主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 京都地方検察庁で保管中の支払精算書1綴(令和6年領第493号符号1)及び支払伝票4綴(令和6年領第494号符号1から4まで)の各虚偽記載部分を没収する。 理由の要旨 (罪となるべき事実)被告人は、第1 令和元年7月29日頃、京都市伏見区内所在のA方において、同人管理の現金約10万円及び腕時計1本(時価1万円相当)を窃取し、第2 令和2年10月14日頃から同年11月28日頃までの間に、京都市伏見区内所在のB方において、同人所有の現金約300万円を窃取し、第3 警察官として、平成31年3月1日から令和4年3月17日までの間、京都府伏見警察署刑事課に勤務していたものであるが、あらかじめ交付されていた捜査諸雑費の返還を免れて財産上不法の利益を得ようと考え、別表1(掲載省略)記載のとおり、令和3年8月8日頃から同年12月20日頃までの間、4回にわたり、伏見警察署刑事課執務室ほか1か所において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピューターを使用して、真実は、同表「支払事由」欄記載の理由により捜査諸雑費を執行した事実はないのに、同理由により捜査諸雑費を執行した旨記載した支払伝票を作成して、紙面に印刷した上、同支払伝票の氏名欄に「(被告人の氏名)」と署名し、内容虚偽の支払伝票4通を作成し、もって公務員として自己の職務に関し、虚偽の有印公文書をそれぞれ作成した上、令和3年8月8日頃から同年12月20日頃までの間、伏見警察署刑事課執務室ほか1か所において、上記情を秘し、伏見警察署刑事課長代理Cに対し、上記支払伝票4通を内容が真正な公文書であると装ってそれぞれ提出行使し、同人をして、あらかじめ交付していた捜査諸雑費が、被 告 1か所において、上記情を秘し、伏見警察署刑事課長代理Cに対し、上記支払伝票4通を内容が真正な公文書であると装ってそれぞれ提出行使し、同人をして、あらかじめ交付していた捜査諸雑費が、被 告人によって上記支払伝票記載のとおり執行されたものと誤信させた上、さらに、別表2(掲載省略)記載のとおり、同年9月2日頃から令和4年1月4日頃までの間、4回にわたり、伏見警察署において、情を知らないCらをして上記支払伝票等を同署長らにそれぞれ提出行使させて、同人らをして、前同様に誤信させ、よって、その頃、同表「返還免除額」欄記載の捜査諸雑費合計1万1,297円の返還を免れ、もってそれぞれ人を欺いて財産上不法の利益を得、第4 令和3年11月12日午後6時30分頃から同日午後10時45分頃までの間に、京都市伏見区内所在の飲食店において、D所有の現金12万円を窃取し、第5 警察官として、令和4年3月18日から、京都府警察本部刑事部捜査第二課告訴指導第一係に勤務していたものであるが、 1 一般捜査費の執行を装って、現金をだまし取ろうと考え、同年9月30日頃、同課執務室において、真実は、交付された一般捜査費である現金は、自らの借金の返済等のために費消するつもりであるのに、その情を秘し、同課次席Eらに対し、捜査協力者に対して謝礼金を支払うために一般捜査費の交付を受けたい旨うそを言うなどし、同人らをしてその旨誤信させ、よって同日、Eから、一般捜査費名目で現金5万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、 2 その職務に関し、同年10月3日、前記執務室において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピューターを使用して、同年9月30日に一般捜査費である現金5万円を捜査協力者に交付した旨記載した支払精算書を作成して、紙面に印刷した上、同支払精算書 て、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピューターを使用して、同年9月30日に一般捜査費である現金5万円を捜査協力者に交付した旨記載した支払精算書を作成して、紙面に印刷した上、同支払精算書の氏名欄に「(被告人の氏名)」と署名し、内容虚偽の支払精算書1通を作成し、令和4年10月3日、同所において、Eらに対し、上記支払精算書を内容が真正な公文書であるとして提出して、もって公務員として自己の職務に関し、虚偽の有印公文書を作成して、これを行使し、第6 令和5年4月29日午前10時56分頃、京都府宇治市内所在の量販店において、商品として陳列されていた同店店長F管理のカメラ保護ガラス等16点(販売価格合計1万8,862円)を窃取した。 (法令の適用) 1 構成要件及び法定刑を示す規定被告人の判示第1、第2、第4及び第6の各所為はいずれも刑法235条に、判示第3の各所為のうち、各虚偽有印公文書作成の点は別表1の番号ごとにいずれも刑法156条、155条1項に、その各行使の点は別表1の番号ごとにいずれも包括して刑法158条1項、156条、155条1項に、各詐欺の点は別表2の番号ごとにいずれも刑法246条2項に、判示第5の所為のうち、その1の詐欺の点は刑法246条1項に、その2の虚偽有印公文書作成の点は刑法156条、155条1項に、その2のその行使の点は刑法158条1項、156条、155条1項にそれぞれ該当する。 2 科刑上の一罪の処理⑴ 判示第3の各虚偽有印公文書作成とその各行使と各詐欺との間には別表1・別表2を通して番号ごとに順次手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により、番号ごとに1罪としていずれも刑及び犯情の最も重い虚偽有印公文書行使罪の刑で処断する。 ⑵ 判示第5の1の詐欺とその2の虚偽有印公文書行 手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により、番号ごとに1罪としていずれも刑及び犯情の最も重い虚偽有印公文書行使罪の刑で処断する。 ⑵ 判示第5の1の詐欺とその2の虚偽有印公文書行使は、後記の理由により包括一罪の関係にあり、判示第5の2の虚偽有印公文書作成とその行使との間には手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により、結局以上を1罪として、刑及び犯情の最も重い虚偽有印公文書行使罪の刑で処断する。 3 刑種の選択判示第1、第2、第4及び第6の各罪についていずれも懲役刑を選択する。 4 併合罪の処理刑法45条前段の併合罪であるから、刑法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重をする。 5 宣告刑の決定以上の刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処する。 6 未決勾留日数の算入 刑法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 7 没収京都地方検察庁で保管中の支払精算書1綴(令和6年領第493号符号1)の虚偽記載部分は、判示第5の2の虚偽有印公文書行使の犯罪行為を組成した物であり、同支払伝票4綴(令和6年領第494号符号1~4)の各虚偽記載部分は、判示第3(符号順に別表1の各番号)の各虚偽有印公文書行使の犯罪行為を組成した物であって、いずれも何人の所有をも許さないものであるから、刑法19条1項1号、2項本文を適用してこれらを没収する。 8 訴訟費用の不負担訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。 (判示第5について詐欺と虚偽有印公文書行使を包括一罪と認めた理由)本件の事実関係において、一般捜査費を詐取した後に、支払精算書を作成し、提出して行使しており、虚偽有印公文書行使が詐欺の手段となっているとはいえず て詐欺と虚偽有印公文書行使を包括一罪と認めた理由)本件の事実関係において、一般捜査費を詐取した後に、支払精算書を作成し、提出して行使しており、虚偽有印公文書行使が詐欺の手段となっているとはいえず、両者を牽連犯とすることはできない。 しかし、一般捜査費の交付を受けた捜査員は、その執行後、執行状況を記載した支払精算書を作成して、事前に受領した一般捜査費に過不足がある場合は、過不足額を返還又は受領して、執行が完了するものとされているのであって、一般捜査費の交付と支払精算書の作成は、時間的に近接して、一体的に行われることとされていた。また、捜査員が一般捜査費を立替払をしたとして、その精算を求めた場合には、立替払報告書を作成して、当該立替額の現金を交付するものとされており、仮に、立替払をしたと偽って、立替払報告書を作成・行使し、現金を詐取した場合には、虚偽有印公文書作成、同行使、詐欺が順次手段結果の関係にあり1罪として処断されるところ、上記各書面の提出・行使と一般捜査費の交付の前後により罪数処理に関する取扱いを異にすべき合理的な理由を見出し難い。そうすると、上記の詐欺及び虚偽有印公文書行使は、包括一罪の関係に当たる。 (量刑の理由) 本件は、警察官であった被告人が、変死事案の対応のため臨場した被害者方で現金及び腕時計を窃取した(判示第1)、高齢の被害者方に防犯指導を装い訪ねて、現金を窃取した(判示第2)、私的に費消した捜査諸雑費の返還を免れようと考え、4回にわたり、内容虚偽の支払伝票を作成して提出・行使し、その返還を免れた(判示第3)、捜査協力者と食事中に同人の現金を窃取した(判示第4)、一般捜査費を詐取し、返還を免れるために、内容虚偽の支払精算書を作成して提出・行使した(判示第5)、量販店で万引きをした(判示第6)事案である。 捜査協力者と食事中に同人の現金を窃取した(判示第4)、一般捜査費を詐取し、返還を免れるために、内容虚偽の支払精算書を作成して提出・行使した(判示第5)、量販店で万引きをした(判示第6)事案である。 量刑の判断の中心となる判示第2の窃盗についてみると、被害額が約300万円と高額である上、被害者が多額の現金を出金しようとしていた旨の金融機関の通報を受けて事件性等の確認のために赴いた部下警察官らから、一人暮らしで認知症の被害者が高額の現金を保管していると聞き、被害者から現金の窃取を企て、後日、警察官の職務遂行の外観への信頼を悪用し、防犯指導を装うなどして被害者方を物色して現金を窃取した巧妙かつ悪質なものであり、強い非難に値する。 同様に、判示第1の窃盗についても、変死体発生事案で現場臨場した死者の部屋を物色して現金約10万円等を窃取したもの、判示第4の窃盗についても、現金を窃取する目的で捜査協力者との会食を求め、被害者が席を外した隙に財布から12万円の現金を抜き取ったものであり、いずれも警察官の職務遂行に対する信頼を悪用したもので、誠に悪質である。そして、被告人は、機会をうかがってこれらの窃盗の犯行に及んでおり、決して偶発的な犯行ではない。他方、判示第6の窃盗については、警察官の職務と無関係な万引き事犯とはいえ、被害額が合計1万8,862円と少なくなく、軽微な事案とはいえない。 次に、判示第5の詐欺、虚偽有印公文書作成・同行使について、担当事件で捜査協力を受けていた弁護士への謝礼金が必要と偽り、一般捜査費の交付を受け、事情を知らない同弁護士に同額の交付を受けた旨の領収書を作成させた上で、支払精算書を作成して、同領収書を添付し提出・行使したもので、その手口は巧妙であり、判示第3の虚偽有印公文書作成・同行使、詐欺と合わせて、被害額も少なくなく の交付を受けた旨の領収書を作成させた上で、支払精算書を作成して、同領収書を添付し提出・行使したもので、その手口は巧妙であり、判示第3の虚偽有印公文書作成・同行使、詐欺と合わせて、被害額も少なくなく、 公文書に対する公共の信用、ひいては警察官の公費の支出に関する社会の信頼を害するもので、やはり悪質というべきである。 被告人は、遊興費及び借金の返済のため、これらの犯行に及んだというのであるが、そのような動機等に酌量の余地はない。被告人は、現職警察官でありながら、令和元年7月から令和5年4月までの長期間、上記各犯行を繰り返したのであって、この種の事案に対する抵抗感が乏しく、規範意識が鈍麻しているといわざるを得ない。 他方において、いずれの事案も被告人の親族の協力によって被害回復がなされている。また、判示第1及び第4の被害者ら及び判示第2の被害者の家族は、被告人を宥恕し、又はその処罰を裁判官の判断に任せるとの意思を示しており、処罰感情が緩和している。被告人は、判示第6の犯行に係る捜査が契機になったとはいえ、第1、第2及び第5の各犯行について自首をした。これらは被告人のために考慮すべき事情である。 しかしながら、本件被害の大きさや犯行の規模、そのうち3件が現職警察官の立場を悪用した一般市民に対する犯罪であること等からすれば、上記の被害回復等を被告人の有利に最大限考慮するとしても、被告人の刑事責任は重く、本件においては被告人に対して実刑をもって臨むほかない。 そこで、被告人が、その他の事案についても捜査段階から事実を認め、反省の弁を述べていること、前科前歴がないこと、両親が更生に協力する旨を約していること等も踏まえつつ、被告人を主文の刑に処することとした。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年、主文同旨の没収)令和 ること、前科前歴がないこと、両親が更生に協力する旨を約していること等も踏まえつつ、被告人を主文の刑に処することとした。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年、主文同旨の没収)令和6年5月28日京都地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官増田啓祐裁判官棚村治邦 裁判官長船源
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