平成21(わ)5971 証券取引法違反,金融商品取引法違反,電磁的公正証書原本不実記録,同供用被告事件

裁判年月日・裁判所
平成22年8月18日 大阪地方裁判所
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判決文本文11,497 文字)

主文 被告人Aを懲役3年及び罰金300万円に処する。 被告B会社を罰金3000万円に処する。 被告人Aにおいて上記罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 被告人Aに対し,この裁判確定の日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。 被告人Aから金2億5529万2200円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告B会社は,判示第1及び第2の当時,東京都板橋区ab丁目c番d号に本店を置き,その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第二部に上場し,光学機械器具,測定機械器具の製造販売等の事業を営む会社等の株式を保有することによる当該会社の事業活動の支配及び管理並びに有価証券の運用等を事業目的とする会社,被告人Aは,被告B会社の代表取締役として同社の業務全般を統括管理していたものであるが第1被告人Aは,東京都中央区日本橋兜町2番1号所在の株式会社東京証券取引所が開設する有価証券市場(第二部)に上場されている被告B会社の株券について,財産上の利益を得る目的で,その株価の高値形成を図ろうと企て,C,D,E,F,G,H,I及びJらと共謀の上,平成19年4月13日から同月26日までの間,10取引日にわたり,同市場において 同株券の売買を誘引する目的をもって,別表1記載のとおり,Dほか4名義で,K株式会社ほか4社の証券会社を介し,連続した高指値注文を行って高値で買い上がるなどの方法により,同表「変動操作・買付状況」欄記載の同株券合計946万0300株を買い付ける一方,Gほか5名義で当時のL株式会社ほか6社の証券会社を介し,同表「変動操作・売付状況」欄記載の同株券合計777万2400株を売り付け,さらに,別表2記載のとおり,Dほか4名義でK 株を買い付ける一方,Gほか5名義で当時のL株式会社ほか6社の証券会社を介し,同表「変動操作・売付状況」欄記載の同株券合計777万2400株を売り付け,さらに,別表2記載のとおり,Dほか4名義でK株式会社ほか2社を介し,大量の下値買注文を入れて下値を支えるなどの方法により,同表「変動操作(買付委託状況)」欄記載の同株券合計148万株の買付の委託を行い,もって同株券の売買取引が繁盛であると誤解させ,かつ,同株券の相場を変動させるべき一連の売買及びその委託をし 他人をして同株券の売買取引が繁盛に行われていると誤解させる等同株券の売買取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって,別表3「仮装売買」欄記載のとおり,Dほか4名義を用いて,K株式会社ほか6社の証券会社を介し,同株券合計427万8100株について,自己のする売付と同時に別途自己において買付をし,もって権利の移転を目的としない仮装の売買をしよって,同株券の株価を154円から179円まで上昇させた上,そのz昇させた株価により,別表4「変動させた相場による売付」欄記載のとおり,Gほか6名義で当時のL株式会社ほか7社の証券会社を介し,同株券合計1094万6700株を売り付け,もって当該変動させた相場により有価証券の売買を行った(平成21年11月25日付け起訴状記載の公訴事実に係る平成22年2月10日付け訴因変更請求書記載の公訴事実)第2被告人Aは,D,M及びNらと共謀の上,被告B会社の業務及び財産に関し,被告B会社が平成20年2月1日に公表した株式会社O等を割当先とする第三者割当による新株式発行増資(発行株式数1851万株,発行価額1株につき27円,発行価額の総額4億9977万円)及び第三者割当による第5回新株予約権の発行増資(新株予約権126個,発行価額1個につき9万60 よる新株式発行増資(発行株式数1851万株,発行価額1株につき27円,発行価額の総額4億9977万円)及び第三者割当による第5回新株予約権の発行増資(新株予約権126個,発行価額1個につき9万6000円,新株予約権の発行総額1209万6000円)につき,虚偽の事実を公表するなどして偽計を用い,被告会社の株価を上昇維持させた上で,前記第三者割当による新株式発行増資及び前記新株予約権の行使により発行予定の新株等を売却しようと企て 真実は,株式会社Oは被告人Aが前記第三者割当による新株式発行増資等において名目上の割当先とするために設立した実体のない法人に過ぎず,同社には前記第三者割当による新株式発行増資の払込金4億5981万円等を実際に拠出する資金力もなく,他に同社割当分の払込金全額の出資に応じる者も確保できていなかったのに,その情を秘し,平成20年2月1日,前記株式会社東京証券取引所が提供する適時情報開示システムであるTDnetにより,あたかも株式会社Oがマレーシア店頭市場上場会社から紹介された資金力を有する関連会社であり,株式会社Oが前記第三者割当による新株式発行増資等の出資者として実際に払込金全額を拠出する旨の虚偽の事実を公表し, 真実は,前記第三者割当による新株式発行増資の株式会社O割当分の払込金4億5981万円のうち2億0481万円は架空の払込みであるのに,その情を秘し,同月18日,前記TDnetにより,あたかも株式会社Oから,前記第三者割当による新株式発行増資の払込金として4億5981万円全額の払込みが完了し,被告B会社の資本増強が行われた旨の虚偽の事実を公表し, もって有価証券の売買のため,及び有価証券の相場の変動を図る目的をもって,偽計を用いた(平成21年12月25日付け起訴状記載の公訴事実第1)第3被告 増強が行われた旨の虚偽の事実を公表し, もって有価証券の売買のため,及び有価証券の相場の変動を図る目的をもって,偽計を用いた(平成21年12月25日付け起訴状記載の公訴事実第1)第3被告人Aは,前記第2の犯行により,被告B会社の資本増強が行われたとして虚偽の事実を登記させようと企て,Pらと共謀の上,平成20年4月16日,東京都板橋区板橋1丁目44番6号所在の東京法務局板橋出張所において,前記金が,同出張所登記官に対し,被告B会社の資本の額が122億7986万6418円から125億3900万6418円に増加した事実などないのに,その旨虚偽を記載した株式会社変更登記申請書等を提出して虚偽の申立てをし,情を知らない前記登記官をして,そのころ,同出張所において,公正証書の原本として用いられる電磁的記録である商業登記簿の磁気ディスクにその旨の不実の記録をさせて,即時,これを同所に備え付けさせ,もって公正証書の原本としての用に供した(平成21年12月25日付け起訴状記載の公訴事実第2)ものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用) 被告人Aについて被告人Aの判示第1の所為は包括して刑法60条,平成18年法律第65号(証券取引法等の一部を改正する法律)附則218条により同法3条による改正前の証券取引法(以下「証券取引法」という。)197条2項,同条1項5号(ただし,平成18年法律第65号1条による改正後のもの),159条1項1号(仮装売買の点),2項1号(変動操作の点)に,判示第2の所為は包括して,刑法60条,金融商品取引法197条1項5号,158条に,判示第3の所為のうち電磁的公正証書原本不実記録の点は刑法60条,157条1項に,同供用の点は同法60条,158条1項にそれぞれ該当するところ,判示第3は1個の行為が2個の罪 1項5号,158条に,判示第3の所為のうち電磁的公正証書原本不実記録の点は刑法60条,157条1項に,同供用の点は同法60条,158条1項にそれぞれ該当するところ,判示第3は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重い不実電磁的公正証書原本供用罪の刑で処断することとし,判示第2の罪について情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し,判示第3の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑について同法47条本文,10条により,刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告人Aを懲役3年及び罰金300万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金1万円を1日に換算した期間被告人Aを労役場に留置することとし,情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から5年間その懲役刑の執行を猶予し,証券取引法198条の2第1項1号,2号,同項ただし書を適用して,被告人Aが判示第1の犯罪行為により得た財産又はその対価として得た財産のうち,総額金2億5529万2200円を没収すべきところ,既に費消されるなどして没収することができないので,同条2項によりその価額を被告人Aから追徴することとする。 被告B会社について判示第2の事実は,被告B会社の代表者である被告人Aが,被告B会社の業務及び財産に関し,金融商品取引法197条1項5号,158条に違反する行為をしたものであるから,同法207条1項1号により,同号所定金額の範囲内で被告B会社を罰金3000万円に処することとする。 (被告人Aに対する追徴額についての補足説明) 証券取引法198条の2第 をしたものであるから,同法207条1項1号により,同号所定金額の範囲内で被告B会社を罰金3000万円に処することとする。 (被告人Aに対する追徴額についての補足説明) 証券取引法198条の2第1項本文,2項の趣旨証券取引法198条の2第1項本文,2項の趣旨は,健全な証券市場を確保するために,相場操縦等の犯罪行為により得た財産又はその対価として得た財産等を,犯罪への再投資等を阻止するためにも,当該犯罪に関与した犯人全員から残らずはく奪し,不公正な取引を厳に規制し,もって証券取引法秩序を確保しようとするものであり,いわゆる「やり得」を許すことのないよう,こうした不公正取引により得た財産を例外なく没収・追徴する趣旨であり,共同正犯者を含む犯人全体に対し,原則として,各自の責任で確実に国庫にその全額を納付せしめようとするものであり,没収の対象となる「犯罪行為により得た財産」も,共同正犯者を含む犯人全体が「犯罪行為により得た財産」を意味するものであって,形式上の第一次的な利益帰属者や最終的利益帰属者,さらには,利益の分配にあずかった者が誰であったかは問われないと解するのが相当である。 本件においても,相場操縦(変動操作)の手段として行われる個々の売買取引により得た買付株式及び株式の売却代金並びに変動させた相場により売却した株式の代金は,いずれも同条項による必要的没収・追徴の対象となる上,被告人Aも,共同正犯者として,当然追徴に応じるべき責任がある。被告人Aの弁護人らは,同条項にいう「犯人」には,たとえ共犯者であってもおよそ利得を得てない者は含まれないとした上で,被告人Aは同条項にいう「犯人」に当たらない旨主張するが,上記法の趣旨に照らして採用できない。 証券取引法198条の2第1項ただし書の適用(信用取引分)次に,同法198 含まれないとした上で,被告人Aは同条項にいう「犯人」に当たらない旨主張するが,上記法の趣旨に照らして採用できない。 証券取引法198条の2第1項ただし書の適用(信用取引分)次に,同法198条の2第1項ただし書では,「その取得の状況,損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし,当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは,これを没収しないことができる。」と定め,没収・追徴が過酷な結果をもたらさないように配慮している。これからすると,本件においても,相場操縦の手段として膨大な数の株式買付,同売付が繰り返され,しかも,それらが信用取引で行われている場合,それらの合算額は膨大なものになりがちである上,その買付株式,売付代金のいずれも証券会社の担保とされており,犯人である被告人らが実際に取得できる利益は売買差益相当額にすぎないことなどを考えると,それらの合算額のすべてを必要的没収・追徴の対象とするのは,犯人である被告人Aにとってあまりに過酷となるというべきであるから,同条1項ただし書を適用して,原則として,没収・追徴の範囲を売却代金から買付代金相当額を控除した売買差益相当額に限定するのが相当である。 この点,検察官は,本件が相場操縦の加重類型である証券取引法197条2項の罪として訴追されたものであることから,財産上の利益を得る目的で,相場操縦の結果変動した相場により取引をした行為を処罰する同条項の趣旨を強調して,変動させた相場により売却した株式の代金の全額を没収・追徴の対象とするべきである旨主張している。しかしながら,本件において同条項の罪を構成するものとして訴追されているのは,後述の現物取引に係る分を除くと,その大半は,相場操縦(変動操作)の手段として,信用取引により頻繁に売買された株式の中から,特に売り付けに係る分を抽出 項の罪を構成するものとして訴追されているのは,後述の現物取引に係る分を除くと,その大半は,相場操縦(変動操作)の手段として,信用取引により頻繁に売買された株式の中から,特に売り付けに係る分を抽出して捕捉したものにすぎないものであるが,このように信用取引に係る売買額全額を没収・追徴の対象とすることが過酷となることは,財産上の利益を得る目的である場合であっても変わるところはないというべきであるから,この点についての検察官の主張は採用できない。 証券取引法198条の2第1項ただし書の適用(現物取引分)もっとも,検察官は,売り付けに係る株券のうち,少なくとも証券口座の信用取引によるものではなく現物取引によるもの,すなわち,被告人Aらにおいてかつて安値で購入してあった株券(以下「現物株」という。)を出庫して本件相場操縦期間中に売り抜けたものについては,売り付け後の売却代金相当額の全額を追徴すべきであるとも主張している。確かに,現物株取引の場合は,信用取引の場合と異なり,それを売り付けた者が,当該現物株の売付代金の全額を取得することになるから,これを全額没収・追徴の対象としても,犯人に過酷な結果をもたらすことにはならず,犯罪に対する再投資等を阻止しようとする証券取引法198条の2の趣旨からすれば,これらを全額没収・追徴の対象とするのが相当というべきである。 本件における没収・追徴すべき金額の算定以上検討してきたところからすれば,証券取引法198条の2第1項本文,同ただし書,同条2項により被告人Aから没収・追徴すべき金額は,判示第1の犯行における被告B会社の株式(以下「B株」ということがある。)の取引のうち信用取引分を含めたすべての取引(ただし,仮装売買分を除く。)による売買利益の合計額1億5808万2160円(甲92・別紙1)か における被告B会社の株式(以下「B株」ということがある。)の取引のうち信用取引分を含めたすべての取引(ただし,仮装売買分を除く。)による売買利益の合計額1億5808万2160円(甲92・別紙1)から,D名義の口座(Q証券,R証券)で売り付けられたとされる14万0300株(甲92・別紙2・1丁(1)の「売付株数」合計15万6000株から,「仮装売買」に係る「株数」1万5700株を控除したもの。以下「D現物株」という。)による売買利益額193万8200円(甲92・別紙2・1丁(1)「除く仮装売買」欄の「売買損益」額),及びJ名義の口座(S証券)で売り付けられたとされる合計67万4300株(甲92・別紙2・2丁(2)。以下「J現物株」という。なお,J現物株取引においては,仮装売買はない。)による売買利益額4097万7760円(甲92・別紙2・2丁(2)「除く仮装売買」欄の「売買損益」額)を控除した1億1516万6200円に,D現物株の売付金額2354万4400円(甲92・別紙2・1丁(1)の売付金額合計2626万0500円から,仮装売買分に係る売付金額271万6100円(平成19年4月25日取引分1万5700株に取引価額173円を乗じた額。甲5・158ページ,甲41・7ページ以下,乙40・10ページ以下)を控除した金額)及びJ現物株の売付金額1億1658万1600円(甲92・別紙2・2丁(2)の売付金額)の合計額を加えた2億5529万2200円とするのが相当である。 (量刑の理由) 本件は,被告会社の代表取締役である被告人Aが,①いわゆる仕手師であるC,投資グループを率いてCと連携するなどしていたDほか数名の判示共犯者らと共謀の上,財産上の利益を得る目的で,東京証券取引所二部上場企業である被告B会社の株式(B株)について相場操縦を行い, あるC,投資グループを率いてCと連携するなどしていたDほか数名の判示共犯者らと共謀の上,財産上の利益を得る目的で,東京証券取引所二部上場企業である被告B会社の株式(B株)について相場操縦を行い,これによって上昇させた株価により被告B会社の株式を売り付けたという証券取引法違反(判示第1),②Dほか数名の判示共犯者らと共謀の上,被告B会社の代表者としてその業務及び財産に関し,被告B会社による第三者割当による新株発行・株式予約権発行増資につき,虚偽の事実を公表して偽計を用いたという金融商品取引法違反(判示第2),判示共犯者らと共謀の上,同増資に関し虚偽の事実を登記させたという電磁的公正証書原本不実記録・同供用(判示第3)から成る事案である。 判示第1の犯行について(1)犯行に至る経緯・動機被告人Aは,被告B会社及びそのグループ会社数社をその支配下に置き,映画の製作等の経済活動に従事しながら,増資や企業買収等により積極的な事業規模の拡大を図っていたものであるが,平成18年11月グループ会社の粉飾決算発覚を契機として被告B会社の株価が暴落し,被告B会社やそのグループ会社の増資による資金調達に苦しむようになったことから,資金調達が容易になるよう,被告B会社の株価の維持・上昇に強い利害関心を抱くようになっていたところ,かねてより被告B会社の株式を取得してその短期的な売買等によって利益を得ながら,上記暴落により巨額の損失を被ったC及びDが,被告B会社株式(B株)に関する本格的かつ長期的な相場操縦行為によって上記損失の挽回と利得を企てたのに同調し,同人ら及びその協力者らと共謀の上,判示第1の犯行に及んだものである。これからすれば,自己の支配する会社の資金調達を図り,ひいては,自己の支配権をより強固なものにすることによって,自己の利益を図る ,同人ら及びその協力者らと共謀の上,判示第1の犯行に及んだものである。これからすれば,自己の支配する会社の資金調達を図り,ひいては,自己の支配権をより強固なものにすることによって,自己の利益を図るために,法令違反をいとわないその自己中心的な動機に酌むべき点はない。 (2)犯行態様・結果,被告人Aの役割被告人A及びその共犯者らは,訴追対象期間を通じて,緻密な計画の下,多数の協力者を通じ多様な手法を駆使して,証券等取引監視委員会の監視の目をかすめながら,継続的かつ大規模な相場操縦行為を行ったものであって,その態様は巧妙かつ計画的であって,悪質である。 判示第1の犯行の結果,少なからざる相場の変動を生じさせ,一般投資家に影響を与えたばかりか,証券市場の公正さに対する信頼をゆがめており,その結果も軽視できない。 もっとも,相場操縦行為そのものは,C及びDが主体となって行ったものであるが,被告人Aもまた,かねて親しく付き合っていたC・Dに同調し,相場操縦のための多額の資金提供(平成19年2月及び4月の2度にわたり合計1億0500万円)のみならず,市場外取引による大量の買建玉の引き取り(平成19年3月8日から4月25日までの間に合計575万株)をするなど,犯罪遂行の上での重要な役割を行っている。 なお,被告人Aは,公判廷において,Cらが相場操縦をしていることを明確に知ったのは,本件で逮捕された後のことであり,同被告人において,Dらに具体的な株価の目標値を示したこともなく,また,上記のような役割を果たすことになったのも,Cから電話で同人の依頼に応じないとB株が暴落するなどとして威圧的に市場外取引を迫られた結果である旨弁解している。しかしながら,被告人Aの上記公判供述の内容は,CやDの捜査段階における一致した供述に反しているところ, 頼に応じないとB株が暴落するなどとして威圧的に市場外取引を迫られた結果である旨弁解している。しかしながら,被告人Aの上記公判供述の内容は,CやDの捜査段階における一致した供述に反しているところ,Cらの供述内容は詳細かつ自然であり,その信用性は高い。これに対し,被告人Aは,捜査段階において,上記公判供述に沿うかのような供述をしてはいるものの,一方で市場外取引を以前から依頼されたかもしれない旨の供述もし(乙3・19ページ),あるいは,自らは具体的な株価の目標値を言わなかったものの,Dから告げられた株価の目標値につき,「いいですよ。」と答えたとも述べているのであって(乙3・8ページ),これからすれば,被告人Aの上記公判供述は信用できず,このことから,同被告人の有利に斟酌すべき事情は見いだせない。 (3)被告人Aに有利な犯情被告人Aが,判示第1の犯行につき,前後の重要な経緯も含め,その大筋を認めていること,相場操縦により被告人A自身には直接の個人的利得はなかったこと,変動させた相場による株券売却のうち,とりわけJによる売り抜け行為の点については,被告人Aとしては,C・Dらの相場操縦行為に対する大口の出資協力者が,相場操縦行為を無駄にしない範囲で適宜保有する株券を売り抜けて利益を図ることは容認するという限度で関わっていたものにすぎないことは,被告人Aのために有利に斟酌すべきものである。 判示第2,第3の犯行について(1)犯行に至る経緯・動機被告人Aは,C及びDらによるB株の相場操縦が平成19年12月の大暴落によって終焉を迎えたことから,そのころ予定していた第三者割当による新株及び新株予約権発行の一部失権手続を余儀なくされ,そのため,改めて第三者割当による新株及び新株予約権を発行,増資して資金調達を図ることにしたが,直ちに十 ら,そのころ予定していた第三者割当による新株及び新株予約権発行の一部失権手続を余儀なくされ,そのため,改めて第三者割当による新株及び新株予約権を発行,増資して資金調達を図ることにしたが,直ちに十分な出資者を確保することができなかったため,取りあえず実体のないダミー会社を設立した上で,これを新株の引受予定者として虚偽の事実を公表し(判示第2の1),さらに,引き続き実質的な出資者を探したものの,増資額に見合うだけの出資者を確保できなかったため,当時の状況下で,既に公表した増資の一部を消却するのは被告B会社の致命的な信用不安につながるなどと考えて,架空の水増し増資を企て,資金の流れを仮装した上で,新株引受に係る全額の払込みがあったと虚偽の事実を公表し(判示第2の2),その後,その旨の虚偽の商業登記をした(判示第3)。 このような経緯からすると,被告人Aは,判示第2及び第3の各犯行においても,判示第1の犯行と同様,自己の支配する会社の資金調達を図り,ひいては,自己の支配権をより強固なものにすることによって自己の利益を図るために,法令違反をいとわない自己中心的な動機によるものであって,酌むべき点はない。 なお,被告人Aの弁護人らは,同被告人が判示第2及び第3の各犯行を引き起こしたのは,ひとつには,B株等をめぐって被告B会社や関連会社として関連証券会社を通じて信用取引をしていた証券会社から,株価暴落後,巨額の追加保証金の支払をきびしく追及されるようになり,関連証券会社のみならず被告B会社等に対しても破産申立てを示唆され,追い詰められたからであり,また,同被告人に対し現実に多額の出資を約束する者がいたことなどを挙げて,同被告人に同情の余地がある旨主張する。 しかしながら,被告B会社が破綻に瀕したのは,被告人Aの,相場操縦への関与を含めた た,同被告人に対し現実に多額の出資を約束する者がいたことなどを挙げて,同被告人に同情の余地がある旨主張する。 しかしながら,被告B会社が破綻に瀕したのは,被告人Aの,相場操縦への関与を含めた経営判断の失敗によるものであって,自業自得というべきであるし,出資を約束する者の言動についても,同被告人においては,当初から実際に出資されない可能性も高いことを考慮に入れていたことが認められるのであって,上記弁護人らの主張を採ることはできない。 (2)犯行態様等判示第2及び第3の各犯行は,被告人Aが,被告B会社の多数の部下に指示して多様な役割分担の下,敢行した被告B会社ぐるみの組織的な犯行であり,被告人Aは,判示第2及び第3の各犯行を通じてその首謀者としての地位にあった。 また,被告人Aは,判示第2及び第3の各犯行以前から,ダミー法人を割当先とするなどして新株発行等による増資を大々的に公表し,その効果の下で実質的な出資者を集めるなどして被告会社の資金調達を行っており,これからすれば,同被告人のこの種事犯に対する規範意識は鈍麻していたというほかない。 (3)被告人Aに有利な犯情被告人Aが判示第2及び第3の各犯行についても,事実をすべて認めて,その詳細を供述しているほか,判示第2の犯行については,公表した出資額相当の払込がされていることなどが認められるが,これらの事情は,被告人Aのために有利に斟酌すべきである。 被告人Aの一般情状被告人Aには,前科前歴がなく,これまでに映画業界などで相応の成果を上げていたほか,判示各犯行を行い,そのため一般投資家のほか,被告B会社従業員ら関係者にも多大な迷惑をかけたことを反省する旨述べており,被告人Aの妻や同被告人の知人も,情状証人として出廷した上,同被告人の更生に協力していきたい旨述べている 一般投資家のほか,被告B会社従業員ら関係者にも多大な迷惑をかけたことを反省する旨述べており,被告人Aの妻や同被告人の知人も,情状証人として出廷した上,同被告人の更生に協力していきたい旨述べていること,被告人Aは,本件により被告B会社の代表取締役を解任され,その後,同社の取締役を辞任するなど,一定の社会的制裁を受けたことなどが認められるが,これらの諸事情は,被告人Aのために有利に斟酌すべきである。 被告B会社の情状被告B会社については,判示第2の犯行に係る会社としての責任を認めているほか,既に上場廃止となり,また,事業活動の継続に重大な支障が生じるなど,社会的制裁を受けていること,被告人Aとの決別,経営陣の刷新等により再発防止を期していることなど,有利に斟酌すべき事情が認められる。 結論 そこで,以上諸般の事情をそれぞれ総合考慮の上,被告人Aについては,同種事犯に関する量刑の一般的傾向も踏まえると,主文掲記の懲役刑及び罰金刑に処した上で,その懲役刑の執行は猶予し,なお,上記のとおりの額を追徴することとし,また,被告B会社については,主文掲記の罰金刑に処することとした。 (求刑)被告人Aについて懲役3年6月及び罰金300万円並びに追徴11億3804万1500円,被告B会社について罰金3000万円平成22年8月18日大阪地方裁判所第11刑事部裁判長裁判官岩倉広修裁判官木山暢郎裁判官佐藤敬弘 申し訳ありませんが、テキストが不完全なため、整形を行うことができません。正しいテキストを提供していただければ、整形を行います。

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