令和2(ヨ)35 四国電力伊方原発3号炉運転差止仮処分命令申立事件

裁判年月日・裁判所
令和3年11月4日 広島地方裁判所 却下
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判決文本文97,564 文字)

- 1 - 令和2年(ヨ)第35号四国電力伊方原発3号炉運転差止仮処分命令申立事件 決 定 主 文 1 本件申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は,債権者らの負担とする。 理 由 第1 申立ての趣旨 1 債務者は,愛媛県西宇和郡伊方町九町字コチワキ3番耕地40番地3において 伊方発電所3号炉の運転をしてはならない。 2 申立費用は,債務者の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,債権者らにおいて,債務者が設置,運転している発電用原子炉施設で ある伊方発電所(以下「本件発電所」という。)3号炉(以下「本件原子炉」と いう。)及びその附属施設(本件原子炉とまとめて以下「本件原子炉施設」とい う。)は,特に地震に対する安全性を欠いており,それに起因する重大な事故が 上記運転中に発生し,これにより大量の放射性物質が放出されて,債権者らの生 命,身体,生活の平穏等の重大な法益に対する侵害が生ずる具体的危険があると して,債務者に対し,人格権に基づく妨害予防請求権としての本件原子炉の運転 差止請求権を被保全権利として,本件原子炉の運転の差止めを命ずる仮処分命令 を申し立てる事案である。 2 前提事実(争いのない事実又は疎明資料等により容易に認定できる事実(特に 認定根拠を掲記しないものは,争いがないか,審尋の全趣旨により容易に認定で きる事実である。)) ⑴ 当事者 ア 債権者らは,広島市a 区,広島市b 区,広島市c 区,広島市d 区,広島県尾 - 2 - 道市又は松山市に居住する者である。債権者らのうち松山市に居住する者の 肩書住所地と本件発電所の距離は約60㎞,その余の債権者らの肩書住所地 と本件発電所との距離は約100㎞(広島市)又は130㎞(広島県尾道市) 市に居住する者である。債権者らのうち松山市に居住する者の 肩書住所地と本件発電所の距離は約60㎞,その余の債権者らの肩書住所地 と本件発電所との距離は約100㎞(広島市)又は130㎞(広島県尾道市) である。 イ 債務者は,一部地域を除く四国4県へ電力供給を行う一般電気事業者であ るとともに,本件発電所において,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規 制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)2条5項所定の発電用 原子炉を3機(1号炉ないし3号炉)設置している発電用原子炉設置者(同 法43条の3の8第1項)である。 ⑵ 本件発電所の概要等 ア 本件発電所は,佐田岬半島の瀬戸内海側に位置している。 イ 本件発電所に設置されている3機の原子炉のうち,1号炉は平成28年5 月10日付けで,2号炉は平成30年5月23日付けで,いずれも「発電事業 の用に供する発電用の電気工作物」(電気事業法27条の27第1項3号)と しては廃止され,その運転を終了した。 本件原子炉(3号炉)は,債務者において昭和59年5月24日,通商産 業大臣(当時)に対し,原子炉設置変更(増設)許可申請を行い,昭和61 年5月26日,同許可処分を受けた上,平成6年12月15日に営業運転を 開始した発電用原子炉であって,その定格電気出力は,89万キロワットで ある。 ⑶ 原子力発電所の仕組み ア 核分裂の仕組み 全ての物質は元素(原子)からなっており,原子の中心には原子核(陽子 と中性子の集合体)がある。 1個の原子核が複数の原子核に分裂する現象を核分裂という。ウラン23 5の原子核は,核分裂の際に,大きなエネルギーとともに,核分裂生成物 - 3 - (放射性物質であるヨウ素131,キセノン133等)及び2個又は3個の 中性子を発生させる。ウラン235は,核分裂性核種の は,核分裂の際に,大きなエネルギーとともに,核分裂生成物 - 3 - (放射性物質であるヨウ素131,キセノン133等)及び2個又は3個の 中性子を発生させる。ウラン235は,核分裂性核種の一つとされ,中性子 を吸収すると2個(まれに3個)に核分裂しやすい性質を有し,その核分裂 によって発生した中性子の一部が別のウラン235の原子核に吸収されて次 の核分裂を起こす(核分裂が次々と繰り返されることを核分裂連鎖反応とい う。)。 もっとも,ウラン235の原子核は,速度の遅い中性子(いわゆる熱中性 子)に対する場合に核分裂しやすいところ,ウラン235の原子核の核分裂 の際に生じる中性子は速度が速いため(いわゆる高速中性子),効率的にウ ラン235の核分裂を起こすには,核分裂によって生じた中性子の速度を熱 中性子のそれにまで減速させる必要がある。また,核分裂を安定的に持続さ せていくためには,核分裂を起こす中性子の数を調整することも必要である。 このため,原子炉では,前者の目的を達するために減速材を,後者の目的を 達するために制御材を,それぞれ用いている。 イ 原子力発電の仕組み 原子力発電は,核分裂連鎖反応によって持続的に生じるエネルギーを熱エ ネルギーとして取り出し,この熱エネルギーによって発生させた蒸気でタービ ンを回転させて行う発電である。 ウ 原子炉の種類 減速材を用いる原子炉のうち,減速材として軽水を用い,かつ,減速材を 冷却材(炉心を冷却するとともに,原子炉で発生したエネルギーを取り出す ための媒介となるもの)と兼用するものを軽水炉という。また,軽水炉は, (ア)冷却材を原子炉内で沸騰させ,その蒸気をタービンに直接送って発電する タイプのもの(沸騰水型原子炉)と,(イ)一次冷却系と二次冷却系を有し,原 子炉で発生させた高温高圧の一次冷 。また,軽水炉は, (ア)冷却材を原子炉内で沸騰させ,その蒸気をタービンに直接送って発電する タイプのもの(沸騰水型原子炉)と,(イ)一次冷却系と二次冷却系を有し,原 子炉で発生させた高温高圧の一次冷却材の持つ熱エネルギーを蒸気発生器を 介して二次冷却系に伝達し,二次冷却系で発生した蒸気をタービンに送って - 4 - 発電するタイプのもの(加圧水型原子炉)に分けられる。 本件原子炉は,加圧水型原子炉である。 ⑷ 本件原子炉施設の基本構成 ア 本件原子炉 (ア) 原子炉容器 原子炉容器は,燃料集合体等を収納する,胴部の厚さが約20㎝の容器 であり,内部は一次冷却材である軽水で満たされている。 (イ) 燃料集合体 燃料集合体は,原子力発電の燃料(本件原子炉にあっては,二酸化ウラ ン又はウラン・プルトニウム混合酸化物を用いた燃料)を成型し,焼き固 めたペレットを燃料被覆管の中に詰めた燃料棒を束ねたものである。 (ウ) 制御材 a ホウ素 ホウ素は,中性子を吸収しやすい性質を利用し,一次冷却材に添加し て一次冷却材中のホウ素濃度を調整することによって,原子炉内の中性 子の数を調整する目的で用いられる。一次冷却材中のホウ素濃度の調整 は,平常運転時においては,体積制御タンク,充てんポンプ,ホウ酸タ ンク,ホウ酸ポンプ等の設備から構成される化学体積制御設備において 濃度を調整したホウ酸水を一次冷却設備に注入するなどして行われる。 b 制御棒 制御棒は,本件原子炉においては,燃料集合体の上部から挿入できる よう組み込まれており,制御棒の先端(下端)は,常に燃料集合体の中 に入った状態となっている。1つの燃料集合体に挿入される制御棒の全 ては上部で束ねられており(制御棒クラスタ),これを駆動装置によって 保持するととも ており,制御棒の先端(下端)は,常に燃料集合体の中 に入った状態となっている。1つの燃料集合体に挿入される制御棒の全 ては上部で束ねられており(制御棒クラスタ),これを駆動装置によって 保持するとともに,原子炉内で上下に駆動させることで,原子炉内の中 性子の数を調整し,核分裂の連鎖を安定した状態に制御する。 - 5 - イ 一次冷却設備 一次冷却設備は,原子炉内で核分裂によって生じた熱エネルギーによって 高温となった一次冷却材を蒸気発生器に送り,蒸気発生器内において一次冷 却材と二次冷却材との間で熱交換を行い,その結果低温になった一次冷却材 を,再び原子炉に戻し循環させる回路状の設備である。 ウ 二次冷却設備 二次冷却設備は,蒸気発生器内で熱交換を行って一次冷却材を除熱すると ともに蒸気となった二次冷却材をタービンに送り,発電した後の蒸気を水に 変えた後で,再び蒸気発生器に戻すための設備である。 エ 電気設備 (ア) 発電機 発電機は,二次冷却設備のタービンに同軸で直結され,タービンが回転 するエネルギーをもとに電気を発生させる設備である。 (イ) 外部電源 外部電源は,本件発電所とは別の発電所で発電した電気を本件発電所に 供給するための設備であり,発電機の停止中に本件発電所内の機器を運転 するのに必要な電気の供給源として位置づけられている。 (ウ) 非常用ディーゼル発電機 非常用ディーゼル発電機は,発電機が停止しかつ外部電源が喪失した場 合に,発電所の安全を確保するために必要な設備を起動するための設備で ある。 (エ) 直流電源設備 直流電源設備は,2組のそれぞれ独立した蓄電池,充電器,直流コント ロールセンタ等で構成され,発電機が停止し,かつ,外部電源及び非常用 ディーゼル発電機からの交流電源を全て喪失した場合であって 源設備 直流電源設備は,2組のそれぞれ独立した蓄電池,充電器,直流コント ロールセンタ等で構成され,発電機が停止し,かつ,外部電源及び非常用 ディーゼル発電機からの交流電源を全て喪失した場合であっても,原子炉 の温度,圧力等を監視・制御するために必要な機器に電気を供給すること - 6 - を目的としている。 オ 工学的安全施設 (ア) 原子炉格納容器 放射性物質を閉じ込める施設として,原子炉格納容器及びコンクリート 遮へい壁を設けている。 原子炉格納容器は,原子炉及び一次冷却設備等を囲っている気密性の極 めて高い密封容器であって,一次冷却材喪失事故(Loss of Coolant Accident。以下「LOCA」という。)等が発生した場合に圧力障壁とな り,放射性物質の放出に対する障壁となる。 コンクリート遮へい壁は,原子炉格納容器のさらに外側をコンクリート で囲んでおり,胴部の厚さは最大で約140㎝である。 原子炉格納容器とコンクリート遮へい壁の間には密閉された円環状空間 であるアニュラス部を設け,二重格納の機能を持たせている。 (イ) 非常用炉心冷却設備 非常用炉心冷却設備は,仮にLOCA等が発生して一次冷却材が減少し 原子炉を冷却する機能が低下した場合であっても,原子炉容器内にホウ酸 水を注入することで,燃料の重大な損傷を防止するための設備である。 (ウ) 原子炉格納容器スプレイ設備 原子炉格納容器スプレイ設備は,LOCA等が発生した場合に,核分裂 により生成された放射性ヨウ素を吸収しやすくなる薬剤を添加しながら原 子炉格納容器内にホウ酸水を噴霧することで,原子炉格納容器内の水蒸気 を凝固させて圧力上昇を抑えるとともに,原子炉格納容器内に浮遊する放 射性ヨウ素等を除去する機能を持つ。 (エ) アニュラス空気再循環 納容器内にホウ酸水を噴霧することで,原子炉格納容器内の水蒸気 を凝固させて圧力上昇を抑えるとともに,原子炉格納容器内に浮遊する放 射性ヨウ素等を除去する機能を持つ。 (エ) アニュラス空気再循環設備 アニュラス空気再循環設備は,LOCA等が発生した場合に,アニュラ ス部を負圧に保つ一方,原子炉格納容器からアニュラス部に漏えいした空 - 7 - 気を浄化しながら再循環させ,もって,上記漏えいに係る空気に含まれる 放射性物質が外部へ放出されることを抑制するための設備である。 カ 使用済燃料ピット 使用済燃料ピットは,原子炉から取り出された使用済燃料を貯蔵する設備 である。本件原子炉においては燃料取扱棟内に設置されており,壁面及び底 部を鉄筋コンクリート造とし,その内面にステンレス鋼板を内張りした構造 物である。 ⑸ 2011年東北地方太平洋沖地震及び東京電力株式会社福島第一原子力発電 所における事故 平成23年3月11日,2011年東北地方太平洋沖地震(以下「東北地方 太平洋沖地震」という。)が発生した。同地震は,三陸沖の太平洋海底を震源 とする海溝型のプレート間地震(Mw(モーメントマグニチュード)9.0) であった。 その当時,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力 発電所(以下「福島第一原発」という。)には,いずれも沸騰水型軽水炉であ る発電用原子炉1号機ないし6号機が設置されていた。このうち,運転中であ った1号機ないし3号機は,地震を感知した直後に自動的に緊急停止したもの の,地震による外部からの送電設備の損傷や津波等により,結果的に,1号機, 2号機は全電源を,3号機は全交流電源を,いずれも喪失した。このため,1 号機ないし3号機は,冷却機能を失い,相次いで炉心溶融を起こした。そして, 原子炉建屋の水素爆発(1 等により,結果的に,1号機, 2号機は全電源を,3号機は全交流電源を,いずれも喪失した。このため,1 号機ないし3号機は,冷却機能を失い,相次いで炉心溶融を起こした。そして, 原子炉建屋の水素爆発(1号機及び3号機),ブローアウトパネルの脱落によ る原子炉建屋内部と外気との連絡(2号機)及びベント(原子炉格納容器内の 圧力を下げるために放射性物質を含む空気をあえて排出する措置。1号機及び 3号機)等により,放射性物質が大量に外部に放出された。(福島第一原発に おいて上記のとおり生じた一連の事象をまとめて以下「福島第一原発事故」と いう。) - 8 - 福島第一原発事故の結果,避難区域指定は福島県内の12市町村に及び,避 難した人数は,平成23年8月29日の時点において,合計約14万6520 人に達した。また,東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法に基づいて設 置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(以下「国会事故調査会」 という。)の調査によれば,福島第一原発を中心とする半径20㎞圏内にある 7つの病院と介護老人保健施設に入院し又は入所していた者で,平成23年3 月末までに死亡した者は,合計で少なくとも60人に上った。 ⑹ 福島第一原発事故を受けた規制の強化 ア 平成24年6月27日,原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47 号。以下「設置法」という。)が新たに施行された。 設置法は,福島第一原発事故を契機に明らかとなった原子力の研究,開発 及び利用(以下「原子力利用」という。)に関する政策に係る縦割り行政の 弊害を除去し,並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機 能を担うことにより生ずる問題を解消するため,原子力利用における事故の 発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないと いう認識に立って,確 織が原子力利用の推進及び規制の両方の機 能を担うことにより生ずる問題を解消するため,原子力利用における事故の 発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないと いう認識に立って,確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における 安全の確保を図るため必要な施策を策定し,又は実施する事務を一元的につ かさどるとともに,その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立 場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し,もって国民の生命, 健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目 的とするものである(同法1条)。 原子力規制委員会は,設置法に基づいて設置された機関であって,国家行 政組織法3条2項の規定に基づく環境省の外局として位置づけられる(設置 法2条)。そして,原子力規制委員会は,国民の生命,健康及び財産の保護, 環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため,原子力利用における安全 の確保を図ることを任務とし(同法3条),同任務を達成するために原子力 - 9 - 利用における安全の確保に関することなどの事務をつかさどる(同法4条)。 また,原子力規制委員会は,その所掌事務について,法律若しくは政令を実 施するため,又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて,原子力規制委 員会規則を制定することができるものとされている(同法26条)。 イ そして,設置法附則に基づき,原子力基本法及び原子炉等規制法もそれぞ れ改正された。また,新たに設置された原子力規制委員会は,原子力規制委 員会規則の制定や同委員会における審査基準に関する内規の策定等について 所要の検討を遂げた。 その結果,発電用原子炉をめぐる一連の規制基準に関する法令及び内規が 次のとおり整備され,「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及 び 査基準に関する内規の策定等について 所要の検討を遂げた。 その結果,発電用原子炉をめぐる一連の規制基準に関する法令及び内規が 次のとおり整備され,「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及 び設備の基準に関する規則」(平成25年6月28日原子力規制委員会規則 第5号。以下「設置許可基準規則」という。)とともに,同年7月8日に施 行された(設置法附則1条4号,26条,設置許可基準規則附則1項)。 (ア) 発電用原子炉を設置しようとする者は,政令で定めるところにより,原 子力規制委員会の許可(原子炉設置許可)を受けなければならず(原子炉 等規制法43条の3の5第1項),原子力規制委員会は,上記許可の申請 があった場合においては,その申請が同法43条の3の6第1項各号所定 の基準に適合していると認めるときでなければ,上記許可をしてはならな い(同法43条の3の6第1項)。そして,原子炉設置許可を受けた者が, 使用の目的,発電用原子炉の型式,熱出力及び基数,発電用原子炉及びそ の附属施設の位置,構造及び設備等の事項(同法43条の3の5第2項2 ないし5号又は8ないし10号に掲げる事項)を変更しようとするときは, 政令で定めるところにより,原子力規制委員会の許可(原子炉設置変更許 可)を受けなければならないが(同法43条の3の8第1項),この場合 にも同法43条の3の6第1項が準用される(同法43条の3の8第2 項)。 - 10 - (イ) 上記原子炉設置許可及び原子炉設置変更許可の基準の一つである「発電 用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によ って汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものと して原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」(原 子炉等規制法43条の3の6第1項4号,43条の3の8第2 質によ って汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものと して原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」(原 子炉等規制法43条の3の6第1項4号,43条の3の8第2項)にいう 「原子力規制委員会規則」が設置許可基準規則である。 そして,設置許可基準規則で定める基準のうち,地震による損傷の防止 の点については,「耐震重要施設は,その供用中に当該耐震重要施設に大 きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力 (基準地震動による地震力)に対して安全機能が損なわれるおそれがない ものでなければならない。」との基準が設けられている(4条3項。本件 にあっては,上記基準をもって,以下「新規制基準」という。)。 なお,上記基準をめぐる定義の定めは,次のとおりである。 「耐震重要施設」 設計基準対象施設のうち,地震の発生によって生 ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影 響の程度が特に大きいもの(設置許可基準規則3条1項) 「設計基準対象施設」 発電用原子炉施設のうち,運転時の異常な過 渡変化又は設計基準事故の発生を防止し,又はこれらの拡大を防止するた めに必要となるもの(同2条2項7号) 「設計基準事故」 発生頻度が運転時の異常な過渡変化より低い異常 な状態であって,当該状態が発生した場合には発電用原子炉施設から多量 の放射性物質が放出するおそれがあるものとして安全設計上想定すべきも の(同2条2項4号) (ウ) 設置許可基準規則の解釈については「実用発電用原子炉及びその附属施 設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(原規技発第130 6193号(平成25年6月19日原子力規制委員会決定)。以下「設置 - 11 - 許可基準規則解釈」という。なお の附属施 設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(原規技発第130 6193号(平成25年6月19日原子力規制委員会決定)。以下「設置 - 11 - 許可基準規則解釈」という。なお,令和元年9月2日付けで改定されてい る(乙89))が,発電用軽水型原子炉施設の設置許可段階の耐震設計方 針に関わる審査において審査官等が設置許可基準規則及び設置許可基準規 則解釈の趣旨を十分踏まえ,基準地震動の妥当性を厳格に確認するために 活用することを目的とする内規として「基準地震動及び耐震設計方針に係 る審査ガイド」(以下「地震ガイド」という。甲23,乙67)が,いず れも原子力規制委員会によって示されている。 ⑺ 東北地方太平洋沖地震以後の本件原子炉の運転再開までの経過 ア 本件原子炉は平成23年4月29日から定期検査に入っていたところ,債 務者は,平成25年7月8日,原子力規制委員会に対し,本件原子炉に係る 原子炉設置変更許可を申請するとともに(以下「本件申請」という。),工 事計画認可及び保安規定変更認可の各申請をした。 本件申請については,平成27年5月21日から同年6月19日までの間, 原子力規制委員会が作成した本件原子炉施設の変更をめぐる審査書案に対す る科学的・技術的意見の公募手続(パブリックコメント)が実施された上, 同年7月15日,平成27年度第19回原子力規制委員会において「四国電 力株式会社伊方発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号原子炉施設 の変更)に関する審査書」(乙37)が確定されるとともに,本件申請に対 する原子力規制委員会の許可処分がされた。また,工事計画認可申請につい ては平成28年3月23日に,保安規定変更認可申請については同年4月1 9日に,それぞれ原子力規制委員会の認可処分がされた。 イ その後,本 規制委員会の許可処分がされた。また,工事計画認可申請につい ては平成28年3月23日に,保安規定変更認可申請については同年4月1 9日に,それぞれ原子力規制委員会の認可処分がされた。 イ その後,本件原子炉については,同年9月7日,安全対策工事の内容が認 可を受けた工事計画どおりであることなどを確認する検査(使用前検査)が 終了し,その頃,通常運転を再開した。 ⑻ 本件申請において策定された基準地震動 ア 本件申請時点における新規制基準の内容(乙89) - 12 - 設置許可基準規則解釈別記2第5項は,基準地震動は,最新の科学的・技 術的知見を踏まえ,敷地及び敷地周辺の地質・地質構造,地盤構造並びに地 震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なものとし, 次の方針により策定することと定めている(なお,基準地震動の妥当性を厳 格に確認するため,設置許可基準規則及び同規則解釈をさらに敷衍したもの が地震ガイドである。)。 (ア) 基準地震動は,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震 源を特定せず策定する地震動」について,解放基盤表面(基準地震動を策 定するために,基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に設定 する自由表面であって,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な拡がりを 持って想定される基盤の表面をいう。ここでいう上記の「基盤」とは,お おむね,せん断波速度Vs=700m/秒以上の硬質地盤であって,著し い風化を受けていないものとする。)における水平方向及び鉛直方向の地 震動としてそれぞれ策定すること。 (イ) 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は,内陸地殻内地震,プ レート間地震及び海洋プレート内地震について,敷地に大きな影響を与え ると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複 (イ) 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は,内陸地殻内地震,プ レート間地震及び海洋プレート内地震について,敷地に大きな影響を与え ると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し,選定 した検討用地震ごとに,不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震 動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を,解放基盤表面ま での地震波の伝播特性を反映して策定すること。なお,上記の「敷地ごと に震源を特定して策定する地震動」については,次に示す方針により策定 すること。 「内陸地殻内地震」とは,陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる 地震をいい,海岸のやや沖合で起こるものを含む。「プレート間地震」と は,相接する二つのプレートの境界面で発生する地震をいう。「海洋プレ ート内地震」とは,沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する - 13 - 地震をいい,海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレ ート内の地震」又は海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレ ート内の地震(スラブ内地震)」の2種類に分けられる。 a 内陸地殻内地震,プレート間地震及び海洋プレート内地震について, 活断層の性質や地震発生状況を精査し,中・小・微小地震の分布,応力 場及び地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関 する既往の研究成果等を総合的に検討し,検討用地震を複数選定するこ と。 b 内陸地殻内地震に関しては,次に示す事項を考慮すること。 ⒜ 震源として考慮する活断層の評価に当たっては,調査地域の地形・ 地質条件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査,地 球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組み合わせた調査 を実施した上で,その結果を総合的に評価し活断層の位置・形状・活 動性等を明らか 件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査,地 球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組み合わせた調査 を実施した上で,その結果を総合的に評価し活断層の位置・形状・活 動性等を明らかにすること。 ⒝ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては, 孤立した短い活断層の扱いに留意するとともに,複数の活断層の連動 を考慮すること。 c プレート間地震及び海洋プレート内地震に関しては,国内のみならず 世界で起きた大規模な地震を踏まえ,地震の発生機構及びテクトニクス 的背景の類似性を考慮した上で震源領域の設定を行うこと。 d 上記aで選定した検討用地震ごとに,後記⒜の応答スペクトルに基づ く地震動評価及び⒝の断層モデルを用いた手法による地震動評価を実施 して策定すること。なお,地震動評価に当たっては,敷地における地震 観測記録を踏まえて,地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸 特性(その地域における特性を含む。)を十分に考慮すること。 ⒜ 応答スペクトルに基づく地震動評価 - 14 - 検討用地震ごとに,適切な手法を用いて応答スペクトルを評価の上, それらを基に設計用応答スペクトルを設定し,これに対して,地震の 規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時 的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うこと。 ⒝ 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価 検討用地震ごとに,適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定 し,地震動評価を行うこと。 e 上記dの基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長 さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位 置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ並びにそれらに係る 考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地にお 源断層の長 さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位 置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ並びにそれらに係る 考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震 動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて 分析した上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を 用いて考慮すること。 f 内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち,震源が敷地に極 めて近い場合は,地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で,震源モデ ルの形状及び位置の妥当性,敷地及びそこに設置する施設との位置関係, 並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとと もに,これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上,上記 eの各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し,震 源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえ た上で,さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること。 g 検討用地震の選定や基準地震動の策定に当たって行う調査や評価は, 最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また,既往の資料等につい て,それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い,参照すること。 なお,既往の資料と異なる見解を採用した場合及び既往の評価と異なる - 15 - 結果を得た場合には,その根拠を明示すること。 h 施設の構造に免震構造を採用する等,やや長周期の地震応答が卓越す る施設等がある場合は,その周波数特性に着目して地震動評価を実施し, 必要に応じて他の施設とは別に基準地震動を策定すること。 (ウ) 「震源を特定せず策定する地震動」は,震源と活断層を関連付けること が困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測 記録を収集し,これらを基に, 基準地震動を策定すること。 (ウ) 「震源を特定せず策定する地震動」は,震源と活断層を関連付けること が困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測 記録を収集し,これらを基に,各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性 に応じた応答スペクトルを設定して策定すること。なお,上記の「震源を 特定せず策定する地震動」については,次に示す方針により策定すること。 a 解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペクトル の設定に反映するとともに,設定された応答スペクトルに対して,地震 動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮 すること。 b 上記の「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動 の妥当性については,申請時における最新の科学的・技術的知見を踏ま えて個別に確認すること。その際には,地表に明瞭な痕跡を示さない震 源断層に起因する震源近傍の地震動について,確率論的な評価等,各種 の不確かさを考慮した評価を参考とすること。 (エ) 基準地震動の策定に当たっての調査については,目的に応じた調査手法 を選定するとともに,調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによ って,調査結果の信頼性と精度を確保すること。また,上記の「敷地ごと に震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」 の地震動評価においては,適用する評価手法に必要となる特性データに留 意の上,地震波の伝播特性に係る次に示す事項を考慮すること。なお,上 記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず 策定する地震動」については,それぞれが対応する超過確率を参照し,そ - 16 - れぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当す るかを把握すること。 a 敷地及び敷地周辺の地 地震動」については,それぞれが対応する超過確率を参照し,そ - 16 - れぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当す るかを把握すること。 a 敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播 特性に与える影響を検討するため,敷地及び敷地周辺における地層の傾 斜,断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに,地震基盤の位 置及び形状,岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の地下構造 及び地盤の減衰特性を評価すること。なお,評価の過程において,地下 構造が成層かつ均質と認められる場合を除き,三次元的な地下構造によ り検討すること。 b 上記aの評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査につい ては,地域特性及び既往文献の調査,既存データの収集・分析,地震観 測記録の分析,地質調査,ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物 理探査等を適切な手順と組合せで実施すること。 イ 債務者による基準地震動の策定 債務者は,本件申請に当たり,次のとおりの調査,検討に基づき,基準地 震動を策定した(乙34,37,55ないし58,65。本件申請に対する 審査の過程で補正した内容を含む。)。 (ア) 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 a 検討用地震の候補とする地震の選定 ⒜ 被害地震の調査 債務者は,本件原子炉施設の敷地(以下「本件敷地」ということが ある。)周辺の被害地震について,地震史料及び明治以降の地震観測 記録を基に,地震の震央位置,規模等をまとめた地震カタログ(「最 新版 日本被害地震総覧」,「宇津カタログ(1982)」,「気象 庁地震カタログ」等)による調査を行った。この調査によって抽出し た地震について,規模及び位置等に関する最新の知見をもとに本件敷 - 17 - 地に影 」,「宇津カタログ(1982)」,「気象 庁地震カタログ」等)による調査を行った。この調査によって抽出し た地震について,規模及び位置等に関する最新の知見をもとに本件敷 - 17 - 地に影響を及ぼす地震として,本件敷地の震度が5弱(1996年以 前は旧気象庁震度階級でⅤ)程度以上であったと推定される地震を以 下のとおり選定した。 ・ 土佐その他南海・東海・西海諸道の地震(684年,M8 1/4) ・ 日向灘の地震(1498年,M7 1/4) ・ 安芸・伊予の地震(1649年,M6.9) ・ 宝永地震(1707年,M8.6) ・ 安政南海地震(1854年,M8.4) ・ 伊予西部の地震(1854年,M7.0) ・ 豊後水道の地震(1968年,M6.6) ⒝ 国の機関等による知見 地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)は,長期的な 観点から,南海トラフ沿いの地震について,四国沖から浜名湖沖まで の領域を震源域とする地震を想定し,その評価のとりまとめを行って いるところ,平成13年に,南海トラフ沿いの地震の発生位置(領域) 及び震源域の形態を,既往の調査結果から総合的に判断して一定のモ デルを提案し(想定南海地震(地震本部,M8.4)),また,平成 17年には,日向灘のプレート間地震についても,1968年日向灘 地震及び1662年の日向灘の地震に係る強震動評価を実施して断層 モデルを示した(日向灘の地震(地震本部,M7.6))。 中央防災会議は,平成15年,「東南海・南海地震等に関する専門 調査会」を設置し,東南海・南海地震などの過去の地震発生例を参考 にして,東海地震,東南海地震及び南海地震をさまざまに組み合わせ たケースを想定した検討を行い,想定南海地震として一定のモデルを 設定した(想定南海地震(中央防災会議,M8.6))。 内閣 生例を参考 にして,東海地震,東南海地震及び南海地震をさまざまに組み合わせ たケースを想定した検討を行い,想定南海地震として一定のモデルを 設定した(想定南海地震(中央防災会議,M8.6))。 内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(以下「内閣府検 - 18 - 討会」という。)は,南海トラフの巨大地震を対象として,過去に南 海トラフで発生した地震の特徴やフィリピン海プレートの構造等に関 する特徴などの現時点の科学的知見に基づきあらゆる可能性を考慮し た最大クラスの巨大な地震として,駿河湾から日向灘までを震源断層 域とするM9クラスを想定した検討を行った。そして,南海トラフの 巨大地震として4ケースのモデルを設定している。本件敷地に最も影 響があると考えられるのは,強震動生成域が最も本件敷地の近傍に配 置されている「陸側ケース」(内閣府検討会,M9.0))である。 また,地震本部が平成21年12月に作成した「『全国地震動予測 地図』技術報告書」(乙56)において示されている,フィリピン海 プレートのプレート間及びプレート内の震源断層をあらかじめ特定し にくい地震の地域区分,すなわち,南海トラフ沿い(領域1),日向 灘(領域2),安芸灘~伊予灘~豊後水道(領域3)及び九州から南 西諸島周辺のやや深発地震に対応する領域(領域4)の観点も踏まえ, 債務者において,上記地域区分ごとに,過去に発生した海洋プレート 内地震について,地震規模の推定結果に関する最新の知見も反映させ た上,上記各領域において最も規模が大きなものとして次のとおり整 理した。 ・ 領域1 ①2004年の地震(M7.4) ・ 領域2 ②1769年の地震(M7.4) ・ 領域3 ③1854年の地震(M7.0) ・ 領域4 ④1909年の地震(M7.3) もっとも,これらの地震のうち,本 004年の地震(M7.4) ・ 領域2 ②1769年の地震(M7.4) ・ 領域3 ③1854年の地震(M7.0) ・ 領域4 ④1909年の地震(M7.3) もっとも,これらの地震のうち,本件敷地を含む領域3における地 震(③)以外の地震(①,②及び④)は,本件敷地との間の震央距離 が離れているため,そのままでは本件敷地への影響は大きくないこと から,債務者は,安全側に立ち,上記①,②及び④の地震については, - 19 - 当該各領域のうち最も本件敷地に影響を与える位置で発生するものと し,それらを想定することとした。すなわち,①を震央距離約225 km の位置に(アウターライズ地震 (M7.4)),②を震央距離約7 7km の位置に(日向灘の浅い地震(M7.4)),④を震央距離約5 9km の位置に(九州の深い地震(M7.3))それぞれ想定すること とした。 ⒞ 本件敷地周辺の地震発生様式及び地震発生状況 本件敷地周辺の地震活動は,太平洋側沖合の南海トラフから陸側へ 沈み込む海洋プレートと陸域プレートとの境界付近で発生するプレー ト間地震,海洋プレート内で発生する地震,陸域及び沿岸で発生する 内陸地殻内地震の3つに大きく分けることができる。気象庁一元化震 源のうち本件敷地周辺で発生したM5未満の地震(微小地震)の分布 状況の調査,本件敷地周辺で発生した過去の地震に関する知見等を踏 まえると,本件敷地周辺で発生する地震の主な特徴は概ね次のとおり であった。 ① プレート間地震 南海トラフ沿いでM8程度の大地震が約10 0年から150年の間隔で発生し,日向灘周辺ではM7程度の地 震が十数年から数十年に一度の割合で発生していること ② 海洋プレート内地震 安芸灘や伊予灘など瀬戸内海の西部から 豊後水道付近のやや深いところ(約30~70㎞の深さ)でM7 向灘周辺ではM7程度の地 震が十数年から数十年に一度の割合で発生していること ② 海洋プレート内地震 安芸灘や伊予灘など瀬戸内海の西部から 豊後水道付近のやや深いところ(約30~70㎞の深さ)でM7 程度の地震が発生しており,過去に本件敷地周辺の沿岸地域に被 害をもたらした地震が知られていること ③ 内陸地殻内地震 本件敷地近傍ではほとんど発生しておらず, 発生が認められるものもM2未満のものである一方,大分県別府 付近でM7程度の地震が発生していること ⒟ 活断層の分布状況 - 20 - 債務者は,本件敷地周辺の活断層の分布を把握するため,文献調査, 地形調査,地表地質調査,海域地質調査,地球物理学的調査等の調査 を行った。上記各調査の結果,本件敷地の北方には敷地前面海域の断 層群(42㎞),伊予セグメント(23㎞),川上セグメント(36 ㎞)などから構成される中央構造線断層帯が四国陸域から佐田岬半島 西端部の北方まで分布し,本件敷地の沖合約8㎞を通過すること,さ らにその西方には,別府湾-日出生断層帯(76㎞)が豊予海峡から 別府市西方まで分布すること,これら以外にも,伊予灘北方には上関 断層(F-15),上関断層(F-16)等の活断層が,本件敷地の 南方には,八幡浜の五反田断層(2㎞),宇和海のF-21断層(2 2㎞)が,それぞれ分布することが分かった。 このうち,中央構造線断層帯は,債務者による上記各調査が行われ た当時の地震本部の知見(乙57)によれば,近畿地方の金剛山地の 東縁から淡路島南部の海域を経て四国北部を東西に横断し,伊予灘に 達する断層帯(全体としての長さ約360㎞)であって,過去の活動 時期の違いなどから,①金剛山地東縁(長さ約23㎞),②和泉山脈 南縁(長さ約44~52㎞),③紀淡海峡-鳴門海峡(長さ約43~ 51㎞),④讃岐 層帯(全体としての長さ約360㎞)であって,過去の活動 時期の違いなどから,①金剛山地東縁(長さ約23㎞),②和泉山脈 南縁(長さ約44~52㎞),③紀淡海峡-鳴門海峡(長さ約43~ 51㎞),④讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部(長さ約130㎞), ⑤石鎚山脈北縁(長さ約30㎞)及び⑥石鎚山脈北縁西部-伊予灘 (長さ約130㎞)の6つの区間に区分されており,その将来の活動 については,上記6つの区間が個別に活動する可能性,複数の区間が 同時に活動する可能性,これら6つの区間とは異なる範囲が活動する 可能性,さらには,断層帯全体が同時に活動する可能性も否定できな いと指摘されていた。 また,別府-万年山断層帯は,債務者による上記各調査が行われた 当時の地震本部の知見(乙58)によれば,ほぼ東西方向の多数の正 - 21 - 断層から構成されているが,断層の走向や変位の向きから,別府湾― 日出生断層帯(76㎞),大分平野-由布院断層帯(40㎞)等に区 分され,本件敷地に最も近い別府湾-日出生断層帯は,東部と西部で 最新活動時期が異なり,それぞれが単独で活動すると推定されている が,全体が同時に活動する可能性,さらには,その東端が中央構造線 断層帯に連続している可能性があるとも指摘されていた。 一方,債務者は,本件敷地周辺において地質調査を実施し,断層の 分布形態,活動様式等の性状を特定した結果,中央構造線断層帯を構 成する活断層として,北東方向から南西方向へ,順に,①川上断層 (断層の長さ約36㎞),②伊予断層(同約23㎞),③敷地前面海 域の断層群(断層群の長さ約42㎞,本件敷地の沖合約8㎞に分布), ④豊予海峡断層(同約23㎞)が存在すること,さらに上記各断層間 には,断層破壊の末端(ジョグ)を示唆する地質構造が分布すること (上記①と②の断層の間には重信引張性ジ ,本件敷地の沖合約8㎞に分布), ④豊予海峡断層(同約23㎞)が存在すること,さらに上記各断層間 には,断層破壊の末端(ジョグ)を示唆する地質構造が分布すること (上記①と②の断層の間には重信引張性ジョグ(長さ約12㎞),同 ②と③の断層の間には串沖引張性ジョグ(同約13㎞),同③と④の 断層の間には三崎沖引張性ジョグ(同約13㎞))が確認された。 ⒠ 地震の分類 債務者は,以上で示した地震について,地震発生様式ごとに整理・ 分類し,検討用地震の候補とする地震を選定した。 ⅰ 内陸地殻内地震 上記⒟で示した活断層の分布状況に基づき,本件敷地周辺におい て考慮すべき活断層による内陸地殻内地震として,以下のとおり選 定した。 ・ 中央構造線断層帯による地震 敷地前面海域の断層群(54㎞。両端のジョグのそれぞれ中 - 22 - 間まで延伸したもの) 伊予断層(33㎞。上記と同じ) 金剛山地東縁-伊予灘(360㎞) 石鎚山脈北縁西部-伊予灘(130㎞) ・ 別府湾-日出生断層帯による地震 ・ F-21断層による地震 ・ 五反田断層による地震(15㎞。長さが短く,孤立した断層 であることから,地表で認められる活断層の長さが必ずしも震 源断層の長さを示さない可能性を考慮したもの) ・ 上関断層(F-15につき48㎞,F-16につき32㎞) ⅱ プレート間地震 上記⒜及び⒝を考慮し,南海トラフ沿いの地震及び日向灘におけ る地震として以下の地震を選定した。 ・ 土佐その他の南海・東海・西海諸道の地震(684年,M8 1/4) ・ 宝永地震(1707年,M8.6) ・ 安政南海地震(1854年,M8.4) ・ 想定南海地震(地震本部,M8.4) ・ 想定南海地震(中央防災会議,M8.6) ・ 南海トラフの巨大地震(陸側ケ 宝永地震(1707年,M8.6) ・ 安政南海地震(1854年,M8.4) ・ 想定南海地震(地震本部,M8.4) ・ 想定南海地震(中央防災会議,M8.6) ・ 南海トラフの巨大地震(陸側ケース)(内閣府検討会,M9. 0) ・ 日向灘の地震(1498年,M7 1/4) ・ 日向灘の地震(地震本部,M7.6) ⅲ 海洋プレート内地震 南海トラフから安芸灘~伊予灘~豊後水道海域へ西北西の方向に 沈み込むフィリピン海プレートで発生する海洋プレート内地震につ - 23 - いて,上記⒜及び⒝の検討結果を踏まえ,以下の地震を選定した。 ・ 安芸・伊予の地震(1649年,M6.9) ・ 伊予西部の地震(1854年,M7.0) ・ 豊後水道の地震(1968年,M6.6) ・ 九州の深い地震(M7.3) ・ 日向灘の浅い地震(M7.4) ・ アウターライズ地震(M7.4) b 検討用地震の選定 債務者は,上記a⒠のとおり選定した地震から,本件敷地に特に大き な影響を与えると予想される地震を地震発生様式の分類ごとに検討用地 震として選定することとし,検討用地震の選定にあたっては,応答スペ クトルに基づく地震動評価を行い,以下のとおり検討用地震を選定した。 ⒜ 内陸地殻内地震 中央構造線断層帯による地震は,敷地前面海域の断層群を含む区間 として複数の断層長さを考慮するケースを検討用地震の候補として選 定しているが,検討用地震の選定にあたっては,敷地前面海域の断層 群(54㎞)で代表させて検討を行った。その結果,候補となる各地 震(上記a⒠ⅰ)のうち,本件敷地への影響が最も大きいと考えられ る地震は,敷地前面海域の断層群による地震となった。 なお,敷地前面海域の断層群は,中央構造線断層帯の一部であり, 当時,地震本部において中央構造線断層帯の敷 ,本件敷地への影響が最も大きいと考えられ る地震は,敷地前面海域の断層群による地震となった。 なお,敷地前面海域の断層群は,中央構造線断層帯の一部であり, 当時,地震本部において中央構造線断層帯の敷地前面海域の断層群を 含む複数区間の連動の可能性及び中央構造線断層帯と別府-万年山断 層帯との連動の可能性が言及されていたことを踏まえ,検討用地震と しては,これらの連動を含む区間を考慮した断層群による地震を選定 した。 ⒝ プレート間地震 - 24 - 候補となる各地震のうち,応答スペクトルによる地震動評価の結果, 本件敷地への影響が最も大きいと考えられる地震は,内閣府検討会に よる南海トラフの巨大地震(陸側ケース)となったことから,これを 検討用地震として選定した。 ⒞ 海洋プレート内地震 候補となる各地震のうち,応答スペクトルによる地震動評価の結果, 本件敷地への影響が最も大きいと考えられる地震は,1649年安芸 ・伊予の地震となったことから,これを検討用地震として選定した。 c 地震動評価のための敷地地盤の評価 債務者は,本件敷地の地盤における増幅特性の有無を把握すべく次の とおりの地下構造評価を実施した。 ⒜ 地震観測記録を用いた評価 債務者は,本件敷地地盤において,昭和50年から地震観測(強震 及び微小地震)を実施しているところ,これまでに観測された比較的 振幅の大きな地震は,全て海洋プレート内地震であり,内陸地殻内地 震,プレート間地震について振幅の大きな記録は得られていない。債 務者は,本件発電所で観測した地震のうち,距離減衰式の一つである Noda et.al(2002)の方法(以下「耐専式」という。なお,以下において 略称されている文献の表題等については,いずれも別紙文献等目録記 載のとおりである。)との比較が可能な比較的規模の大き Noda et.al(2002)の方法(以下「耐専式」という。なお,以下において 略称されている文献の表題等については,いずれも別紙文献等目録記 載のとおりである。)との比較が可能な比較的規模の大きい内陸地殻 内地震を用いて,観測記録の応答スペクトルと耐専式により推定した 応答スペクトルの比をとって増幅特性の検討を行った。その結果,本 件敷地の岩盤が耐専式の想定する地盤よりも硬いこと,どれも遠方の 地震であり観測記録の振幅が小さいことなどから,どの地震について も短周期側では観測値が予測値よりも小さい傾向を示しており,特に 顕著な増幅特性を示す地震はなかった。 - 25 - 次に,債務者は,対象とする地震の規模をM2程度にまで広げて, 地震波の到来方向によって特異性が見られないかの検討を行ったが, 到来方向によって増幅特性が異なるような傾向はなかった。 ⒝ 深部ボーリング等による評価 債務者は,本件発電所建設当時,最深深度500mのボーリング調 査を実施済みであったが,平成22年から深部ボーリング調査を実施 し,本件敷地のさらに地下深部までの地質及び地盤物性を把握すると ともに,深部の地下構造に起因する地震動の増幅特性がないことを確 認した。深部ボーリング調査は,本件敷地の南西部(荷揚岸壁付近) において,深度2000m,500m,160m,5mの4孔のボー リング孔を掘削するもので,深度2000mまでの連続したボーリン グコアを採取し,これを観察して地質柱状図を作成するとともに,深 部ボーリング孔内において物理検層やオフセットVSP探査を実施し た。そして,従来のボーリング調査の結果と合わせて地下構造の検証 を行った。また,地下深部における地震動を観測し,地表で観測した 地震動との比較を行うことにより実際に地震動が増幅しないことを検 証することなどを目的 従来のボーリング調査の結果と合わせて地下構造の検証 を行った。また,地下深部における地震動を観測し,地表で観測した 地震動との比較を行うことにより実際に地震動が増幅しないことを検 証することなどを目的に,各ボーリング孔底部に地震計を設置し,地 震観測を開始した。深部ボーリング調査の結果は次のとおりであり, 本件敷地の地盤は速度構造的に特異性を有する地盤ではないことを確 認した。 ⅰ 地質構造 深部ボーリング調査の調査地点では,地表付近に埋立土や風化岩 が薄く分布するものの深度約50mで新鮮な岩盤となり,深度約5 0mから深度約2000mまで堅硬かつ緻密な結晶片岩が連続する。 本件敷地の地盤を構成する塩基性片岩(以下「緑色片岩」というこ とがある。)の下位に三波川変成岩類のうち主に泥質片岩が分布し, - 26 - 塩基性片岩,珪質片岩及び砂質片岩の薄層を挟む。地表部の塩基性 片岩を主体とする地層とその下位の泥質片岩を主体とする地層の境 界面は緩く北へ傾斜していると推定され,本件原子炉の炉心位置で は深度約350m以深が泥質片岩主体となっている。 ⅱ 速度構造 深部ボーリング孔内での物理検層の結果によると,P波速度及び S波速度は地下深部に至るにつれて漸増し,地盤の密度は岩種に応 じてやや変化するものの,深度方向への大きな増減傾向は認められ ない。 また,オフセットVSP探査(地表に震源を設置して地震波を人 工的に発生させ,地下の地層境界面(反射面)で反射した地震波を ボーリング孔内の受振器で観測することにより,ボーリング孔周辺 の地下構造を調査する手法)の結果によると,地下深部までほぼ水 平な反射面が連続し(オフセットVSP探査による反射面と反射法 探査による反射面とを比較しても連続性に問題はない。),大規模 な断層を示唆する不連続,地震動の特異な増幅の 果によると,地下深部までほぼ水 平な反射面が連続し(オフセットVSP探査による反射面と反射法 探査による反射面とを比較しても連続性に問題はない。),大規模 な断層を示唆する不連続,地震動の特異な増幅の要因となる低速度 域及び褶曲構造は認められず,本件敷地地盤の速度構造(地震波の 速度分布)は,乱れがなく,均質である。 ⒞ 解放基盤表面の設定 債務者は,以上のような本件敷地の地盤に係る状況を総合的に判断 し,原子炉建屋及びその周りの地盤は,約2600m/秒のS波速度 を持つ堅固な岩盤が十分な広がりと深さを持っていることが確認され ていることを踏まえ,敷地高さと同じ標高10mを解放基盤表面とし て設定した。 d 地震動評価 ⒜ 内陸地殻内地震 - 27 - ⅰ 基本震源モデル 債務者が内陸地殻内地震の検討用地震として選定したのは敷地前 面海域の断層群(中央構造線断層帯)の地震であった。債務者は, その基本震源モデルを設定するに当たり,断層長さにつき,中央構 造線断層帯と九州側の別府-万年山断層帯が全区間(480㎞)に おいて連動するケース(以下「480㎞ケース」という。)と設定 する一方,上記区間の中で部分破壊による地震が起こることを想定 することとし,四国西部のセグメント(130㎞)が連動するケー ス(以下「130㎞ケース」という。)及び敷地前面海域セグメン ト(54㎞)が単独で活動するケース(以下「54㎞ケース」とい う。)をも設定し,それぞれ不確かさを考慮した解析を行うことと した。 また,断層モデルを用いた手法による地震動評価において必要な パラメータ(地震モーメント,平均応力降下量,アスペリティの応 力降下量等)を設定する上で用いるスケーリング則については,壇 ほか(2011)を基本として採用した。さらに,480㎞ケース及び1 30㎞ケースでは タ(地震モーメント,平均応力降下量,アスペリティの応 力降下量等)を設定する上で用いるスケーリング則については,壇 ほか(2011)を基本として採用した。さらに,480㎞ケース及び1 30㎞ケースではFujii and Matsu’ura (2000) のスケーリング則 を,54㎞ケースでは入倉・三宅(2001)によって算出される地震モ ーメントにFujii and Matsu’ura (2000)の平均応力降下量を組み合 わせて用いる手法(以下「入倉・三宅の手法」という。)をそれぞ れ基本震源モデルに織り込むこととした。債務者が,480㎞ケー ス及び130㎞ケースにつきFujii and Matsu'ura (2000)を採用し たのは,現在提案されている主要なスケーリング則のうち,同手法 が壇ほか(2011)と並び長大断層を含んだデータに基づいて開発され た手法の一つであり,地震本部が作成した平成21年12月21日 改訂に係る「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシ - 28 - ピ」)」(以下「レシピ」という。乙44)においても長大断層の知 見としてこの手法による平均応力降下量を用いる手法が提案されて いることを踏まえたもの,54㎞ケースにつき入倉・三宅の手法を 採用したのは,レシピにおいてこれらを用いる手法が提案されてい ることを踏まえたものであった。 ⅱ 不確かさの考慮 債務者は,応答スペクトルに基づく地震動評価において,480 ㎞,130㎞及び54㎞の3ケースそれぞれについて,不確かさの 考慮として,断層傾斜角が鉛直のモデルと北傾斜のモデルを考慮す ることとした。さらに,債務者は,応答スペクトルに基づく地震動 評価の過程で,断層長さを69㎞とするケース(以下「69㎞ケー ス」という。)を設定し,これについても,不確かさの考慮として 断層傾斜 慮す ることとした。さらに,債務者は,応答スペクトルに基づく地震動 評価の過程で,断層長さを69㎞とするケース(以下「69㎞ケー ス」という。)を設定し,これについても,不確かさの考慮として 断層傾斜角が鉛直のモデルと北傾斜のモデルとをそれぞれ評価し, 基準地震動Ssの策定において考慮することとした。 なお,債務者は,69㎞ケースは,ジョグで破壊が停止せずさら に長い区間で連動することを意味するが,もともと,ジョグは,断 層の破壊が停止し,乗り移る領域のため,変位量は低減するはずで あって,科学的には考え難い連動ケースであると考えており,新規 制基準が定められる以前の地震動評価においては不確かさの一つと して考慮していたが,新規制基準実施後においては,69㎞ケース を包含する480㎞ケース及び130㎞ケースを基本震源モデルと して設定することにより,69㎞ケースの評価はそれに含まれるも のと理解していた。もっとも,債務者は,平成26年9月12日の 原子力規制委員会の審査会合において,69㎞ケースの地震動評価 についても応答スペクトル法での評価を求められたことから,平成 26年11月7日付けコメント回答においてその評価を示すことに - 29 - した。 また,債務者は,断層モデルで用いた地震動評価における不確か さの考慮にあたり,①破壊開始点につき,地震動評価への影響が大 きくなるように,断層東下端,中央下端及び西下端の3か所のケー ス又は上記3か所に敷地前面海域セグメントのアスペリティ下端2 か所を加えた合計5か所のケースのいずれかに設定し,②アスペリ ティ深さにつき,上記①と同様の趣旨で断層上端にアスペリティを 配置した上,③断層長さにつき,480㎞ケースに加え,130㎞ ケース,54㎞ケースでも評価することとし,上記①ないし③の不 確かさを,いずれも基本震 つき,上記①と同様の趣旨で断層上端にアスペリティを 配置した上,③断層長さにつき,480㎞ケースに加え,130㎞ ケース,54㎞ケースでも評価することとし,上記①ないし③の不 確かさを,いずれも基本震源モデルに織り込むこととした。その一 方,債務者は,④短周期レベルの応力降下量,⑤断層傾斜角(北傾 斜),⑥断層傾斜角(南傾斜),⑦破壊伝播速度及び⑧アスペリテ ィの平面位置については,基本震源モデルの不確かさに重畳させる, 独立した不確かさとして考慮することとした。 債務者は,具体的には,上記④ないし⑧の不確かさを次のとおり 考慮した。 ・ 上記④について 2007年新潟県中越沖地震(以下「新潟 県中越沖地震」という。)の震源特性として,短周期レベルが 平均的な値の1.5倍程度大きかったという指摘があるところ, これは,ひずみ集中帯に位置する逆断層タイプの地震という地 域性によると考えられるため,本来ならば,過去の地震観測記 録に基づいて本件原子炉施設周辺で発生する地震の震源特性の 分析を行うべきところであるが,本件原子炉施設周辺では規模 の大きい内陸地殻内地震は発生していないことを踏まえ,新潟 県中越沖地震の知見を反映し,短周期レベルと相関関係のある 応力降下量を基本震源モデルの1.5倍又は20M㎩とした場 - 30 - 合の評価を行う。 ・ 上記⑤について 敷地前面海域の断層群の震源断層は横ずれ 断層と推定されるため傾斜角が高角度である可能性が高いが, 活断層としての中央構造線が北へ傾斜する地質境界と一致する 可能性を完全には否定できないことから,横ずれ断層について は,傾斜角90度の場合(以下「鉛直モデル」という。)のみ ならず,北に30度傾斜させた場合(以下「北傾斜モデル」と いう。)の評価を行う。 ・ 上記⑥について 断層傾斜角のばらつきを踏まえ, ついて は,傾斜角90度の場合(以下「鉛直モデル」という。)のみ ならず,北に30度傾斜させた場合(以下「北傾斜モデル」と いう。)の評価を行う。 ・ 上記⑥について 断層傾斜角のばらつきを踏まえ,敷地側に 傾斜する場合を考慮し,横ずれ断層について南に80度傾斜さ せた場合(以下「南傾斜モデル」という。)の評価を行う。 ・ 上記⑦について 海外の長大な活断層の破壊伝播速度がS波 速度を超える事例があるとの知見を踏まえ,480㎞及び13 0㎞の各ケースについては破壊伝播速度Vr=Vs(Vsは地 震発生層のS波速度)の場合の評価を行い,54㎞ケースにつ いては,平均的な破壊伝播速度の不確かさに関する知見を踏ま え破壊伝播速度Vr=0.87Vsの場合の評価を行う。 ・ 上記⑧について 基本的にはジョグにアスペリティは想定さ れないものの,完全には否定できないことから,敷地正面のジ ョグにアスペリティを配置する場合の評価を行う。 なお,Fujii and Matsu'ura (2000)を用いた480㎞及び130㎞ の各ケースでは,壇ほか(2011)による検討結果から,影響が比較的 大きかった応力降下量と破壊伝播速度を考慮することとした。 ちなみに,各基本震源モデルを解析したところ,断層長さの基本 となる480㎞から断層長さを変えても地震動レベルはほぼ変わら ない結果が得られた。したがって,130㎞及び54㎞の各不確か - 31 - さケースの地震動レベルについても,断層長さ480㎞における各 不確かさケースの地震動レベルとほぼ等しいと推定される。このた め,54㎞ケースで入倉・三宅の手法を用いる場合の各不確かさケ ース(480㎞ケースでは入倉・三宅の手法を用いていない。)と, 54㎞ケースで壇ほか(2011)を用いる場合における破壊伝播速度の 不確かさケース( ケースで入倉・三宅の手法を用いる場合の各不確かさケ ース(480㎞ケースでは入倉・三宅の手法を用いていない。)と, 54㎞ケースで壇ほか(2011)を用いる場合における破壊伝播速度の 不確かさケース(480㎞の不確かさケースとは設定値が異なる。) とを除き,130㎞及び54㎞の各不確かさケースの評価結果につ いては,480㎞の各不確かさケースの評価結果で代表させること とした。 ⅲ 応答スペクトルに基づく地震動評価 応答スペクトルに基づく地震動評価においては,480㎞,13 0㎞及び54㎞の3ケースに加え,敷地前面海域の断層群(42㎞) の両端にあるジョグ(各13㎞)のさらに両端まで連動することを 想定した69㎞ケースのそれぞれについて,断層傾斜角が鉛直のモ デルと北傾斜のモデルを考慮した。 また,適用する手法(距離減衰式)については,耐専式を基本と するものの,130㎞ケース,69㎞ケース及び54㎞ケースのう ち,それぞれ断層傾斜角を鉛直とする3つのケースについては,耐 専式による評価結果が過大となるとして,耐専式以外の複数の距離 減衰式を用いた評価を行った。上記3ケースを除くケースについて は,耐専式を含む複数の距離減衰式によって評価を行った。 そして,債務者は,地震規模の設定については,断層長さに基づ いて,松田(1975)で紹介されている断層長さ(L)と地震のマグニ チュード(M)との関係を示す経験式(以下「松田式」という。) により設定することとした。 ⅳ 断層モデルを用いた手法による地震動評価 - 32 - 断層モデルを用いた手法による地震動評価を行うにあたっては, まず,中央構造線断層帯及び別府-万年山断層帯の連動を考慮した 480㎞の基本震源モデルについて,統計的グリーン関数法及び経 験的グリーン関数法により評価し,両者を比較した。な 評価を行うにあたっては, まず,中央構造線断層帯及び別府-万年山断層帯の連動を考慮した 480㎞の基本震源モデルについて,統計的グリーン関数法及び経 験的グリーン関数法により評価し,両者を比較した。なお,経験的 グリーン関数法に用いる要素地震は,2001年芸予地震(以下 「芸予地震」という。)の余震である安芸灘の地震(M5.2)の 本件敷地における観測記録を用いた。適用にあたっては,当該地震 がスラブ内地震であるため,内陸地殻内地震の評価に用いることが できるよう,距離及びパラメータ(地震モーメント,応力降下量等) を補正した。上記比較の結果,統計的グリーン関数法及び経験的グ リーン関数法のいずれによった場合も整合的であることが確認され たものの,原子炉施設に影響の大きい周期0.1秒付近の地震動に ついては経験的グリーン関数法の結果の方が厳しい結果を与えるも のであったことから,断層モデルを用いた手法による地震動評価に おいては,経験的グリーン関数法を採用した。 ⒝ プレート間地震 ⅰ 基本震源モデル 基本震源モデルとしては,検討用地震として選定した,内閣府検 討会の南海トラフの巨大地震(陸側ケース)(M9.0)を採用す ることとした。 ⅱ 不確かさの考慮 南海トラフの巨大地震(陸側ケース)に設定された強震動生成域 に加え,さらに本件敷地直下にも強震動生成域を追加配置する不確 かさの考慮を行った。 ⅲ 応答スペクトルに基づく地震動評価 応答スペクトルに基づく地震動評価では,パラメータとしてM8. - 33 - 3を採用し,耐専式に基づき評価を行った。 ⅳ 断層モデルを用いた手法による地震動評価 プレート間地震については適切な要素地震が得られていないこと や,内閣府検討会が統計的グリーン関数法を用いていることを踏ま え,統計的グリーン関数法及びハイ ⅳ 断層モデルを用いた手法による地震動評価 プレート間地震については適切な要素地震が得られていないこと や,内閣府検討会が統計的グリーン関数法を用いていることを踏ま え,統計的グリーン関数法及びハイブリッド合成法により評価を行 った。 ⒞ 海洋プレート内地震 ⅰ 基本震源モデル 海洋プレート内地震については,1649年安芸・伊予の地震 (M6.9)を検討用地震として選定したが,基本震源モデルの設 定にあたっては,地震発生位置と規模の不確かさをあらかじめ織り 込むこととし,本件敷地下方に既往最大規模(1854年伊予西部 地震のM7.0)の地震を仮定するなどし,「想定スラブ内地震」 として地震動評価を行った。 ⅱ 不確かさの考慮 不確かさの考慮においては,芸予地震(M6.7)を再現したモ デルをM7.0に較正したケース,本件敷地の真下に想定する地震 規模をM7.2としたケース,アスペリティの位置を断層上端に配 置したケース,本件敷地東方の領域に水平に近い断層面を考慮した ケース(M7.4)を設定した。 ⅲ 応答スペクトルに基づく地震動評価 応答スペクトルに基づく地震動評価では,耐専式に基づき評価を 行った。 ⅳ 断層モデルを用いた手法による地震動評価 断層モデルを用いた手法による地震動評価では,本件敷地で得ら れた芸予地震の余震である安芸灘の地震の観測記録を要素地震とし - 34 - た経験的グリーン関数法により評価を行った。 (イ) 震源を特定せず策定する地震動 債務者は,震源を特定せず策定する地震動について,次のとおり評価し た。 a 加藤ほか(2004)の知見 債務者は,震源を特定せず策定する地震動に関する代表的な知見であ る加藤ほか(2004)が提案する「地震基盤における地震動」をもって震源 を特定せず策定する地震動として考慮するこ か(2004)の知見 債務者は,震源を特定せず策定する地震動に関する代表的な知見であ る加藤ほか(2004)が提案する「地震基盤における地震動」をもって震源 を特定せず策定する地震動として考慮することとした。 b 震源近傍の観測記録の収集・検討 ⒜ 債務者が観測記録の収集対象として検討した地震は,地震ガイドが 例示する別紙2記載の16の地震である(以下,別紙2記載の地震を 個別に摘示するに当たっては,「No.1」のように番号を付するこ とがある。)。 ⒝ 債務者は,地震ガイドがいう「地表地震断層が出現しない可能性が ある地震」としてNo.3ないし16を対象に,これらの地震の観測 記録を収集したところ,No.13の2004年北海道留萌支庁南部 地震(以下「留萌支庁南部地震」という。)では信頼性の高い観測記 録が得られたものの,その他の観測記録は,加藤ほか(2004)による応 答スペクトルを下回るものであったり,観測記録が観測地点の地盤の 影響を受けた信頼性の低いものであったりしたとして,考慮の対象か ら除外した。 留萌支庁南部地震は,震源近傍の観測点において1127ガルとい う大きな加速度を観測したものである。当初,観測記録は,地表のも のしか得られず,既存の地盤情報も十分ではなかったが,観測地点の 地盤についてボーリング調査等が行われ,佐藤ほか(2013)によって信 頼性の高い地盤モデルが得られたものである。佐藤ほか(2013)は,S - 35 - 波速度が938m/秒となる深さ41mを基盤層に設定した上で解析 評価を行い,基盤地震動の最大加速度は585ガルで地表観測記録の 約1/2となる(観測記録の加速度は地盤の影響によって増幅してい る)ことを明らかにした。また,佐藤ほか(2013)以降の追加調査によ って得られた試験データを用いて解析を行ったとこ ルで地表観測記録の 約1/2となる(観測記録の加速度は地盤の影響によって増幅してい る)ことを明らかにした。また,佐藤ほか(2013)以降の追加調査によ って得られた試験データを用いて解析を行ったところ,基盤地震動の 最大加速度は561ガルとなり,佐藤ほか(2013)よりもやや小さめに 評価された。本件敷地地盤のS波速度が2600m/秒である(より 硬い地盤である)ことを考慮すれば,この観測記録を本件原子炉の地 震動評価に用いればさらに小さい評価となるところ,不確かさを保守 的に考慮した結果として,留萌支庁南部地震の基盤地震動を620ガ ルに引き上げた地震動をもって,震源を特定せず策定する地震動とし て考慮した。 ⒞ 一方,債務者は,地震ガイドがいう「事前に活断層の存在が指摘さ れていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認さ れた地震」としてNo.1の2008年岩手・宮城内陸地震(以下 「岩手・宮城内陸地震」という。)及びNo.2の2000年鳥取県 西部地震(以下「鳥取県西部地震」という。)を対象に,本件原子炉 の立地地点と岩手・宮城内陸地震及び鳥取県西部地震の震源域との地 域差等について検討を行った。その結果,岩手・宮城内陸地震の震源 域には新第三紀以降の火山岩,堆積岩が厚く分布しているのに対し, 本件原子炉の立地地点には堅硬かつ緻密な結晶片岩が少なくとも地下 2㎞まで連続している点で地域差が顕著であり,鳥取県西部地震の震 源域については,地震テクトニクスが異なり,活断層の成熟度及びこ れに寄与する歪み蓄積速度や地下の均質性において地域差が認められ ること,両地震の震源域と本件原子炉の立地地点では地震地体構造が 異なっていることから,地震の起こり方も異なるとして,両地震のい - 36 - ずれも検討対象地震として選定する必要はないと考えた。 両地震の震源域と本件原子炉の立地地点では地震地体構造が 異なっていることから,地震の起こり方も異なるとして,両地震のい - 36 - ずれも検討対象地震として選定する必要はないと考えた。 さらに,債務者は,鳥取県西部地震については,大局的には本件原 子炉の立地地点と同じく西南日本の東西圧縮横ずれの応力場にあるこ とから,地震が発生する地下深部の構造について検討を加え,その結 果,深部地下構造に違いがあって,本件原子炉の立地地点と鳥取県西 部地震の震源域とでは地震ガイドにいう「活断層の成熟度」に地域差 が認められ,やはり,鳥取県西部地震を震源を特定せず策定する地震 動の評価において考慮する必然性はないと考えた。しかし,債務者は, 上記の検討にかかわらず,大局的にはいずれも西南日本の東西圧縮横 ずれの応力場であることを踏まえ,保守的に,鳥取県西部地震の観測 記録をもって震源を特定せず策定する地震動として考慮することとし た。 鳥取県西部地震については,鳥取県にある賀祥ダムの監査廊(以下 「賀祥ダム」という。)に設置された地震計による信頼性の高い観測 記録が得られている。国立研究開発法人防災科学技術研究所の強震観 測網によっても信頼性の高い観測記録が得られているが,賀祥ダムの 観測記録がこれを概ね上回ることなどから,震源を特定せず策定する 地震動による基準地震動Ssの検討においては賀祥ダムの観測記録で 代表させることとした。 (ウ) 基準地震動Ssの策定 a 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動のうち,応答スペクトルに 基づく手法による地震動評価において求めた応答スペクトル及び基準地 震動S2(本件原子炉建設時の基準地震動)の応答スペクトルを包絡す るように,設計用応答スペクトルを設定し,水平方向の基準地震動Ss -1 づく手法による地震動評価において求めた応答スペクトル及び基準地 震動S2(本件原子炉建設時の基準地震動)の応答スペクトルを包絡す るように,設計用応答スペクトルを設定し,水平方向の基準地震動Ss -1Hを設定するとともに,鉛直方向については,Ss-1Hに対して, - 37 - 耐専式の鉛直方向の地盤増幅率を乗じて基準地震動Ss-1Vを設定し た。 また,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動のうち,断層モデル を用いた手法による地震動評価の結果,本件原子炉施設に与える影響が 大きいケースとして,内陸地殻内地震(中央構造線断層帯による地震) における検討ケースのうち,①断層長さ480㎞で壇ほか(2011)のスケ ーリング則を用いて応力降下量の不確かさを考慮したケース,②断層長 さ480㎞でFujii and Matsu'ura (2000)のスケーリング則を用いて応 力降下量の不確かさを考慮したケース及び③断層長さ54㎞で入倉・三 宅の手法を用いて応力降下量の不確かさを考慮したケースを選定し,経 験的グリーン関数法と理論的手法によるハイブリッド合成を行った。そ の結果,上記の基準地震動Ss-1を一部の周期帯において超えた7ケ ースを基準地震動Ss-2-1ないしSs-2-7とした。 また,債務者は,中央構造線断層帯に係る経験的グリーン関数を用い た評価では,東西方向の地震動の周期0.2ないし0.3秒で基準地震 動Ss-1を超過する結果が得られているが,仮に,要素地震の南北方 向の地震動が東西方向の地震動と同程度のレベルであったとすれば,南 北方向でも基準地震動Ss-1を超過する可能性も否定できないとして, 東西方向の周期0.2ないし0.3秒で基準地震動Ss-1を超過する ケースのうち,基準地震動Ss-1を超過する度合いが大きく,かつス ケーリング則として基本に考え を超過する可能性も否定できないとして, 東西方向の周期0.2ないし0.3秒で基準地震動Ss-1を超過する ケースのうち,基準地震動Ss-1を超過する度合いが大きく,かつス ケーリング則として基本に考えている壇ほか(2011)に基づいて評価した 断層長さ480㎞で応力降下量の不確かさ(20M㎩)を考慮したケー スについて,東西方向と南北方向の地震波を入れ替えたケースを仮想し てSs-2-8として設定した。 一方,プレート間地震については上記(ア)d⒝により,海洋プレート内 地震については同⒞により,それぞれ地震動評価をしたところ,解放基 - 38 - 盤表面における地震動の最大加速度は,前者にあっては181ガル,後 者にあっては336ガルとなり(甲35),いずれもSs-1を下回っ たことから,いずれの地震も基準地震動Ss-2としては設定しなかっ た。 b 震源を特定せず策定する地震動 震源を特定せず策定する地震動のうち,加藤ほか(2004)は基準地震動 Ss-1に包絡されることから,Ss-1を一部の周期帯で超える留萌 支庁南部地震の基盤地震動及び鳥取県西部地震の際の賀祥ダムの観測記 録を基準地震動Ss-3として選定することとした。 c 基準地震動Ssの最大加速度 以上の結果,基準地震動Ssとして基準地震動Ss-1では1ケース, 基準地震動Ss-2は8ケース,基準地震動Ss-3は2ケースをそれ ぞれ設定した。これらの最大加速度の一覧は,次のとおりである(なお, 単位はガル。また,「H」は水平動,「V」は鉛直動,「NS」は水平 動NS成分,「EW」は水平動EW成分,「UD」は鉛直動UD成分を 示す。)。 ⒜ 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価による基準地震動 ・ Ss-1 H:650,V:377 ⅱ 断層モデ ,「UD」は鉛直動UD成分を 示す。)。 ⒜ 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価による基準地震動 ・ Ss-1 H:650,V:377 ⅱ 断層モデルを用いた手法による地震動評価による基準地震動(な お,いずれも中央構造線断層帯によるものである。) ・ Ss-2-1(480㎞,壇ほか(2011),20M㎩,西破壊) NS:579,EW:390,UD:210 ・ Ss-2-2(480㎞,壇ほか(2011),20M㎩,中央破壊) NS:456,EW:478,UD:195 ・ Ss-2-3(480㎞,壇ほか(2011),20M㎩,第1アス - 39 - ペリティ西破壊) NS:371,EW:418,UD:263 ・ Ss-2-4(480㎞,Fujii and Matsu'ura (2000),1.5 倍,西破壊) NS:452,EW:494,UD:280 ・ Ss-2-5(480㎞,Fujii and Matsu'ura (2000),1.5 倍,中央破壊) NS:452,EW:388,UD:199 ・ Ss-2-6(480㎞,Fujii and Matsu'ura (2000), 1. 5倍,東破壊) NS:291,EW:360,UD:201 ・ Ss-2-7(54㎞,入倉・三宅の手法,1.5倍,中央破 壊) NS:458,EW:371,UD:178 ・ Ss-2-8(480㎞,壇ほか(2011),20M㎩,中央破壊, NS・EW入替ケース) NS:478,EW:456,UD: 195 ⒝ 震源を特定せず策定する地震動 ・ Ss-3-1(留萌支庁南部地震を考慮した地震動) H:6 20,V:320 ・ Ss-3-2(鳥取県西部地震賀祥ダムの観測記録) NS: 528,EW:531,UD:485 せず策定する地震動 ・ Ss-3-1(留萌支庁南部地震を考慮した地震動) H:6 20,V:320 ・ Ss-3-2(鳥取県西部地震賀祥ダムの観測記録) NS: 528,EW:531,UD:485 (エ) 基準地震動Ssの年超過確率 a 年超過確率の算定方法 年超過確率の算定は,一般社団法人日本原子力学会(以下「日本原子 力学会」という。)が定めた「原子力発電所の地震を起因とした確率論 的安全評価実施基準:2007」(以下「原子力学会(2007)」という。) に基づき,「特定震源モデルに基づく評価」及び「領域震源モデルに基 づく評価」を実施した。 「特定震源モデルに基づく評価」は,一つの地震に対して,震源の位 置,規模及び発生頻度を特定して扱うモデルで,「敷地ごとに震源を特 - 40 - 定して策定する地震動」に対応する。債務者は,敷地前面海域の断層群 (中央構造線断層帯)による地震,その他の活断層で発生する地震及び 南海地震を考慮した。 「領域震源モデルに基づく評価」は,ある拡がりを持った領域の中で 発生する地震群として取り扱うモデルで,「震源を特定せず策定する地 震動」に対応する。債務者は,活断層の存在が知られていないところで 発生し得る内陸地殻内地震,南海地震以外のフィリピン海プレートで発 生する地震(プレート間地震及び海洋プレート内地震)を考慮した。 そして,両モデルにおける年超過確率を足し合わせて,全体としての 年超過確率を算出した。 b 年超過確率の算出結果 債務者は,上記aにより年超過確率を算出した結果として,基準地震 動Ss-1の年超過確率は,10-4~10-6/年(1万年ないし100 万年に1回)程度であり,基準地震動Ss-2及び基準地震動Ss-3 の年超過確率も同程度であるとした。 ウ 原子力規制委員会の審査結果 年超過確率は,10-4~10-6/年(1万年ないし100 万年に1回)程度であり,基準地震動Ss-2及び基準地震動Ss-3 の年超過確率も同程度であるとした。 ウ 原子力規制委員会の審査結果 債務者の基準地震動策定に対する原子力規制委員会による審査の結果は次 のとおりである(乙37)。 (ア) 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 原子力規制委員会は,審査の過程において,①敷地前面海域の断層群 (中央構造線断層帯)による地震動評価に当たっては,当該断層群が長大 であるため,部分破壊も考慮するとともに,スケーリング則の適用性を検 討すること,②破壊伝播速度につき,敷地前面海域の断層群(中央構造線 断層帯)が長大な横ずれ断層であることを考慮し,最新の知見を考慮して 検討することを求めた。 この点に関して債務者がした上記地震動評価は,原子力規制委員会によ - 41 - る上記求めに応じて補正された結果を含んでいる。 (イ) 震源を特定せず策定する地震動 原子力規制委員会は,審査の過程において,①震源を特定せず策定する 地震動の評価で収集対象となる内陸地殻内地震の例として地震ガイドに示 している全ての地震について観測記録等を収集し,検討することを求め, このうち鳥取県西部地震については,鳥取県西部地震の震源域と本件原子 炉立地地点との間に地質学的背景に大きな地域差が認められない旨指摘し, ②留萌支庁南部地震については,その地震観測記録について,既往の知見 である微動探査等に基づく地盤モデルによるはぎとり解析のみならず,適 切な地質調査データに基づく地盤モデルによるはぎとり解析等を求めた。 この点について債務者がした上記地震動評価は,原子力規制委員会によ る上記求め又は指摘を踏まえた結果である。 (ウ) 原子力規制委員会は,上記 データに基づく地盤モデルによるはぎとり解析等を求めた。 この点について債務者がした上記地震動評価は,原子力規制委員会によ る上記求め又は指摘を踏まえた結果である。 (ウ) 原子力規制委員会は,上記(ア)及び(イ)を経た上で,債務者が策定した基 準地震動Ssが設置許可基準規則解釈別記2の規定に適合しているとした。 ⑼ 平成28年の運転再開後の本件原子炉をめぐる裁判の経過 ア 債権者F,同D及び同Gは,平成28年3月11日,当裁判所に,人格権 に基づく差止請求権を被保全権利として,債務者に対して本件原子炉の運転 差止めを命ずる仮処分を求める申立てをした(同年(ヨ)第38号)。また, 債権者Eも,同年8月3日,同旨の仮処分を求める申立てをした(同年(ヨ) 第109号)。当裁判所は,上記両事件を併合審理した末(併合後の事件を 以下「第1次仮処分事件」という。),平成29年3月30日,第1次仮処 分事件の申立てをいずれも却下するとの決定をした。 これに対し,第1次仮処分事件の債権者であった上記4名(以下「債権者 Fら」という。)は,即時抗告した(広島高等裁判所平成29年(ラ)第63 号)。広島高等裁判所は,平成29年12月13日,平成30年9月30日 までに限って本件原子炉の運転の差止めを命じる旨,第1次仮処分事件の原 - 42 - 審決定を変更する決定をしたが,同裁判所は,平成30年9月25日,その 保全異議審(同裁判所平成29年(ウ)第62号)において上記変更決定を取 り消して債権者Fらの抗告を棄却する決定をし,同決定がその頃確定した。 (以上につき,乙1,116,153,154) イ 債権者Fらは,平成30年5月18日,当裁判所に,人格権に基づく差止 請求権を被保全権利として,債務者に対して本件原子炉の運転差止めを命ず る仮処分を求める申立て ,116,153,154) イ 債権者Fらは,平成30年5月18日,当裁判所に,人格権に基づく差止 請求権を被保全権利として,債務者に対して本件原子炉の運転差止めを命ず る仮処分を求める申立てをした(同年(ヨ)第75号。以下「第2次仮処分事 件」という。)。当裁判所は,同年10月26日,第2次仮処分事件の申立 てをいずれも却下する決定をした。同決定は,その頃,確定した。(乙2, 155) ウ 一方,愛媛県の住民ら(ただし,債権者Eを除く。),大分県の住民ら及 び山口県の住民らは,それぞれ,松山地方裁判所,大分地方裁判所及び山口 地方裁判所岩国支部に,人格権に基づく差止請求権を被保全権利として,債 務者に対して本件原子炉の運転差止めを命ずる仮処分を求める申立てをした が,ともかくも,現時点までに,いずれも上記申立てを却下する旨の決定が 確定している(乙3ないし6)。 エ 債権者A,同B及び同C(以下「債権者Aら」という。)及び債権者Fら は,令和2年3月11日,本件申立てをした。 3 争点及び争点をめぐる当事者の主張の要旨 ⑴ 司法審査の在り方(争点1) (債権者らの主張) ア 最高裁平成4年10月29日判決・民集46巻7号1174頁は,これを 新規制基準の下に引き直せば,要するに,原子炉設置許可処分の取消訴訟に おいては,当該原子炉が安全かどうかを裁判所が直接判断するのではなく, 新規制基準の合理性及びそれに適合するとした原子力規制委員会の判断が合 理的か否か,特に看過し難い不合理があるかどうかを最新の科学的知見に照 - 43 - らし判断するのが相当であり,その合理性の立証責任は事実上被告が負うと するものである。この法理は,行政訴訟(原子炉設置許可処分取消訴訟)に とどまらず,人格権に基づく原子炉の運転差止請求訴訟,ひいて らし判断するのが相当であり,その合理性の立証責任は事実上被告が負うと するものである。この法理は,行政訴訟(原子炉設置許可処分取消訴訟)に とどまらず,人格権に基づく原子炉の運転差止請求訴訟,ひいては,同差止 請求権を被保全権利とする仮処分事件においても用いられるべきである。 イ 上記法理の下における新規制基準の合理性をめぐる判断は,当該基準が住 民の安全を図る内容になっているかどうかの判断にほかならず,単に当該基 準が前後の辻褄さえ合っていれば合理性が認められるというようなものであ ってはならない。 また,原子力規制委員会による適合性判断の合理性をめぐる判断は,原子 力規制委員会による審査が,住民の安全を確保するという理念に沿い,放射 性物質の拡散を防止する内実を備えているかどうかが問われるべきである。 そうでなければ,上記最高裁判決の法理を正しく理解し,人格権侵害に基 づく原子炉の運転差止請求権を被保全権利とする仮処分事件に生かしたこと にはならない。 ウ そして,上記最高裁判決は,当該原子炉施設の安全審査に関する資料をす べて被告行政庁側が所持していることなどの点を考慮し,原告側の立証の負 担を軽減しようとするものである。そうしたところ,債務者は,本件原子炉 の安全性に関する資料をすべて所持している上,安全である旨地域住民らを 説得して本件原子炉を建設したことなどの事情にかんがみると,裁判所は, 本件において上記最高裁判決の法理を用いるのであれば,新規制基準に不合 理な点がないこと及び本件原子炉が審査基準に適合したとする原子力規制委 員会の判断に不合理な点がないことについて債務者が疎明責任を果たしたと いえるかどうかを,厳密に判断すべきである。 (債務者の主張) ア 人格権は,明文の根拠を持たず,要件や効果が自明ではない一方,人格権 理な点がないことについて債務者が疎明責任を果たしたと いえるかどうかを,厳密に判断すべきである。 (債務者の主張) ア 人格権は,明文の根拠を持たず,要件や効果が自明ではない一方,人格権 に基づく差止請求は,将来発生するか否か不確実な侵害の予測に基づいて, - 44 - 相手方が本来行使できる権利や自由を直接制約しようとするものである。し たがって,同請求が認められるためには,前提として,人格権侵害による被 害の危険が切迫していることを要し,かつ,その危険性は具体的危険性でな ければならない。 そして,現代社会においては,科学技術の利用には一定の危険が内在して いることを前提に,その内在する危険が顕在化しないよう,いかに適切に管 理できるかが問題とされているところ,原子力発電もまた例外ではなく,原 子炉等規制法もそのことを念頭に置いているものと解される。したがって, 人格権に基づく原子炉の運転差止請求訴訟における具体的危険性の有無は原 子力発電に内在する危険性を管理できるかどうかに基づいて判断されるべき であるし,原子力発電が高度に科学的・専門技術的なものであるからには, 上記判断に際しては,科学的・専門技術的知見を踏まえることが不可欠であ るというべきである。 また,人格権に基づく差止請求訴訟の一般原則によれば,人格権に基づく 原子炉の運転差止請求訴訟にあっては,当該原子力発電所の安全性に欠ける ところがあって,原告の人格権,すなわち,生命,身体が侵害される具体的 危険性の存在についての主張立証責任については,これを原告が負うべきで ある。したがって,その保全処分としての運転差止めを求める仮処分におい ても,債権者は,被保全権利の要件としての具体的危険性及び保全の必要性 について主張,疎明責任を負っているというべきである。 きで ある。したがって,その保全処分としての運転差止めを求める仮処分におい ても,債権者は,被保全権利の要件としての具体的危険性及び保全の必要性 について主張,疎明責任を負っているというべきである。 イ 仮に,まず原子炉設置者において安全性に欠ける点のないことについて主 張立証する必要があると解するのであれば,原子炉設置者は,原子力規制委 員会から所要の許認可を受けるなどして,現在の安全規制の下でその設置及 び運転等がされていることを主張立証すれば足りるというべきである。した がって,本件においても,債務者は,本件原子炉が新規制基準に適合してい ることについて相当の根拠,資料に基づいて主張,疎明すれば足りるのであ - 45 - って,新規制基準が不合理であることや原子力規制委員会の審査及び判断が 合理性を欠くことの主張,疎明責任は,債権者らがこれを負担すべきであ る。 ⑵ 本件原子炉施設の地震に対する安全性(争点2) (債権者らの主張) ア 本件申請に当たって債務者が策定した基準地震動の内容及びこれに対する 原子力規制委員会の審査結果によれば,債務者は,本件原子炉にあっては, 650ガル(基準地震動Ss-1-H)を超える地震動は襲来しない旨予測 し,原子力規制委員会はこれを承認したということになる。 イ 新規制基準が不合理であること (ア) 新規制基準の枠組みは,強震動予測を基礎にすることによって,ある原 子力発電所の運用期間中に当該発電所の敷地を襲う可能性のある地震動の 強さの上限を将来にわたって的確に予測することができるということを前 提にして成り立っている。 (イ) しかし,有史以前の地震の発生状況はほとんど不明というほかないし, 地震の兆候は明確に認知されていないのが現状であって,強震動予測とい う学問は,あくまでも,平均的 提にして成り立っている。 (イ) しかし,有史以前の地震の発生状況はほとんど不明というほかないし, 地震の兆候は明確に認知されていないのが現状であって,強震動予測とい う学問は,あくまでも,平均的な地震動を追求する学問であるというにと どまる。したがって,基準地震動の策定は,最高の安全性が保たれるべき であるがゆえに最大の地震動を追求すべき場面であるにもかかわらず,そ こに平均的な地震動を追及する学問である強震動予測を無理やり持ち込む という,本質的な問題を抱え込んでいる。 そして,学問としての強震動予測の本質とそれを基準地震動策定の場面 に持ち込んだ場合の限界や危険性については,強震動予測のモデルを提案 した複数の地震学者を含む多くの専門家が同様に指摘しているところでも ある。 (ウ) したがって,強震動予測を用いて基準地震動を策定してみたところで, - 46 - それは,あくまでも現時点におけるぼんやりとした地震の平均像と平均的 な地震動を把握するものでしかないから,最大地震動を導いたことには決 してならない。この点で,新規制基準は,原子炉等規制法43条の3の6 第1項4号の定めに反し,合理性を欠いているというほかはない。したが って,これに沿って債務者が策定し,原子力規制委員会が承認した上記⑴ の基準地震動も合理性がないことになる。 ウ 新規制基準の適用が不合理であること(その1) 地震ガイドでは,「震源を特定せず策定する地震動」を策定するに当たっ ては,別紙2記載の16の地震を参考にすることを求めている。そもそも科 学者において収集した資料を検討対象から排除することを許されるのは,測 定間違いの疑いの濃いものに限られる。これは,自分の知見に反する内容の 資料を恣意的に排除してしまう誘惑を防止し,科学としての客観性を担保す るための最低限のル 討対象から排除することを許されるのは,測 定間違いの疑いの濃いものに限られる。これは,自分の知見に反する内容の 資料を恣意的に排除してしまう誘惑を防止し,科学としての客観性を担保す るための最低限のルールだからである。 しかるに,債務者は,「地盤のデータが不足している」とか,「地質学的 に本件原子炉が立地している敷地と異なる」などの理由をつけ,事実上,留 萌支庁南部地震だけを参考にして「震源を特定せず策定する地震動」を策定 している点で,新規制基準の適用を誤っている。また,原子力規制委員会に よる適合性審査も,この点を看過している。したがって,その結果策定され た上記⑴の基準地震動も合理性がない。 エ 新規制基準の適用が不合理であること(その2) (ア) 基準地震動の策定は,震源モデルの設定から始まって,震源域の長さ及 びその面積,地震モーメントの計算から最終の地震動の算出まで,すべて 仮説又は推測の体系に過ぎない。 (イ)a そうしたところ,平成12年以降のみを対象としても,日本で700 ガル以上の加速度を記録した地震は別紙1-1のとおり多数観測されて いる。 - 47 - b また,平成17年から平成23年までの間に,実際の地震によって原 子力発電所の周辺の観測地点で観測された地震動が,当該原子力発電所 の基準地震動(いずれも当時)を上回った事例が次のとおり5つある (単位はガル)。 ⒜ 平成17年8月16日宮城県沖地震(以下「宮城県沖地震」とい う。) 原子力発電所 女川原子力発電所(以下「女川原発」という。) 基準地震動 375 観測された地震動 560(宮城県石巻市) ⒝ 平成19年3月25日能登半島地震(以下「能登半島地震」とい う。) 原子力発電所 志賀原子力発電所(以下「志賀原発」という。) 基準地 動 375 観測された地震動 560(宮城県石巻市) ⒝ 平成19年3月25日能登半島地震(以下「能登半島地震」とい う。) 原子力発電所 志賀原子力発電所(以下「志賀原発」という。) 基準地震動 490 観測された地震動 543(石川県羽咋郡志賀町) ⒞ 平成19年7月16日新潟県中越沖地震(以下「新潟県中越沖地震」 という。) 原子力発電所 柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」とい う。) 基準地震動 450 観測された地震動 793(新潟県柏崎市) 1018(同) 758(同) 496(新潟県刈羽郡刈羽村) ⒟ 東北地方太平洋沖地震 原子力発電所 女川原発 基準地震動 580 - 48 - 観測された地震動 633(宮城県石巻市) 675(同) 933(同) ⒠ 東北地方太平洋沖地震 原子力発電所 福島第一原発 基準地震動 600 観測された地震動 922(福島県双葉郡大熊町) しかも,上記5つの事例のうち,当該原子力発電所における解放基盤 表面における地震動を解析(はぎ取り解析)した結果が得られているの は,⒞と⒠であるが,その結果(前者については1699ガル,後者に ついては675ガル)ですら,基準地震動を上回っている。 c 上記a及びbで見たような観測結果によれば,債務者が基準地震動と して策定した650ガルを上回る地震動をもたらす地震は,ありふれて いるものといわなければならない。 d 一方,昭和56年改正後の建築基準法に基づく一般鉄筋コンクリート 建造物では,少なくとも震度7(1500ガル程度)までの揺れに耐え ることができる。実際,平成28年熊本地震(Mw7.3,最大加速度 1740ガル,震度7 改正後の建築基準法に基づく一般鉄筋コンクリート 建造物では,少なくとも震度7(1500ガル程度)までの揺れに耐え ることができる。実際,平成28年熊本地震(Mw7.3,最大加速度 1740ガル,震度7)において,昭和56年改正後の建築基準法に基 づいて設計されたコンクリート建造物の倒壊・崩壊等は報告されていな い。それどころか,今や,複数の大手ハウスメーカーが製造する住宅は, 3000ガルないし5000ガル前後の地震動にも耐えられる性能を備 えている。 しかるに,最大加速度650ガルをもたらす地震は,震度等級でいえ ば,震度6弱程度にしかならないから,本件原子炉の耐震性が一般鉄筋 コンクリート建造物に劣っていることは明らかである。いわんや,大手 ハウスメーカーが自社製の住宅に課している耐震性と比較すれば,本件 - 49 - 原子炉の耐震性の劣りようは,みすぼらしいほどである。 (ウ)a 債務者は,基準地震動の策定に当たり,「震源を特定して策定する地 震動」のうち,「プレート間地震」について,南海トラフ地震を検討対 象とした上,その強震動生成域を本件発電所の直下に置いたとしても, 解放基盤表面で想定できる地震動が181ガルであるとしている。 b しかし,南海トラフ地震は,地震本部において,地震の規模がM8な いし9クラスと想定されており,その強震動生成域を本件発電所直下に 置いた場合には,愛媛県の多くの地域が震度7の地震に襲われると考え られている。したがって,その場合,本件敷地に到来する地震動が18 1ガルにとどまるということはあり得ない。 実際にも,平成12年以降,震度5弱以上を記録した地震のうち,観 測された最大加速度が181ガルを若干上回る200ガル以上であった 地震は,優に170回を超える(別紙1-2)。 ま 実際にも,平成12年以降,震度5弱以上を記録した地震のうち,観 測された最大加速度が181ガルを若干上回る200ガル以上であった 地震は,優に170回を超える(別紙1-2)。 まず,近年発生した比較的規模の大きい地震(①2018年9月6日 北海道胆振東部地震,②2021年2月13日福島県沖地震,③202 1年3月20日宮城県沖地震)についてみると,次のとおりである。 ①は,震源の深さ(37㎞)の点では債務者が検討対象とした南海ト ラフ地震の震源の深さ(41㎞)と大差ないが,同地震よりも小さい規 模(M6.7)であったのに,震央距離26㎞の観測点において最大加 速度1796ガルをもたらしたほか,27か所の観測地点で200ガル 以上の地震動が観測された(このうち,最も小さい地震動を観測した地 点の震央距離48㎞)。 ②は,震源の深さ(55㎞)の点では債務者が検討対象とした南海ト ラフ地震のそれ(41㎞)よりも深く,かつ,同地震よりも規模がはる かに小さいのみならず(M7.3),海域で起きたのに,震央距離75 ㎞の観測地点で最大加速度1432ガルを観測したほか,73か所の観 - 50 - 測地点で200ガル以上の地震動が観測された(このうち最も小さい地 震動を観測した地点の震央距離130㎞)。 ③は,震源の深さ(60㎞)が債務者が検討対象とした南海トラフ地 震のそれ(41㎞)よりも深く,同地震よりも規模がはるかに小さいし (M7.2),かつ,海域で起きたのに,震央距離41㎞の観測地点で 最大加速度747ガルを観測したほか,27か所の観測地点で200ガ ル以上の地震動が観測された(このうち最も小さい地震動を観測した地 点の震央距離98㎞)。 次に,平成12年以降に発生したプレート間地震のうち,いわゆる巨 大地震に分類されるM7.8以上の地震( 0ガ ル以上の地震動が観測された(このうち最も小さい地震動を観測した地 点の震央距離98㎞)。 次に,平成12年以降に発生したプレート間地震のうち,いわゆる巨 大地震に分類されるM7.8以上の地震(④2003年9月26日十勝 沖地震,⑤東北地方太平洋沖地震,⑥2015年5月30日小笠原諸島 西方沖の地震)についてみると,いずれも海域で起きた地震であるほか, 次のとおりである。 ④は,地震規模M8.0,震源の深さ42㎞で,震央距離84㎞の観 測地点で最大加速度988ガルを観測したほか,56か所の観測地点で 200ガル以上の地震動が観測された(このうち最も小さい地震動を観 測した地点の震央距離244㎞)。 ⑤は,地震規模M9.0であって,震源の深さ(24㎞)は債務者が 検討対象とした南海トラフ地震のそれ(41㎞)よりは浅いものの,陸 域から130㎞離れた海域で発生しているが,震央距離175㎞の観測 地点で最大加速度2933ガルを観測したほか,183か所の観測地点 で200ガル以上の地震動が観測された(このうち最も小さい地震動を 観測した地点の震央距離243㎞)。中でも,福島第一原発では解放基 盤表面において675ガルの地震動を,女川原発でも解放基盤表面にお いて基準地震動580ガルを上回る地震動を,それぞれ観測している。 ⑥は,地震規模M8.1であったが,震源の深さ(682㎞)が債務 - 51 - 者が検討した南海トラフ地震のそれ(41㎞)よりもはるかに深いもの の,震央距離750km の地点で最大加速度182ガルが観測されている。 c 上記①ないし⑥の各地震で得られたデータによれば,プレート間地震 が海域ではなく陸域で生じた場合,その直上の地表にもたらされる地震 動が,上記①ないし⑥の各地震で観測された最大加速度をはるかに上回 るであろうことは容 の各地震で得られたデータによれば,プレート間地震 が海域ではなく陸域で生じた場合,その直上の地表にもたらされる地震 動が,上記①ないし⑥の各地震で観測された最大加速度をはるかに上回 るであろうことは容易に予想することができる。 それどころか,平成12年以後に最大加速度200ガル以上を観測し た地震が170回を超えることや,上記①ないし⑥のように,1個の地 震で200ガル以上の地震動を観測した地点の多さに照らすと,200 ガルという地震動は,我が国の地震記録にあっては,ごく平凡な地震動 に過ぎないことが分かる。 以上によれば,債務者において,検討対象とした南海トラフ地震によ る地震動の策定に当たり,震源の深さが41㎞であることや,本件発電 所周辺の地盤特性,地域特性をもっていかに説明しようとも,181ガ ルという設定が,観測記録という客観的な数値に照らし,およそ合理性 を持たないことは明らかである。 d 債務者による基準地震動(650ガル)の策定は,要するに,「敷地 ごとに震源を特定して策定する地震動」(内陸地殻内地震,プレート間 地震及び海洋プレート内地震)並びに「震源を特定せず策定する地震動」 のそれぞれについて導き出された地震動を比較して,その最も大きな数 値を採用したというものである。 しかし,上記過程において比較の対象となる地震動のうちの一つ(プ レート間地震による地震動)については,上記cのとおり,これが18 1ガルにとどまるという点で合理性を欠くばかりか,650ガルをも優 に上回ることが容易に想定される。そうだとすると,ほかの比較対象で ある地震動(内陸地殻内地震,海洋プレート内地震及び震源を特定せず - 52 - 策定する地震動)の策定過程が合理的であろうがなかろうが,上記過程 の結果策定された基準地震動(650ガル) で ある地震動(内陸地殻内地震,海洋プレート内地震及び震源を特定せず - 52 - 策定する地震動)の策定過程が合理的であろうがなかろうが,上記過程 の結果策定された基準地震動(650ガル)が合理性を失うことになる というのが論理的帰結である。 (エ) 以上によれば,本件申請に当たって債務者が策定した基準地震動の内容 及びこれを承認した原子力規制委員会による適合性審査は,いずれも合理 性がない。 オ 年超過確率について (ア) 原子力発電所にあっては,高度の安全性が図られるべきであるから,本 件原子炉が基準地震動を超過する地震動に見舞われることが確率論的に否 定しきれないまでも,その確率は1万年から100万年に1回にとどまる からといって,到底受容できる確率ではない。 (イ) 上記(ア)の点を措くとしても,基準地震動を策定する過程で債務者が設 定した震源モデル以外のタイプの地震が将来にわたって起きるか起きない かは未確定なままであって,そのような未知の地震について発生確率を求 めることはおよそ不可能である。すなわち,債務者が上記の過程で算出し た年超過確率は,あくまでも,債務者が設定した震源モデルが正しいこと を前提とした確率計算というに過ぎないから,そもそも信用性がない。 しかも,「1万年から100万年に1回」という数字自体が,平成17 年から平成23年までの短期間に,実際の地震によって原子力発電所の周 辺の観測地点で観測された地震動が,当該原子力発電所の基準地震動を上 回った事例が5つもあったという事実(上記エ(イ)b)と明らかに矛盾して いる。 したがって,債務者が基準地震動を策定した際に,それを超える地震動 が生じるとして算出した年超過確率には合理性がない。 カ まとめ 以上によれば, と明らかに矛盾して いる。 したがって,債務者が基準地震動を策定した際に,それを超える地震動 が生じるとして算出した年超過確率には合理性がない。 カ まとめ 以上によれば,本件原子炉施設は,地震に対する安全性を欠いているとい - 53 - うべきである。 (債務者の主張) ア 福島第一原発事故の教訓を踏まえて改正された原子炉等規制法の目的及び 趣旨からすれば,原子炉等規制法は,特に地震についていえば,最新の科学 的,専門技術的知見を踏まえて合理的に予測される規模の地震に対する安全 性を確保することを求めているものと考えられる。したがって,基準地震動 は,そのような合理的に予測される規模を上回る地震を想定して策定される べきであるかのような理解は,実質的に絶対安全を求めるものであって,誤 りである。 イ 新規制基準が不合理である旨の主張について (ア) 強震動予測の手法を基礎とする耐震設計は,建築基準法においても否定 されているわけではなく,建設地の特性を考慮して作成した地震動(サイ ト波)の利用も予定されているのであって,原子力発電所の耐震設計にの み用いられる特殊な手法ではない。 (イ) 地震学には不確かさが伴うが,原子力発電所の耐震設計において求めら れているのは,寸分違わぬような正確な地震動予測ではなく,そのような 不確かさを踏まえた上で,その点を十分に保守的に考慮した地震動評価が 可能であれば,原子炉等規制法の目的及び趣旨に悖るところはない。すな わち,基準地震動Ssの策定は,地震が起きることを前提に,震源域及び 地震の規模を保守的に想定するものであって,地震防災応急対策の前提と なっているがゆえに地震の発生時期,発生場所及び規模を確度高く予測す ることが求められる大規模地震対策特別措置法が前提としている 及び 地震の規模を保守的に想定するものであって,地震防災応急対策の前提と なっているがゆえに地震の発生時期,発生場所及び規模を確度高く予測す ることが求められる大規模地震対策特別措置法が前提としている地震予測 とは全くの別物である。 また,多くの専門家が強震動予測を基準地震動の策定に持ち込んだ場合 の限界や危険性を指摘している旨の債権者らの主張は,その依拠する専門 家の見解に対する誤った理解に基づく主張である。 - 54 - (ウ) したがって,新規制基準の下において,強震動予測を用いて基準地震動 を策定することがそもそも非科学的であるかのような債権者らの主張は失 当である。 ウ 新規制基準の適用が不合理である旨の主張(その1)について (ア) 債務者は,本件申請における「震源を特定せず策定する地震動」を策定 するにあたり,地震ガイドが例示する別紙2記載の16の地震のうち,留 萌支庁南部地震のほかに,鳥取県西部地震も考慮しており,前者しか考慮 していないとの債権者らの主張は事実に反する。 (イ) また,債務者が上記16の地震のうち,留萌支庁南部地震及び鳥取県西 部地震以外の14の地震を「震源を特定せず策定する地震動」の評価の過 程で考慮しないこととした理由については,前提事実⑻イ(イ)のとおりであ って,その点については原子力規制委員会の審査も経ている。また,債務 者による「震源を特定せず策定する地震動」の評価については,既に,第 1次仮処分事件の即時抗告審においても審理され,妥当である旨判断され ている。 (ウ) したがって,債務者による「震源を特定せず策定する地震動」の評価に おいて,新規制基準の適用に不合理な点はない。 エ 新規制基準の適用が不合理である旨の主張(その2)について (ア) 地震動の評価におい 債務者による「震源を特定せず策定する地震動」の評価に おいて,新規制基準の適用に不合理な点はない。 エ 新規制基準の適用が不合理である旨の主張(その2)について (ア) 地震動の評価において,将来発生する地震による地震動の最大加速度や 地震波形等と一致するような予測をすることが不可能であることはいわば 当然である。 (イ)a しかし,だからといって,別紙1-1の観測記録や,実際の地震によ って原子力発電所周辺の観測地点で観測された地震動が当該原子力発電 所の基準地震動を上回った5つの事例(以下「本件超過事例」という。) を引き合いにして,債務者が策定した基準地震動650ガルが過小であ り,したがって,これを上回る地震動をもたらす地震がありふれている - 55 - などということはできない。なぜなら,特定の地点における地震動は震 源ごとに異なる震源特性,地点ごとに異なる地震波の伝播特性,地盤の 増幅特性といった地域特性の影響を強く受けることから,地域特性の異 なる地点で計測された観測記録を単純に本件敷地に当てはめることに意 味はないからである。 特に,本件超過事例については,それぞれ次のような地域特性がある ことが分かっている上,宮城県沖地震,新潟県中越沖地震及び能登半島 地震については,超過したとされる基準地震動は,平成18年改訂前の 耐震設計審査指針による基準地震動S1又は基準地震動S2であって, 現行の基準地震動Ssとは別物であるところ,いずれも当該原子力発電 所の基準地震動Ssと比較すると,これを上回らない。 ⒜ 宮城県沖地震及び東北地方太平洋沖地震 いずれも宮城県沖近海で発生したものであるところ,宮城県沖近海 のプレート境界に発生する地震の地域的な特性(震源特性)として, 短周期成分の卓越が顕著である傾向が認められる。 ⒝ 新潟県中 洋沖地震 いずれも宮城県沖近海で発生したものであるところ,宮城県沖近海 のプレート境界に発生する地震の地域的な特性(震源特性)として, 短周期成分の卓越が顕著である傾向が認められる。 ⒝ 新潟県中越沖地震 逆断層型の地震であり,通常より強い揺れ(1.5倍程度)を生じ させる震源特性を有していた。また,同地震の際,柏崎刈羽原発の地 下深部地盤の不整形性の影響により2倍程度増幅する傾向(伝播特 性),同発電所敷地下の古い褶曲構造(増幅特性)についても確認さ れている。 ⒞ 能登半島地震 周期0.6秒に大きなピークがあるが,それは敷地地盤の増幅特性 によるものであった。 b また,建築基準法に基づく一般鉄筋コンクリート建造物が震度7(1 500ガル)までの揺れに耐えられることや,大手ハウスメーカーが製 - 56 - 造する住宅の耐震性能(3000ガルないし5000ガル程度)との比 較において,債務者が策定した基準地震動650ガルが過小であるとい うこともできない。なぜなら,平成8年4月以降に公表されている震度 (計測震度)は,単なる加速度のみならず,揺れの周期や継続時間も考 慮して計算された値であって,震度7が当然に1500ガル以上である とはいえないし,建築物の耐震性は,地震動の経時特性や周期特性に加 え,建築物の固有周期を考慮することが極めて重要であって,これらの 事情を無視して単純に数値のみを比較することは不適切だからである。 ましてや,大手ハウスメーカーが製造するような一般的な住宅の耐震性 能は,地盤の条件が必ずしも良くない平野部で建築されることが多い上, 大規模な基礎地盤の改良工事を伴わないことから,住宅に作用する地震 動が増幅されやすいことを前提としており,この点でも上記のように比 較対象としては不適切である。 (ウ)a 建築されることが多い上, 大規模な基礎地盤の改良工事を伴わないことから,住宅に作用する地震 動が増幅されやすいことを前提としており,この点でも上記のように比 較対象としては不適切である。 (ウ)a 債務者が,基準地震動の策定に当たり,「震源を特定して策定する地 震動」のうち,「プレート間地震」について,南海トラフ地震を検討対 象とした上,その強震動生成域を本件発電所の直下に置いたとしても, 解放基盤表面で想定される地震動が181ガルであるとした過程は,前 提事実⑻イ(ア)d⒝,(ウ)aのとおりであって,新規制基準に照らしても 合理的である。そして,そのことは原子力規制委員会の審査でも確認さ れている。 b これに対し,別紙1―2記載の観測記録のほか,このうち,①201 8年9月6日北海道胆振東部地震,②2021年2月13日福島県沖地 震,③2021年3月20日宮城県沖地震,④2003年9月26日十 勝沖地震,⑤東北地方太平洋沖地震,⑥2015年5月30日小笠原諸 島西方沖の地震の観測記録を引き合いにして,上記aの策定が過小であ り,本件敷地においてプレート間地震(南海トラフ地震)によってもた - 57 - らされる地震動が181ガルにとどまることはあり得ないなどというこ とはできない。なぜなら,そのような比較検討は,結局のところ,本件 敷地において想定されるべき地震動の最大加速度と,他の地域において 発生した地震において観測された最大加速度とを,地域特性を無視して おり,相当でないからである。 実際にも,上記①の地震においては,最大加速度1796ガルを観測 した観測点(K-NET追分・震央距離26㎞)と震央距離がそれほど 変わらない地盤条件の良い別の観測地点(KiK-net夕張)ではそ の10分の1程度である128ガルにとどまっていたし,東北地方太平 洋沖地 観測点(K-NET追分・震央距離26㎞)と震央距離がそれほど 変わらない地盤条件の良い別の観測地点(KiK-net夕張)ではそ の10分の1程度である128ガルにとどまっていたし,東北地方太平 洋沖地震(上記⑤)においては,震源に近くても最大加速度が比較的小 さな観測点もあれば,逆に震源から遠くても大きな最大加速度を記録し た観測点もあったほか,震源域に比較的近い福島県沿岸であっても,地 表付近までS波速度2000m/秒以上の極めて堅硬な岩盤が広がって いる観測地点で観測された最大加速度はいずれも150ガル前後であっ た。このように,近接する観測地点どうしであっても,地域特性の違い によって,観測された地震動の大きさに顕著な差が生じるから,過去の 地震で得られた最大加速度の値だけを本件発電所の基準地震動の最大加 速度の値と比較することには意味がない。 (エ) したがって,債務者がした基準地震動の策定において,債権者が主張す るような新規制基準の適用に不合理な点はない。 オ 年超過確率について (ア) 本件原子炉が基準地震動を超過する地震動に見舞われる確率について, 「1万年から100万年に1回」よりも小さくなければならないかのよう な債権者らの主張は,本件原子炉について地震との関係で絶対安全を求め るに等しく,不合理である。 (イ) 債務者が基準地震動の年超過確率を評価するに当たっては,本件発電所 - 58 - に将来の一定期間内にもたらされる地震動の強さ・頻度(確率)を評価し, その結果に基づき,原子力学会(2007)を用いて,一様ハザードスペクト ルを作成し,これと基準地震動の応答スペクトルとを比較することで年超 過確率の評価を行っている。そして,原子力学会(2007)は,学識者,実 務者の長年にわたる議論と公正な手続きを経て策定されたものであって, 成し,これと基準地震動の応答スペクトルとを比較することで年超 過確率の評価を行っている。そして,原子力学会(2007)は,学識者,実 務者の長年にわたる議論と公正な手続きを経て策定されたものであって, 年超過確率の評価手法として十分信頼性を有している。 また,本件超過事例は,当該原子力発電所の地域特性によるものであっ たり,現行の基準地震動Ssを超過した事例ではなかったりするものであ って,本件発電所における基準地震動の評価において引き合いに出すべき でないことは上記ウ(イ)aで主張したとおりである。そのことは,年超過確 率の評価においても同様である。 したがって,債務者による基準地震動の年超過確率の評価には合理性が ある。なお,この点については,原子力規制委員会の審査や,第1次仮処 分事件の即時抗告審においても認められている。 カ まとめ 以上によれば,本件原子炉施設が地震に対する安全性を欠いているといえ ないことは明らかである。 ⑶ 保全の必要性(争点3) (債権者らの主張) ア 本件原子炉は,既に原子力規制委員会による許可を受けて,実際に通常営 業運転を行っている。そして,本件原子炉においてひとたび重大事故又は破 局的大事故が起これば,債権者らの人格権が回復不能な程度に害されるおそ れが極めて高い。本件原子炉の運転は,そのような重大事故又は破局的大事 故を発生させ,債権者らの重要な権利を不可逆的に侵害するおそれがある行 為である。 イ そして,被保全権利(人格権に基づく差止請求権)が認められるならば, - 59 - 保全の必要性は極めて高いというべきである。「保全の必要性」は,確率の 問題ではない。 もっとも,本件原子炉は,中央構造線断層帯のほぼ真上に位置し,かつ, 南海トラフ地震の想定震源域に立地しているにもかかわらず,債務者が というべきである。「保全の必要性」は,確率の 問題ではない。 もっとも,本件原子炉は,中央構造線断層帯のほぼ真上に位置し,かつ, 南海トラフ地震の想定震源域に立地しているにもかかわらず,債務者が策定 した基準地震動が過小であるために地震に対して極端に脆弱であるから,上 記の事故が発生する確率も高いといえる。 ウ 以上によれば,保全の必要性もある。 (債務者の主張) 本件原子炉については,その安全性が確保されており(争点2),債権者ら の人格権が侵害される事態は考えられない。 また,債権者らは,本件原子炉から相当程度遠方(地方公共団体に避難計画 の策定が義務付けられている半径30㎞圏よりも遠い地点)に居住しているか ら,仮に,本件原子炉について過酷事故が起こったとしても,その健康の維持 に悪影響を及ぼす程度の放射線に被ばくする危険性は著しく小さいものと考え られる。 したがって,本件申立ては保全の必要性がない。 ⑷ 本件申立ては訴権濫用又は信義則違反といえるか(争点4) (債務者の主張) ア(ア) 本件申立ては,第1次仮処分事件及び第2次仮処分事件(以下,これら の事件をまとめて「先行事件」ということがある。)と同様に,本案訴訟 の原告団における協議の結果として申し立てられたものであって,形式的 には,先行事件では債権者ではなかった者が本件申立ての債権者に含まれ ているものの,実態としては,同一主体が繰り返し申し立てていることと 何ら変わりがない。 また,債権者Aらは,いずれも先行事件では債権者ではなかったが,債 権者Fと同じ広島市内に居住する者であって,本件発電所と各住所地との - 60 - 距離には大差はないから,少なくとも債権者Fが主張している被保全権利 や保全の必要性についての判断が両者の間で異なり得る蓋然性はないと考 る者であって,本件発電所と各住所地との - 60 - 距離には大差はないから,少なくとも債権者Fが主張している被保全権利 や保全の必要性についての判断が両者の間で異なり得る蓋然性はないと考 えられる。 したがって,本件申立てでは先行事件では債権者の立場になかった者が 新たに申し立てているからといって,先行事件と本件申立てにおける被保 全権利の重なりのなさは考慮すべきではない。 (イ) 本件申立てにおける債権者らの主張(争点1及び2)は,第1次仮処分 事件におけると同じ争点の蒸し返しであることは明らかである。また,債 権者らは,例えば,争点2において,要するに,債務者が策定した基準地 震動の不合理性を主張するばかりであるなど,上記各争点について第1次 仮処分事件における裁判所の判断を覆すような新しい事情を主張,疎明し ているわけでもない。 しかも,債権者らにおいて,本件申立てで行っている主張,疎明の内容 を,先行事件の手続中に遂げることが困難であったといえるような時間的 制約や,密行性確保のための制約があったとはおよそ考えられない。また, 先行事件において可能であったはずの主張,疎明を基に再度申立てが認め られるとなれば,訴訟における時機に後れた攻撃防御方法の却下の規律 (民事訴訟法157条1項)との比較においてバランスを欠く。 したがって,本件申立てにおける債権者らの主張,疎明について,一部 に先行事件におけるそれと異なる部分があるからといって,再度の申立て が認められるべきではない。 イ 債権者らを含む本案訴訟の原告らは,第1次仮処分事件の保全異議審決定 に対して不満の意を示しながら,最高裁判所へ上訴しても勝てる見込みがな いとか,上訴して敗訴すると他の同種の裁判に影響するなどとして,敢えて 上訴権を行使しない選択をした。その一方で,「リスクがある 定 に対して不満の意を示しながら,最高裁判所へ上訴しても勝てる見込みがな いとか,上訴して敗訴すると他の同種の裁判に影響するなどとして,敢えて 上訴権を行使しない選択をした。その一方で,「リスクがあるので,仮処分 だけは彼ら(債務者)はして欲しくないでしょうね。となると,しないわけ - 61 - にはいかないじゃないですか。仮処分。」などという債権者GのSNS上の 発言や,原子炉の運転差止めの仮処分命令を発してくれる裁判官に当たるま で仮処分申立てを重ねなければならない旨の債権者ら代理人河合弘之弁護士 の発言等を総合的に勘案すれば,債権者らを含む本案訴訟の原告らは,保全 手続の裁判では既判力がないこと及び一旦仮処分命令の決定があれば,それ が後に取り消されるべき決定であったとしても即時に効力が発生することを 奇貨として,自らの主張,疎明を認めてくれる決定(裁判官)を求めて,何 度でも仮処分命令の申立てを繰り返す意思を持っていると考えられる。 債権者ら(及び債権者らを含む本案訴訟原告団を構成する原告ら)のこの ような訴訟態度は,民事保全制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く ものであり,到底,真に救済を求める者の真摯な訴訟態度と評価することは できないし,裁判所の訴訟経済を害し,債務者を不当に長く不安定な立場に 置いた状態でことさらに債務者に応訴負担を強いることを意に介さない身勝 手なものといわざるを得ない。 したがって,このような訴訟態度の下に,再度申し立てられた本件申立て は,信義則に反し,又は訴権を濫用するものであって相当でないというべき である。 ウ したがって,本件申立てについては,具体的な審理に立ち入るまでもなく, 直ちに却下されるべきである。 (債権者らの主張) ア 本件における被保全権利を構成する人格権は各個人に由来し,裁判 ウ したがって,本件申立てについては,具体的な審理に立ち入るまでもなく, 直ちに却下されるべきである。 (債権者らの主張) ア 本件における被保全権利を構成する人格権は各個人に由来し,裁判を受け る権利も各個人に帰属する。そして,本案訴訟の原告団自体には,人格権も 裁判を受ける権利もない。 したがって,先行事件を申し立てていなかった債権者Aらの各申立てが訴 権の濫用であるとか,信義則に反するなどと解する余地はない。 イ 一方,債権者Fらについては,被保全権利や保全の必要性は先行事件にお - 62 - けるそれと同じであるが,被保全権利に係る主張,疎明の内容は大きく異な る。 また,その主張の基になった専門的知見が得られたのは平成29年9月の ことであり,その上で,債権者Fらにおいて,強震動予測という手法によっ て基準地震動を策定することがいかに危険極まりなく,不合理であるかを確 信したのは,第1次仮処分事件の抗告審決定の後であったから,先行事件に おいて本件におけるような主張,疎明を遂げることは困難であった。 しかも,本件の被保全権利に関する債権者らの主張,疎明の内容に照らす と,債務者に反論等のために過重な負担を強いるものではないし,裁判所が 判断する際の負担も上記各事件に照らして各段に小さい。本件申立てについ ては,素直な視点,通常の経験則及び欠けるところのない良心を備えた裁判 官であれば,適切な判断に容易にたどり着けることができるはずであり,そ うなれば,多くの仮処分を申し立てる必要もなくなる。 したがって,債権者Fらの各申立てが訴権の濫用であるとか,信義則に反 するともいえない。 ⑸ 担保の額(争点5) (債権者らの主張) 本件の目的は,債権者らの人格権の保全にあるが,それと同時に,公共の安 全や,極めて 各申立てが訴権の濫用であるとか,信義則に反 するともいえない。 ⑸ 担保の額(争点5) (債権者らの主張) 本件の目的は,債権者らの人格権の保全にあるが,それと同時に,公共の安 全や,極めて広範かつ多数の国民の生命と健康を基礎とする人格権を守ること にあるから,債権者らに担保を立てさせ,経済的な負担を強いることは,正義 ・公平に反する。 被保全権利が認められるのに,債権者らが立担保に応じることができなかっ たがゆえに仮処分の発令に至らず,本件原子炉の破局的大事故を招いてしまっ たとなれば,それこそ許され難い不正義である。 本件にあっては,債権者らに担保を立てさせないで仮処分命令を発するべき である。 - 63 - (債務者の認否) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について ⑴ア 本件において,債権者らが主張する被保全権利は,人格権に基づく妨害予 防請求権としての差止請求権である。個人の生命,身体等の重大な法的利益 が侵害される具体的危険がある場合には,当該個人は,人格権に基づく妨害 予防請求権として,侵害行為を予防するため,当該侵害行為の差止めを請求 することができるというべきである。 イ 債権者らは,本件原子炉には,特に地震に対する安全性が欠けており,そ れに起因する重大な事故がその運転中に発生し,これによって大量の放射性 物質が放出されて,債権者らの生命,身体等が侵害される具体的危険がある として,債務者が本件原子炉を運転する行為を侵害行為として,その差止め を求めるものである(被保全権利)。 ところで,一件記録によれば,債務者は,新規制基準が適用された後に策 定した基準地震動Ssを踏まえ,本件原子炉施設の設備ごとに耐震設計上の 重要度分類を行った上,必要に応じて耐震安全性向上工事を実施するととも に,耐 記録によれば,債務者は,新規制基準が適用された後に策 定した基準地震動Ssを踏まえ,本件原子炉施設の設備ごとに耐震設計上の 重要度分類を行った上,必要に応じて耐震安全性向上工事を実施するととも に,耐震安全性を確保すべき施設を拡充するなどしたことが一応認められる ところ(乙43,72,74ないし84),審尋の全趣旨によれば,債権者 らは,これら一連の耐震設計又は各種工事の施工に瑕疵があり,したがって, 本件原子炉施設が基準地震動Ssをもたらす地震動にすら耐えられずに損傷 し,大量の放射線物質が放出される旨主張しているとは見受けられない。 そうであれば,本件において債権者らが主張する「生命,身体等が侵害さ れる具体的危険」は,「債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回 る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体 的危険」を不可欠の前提としているものと解すべきである。 - 64 - ⑵ そこで,本件において,債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回 る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的 危険をめぐる司法審査の在り方について検討すると,次のようにいうことがで きる。 ア 原子炉は,原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質 を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有 害な放射性物質を発生させるものであって(前提事実⑶,⑷),ひとたび事 故が発生し,放射性物質が原子炉外に放出されると,周辺住民等の生命,身 体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻 な災害を引き起こすおそれがある。このことは,福島第一原発事故の経験か らも明らかであり(前提事実⑸),福島第一原発事故のような深刻な被害の 発生を防止するためには,重大な事故が発 て汚染するなど,深刻 な災害を引き起こすおそれがある。このことは,福島第一原発事故の経験か らも明らかであり(前提事実⑸),福島第一原発事故のような深刻な被害の 発生を防止するためには,重大な事故が発生しないよう,原子力発電所の安 全性を確保する必要がある。 イ そして,福島第一原発事故の反省と教訓を踏まえて,原子力利用における 安全の確保を図るための施策の策定・実施の事務を一元的につかさどるとと もに,専門的知見に基づいて中立公正な立場で独立して職権を行使する行政 機関として,原子力規制委員会が新たに設置され,改正された原子炉等規制 法は,発電用原子炉の設置及び変更について,原子力規制委員会の許可を受 けなければならないとし(同法43条の3の5第1項,同条の3の8第1 項),これらの許可をするために求められる要件の一つとして,「発電用原 子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚 染された物又は発電用原子炉による災害防止上支障がないものとして設置許 可基準規則で定める基準に適合するものであること」(同法43条の3の6 第1項4号,同条の3の8第2項)と定め(前提事実⑹ア,イ(ア)),もって, 発電用原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び安全性の審査の権限を原 子力規制委員会に与えることとなった。 - 65 - 上記のような権限を原子力規制委員会に委ねることとしたのは,(ア)発電用 原子炉施設の安全性に関する基準の策定についていえば,地震等の自然災害 や人為的要因などの事故発生の原因となり得る様々な事象をあらかじめ想定 し,それらの事象によって発電用原子炉施設を構成する各種設備等(例えば, 前提事実⑷)が機能を損なうことがないよう備えるべき強度を定め,又は想 定外の事態に対してその拡大を防止するために必要な設備,機器等の設置を の事象によって発電用原子炉施設を構成する各種設備等(例えば, 前提事実⑷)が機能を損なうことがないよう備えるべき強度を定め,又は想 定外の事態に対してその拡大を防止するために必要な設備,機器等の設置を 求めるなど,多角的,総合的見地から,幾重にも安全性を確保するための基 準を検討する必要があるし,(イ)上記(ア)により策定された基準に基づいて実 際に発電用原子炉施設の安全性を審査する点についていえば,例えば地震一 つとってみても,当該発電用原子炉施設が所在する立地の地形,地質等の自 然条件を前提として,影響を及ぼし得る地震等の規模を具体的に想定し,設 備,機器等が想定した地震等によってその機能を損なうことがないかを確認 することなどが必要となるなど,対象となる事項が多岐にわたり,科学的に は十分に解明されていない事項や将来予測に係る事項も多分に含まれている ために,原子力工学や地震学等の多方面にわたる極めて高度な最新の科学的, 専門技術的知見に基づく総合的判断が不断に必要とされるからであるといっ てよい。 ウ 債務者が本件原子炉施設を運転することができる立場にあるのは,本件申 請について,原子力規制委員会から原子炉等規制法所定の許可処分を受けた からにほかならない(前提事実⑺ア)。そして,原子力規制委員会は,上記 許可処分の過程において,本件申請について,上記イの権限に基づいて,そ の策定に係る新規制基準に照らして,地震に対する安全性を含む新規制基準 への適合性を審査したというのである(前提事実⑻)。しかも,地震に対す る安全性をめぐる上記審査の対象には,基準地震動Ssの年超過確率,すな わち,債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回る地震動を本件発 電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的危険に関する評 - 66 - 価も含まれていた の年超過確率,すな わち,債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回る地震動を本件発 電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的危険に関する評 - 66 - 価も含まれていたことが明らかである(前提事実⑻イ(エ))。 そうすると,本件申請における債務者による上記の具体的危険をめぐる評 価が合理性を有することについて債務者に主張,疎明責任を負わせ,それが 遂げられているかを裁判所が審査するということは,結局のところ,原子力 規制委員会による多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知 見に基づく総合的判断の過程を,そのような知見を持ち合わせていない裁判 所が事後にやり直すことと実質的には等しいことになる。しかし,そのよう な司法審査のありようは,上記イの趣旨に反し,相当でないといわねばなら ない。 さればといって,①債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回る 地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的 危険をめぐる裁判所の審理,判断は,原子力規制委員会の専門技術的な調査 審議及び判断を基にしてされた原子力規制委員会の判断に不合理な点がある か否かという観点から行われるべきであって,新規制基準に不合理な点があ り,又は本件原子炉施設が新規制基準に適合するとした本件申請をめぐる原 子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり, 原子力規制委員会の判断がそれに依拠してされたと認められる場合には,原 子力規制委員会の判断に不合理な点があると解すべきであること,②原子力 規制委員会の判断に不合理な点があることの主張,疎明責任については,債 務者の側において,まず,新規制基準並びに原子力規制委員会における調査 審議及び判断の過程等,原子力規制委員会の判断に不合理な点のないことを 会の判断に不合理な点があることの主張,疎明責任については,債 務者の側において,まず,新規制基準並びに原子力規制委員会における調査 審議及び判断の過程等,原子力規制委員会の判断に不合理な点のないことを 相当の根拠,資料に基づき主張,疎明すべきであり,債務者がその主張,疎 明を尽くさない場合には,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点が あることが事実上推認されるとすることは,上記イの権限を有さず,新規制 基準の策定,それに基づく安全性に関する審査における調査審議や判断を行 った主体ではない私人(原子力規制委員会から行政処分を受けた者)をして, - 67 - 処分行政庁(原子力規制委員会)の判断に不合理な点がないことの主張,疎 明責任を負わせることにほかならず,これまた相当ではない。新規制基準に 不合理な点があり,又は本件原子炉施設が新規制基準に適合するとした本件 申請をめぐる原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤, 欠落があり,原子力規制委員会の判断がそれに依拠してされたと認められる かどうかを審理,判断し,それが認められる場合には,原子力規制委員会の 判断に不合理な点があるとする枠組みで行われるべき司法審査の在り方(最 高裁判所平成4年10月29日判決・民集46巻7号1174頁参照)は, 国及び処分行政庁(原子力規制委員会)を被告とする本件原子炉をめぐる設 置変更許可処分の取消しを求める抗告訴訟において採用されるべき筋合いで ある。 エ(ア) もとより,本件は民事保全事件であって,債務者が策定した基準地震動 Ssを少なくとも上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規 模の地震が発生する具体的危険,ひいてはそのような評価を根拠づける具 体的事実は,被保全権利である人格権に基づく妨害予防請求権としての本 件原子炉運転差止請求権を を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規 模の地震が発生する具体的危険,ひいてはそのような評価を根拠づける具 体的事実は,被保全権利である人格権に基づく妨害予防請求権としての本 件原子炉運転差止請求権を発生させるために必要な法律要件に該当する具 体的事実であると解されるのであるから,その法律効果の発生によって利 益を受ける債権者らに主張,疎明責任があると解するべきである。 (イ) 債務者は,本件原子炉施設の安全性に関する資料をいかに多数保持して いようとも,また,本件原子炉施設の安全性に対する地元の理解を得るた めの働きかけを重ねたとしても,原子力規制委員会による許可処分を得ら れない限り,本件原子炉施設を運転することは事実上できない立場にある ことに変わりはない。したがって,処分行政庁である原子力規制委員会が 関与しない手続である民事保全事件において,債権者らと債務者との間の いわゆる「証拠の偏在」なるものや,地元に対する働きかけの態様を強調 することに決定的な意義を見出し難い。また,仮に本件原子炉が地震に起 - 68 - 因して損傷し,放射性物質が放出された場合に想定される被害が甚大だか らといって,債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回る地震動 を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的危険 が高いという論理的関係にあるとも考え難い。 そうであれば,本件において,上記具体的危険があることが当然に推定 されるなどとして,上記(ア)で説示した主張,疎明責任を転換することは相 当でない。 ⑶ 上記第2の3⑴債務者の主張欄アの主張は,上記⑴,⑵の点をいうものとし て,その限りで理由がある。 これに対し,債権者らは,上記第2の3⑴債権者らの主張欄のとおり主張す るけれども,上記⑴,⑵の説示に反する部分は,同説示に照らし,いずれも採 上記⑴,⑵の点をいうものとし て,その限りで理由がある。 これに対し,債権者らは,上記第2の3⑴債権者らの主張欄のとおり主張す るけれども,上記⑴,⑵の説示に反する部分は,同説示に照らし,いずれも採 用することができない。 2 争点2について ⑴ 上記1で検討したところによれば,本件原子炉施設の地震に対する安全性は, 債務者が策定した基準地震動Ssを少なくとも上回る地震動を本件発電所の解 放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的危険が認められるか,とい う点をめぐる検討に収斂されることになる(本件発電所の各施設が,基準地震 動Ssを超える規模の地震動に対し,どの程度の裕度を具えているかという点 については,しばらく措く。)。 ⑵ 上記⑴によれば,上記第2の3⑵債権者らの主張欄アないしウの主張は,そ の内容からして,上記の具体的危険の存在又はそのような評価を根拠づける具 体的事実を摘示するものでないことが明らかであるから,いずれも失当であり, 採用することができない。 ⑶ア 一方,上記第2の3⑵債権者らの主張欄エの主張は,要するに,①平成1 2年以降,日本で700ガル以上の加速度を観測した地震が多数存在する事 実,②本件超過事例,③震度7に相当する地震動が1500ガル程度である - 69 - ことを前提に,一般的な鉄筋コンクリート造の建造物については,建築基準 法上,震度7までの揺れに耐えられる耐震性能を求められている事実,④大 手ハウスメーカーが製造する住宅は3000ガルないし5000ガル前後の 地震動にも耐え得る性能を具えている事実,⑤債務者が基準地震動Ssを策 定する過程で検討対象としたプレート間地震の地震動が181ガルであった のに対し,平成12年以降,1個の地震で200ガル以上の地震動を観測し た地点が多数存在する事実等から帰 債務者が基準地震動Ssを策 定する過程で検討対象としたプレート間地震の地震動が181ガルであった のに対し,平成12年以降,1個の地震で200ガル以上の地震動を観測し た地点が多数存在する事実等から帰納すると,債務者が策定した基準地震動 Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発 生する具体的危険がある旨の主張ということができる。 イ そこで検討するに,一件記録によれば,次の事実が一応認められる。 (ア) 前提となる知見 a 地震は,地下の岩盤が周囲から力を受けることによって,ある面(震 源断層面)を境として破壊する(ずれる)現象である。ある点(震源) から始まった破壊は震源断層面を拡大していき(破壊が広がった震源断 層を含む領域を震源域という。),震源域から地震波が逐次放出される。 放出される地震波の性質は,どの程度の大きさの断層がどのように破壊 したかによって決まる。このように,放出される地震波を特徴づける震 源断層の大きさやその破壊のありようを震源特性という。 b 震源域から放出された地震波は,原則として震源からの距離とともに その振幅を減じながら地下の岩盤中を伝播していくが,例えば,伝播経 路中に深部地盤の不整形性が見られる場合等,地震波が特定の観測点に 到達するまでの伝播経路に固有の特性が地震波に反映されていくことと なる。このような伝播経路に固有の特性を伝播特性という。 c 地震波は,硬い地盤から軟らかい地盤に入射すると振幅が大きくなる 性質を持っているため,軟らかい地盤上にある観測点には,硬い岩盤上 にあるそれに比べて大きな揺れ(地震動)をもたらす。このような地震 - 70 - 動に作用する対象地点近傍の地盤構造の特性を増幅特性という。 増幅特性は,地盤のせん断波速度と相関があり,地盤のせん断波速度 が な揺れ(地震動)をもたらす。このような地震 - 70 - 動に作用する対象地点近傍の地盤構造の特性を増幅特性という。 増幅特性は,地盤のせん断波速度と相関があり,地盤のせん断波速度 が大きいほど地震動の増幅率が小さいことが知られている。 また,表層地盤増幅率が与える影響について,表層地盤増幅率が異な る2地点において,一方が他方の増幅率の2倍であり,その他の条件が 全て同じ場合,表層増幅率が大きい方の地点での最大振幅値は,小さい 方の地点のそれの2倍になる。 地震本部による地震動評価では,山地,扇状地等の地形区分(微地形 分類)等に基づく平均的な地盤のS波速度から経験的に評価された増幅 率が考慮されており,0.5から3.8までの幅が設定されている。 d ある観測点で現実に観測される地震動は,上記aないしcの特性が地 震波に与える影響が組み合わさって構成されていることになるが,震源 特性は地震ごとに,伝播特性及び増幅特性は地震波が伝わり揺れとして 現れる地点ごとに,それぞれ異なる。 (以上につき,乙41,156の1,121,122,194,審尋の全 趣旨) (イ) 観測記録等 a 別紙1-1記載の各地震につき,地震規模(マグニチュード),最大 震度及び観測された最大加速度(小数点以下は適宜切り捨て又は切り上 げ。以下同じ。 )は,同別紙記載のとおりである。また,別紙1-2中 「地震発生時刻」欄記載の年月日時に発生した各地震につき,震央位置 (北緯・東経),震源深さ,地震規模(マグニチュード)及び観測され た最大加速度は,同別紙記載のとおりである。(甲82,83,審尋の 全趣旨) b 東北地方太平洋沖地震(M9.0,震源の深さ24㎞)において,震 央距離175㎞の地点(K-NET築館)で最大加速度2933ガルを, - 71 - 震央距離1 2,83,審尋の 全趣旨) b 東北地方太平洋沖地震(M9.0,震源の深さ24㎞)において,震 央距離175㎞の地点(K-NET築館)で最大加速度2933ガルを, - 71 - 震央距離121㎞の地点(K-NET牡鹿)で最大加速度939ガルを, それぞれ観測した(甲75の6)。 c 2018年9月6日北海道胆振東部地震(M6.7,震源の深さ37 ㎞)において,震央距離26㎞の地点(KiK-net追分,K-NE T追分)で,前者にあっては最大加速度1505ガルを,後者にあって は1796ガルをそれぞれ観測し,震央距離34㎞の地点(KiK-n et夕張)で128ガルを観測した(甲75の1,乙175)。 d 2014年3月14日伊予灘地震(M6.2,震源の深さ78㎞)に おいて,本件発電所では地下5mにおいて最大加速度66ガル(東西方 向)が観測され,震央距離が本件発電所より遠いK-NET八幡浜にお いて,最大加速度260ガル(三成分合成値)が観測された(乙123, 124,156)。 e 愛媛県は,平成25年に実施した愛媛県地震被害想定調査において, 想定される複数の地震ごとに市町村別の地表最大加速度に関する想定結 果を示した。 それによれば,伊方町については,内閣府検討会が想定した南海トラ フの巨大地震の4ケースのモデル(前提事実⑻イ(ア)a⒝)を重ね合わせ た最大値が他の想定地震との比較で最も大きく,その値は1531ガル とされている。もっとも,上記調査における南海トラフの巨大地震の地 表加速度分布図においては,伊方町の内部においても地表加速度分布に はムラがあり,本件発電所周辺の地域は「400.01ないし500. 00ガル」のカテゴリーとして図示されている。 (以上につき,甲40) (ウ) 本件超過事例 a 宮城県沖地震 女川原発では,標記の地 があり,本件発電所周辺の地域は「400.01ないし500. 00ガル」のカテゴリーとして図示されている。 (以上につき,甲40) (ウ) 本件超過事例 a 宮城県沖地震 女川原発では,標記の地震により,女川原子力発電所工事用基準面- - 72 - 8.6m(せん断波速度1500m/秒相当)の岩盤中で得られた記録 について,同地点から上部の地盤の影響を取り除いて解析的に求めた同 岩盤表面の地震動(はぎとり波)の応答スペクトルが一部の周期帯で基 準地震動S1又はS2を超えていた。 その要因については,標記の地震のような宮城県沖近海のプレート境 界に発生する地震については短周期成分の卓越が顕著である傾向が認め られるという地域特性によるものと考えられている。 (以上につき,甲27,乙48) b 能登半島地震 志賀原発では,標記の地震により,標高-10m(せん断波速度15 00m/秒相当)の岩盤中で得られた記録について,同地点から上部の 地盤の影響を取り除いて解析的に求めた解放基盤表面の地震動(はぎと り波)の応答スペクトルが長周期側の一部の周期帯で基準地震動S2を 超えていた。 その要因については,標記の地震の震源周辺における,さまざまな観 測地点で得られた他機関の観測記録やこれまでに敷地で観測された別の 方向からの地震記録を検討した結果に加え,実地に探査したところから 推定される同原発の敷地地盤の地下構造のありようによれば,震源特性 や伝播特性ではなく,地盤深部からの増幅特性に起因するものと考えら れている。 (以上につき,甲28,乙50) c 新潟県中越沖地震 柏崎刈羽原発では,標記の地震について,原子炉建屋基礎版(原子炉 建屋の最地下部)における観測記録をもとに推定された解放基盤表面に おける地震動が,同原発の基準地震動S2を上回っていたこ 県中越沖地震 柏崎刈羽原発では,標記の地震について,原子炉建屋基礎版(原子炉 建屋の最地下部)における観測記録をもとに推定された解放基盤表面に おける地震動が,同原発の基準地震動S2を上回っていたことに加え, 同原発敷地内においても,原子炉ごとに有意な差があったことが判明し - 73 - た。 その要因については,①標記の地震の震源(断層面)が逆断層型であ って,同程度の規模の地震の約1.5倍の地震動を発生させる特徴を有 していたこと,②敷地地下深部における堆積層の厚さと傾き(不整形性) の影響により,地震動が2倍程度増幅する傾向があったこと及び③敷地 地下にある古い褶曲構造のために地震波が屈折し,さらに2倍程度増幅 した箇所があったこと,以上の点が指摘されている。 (以上につき,甲29,乙49) d 東北地方太平洋沖地震 ⒜ 女川原発では,標記の地震について女川原子力発電所工事用基準面 -8.6mの岩盤中で得られた観測記録は,一部の周期帯において, 基準地震動Ssを上回っていたが,その後,同地点から上部の地盤の 影響を取り除いて解析的に求めた同岩盤表面の地震動(はぎとり波) の応答スペクトルについても,一部の周期帯で基準地震動Ssを上回 っていたことが確認された。 ⒝ 福島第一原発では,標記の地震により,敷地地盤において600ガ ルを上回る最大加速度を観測した地点が複数認められた。また,同原 発の解放基盤表面(小名浜港工事基準面-196m)に近似する小名 浜港工事基準面-200mの地点(2か所・東西方向及び南北方向) における観測記録に基づいて同地点から上部の地盤の影響を取り除い て解放基盤表面の地震動(はぎとり波)を解析したところ,上記のう ち1か所の東西方向において最大加速度675ガルと推定され,基準 地震動Ssによる最大加速度(600ガル)を上 上部の地盤の影響を取り除い て解放基盤表面の地震動(はぎとり波)を解析したところ,上記のう ち1か所の東西方向において最大加速度675ガルと推定され,基準 地震動Ssによる最大加速度(600ガル)を上回ったこと,上記は ぎとり波による応答スペクトルが一部の周期帯で基準地震動Ssを上 回ったことがそれぞれ確認された。 (以上につき,甲5〔211頁以下〕,30,31,乙54) - 74 - e 基準地震動S1,S2,SSについて ⒜ 原子力安全委員会は,発電用原子炉施設の耐震設計に関する安全審 査を行うに当たり,昭和56年7月20日付けで,従来の指針に代わ るものとして,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(そ の後,一部改訂されたものも含め,以下「旧耐震指針」という。)に よるべき旨を決定した。 旧耐震指針においては,過去の地震から見て原子炉施設の敷地に影 響を与えるおそれのある地震及び近い将来敷地に影響を与えるおそれ のある活動度の高い活断層による地震のうち,最も影響の大きいもの を,工学的見地から起こることを予期することが適当と考えられる地 震として「設計用最強地震」を設定すること,また,敷地周辺の活断 層の性質,地震地体構造及び直下地震を考慮し,設計用最強地震を超 える地震の発生が地震学的見地から否定できない場合には,これを 「設計用限界地震」として設定することが求められていた。そして, 前者(設計用最強地震)によってもたらされる地震動を「基準地震動 S1」とし,後者(設計用限界地震)によってもたらされる地震動を 「基準地震動S2」として,それぞれ策定することになっていた。 ⒝ その後,原子力安全委員会は,平成18年9月19日,それまでの 地震学及び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに発電用軽水炉施 設の耐震設計技術の改良及び進歩を反映し, 策定することになっていた。 ⒝ その後,原子力安全委員会は,平成18年9月19日,それまでの 地震学及び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに発電用軽水炉施 設の耐震設計技術の改良及び進歩を反映し,旧耐震指針を全面的に見 直した結果として,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」 (以下「改訂耐震指針」という。)によるべき旨を決定した。 改訂耐震指針においては,基準地震動を「基準地震動Ss」に一本 化することとし,これを「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」 と「震源を特定せず策定する地震動」とに分けて策定することとした。 そして,「基準地震動Ss」の策定については,その後,新規制基準 - 75 - にも引き継がれた。 (以上につき,前提事実⑻ア,乙153,審尋の全趣旨) (エ) 建築基準法の耐震基準の概要等 a 昭和56年施行後の建築基準法施行令に基づく,いわゆる耐震基準に よれば,概要,①一次設計(中規模の地震動(震度5強程度)による地 震力でほとんど損傷しないこと(許容応力度計算)),②二次設計(大 規模の地震動(震度6強ないし7に達する程度)による地震力で倒壊・ 崩壊しないこと(保有水平耐力計算,許容応力度等計算,限界耐力計算 等)が求められている。 ここにいう「地震力」とは,地震動に対する建築物の応答として生ず る力を指し,通常の場合,建築物が弾性挙動をすれば,建築物の最大応 答加速度は入力地震波の概ね2.5倍から3倍の値となることが知られ ている。 上記②(二次設計)のうち保有水平耐力計算においては,おおよそ水 平方向に1G(建築基準法施行令88条3項。標準層せん断力係数C0= 1.0。980ガルに相当する。)の弾性挙動を仮定しており,300 ないし400ガル程度の地震動に対する設計を要求していることになる とされている。 b⒜ 法施行令88条3項。標準層せん断力係数C0= 1.0。980ガルに相当する。)の弾性挙動を仮定しており,300 ないし400ガル程度の地震動に対する設計を要求していることになる とされている。 b⒜ ところで,気象庁が発表する震度は,平成8年以降,人の体感に基 づくものから,原則として地表や低層建物の1階に設置した計測震度 計によって得られた加速度波形について,建物被害との相関を考慮し て,震度算出に用いる地震動の周期を長周期に広げるとともに,計測 震度の値が連続量として扱えるように継続時間を考慮して,特定の計 算式を用いて算出されるものに改訂された。 ⒝ 国土交通省国土技術政策総合研究所が示した,震度と最大加速度等 に関する概ねの対応表によれば,震度7に対応する最大加速度は15 - 76 - 00ガルとされている。 ⒞ しかし,気象庁は,計測震度の計算には,上記の考慮(周期及び継 続時間)が働くことから最大加速度が大きい場所が震度も大きくなる とは限らないとした上,実際の地震波はさまざまな周期の波が含まれ ているので,震度7が加速度で何ガルに相当するといえないとしてい る。そして,気象庁は,周期1秒の波が同じ振幅で数秒間続くと仮定 した場合に震度7の下限に相当する計測震度に達するためには,3成 分の合成値で約600ガル以上の加速度が必要で,これが周期0.1 秒の波になると2700ガル以上になる旨指摘している。 (以上につき,甲20,32,乙139,143ないし145) (オ) 大手ハウスメーカー製の住宅の耐震性能等 三井ホーム株式会社は,平成28年に,独自の木造建築構法を採用した 2つのタイプの住宅について実大振動実験を実施し,うち1タイプについ ては加振最大加速度5115ガルに,別のタイプについては加振最大加速 度4176ガルに,それぞれ耐えられる 自の木造建築構法を採用した 2つのタイプの住宅について実大振動実験を実施し,うち1タイプについ ては加振最大加速度5115ガルに,別のタイプについては加振最大加速 度4176ガルに,それぞれ耐えられることを確認した。このほか,住友 林業株式会社も,同会社の独自構法による木造住宅について行った振動実 験において,最大3406ガルの加速度に耐えられることを確認した。な お,これらの加速度は,振動実験の際に建物の躯体を固定した振動台で計 測された実測値であった。(甲38,審尋の全趣旨) ウ 前提事実及び上記イの事実をもとに,債務者が策定した基準地震動Ssを 上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が発生する 具体的危険があるといえるかどうか検討すると,次のようにいうことができ る。 (ア) 別紙1-1及び1-2記載の各観測記録からの帰納について a ある地点で観測される地震動は,地震ごとに異なる震源特性,地震波 の伝播経路ごとに異なる伝播特性及び観測地点近傍の地盤構造ごとに異 - 77 - なる増幅特性の組み合わせによって構成されるというのである(上記イ (ア))。 b そうであれば,例えば,A地点で実際に観測された地震動と同程度の 地震動がB地点でももたらされるおそれがあるかどうかを検討するに当 たっては,A地点で実際に観測された地震動について,それをもたらし た地震の震源特性,当該地震の震源域からA地点までの地震波の伝播経 路における伝播特性及びA地点近傍の地盤構造に基づく増幅特性をそれ ぞれ解析するとともに,B地点で想定する地震の震源特性,想定される 地震の震源域からB地点まで及びB地点近傍の各地盤構造を明らかにす ることによって想定される伝播特性や増幅特性のありように置き換え, A地点で実際に観測された地震動を補正する過程が必須で 性,想定される 地震の震源域からB地点まで及びB地点近傍の各地盤構造を明らかにす ることによって想定される伝播特性や増幅特性のありように置き換え, A地点で実際に観測された地震動を補正する過程が必須であるといわね ばならない。すなわち,地震ごとや観測地点ごとに異なる震源特性,伝 播特性及び増幅特性が地震波に与える影響を無視したまま,ある地点で 現実に観測された地震動の最大加速度の絶対値のみを引き合いに,直ち に別の地点でもそれと同様の最大加速度を伴う地震動がもたらされるな どという推論は,到底科学的であるとはいえない。このことは,専門的 知見を介さずとも見やすい道理である。 また,震央距離及び震源の深さは,要するに,当該地震の震源から特 定の観測地点までの震源距離を特定するためのデータに過ぎないから, 上記aで説示したところによれば,震央距離及び震源の深さをもって, 「震源距離が大きくなるほど地震波が減衰する」という一般的かつ原理 的な現象を説明することはできても,伝播特性を解析したことにはなら ないし,ましてや,震源距離が震源特性や増幅特性を決定づける要素で あるとは考え難い。 同様に,地震の規模(マグニチュード,モーメントマグニチュード) は,要するに,震源域に蓄えられていた歪みが地震によって一気に解放 - 78 - された際に放出されたエネルギーの総量であるから(乙40),上記a で説示したところによれば,震源特性を構成する要素の一つであるけれ ども,すべてを決定づける要素であるとまではいえないし,伝播特性や 増幅特性とは直接の関係はないといわねばならない。 c 以上によれば,別紙1-1及び同1-2各記載の地震について実際に 観測された最大加速度(上記イ(イ)a)について,当該地震及び当該観測 点に係る震源特性,伝播特性及び増幅特性を解析し,これを本件 c 以上によれば,別紙1-1及び同1-2各記載の地震について実際に 観測された最大加速度(上記イ(イ)a)について,当該地震及び当該観測 点に係る震源特性,伝播特性及び増幅特性を解析し,これを本件発電所 の解放基盤表面における各種特性を踏まえて補正しない限り,650ガ ルを上回る最大加速度の観測例が多数あるからといって,債務者が策定 した基準地震動Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもた らす規模の地震が発生する具体的危険があるとは即断できないし,その ことは,上記各地震について,地震の規模や震源距離に関するデータが 付け加えられたとしても,何ら異ならない。 それどころか,同じ地震において,一方の震央距離(すなわち,震源 距離)が他方のそれよりも大きいのに,観測された最大加速度が逆に有 意に大きかった実例(上記イ(イ)b,d)や,同じ地震によって観測され た最大加速度が,震央距離にして約8㎞しか異ならない地点間で,一方 が他方の10倍以上も異なっていた実例(上記イ(イ)c)があるというの であるから,震源特性が同一であっても,伝播特性又は増幅特性の違い が地震波に与える影響はむしろ決定的であるものというべく,実際に観 測された最大加速度の絶対値の大きさをいくら強調しても,上記の補正 をせずじまいの比較対照に科学的な意味を見出すことはできない。 しかるに,一件記録を精査しても,上記の補正をした結果を窺わせる 資料は何ら見当たらない。 (イ) 本件超過事例からの帰納について a 基準地震動は,改訂耐震指針及び新規制基準にあっては,原子炉施設 - 79 - の耐震設計の基準として,施設の共用期間中に極めてまれではあるが発 生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定す ることが適切な地震動であると考えられているところ,そのような考 の耐震設計の基準として,施設の共用期間中に極めてまれではあるが発 生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定す ることが適切な地震動であると考えられているところ,そのような考え 方は旧耐震指針にあっても同様であったと考えられる(乙42,45)。 したがって,一般的には,原子炉施設において基準地震動を上回る規 模の地震動が観測されることが一切許されないとまではいえないが(仮 にそのことが許されないとすれば,基準地震動の策定を通じて絶対安全 を課すことと同義となり,相当でない。),他方で座視できない事象で あることは承認しなければならない。 b しかし,旧耐震指針の下における基準地震動S1,S2と,改訂耐震 指針から採用されて現在に至る基準地震動Ssとでは,その策定原理を 異にするから(上記イ(ウ)e),他の原子力発電所において実際に観測さ れた最大加速度が基準地震動を上回った事例があることを引き合いに, 債務者が策定した基準地震動Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基 盤表面にもたらす規模の地震が発生する具体的危険があるというために は,少なくとも,他の原子力発電所の事例において観測された最大加速 度と当該原子力発電所の基準地震動の大小を比較対照するに当たり,後 者につき新規制基準の下における基準地震動Ssを用いなければ意味が ないというべきである。 c また,実際に観測された最大加速度について,当該地震及び当該観測 点に係る震源特性,伝播特性及び増幅特性を解析し,これを本件発電所 の解放基盤表面における各種特性を踏まえて補正しない限り,債務者が 策定した基準地震動Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面に もたらす規模の地震が発生する具体的危険があると即断できないことは (上記(ア)),本件超過事例を引き合いにする場合であっても同様である 策定した基準地震動Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面に もたらす規模の地震が発生する具体的危険があると即断できないことは (上記(ア)),本件超過事例を引き合いにする場合であっても同様である ことはいうまでもない。 - 80 - d 上記b及びcを踏まえて本件超過事例をみると,宮城県沖地震におけ る女川原発の事例,能登半島地震における志賀原発の事例及び新潟県中 越沖地震における柏崎刈羽原発の事例は,いずれも観測された最大加速 度が基準地震動S1又はS2を上回った事例であって(上記イ(ウ)aない しc),基準地震動Ssを上回った事例ではないし,一件記録を精査し ても,基準地震動Ssをも上回っていたことを窺わせる資料はないから, これらの事例は「超過事例」として引き合いに用いることがそもそも適 切ではない。 また,上記の点を措くとしても,宮城県沖地震における女川原発の事 例については地域特性(宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震に 特有の震源特性ということができる。),能登半島地震における志賀原 発の事例については増幅特性,新潟県中越沖地震については震源特性, 伝播特性及び増幅特性が,それぞれ既に具体的に指摘されているのであ るから(上記イ(ウ)aないしc),これらの諸特性を本件発電所の解放基 盤表面における各種特性に置き換えて補正しなければ,これらの事例を 引き合いにすることは相当でない。 一方,東北地方太平洋沖地震における女川原発及び福島第一原発の各 事例は,いずれも基準地震動Ssを一部の周期帯ではあれ上回った事例 である上(上記イ(ウ)d),他の事例と異なり,基準地震動Ssを上回る 地震動が観測される要因になった震源特性,伝播特性及び増幅特性は具 体的には指摘されるに至っていないことが窺える(審尋の全趣旨)。し かし,ある地点で観測される地震 事例と異なり,基準地震動Ssを上回る 地震動が観測される要因になった震源特性,伝播特性及び増幅特性は具 体的には指摘されるに至っていないことが窺える(審尋の全趣旨)。し かし,ある地点で観測される地震動は,震源特性,伝播特性及び増幅特 性の組み合わせによって構成されることは既に説示したとおりであるか ら(上記イ(ア)),上記各事例において観測された地震動についてもそれ を特徴付けた震源特性,伝播特性又は増幅特性が存在するはずであり, これらの解析を抜きにして引き合いにすることはやはり不適切であるこ - 81 - とには変わりがない。 以上によれば,本件超過事例の存在のゆえに,債務者が策定した基準 地震動Ssを上回る地震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模 の地震が発生する具体的危険があるとはいえないというに帰する。 (ウ) 建築基準法上の耐震基準からの帰納について 建築基準法上の耐震基準は,一次設計及び二次設計からなっており,特 に後者にあっては,大規模の地震動で倒壊・崩壊しないことの検証が求め られているところ,そこで想定されている大規模の地震動については,震 度6強ないし7に達する程度の地震が例示されている(上記イ(エ)a)。そ して,国土交通省国土技術政策総合研究所が示した対応表による限り,震 度7に対応する最大加速度は1500ガルとされているというのであるか ら(上記イ(エ)b⒝),建築基準法上の耐震基準を満たす建造物は,少なく とも最大加速度1500ガルに耐えられることが前提となっているものと いうべく,そのような最大加速度をもたらす地震が発生する可能性が相応 に肯定されるかのようにみえる。 しかし,例えば,二次設計における保有水平耐力計算においては,おお よそ水平方向に980ガルの弾性挙動が仮定されているところ,通常の場 合,建築物が弾性 る可能性が相応 に肯定されるかのようにみえる。 しかし,例えば,二次設計における保有水平耐力計算においては,おお よそ水平方向に980ガルの弾性挙動が仮定されているところ,通常の場 合,建築物が弾性挙動をすれば,建築物の最大応答加速度は入力地震波の 概ね2.5倍から3倍の値となることが知られているというのであるから, 保有水平耐力計算において前提とされている地震動は,300ないし40 0ガル程度に過ぎないことになる(上記イ(エ)a)。また,計測震度計によ る観測値を基にして計測震度を算出し,これを発表する立場にある気象庁 は,計測震度を算出する際の考慮要素及び実際の地震動には様々な周期の 波が含まれている(周期が異なれば,震度7の下限に当たる計測震度に達 するための加速度の違いは数倍に達する。)ことを指摘した上,震度7に 相当する加速度を特定することはできないというのである(上記イ(エ)b⒜, - 82 - ⒞)。 これらの事情を勘案すると,建築基準法上の耐震基準の中で想定されて いる「大規模の地震動」として震度6強ないし7に達する程度の地震が例 示されているからといって,債務者が策定した基準地震動Ssを上回る地 震動を本件発電所の解放基盤表面にもたらす規模の地震が,いわば「あり ふれている」とまでいうことは困難である。 (エ) 大手ハウスメーカーが製造する住宅の耐震性能からの帰納について 上記イ(オ)の認定事実によれば,大手ハウスメーカーが製造する住宅につ いては,振動実験を通じて,数千ガルもの加振最大加速度に耐えられる耐 震性能を具えていることが確認されているものといってよい。 しかし,これらの建物は,大手ハウスメーカーが取り扱う一般向けの住 宅であるというのであるから,①表層地盤上に基礎を設置して建築する建 物であること,②日本国内の宅地でありさえ いるものといってよい。 しかし,これらの建物は,大手ハウスメーカーが取り扱う一般向けの住 宅であるというのであるから,①表層地盤上に基礎を設置して建築する建 物であること,②日本国内の宅地でありさえすれば,地方や地域のいかん を選ばず建築されること,以上2点が前提となっており,上記のとおり求 められる耐震性能も,そのことを踏まえて設定されたものであることは明 らかである。 上記①によれば,住宅に直接的な影響を及ぼす地震動として想定される べき揺れは,表層地盤において観測されるべき地震動にほかならないもの ということになる。そのことは,大手ハウスメーカーが振動実験の結果と して謳う加振最大加速度が,建物の躯体を固定した振動台における実測値 であること(上記イ(オ))からも明らかである。してみると,大手ハウスメ ーカーが追求した耐震性能の前提となる地震動は,震源特性,伝播特性に 加え,当該住宅が立地する地点近傍の地下構造に由来する増幅特性の影響 を受けた末のものであるといわねばならない。また,上記②の点は,大手 ハウスメーカーが自社商品である建物に具えさせる耐震性能のレベルを設 定するに当たり,特定の建築予定地点における具体的な地域特性(震源特 - 83 - 性,伝播特性,増幅特性)を個別に考慮し,反映させることがそもそも予 定できず,それゆえに,これまで知られている最も深刻な増幅現象を踏ま えざるを得ないということにほかならない。 そうであれば,大手ハウスメーカーが,上記のとおり耐震性能のレベル を設定するに当たり,別紙1-1や同1-2各記載の地震はもとより,日 本各地で実際に観測された最大加速度の絶対値を参照し,そのような最大 加速度に対する耐久性を追求することに合理性を見出せるのは,上記①及 び②の点を前提にしているからこそであって,これらの事情を捨象して 本各地で実際に観測された最大加速度の絶対値を参照し,そのような最大 加速度に対する耐久性を追求することに合理性を見出せるのは,上記①及 び②の点を前提にしているからこそであって,これらの事情を捨象して上 記の振動実験で耐久性を確認した加振最大加速度の数値のみに着目し,本 件発電所の解放基盤表面に債務者が策定した基準地震動Ssを超える地震 動をもたらす地震が発生する具体的危険があるということはできない。 (オ) 債務者が基準地震動の策定に当たって考慮したプレート間地震による地 震動の加速度の想定(181ガル)が過小であるとする点について ある地点で観測される地震動が震源特性,伝播特性及び増幅特性の組み 合わせによって構成されることは,上記イ(ア)で認定したとおりであって, そのことがプレート間地震に基づく地震動には該当しない旨の知見がある ことを窺わせる資料は見当たらない。 そうであれば,プレート間地震に基づく地震動が本件発電所の解放基盤 表面にもたらす影響を評価するに当たっても,他の類型の地震の場合と同 様に,検討対象とされるプレート間地震の震源特性,伝播特性及び増幅特 性を分析,検討することが求められることには変わりがないというべきで ある。したがって,過去に発生したプレート間地震を始め規模が大きい地 震の際に実際に観測された地震動に関するデータを基に,本件発電所の解 放基盤表面において,181ガルはもちろん,債務者が策定した基準地震 動Ssを上回る規模の地震動をもたらす地震が発生する具体的危険がある というためには,上記のデータを本件発電所の解放基盤表面におけるそれ - 84 - に補正した数値を前提に評価すべき筋合いである(上記(ア)参照)。しかし, 一件記録を精査しても,そのように補正した結果としての数値を窺わせる 資料は見当たらないから,上記の具体 - 84 - に補正した数値を前提に評価すべき筋合いである(上記(ア)参照)。しかし, 一件記録を精査しても,そのように補正した結果としての数値を窺わせる 資料は見当たらないから,上記の具体的危険があるというには至らない。 また,愛媛県が平成25年に実施した愛媛県地震被害想定調査において は,伊方町について,内閣府検討会が想定した南海トラフの巨大地震によ る想定加速度を1531ガルと示しているけれども(上記イ(イ)e),この 数値が本件発電所の解放基盤表面において想定されるもの,すなわち,少 なくとも増幅特性に関する補正についてどのように考慮した結果であるか は不明であるし,そもそも,伊方町の内部においても地表加速度分布は一 様ではなく,本件発電所周辺の地域は「400.01ないし500.00 ガル」のカテゴリーとして図示されている(同上)というのである。した がって,上記調査の結果によっても,上記の判断は何ら左右されない。 (カ) 以上によれば,この点に関する債権者らの主張は,採用することができ ないというに帰する。 ⑷ア また,債権者らは,上記第2の3⑵債権者らの主張欄オ(ア)のとおり主張す る。そして,債務者が,本件申請において,本件発電所の解放基盤表面にお ける基準地震動Ssの年超過確率を1万年から100万年に1回程度と算出 したことは前提事実⑻イ(エ)のとおりである。 地震を始めとする自然現象の予測にあっては,科学技術に関する最新の専 門的知見をもってしても,当該予測を上回る事象が発生する危険性を完全に 払拭することはできないのが実情であることはいうまでもない。一方で,対 象とする自然現象の規模が大きくなればなるほど,その発生頻度が低くなる という相関関係があることも,その限りでは一般的に広く知られているもの といってよい。そして,その発生頻度をそ でもない。一方で,対 象とする自然現象の規模が大きくなればなるほど,その発生頻度が低くなる という相関関係があることも,その限りでは一般的に広く知られているもの といってよい。そして,その発生頻度をそもそも許容するか否か,許容する としてどのレベルの発生頻度まで受け入れることができるかは,社会通念を もって判断するよりほかはないものというべきである。 - 85 - そうしたところ,原子力の平和利用に関する限り,その利用に関する科学 的知見や先進的技術を不断に発展させ,それによってもたらされる便益を享 受している現代社会にあっては,その絶対安全が保証されない限りこれを一 切用いるべきではないとか,1万年から100万年に1回という発生頻度を 許容し難いなどということが社会通念として確立されているとはいい難い。 この点に関する債権者らの主張は,採用することができない。 イ さらに,債権者らは,上記第2の3⑵債権者らの主張欄オ(イ)のとおり主張 する。 しかし,債務者が算出した年超過確率(前提事実⑻イ(エ))には合理性がな い旨の主張は,債務者の策定に係る基準地震動Ssを上回る地震動をもたら すような地震が発生する確率が1万年から100万年に1回程度よりも大き い旨の主張と実質的には同義であるというべきであるから,結局のところ, 上記⑴で説示した具体的危険が認められるかどうかをめぐる検討に収斂され ることになる。そして,そのような具体的危険を認めるに至らないことは, 上記⑶で説示したとおりである。この点に関する債権者らの主張は,採用す ることができない。 ⑸ 小括 以上によれば,標記の争点をめぐる債権者らの主張は,その他の点も含め, いずれも採用することができない。 そうすると,本件原子炉が特に地震に対する安全性を欠いており,それに起 因する重大な事故がその運 以上によれば,標記の争点をめぐる債権者らの主張は,その他の点も含め, いずれも採用することができない。 そうすると,本件原子炉が特に地震に対する安全性を欠いており,それに起 因する重大な事故がその運転中に発生し,これによって大量の放射性物質が放 出されて,債権者らの生命,身体等が侵害される具体的危険があることが疎明 されているとはいえないことになるから,債権者らの被保全権利はいずれも認 められないというほかはない。 3 争点3について ⑴ 債権者らの被保全権利の存在が疎明されていないことは上記2のとおりであ - 86 - るが,本争点についても判断しておく。 ⑵ア 債権者らは,上記第2の3⑶債権者らの主張欄のとおり主張する。 イ しかし,仮の地位を定める仮処分は,争いのある権利関係について,債権 者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避ける必要性(保全の必要性)があ るときに発することができる(民事保全法23条2項)。そして,仮の地位 を定める仮処分は,一般的には,債務者に与える打撃が大きくなることが避 けられない。 そうであれば,ここにいう保全の必要性については,債権者において,本 案判決による救済を待っていたのでは債権者の権利が実質的に満足されなく なるような具体的な事情が求められるというべきであるし,その疎明責任は 債権者にあるものと解すべきである。 ウ これを本件についてみるに,仮に,上記2において被保全権利が一応認め られたとしても,さらに保全の必要性が認められるというためには,債務者 を被告とする本件原子炉の運転差止請求訴訟の判決(本案判決)による救済 を待っていたのでは本件原子炉の運転差止請求権が実質的に満足されなくな るという具体的な事情が疎明されなければならないということになるから, 債務者が本件原子炉を運転することによって,債 決)による救済 を待っていたのでは本件原子炉の運転差止請求権が実質的に満足されなくな るという具体的な事情が疎明されなければならないということになるから, 債務者が本件原子炉を運転することによって,債権者らが上記本案判決の確 定まで受忍することが酷であると考えられるほどの損害を被るとか(著しい 損害),そのような損害が現実化する危険が上記本案判決の確定を待てない ほどに差し迫っていること(急迫の危険)の疎明を要する筋合いである。 すなわち,①現時点で本件原子炉の運転に伴って既に大量の放射性物質の 放出が発生・継続しており,債権者らの生命や身体等の重大な法益が侵害さ れている具体的事実,又は②少なくとも,本件発電所の解放基盤表面におい て債務者が策定した基準地震動Ssを上回る地震動をもたらす地震が発生す る危険性について,それが本件原子炉の運転期間を通じて一応認められると いうにとどまらず(その程度にとどまる場合は,被保全権利が疎明されたと - 87 - いうに過ぎない。),その危険性が本案判決の確定を待つ暇もなく差し迫っ ている旨の評価を基礎づける事実,以上2点のいずれかの疎明を要するもの といわねばならない。 このうち,上記①については,本件原子炉の運転によって債権者らの生命 や身体等の重大な法益が侵害されている具体的事実の疎明がないのに「著し い損害」(民事保全法23条2項)があるとはいえないし,そのことは,仮 に危険が現実化した場合に想定される被害が深刻かつ甚大であることが容易 に予想できるとしても,何ら異ならない。また,上記②については,こと地 震に関する限り,現時点における最新の専門的知見をもってしても,どこを 震源とし,どのような規模を有する地震が,いつ発生するかを正確に予測す ることが不可能であることは承認しなければならないが,そのような予測が 限り,現時点における最新の専門的知見をもってしても,どこを 震源とし,どのような規模を有する地震が,いつ発生するかを正確に予測す ることが不可能であることは承認しなければならないが,そのような予測が 不可能であるからといって,債権者らの生命や身体等の重大な法益が侵害さ れる危険が上記本案判決の確定を待てないほどに差し迫っているとまで評価 するには,なお論理の飛躍があるものというほかはなく,「急迫の危険」 (同上)の存在が推認されるということにはならないし,その存在が推定さ れるということも相当ではない。 結局のところ,一件記録を精査しても,上記①及び②のいずれの事実も疎 明されているとはいえないから,保全の必要性についても認められないもの というべく,この点に関する債権者らの主張は,採用することができない。 第4 結論 以上の次第で,債権者らの申立ては,その余の争点について検討するまでもな く,いずれも理由がない。 令和3年11月4日 広島地方裁判所民事第4部 - 88 - 裁判長裁判官 吉 岡 茂 之 裁判官 中 井 沙 代 裁判官 佐 々 木 悠 土 - 89 - (別紙) 文 献 等 目 録 Noda et.al(2002):「Response spectra for design purpose of stiff structures on rock sites,OECD-NEA workshop on the relation between seismological data and seismic engineering analysis」Shizuo Noda・Kazuhiko Yashiro・Katsuya on between seismological data and seismic engineering analysis」Shizuo Noda・Kazuhiko Yashiro・Katsuya Takahashi ・Masayuki Takemura ・Susumu Ohno ・Masanobu Tohdo ・Takahide Watanabe 壇ほか(2011):「長大横ずれ断層による内陸地震の平均動的応力降下量の推定と強震 動予測のためのアスペリティモデルの設定方法への応用」壇一男・具典淑・入江 紀嘉・アルズペイマサマン・石井やよい(乙66) Fujii and Matsu'ura (2000):「Regional Difference in Scaling Laws for Large Earthquakes and its Tectonic Implication」Fujii,Yoshihiro and Mitsuhiro Matsu'ura 入倉・三宅(2001):「シナリオ地震の強震動予測」入倉孝次郎・三宅弘恵 松田(1975):「活断層から発生する地震の規模と周期について」松田時彦(乙171) 加藤ほか(2004):「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル- 地質学的調査による地震の分類と強震観測記録に基づく上限レベルの検討-」加 藤研一・宮腰勝義・武村雅之・井上大榮・上田圭一・壇一男(乙46) 佐藤ほか(2013):「物理探査・室内試験に基づく2004年留萌支庁南部の地震によ るK-NET 港町観測点 (HKD020)の基盤地震動とサイト特性評価」佐藤浩章・芝良昭 ・東貞成・功刀卓・前田宜浩・藤原広行(乙69) (摘示順) - 90 - (別紙1-1) №1 2000年10月6日 20)の基盤地震動とサイト特性評価」佐藤浩章・芝良昭 ・東貞成・功刀卓・前田宜浩・藤原広行(乙69) (摘示順) - 90 - (別紙1-1) №1 2000年10月6日 鳥取県西部地震 M7.3 最大震度6強 1142ガル №2 2001年3月24日 芸予地震 M6.4 最大震度6弱 853ガル №3 2003年5月26日 宮城県沖 M7.0 最大震度6弱 1571ガル №4 2003年9月26日 十勝沖地震 M8.0 最大震度6弱 1091ガル №5 2004年10月23日 新潟県中越地震 M6.8 最大震度7 1750ガル №6 2004年11月29日 釧路沖地震 M7.1 最大震度5強 879ガル №7 2004年12月14日 留萌支庁南部地震 M6.1 最大震度5強 1176ガル №8 2007年3月25日 能登半島地震 M6.9 最大震度6強 945ガル №9 2007年7月16日 新潟県中越沖地震 M6.8 最大震度6強 813ガル №10 2008年6月14日 岩手宮城内陸地震 M7.2 最大震度6強 4022ガル №11 2008年7月24日 岩手県沿岸北部地震 M6.8 最大震度6弱 1186ガル №12 2009年12月18日 伊豆地震 M5.1 最大震度5弱 703ガル - 91 - №13 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震 M9.0 最大震度7 2933ガル №14 2011年3月12日 長野県北部地震 M6.7 最大震度6強 804ガル №15 2011年3月 東北地方太平洋沖地震 M9.0 最大震度7 2933ガル №14 2011年3月12日 長野県北部地震 M6.7 最大震度6強 804ガル №15 2011年3月15日 静岡県東部地震 M6.4 最大震度6強 1076ガル №16 2011年3月19日 茨城県北部地震 M6.1 最大震度5強 1084ガル №17 2011年7月5日 和歌山県北部地震 M5.5 最大震度5強 1084ガル №18 2012年3月10日 茨城県北部地震 M5.4 最大震度5弱 826ガル №19 2013年2月2日 十勝地方南部地震 M6.5 最大震度5強 733ガル №20 2013年2月25日 栃木県北部地震 M6.3 最大震度5強 1300ガル №21 2016年4月14日 熊本地震 M7.3 最大震度7 1580ガル №22 2016年6月16日 北海道内浦湾地震 M5.3 最大震度6弱 976ガル №23 2016年10月21日 鳥取県中部地震 M6.6 最大震度6弱 1494ガル №24 2016年12月28日 茨城県北部地震 M6.3 最大震度6弱 886ガル №25 2018年6月18日 大阪府北部地震 M6.1 最大震度6弱 806ガル - 92 - №26 2018年9月6日 北海道胆振東部地震 M6.7 最大震度7 1796ガル №27 2019年6月18日 山形県沖地震 M6.7 最大震度6 強 1191ガル - 93 - (別紙1-2) 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深さ 7 2019年6月18日 山形県沖地震 M6.7 最大震度6 強 1191ガル - 93 - (別紙1-2) 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2019年 2019/12/12- 01:09 45.10N 141.88E 007km M4.2 宗谷地方北部の地震 192 2019/08/04- 19:23 37.71N 141.63E 045km M6.4 福島県沖の地震 246 2019/06/18- 22:22 38.61N 139.48E 014km M6.7 山形県沖の地震 653 2019/05/10- 08:48 31.80N 131.97E 025km M6.3 日向灘の地震 207 2019/02/21- 21:22 42.77N 142.00E 033km M5.8 胆振地方中東部の地震 560 2018年 2018/10/05- 08:58 42.59N 141.97E 031km M5.2 胆振地方中東部の地震 402 2018/09/06- 03:08 42.69N 142.01E 037km M6.7 平成30 年北海道胆振 東部地震 1796 2018/06/18- 07:58 34.84N 135.62E 013km M6.1 大阪府北部の地震 806 2018/04/14- 04:00 43.17N 145.74E 053km M5.4 根室半島南東沖の地震 270 2018/04/09- 01:32 35.18N 132.59E 012km M6.1 島根県西部の地震 145.74E 053km M5.4 根室半島南東沖の地震 270 2018/04/09- 01:32 35.18N 132.59E 012km M6.1 島根県西部の地震 676 2017年 2017/10/06- 23:56 37.09N 141.16E 053km M5.9 福島県沖の地震 232 2017/07/11- 11:56 31.38N 130.62E 010km M5.3 鹿児島湾の地震 541 - 94 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2017/07/02- 00:58 33.00N 131.24E 011km M4.5 熊本県阿蘇地方の地震 320 2017/07/01- 23:45 42.79N 141.86E 027km M5.1 胆振地方中東部の地震 334 2017/06/25- 07:02 35.87N 137.59E 007km M5.6 長野県南部の地震 599 2017/02/28- 16:49 37.51N 141.37E 052km M5.7 福島県沖の地震 234 2016年 2016/12/28- 21:38 36.72N 140.57E 011km M6.3 茨城県北部の地震 886 2016/11/22- 05:59 37.35N 141.60E 025km M7.4 福島県沖の地震 256 2016/10/21- 14:07 35.38N 133.85E 011km M6.6 鳥取県中部の地震 1494 2016/06/16- 14:21 41. 沖の地震 256 2016/10/21- 14:07 35.38N 133.85E 011km M6.6 鳥取県中部の地震 1494 2016/06/16- 14:21 41.95N 140.99E 011km M5.3 内浦湾の地震 976 2016/05/16- 21:23 36.03N 139.89E 042km M5.5 茨城県南部の地震 414 2016/04/29- 15:09 33.26N 131.37E 007km M4.5 大分県中部の地震 407 2016/04/19- 17:52 32.53N 130.63E 010km M5.5 熊本県熊本地方の地 震 356 2016/04/18- 20:42 33.00N 131.20E 009km M5.8 熊本県阿蘇地方の地 震 279 2016/04/16- 16:02 32.70N 130.72E 012km M5.4 熊本県熊本地方の地 震 191 2016/04/16- 09:48 32.85N 130.84E 016km M5.4 熊本県熊本地方の地 震 299 2016/04/16- 07:23 32.79N 130.77E 012km M4.8 熊本県熊本地方の地 震 245 - 95 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2016/04/16- 07:11 33.27N 131.40E 006km M5.4 大分県中部の地震 178 2016/04/16- 03:55 33.02N 131.19E 011km M5.8 熊本県阿蘇 33.27N 131.40E 006km M5.4 大分県中部の地震 178 2016/04/16- 03:55 33.02N 131.19E 011km M5.8 熊本県阿蘇地方の地震 394 2016/04/16- 03:03 32.96N 131.09E 007km M5.9 熊本県阿蘇地方の地震 530 2016/04/16- 01:46 32.86N 130.90E 011km M5.9 熊本県熊本地方の地震 492 2016/04/16- 01:44 32.75N 130.76E 015km M5.4 熊本県熊本地方の地震 145 2016/04/16- 01:25 32.75N 130.76E 012km M7.3 平成28 年(2016 年)熊 本地震 1362 2016/04/15- 01:53 32.70N 130.75E 012km M4.8 熊本県熊本地方の地震 477 2016/04/15- 00:03 32.70N 130.78E 007km M6.4 熊本県熊本地方の地震 606 2016/04/14- 22:07 32.77N 130.85E 008km M5.8 熊本県熊本地方の地震 710 2016/04/14- 21:26 32.74N 130.81E 011km M6.5 平成28 年(2016 年)熊 本地震 1580 2016/01/14- 12:25 41.97N 142.80E 052km M6.7 浦河沖の地震 173 2015年 2015/07/10- 03:33 40.35N 141.56E 088km M5.7 岩手県内陸北部の地震 80E 052km M6.7 浦河沖の地震 173 2015年 2015/07/10- 03:33 40.35N 141.56E 088km M5.7 岩手県内陸北部の地震 186 2015/06/04- 04:34 43.49N 144.06E 000km M5.0 網走地方の地震 252 2015/05/30- 20:24 27.86N 140.68E 682km M8.1 小笠原諸島西方沖の地 震 183 2015/05/25- 14:28 36.05N 139.64E 056km M5.5 埼玉県北部の地震 446 - 96 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2015/05/13- 06:13 38.86N 142.15E 046km M6.8 宮城県沖の地震 399 2015/02/17 13:46- 40.09N 142.11E 050km M5.7 岩手県沖の地震 281 2015/02/06- 10:25 33.73N 134.37E 011km M5.1 徳島県南部の地震 565 2014年 2014/11/22- 22:08 36.69N 137.89E 005km M6.7 長野県北部の地震 589 2014/09/16- 12:28 36.09N 139.86E 047km M5.6 茨城県南部の地震 286 2014/09/03- 16:24 36.87N 139.52E 007km M5.1 栃木県北部の地震 287 2014/07/08- 18:05 42.65N 141. 6 2014/09/03- 16:24 36.87N 139.52E 007km M5.1 栃木県北部の地震 287 2014/07/08- 18:05 42.65N 141.27E 003km M5.6 胆振地方中東部の地震 371 2014/07/05- 07:42 39.67N 142.13E 049km M5.9 岩手県沖の地震 192 2014/03/14- 02:07 33.69N 131.89E 078km M6.2 伊予灘の地震 313 2013年 2013/09/20- 02:25 37.05N 140.69E 017km M5.9 福島県浜通りの地震 426 2013/08/04- 12:29 38.16N 141.80E 058km M6.0 宮城県沖の地震 397 2013/04/17- 21:03 38.46N 141.62E 058km M5.9 宮城県沖の地震 564 2013/04/17- 17:57 34.05N 139.35E 009km M6.2 三宅島近海の地震 347 2013/04/13- 05:33 34.42N 134.83E 015km M6.3 淡路島付近の地震 586 - 97 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2013/02/25- 16:23 36.87N 139.41E 003km M6.3 栃木県北部の地震 1300 2013/02/02- 23:17 42.70N 143.23E 102km M6.5 十勝地方南部の地震 733 2012年 003km M6.3 栃木県北部の地震 1300 2013/02/02- 23:17 42.70N 143.23E 102km M6.5 十勝地方南部の地震 733 2012年 2012/12/07- 17:18 38.02N 143.87E 049km M7.3 三陸沖の地震 343 2012/08/30- 04:05 38.41N 141.91E 060km M5.6 宮城県沖の地震 692 2012/08/25- 23:16 42.33N 143.11E 049km M6.1 十勝地方南部の地震 539 2012/05/24- 00:02 41.34N 142.12E 060km M6.1 青森県東方沖の地震 185 2012/04/01- 23:04 37.08N 141.13E 053km M5.9 福島県沖の地震 228 2012/03/27- 20:00 39.80N 142.33E 021km M6.6 岩手県沖の地震 266 2012/03/14- 21:05 35.75N 140.93E 015km M6.1 千葉県東方沖の地震 393 2012/03/10- 02:25 36.72N 140.61E 007km M5.4 茨城県北部の地震 826 2012/02/19- 14:54 36.75N 140.59E 007km M5.2 茨城県北部の地震 285 2012/02/08- 21:01 37.87N 138.17E 014km M5.7 佐渡付近の地震 389 2011年 2011/11/21- 19:16 34.87N 132.89E 012km :01 37.87N 138.17E 014km M5.7 佐渡付近の地震 389 2011年 2011/11/21- 19:16 34.87N 132.89E 012km M5.4 広島県北部の地震 364 2011/11/20- 10:23 36.71N 140.59E 009km M5.3 茨城県北部の地震 583 - 98 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2011/09/21- 22:30 36.74N 140.58E 009km M5.2 茨城県北部の地震 625 2011/09/07- 22:29 42.26N 142.59E 010km M5.1 日高地方中部の地震 411 2011/08/19- 14:36 37.65N 141.80E 051km M6.5 福島県沖の地震 277 2011/08/12- 03:22 36.97N 141.16E 052km M6.1 福島県沖の地震 356 2011/08/01- 23:58 34.71N 138.55E 023km M6.2 駿河湾の地震 302 2011/07/31- 03:54 36.90N 141.22E 057km M6.5 福島県沖の地震 497 2011/07/25- 03:51 37.71N 141.63E 046km M6.3 福島県沖の地震 343 2011/07/23- 13:34 38.87N 142.09E 047km M6.4 宮城県沖の地震 323 2011/07/05- 19:18 33.99N 13 343 2011/07/23- 13:34 38.87N 142.09E 047km M6.4 宮城県沖の地震 323 2011/07/05- 19:18 33.99N 135.23E 007km M5.5 和歌山県北部の地震 1084 2011/06/23- 06:51 39.95N 142.59E 036km M6.9 岩手県沖の地震 485 2011/04/23- 00:25 37.17N 141.19E 021km M5.4 福島県沖の地震 376 2011/04/19- 04:14 39.60N 140.39E 006km M4.9 秋田県内陸南部の地震 398 2011/04/16- 11:19 36.34N 139.94E 079km M5.9 茨城県南部の地震 417 2011/04/13- 10:08 36.91N 140.71E 005km M5.7 福島県浜通りの地震 484 2011/04/12- 14:07 37.05N 140.64E 015km M6.4 福島県中通りの地震 847 2011/04/11- 20:42 36.97N 140.63E 011km M5.9 福島県浜通りの地震 386 - 99 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2011/04/11- 17:16 36.95N 140.67E 006km M7.0 福島県浜通りの地震 746 2011/04/07- 23:32 38.20N 141.92E 066km M7.1 宮城県沖の地震 1496 2011 006km M7.0 福島県浜通りの地震 746 2011/04/07- 23:32 38.20N 141.92E 066km M7.1 宮城県沖の地震 1496 2011/04/02- 16:56 36.21N 139.96E 054km M5.0 茨城県南部の地震 417 2011/04/01- 19:49 40.26N 140.36E 012km M5.0 秋田県内陸北部の地震 344 2011/03/23- 07:36 37.06N 140.77E 007km M5.8 福島県浜通りの地震 279 2011/03/23- 07:12 37.08N 140.79E 008km M6.0 福島県浜通りの地震 255 2011/03/19- 18:56 36.78N 140.57E 005km M6.1 茨城県北部の地震 1084 2011/03/15- 22:31 35.31N 138.71E 014km M6.4 静岡県東部の地震 1076 2011/03/14- 10:02 36.46N 141.12E 032km M6.2 茨城県沖の地震 290 2011/03/12- 22:15 37.20N 141.43E 040km M6.2 福島県沖の地震 355 2011/03/12- 04:32 36.95N 138.57E 001km M5.9 長野県・新潟県県境付 近の地震 415 2011/03/12- 03:59 36.98N 138.60E 008km M6.7 長野県・新潟県県境付 近の地震 804 2011/03/11- 20:37 39.17N 142.62E 12- 03:59 36.98N 138.60E 008km M6.7 長野県・新潟県県境付 近の地震 804 2011/03/11- 20:37 39.17N 142.62E 024km M6.7 岩手県沖の地震 363 2011/03/11- 17:41 37.42N 141.32E 027km M6.1 福島県沖の地震 772 2011/03/11- 16:29 39.03N 142.28E 036km M6.5 岩手県沖の地震 367 2011/03/11- 14:46 38.10N 142.86E 024km M9.0 平成23 年(2011 年)東 北地方太平洋沖地震 2933 - 100 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2010年 2010/06/13- 12:33 37.40N 141.79E 040km M6.2 福島県沖の地震 277 2009年 2009/12/18- 08:45 34.96N 139.13E 005km M5.1 静岡県伊豆地方の地 震 703 2009/12/17- 23:45 34.96N 139.13E 004km M5.0 静岡県伊豆地方の地 震 555 2009/08/11- 05:07 34.78N 138.50E 023km M6.5 駿河湾の地震 545 2008年 2008/09/11- 09:21 41.77N 144.15E 031km M7.1 111 2008/07/24- 00:26 39.73N 141.63E 108km M6.8 9/11- 09:21 41.77N 144.15E 031km M7.1 111 2008/07/24- 00:26 39.73N 141.63E 108km M6.8 岩手県沿岸北部の地 震 1186 2008/07/08- 16:42 27.46N 128.55E 045km M6.1 233 2008/07/05- 16:49 36.64N 140.95E 050km M5.2 481 2008/06/14- 09:20 38.88N 140.68E 006km M5.7 785 2008/06/14- 08:43 39.03N 140.88E 008km M7.2 平成20 年(2008 年)岩 手・宮城内陸地震 4022 2008/05/08- 01:45 36.23N 141.61E 051km M7.0 茨城県沖の地震 188 2008/01/26- 04:33 37.32N 136.77E 011km M4.8 434 - 101 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深さ マグニ チュード 地震名 最大加速度 (ガル) 2007年 2007/10/01- 02:21 35.23N 139.12E 014km M4.9 312 2007/07/16- 15:37 37.50N 138.64E 023km M5.8 235 2007/07/16- 10:13 37.56N 138.61E 017km M6.8 平成19 年(2007 年)新 潟県中越沖地震 813 2007/04/15- 18:34 34.79N 136.42 0:13 37.56N 138.61E 017km M6.8 平成19 年(2007 年)新 潟県中越沖地震 813 2007/04/15- 18:34 34.79N 136.42E 017km M4.6 478 2007/04/15- 12:19 34.79N 136.41E 016km M5.4 863 2007/03/26- 14:46 37.16N 136.55E 009km M4.8 409 2007/03/25- 18:11 37.30N 136.84E 013km M5.3 351 2007/03/25- 09:42 37.22N 136.69E 011km M6.9 平成19 年(2007 年)能 登半島地震 945 2006年 2006/10/14- 06:38 34.89N 140.30E 064km M5.1 232 2006/09/26- 07:03 33.51N 131.88E 070km M5.3 218 2006/06/12- 05:01 33.13N 131.41E 146km M6.2 206 2006/05/02- 18:24 34.92N 139.33E 015km M5.1 469 2006/04/21- 02:50 34.94N 139.19E 007km M5.8 333 - 102 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2006/03/27- 11:50 32.60N 132.16E 035km M5.5 218 2005年 2 源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2006/03/27- 11:50 32.60N 132.16E 035km M5.5 218 2005年 2005/10/19- 20:44 36.38N 141.04E 048km M6.3 279 2005/08/21- 11:29 37.30N 138.71E 017km M5.0 193 2005/08/16- 11:46 38.15N 142.28E 042km M7.2 宮城県沖の地震 564 2005/07/23- 16:35 35.58N 140.14E 073km M6.0 213 2005/04/20- 06:11 33.68N 130.29E 014km M5.8 370 2005/04/11- 07:22 35.73N 140.62E 052km M6.1 232 2005/03/20- 10:53 33.74N 130.18E 009km M7.0 福岡県西方沖の地震 360 2005/02/16- 04:46 36.03N 139.90E 045km M5.4 344 2005/01/18- 23:09 42.88N 145.01E 050km M6.4 240 2005/01/18- 21:50 37.37N 139.00E 008km M4.7 554 2004年 2004/12/14- 14:56 44.08N 141.70E 009km M6.1 1176 2004/12/06- 23:15 42.85N 145.34E 046km M6.9 14- 14:56 44.08N 141.70E 009km M6.1 1176 2004/12/06- 23:15 42.85N 145.34E 046km M6.9 447 - 103 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2004/11/29- 03:32 42.95N 145.27E 048km M7.1 釧路沖の地震 879 2004/11/10- 03:43 37.37N 139.00E 005km M5.3 256 2004/11/08- 11:16 37.40N 139.03E 000km M5.9 323 2004/11/04- 08:57 37.43N 138.91E 018km M5.2 375 2004/10/27- 10:40 37.29N 139.03E 012km M6.1 570 2004/10/25- 06:05 37.33N 138.95E 015km M5.8 471 2004/10/25- 00:28 37.20N 138.87E 010km M5.3 432 2004/10/24- 14:21 37.25N 138.82E 011km M5.0 495 2004/10/23- 19:46 37.30N 138.87E 012km M5.7 469 2004/10/23- 19:36 37.22N 138.82E 011km M5.3 332 2004/10/23- 18:34 37.31N 138.93E 014km 004/10/23- 19:36 37.22N 138.82E 011km M5.3 332 2004/10/23- 18:34 37.31N 138.93E 014km M6.5 989 2004/10/23- 18:12 37.25N 138.83E 012km M6.0 359 2004/10/23- 18:03 37.35N 138.98E 009km M6.3 826 2004/10/23- 17:56 37.29N 138.87E 013km M6.8 平成16 年(2004 年)新 潟県中越地震 1750 2004/10/06- 23:40 35.99N 140.09E 066km M5.7 189 - 104 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2004/09/05- 23:57 33.15N 137.14E 044km M7.4 東海道沖の地震 397 2004/08/10- 15:13 39.67N 142.13E 048km M5.8 190 2004/05/06- 22:43 42.47N 145.12E 043km M5.7 79 2004/04/14- 11:11 39.34N 140.40E 009km M3.8 63 2004/02/04- 15:08 40.14N 141.89E 063km M5.3 150 2003年 2003/09/26- 06:08 41.71N 143.69E 021km M7.1 661 2003/09/2 1.89E 063km M5.3 150 2003年 2003/09/26- 06:08 41.71N 143.69E 021km M7.1 661 2003/09/26- 04:50 41.78N 144.07E 042km M8.0 平成15 年(2003 年)十 勝沖地震 988 2003/09/20- 12:55 35.22N 140.30E 070km M5.8 118 2003/08/04- 20:57 36.44N 140.61E 058km M4.9 439 2003/07/26- 07:13 38.40N 141.17E 012km M6.2 宮城県北部の地震 368 2003/07/26- 00:13 38.43N 141.16E 012km M5.5 宮城県北部の地震 289 2003/07/20- 02:25 41.46N 140.28E 009km M4.1 284 2003/05/26- 18:24 38.81N 141.68E 071km M7.0 宮城県沖の地震 1571 - 105 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2002年 2002/12/05- 00:53 38.72N 142.26E 037km M4.9 278 2002/11/04- 13:36 32.41N 131.87E 035km M5.7 268 2002/11/03- 12:37 38.90N 142.14E 046km M6.1 417 2002/06/14- N 131.87E 035km M5.7 268 2002/11/03- 12:37 38.90N 142.14E 046km M6.1 417 2002/06/14- 11:42 36.22N 139.98E 057km M4.9 592 2002/05/28- 09:24 34.38N 139.25E 008km M4.3 276 2002/02/12- 22:44 36.59N 141.08E 048km M5.5 305 2001年 2001/12/09- 05:29 28.25N 129.49E 036km M5.8 190 2001/12/02- 22:02 39.40N 141.26E 122km M6.4 岩手県内陸南部の地震 391 2001/04/27- 02:49 43.02N 145.88E 083km M5.9 222 2001/04/25- 23:40 32.79N 132.35E 042km M5.6 259 2001/03/31- 06:09 36.82N 139.39E 008km M4.9 305 2001/03/24- 15:28 34.12N 132.71E 051km M6.4 平成13 年(2001 年)芸 予地震 852 2001/01/10- 19:09 32.81N 131.13E 006km M3.9 390 - 106 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2001/01/04- 13:18 36.96N 13 - 106 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2001/01/04- 13:18 36.96N 138.76E 014km M5.1 422 2000年 2000/10/31- 01:43 34.29N 136.34E 044km M5.5 544 2000/10/18- 12:58 36.92N 139.70E 009km M4.5 398 2000/10/08- 20:51 35.37N 133.31E 009km M5.0 128 2000/10/06- 13:30 35.28N 133.35E 011km M7.3 平成12 年(2000 年)鳥 取県西部地震 1142 2000/08/29- 11:00 34.38N 139.22E 009km M4.9 274 2000/07/30- 21:25 33.97N 139.40E 018km M6.4 209 2000/07/27- 10:49 34.19N 139.29E 012km M5.6 195 2000/07/24- 17:44 34.37N 139.20E 006km M4.7 247 2000/07/21- 03:39 36.53N 141.09E 049km M6.0 322 2000/07/15- 10:11 34.42N 139.25E 005km M4.4 275 2000/07/15- 05:18 34.41N 139.23E 006km M3.9 558 2000/07/01- 16: 9.25E 005km M4.4 275 2000/07/15- 05:18 34.41N 139.23E 006km M3.9 558 2000/07/01- 16:02 34.21N 139.22E 015km M6.4 233 2000/06/08- 09:32 32.70N 130.75E 010km M4.8 267 - 107 - 地震発生時刻 震央北 緯 震央東 経 震源深 さ マグニ チュー ド 地震名 最大加速度 (ガル) 2000/04/01- 03:12 42.51N 140.82E 008km M4.6 328 2000/01/28- 23:21 42.98N 146.71E 056km M6.8 415 - 108 - (別紙2) No. 地震名 日時 規模 1 2008 年岩手・宮城内陸地震 2008/06/14,08:43 Mw6.9 2 2000 年鳥取県西部地震 2000/10/06,13:30 Mw6.6 3 2011 年長野県北部地震 2011/03/12,03:59 Mw6.2 4 1997 年3 月鹿児島県北西部地震 1997/03/26,17:31 Mw6.1 5 2003 年宮城県北部地震 2003/07/26,07:13 Mw6.1 6 1996 年宮城県北部(鬼首)地震 1996/08/11,03:12 Mw6.0 7 1997 年5 月鹿児島県北西部地震 1997/05/13,14:38 Mw6.0 8 1998 年岩手県内陸北部 震 1996/08/11,03:12 Mw6.0 7 1997 年5 月鹿児島県北西部地震 1997/05/13,14:38 Mw6.0 8 1998 年岩手県内陸北部地震 1998/09/03,16:58 Mw5.9 9 2011 年静岡県東部地震 2011/03/15,22:31 Mw5.9 10 1997 年山口県北部地震 1997/06/25,18:50 Mw5.8 11 2011 年茨城県北部地震 2011/03/19,18:56 Mw5.8 12 2013 年栃木県北部地震 2013/02/25,16:23 Mw5.8 13 2004 北海道留萌支庁南部地震 2004/12/14,14:56 Mw5.7 14 2005 年福岡県西方沖地震の最大余震 2005/04/20,06:11 Mw5.4 15 2012 年茨城県北部地震 2012/03/10,02:25 Mw5.2 16 2011 年和歌山県北部地震 2011/07/05,19:18 Mw5.0

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