平成11(行コ)106 損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成8年(行ウ)第54号)

裁判年月日・裁判所
平成13年1月24日 大阪高等裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-15674.txt

判決文本文7,542 文字)

主文 一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。 事実 第一申立て一原判決を取り消す。 二被控訴人らは、大阪府に対し、連帯して金二億四六三八万六一五九円、及びこれに対する平成八年三月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二主張一二に当審における当事者の主張(補充)を付加し、次のとおり訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決四頁八行目の「なお」から一〇行目の末尾までを「なお、吉見ポンプ場工事は、汚水ポンプ場工事と雨水ポンプ場工事とに分かれるところ、前者の費用は大阪府田尻町が負担し、後者の費用四億九四四〇万円は大阪府が負担する。」に改める。 2 原判決五頁四行目の「四億一一〇三万三〇〇〇円」を「四億一一〇七万三〇〇〇円」に改める。 3 原判決一〇頁三行目から四行目の「請負代金中、府負担分」を「請負代金」に改める。 二当審における当事者の主張(補充)1控訴人ら(一) 監査請求期間の遵守大阪府の長その他の財務会計職員は、被控訴人らが行った談合に関与しておらず、職務違反行為がない。したがって、大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間の吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定の締結、右協定に基づく費用の支出及び右協定に基づく精算における差額の還付は、いずれも、地方自治法二四二条一項に規定する「違法な財務会計上の行為」を構成しない。 普通地方公共団体の損害が外部からの不法行為によって生じ、その長その他の財務会計職員に「違法な財務会計上の行為」に該当する行為が認められないときには、住民監査・住民訴訟の対象になるのは、不法行為者に対し適切な損害回復措置を怠っていることであり、これが「怠る事実」(真正怠る事実)となるのであ 財務会計上の行為」に該当する行為が認められないときには、住民監査・住民訴訟の対象になるのは、不法行為者に対し適切な損害回復措置を怠っていることであり、これが「怠る事実」(真正怠る事実)となるのである。 真正怠る事実には、住民監査請求について監査請求期間の制限はない。 (二) 大阪府の被った損害大阪府と被控訴人日本下水道事業団とは、吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定において、建設工事の施行に要する費用の直接費よりも被控訴人日本下水道事業団が注文した請負金額が低額になったときには、被控訴人日本下水道事業団が大阪府に対しその差額を還付するとの精算の合意をしている。 被控訴人らが談合をしなければ、被控訴人日本下水道事業団が行った吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の指名競争入札における入札価格は二割以上低額になっていたから、右各工事の請負金額も二割以上低額になっていた。したがって、被控訴人日本下水道事業団は、大阪府に対し、右請負金額の二割以上の金員を還付していたことになる。 ところが、被控訴人らが行った談合により、右各工事の請負金額は、右協定で定められた建設工事の施行に要する費用の直接費と同額となったため、大阪府は右金員の還付を受けることができなかった。 したがって、大阪府が還付を受けることができなかった右請負金額の二割に相当する金員が損害となる。 なお、大阪府が被控訴人日本下水道事業団に対し請求権を有するとしても、その余の被控訴人らの不法行為が成立しないものではなく、同被控人らに対し損害賠償を求めることができる。 2 被控訴人ら(一) 監査請求期間の徒過普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして地方自治法二四二条一項の規定による住民監査請求があった場合に、右監査請求が、その普通 。 2 被控訴人ら(一) 監査請求期間の徒過普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして地方自治法二四二条一項の規定による住民監査請求があった場合に、右監査請求が、その普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、その行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときには(不真正怠る事実)、その監査請求については、右怠る事実にかかる請求権の発生原因であるその行為のあった目又は終わった日を基準として同条二項を適用すべきものである(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第一六四号・昭和六二年二月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻一号一二二頁)。 監査請求において違法に財産の管理を怠る事実の対象とされている請求権が、普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権であるか否かを判断するに当たっては、控訴人らの主張に従うべきではなく、その請求権の発生原因事実等から客観的に判断すべきである。 また、地方自治法二四二条二項が適用される違法に財産の管理を怠る事実の監査請求を、特定の財務会計上の行為の違法、不当を主張する監査請求と表裏の関係にある監査請求に限られるものと限定して解釈すべきではない。 控訴人らが大阪府監査委員に対してした、大阪府知事が被控訴人らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているので、右損害補填の措置を講ずべきことを勧告することを求める旨の監査請求は、大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間の吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定の締結及び右協定に基づく支出等の財務会計上の行為が不可欠に介在している。そ 旨の監査請求は、大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間の吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定の締結及び右協定に基づく支出等の財務会計上の行為が不可欠に介在している。そして、控訴人らの主張を前提としても、右財務会計上の行為は違法である。 したがって、控訴人らの右監査請求は、大阪府の長その他の財務会計職員の右財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるから、その行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法二四二条二項を適用すべきものである。 (二) 損害の不発生大阪府が被控訴人日本下水道事業団に対し支払った吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定に基づく委託費の金額は、被控訴人日本下水道事業団と被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結された右各工事の請負契約の請負金額とは無関係に定められているから、右委託費の支払いが大阪府の損害となることはない。 右協定で定められた建設工事の施行に要する費用の直接費よりも右請負金額が低額となっても、大阪府が被控訴人日本下水道事業団に対しその差額の還付請求権を取得するものではないから、右差額が大阪府の損害となるものではない。 理由 当裁判所も、控訴人らの請求は、適法な訴えではあるものの、大阪府が被った損害が認められないから、棄却すべきものと判断する。 その理由は、二に当審における当事者の主張に対する判断を付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決四二頁末行の「決定されており」から四三頁四行目までを「決定されている。」に改める。 二当審における当事者の主張について 1 監査請求期間の遵守につい とおりであるから、これを引用する。ただし、原判決四二頁末行の「決定されており」から四三頁四行目までを「決定されている。」に改める。 二当審における当事者の主張について 1 監査請求期間の遵守について(一) 普通地方公共団体の住民が、当該普通地方公共団体において違法又は不当に財産の管理を怠る事実があるとの理由で、地方自治法二四二条一項の規定により適当な措置を求めた住民監査請求については、原則として、同条二項の適用がないと解するのが相当である(最高裁判所昭和五二年(行ツ)第八四号損害賠償請求上告事件・昭和五三年六月二三日第三小法廷判決・判例時報八九七号五四頁、裁判集民事一二四号一四五頁。以下、「昭和五三年判決」という。)。なぜなら、普通地方公共団体が現に財産の管理を怠る事実が存在する以上、その怠った期間の長短にかかわらず、普通地方公共団体はその事実を是正すべき義務があるので、当該普通地方公共団体の住民にその是正を求める住民監査請求を認めるのが相当だからである。 (二) しかし、普通地方公共団体において違法又は不当に財産の管理を怠る事実があるとして地方自治法二四二条一項の規定による住民監査請求があった場合であっても、右監査請求が、その普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、その行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、その監査請求については、右怠る事実にかかる請求権の発生原因であるその行為のあった日又は終わった日を基準として同条二項を適用すべきものである(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第一六四号・昭和六二年二月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻一号一二二頁。以下「昭和六二年判決」という。)。なぜなら、地方自治法二四二条二 条二項を適用すべきものである(最高裁判所昭和五七年(行ツ)第一六四号・昭和六二年二月二〇日第二小法廷判決・民集四一巻一号一二二頁。以下「昭和六二年判決」という。)。なぜなら、地方自治法二四二条二項の規定により、当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過した後にされた監査請求は不適法とされ、当該行為の違法是正等の措置を請求することができないものとしているにもかかわらず、監査請求の対象を当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行為という怠る事実として構成することにより同項の定める監査請求期間の制限を受けずに当該行為の違法是正等の措置を請求し得るものとすれば、法が同項の規定により監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されるからである。 (三) ところで、前記認定のとおり、控訴人らがした住民監査請求(以下、「本件監査請求」という。)は、被控訴人日本下水道事業団を除く被控訴人らが工事の入札価格を調整する談合という共同不法行為をして、契約金額を不当につり上げたため、これによって工事委託者として最終的にこの契約代金を負担した大阪府に対して損害を与えたものであるから、大阪府は不法行為者らに対して損害賠償請求権を行使すべきであるにもかかわらず、大阪府が右請求権の行使を怠っているとして、大阪府が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを求めたものである。 本件監査請求が地方自治法二四二条一項に規定する「普通地方公共団体が不当又は違法に財産の管理を怠る事実」の是正を求めるものであることは、明らかである。 (四) 被控訴人らは、本件監査請求が、大阪府の財務会計上の行為である大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間の吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定の締結及び右協定に基づく支出が違法、無効で は、本件監査請求が、大阪府の財務会計上の行為である大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間の吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定の締結及び右協定に基づく支出が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるから、本件監査請求については、右怠る事実にかかる請求権の発生原因であるその行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法二四二条二項を適用すべきものであると主張する。 しかし、控訴人らは、本件監査請求において、被控訴人日本下水道事業団を除く被控訴人らが工事の入札価格を調整する談合という共同不法行為をして、契約金額を不当につり上げたことにより大阪府が被った損害の賠償請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているのであるから、右協定の締結及び右協定に基づく支出が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としていると認めることはできない。このように解しても、地方自治法二四二条二項により監査請求に期間制限を設けた趣旨を没却するものではない。 控訴人らが本件監査請求において主張する損害賠償請求権が認められるためには、右協定の締結及び右協定に基づく支出という大阪府の財務会計上の行為が不可欠に介在することになるが、控訴人らが被控訴人らによる談合という共同不法行為を主張し、右財務会計上の行為の違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使を主張していない以上、右財務会計上の行為が不可欠に介在するとしても、これを理由に本件監査請求に地方自治法二四二条二項を適用すべきであると解することはできない。 また、控訴人らが本件監査請求において被控訴人らによる談合という共同不法行為による損害賠償請 るとしても、これを理由に本件監査請求に地方自治法二四二条二項を適用すべきであると解することはできない。 また、控訴人らが本件監査請求において被控訴人らによる談合という共同不法行為による損害賠償請求権の不行使を主張し、右財務会計上の行為の違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使を主張していない以上、本件監査請求について右財務会計上の行為の違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の発生原因であるその行為のあった日又は終わった日を基準として同条二項を適用することはできない。なぜなら、監査請求は普通地方公共団体の住民によってその違法又は不法の行為又は不行為の内容を特定してなされるのであるから、普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるか否かを判断するに当たっても、右住民が監査請求で主張しているところに従って判断すべきである。 (五) したがって、本件監査請求は、昭和六二年判決とは事案が異なるというべきであるから、昭和五三年判決が判示したとおり、地方自治法二四二条二項に規定する監査請求期間の制限は適用されないというべきである。 2 大阪府の被った損害について(一) 前記認定のとおり、大阪府が被控訴人日本下水道事業団との閲で締結した吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定に基づいて支払った委託料は、被控訴人日本下水道事業団が指名競争入札によって被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結した右各建設工事の請負契約の請負金額とは別個に定められ、その影響は受けない。 したがって、仮に右指名競争入札について、被控訴人らの間で受注予定者を決定 式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結した右各建設工事の請負契約の請負金額とは別個に定められ、その影響は受けない。 したがって、仮に右指名競争入札について、被控訴人らの間で受注予定者を決定し、入札価格を調整するという談合をし、被控訴人日本下水道事業団と被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結された右各建設工事の請負契約の請負金額がつり上げられたとしても、右談合によって大阪府が支払う委託料が増額することはないから、大阪府が委託料を支払ったことによって損害を被ったとは認められない。 (二) 甲第一八号証、乙1第四号証、第五号証の一、調査嘱託の結果によれば、以下の事実を認めることができる。 (1) 大阪府と被控訴人日本下水道事業団は、その間で締結された吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事の各建設工事委託に関する協定に定められた建設工事の施行に要する費用の直接費よりも被控訴人下水道事業団が注文した請負金額が低額になったときには、被控訴人日本下水道事業団が大阪府に対しその差額を還付する旨の精算の合意をしていた。ただし、右協定で委託された建設工事には、吉見ポンプ場工事及び中部ポンプ場工事以外の工事も含まれており、右還付がなされるのは、それらの工事の直接費の合計額よりも請負金額の合計額が低額になったときである。 (2) 大阪府は、被控訴人日本下水道事業団が被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結した右各建設工事の請負契約の請負金額に容喙することはできない。 (3) 精算は、被控訴人日本下水道事業団がその精算事務処理要領に従い実施するものであって、被控訴人日本下水道事業団が行った精算報告の内容について大阪府が諾否を決めることはできない。 (三) 前記(二)認定の事実によれば、仮に被控訴人らの談合によっ 事務処理要領に従い実施するものであって、被控訴人日本下水道事業団が行った精算報告の内容について大阪府が諾否を決めることはできない。 (三) 前記(二)認定の事実によれば、仮に被控訴人らの談合によって被控訴人日本下水道事業団が被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結した右各建設工事の請負契約の請負金額が二〇パーセント以上高額になっていたとしても、大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間で締結された右協定に定められた右各工事以外の工事の請負金額が明らかではないから、右談合によって、大阪府と被控訴人日本下水道事業団との間で締結した右協定で委託された建設工事の直接費の合計額よりも請負金額の合計額が低額であったとまで認めることはできない。また、大阪府は、被控訴人日本下水道事業団が被控訴人日新電機株式会社及び被控訴人株式会社明電舎との間で締結した右各建設工事の請負契約の請負金額に容喙することはできず、精算報告の内容に諾否を決めることができないから、右談合と大阪府の損害との間に因果関係を認めることにも疑問がある。 三よって、控訴人らの請求を棄却した原判決は正当であるから、本件控訴を棄却することとする。 大阪高等裁判所第五民事部裁判長裁判官井関正裕裁判官前坂光雄裁判官牧賢二

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る