【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人吉田幸彦名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これ に対する答弁は、仙台高等検察庁検察官検事宮沢源
主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人吉田幸彦名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、仙台高等検察庁検察官検事宮沢源造名義の答弁要旨と題する書面記載のとおりであるから、これらをここに引用する。 控訴趣意について所論は要するに、被告人は当時道路交通法一二六条一項二号にいわゆる逃亡するおそれがなかつたにもかかわらず、これがあるとしてなされた本件公訴提起は、同法一三〇条に違反し、刑事訴訟法三三八条四号により本件公訴は棄却されるべきであるにもかかわらず、被告人を有罪とした原判決は、道路交通法一二六条一項二号の解釈適用を誤り、ひいては不法に公訴を受理した違法を犯したものであるから、破棄されるべきである、というにある。 ところで原半決は、被告人が「昭和四九年六月三日午後二時三七分頃仙台市a字b地内国道四号線において、政令で定める最高速度(六〇キロメートル毎時)をこえる七五キロメートル毎時の速度で普通貨物自動車を運転したものである。」との事実について被告人を罰金一万円に処するとともに、本件違反事件の処理に当つた警察官において被告人が道路交通法一二六条一項二号にいう逃亡するおそれがあるものと判断したことは相当と認められるから、本件は同法一三〇条但書の除外事由に該当し、本件公訴の提起の手続には弁護人主張のような違法は認められない旨判示していることは判文上明らかである。 <要旨>そこで所論の点につき検討するに、原審取調の被告人に関する速度測定記録書、同現行犯逮捕手続書抄本、</要旨>原審証人甲、同乙、同丙の各証言および被告人の原審公判廷における供述(ただし、一部)を綜合すれば、宮城県警察交通巡ら隊所属の甲巡査部長指揮のもとに、昭和四九年六月三日午後二時頃から仙台市a字 要旨>原審証人甲、同乙、同丙の各証言および被告人の原審公判廷における供述(ただし、一部)を綜合すれば、宮城県警察交通巡ら隊所属の甲巡査部長指揮のもとに、昭和四九年六月三日午後二時頃から仙台市a字b地内の国道四号線において、RS七A型レーダースピードメーターによる交通違反取締が実施され、同巡査部長は取調係を担当して、同所附近の空地に駐車せしめたマイクロバス(以下検問車という。)内に待機していたところ、同日午後二時三七分頃本件速度違反が現認、記録され、程なく被告人は停止係担当の警察官に命ぜられて検問車の傍に自車を停止せしめ、検問車内に入つてきたが、即刻同車内において取調を開始した甲巡査部長は、被告人の呈示した運転免許証に免許停止等の行政処分の記載のないことを確認のうえ、本件速度違反は法定速度の毎時六〇キロメートルを毎時一五キロメートル超過した内容のものであるから反則行為に該当すると判断して反則切符の作成に着手し、且つ被告人に対し毎時七五キロメートルの速度であつた旨印字されている速度記録紙(原審取調の速度測定記録書に貼付の速度記録紙参照)を示して、違反内容を了解させようとしたところ、被告人は、機械は必らずしも正確ではないなどと申し立てて違反事実を認めようとせず、さらに、これまで道路交通法違反を何回もやつているし、罰金を納めたこともあるが、二、三回の違反については罰金も反則金も納めていない、現に同年二月頃中新田警察署管内で速度違反を犯し、現場で取調を受けたが、その後反則金も納めないままで経過しているし、これまで行政処分を受けた事実もない、署名に応じなくてもそれで済んでいるのである、自分は警察権力には絶対に服従しないし、警察は道路使用許可にしてもいいかげんなことをしているなどと発言し、果ては興奮して警察官を誹謗する言辞を弄し、甲巡査部長の差し くてもそれで済んでいるのである、自分は警察権力には絶対に服従しないし、警察は道路使用許可にしてもいいかげんなことをしているなどと発言し、果ては興奮して警察官を誹謗する言辞を弄し、甲巡査部長の差し出す反則切符に対する署名押印も、また速度測定記録書に対する速度確認の署名もともに拒否するのみならず、同巡査部長が作成した否認調書に対する署名押印をも拒絶したこと、ところで同巡査部長は被告人に対する反則行為の処理手続を進捗せしめようと再々事情の説明や説得を試みるうち、被告人の言動やその供述する違反歴にかんがみて、同免許証になんら行政処分の記載がなく、また中新田警察署管内における違反についていまだになんら処分がなされないままでいるという点等につき、或は被告人は違反を重ねながらも住居を変えてこれを届出ていないなどのため、違反に対する処分を免れているかも知れず、もしそのような状況であればその免許証の行政処分に関する欄にも記載洩れとなつている同処分があるのではないかと疑念を懐き、被告人の免許証記載の住居の確認とあわせて、違反歴の内容、違反に対する処分状況等を調査し、その結果によつて本件は反則行為に関する処理手続によるべきか、または刑事訴訟手続によるべきかを決めるべきものと考え、丁巡査をして宮城県警察本部の交通指導課に被告人のいう中新田警察署管内における違反事実のほか、処分未了の違反事実の有無およびその処理経過と被告人の住居の確認、同本部の運転免許課に行政処分の有無、状況等をそれぞれ照会させ、且つ右照会に対する回答を受けるまで被告人に自車内で待つよう申し向けたところ、被告人は「調べはあとないのか、俺は仕事が忙しいから帰る」などと申し向けながら検問車の外に出たため、同巡査部長は車外にいた丙巡査に対し、調べが終つていないから被告人を自車内で待たせておくよう指 ころ、被告人は「調べはあとないのか、俺は仕事が忙しいから帰る」などと申し向けながら検問車の外に出たため、同巡査部長は車外にいた丙巡査に対し、調べが終つていないから被告人を自車内で待たせておくよう指示したこと、被告人は右車外に出たのちすぐに自車内に戻り、僅少の間待つていたのみで、エンジンを始動し、国道四号線に向い徐行前進を開始せんとし、これに気付いた丙巡査は、直ちに同車の右前面に立ち塞がつて、手で同車の前進を押しとどめつつ「一寸待て、調べが終つていないのだから、待つてくれ」などと叫び、被告人は一メートル足らず進行した後、検問車の後方一、二メートルの所に自車を停止せしめたこと、甲巡査部長は丙巡査の右叫び声を聞き付けて直ちに検問車内より飛び出し、自車運転席に坐している被告人に近付き、同巡査とともに、こもごも「調べがまだ終つていない、本部からの回答がまだだからもう少し待つてくれ」などと説得したが、被告人はこれに耳を籍そうとせず、折柄開けていた自車運転席右側の窓とドアを閉めて、同ドアにロツクをかけ、エンジンをふかしていまにも発進する様子をみせたので、同巡査は咄嵯に右手で右ドアの外側の取手を掴み、左腕を右側後部の窓から入れて、右ロツクを外そうと模索し、被告人はこれを阻まんとして、両者の腕がもつれあうはずみに、ロツクが外れて右ドアが開き、被告人はしぶしぶ下車してきたので、同巡査部長はさらに調べは終つていないのでもう少し待つように、さらに二、三分の間説得を続けたが、被告人はこれに応ぜず「俺は帰る、うるさい馬鹿野郎共、乞食野郎」などと罵言を浴びせ、再び自車に戻ろうとしたので、同巡査部長は被告人がその場から強引に逃走を図るものと判断し、同所で直ちに(同日午後三時一〇分)本件速度違反により現行犯逮捕し、被告人は同日午後三時三〇分仙台東警察署司法警察員に引 ろうとしたので、同巡査部長は被告人がその場から強引に逃走を図るものと判断し、同所で直ちに(同日午後三時一〇分)本件速度違反により現行犯逮捕し、被告人は同日午後三時三〇分仙台東警察署司法警察員に引致された後同月五日午後一時三五分仙台区検察庁検察官に送致され、翌六日原裁判所に本件公訴を提起されたこと、仙台東警察署における取調の段階においては、被告人は住居不定ではなく、行政処分歴や同処分の未執行もなく、また中新田警察署管内の違反は反則行為として処理され、既に通告済であつた事実が判明したことが認められる。 ところで道路交通法一二六条一項および一三〇条の規定によれば、警察官は反則者があると認めたときは、すみやかに同法一二六八条一項所定の事項に関し書面による告知をなすべきものであるが、反則者に同項各号に該当する事由があるときは、右告知の手続を履践する要はなく、以後は当該反則行為を通常の刑事訴訟手続にしたがつて処理すべきものであり、同項各号に該当する事由の有無の認定は、恣意にわたらず、合理性を欠くものでないかぎり、当該事件処理に当つた警察官の判断に委ねられているところと解すべきである。 これを本件についてみると、被告人は、前記のように、本件反則行為を現認され、警察官より道路交通法一二六条一項による告知をなすについて、被告人の申述にかんがみ住居など確認の必要上しばらく現場付近に止まるよう再三説得されたにもかかわらず、右説得を無視し自車を運転進行するような行動を繰返したため、警察官において被告人が同項二号にいわゆる「逃亡するおそれがある」として現行犯逮捕し、本件を通常の刑事訴訟手続によることとした結果、右告知手続がとられなかつたものと認められ、本件の事実関係のもとにおいては、警察官の右措置は是認できるものであり、その後の取調により被告人が逃亡するお 、本件を通常の刑事訴訟手続によることとした結果、右告知手続がとられなかつたものと認められ、本件の事実関係のもとにおいては、警察官の右措置は是認できるものであり、その後の取調により被告人が逃亡するおそれがなくなつたとしても、あらためて右告知の手続をなす必要はないというべきである。所論は被告人が逮捕され、仙台東警察署に引致された後、同所で取調を受けている段階で道路交通法一二六条一項各号の事由は存しないことが明らかとなつたのであるから、その時点において被告人を釈放し、本件速度違反につき反則行為として処理すべきであつた旨主張するが、交通反則通告制度は、大量に発生する比較的軽微な反則行為を簡易迅速に処理することを目的とするものであり、同項が、警察官は、反則者があると認めるときは、その者に対し、「すみやかに」反則行為となるべき事実の要旨などを告知すべきことを規定している法意にてらすと、本件においては、右主張を採用することができない。 したがつて、結局右と同旨の理由により本件公訴提起を適法として、被告人に対し有罪の実体判決を言渡した原判決は正当であるから、論旨は理由がない。 よつて刑事訴訟法三九六条に則り本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官菅間英男裁判官林田益太郎裁判官鈴木健嗣朗)
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