- 1 - 主文 1 一審原告らの控訴を棄却する。 2 一審被告公社の控訴に基づき、原判決中一審被告公社敗訴部分を取り消す。 3 前項の部分につき、一審原告Aの請求を棄却する。 4 一審原告Aと一審被告公社との間では訴訟費用は第一、二審とも一審原告Aの負担とし、その余の一審原告らの控訴費用は同一審原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 一審被告らは、一審原告マツオファームに対し、連帯して3900万円及びこれに対する一審被告国については平成30年2月16日から、一審被告県及び同公社については同月15日から、いずれも支払済みまで年6%の割 合による金員を支払え。 ⑶ 一審被告らは、一審原告グリーンファームに対し、連帯して2000万円及びこれに対する一審被告国については平成30年2月16日から、一審被告県及び同公社については同月15日から、いずれも支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ⑷ 一審被告らは、国営諫早湾土地改良事業によって建設された潮受堤防の北部及び南部に設置されている各排水門の開門に関し、諫早湾の海水を調整池に流入させ、海水交換できるように開門操作をせよ。 ⑸ 一審被告らは、一審原告匠に対し、連帯して200万円及びこれに対する令和元年10月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑹ 一審被告らは、一審原告Aに対し、連帯して200万円及びこれに対する - 2 -令和元年10月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 一審被告公社主文第2 ⑹ 一審被告らは、一審原告Aに対し、連帯して200万円及びこれに対する - 2 -令和元年10月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 一審被告公社主文第2項及び第3項同旨第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 一審被告国は諫早湾内に潮受堤防や内部堤防を設置して干拓地(本件干拓地) を造成し、一審被告公社は本件干拓地の所有権を取得した。一審原告らは、一審被告公社から本件干拓地内の農地(本件干拓農地)の一部(本件土地1ないし4)につき賃借権の設定を受けて農業を営んでいた。 本件は、一審原告らが、本件干拓農地には潮受堤防の締め切りによるカモの食害及び冷害・熱害、排水設備の不備による排水不良並びに整備が不十分な荒 れ地であることによる雑草被害などの瑕疵があった、また、一審被告らは本件干拓農地が優良であるなどの虚偽宣伝をして営農を勧誘し、営農開始後は一審原告らに実現困難な除草剤の使用制限を課した、さらに、一審被告公社は一審原告Aに不合理な作付制限を課したなどと主張し、これらによって損害を被った等として、一審被告らに対し、①一審原告マツオファームにおいては、賃借 権の妨害排除・予防請求権に基づく潮受堤防の開門操作と、国家賠償法1条1項(対一審被告国及び同県)若しくは2条1項(対一審被告国)又は不法行為若しくは債務不履行(対一審被告公社)に基づく損害金3900万円及びこれに対する各訴状送達日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(改正前民法)所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払 を、②一審原告グリーンファームにおいては、①と同様の開門操作と①と同旨の損害金2000万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、③ 改正前民法)所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払 を、②一審原告グリーンファームにおいては、①と同様の開門操作と①と同旨の損害金2000万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、③一審原告匠においては、①と同旨の損害金200万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、④一審原告Aにおいては、①と同旨の損害金200万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、それぞれ求めた事案である。損害賠償請求は いずれも一部請求である。 - 3 -原審は、一審原告Aの一審被告公社に対する債務不履行(作付制限)に基づく請求を49万6916円及びこれに対する遅延損害金の限度で認容し、一審原告マツオファーム、同グリーンファーム及び同匠の各請求並びに一審原告Aのその余の請求をいずれも棄却した。 2 前提事実、争点及び当事者の主張は、後記3のとおり原判決を補正し、後記 4のとおり控訴理由を付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の2及び第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 原判決の補正⑴ 原判決8頁6行目と20行目の各「実施規定」を「実施規程」と改める。 ⑵ 原判決11頁9行目と20行目の各「対象土地」を「本件土地」と改める。 ⑶ 原判決21頁26行目の「視線排水路」を「支線排水路」と改める。 ⑷ 原判決26頁2行目の「平成22年秋作まで」から3行目の「できなくなった」までを「平成21年秋作から平成22年秋作まで3作にわたり、バレイショの2作空けを求める本件指示に従い、バレイショの作付けが制限された」と改める。 4 控訴理由⑴ 一審原告ら(ただし、カ及びクは一審原告Aのみ、キは一審原告マツオファーム及び一審原告グリーンファームのみの主張)ア本 作付けが制限された」と改める。 4 控訴理由⑴ 一審原告ら(ただし、カ及びクは一審原告Aのみ、キは一審原告マツオファーム及び一審原告グリーンファームのみの主張)ア本件干拓農地には、カモの食害や冷害・熱害が生じるという瑕疵があった。その原因は潮受堤防の締め切りである。 カモの食害カモは調整池を休息場として集まるが、調整池は浮遊懸濁物質が多く透明度が低いためカモの餌となる水草が育たず、その結果、カモは本件干拓農地を餌場とするようになって、食害が生じた。本件干拓地周辺を対象とした鳥類ポイントセンサス調査(甲5)で、潮受堤防締め切り後 のカモの増加が裏付けられている。諫早湾の他の地域にはカモ増加の独 - 4 -自の要因は認められないから、諫早湾全域を対象とする環境省の生息調査(乙19)は、本件干拓地周辺のカモ類の増加を反映したものと解される。九州全体でカモによる食害が増えているのは、本件干拓地周辺とは別の原因によるものと考えられ、潮受堤防締め切りが原因であることを否定する根拠にはならない。 冷害・熱害本件干拓地は、潮受堤防の締め切りによって内陸型の気候となり、気温の日較差や年較差が大きくなって冷害や熱害が生じた。月平均気温、日最高・最低気温の各月平均の数値から潮受堤防締め切りによる冷害・熱害の発生を否定することはできない。 イ本件干拓農地には排水設備の不備があって排水不良が生じるという瑕疵があった。 本件干拓農地の広い範囲で排水不良が生じていたことは、その原因が排水設備の不備であったことを裏付ける。そして、排水設備や土壌は圃場ごとに大きくは異ならないから、本件土地1ないし4でも排水不良が生じて いたと推認することがで が生じていたことは、その原因が排水設備の不備であったことを裏付ける。そして、排水設備や土壌は圃場ごとに大きくは異ならないから、本件土地1ないし4でも排水不良が生じて いたと推認することができる。 ウ本件干拓農地は、整備が不十分で荒れ地というべき状態であり、そのため雑草被害が生じるという瑕疵があった。 エ一審被告らは、公募にあたり、本件干拓農地が優良であるなどの虚偽宣伝をした。 すなわち、一審被告らは、公募の際、本件干拓農地に前記アないしウの各瑕疵があること、本件干拓農地がバレイショの栽培に適しておらず、かんがい用水の水質が悪い(水質保全目標値を満たさない)上、ローテーション制で自由に使えないこと、これらのため採算が取れないことが見込まれたこと、干拓地での畑作営農の先行事例(石川県の河北潟干拓地、島根・ 鳥取県の中海干拓地)はいずれも失敗したことなどの不利益な情報を提供 - 5 -せず、かえって、本件干拓農地がバレイショの栽培に適しており、かんがい用水の水質は良く、自由に使うことができ、年間七、八百万円の所得を得られるなどと虚偽の宣伝をした。 オ一審被告らは、一審原告らに5年で環境型農業を実現させるため、除草剤を極力使用しないよう求めたが、これは実現困難であった。10年経過 後も営農者の約半分は達成できていない。 カ一審被告公社は、一審原告Aに不合理な作付制限(バレイショの作付けを2作空けること)を課した。 このような判断は営農者に委ねるべきである。バレイショの連作は可能であり、むしろ、2作以上空けることは不適切である。なお、一審原告A が抗議しなかったのは、抗議しても無駄と諦めていただけである。 キ一審原告マツオファーム及び一審原 ショの連作は可能であり、むしろ、2作以上空けることは不適切である。なお、一審原告A が抗議しなかったのは、抗議しても無駄と諦めていただけである。 キ一審原告マツオファーム及び一審原告グリーンファームはいずれも賃借権を失っていない。なお、仮に一審原告マツオファームが賃借権を失っていたとしても、それは審査委員会の実質的審査を経ずに再設定を否定するという一審被告公社の不適切な対応によるものであるから、一審原告マツ オファームの責めに帰すべきではない。 ク一審被告公社が本件土地4にロープ等を張って一審原告Aの耕作を妨げた土地の範囲は3.6haを下らない。 ⑵ 一審被告公社ア一審被告公社が本件土地4にロープ等を張った行為は、一審原告Aに対 する債務不履行を構成しない。 一審被告公社の前記行為は、適正な営農指導であり、一審原告Aの承諾もあった。すなわち、一審原告Aは、営農開始当初から、人手などの経営資源が不足して圃場全体の栽培管理ができず、リース料の滞納もあったので、一審被告公社は、圃場の一部に経営資源を集中させて収益改善を図っ た方がよい旨説明し、一審原告Aの承諾を得た上で、圃場に目印としての - 6 -ロープ等を張ったのであり、一審原告Aはこれに異議を述べなかった。なお、これに従わないと不利益を受けるわけではなく、強制力はない。 イ一審被告公社は、令和5年12月6日の本件口頭弁論期日において、一審原告Aに対し、一審被告公社のリース料等債権300万7706円とその遅延損害金を自働債権、一審原告Aの損害賠償請求権とその遅延損害金 を受働債権として対当額で相殺するとの意思表示をした。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、一審原告らの請求をいずれも棄却する 損害金を自働債権、一審原告Aの損害賠償請求権とその遅延損害金 を受働債権として対当額で相殺するとの意思表示をした。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、一審原告らの請求をいずれも棄却するのが相当と判断する。その理由は、後記2のとおり原判決を補正し、後記3のとおり控訴理由に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第4の1ないし4及び6に記 載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正⑴ 原判決52頁17行目から21行目までを削る。 ⑵ 原判決54頁8行目の「法人1、個人」を「法人1、個人6」と改める。 ⑶ 原判決65頁11行目の「いえず、不備があった」を「いえなかった」と、 66頁13行目の「の不備による」を「が十分でない」とそれぞれ改める。 ⑷ 原判決68頁9行目の「約1週間」を「約1か月」と改める。 ⑸ 原判決70頁18行目の「平成22年秋作まで」から19行目の「作付けができず」までを「平成21年秋作から平成22年秋作まで3作にわたり、バレイショの作付けが制限され」と改める。 ⑹ 原判決71頁1行目末尾に「なお、前記指導が一審原告Aに対する嫌がらせ等不当な目的をもってされたと認めるに足りる証拠はない。かえって、一審原告Aは、営農開始当初から、人手等の経営資源が不足して十分な栽培管理ができず、一審被告公社に支払うべきリース料等を滞納していたことがうかがわれ(丙89、原審証人B)、前記指導はこのような状況を改善するた めのものであったとみることができる。」を加える。 - 7 -⑺ 原判決71頁2行目から5行目までを削る。 ⑻ 原判決71頁7行目から72頁7行目までを次のとおり改める。 「 証拠(甲162、丙89、原審証人B、 を加える。 - 7 -⑺ 原判決71頁2行目から5行目までを削る。 ⑻ 原判決71頁7行目から72頁7行目までを次のとおり改める。 「 証拠(甲162、丙89、原審証人B、一審原告A)によれば、一審被告公社の職員は、平成22年7月頃、一審原告Aの経営資源を集中させて収益を改善させるため、あらかじめ一審原告Aに説明した上で、中央干拓 地5-10-2において、北側1に対して南側2くらいの割合になるよう、東西に複数の杭を打ってその間にロープ又はテープ(以下、単に「ロープ」という。)を張り、立ち会った一審原告Aに対し、北側部分(以下「制限部分」という。)には作付けをしないよう指示したこと、一審原告Aは、この指示に異議を述べず、制限部分には作付けをしなかったこと、 平成23年2月頃、一審被告県の職員が制限部分にも作付けしてよい旨告げ、杭やロープも撤去されたことが認められる。なお、前記指示に際し、一審被告公社の職員が、これに従わない場合の制裁等の不利益を告知したことの主張立証はない。 そうすると、前記作付制限の指示が強制にわたるようなものであったと は認められず、一審原告Aも異議を述べずこれに従っていたものということができるから、前記指示が営農妨害に当たるということはできない。単にロープで圃場を区画したことをもって強制ということはできない。なお、前記指示が不当な目的でされたことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、前記のとおり、一審原告Aが、営農開始当初から十分な栽培管理 ができず、リース料等を滞納していたことがうかがわれることに照らすと、前記指示も、一審原告Aの収益改善を目的とするものとして相応の合理性があるということができる。」⑼ 原判決74頁10行目の「不備」を「十分でない 滞納していたことがうかがわれることに照らすと、前記指示も、一審原告Aの収益改善を目的とするものとして相応の合理性があるということができる。」⑼ 原判決74頁10行目の「不備」を「十分でないこと」と改める。 ⑽ 原判決76頁23行目から77頁6行目までを「前記2⑸イのとおり、一 審被告公社における指示が一審原告Aに対する営農妨害に当たるとは認めら - 8 -れず、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。」と改める。 3 控訴理由に対する判断⑴ 一審原告らの控訴理由についてア潮受堤防の締め切りによって本件干拓農地でカモの食害や冷害・熱害が 生じるという因果関係が認められないことは、原判決「事実及び理由」第4の2⑴⑵のとおりである。 カモの食害本件干拓地周辺を対象とした鳥類ポイントセンサス調査(甲5、乙18)によれば、食害ガモの確認数は、平成9年に潮受堤防が締め切られ た後約8倍になり、その後も概ね漸増していることが認められる。しかし、乙18によれば、前記調査では、潮受堤防が締め切られた後調査地点や頻度が増えたことが認められ、前記確認数の増加はこのような調査方法の変化に基づく可能性があるから、締め切りと食害増加との因果関係が裏付けられているとはいえない。九州全体でカモの食害が増えてい る原因が本件干拓農地でカモの食害が増えている原因と異なっていることを認めるに足りる証拠もない。なお、証拠(丙10、丙53)によれば、食害ガモは淡水ガモであり、水面付近の水草を採食することが認められるから、潮受堤防が締め切られて調整池の透明度が低くなり、水面下の水草が育たなくなるという機序が認められるとしても、これによっ てその餌が不足して本件干拓農 付近の水草を採食することが認められるから、潮受堤防が締め切られて調整池の透明度が低くなり、水面下の水草が育たなくなるという機序が認められるとしても、これによっ てその餌が不足して本件干拓農地に食害を及ぼすという因果関係が成立するとは認め難い。 冷害・熱害本件干拓地近辺での気温の日較差や年較差が、平成9年に潮受堤防が締め切られた後に大きくなったとしても、原判決「認定事実」⑷ウのと おり、長崎地方気象台においても同様の傾向が見られることに照らすと、 - 9 -この変化が潮受け堤防の締め切りによるものであるということはできない。また、本件干拓地で生じた気温の日較差や年較差の拡大によって、一審原告らが主張する冷害・熱害(寒さや暑さで作物に被害が出ること)が生じたことを認めるに足りる証拠はない。 イ本件干拓農地で排水設備の不備が認められないことは、原判決「事実及 び理由」第4の2⑶のとおりである。 本件干拓農地では、平成20年の営農開始当初から排水不良が相当の範囲で継続的に生じていたから、排水設備が必ずしも十分でなかった可能性は否定できないが、排水不良や被害の具体的状況や、それと現状の排水設備との関係、整備されるべき排水設備等について、具体的な主張立証はな いのであって、本件干拓農地に瑕疵があるということはできない。また、平成21年に本件干拓農地の約6分の1に排水改善工事が実施されたことをもって直ちに、一審原告らに割り当てられた圃場の瑕疵や被害の存在を推認することはできない。なお、排水不良は、土壌の性質や排水設備の状況だけでなく、営農による圃場の勾配の変化、暗渠排水管の維持管理の 状況等によっても生じ得、一審原告マツオファームや同グリーンファームは深耕や暗渠排水管の洗浄 不良は、土壌の性質や排水設備の状況だけでなく、営農による圃場の勾配の変化、暗渠排水管の維持管理の 状況等によっても生じ得、一審原告マツオファームや同グリーンファームは深耕や暗渠排水管の洗浄を実施していなかったのであって(原審認定事実⑹ウ、原判決「事実及び理由」第4の2⑶)、生じている排水不良の原因がこのようなものである可能性も否定できない。 ウ一審被告らによる本件干拓農地の整備が不十分であり、これによって雑 草被害が生じたことを認めるに足りる証拠はない。 なお、証拠(乙42、乙43)によれば、一審被告国は、平成20年4月の営農開始に先立ち、本件干拓農地に対して反転耕起や整地工、暗渠排水工、弾丸暗渠工、緑肥栽培工等の農地整備を実施したことが認められるところ、これらが不十分・不適切であったことの具体的立証もない。 エ一審被告らが本件干拓農地について虚偽宣伝をしたと認められないこと - 10 -は、原判決「事実及び理由」第4の3のとおりである。 前記アないしウのとおり、本件干拓農地に一審原告ら主張の瑕疵があったとはいえないから、一審被告らにその告知義務も認められない。一審被告らが一審原告らに対し、本件干拓地以外の干拓地に関する情報を提供すべき義務を負っていたと解すべき根拠もない。 本件干拓農地がバレイショの栽培に適していないことを認めるに足りる証拠はない。農政ジャーナリストの青木が平成13年に発表した論文(青木論文、甲85)には、干拓地でイモを栽培すると水っぽく味の薄いものができやすい旨の記載があるが、バレイショは本件干拓農地で順調に生育し、栽培適応性が高い旨の甲109ないし111及び甲116 (諫干だより)、甲126(長崎県総合農林試験場の論文)及び丙51 のができやすい旨の記載があるが、バレイショは本件干拓農地で順調に生育し、栽培適応性が高い旨の甲109ないし111及び甲116 (諫干だより)、甲126(長崎県総合農林試験場の論文)及び丙51(一審被告県の営農指針)に照らし、採用できない。 本件干拓農地のかんがい用水の水質が農耕に適さないことを認めるに足りる証拠はない。かえって、かんがい用水として利用されている調整池の水質は、有明海に流入する河川等の水質に劣るものでなく(乙40、 丙14)、農業用水として問題なく利用し得るものであることが認められる(原判決「事実及び理由」第4の1⑸)。 また、一審被告らが、公募の際に、かんがい用水を自由に使うことができる旨説明したことを認めるに足りる証拠はない。かえって、証拠(甲142、甲187)によれば、本件干拓農地の営農者らは、営農開始に 先立ち、かんがい用水を決められた時間に使うローテーション方式が適用される旨の説明を受けたことが認められる。 本件干拓農地での営農が一般に採算の取れない蓋然性が高いことを認めるに足りる証拠はない。本件干拓農地では、原判決「事実及び理由」第4の1⑵のとおり、耕地利用率が約170%と他の地域の2倍近くに 上ること、推定生産額が平成28年時点で平成21年の約1.6倍まで - 11 -増加していること、賃借料の納入率が第1期には80%ほどであったのが第3期にはほぼ100%まで上昇していること、本件干拓農地で営農する約40の経営体のうち、経営不振・賃借料未納の理由で撤退したのは、平成20年から平成28年までの8年間で3件にとどまることに照らせば、本件干拓農地での営農は一般に採算が取れる状況にあることが うかがわれる。 オ一審被告らが一審原告 で撤退したのは、平成20年から平成28年までの8年間で3件にとどまることに照らせば、本件干拓農地での営農は一般に採算が取れる状況にあることが うかがわれる。 オ一審被告らが一審原告らに実現困難な除草剤の使用制限を課したと認められないことは、原判決「事実及び理由」第4の2⑷のとおりである。 一審被告県が平成23年に発行した「諫早湾干拓地における大規模環境保全型農業技術対策の手引き」(甲106)には、「諫早湾干拓地では環 境保全型農業を推進している観点から、除草剤を極力使用しない、また将来的には使用しない営農に取り組む必要がある。」との記載があるが、その文言に照らしても、除草剤の使用抑制を進めることを超えて、これを禁じるものとは解されず、他に一審被告らが一審原告らに除草剤の使用を禁じたことを認めるに足りる証拠もない。 カ一審被告公社が一審原告Aに不合理な作付制限を課したと認められないことは、補正後の原判決「事実及び理由」第4の2⑸のとおりである。 バレイショを連作するか否かの判断が、通常は営農者の裁量に委ねられる事項であるとしても、一審原告Aが平成20年の営農開始当初から一審被告公社に支払うべきリース料等を滞納していたことからは、一審原告A の本件干拓農地での営農が必ずしも適切でなかったことが推認され、一般に、バレイショの連作が収穫量の低下をもたらすとされていることに鑑みると、一審被告公社が一審原告Aに対して2作空けるよう指導したことが不合理であるとはいえない。前記認定の経緯に照らすと、一審原告Aも、その趣旨を理解して抗議しなかったものと推認することができる。 キ一審原告マツオファームが本件土地1の賃借権を、一審原告グリーンフ - 12 -ァームが本 すと、一審原告Aも、その趣旨を理解して抗議しなかったものと推認することができる。 キ一審原告マツオファームが本件土地1の賃借権を、一審原告グリーンフ - 12 -ァームが本件土地2の賃借権を、いずれも有していないことは、原判決「事実及び理由」第4の6のとおりである。 その点をおくとしても、前記アのとおり、潮受堤防の締め切りによって本件干拓農地でカモの食害や冷害・熱害が生じるという因果関係は認められないから、潮受堤防の締め切りによって前記一審原告らによる本件土地 1・2の使用収益が妨げられるという関係にはないというべきである。 ⑵ 一審被告公社の控訴理由について一審被告公社が本件土地4にロープを張った行為が一審原告Aに対する債務不履行を構成しないことは、補正後の原判決「事実及び理由」第4の2⑸イのとおりである。 第4 結論以上によれば、一審原告らの請求は、いずれも棄却すべきであり、これと異なる原判決は一部相当でない。よって、一審原告らの控訴は理由がないからこれを棄却し、一審被告公社の控訴は理由があるから原判決中一審被告公社敗訴部分を取り消してその部分について一審原告Aの請求を棄却することとして、 主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学 - 13 -裁判長裁判官久保田浩史は、差支えのため署名押印することができない。 裁判官志賀勝 裁判長 裁判官久保田浩史は、差支えのため署名押印することができない。 裁判官志賀勝
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