【DRY-RUN】主 文 被上告人の本訴請求中被上告人が上告人に対し被上告人施行の土地改良 事業に係る昭和四六年三月一四日の換地計画についての同意並びに債務不履行に基 づく損害八八万六〇〇〇円及びこれに
主 文 被上告人の本訴請求中被上告人が上告人に対し被上告人施行の土地改良 事業に係る昭和四六年三月一四日の換地計画についての同意並びに債務不履行に基 づく損害八八万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五一年二月一七日から支払ずみま で年五分の割合による金員の支払を求める請求を認容した部分につき、原判決を破 棄し、第一審判決を取り消す。 右部分につき被上告人の請求を棄却する。 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 理 由 上告代理人柴田久雄の上告理由第一点について 本件記録によれば、所論の点に関する被上告人の主張は、(一) 被上告人は、上 告人外六五名をもつて組織している土地改良法に基づき設立した任意組合であつて、 昭和四三年九月二五日同法に基づく公告をし、昭和四四年三月一八日秋田県知事の 認可を得たものである、(二) 被上告人は、組合設立の趣旨に従い土地改良工事を 施行したうえ、昭和四四年五月一五日仮換地を指定し、上告人に対しては第一審判 決添付別紙(1)のとおりの配分をした、(三) 昭和四六年三月六日右改良事業の工 事が全部完成し、総会において上告人を除く六五名の組合員から換地計画の同意承 認を得たが、上告人がこれに同意しないため、換地計画に基づく登記手続等が不可 能な状態にある、(四) 被上告人は、上告人の換地計画に同意しないという右債務 不履行により合計八八万六〇〇〇円の損害を被つた、(五) よつて、被上告人は、 上告人に対し、本件換地計画についての同意に代わる裁判並びに右債務不履行に基 づく損害八八万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五一年二月一七日から支払ずみま で年五分の割合による遅延損害金の支払を求める、というのである。 これに対し、原審は、数人が共同して行なう土地改良事業においては、一定の場 - 1 - びこれに対する昭和五一年二月一七日から支払ずみま で年五分の割合による遅延損害金の支払を求める、というのである。 これに対し、原審は、数人が共同して行なう土地改良事業においては、一定の場 - 1 - 合換地計画について同意を義務づける規定はないが、右土地改良事業の共同施行主 体は一種の民法上の組合のような性質を有するものであるから、土地改良事業施行 に対する同意等により同意者と共同施行主体又は他の同意者等との間に私法上の契 約関係が生じ、右段階で将来換地等がされることが予想される場合には、換地計画 に同意しないことにつき合理的な正当事由の存しない限り、これに同意する意思が 黙示的に含まれており、組合員は右のような限定的な同意義務を負うものと解する のが相当であるとしたうえ、上告人は、被上告人の事業認可申請に同意したもので あり、しかも事業施行に関する段階で既に換地が予定されていることを了知してい たものであるから、上告人には、本件換地計画に同意しないことにつき合理的な正 当事由の存しない限り、これに同意すべき義務があるとし、かつ、上告人には本件 換地計画に同意しないことにつき合理的な正当事由が存しないなどの判断を示し、 被上告人の右請求を認容した。 ところで、土地改良法(昭和四七年法律第三七号による改正前のもの。以下「法」 という。)五二条三項によれば、土地改良区が行なう土地改良事業につき、その事 業の性質上必要があるものとして換地計画を定めるには、その計画に係る土地につ き所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使 用及び収益を目的とする権利を有するすべての者(以下「所有権等の権利を有する すべての者」という。)で組織する会議の議決(同項の者が三分の二以上出席し、 その議決権の三分の二以上で決する。)を経なければならないとされているが、法 を有するすべての者(以下「所有権等の権利を有する すべての者」という。)で組織する会議の議決(同項の者が三分の二以上出席し、 その議決権の三分の二以上で決する。)を経なければならないとされているが、法 九六条によれば、法三条に規定する資格を有する者数人が共同して法九五条一項の 規定により行なう土地改良事業(以下「共同施行の改良事業」という。)につき、 その事業の性質上必要があるものとして換地計画を定めるには、所有権等の権利を 有するすべての者の同意を得なければならないものとされている。このように、共 同施行の改良事業において、換地計画を定めるにつき所有権等の権利を有するすべ - 2 - ての者の同意を得なければならないとした法意は、共同施行の改良事業にあつては、 施行者の組織する団体が任意団体であり、しかも、その施行に係る土地改良事業が 土地改良区を設立するまでもない簡易かつ小規模なものであつて、その公共性も稀 薄であるところから、所有権等の権利を有するすべての者の保護を第一義とし、そ の全員の同意がない限り、換地計画を定めることができないものとしたことにある というべきであるから、右のような法意に鑑みると、所有権等の権利を有するすべ ての者は、換地計画の内容、すなわち換地の用途、地積、水利、傾斜、温度その他 の自然条件及び利用条件、清算金の明細等諸般の事情を総合して、任意に換地計画 に同意するか否かを判断することが許されるものというべきであつて、他に換地計 画に対する同意を義務づける実定法上の根拠がない以上、右換地計画に同意すべき 法律上の義務を負うことはないものと解するのが相当である。もつとも、法九五条 二項、土地改良法施行規則六条、七三条によれば、共同施行の改良事業を行なおう とする場合において、知事に対する土地改良事業の認可を申請するには、土地改良 事業に係る計画の 相当である。もつとも、法九五条 二項、土地改良法施行規則六条、七三条によれば、共同施行の改良事業を行なおう とする場合において、知事に対する土地改良事業の認可を申請するには、土地改良 事業に係る計画の概要、すなわち当該土地改良事業の目的、その施行に係る地域の 所在及び現況等のほか、当該土地改良事業がその性質上換地計画を定める必要があ るものであるときはその換地計画の要領を定め、所有権等の権利を有するすべての 者の同意を得なければならないと定められているところ、原審の適法に確定したと ころによれば、被上告人の施行する土地改良事業では事業施行に関する同意を得る 段階で既に換地が予定されており、上告人はこのことを了知して右事業の認可を申 請するについて同意したというのであるが、右事業の認可を申請するにあたつて、 所有権等の権利を有するすべての者が換地計画によつて将来取得することになる換 地の用途、面積、利用条件及び清算金の明細等が明確にされていたという事情は存 しないのであるから、上告人が右事業の認可を申請するについて同意したことをも つて、右換地計画に同意する旨の意思が黙示的に含まれていたと解することもでき - 3 - ない。 そうすると、これと異なる見解に立つ原審の前記判断には土地改良法の解釈を誤 つた違法があるものというべきであり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすこと が明らかであるから、この点に関する論旨は理由がある。したがつて、その余の上 告理由について判断するまでもなく、被上告人の本訴請求中被上告人が上告人に対 し被上告人が施行中の土地改良事業に係る昭和四六年三月一四日の換地計画につい ての同意並びに債務不履行に基づく損害八八万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五 一年二月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める請求を認 容した部分につき、原判決及び 日の換地計画につい ての同意並びに債務不履行に基づく損害八八万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五 一年二月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める請求を認 容した部分につき、原判決及びこれと同旨の第一審判決は、破棄又は取消を免れず、 右部分につき被上告人の請求は棄却すべきものである。 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁 判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 伊 藤 正 己 裁判官 横 井 大 三 裁判官 木 戸 口 久 治 裁判官 安 岡 滿 彦 - 4 -
▼ クリックして全文を表示