平成12(行ウ)332 審査決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年1月22日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文18,538 文字)

主文 1 原告の平成13年9月10日付け請求の趣旨変更の申立てに係る訴えを却下する。 2 被告が原告に対し平成12年8月31日付けでした東京都三鷹市α410番2所在の土地に係る平成12年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。 3 控訴費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 訴状記載の請求の趣旨主文第2項同旨 2 平成13年9月10日付け請求の趣旨変更の申立てに係る請求の趣旨被告が平成12年8月31日付けでした東京都三鷹市α410番2の土地の固定資産税に係わる平成12年度の価格決定のうち6309万0646円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要本件は、東京都三鷹市α410番2所在の土地(以下「本件土地」という。)共有者の一人である原告が、同土地について固定資産課税台帳登録された平成12年度の価格が適正な時価を上回る違法なものであるとして、被告に対して審査の申出をしたところ、被告が平成12年8月31日付で登録価格を一部変更する旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたが、なお同価格は原告が適正な時価と考える価格6309万0646円を上回るとして、当初は本件決定全部の取消しを求め、平成13年9月10日付けで本件決定のうち前記適正な時価と考える価格を上回る部分の取消しを求める旨に請求の趣旨を変更したものである。 1 関係法令等の定め(1)土地の評価に関する地方税法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下「法」という。)の規定等ア固定資産税は、固定資産に対し、その所有者に課する地方税であり(法342条、343条1項)、土地に対して課する基準年度の課税標準は、当該土地の基準年度に係る賦課期日(本件では平成12年1月1日である。法359条)における価格、すなわ 有者に課する地方税であり(法342条、343条1項)、土地に対して課する基準年度の課税標準は、当該土地の基準年度に係る賦課期日(本件では平成12年1月1日である。法359条)における価格、すなわち「適正な時価」で土地課税台帳に登録されたもの(以下、この登録された価格を「登録価格」という。)である(法349条1項、341条5号)。 イ市町村長は、固定資産の状況及び固定資産税の課税標準である固定資産の価格を明らかにするため、固定資産課税台帳(土地課税台帳、土地補充課税台帳等)を備えなければならない(法380条1項、341条9号)。 ウ登録価格の決定に際しての土地の評価については、自治大臣が評価の基準並びに評価の実施方法及び手続(固定資産評価基準)を定め、告示しなければならないものとされ(法388条1項)、昭和38年自治省告示第158号をもって固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)が告示されている。市町村長は、評価基準によって土地の評価をしなければならない(法403条1項)。 三鷹市においては、評価基準に基づき三鷹市固定資産(土地)評価事務取扱要領(8三市資発第117号・平成8年10月1日市長決裁。乙3。以下「取扱要領」という。)を定め、これに基づき土地の評価を行っている。 エ市町村長は、固定資産評価員から所定の手続きによる土地の評価に係る評価調書を受理した場合においては、これに基づいて毎年2月末日までに土地の価格等を決定し、これを土地課税台帳に登録しなければならない(法410条、411条1項)。 (2)評価基準が定める市街化区域農地の評価方法市街化区域農地(法附則19条の2第1項に規定する市街化区域農地をいう。)の評価について、評価基準は、沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況その他宅地としての利用上の便等からみて、当該市 価方法市街化区域農地(法附則19条の2第1項に規定する市街化区域農地をいう。)の評価について、評価基準は、沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況その他宅地としての利用上の便等からみて、当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地の価額を基準として求めた価額から当該市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によってその価額を求める方法によるものとしている(第1章第2節の2)。 2 前提となる事実(1)本件土地及び南側に隣接する東京都三鷹市α410番1(不動産登記簿上の地目は宅地)の土地(以下「別件土地」という。)は、原告を含む亡Aの相続人が共有している(甲8、9の1及び2、弁論の全趣旨)。 (2)本件土地の不動産登記簿上の地目は畑であり、別件土地の南側には幅員約7メートルの街路(以下「南側街路」という。)がある。別件土地上には原告らが居住する建物が建てられており、本件土地上には、熱帯性植物であるポポーの木、白樺、白雲木などが生い茂っている(甲5の1および2、9の1及び2、11の1ないし27、弁論の全趣旨)。 (3)三鷹市長は、本件土地に対する平成12年度の固定資産税の課税標準となるべき価格1億9199万6897円を固定資産課税台帳に登録した(甲1)。 3 三鷹市長のした本件土地の評価(1)本件土地の地目等本件土地の不動産登記簿上及び現況の地目はいずれも畑であり、法附則19条の2第1項に規定する市街化区域農地に該当する。 (2)基本価額の算出本件土地と状況が類似する地域内の普通住宅地区の各路線について、市街地宅地評価法によって評定された各路線価格の平均価格20万8000円に画地計算法等適用相当分としての乗率0.75を乗じ、平成11年1月1日時点における基本価額を15万6000円 各路線について、市街地宅地評価法によって評定された各路線価格の平均価格20万8000円に画地計算法等適用相当分としての乗率0.75を乗じ、平成11年1月1日時点における基本価額を15万6000円と算出した。 20万8000円×0.75=15万6000円(当該状況類似区域内に存する普通住宅地区の平均路線価格×乗率=基本価額)(3)地価下落修正(2)で算出した基本価額に地積1286.67平方メートルを乗じて平成11年1月1日時点における価額を算出し、平成11年1月1日から同年7月1日までの地価下落に伴う修正率を0.97として、平成12年度の価額を2億0072万0520円と算出した。 15万6000円×1286.67=2億0072万0520円(基本価額×地積=平成11年1月1日時点における価額)2億0072万0520円×0.97=1億9469万8904円(平成11年1月1日時点における価額×地価下落修正率=平成12年度の価額。1円未満切捨て)(4)造成費相当額の控除(3)で得られた平成12年度の価額から、東京都から通知される価額を参考にして求めた1平方メートル当たりの造成費2100円に地積を乗じて得られた造成費相当額270万2007円を控除することとし、本件土地の平成12年度の登録価格を1億9199万6897円と算出した。 1億9469万8904円-270万2007円=1億9199万6897円(平成12年度の価額-造成費相当額=平成12年度の登録価格) 4 本件決定の内容(1)原告は、平成12年5月29日、被告に対し、本件土地の登録価格を不服として審査の申出をした(乙2の1)。 (2)被告は、平成12年8月31日、本件土地は一画地として評価すべきであり、直接には路線に接しないことを前提とすると、状況が類似する宅地の価額 の登録価格を不服として審査の申出をした(乙2の1)。 (2)被告は、平成12年8月31日、本件土地は一画地として評価すべきであり、直接には路線に接しないことを前提とすると、状況が類似する宅地の価額との関係では画地計算法上の無道路地補正の適用が認められ得る土地であるから、三鷹市長が本件土地の評価に当たって適用した画地計算法適用相当分の乗率0.75は適当ではなく、無道路地補正率に相当する乗率0.6を適用することとして、次の計算式のとおり本件土地の適正な時価を1億5305万7116円と算出し、原告の審査申出は同限度において理由があるとして、登録価格を同価格と変更する内容の本件決定をした(甲1)。 20万8000円×0.6=12万4800円(平均路線価格×画地計算法等適用相当分=基本価額)12万4800円×1286.67平方メートル=1億6057万6416円(基本価額×地積=総価額)1億6057万6416円×0.97=1億5575万9123円(総価額×地価下落修正率=平成12年度の価額。1円未満切捨て)1億5575万9123円-270万2007円=1億5305万7116円(平成12年度の価額-造成費相当額=平成12年度の登録価格) 5 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件土地の登録価格の適否であり、登録価格の適否について具体的に問題となるのは(1)本件土地の評価に当たり画地計算法を適用すべきか否か、(2)画地計画法の具体的な適用及びその結果登録価格は適正な時価を上回るか否か、(3)登録価格が適正な時価を上回る場合の審査決定の取消しの範囲であり、それらに関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)被告の主張ア本件土地の評価は、評価基準及び取扱要領に定められたところに従って行われたものであり違法な点はない 審査決定の取消しの範囲であり、それらに関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)被告の主張ア本件土地の評価は、評価基準及び取扱要領に定められたところに従って行われたものであり違法な点はない。原告は、本件土地の評価に当たり画地計算法を適用すべきあると主張するが、評価基準は市街化区域農地について宅地と同一の評価方法である画地計算法を適用することを予定してはいない上、農地の評価額が当該農地を宅地として評価した場合の額を上回ってはならないことも要求していない。市街化区域農地は、確かに将来的に宅地に転じ得る潜在的側面を有し、宅地並み課税という政策目的の合理性を基礎付ける一般的抽象的性状が見受けられることは否定しないが、現況はあくまでも農地であり、宅地として顕在化されていないという前提を見過ごすことは現況主義という基本原則に照らして適切さを欠く。画地計算法は、課税対象たる個別の宅地について、宅地の現況に照らし、かつ相当程度に個別具体的な性状に着眼して価格形成原因ごとの分析的な評価を行うという性質がある。そうすると、単に将来的に宅地に転じ得る潜在的側面や一般的抽象的性状があるからといって、現に宅地化していない市街化区域農地について現況ではなく将来宅地になったらという仮定的な状況を想定して画地計算法を適用することは、画地計算法の上記性質にもなじまないというべきである。仮に市街化区域農地について画地計算法を適用すべきであるとすると、すべての市街化区域農地について、いったんは宅地化された状況を想定した上で画地計算法による評価事務作業をしなければならくなるが、それは非効率的で実務上無理を強いる結果となることは明らかである。したがって、原告の主張は失当である。 イ仮に本件土地を宅地であるとみて画地計算法を適用すべきであるとしても、本件土地は別件土 が、それは非効率的で実務上無理を強いる結果となることは明らかである。したがって、原告の主張は失当である。 イ仮に本件土地を宅地であるとみて画地計算法を適用すべきであるとしても、本件土地は別件土地と一体をなしているものであるから、両土地は一画地として評価すべきである。このように解することは、本件土地と別件土地とがいずれも原告及びその兄弟の自用地であって同一人の利用に供されている土地であり、本件土地が将来宅地に転じた場合には別件土地とともに宅地として一体化して評価されるべきことになる実情にも即している。その上で画地計算法を適用するとすると、本件土地の適正な時価は次のとおりに算出すべきである。 (ア)本件土地の路線価は24万6000点である。この点につき、原告は、取扱要領で農地の評価に関して使用する平均路線価格によるべきであると主張するが誤りである。本件土地に適用のある奥行価格補正率は0.81、不整形地補正率は0.88であるから、1平方メートル当たりの評点数は17万5348点となる。 24万6000点×0.81×0.88=17万5348点(路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率=1平方メートル当たりの評点数)(イ)(ア)で算出した1平方メートル当たりの評点数に本件土地と別件土地とを合計した地積2099.93平方メートルを乗じると、土地全体の評点数は3億6821万8525点となる。 17万5348点×2099.93平方メートル=3億6821万8525点(1平方メートル当たりの評点数×地積=本件土地と別件土地を合計した評点数。小数点以下切捨て)(ウ)(イ)で算出した評点数から、別件土地の評点数(地価下落修正率を乗ずる前のもの)1億7669万4560点を差し引くと1億9152万3965点となるところ、本件決定において被告の算出した本件土 (ウ)(イ)で算出した評点数から、別件土地の評点数(地価下落修正率を乗ずる前のもの)1億7669万4560点を差し引くと1億9152万3965点となるところ、本件決定において被告の算出した本件土地の評点数1億6057万6416点はこれを下回っているから,本件決定は違法ではない。 3億6821万8525点-1億7669万4560点=1億9152万3965点(本件土地と別件土地を合計した評点数-別件土地の評点数=本件土地の評点数)ウ仮に本件土地と別件土地とを別画地であるとして画地計算法を適用するとすると、本件土地は無道路地となるが、道路開設補正率の適用はない。また、本件土地は不整形地であるが、普通住宅地区にあり、蔭地割合が10パーセント未満であるから、不整形地補正率1.00が適用される。本件土地を宅地に転用するための造成費相当額が1平方メートル当たり2100円であることは争わない。 エ取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の決定は、審査申出人の不服申立てに対する同委員会の応答としてされるものであるから、法は固定資産評価審査委員会の決定した価格に関して、これを可分のものとして、決定された価格の一部が取消訴訟において争われ、残部が別途確定するという事態を予定していないと解するのが正当である。 したがって、原告の平成13年9月10日付け準備書面による請求の趣旨の変更は、訴えを不適法なものに変更するものである。 (2)原告の主張ア本件土地は、市街化区域農地であるからいわゆる宅地並み評価がされるべきところ、被告がした評価は本件土地の地形等の個別具体的な事情を十分に反映させておらず、その結果、本件土地を宅地として評価した場合よりも高額な評価をしたものであり違法である。 イ本件土地の評価に当たっては画地計算法を適用すべきであり、その場 個別具体的な事情を十分に反映させておらず、その結果、本件土地を宅地として評価した場合よりも高額な評価をしたものであり違法である。 イ本件土地の評価に当たっては画地計算法を適用すべきであり、その場合には、本件土地は別件土地とは別画地として取り扱うべきである。この点について、被告は、本件土地と別件土地とは一体であり一画地として取り扱うべきであると主張するが、本件土地は農地であり、別件土地は宅地であって利用状態が異なる上、本件土地及び別件土地は原告が単独所有するものではなく、原告は共有者の一人にすぎないのであるから、被告の主張は失当である。 ウ本件土地の評価に当たっては次のとおりに画地計画法を適用すべきである。本件土地は路線に接しておらず無道路地である。評価基準によれば、無道路地の評点算出法は、利用上最も合理的であると認められる路線の路線価に、奥行価格補正率表によって求めた補正率、通路開設補正率表によって求めた補正率及びその無道路地の近傍の宅地と均衡を考慮して定める無道路地補正率を乗じて1平方メートル当たりの評点数を求め、これに当該無道路地の地積を乗じてその評点数を求めることとされている。さらに、本件土地は、不整形地であるので、不整形補正率も適用すべきである。 (ア)本件土地の農地として特殊性を考慮すると、路線価は、正面路線に当たる南側街路の路線価ではなく、平均路線価格20万8000円を適用すべきである。本件土地の奥行は本件土地の近似整形地から計算すると88.49メートルであるが、本件土地の農地としての特殊性を考慮して、奥行価格補正率0.8を適用すべきである。 通路開設補正率は、本件土地から正面路線までの距離が37.46メートルであるから、0.6を適用すべきである。無道路地補正率は0.6を適用すべきである。 不整形地補正率は、本件土地は普 用すべきである。 通路開設補正率は、本件土地から正面路線までの距離が37.46メートルであるから、0.6を適用すべきである。無道路地補正率は0.6を適用すべきである。 不整形地補正率は、本件土地は普通住宅地区にあり、蔭地割合が31.06パーセントであるから0.88を適用すべきである。 (イ)以上により、本件土地の1平方メートル当たりの評点数は5万2715点である。 20万8000点×0.8×0.6×0.6×0.88=5万2715点(平均路線価格×奥行価格補正率×通路開設補正率×無道路地補正率×不整形地補正率=1平方メートル当たりの評点数)(ウ)(イ)で算出した1平方メートル当たりの評点数に本件土地の地積1286.67平方メートルを乗じると、平成11年1月1日時点における本件土地の評点数は6782万6809点となる。 5万2715点×1286.67平方メートル=6782万6809点(1平方メートル当たりの評点数×地積=本件土地の評点数)(エ)(ウ)で求めた評点数に農地についての平成11年1月1日から同年7月1日までの地価下落修正率0.970を適用すると、本件土地の平成12年1月1日時点における価格は6579万2004円となる。 6782万6809点×0.970=6579万2004円(本件土地の評点数×地価下落修正率=本件土地の平成12年1月1日時点における価額)(オ)本件土地は宅地ではないので、宅地に転用するための造成費相当額を控除すべきであるところ、造成費相当額は1平方メートル当たり2100円であるから、(エ)から造成費相当額270万2007円を控除すると、本件土地の適正な時価は6309万0646円となる。 エ本件訴訟は課税処分の適否ではなく、本件決定に係る登録価格の適否を判断するものであって、適正な時価を超えた部分を取り 万2007円を控除すると、本件土地の適正な時価は6309万0646円となる。 エ本件訴訟は課税処分の適否ではなく、本件決定に係る登録価格の適否を判断するものであって、適正な時価を超えた部分を取り消す一部取消判決をしたとしても、取消判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)によって、市町村は審査決定と同様の措置を執ることが義務付けられるのであって、改めて固定資産評価審査委員会の審査決定を介在させる必要性はない。むしろ、審査決定の全部を取り消して固定資産評価審査委員会に評定の再施を命ずるのは迂遠であるばかりか、再度の決定があるまで裁判所の認定額に不服のある原告の救済の機会を遷延させることになる。そうすると、違法の理由が審査手続の違法や内容の違法であっても例外的に固定資産評価審査委員会に審査のやり直しを求めるのが相当である場合を除いては、審査決定のうちの違法な部分のみを取り消せば足りるというべきである。被告の主張は、納税者の法律に照らした適正な税額の賦課を受ける権利を無視し、裁判により租税の評価を争えない主張に他ならず、裁判所の判断事項をいたずらに狭くし、国民の裁判を受ける権利を侵害するものである。 第3 争点に対する判断 1 適正な時価の意義固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とし(法349条1項、349条の2)、原則として固定資産の所有者に対して(法343条1項)、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産から生ずる現実の収益に着目して課税される収益税とは異なるものである。このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法341条5号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち客観的な交換価値をいうものと解すべきである。 2 適 質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法341条5号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち客観的な交換価値をいうものと解すべきである。 2 適正な時価と評価基準による評価との関係適正な時価の意義が前記のようなものであることと、法が土地の登録価格の決定に当たって評価基準によって当該土地を評価すべきものとしていることからすると、登録価格の決定に当たり評価基準を忠実に適用しなかった場合(評価に用いた取扱要領が評価基準の趣旨に反する場合を含む。)には、当該登録価格は、賦課期日における客観的な時価を表しているか否かにかかわらず、法に反するものと評価せざるを得ないが、法は、評価基準自体が賦課期日における客観的な時価を求めるのにふさわしいものであることを要求しているものというべきであるから、評価基準及び取扱要領(以下「評価基準等」という。)を忠実に運用したとしても、その結果が客観的な時価を表さない場合は、その限度で評価基準等に問題があるというべきであり、それによって決定された登録価格もまた法の趣旨に反するものというほかない。 したがって、本件土地の登録価格が違法であるか否かの判断は、まず、それが評価基準等を忠実に適用して得られたものか否か、仮にそれが肯定された場合には、次に同登録価格が賦課期日における客観的時価を超えるかどうかによることになるが、その判断は、第1に、評価方法の選定が評価基準等に従ったものであるか(基準適合性)、第2に、前記評価基準等が一般的に合理性を有するかどうか(基準の一般的合理性)の順に行うべきである。 3 本件土地の登録価格の適否(1)本件土地の評価が評価基準等に従ったのものであるかどうか(基準適合性)前記第2・3のとおり、本件土地の評価は、本件土地と状況が類似する )の順に行うべきである。 3 本件土地の登録価格の適否(1)本件土地の評価が評価基準等に従ったのものであるかどうか(基準適合性)前記第2・3のとおり、本件土地の評価は、本件土地と状況が類似する地域の普通住宅地区の路線価の平均価格に画地計算法適用相当分の乗率を乗じて基本価額を算出し、同基本価額に地積を乗じた価格から東京都から通知された1平方メートル当たり2100円で換算した造成費相当額を控除しているから、取扱要領に従った評価であると認められる。 (2)評価基準等における市街化区域農地の評価手法の一般的合理性ア評価基準第1章第2節の2は、市街化区域農地については、宅地としての利用上の便からみて、当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地(以下「類似宅地」という。)の価額を基準として求めた価額(以下「基本価額」という。)から通常要する造成費相当額を控除する方法によって評価する旨を定めている。この評価手法は、市街化区域農地が市街化区域内に存する農地であり、将来的には宅地として利用される蓋然性が高く、実質的にみれば宅地としての潜在的価値を有し、実際の売買価格も宅地と同水準にあることから、近隣の宅地等との均衡を図る必要がある一方、市街化区域農地はあくまでも農地であるから、宅地とするためには土盛り及び整地をしなければならないため、土盛り等の造成費相当分を控除することとしたものと認められる。したがって、評価基準は、適正な時価の評価という法が委任した趣旨に全うするものであるといえ、その内容は一般的合理的を有すると認められる。 イ次に、取扱要領の定めについて検討する。取扱要領は、評価基準を受け、各地方公共団体が実際の評価に当たって用いるべき具体的手法を定めるものにすぎないから、その内容が評価基準に反することは許されないというべきである。そこで、 いて検討する。取扱要領は、評価基準を受け、各地方公共団体が実際の評価に当たって用いるべき具体的手法を定めるものにすぎないから、その内容が評価基準に反することは許されないというべきである。そこで、以下ではまず、評価基準がどのような具体的手法を許容しているかを検討し、それを前提として、取扱要領が評価基準の趣旨に合致するものであるか否かを検討することとする。 ウ評価基準は、基本価額の算定に用いるべき具体的な評価手法を特定してはいないが、比較の対象として類似宅地を選定するという手法を定めている以上、市街化農地の評価に当たっては、原則として宅地の評価方法を適用することを定めたものと解すべきである。ただし、市街化区域農地については、現況が農地であり、地積、形状等の立地条件が宅地に比べて特殊な場合が多いため、宅地の評価方法と全く同一の評価方法を適用することとすると、かえって実情に合わない結果となり、適切な評価が得られない場合があると予想されることから、市街化区域農地の実情に応じてある程度弾力的に運用できるよう、市街地宅地評価法である画地計算法の一部を適用しないことができ、適用する場合であっても、画地計算法の附表若しくは宅地の比準表に所用の補正を施すことができると解すべきである。 エ以上を前提に検討すると、取扱要領は、沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況その他の宅地としての利用上の便等からみて、当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地の価額を基準として求めた基本価額から当該市街化区域農地を宅地に転用する場合において、通常必要と認められる造成費相当額を控除した価額によってその価額を求める方法によるという一般論を前提とし、基本価額は、市内を12か所の状況類似地区に分け、各地域内の宅地の平均路線価格に画地計算法等適用相当分としての乗率0.75 額を控除した価額によってその価額を求める方法によるという一般論を前提とし、基本価額は、市内を12か所の状況類似地区に分け、各地域内の宅地の平均路線価格に画地計算法等適用相当分としての乗率0.75を乗じて得た価額とし、高圧線影響地補正以外の画地計算法は適用しないものと定めている。なお、各地域内の宅地の平均路線価格は、市街地宅地評価法により評定された状況類似地域内の普通住宅地区の路線価格の平均価格とすることとされ、造成費相当額は、東京都から通知される価額を参考にして求めるものと定められている。 取扱要領が述べる市街化区域農地の評価に関する一般論は評価基準と同一の内容である。しかし、取扱要領は、基本価額の基となる数値を状況類似地域内の普通住宅地区の路線価の平均価格によることとしているところ、もともと状況類似地域の分類は、その中に地区区分の異なる地区を含むことが前提とされている(この点、評価基準では「状況類似地域」は高度商業地区などに区分された「用途地区」をさらに区分する概念であるとされているのと異なる用語法である。)ことから明らかなとおり、極めて大まかなものである上、その中で普通住宅地区の路線価のみを対象としてそれらの平均を求めるものであるから、当該市街化区域農地の基本価額の基となる数値の算定方法としては、擬制の上に擬制を重ねるものである。さらに、基本価額は、平均路線価格に画地計算法適用相当分の乗率0.75を乗じることによって算出することとされているが、評価基準における画地計算法の附表によれば、同法により適用され得る補正率は0.55から1.00まで幅があり、しかも複数の補正率が適用される場合があることから、取扱要領において画地計算法適用相当分として一律に0.75を乗じることとすると、その結果は、当該農地が宅地であると想定し、画地計算法を で幅があり、しかも複数の補正率が適用される場合があることから、取扱要領において画地計算法適用相当分として一律に0.75を乗じることとすると、その結果は、当該農地が宅地であると想定し、画地計算法を全面的に適用して評価した価額を上回るおそれが多分にあり、経験則上、三鷹市内のような大都市近郊においては、特段の事情がない限り、同一の位置にある農地の価額が宅地のそれを上回ることは想定し難いのであるから、取扱要領のこの点についての定めは、適正な時価を算出するという法及び評価基準が志向するものとは異なるというべきである。 したがって、取扱要領が定める市街地区域農地の評価方法は、法及び評価基準の趣旨を全うするものではなく、一般的合理性を有していないというべきであり、市街化農地の登録価格については、当該農地が宅地であると想定し、画地計算法を忠実に適用して評価した価額を上回るものであるか否かを検討し、これを上回る場合にはその限度で違法というほかない。 オなお、この点について、被告は、市街化区域農地の評価について、評価基準は宅地と同一の評価手法を採用することを要求してはいないと主張するが、この点はウで説示したとおりであり、画地計算法の一部を適用しない等の例外的な取扱いが許容されないわけではないが、原則としては、宅地と同一の評価手法によるべきであるといえるから、これと異なる手法を定めた取扱要領は、法及び評価基準の趣旨に合致しないものというべきである。 また、被告は、評価基準は農地の評価額が宅地のそれを超えないことを要求しておらず、市街化区域農地について画地計算法による評価事務作業をすることになると、非効率的で実務上無理を強いる結果となる旨主張する。しかし、前記のとおり、三鷹市内のような大都市近郊においては、同一の場所にある宅地と農地とを比較すると、特段 による評価事務作業をすることになると、非効率的で実務上無理を強いる結果となる旨主張する。しかし、前記のとおり、三鷹市内のような大都市近郊においては、同一の場所にある宅地と農地とを比較すると、特段の事情がない限り、農地の価格が宅地のそれを上回ることはあり得ないのであるから、それと反対の結果を招くような評価手法は合理的とはいい難い上、画地計算法は宅地の市街化区域にある宅地の評価一般に適用される手法であり、これを市街化区域農地に適用することとしても非効率的であるとはいえないし、その結果、事務作業の負担が増加することとなるとしても、他により合理的な評価方法が見当たらない以上は、その負担を避けるためにより高額な課税をすることが許されないことはいうまでもなく、被告の主張には理由がないというほかない。 (3)本件土地への画地計算法の適用ア前記(2)のとおり、取扱要領による評価方法にはその合理性に疑問があるから、画地計算法を忠実に適用した評価額を算定し、その結果と被告の評価額とを比較して、その適否を検証することとする。すなわち、乙第7号証によれば、本件土地は、市街地的形態を有する区域内に存在する農地であると認められるから、本件土地の評価に当たっては、市街地宅地評価法である路線価方式を採用し、路線価を算定した上で、画地計算法を適用し、そこで得られた結果から、造成費相当額を控除した価額を算定することとする。 イ上記の評価方法においては、本件土地の画地の認定の仕方が問題となり、被告は別件土地と併せて一画地と評価すべきであると主張する。しかし、評価基準は、土地課税台帳に登録された筆ごとに一画地とすることを原則とし、例外的に、その形状、利用状況等からみて、一体をなしている場合に限って二筆以上の土地を一画地とすることを認めているところ(別表第3・2)、前記 課税台帳に登録された筆ごとに一画地とすることを原則とし、例外的に、その形状、利用状況等からみて、一体をなしている場合に限って二筆以上の土地を一画地とすることを認めているところ(別表第3・2)、前記第2・2・(2)のとおり、本件土地と別件土地とは、不動産登記簿上も現況も地目が異なり、利用状況も異なるのであるから、評価基準の定める例外的な場合に該当するとは認められず、本件土地は一画地として別件土地とは独立に評価すべきである。この点について、被告も、本件決定において、画地計算法等適用相当分として0.75乗率を適用するにとどまると、無道路地補正率の一部は評価し尽くされていないとして、乗率を0.6まで拡張していることからすると、本件土地は別件土地とは独立した画地として評価せざるを得ないと考えていたことがうかがえるのである。 そうすると、本件土地は、直接路線に接しないことになるため無道路地となる。 評価基準及び取扱要領によれば、無道路地の評点算出法は、利用上最も合理的であると認められる路線の路線価に、奥行価格補正率表によって求めた補正率、通路開設補正率表によって求めた補正率及びその無道路地の近傍の宅地との均衡を考慮して定める無道路地補正率を乗じて1平方メートル当たりの評点数を求め、これに当該無道路地の地積を乗じてその評点数を求めることとされている。そこで、以下ではこれらの定めに従って本件土地の客観的時価を検討する。 ウ甲第6号証によれば、本件土地の利用上最も合理的であると認められる路線は南側街路であり、その路線価は24万6000点である。そして、甲第5号証の1及び2並びに弁論の全趣旨によれば、本件土地は普通住宅地区にあり、正面路線からの遠い奥行は約88.5メートルであるから、奥行価格補正率は、評価基準別表第3の附表1により、正面路線からの遠い奥行 の1及び2並びに弁論の全趣旨によれば、本件土地は普通住宅地区にあり、正面路線からの遠い奥行は約88.5メートルであるから、奥行価格補正率は、評価基準別表第3の附表1により、正面路線からの遠い奥行が88メートル以上100メートル未満の場合の0.81が適用される。取扱要領によれば、無道路地補正率は0.6であるが、前記第2・2・(1)のとおり、本件土地は、別件土地と所有者を同一とし、実際に利用している街路への通路が同一の所有者である場合に該当するから、道路開設補正率の適用はない。本件土地は不整形地であるが、甲第5号証の1及び2並びに弁論の全趣旨によれば、普通住宅地にあり、蔭地割合が10パーセント未満であるから、不整形地補正率1.00が適用される。 エ以上により、本件土地の1平方メートル当たりの評点数は11万9556点となる。 24万6000点×0.6×0.81×1.00=11万9556点(路線価×無道路地補正率×奥行価格補正率×不整形地補正率=1平方メートル当たりの評点数。小数点以下切捨て)オエで算出した1平方メートル当たりの評点数に地積1286.67平方メートルを乗じると本件土地の評点数は1億5382万9118円となる。 11万9556円×1286.67平方メートル=1億5382万9118円(1平方メートル当たりの評点数×地積=本件土地の評点数。1円未満切捨て)カオで求めた金額から農地についての平成11年1月1日から同年7月1日までの地価下落修正率0.970を適用すると、本件土地の平成12年1月1日時点での価額は1億4921万4244円となる(平成11年7月1日から平成12年1月1日までの地価下落率を考慮する必要があるように考えられないでもないが、この点については、原告も平成11年7月1日以降の下落率を考慮すべき旨の主張を 4円となる(平成11年7月1日から平成12年1月1日までの地価下落率を考慮する必要があるように考えられないでもないが、この点については、原告も平成11年7月1日以降の下落率を考慮すべき旨の主張をしていないので、あえて考慮しないこととした。)。 1億5382万9118円×0.970=1億4921万4244円(本件土地の評点数×地価下落修正率=平成12年1月1日における価額)キ本件土地は宅地ではないので、宅地に転用するための造成費相当額を控除すべきであるところ、造成費相当額は1平方メートル当たり2100円であるから、カで求めた金額から造成費相当額270万2007円を控除すると1億4651万円2237円となる。 1億4921万4244円-270万2007円=1億4651万2237円(平成12年1月1日時点における価額-造成費相当額=本件土地の客観的時価)ク以上によれば、本件決定により変更された本件土地の登録価格はなお客観的時価を上回っていると認められるから、本件決定は違法なものとして取り消されるべきである。 4 審査決定の取消しの範囲(争点3)(1)固定資産評価審査委員会がした登録価格に関する審査決定が客観的時価を上回って違法なものである場合、当該決定をいかなる範囲で取り消すべきかが問題となる。 (2)この点につき、固定資産評価審査委員会がした審査決定は可分であるという前提に立ち、取消判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により、市町村長は、判決と同様の措置を執ることが義務付けられるから、改めて固定資産評価審査委員会の審査決定を介在させる必要はないという理由により、審査決定の一部取消しを認める見解もある。 (3)しかし、取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の審査決定は、固定資産課税台帳に登録された価格についての審査 介在させる必要はないという理由により、審査決定の一部取消しを認める見解もある。 (3)しかし、取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の審査決定は、固定資産課税台帳に登録された価格についての審査申出人の不服申立てに対する同委員会の応答としてされるものであり、また同決定において判断された価格は、基準年度の賦課期日における当該固定資産の登録価格が適正な時価と合致しているか否かという1個の評価的事実であるから、当該決定の適否はこの1個の事実の適否にかかるのであり、一部分のみが誤りで他の部分が正しいなどということは、事柄の性質上、観念し難いのである。上記見解は、これをあえて可分であるとして、裁判所は当該決定のうちの自らが正当と考える評価額を超える部分を取り消すべきであると主張するが、常識的に理解する限り、その主張の内容は、当該決定が適正な時価と判断した価格は誤りであることを明らかにし、裁判所が自ら正しいと考える価格への是正を命じるべきであるということと等しいものである。これは、言い換えると、当該決定を全部取り消した上、登録価格を裁判所が自ら正しいと考える価格に是正するよう命じていることになる(上記見解のいう一部取消判決が確定した場合に、被告が行うべきことも、結局、改めて登記価格を裁判所が正しいと考える価格とする旨の審査決定をすることになると思われる。)そうすると、結局、上記見解は、被告の審査決定を取り消すだけでなく、それを変更すべき内容を明示して、これを命じるべきであることになるが、このように行政機関に対して作為を命じることは、行政事件訴訟法が取消訴訟については想定していないところであり、立法諭としてはともかく、解釈論としては到底採用し難いものである。 (4)なお、上記見解は、一部取消判決があった場合は、行政事件訴訟法33条1項により 取消訴訟については想定していないところであり、立法諭としてはともかく、解釈論としては到底採用し難いものである。 (4)なお、上記見解は、一部取消判決があった場合は、行政事件訴訟法33条1項により、市町村長は同旨の審査決定があった場合と同様の措置を義務付けられるものと解されるのであるから、審査委員会の審査決定を介在させる必要はないにもかかわらず、全部取消判決をして固定資産評価審査委員会に改めて適正な時価を審査させることは、登録価格に不服のある審査申出人の救済の機会を先延ばしするものであると主張する。 しかし、上記主張は、いわゆる一部取消判決をした場合には、市町村長が当然にその内容に従って登録価格を変更すべきあることを前提とするものであるが、仮にそのような一部取消しが可能であるとしても、当該判決によって取り消された部分は、不服申立てに対する応答がされていない状態に戻っているのであるから、そのような状態のままで市町村長が登録価格を変更するべきか否かには疑問がある。少なくとも固定資産評価審査委員会から審査決定が通知されて初めて市町村長が登録価格の修正を行うとの制度が採られている以上(法435条1項)、一部取消判決が確定したことのみで市町村長にその内容に応じた行為義務が生ずると解することには疑問があり、この場合の市町村長は行政事件訴訟法33条1項にいう関係行政庁に該当しないのではないかと考えられる。そうすると、上記主張は、その前提に疑問があるといわざる得ないが、仮に、この点において、市町村長が同項にいう関係行政庁に該当するとの前提に立つと、同項の定める拘束力は主文だけでなく理由中の判断にも生ずるのであるから、原告が当初求めたような全部取消判決がされたとしても、その理由中に裁判所が正しいと考える価格が説示されているならば、市町村長はそれに従っ る拘束力は主文だけでなく理由中の判断にも生ずるのであるから、原告が当初求めたような全部取消判決がされたとしても、その理由中に裁判所が正しいと考える価格が説示されているならば、市町村長はそれに従って登録価格を変更することになるのであるから、全部取消判決をすることに何ら不都合はなく、あえて行政事件訴訟法の趣旨に反して一部取消判決をする必要はないということになる。 さらに、上記見解は、全部取消判決がされると、審査申出人が裁判所の価格認定に不満があったとしても、取消判決について控訴の利益が認められず、控訴できないのは不当であるとも主張する。 しかし、このような場合には、被告が控訴をするのが通常であり、それによって事件が控訴審に移審されたときには、原告も原判決の理由中の判断に誤りがあると指摘し、その点についての控訴審の判断を得ることが可能であるから、実際上の不都合が生じることはほとんどないと考えられる。また、全部取消判決の理由中の判断には、少なくとも被告に対して行政事件訴訟法33条1項の拘束力が生ずるのであるから、原告がより広範囲の拘束力を求めたのにそれが実現していない以上、例えば予備的に主張した相殺の抗弁が認められて請求棄却判決を受けた被告と同様、控訴の利益があると解する余地がないではないし、そのような解釈が誤りであるとすると、それは、結局、上記のように理由中の判断に拘束力を認めるという通常の民事訴訟と異なった規定を置きながら、上訴の利益について特別の規定を置かなかった点において、行政事件訴訟法に立法上の不備があったことを示すものであって、そのような立法上の不備を解釈論によって補うことは困難というほかない。 (5)したがって、原告の請求の趣旨変更の申立てに係る審査決定の一部取消しを求める請求は、不適法なものであって却下を免れないというべき ような立法上の不備を解釈論によって補うことは困難というほかない。 (5)したがって、原告の請求の趣旨変更の申立てに係る審査決定の一部取消しを求める請求は、不適法なものであって却下を免れないというべきである。しかるに、記録によれば、原告は、平成13年9月10日付け準備書面において請求の趣旨変更の申立てをしているが、これが、訴状記載の請求を交換的に変更する趣旨であるのか、追加的に変更する趣旨であるのかがその記載からは必ずしも明らかではない上、原告は明示的に従前の請求を取り下げてはいないこと、被告も同日付け準備書面において、原告の請求の趣旨変更の申立てに係る請求はそれ自体不適法なものであると主張するのみであって、従前の請求の帰趨については何ら主張していないことからすると、原告の同日付け請求の趣旨変更の申立ては、追加的変更の申立てとみるのが相当である。そして、訴状記載の本来的請求は、審査決定の全部取消しを求めるものであり、審査決定に係る登録価格が客観的な時価を上回ることが認められるから、当該請求には理由があるというべきである。 第4 結論以上の次第であるから、原告の請求のうち、平成13年9月10日付けの請求の趣旨変更の申立てに係る訴えは不適法なものであるからこれを却下することとし、訴状記載の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官日暮直子

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