平成17(行ウ)28 用地購入費支出差止及び補助金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年2月27日 名古屋地方裁判所 棄却
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判決文本文37,909 文字)

- 1 -平成19年2月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成17年(行ウ)第28号用地購入費支出差止及び補助金返還請求事件平成17年(行ウ)第31号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成18年11月1日判決主文 原告(選定当事者)らの被告に対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用(参加によって生じた分を含む)は原告(選定当事者)らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,Aに対し,18億2215万2322円を請求せよ。 第2事案の概要本件は,愛知県西尾市の住民である原告らが,西尾市が西尾駅西第一種市街地再開発事業(本件事業)を施行した西尾駅西A地区市街地再開発組合(本件組合)及び地権者との間で,別紙売買契約目録記載の各売買契約(本件各売買契約)を締結し,代金として合計14億8625万1322円を支出した行為と,西尾市が本件事業に対して支出した補助金合計3億3590万1000円の返還請求を怠る行為が,地方自治法232条,2条14項,地方財政法3条,4条などに違反すると主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,西尾市の執行機関である被告に対し,上記各売買契約の締結及び補助金の支出を行った前西尾市長のAに支出相当額の損害賠償を請求することを求めた住民訴訟である。 前提事実(証拠を摘示した事実のほかは争いがない。)(1) 当事者等ア原告らは,いずれも西尾市の住民である。 - 2 -イ被告は,西尾市の執行機関であり,Aは,平成元年9月から同市長の職にあったが,本訴係属中の平成17年9月に退任した者である(「A前市長」という。)。 ウ本件組合は,都市再開発法11条1項に基づき,平成13年12月14日に愛知県知事から認可を受けて設立された市街地再開発組合である。 (2) 西尾駅 月に退任した者である(「A前市長」という。)。 ウ本件組合は,都市再開発法11条1項に基づき,平成13年12月14日に愛知県知事から認可を受けて設立された市街地再開発組合である。 (2) 西尾駅西A地区の概況西尾駅西A地区(「西A地区」という。)は,名鉄西尾線の西尾駅西口に面する約1.6ヘクタールの土地である。 (3) 西尾市と駅前再開発事業の概要と経過ア事業計画の概容西尾市は,平成11年4月20日,西A地区を施行地区として,「西尾幡豆都市計画事業西尾駅西A地区第一種市街地再開発事業」についての都市計画(本件事業計画)を決定した。本件事業計画の概容は以下のとおりである(甲1号証)。 (ア) 施行者の名称西尾駅西A地区市街地再開発組合(イ) 総事業費64億7200万円(ウ) 施行地区の概況当地区は,名鉄西尾線の西尾駅西口に面し,市の玄関口であると同時に交通の中心にあたるところである。低層の木造老朽建物と駐車場,空き地等が混在し生活環境の悪化がみられ,近年は市内の中心商店街の空洞化傾向も相まって,商業活動の低迷,防災上の課題もあげられる。 (エ) 事業目的近年低迷している駅前拠点性の回復をめざして,本件事業により商業等の駅前サービス施設立地,交通環境の整備及び都市防災機能の向上を図るため,都市基盤としての交通結節点機能等の公共施設の整備と,商業,業務,宿泊,公共施設及び駐車場等を備えた複合施設の建築によっ- 3 -て,都市の防災化,高度化を進めるとともに,市民が安心して楽しめる魅力ある市街地の形成を図ること。 イ本件事業における施設等の概要本件事業において整備される公共施設及び施設建築物(「本件再開発ビル」という。)は以下のとおりである。本件再開発ビルは,西A地区の南側に高層のホテル棟,北側に低層の複合施設棟( における施設等の概要本件事業において整備される公共施設及び施設建築物(「本件再開発ビル」という。)は以下のとおりである。本件再開発ビルは,西A地区の南側に高層のホテル棟,北側に低層の複合施設棟(公益棟)を配置する計画になっていた(甲1号証,44号証)。 (ア) 公共施設a都市計画道路西尾安城線の県道直線化b名鉄西尾駅西駅前広場c都市計画道路中畑本町線d区画街路1号線(イ) 本件再開発ビル(施設建築物)商業,公益,業務,ホテル,駐車場の建築敷地面積約3500㎡,建築延べ面積約1万3330㎡,高層部地上9階・地下1階,低層部地上4階・地下1階,駐車場72台収用のものウ本件事業の経過(甲1号証,乙6号証)(ア) 西尾市は,都市計画法19条の規定に基づき,平成11年4月20日,再開発・防火・高度利用分に係る都市計画を決定し,同年7月16日,街路分に係る都市計画を決定した。 (イ) 本件組合は,平成13年12月14日,都市再開発法11条1項の規定により,愛知県知事の設立認可を受けるとともに,同条3項の規定により,本件事業計画についても同知事の認可を受けた。 (ウ) 本件組合は,平成14年1月から,都市再開発法72条の規定による権利変換計画作成業務を開始し,同法83条1項の規定により,同年6- 4 -月27日から同年7月10日までの間,権利変換計画を縦覧に付し,同年9月,愛知県知事の認可を受けた。上記権利変換計画では,権利変換期日が平成14年11月6日と定められた(乙6号証)。 (エ) 平成17年3月31日の時点において,公共施設の整備に関する名鉄西尾駅西駅前広場整備事業及び区画街路1号線整備事業並びに本件再開発ビル(商業床,公益床,業務床,ホテル床,駐車場)の整備事業が未了となっており,このうち本件再開発ビ て,公共施設の整備に関する名鉄西尾駅西駅前広場整備事業及び区画街路1号線整備事業並びに本件再開発ビル(商業床,公益床,業務床,ホテル床,駐車場)の整備事業が未了となっており,このうち本件再開発ビルの整備事業は,事業期間も未定になっている。 (オ) A前市長は,平成17年の西尾市議会3月定例会において,本件再開発ビルの整備事業は,いったん白紙状態にして,市民の意見を聞きながら,国,愛知県の指導の下,議会と協議し計画していく旨答弁した。 (4) 西尾市と本件組合等との売買契約の締結と代金の支出ア西尾市による本件組合資産の取得費用の予算計上西尾市は,本件組合及び地権者から,西A地区(1.6ヘクタール)のうち,国,愛知県及び西尾市の所有する公共用地の面積を差し引いた約3535㎡の施設建設敷地(別紙売買契約目録1の(2) 西尾市花ノ木町4丁目64番の宅地(1910.95㎡)と,西尾市住吉町4丁目22番の宅地(1624.02㎡),合わせて「本件土地」という。)などを買い取り,一人組合になって本件事業を承継する方針を定め,平成17年度の一般会計予算に用地購入費として,15億5999万6000円を計上し,同予算は,平成17年西尾市議会3月定例会において議決された(甲1号証,4号証)。 イ売買契約の締結A前市長は,平成17年5月19日,西尾市が,本件事業において整備される予定であった本件再開発ビル内に権利変換を希望していた権利者(5名と2法人の7者。「残留権利者」という。)及び本件組合から,本- 5 -件事業に伴う不動産(本件土地と本件再開発ビルの床)を購入することを内容とする支出負担行為をし,同年6月2日,上記の者との間で,別紙売買契約目録記載のとおり,本件各売買契約を締結した。本件各売買契約における購入代金の合計額は,14億8625万1 )を購入することを内容とする支出負担行為をし,同年6月2日,上記の者との間で,別紙売買契約目録記載のとおり,本件各売買契約を締結した。本件各売買契約における購入代金の合計額は,14億8625万1322円である(甲9号証の1ないし8)。 ウ代金の支出西尾市の収入役は,平成17年6月7日,同月10日を支出日として,本件各売買契約に係る代金の支出命令をし,同日支出された(甲9号証の1ないし8)。 (5) 西尾市による補助金の支出西尾市は,西尾市市街地再開発事業補助金交付要綱に基づき,本件組合に対し,別紙補助金一覧表記載のとおり,補助金を支出した(甲47号証,48号証の1ないし10)。 (6) 原告らによる監査請求と本件訴訟の提起ア原告らは,平成17年3月25日,西尾市監査委員に対し,西尾市が本件組合の資産を購入するために多額の支出をすることは違法不当であるとして,①平成17年度西尾市一般会計予算に計上された用地購入費15億5999万6000円の支出を差し止めること,②本件事業につき,本件組合に支出された補助金の返還請求手続をとるべきこと,③地方自治法242条3項に基づく当該支出の停止勧告をすべきこと,④当該支出をした場合には,支出相当額を損害額としてA前市長に返還させるよう措置することを求め,同法242条1項の規定に基づき,住民監査請求(「本件監査請求」という。)をした(甲3号証)。 イ西尾市監査委員は,平成17年5月19日付けで本件監査請求を棄却した(「本件監査結果」という。)。 なお,西尾市監査委員は,本件監査請求のうち,別紙補助金一覧表の番- 6 -号1ないし7に関する補助金の返還を求める部分を,地方自治法242条2項の監査請求期間を経過したものであると判断し,監査対象から除外した。 ウ原告らは,平成17年6月 補助金一覧表の番- 6 -号1ないし7に関する補助金の返還を求める部分を,地方自治法242条2項の監査請求期間を経過したものであると判断し,監査対象から除外した。 ウ原告らは,平成17年6月17日,当裁判所に対し,上記15億5999万6000円の支出の差止めと補助金総額3億3590万1000円の返還を求め,地方自治法242条の2第1項1号,4号の規定に基づき,住民訴訟を提起した(平成17年(行ウ)第28号事件)。 しかし,その後,支出の差し止めを求めていた用地購入費15億5999万6000円については,既に,本件各売買契約に係る代金として,14億8625万1322円が支出されていたことが判明したため,同年7月8日,行政事件訴訟法43条3項,41条2項及び19条の規定により,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき,上記14億8600万円余りについて,A前市長に損害賠償請求するよう求める訴えを追加し(平成17年(行ウ)第31号事件),従前の15億5999万6000円の支出の差止めを求める訴えを取り下げた。 関連法令(1) 西尾市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(「本件条例」という。乙7号証)第1条この条例は,地方自治法(略。以下「法」という。)96条1項5号及び8号の規定により,議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分について定めるものとする。 (略)第3条法96条1項8号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は,予定価格2000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については,1件5000平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しく- 7 -は売払いとする。 (2) 西尾市市街地再開発事業 産の買入れ若しくは売払い(土地については,1件5000平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しく- 7 -は売払いとする。 (2) 西尾市市街地再開発事業補助金交付要綱(「本件交付要綱」という。乙1号証)(用語の意義)第2条この要綱における用語の意義は,法及び国の定める市街地再開発事業費補助交付要綱(略)に定めるもののほか,次に定めるところによる。 (1) 補助事業市街地再開発事業国庫採択基準に適合する第一種市街地再開発事業をいう。 (2) 事業施行者市街地再開発事業を施行する(略)市街地再開発組合(略)をいう。 (交付決定の取消し又は補助金の返還)第16条市長は,事業施行者が次の各号の一に該当するときは,補助金の交付の決定額の全部若しくは一部を取り消し,又は既に交付した補助金の全部若しくは一部を返還させることができる。 (1) 関係法令又はこの要綱の規定に違反したとき(2) 補助金を交付の目的以外に使用したとき(3) 補助事業を中止又は廃止したとき(4) 補助事業に関する申請,報告,施行等について不正な行為があったとき(5) その他補助金の運用を不適当と認めたとき 争点 (1) 本案前の主張(本件訴えのうち,平成13年度の本件事業の実施設計に関して支出された補助金5460万円の返還を求める部分が,再度の訴え提起として不適法か否か)(2) 本件各売買契約及び代金支出の違法性の有無(3) 補助金返還請求を怠る事実の違法性の有無- 8 - 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1) 本案前の主張(本件訴えのうち,平成13年度の本件事業の実施設計に関して支出された補助金5460万円の返還を求める部分が,再度の訴え提起として不適法か否か)(被告の主張)原告らは,西尾市が本 ) 本案前の主張(本件訴えのうち,平成13年度の本件事業の実施設計に関して支出された補助金5460万円の返還を求める部分が,再度の訴え提起として不適法か否か)(被告の主張)原告らは,西尾市が本件組合に対して補助金合計3億3590万1000円を支出した行為が違法であるとして,被告に対してA前市長に上記金額の支払を請求するよう求めているが,上記金額には,平成13年度に本件事業の実施設計契約に関して支出された5460万円が含まれており,この補助金の支出については,原告B,同C,同Dを除く原告ら(「本件前訴原告ら」という。)が,被告に対してA前市長に損害賠償請求するよう求める訴訟(名古屋地方裁判所平成15年(行ウ)第34号損害賠償請求事件,「本件前訴」という。)を提起し,第一審及び控訴審(名古屋高等裁判所平成16年(行コ)第35号損害賠償請求控訴事件)において敗訴している。 したがって,本件前訴原告らが提起した上記5460万円の補助金の支払を請求するよう求める訴えは,同一の訴訟物についての再訴に当たり,その請求は排斥されるべきである。 (原告らの主張)本件前訴原告らが,本件前訴を提起して,5460万円の補助金をA前市長個人に対し支払請求するよう求めたことは争わないが,本件前訴においては,A前市長に上記補助金の支出につき,裁量権の逸脱があったか否かを問題としていたのに対し,本件訴訟においては,本件前訴の後に本件再開発ビルの建設が不可能となり,本件組合が本件事業を中止したことに伴って,本件組合に補助金の返還義務が生じたにもかかわらず,A前市長が補助金の返還請求を怠ったことについての責任を問題としているものであるから,金額は同一であっても全く別の問題である。したがって,再訴提起には当たらな- 9 -い。 (2) 争点(1) 本件各売買契約の の返還請求を怠ったことについての責任を問題としているものであるから,金額は同一であっても全く別の問題である。したがって,再訴提起には当たらな- 9 -い。 (2) 争点(1) 本件各売買契約の違法性の有無(原告らの主張)ア本件事業の経緯について西尾市においては,平成11年4月20日に本件事業計画が決定され,平成13年12月14日には本件組合が設立認可されており,本件事業は,組合施行によって進められてきたものであるが,本件再開発ビルの建築については当初から賛否両論があり,住民投票を求める直接請求には1万5000人の署名が集まった。議会においては,本件再開発ビルの保留床の処分先の有無や,本件事業の採算性が問題とされていた。 また,保留床の一部の取得を予定していた商工会議所が,その取得費用にほぼ相当する5億7000万円を,西尾市からの補助金によって賄おうとしていたことが明らかになるなど,本件事業は多くの問題点を含んでいた。 平成16年になると,本件事業計画に基づいて本件再開発ビルを建築しても,本件再開発ビルの半分相当の処分の見込みがないことが表面化し,同年8月になって,本件組合が西尾市に対して本件事業計画の変更案を提出した。 西尾市は,上記変更案を検討した結果,本件再開発ビルが建築されても資金繰りが困難であることなどを理由に,本件事業の継続は困難であると判断し,本件事業そのものである本件再開発ビルの建築を白紙撤回すると発表するに至った。 以上の経緯について,西尾市は,本件組合が破綻したのではなく,仮に本件事業計画の変更案どおりに本件事業を進めた場合には,経済状況の悪化により,本件再開発ビルが完成しても採算をとることが困難であるため,西尾市が一人組合となって本件事業を引き継ぐものであると説明した。 - 10 -しかし,西尾市は,一 進めた場合には,経済状況の悪化により,本件再開発ビルが完成しても採算をとることが困難であるため,西尾市が一人組合となって本件事業を引き継ぐものであると説明した。 - 10 -しかし,西尾市は,一人組合になって本件事業を継続するといいながら,その後の本件事業については,市民の意見を聞くとするだけで,具体的な内容は明らかになっていない。 イ本件各売買契約における用地購入費の支出西尾市は,以上のような経緯で本件組合から本件土地等を購入すべく,平成17年度一般会計予算で市街地再開発費の公有財産購入費,用地購入との名目で15億5999万6000円(「本件用地購入費」という。)を計上した。 上記金額の内訳は,①権利者の持分に対する代金として約3億6000万円,②本件組合の借入金相当額約11億円(西尾信用金庫からの約5億5000万円と農協からの約5億5000万円),③今後予定されている借入金相当額約1億円の合計額である。 そして,西尾市は,平成17年6月10日,用地購入費として予算に計上していた約15億円のうち,14億8625万1322円を支出した。 ウ本件用地購入費支出の違法性西尾市による本件各売買契約の締結行為は,以下のとおり違法である。 (ア) 本件各売買契約は,本件事業が将来どのようなものになるかを示すことができないまま,本件組合の資産等の買い上げのために莫大な公金を支出するものであり,西尾市の財政に多大な累を及ぼすものであって,ひいては公共の福祉の増進を図るべき地方公共団体の責務を阻害して,甚大な損害を市民に及ぼすものである。 本件事業は,事業の採算性に乏しく,その実現が困難であることから,事業施行主体である本件組合の構成員(残留権利者)でさえも離脱表明をしており,本件組合から提案された本件事業計画の変更案によっても,本件事業 は,事業の採算性に乏しく,その実現が困難であることから,事業施行主体である本件組合の構成員(残留権利者)でさえも離脱表明をしており,本件組合から提案された本件事業計画の変更案によっても,本件事業の継続は困難であると判断されているのである。 結局,本件各売買契約は,破綻した本件組合の負債を西尾市が肩代わ- 11 -りするものであり,本件組合の負債を西尾市民に肩代わりさせる違法なものである。 (イ) 西尾市は,本件組合の負債についても,用地購入の名目で公金を支出した。しかし,用地を購入するのであれば,少なくとも用地購入の目的を明らかにし,実勢価格を鑑定評価した上で適正な価格で購入すべきである。 本件事業においては,本件再開発ビルの建築計画が白紙撤回され,今後どのような施設建築物を建築するかについての具体的な計画は示されていない。 このように事業の目的や内容が全く不明なまま,当該事業の用地を購入することは違法というべきである。 (ウ) 本件各売買契約は,本件組合の資産及び残留権利者の持分のすべてを約15億円で買い上げようとするものであるが,本件組合の資産は,再開発区域(西A地区)内の1.6ヘクタールの土地から,国,愛知県,西尾市の所有する土地の面積を差し引いた約3535㎡の本件土地のみであり,これを現在の地価で換算すると約4億5000万円程度となるのであって,本件各売買契約の代金は,その3倍以上になっている。 また,平成18年4月1日以降に閲覧可能となった固定資産税路線価を基に平成17年6月1日現在の本件土地の正常価格を推定すると,約5億1000万円になる。そして,本件各売買契約の代金額は,被告から提出された鑑定評価書における本件土地の評価額(8億6500万円)を基準にしても,6億円余り過大なものになっている。 いずれにしても,本件各売買 万円になる。そして,本件各売買契約の代金額は,被告から提出された鑑定評価書における本件土地の評価額(8億6500万円)を基準にしても,6億円余り過大なものになっている。 いずれにしても,本件各売買契約の代金額は適正な価格ではないのであって,他に西尾市の損失を減少させる方法があるにもかかわらず,あえて多額の損失を伴う支出を行ったものであり,A前市長が裁量権を逸脱したものとして違法である。 - 12 -(エ) 都市再開発法119条は,事業に要する費用は施行者の負担とすると規定し,同法120条以下の分担金や負担金等の制度も,地方公共団体による費用の一部の負担を想定しているにすぎない。 本件各売買契約は,西尾市による本件組合の債務引受行為であり,本件事業に係る費用を施行者の負担とする都市再開発法119条に違反する違法なものである。 (オ) また,本件各売買契約は,本件土地及びその上に建築される本件再開発ビルを14億8600万円余りで購入するものと解されるところ,地方自治法96条1項8号,同法施行令121条の3,本件条例3条の規定の「2000万円以上の不動産若しくは動産の買い入れ」に該当するから,本件土地の購入費の支出については,単独議案として,議会の議決が必要になるものである。 それにもかかわらず,A前市長は,その手続を経ることなく支出命令を執行したものであり,違法というほかない。 (カ) 以上のとおり,本件各売買契約は,実質的には,事実上破綻した本件組合の資産及び負債をすべて買い受けようとするものであり,その代金の支出は著しく公益性を欠くものであるから,地方自治法232条に反し,同法2条14項,地方財政法3条,4条にも違反するものである。 エ(ア) 以上に対し,被告は,平成17年7月15日付けの鑑定評価書を提出し,本件土地の時価評価額を8億 から,地方自治法232条に反し,同法2条14項,地方財政法3条,4条にも違反するものである。 エ(ア) 以上に対し,被告は,平成17年7月15日付けの鑑定評価書を提出し,本件土地の時価評価額を8億6500万円であると主張するが,同鑑定評価書は,評価額を高くするため,分譲マンションの建築を例として算出した数字合わせにすぎない。上記評価額は,公共交通機関が少なく,成人一人当たりの自動車保有数が平均1台以上となっている西尾市の特殊性に対する配慮を欠いていたり,公示価格を算出する際の時点修正や地域比較も不合理なものとなっている。 また,上記鑑定評価を行ったのは,本件組合の設立計画立案に関与し- 13 -た株式会社新日であって,そのような立場のものが行った評価自体,信用できるものではない。 (イ) 被告は,本件土地の取得の必要性について,遊戯施設や風俗事業を経営する者が買い受ける可能性を指摘するが,本件土地の用途は,商業地域ではあるものの,200m以内に病院があるため,建築基準法,愛知県条例などで既にこれらの事業者の進出が規制されており,何ら理由になっていない。 (被告の主張)ア本件各売買契約締結に至る経緯本件事業においては,権利変換期日である平成14年11月6日が経過して程ない段階で,保留床の処分先として予定されていた商工会議所が撤退を表明するに至り,平成16年1月には組合員で大口の残留権利者であった名鉄東部交通株式会社が本件事業から撤退するとの意向を表明したため,本件再開発ビルのホテル棟を購入する予定であった管理者法人の設立が困難になるとともに,組合員間の意見の相違が表面化し,以後の組合運営について大きな不安が生じる事態となった。 そこで,西尾市は,事業代行もあり得ることを念頭に,愛知県との協議に臨んだところ,西尾市が本件組合及び組 もに,組合員間の意見の相違が表面化し,以後の組合運営について大きな不安が生じる事態となった。 そこで,西尾市は,事業代行もあり得ることを念頭に,愛知県との協議に臨んだところ,西尾市が本件組合及び組合員(残留権利者)の権利をすべて買取り,一人組合になって再開発事業を継続する方法が検討課題に挙げられた。 このような事態を受けて,西尾市は本件組合から事業計画の変更案の提示を受けたが,西尾市による購入が予定されている公共床の価格が高く設定されるなど,西尾市にとっては受け入れ難いものであり,本件組合による事業計画の変更をまっていては,長期にわたって現状のまま事態が凍結すること,すなわち,本件土地が更地のまま放置され,駅前の活性化に何ら繋がらず,西尾市の玄関口として似つかわしくない状況が長期にわたっ- 14 -て続くことが容易に予想された。 西尾市としても,本件事業計画の下で事業を遂行した場合,採算を確保することは困難であると見込まれる一方,補助金・負担金併せて25億円以上(権利変換時に想定されていた事業計画の場合に推測される金額は,予定の保留床部分(公共施設・駐車場)の買収のための支出が約29億6700万円,一般会計による補助金の支出が約1億7000万円,公共施設管理者負担金が約4億7600万円で,合計約36億円以上となる。)を支出せざるを得なくなることが見込まれ,本件事業を現状のまま継続することは非常に危険であると判断せざるを得なかった。 そして,西尾市及び本件組合は,このような経緯について,西尾市議会の全員協議会において報告しており,本件各売買契約にかかる代金額については,平成17年度予算において取得費用が予算化され,議会の審議を経て予算として認められた。 イ本件各売買契約における代金額の合理性について本件各売買契約は,本件組合の資産 約にかかる代金額については,平成17年度予算において取得費用が予算化され,議会の審議を経て予算として認められた。 イ本件各売買契約における代金額の合理性について本件各売買契約は,本件組合の資産などを14億8625万1322円で買い上げるものであるが,実際の本件組合の資産が,本件土地のみであり,その地価を時価のみで捉えれば,代金支出後に行った鑑定評価額は8億6500万円あった。 しかし,公共用地等の取得に際しては,用地費・補償費・工事費等のほかに当該資産の取得等にかかる費用も加味されて取得原価が判断されるのであって,本件でも,本件土地の現状に至るまでには,本件組合による従来の地権者への補償,建物等の解体撤去などに経費が費やされて初めて収用した土地すべてが更地化したことを看過してはならない。 西尾市が,本件土地を購入する時点では,前記のような土地収用的な行為のほとんどを民間である本件組合が完了していたのであり,西尾市が土地収用をした場合に負担しなければならなかった諸費用の支出を,本件組- 15 -合がすべて負担したものといえるのである。 そして,本件組合は,ここに至るまでに様々な金銭の支出を要し,その資金調達のために金融機関から約11億円の借入れをしてきたのであり,西尾市が,収用によって本件土地を取得した場合には,本件組合と同程度の支出が当然必要になったはずである。 それにもかかわらず,西尾市が,単に本件土地を評価額で購入するとすれば,本件組合の負担において再開発用地内の住人の立ち退き等をさせ,西尾市がその負担を免れる結果になるのであって,このような都合のよいやり方は,地方自治体の採るべき態度としてそもそも許されるものではないし,西尾市と本件組合が協力関係を築きながら進めてきた本件事業の経過から見て信義に反し,公平を欠くものといわざ のような都合のよいやり方は,地方自治体の採るべき態度としてそもそも許されるものではないし,西尾市と本件組合が協力関係を築きながら進めてきた本件事業の経過から見て信義に反し,公平を欠くものといわざるを得ない。 以上のような見地から,本件各売買契約においては,個々の残留権利者の権利分について権利変換時の価格を基に3億6000万円程度と判断し,本件組合が本件土地を権利変換により取得し,更地化するまでに要した費用が本件組合の借入負債額11億円にほぼ相当するものと判断して,本件土地の購入費用を14億8625万1322円と決定したものである。 本件土地の評価額は,本件各売買契約に基づく代金の支出後の鑑定であるが,上記のとおり8億6500万円であった。 この鑑定評価額は,前述した立ち退きに関する補償等のための借入金額を加味したものではないが,西尾市が支出した14億8625万1322円の約58.2%に相当するものとなっている。 したがって,この鑑定評価額を前提にすれば,原告らの主張するように時価の3倍以上にもなる価格で用地を取得したことにはならない。 また,これに補償等のための借入金11億円を加味すれば,その金額は14億8625万1322円を5億円程度上回ることになり,本件各売買契約における代金額の合理性が強く裏付けられている。 - 16 -ウ一人組合になることの適法性について本件事業は,西尾市が本件組合等の権利を全部取得して一人組合になった結果,実質的に組合施行から地方公共団体施行に転換したものであるが,このような一人組合方式ともいうべき方法は,以下のとおり,事業代行制度を定める都市再開発法の趣旨に反するものではなく,同法違反の問題は生じない。 すなわち,市街地再開発事業は,権利変換方式による第一種市街地再開発事業と用地買収方式による第二種市外地 り,事業代行制度を定める都市再開発法の趣旨に反するものではなく,同法違反の問題は生じない。 すなわち,市街地再開発事業は,権利変換方式による第一種市街地再開発事業と用地買収方式による第二種市外地再開発事業に区分されるところ,もともと都市再開発法は,第一種市街地再開発事業制度のみを規定しており,後に第二種市街地再開発事業制度が創設され,その施行要件を順次緩和しており(本件事業の施行区域も第二種市街地再開発事業が可能な状況にある。),このような立法経緯によれば,都市再開発法は,第二種市街地再開発事業が積極的に展開されることを期待していると解される。 本件では,西尾市が本件組合等のすべての権利を購入しており,実質的には,第一種市街地再開発事業における権利変換手続を経て,第二種市街地再開発事業の施行者として,事業用地を取得したに等しい状況にあるといえ,このような一人組合方式は,第一種市街地再開発事業の形式をとりながら,第二種市街地再開発事業的な発想を採り入れたものなのである。 また,都市再開発法上,地方公共団体が組合の権利を全部取得することを排斥する規定は存在しないし,むしろ,都市計画法57条では,第一種市街地再開発事業又は第二種市街地再開発事業に関する都市計画を決定した場合には,その施行区域内において土地を有償譲渡する者は,あらかじめその旨を届け出なければならず,その際,都道府県知事は先買権を行使することができる旨規定しており,再開発施行区域内の土地については私人間で譲渡されるより,地方公共団体が積極的にこれを買い受けることが期待されていると解される。 - 17 -したがって,本件における一人組合方式は都市再開発法に抵触するものではない。 エ事業代行制度との比較について本件において,西尾市が,都市再開発法上の事業代行制度(112条以 れる。 - 17 -したがって,本件における一人組合方式は都市再開発法に抵触するものではない。 エ事業代行制度との比較について本件において,西尾市が,都市再開発法上の事業代行制度(112条以下)を利用した場合には,西尾市が本件組合の債務を保証するとしても,あくまで任意であり,事業代行開始の公告の日後における組合の債務の保証に限定される(116条)ため,それ以前の本件組合の債務については責任を負わないことになる。また,国の通達によれば,「保証契約は,組合の取得する施設建築物の一部の価額の範囲内において行うこと」とされ,都市再開発法上も,組合に対する求償権を保全するために組合の取得する施設建築物の一部に先取特権を取得する(118条)結果,理論上は,西尾市が債務保証しても全額を回収できる見込みがあり,仮に回収できない場合が生じても,本件組合に求償することが可能である。 しかし,以上のような事業代行による処理の利点を単純な理論のみで評価するのは妥当ではない。 事業計画が実現可能なもので,十分に採算を確保できるものであれば,事業代行に移行した場合に上記の理論どおりになることは問題がないが,実際に事業代行が発令されるような場合のほとんどは,事業計画を実現できる可能性が少ないために事業の遂行が危ぶまれている事態に陥っているものと思われる。したがって,実現可能性の少ない事業計画のままで,事業代行が開始されたときの不利益も十分に検討した上で,事業代行を回避する手段についての法的な評価をすべきである。 本件では,本件事業計画の採算性に疑問があり,その変更を要する場合であって,事業代行開始の前に事業計画の変更がされていなければ,事態の収拾がつかなくなるおそれが極めて大きい。 すなわち,事業代行制度によっても,事業代行者が事業計画の変更や事- 18 - する場合であって,事業代行開始の前に事業計画の変更がされていなければ,事態の収拾がつかなくなるおそれが極めて大きい。 すなわち,事業代行制度によっても,事業代行者が事業計画の変更や事- 18 -業基本方針の変更そのものを単独で決定できる権限まで有するものではないと解されるところ,実際に西尾市が事業代行後に事業計画を変更しようとしても,公共的利益を追求する西尾市と,個人の利益を優先する残留権利者とでは利害が対立することが想定された。 また,本件組合が,西尾市の納得できる事業計画の変更案を作成する可能性は極めて低い状況であり,本件事業計画の変更がないまま事業代行を開始すれば,前述のとおり,西尾市は25億円以上(権利変換時の事業計画による推測額は上記のとおり36億円以上)もの公費を無意味に支出することになりかねない状況であった。そして,西尾市は,別に保留床部分を担保とする限度で組合の借入債務を保証せざるを得なくなる。 本件では,事業代行を選択した場合,公費を投入しても施設建築物の稼働が相当先になってしまい,費用対効果が得られない期間が長期化すること,公費の投入が最終的に無意味になってしまう危険があること,負債の返済が遅れる結果,金利が累積していくことなど,事業遂行への悪影響も強く懸念される状態にあったのである。 このようなことから,西尾市は,事業計画や事業方針を変更することが可能であり,他の組合員の意向に配慮する必要もなく,西尾市民の声を反映させることができる一人組合方式を選択したものである。そして,西尾市は,一人組合になったことで,建築費と売却代金に見合うような現実的な計画を柔軟に策定できる立場にあるのであって,事業計画を変更することなく事業代行を開始した場合に生じ得た過大な負担を回避することができるのである。 したがって,事業代行を 代金に見合うような現実的な計画を柔軟に策定できる立場にあるのであって,事業計画を変更することなく事業代行を開始した場合に生じ得た過大な負担を回避することができるのである。 したがって,事業代行を選択した場合,理論上,西尾市が,事業代行開始前の本件組合の負債を負担しないことを理由にして,事業代行を選択すべきであったと強調することは相当ではない。 以上から,本件各売買契約の締結について,A前市長には裁量権の逸脱- 19 -・濫用はない。 オまとめ以上のように,本件土地の購入費用については,原告らが主張するように単純化して考えることは相当ではなく,西尾市は,これまでに本件組合が費やした労力等,事業代行を採用することによる不利益,一人組合方式によって西尾市の完全な主導の下で再開発事業が進められるという利益等といった様々な要素を考慮して価格を決定し,また,一般予算という形ではあるが,議会による予算承認の手続きを経たものである。 そして,A前市長は,本件事業計画どおりに本件再開発ビルが完成しても経済状況の悪化により採算を確保することが非常に困難であり,本件組合が本件事業計画の変更案どおりに事業を継続した場合であっても,多額の公金を投入して事業が破綻することを危惧して,本件各売買契約を締結したものである。 したがって,A前市長が支出にあたって著しく裁量権を逸脱したとはいえない。 (補助参加人の主張)西尾市は,一人組合方式を選択し,残留権利者及び本件組合から本件土地を購入したところ,残留権利者からの購入代金は,各権利者の権利変換額に,当該権利変換額が正味額として各権利者に入るよう譲渡所得税相当額を加算したものであり,権利変換額の合計は2億9687万6102円,税相当額は5937万5220円であって,その総額は3億5625万1322円であった 正味額として各権利者に入るよう譲渡所得税相当額を加算したものであり,権利変換額の合計は2億9687万6102円,税相当額は5937万5220円であって,その総額は3億5625万1322円であった。 各権利者に対する権利変換額は,都市再開発法71条の規定による30日の期間を経過した日における近傍類似の土地,近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定められた相当な価額であり,一方,上記のとおり,各権利者- 20 -からの購入代金を権利変換額に譲渡所得税相当額を加算したものとしたことは,各権利者が本件土地の権利分を西尾市に売却する場合に権利変換額を正味受取額として求めることが,売主という立場からすれば無理からぬものであり,一般的な土地の売買事例でもそのような事情から代金を決定する事例も少なくないことからすれば,著しく相当性を欠くものとはいえない。 本件土地に対する各権利者の持分合計は,1兆分の946億2098万0749円であり,本件組合の持分は,1兆分の9053億7901万9251円であり,本件組合の持分は各権利者持分の合計約9.568倍であった。 そして,各権利者の権利返還額合計2億9687万6102円にこの倍率を乗じた金額は28億4065万3224円となる。 一方,西尾市が本件組合に支払った購入代金は11億3000万円であり,上記約28億円の40%弱である。 以上にかんがみれば,本件土地の購入代金は著しく相当性を欠くものとはいえず,裁量権を逸脱するものではない。 (3) 争点(3) 補助金返還請求を怠る事実の違法性について(原告らの主張)ア補助金支出の概要西尾市は,本件事業に関し,平成11年度から,西尾市市街地再開発事業補助金交付要綱に基づいて,別紙補助金一覧表記載のとお 助金返還請求を怠る事実の違法性について(原告らの主張)ア補助金支出の概要西尾市は,本件事業に関し,平成11年度から,西尾市市街地再開発事業補助金交付要綱に基づいて,別紙補助金一覧表記載のとおり,補助金を支出してきた。 イしかし,A前市長が,西尾市の一人組合が主体となって本件事業を行うと表明した時点で,本件組合による本件事業は事実上破綻し,その遂行は不可能になったのものである。 本件組合からの各補助金等交付申請書には,事業の目的として「土地の- 21 -合理的かつ高度利用と都市機能の更新を図り,併せて公共施設の整備を行う」と記載されていたのであるから,かかる事態が,本件交付要綱16条(3) の「補助事業を中止又は廃止したとき」に該当することは明らかである。 したがって,西尾市は,本件事業が,当初の目的を達することができなくなった以上,平成11年度以来本件組合に支払ってきた補助金全額を,本件補助金交付要綱に基づき返還請求すべきであった。 それにもかかわらず,A前市長は,本件組合に対する補助金の返還請求を怠り,その途を閉ざしたのであるから,西尾市に補助金相当額の損害を与えたものである。 したがって,A前市長は,西尾市に対し,補助金相当額を賠償すべき責任を負う。 (被告の主張)原告らは,本件事業が事実上破綻し,その遂行が不可能になったかのように主張するが,西尾市が一人組合になることによって,それまでの残留権利者によって事業が遂行されなくなるだけで,再開発事業そのものは継続しているものである。 したがって,本件交付要綱16条(3) にはあたらない。 第3当裁判所の判断 争点(1) 本案前の主張について被告は,原告らの本件訴えのうち,A前市長に対し,本件組合に支出した補助金相当額合計3億3590万1000円を請求するよう求める部分 ない。 第3当裁判所の判断 争点(1) 本案前の主張について被告は,原告らの本件訴えのうち,A前市長に対し,本件組合に支出した補助金相当額合計3億3590万1000円を請求するよう求める部分について,上記金額に含まれる平成13年度の本件事業に係る実施設計契約に関して支出された5460万円の部分は,本件前訴原告らによる再訴に当たると主張するが,本件前訴は,本件組合と株式会社東畑建築事務所との間の業務委託契約に関し補助金(5460万円)を支出した行為が,地方自治法232条又は23- 22 -2条の2に違反するとして,その返還請求をするよう求めるものでであったのに対し,本件の請求は,本件組合による本件事業の遂行が事実上不可能になったことから,支給に係る補助金全額の返還請求をすべきであるのに,これを怠ったことによる損害の賠償を求めるものであって,同一の請求ということはできないから,被告の上記主張は採用できない。 争点(2) 本件各売買契約及び代金支出の違法性について(1) 地方公共団体の財産の取得と執行機関の責任について地方自治法は,普通地方公共団体の執行機関に,法令等に基づく当該普通地方公共団体の事務を自らの判断と責任において,誠実に管理し,執行する義務を負わせている(138条の2)ところ,その執行機関の一つである普通地方公共団体の長(138条の4)には,当該普通地方公共団体を統轄し,これを代表する権限(147条)のほか,当該普通地方公共団体の事務を管理し,これを執行する包括的な事務処理権限を付与しており(148条),その担任事務の一つとして財産の取得が例示されている(149条6号)が,財産の取得に関する規制としては,96条1項8号において,議会の議決を経ることとされているほかに特段の規定は存しない。 そして,普通地方公共団体 つとして財産の取得が例示されている(149条6号)が,財産の取得に関する規制としては,96条1項8号において,議会の議決を経ることとされているほかに特段の規定は存しない。 そして,普通地方公共団体による財産の取得は,限られた財政の範囲内において,複雑かつ多岐にわたる行政需要の内容や優先度を背景とする政策的な判断に基づいて実施されるものであり,とりわけ不動産の取得に関しては,その価格が,その時々の経済情勢や所有者の主観的事情などに左右されるものであることからすると,特定の政策実現のためにどのような不動産をいかなる対価をもって取得するかについては,財産を取得する責任と権限を有し,当該地方公共団体の他の事務についても包括的に統轄する権限を有する長の裁量に委ねられていると解するのが相当である。 一方,長は,当該地方公共団体に対し,その事務を誠実に管理執行する義務を負うのであって(138条の2),上記のような裁量権も無限定ではあ- 23 -り得ず,地方公共団体の財政につき,最少の経費をもって最大の効果を得るよう配慮すべきものとする地方自治法2条14項や地方財政法4条1項の趣旨に照らして,長による契約締結行為が,その政策目的や取得の経緯等から明らかに合理性を欠くとか,あるいは,ことさらに売主の利益を図る目的に基づくものであったり,何ら合理的な理由なく適正価格を著しく上回る対価を設定するなど,その裁量権を逸脱し,又は濫用して契約締結行為をしたものと評価できる場合には,民法上の不法行為の要件に従って,これによって生じた地方公共団体の損害を賠償すべき義務を負うというべきである。 以上の見地に立って,本件各売買契約の締結行為の違法性の有無を検討する。 (2) 前記前提事実欄記載の各事実に各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる うというべきである。 以上の見地に立って,本件各売買契約の締結行為の違法性の有無を検討する。 (2) 前記前提事実欄記載の各事実に各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア本件事業計画決定に至る経緯について(ア) 西尾市においては,昭和25年10月に決定された「西尾安城線都市計画」では西尾駅の駅前広場の整備が盛り込まれており,昭和47年12月の「新西尾市総合計画」においては,西尾駅周辺市街地再開発計画が明らかにされていた。そして,昭和61年3月の「第4次西尾市総合計画」や昭和63年3月に商工会議所によって策定された「西尾地域商業近代化実施計画」には,西尾駅西側の地区における県道西尾安城線の直線化及び駅前広場の整備が盛り込まれ,これを受けて,西尾駅前再開発権利者委員会が発足するなどしていた(甲1号証,44号証,乙6号証,証人E,証人A)。 このような西尾駅周辺地域の再開発の要望に応える形で,平成元年4月には,西尾市の建設部に開発課再開発係が設置され,西尾市においても再開発に向けた体制づくりが始まり,同年7月には,商工会議所,西尾信用金庫及び西尾市商工課などの出身者からなる西尾駅前再開発研究- 24 -会が発足するなどの動きがみられた(甲44号証,乙6号証,証人E,証人A)。 (イ) 西尾市では,平成2年から平成4年にかけて,再開発事業に関する説明会を開催したり,西尾駅西地区再開発連絡所を開設したほか,市街地再開発事業推進予備調査その他の再開発のための準備となる調査業務を関連業者に委託するなど,再開発事業を具体化する動きが見られた。 また,都市再開発事業を行うにあたって,費用等を試算した結果,第一種都市再開発事業,第二種都市再開発事業のいずれであっても,費用面ではほとんど変わらなかったが,地権者からの積 化する動きが見られた。 また,都市再開発事業を行うにあたって,費用等を試算した結果,第一種都市再開発事業,第二種都市再開発事業のいずれであっても,費用面ではほとんど変わらなかったが,地権者からの積極的な要望もあり,民間主導で行うことができる第一種再開発事業の方が,柔軟かつ円滑な事業遂行が可能であるとの観点から,第一種再開発事業の方法が選択されることになった(乙6号証,証人E,証人A)。 (ウ) 平成5年1月には,Aブロック委員会(後にA地区と呼ばれる2ヘクタールの地区を対象とするもの)が発足し,同年7月には,Aブロック再開発事業説明会が開催され,事業計画案や補償について説明された。 同年8月には,Bブロック委員会(後にB地区と呼ばれる2.2ヘクタールの地区を対象とするもの)が発足した。同年11月にはAブロックの住民に対し個別面談方式による意向調査が行われた結果,再開発に賛成するものが63%,準備組合の設立に同意したものが72%となった(乙6号証)。 (エ) 平成6年2月には,西尾駅前A地区市街地再開発準備組合発起人会が発足し,同年9月,本件組合の前身である西尾駅前A地区市街地再開発準備組合が設立され,同年10月には,西尾駅前B地区研究会が設立されるとともに,西尾市,商工会議所及び商業協同組合などによって西尾駅前再開発協議会が発足した(甲1号証,44号証,乙6号証)。 その後,A地区及びB地区の各権利者の意見調査を実施したり,説明- 25 -会を行った結果,A地区の再開発を先行させ,その後B地区の再開発について検討することとなった。 平成8年に策定された「第5次西尾市総合計画」においては,上記再開発事業は,「西尾市の顔」としてふさわしい商業,文化の拠点地区を創造するものと位置づけられた(甲1号証)。 その後,A地区の地権者の一部に再開発 策定された「第5次西尾市総合計画」においては,上記再開発事業は,「西尾市の顔」としてふさわしい商業,文化の拠点地区を創造するものと位置づけられた(甲1号証)。 その後,A地区の地権者の一部に再開発事業について異論があったため,平成9年5月には,再開発の範囲が,Aブロック(2ヘクタール)から西A地区(1.6ヘクタール)に縮小されるに至った(甲44号証,乙6号証)。 イ本件事業計画の決定と本件組合による事業遂行の経緯について(ア) 平成10年には,西A地区について都市計画決定をするための調整活動が行われ,同年9月,西A地区の都市計画決定の原案が提出された。 翌10月には同地区の地権者29名全員が上記原案に同意したため,同年12月には西A地区の都市計画決定案が縦覧に供された。 西尾市は,平成11年4月20日,西A地区に関し,本件事業計画及び再開発・防火・高度利用部分についての都市計画を決定し,同年7月16日には,街路部分についての都市計画を決定した。 西A地区の再開発の基本設計においては,西A地区の地権者のうち,本件再開発ビル内に権利の変換を希望する者(残留権利者)は,公益棟1階と2階の各一部を取得し,公益棟3階部分は商工会議所が,公益棟のその余は西尾市が,ホテル棟は第三セクターが取得する予定であった。 しかし,同年8月ころ,公益棟の3階を取得する予定になっていた商工会議所が,その取得に必要な費用の積立をしていなかったことを理由に,その取得費用5億7157万7000円にほぼ相当する5億7000万円の補助金の交付申請をした。 これに対し,A前市長は,同年9月4日,西尾市の財政状況から,商- 26 -工会議所に対する補助金の支出はしない旨答弁した(甲1号証,34号証,44号証,乙6号証,証人A)。 また,過去の西尾市内のホテル及び旅館の稼働率等 年9月4日,西尾市の財政状況から,商- 26 -工会議所に対する補助金の支出はしない旨答弁した(甲1号証,34号証,44号証,乙6号証,証人A)。 また,過去の西尾市内のホテル及び旅館の稼働率等から,ホテル経営の採算性に疑問を抱くなどした住民らによって,第三セクター方式によるホテル建設に反対する運動が開始され,平成11年5月には「駅西再開発を考える市民の会」が発足した。そして,同会は,平成12年2月,地方自治法74条1項に基づき,1万3000人以上の署名を添えて,第三セクター方式のホテル建設の是非を問うための住民投票条例の制定を求める直接請求をしたが,西尾市議会は,同年4月,上記直接請求に係る住民投票条例案を否決した。 このような動きの中で,A前市長は,平成13年8月29日,任期満了に伴う市長選挙の告示に先立って立候補を表明した際,ホテル棟の建設について,第三セクター方式から民間活力導入に方針を転換することを表明し,ホテル棟の建設・経営は民間資本を導入し,万一,ホテル経営ができなくなった場合でも税金はつぎ込まない旨表明した(甲20号証,21号証,44号証,乙6号証,証人A)。 (イ) 本件事業計画及び本件組合の定款は,平成12年12月,西A地区の29名の権利者に提示され,権利者全員は,平成13年2月,これらに同意した。そして,先のA前市長による第三セクターを断念する旨の表明があった後,同年10月23日に本件組合の設立認可申請を経て,同年12月14日,本件事業計画とともに本件組合の設立が認可され,同月21日に組合設立総会が開催された。 認可された事業計画では,A前市長が断念した第三セクターによるホテル棟の取得に代えて,権利者の出資によって設立される権利者法人がホテル棟を取得することとされたほか,基本設計においては,権利者が取得する された事業計画では,A前市長が断念した第三セクターによるホテル棟の取得に代えて,権利者の出資によって設立される権利者法人がホテル棟を取得することとされたほか,基本設計においては,権利者が取得することとされていた公益棟1階と2階の各一部(店舗部分)も権- 27 -利者法人が取得することとされ,商工会議所による公益棟3階部分(業務床)の取得及び西尾市によるその余の公益棟の取得は従来どおり維持された(甲2号証,24号証,44号証,乙6号証,証人E)。 (ウ) 本件事業における権利変換計画は,平成14年6月27日から同年7月10日の間,公衆の縦覧に供された後,同年8月16日,愛知県知事に対して認可の申請がなされ,同年9月27日,同知事の認可が公告された。そして,施行区域である西A地区内の土地・建物等の権利は,権利変換期日である同年11月6日に,権利変換計画の定めるところに従い,権利変換された(甲44号証,乙6号証)。 ウ商工会議所による保留床の取得断念と名鉄東部交通の撤退(ア) 商工会議所は,平成14年11月11日,臨時総会を開催して公益棟3階の取得について審議を行った結果,同月12日,西尾市に対して,正式に公益棟3階の取得を断念する旨回答した。 このような商工会議所の対応を受け,本件再開発ビルに関する権利関係は,①西A地区の残留権利者は,ホテル棟の持分の一部を取得する,②西尾市は,公益棟2階部分及び4階部分を取得する,③公益棟1階部分(商業施設),公益棟3階部分(事務所)及びホテル棟のその余の持分は保留床として処分の対象となるように変更されたが,③についてはいずれの部分についても取得者は決定されていなかった(甲24号証,44号証,乙6号証,証人A)。 西尾市のF建設部長は,平成15年12月2日,西尾市議会において,本件再開発ビル れたが,③についてはいずれの部分についても取得者は決定されていなかった(甲24号証,44号証,乙6号証,証人A)。 西尾市のF建設部長は,平成15年12月2日,西尾市議会において,本件再開発ビルの工事を請け負うゼネコンが保留床を取得するか,又はその取得をあっせんするかについてはまだ決まっていない旨答弁し,工事を請け負うゼネコンに対して,公益棟1階部分,3階部分の取得及びホテル棟を取得する法人への出資について具体的な協力を求めるつもりであることを示すとともに,本件組合が本件再開発ビルをマンションに- 28 -変更する可能性を検討している旨を明らかにした(甲44号証,乙6号証)。 (イ) 本件組合の組合員であった名鉄東部交通は,平成16年1月25日に西尾市に対して,同年2月4日には本件組合に対して,それぞれ本件事業から撤退する意思を表明した。 そのため,ホテル棟の一部を取得することが予定されていた権利者法人の設立が困難になるとともに,組合員間で明渡しに伴う補償金や事業計画の変更についての意見対立が表面化した(甲40号証,乙5号証,丙1号証,証人E,証人A)。 エ西尾市による一人組合方式の検討(ア) 上記事態を受けて,当時,西尾市の都市計画課課長補佐であったEは,西尾市の担当者として,都市再開発法上の事業代行を念頭に置きながら,愛知県の担当者と協議した。E課長補佐は,都市再開発法上の事業代行による場合には,現在の事業計画に則った事業の遂行が前提になるところ,名鉄東部交通の撤退により,事業計画を変更する必要に迫られており,これに残留権利者の同意を要することをも考慮すると,多大な時間を要することになるため,かかる事態を回避すべく西尾市が主導的に事業を進める必要性があると考えていた(乙5号証,証人E)。 この協議において,事業代行のほか, 意を要することをも考慮すると,多大な時間を要することになるため,かかる事態を回避すべく西尾市が主導的に事業を進める必要性があると考えていた(乙5号証,証人E)。 この協議において,事業代行のほか,西尾市が本件組合及び組合員からその権利をすべて買取り,西尾市の一人組合になって本件事業を継続するという方法が話題になり,事業代行とともに,上記のような一人組合方式の採用も検討することになった(乙5号証,証人A)。 西尾市では,都市再開発法上,再開発組合の組合員が一人になることが可能か否か,また,権利変換期日以降,事業を中止することができるか否かという問題について,愛知県を通じて国に問い合わせたところ,前者については組合員が一人になることは問題がない旨,後者について- 29 -は事業の中止はできない旨,それぞれ回答を得た。 また,再開発組合が所有する権利(保留床に関する敷地共用部分と施設建築物の一部)を売却することが可能かについて愛知県と協議した結果,可能であるとの結論に達した(乙5号証)。 (イ) A前市長は,平成16年3月1日の市議会(3月定例会)において,残留権利者(名鉄東部交通)からの脱退申出という不測の事態が起きたため,本件事業を今までどおり進めるのは困難になったこと,本件再開発ビルの建築については,国,愛知県の指導の下検討していきたいことなどを答弁した(甲44号証)。 また,同月22日に開催された全員協議会において,西尾市から名鉄東部交通が本件事業から撤退する意向を表明したこと,本件組合から本件事業の変更計画案を同年6月ころには策定したいことが報告された(乙5号証)。 (ウ) 本件組合は,平成16年7月までに,西尾市に対し,本件事業の変更計画案の素案を口頭で提示していたが,西尾市にとって納得できるものではなかったため,同月9日に開 とが報告された(乙5号証)。 (ウ) 本件組合は,平成16年7月までに,西尾市に対し,本件事業の変更計画案の素案を口頭で提示していたが,西尾市にとって納得できるものではなかったため,同月9日に開催された全員協議会において,西尾市が一人組合になって本件事業を継続することについて,市議会議員の意見を聴くとともに,本件組合は,本件事業計画につき,ホテル棟を保留床に変更してすべて売却し,業務床(店舗等)の代わりに住宅を導入する方針に切り替える旨説明した(乙5号証)。 (エ) 本件組合は,平成16年8月9日,西尾市に対し,本件事業の変更計画案を提出した。同変更計画案では,業務床に代わって導入された住宅棟とホテルは,民間への売却を容易にするため従来の計画案よりも低い価格に設定されていたのに対し,その分,西尾市が買い受ける予定になっていた保留床の価格は高く設定されていたため,西尾市としては,上記保留床の買取を拒否せざるを得なかった(乙5号証)。 - 30 -(オ) このような提案を受けて,西尾市は,今後本件組合から西尾市が受け入れることのできる事業計画案が提案される可能性は低いと判断し,同年10月以降,本件組合との間で協議を重ねた結果,今後,本件事業の採算を確保することは困難であること,本件組合の主導にて本件事業を進めた場合には,西尾市が負担する補助金及び負担金の合計額が25億円以上と見積もられること,それを回避するためには,西尾市が本件組合及び組合員の権利をすべて買い取って一人組合になり,西尾市の主導によって事業の見直しを図るべきであること,愛知県や国との協議の結果,一人組合になることは法的にも可能であると考えられていたことなどから,一人組合の方法を選択する方が,都市再開発法上の事業代行と比較して,柔軟な対応が可能であり,しかも再開発組合の 国との協議の結果,一人組合になることは法的にも可能であると考えられていたことなどから,一人組合の方法を選択する方が,都市再開発法上の事業代行と比較して,柔軟な対応が可能であり,しかも再開発組合の組合員の思惑に左右されることなく西尾市単独で再開発計画の変更及び遂行ができると考えるに至った(乙5号証)。 (カ) そこで,西尾市は,本件組合との協議の結果,本件組合及び組合員(残留権利者)の権利をすべて買い取り,一人組合になって事業を継続する方針を固め,買取金額としては,①権利の売主となる本件組合や残留権利者が,本件再開発ビルに関する権利の保有を希望することなく脱退した他の地権者と同程度の補償を受けることや,本件組合の負債を完済すること,さらにはかつての地権者と同様に譲渡所得にかかる所得税分を上乗せした金銭を受け取ることを希望しており,この希望に沿わない場合には売買が成立しないと考えられたこと,②本件土地について,西尾市が主体となって,当初から土地収用の方法によって住民らを立ち退かせた場合には,本件組合の負債と同程度の支出が必要になったであろうこと,③地権者に対しては休業補償を給付しており,事業が長引くことによる西尾市の損失も拡大していくおそれがあったこと(証人E)などから,基本的には,残留権利者に対しては,既に転出した他の- 31 -地権者と同程度の補償をすることとし,権利変換時の価格を基準に金額を算定すべきであるとした。 また,本件組合においては,西A地区の建物の移転,除却,整地等の平面的な整備を完成しており,この間に要した運転資金分を完済するに足りる程度の金額にすることも考慮し,本件各売買契約の代金額を,本件組合が上記整備費用として金融機関から借り入れた負債約11億円相当分を含めた15億円程度とすることを決定した。 E課長 を完済するに足りる程度の金額にすることも考慮し,本件各売買契約の代金額を,本件組合が上記整備費用として金融機関から借り入れた負債約11億円相当分を含めた15億円程度とすることを決定した。 E課長補佐ほかの担当者は,事業代行になった場合には,今後西尾市が25億円以上の支出を負担する必要があると試算しており,本件各売買契約によって約15億円を支出することになっても,その後,10億円以下の金額で市民の要望に応えられる施設建築物等を整備することができれば西尾市の利益になると考えていたが,具体的にどのような施設建築物を建築するかについて検討するまでには至らなかった(乙5号証,証人A,証人E)。 (キ) 以上の協議を受けて,本件組合は,平成16年11月10日,臨時総会を開催し,西尾市への権利譲渡を全員一致で可決した。 また,同月26日,全員協議会が開催され,西尾市が,本件組合から権利を買い取ること,西尾市が一人組合になって本件事業を継続していくこと,売買代金については,平成17年度に予算化して権利取得に臨むことが報告された。 全員協議会における市議会議員の意見は,西尾市の負担が重すぎるとなどとして反対するものや,借入金利の面や西尾市から出向している職員の人件費などの予算的な面を考慮して早期解決に資する点を評価し賛成するものがあったが,金額の面も含めて賛成する意見が多数であった(乙5号証,証人A,証人E)。 以上の経緯を受けて,西尾市の平成17年度の一般会計予算の8款- 32 -「土木費」,5項「都市計画費」,4目「市街地再開発費」,17節「公有財産購入費」,区分「用地購入」として,15億5999万6000円が計上された(甲1号証,4号証)。ここで取得の対象となる用地は,本件土地,すなわち,西A地区1.6ヘクタールのうち,国,愛知県及び西尾市 入費」,区分「用地購入」として,15億5999万6000円が計上された(甲1号証,4号証)。ここで取得の対象となる用地は,本件土地,すなわち,西A地区1.6ヘクタールのうち,国,愛知県及び西尾市の公共用地以外の施設建築敷地約3535㎡であった(甲1号証)。 (ク) 西尾市は,平成17年5月19日に支出負担行為の上,同年6月2日,本件組合及び残留権利者(7名)との間で,別紙売買契約目録各記載のとおり,土地(約3535㎡)及び権利変換によって取得した権利を合計14億8625万1322円で買い取ることを内容とする売買契約をそれぞれ締結し,本件各売買契約に基づく代金総額につき,同月7日,支出命令をし,同月10日に支出した(甲9号証の1ないし8)。 以上の購入金額については,平成17年5月19日に起案された「西尾駅西地区市街地再開発事業に伴う不動産売買契約の締結について(伺い)」と題する書面に基づき,A前市長を含めて回議がなされており,同書面には,「現在の組合による事業継続が困難と判断せざるを得なくなったことから,今後においては,西尾市が組合員となり再開発事業を継続する必要が生じています。そのためには,再開発組合及び権利者の財産(平成14年11月6日に権利変換されたもの)すべてを購入し,西尾市がひとり組合員となり,組合事業ではあっても,公共事業地域として,市そして市民のため有効に活用していかなければなりません。これからの駅西にふさわしい計画変更を前提に,再開発事業を継続していくために,(略)契約を締結してよろしいか。」と記載され,「従前資産に対し組合より権利変換を受けた物件」としては,①西尾市a町b丁目c番地の宅地(1624.02㎡),②西尾市d町e丁目f番の宅地(1910.95㎡),③施設建築物の一部(建築物の専用部分及び共用部- 合より権利変換を受けた物件」としては,①西尾市a町b丁目c番地の宅地(1624.02㎡),②西尾市d町e丁目f番の宅地(1910.95㎡),③施設建築物の一部(建築物の専用部分及び共用部- 33 -分の共有持分),④建築施設の部分(建物敷地の共有持分)とされていた。 また,本件各売買契約における購入代金については,残留権利者7名については,権利変換額(合計2億9687万6102円)に20%の譲渡所得税相当額(合計5937万5220円)を上乗せした3億5625万1322円とし,本件組合については,本件土地の現在の評価額を8億6430万7500円として,これに本件組合が本件土地を更地にするまでに要した費用合計約10億9861万6000円のうちの2億6569万2500円を加算した11億3000万円とするのが相当とし,合計14億8625万1322円と決められた(甲10号証の1)。 (ケ) 平成17年7月15日に開催された全員協議会において,A前市長は,施設建築敷地である本件土地については,事業計画をいったん白紙に戻し,市長として将来,駅西が西尾の玄関口として誇れるものができるようにしておくことが市長としての責任である旨答弁した。 また,西尾市の建設部次長は,仮に本件組合の変更計画案どおりに事業を進めた場合には,西尾市は,公益施設,駐車場,補助金,負担金などとして総額25億7205万円の支出を要するが,本件各売買契約を締結することによって,売買代金14億8625万1322円との差額である10億8579万8678円の支出を未然に防ぐことができる旨説明した(甲12号証)。 オ西尾駅西A地区の現状(ア) 本件事業については,平成17年3月31日時点において,都市計画道路西尾安城線の直線化事業や整地作業等の平面的再開発はすべて完了した。また,名鉄 た(甲12号証)。 オ西尾駅西A地区の現状(ア) 本件事業については,平成17年3月31日時点において,都市計画道路西尾安城線の直線化事業や整地作業等の平面的再開発はすべて完了した。また,名鉄西尾駅西駅前広場整備事業は平成17年9月に,区画街路1号線整備事業は同年5月に,整地等事業は平成18年3月にそれぞれ完成予定であるが,西尾市によって取得された約3535㎡の土地を敷地とする施設建築に係る立体的再開発については事業期間が未定に- 34 -なっており,本件再開発ビルに代わる施設建築物を建築する具体的な計画は立っていない(甲1号証)。 (イ) A前市長は,平成元年9月に就任し,その後4期16年にわたって西尾市長を務めたが,平成17年9月に退任した(丙1号証)。 次期市長として就任したG市長は,住民参加の検討委員会である西尾駅西検討委員会を設置し,同委員会において,白紙状態になっている施設建築物の敷地(本件土地,約3535㎡)の利用方法について,同年10月から検討を重ねた結果,同委員会は,同年12月,一人組合を速やかに解散して土地の有効利用を図るべきであるとの提言をまとめた(甲18号証,19号証の1・2)。 これを受けて,G市長は,平成18年1月10日に開催された全員協議会で,一人組合の早期解散を図り,暫定的に朝市やイベント広場として利用していく方針であると報告した。このような報告を受けて,本件事業における本件施設の建築計画は中止される結果となったなどと新聞報道されている(甲23号証の1ないし3)。 (3)ア以上に認定したとおり,本件各売買契約は,平成13年12月に本件の事業計画が認可され,平成14年11月6日の権利変換期日が経過した後間もなく,保留床取得を予定していた商工会議所がその取得の断念を表明し,さらに平成16年1月25日に 約は,平成13年12月に本件の事業計画が認可され,平成14年11月6日の権利変換期日が経過した後間もなく,保留床取得を予定していた商工会議所がその取得の断念を表明し,さらに平成16年1月25日に至り,本件組合員で大口の残留権利者である名鉄東部交通が本件事業から撤退する意向を明らかにしたことなどから,予定した本件再開発ビルの保留床の処分の目処が立たない状況となり,本件組合による事業の遂行が著しく困難となったこと,このような事態の推移を受けて,西尾市は本件事業に対する善後策を,本件事業計画の認可権者である愛知県に図るなどしつつ検討した結果,本件各売買契約の締結による一人組合方式の解決策を選択するに至ったこと,この方策は,西尾市において本件組合及び残留権利者の権利をすべて買い取り,その借- 35 -入債務を清算させて一人組合となった上,本件事業の根幹をなす本件再開発ビルの建築を事実上中止し,事業全体の見直しを図ることを目的とするものであることが明らかである。 そして,前判示の事実経過に照らせば,本件組合が引き続き本件事業を遂行することは事実上困難で,事業の破綻と西尾駅前の開発に対する深刻な障害をもたらすおそれが強い状況に立ち至っていたと認められるから,本件組合による本件事業の遂行の方法を選択する余地はなく,一方,都市計画法上,権利変換期日後には,事業の完成によること以外に,組合の総会決議による解散は認められていないから,そのいずれの解決策もとり得ないものであったことが明らかである。 したがって,西尾市が,本件各売買契約によって本件組合及び残留権利者の権利をすべて買い取り,一人組合として本件事業の見直しを図るという手法を選択したことが,都市計画法が定める事業代行の方法との関係で許容されず,違法と解すべきものであるのか否か,そして,本件各 利者の権利をすべて買い取り,一人組合として本件事業の見直しを図るという手法を選択したことが,都市計画法が定める事業代行の方法との関係で許容されず,違法と解すべきものであるのか否か,そして,本件各売買契約の代金として支払われた総額14億8625万1322円が,合理性を認め得ないものと評価されるものであるか否か,そのほか本件事業の趣旨,経緯等の諸事情に照らして,本件各売買契約の締結及び代金の支払が,A前市長の政策判断に関する裁量権の逸脱・濫用による違法な職務行為として,損害賠償の責めに任ずべきものというべきであるか否か,これらを検討しなければならない。 イ都市再開発法は,第一種市街地再開発事業が施設建築物の建築を主とした公共事業としての性質を有することから,事業に要する費用を施行者の負担としつつも(119条),一定の場合には,地方公共団体による分担金,負担金,補助金を支出することを許容したり(120条ないし122条),資金の融通又はあっせん等を促すなどしており(123条),また,同事業における権利変換が,関係者に原状回復不能な権利関係の変動をもたらす- 36 -ことにかんがみ,権利変換後は,事業の完成以外には,施行主体である再開発組合の解散を認めておらず(45条2項,125条4項),再開発事業の継続中に組合の経済状態が悪化するなど,事業の継続が困難となるおそれがある場合には,都道府県知事又は市町村長が組合に代わって事業を完成させ,関係権利者の権利の保護を図るための制度として事業代行の制度を設けている(112条以下)。 そして,事業代行開始後は,組合の代表,業務の執行並びに財産の管理及び処分をする権限を事業代行者に専属させ(115条),事業代行者が統括する地方公共団体は,事業代行開始の公告の日後における組合の債務について保証契約を 後は,組合の代表,業務の執行並びに財産の管理及び処分をする権限を事業代行者に専属させ(115条),事業代行者が統括する地方公共団体は,事業代行開始の公告の日後における組合の債務について保証契約をすることができ(116条),その保証債務を弁済した場合の求償権について,組合の取得すべき施設建築物の一部の上に先取特権を有すること(118条)を定めている。 しかし,このような都市再開発法の規定によっても,同法による事業代行を実施すれば事業の完成を期待できる場合であればともかく,事業代行の実施によっても事業の完成が期待できない状況にある場合について,なおこの制度によらなければならないものとする趣旨であるかは疑問というべきである。そのような場合に事業代行によったときには,組合員による事業計画の必要な変更が可能になるとの保障があるわけではないから(30条ないし34条参照),事業の進行に困難を来たして,その解決がせん延し,結局,事業の破綻と負債の著しい増大をもたらすことが予想されるからである。 したがって,都市再開発法所定の事業代行制度は,事業の継続が困難となるおそれがある場合に取り得る制度的担保ではあっても,この事業代行によらない解決手段に合理性が認められる場合には,それによることを否定するものではないと解される。そして,都市再開発事業が高度の公共的性質を有する事業であることにかんがみると,地方公共団体が組合の権利- 37 -の一部を取得したり,又はその権利の全部を取得して一人組合となった上,新たな事業計画を策定して,その完成をもって解散することについては,その合理性,相当性が認められる限り,都市再開発法がこれを禁止していると解するのは相当でなく,またそのように解すべき根拠は見あたらない。 ウ前記認定の本件各売買契約締結に至る諸経過によれば, ては,その合理性,相当性が認められる限り,都市再開発法がこれを禁止していると解するのは相当でなく,またそのように解すべき根拠は見あたらない。 ウ前記認定の本件各売買契約締結に至る諸経過によれば,西尾市は,本件組合による本件事業の遂行が困難になった前記の状況から,事業計画の変更につき組合員間の合意を形成することが困難と予想され,事業の継続によっては西尾市に補助金や負担金等25億円以上のさらなる出費が予想され,なおかつ事業の完成の見通しが立て難いことから,事業代行による事業の完成よりも,西尾市において組合及び残留権利者の権利を全部買い取って,一人組合として本件事業を引き継ぎ,実質的に事業計画の見直しを行う方法を選択し,本件各売買契約を締結するに至ったことが明らかである。 そして,本件各売買契約の代金額については,上記のとおり,残留権利者の権利を権利変換当時の価格で評価した上,これに20パーセントの譲渡所得税相当額を付加した約3億6000万円に,なお本件組合において既に完了していた本件土地上の既存建物の立ち退きや除却,整地作業等のための資金として金融機関から融資を受けていた借入負債相当額の11億円余を加えた14億8625万1322円としたものであるが,この代金額は,被告による本件土地の鑑定評価額8億6500万円を前提とした場合,これに上記の整地作業等の完了に至るまでに要した諸経費を考慮すれば,本件組合及び残留権利者に対し,本件土地について整地までに必要とした諸経費及び整地後の土地評価額の合計額を超える過剰な利益を与えるとか,西尾市にとって上記の合計額を超える出捐をさせるものではなく,仮に本件土地の評価額を原告ら主張の約4億5000万円とした場合でも,整地までに必要とした諸経費との合計額において,上記と同様の理解が可- 38 -能な の合計額を超える出捐をさせるものではなく,仮に本件土地の評価額を原告ら主張の約4億5000万円とした場合でも,整地までに必要とした諸経費との合計額において,上記と同様の理解が可- 38 -能な範囲内のものである。 また,上記のとおり20パーセントの譲渡所得税相当額を加算した点についても,既に権利変換時に転出した地権者らの取扱いとの公平性や,本件各売買契約を成立させるための取引上の配慮の観点を加えれば,これが不当というまでの事情であるとは認め難いというべきである。 原告らは,本件各売買契約は,破綻した本件組合の負債を実質的に西尾市が肩代わりするものであり,代金額も本件土地の時価の数倍に及ぶものであって違法である旨主張するが,本件組合の事業継続が事実上困難となった状況に対して,西尾市が本件各売買契約による本件土地の取得と一人組合方式による解決策を選択した経緯は上述したとおりであって,それが違法であるか否かは,他の選択肢による場合の見通し,それとの利害得失の比較,本件各売買契約の代金総額とその算定根拠,本件事業の公共性の程度,事業の開始からそれ以降の進行の経緯,将来の見込みなど,一切の諸事情を総合勘案した上,政策的裁量判断として裁量権の範囲を逸脱・濫用するものであるか否かの観点からなされるべきものである。したがって,本件土地の代金総額が,実質的に本件組合の金融機関からの借入債務相当額を含み,経済的には,その債務を西尾市が肩代わりした形になるとしても,そのことによって直ちに本件各売買契約の締結と代金の支払が裁量権の逸脱・濫用にあたると評価することはできない。また,その代金総額を単に整地完了後の本件土地の評価額のみによって定めずに,整地完了に至るまでの必要諸経費分を含ませたことも,必ずしも不合理とはいえないことは上述したとおりである。 そ はできない。また,その代金総額を単に整地完了後の本件土地の評価額のみによって定めずに,整地完了に至るまでの必要諸経費分を含ませたことも,必ずしも不合理とはいえないことは上述したとおりである。 そして,本件事業は,西尾市の玄関口である西尾駅前の再開発事業であって,その構想は相当旧時から存在し,大方の市民,関係者らの支持や要望をふまえて西尾市においても積極的に調査,検討を重ねた上,第一種市街地再開発事業としてこれを進行することを決定し,本件事業計画の策定,- 39 -本件組合の設立等,主体的に関与してきた経緯であって,西尾市は本件組合と実質的な共同事業として本件事業に関与してきたこと,本件土地は,上記のとおり西尾駅前周辺地域に所在し,その開発については,将来的にも西尾市の市政と深い関わりを持つことが見込まれることなどの諸点も,本件各売買契約による一人組合の選択の相当性について考慮すべき事情と解することができる。本件事業は上記のとおりの経過によって,その後事実上完成する目処が立たない状況に立ち至ったことは前述したとおりであり,そのような展開となったことについて,西尾市の諸情勢の判断に慎重さを欠くところがあったとの批判があり得るとしても,本件各売買契約の締結及び代金の支出の違法性いかんを判断するについては,このような事後の事態の変動に対する対応としての判断の適否を,政策的裁量判断の性質をも考慮しつつ検討しなければならない。 結局のところ,事業代行によったなら,本件事業が当初の事業計画のまま完成に至ると見込まれたわけではないし,また,事業計画の必要な変更が容易になされると見込まれたわけでもなく,むしろそれについて支障が予想された状況であり,解決のせん延と費用の増大の危険性があったのであるから,このような諸事情を勘案してみると,事業代行によ な変更が容易になされると見込まれたわけでもなく,むしろそれについて支障が予想された状況であり,解決のせん延と費用の増大の危険性があったのであるから,このような諸事情を勘案してみると,事業代行によらずに一人組合による事業の見直しを図るため本件各売買契約の締結を選択した西尾市の判断が,当初の事業計画による本件事業の完成が困難となった状況の下で,今後の事業進行の目処を考慮しつつ,西尾市に対する費用負担の増大をできる限り回避するための政策的裁量判断として,明らかに合理性を欠くなど,著しくその裁量権を逸脱,濫用したものと評価することはできず,地方自治法2条14項や地方財政法4条1項の趣旨に照らしてみても,本件各売買契約の締結及び代金の支払が違法であって不法行為を構成するとは認め難いというべきである。 エなお,原告らは,本件各売買契約が,2000万円以上の不動産の買い- 40 -入れを内容とするものであるにもかかわらず,地方自治法96条1項8号,同法施行令121条の3,本件条例3条に基づく議会の議決なくして締結された違法なものであると主張する。 しかし,地方自治法96条1項8号を受けた同法施行令121条の2は,不動産の買入れにつき,市にあっては2000万円(5000平方メートル以上のものに限る。)という基準を定め,これを受けた本件条例3条も,議決を要する買い入れを「定価格2000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売り払い(土地については1件5000平方メートル以上のものに限る。)(略)」と規定しているから,地積が約3535㎡である本件土地の売買については,地方自治法等の上記規定は適用されないことが明らかである。 争点(3) 補助金返還請求を怠る事実の違法性について以上に判示したところによれば,西尾市が本件各売買契約を締結した 地の売買については,地方自治法等の上記規定は適用されないことが明らかである。 争点(3) 補助金返還請求を怠る事実の違法性について以上に判示したところによれば,西尾市が本件各売買契約を締結した結果,本件再開発ビルの建築は事実上白紙撤回され,現在においても,本件土地は更地のままになっているのであって,本件再開発ビルの建築にかかる事業は中止されたものと認められるが,別紙補助金交付一覧表の各補助金は,いずれも本件土地の整地事業等,既に完了した作業のために支出されたものであって,これらの事業に対する補助金の交付が,本件事業が事後的に事実上中止となったことによって,さかのぼって返還を要すべきものになるとは解されないから,これらの補助金は上記要綱16条(3) には該当せず,その返還請求を求める本訴請求部分も理由がない。(なお,西尾市監査委員は,本件監査請求のうち,平成14年以前に支出された補助金の返還を求める部分については,地方自治法242条2項本文の監査請求期間を経過していることを理由に,これを監査対象から除外しているが,本件監査請求によれば,原告らは,本件事業が西尾市によって承継されることにより,本件交付要綱16条(3) にいう「事業の中止又は廃止」に該当する事態が生じたことを理由に,本件組合に対し,補助金- 41 -総額の返還請求をすべきことを求めるもの,すなわち,財産の管理を怠る事実を是正すること(いわゆる真正怠る事実)を問題にしているものと認められるので,監査請求の期間制限の適用はないと解される。) 結論 以上のとおりであって,原告らの被告に対する請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文,66条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部中 らの被告に対する請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文,66条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官- 42 -(別紙)売買契約目録 本件組合との売買契約契約締結日平成17年6月2日代金額11億3000万円目的物本件組合が権利変換した以下の物件(1) 敷地及び共用部分の共有持分棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分(㎡)の部分共用店舗 128.680.0112440.0153530.016405 622.350.0543810.0742510.086483 415.230.0362830.0495400.046055 23.940.0020920.0028560.002625合計1,190.200.1040000.1420000.151568棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分(㎡)の部分共用事務所 1,432.00合計1,432.000.1250000.1710000.119944棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分- 43 -(㎡)の部分共用ホテルBF~ 3,414.19PHF合計3,414.190.270000.261161持分0.637691のうち0.166540019251棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分(㎡)の部分共用公益 265.100.1470950.2018280.153124 .166540019251棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分(㎡)の部分共用公益 265.100.1470950.2018280.153124 1,424.63 1,274.000.1109050.1521720.106710合計2,963.730.2580000.3540000.259834棟名階数床番号専有面積全体共用ホテル以外敷地持分(㎡)の部分共用駐車場BFB012,639.921F146.97合計2,786,890.2430000.3330000.207493(2)西尾市花ノ木町4丁目64番宅地1910.95㎡西尾市住吉町4丁目22番宅地1624.02㎡持分1兆分の0905379019251- 44 - 残留権利者との売買契約(1) 契約締結日平成17年6月2日代金額1億0053万8400円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.1022480.102248のうち0.102248(2) 契約締結日平成17年6月2日代金額1812万4537円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の 7年6月2日代金額1812万4537円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分- 45 -(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0184330.018433のうち0.01843(3) 契約締結日平成17年6月2日代金額9557万5200円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0972000.097200のうち0.097200(4) 契約締結日平成17年6月2日代金額1669万0800円- 46 -目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同 持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0169750.016975のうち0.016975(5) 契約締結日平成17年6月2日代金額7816万3147円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161- 47 -~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0794920.079492のうち0.079492(6) 契約締結日平成17年6月2日代金額3238万6998円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0162450.016245のうち0.016245B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左 上記各持分0.0162450.016245のうち0.016245B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0317160.031716のうち0.031716- 48 -(7) 契約締結日平成17年6月2日代金額1477万2240円目的物本件組合より権利変換を受けた以下の物件西尾駅西A地区第1種市街地再開発事業施設建築物の一部施設建築専用部分共用部分の共有持分敷地の共有持分階番号床面積用途廊下階段昇降機その他共有持分(㎡)B 1 F 3,414.19ホテル①0.270000①同左①同左①同左0.261161~②-②同左②同左②同左のうちPHF持分上記各持分0.0317160.031716のうち0.031716- 49 -(別紙)補助金一覧表エクセルデータ

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