平成19(ネ)10039 職務発明の対価請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年8月6日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 平成16(ワ)11060
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判決文本文62,876 文字)

- 1 -成19年(ネ)第10039号職務発明の対価請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成16年(ワ)第11060号)平成20年8月6日判決言渡,平成20年5月21日口頭弁論終結判決控訴人X被控訴人東洋紡績株式会社訴訟代理人弁護士内田敏彦,宮原正志主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,控訴人に対し,金3億円及びこれに対する平成16年10月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要本件は,被控訴人の従業員であった控訴人が,被控訴人に対し,後記25件の特許発明がいずれも控訴人を共同発明者の一人とする職務発明であり,その特許を受ける権利の共有持分を被控訴人に承継させたと主張して,主位的に特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ)3項に。 基づいて,特許を受ける権利を使用者である被控訴人に承継させたことに対す- 2 -る相当の対価(以下単に「相当の対価」ということがある)若しくは被控訴人。 において平成4年11月1日に施行した特許取扱規定第10条等の勤務規則に基づく補償金の支払又は不当利得の返還として,合計12億0180万円のうち3億円(一部請求)の支払を求め(主位的請求。なお,上記3つの請求は選択的併合,予備的に被控訴人の控訴人に対する特許表彰規定の運用等は違法で)あり,不法行為に当たるとして,同額(一部請求)の損害賠償を求め(予備的請求,さらに上記各金員に対する訴状送達の日の翌日(平成16年10月22)日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるのに対し,被控訴人が主位的請求に対してはいず 備的請求,さらに上記各金員に対する訴状送達の日の翌日(平成16年10月22)日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるのに対し,被控訴人が主位的請求に対してはいずれも消滅時効が完成したなどと主張し,予備的請求に対しては不法行為が成立しないと主張して争っている事案である。 原判決は,主位的請求のうち,①特許法35条3項に基づく相当の対価の支払請求については,23件の特許発明に係る相当の対価の支払請求権は時効消滅し,残りの2件の特許発明に係る相当の対価の額は特許取扱規程に基づき既に控訴人に支払われた奨励金の額を超えるものではない,②特許取扱規程に基づく補償金の支払請求については,相当の対価の不足額は特許取扱規程に基づいて請求することはできない,③不当利得返還請求については,控訴人が返還を求めている被控訴人の得た利益は法律上の原因に基づく利得である,とし,また,予備的請求については,不法行為の成立が認められないとして,控訴人の請求を全て棄却した。 ,,(。 そこで控訴人はこれを不服として原判決の取消し及び3億円一部請求訴状送達の日の翌日からの遅延損害金を含む)の支払を求めて控訴を提起した。 ものである。 前提となる事実,争点及び当事者の主張,,,,本件の前提となる事実争点及び当事者の主張は次のとおり原判決を訂正し後記2及び3に当審における当事者の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理- 3 -由」欄の「第2事案の概要」の「1前提となる事実(当事者間に争いがない事実該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実 ,)」,「争点」及び「第3当事者の主張(以上,原判決2頁8行~124頁22行)」に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,本判決において 証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実 ,)」,「争点」及び「第3当事者の主張(以上,原判決2頁8行~124頁22行)」に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,本判決においても原判決の略語表記を使用する。また,本件特許取扱規定第10条及び特許表彰規定による特許表彰制度を「本件特許表彰制度」ということがある。 (1)原判決の訂正ア原判決7頁10行目の「昭和48年2月6日」を「昭和49年5月14日」と改める。 イ原判決17頁25行目の「117」を「117の1ないし10」と改める。 ウ原判決18頁12行目の「意匠登録を受ける権利」の後に「以下これら三(者を合わせて「出願権」という」を加える。 )エ原判決19頁9行目の「技術部長」を「技術課長等」と改める。 オ同14行目の「また」の次に「1等以上の甲種及び」を加える。 ,「「」,カ同15行目から同16行目にかけての上記発明改善審査手続要領は,」「「」,昭和54年6月25日に改定された後を上記発明改善審査手続要領は昭和47年8月16日(乙11)及び昭和54年6月25日に改定された後」,と改める。 キ原判決20頁8行目の「顕著であったとき」を「顕著であったもの」と改める。 ク原判決24頁8行目の「1000円であったと旨」を「1000円であったと」と改める。 ケ原判決28頁4行目の「とと記載されており」を「と記載されており」と改める。 コ原判決35頁22行目の「需要」を「需給」と改める。 サ原判決41頁18行目から22行目にかけての「原告は,これらのOHP- 4 -フィルムシートを,講演依頼を受けた後,勤務時間外に,顧問としてA研究所に勤務していた平成3年11月から平成5年末までの間に作成したOHPフィルムシート(36枚) 原告は,これらのOHP- 4 -フィルムシートを,講演依頼を受けた後,勤務時間外に,顧問としてA研究所に勤務していた平成3年11月から平成5年末までの間に作成したOHPフィルムシート(36枚)から興味のある図面(甲13,55の図22や図24),。」「,,を抜き出し補足説明を加えて作成したを控訴人は講演依頼を受けた後昭和51年5月ころから約1か月間かけて,勤務時間外に甲第55号証のOHPフィルムシートの原本(36枚)を作成し,その後,顧問としてA研究所に勤務していた平成3年11月から平成5年末までの間に,上記OHPフィルムシート(36枚)から興味のある頁を抜き出し,図面(甲13,55の図22や図24)に補足説明を加えて甲第13号証を作成した」と改める。 。 シ原判決60頁23行目の「需要」を「需給」と改める。 ス原判決61頁21行目の「特許③」を「本件特許③」と改める。 「」「」セ原判決65頁11行目の上記3社の特許権を上記3社の特許出願と改める。 当審における控訴人の主張(1)本件特許表彰制度の選考対象となる特許(以下「選考対象特許」という)。 について,,()ア原判決は選考対象特許となるためには選考会開催時点毎年10月中旬,,において特許権が存続している特許であることを要すると判断しその根拠として特許表彰規定4条は選考対象特許の範囲を確定することを目的としていること,同条①は「登録されている」と現在形で規定していることを挙げているが,このような解釈は極めて不合理であるばかりか被控訴人の現実の運用とかけ離れたものである。 すなわち,特許表彰規定4条が,選考対象特許の時間的範囲を定めたものと解釈するとしても,3年間の評価期間中に登録されているということでも充分に評価対象特許の 人の現実の運用とかけ離れたものである。 すなわち,特許表彰規定4条が,選考対象特許の時間的範囲を定めたものと解釈するとしても,3年間の評価期間中に登録されているということでも充分に評価対象特許の時間的範囲の特定は可能であるし,また,同条①の「登録されている」と- 5 -いう規定の文言だけでは明確ではないから,この文言を根拠として選考対象特許が選考会開催時点に特許権が存続している特許に限られると解釈することはできない。 そして,原判決のように「選考会開催時点での特許権の存続している特許」という解釈をすると,選考会開催時点の特定につき更に解釈が必要となり,この点に関し,原判決は,選考会の開催時期について「毎年10月中旬」と規定されていることから,その時点は「10月中旬の開始日である同月11日」であると無理な解釈を重ねているが,特定時点で存続する特許のみを評価するというのであれば,基準日を9月30日なり10月1日なりに特定して規定するのが自然であり,中旬という文言を以って「中旬の開始日」である11日であるとする解釈は,何の合理性もない。 イまた,本件特許表彰制度に基づき表彰された特許には,選考会開催時点で特許権が消滅していたものが第8回表彰のコロナ放電冷却法に関する3件の特許以外にも多数あり,そのような取扱いは,決して原判決がいうように「例外的事例」ではないから,選考対象特許とされるために「10月11日時点で特許権が存続している」との要件が必要であったという事実はない。 すなわち,被控訴人の従業員であったB(以下「B」という)は,本件特許表。 彰制度で幾度となく表彰されたが,その表彰特許は,別紙1のとおり,半数以上が10月11日時点で特許権が消滅していた特許であった。具体的にいうと,別紙1の表(1)の(A)の特許(甲●●●●)や(B)の 彰制度で幾度となく表彰されたが,その表彰特許は,別紙1のとおり,半数以上が10月11日時点で特許権が消滅していた特許であった。具体的にいうと,別紙1の表(1)の(A)の特許(甲●●●●)や(B)の特許(甲●●●●)などは,最初に出願された主要な特許であったと考えられるものであるが,2年も3年も前に特許権は消滅(平成4年度の第1回表彰において(A)の特許は平成●年●月,●●日に抹消され(B)の特許は平成●年●●月●日に抹消された)しており,,。 10月11日時点で特許権が存続しているという上記要件には全く当てはまらな。 ,()()(),()()()いその後別紙1の表 のD甲●●●●F甲●●●●及びG(甲●●●●)の各特許も特許権消滅後(D)の特許は平成●年●月●●日に抹(- 6 -消されたが,第2回表彰(平成5年度)に(F)の特許は平成●年●月●●日に,抹消されたが,第5回表彰(平成8年度)に(G)の特許は平成●●年●●月●,,()。)●日に抹消されたが第11回表彰平成14年においてそれぞれ表彰されたに表彰されていることから,これら以外にも,選考年度の10月11日時点で既に特許権が消滅していた特許を表彰対象としてきた事例が多数存在する可能性が高い。 これらの他にも,被控訴人の従業員であるC(以下「C」という)を発明者と。 する多層容器に係る特許(甲●●●●。特許第●●●●●●●号)も第2回,第5回,第8回に連続して3回1級に表彰されている(乙20)が,別紙2の表(2)のとおり第8回表彰の選考年度であった平成●●年●●月●●日には特許権が既に抹消されていた。 これらの事例から明らかなとおり,選考対象特許となるためには,10月中旬の時点(10月11日)で特許権が存続している必要な 彰の選考年度であった平成●●年●●月●●日には特許権が既に抹消されていた。 これらの事例から明らかなとおり,選考対象特許となるためには,10月中旬の時点(10月11日)で特許権が存続している必要などなかったというのが実情である。 また,選考会は毎年10月中旬には開催されておらず,例えば,第1回(平成4年度)は翌年(平成5年)に,第3回(平成6年度)は平成7年2月16日に,第8回(平成11年度)は平成11年12月17日にそれぞれ選考会が開催されていることから,一般に選考会は対象年度の12月から翌年2月までの間に開催され10月中旬に開かれることはなかったと推定される。 したがって,原判決が選考会開催時点を10月11日としたことは理由が不明確である上に,実情に沿った判断ではなく,失当である。 ウさらに,原判決は,本件特許表彰制度においては,評価対象期間後に特許権が消滅し,次回の表彰において評価対象とされない特許について,最後の評価対象期間後,特許権が消滅するまでの間の実績に対する相当の対価も最後の実績補償の支払時期に合わせて支給されることを予定していると判断したが,現実にはそのように運用されておらず,Bの上記事例のとおり,特許権消滅後であっても評価対象- 7 -としていたのであるから,原判決の判断は不当である。 エしたがって,本件特許取扱規定第5条の3年に一度,過去3年間に遡って評価するとの規定の趣旨は,過去3年以内に特許権が存在すれば足り,その期間中に特許権が消滅した特許についても消滅までの期間の実績を評価すると解釈する方が自然であり,かつ,被控訴人の運用に沿った解釈といえる。 そして,これを前提とすると,別紙3の表(3)のとおり,本件特許⑪及び同⑲,,,。 だけでなく本件特許⑬同⑮~⑱同⑳が特許表彰制度の選考対象特許であった 控訴人の運用に沿った解釈といえる。 そして,これを前提とすると,別紙3の表(3)のとおり,本件特許⑪及び同⑲,,,。 だけでなく本件特許⑬同⑮~⑱同⑳が特許表彰制度の選考対象特許であった(2)本件特許⑪及び⑲の無効理由の不存在についてア実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)の不合理性(ア)原判決は,被控訴人が提出した実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)に全面的に依拠して本件特許⑪及び⑲に無効理由があると判断した。しかしながら,上記実験成績報告書は,以下の理由から信頼性が。 ,,(「」。)ないすなわち原反を作る際Ny6以下ナイロン6ということもあるとブレンド成分との混練が不十分であると透明度が充分でなく,ブレンド物質の粒,。 ,子径及び分散状態が不均一となりこのまま延伸しても裂ける原因となるそこで光透過度を積分球式光線透過率測定装置で測定して透明度を確認してから次の延伸工程に移行する必要があるし,顕微鏡でブレンド成分の粒子径及び分散状態を確認することが必要となる。ところが,被控訴人の提出した上記実験成績報告書には上記光透過率のデータ及び上記顕微鏡写真が一切添付されていない。これは,あえて混練の不十分さを隠すことを意図しているとしか考えられない。 したがって,このようなデータを欠く実験結果に全面的に依拠した原判決の判断は不合理である。 (イ)前記実験成績報告書のうち,乙第37号証の1及び乙第39号証の1は,被控訴人の内部でのみ作成されたものであり,また,乙第101号証ないし第103号証記載の実験の実施については,控訴人に対して何の打診もなく,また,大学- 8 -教授を立会人に選定しているが,同人は被控訴人と利害が一致する人物とみなされ り,また,乙第101号証ないし第103号証記載の実験の実施については,控訴人に対して何の打診もなく,また,大学- 8 -教授を立会人に選定しているが,同人は被控訴人と利害が一致する人物とみなされる。 したがって,このような状況の下で作成された実験成績報告書では,被控訴人に不都合な事象については隠蔽することが可能であり,客観性が乏しく,これら実験成績報告書には全く証拠力はない。 (ウ)乙第37号証の1の実験は,試料A(ナイロン6樹脂90重量%にナイ ロン12(以下「Ny12」ということもある,10重量%,試料A(ナイロ。)) ン6樹脂97重量%にナイロン12,3重量%,試料B(ナイロン6樹脂97重)量%に特定ダイアミド,3重量%,試料C(ナイロン6樹脂単独)について実施)されている。 しかしながら,本件特許⑪の明細書に開示した実施例では,ブレンド成分の混合量が5,10,20重量%で,押出し温度は275℃であり,本件特許⑲の明細書の実施例では,混合量が40重量%で押出し温度は270℃であるのに対し,乙第37号証の1では,ブレンド成分の混合量が特定ダイアミド(vestamidE40s1)3重量%の一点のみで押出し温度が280℃であるほか,縦延伸(M)()。 ,D延伸条件や横延伸TD延伸条件の最適化を一切行っていないこのように一点のみの条件での相対比較を行った実験で差がないという結論を下すことは誤りである。なぜなら,溶融押出し装置により溶融混合状態が異なるのであるから,温度を変えて押し出した原反の透明性を光透過度で確認し,顕微鏡観察で粒子径及び,(),分散状態を確認しMD延伸条件温度と延伸倍率を変えて面配向指数を測定し次いでTD延伸条件(温度と延伸倍率)を変えた実験をすれば,特定ダイアミドを混合した方 し,顕微鏡観察で粒子径及び,(),分散状態を確認しMD延伸条件温度と延伸倍率を変えて面配向指数を測定し次いでTD延伸条件(温度と延伸倍率)を変えた実験をすれば,特定ダイアミドを混合した方が延伸がし易くなる適正条件が得られるはずだからである。 (エ)乙第39号証の1の実験では,Ny6樹脂80重量%にNy12樹脂20重量%混合したもの(試料A,Ny6樹脂97重量%にNy12樹脂3重量%混1)合したもの(試料A,Ny6樹脂97重量%に特定ダイアミド3重量%混合した2)もの(試料B)とNy6単体(試料c)を280℃の一点で押し出し,コロナ放電- 9 -冷却法で未延伸フイルムとし,次いで60℃,3.15倍のMD延伸条件一点でMD延伸し,135℃,3.8倍のTD延伸条件一点のみで延伸してONyフィルムを得た上で,このようにして得られたONyフィルムの特性を比較した結果,透湿度及び濡れ張力(耐水性)において,BとCは同等であり,AはAに比し,改良 の程度は劣っていたとされたが,吸水率1%以下の疎水性のポリアミドの混合割合が3%程度(試料A,試料B)では当然の結果である。 本件特許⑲の特許請求の範囲は,吸水率が1%以下の疎水性のポリアミドを3~50重量%混合して破断強度5kg/m㎡以上のONyフィルムを得るONyフィ,。 ルムの製造法であり混合比を大きくすれば耐水性の改良効果もあると謳ってあるすなわち,本件特許⑲において,耐水性の改良は,あくまで副次的な効果であり,耐水性について数値化して特許請求している訳ではない。したがって,耐水性の改良効果についての本件特許⑲の再現性を取り上げてみても余り意味がない。 (オ)乙第101号証は,第三者(大学教授)立会いの下に,被控訴人犬山工場で行われた乙第37号証の1の実験の特定ダイア 水性の改良効果についての本件特許⑲の再現性を取り上げてみても余り意味がない。 (オ)乙第101号証は,第三者(大学教授)立会いの下に,被控訴人犬山工場で行われた乙第37号証の1の実験の特定ダイアミド3重量%を混合したもの(試料A)とNy6単体(試料B)を原料樹脂とし,押出し温度を270℃とした再実験の結果であるが,本件特許⑪ではNy6の相対粘度が3.10であるのに対し,乙第101号証の相対粘度は2.80であり,押出し温度は本件特許⑪では275℃であるのに対し,乙第101号証では270℃であって必ずしも本件特許⑪の条件には一致していない。また,延伸性の評価は,本件特許⑪では48時間延伸製膜した間に起こる横延伸での破断回数を示しているが,乙第101号証では延伸性の評価基準がなく,単に○,△,×で示しているに過ぎない。 さらに,唯一正確な評価がされている面配向指数の値がいずれも1.0前後であり,通常は横延伸に対して極めて好ましい面配向指数値なのに,すべて延伸性は不(),。 良× と評価されており正常な評価ができる状態でなかったことを示しているしかも1と7を連続してしたのか,1と7が同一の面配向指数,実験##実験##であり,2と8,4と9,5と10の面配向指数が完全に一実験##同##同##- 10 -致しているのも偶然にしては不自然であり,正確な実験ではない証拠である。 Ny6の結晶化を阻害するポリアミドを混合するより,Ny6単独の方が通常の冷却法においても延伸性が良いというような,理論的にあり得ない結論が出された乙第101号証の実験は信憑性がなく,それに依拠した原判決の判断は全くの誤りである。 (カ)乙第102号証は,大学教授の立会いの下に,乙第39号証の1の実験の特定ダイアミド3重量%を混合 出された乙第101号証の実験は信憑性がなく,それに依拠した原判決の判断は全くの誤りである。 (カ)乙第102号証は,大学教授の立会いの下に,乙第39号証の1の実験の特定ダイアミド3重量%を混合したもの(試料A)とNy6単独のもの(試料B)を用いてコロナ放電冷却法により行われた再実験であるが,その結果,MD延伸温度60℃,TD延伸温度135℃の1水準でA,Bともに良好な延伸性が得られている。そして,本件特許⑲の特徴として掲げたONyフィルムの低透湿性はAとBでは変らないと評価されている。 本件特許⑲では,ブレンド成分の量を吸水率1%以下の低水分率のポリアミド3~50重量%とし,水分透過性,柔軟性と改良された耐水性,低透湿性を併せ有することを謳っている。しかし,耐水性,低透湿性の改良は付加価値であって必須ではないし,ブレンド成分の量に左右されることは自然の法則であるから,3%のブレンド量では延伸性は得られても上記の付加価値までは得ることは無理であり,それ故に耐水性については特許請求の範囲には入れていない。しかし,ブレンド成分の量を本件特許⑲の実施例のように40%とすれば,透湿度の低下が見られることも明らかである。 本件特許⑲は,吸水率1%以下のポリアミドを3~50重量%ブレンドして遂次二軸延伸フィルムを製造する方法の発明であり,吸水率1%以下という明確な基準があるから,実施可能要件を充足していないということはあり得ず,乙第102号証に依拠して実施可能要件を充足しないとした原判決の判断は誤っている。 (キ)乙第103号証では,大学教授の立会いの下に,相対粘度3.10のNy6と相対粘度3.27のNy12を95/5重量%で混合したものを275℃で押し出し(1:本件特許⑪,また,60/40重量%で混合したものを27実験#)- 11 - に,相対粘度3.10のNy6と相対粘度3.27のNy12を95/5重量%で混合したものを275℃で押し出し(1:本件特許⑪,また,60/40重量%で混合したものを27実験#)- 11 -0℃で押し出し(2:特許⑲,エアーノズル法で冷却してそれぞれの特許実験#)の明細書に記載されている実施例の条件で延伸を行ったところ,1では,縦実験#延伸はできたが横延伸はできず,実験2では,白色の波打った無延伸フィルムと#なり,チルロール表面に均一密着ができず,縦延伸工程へ供給すべき未延伸フィルムを取得できなかったとされている。 しかし,本件特許⑲の明細書に記載された実施例のNy6の相対粘度は3.10であり,Ny12の相対粘度は2.50であるのに対し,2では,Ny6の実験#相対粘度は3.10で一致するが,Ny12の相対粘度は3.27と大きく離れており,忠実に同一条件で追試したことにはならない。 また,特許は,最適条件を含む条件をある程度拡げて出願するので,その中の実施例は必ずしも最適条件とは限らないが,実験#2のように,不透明で不均一の未延伸フィルムから延伸フィルムを作成する実験など乙第103号証の追試実験は最初から不成功を狙ったものであり,総体的にどこかに適正条件を外した実験になっているように思われる。 さらに,乙第101号証から乙第103号証の実験項数は合計14項目あり,その中で組成比,押出温度,冷却法,MDとTD延伸条件を変えた実験を平成18年4月20日,25日の2日間で済ませることは物理的に不可能であり,形だけで手抜きした粗雑な実験に終った可能性が高いと言わざるを得ない。 イ本件特許⑪の明細書の内容の合理性本件特許⑪では,ONyフィルム製造のためのブレンド成分として共重合ポリアミドAないしFを実施例に用いたが,ブレンド 実験に終った可能性が高いと言わざるを得ない。 イ本件特許⑪の明細書の内容の合理性本件特許⑪では,ONyフィルム製造のためのブレンド成分として共重合ポリアミドAないしFを実施例に用いたが,ブレンド成分の役割は,ブレンドされる母材Ny6の一軸延伸での分子配向による結晶化を抑えることであり,そこでのブレンド成分の結晶化抑制効果は,そのブレンド成分の結晶型や非晶性が影響するものであるから,ブレンド成分の組成を決めればその共重合体の結晶型と非晶性(融点)が一義的に決まり,ONyフィルム製造での延伸性賦与効果を持たせることができる。したがって,明細書には,延伸性賦与に最も効果が現れる可能性が高い共重合- 12 -体の組成比を開示しておけば足りる。 また,高分子のもう一つの特性である重合度や粘度は,ONyフィルム製造のための必須条件ではなく,製造条件によっても変わるものであることから,本件特許⑪の明細書ではその値を明示していないが,これをもって開示要件違反というのは当らない。Ny6のONyフィルムでは母材のNyの粘度が2.8~3.4であるが,これにブレンドする共重合体は通常の条件で容易に製造することができるもので粘度1.8~2.5であれば問題はない。 したがって,明細書に重合度や粘度についての明示がなくても共重合組成比を明示しておけば当業者は実施可能である。 ウ本件特許⑪及び同⑲の実効性証明実験について,,,(ア)控訴人は本件特許⑪及び同⑲の実効性を証明するためDの指揮の下で原反を作る実験(実験Ⅰ。甲101の1)及び実験Ⅰで作成した原反を延伸する実験(実験Ⅱ。甲101の2)を行った。 (イ)実験Ⅰでは,本件特許⑪の明細書のブレンド成分として,次の7種類の異種ポリアミドをNy6にブレンドして未延伸フィルムを製作した。混合量はNy6に3~ 実験(実験Ⅱ。甲101の2)を行った。 (イ)実験Ⅰでは,本件特許⑪の明細書のブレンド成分として,次の7種類の異種ポリアミドをNy6にブレンドして未延伸フィルムを製作した。混合量はNy6に3~40重量%である。 ①γ型脂肪族ポリアミド宇部興産株製Ny12:3024B3014U3030XA甲(),,(103)ダイセル・デグサ社製VestamidE40S1②非晶質脂肪族ポリアミドダイセル・デグザ社製VestameltT-471T-171甲,(104)宇部興産(株)製U-7128(甲103)その結果,Ny12(UBE3030XA)を40重量%混合した樹脂がサージングを起こし,波打って白濁した未延伸フィルムが得られたほかは,ほぼ透明で均- 13 -一な未延伸フィルムが得られた。 (ウ)実験Ⅱでは,実験Ⅰで得られた未延伸フィルムについて,次のとおり延伸性,拡張力,透湿度を評価する実験を行った。 a2軸延伸性の評価,()未延伸フィルムを50mm角に切り取り延伸機により一定速度でMD縦延伸(),,とTD横延伸方向に同時及び逐次2軸に延伸し相対的な評価を行うとともに1軸延伸後のフィルムについてX線回折による面配向指数の算出を行って相関関係を確認する。 b2軸延伸フィルムの抗張力評価Ny12ブレンドが40重量%である延伸フィルムについて,MD方向及びTD方向の抗張力を測定し,破断・強度を充分保持しているか確認する(5kg/m。 ㎡以上)c透湿度の評価Ny12ブレンドが40重量%である延伸フィルムについて,Ny12の疎水性の影響があるか否かについて透湿度を測定して評価を行う。 (エ)実験Ⅰのうち,宇部興産株式会社(以下「宇部興産」という)のNy1。 2(3024B)を用いた実 延伸フィルムについて,Ny12の疎水性の影響があるか否かについて透湿度を測定して評価を行う。 (エ)実験Ⅰのうち,宇部興産株式会社(以下「宇部興産」という)のNy1。 2(3024B)を用いた実験(NO2~4,17)の結果を見ると,押出しでは何の問題もないことが確認されているし,その未延伸フィルムを用いた延伸性の実験Ⅱでは,同時2軸延伸,逐次2軸延伸及び面配向指数の評価により,Ny12のブレンドによる延伸性への効果も確認されている。 (オ)実験Ⅱの2軸延伸性の評価では,1軸延伸後のフィルムの面配向指数につ,(「」いて本件特許⑪の明細書に記載されているX線回折の透過法以下X線透過法という)による面間隔4.3~4.5Åの反射ピークI(以下「I」とい。 う)及び面間隔3.6~3.8Åの反射ピークI(以下「I」という)を。 。 測定して面配向指数の算出を試みたところ,Iの測定はできたものの,Iの 測定ができなかったため,上記明細書には記載されていないX線回折の反射法(以- 14 -下「X線反射法」という)によりI及びIを測定し,面配向指数を算出し。 た。 乙第37号証の1,2及び乙第101号証ではX線透過法により面配向指数を算出したと記載されているが,上記のとおり,X線透過法ではIの測定はできな ,,。 いから乙第37号証の12及び乙第101号証の実験結果は全く信頼できない(カ)上記各実験の結果を要約すると,次のとおりとなる。 同時二軸延伸性,遂次二軸延伸性,面配向性より評価して,何れのブレンド成分も延伸性賦与効果のないものはなく,実験した全てのブレンド成分について,延伸性賦与の効果が明確であることが立証された。 したがって,本件特許⑪及び同⑲ 延伸性,面配向性より評価して,何れのブレンド成分も延伸性賦与効果のないものはなく,実験した全てのブレンド成分について,延伸性賦与の効果が明確であることが立証された。 したがって,本件特許⑪及び同⑲に無効理由があるとの原判決の判断は誤りである。 なお,通常の工業生産におけるONyフィルムの製造法は甲第56号証にあるように樹脂を加熱溶融しスクリューで押出ししてTダイよりシート状にしチラー,,,付きの冷却ロールによって,Tg(ガラス転移温度)以下に冷却して未延伸フィルムを製造した後,多数の加熱ロールによって連続的に縦(MD)方向に3倍以上延伸し,続いてテンター内に送り,より高温に加熱しながら,横(TD)方向に3倍以上延伸し,最後に高温で短時間熱処理した後,耳部をトリミングして除き,捲き取って製品とする方法が一般の遂次延伸法である。 これを実験室的なモデル実験で行うと,溶融押出しは小型押出し試験機があり,未延伸フィルムはほぼ同じ条件で得られるが,延伸は卓上延伸機でバッチ式の試験となる。しかし,モデル実験での分子レベル変化は,工業生産における連続加工での変化と基本的には変らず,むしろ単純化した加工として,連続加工法の条件検討のための基礎実験として実施されるのが普通であり,その結果の信頼性は充分である。 (3)ONyフィルム生産における同時2軸との価格差について原判決は,昭和55年12月18日付発明改善審査申請書(乙6)の記載から被- 15 -控訴人のONyフィルム生産におけるユニチカとのコスト差が平成4年当時118(。 「」。)円/kgであったとの被控訴人の内部資料甲18以下本件内部資料というの信用性を否定するが,これは本件内部資料の被控訴人における重要性を無視した判断であって,不合理である。 すなわち,被控訴人においては,平成 であったとの被控訴人の内部資料甲18以下本件内部資料というの信用性を否定するが,これは本件内部資料の被控訴人における重要性を無視した判断であって,不合理である。 すなわち,被控訴人においては,平成4年に経営戦略が練られ「今後最も有望,な事業はONyフィルムである」という結論に基づいてONyフィルムの技術再構築プロジェクトがスタートしたが,本件内部資料は,その時の打合せのためにプロジェクトリーダーが作成したものである。この打合せは当時の被控訴人の事業内容を決定できる権限のある人物によるもので,全社的にオーソライズされた会議であった。したがって,そこでの会議用資料である本件内部資料は,被控訴人の事業部を中心に全社的に集約され認知された情報であり,その信用性を否定する原判決の判断は失当である。 また本件内部資料に記載されたONyフィルムの製造コストは1985年昭,,(和60年)時点のもので,外部調査機関から入手した情報であったが,このような情報は一般には公開されておらず入手困難なものであり,会議の重要性,参加者を考慮すると,それなりに妥当性があり評価できる資料であった。 原判決は,昭和55年12月18日付発明改善審査申請書(乙6)を重視してい,。 るがこれにはONyフィルム開発当初の担当課長の判断が現れているに過ぎない本件内部資料に示された被控訴人の経営陣の判断を無視し,一課長の判断に基礎をおく原判決が合理性を欠くのは当然である。 (4)不法行為に関する原判決の判断の誤りについてア原判決は,いかなる特許を表彰の対象あるいは発明改善提案表彰の対象とするかは,私企業である被控訴人の合理的な裁量に委ねられているとするが,合理的な裁量の範囲を超えて著しく不合理な表彰規定の運用をすれば,それは違法性を有し,控訴人の権利を侵害したことになる の対象とするかは,私企業である被控訴人の合理的な裁量に委ねられているとするが,合理的な裁量の範囲を超えて著しく不合理な表彰規定の運用をすれば,それは違法性を有し,控訴人の権利を侵害したことになるのであり,被控訴人の本件各特許に対する評価は,合理的な裁量の範囲内のものとは到底認められないものである。 - 16 -原判決は,本件特許⑪,⑬,⑮ないし⑳は,被控訴人において実施していたとは認められず,本件特許⑭は「業績への寄与」要件を満たしていないとし,被控訴人が実施を認めている特許についても,表彰の対象とならなかったことに違法な点はないと判断しているが,これは,本件各特許により被控訴人が受けた利益についての誤った過小評価によるものであり,また,前記のとおり,本件特許表彰制度の選考対象特許の範囲の認定を誤ったことによるものである。 イ本件各特許及び本件A発明ないし本件G発明に係る特許は,以下のとおり,被控訴人が独占的利益を得ることに貢献したから,これを本件特許表彰制度の表彰対象としなかったのは,被控訴人における特許表彰制度の評価基準が不公正なものだからであり,被控訴人の本件各特許に対する評価は,合理的な裁量の範囲のものではない。 (ア)ONyフィルムの製造での控訴人の貢献についてaN2100への本件特許⑪の貢献N2100は,被控訴人にとって耐ピンホール性を特徴とした製品であり,大きな利益を上げてきたが,N2100の製造は本件特許⑪の実施に該当する。 したがって,本件特許⑪は,被控訴人がN2100の製造による利益を独占することを可能にした。 bN2100への本件特許⑲の貢献N2100の製造は本件特許⑲の実施に該当する。 したがって,本件特許⑲は,被控訴人がN2100の製造による利益を独占することを可能にした。 cN1100への本件特許 N2100への本件特許⑲の貢献N2100の製造は本件特許⑲の実施に該当する。 したがって,本件特許⑲は,被控訴人がN2100の製造による利益を独占することを可能にした。 cN1100への本件特許①,⑤及び⑥の貢献E発明がONyフィルムの基礎技術をブレークスルーした功績が大きいことは認めるが,そもそも素材のMSM樹脂(本件特許⑤,⑥)は控訴人が開発したものであり,控訴人は言わばE発明の生みの親と見ることができる。したがって,本件特許⑤,⑥の貢献が大きく,昭和51年から10年以上実用化されて来た。 - 17 -続いて,昭和50年10月にSM樹脂をブレンドしたF発明が生まれたが,これも控訴人が昭和47年4月から,四面楚歌の中,背水の陣で独り立ち上げ,踏張ってSM樹脂の再興をしていなければ生まれなかった技術であり製品であることは間違いない。 そして,ここでは本件特許①が実施されており,本件特許①による貢献は極めて大きいものである。 dN1100への本件特許⑪の貢献N1100の製造は本件特許⑪の実施に該当する。 したがって,本件特許⑪は,被控訴人がN1100の製造による利益を独占することを可能にした。 (イ)FSMフィルムについて,,原判決は被控訴人が本件特許⑫を社内で実施している証拠はないと判断したがFSMフィルムは単品で商品になるのではなく,必ずシール層のポリオレフィンフィルムと積層して使われるのであり,被控訴人が本件特許⑫を保持し,ユーザに排他的に実施できることを保障して実施させていたのであるから,被控訴人のユーザが本件特許⑫を実施していることになる。したがって,被控訴人において何らかの企業メリットがあったはずであり,本件特許⑫が評価されるべきである。 (ウ)積層容器について平成17年ころの被控訴人の敦賀ナイロン工場でのSM樹 いることになる。したがって,被控訴人において何らかの企業メリットがあったはずであり,本件特許⑫が評価されるべきである。 (ウ)積層容器について平成17年ころの被控訴人の敦賀ナイロン工場でのSM樹脂とMSM樹脂の生産量がほぼ等しくなっていることから,MSM樹脂の用途はFSMフィルム以外では容器と推定できる。もっとも,MSM樹脂の用途が積層容器か又はPETとのブレンド容器かは明らかな証拠がないが,原材料として本件特許⑥(MSM樹脂)又は本件特許①(SM樹脂)は最小限実施されていると見なすべきである。 (エ)SMレジン(外販用)についてSMレジン(外販用)を生産する以上,本件特許①又は④のゲル化防止剤は必ず用いており,したがって,被控訴人が本件特許①又は④を実施していないとの根拠- 18 -はない。 (オ)ダイナックについてダイナックは,被控訴人の系列会社クレハセンイ(現クレハテック)で商品化して平成年代の初期まで利益率50%以上,成長率20%/年以上で伸び,クレハセンイの儲け頭であり,その利益の多くは本件A発明ないし本件G発明の貢献によるものであった。 ウ控訴人は,原審において,本件各発明の実施により被控訴人が得た利益の額等が原判決別表3のとおりであると主張したが,これを本判決別紙4の手書部分のとおりに訂正する。 被控訴人の反論(1)選考対象特許についてア原則的運用原判決は,選考対象特許について,特許表彰規定第4条の規定の文言から毎年10月中旬に行われると定められている選考会開催時である毎年10月11日を基準日とし,同基準日において特許権が存続している特許であることを要件とすると解釈し,また,その評価対象期間は,選考会の3年前の10月中旬から,選考会が開催される年の10月中旬までの3年間と解釈したが,この解釈は,極め において特許権が存続している特許であることを要件とすると解釈し,また,その評価対象期間は,選考会の3年前の10月中旬から,選考会が開催される年の10月中旬までの3年間と解釈したが,この解釈は,極めて正鵠を得たものである。 そして,被控訴人の知的財産部(以下「知財部」という)の幹部を含めて,特。 許表彰選考委員会を構成するメンバーは,選考対象特許が上記の特許表彰規定第4条の解釈に従って厳格に運用されているものと信じて表彰する特許の選考を行っていた。 しかしながら,被控訴人において選考対象特許の集計を担当する実務担当者(通常,知財部の1~2名の部員である)は,実務上の便宜のため,選考対象特許を。 集計する事実上の基準日を,第1回表彰を除き,概ね選考年の大体3月末から6月- 19 -末ころまでの間の日としていた。その理由は,1回の表彰回における表彰の候補となる特許の数はおよそ500件程度にも上り,その膨大な数の特許の一つ一つについて貢献度を評価しなければならず,その手間は膨大であって期間も半年程度は必要となることから,選考会が開催される10月の約半年位前の時期から集計をする必要が生じたためである。 そして,本来は,この3月末から6月末ころまでに集計された特許のうち,選考会開催時までに権利失効している特許を除外しなければならないところ,その作業が行われないままに,集計から選考会開催時までの間に失効してしまった特許を表彰選考対象としてしまい,その結果,選考年の3月末から6月末ころに権利存続していた特許は,全て事実上選考対象特許となっていた。 イ例外的運用上記アで述べたところが,本件特許表彰制度の原則的な運用であるが,これに対し,今回の特許表彰以前に2級以上に表彰された特許が,選考会開催時前に消滅しているにもかかわらず,なおも特段の利益を上げ 運用上記アで述べたところが,本件特許表彰制度の原則的な運用であるが,これに対し,今回の特許表彰以前に2級以上に表彰された特許が,選考会開催時前に消滅しているにもかかわらず,なおも特段の利益を上げ,今回1級としての表彰に値する場合には,極めて例外的な措置としてではあるが,知財部幹部の了承の下,選考対象特許となり得る運用がされていた。 ,,被控訴人はこのような例外的運用がされていることを原審において主張したがその他にも,実務上,次のような例外的運用がされていたことがこの度判明した。 (ア)例外的運用の1上記の例外的運用は,本来,今回1級表彰の対象となり得る特許に限られたものであり,特許表彰選考委員会の選考委員の一部はそのように認識していたが,実務担当者の判断により,実際には以下のように運用されていた。 すなわち,実務担当者は,1級表彰され得る特許が表彰選考の対象となり得るのに,2ないし3級として表彰され得る特許が表彰選考の対象となり得ないのは不合理だと考え,実務担当者の判断により,2ないし3級の表彰選考の対象となり得る特許をも,1級表彰の対象となり得る特許と同様に,表彰選考の対象としたことが- 20 -あった。 (イ)例外的運用の2次に,本来,特許表彰規定第4条①は,単に「登録されていること」と規定しているのであるから,その権利消滅理由の如何を問わず,選考会開催時に存続していない特許は,表彰の対象とすべきでない。 ,,,しかしながら企業の特許実務においては存続期間が残り少ない特許について費用節約のため,特許料を納付しないことがしばしばあり,その結果,特許権の多くは,特許料不納によって消滅する。このような特許実務の実態を受けて,選考対象特許の集計に携わる実務担当者は,会社が特許料を払うかどうかという,いわば会社都合により当該 ばあり,その結果,特許権の多くは,特許料不納によって消滅する。このような特許実務の実態を受けて,選考対象特許の集計に携わる実務担当者は,会社が特許料を払うかどうかという,いわば会社都合により当該特許が表彰対象となったりならなかったりするのは発明者に気の毒だと考え,特許料不納によって権利消滅した場合に表彰選考の対象とならないという不都合を回避するため,選考対象特許を集計する際,当該特許権の本来の権利存続期間(当時は,出願から20年又は公告から15年のうちの短い方)のみを基準として集計していた。 その結果,選考会開催時(ただし,前記のとおり,実際には選考年の3月末~6月末ころの間を基準日としていた)に特許料不納で消滅していても,本来の存続。 期間が未了である特許権は,自動的に選考対象特許とされた。 このように,集計担当の実務担当者が,専ら発明者のためを思った善意から,本来は特許表彰規定の文言に則り,正確にその運用を期すべきであったものが,実際には,上記のとおり,特許料不納で消滅していたとしても,本来の権利存続期間が未了である場合には全て選考対象特許となっていた。 ウ原判決の解釈の合理性前記アのとおり,選考対象特許の集計は,概ね,選考年の3月末~6月末ころに特許権が存続するものを対象としていた。また,その「権利存続」という基準も,特許料未納による権利消滅は含まれず,本来の権利存続期間によって処理されていた。 - 21 -,,,,しかしながらこれらの処理はいずれも全く機械的かつ画一的な処理であり原判決の前記解釈の合理性を何ら揺るがすものでないことは明らかである。 ,,,なお被控訴人は第1回から第10回までの特許表彰を詳細に調査したところ,,権利が消滅していたにもかかわらず1級として表彰された例外的取扱いの件数はデータベース いことは明らかである。 ,,,なお被控訴人は第1回から第10回までの特許表彰を詳細に調査したところ,,権利が消滅していたにもかかわらず1級として表彰された例外的取扱いの件数はデータベースの入力ミスに起因する後記エ(ア)bの1件を除き,1件存在し,2ないし3級として例外的に表彰されていたものが合計9件存在することが判明した。 第1回から第10回までに表彰された特許の件数は全部で230件あり,上記1級の1件及び2ないし3級の9件の取扱いは,あくまでも例外的なものであることに変わりはない。 エB及びCの発明に係る表彰特許について(ア)Bの発明に係る表彰特許a平成4年度の表彰特許Bの発明に係る特許のうち,平成4年度の表彰対象となったのは,特許第●●●●●●●号(乙●●●)及び特許第●●●●●●●号(甲●●●●)であり,控訴人の主張する特許第●●●●●●●号(甲●●●●,同第●●●●●●●号(甲)●●●●●)及び同第●●●●●●●号(甲●●●●)ではない。 そして,特許第●●●●●●●号については,権利満了日が平成●●年●月●日(ただし,これは特許料不納によるものであって,本来の満了日は,平成●●年●月●●日である)であるから,平成4年度の表彰対象となることは当然である。 。 また,特許第●●●●●●●号についても,その権利満了日は,平成●●年●●月●●日(ただし,これは特許料不納によるものであって,本来の満了日は,平成●●年●月●●日である)であるから,平成4年度の表彰対象となることは当然。 である。 b平成5年度の表彰特許平成5年度の表彰特許のうち,特許第●●●●●●●号(別紙1の(D。甲●)●●●)は,確かに平成●年●月●●日,公告から15年経過したことにより,権- 22 -利期間が満了した。それにもかかわらず,この 度の表彰特許のうち,特許第●●●●●●●号(別紙1の(D。甲●)●●●)は,確かに平成●年●月●●日,公告から15年経過したことにより,権- 22 -利期間が満了した。それにもかかわらず,この特許が平成5年度の表彰された経緯は,次のとおりである。 ,,,,,すなわち被控訴人は膨大な数の特許を出願・管理しておりその数は現在権利存続中の特許権が約9000件程度,管理中の特許権でいえば約2万件以上にも及んでいる。被控訴人は,その膨大な数の特許を管理するため,昭和60年ころから,コンピュータを導入してその管理に当たっているが,平成4年ころ,コンピュータの機種切替えが実施され,そのデータの移行・書換え作業が行われた。その際,何らかのミスにより,権利満了期間が空欄のままとなるという事態を生じたと思われる。 そこで,コンピュータの機種切替え終了後,空欄のままとなっていた権利満了期間を補充していったが,折しも,平成6年に特許法の大改正が行われ(翌7年7月1日施行,出願公告制度が廃止され,特許権の存続期間が変更となった(一律出)願日から20年。この制度改革を間近に控え,担当者が,権利満了期間を補充す)る際に,一律に出願日から20年後の日時を権利満了期間として補充してしまったのである。 その結果,上記特許第●●●●●●●号(甲●●●●)の権利満了日も,その出願日である昭和●●年●月●●日の20年後の日,すなわち,平成●年●月●●日と入力されてしまった。 そして,選考対象特許の集計は,このコンピュータ上のデータを元に行われたため,平成5年度の表彰対象とされてしまったと考えられる。 なお,平成5年度に表彰されたもう1件の特許第●●●●●●●号(別紙1の(E。甲●●●●)の権利満了日は平成●●年●●月●●日であって,平成5年)度の表彰 の表彰対象とされてしまったと考えられる。 なお,平成5年度に表彰されたもう1件の特許第●●●●●●●号(別紙1の(E。甲●●●●)の権利満了日は平成●●年●●月●●日であって,平成5年)度の表彰対象となったことは当然である。 c平成8年度の表彰特許Bの発明に係る特許のうち,平成8年度の表彰対象となったのは,特許第●●●●●●●号及び同第●●●●●●●号(別紙1の(E)及び(F。甲●●●●及)- 23 -び●)であるが,まず,特許第●●●●●●●号については何ら問題となり得ないことは,前記bのとおりである。 また,特許第●●●●●●●号についても,その権利失効日は平成●年●月●●日である上,本来の権利満了日は平成●年●月●●日であること(甲●●●●)から,前記アの実務における機械的な取扱いにより,平成8年度の表彰対象となったものである。 d平成11年度及び同14年度の表彰特許控訴人は,特許第●●●●●●●号(別紙1の(G。甲●●●●)が,平成1)1年度及び同14年度の表彰対象となったと主張するが,同特許の出願公告年は平成元年であるから,これが平成11年度及び同14年度の表彰対象となることはあり得ない。 (イ)Cの発明に係る表彰特許Cの発明に係る特許第●●●●●●●号(甲●●●●)が平成11年度(第8回),,表彰の表彰対象となったのはその権利失効日が平成●●年●月●日であるうえ本来の権利満了日は同年●●月●日であることから,前記アの実務における取扱い上,平成11年度の表彰対象となったものである。 (2)本件特許⑪及び同⑲の無効理由の存在についてア実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について(ア)ブレンド成分の分散性控訴人は,被控訴人提出の上記実験成績報告書には,原反におけるブレンド 理由の存在についてア実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について(ア)ブレンド成分の分散性控訴人は,被控訴人提出の上記実験成績報告書には,原反におけるブレンド成分の均一分散性を確認するための光透過度を示すデータや顕微鏡写真が一切添付されていないので,このようなデータを欠く実験結果に全面的に依拠した原判決は不合理であると主張する。 しかしながら,仮に,控訴人の主張するように,原反のブレンド成分の分散性が逐次2軸延伸性にとって重要な因子であれば,その旨を特許明細書に明確かつ十分- 24 -に記載すべきである。それにもかかわらず,本件特許⑪の明細書には「本発明における重合体の混合方法には特に制限はないが,通常はチップ状の各成分をⅤ字型プレンターなどを用いて混和した後,溶融し,成形する方法が用いられる」と記載。 され(6欄37~40行,本件特許⑲の明細書には「A成分ポリアミドとB成分)ポリアミドとを混合する方法は特に制限はないが通常はA成分ポリアミド,B成分ポリアミドの粉末又はチップを固態状で混合した後溶融押出機などを用いて加熱溶融することによって均一に混合した組成物を得ることができる」と記載されてい。 るのみであって(4欄15~20行,光透過度や顕微鏡観察による分散性の確認)などの事項については一切記載されていない。そして,本件特許⑪及び同⑲の明細書の記載は,当業者の周知・慣用手段の域を出るものではなく,控訴人が主張するような光透過度や顕微鏡観察による分散性の確認を示唆もしくは想起するようなものではない。 したがって,控訴人の主張は,全く失当であることが明白である。 (イ)実験成績報告書の証拠力,,被控訴人は実験には現場の技術者しか判らない多数の注意事項があるからこそ現場を十分に熟知した社内 したがって,控訴人の主張は,全く失当であることが明白である。 (イ)実験成績報告書の証拠力,,被控訴人は実験には現場の技術者しか判らない多数の注意事項があるからこそ現場を十分に熟知した社内の者(各実験成績報告書の「実験者」の欄参照)が実験し,それを公正な第三者が立会検証した上で,一連の実験成績報告書を作成しているのである。 (ウ)乙第37号証の1の実験乙第37号証の1の実験は,同号証に明記されているとおり,MD及びTD延伸条件を複数に振って実験しているのであるから「一点のみの実験結果」などではない。すなわち,本件特許⑪及び同⑲の明細書記載条件の平均値辺りの数値を複数設定して実験している。 なお,控訴人は,光透過度や顕微鏡観察により原反のブレンド成分の分散状態を確認した上でMD及びTD延伸条件を決定すべきであると主張するが,前記のとおり,そのような事項は明細書に一切記載がないから,かかる控訴人主張は,本件特- 25 -許⑪及び同⑲の明細書に実施可能要件違反が存することを自認するものに他ならない。 また,控訴人は,原反のブレンド成分の分散状態を確認した上でMD及びTDの延伸条件を決定して実験すれば特定ダイアミドを混合した方が延伸性は良好になる適正条件が得られる筈であると主張するが,仮にそのとおりであるとすれば,逐次2軸延伸をするための最適条件は,面配向指数の適正化だけでは足りず,原反のブレンド成分の分散状態も重要な条件であるということであり,そうであるならば,原反のブレンド成分の分散状態の制御等について一切記載されていない本件特許⑪及び同⑲の明細書には,実施可能要件違反が存することは当然である。 (エ)乙第39号証の1の実験控訴人は,本件特許⑲では,耐水性は副次的な効果であり,耐水性について数値化して特許請求している訳ではな び同⑲の明細書には,実施可能要件違反が存することは当然である。 (エ)乙第39号証の1の実験控訴人は,本件特許⑲では,耐水性は副次的な効果であり,耐水性について数値化して特許請求している訳ではないから,耐水性の改良効果についての本件特許⑲の再現性を取り上げてみても余り意味がないと主張する。 しかしながら,本件特許⑲は,耐水性,耐湿性が改良された脂肪族系ポリアミドフィルムを逐次2軸延伸法で製造する方法に関する発明であり(特許公報(甲3の19)1欄15~17行参照,ナイロン6やナイロン66フィルムの短所である)耐水性,耐湿性が不十分な点を課題とした発明である(前同1欄20行~2欄24行参照)から,控訴人の主張は失当である。 (オ)乙第101号証の実験乙第101号証は,被控訴人が行った乙第37号証の1に示す実験結果に対する控訴人の非難に対する,念のための再確認を目的とした実験であり,Ny6の粘度2.80を選択したのは乙第37号証の1の条件と一致させたためであり,押出し温度270℃を選択したのは,乙第37号証の1で採用した280℃に対する控訴人からの「意図的に冷却不足にして延伸性が低くなるように条件設定した負のデータを得るための条件設定である」との非難に対して乙第37号証の1の実験に落ち度はないことを再確認するためである。 - 26 -また,控訴人は,乙第101号証の実験では延伸性の評価基準がなく,単に○,△,×で示しているに過ぎないと主張するが,乙第101号証には「○:破断無く安定してフィルムを製膜できる,△:破断は発生するが製膜できる,×:全く製膜できない」と明記されているのであって「○,△,×」の意義を定量的に評価し,ており,控訴人の主張は失当である。 さらに,控訴人は,面配向指数の一致について,偶然にしては不自然であり,正, く製膜できない」と明記されているのであって「○,△,×」の意義を定量的に評価し,ており,控訴人の主張は失当である。 さらに,控訴人は,面配向指数の一致について,偶然にしては不自然であり,正,,確な実験ではない証拠であると主張するが面配向指数は縦延伸後の数値であって横延伸温度を変えた表1及び同2との間で,全く同じ面配向指数の数値が出たとしても全く不思議でも何でもないのであり,控訴人の主張は失当である。 (カ)乙第102号証の実験控訴人は,本件特許⑲では,改良された耐水性,低透湿性を併せ有することを謳っているが,これらの付加価値は必須ではなく,3重量%のブレンド量では延伸性は得られても上記付加価値までは得られないのは明らかであると主張するが,仮に控訴人の主張が正しいとすれば,ブレンド量が3~50重量%を要件とする本件特許⑲は「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載,した項に区分してあること」という記載要件(昭和50年改正特許法36条4項。 2号)不備であることが明らかであり,控訴人の主張は,かかる要件不備の自白であることが明らかである。 (キ)乙第103号証の実験,. ,控訴人は本件特許⑲の実施例のNy12の相対粘度は250であるのに対し乙第103号証の実験で使用したNy12の相対粘度は3.27と高粘度のものであるからNy12の均一分散性が悪くなり,ブレンド比が5重量%の実験1では#2軸延伸製膜はできなかったものの縦延伸は一応できたが,ブレンド比が40重量%の実験2では延伸はおろか冷却すらできなかったと主張している。 #しかしながら,Ny12の融点はNy6の融点よりも遥かに低いため,両者のブレンド物の溶融押出温度はNy6の融点よりも当然に高いものとなり,Ny12は- 27 -その融点を遥 たと主張している。 #しかしながら,Ny12の融点はNy6の融点よりも遥かに低いため,両者のブレンド物の溶融押出温度はNy6の融点よりも当然に高いものとなり,Ny12は- 27 -その融点を遥かに超えた温度で溶融押出しされる。そして,その際のNy12の溶融状態は,相対粘度が2.50又は3.27のいずれであってもNy6の溶融粘度より小さく,かつ,相対粘度3.27の方がNy6の溶融粘度により近いので,却って相対粘度3.27の方がNy6とは混合(ブレンド)し易いのである。 したがって,Ny12の上記相対粘度差は全く問題とならないばかりか,逆に,相対粘度が2.50のものよりも3.27のものの方が延伸性にとって有利であることは,当業者には自明であり,相対粘度3.27のNy12は,相対粘度2.50のものよりもNy6に対するNy12の均一分散性(混合(ブレンド)性)が悪いかのような控訴人の主張は全く根拠がなく,失当である。 イ本件特許⑪の明細書の内容(ア)高分子化合物の融点及び粘度は,重合度,分子量,分岐の有無等によって,(,,大きく相違しそれらはその重縮合の製造条件重合及び重縮合反応の圧力温度時間,触媒,反応方式等。以下同じ)によって大きく変動することは技術常識で。 ある。 本件特許⑪の明細書に記載されたブレンド成分AないしFは,組成比又は化合物名が記載されているのみで,重縮合の製造条件が記載されていないから,その融点及び粘度は特定不能である。 したがって,本件特許⑪の明細書からは,第三者は,如何なる融点及び粘度を有するブレンド成分AないしFを選定して実施例を追試すべきか判断できず,当該実施例の追試を行なうことは不可能である。すなわち,本件特許⑪の明細書は,ブレンド成分AないしFに関し,当業者が容易にその実施をすることができる程度に Fを選定して実施例を追試すべきか判断できず,当該実施例の追試を行なうことは不可能である。すなわち,本件特許⑪の明細書は,ブレンド成分AないしFに関し,当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明が開示されておらず,明細書の実施可能要件を充足しないことが明らかである。 (イ)控訴人は,ブレンド成分の組成を決めればその共重合体の結晶型や非晶性(融点)が一義的に決まり,ONyフィルム製造での延伸性賦与効果を持たせることができるから,延伸性賦与に最も効果が現れる可能性が高い共重合体の組成比を開示しておけば足りると主張するが,本件特許⑪の特許請求の範囲には「ブレンド- 28 -成分の組成」など全く特定がないから,控訴人の主張は,それ自体失当である。 また,控訴人は,ブレンド成分の粘度に関して,Ny6のONyフィルムでは母材のNyの粘度が2.8~3.4であるが,これにブレンドする共重合体は通常の条件で容易に製造することができるもので粘度1.8~2.5であれば問題はないと主張するが,本件特許⑪の明細書には「ブレンドする共重合体の粘度が1.8,~2.5であれば問題はない」という記載はなく,また「1.8~2.5」とい,う粘度範囲は,実験による裏付け等がある訳でもなく,控訴人が当審で初めて言い出した新規な数値範囲である。 さらに,この控訴人の主張によれば「粘度が1.8~2.5の範囲外の共重合,体は,本件特許⑪のブレンド成分としては問題がある」ということを控訴人が自認しているということであり,そうであれば,本件特許⑪の特許請求の範囲ではブレンド成分の粘度範囲を特定していないから,ブレンド成分として問題のない粘度範囲を特定していない本件特許⑪の特許請求の範囲は「特許請求の範囲には,発明,の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項の 度範囲を特定していないから,ブレンド成分として問題のない粘度範囲を特定していない本件特許⑪の特許請求の範囲は「特許請求の範囲には,発明,の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなけれ。」()。 ばならない昭和50年改正特許法36条5項というサポート要件違反があるウ控訴人の提出した実験報告書(甲101の1,2)について(,。 ,「」,控訴人の提出した実験報告書甲101の1 以下順に実験報告書1「実験報告書2」という)は,以下に述べるとおり,到底信用に値するものでは。 ない。 (ア)控訴人が実験Ⅰでブレンド成分として使用したとするNy12(3024B)は,フィルム用ではなく,射出成型用ナイロンであり,用途が異なる。また,控訴人は,Ny12(3024B)の粘度が2.50であると主張し,実験報告書1にはその旨の記載があるが,宇部興産のカタログにはそのような記載はなく,粘度は不明である。 (イ)控訴人は,Ny12(3024B)を使用すれば,本件特許⑲の明細書の実施例を忠実に再現してフィルム成形ができたと主張するが,実験ⅠのNO4の実- 29 -験(Ny6にNy12を40重量%混合した樹脂を使用したもの)により未延伸フィルムが製造できたかどうか疑わしい。 ,。 (ウ)実験Ⅱの延伸条件は本件特許⑪の明細書の実施例とは全く異なっているすなわち,実験報告書2には,Gにおいて,H卓上2軸延伸機によって逐次二軸延伸を実施した旨記載されているが,その延伸実験は,以下に述べるとおり,本件特許⑪の実施例1の追試実験として何らの有意性を持ち得ないものである。 a延伸速度本件特許⑪の実施例1にはフィルムの供給速度及び延伸倍率が記載されているから(各300cm/min及び3.5倍,縦延伸速度が計算上 1の追試実験として何らの有意性を持ち得ないものである。 a延伸速度本件特許⑪の実施例1にはフィルムの供給速度及び延伸倍率が記載されているから(各300cm/min及び3.5倍,縦延伸速度が計算上明らかとなる。 )縦延伸速度=300×(3.5-1)=750cm/minしたがって,その縦延伸速度は750㎝/minとなるが,実験Ⅱにおける縦横延伸速度は,各々3cm/minと明記されているから,その延伸速度は,本件特許⑪の実施例1に比して実に250分の1というレベルに過ぎない。 そして,延伸速度が速いほど延伸は困難になるから,仮に万一,実験Ⅱによって「延伸出来た」としても,それが本件特許⑪の実施例1の追試として何らの意味を持ち得ないことは当然である。 b試料サイズまた,本件特許⑪の実施例1には,未延伸フィルムの幅が25cmと明記されているが,実験Ⅱにおいては,5cm×5cmの未延伸フィルムを用いた旨記載されているから,未延伸フィルム幅は,実施例1に比して5分の1に過ぎない。 そして,フィルムが大きいほど延伸は困難になるから,この点においても,実験Ⅱが本件特許⑪の実施例1の追試として何らの有意性を持ち得ないことは当然である。 c乙第37号証の1,2及び乙第101号証の信用性控訴人は,本件特許⑪の明細書に記載されたX線透過法ではIの測定ができ ないから,X線透過法により面配向指数を算出したと記載されている乙第37号証- 30 -の1,2及び乙第101号証の実験結果は全く信頼できないと主張するが,上記の,,とおり実験Ⅱでは延伸速度が本件特許⑪の実施例1の250分の1と著しく遅くそのため,分子の配向が生じない変形が起こっている可能性が濃厚であるから,実験Ⅱの1軸延伸後のフィルムについてX線透過法による面配向指数の算出ができなくても 許⑪の実施例1の250分の1と著しく遅くそのため,分子の配向が生じない変形が起こっている可能性が濃厚であるから,実験Ⅱの1軸延伸後のフィルムについてX線透過法による面配向指数の算出ができなくても何ら不思議なことではない。 したがって,実験ⅡにおいてX線透過法による面配向指数の算出ができなかったとしても,それにより乙第37号証の1,2及び乙第101号証の実験結果の信頼性が失われることはない。 d小活以上のとおり,実験Ⅱは,本件特許⑪の実施例1の追試実験としては有意性を持たず,ましてや,その延伸速度及び未延伸フィルムの幅のオーダーが更に何桁も異なる工業実施の可否ないし有無について何らの意味を有しないことは明らかである。 (3)ONyフィルム生産における同時2軸との価格差についてア企業においては,製造コストは最重要の企業秘密に属し,自己の製造販売に係る製品について製造コストの公開などしないのが常識である。 したがって,当事者でもない第三者が他社の製造コストを入手することなど通常は不可能なのであって,外部調査機関が提供するコスト比較においても,種々の仮定を置いて大雑把な試算値を提供するに過ぎないのが通常であり,製造現場の実態を正確に反映した確度の高いものと評価することは到底できないのである。 つまり,企業が,かかる外部機関に調査依頼するのは,あくまでも単なる自社の参考資料に資する目的に止まるのであって,現に本件内部資料(甲18)においても「<参考>コスト比較」と表示しているのはその証左である。 ,イまた,発明改善審査申請書(乙6,115の1)が申請された昭和54年12月は,被控訴人がONyフィルムの本格生産を開始して既に3年が経過している,,()時期であるが同申請書には申請事業所被控訴人のONyフィルムの製造現場- 31 - 申請された昭和54年12月は,被控訴人がONyフィルムの本格生産を開始して既に3年が経過している,,()時期であるが同申請書には申請事業所被控訴人のONyフィルムの製造現場- 31 -の最高責任者であるI,J及びK3名の承認印があり,同申請書は,これらONyフィルム製造現場の最高責任者等の承認のもとに被控訴人本社の所管事業部長たる「L」宛に正規の手続にしたがって申請されたものであり,控訴人が主張するような「ONyフィルム開発当初の担当課長の判断が現れているに過ぎない」などという類の書類ではない。 このように,ONyフィルムについて,先発二社の競合品との品質・コスト両面に関する評価を記載した上記発明改善審査申請書(乙6,115の1)は,被控訴人のONyフィルムに最も精通する製造現場の最高責任者の承認の下に作成されたものであるから,原判決がその記載を重要視したことは当然であって,何ら不合理はない。 (5)不法行為についてア原判決は,実績補償に関していかなる定めを設けるかは,企業の裁量に委ねられるところであって,その定めに基づく対価額に不足があれば,従業員は相当の対価請求権を行使することが可能となるのであるから,本件特許取扱規定及び特許表彰規定の内容に違法な点があるということはできず,また,たとえ評価期間が区分されることによって,評価対象外の期間の実績については,消滅時効の起算点が特許登録日又は実施開始時となるとしても,それは本件特許取扱規定及び特許表彰規定の施行の有無と関わりはないのであるから,これをもって違法であるということもできないと判断したが,これは,特許法35条が強行法規性を有するが故に,企業が実績補償に対して如何なる定めを設けるかは,その自由裁量の範囲内の事象であること,及び評価期間の区分によって評価対象外の期 できないと判断したが,これは,特許法35条が強行法規性を有するが故に,企業が実績補償に対して如何なる定めを設けるかは,その自由裁量の範囲内の事象であること,及び評価期間の区分によって評価対象外の期間が生じたとしても,その消滅時効の起算点が原則(登録日等)に戻ることには何ら違法性が生じ得ないことを的確に判断しているのであり,何ら誤りはない。 イまた,被控訴人における特許表彰規定の評価基準は公正なものであり,本件各特許に対する被控訴人の評価は,以下のとおり,合理的なものである。 (ア)ONyフィルムの製造での控訴人の貢献について- 32 -aN2100への本件特許⑪及び⑲の貢献原判決は,特定ダイアミドが本件特許⑪及び同⑲のブレンド成分に該当するかどうかに関わりなく,そのいずれであったとしても,論理的に,同特許に関する相当対価請求に理由がないことを明確に判示しており,その内容に誤りはない。 bN1100への本件特許①,⑤及び⑥の貢献について本件特許①については,原判決が判示するとおり,あらゆる意味において特許表彰の対象とはなり得ない。 また,本件特許⑤及び⑥については,控訴人自身,N1100に対して,本件特許⑤及び⑥が直接実施されていないことを自認しているから,控訴人の主張は,相当対価算定において全く意味をなさない主張である。 cN1100への本件特許⑪の貢献についてN1100のブレンド成分であるSM樹脂は,芳香族ポリアミドであり,本件特許⑪のブレンド成分(1)のγ型脂肪族ポリアミドに該当しないことは明らかであるから,本件特許⑪が,被控訴人のN1100製造による利益の独占を可能にしたとの控訴人の主張は誤りである。 (イ)FSMフィルムについて控訴人は,本件特許⑫を被控訴人が実施していないことを前提とし,これを認めた上で,同特許を のN1100製造による利益の独占を可能にしたとの控訴人の主張は誤りである。 (イ)FSMフィルムについて控訴人は,本件特許⑫を被控訴人が実施していないことを前提とし,これを認めた上で,同特許をユーザが実施しており,被控訴人が同特許を保持し,排他的に実施できることをユーザに保証して実施させていると主張するが,本件特許⑫を被控訴人が実施していないことを自認しているのであるから,同特許について相当の対価請求権が発生しないことは明白である。 (ウ)積層容器について被控訴人は,これまでMSM樹脂を積層容器にもPETとのブレンド容器用にも外販したことはないから,控訴人の主張は失当である。 (エ)SMレジン(外販用)について本件特許①に基づく相当対価請求権は,原判決が明確に判示するように,時効消- 33 -滅が明らかであるから,外販用SMレジンに本件発明①が実施されたか否かという点は,本件において全く問題となり得ない。 (オ)ダイナックについて控訴人は,過去のダイナック製造等において本件A発明ないしG発明を実施していると主張するが,原判決が判示するように,そのような事実はない。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり,訂正付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第4当裁判所の判断(原判決124頁24行~177頁13行)に」記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の訂正(1)原判決125頁13行目の「特許表彰規定第7条」を「特許表彰規定第8条」と改める。 (2)原判決127頁7行目から8行目にかけての「意匠登録を受ける権利」の後に「以下これら三者を合わせて「出願権」という」を加える。 ()(3)原判決131頁19行目から13 条」と改める。 (2)原判決127頁7行目から8行目にかけての「意匠登録を受ける権利」の後に「以下これら三者を合わせて「出願権」という」を加える。 ()(3)原判決131頁19行目から132頁6行目までを次のとおり改める。 「もっとも,証拠(乙126,145)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人における第2回表彰から第10回表彰までのころの本件特許表彰制度の現実の運用は,次のとおりであったことが認められる。 a被控訴人における特許表彰規定の選考対象特許の集計及び整理等の事務は,知財部員の1ないし2名が担当していたが,1回の表彰回において選考対象特許の数が500件程度あり,それらの一つ一つについての貢献度を評価するためには約半年程の期間を要したことから,集計事務担当者は,選考会の開催が予定される10月の約半年前の3月末から6月末ころまでの間に選考対象特許の集計を行っていた。そして,本来は,集計された特許から選考会開催時までに権利が消滅した特許- 34 -を除外する必要があったが,集計事務担当者はその作業を行わないまま,集計された特許を選考対象特許とし,選考会における評価の対象としていた。そのため,選考年の3月末から6月末ころの間に登録されていた特許が全て選考対象特許とされていた。 b上記aの原則的な運用に対し,2つの例外的な取扱いが行われていた。 第1は,今回の選考会開催時前に特許権が消滅した特許であっても,それ以前に2級以上の表彰を受け,かつ,なおも特段の利益を上げており,今回1級の表彰に値する場合には,例外的な措置として,知財部幹部の了承の下,選考対象特許となり得るものと扱われたというものである。さらに,同じく権利が消滅していたが,2級又は3級の表彰に値する場合には,集計事務担当者の判断により,選考対象特許とされた例があった 了承の下,選考対象特許となり得るものと扱われたというものである。さらに,同じく権利が消滅していたが,2級又は3級の表彰に値する場合には,集計事務担当者の判断により,選考対象特許とされた例があった。 第2は,選考年の3月末から6月末ころの間に登録されていた特許が選考対象特,,,許とされていたが集計事務担当者の判断により同期間に権利が消滅していてもそれが被控訴人の特許料不納付によるものであり,本来の存続期間によれば権利が存続していたものは集計の対象とされていたというものである。すなわち,選考年の3月末から6月末ころの間に特許料不納付で権利が消滅していても,本来の存続期間が未了である特許は選考対象特許と扱われ,結局,集計事務担当者は,選考対象特許を集計する際,当該特許の本来の権利存続期間を基準として集計作業を行っていた。 c第1回表彰から第10回表彰までに表彰された特許の件数は全部で230件あったが,上記認定のような実際の運用の結果,選考会開催予定時である10月11日に登録されていないにもかかわらず表彰された特許は,1級が1件,2級又は3級が合計9件あった。また,それ以外に,特許管理のためのデータベースに権利,,満了期間を誤って入力したため10月11日に登録されていないにもかかわらず1級として表彰された特許が1件あった。 上記認定のとおり,被控訴人においては,選考年の3月末から6月末ころの間に- 35 -登録されていた特許を選考対象特許とするとの運用が行われていたが,このような運用も,結局のところ,選考会開催時において登録されている特許が選考対象となるという特許表彰規定4条①の上記解釈を前提とするものであり,その準備のために集計作業を早めに行い,ただ,その後選考会開催時までに権利消滅した特許を除外しなかったというに過ぎない(本 が選考対象となるという特許表彰規定4条①の上記解釈を前提とするものであり,その準備のために集計作業を早めに行い,ただ,その後選考会開催時までに権利消滅した特許を除外しなかったというに過ぎない(本件全証拠によるも,その理由は明らかではないが,上記のとおり,わずか1,2名の知財部員により集計作業が行われていたということからすれば,そのような除外作業をするまでの余裕がなかったからではないかと推測されるところであり,それが他に何らかの意図に基づくものであることを窺わせる事情は認められない)のであり,また,上記の例外的運用は選考対象特。 許の範囲を拡大する方向での運用であるから,特段の事情がない限り,従業員にとっては不利益な運用ということはできず,集計作業の便宜のため上記aのような運用が行われていたとしても,本件特許表彰制度に関する上記解釈を妨げるものではないというべきである。 のみならず,上記bの例外的な取扱いについても,その件数は,1回当たりの選考対象特許が約500件であり,表彰される特許が1回当たり平均して23件であ,,ることと比較すればあくまでも少数の例外にとどまるものというべきであるからこのような例外的な取扱いの存在をもって,本件特許表彰制度に関する上記解釈を妨げる事情ということはできない」。 (4)原判決132頁9行目の「表彰を」を「表彰の」と改める。 (5)原判決135頁1行目から136頁8行目までを,次のとおり改める。 「昭和63年1月1日施行の特許取扱規定においても,旧特許取扱規定第10条と同旨の規定である「顕著な実施効果の申請」の規定(第11条)が置かれたが,同規定及びこれを受けた開発表彰規定(乙13)に基づく褒賞金の支給は前記前提となる事実(5)ウのとおり職務として開発に従事する従業員研,,「(究所,各 」の規定(第11条)が置かれたが,同規定及びこれを受けた開発表彰規定(乙13)に基づく褒賞金の支給は前記前提となる事実(5)ウのとおり職務として開発に従事する従業員研,,「(究所,各部研究開発組織,プロジェクトチームなどに属する従業員)が行なっ,,」た開発成果の中で事業化され現在業績に貢献している新製品または新技術- 36 -が対象であり,当該製品又は技術の総括責任者の申請によって行われるものである上,明確な支払時期の定めがあるものとは認められないのであるから,上記特許取扱規定の制定施行をもって,被控訴人が既に支給時期が到来していた褒賞金の支払債務を承認したということはできず,これをもって旧特許取扱規定の下で進行を開始した消滅時効を中断するものと認めることはできない。 オさらに,本件特許取扱規定第11条の定める顕著な実績効果の申請に基づく褒賞金の支給は,旧特許取扱規定第10条に定める「実施効果の申請」及び昭和63年1月1日施行の特許取扱規定に定める「顕著な実施効果の申請」と同様の規定であるから,同規定も,実績補償の支払時期を定めているということはできず,上記エ(カ)で説示したのと同様の理由により,特許権の設定登録がされた発明が実施された時をもって,褒賞金の支払時期と認めるのが相当である。また,旧特許取扱規定の下で進行を開始した消滅時効を中断するものではないことも前同様である。 ,「」,カ以上のとおり特許表彰規定第4条②にいう実施がされていないか又は,同条にいう「実施」はされているものの本件特許取扱規定の施行前に特許権が消滅し,あるいは特許表彰選考委員会による選考会の開催される年の10月10日までに特許権が消滅することにより本件特許取扱規定第10条が適用されることのない特許に関する対価請求権の消 施行前に特許権が消滅し,あるいは特許表彰選考委員会による選考会の開催される年の10月10日までに特許権が消滅することにより本件特許取扱規定第10条が適用されることのない特許に関する対価請求権の消滅時効の起算点は,特許権の設定登録日又は実施開始時のいずれか遅いほうと解するのが相当である」。 (6)原判決137頁24行目の「特許表彰委選考員会」を「特許表彰選考委員会」と改める。 (7)原判決141頁8行目から12行目までを削除する。 (8)原判決142頁11行目の次に,改行して「・本件特許⑲(昭和61年」)を加える。 - 37 -(9)原判決142頁25行目から同26行目にかけての「なお,本件特許権⑪は,平成8年8月9日に特許権が登録抹消されているため,評価対象とはならない」を「なお,本件特許権⑩は平成6年6月2日に,本件特許権⑪は平成8。 年8月9日に,本件特許権⑭は平成6年5月8日に,それぞれ特許権が登録抹消されているため,評価対象とはならない」と改める。 。 (10)原判決143頁9行目から146頁26行目までを,次のとおり改める。 「以上のとおり,出願公告日を基準にした場合,本件特許⑫についての平成元年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権,本件特許⑲についての平成元年10月中旬以降平成4年10月10日までの間の実績に関する対価請求権,及び本件特許⑩,⑪,⑭についての平成2年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は,時効により消滅したこととなる。 エもっとも,前記のとおり,控訴人が乙17通知を現実に了知したと認めることはできないから,乙17通知に従った運用をすることによって控訴人に不利益が生じる場合には,特許表彰規定に従い,特許権の設定登録年を基準として,選考対象特許を が乙17通知を現実に了知したと認めることはできないから,乙17通知に従った運用をすることによって控訴人に不利益が生じる場合には,特許表彰規定に従い,特許権の設定登録年を基準として,選考対象特許を選定すべきである。 ,,,,,,,そこで特許権の設定登録年を基準とすると本件特許⑤⑥⑩⑪⑫⑭及び⑲が特許表彰の対象となり得る年度は,以下のとおりである。 (ア)平成4年度評価対象特許(括弧内は特許登録年。以下同じ)。 ・本件特許⑫(昭和58年)(イ)平成5年度評価対象特許・本件特許⑭(昭和59年)・本件特許⑲(昭和62年)(ウ)平成6年度評価対象特許- 38 -・本件特許⑪(昭和57年)(),()本件特許⑤昭和54年は平成5年2月6日に本件特許⑥昭和54年は平成5年9月7日に,本件特許⑩(昭和57年)は平成6年6月2日に,いずれも特許権が登録抹消されているため,評価対象とはならない。 (エ)平成7年度評価対象特許・なし本件特許⑫は,平成6年8月24日に特許権が登録抹消されているため,評価対象とはならない。 (オ)平成8年度評価対象特許・なし(),()本件特許⑭昭和59年は平成6年5月8日に本件特許⑲昭和62年は平成8年8月4日に,いずれも特許権が登録抹消されているため,評価対象とはならない。 そして,控訴人が本件訴訟を提起したのは,平成16年9月30日であるから,平成5年度以前の特許表彰の対象特許及びその評価期間の実績に関する相当の対価請求権は,時効により消滅していることになる。他方,平成7年3月31日に奨励金の支払時期が到来する平成6年度以降の特許表彰の対象特許については,いまだ消滅時効期間が経過していないことになる。 したがって,登録年を基準とすると,本件特許 になる。他方,平成7年3月31日に奨励金の支払時期が到来する平成6年度以降の特許表彰の対象特許については,いまだ消滅時効期間が経過していないことになる。 したがって,登録年を基準とすると,本件特許⑫の平成元年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権,及び本件特許⑭,⑲の平成2年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権については,時効により消滅したこととなる。 オ以上によれば,本件特許⑩,⑪,⑫,⑭及び⑲に関する相当の対価請求権についての消滅時効の成否は次のとおり認められる。 - 39 -(ア)本件特許⑫,⑭について出願公告年を基準としても登録年を基準としても,本件特許⑫の平成元年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権及び本件特許⑭の平成2年10月中旬以降特許権が消滅するまで間の実績に関する対価請求権は時効により消滅している。したがって,これらの各特許に関する限り乙17通知により出願公告年を基準にしても,これによらない場合と比べて控訴人に不利益を及ぼすことはない。 なお,本件特許⑫の平成元年10月中旬より前の実績に関する相当の対価及び本件特許⑭の平成2年10月中旬より前の実績に関する相当の対価の支払時期は,旧特許取扱規定の実績補償の定めに従って定められることとなる。 そして,控訴人は,本件特許⑫はFSMフィルムにおいて実施されたと主張するところ,FSMフィルムの生産を被控訴人が開始したのは昭和49年であり(争いのない事実,同特許が設定登録されたのは昭和58年11月30日で)あるから,控訴人は,この設定登録によって,本件発明⑫の相当対価請求権のうち実績補償分について権利行使することが可能となったものである。そうす,,ると遅くともその翌日である同年12月1日が消 あるから,控訴人は,この設定登録によって,本件発明⑫の相当対価請求権のうち実績補償分について権利行使することが可能となったものである。そうす,,ると遅くともその翌日である同年12月1日が消滅時効の起算点となるから本件発明⑫に係る対価請求権は,本件訴訟の提起があった平成16年9月30日までに10年以上が経過しており,被控訴人の消滅時効の援用により消滅している。 また,本件発明⑭は,FSMフィルムに関する発明であるところ,上記のとおり,被控訴人がFSMフィルムの生産を開始した時期は昭和49年である。 そうすると,遅くとも本件特許権⑭の設定登録日(昭和59年10月17日)の翌日である昭和59年10月18日には,控訴人は,実績補償分についての対価請求権を行使することが可能であったということができるから,同日をも- 40 -って,同請求権の消滅時効の起算点とするのが相当である。したがって,本件特許⑭の実績補償分についての対価請求権は,被控訴人の消滅時効の援用により消滅したことになる。 (イ)本件特許⑩について出願公告年を基準とすると,本件特許⑩の平成2年10月中旬以降特許権が,消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は時効により消滅したこととなり登録年を基準とすると,本件特許取扱規定及び特許表彰規定の適用がない。した,,,がって本件特許⑩に関しては乙17通知により出願公告年を基準にしてもこれによらない場合と比べて控訴人に不利益を及ぼすことはない。 そして,控訴人は,積層容器に関する発明である本件発明⑩を,SM樹脂の用途発明として積層PETボトルにおいて実施していると主張するところ,被控訴人がSM樹脂の生産を開始したのは,遅くとも昭和61年3月であり(乙19,仮に被控訴人が本件発明⑩を実施しているとすれば,遅くともこのころ 層PETボトルにおいて実施していると主張するところ,被控訴人がSM樹脂の生産を開始したのは,遅くとも昭和61年3月であり(乙19,仮に被控訴人が本件発明⑩を実施しているとすれば,遅くともこのころ)には実施を開始していたものというべきであるから,同発明に係る対価請求権の消滅時効の起算点は,同年4月1日とするのが相当である。そうすると,本件特許⑩の実績補償分についての対価請求権は,被控訴人の消滅時効の援用により消滅したことになる。 (ウ)本件特許⑪について出願公告年を基準とすると,本件特許⑪の平成2年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は時効により消滅したこととなるが,登録年を基準とすると,平成3年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は消滅時効期間が経過していないこととなるので,本件特許⑪の平成3年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権については,出願公告年を基準とせず,登録年を基準とすること- 41 -とする。 ところで,本件特許⑪に係る対価請求権については,旧特許取扱規定に基づき,特許権の設定登録日である昭和57年7月30日(遅くともその翌日)を消滅時効の起算点と考えれば,本件特許取扱規定施行前に,その対価請求権についての消滅時効がいったん完成することは,被控訴人の主張するとおりである。しかし,本件特許取扱規定は,その施行時に存続する特許権に係る発明を対象として,改めて実績補償に関する支払時期を定めたものであるから,特許表彰規定第4条の要件を充足して奨励金の支給対象となる発明について,対価請求権に係る債務を消滅時効完成後に承認する趣旨の規定であると解される。 よって,本件発明⑪の平成3年10月中旬以降の実績に関する対価請求権の有無を検討することとする。 給対象となる発明について,対価請求権に係る債務を消滅時効完成後に承認する趣旨の規定であると解される。 よって,本件発明⑪の平成3年10月中旬以降の実績に関する対価請求権の有無を検討することとする。 (エ)本件特許⑲について出願公告年を基準とすると,本件特許⑲の平成元年10月中旬以降平成4年10月10日までの間の実績に関する対価請求権は時効により消滅したこととなるが,平成4年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は,いまだ消滅時効期間が経過していないこととなるのに対し,登録年を基準とすると,平成2年10月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権は時効により消滅したこととなるので,本件特許⑲の平成4年1,0月中旬以降特許権が消滅するまでの間の実績に関する対価請求権については出願公告年を基準とすることとする。 よって,本件発明⑲の平成4年10月中旬以降の実績に関する対価請求権の有無を検討することとする。 カなお,本件特許⑤,⑥のように,本件特許取扱規定の施行日には特許権が存続していたものの,特許表彰選考委員会の選考会の開催時期である10月- 42 -中旬より前に特許権が消滅している場合には本件特許取扱規定及び特許表彰規定の適用がなく,前記説示のとおり,そのような特許権に関する対価請求権の消滅時効の起算点は,設定登録日又は実施開始時のいずれか遅い時点であると解される。 そして,本件発明⑤及び同⑥の方法により製造されたT601レジンを原料とするFSMフィルムの生産を被控訴人が開始したのは,前記のとおり,昭和,,49年であるから本件特許⑤及び同⑥に係る対価請求権のうち実績補償分はいずれも昭和54年5月25日の特許権の設定登録をもって,控訴人において権利行使することが可能となったものであり,被控 ,,49年であるから本件特許⑤及び同⑥に係る対価請求権のうち実績補償分はいずれも昭和54年5月25日の特許権の設定登録をもって,控訴人において権利行使することが可能となったものであり,被控訴人の援用する同月26日が消滅時効の起算点となる。そうすると,同対価請求権は,本件訴訟の提起があった平成16年9月30日までに10年以上が経過しており,被控訴人の消滅時効の援用により消滅している」。 (11)原判決150頁26行目の「相当の対価の不足額」を「相当の対価」と改める。 (12)原判決154頁6行目の「昭和56年2月3日」を「昭和50年10月11日」と改める。 (13)原判決158頁6行目から162頁2行目までを,次のとおり改める。 「(ア)本件特許⑲の明細書の実施可能要件充足性についてa本件特許⑲の明細書には,次の記載がある(甲3の19。 )(a)「本発明は,耐水性,耐湿性が改良された脂肪族系ポリアミドフィルムを逐次2軸延伸法で製造する方法に関する。本発明はまた力学的強度の改良された脂肪族系ポリアミドフィルムを逐次2軸延伸法で製造することを目的とする(1欄。」15行目から19行目)(b)「延伸ナイロン6フィルムの短所の一つは耐水性,耐湿性が不十分なこと- 43 -()。 ,である・・・上記事情はナイロン66からなるフィルムについても同様でありいずれもその有するすぐれた性能を損なわずに耐水性,耐湿性を改良することが望まれている。本発明者らはこの点について鋭意研究を重ねた結果,ナイロン6系ポリアミドまたはナイロン66系ポリアミドにある特定の脂肪族ポリアミドを混合した樹脂よりなるフィルムを逐次2軸延伸法により得ることができ,そのフィルムは耐水性,耐湿性にすぐれていることを見出し本発明に到達した(2欄1行目から 系ポリアミドにある特定の脂肪族ポリアミドを混合した樹脂よりなるフィルムを逐次2軸延伸法により得ることができ,そのフィルムは耐水性,耐湿性にすぐれていることを見出し本発明に到達した(2欄1行目から。」23行目)(c)「このような方法によりナイロン6あるいはナイロン66において困難であった逐次2軸を容易になすことができるようになったことが本発明の特徴である(4欄43行目から5欄2行目」。」(d)「かくして得られた延伸フィルムはすぐれた水分遮断性,高湿度雰囲気下の気体遮断性,湿潤時の機械的性質,湿度変化に対する寸法安定性を有する(5。」欄3行目から6行目)(e)「このように本発明方法においては従来困難とされて来たナイロン6あるいはナイロン66の逐次2軸延伸が容易にできるようになったという効果の他本発明で得られたフィルムはすぐれた透明性機械的性質,耐熱性,耐寒性,耐薬品性,気体遮断性,水分遮断性,柔軟性と改良された耐水性,耐湿性とを併せ有する今までに知られていなかったフィルムであり(5欄12行目から19行目)」b上記記載によれば,本件発明⑲は「ε-カプロアミド単位を分子鎖中に8,0モル%以上含有するポリアミド又は/及びヘキサメチレンアジポアミド単位を80モル%以上含有するポリアミド(A成分ポリアミド)50~97重量%と吸水率が1.0%以下の値を有する脂肪族系ポリアミド(B成分ポリアミド)50~3重量%とから成る重合体混合物」を原料樹脂とし,これから逐次2軸延伸法により延伸フィルムを製造する方法の発明であるが,従来,A成分ポリアミドであるナイロ- 44 -ン6あるいはナイロン66等単独では困難とされていた逐次2軸延伸を,B成分ポリアミドフィルムを混合することにより容易に可能にするとともに,これにより得,,, リアミドであるナイロ- 44 -ン6あるいはナイロン66等単独では困難とされていた逐次2軸延伸を,B成分ポリアミドフィルムを混合することにより容易に可能にするとともに,これにより得,,,,,,られた延伸フィルムはすぐれた透明性機械的性質耐熱性耐寒性耐薬品性気体遮断性,水分遮断性,柔軟性と改良された耐水性,耐湿性とを併せ有するものであるところに特徴がある発明であると認められる。 cしかるところ,上記イ(エ)によれば,本件発明⑲は,その特許明細書に記載された唯一の実施例を追試したところ,Tダイから溶融押出される無定形溶融シートが激しく波打って吐出し,チルロール表面上に均一に密着させることが全くできなかったというのであるから「延伸ポリアミドフィルムの製造法」に関する同発,明の出願前に,出願内容に関して果たしてその実施が可能であることを確認する実験が行われたのか疑わしいところである。 また,控訴人が主張する出願経緯は,昭和51年4月ころ,ONyフィルムが逐次延伸で容易に得られることをEらが見出したのを知り,取り急ぎ特許出願用の原稿シートを自主的に勤務時間外に作り,まず本件発明⑬,⑮ないし⑱に関する発明を昭和51年5月に出願し,これをベースに分析センターのMや,フィルム研究室Nにも含環ポリアミドを含む特許出願を依頼し,昭和51年8月に本件特許⑪及び同⑲を出願したというのである。しかしながら,上記主張を裏付ける客観性のある証拠はない上,まず本件特許⑬,⑮ないし⑱について,わずか1か月ほどの期間にフィルムの製造実験を行い,好ましい原料組成や製膜条件等を検討することができたとは到底推認することはできないし,本件特許⑲については,控訴人によれば,控訴人とN以外は誰の関与もなかったので即決で方針や中味の変更をし,出願に時間もか 原料組成や製膜条件等を検討することができたとは到底推認することはできないし,本件特許⑲については,控訴人によれば,控訴人とN以外は誰の関与もなかったので即決で方針や中味の変更をし,出願に時間もかからなかったというのであるから,同特許についても,フィルムを製造する実験を行い,好ましい原料組成や製膜条件等を検討した上で出願したとはにわかに認めることができない。 - 45 -さらに,本件においては,特定ダイアミドが本件発明⑲の特許請求の範囲のB成分ポリアミドであるか否かに争いがあるものの,特定ダイアミドがB成分ポリアミ,,ドでなければN2100の製造方法は本件発明⑲の実施に該当しないのであってその対価請求権が時効により消滅していることは明らかである。そこで,ここではひとまず,特定ダイアミドが本件発明⑲の特許請求の範囲において規定するB成分ポリアミドに該当すると仮定すると,特定ダイアミド3重量%を,ナイロン6樹脂97重量%に配合した原料樹脂の配合割合は,本件発明⑲の特許請求の範囲における数値限定の範囲内であるが,これとナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものを本件特許⑲の明細書に記載の製造法によって逐次2軸延伸した前記実験の結果によれば,前者の方が後者よりも逐次二軸延伸が容易になるという効果が認められなかったのであり,しかも,前記のとおり,唯一の実施例の追試実験においても逐次2軸延伸ができなかったことが認められる。そして,本件特許⑲の明細書には,実施例の記載のほかに,発明のフィルム製造法に関する説明が記載されている(甲3の19の4欄14行目から36行目)ものの,これは逐次2軸延伸法によるフィルム製造法の一般的な説明に過ぎないから,実施例の記載以上に本件発明⑲に係るフィルム製造法の製造条件等を示唆するものではない。 以上を総合すると,本件特 6行目)ものの,これは逐次2軸延伸法によるフィルム製造法の一般的な説明に過ぎないから,実施例の記載以上に本件発明⑲に係るフィルム製造法の製造条件等を示唆するものではない。 以上を総合すると,本件特許⑲の明細書には,上記の特定ダイアミド3重量%を混合した原料樹脂を用いた場合に,ナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものよりも逐次二軸延伸性を向上させることのできるとの技術事項が開示されていると認めることは困難である。 したがって,仮に,特定ダイアミドが本件特許⑲の特許請求の範囲にいうB成分ポリアミドであったとしても,本件特許⑲の明細書には,当業者が明細書記載の効果を生じさせることのできる製造条件等に関する技術事項の記載がないか,そうでなければ,その発明の構成を採用することによる効果を記載せず,それ以外の効果- 46 -を記載したものと認められるから,本件特許⑲の明細書は,平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という)36条4項の「前項第3号。 の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない」との規定に違反したものというべきであり,本件特。 許⑲には無効理由が存在するものと認められる(旧特許法123条1項3号。 )(イ)本件特許⑪の明細書の実施可能要件充足性についてa本件特許⑪の明細書には,次の記載がある(甲3の11。 )(a)「本発明の目的は,二軸延伸ポリアミドフィルムの工業的に有利な製造方法,さらに詳しくはα型脂肪族ポリアミドを主成分とするポリアミドフィルムの逐次二軸延伸方法を提供することにある(2欄5行目から8行目)。」(b)「ナイロン6,ナイロン66などの脂肪族ポリアミドは逐次 らに詳しくはα型脂肪族ポリアミドを主成分とするポリアミドフィルムの逐次二軸延伸方法を提供することにある(2欄5行目から8行目)。」(b)「ナイロン6,ナイロン66などの脂肪族ポリアミドは逐次二軸延伸によっては均一な延伸フィルムを製造することが困難であることはよく知られている」(2欄14行目から17行目)(c)「従来逐次二軸延伸が工業的には困難であるとされている脂肪族ポリアミドは,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610のような後述する結晶化条件でα型(またはβ型)結晶を形成する脂肪族ポリアミド・・・であって,ナイロン6・9,ナイロン7・7,ナイロン12のように後述する結晶化条件でγ型結晶を形成する脂肪族ポリアミド・・・は容易に逐次二軸延伸できることが判明し(3欄」8行目から17行目)(d)「本発明のα型脂肪族ポリアミドが97%以下少くなる程・・・一方向,延伸特に縦延伸膜の結晶面の膜面への規則的な配列は妨げられ,直角方向,特に横方向への延伸性が著しく改善され・・・特殊な製造法を採用することなく逐次二,軸延伸が可能になることが明らかになった(4欄16行目から24行目)。」- 47 -(e)「本発明の方法を用いれば,主としてα型脂肪族ポリアミドよりなる二軸延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸法を用いて工業的に容易に製造することができ,ナイロン6,ナイロン6・6など二軸延伸フィルムの特長であるすぐれた透明性,機械的強度,柔軟性,ガス遮断性,耐熱性,低温衝撃強度を備えたフィルムを得ることができる(5欄14行目から20行目)。」b上記記載によれば,本件発明⑪は「α型脂肪族ポリアミド(またはそれら,のポリアミド混合物)97~80(重量)%と(1)γ型脂肪族ポリアミドまたは/および(2)非晶性脂肪族ポリアミドまたは 。」b上記記載によれば,本件発明⑪は「α型脂肪族ポリアミド(またはそれら,のポリアミド混合物)97~80(重量)%と(1)γ型脂肪族ポリアミドまたは/および(2)非晶性脂肪族ポリアミドまたは/および(3)キシリレンジアミン残基を分子鎖中に70モル%以上含有しない含環ポリアミド3~20(重量)%とを混合したポリアミド混合物(請求項1)及び「α脂肪族ポリアミド(またはそれらの」【】ポリアミド混合物)97~80(重量)%とポリアミド以外の熱可塑性ポリマー3~20(重量)%の重合体混合物(請求項2)を原料樹脂とし,これらから逐」【】次2軸延伸法により延伸フィルムを製造する方法の発明であるが,従来,α型脂肪族ポリアミドであるナイロン6,ナイロン6・6等単独では困難とされていた逐次2軸延伸を,原料樹脂にγ型脂肪族ポリアミド等を混合することにより容易に可能とするとともに,こうして得られた延伸フィルムがすぐれた透明性,機械的強度,柔軟性,ガス遮断性,耐熱性,低温衝撃強度を備えるものであるところに特徴がある発明であると認められる。 cしかるところ,前記のとおり,被控訴人がその明細書記載の実施例のうちの一つ(実施例1)を追試実験したところ,縦延伸はできたものの,横延伸工程ではフィルムが破断し,逐次二軸延伸することができなかったものである。また,控訴人は,本件特許⑪については,Mに本件特許⑬,⑮ないし⑱の特許出願や,ホットメルト接着剤や透明ナイロンの研究開発での知見を基に,・A(CL/Ny66塩/LL=30/30/40重量%)- 48 -・B(CL/Ny610塩/TMD10塩=30/30/40重量%)・C(TMD-T)・D(Ny6/6T塩/6I塩=10/10/80重量%)・E(CL/Ny66塩/MBCA6塩=30/35/35重量%)・ L/Ny610塩/TMD10塩=30/30/40重量%)・C(TMD-T)・D(Ny6/6T塩/6I塩=10/10/80重量%)・E(CL/Ny66塩/MBCA6塩=30/35/35重量%)・F(CL/CBM6塩=13/87重量%)の案を提示したと主張するのであるが,控訴人の主張する経緯によっても,本件特許⑪の出願前に,控訴人がフィルムを製造する実験を行い,好ましい原料組成や製膜条件等を検討したとの説明は一切なく,かつ,そのような実験をしたことを示す証拠もないさらにMの陳述書乙111においても犬山工場の破断試料実。 ,(),(施されたF特許によるものと思われる)のサンプル収集を依頼し,研究の結果,。 破断の原因を究明したことについての説明はあるものの,更にフィルムを製造する実験を行った上で好ましい原料組成や製膜条件等を検討したとの具体的記述はない。 以上によれば,本件特許⑪の出願に当たり,その発明の実施可能性についての出願内容の裏付けとなる実験が行われたものとは認めることができないのであって,そもそも,本件特許⑪の特許請求の範囲の数値の範囲内の組成である原料樹脂を組み合わせることによって,本件特許⑪の明細書に記載された効果を奏することができるとの点は,明らかではないといわざるを得ない。 ,,,そして本件特許⑲の明細書の実施可能要件について検討したのと同様に仮に特定ダイアミドが本件特許⑪の特許請求の範囲に規定されるブレンド成分であるとすると,ナイロン6樹脂97重量%に特定ダイアミドを3重量%混合した原材料樹脂は,本件発明⑪の特許請求の範囲における数値限定の範囲内であるが,これとナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものを本件特許⑪の明細書に記載の製造法によって逐次2軸延伸した前記実験の結果によれば,前者の方が後 件発明⑪の特許請求の範囲における数値限定の範囲内であるが,これとナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものを本件特許⑪の明細書に記載の製造法によって逐次2軸延伸した前記実験の結果によれば,前者の方が後者よりも逐次二軸延- 49 -伸が容易になるという効果が認められなかったのであり,しかも,前記のとおり,実施例1の追試実験においても逐次2軸延伸ができなかったことが認められる。そして,本件特許⑪の明細書には,実施例1の記載のほかに,実施例2ないし5が記載されているが,製造条件は実施例1と同一であり(甲3の11の第3表ないし第8表,また,実施例のほかに,発明のフィルム製造法に関する説明が記載されて)いる(甲3の11の6欄37行目から7欄35行目)が,これは逐次2軸延伸法によるフィルム製造法の一般的な説明に過ぎないから,実施例の記載以上に本件発明⑪に係るフィルム製造法の製造条件等を示唆するものではない。 以上を総合すると,本件特許⑪の明細書には,上記の特定ダイアミド3重量%を混合した原料樹脂を用いた場合に,ナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものよりも逐次二軸延伸性を向上させることができるとの技術事項が開示されていると認めることは困難である。 したがって,仮に,特定ダイアミドが本件特許⑪の特許請求の範囲にいうブレンド成分であったとしても,本件特許⑪の明細書には,当業者が明細書記載の効果を生じさせることのできる製造条件等に関する技術事項の記載がないか,そうでなければ,その発明の構成を採用することによる効果を記載せず,それ以外の効果を記載したものと認められるから,本件特許⑪の明細書は,旧特許法36条4項の「前項第3号の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的, から,本件特許⑪の明細書は,旧特許法36条4項の「前項第3号の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成。」,及び効果を記載しなければならないとの規定に違反したものというべきであり本件特許⑪には無効理由が存在するものと認められる(旧特許法123条1項3号」)。 (14)原判決163頁7行目から同14行目までを,次のとおり改める。 「しかしながら,被控訴人がN2100を製造販売したことにより得た利益のう- 50 -ちに,本件特許⑪及び⑲の存在による独占の利益があるか否かを検討するに当たっては,被控訴人のN2100とユニチカのN2100相当品の製造コストを比較する必要があるところ,被控訴人の採用する製造方法がユニチカと比較して1kg当たりで約118円のコスト削減を図ることが可能であったとの上記資料の記載は,1985年(昭和60年)時点における外部調査によるものであり,被控訴人がN2100の生産を開始したのは昭和61年11月ころであるから,被控訴人のN2100とユニチカのN2100相当品の製造コストを比較するものでないことは明らかである。 したがって,上記資料によって,被控訴人のN2100の製造コストがユニチカのN2100相当品のそれよりも優れていたとは認められず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない」。 (15)原判決170頁6行目の「できなず」を「できず」と改める。 (16)原判決171頁15行目から同18行目までを,次のとおり改める。 「なお,控訴人は,乙17通知の内容を了知していなかった旨主張するが,本件特許取扱規定第10条及び特許表彰規定は被控訴人の就業規則の一部若しくはこれに関連する規定であり,乙17通知はその運用を定 。 「なお,控訴人は,乙17通知の内容を了知していなかった旨主張するが,本件特許取扱規定第10条及び特許表彰規定は被控訴人の就業規則の一部若しくはこれに関連する規定であり,乙17通知はその運用を定める通知文書であるから,被控訴人において,既に被控訴人を退職していた控訴人に対して乙17通知を周知させる義務があったとは認められない。さらに,前記のとおり,乙17通知と特許表彰規定と矛盾する点については,特許表彰規定の文言のとおり登録日を基準に適用することとしたから,控訴人に損害が発生しているとはいえない」。 (17)原判決171頁21行目から同22行目にかけての「原告は,被告における特許表彰制度の評価基準が公平さを欠くと主張し,これが不法行為に該当すると主張するので,以下検討する」を次のとおり改める。 。 - 51 -「控訴人は,被控訴人における特許表彰制度の評価基準が公平さを欠くと主張し,これが不法行為に該当すると主張する。 ところで,前記のとおり,本件特許①ないし④については本件特許取扱規定が制定される前に登録が抹消され,本件特許表彰制度の適用がないから,これらの特許に本件特許表彰制度が適用されることを前提とする不法行為の主張は失当というべきである。 また,控訴人において防衛のために出願されたと主張する本件特許⑧,⑬,⑮ないし⑱及び⑳についても,本件特許表彰制度の選考対象特許となる要件を欠くものであるから,同制度の適用対象とはならず,したがって,同制度の適用を前提とする不法行為の主張は理由がない。 さらに,本件特許⑤,⑥については,前記のとおり,出願公告年を基準としても登録年を基準としても本件特許表彰制度の適用対象とはならないから,上記と同様の理由により,これらの特許に係る不法行為の主張は失当である。 したがって,本件特許①ないし⑥, り,出願公告年を基準としても登録年を基準としても本件特許表彰制度の適用対象とはならないから,上記と同様の理由により,これらの特許に係る不法行為の主張は失当である。 したがって,本件特許①ないし⑥,⑧,⑬,⑮ないし⑱及び⑳に係る不法行為の成否については,さらに検討するまでもないが,控訴人の主張に鑑み,以下のとおり判断する」。 当審における控訴人の主張に対する判断(1)選考対象特許の要件についてア控訴人は,選考対象特許となるために10月11日の時点で特許権が存続している必要はないと解するのが合理的であり,被控訴人における運用の実情にも沿う解釈であると主張する。 しかしながら特許表彰規定4条①は選考対象特許となるための要件として登,,「録されていること」と規定しているのであるから,その文理上,選考会による選考時に登録されていることが必要であると解するのが合理的であるし,また,同規定- 52 -,,,7条には選考会は年1回10月中旬に開催すると定められているのであるから上記登録要件の基準時となるべき選考会による選考時とは,選考会が開催される10月中旬を意味し,これを更に特定するために,具体的な基準日は10月中旬の開始日である10月11日であると解することは,同規定の文言に沿う自然な解釈であるというべきである。 ,。 ,したがって本件特許表彰制度に関する原判決の解釈に不合理な点はないなお本件特許表彰制度の原則的な運用及び例外的な取扱いを考慮しても,上記解釈が相当であることは前記説示のとおりである。 イ控訴人は,被控訴人における運用の実情として,表彰された特許には選考会開催時に特許権が消滅していたものが多数あり,その具体例として,別紙1のBの発明に係る特許及び別紙2のCの発明に係る特許がある旨主張する。 (ア)証拠( る運用の実情として,表彰された特許には選考会開催時に特許権が消滅していたものが多数あり,その具体例として,別紙1のBの発明に係る特許及び別紙2のCの発明に係る特許がある旨主張する。 (ア)証拠(甲94,●●●●,乙●●●)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,これに反する証拠はない。 aBは,自らの発明に係る特許について,次のとおり,本件特許表彰制度に基づき表彰を受けた。 (a)平成4年度の表彰特許第●●●●●●●号(乙●●●)特許第●●●●●●●号(甲●●●●)特許第●●●●●●●号の権利満了日は平成●●年●月●●日であり,特許第●●●●●●●号の権利満了日は平成●●年●●月●●日であるから,これらは本件特許表彰制度の原則的な運用により選考対象特許となる。 (b)平成5年度の表彰特許第●●●●●●●号(甲●●●●)特許第●●●●●●●号(甲●●●●)特許第●●●●●●●号は,平成●年●月●●日に公告から15年経過したことにより,存続期間が満了となって登録抹消された。ところで,被控訴人は,自社の- 53 -特許管理のためコンピュータのデータベースを利用しているが,何らかの理由により,データベース上,上記特許の存続期間満了日を出願日から20年後の平成●年●月●●日と入力してしまった。この入力ミスにより,上記特許は平成5年度の選考対象特許の集計を行った同年3月末から6月末の間に権利が存続しているものとして取り扱われたため,同年度の選考対象特許とされ,表彰されることとなった。 また,特許第●●●●●●●号の存続期間満了日は平成●●年●●月●●日であるから,前記(a)と同様に選考対象特許となる。 (c)平成8年度特許第●●●●●●●号(甲●●●●)特許第●●●●●●●号(甲●●●●)前記のとおり,特許第●●●●●●●号 年●●月●●日であるから,前記(a)と同様に選考対象特許となる。 (c)平成8年度特許第●●●●●●●号(甲●●●●)特許第●●●●●●●号(甲●●●●)前記のとおり,特許第●●●●●●●号の存続期間満了日は平成●●年●●月●●日であるから,前記(a)と同様である。 ,,また特許第●●●●●●●号の存続期間満了日は平成●年●月●●日であるがこれは特許料不納付によるものであり,本来の存続期間満了日は出願日から20年後の平成●年●月●●日であることから,前記認定の本件特許表彰制度の例外的な取扱いにより,平成8年度の選考対象特許とされ,表彰されることとなった。 bCは,自らの発明に係る次の特許について,本件特許表彰制度に基づき平成11年度の表彰を受けた。 特許第●●●●●●●号(甲●●●●)同特許の存続期間満了日は平成●●年●月●日であることから,前記認定の被控訴人における原則的運用により,平成11年度の選考対象特許とされ,表彰されることとなった。 ,()()(イ)控訴人はBが別紙1G記載の特許第●●●●●●●号甲●●●●について,本件特許表彰制度に基づき,平成8年度,同11年度及び同14年度に3回連続して表彰されたと主張し,甲第94号証にはこれに沿う記載(ただし,平成11年度及び同14年度について)があるが,上記特許は,平成元年に出願公告- 54 -されたものであり,これが選考対象特許となり得るのは平成4年度,同7年度及び同9年度であって,平成8年度,同11年度及び同14年度ではないから,上記主張を認めることはできない。 (ウ)以上に認定したところによればBは平成5年度に被控訴人のデータベー,,スの入力ミスにより本件特許表彰制度に基づく表彰を受けたこと及び平成8年度に本件特許表彰制度の例外的な取扱いによ い。 (ウ)以上に認定したところによればBは平成5年度に被控訴人のデータベー,,スの入力ミスにより本件特許表彰制度に基づく表彰を受けたこと及び平成8年度に本件特許表彰制度の例外的な取扱いにより表彰を受けたことは認められるが,これらの事例をもって直ちに本件特許表彰制度により表彰された特許には選考会開催時に権利が消滅していたものが多数あったとまで推認することは困難であり,本件証拠を検討しても他にこれを推認させるに足りる事情は窺われない。 したがって,控訴人の主張は採用できない。 (エ)さらに,控訴人は,本件特許表彰制度において,評価対象期間後に特許権が消滅し,次の評価対象とされない特許について,最後の特許表彰の時点から特許権消滅までの期間の実績に対する相当の対価も最後の実績補償の支払時期に合わせて支給されることを予定しているとした原判決の判断が不当であると主張する。 しかしながら,本件特許表彰制度は,選考会開催時に登録されている特許を3年ごとに選考対象とし過去3年間の実績を評価して表彰する制度であるとの解釈こ,(れが合理的な解釈であることは前記説示のとおりである)を前提とするならば,。 ,,評価対象期間後に特許権が消滅し次回の選考対象特許とならない特許については原判決の判示するように最後の評価対象期間後,特許権が消滅するまでの間の実績に対する相当の対価も最後の実績補償の支払時期に合わせて支給されることを予定しているものと解するのが合理的であるから,原判決の判断に不当な点はない。 (2)本件特許⑪及び⑲の無効理由についてア被控訴人の提出した実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について(ア)控訴人は,被控訴人の提出した実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について,原 出した実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について(ア)控訴人は,被控訴人の提出した実験成績報告書(乙37の1,2,39の1,2,101ないし103)について,原反を作る際,Ny6とブレンド成分と- 55 -の混練が不十分であると延伸してもフィルムが裂ける原因となるため,光透過度を積分球式光線透過率測定装置で測定して透明度を確認するとともに,ブレンド物質の粒子径及び分散状態を顕微鏡で確認することが必要となるが,上記実験成績報告書には,原反の光透過度に関するデータ及びブレンド物質の粒子径及び分散状態を確認する顕微鏡写真が一切添付されていないから,このような裏付けデータを欠く実験結果に全面的に依拠して本件特許⑪及び同⑲に無効理由があるとした原判決の判断は不合理であると主張する。 そこで検討すると,本件特許⑪の明細書には「本発明における重合体の混合方法には特に制限はないが,通常はチップ状の各成分をⅤ字型プレンターなどを用いて混和した後,溶融し,成形する方法が用いられる。本発明方法では,未延伸フィルムはTダイ法,インフレーション法等の溶融法で製造される。これは実質上無配向のフィルムであり,たとえば溶融法でTダイによりフィルムを製造する場合にはフィルム材料を該材料の融点以上に加熱し,Tダイからフィルム状に押出し,ロール。」(),または溶液で冷却して製造する甲3の11の6欄37~7欄2行と記載され本件特許⑲の明細書には「A成分ポリアミドとB成分ポリアミドとを混合する方法は特に制限はないが通常はA成分ポリアミド,B成分ポリアミドの粉末又はチップを固態状で混合した後溶融押出機などを用いて加熱溶融することによって均一に混合した組成物を得ることができる。本発明方法は上記混合ポリアミド樹脂から先ず未延伸フィルム B成分ポリアミドの粉末又はチップを固態状で混合した後溶融押出機などを用いて加熱溶融することによって均一に混合した組成物を得ることができる。本発明方法は上記混合ポリアミド樹脂から先ず未延伸フィルムを作成しこれをフィルム面に沿って一方向に延伸する。未延伸フィルムは通常A成分ポリアミドとB成分ポリアミドとからなる重合体混合物を押出機を用いて加熱溶融しTダイ又は円形ダイを通して押出し冷却したロール,液体,又は気体と接触させ固化して得られる・・・かくして得られた未延伸フィルムをイ。 ンフレーション法で或いはロール延伸機で或はクリップで把持してテンター内で一方向に延伸して一軸延伸フィルムが得られる(甲3の19の4欄15~31行)。」と記載されているのみであり,混合樹脂から製造された未延伸フィルムの光透過度を測定することや顕微鏡により粒子径及び分散状態を確認することなどは一切記載- 56 -されていないことはもとより,これらの測定や確認を行った場合にそれを評価する指標となるべき数値等の記載もないのであるから,上記明細書の記載は,当業者が周知・慣用の手段を用いて行うこと以上に未延伸フィルムに関する測定,確認等を示唆するものではないといわざるを得ない。 したがって,控訴人の前記主張は,明細書に記載された実施例の追試実験について同明細書に記載された以上の実験条件を求めることに他ならないから,失当というべきである。 (イ)控訴人は,前記実験成績報告書のうち,乙第37号証の1及び乙第39号証の1は,被控訴人の内部でのみ作成されたものであり,また,乙第101号証ないし第103号証の作成については,控訴人に対して何の打診もなく,また,大学,,教授を立会人に選定しているが被控訴人と利害が一致する人物とみなされるからこのような状況の下で作成された実験成績 ないし第103号証の作成については,控訴人に対して何の打診もなく,また,大学,,教授を立会人に選定しているが被控訴人と利害が一致する人物とみなされるからこのような状況の下で作成された実験成績報告書では,被控訴人に不都合な事象については隠蔽することが可能であり,客観性が乏しく,これら実験成績報告書には証拠力は全くないと主張する。 しかしながら,これらの実験成績報告書は,本件特許⑪及び⑲の各明細書記載の実施例に基づいて行われた実験に関するものであり,実験の手順,条件,使用した材料,機器,得られたデータ等が具体的に記載されていること,確かに,乙第37号証の1及び乙第39号証の1の各実験成績報告書は,控訴人の指摘するように被控訴人の内部の者のみによって行われた実験の報告であるが,これらについては,第三者である大学教授が立会人となって再度,実験を行い,乙第101,102号証のとおり報告されており,立会人である大学教授が被控訴人と利害関係を有する者であることを示す証拠はないこと,乙第103号証についても同じ大学教授が立会人となっていること等の事実に照らすならば,本件特許⑪及び⑲の発明者の一人として実施例の内容を熟知しているはずの控訴人において,上記実験成績報告書の記載の誤りをその記述に即して具体的に指摘するならばともかく,単に抽象的に客観性が乏しいと主張するのみでは,同実験成績報告書の証明力に疑いを差し挟む理- 57 -由とはなり得ないというべきである。 (ウ)控訴人は,乙第37号証の1の実験について,本件特許⑪の明細書に開示した実施例では,ブレンド成分の混合量が5,10,20重量%で,押出し温度は275℃であり,本件特許⑲の明細書の実施例では,混合量が40重量%で押出し温度は270℃であるのに対し,乙第37号証の1の実験では,ブレンド成 ンド成分の混合量が5,10,20重量%で,押出し温度は275℃であり,本件特許⑲の明細書の実施例では,混合量が40重量%で押出し温度は270℃であるのに対し,乙第37号証の1の実験では,ブレンド成分の混合量がナイロン6樹脂97重量%に特定ダイアミド3重量%の一点のみで押出し温度が280℃であるほか,縦延伸(MD延伸)条件や横延伸(TD延伸)条件の最適化を一切行っておらず,このように,一点のみの条件での相対比較を行った実験で差がないという結論を下すことは誤りであると主張し,その理由として,溶融押出し装置により溶融混合状態が異なるのであるから,温度を変えて押し出した原反の透明性を光透過度で確認し,顕微鏡観察で粒子径及び分散状態を確認し,MD延伸条件(温度と延伸倍率)を変えて面配向指数を測定し,次いでTD延伸条件(温度と延伸倍率)を変えた実験をすれば,特定ダイアミドを混合した方が延伸がし易くなる適正条件が得られるはずだからであると主張する。 しかしながら,乙第37号証の1によれば,同号証の実験は,本件特許⑪及び⑲の各明細書に記載された製造条件の範囲内で,MD延伸温度及びTD延伸温度をいずれも複数設定して行われたことが認められるから,控訴人の上記主張は前提を欠くものである。 また,控訴人は,延伸し易い適正条件を得るために原反の光透過度の確認並びに粒子径及び分散状態の顕微鏡観察が必要であると主張するが,前記説示のとおり,これは明細書に記載された以上の実験条件を求めることになるから失当である。 したがって,控訴人の主張を採用することはできない。 (エ)控訴人は,①乙第39号証の1の実験において,透湿度及び濡れ張力(耐水性)について,Ny6樹脂97重量%にダイアミド3重量%混合した試料BとNy単体の試料Cは同等であるとされたが,吸水率1%以下の疎水性 人は,①乙第39号証の1の実験において,透湿度及び濡れ張力(耐水性)について,Ny6樹脂97重量%にダイアミド3重量%混合した試料BとNy単体の試料Cは同等であるとされたが,吸水率1%以下の疎水性のポリアミドの混合割合が3%程度では当然である,②本件特許⑲の特許請求の範囲は,吸水率が- 58 -1%以下の疎水性のポリアミドを3~50重量%混合して破断強度5kg/m㎡以上のONyフィルムを得るONyフィルムの製造法であり,混合比を大きくすれば耐水性の改良効果もあると謳ってあるが,耐水性については,あくまで副次的な効果であり,耐水性について数値化して特許請求している訳ではないから,耐水性の改良効果についての本件特許⑲の再現性を取り上げてみても余り意味がないと主張する。 そこで検討すると,前記のとおり,本件特許⑲の明細書には「このように本発,明方法においては従来困難とされて来たナイロン6あるいはナイロン66の逐次2軸延伸が容易にできるようになったという効果の他本発明で得られたフィルムはすぐれた透明性機械的性質,耐熱性,耐寒性,耐薬品性,気体遮断性,水分遮断性,柔軟性と改良された耐水性,耐湿性とを併せ有する今までに知られていなかったフィルムであり(5欄12行目から19行目)と記載されており,耐水性の改良は」本件発明⑲による効果とされているのであるから,控訴人の主張は,発明の構成を備えるにもかかわらず,明細書記載の効果を奏しないことが当然であるというに等しく,明細書の記載不備を自認したものといわざるを得ない。 したがって,控訴人の主張は,乙第39号証の1の実験に対する反論とはなり得ず,採用の限りではない。 (オ)控訴人は,乙第101号証の実験条件について,本件特許⑪ではNy6の粘度が3.10であるのに対し,乙第101号証では粘度2.80で 証の1の実験に対する反論とはなり得ず,採用の限りではない。 (オ)控訴人は,乙第101号証の実験条件について,本件特許⑪ではNy6の粘度が3.10であるのに対し,乙第101号証では粘度2.80であり,本件特許⑪では押出し温度が275℃であるのに対し,乙第101号証では270℃であって必ずしも本件特許⑪の条件には一致しておらず,また,延伸性の評価が,本件特許⑪では48時間延伸製膜した間に起こる横延伸での破断回数を示しているのに対し,乙第101号証では延伸性の評価基準がなく,単に○,△,×で示しているに過ぎないと主張し,さらに,面配向指数について,唯一正確な評価がされている面配向指数の値がいずれも1.0前後であり,通常は横延伸に対して極めて好ましい面配向指数値なのに,すべて延伸性は不良(×)と評価され,正常な評価ができ- 59 -る状態でなかったことを示しており,しかも1と7,2と8,,実験##実験##4と9,5と10の面配向指数が完全に一致しているのも偶然にして同##同##は不自然であり,正確な実験ではない証拠であると主張する。 そこで検討すると,まず,実験条件の不一致の点については,乙第101号証によれば,同号証の実験は,本件特許⑪の明細書に記載された製造条件の範囲内で,MD延伸温度及びTD延伸温度をいずれも複数設定して行われたものであることが認められるから,明細書の製造条件の範囲内である以上,実験条件が完全に一致していないとしても,実施例が発明の作用効果を奏するかどうかを確認する実験として相当性を欠くということはできない。 また,延伸性の評価基準がないとの点については,乙第101号証には「逐次,二軸延伸のし易さは上記横延伸工程でのフィルムの破断現象の頻度から下記の3水準で判定する」として「破断無く安 とはできない。 また,延伸性の評価基準がないとの点については,乙第101号証には「逐次,二軸延伸のし易さは上記横延伸工程でのフィルムの破断現象の頻度から下記の3水準で判定する」として「破断無く安定してフィルムを製膜できる・・・○,破断。 ,は発生するが製膜できる・・・△,全く製膜できない・・・×」と記載されているから「○,△,×」との評価が評価基準に基づかないということはできない。 ,さらに,面配向指数の点については,乙第101号証の実験は,明細書の記載内容を確認するために行われたのであるから,明細書の記載内容が正しいことを前提実験#として実験内容を非難しても意味がないと言わざるを得ず,また,確かに,1と7,2と8,4と9,5と10の面配向指数が一致し#実験##同##同##実験##ているが,面配向指数は縦一軸延伸フィルムを測定したものであり,1と7,2と8,4と9,5と10は,いずれも同一組成の原料実験##同##同##樹脂から同一の製膜条件で縦一軸延伸フィルムを製造したものであるから,その面配向指数が一致しているとしても,必ずしも不自然であるとまでいえない。 なお,控訴人は,Ny6の結晶化を阻害するポリアミドを混合するより,Ny6単独の方が通常の冷却法においても延伸性が良いというような理論的にあり得ない結論が出された乙第101号証の実験は信憑性がないとも主張するが,これは,結局,自らの見解に基づいて乙第101号証の実験結果を非難するに過ぎず,同実験- 60 -結果についての信用性に疑いを差し挟む理由となり得ないものである。 したがって,控訴人の主張は採用できない。 (カ)控訴人は,乙第102号証の実験結果において,MD延伸温度60℃,TD延伸温度135℃の1水準で特定ダイア 疑いを差し挟む理由となり得ないものである。 したがって,控訴人の主張は採用できない。 (カ)控訴人は,乙第102号証の実験結果において,MD延伸温度60℃,TD延伸温度135℃の1水準で特定ダイアミド3重量%を混合した試料A,Ny6単独の試料Bが共に良好な延伸性を示すとの結果が得られたが,本件特許⑲の特徴として掲げたONyフィルムの低透湿性は試料Aと試料Bでは変らないと評価されていることについて,本件特許⑲では,ブレンド成分の量を吸水率1%以下の低水分率のポリアミド3~50重量%とし,延伸フィルムが水分透過性,柔軟性と改良された耐水性,低透湿性を併せ有することを謳っているが,これらの付加価値は必須ではないし,ブレンド成分の量に左右されることは自然の法則であるから,3重量%のブレンド量では延伸性は得られても上記の付加価値までは得られないのは明らかであり,それ故に耐水性については特許請求の範囲には入れておらず,ブレンド成分の量を本件特許⑲の実施例のように40重量%とすれば,透湿度の低下が見られることも明らかであると主張する。 そこで検討するに,前記(エ)で説示したとおり,耐水性の改良は本件発明⑲の効果とされているのであるから,控訴人の主張は,発明の構成を備えているにもかかわらず,明細書記載の効果を奏しないことが当然であるというに等しく,明細書の記載不備を自認したものといわざるを得ず,採用の限りではない。 さらに,控訴人は,本件特許⑲は,吸水率1%以下のポリアミドを3~50重量%ブレンドして遂次二軸延伸フィルムを製造する方法の発明であり,吸水率1%以下という明確な基準があるから,実施可能要件を充足していないということはあり得ないと主張するが,本件では,発明の構成を備えているにもかかわらず,明細書記載の効果を奏しないとして明細書の記載要件の充足 下という明確な基準があるから,実施可能要件を充足していないということはあり得ないと主張するが,本件では,発明の構成を備えているにもかかわらず,明細書記載の効果を奏しないとして明細書の記載要件の充足性が争われているのであるから,特許請求の範囲において吸水率1%以下との点が明示されていると主張するだけでは,乙第102号証の実験結果及びそれに基づく明細書の記載要件の充足性に関する判断に対する的確な反論とはなり得ないというべきである。 - 61 -したがって,控訴人の主張は採用できない。 (キ)控訴人は,乙第103号証の実験条件について,本件特許⑲の明細書に記載された実施例のNy6の相対粘度は3.10であり,Ny12の相対粘度は2. 50であるのに対し,2では,Ny6の相対乙第103号証の実験における実験#粘度は3.10で一致するものの,Ny12の相対粘度は3.27と大きく離れており,忠実に同一条件で追試したことにはならないと主張する。 しかしながら,乙第103号証の実験に使用されたNy12は宇部興産製のUBESTA3030XAであるが,これは宇部興産が押出しフィルム用に市販している一般的なNy12であるところ(乙146,弁論の全趣旨,本件特許⑲の明細)書においてはNy12の相対粘度を特定の範囲に限定した記載はないことからすれば,このような一般的なNy12を使用した乙第103号証の実験が不適切なものであるということはできない。 また,控訴人は,特許は最適条件を含む条件をある程度拡げて出願するので,その中の実施例は必ずしも最適条件とは限らないが,実験#2のように,不透明で不均一の未延伸フィルムから延伸フィルムを作成する実験など乙第103号証の追試実験は最初から不成功を狙ったものであり,総体的にどこかに適正条件を外した実験になっているように思 #2のように,不透明で不均一の未延伸フィルムから延伸フィルムを作成する実験など乙第103号証の追試実験は最初から不成功を狙ったものであり,総体的にどこかに適正条件を外した実験になっているように思われると主張する。 しかしながら,本件特許⑲の明細書の実施例が最適条件のものでないとしても,同実施例は発明の構成を備えているのであるから,実施例どおりの実験をしても明細書記載の効果を奏しないというのであれば,結局,明細書の記載に不備があることに変わりはない。 さらに,控訴人は,乙第101号証から乙第103号証の実験項数は合計14項目あり,その中で組成比,押出温度,冷却法,MDとTD延伸条件を変えた実験を平成18年4月20日,25日の2日間で済ませることは物理的に不可能であり,形だけで手抜きした粗雑な実験に終った可能性が高いと言わざるを得ないと主張するが,これは単に控訴人の憶測を述べたに止まり,何ら具体的な裏付けを伴ったも- 62 -のとはいい難い主張であり,上記各実験の信用性に対する反論となり得えないものである。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 イ本件特許⑪の明細書の内容について控訴人は,本件特許⑪の明細書の実施例に記載されたブレンド成分AないしFについて,延伸性賦与に最も効果が現れる可能性が高い共重合体の組成比を開示しておけば足り,重合度や粘度を明示しなくても当業者は実施可能であると主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件特許⑪に旧特許法36条4項違反の無効理由があると認められるのは,特定ダイアミド3重量%を混合した原料樹脂を用いた場合に,ナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものよりも逐次二軸延伸性を向上させることができるとの技術事項が,その明細書に開示されていないことを理由とするものであり,実施例におけるブレンド成分 用いた場合に,ナイロン6樹脂のみを原料樹脂としたものよりも逐次二軸延伸性を向上させることができるとの技術事項が,その明細書に開示されていないことを理由とするものであり,実施例におけるブレンド成分AないしFの開示内容は,上記無効理由とは関連性がないから,控訴人の主張は,本件特許⑪に無効理由があるとの前記認定を左右するものではない。 ウ控訴人提出の実験報告書(甲101の1,2)について(ア)控訴人は,本件特許⑪及び⑲の実効性を証明するため,Dの指揮の下で,原反を作る実験(実験Ⅰ。甲101の1)及び実験Ⅰで作成した原反を延伸する実験(実験Ⅱ。甲101の2)を行い,その結果によれば,本件特許⑪及び⑲に無効理由があるとした原判決の判断は誤りであると主張する。 (イ)甲第101号証の1には,実験Ⅰについて,次のような記載がある。 a実験Ⅰでは,次の7種類のポリアミドをブレンド成分として選定した。 ①γ型脂肪族ポリアミド宇部興産製のNy12であるUBE3024B,UBE3014U,UBE3030XAなお,UBE3024B,3014Uは宇部興産のカタログ(甲第103号証)より選んだ。 - 63 -ダイセル・デグサ社製のVestamidE40S1②非晶質脂肪族ポリアミドダイセル・デグサ社製のVestameltT-471,同T-171宇部興産製のUBEU7128bNy6に前記7種類のポリアミドを3~40重量%混合して,260~275℃に過熱熔融し,Tダイを通して押し出し,未延伸フィルムを得た。 その結果,Ny12(UBE3030XA)を40重量%混合した樹脂がサージングを起こし,波打って白濁した未延伸フィルムが得られたほかは,ほぼ透明で均一な未延伸フィルムが得られた。 c前記宇部興産製のNy12である3024Bの相対粘度(ηr)は2. %混合した樹脂がサージングを起こし,波打って白濁した未延伸フィルムが得られたほかは,ほぼ透明で均一な未延伸フィルムが得られた。 c前記宇部興産製のNy12である3024Bの相対粘度(ηr)は2.5と記載されている。 (ウ)甲第101号証の2には,実験Ⅱについて,次のような記載がある。 a実験Ⅰで得られた未延伸フィルムについて,次の評価を行った。 (a)2軸延伸性の評価未延伸フィルムを50mm角に切り取り,H卓上2軸延伸機により一定速度でMD(縦延伸)とTD(横延伸)方向に同時及び逐次2軸に延伸し,相対的な評価を行うとともに,1軸延伸後のフィルムについてX線回折による面配向指数の算出を行って相関関係を確認する。 (b)2軸延伸フィルムの抗張力評価Ny12ブレンド成分が40重量%である延伸フィルムについて,MD方向及びTD方向の抗張力を測定し,破断・強度を充分保持しているか確認する(5kg。 /m㎡以上)(c)透湿度の評価Ny12ブレンドが40重量%である延伸フィルムについて,Ny12の疎水性の影響があるか否かについて透湿度を測定して評価を行う。 bNy6単独のみならず,各種ポリアミドをブレンドして得た未延伸フィルム- 64 -はいずれも65~95℃で1軸延伸が可能であったので,MD方向及びTD方向に同時及び逐次2軸延伸を行った。延伸速度は30mm/min一定であり,延伸カウント180(延伸倍率3.0)での亀裂の有無により延伸性の可否を判定した。 cMD方向延伸温度を65℃とし,TD方向延伸温度を95℃に固定して逐次延伸性を検討した。 Ny6単独のフィルムでは,8点中例外的な1点を除き,1軸の延伸はできても直角方向の延伸では途中に破断が生じ,3倍延伸はできなかった。これに対し,ブレンド品では,8点中,1軸延伸を過剰に行った た。 Ny6単独のフィルムでは,8点中例外的な1点を除き,1軸の延伸はできても直角方向の延伸では途中に破断が生じ,3倍延伸はできなかった。これに対し,ブレンド品では,8点中,1軸延伸を過剰に行った2点のみが亀裂と保持具抜けを生じた以外は,異常なく逐次延伸ができており,ブレンドによる逐次延伸性付与の効果が明らかである。 d本件特許⑪の明細書に記載されているX線透過法により1軸延伸後のフィルムを測定したところ,Iの測定はできたものの,Iの測定はできなかった。 そこで,X線反射法によりI及びIを測定して面配向指数を算出した。その ,,,. 結果Ny6単体のフィルムでは75℃で延伸した1例を除き面配向指数は10以上であるのに対し,γ型脂肪族ポリアミドや非晶性ポリアミドを3重量%以上混合したフィルムでは全ての例において1以下であり,後者に逐次延伸性があることが定量的に示された。 (エ)前記(イ)のとおり,実験Ⅰでは宇部興産のカタログ(甲第103号証)から選んだNy12であるUBE3024Bをブレンド成分として使用したと記載されているが,甲第103号証には,手書きで「3024B」と記載されている部分があるものの,カタログ自体には3024Bの記載は存在しない。 また,甲第101号証の1には,UBE3024Bの相対粘度が2.5と記載さ,,。 れているがその根拠が不明であり控訴人もこれを明らかにすることができない以上の点に照らすならば,実験Ⅰにおいて宇部興産製のUBE3024Bが使用されたものと認めることは困難と言わざるを得ず,したがって,甲第101号証の1の実験報告書がその主張に係る実験内容を記載したものであると認めることは困- 65 -難である。 (オ)また,前記のとおり,実験Ⅱにおける2軸延伸性の わざるを得ず,したがって,甲第101号証の1の実験報告書がその主張に係る実験内容を記載したものであると認めることは困- 65 -難である。 (オ)また,前記のとおり,実験Ⅱにおける2軸延伸性の実験内容は,50mm角に切り取った未延伸フィルムを用い,卓上2軸延伸機により同時及び逐次2軸延伸を行ったというものであり,延伸速度は,30mm/minで一定である。 これに対し,本件特許⑪の明細書には,実施例1について「厚さ約210μ巾,約25cmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを3m/分の走行速度でロール径110mm巾700mmの複数のロールより構成された縦延伸機に導き周速の異なるロール間で第1表,第2表に示した条件でフィルムの長手方向に延伸した(甲3の11の10欄18行目から23行目)と記載され,第1表,第2表に」は,縦延伸工程の倍率として3.5倍と記載されていることからすると,実施例1の縦延伸速度は下記計算のとおり,750cm/minとなる。 縦延伸速度=300×(3.5-1)=750cm/minしたがって,甲第101号証の2の実験における縦延伸速度は,本件特許⑪の実施例1に比して250分の1に過ぎないものであり,また,試料の大きさも,甲第101号証の2の実験では50mm角であるのに対し,本件特許⑪の実施例1では未延伸フィルムの幅が約25cmであるから,約5分の1に過ぎないと認められるところ,未延伸フィルムの延伸は,延伸速度が速いほど困難になり,また,フィルムが大きいほど困難になる(弁論の全趣旨)ことからすれば,甲第101号証の2の実験は,本件特許⑪の実施例1について工業的に実施できるか否かを確認するための追試として有意なものと認めることは困難である。 (カ)さらに,本件特許⑪及び⑲は,いずれも脂肪族ポリアミドフィルムを逐次 実験は,本件特許⑪の実施例1について工業的に実施できるか否かを確認するための追試として有意なものと認めることは困難である。 (カ)さらに,本件特許⑪及び⑲は,いずれも脂肪族ポリアミドフィルムを逐次2軸延伸法により製造する方法の発明であるところ,本件特許⑪及び⑲の各明細書の記載及び甲第56号証によれば,通常の工業生産における脂肪族ポリアミドフィルムの逐次2軸延伸による製造法は,原料樹脂を加熱溶融し,スクリューで押出しして,Tダイよりシート状にし,冷却ロールによって冷却固化して未延伸フィルムを製造し,この未延伸フィルムを多数の加熱ロールによって連続的に縦(MD)方- 66 -向に3~5倍に延伸し続いてテンター内に送りより高温に加熱しながら横T,,,(D)方向に3~5倍に延伸し,最後に高温で短時間熱処理した後,耳部をトリミングして除き,捲き取って製品とする方法が一般的であると認められる。 そして,本件特許⑲の明細書の実施例には,延伸速度及びフィルムのサイズについて特段の記載がないことからすると,同明細書の実施例も上記認定の通常の工業生産における脂肪族ポリアミドフィルムの逐次2軸延伸法を想定しているものと認められ,本件特許⑪の実施例もそのような逐次2軸延伸法に含まれるものと認められるから,本件特許⑲の実施例の逐次2軸延伸法も本件特許⑪の実施例と同程度のものと推認するのが相当である。 そうすると,前記(オ)で説示したのと同様の理由から,甲第101号証の2の実験は,本件特許⑲の実施例について工業的に実施できるか否かを確認するための追試として有意なものと認めることは困難である。 (キ)以上に検討したところによれば,控訴人の提出した実験報告書(甲101の1,2)は,本件特許⑪及び⑲に無効理由があるとの前記認定判断を左右するに足りるもの 有意なものと認めることは困難である。 (キ)以上に検討したところによれば,控訴人の提出した実験報告書(甲101の1,2)は,本件特許⑪及び⑲に無効理由があるとの前記認定判断を左右するに足りるものとはいえない。 なお,控訴人は,乙第37号証の1,2及び乙第101号証ではX線透過法により面配向指数を算出したと記載されているが,X線透過法ではIの測定はでき ないから,乙第37号証の1,2及び乙第101号証の実験結果は全く信頼できないと主張し,前記認定のとおり,甲第101号証の2にはこの主張に沿う記載があるが,甲第101号証の2の実験における縦延伸速度は本件特許⑪の実施例1に比して250分の1に過ぎないものであるから,縦延伸時のフィルムの変形速度は実施例1と大きく異なるものと認められ,この変形速度の相違のために縦延伸後(1軸延伸後)のフィルムにおける結晶の配向性等の物性が実施例1と異なったものとなっている可能性を否定することはできない。したがって,甲第101号証の2の実験において,X線透過法によるIの測定ができなかったとしても,そのこと から乙第37号証の1,2及び乙第101号証の実験結果の信頼性を否定すること- 67 -はできない。 (3)ONyフィルム生産における同時2軸との価格差について控訴人は,本件内部資料の記載から被控訴人のONyフィルム生産におけるユニチカとのコスト差が平成4年当時118円/kgであったと主張する。 しかしながら,本件内部資料に記載されたコスト比較の数値は,昭和60年ころのものであるところ,上記コスト差が昭和61年11月ころに生産を開始したN2100の製造販売時においても維持されていたことを窺うに足りる証拠がない以上,これをもって独占の利益を検討するに当たっての参考とすることはできないというべき 昭和61年11月ころに生産を開始したN2100の製造販売時においても維持されていたことを窺うに足りる証拠がない以上,これをもって独占の利益を検討するに当たっての参考とすることはできないというべきである。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 (4)不法行為に関する原判決の判断の誤りについて控訴人は,本件各特許及び本件A発明ないし本件G発明に係る特許は,次のとおり,被控訴人が独占的利益を得ることに貢献したから,これを本件特許表彰制度の表彰対象としなかったのは,被控訴人における特許表彰制度の評価基準が不公正なものだからであり,被控訴人の本件各特許に対する評価は,合理的な裁量の範囲内のものではないと主張する。 N2100本件特許⑪,⑲N1100本件特許①,⑤,⑥,⑪FSMフィルム本件特許⑫積層容器本件特許①,⑥SMレジン(外販用)本件特許①,④ダイナック本件A発明ないし本件G発明に係る特許しかしながら,前記のとおり,本件特許①,④ないし⑥については本件特許表彰制度の適用がないから,これらの特許に係る不法行為の主張は理由がない。 また,本件A発明ないし本件G発明に係る特許についても,本件F発明に係る特許を除く6件の特許は,本件特許表彰制度施行前に登録抹消されているから本件特- 68 -許表彰制度の適用はなく,本件F発明に係る特許も,出願公告年及び登録年のいずれを基準としても選考会開催前に登録抹消されているから本件特許表彰制度の適用はない(前記引用に係る原判決147頁6行目から15行目)から,これらの特許に係る不法行為の主張は理由がない(なお,被控訴人における本件特許表彰制度の原則的な運用によっても,選考会開催年の3月末よりも前に登録抹消されているから,結論に変わりはない。 。)さらに,N2100に関する本 の主張は理由がない(なお,被控訴人における本件特許表彰制度の原則的な運用によっても,選考会開催年の3月末よりも前に登録抹消されているから,結論に変わりはない。 。)さらに,N2100に関する本件特許⑪,⑲の貢献の主張が理由のないことは前記引用に係る原判決173頁23行目ないし174頁1行目,N1100に関する本件特許⑪の貢献の主張が理由のないことは同168頁10行目ないし26行目,FSMフィルムに関する本件特許⑫の貢献の主張が理由のないことは同172頁7行目ないし19行目のとおりである。 さらに,控訴人は,被控訴人の本件各特許に対する評価が合理的な裁量の範囲内のものとはいえず,原判決は,本件各特許により被控訴人が受けた利益を過小評価,,し本件特許表彰制度の対象となるべき特許の範囲の認定を誤ったとも主張するが以上に説示したところに照らせば,その失当であることは明らかである。 結論 以上の次第で,控訴人の請求を全て棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,棄却されるべきである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官- 69 -田中信義裁判官榎戸道也裁判官浅井憲

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