昭和39(う)1201 道路交通法違反等被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和39年10月27日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を禁錮四月に処する。      原審および当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。          理    由  本件控訴の趣意は、東京

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判決文本文3,520 文字)

主文原判決を破棄する。 被告人を禁錮四月に処する。 原審および当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事鈴木久学が差し出した宇都宮地方検察庁検事正池田貞二名義の控訴趣意書に記載したとおりであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。 論旨第一点について。 所論は、原判決が、被告人は事故発生約四〇分後に事故を報告しているところ、「直ちに」の時間的長さについて、道路交通法第七二条第一項の目的に照して、合理的な余裕が与えられて然るべきであり、本件は、被告人が事故発生の報告をなし得るようになつてから、報告するまでの間に徒過した時間は、そのための所要時間を差し引くと、短かければ一〇分位、長くても二〇分を超えることはなかつたし、被告人は一時的な精神錯乱に近い状態に陥つており、事故発生後約五分にして、警察官は事故の発生を知つていたので、応急措置はいくらでも警察官において取りえたもので、結局前記法条の「直ちに」「報告しなかつた」場合に該当しないとして、被告人に対し報告義務違反の事実につき無罪を言い渡したのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用に誤りがあるというのである。 道路交通法第七二条第一項の趣旨を道路交通法の道路における危険の防止と交通の安全、円滑を図ろうとする目的に照らして考えると、同条項前段は、交通事故があつた場合、事故発生に関係ある運転者等に対し、先ず応急の処置として救護等の措置を執るべきことを命じ、その後段は、運転者等に対し、右救護等の義務とは別個独立に、人身の保護と交通の取締の責務を負う警察官をして、負傷者に対す万全の救護と交通秩序の回復に、即時適切な処置を執らしめんがため警察官に対する報告義 段は、運転者等に対し、右救護等の義務とは別個独立に、人身の保護と交通の取締の責務を負う警察官をして、負傷者に対す万全の救護と交通秩序の回復に、即時適切な処置を執らしめんがため警察官に対する報告義務を課したものと解するを相当とし、右趣旨からすれば、運転者等は交通事故があつた場合は、即時応急の救護等の措置を執り、警察官が現場にいないときには、同時に(現場に他の人がいる場合その他人に依頼する等して)または右応急の救護等の措置を講じた後「直ちに」(遅滞なく速かに)もよりの警察署の警察官に対し該事故の発生を報告することを要するものと解すべきところ、記録を精査し、かつ、当審における事実取調の結果によれば、被告人が本件事故発生後直ちに被害者の救護措置をとつたこと、その当時、被告人が本件事故を発生せしめたことについて衝撃をうけて精神的<要旨>動揺を来していたことはこれを認め得られるが、原判決が認定するような一時的な精神錯乱に近い状態に陥つ</要旨>ていたというほどではなく、また、もよりの警察署の警察官に対し本件事故発生を報告する意思を有しておらず、従つて、事故現場において自身からもまた現場にいた他人との関係において受動的にも報告をしていないこと、被告人が無為に事故現場から約七〇〇米隔つたA方に赴き同所で知人のB等に説得されてはじめて警察官に該事故の発生を報告する気持になつたこと、もよりの警察署の警察官にこれを報告するに先立つて、被害者の入院先であるC診療所に立寄る予定で右A方をB運転の自動車にて出発したが、その途中、本件事故を生起させたのは被告人であることを探知し、被告人の所在を捜査していた当時今市警察署大沢駐在所勤務の巡査部長Dに右自動車を停止させられ、ようやく本件事故の発生を同巡査部長に報告するに至つたものであることを認めることができ、右諸事実 探知し、被告人の所在を捜査していた当時今市警察署大沢駐在所勤務の巡査部長Dに右自動車を停止させられ、ようやく本件事故の発生を同巡査部長に報告するに至つたものであることを認めることができ、右諸事実からすれば、右D巡査部長に対する本件事故発生の報告をもつて、道路交通法第七二条第一項後段の「直ちに」(遅滞なく速かに)これをしたものということができない。従つて、被告人の本件所為を同条項の「直ちに」「報告しなかつた」場合に該当しないとした原判決の解釈適用は失当であつて、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあることが認められるから、論旨は理由があり、原判決は爾余の論旨についての判断をまつまでもなくこの点において破棄を免れないものである。 よつて、本件控訴は理由があるから、原判決の有罪部分についての量刑不当の論旨については後に説明するところに譲り、刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八〇条に従い、原判決を破棄したうえ、同法第四〇〇条但書の規定に従い、更に、自ら、次のように判決をする。 (罪となるべき事実)原判決が無罪とした本件公訴事実第四につき、被告人は、昭和三八年七月一〇日午後一一時三〇分頃今市市a町b番地附近の通称E街道において、普通貨物自動車を運転中、業務上の過失によりFおよびGに傷害を負わせたのに、その事故発生の日時、場所等法令に定める事項を直ちにもよりの警察署の警察官に報告しなかつたものである。と認定するほか、原判決が有罪として認定した各事実は原判決が認定したとおりであるから、原判決の(罪となるべき事実)および(証拠の標目)欄の内容を全部引用する。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)法律に照らすに、原判示第一の所為中無免許運転の点は道路交通法第六四条、第一一八条第一項第一号、罰金等臨時措置法第二条第 の標目)欄の内容を全部引用する。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)法律に照らすに、原判示第一の所為中無免許運転の点は道路交通法第六四条、第一一八条第一項第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項に、酒酔運転の点は道路交通法第六五条、第一一八条第一項第二号(改正前)、昭和三九年法律第九一号附則第一七項、罰金等臨時措置法第二条第一項に、原判示第二の業務上過失致死傷の点は各刑法第二一一条前段、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号に、当裁判所が有罪と認定した報告義務違反の点は道路交通法第七二条第一項後段、第一一九条第一項第一〇号、罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、右無免許運転と酒酔運転および業務上過失致死傷の各所為はそれぞれ一個の行為にして二個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段、第一〇条により、前者については犯情が重いと認める酒酔運転の罪の刑、後者については犯情が重いと認めるFに対する業務上過失致死罪の刑をもつて処断することとし、所定刑中酒酔運転の罪、報告義務違反の罪については懲役刑を、業務上過失致死罪については禁錮刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により重い業務上過失致死罪の刑に同法第四七条但書の制限に従つて併合罪の加重をした刑期の範囲内において処断すべく、量刑について按ずるに、記録を精査し、かつ、当審における事実取調の結果を参酌し、これらに現われた本件犯行の罪質、態様、動機過失の程度、被告人の年令、性行、経歴、家庭の事情、犯罪後の情況、本件犯行の社会的影響等量刑の資料となるべき諸般の情状を総合考察し殊に、本件犯行が、無免許、酒酔い運転で、警察官に対する報告義務を尽さず、しかも過失の程度およびその結果が重いものであるばかりでなく、被告人がさきにも 響等量刑の資料となるべき諸般の情状を総合考察し殊に、本件犯行が、無免許、酒酔い運転で、警察官に対する報告義務を尽さず、しかも過失の程度およびその結果が重いものであるばかりでなく、被告人がさきにも道路交通法違反罪(無免許運転)によつて罰金刑に処せられたことを考慮すれば被告人の刑責は軽くないものではあるが、被害者に、原判決がいうように、年若い被告人を飲酒に出かけることに誘い、酒酔い運転であることを承知しながら被告人運転の自動車に同乗したという事情があること、被告人が被害者Fの遺族と示談をとげ、示談の約定に従つて慰籍料の月賦支払いを誠実に履行していること、被告人が未だ年若い者であつて、本件非行を深く悔悟していると認められること等を斜酌すれば、被告人に対しては禁錮四月を科するを相当と思料されるので、これが言渡をし、原審および当審の訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文に従い全部被告人に負担させることとし、主文のように判決をする。 (裁判長判事加納駿平判事河本文夫判事清水春三)

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