,特定の個人情報をコンピューターを用いて検索することができるように体系的に構成したもの又は個人情報を一定の規則に従って整理することにより特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものであって,目次,索引,符号等により一般的に容易に検索可能な状態におかれているものをいうとされている。そして,「個人データに該当しない例」として,データ入力前の紙ベースの証券総合口座申込書や顧客カード等が,「五十音順や口座番号等により検索可能な状態になっていない場合」の個人情報とされている。したがって,本件で原告が作成した営業日- 16 -誌は,まさに「データ入力前の紙ベースの顧客カード」であり,五十音順にも口座番号等によっても検索可能な状態にはなっていないものであるから,個人データには該当しない。検索可能な状態で入力されているのは,被告のコンピューターシステムであって,原告をはじめとする営業社員が作成する営業日誌ではない。 さらに,就業規則41条2項についてであるが,原告は,営業日誌の原本を整理整頓,格納していたから,原告の行為は就業規則41条2項には該当しない。また,営業日誌の管理は各営業社員に委ねられており,被告の就業規則において写しを取ることを禁止され,また写しの持ち出しを禁止されていたものでもない。さらに,原告は営業日誌の写しを私用目的で取って保管したのではなく,営業目的でしたのであるから,就業規則47条違反もない。すなわち,原告は,東京営業部第3課への異動(旧上尾支店担当)によりこ ない。さらに,原告は営業日誌の写しを私用目的で取って保管したのではなく,営業目的でしたのであるから,就業規則47条違反もない。すなわち,原告は,東京営業部第3課への異動(旧上尾支店担当)によりこれまでの顧客と合わせ500名を超える顧客の担当となったが,旧上尾支店時代に担当者がたびたび変わり,顧客の信頼を失っていたことから,信頼関係を回復するため,膨大な数の顧客を直接訪問することにしたが,東京本店から旧上尾支店の顧客を訪問するために,自宅に帰ってから予定を組む必要が生じ,そのために営業日誌の写しを取って自宅に保管していたのである。したがって,原告は営業日誌の写しを私用で取って保管していたものではない。なお,被告は,原告が新潟県央支店に異動後も営業日誌の写しを保管していたことを問題としているが,原告は東京営業部第3課から新潟県央支店への配転の効力を都労委で争っており,同配転が不当労働行為として無効とされた場合の原告の復帰先は東京営業部第3課であるから,その場合の顧客との信頼関係を考慮して,営業日誌の写しを保管していたのであり,新潟県央支店への配転後の保管も私用目的ではない。したがって,営業日誌の写しに記載された「情報」が「個人情報」に該当するとしても,「利用目的外の取扱」には該当せず,上記法- 17 -条には違反しない。 イイについて営業日誌の写しが「機密」,「秘密」,「個人情報」及び「個人データ」に該当しないことは上記のとおりであり,これを弁護士にファックス送信すること及び都労委に提出する行為も「漏洩」に当たらない。 すなわち,弁護士は,委任者の利益のために有利不利を問わず事実関係をすべて把握する必要があり,また弁護士法上守秘義務を負っているから,委任している弁護士宛にファックス送信しても「目的外使用」には当たらない。 次に, ,委任者の利益のために有利不利を問わず事実関係をすべて把握する必要があり,また弁護士法上守秘義務を負っているから,委任している弁護士宛にファックス送信しても「目的外使用」には当たらない。 次に,労働組合法23条によって本件担当の審査委員,労使参与委員,担当事務局職員にも守秘義務があることからも,「目的外使用」には該当しない。また,原告は,都労委において,本件写しの提出を直ちに撤回しており,都労委においても受理の扱いにはなっておらず,したがって,提出,受理を前提とする「顕出」もない。したがって,都労委においても「目的外使用」行為は存在しない。 ウウについて被告は,損害について何らその具体的な主張立証をしない。また,顧客への実害も発生していない。 (5) 被告の主張(5)は争う。 (6) 被告の主張(6)は争う。本件写しは,書証として都労委に「提出」されていない以上,都労委の受理印がいったん押印されたとしても,都労委の審問手続上も「受理」は撤回され,その結果本件写しが都労委に「顕出」もされていないことは明々白々である。実際にも,副本を受領して内容を検討していた被告(の代理人及び担当者)を除いては,原告はもちろん原告代理人,都労委の委員(公益,労働,使用者の三者)も,都労委の事務担当者も本件写しを見る間もなかったというのが実態である。したがって,当日の審問にお- 18 -いても全く使用されなかったのであり,傍聴者にもその内容は一切開示されていない。 (7) 被告の主張(7)は争う。原告は,組合の副委員長であり,そのような立場にある者の労働契約上の地位を懲罰的に剥奪する本件解雇についての組合からの団体交渉申入れに対し,被告は,「会社と本人との問題であり,団体交渉事項として適当でない」という理由で,未だにこれを拒否している。そのような被 上の地位を懲罰的に剥奪する本件解雇についての組合からの団体交渉申入れに対し,被告は,「会社と本人との問題であり,団体交渉事項として適当でない」という理由で,未だにこれを拒否している。そのような被告に手続の適正をいう資格はない。 (8) 被告においては,上記の日本ユニコムが株式を取得して以後,組合への嫌悪感を強めるようになり,平成16年5月上旬,本社移転に際して従来組合に事務所を貸与していたのを突然不貸与としたほか,従前組合員の配転に際しては,事前に組合に打診,組合との協議,組合の同意に基づいて発令するというのが労使慣行となっていたのを,同年8月20日のd組合員の配転に際して組合への事前通知をせずに発令するようになり,同年9月には,部長職の組合員に対して脱退を強要したり,原告に対しても上記1(5)記載のとおり同年8月27日の配転発令からわずか3か月しか経っていないにもかかわらず再度の配転を発令したり,平成17年1月分からのチェックオフを廃止する旨を一方的に通知してこれを強行したりした。 (9) 上記1(7)記載の救済申立ては,以上のような労使関係の中でされたものである。そして,同(8)記載の行為は,以下のような経緯で行われたものである。 同事件においては,被告が,本件配転について,平成16年11月29日午後にb本店長が原告に対して内示をした際,原告が「この業界は異動は当たり前,喜んでいきます」と述べたと主張したのに対し,原告が同発言をしたことを争ったため,同発言の有無が争点の一つとなった。そして,平成17年8月26日の審問期日において,b本店長が会社側証人として,上記主張に沿う証言をした。 しかし,b本店長が原告に対して内示をしたとする平成16年11月29- 19 -日午後3時ころは,原告は東京本店営業部第3課の仕事である上尾市の顧客 会社側証人として,上記主張に沿う証言をした。 しかし,b本店長が原告に対して内示をしたとする平成16年11月29- 19 -日午後3時ころは,原告は東京本店営業部第3課の仕事である上尾市の顧客回りを行っており,同時刻にb本店長が原告に対して内示をすることは物理的に不可能であった。そのことは,原告作成の営業日誌の写しに照らしても明らかであり,b本店長の上記証言は明白な虚偽であった。原告作成の営業日誌の写しとは,原告が同年8月に東京本店営業部第3課に配置されたとき,数百名もいる上尾市周辺の顧客を個々に訪問することとしたが,上尾市周辺から自宅に直帰することが多くなったことから,自宅で当該顧客を訪問したか否かを確認することが必要となり,そのために写しを取っておいたものである。 原告は,次回尋問期日である平成17年11月2日に先立ち,同年10月27日午後8時,当時の新潟県の自宅からファックスで,原告代理人で原告の尋問担当であった牛久保弁護士宛に本件写しを送付した。そして,平成17年11月2日の尋問期日においては,上記(6)記載のとおりいったんは本件写しを書証として提出しようとしたものの,個人情報保護の観点から書証提出の申し出を直ちに撤回し,都労委の審問調書上も証拠提出の扱いとなっていない。 (10)その後,被告は,原告に対して事情聴取を行ったが,原告はこれにも進んで応じ,所持していた営業日誌の写しの全てを被告に提出した。 (11)しかるに,被告は,原告の上記(9)の行為が,上記1(9)記載の懲戒事由に該当するとして,原告を諭旨退職処分とし,原告が退職届を出さないため,懲戒解雇したのである。 原告の主張に対する被告の反論(1) 原告の主張(8)は否認する。組合事務所を貸与できなかったのは,新社屋にはスペースが不足していたからであり,会議室 届を出さないため,懲戒解雇したのである。 原告の主張に対する被告の反論(1) 原告の主張(8)は否認する。組合事務所を貸与できなかったのは,新社屋にはスペースが不足していたからであり,会議室及びロッカーを利用させている。また,チェックオフは廃止したのではなく,現在停止しているにすぎない。被告においては,チェックオフの要件である過半数組合との書面協定が- 20 -締結できればいつでもチェックオフを再開する予定である。 (2) 原告の主張(9)は,第1段は,上記1(7)の救済申立てにかかる同事件において,b本店長の発言の有無が争点の一つとなったこと及び同人が原告の主張する証言をしたことは認め,その余は争う。同第2段は,原告が本件写しを含む営業日誌の写しを取っていたこと及びこれを保有していたことは認め,その余は否認する。同第3段は,第1文は不知,第2文のうち,尋問期日でのやり取りは認め,その余は争う。本件写しは,審問に先立って都労委に実際に提出され,11月2日付けの収受印が押印され,現実に傍聴人の目にも触れることになったのである。 (3) 原告の主張(10)及び(11)は認める。 第3当裁判所の判断 原告が営業日誌の写しを取って保管を続けた行為について被告は,原告が営業日誌の写しを取って保管を続けた行為は,就業規則87条(従業員が次の各号の一に該当するときは,諭旨退職又は行政官庁の認定を受けた懲戒解雇に処する。)1号(証券取引法その他法令諸規則に従わないとき)及び3号(会社又は取引先の機密を社外に洩らし,又は洩らそうとしたとき)に該当すると主張するので判断する。 (1) 営業日誌の写しが「機密」及び「秘密」等に該当するか否か証拠(甲13,乙12,証人bの証言,原告本人尋問の結果)によれば,営業日誌は,旧センチュリー証券の会社名及 ると主張するので判断する。 (1) 営業日誌の写しが「機密」及び「秘密」等に該当するか否か証拠(甲13,乙12,証人bの証言,原告本人尋問の結果)によれば,営業日誌は,旧センチュリー証券の会社名及びマークが用紙の右下に小さく印刷されており,1枚に16名分の「顧客名」について,「電話訪問来店」の別,「新規既存」の別,「法人の面談者」「訪問場所」,「時間」,「内容」,「交通費」を記載する欄があり,そのほかに日付,「扱者」,「連絡事項,同伴要請,役席所見等」,「当日出来高」,「累計出来高」,「交通費合計」,「退社時間」を記載する欄及び役席者の決済印を押捺する欄があり,2年間保存すべきことが記載されていること,上記各欄については各担- 21 -当者が各営業日ごとに作成するものであること,顧客名欄には通常フルネームで姓名を記載するのが常であること,訪問場所としては「○○市」などのような概括的な記載をするのが常であったこと,営業日誌が綴り込まれた冊子には特に「秘」等の押印はされていたなかったこと,本件写しには,顧客数名の氏名及び訪問場所として上尾市周辺の地名が何箇所か記載されていたことが認められる。 以上によれば,個々の顧客を特定しうる可能性のある記載は,訪問場所と顧客名の記載であるが,これだけで特定しうるとはいえないものの,特定を容易ならしめる記載であることは間違いなく,少なくともこれを社外に持ち出すことは全く予定されていない情報ということができるから,被告が就業規則で「洩らし」又は「洩らそうと」することを禁止している「取引先の機密」(87条3号,36条),従業員服務規程で「洩らし」又は「漏洩」することを禁止している「職務上知り得た秘密」(6条,23条1項16号)には当たると認めるのが相当である。 この点,原告は,保護されるべき「秘密」とは 36条),従業員服務規程で「洩らし」又は「漏洩」することを禁止している「職務上知り得た秘密」(6条,23条1項16号)には当たると認めるのが相当である。 この点,原告は,保護されるべき「秘密」とは,①秘密として客観的に管理されているもの(秘密管理性),②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性),③非公知性の3要件を具備していることが必要であるとして,営業日誌の記載事項はこれに当たらないと主張する。しかし,原告の主張は,不正競争防止法にいう「秘密」の解釈としてはともかく,被告が就業規則及び従業員服務規程で「漏洩」等を禁じている「取引先の機密」及び「職務上知り得た秘密」の解釈としては相当でなく,同主張は採用することができない。 なお,被告は,営業日誌の記載は,個人情報保護法の「個人情報」及び「個人データ」(2条4項)にも該当すると主張する。同法によれば,まず,「個人情報」は,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるも- 22 -の(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいうと定義されているところ(2条1項),営業日誌の記載事項は上記のとおりであり,氏名は記載されているものの,住所,電話番号等が記載されているわけでもなく,電話だけの取引の場合には「場所」も記載されないことに照らすと,これだけの記載内容から特定の個人を識別できるとは認められないから,これに該当するとはいえない(もっとも,被告の作成した個人情報保護法に関する指針(平成17年4月1日付け)において,「特定の個人を識別することができるものに該当する例」として「氏名が含まれる情報」が挙げられているが(甲9),同姓同名の 被告の作成した個人情報保護法に関する指針(平成17年4月1日付け)において,「特定の個人を識別することができるものに該当する例」として「氏名が含まれる情報」が挙げられているが(甲9),同姓同名の可能性もあることを考慮すると,氏名だけで常に特定の個人を識別することができるとはいえないばかりか,同指針も氏名のみで常に特定の個人を識別できると解しているものかどうか明らかでないから,同指針の存在は上記判断を左右しない。)。次に,同法によれば,「個人データ」は,個人情報データベース等を構成する個人情報をいい(同法2条4項),「個人情報データベース」等とは,個人情報を含む情報の集合物であって,特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの及び特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるものをいう(同条2項)とされており,そもそも個人情報でないものが個人データとならないことは同条の文言上明らかである。このことは,日本証券業協会が同法の施行に先立ち作成した「個人情報の保護に関する指針」(理事会決議)(甲12)において,同法,同法施行令,個人情報の保護に関する基本方針(閣議決定)及び金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成16年金融庁告示第67号)等を踏まえ,会員の証券業務及び証券業に付随する業務等における個人情報の適正な取扱いを確保するため,協会員が講ずべき具体的措置等を定めた中で,個人情報及び個人データについて,個人情報保護法と同一の定義付けを- 23 -していること,同指針の解説において,営業日誌は同指針にいう「個人データ」には該当しない旨の見解が示されているところである(109頁)。 (2) 写しを取って自宅に持ち帰った行為が「機密」を「洩らし」又は「 ること,同指針の解説において,営業日誌は同指針にいう「個人データ」には該当しない旨の見解が示されているところである(109頁)。 (2) 写しを取って自宅に持ち帰った行為が「機密」を「洩らし」又は「洩らそうとし」たといえるか次に,写しを取って自宅に持ち帰った行為が就業規則87条3号,36条の「機密」を「洩らし」又は「洩らそうとし」たといえるかを検討する。被告は,物理的に被告の管理する施設外に持ち出しており,それだけで「洩らし」又は「洩らそうとし」たといえると主張するが,「洩らし」又は「洩らそうとし」たといえるためには,第三者に対して開示する意思で,第三者に対して開示したのと同等の危険にさらすか又はさらそうとしなければならないと解されるところ,原告本人尋問の結果によれば,原告は,本店営業部第3課に異動したことにより担当する顧客数が大幅に増えたため,帰宅後,自宅で訪問計画を立てるために利用する目的で,営業日誌の写しを取ったことが認められ(原告の本人尋問調書7ないし13頁),原告には,第三者に対して開示する意思があったものとは認め難いばかりか,写しを取って自宅に持ち帰ることにより,外部に流出する危険が増したとはいえ,第三者に開示したと同等の危険にさらしたとまでは認められないから,未だ「洩らし」たとまでは認めることはできないといわざるを得ない。このことは,同旨の規定である従業員服務規程6条,23条1項16号の解釈としても同様である。 なお,被告は,本件写しを含む営業日誌に記載されている顧客情報は,社外に持ち出し流出することは全く予定されておらず,その管理については従業員に研修を行うなどして徹底して周知させており,顧客情報は厳密に管理されている旨を主張する。確かに,証人bの証言(同証人の証言調書12頁),同eの証言(同証人の証言調書7頁)によ 管理については従業員に研修を行うなどして徹底して周知させており,顧客情報は厳密に管理されている旨を主張する。確かに,証人bの証言(同証人の証言調書12頁),同eの証言(同証人の証言調書7頁)によれば,営業日誌は各営業社員が机の中で保管することとされたり(本店営業部第3課),書庫で保管することとされたり(新潟県央支店)しており,原則的に持ち帰ったり,社外- 24 -に持ち出すことは禁止されていたことが認められるが,原告の上記行為はそのような指示には違反するとしても,そのことは上記の「洩らし」又は「洩らそうとし」たの解釈には必ずしも影響しないのであって,結局のところ,被告の上記主張は上記判断を左右するものではない。また,同主張は,上記のような内部規律に違反した点をもって就業規則87条1号の「その他法令諸規則に従わないとき」に該当すると主張する趣旨とも解されるが,単なる内部規律違反がこれに含まれないことは,就業規則が,諭旨退職又は懲戒解雇事由以外の懲戒事由を定めた86条において,「法令諸規則」(1号)と「会社の諸規則,諸規程,指示命令」(2号)とを明確に区別していることからも明らかであるし,そもそも明文化されていない内部規律に違反したことをもって懲戒解雇することはできないから,同主張を上記のような趣旨の主張と解したとしても,営業日誌の写しを取って自宅に持ち帰った行為が懲戒解雇事由に当たると認めることはできない。 また,被告は,営業日誌を持ち帰った行為は更に就業規則41条2項,47条にも該当すると主張するが,同条項は情報についての規定ではなく,物品についての整理整頓,格納についての規定であると解されるから,同行為はこれらの規定には該当しないというべきである。この点について,被告は,被告及びその従業員は情報の化体された媒体を厳重に保管する 品についての整理整頓,格納についての規定であると解されるから,同行為はこれらの規定には該当しないというべきである。この点について,被告は,被告及びその従業員は情報の化体された媒体を厳重に保管する義務があり,媒体のみならず媒体と媒体に化体されている情報が合体したもの全体の財産価値を保持する義務があるから,同条項は,単に媒体物のみならず媒体物に化体している情報並びにその価値全体の持出しも厳重に禁止していると主張するが,確かに,被告において,それなりの定めをして情報管理をしていたことは認められることは上記説示のとおりであるが,それは同条項とは別問題であり,同主張は上記判断を左右しない。 (3) 保管を継続した行為について次に,被告は,東京本店営業部第3課時代の自宅から,新潟県央支店への- 25 -異動時に,営業日誌の写しをあえて持参したことが別個の意思に基づく漏えい行為であると主張するが,この点を別個に評価するのは相当でない。 被告は,本件配転後は新たな意思に基づいて保管を開始したと主張するもののようであるが,原告としては,新潟県央支店へは異議を留めた上で赴任しており,本件配転の効力を争い,その無効が確認されたならば東京本店営業部第3課において勤務するという意思を有していたのであるから,保管に係る原告の意思が本件配転の前後で変化したものとは認め難く,被告の主張は採用することができない。 本件写しを弁護士にファックス送信し,都労委に提出した行為について次に,被告は,本件写しを弁護士にファックス送信し,都労委に提出した行為について,就業規則87条3号に該当するとともに,同36条,47条,従業員服務規程6条,23条1項16号,個人情報保護法16条1項,23条1項,金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人 条3号に該当するとともに,同36条,47条,従業員服務規程6条,23条1項16号,個人情報保護法16条1項,23条1項,金融分野における個人情報保護に関するガイドライン5条1項,13条1項,個人情報の保護に関する指針(日本証券業協会理事会決議)6条1項,14条1項に違反し,就業規則87条1号に該当すると主張するので検討する。 なお,本件写しが就業規則87条3号,36条の「機密」,従業員服務規程6条,23条1項16号の「秘密」には当たるが,その他には当たらないと解すべきことは上記のとおりであるから,ここでは本件写しを弁護士にファックス送信した行為及びこれを都労委に提出した行為が「機密」を「洩らし」又は「洩らそうとし」たといえるか,「秘密」を「洩らし」又は「漏洩」したといえるか否かを判断することになる。 まず,弁護士にファックス送信した行為であるが,これは,証拠(甲15,原告本人尋問の結果(原告の本人尋問調書19,20頁))によれば,b証言を弾劾するため,内示当日の営業日誌を弁護士に示すためにファックス送信したものであることが認められ,都労委において本件配転の効力を争っている原告にとってその目的が一応正当性を有していること,弁護士は弁護士法上守秘- 26 -義務を負っており(23条),弁護士を介して外部に流出する可能性は極めて低いことを考慮すると,これをもって漏えいに当たるとすることはできないというべきである。 次に,これを都労委の審問期日に提出した行為であるが,本件写しの証拠提出が撤回されたことは上記のとおり争いがなく,証拠(甲3の1,2)によれば,その行為態様は,原告の代理人弁護士が本件写しを甲34号証として提出しようとして,これを都労委の担当者に手渡し,収受印が押されたが,その副本を受領した被告の代理人弁護士から指摘されて結局これ れば,その行為態様は,原告の代理人弁護士が本件写しを甲34号証として提出しようとして,これを都労委の担当者に手渡し,収受印が押されたが,その副本を受領した被告の代理人弁護士から指摘されて結局これを撤回したため,証拠としては提出されない扱いとなり,甲34号証は欠番とされ,原告代理人が回収した同号証は被告代理人に交付されたことが認められる。 このように,都労委に対しては最終的に証拠提出されなかったのであるから,漏えい行為自体が存在しないというほかない。 なお,被告は,本件写しが提出された審問期日には多くの傍聴人が存在し,本件写しの内容は,特定の第三者ではなく,不特定多数の者に対して知れ渡る可能性があったから,都労委の審問期日において顕出されていると主張する。 確かに,手続としては提出されない扱いだったとしても,本件写しが都労委の担当者に手渡されてから回収されるまでの間に,事実上都労委委員,被告の担当者及び傍聴人の目に触れた可能性は否定できない。しかし,まず,都労委委員は労働組合法上守秘義務を負っており(23条),同委員が事実上本件写しの内容を見たとしても,それが外部に流出する危険はないといえるし,傍聴席あるいは当事者席にいた被告の担当者は,本件写しの記載内容の本来の保管者である被告の担当者であるから,そのいずれに対しても漏えいということは考えられない。そして,それ以外の者,すなわち原告を支援する目的で傍聴に来ていた者については,守秘義務は存在せず,これらの者に本件写しの内容が知れたとすれば,それは漏えいに当たると評価せざるを得ない。そして,上記認定事実を総合すれば,少なくとも紙としての本件写しが,原告ないし原告代理- 27 -人から都労委委員及び被告代理人に手渡され,都労委委員に渡された分が最終的に被告によって回収されたことは傍聴人にも 定事実を総合すれば,少なくとも紙としての本件写しが,原告ないし原告代理- 27 -人から都労委委員及び被告代理人に手渡され,都労委委員に渡された分が最終的に被告によって回収されたことは傍聴人にも見えていた可能性が高いといわざるを得ない。しかし,その記載内容までが傍聴人の目に触れるような形でやり取りが行われたとまではこれを認めるに足りる証拠はないから,そのような傍聴人に対する漏えい行為があったということもできない。 故意に被告に損害を与えた行為について上記判断を前提とすれば,本件写しに記載された顧客情報が漏えいしたことにより第三者に損害を与え,ひいては被告に損害を与えた事実は一切認められないばかりか,証拠(乙1ないし4)によれば,被告は,原告の本件行為が原因で個人情報の漏えいがあったとして,金融庁長官及び日本証券業協会会長宛に事故報告書を提出しているが,その中で「流出先(又は漏えい先)が限定されていること,流出情報の速やかな完全回収を行ったことで,不正使用に繋がる可能性がなく,顧客への被害が及ばないとの判断のもと,公表は致しません。」と述べており,顧客への被害がなかったことを自認しているのであって,原告の本件行為により被告に損害が生じたものと認めることはできない。 なお,この点に関し,被告は,被告が本件写しに記載された14名の顧客に対してできうる限り訪問して事情を説明して謝罪し詫び状を渡したところ,顧客の中には情報の漏えいを遺憾に思い,被告との取引を中止する者もあった旨を主張し,当裁判所におけるb証人もこれに沿う証言をする(証言調書16頁)。しかし,被告との取引を中止したことについてはこれを客観的に裏付ける証拠はないばかりか,被告はもともと当裁判所の判断とは異なり,原告の本件行為について深刻な機密漏えい行為ととらえており,そのよう )。しかし,被告との取引を中止したことについてはこれを客観的に裏付ける証拠はないばかりか,被告はもともと当裁判所の判断とは異なり,原告の本件行為について深刻な機密漏えい行為ととらえており,そのような立場に立つ被告の説明を聞いた顧客が取引を中止するという反応を示すことも想像に難くなく,仮に被告との取引を中止した顧客があったとしても,それは原告の本件行為そのものよりもむしろ被告の上記のような認識を前提とした説明によるものと推認されるのである。したがって,この点に関する被告の主張は,上記判- 28 -断を左右しない。 また,被告の主張は,実害が発生したか否かではなく,金融庁長官及び日本証券業協会会長宛に上記のような事故報告書を提出せざるを得ない事態に陥ったこと自体が損害であると主張する趣旨とも解される。確かに,そういう意味での一定の損害が被告に生じていることは否定できないところであるとしても,上記1(1)で認定した,当時の被告における営業日誌についての意識を前提とすれば,それはやむを得ないことであり,これを殊更に損害と評価すべきものとは解されない。 本件解雇の効力について以上によれば,本件解雇の事由として被告が主張する諸事実は,いずれも就業規則に違反するものとまでは認められないから,本件解雇は解雇事由がないにもかかわらずされたものである。 なお,原告が営業日誌の写しを取り自宅に持ち帰った行為は,被告の内部規律に違反するとしても「機密」を「洩らし」又は「洩らそうとし」,「秘密」を「洩らし」又は「漏洩」したとまでは認められないことは前記のとおりであるが,仮にそれが認められたとしても,これらの行為は,本店営業部第3課に異動したことにより担当する顧客数が大幅に増えたため,帰宅後,自宅で訪問計画を立てるために利用する目的で行われたものであるこ あるが,仮にそれが認められたとしても,これらの行為は,本店営業部第3課に異動したことにより担当する顧客数が大幅に増えたため,帰宅後,自宅で訪問計画を立てるために利用する目的で行われたものであることは前記のとおりであり,その目的に正当性が認められる上,本来社内で保管すべき情報を持ち出したことは否定できないにせよ,情報流出の可能性の低い比較的安全な方法で保管したこと,証人bの証言及び同eの証言によれば,平成16年当時営業日誌に関する社内の規定は存在せず,本店営業部第3課においても,新潟県央支店においても,営業日誌は必ずしも施錠して保管されていたわけではないことが認められ(証人bの証言調書26,28頁,同eの同7頁),被告における管理もそれほど厳重ではなかったと認められること,個人情報保護法の定める「個人情報」及び「個人データ」には該当せず,同法違反の問題は生じていな- 29 -いことを考慮すると,漏えい行為の態様としてはごく軽微なものであるから,仮に就業規則36条及び従業員服務規程6条,23条1項16号に違反するとしても,解雇事由を定めた就業規則87条3号,1号には該当しないか,仮に該当するとしても,原告がこれまで懲戒処分を受けたことがなかったこと,原告の行為により顧客に実害が発生しているわけではないこと等の事情を考慮すると,本件解雇は解雇権を濫用してなされたものであって無効であると認めざるを得ない(労働基準法18条の2)。 なお,被告は,原告が本件写しを含む営業日誌の写しを取りこれを保管した目的について,営業目的以外の意図に基づくものであると主張し,当裁判所におけるb証人は,営業日誌の記載は過去の営業の記録であり,情報が古くなっているので,営業日誌の記載のみで訪問の計画を立てることはできないばかりか,仮に原告が本店営業部第3課に復 と主張し,当裁判所におけるb証人は,営業日誌の記載は過去の営業の記録であり,情報が古くなっているので,営業日誌の記載のみで訪問の計画を立てることはできないばかりか,仮に原告が本店営業部第3課に復帰したとしても,当時の原告の担当顧客は他の営業社員が引き継いでいるであろうし,過去の日誌で営業をすることはできないし,営業日誌の写しを取って自宅で訪問計画を立てているような営業社員は存在しない旨証言し(証言調書8,9,14頁),原告の主張する目的で写しを取り保管することなどはあり得ないと供述するかのようである。確かに一般論としては同証言のとおりであろう。しかし,原告本人尋問の結果によれば,原告は本店営業部第3課に異動した際,従前の上尾支店の顧客を担当することとなったため担当する顧客の数が大幅に増えたこと,着任の挨拶をした際に顧客の中に担当者が頻繁に代わることについて難色を示し,今後被告との取引をしたくないとの意向を示す顧客が相当数いたことから,早期に顧客全員と直接会い信用を得ようとして,訪問計画を立て,通常の証券会社の営業社員のように「場」(証券取引所での取引のこと)の終了後に顧客訪問をすると時間が足りなくなるため,場の終了前に顧客訪問に出掛けることと顧客訪問に時間がかかった場合には訪問先から自宅に直接帰る「直帰」について上司の承認を得たこと,しかし実際には顧客の顔と名前がなかなか一致せず,取引内容に- 30 -ついてもそう簡単には覚えられるものではないことから,訪問後に営業日誌を記載すること及びそれを後日参考にして再度の訪問計画に役立てることを考えたこと,直帰の場合には営業日誌が自宅にないことから,それをすることができないため,予め会社で営業日誌の写しを取り,これを自宅に持ち帰って上記目的を果たそうとしたことが認められる(原告の本人尋問 えたこと,直帰の場合には営業日誌が自宅にないことから,それをすることができないため,予め会社で営業日誌の写しを取り,これを自宅に持ち帰って上記目的を果たそうとしたことが認められる(原告の本人尋問調書7ないし13頁)。もちろん会社で行うのと異なり,例えば顧客の過去の取引履歴等が入力されたパソコンの端末等の使用できない中で行うのであるから,会社で行うのと比べれば不完全なものにとどまることは否定できないが,顧客の信頼を得たいとの一念から営業日誌の写しを取ることを考えついたとしても,あながち不自然とは解されない。また,当裁判所におけるb証人の証言するとおり,現実には本件配転について最終的な解決が図られるためには相当の時間が経過することが考えられ,仮に原告が本店営業部第3課に復帰できたとしても,原告が当時担当していた顧客を担当できる見込みは低く,また仮に同一顧客を担当したとしてもその間相当の空白期間があることを考えれば,当時の営業日誌の写しが役に立つ可能性はかなり低いといわざるを得ないが,新潟県央支店へ赴任する際の原告の認識として,すぐに戻って過去の営業日誌が役立つかもしれないと考えたことはさほど不合理なこととも考えられないのであって,上記b証言は,原告が営業日誌の写しを取り保管をした行為の目的の認定を左右せず,したがって,本件解雇の効力についての判断も左右しない。 賃金請求について原告の賃金は,毎月48万8900円であり,支払日は毎月25日であったこと,平成17年12月分について被告は,同月8日までの日割分19万8897円を支給したことは前記第2の1(11)記載のとおり争いがないから,被告は原告に対し,平成17年12月分の未払分として29万0003円及び平成18年1月以降毎月25日限り48万8900円の支払義務を負う。 なお,将来分の 第2の1(11)記載のとおり争いがないから,被告は原告に対し,平成17年12月分の未払分として29万0003円及び平成18年1月以降毎月25日限り48万8900円の支払義務を負う。 なお,将来分の賃金請求について,原告は終期を定めていないが,本件のよ- 31 -うに労働契約上の権利を有する地位の確認と未払賃金を併せて請求している場合には,本判決の確定により賃金の支払に関する事情も異なりうると考えられるから,判決確定後については現時点で支払を求める必要性があるとまでは認められず,判決確定時までの支払を命ずることをもって足りると解する。 第4 結論 以上によれば,原告の請求は,判決確定後の賃金の支払を求める部分を除きいずれも理由があるからこれを認容し,判決確定後の賃金の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部蓮井俊治裁判官
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