令和7年2月12日宣告令和6年(わ)第116号、第158号不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反(被告人A)、電子計算機使用詐欺(被告人両名)、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(被告人両名)、不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反幇助(被告人B)被告事件主文 1 被告人Aを懲役3年及び罰金30万円に処する。 被告人Aに対し、この裁判が確定した日から4年間、その懲役刑の執行を猶予する。 被告人Aにおいてその罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人Aを労役場に留置する。 2 被告人Bを懲役3年及び罰金30万円に処する。 被告人Bに対し、この裁判が確定した日から4年間、その懲役刑の執行を猶予する。 被告人Bに対し、未決勾留日数のうち、その1日を5000円に換算してその罰金額に満つるまでの分を、その罰金刑に算入する。 理由 (本文中の略称による表記については、別紙1(省略)記載のとおり。)【犯罪事実】第1 (被告人Aについて)(令和6年8月16日付け起訴状記載の公訴事実第1、3、5、令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人Aは、他人の識別符号を使用して不正アクセス行為をしようと考え、法定の除外事由がないのに、別表1(省略)記載のとおり、令和5年3月2日から同年5月24日までの間、20回にわたり、被告人A方ほか1か所において、スマートフォン又はパーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、インターネットサイト「a」を運営する株式会社a(以下、単に「a」という。)が日本国内のいずれかの場所において管理するアクセス制御機能を有する特定電子計算機である認証サーバー 、電気通信回線を通じて、インターネットサイト「a」を運営する株式会社a(以下、単に「a」という。)が日本国内のいずれかの場所において管理するアクセス制御機能を有する特定電子計算機である認証サーバーコンピューターに、別表1「利用権者」欄記載の者を利用権者として付された識別符 号であるメールアドレス及びパスワードをそれぞれ送信して、同サーバーコンピューターを作動させ、前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ、もって不正アクセス行為をした。 第2 (被告人Bについて)(令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第4)被告人Bは、被告人Aが他人の識別符号を使用して不正アクセス行為をするおそれがあることを知りながら、Cと共謀の上、令和5年2月26日頃及び同年5月18日頃の2回にわたり、福岡県内又はその周辺において、被告人Aに対し、aのログイン画面を模したフィッシングサイトのURLを提供するなどし、被告人Aが、法定の除外事由がないのに、別表2(省略)記載のとおり、同年3月2日から同年5月24日までの間、19回にわたり、被告人A方ほか1か所において、スマートフォン又はパーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバーコンピューターに、前記フィッシングサイトを用いて入手した同表「利用権者」欄記載の者を利用権者として付された識別符号であるメールアドレス及びパスワードをそれぞれ送信して、同サーバーコンピューターを作動させ、前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ、もって被告人Aの別表2記載の各不正アクセス行為を容易にしてこれを幇助した。 第3 (被告人両名について)(令和6年8月16日付け起訴状記載の公訴事実第2、4、6、令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第2 の別表2記載の各不正アクセス行為を容易にしてこれを幇助した。 第3 (被告人両名について)(令和6年8月16日付け起訴状記載の公訴事実第2、4、6、令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人両名は、不正アクセス行為によって、被告人AがXほか3名になりすましてaを利用できる状態を利用して財産上不法の利益を得ようと考え、Cと共謀の上、別表3(省略)記載のとおり、令和5年3月3日から同年5月24日までの間、10回にわたり、被告人A方ほか1か所において、スマートフォン又はパーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、aの事務処理に使用する電子計算機である前記サーバーコンピューターに対し、aに被告人B及びCらが管理するY名義のaアカウント(以下「Y名義のアカウント」という。)から別表3「出品額」欄記載の価格で出品された架空のゲームアカウント10点につき、真実は、aで前記Xらに代わってゲーム アカウント情報の売買取引をする正当な権限がないのに、Xら名義の各aアカウントを使用して、Y名義のアカウントから出品された前記各ゲームアカウントを購入する旨の虚偽の情報を与え、前記サーバーコンピューターに、前記各利用権者が前記各ゲームアカウントを購入する旨の財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、同年3月3日から同年5月24日までの間、10回にわたり、aを介してXら名義のゲームアカウントからY名義のアカウントに、購入代金相当額から手数料を差し引いた別表3「売上金額」欄記載の価額相当の売上金と称する金銭債権を移転させ、もって財産上の不法の利益を得た。 第4 (被告人両名について)(令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人両名は、財産上不法な利益を得る目的で犯した電子計算機使用詐欺の犯罪行為 て財産上の不法の利益を得た。 第4 (被告人両名について)(令和6年11月1日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人両名は、財産上不法な利益を得る目的で犯した電子計算機使用詐欺の犯罪行為により得た財産の帰属を仮装しようと考え、Cと共謀の上、別表4(省略)記載のとおり、令和5年3月3日から同年5月24日までの間、10回にわたり、被告人A方ほか1か所において、aにおいて、同表「購入アカウント名義人(利用権者)」欄記載の者名義の各aアカウント(以下「各利用権者アカウント」という。)を使用し、Y名義のアカウントから同表「出品額」欄記載の価格で出品された架空のゲームアカウントを購入し、同年3月3日から同年5月24日までの間、10回わたり、aを介して前記各利用権者アカウントからY名義のアカウントに、購入代金相当額から手数料を差し引いた同表「売上金額」記載の価額相当の金銭債権を移転させ、もって犯罪収益等の取得につき事実を仮装した。 【法令の適用】(被告人Aについて)罰条第1の各行為について別表1の番号ごとに不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」という。)11条、3条、2条4項1号第3の各行為について 別表3の番号ごとに刑法60条、246条の2第4の行為について刑法60条、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)10条1項前段(包括一罪)刑種の選択第1の各罪についていずれも懲役刑第4の罪について懲役刑及び罰金刑併合罪の加重懲役刑について刑法45条前段、47条本文、10条 項前段(包括一罪)刑種の選択第1の各罪についていずれも懲役刑第4の罪について懲役刑及び罰金刑併合罪の加重懲役刑について刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い第3の別表3番号4の電子計算機使用詐欺罪の刑に法定の加重)罰金刑について刑法48条1項(第3の別表3番号4の罪の懲役と第4の罪の罰金とを併科)労役場留置刑法18条刑の執行猶予刑法25条1項(懲役刑について)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(被告人Bについて)罰条第2の各行為について別表2の番号ごとに刑法62条1項、60条、不正アクセス禁止法11条、3条、2条4項1号第3の各行為について別表3の番号ごとに刑法60条、246条の2第4の行為について刑法60条、組織的犯罪処罰法10条1項前段(包括一罪)科刑上一罪の処理第2の各罪について 別表2の番号1ないし17につき刑法54条1項前段、10条(1罪として犯情の最も重い番号1の罪の刑で処断)別表2の番号18、19につき刑法54条1項前段、10条(1罪として犯情の重い番号18の罪の刑で処断)刑種の選択第2の各罪についていずれも懲役刑第4について懲役刑及び罰金刑法律上の減軽第2の各罪についていずれも刑法63条、68条3号(従犯による減軽)併合罪の加重懲役刑について刑法45条前段、47 いずれも懲役刑第4について懲役刑及び罰金刑法律上の減軽第2の各罪についていずれも刑法63条、68条3号(従犯による減軽)併合罪の加重懲役刑について刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い第3の別表3番号4の電子計算機使用詐欺罪の刑に法定の加重)罰金刑について刑法48条1項(第3の別表3番号4の罪の懲役と第4の罪の罰金とを併科)未決勾留日数の算入刑法21条(罰金刑について)刑の執行猶予刑法25条1項(懲役刑について)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書【量刑の理由】本件は、被告人Aがゲームアカウント売買仲介サイト(以下「本件サイト」という。)が管理するサーバーコンピューターに20回にわたり不正アクセス行為をした不正アクセス禁止法違反(第1)、そのうちの19回について被告人Bが被告人AにフィッシングサイトのURLを提供するなどして不正アクセス行為を幇助した不正アクセス禁止法違反幇助(第2)、被告人両名が、不正アクセス行為によって生じた状態を利用して、共犯者と共 謀の上、10回にわたり、ゲームアカウントを購入する旨の虚偽の情報を与えるなどし、被害者らから売上金と称する金銭債権合計17万円弱を詐取したという電子計算機使用詐欺(第3)、被告人両名が、共犯者と共謀の上、電子計算機使用詐欺により得た財産の帰属を仮装したという組織的犯罪処罰法違反(第4)の事案である。 本件は、被告人Bが、本件サイトを通じ、架空のゲームアカウント取引によって取得したポイントについて現金化する方法で手数料収入を得ていたところ、オンラインカジノの費用を捻出しようとした被告人Aが、被告人Bから紹 告人Bが、本件サイトを通じ、架空のゲームアカウント取引によって取得したポイントについて現金化する方法で手数料収入を得ていたところ、オンラインカジノの費用を捻出しようとした被告人Aが、被告人Bから紹介されたフィッシングサイトを利用するなどし、本件各犯行に及ぶに至っており、被告人両名が各犯行に関与した動機経緯に酌むべき事情はない。 被告人両名は、精巧に作られたフィッシングサイトを用いて、ゲームアカウントの架空出品をすることにより、被害者らを誘い込んで被害者らのID・パスワードを不正に取得した上で、被害者らのアカウントに不正アクセスし、乗っ取った他人名義のアカウントを用いてそのポイントを詐取し、換金行為をして利益を得るなどしたもので、その過程では、手続を自動化・簡便化するツールを用い、さらに、IPアドレスやアカウントを複数利用しつつ、他人名義の口座を用いてその収益の帰属を仮装していたものであり、全体を通じてその手口は複雑かつ巧妙で、日常的に繰り返されていた常習的かつ職業的な犯行であって、態様は悪質というほかない。 本件各犯行により、10数名の被害者がアカウントを不正にアクセスされ、合計17万円弱の売上金相当額が不正に取得され、犯罪収益の帰属が仮装されたものであり、被害は小さくはない上、巧妙さが際立った常習的な犯行により、取引の安全に対する信頼が損なわれたといえ、その社会的影響も軽視できない。 被告人両名は、役割を異にし、一部正犯と従犯の違いなどがあるものの、一連の犯行においていずれも重要な役割を果たしており、これらの事情からすれば、被告人両名の責任は相応に重いものがある(なお、付言すると、不正アクセス禁止法について幇助にとどまる被告人Bについても、全体を通じて複雑かつ巧妙で常習的な各犯行に対する寄与を考えると被告人Aに比して刑責が軽いと 任は相応に重いものがある(なお、付言すると、不正アクセス禁止法について幇助にとどまる被告人Bについても、全体を通じて複雑かつ巧妙で常習的な各犯行に対する寄与を考えると被告人Aに比して刑責が軽いということはいえない。)。 もっとも、被害額自体は多額とまではいえず、また、電子計算機使用詐欺の被害者との間で示談が成立し、被害弁償金が支払われているといった事情に加え、被告人両名いずれについても、若年で前科はないこと、事実関係を素直に認め反省の弁を述べていること、いずれも母が出廷し、被告人らの監督をそれぞれ誓約していることなど被告人両名にとってそれぞれ酌むべき事情があり、今回はいずれの被告人についてもその懲役刑の執行を猶予することとし、本件が利欲性の高い犯行であることを考慮して相当額の罰金刑を併科するのを相当と認める。 (求刑被告人両名について懲役3年・罰金30万円)令和7年2月12日佐賀地方裁判所刑事部 裁判官松村一成
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