令和5(行ケ)10008 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年6月12日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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判決文本文32,104 文字)

令和5年6月12日判決言渡 令和5年(行ケ)第10008号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年4月24日判決 原告大成建設株式会社(以下「原告会社」という。) 原告株式会社隈研吾建築都市設計事務所(以下「原告事務所」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士小坂準記 同訴訟代理人弁理士茜ヶ久保公二 同訴訟代理人弁護士蕪城雄一郎 同訴訟代理人弁護士細沼萌葉 被告小林瓦工業株式会社(以下「被告小林瓦」という。) 被告碧南窯業株式会社(以下「被告碧南」という。) 被告株式会社神仲(以下、被告小林瓦及び被告碧南と併せ「被告ら」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士鯉沼敦規 同訴訟代理人弁護士中前佑一 主文 1 特許庁が無効2021-880006号事件について令和4年12月13日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 文 1 特許庁が無効2021-880006号事件について令和4年12月13日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文第1項同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等被告らは、意匠に係る物品を「瓦」とし、令和2年6月30日に設定登録を 受けた意匠(登録第1663938号、以下「本件意匠」といい、その権利を「本件意匠権」という。)の意匠権者である。 本件意匠は、平成29年6月16日に特許出願され(特願2017-118407)、令和2年2月14日に、特許法44条に基づき、同特許出願の一部を新たな特許出願(特願2020-22167)とした上、意匠法13条1項に 基づき、同特許出願を意匠登録出願(意願2020-2824)に変更して、令和2年6月30日に設定登録を受けたものである。 原告らは、令和3年5月18日、本件意匠について、意匠登録無効審判を請求した(無効2021-880006号)。 特許庁は、令和4年12月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」と する審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月22日に原告ら に送達された。 原告らは、令和5年1月20日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 本件に関連する基本的な事実関係等 ア沖縄県石垣市は、同市役所の新庁舎建設に当たり、公募によるプロポー ザル方式により設計者の選定作業を行うこととし、平成28年7月14日に、その最終審査の公開プレゼンテーション・ヒアリングを行い、同日、原告事務所は、提案者としてプロポーザル(以下「本件プロポーザル」という。)を行った(甲9)。 本件プロポーザルにおいて、原告事 の最終審査の公開プレゼンテーション・ヒアリングを行い、同日、原告事務所は、提案者としてプロポーザル(以下「本件プロポーザル」という。)を行った(甲9)。 本件プロポーザルにおいて、原告事務所はプレゼンテーション資料を提 出したところ、その資料には、屋根の赤瓦に漆喰の白い模様が示されていた(甲10)。 イ石垣市は、平成28年8月8日、新庁舎の建設工事の設計を、原告事務所らに発注した。被告小林瓦と原告事務所は、同月頃から、同市役所新庁舎の屋根に用いる瓦の施工に関連して、関係を持つようになった(甲8)。 ウ平成29年2月16日に、被告小林瓦は、原告事務所に、瓦のパンフレット(甲4。以下「本件パンフレット」という。)及び写真(甲5。以下「本件写真」という。)を交付した。 エ平成29年2月19日に、下記の会見に係る石垣市における市長プレゼンテーション(以下「本件説明会」という。)が行われた。 被告らは、平成29年6月16日、本件意匠に係る出願の元となる特許出願(特願2017-118407。発明の名称「疑似琉球瓦(疑似沖縄漆喰瓦)の構造と、その製造方法」。甲26。以下「本件特許出願」という。)をした。 被告らは、出願代理人甲弁理士を通じ、平成29年6月16日、同出願に 関し、「発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(甲3。 以下「本件証明書」という。)を提出した。その資料として、同年2月20日付け八重山毎日新聞及び石垣市役所ホームページの新庁舎基本設計説明会の記事の写しが添付されている。 本件証明書には、以下のとおり記載されている。 「1.公開の事実 ① 会見日平成29年2月19日② 会見場所石垣市健康福祉センター1F集団検診ホール(沖縄県石 付されている。 本件証明書には、以下のとおり記載されている。 「1.公開の事実 ① 会見日平成29年2月19日② 会見場所石垣市健康福祉センター1F集団検診ホール(沖縄県石垣市登野城1357-1)③ 公開者乙1(乙の誤植。なお、④及び2.⑥も同じ)④ 公開された発明の内容 乙1が、石垣市健康福祉センター1F集団検診ホールにて開催された、石垣市新庁舎基本設計説明会で、石垣市役所新庁舎の設計コンセプトを説明し、丙(小林瓦工業株式会社)、丁(碧南窯業株式会社)、戊(株式会社神仲)らが発明した、「しっくいの代わりに上薬を使った赤瓦」を使用することを報告した。 2.特許を受ける権利の承継等の事実(省略)⑥ 行為時の権利者と公開者との関係等について丙、丁及び戊は、平成29年2月1日に乙1に対し、平成29年2月19日の石垣市新庁舎基本設計説明会にて発明を公開するよう依頼し、 その依頼に基づいて、乙1が、「しっくいの代わりに上薬を使った赤瓦」の開発について、公開の事実に記載のとおり公開を行った。 (省略)」 石垣市は、令和元年7月1日、新庁舎の建設工事の施工を原告会社らによる共同企業体に発注し、同企業体は、屋根の瓦工事の施工を丸鹿セラミック ス株式会社(以下「丸鹿セラミックス」という。)に発注した(甲8)。 被告らは、令和2年2月13日、本件特許出願について、分割出願をした上で、その特許出願を本件意匠に係る意匠登録出願に変更した。 被告小林瓦は、丸鹿セラミックス、有限会社三州鬼瓦センター及び株式会社ハイオーニーを債務者(以下、3名を併せて「債務者ら」という。)として、債務者らが製造・販売する瓦は、債権者である被告小林瓦の製造 被告小林瓦は、丸鹿セラミックス、有限会社三州鬼瓦センター及び株式会社ハイオーニーを債務者(以下、3名を併せて「債務者ら」という。)として、債務者らが製造・販売する瓦は、債権者である被告小林瓦の製造・販売する 商品名「ちゅら瓦」(全長322±4mm、全幅360±4mm、働き長さ245mm、働き幅273から288mm。以下「ちゅら瓦」という。)の形態を模倣したものであるとし、不正競争防止法2条1項3号に違反することを理由として、その製造・販売等の仮の差止め等を求める仮処分を、令和2年5月6日付けで、東京地方裁判所に申し立てた(甲43。東京地方裁判所令 和2年(ヨ)第22031号。以下「不正競争仮処分事件」という。)。 被告らは、令和2年6月30日、本件意匠につき、設定登録を受けた。 被告小林瓦は、債務者らに対し、本件意匠権に基づき、債務者らの製造・販売する瓦につき、その製造・販売等の仮の差止め及び廃棄等を求める仮処分を、令和2年8月13日付けで東京地方裁判所に申し立てた(甲6。東京 地方裁判所令和2年(ヨ)第22075号。以下「意匠権仮処分事件」という。)。 東京地方裁判所は、令和2年11月6日、不正競争仮処分事件につき、債務者らの製造・販売する瓦はちゅら瓦の形態を模倣するものであるとして、債務者らの製造・販売する琉球瓦につき、令和3年3月30日まで、譲渡、 貸し渡し、譲渡又は貸し渡しのための展示を禁止し、その余の申立てを却下する決定をした。同決定においては、被告小林瓦は、平成29年春頃、万葉(9寸判)の瓦型を調整することによって、疑似漆喰模様(釉薬を塗布するなどして、赤っぽい瓦において、伝統的な琉球瓦屋根では漆喰を埋め込む部分を白色とした模様をいう。)に相当する部分が2から5mmの厚み(肉盛) の瓦型を調整することによって、疑似漆喰模様(釉薬を塗布するなどして、赤っぽい瓦において、伝統的な琉球瓦屋根では漆喰を埋め込む部分を白色とした模様をいう。)に相当する部分が2から5mmの厚み(肉盛) を有することとなるようにして、その部分に釉薬を塗布して焼成し、素焼き に疑似漆喰模様を施した瓦を試作したが、種々の問題があったため、同部分に厚みを持たせる方法は採用しないことにしたこと、そして、平成28年11月頃に原告事務所に示した従前の試作品よりも、疑似漆喰模様の幅を広げることにより同部分を強調した瓦である被告小林瓦の製品(前記ちゅら瓦)を製造し、被告小林瓦はこの商品を原告事務所に提案したこと、原告事務所 の己(以下「己」という。)は、被告小林瓦に対して図面の作成を依頼し、被告小林瓦は石垣市役所の瓦工事にちゅら瓦を使用することを前提として仕舞図(CADデータ)を作成し、平成29年4月24日に己にメールに添付して送信したこと、以上の事実を一応認定した上で、ちゅら瓦の疑似漆喰模様は、伝統的な琉球瓦屋根に漆喰を埋め込む平瓦と丸瓦の境目に相当する部分 に、丸瓦に相当する部分の頭部を除いた周囲にコの字形に施されたものであるところ、燻化前の赤っぽい一体瓦におけるこのような白色の疑似漆喰模様は、商品の形態の特徴的部分であり、この商品の形態の特徴的部分においてちゅら瓦と債務者らの商品は酷似しているところ、これはありふれたものとも商品の機能を確保するために不可欠な形態であるともいえず、ちゅら瓦と 債務者らの商品との相違点がもたらす効果も極めて限られたものであるから、実質的に同一の商品であるとの判断を示した(甲43)。 原告らは、令和2年12月18日、意匠権仮処分事件に補助参加した(甲7)。 東京地方裁判所は、令和3年 果も極めて限られたものであるから、実質的に同一の商品であるとの判断を示した(甲43)。 原告らは、令和2年12月18日、意匠権仮処分事件に補助参加した(甲7)。 東京地方裁判所は、令和3年3月30日、意匠権仮処分事件につき、本件 パンフレット及び本件写真に記載された瓦(以下「本件模様瓦」という。)の意匠は、原告事務所に前記パンフレット及び写真が送付されたことで同事務所の従業員らに現実に知られたものであり、本件意匠は、その出願前に公然知られた本件模様瓦の意匠に類似し、意匠法3条1項3号の規定に違反してされたものとして意匠登録無効審判により無効とされるべきものであり、意 匠法41条、特許法104条の3第1項により本件意匠に係る権利を行使す ることができないとして、その申立てをいずれも却下する決定をした(甲8)。 前記の決定に対し、被告小林瓦は、抗告(令和3年(ラ)第10002号保全命令申立却下決定に対する即時抗告申立事件)をしたところ、令和3年6月11日、知的財産高等裁判所により、抗告を棄却する決定がされた(甲31)。 3 原告らが審判手続において主張した無効理由無効理由1(意匠法3条1項3号(新規性)違反)本件意匠は、意匠登録出願より前に公然知られた瓦の意匠である、「万葉」に釉薬を塗布して焼成し、疑似漆喰模様を施した本件模様瓦の意匠に類似し、本件模様瓦の意匠は本件パンフレット及び本件写真の交付により公然実施さ れたものであるから、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、本件意匠の登録は、同法48条1項1号により無効とされるべきである。 無効理由2(意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)違反) 本件意匠の登録は、意匠法 ものであり、本件意匠の登録は、同法48条1項1号により無効とされるべきである。 無効理由2(意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)違反) 本件意匠の登録は、意匠法15条1項において準用する特許法38条の規定に違反(共同出願違反)してされたものであって、意匠法48条1項1号により、無効とされるべきである。 4 審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであり、要するに、無効理 由1につき、本件模様瓦の意匠は、本件パンフレット及び本件写真を平成29年2月16日に原告事務所に交付したことにより、本件意匠出願前に公然知られた意匠となったが、本件パンフレット及び本件写真から認められる本件模様瓦の意匠に関しては、その背面、右側面及び底面の形状は不明であり、瓦を観察する需要者は、左側面形状、右側面形状及び底面形状に注意を払うというべ きであるから、それら形状が不明な本件模様瓦と本件意匠との相違が両意匠の 類否判断に及ぼす影響は大きく、背面の形態についても不明であることの類否判断に及ぼす影響も小さくはないから、これら相違点が類否判断に及ぼす影響が大きいことを考慮すると、本件意匠は、本件パンフレット及び本件写真から認められる本件模様瓦の意匠に類似せず、意匠法3条1項3号に掲げる意匠には該当しないので、同項柱書の規定により本件意匠について意匠登録を受ける ことができないとはいえない、無効理由2につき、乙(以下「乙」という。)が本件意匠の創作をしたということはできないので、乙又は原告事務所は本件意匠の意匠登録を受ける権利を有する者ではなく、本件意匠の登録が意匠法15条1項において準用する特許法38条の規定(共同出願)に違反してなされたものであるとはいえない、とするものである 事務所は本件意匠の意匠登録を受ける権利を有する者ではなく、本件意匠の登録が意匠法15条1項において準用する特許法38条の規定(共同出願)に違反してなされたものであるとはいえない、とするものである。 5 原告主張の取消事由取消事由1本件意匠と本件模様瓦の意匠との類否判断の誤り取消事由2共同出願違反の認定判断の誤り 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件意匠と本件模様瓦の意匠との類否判断の誤り)について〔原告らの主張〕両意匠の共通点及び相違点の評価本件意匠は「万葉」(甲81)という市販品の瓦を基礎としてそのまま利用 したものにすぎないものであり、遅くとも本件意匠の出願日とされる平成29年6月16日よりも相当程度前である平成12年には公知であった、市販品の瓦である「万葉」に、疑似漆喰模様を付したものである。本件意匠の背面、左側面、右側面及び底面は、市販品である「万葉」の形態そのものであるにもかかわらず、本件審決は、これらを不明なものとして相違点として取り上げ、需 要者が特に注目する部分として認定したのは誤りである。 本件審決は、需要者が、瓦が葺かれた状態についても着目する点を看過し、需要者は、瓦の背面、平面、底面、左側面及び右側面の形態に着目することを前提とし、両意匠の正面視に見られる「男瓦の両側部と上部に、コ字状のラインを270度回転して下方開口とした縦長の模様が形成されている。」、及び「男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、コ字状のラインの内側線 が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側ラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。」(本件意匠の具体的構成態様a及びb。以下「本件模様」という。)における共通点(共通点4)が類否判断に及 外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側ラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。」(本件意匠の具体的構成態様a及びb。以下「本件模様」という。)における共通点(共通点4)が類否判断に及ぼす影響は大きいと認定しつつも、両意匠の背面における相違点(相違点1)、並びに左側面形状、右側面形状及び底面形状における相違点(相違点2ないし4)が 類否判断に及ぼす影響が大きいと認定し、これらの相違点が類否判断に及ぼす影響が、上記共通点が需要者に与える美感を覆すとしたが、この点は誤りである。 被告の新規性喪失の例外についての審決の判断の誤りの主張に対する反論特許庁が公表する特許・実用新案審査基準(以下「審査基準」という。甲9 2。以下、意匠に読み替えて記載する。)では、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して同一の意匠が複数回公開された場合、意匠法4条2項の規定の適用を受けるためには、原則として、それぞれの公開の事実が、これを「証明する書面」に記載されていなければならないとされている。また、例外的に「証明する書面」の提出が不要となる場合においても、少なくとも、先の公開 についての「証明する書面」が提出され、2回目以降の公開が先の公開に基づくものであることが必要であるとされている。被告らは、本件パンフレット等の交付による公開の事実は、本件説明会における意匠公開者への情報提供行為であると主張するようであるが、被告小林瓦が本件パンフレット等を交付した経緯や、その体裁からしても、本件パンフレット等の交付が、本件説明会のた めには必要ないものであり、本件説明会における公開と何らの関連性もないこ とが明らかである。本件パンフレットには、瓦のデザインが把握できる写真以外に、「伝統的な琉球島瓦のイメージを めには必要ないものであり、本件説明会における公開と何らの関連性もないこ とが明らかである。本件パンフレットには、瓦のデザインが把握できる写真以外に、「伝統的な琉球島瓦のイメージを持つ新しい沖縄の屋根瓦のご提案」と大きな文字で書面のタイトルが付されており、さらに大きな文字で「美ら瓦」と商品名が記載されている。また、瓦の写真と同程度の大きさで「丸瓦に平瓦2段が一体化した、新しいタイプのかわらです。」「一体成型だから、軽くて、 雨、風、地震につよいかわらです」「釉薬で焼き付けた漆喰柄は永久に剥がれることはありません。」といった広告文が記載されていることも併せ考慮すると、少なくとも本件パンフレットは、単なる「広告用のチラシ」である。このような本件パンフレットの体裁からしても、被告小林瓦は原告事務所や石垣市への営業活動として、本件パンフレット等を交付したものと考えられ、本件パ ンフレット等の交付による公開は、本件説明会における公開とは何らの関連性もない。 したがって、本件パンフレット等の交付による公開は、例外的に「証明する書面」が不要となる場合の要件(「第2項の規定の適用が認められた意匠」の公開行為と密接に関連する公開行為によって公開された意匠であること(審査 基準第Ⅲ部第2章第5節4.2(ⅱ)))を充足しない。 また、被告らの主張によれば、平成29年2月19日に行われた本件説明会における公開の事実については、本件証明書によって証明がされている。他方で、本件パンフレット等の交付による本件模様瓦の意匠の公開は、同月16日になされたものである。 したがって、本件パンフレット等の交付は、本件説明会における公開よりも前であるから、例外的に「証明する書面」が不要となる場合の要件(「第2項の規定の適用が認めら 日になされたものである。 したがって、本件パンフレット等の交付は、本件説明会における公開よりも前であるから、例外的に「証明する書面」が不要となる場合の要件(「第2項の規定の適用が認められた意匠」の公開以降に公開された意匠であること(審査基準第Ⅲ部第2章第5節4.2(ⅲ)))を充足しない。 以上のとおり、平成29年2月16日の本件パンフレット等の交付による本 件模様瓦の意匠の公開の事実については、意匠法4条3項の「証明する書面」 が提出されていないところ、当該公開の事実は、例外的に「証明する書面」が不要となる場合の要件のいずれも充足しないから、意匠法4条2項の適用を受け得るものではない。 〔被告らの主張〕原告の主張に対する反論 意匠の類否は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うところ(意匠法24条2項参照)、需要者とは取引者も含むものであるから、本件においては、瓦工事を行う建設業者や屋根工事の施主をいうものと理解される。 したがって、意匠の類否判断においては、建設業者や施主が、瓦の形態のどの部分に着目するかという視点から評価するべきである。 いうまでもなく、瓦は屋根に葺くものであるから、葺かれた状態で視認できる外部的な形態については需要者である施主も建設業者も着目する部分である。それと同時に、本件審決が認定したように、建設業者は、瓦の設置や、非設置箇所との接合方法などにも気を配ることから、瓦の背面の形態に着目し、また、複数の瓦を上下左右に連続して組み合わせることから、瓦の平面、底面、 左側面及び右側面の形態にも着目し、全方向から瓦を観察する。審決のこの判断には一定程度説得力がある。 また、意匠の類否判断は、意匠を全体として観察することを要する。両意匠の基本的構成態様及 左側面及び右側面の形態にも着目し、全方向から瓦を観察する。審決のこの判断には一定程度説得力がある。 また、意匠の類否判断は、意匠を全体として観察することを要する。両意匠の基本的構成態様及び具体的態様の認定を通じて、総合的、全体的に判断すべきものである。ましてや、本件意匠は、部分意匠ではなく全体意匠であるから、 その全体の観察を通じて類否判断すべきであることはいうまでもない。 以上の観点から本件審決をみると、本件意匠及び本件模様瓦の基本的構成態様及び具体的構成態様については、本件審決が認定したとおりであり、両意匠の基本的構成態様は同一で、具体的構成態様において両者に相違がある。その最も大きな要因としては、本件意匠については六面図により全方向から観察 できる形態が明らかであることに対して、本件模様瓦は、正面と瓦葺き後の斜 め方向についての形態は本件パンフレット及び本件写真から明らかであるが、その他の形状は不明である。すなわち、①本件意匠と本件模様瓦の共通点1ないし6は、共通点4を除いて、出願前に公知の意匠であり(審決別紙第5及び6(甲27、30))、総合的に判断するとこれらの共通点が類否判断に及ぼす影響が小さいとする認定は首肯できる。②これに対して、相違点1ないし4の 形態については、本件意匠の形状が公知(甲27、30)であるとはいえ、本件模様瓦の形状が不明である以上、類否判断に及ぼす影響は大きいと評価せざるを得ない。背面や左右側面が、需要者である建設業者が着目し得る部分であることを考えると、少なくとも、本件模様瓦について当該部分の形状が不明であるにも関わらず、両意匠を比較して類似していると判断することはできない。 また、擬似漆喰模様の隆起の有無(相違点5)は、大きくはないが一定程度の影響はある 様瓦について当該部分の形状が不明であるにも関わらず、両意匠を比較して類似していると判断することはできない。 また、擬似漆喰模様の隆起の有無(相違点5)は、大きくはないが一定程度の影響はあるであろう。他方で相違点6ないし8の形態については、両意匠の形状は明らかであるが、目立って注意を惹くような相違ではないから、類否判断に及ぼす影響が小さいとする認定は首肯できる。③総合的に判断すると、共通点よりも相違点の方が類否判断により大きな影響を及ぼすという認定になら ざるを得ない。その結果、両意匠が別異のものと印象づけると結論づけた本件審決は、その認定判断において妥当なものであるといえる。本件審決の認定には誤りがない。 新規性喪失の例外についての審決の判断の誤り本件証明書(甲3)に記載のあるとおり、乙は、「しっくいの代わりに上薬 を使った赤瓦」の開発について、公開の事実に記載のとおり公開を行った。 本件証明書は、直接的には平成29年2月19日における公開事実を対象としているが、当該公開事実は、その前に、被告らの代表者らによる意匠公開者の乙に対する意匠についての情報提供行為があることを前提としている。同一人に対する情報提供行為を一つ一つ分解して公開事実と捉えて、一つでも捕 捉し損ねた事実があれば例外規定が適用されないというふうに厳格に法を解 釈適用することは、実務を煩雑にするばかりでなく、意匠の保護、創作の奨励、もって産業の発達に寄与するという法の目的(意匠法1条)の実現を非現実的なものにする。特に、本件のように、当時依頼した相手が事後になって、揚げ足取りのように公開事実を指摘して意匠権の無効を主張してくるような場合には、これに対応する手立てが限定されてしまうことになり、不都合は大きい。 さらに、意匠 時依頼した相手が事後になって、揚げ足取りのように公開事実を指摘して意匠権の無効を主張してくるような場合には、これに対応する手立てが限定されてしまうことになり、不都合は大きい。 さらに、意匠非創作者が当該意匠を公開する場合、意匠創作者の意匠公開者に対する情報提供行為について、新規性喪失の例外証明書への記載を要求する特許庁の指針もない(乙1)。したがって、新規性喪失の例外証明書に意匠公開者への情報提供行為を記載しなかったときに、当該情報提供行為を例外規定の適用外と判断することは、意匠創作者にあまりに酷である。 よって、「権利者の行為に起因して」公開に至った場合を狭く解して、例外規定の適用を限定するべきではない。本件意匠の登録は、意匠法4条2項・3項の要件を満たす。 したがって、本件意匠が新規性を喪失したという理由で無効となることはない。 本件パンフレット等の交付によっても「公然知られた」に該当しないことそもそも、公然知られた意匠の意匠登録が許されない趣旨は、出願時に新規性を有していない意匠に新たに意匠権を付与してインセンティブを与えても、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与(意匠法1条)することがなく、かえってこれを阻害する点にある。このようにインセンティブを与えるべきで ない場合である「公然知られた」とは、不特定人又は多数の者に現実に知られている状態にあることを要すると解されている(甲53)。そして、不特定人という以上、当該意匠と特殊な関係にある者や、ごく偶然の事情を利用した者だけが知っているだけでは、未だ「公然知られた」状態にあるとはいえない。 この点を敷衍すると、守秘義務を課せられた者が意匠を知った場合には、当 然のことながら公知であるとはいえないが、信義則上または社会通念上若しく 、未だ「公然知られた」状態にあるとはいえない。 この点を敷衍すると、守秘義務を課せられた者が意匠を知った場合には、当 然のことながら公知であるとはいえないが、信義則上または社会通念上若しく は商慣習上、秘密扱いとすることを暗黙のうちに求められ、かつこれを期待することができる関係にある者が知った場合にも、未だ「公然知られた」状態にあるとはいえない。すなわち、守秘義務契約を締結している当事者が該当することは勿論のこと、特に黙秘義務を課せられた場合のみならず、社会通念上又は商慣習上(あるいは信義則上)秘密扱いとすることが暗黙のうちに求められ、 かつ、これを期待することができると認められる関係又は状況にある場合をも含むと解される。 このように、秘密にすべき関係があるといえるためには、必ずしも、秘密保持義務が認められる必要まではなく、また、取引相手に対する秘密保持の指示、要求、それを理解したことの確認なども必要ではない。さらに、取引相手が秘 密保持義務を課せられている認識の有無は問われない。あくまで、開示の相手が秘密扱いとすることを暗黙のうちに求められ、かつ、開示者が期待し信頼する関係にあればよい。すなわち、当事者間の客観的な関係性に焦点を当てて、秘密保持義務にまでは至らないにしても、求められ期待・信頼される関係があるかどうかが判断されるべきであり、開示を受けた者が、秘密であること、あ るいは、秘密保持義務が課せられていることの認識は必要なく、秘密の認識可能性があるといえるだけの「客観的な状況」があればよい。 被告小林瓦代表者丙(以下「丙」という。)は、本件意匠の共同開発者と相談し、原告事務所からの課題を反映した試作品を製作して、同事務所に交付した。結果的に、この試作品は出来栄えや手間・コストなどの面で思わし 林瓦代表者丙(以下「丙」という。)は、本件意匠の共同開発者と相談し、原告事務所からの課題を反映した試作品を製作して、同事務所に交付した。結果的に、この試作品は出来栄えや手間・コストなどの面で思わしくなか ったため、丙の判断で不採用としたものの、その代わりに擬似漆喰模様のコの字の模様の幅を若干広げるデザインを採用することにした。万一、この段階でデザインが第三者に盗用されるなどして瓦が模倣製造され、先に販売される事態が生じれば、これを新開発商品として宣伝してきた乙の面目を潰すことになることのみならず、石垣市と共に抱いていた夢を壊すことになりかねないこと を丙は懸念し、弁理士に、試作品の各種権利化に向けた準備を依頼することと した。 平成29年6月16日、被告らは、開発段階の瓦について本件特許出願をした(甲26)。同月末から、被告小林瓦は、石垣市新庁舎建設予定地にて、瓦の耐久性の実証実験を開始した(甲46写真①)。これまで本葺一体瓦について沖縄地方での使用実績に乏しかったことから、実証実験の実施は不可欠であ り、その結果が確認できていない段階で、被告らが瓦の受注・生産などできるはずもないし、その予定もなかった。 本件説明会における発表前の段階において、乙や石垣市という工事関係者に限って瓦のデザインを開示したとしても、なお「秘密を脱した」というには及ばない。また、原告事務所には、瓦の形態が秘密であることの認識可能性が あったといえる客観的な状況も存在する。被告らの方から、世界的に著名な建築家に対して、瓦を披露するからその前に秘密保持契約を締結せよ、などと要求することなど実務上ナンセンスなことであるし、立場上、要求できるはずもない(甲85)。 本件パンフレットを制作・交付した趣旨は、原告事務所に、試作段階で らその前に秘密保持契約を締結せよ、などと要求することなど実務上ナンセンスなことであるし、立場上、要求できるはずもない(甲85)。 本件パンフレットを制作・交付した趣旨は、原告事務所に、試作段階ではあ るものの、瓦1枚を見ただけでは分からない組み上がりのイメージを持ってもらうことである。これは、石垣市に対しても同様である。すなわち、本件パンフレットは、試作段階の瓦の写真であり、完成品の写真ではなく、一般販売用に使用できるものではない。何より本件パンフレットは、試作品の写真にすぎず、原告事務所や石垣市以外の第三者への公開や頒布、流通などは一切意図し ていなかったし、実際にもしていない。 以上のとおり、被告らには、本件パンフレットを、原告事務所や石垣市に検討材料として利用してもらう意図はあったものの、これを一般第三者への発表の際に積極的に利用してもらいたいという意図はなく、飽くまで原告事務所や石垣市への説明資料であって、その交付は秘密の公開を求める趣旨などではな いのであるから、秘密保持を期待し信頼する関係性が失われることにはならな い。本件模様瓦について新規性を喪失したとの本件審決の認定及び判断には誤りがある。 2 取消事由2(共同出願違反の認定判断の誤り)について〔原告らの主張〕乙は、本件模様のコ字状のラインを270度回転して下方開口とする構成 (以下「下方開口構成」といい、同ラインを90度回転して上方開口とする構成を「上方開口構成」という。)を着想し、当該下方開口構成の試作品の作成を被告小林瓦に指示したほか(甲42の4)、本件模様のその他の構成や本件意匠全体の構成についても詳細な指示を複数回にわたって行っている(甲40の3、甲42の4)。 乙は、平成28年7月14日の本件プロポー 示したほか(甲42の4)、本件模様のその他の構成や本件意匠全体の構成についても詳細な指示を複数回にわたって行っている(甲40の3、甲42の4)。 乙は、平成28年7月14日の本件プロポーザルの時点から、赤瓦に白色の疑似漆喰模様を施すことのみならず(甲9、10、40の3)、本件模様の下方開口構成を着想していた。同年11月21日に行われた原告事務所と被告小林瓦の打合せでは、己を通して、被告小林瓦に対し、当該下方開口構成の試作品の作成を指示している(甲42の4)。 かかる指示を受けて、被告小林瓦は、下方開口構成の試作品Bを原告事務所に持ち込み、乙は己を通じて試作品Bをベースとしてデザインを検討したい旨伝え、本件意匠においても下方開口構成が採用された(甲42の4)。このようにして、本件模様の下方開口構成の創造、作出の過程に乙の意思が直接的に反映されている。 上記の事実は、下方開口構成は、石垣市新庁舎の屋根において在来工法を用いないという乙の独自のアイデアによるものであることからも裏付けられる。 すなわち、本件模様のうち下方開口構成は、乙によるデザインがなければなし得ないものであった(甲42の4)。 乙は、石垣市新庁舎の屋根のデザインについて、琉球瓦を用いた在来工法に はないデザインを創作した(甲9、10、42の4)。すなわち、琉球瓦を用い た屋根の在来工法(甲11)では、軒先に、在来役物瓦を取り付け、軒先に露見される穴を埋めるのが一般的である。この在来工法では、軒先の瓦以外の瓦は、男瓦と女瓦とを用い、軒先だけに役物瓦を用いる。この点、男瓦表面に、コ字状の細幅の白色ラインを90度回転し上方開口構成とした縦長の模様を形成する瓦は公知(甲29)であったが、在来工法のように、軒先に役物瓦を 用いる場合 けに役物瓦を用いる。この点、男瓦表面に、コ字状の細幅の白色ラインを90度回転し上方開口構成とした縦長の模様を形成する瓦は公知(甲29)であったが、在来工法のように、軒先に役物瓦を 用いる場合に、疑似漆喰模様を男瓦に形成しようとすると、男瓦と役物瓦のつなぎ目であるその境界に接着部として疑似漆喰模様を施すこととなる。 これに対して、乙は、石垣市新庁舎の屋根のデザインとして役物瓦を用いないデザインを創作していた。すなわち、本件プロポーザルの資料(甲10)には、軒先において役物瓦は用いられておらず、軒先の穴が露出していることが 分かる。そして、役物瓦を用いないことが乙によるデザインであることは、甲48のインタビュー記事において「軒先のディテールは?」と問われたことに対する乙の回答からも明らかである(甲48・4頁左から3段目最下行~4段目4行目)。 このように、乙の石垣市新庁舎の屋根のデザインでは、役物瓦を用いないの であるから、軒先は男瓦の端面が露出するとともに、当該端面は、瓦同士の接着部ではないため、疑似漆喰模様が付されないデザインとなる。すなわち、軒先に役物瓦を用いないという乙のデザインを前提とした場合は、必然的に、コの字状の白色ラインが下方開口となった本件模様が創出されるのである。このように役物瓦を用いない軒先の納め方は役物瓦に防水機能があることに鑑み れば非常に特殊であって、乙のデザイン思想に基づく固有なデザインであるといえ、屋根業者側(被告小林瓦)から提案があることはまずあり得ない。 以上のとおり、本件模様のうち下方開口構成は、軒先に役物瓦を用いないという在来工法では見られない乙の独自のデザインを前提としたものであり、乙によるデザインがなければなし得ないものであったことは明らかである。 乙は、本 方開口構成は、軒先に役物瓦を用いないという在来工法では見られない乙の独自のデザインを前提としたものであり、乙によるデザインがなければなし得ないものであったことは明らかである。 乙は、本件意匠の創作の過程で、平成29年2月頃、己を通して、被告小林 瓦に対し、本件模様において肉盛り(厚み)を持たせることを着想し、試作品においてその厚みを5mm程度とするよう指示した(甲40の3、甲86)。 5mmとする旨の指示は、被告小林瓦が乙の指示を受けて平成28年11月頃に作成した二つの試作品のうち、下方開口構成の試作品(以下「試作品B」という。もう一つの試作品である上方開口構成のものは、以下「試作品A」とい う。)に対して行われたものであり、被告小林瓦は、平成29年春頃、当該5mmとする旨の指示を反映した試作品(以下「試作品C」という。)を原告事務所に持ち込んだ。この点、試作品Bと試作品Cの外観は、試作品B及び試作品Cにおける男瓦の底辺から上辺の長さ(最長)は約245mmで同じであるところ、試作品Cにおいては、乙の5mmとする旨の指示のとおり、疑似漆喰模様 の厚みが5mmに形成されている(甲84・写真2~5)。 本件特許出願の公開公報(特開2019-1689、甲26)の明細書の段落【0044】には「この肉盛の厚さは、・・・、望ましくは、2~5mm程度がよい。」と記載され、本件意匠の図面においても肉盛りの厚みがはっきりと現わされているのであるから、本件意匠は乙による5mmとする旨の指示が反 映されていることは明らかである。 したがって、本件模様の隆起の態様の創造、作出の過程に乙の意思が直接的に反映されていることは明らかであるから、この点のみをもってしても、乙は実質上、本件意匠の形態の形成に参画した者であり、乙が本件 したがって、本件模様の隆起の態様の創造、作出の過程に乙の意思が直接的に反映されていることは明らかであるから、この点のみをもってしても、乙は実質上、本件意匠の形態の形成に参画した者であり、乙が本件意匠の創作者であることが明らかである。 さらに、乙は、本件模様のその他の構成や本件意匠全体の構成について、被告小林瓦に対し、己を通して複数回にわたって詳細な指示を与えており、被告小林瓦はその都度乙の指示のとおりに試作品を作成している。 したがって、本件意匠は、一連の乙の指示に基づき創造、作出されているのであるから、本件意匠には乙の意思が反映されていることが明らかであり、乙 は本件意匠の創作者である。にもかかわらず、本件意匠は、乙及び原告事務所 に無断で出願され登録されたものであるから、共同出願違反に該当し、特許法38条、意匠法15条1項、48条1項1号により無効にされるべきである。 〔被告らの主張〕乙が、被告小林瓦に対し、本件模様の厚みを5mm程度と指示したとしても、これをどのように実現するかは被告らに一任されていた。したがって、同 氏が本件模様の隆起の態様を創作することはありえない。 すなわち、本件意匠の対象は、機能性等(防水性能等)も備えていなければ商品価値がない瓦である。したがって、仮にデザイナーが瓦の着想を得たとしても、当該デザイン瓦の製造・実用化が可能であるか否かの判断について、瓦業者の意見を求めざるを得ない。 本件では、乙は、図面を用いて本件模様の隆起の態様を示していない。意匠を完成させるにあたり、意匠図のドラフトを用いて議論を重ねることがあり得るものの、このような議論を被告らと乙との間で交わしたことはない。したがって、本件模様の隆起については、被告らにおいて重視したポイントではなか あたり、意匠図のドラフトを用いて議論を重ねることがあり得るものの、このような議論を被告らと乙との間で交わしたことはない。したがって、本件模様の隆起については、被告らにおいて重視したポイントではなかった。本件審決は、乙が厚みを持たせるアイデアを与えただけであるとして、 乙が本件模様の隆起の態様を創作していないと判断した。この認定判断は妥当である。 原告事務所の担当者が、被告小林瓦の代表者に対して、ベースとなる瓦が決定した上での具体的指示(本件模様を釉薬を塗布することにより実現することを指示)をすることはあり得ない。被告小林瓦が、己から、疑似漆喰模様の幅 を広げる改良を指示されたことを示す客観的証拠はないし、当該指示など受けていない。疑似漆喰模様の幅は、被告らの感性においてそれまでの試作品よりも広げたものである。 したがって、乙が本件意匠の具体的構成態様であるコ字状ラインの模様の創作をした事実は認められない。 以上のとおり、乙は、本件模様の隆起の態様を創作していないし、本件模様 その他の本件意匠全体の具体的構成を創作していない。乙は、意匠創作の主体的意思を欠く補助者であるし、単に課題を指示あるいは示唆したに止まる命令者である。 したがって、乙は、意匠登録を受ける権利を有する創作者ではない。本件審決のこの点についての認定判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 証拠によれば、本件の事実関係に関し、以下の事実が認められる。 ア石垣市は、新庁舎建設を進める過程で、平成28年7月14日、石垣市民会館における本件プロポーザルを経て、原告事務所を設計者として選定した。原告事務所は、市内企業候補者として選定されていた洲鎌設計室株 式会社(以下「洲鎌設計室」という。)と共同企業体を組んだ。 館における本件プロポーザルを経て、原告事務所を設計者として選定した。原告事務所は、市内企業候補者として選定されていた洲鎌設計室株 式会社(以下「洲鎌設計室」という。)と共同企業体を組んだ。 原告事務所の本件プロポーザル資料には、建物の屋根の琉球赤瓦に、軒先において役物瓦を用いず、厚みのある漆喰様の白模様を、男瓦の上部に横向きに施したものが示されていた(甲10)。 乙は、新庁舎の屋根のデザインは沖縄県に特有の赤瓦と漆喰模様を表現 したいと考えていたが、工期やコスト、メンテナンスの関係から、漆喰を用いることなく漆喰模様を表現するため、赤瓦に白色の漆喰模様を疑似的に施すことで、外観上、漆喰を用いたように見える方法を用いることを想定していた。 同年8月10日、新庁舎の基本設計等に関する打合せが行われ、石垣市 の担当者や、洲鎌設計室の担当者、己らが出席したところ、そこにおいて、瓦屋数社のヒアリングでは、屋根がS造の場合は動きやすいため難しいのではないかとの報告が上がっていることの紹介や、赤瓦、スペイン瓦、S瓦など瓦の種類によって耐風圧性能に違いがあるのかなどの質問がされた。 己は、同月、宮古島のホテルの屋根の赤瓦の施工実績がある被告小林瓦 と連絡を取り、同月打ち合わせを行い、丙に対し、赤瓦に漆喰の表現をしたい旨を告げた。〔甲9、12、13、40の3〕イ被告小林瓦と原告事務所は、平成28年11月21日に打合せを行い、その結果を踏まえ、同月頃、被告小林瓦は、S瓦に上方開口の疑似漆喰模様を施した試作品である試作品Aと、2段瓦に下方開口の疑似漆喰模様を 表現した試作品である試作品B、及び、瓦を組み上げた状態を被告碧南が撮影した写真1枚を、原告事務所に持ち込み、提供した。この試作品はいずれも原 ある試作品Aと、2段瓦に下方開口の疑似漆喰模様を 表現した試作品である試作品B、及び、瓦を組み上げた状態を被告碧南が撮影した写真1枚を、原告事務所に持ち込み、提供した。この試作品はいずれも原告事務所においてそのまま保管され、このうち、後者については、原告事務所において写真撮影がされて、その瓦の写真は、下記オの本件説明会におけるプレゼンテーション資料に掲載された。〔甲36(9頁)、4 0の3、42の4、63、弁論の全趣旨〕試作品Bは、疑似漆喰模様が下方開口構成であり、疑似漆喰模様部分に厚みのないもので、横ラインの幅は約3cm程度のものである。試作品Aは、疑似漆喰模様部分が上方開口構成であり、女瓦の男瓦側でない端部にも疑似漆喰模様が施されたものである。 ウ己は、平成29年2月13日、丙に対し、「今週日曜日に石垣市役所にて、乙の市長プレゼンを予定しており、ちゅら瓦については、乙も画期的と大変気に入っており、ぜひ説明したいと考えております。そこで以前いただいたサンプルと同様のものを二枚ほど、市役所まで送付いただくことは可能でしょうか?お手数ですが、ご確認の程、よろしくお願い致します。」と のメールを送信した(甲21の1、22)。 エ平成29年2月16日に、被告小林瓦は、原告事務所に対し、本件パンフレット及び本件写真を交付した。本件パンフレットには、「美ちゅらら瓦かわら」、「伝統的な琉球島瓦のイメージを持つ新しい沖縄の屋根瓦のご提案」、「丸瓦に平瓦2段が一体化した、新しいタイプのかわらです。一体成型だから、軽 くて、雨、風、地震に強いかわらです。釉薬で焼き付けた漆喰柄は永久に 剥がれることはありません。」との記載があり、「製品仕様」として、「働き幅 273~288mm」 成型だから、軽 くて、雨、風、地震に強いかわらです。釉薬で焼き付けた漆喰柄は永久に 剥がれることはありません。」との記載があり、「製品仕様」として、「働き幅 273~288mm」、「働き長さ 245mm」、「坪あたり 48枚」、「重さは206kg(従来の約半分の重さ)」と記載され、「製造販売:大里瓦工場」として、同工場の所在地と担当者の連絡先が記載されている。 本件パンレット及び本件写真には、コ字状の模様部分が下方開口となった 本件模様瓦自体や、これが施工された状態のもの、丸瓦及び役瓦を付けた状態のもの及びS形瓦の写真などが複数掲載されている。 なお、S形瓦は、2段瓦とは異なり、山(丸瓦、半円筒形の瓦、男瓦)と谷(平瓦、女瓦)が一体となった一枚の瓦で形成され、施工性とコストパフォーマンスに優れていること、山と谷がテーパ状に接合しており、洋 風感覚の屋根となることに特徴がある(甲49、79)。 同日、丙は、己に対しメールを送信し、石垣市役所の担当者に、ちゅら瓦及び「ちゅら瓦パンフレット」3部等を送付した旨を伝えた。そのメールには、「この瓦を乙事務所が提案するならばと思い、漆喰の釉薬の部分を厚み0~4.5mm程度で試作作成中です。もちろん型代としてコストは かかりますが、より本物に近い物が出来るものと思っています」と記載されている。〔甲4、5、20〕オ平成29年2月19日に、本件説明会が行われた。 同説明会に用いられた、同日付け原告事務所作成のプレゼンテーション資料(甲25、9頁)には、本件写真に掲載された瓦であり、試作品Bと 同じ瓦が、「琉球赤瓦」としてカラー写真で紹介されている。 原告事務所は、公共建築物に係るデザインについて、これを権利化し、独占の対象とすることは全く 真に掲載された瓦であり、試作品Bと 同じ瓦が、「琉球赤瓦」としてカラー写真で紹介されている。 原告事務所は、公共建築物に係るデザインについて、これを権利化し、独占の対象とすることは全く想定していなかった(甲32の1)。 カ平成29年2月20日、己から丙に対し、「昨日、無事市長説明と市民説明会を終えました。ちゅら瓦については、市長にも大変好評でして、市民 説明会での記事にも一部出ておりますので、共有致します。瓦の形状につ いては、乙や市長からリクエストが出ておりますので、今後こちらにいらっしゃるときに打合せをお願いできればと思います。」などと記載したメールに、八重山毎日新聞等の地元新聞の報道を添付して送信した(甲24)。 丙は、本件説明会の後、乙から、瓦について新庁舎の設計イメージに合わせて細部にわたり改良の指示があり、具体的には漆喰模様部分に5mm 程度の厚さを持たせる提案などの改良の指示を受けたところ、それまで、被告小林瓦においては、見た目の美しさを保つため、漆喰模様部分にこのような厚さを持たせたことはなかったとしている(甲86)。 キ己は、丙に対し、平成29年2月22日、「先日の市長プレゼンにて、ちゅらS瓦ポリフォーム工法を採用する方針です。」とメールを送信したの に対し、丙は、同月23日、「先日お送りしたのは、“ちゅら瓦”でして、“ちゅらS瓦”ではありません。また市長の要望を叶えるとすると、S瓦は段差が付き、全く違う物になってしまいます。」などと回答した(乙2)。 ク平成29年春頃、被告小林瓦は、前記イの試作品のうちの、下方開口の試作品Bに比して、疑似漆喰模様の部分に5mm程度の肉盛り(厚み)を 持たせ、同模様の一部の幅もそれまでの3cm程度から4ないし5cmに広 頃、被告小林瓦は、前記イの試作品のうちの、下方開口の試作品Bに比して、疑似漆喰模様の部分に5mm程度の肉盛り(厚み)を 持たせ、同模様の一部の幅もそれまでの3cm程度から4ないし5cmに広げた試作品である試作品Cを、原告事務所に持ち込み、提供した。その試作品Cについても、原告事務所において保管している(甲42の4、弁論の全趣旨)。 ケ被告らは、平成29年6月16日、本件特許出願をした。 コ被告小林瓦は、令和元年12月3日、己に対し、「この瓦を乙事務所石垣島新庁舎でのデビューという思いがあり、石灰岩釉薬模様のこの瓦の技法を特許申請させて頂き、受理もされております。」とのメールを送信した。 原告事務所は、それまで、被告小林瓦らによる本件特許出願の事実を知らなかった(甲38、75)。 サ被告らは、令和2年2月13日、本件特許出願から分割出願をして、同 特許出願を本件意匠に係る意匠出願に変更した。 本件特許出願に係る公開公報には、発明の名称を「擬似琉球瓦(擬似沖縄漆喰瓦)の構造と、その製造方法」とし、従来技術における課題を「従来の琉球瓦屋根は、上下瓦の赤瓦を葺設した後に、その目地を、漆喰作業で埋込完成する構造である。従って、手間と費用とを有する問題と、耐久性等に問 題を抱えている。本発明は、その改良を意図する。」として、その解決手段を「本発明は、焼成窯の外底面下に敷設した空気吸込み管と、必要時に空気吸込み管の第1噴射孔を、焼成窯の内底面に開口し、焼成窯の壁に、少なくとも、焼成用バーナからの熱風供給口を付設し、第2・第3噴射孔を、焼成窯の空間に開口し、焼成窯の、少なくとも、燃焼空気の排出口を、焼成窯の一 方に開口した擬似琉球瓦の焼成窯である。従って、擬似漆喰部を備えた擬似琉球瓦を確実に製造 設し、第2・第3噴射孔を、焼成窯の空間に開口し、焼成窯の、少なくとも、燃焼空気の排出口を、焼成窯の一 方に開口した擬似琉球瓦の焼成窯である。従って、擬似漆喰部を備えた擬似琉球瓦を確実に製造できる。」とする発明が記載され、その発明の詳細な説明の段落【0044】には、「この肉盛の厚さは・・・2~5mm程度がよい。」と記載されている(甲26)。 公開実用新案公報(平4-27013。平成4年3月4日公開、甲29) には、考案の名称を「屋根瓦」とし、「平瓦と丸瓦を連結した瓦の少なくとも外周端面一部に白色素材を漆喰止め状に取着ける」(実用登録請求の範囲2)ことが記載されている。そして、この白色素材については、「上記水返し(4)や水切溝(5)が夫々設けられた被重合部分を除く屋根瓦(1)表面の外周端面及び平板部(2)と半円筒部(3)との連結線上の少なくとも屋根葺き後に外部に露出 される部分には、本考案の1つの特徴をなす石膏やパテ、或いは白色セメント若しくはゴム又は発泡樹脂等により予め所定の寸法、形状に成形された白色素材(9)が第2図に示す如く外縁部を瓦(1)の外周端面より外方に張り出して漆喰い止め状に取着されている。」(同公報7頁6行目ないし14行目)とし、その第2図に、男瓦の白色素材が外周端面に施されているが、上部には 施されていない上方開口構成の漆喰模様及びこれが施された瓦が示されてい る。 2 取消事由1(本件意匠と本件模様瓦の意匠との類否判断の誤り)について原告は、本件審決における本件意匠と本件模様瓦の意匠との類否判断は誤りである旨を主張する。 ア登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を 通じて起こさせる美観に基づいて行われるところ(意匠法24条2項参照)、本件意 との類否判断は誤りである旨を主張する。 ア登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を 通じて起こさせる美観に基づいて行われるところ(意匠法24条2項参照)、本件意匠に係る物品である瓦は、これを施工する建築業者等もその需要者ではあるものの、これを注文し、その所有者等となる屋根工事の施主も重要な需要者であり、建築業者等であっても、最終的には施工後に施主から見た美観の観点を重視するというべきであるから、本件意匠に係る類否判断におけ る需要者の視覚を通じて起こさせる美観の観点については、施工する建築業者のみならず、施工後に施主が重視する美観の観点からも行うべきである。 以下、この観点から検討する。 イ本件意匠の構成態様は、以下のとおりである(甲8)。 基本的構成態様 A 正面視において、左端部に壁が設けられ右側に連続する女瓦の凹み部から他方部に向けて上がり勾配に連続して形成された半円筒形の男瓦を一体化し、底面図において略S字型を270度回転させた瓦形状としている。 B 男瓦の上側隅角部には、他の瓦を直上に重ねて瓦葺きし面一状に重ね 合わせられるよう、径を縮小した段差(縮径段差部)が形成されている。 C 女瓦の中央部近傍に左右に横切る段差が設けられている。 DCの段差は、瓦上辺から下辺の間におよそ6対4の割合の位置で形成されている。 具体的構成態様 a 男瓦の両側部と上部に、コ字状のラインを270度回転して下方開口 とした縦長の模様が形成されている。 b 男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、コ字状のラインの内側線が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側のラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。 c コ字状のライン 男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、コ字状のラインの内側線が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側のラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。 c コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他の部分から僅かに段差 状に隆起している。 d 右上端に位置する一段低く形成された円弧部分の表面は平坦に形成されている。また、円弧部分の右側端は、男瓦の右側端と略平行に形成されている。 e 女瓦の上端に波線状の凸部が一本形成されている。 f 女瓦の左下端が直角に形成されている。 g 裏面に上側端と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されている。 h 右側面から見ると、男瓦の外側線のほぼ中間位置に、クランク状の段差が形成されている。 i 左側面から見ると、女瓦の左端部の壁は、瓦のほぼ中央に斜めクランク状に現わされている。 ウ本件パンフレット及び本件写真に掲載された瓦である本件模様瓦は、平成28年11月頃に、被告小林瓦が原告事務所に持ち込み、引き続き原告事務所で保管され、その写真が平成29年2月19日に石垣市で行われたプレゼ ンテーション資料に掲載された瓦である試作品Bと同一である。同瓦は、基本的に本件意匠出願前に既に公知の「万葉」瓦(甲81)に、疑似漆喰模様を施したもの(甲6、82の1、83、84)であり、本件審決もこれを前提としているところ(本件審決31頁10行目ないし13行目)、本件パンフレット及び本件写真から認められる本件模様瓦の有する形態は、以下のと おりである。 基本的構成態様A 正面視において、左端部に壁が設けられ右側に連続する女瓦の凹み部から他方部に向けて上がり勾配に連続して形成された半円筒形の男瓦を一体化し、底面図において略 基本的構成態様A 正面視において、左端部に壁が設けられ右側に連続する女瓦の凹み部から他方部に向けて上がり勾配に連続して形成された半円筒形の男瓦を一体化し、底面図において略S字型を270度回転させた瓦形状としている。 B 男瓦の上側隅角部には、他の瓦を直上に重ねて瓦葺きし面一状に重ね合わせられるよう、径を縮小した段差(縮径段差部)が形成されている。 C 女瓦の中央部近傍に左右に横切る段差が設けられている。 DCの段差は、瓦上辺から下辺の間におよそ6対4の割合の位置で形成されている。 具体的構成態様a 男瓦の両側部と上部に、コ字状のラインを270度回転して下方開口とした縦長の模様が形成されている。 b 男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、コ字状のラインの内側線が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側の ラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。 c コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他の部分と面一である。 d 右上端に位置する一段低く形成された円弧部分の表面は平坦に形成されている。また、円弧部分の右側端はやや左側に傾斜し、男瓦の右側端はやや右側に傾斜している。 e 女瓦の上端に略小矩形状の凹部が五つ形成されている。 f 女瓦の左下端が直角に形成されている。 g 裏面に上側端と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されているか否かは本件パンレット及び本件写真からは不明である。 h 右側面から見ると、男瓦の外側線のほぼ中間位置に、クランク状の段 差が形成されている。 i 女瓦の左端部の壁には、瓦のほぼ中央に斜めの段差が現わされている。 エ本件意匠と本件模様瓦の基本的構成態様は一致しており、具体的構成態様のうち の段 差が形成されている。 i 女瓦の左端部の壁には、瓦のほぼ中央に斜めの段差が現わされている。 エ本件意匠と本件模様瓦の基本的構成態様は一致しており、具体的構成態様のうちのc、dのうちの一部、e、g及びiを除く、「男瓦の両側部と上部に、コ字状のラインを270度回転して下方開口とした縦長の模様が形成されている。」(a)、「男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、 コ字状のラインの内側線が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、左右と上側のラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である。」(b)、「右上端に位置する一段低く形成された円弧部分の表面は平坦に形成されている。」(d)、「女瓦の左下端が直角に形成されている。」(f)、「右側面から見ると、男瓦の外側線のほぼ中間位置に、クランク状の段差が形成され ている。」(h)との部分においても、一致している。 そして、具体的構成態様dのうちの一部である、右上端に位置する一段低く形成された円弧部分のうち、「右側端は、男瓦の右側端と略平行に形成されている。」(本件意匠の具体的構成態様d)か、「右側端はやや左側に傾斜し、男瓦の右側端はやや右側に傾斜している。」(本件模様瓦の具体的構 成態様d)との点、具体的構成態様eの「女瓦の上端に波線状の凸部が一本形成されている。」(本件意匠の具体的構成態様e)か、「女瓦の上端に略小矩形状の凹部が五つ形成されている。」(本件模様瓦の具体的構成態様e)との点、及び、「裏面に上側端と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されている。」(本件意匠の具体的構成態様g)か、「裏面に上側端 と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されているか否かは本件パンレット及び本件写真からは不明である。」(本件模様瓦 形成されている。」(本件意匠の具体的構成態様g)か、「裏面に上側端 と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されているか否かは本件パンレット及び本件写真からは不明である。」(本件模様瓦の具体的構成態様g)との点は、いずれも、瓦の施工後は完全に隠れてしまう部分である(甲5)ことに加え、瓦全体からすると小さくその差異も直ちには認識し難いこと(各具体的構成態様d及びe)、本件意匠公報の【A-A断面図】に示さ れた平置き時の状況と本件写真に示された本件模様瓦の平置き時の状況に変 わりがなく、裏面の凸部自体が瓦の美観に影響を与えるものとも認め難いこと(具体的構成態様g)から、需要者に異なる印象をもたらすものとは認められない。 また、具体的構成態様iのうち、「左側面から見ると、女瓦の左端部の壁は、瓦のほぼ中央に斜めクランク状に現わされている。」(本件意匠の具体 的構成態様i)か、「女瓦の左端部の壁には、瓦のほぼ中央に斜めの段差が現わされている。」(本件模様瓦の具体的構成態様i)との点についても、左側面から見た女瓦の左端部の壁は、瓦の施工後は隠れてしまう部分である(甲5)うえに、正面から見た場合に、女瓦のほぼ中央に斜めの段差が現わされていることから、本件意匠と本件模様瓦とで異なる点はなく、需要者に 異なる印象をもたらすものとは認められないというべきである。 その上で、本件意匠と本件模様瓦の意匠とで最も異なるのは、具体的構成のcに係る部分であり、本件意匠では、「コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他の部分から僅かに段差状に隆起している。」とされているのに対し、本件模様瓦の意匠では、「コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他 の部分と面一である。」とされているところである。 オ本件意匠の具体的構成態 段差状に隆起している。」とされているのに対し、本件模様瓦の意匠では、「コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他 の部分と面一である。」とされているところである。 オ本件意匠の具体的構成態様のうち、「男瓦の両側部と上部に、コ字状のラインを270度回転して下方開口とした縦長の模様が形成されている」(具体的構成態様a)、「男瓦に形成されたコ字状のラインの模様において、コ字状のラインの内側線が、男瓦の外側線と略平行に形成されている。また、 左右と上側のラインの幅は、男瓦の横幅の約6分の1である」(同b)との部分は、いずれも男瓦の全面にわたる模様であり、施工後は特に施主を中心とした需要者にとり最も目に付くものであり、下方開口構成に係るこうした瓦は知られていない。 本件意匠のその余の具体的構成のうち、「右上端に位置する一段低く形成 された円弧部分の表面は平坦に形成されている。また、円弧部分の右側端は、 男瓦の右側端と略平行に形成されている。」(具体的構成d)、「女瓦の上端に波線状の凸部が一本形成されている。」(同e)、「女瓦の左下端が直角に形成されている。」(同f)、「裏面に上側端と、下側端と、中央部に三つの凸部が横方向に形成されている。」(同g)との部分は、前記エのとおり、いずれも、施工後には完全に見えなくなる部分であることに加え、瓦 全体に比して小さいか、美観に影響を与えるものとは認め難い部分であり、需要者が特に注目する部分とはいえない。 カそうすると、本件意匠と本件模様瓦の意匠とで最も異なる具体的構成のcに係る、コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他の部分から僅かに段差状に隆起している(本件意匠)との部分については、瓦全体からみると隆起 による差異はごくわずかであり、特に瓦屋根の施工後に に係る、コ字状のラインの模様の部分が男瓦表面の他の部分から僅かに段差状に隆起している(本件意匠)との部分については、瓦全体からみると隆起 による差異はごくわずかであり、特に瓦屋根の施工後においては、その隆起の程度も屋根全体からみて相対的に小さいことから、コ字状のラインの模様には需要者の注意がいくものの、その隆起の程度にまでは注意がいくものとは認め難い。 そうすると、前記需要者の観点からみた場合、本件意匠と本件模様瓦の意 匠は類似するというべきである。 そして、前記1で認定した事実によれば、本件模様瓦(試作品B)は、平成28年11月頃に、被告小林瓦が原告事務所に持ち込んで提供した後、同事務所に保管され、平成29年2月16日に原告事務所に本件パンフレット及び本件写真が送付されたところ、本件写真及び本件パンフレットには、本件模様 瓦の意匠が開発中のものであることや開発者に対する内部的なものであることの記載はなく、また、「秘」、「部外秘」、「非公開資料」などの記載がないばかりか、本件写真や本件パンフレットを添付した電子メールにおいても、その本文などに、添付された本件写真や本件パンフレットの電子データが営業秘密であるとか内部的なものであるなどの記載もなく、原告事務所及びその従業員 について、被告らとの間で、本件模様瓦の意匠に関し守秘義務を結んでいるな どの事実は認められないから、遅くとも、同日には原告事務所の従業員らに対して知られるところとなり、公然知られたものと認められる。 そうすると、本件意匠は、本件意匠の出願前に公然知られた意匠と類似するから、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、同法48条1項1号により無効とされるべきものである。 被告らは、本 本件意匠の出願前に公然知られた意匠と類似するから、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、同法48条1項1号により無効とされるべきものである。 被告らは、本件パンフレット及び本件写真の交付は、意匠公開者に対する情報提供であるうえに、本件証明書記載の行為と実質的に同一の行為であるから、新規性喪失の例外規定の適用を受けるために手続を行った行為と実質的に同一の範疇にある密接に関連するものであり、被告らが提出した本件証明書により要件を満たし、新規性喪失の例外規定である意匠法4条2項の適用を受ける旨 主張する。 しかし、同項が、新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであることからすると、権利者の行為に起因した公開行為が複数存在するような場合には、本来、それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが、手続を行った意匠の公開行為と実質的に同一とみることができるような密 接に関連する公開行為によって公開された場合については、別個の手続を要することなく同項の適用を受けることができるものと解するのが相当である。 これを本件についてみると、本件証明書の記載は、本件説明会における市長プレゼンテーションに係るものであって、原告事務所への本件パンフレット及び本件写真の送付とは異なる行為であり、しかも本件パンフレット及び本件写 真の送付は本件説明会の前に行われたものであるから、本件説明会と実質的に同一の行為とみることができるような密接に関連するものであるということはできず、また、本件パンフレットの記載内容、すなわち、「美ちゅらら瓦かわら」、「伝統的な琉球島瓦のイメージを持つ新しい沖縄の屋根瓦のご提案」、「丸瓦に平瓦2段が一体化した、新しいタイプのかわらです。一体成型だ フレットの記載内容、すなわち、「美ちゅらら瓦かわら」、「伝統的な琉球島瓦のイメージを持つ新しい沖縄の屋根瓦のご提案」、「丸瓦に平瓦2段が一体化した、新しいタイプのかわらです。一体成型だから、軽くて、雨、風、 地震に強いかわらです。釉薬で焼き付けた漆喰柄は永久に剥がれることはあり ません。」との記載及び「製造販売:大里瓦工場」として、同工場の所在地と担当者の連絡先が記載されていることからして、本件パンフレットは単なる意匠公開者への情報提供行為とは異なるものであって、被告ら主張の行為について本件証明書に記載されたものとみることはできず、その記載を求めることが意匠創作者にとり酷であるものとも解されない。 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 被告らは、原告事務所は、被告らから本件模様瓦の意匠について、守秘扱いを求められる関係にあったことなどに照らせば、本件意匠は公然知られたものではない旨を主張する。 しかし、被告小林瓦から、原告事務所に対し、本件意匠について何らかの秘 密の保持を求めた事実が認められないことのほか、被告小林瓦は、平成28年11月頃に本件模様瓦の意匠の示された試作品Bを原告事務所に持ち込み、そのまま保管を委ねていること、平成29年2月には、原告事務所に求められるままに、その瓦を石垣市の担当者に郵送するなどしていること、同月に行われた本件説明会におけるプレゼンテーション資料に本件模様瓦の写真が掲載され、 原告事務所において本件模様瓦の意匠等について秘密とする意思がないことが客観的にも明らかとなり、前記1カのとおり己から丙に対し本件説明会についての情報も共有されたにもかかわらず、これにつき特段の異議を述べたり、本件意匠に関し秘密保持の要請をしたり、あるいはその とが客観的にも明らかとなり、前記1カのとおり己から丙に対し本件説明会についての情報も共有されたにもかかわらず、これにつき特段の異議を述べたり、本件意匠に関し秘密保持の要請をしたり、あるいはその後の公開行為についての情報提供の要請をするなどもしていない事実からすると、本件特許出願に係 る疑似漆喰模様の製法についてはともかくとして、本件意匠に関しては、被告らはこれを秘密とする意思ないし公開による新規性喪失の例外規定の適用を受ける意思はなかったとみられるものであり、被告らの主張は前提を欠くものというほかない。 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 被告らは、原告事務所の従業員らは、秘密保持義務を負う者である旨を主張 する。 アある意匠が他の者に知られた場合であっても、その者が秘密保持義務を負っていると認められる場合には、意匠法3条1項1号の「公然知られた」ということはできないが、秘密保持義務があるといえるためには、必ずしも明示の契約によることは必要ではなく、当事者間の関係や対象となる事項の性 質・内容などに照らして、社会通念上秘密にすることが求められる状況にあり、当事者がそのことを認識することができれば、秘密保持義務があるということができるものと解される。この点、被告らは、開示の相手が秘密扱いにすることを暗黙のうちに求められ、かつ、開示者が期待し信頼する客観的な関係にあればよいと主張するところ、被告らにおいて本件意匠を秘密にす る意思があったものと認められないことは前記のとおりであるが、この点を措くとしても、開示を受けた者が秘密であることを認識する可能性がなければ、その者が当該事項を他の者に知らせることが行われ得るのであるから、同号の「公然知られた」ということができるのであ が、この点を措くとしても、開示を受けた者が秘密であることを認識する可能性がなければ、その者が当該事項を他の者に知らせることが行われ得るのであるから、同号の「公然知られた」ということができるのであって、被告らが主張するように、開示を受けた者の認識可能性いかんにかかわらず、同号に該当する ということはできない。 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 イ被告らは、①本件意匠の対象である瓦が石垣市庁舎のために開発中の試作品であったこと、②被告小林瓦らと原告事務所との関係から、原告事務所に守秘義務がある旨を主張する。 しかし、本件意匠の対象である瓦が石垣市庁舎のために開発中の試作品であったからといって、当然に秘密保持義務が認められるものではないし、被告小林瓦らと原告事務所との関係から、仮に被告小林瓦らにおいて原告事務所に対して秘密保持契約を締結することを求めることが困難であったとしても、そのことから直ちに、原告事務所に秘密保持義務が認められることには ならない。この点に関し、被告小林瓦は、原告事務所に対しては、平成28 年11月21日に面談をした際に、本件模様瓦が一般販売前のものであることや新規開発中であることを説明しており、原告事務所において瓦の形態が秘密であることの認識可能性があったと主張するが、当該事実を認めるに足りる的確な証拠はなく、また、仮にそうであれば、そのまま現在に至るまで、同瓦が原告事務所に保管されている事実とも整合しない。また、仮にそのよ うな説明があったとしても、一般販売前のものである、新規開発中であるといった点の説明があったことから直ちに、本件模様瓦に係る意匠について、原告事務所が秘密保持義務を負うものとは認められない。 したがって、被告らの上記主張は採用す 売前のものである、新規開発中であるといった点の説明があったことから直ちに、本件模様瓦に係る意匠について、原告事務所が秘密保持義務を負うものとは認められない。 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 ウ被告らは、本件パンフレットは一般の瓦のパンフレットとは異なるから、 本件パンフレット等の交付を受けた原告事務所においても、本件模様瓦が一般販売前のものであり、守秘義務の対象であることが理解できる旨を主張する。 しかし、前記のとおり、本件パンフレットには「伝統的な琉球島瓦のイメージを持つ新しい沖縄の屋根瓦のご提案」として、その下に「美ら瓦」と大き く記載され、さらに、その下に、製品の特徴や仕様、製造販売担当工場の名称や住所、担当者の電話番号が記載され、1枚目から3枚目にかけて、瓦の写真が掲載されたもので、広告・販売のための一般的な瓦のパンフレットといっても差し支えないものである。被告らは本件パンフレットには製造販売者名の記載がなく、写真も試作段階のもので一般販売用のものではないこと などを主張するが、これらは一般的なパンフレットに欠かせない事項とまではいえず、前記のとおりの本件パンフレットの記載内容からすれば、上記認定を左右するものとはいえない。そして、そのような本件パンフレットを受領した者において、それが内部的なもので秘密保持義務を有することを、明示的な説明なく認識することは困難であったというべきである。 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 3 取消事由2(共同出願違反の認定判断の誤り)について意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもので(意匠法 違反の認定判断の誤り)について意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもので(意匠法2条1項)、工業上利用できるもののうち、公知、公用意匠と同一ないし類似しない新規性及び創作性を備えるものをいう(同法3 条1項)から、意匠の創作者であるといえるためには、当該意匠における美観の創作行為に現実に加担したこと、すなわち、美観の創作行為、とりわけ従前の意匠に係る部分とは異なる特徴的部分の完成に現実に関与することが必要である。 本件意匠は、前記2のとおり、公知の「万葉」瓦に疑似漆喰模様を施した 本件模様瓦と、基本的構成態様のAないしD、具体的構成態様のa、b、d(一部)、f及びhが一致しており、その他前記2で判断した内容にも照らせば、本件意匠に公知意匠と異なる創作性があるものとすれば、それは具体的構成態様cの部分であると考えられる。 この具体的構成態様cのうち、前記1によれば、男瓦の両側部及び下部に コ字状のラインの模様を形成した、上方開口構成の瓦については、本件意匠の出願前に公知であるものと認められる。 そうすると、本件意匠につき創作性があるものとすれば、それは、疑似漆喰模様を下方開口構成とし、これに厚みを持たせたこと、にあるものとみられる。 この点につき、前記1カのとおり、疑似漆喰模様に5mm程度の厚みを持 たせることについては、瓦業者である被告小林瓦において、美観の観点からそれまでは想定もしていなかったものであり、乙から厚みを5mm程度とするようその具体的な指示を受けたことは認められるものの、その指示に基づいて試作品Cを試作したのは被告小林瓦であり、乙は単に厚みを持たせるアイデアを示した かったものであり、乙から厚みを5mm程度とするようその具体的な指示を受けたことは認められるものの、その指示に基づいて試作品Cを試作したのは被告小林瓦であり、乙は単に厚みを持たせるアイデアを示したにすぎない。 また、疑似漆喰模様を下方開口構成としたことについては、前記1アのと おり、本件プロポーザル資料には、疑似漆喰模様を男瓦の上部に横向きに配することが示されているものの、被告小林瓦から原告事務所に提供された試作品A及びBには、疑似漆喰模様をコの字形にしたものが示されており、このうち試作品Bにはこれを下方開口構成としたものが示されているから、この疑似漆喰模様を下方開口構成とした点が、乙の発案によるものか否かについては定か とはいえない。 そうすると、乙は、本件意匠の創作行為に現実に加担したものと直ちには認められないから、乙が本件意匠の共同創作者の一人であるものとは認め難いというべきである。 したがって、原告の主張する取消事由2は、理由がない。 4 以上によれば、原告らの主張する取消事由2には理由がないが、取消事由1には理由があり、本件審決は取り消されるべきであるから、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則(別紙審決書写し省略) 裁判官 水野正則 (別紙審決書写し省略)

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