平成20(行ク)41 仮の差止め申立事件

裁判年月日・裁判所
平成20年3月27日 東京地方裁判所 公用負担・公用収用など
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判決文本文3,721 文字)

- 1 -主文 本件申立てをいずれも却下する。 申立費用は申立人らの負担とする。 理由 第1申立て(1)渋谷区長は,本案事件の第一審判決言渡しまで,A株式会社に対して別紙建築計画記載の建築物を建築することを目的とする開発行為の許可を仮にしてはならない。 (2)東京都知事は,本案事件の第一審判決言渡しまで,A株式会社に対して別紙建築計画記載の建築物に係る建築基準法59条の2に基づく総合設計許可を仮にしてはならない。 (3)東京都建築主事は,本案事件の第一審判決言渡しまで,A株式会社に対して別紙建築計画記載の建築物に係る建築確認を仮にしてはならない。 第2事案の概要本件申立ては,別紙建築計画記載の建築物(以下「本件マンション」という。)の建設予定地の周辺に居住する住民及び本店を有する法人である申立人らが,本件マンションの建設に係る渋谷区長による都市計画法29条1項に基づく開発許可並びに東京都知事による建築基準法59条の2に基づく総合設計許可及び同法6条に基づく建築確認がなされようとしているが,これらの処分は違法であり,それが行われた場合には,申立人らの住環境が破壊され,不安と恐怖と不快感の中で生活することを余儀なくされるとし,上記各処分(以下「本件各処分」という。)の差止めを求める訴訟を提起し(ただし,申立人Bを除く。),これを本案事件として,その仮の差止めを求めているものである。 相手方らは,申立人らが申立てをする適格(及び本案事件の原告適格)を欠いているだけでなく,本件申立てにつき,仮の差止めの要件である「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ(るとき)」及び「本案について- 2 -理由があるとみえるとき」(行政事件訴訟法37条の5第2項)のいずれの要件をも欠いているとするほか,相手方東京都は,「公共 ない損害を避けるため緊急の必要があ(るとき)」及び「本案について- 2 -理由があるとみえるとき」(行政事件訴訟法37条の5第2項)のいずれの要件をも欠いているとするほか,相手方東京都は,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」(同条の5第3項)にも当たるとして,本件申立てをいずれも却下するよう求めている。 第3当裁判所の判断 本件の経緯疎明資料及び本案事件の記録によれば,以下の事実を一応認めることができる。 (1)A株式会社(以下「A」という。)は,東京都渋谷区α×番1ほかの土地上に本件マンションを建築する計画を立て,平成17年12月,東京都都市整備局市街地建築部建築指導課との間で,総合設計制度の利用についての事前協議を開始した。 (2)Aは,平成19年12月8日及び同月19日,説明会を実施した。 (3)Aは,平成20年1月17日,関係機関との間の事前協議(基本的事項についての確認)を終了させた。 (4)Aは,同月19日までに,東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例に基づく標識を本件マンション建築予定地に設置し,また,同日及び同月23日,同条例に基づく近隣関係住民に対する説明会を実施した。 (5)申立人Bを除く申立人らを含む21名の者は,同年2月1日,本案事件の訴えを提起した。 申立人Bの申立てについて仮の差止めの申立ては,差止めの訴えの提起があった場合にすることができる(行政事件訴訟法37条の5第2項)。 そうすると,上記1(5)のとおり,申立人Bを除く申立人らを含む21名の者は,差止めの訴え(本案事件)を提起しているが,申立人Bが差止めの訴えを- 3 -提起していないことは当裁判所に顕著であるから,同申立人の申立ては,上記要件を欠いているといわざるを得ない。 申立人Bを除く 訴え(本案事件)を提起しているが,申立人Bが差止めの訴えを- 3 -提起していないことは当裁判所に顕著であるから,同申立人の申立ては,上記要件を欠いているといわざるを得ない。 申立人Bを除く申立人ら(以下,単に「申立人ら」という。)の申立てについて仮の差止めは,その差止めの訴えに係る処分がされることにより生ずる「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり」,かつ,「本案について理由があるとみえるとき」にすることができる(行政事件訴訟法37条の5第2項)。 ところで,行政事件訴訟法は,本案判決前における仮の救済に関し,行政庁の公権力の行使に当たる行為については仮処分を排除し(同法44条),処分の取消しの訴え,裁決の取消しの訴え及び処分又は裁決の無効等確認の訴えについて執行停止の制度を定め(同法25条ないし29条,38条3項),義務付けの訴え及び差止めの訴えについてそれぞれ仮の義務付け及び仮の差止めの制度を定めている。そして,執行停止の要件としては,積極的要件として「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(同法25条2項)との要件を,消極的要件(執行停止が否定される要件)として「本案について理由がないとみえるとき」(同条4項)との要件を要求している。他方,仮の義務付け及び仮の差止めにおいては,「重大な損害」に代えて「償うことのできない損害」を挙げるとともに,「本案について理由があるとみえるとき」を積極的要件とし(同法37条の5第1項,2項),執行停止よりも厳格な要件を要求している。このように,仮の義務付け又は仮の差止めにより厳格な要件が求められているのは,これらが,厳格な要件の下で行政庁が具体的な処分をすべきこと又はすべきでないことを命ずる本案判決の前に,裁判所が,仮にこれを命ずる裁判であり,本案訴訟の結果と同じ内 厳格な要件が求められているのは,これらが,厳格な要件の下で行政庁が具体的な処分をすべきこと又はすべきでないことを命ずる本案判決の前に,裁判所が,仮にこれを命ずる裁判であり,本案訴訟の結果と同じ内容を仮の裁判で実現するものであることによるものであると解される。 そうすると,仮の差止めは,処分がされた後に執行停止をすることによった- 4 -のでは救済の実を挙げることができない場合に,その処分がされることによって生ずる損害をあらかじめ避けるために認められるものであって,「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ(る)」と認められるためには,当該処分の内容及び性質,当該処分によって侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度等を考慮して,事後の救済手段によるのでは著しく救済が困難であることが一応認められる必要があると解すべきである。 以上を前提に申立人らにおいて「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ(る)」と認められるか否かを検討するに,申立人らは,この要件にいう損害について,本件マンションの建築計画が,東京都総合設計許可要綱に反しているほか,都市計画法の規定や条例に違反しているとし,このような状況の中で本件各処分が行われるならば,①本件マンションからの落下物の危険,本件マンション駐車場から出庫する車両による歩行者の通行への危険,②周辺の住環境及び道路への悪影響,③本件マンション建築工事による周辺家屋の倒壊の危険がある旨主張する。 しかしながら,申立人らが主張する損害はいずれも抽象的なものにとどまり,現実にいかなる程度の損害が生ずる見込みがあるのかを疎明するに足りる資料もないから,事後の損害賠償等の救済手段によっては賄えないとはいい難い。 また,上記各損害は,本件マンションが建設され実際に利用されることによって生じる危険(① 見込みがあるのかを疎明するに足りる資料もないから,事後の損害賠償等の救済手段によっては賄えないとはいい難い。 また,上記各損害は,本件マンションが建設され実際に利用されることによって生じる危険(①及び②の損害)や本件マンションの建設工事によって生じる危険(③の損害)であり,本件各処分がなされることによって直ちに発生する種類の危険ではないから,仮に当該危険があるとしても,本件各処分がなされた後に,その取消しの訴えを提起するとともにその執行の停止を求めるといった方法によっても,その損害の発生を避ける上で時機を失するということはいえない。 したがって,申立人らが主張する上記各損害が事後の救済手段によるのでは著しく救済が困難であるということはできず,申立人らにつき,「償うことの- 5 -できない損害を避けるため緊急の必要があ(るとき)」との要件は充足されていないといわざるを得ない。 結論 よって,その余の点(申立人適格,「本案について理由があるとみえる」か否か,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」か否か。)について判断するまでもなく,本件申立ては,いずれも仮の差止めの要件を欠くから,これらを却下することとし,申立費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり決定する。 平成20年3月27日東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官倉地康弘裁判官小島清二

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