平成16年3月24日判決言渡平成13年(行ウ)第183号、同第190号、同第191号、同第192号各障害基礎年金不支給決定取消等請求事件口頭弁論終結日平成16年1月28日判決第183号事件原告(以下、単に「原告」という。)A第190号事件原告(以下、単に「原告」という。)B第191号事件原告(以下、単に「原告」という。)C第192号事件原告(以下、単に「原告」という。)D被告社会保険庁長官被告国 主文 1 東京都知事が、平成10年12月4日に原告Aに対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2 原告B、同C、同Dの各処分取消請求をいずれも棄却する。 3 被告国は、原告B、原告C及び原告Dに対し各金500万円を支払え。 4 原告Aの金員請求、並びに原告B、原告C及び原告Dのその余の各金員請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用の負担は次のとおりとする。 1)原告Aに生じた費用の2分の1及び被告国に生じた費用の4分の1を原告Aの負担とする。 2)原告Bに生じた費用の4分の3、被告社会保険庁長官に生じた費用の4分の1、及び被告国に生じた費用の8分の1を原告Bの負担とする。 3)原告Cに生じた費用の4分の3、被告社会保険庁長官に生じた費用の4分の1、及び被告国に生じた費用の8分の1を原告Cの負担とする。 告国に生じた費用の8分の1を原告Bの負担とする。 3)原告Cに生じた費用の4分の3、被告社会保険庁長官に生じた費用の4分の1、及び被告国に生じた費用の8分の1を原告Cの負担とする。 4)原告Dに生じた費用の4分の3、被告社会保険庁長官に生じた費用の4分の1、及び被告国に生じた費用の8分の1を原告Dの負担とする。 5)原告Aに生じたその余の費用及び被告社会保険庁長官に生じたその余の費用を被告社会保険庁長官の負担とする。 6)原告B、原告C及び原告Dにそれぞれ生じたその余の費用及び被告国に生じたその余の費用を被告国の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第183号事件1)東京都知事が、平成10年12月4日に原告A(以下「原告A」という。)に対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2)被告国は、原告Aに対し、金2000万円を支払え。 2 第190号事件1)東京都知事が、平成10年12月3日に原告B(以下「原告B」という。)に対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2)被告国は、原告Bに対し、金2000万円を支払え。 3 第191号事件1)東京都知事が、平成10年12月7日に原告C(以下「原告C」という。)に対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2)被告国は、原告Cに対し、金2000万円を支払え。 4 第192号事件1)千葉県知事が、平成10年11月4日に原告D(以下「原告D」という。)に対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2)被告国は、原告Dに対し、金2000万円を支払え。 第2 事案の概要本件は、大学に在学中に疾病にかかり、又は受傷して障害を負った原告らが障害基礎年金の支給裁定を申請したところ、国 取り消す。 2)被告国は、原告Dに対し、金2000万円を支払え。 第2 事案の概要本件は、大学に在学中に疾病にかかり、又は受傷して障害を負った原告らが障害基礎年金の支給裁定を申請したところ、国民年金に任意加入しておらず、被保険者資格が認められないなどとして同年金を支給しない旨の処分を受けたため、①被告社会保険庁長官に対し、学生には、任意加入をしない限り国民年金の被保険者資格を認めないこととした国民年金法の規定(上記処分当時)は憲法に違反するなどと主張して、上記処分の取消しを求めるとともに、②被告国に対し、被告国は、国民年金に任意加入しなかったため、障害基礎年金の支給を受けられない者が生ずることのないよう適切な立法措置をすべきであったにもかかわらず、長年にわたって学生の被保険者資格に関する適切な立法措置をすることを怠り、その結果、原告らを障害基礎年金を受けられない状況に陥らせた上、無年金者となった原告らに対し、適切な救済措置を講ずることも怠ったものであって、これにより原告らは多大な損害を被ったなどと主張して、国家賠償を求める事案である。 1 法令の定め等1)現行国民年金法における障害年金制度(1) 現行国民年金法(以下「法」という。)7条1項は、①日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しないもの(1号)、②被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者(2号)、③第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(3号)を国民年金の被保険者とし、日本国内に住所を有する20歳以上の者は、全員が国民年金法の強制適用の対象者となることを定めている。 (2) 国民年金の被保険者は保険料(現在は1か月1万3300円。法87条4項)を納付する義務を負い(法88条 を有する20歳以上の者は、全員が国民年金法の強制適用の対象者となることを定めている。 (2) 国民年金の被保険者は保険料(現在は1か月1万3300円。法87条4項)を納付する義務を負い(法88条1項)、世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料につき、配偶者の一方は被保険者である他方の配偶者の保険料につき、それぞれ連帯して納付すべき義務を負うが(同条2項、3項)、一定の事由がある場合には、保険料の納付義務が免除される。 本件で問題になっている学生についていえば、当該学生の収入が政令で定める額以下(扶養親族等がいない場合には、前年所得が68万円以下。 法施行令6条の9。)であるときなどには、社会保険庁長官に申請をして保険料の納付義務の免除を受けることができ(法90条の3第1項1号。ただし、同条に基づく免除を受けた期間は、老齢基礎年金の受給権との関係では、保険料納付済み扱いとはされず、同法94条による保険料の追納が必要となる。法26条かっこ書。)、上記の規定によって免除を受けた保険料は、追納することができるものとされている(法94条1項)。また、当該学生が地方税法に定める障害者(地方税法23条1項9号、同法施行令7条により、身体障害者福祉法15条4項の規定により交付を受けた身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている者等が含まれる。)である場合において、前年の所得が政令で定める額(法施行令6条の8により125万円。)以下であるときには、保険料の免除を受けることができるものとされている(法90条1項。ただし、この場合には、当該学生の世帯主又は配偶者のいずれかが同項各号のいずれにも該当しないときには、免除を受けることはできない。)。 (3)法30条は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病 帯主又は配偶者のいずれかが同項各号のいずれにも該当しないときには、免除を受けることはできない。)。 (3)法30条は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において、下記の要件を満たしている者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日において、その傷病により一定の障害の状態にあるときには、障害基礎年金を支給する旨を定めている(同条1項、2項)。 ア)被保険者であるか(同条1項1号)、被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること(同項2号)。 イ)当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たない場合には該当しないこと。 もっとも、法30条の4第1項は、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において、一定の障害の状態にあるときには、障害基礎年金を支給する旨を定めており、20歳に達する前に疾病にかかり、又は負傷した者については、国民年金に加入していなくても障害基礎年金が支給する旨を定め、同条第2項は、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者(同日において被保険者でなかった者に限る。)が、障害認定日以後に20歳に達した時は20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に が、障害認定日以後に20歳に達した時は20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる旨を定めている。 2)国民年金法の改正経過(1) 国民年金法の制定(昭和34年法)国民年金法は、昭和34年法律第141号として成立し(以下「昭和34年法」という。)、これによって国民年金制度が創設されたが、この当時における被保険者や障害年金に関する定め等は、次のとおりであった(なお、昭和57年法律第66号による同法改正前は、「障害」及び「障害認定日」との語句につき、「廃疾」及び「廃疾認定日」との語句が用いられていたが、本判決においては、同改正の前の条文についても「障害」及び「障害認定日」の語句を用いることとする。以下同じ。)。 ア)被保険者国民年金の被保険者は、20歳以上60歳未満の国民であり、これらの者は、法律上当然に国民年金の被保険者となる(強制適用)こととされたが(昭和34年法7条1項)、例外として、被用者年金各法の被保険者又は組合員やその他の年金の受給権者(同条2項1号ないし5号)、及び、既存の公的年金制度適用者の配偶者(同項6号)、並びに高等学校、大学等の学生で、定時制課程にある者や夜間部の学生を除くもの(同項7号。なお、以下においては、国民年金法の強制適用の対象から除外されていた学生のことを、単に「学生」ということがある。)は、強制適用の対象外とされた。 イ)任意加入制度国民年金制度の強制適用の対象外とされた者の中でも、被用者年金各法の適用を受けず、また、これらの法律に基づく年金給付(遺族給付を除く。 がある。)は、強制適用の対象外とされた。 イ)任意加入制度国民年金制度の強制適用の対象外とされた者の中でも、被用者年金各法の適用を受けず、また、これらの法律に基づく年金給付(遺族給付を除く。)の受給権者でもない者(学生は、これに含まれる。)については、本人の希望により、都道府県知事の承認を受けて被保険者となることが認められていた(昭和34年法附則6条1項。以下、これを「任意加入」という。)。 そして、国民年金に任意加入した者は、いつでも任意のときに被保険者資格を喪失することができるが(任意脱退、同法附則6条4項)、任意加入をした者について、保険料負担の免除規定は適用されないものとされていた(同法附則6条6項)。 ウ)保険料の納付義務と保険料の免除国民年金の被保険者は、保険料を納付する義務を負うが、国民年金の障害年金又は母子福祉年金の受給権者や生活保護法による生活扶助を受けている者等は当然に(同法89条)、また、所得がない者等は、その申請に基づいて都道府県知事が決定をすることによって(同法90条)、保険料の免除を受けることができるものとされていた(ただし、その世帯主又は配偶者が保険料を納付することが著しく困難でないときは、免除は認められない。)。 エ)障害年金等の支給(ア)障害年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときは、一定の保険料拠出をしていたことを条件として、障害年金が支給されるものとされていた(同法30条)。 (イ) 障害福祉年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときにおいて、(ア)所定の要件を備えていない場合であ 福祉年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときにおいて、(ア)所定の要件を備えていない場合であっても、一定の要件の下に障害福祉年金が支給されるものとされていた(同法56条)。 また、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害状態にあるときにも、障害福祉年金が支給されることとされていた(同法57条)。 (2) 昭和60年法律第34号による改正(以下、改正後の法律を「昭和60年法」という。)昭和60年法律第34号による法改正は、各種年金制度を統合し、全国民共通の基礎年金制度を創設することを主眼とした改正であるが、本件に関連する部分では、次のような改正が行われた。 ア)被保険者国民年金の被保険者は、次の各号のいずれかに該当する者とされ、国民年金法の強制適用を受ける被保険者の範囲が拡大された(昭和60年法7条)。 (ア) 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しない者。ただし、次のいずれかに該当する者を除く(7条1項1号)a)学校教育法41条に規定する高等学校の生徒、同法52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるもの(同号イ)b)被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるものを受けることができる者(同号ロ)(イ) 厚生年金保険の被保険者(7条1項2号)(ウ) 第2号被保険者(上記(イ)記載の者)の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持す 定めるものを受けることができる者(同号ロ)(イ) 厚生年金保険の被保険者(7条1項2号)(ウ) 第2号被保険者(上記(イ)記載の者)の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(同項3号)なお、昭和60年法の段階では、上記(ア)、a)のとおり、学生を国民年金法の強制適用の対象とはしないこととされ、「学生の取扱いについては、学生の保険料負担能力等を考慮して、今後検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるもの」とされた(改正法附則4条1項)。そして、学生は、都道府県知事に申し出て、国民年金に任意加入することができるものとされたが(国民年金法附則5条1項)、任意に脱退することができる代わりに保険料の免除を受けることはできないものとされていた点は、昭和34年法と同様であった(同条4項、10項)。 イ)障害基礎年金について従前の障害年金は、「障害基礎年金」と名称が改められ、現行法の30条とほぼ同様の要件の下に支給されることとなった。 また、従前の障害福祉年金は廃止され、その代わりに、20歳未満の間にかかった疾病等によって障害の状態となった者に対しても、障害基礎年金を支給する旨の規定(昭和60年法30条の4。内容は、現行規定と同様である。)が設けられ、従前障害福祉年金の支給を受けていた者に対しても、障害基礎年金の受給対象となる障害の程度を負っていれば障害基礎年金を支給することとされた(改正法附則25条)。 (3) 平成元年法律第86号による改正(以下、改正後の法律を「平成元年法」という。)上記改正により、改正前の法7条1項1号のイ、ロが削除され、学生についても国民年金法が強制適用されることとなり、改正法施行の日の前日(平成3年3月31日)において同号イに該当した者が、施行の日(同年4月1日)において平成元年法7条 1号のイ、ロが削除され、学生についても国民年金法が強制適用されることとなり、改正法施行の日の前日(平成3年3月31日)において同号イに該当した者が、施行の日(同年4月1日)において平成元年法7条1項1号に該当するときは、同日に国民年金の被保険者の資格を取得することとされた(改正法附則3条1項)。 この結果、学生も保険料納付義務を負うこととなり、所得がない場合等一定の場合には、都道府県知事に申請をして保険料納付義務の免除を受けることができるものとされたが(平成元年法90条本文)、世帯主又は配偶者にこれを納付するについて著しい困難がないと認められるときは、保険料納付義務は免除されないものとされていた(同条ただし書)ため、結局、学生の親に保険料を納付する能力がある場合には、保険料納付義務を免れることはできなかった。 その後、このような保険料納付義務に関する定めが学生の親に過大な負担を負わせるものとして批判され、平成12年法律第18号(以下「平成12年法」という。)によって現行の法90条の3が新設され、1)、(2)に記載したような定めがされるに至ったものである。 2 基礎となる事実関係以下の事実は、当事者間に争いがないか、証拠上容易に認めることができる(証拠によって認めた事実については、認定事実の後に認定の根拠となった証拠をかっこ書する。)。 1)原告Aについて(1) 原告A(昭和39年8月26日生)は、東京学芸大学に在学中の昭和61年9月6日、バスケットボール部の練習試合中に転倒して意識不明となり、東京都立神経病院に搬送され、検査の結果、脳出血が確認され、救急手術で脳室ドレナージの施行を受け、同月12日には原因となった脳腫瘍の摘出手術を受けたものの、意識は回復せず、寝たきりの状態となり、同月19日には、同病院において、転倒 結果、脳出血が確認され、救急手術で脳室ドレナージの施行を受け、同月12日には原因となった脳腫瘍の摘出手術を受けたものの、意識は回復せず、寝たきりの状態となり、同月19日には、同病院において、転倒を機転として腫瘍内出血及び脳室内出血が発症したものと診断された。原告Aは、昭和63年4月ころから、父母らの問いかけに対してわずかながら反応を示すようになり、その後、大小の手術を20回余りにわたって受け、ある程度の回復がみられたものの、精神機能低下、四肢の麻痺、発声障害、排尿・排泄機能障害等の後遺症が残り、平成元年2月6日には、脳出血による四肢体幹機能障害により身体障害程度等級1級の身体障害者手帳の交付を受けた(甲1の2、甲24、25)。 (2) 原告Aは、平成10年10月8日、東京都知事に対し、障害基礎年金の裁定請求を行ったが、同知事から、同年12月4日、同原告は受給要件を満たしていないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分1」という。)を受けたため、これを不服として、平成11年2月4日、東京都社会保険審査官に審査請求をしたが、同審査官は、平成12年1月31日、審査請求を棄却する裁決をした。原告Aは、同年2月29日、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、平成13年4月27日、再審査請求を棄却する裁決をしたため、平成13年7月5日、本訴を提起した。 (3)なお、原告Aの初診日は昭和61年9月6日であるから、同原告の障害基礎年金について適用されるべき法律は、昭和60年法30条(一部については、昭和60年法附則20条、21条)であり(同法30条の4の規定についてはここでは触れない。この点は、原告Bについても同様である。)、同条によれば、障害基礎年金の支給要件は、次のとおりであった。 ア)当該傷病の初診日において被 1条)であり(同法30条の4の規定についてはここでは触れない。この点は、原告Bについても同様である。)、同条によれば、障害基礎年金の支給要件は、次のとおりであった。 ア)当該傷病の初診日において被保険者であることイ)障害認定日(初診日から起算して1年6月を経過した日又は症状固定日のいずれか早い日)において、その傷病により、同条2項(同法施行令別表)に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあることウ)初診日の前日において、当該初診日の属する月の前における直近の基準月(1月、4月、7月及び10月)の前月に被保険者期間があることエ)ウ)の被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が、当該被保険者期間の3分の2以上であること、又は、当該初診日の前日において当該初診日の属する月前における直近の基準月までの1年間のうちに、保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないこと2)原告Bについて(1) 原告B(昭和35年5月21日生)は、立教大学に在学中の昭和56年11月29日、友人と飲酒中に急に体がしびれて口がきけなくなり、昏倒して敬愛病院に運ばれ、CT検査の結果橋出血と診断された。同年12月16日、帝京大学医学部付属病院に転医し、嚥下障害、右片麻痺などが認められ、小脳から橋部にかけての血管に先天性奇型による出血があるとして、昭和57年3月までに3回にわたる開頭手術を受け、更にリハビリテーション訓練を受けたが、運動障害、知覚麻痺、言語障害等の後遺症が残り、昭和58年5月9日には、脳動静脈奇型破裂による四肢体幹機能障害により身体障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けた(甲2の2、甲19)。 (2) 原告Bは、平成10年10月8日、東京都知事に対し、障害基礎年金の裁定請求を行ったが、同知事から、同年1 機能障害により身体障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けた(甲2の2、甲19)。 (2) 原告Bは、平成10年10月8日、東京都知事に対し、障害基礎年金の裁定請求を行ったが、同知事から、同年12月3日、同原告は受給要件を満たしていないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分2」という。)を受けたため、これを不服として、平成11年2月4日、東京都社会保険審査官に審査請求をしたが、同審査官は、平成12年1月31日、審査請求を棄却する裁決をした。原告Bは、同年2月29日、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、平成13年4月27日、再審査請求を棄却する裁決をしたため、平成13年7月5日、本訴を提起した。 (3)なお、原告Bの初診日は昭和56年11月29日であるから、同原告の障害基礎年金の支給について適用されるべき法律は、昭和60年法による改正前の国民年金法30条であり(昭和60年法改正附則23条)、同条によれば、障害基礎年金の支給要件は、次のとおりであった。 ア)当該傷病の初診日において被保険者であることイ)障害認定日(初診日から起算して1年6月を経過した日又は症状固定日のいずれか早い日)において、その傷病により、同条2項(同法施行令別表)に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあることウ)初診日の前日において、次のいずれかに該当すること(ア)初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか、又はその保険料納付済期間が5年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものが3分の2以上を占めること(イ)初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの被保険者期間が3年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち最近の3年間が保険料納 険料免除期間を除いたものが3分の2以上を占めること(イ)初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの被保険者期間が3年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち最近の3年間が保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること(ウ)初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの通算年金通則法4条1項各号に掲げる期間を合算した期間が1年以上であり、かつ、同月までの1年間のうちに保険料納付済期間以外の被保険者期間がないこと(エ) 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき、a)保険料納付済期間、b)保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間、c)保険料免除期間のいずれかが25年以上あること3)原告Cについて(1) 原告C(昭和39年12月21日生)は、高千穂商科大学に在学中の昭和60年10月4日、普通乗用自動車を運転中、他車と衝突する事故に遭遇して両眼球破裂、眼瞼裂傷の傷害を負い、埼玉医大病院に搬送され、手術を受けたものの視力は回復せず、同年11月1日、両眼失明を宣告され、昭和61年3月には、身体障害者等級1級の身体障害者手帳の交付を受けた(甲3の2、甲20)。 (2) 原告Cは、平成10年10月8日、東京都知事に対し、障害基礎年金の裁定請求を行ったが、同知事から、同年12月7日、同原告は受給要件を満たしていないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分3」という。)を受けたため、これを不服として、平成11年2月4日、東京都社会保険審査官に審査請求をしたが、同審査官は、平成12年1月31日、審査請求を棄却する裁決をした。原告Cは、同年2月29日、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、平成13年4月27日、再審査請求を棄却する裁決をしたため、平成13年7月5日、本訴を 1日、審査請求を棄却する裁決をした。原告Cは、同年2月29日、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、平成13年4月27日、再審査請求を棄却する裁決をしたため、平成13年7月5日、本訴を提起した。 (3) なお、原告Cの初診日は昭和60年10月4日であり、症状が治った日は昭和62年3月30日(推定)であるから、同原告の障害基礎年金の支給について適用されるべき法律は、昭和60年法(一部については、昭和60年法附則20条、21条)である。そして、同条が定める障害基礎年金の支給要件は、原告Aの場合と同一である。 4)原告Dについて(1) 原告D(昭和34年7月9日生)は、東京大学在学中の昭和61年8月11日、登山中に転落して負傷し、昏睡状態のままで同日齋藤記念病院に入院し、急性硬膜下血腫、脳挫傷との診断により開頭手術を受け、その後も、同病院や虎の門病院、帝京大学医学部付属市原病院等で治療を受けたものの、重度の後遺症が残り、虎の門病院の担当医が作成した平成10年7月30日付けの診断書(甲4の2、13頁)によれば、「脳外傷により重度失語症と著明な知的障害にて日常生活動作に強い制限を認める。体幹バランスの不良(常に介助が必要)」という状態であって、労働能力はないものと診断されている(甲4の2、甲21)。 (2) 原告Dは、平成10年10月8日、千葉県知事に対し、障害基礎年金の裁定請求を行ったが、同知事から、同年11月4日、同原告は、初診日(昭和61年8月11日)に国民年金に加入していないため、受給要件を満たしていないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分4」といい、本件不支給処分1ないし4を併せて「本件各不支給処分」という。)を受けたため、これを不服として、同年12月28日、千葉県社会保険審査官に審査請求を 給しない旨の処分(以下「本件不支給処分4」といい、本件不支給処分1ないし4を併せて「本件各不支給処分」という。)を受けたため、これを不服として、同年12月28日、千葉県社会保険審査官に審査請求をしたが、同審査官は、平成11年2月10日、審査請求を棄却する裁決をした。原告Dは、同年4月16日、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、平成13年4月27日、再審査請求を棄却する裁決をしたため、平成13年7月5日、本訴を提起した。 (3) なお、原告Dの初診日は昭和61年8月11日であるから、同原告の障害基礎年金の支給について適用されるべき法律は、昭和60年法(一部については、昭和60年法附則20条、21条)である。そして、同条が定める障害基礎年金の支給要件は、原告Aの場合と同一である。 5)被告社会保険庁長官について地方分権の推進を図るための関係法令の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)により、機関委任事務が廃止されたため、それまで都道府県知事が機関委任事務として行っていた障害基礎年金の裁定に関する事務は被告社会保険庁長官が行うこととなった。これに伴い、被告社会保険庁長官が、本件各不支給処分取消訴訟の被告の地位に立つこととなった。 第3 本件の争点と争点に関する当事者双方の主張本件の争点は、①原告A及び原告Bについて、国民年金法30条の4の適用が認められるかどうか、②国民年金法が学生をその強制適用の対象としなかった点、又は障害福祉年金または障害基礎年金の支給対象としなかった点において憲法に違反しいるか否か、また、その違憲性を解消するために、国民年金法30条の4の規定を類推解釈、ないしは拡張解釈して、20歳を超えた後に疾病ないし傷害によって障害を負った学生に対しても障害基礎年金の受給資格を認めることの可否、③本件各 を解消するために、国民年金法30条の4の規定を類推解釈、ないしは拡張解釈して、20歳を超えた後に疾病ないし傷害によって障害を負った学生に対しても障害基礎年金の受給資格を認めることの可否、③本件各不支給処分は、20歳以上の学生に対し、国民年金への任意加入制度の存在を知らせず、任意加入をする機会を奪っておきながら、任意加入していないことを理由に年金給付を拒否するものであるから、憲法31条に違反し、禁反言の原則、信義則にも違反するなどとする原告らの主張の当否、④被告国には、原告らのような学生時代に疾病ないし傷害によって障害を負った者に年金を支給し、支援するための立法措置を怠ったことや無年金者に対して救済措置を講じなかったことなどについて立法不作為の違法があり、国家賠償責任を負うかどうかの4点であり、これらの点に関する当事者双方の主張の概略は次のとおりである。 1 原告A及び原告Bの法30条の4該当性について1)原告ら原告A及び原告Bは、「疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者」に該当するから、現行の国民年金法30条の4をそのまま前提としたとしても、障害基礎年金の受給資格を有する。その理由は次のとおりである。 (1) 原告Aについて原告Aの障害の原因となった脳腫瘍は、中心性神経細胞腫といわれるものであり、その特徴として、①長い成長期と潜伏期を経て最初の劇的な兆候が出現することや、②症状として頭痛や視力の低下が見られることが指摘されている。 ところで、原告Aは、中学1年生(12歳)時ころ、「よく頭痛がする。」と訴えており、また、昭和56年4月10日実施の視力検査までは、左右の視力が1・0であったものが、昭和57年5月13日実施の視力検査では右が0・7、左が0・3へと急激に視力が低下した。これらの頭痛や視 えており、また、昭和56年4月10日実施の視力検査までは、左右の視力が1・0であったものが、昭和57年5月13日実施の視力検査では右が0・7、左が0・3へと急激に視力が低下した。これらの頭痛や視力低下は中心性神経細胞腫によるものと考えるのが妥当であり、特に、視力低下については、このような急激な低下の原因がほかに考えられないことや、その約4年後に脳出血が起こっていることなどに照らし、中心性神経細胞腫によるものであることは明らかである。このことは、昭和61年9月に原告Aの治療に当たったE医師や、その後、原告Aの症例を検討したF医師も指摘しているところである。 そうすると、原告Aは、遅くとも昭和57年5月以前(当時17歳)には中心性神経細胞腫という疾病に罹患していたものであるところ、同年3月、7月、8月に「視力の低下」のため杏林大学病院眼科に受診していたのであるから、その初診日において20歳未満であったことになり、国民年金法30条の4に該当することは明らかである。 (2) 原告Bについて原告Bの障害の原因となった脳出血は、脳動静脈奇型によるものであるところ、同原告の主治医であったG医師は、上記奇型は、「橋~小脳の脳動静脈奇型で、先天性である。病変の部位からみて、出血発作(昭和56年11月29日」以前から、眼球運動障害、聴力障害、めまい、耳鳴り、顔面感覚障害などの症状があった可能性が十分ある。」としている(甲2の2、27頁)。 そして、原告Bは、幼児期から小学校3年生ころまで、しばしば大量の鼻血を出し、医師の診療を受けており、この鼻血は、先天性の脳動静脈奇型によるものと考えられるのであるから、鼻血の診療を受けた日が「初診日」に当たるものということができる。 また、国民年金法30条の4が「初診日」を問題としているのは、疾病の発症時 天性の脳動静脈奇型によるものと考えられるのであるから、鼻血の診療を受けた日が「初診日」に当たるものということができる。 また、国民年金法30条の4が「初診日」を問題としているのは、疾病の発症時期や負傷時期を客観的に明確にするためであると解されるのであるから、医師の診断を経なくても、これらの時期を明確に判断することができるときには、その時期が「初診日」に当たるものと解すべきである。この観点から考えた場合、原告Bの脳動静脈奇型は、先天性のものなのであるから、出生日が初診日に当たり、国民年金法30条の4に該当するというべきである。 2)被告社会保険庁長官原告らの主張はいずれも争う。 (1) 「初診日」の意義について「初診日」の定義規定である法30条1項は、請求人が、「疾病にかかり、又は負傷し」ていることを前提とし、その上で、「その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」を「初診日」であると定めている。この文言からすれば、「初診日」は、「発病日」とは別個の概念であることが明らかであり、ある日時が「初診日」であると認められるためには、請求人が負傷又は発病した上で、少なくとも、当該傷病に対する診療行為と評価できる行為が、医師又は歯科医師によって行われることを要するものと解すべきである。 また、昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法47条1項は、障害厚生年金の受給資格を有する者につき、「被保険者であった間に疾病にかかり、又は負傷した者」という、発病日を基準とした定めを置いていたのに対し、現行厚生年金保険法47条1項は、受給資格を国民年金の場合と同一にするため、「障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれに起因する疾病につき初めて医師又は歯科医師の診療を受け 行厚生年金保険法47条1項は、受給資格を国民年金の場合と同一にするため、「障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれに起因する疾病につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」を「初診日」とする旨の定めを置いたのであり、このような厚生年金保険法の改正経過からしても、「発病日」と「初診日」は別個の概念として取り扱われていることは明らかであるといわなければならない。 そして、以上を前提とすると、原告A及び原告Bについて法30条の4が適用されるものではないことも明らかである。その理由は、次のとおりである。 (2) 原告Aについて原告Aが、その主張する時期に眼科医師の診療を受けたのかどうかは定かではないが、仮に診療を受けたことが事実であるとしても、それは視力の低下に対する一般的な診療にとどまり、中心性神経細胞腫に対する診療であったとは考えられない。したがって、眼科医師の診療を受けた日をもって、当該傷病に対する診療行為と評価できる行為が医師又は歯科医師によって行われた日ということはできないから、「初診日」には当たらないものというべきである。 (3) 原告Bについて原告Bは、「鼻血の診療を受けた日」が「初診日」に当たると主張するが、その時期や治療内容は全く明らかではない上、そもそも、鼻血が脳動静脈奇型によるものであったかどうかも明らかではない。したがって、鼻血の診療を受けた事実の存否自体明らかではない上に、仮にそれが事実であったとしても、その日を「初診日」に当たるということはできない。 また、同原告は、先天性疾患については、「初診日」は「出生日」と解すべきであるという趣旨の主張をもしているが、この主張は、初診日と発病日とを同一視する点で誤った主張であることは既に主張したとおりであり、やはり失当というべきである。 、「初診日」は「出生日」と解すべきであるという趣旨の主張をもしているが、この主張は、初診日と発病日とを同一視する点で誤った主張であることは既に主張したとおりであり、やはり失当というべきである。 2 国民年金法の違憲性と原告らの障害基礎年金受給資格の有無について1)原告ら(1) 障害者は障害基礎年金の支給を受ける権利を有することについてア)障害者は、その障害ゆえに就労できない者が極めて多く、また、仮に就労できたとしても、健常者と同水準の収入を得ることができる者はほとんどいないといってよい状態にある一方、軽度重度を問わず、介護や日常家事援助の必要、タクシーでの移動、補装具・自助具の使用等、障害ゆえの各種の特別支出が増大する傾向にある。このように、健常者よりも多額の出費を強いられる一方で、十分な収入を得られない障害者に対しては、社会保障としての所得保障が必須になるものというべきである。障害者基本法3条が「すべて障害者は個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇が保障される権利を有するものとする。」と定め、同法20条が「国及び地方公共団体は、障害者生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し、必要な施策を講じなければならない。」と定めているのも、昭和50年の国連総会で採択された障害者の権利宣言が「障害者は経済的かつ社会的保障を受け、相応の生活水準を保つ権利を有する。」と定めているのも、上記の趣旨を踏まえたものであり、障害者が所得保障を受ける権利を有することは、国際的な要請を背景として、国内法秩序としても確立されたものであり、憲法25条もこの権利を認めているものというべきである。 イ)ところで、障害者に対する所得保障の方法としては、生活保護制度の適用という手段も考えられないではない。しかしながら、生活保護は、最低生活の保 25条もこの権利を認めているものというべきである。 イ)ところで、障害者に対する所得保障の方法としては、生活保護制度の適用という手段も考えられないではない。しかしながら、生活保護は、最低生活の保障という制度目的から、事前に資産、就学の有無、家族構成、収入の有無等に関する厳重な調査を経た後に支給が行われ、支給決定後も、その費用が扶助という支出目的に沿って適切に使用されているかどうかが日常的にチェックされ、支給された金銭を自由に使うことができず、行政が、受給者の生活に直接・間接に干渉するという点に特徴がある。要するに、生活保護制度は、受給者に恥辱感を与え、その尊厳と自立を害する制度であるといわなければならないのであり、上記障害者基本法3条、20条に定める「個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇が保障される」ための「年金、手当等の制度」とも、上記障害者の権利宣言における「経済的かつ社会的保障」にも当たるものとは到底言い難いものといわなければならない。 そのため、障害者に対しては、生活保護ではなく、年金を支給するというのが先進諸国の一般的傾向になっており、わが国においても、年金支給を受けられる障害者の範囲が拡大され、現在においては、すべての国民が、障害基礎年金の支給を受けられる可能性が認められるに至っているのであり、これらのことからすれば、ア)で指摘した障害者が所得保障を受ける権利とは、年金の支給を受ける権利のことを意味するものというべきこととなる。 ウ)ところで、国民年金法は、障害を負った場合に障害基礎年金を受給するための方法として、①国民年金の被保険者資格を認め(保険料の負担能力がない者に対しては、保険料納付義務の免除等を認めることを含む。)、被保険者に対する給付として障害基礎年金を支給するという方法と、②国民年金法30 、①国民年金の被保険者資格を認め(保険料の負担能力がない者に対しては、保険料納付義務の免除等を認めることを含む。)、被保険者に対する給付として障害基礎年金を支給するという方法と、②国民年金法30条の4のように、被保険者資格の有無を問わず、障害基礎年金(昭和34年法における障害福祉年金も含む。)を支給する(無拠出年金)という方法を定めており、20歳以上の国民に対しては①の方法が採用され、20歳未満の国民に対しては②の方法が採用されてきたものといえる。しかしながら、20歳以上の学生は、昭和34年法においてはもちろん、被保険者資格の範囲が格段に拡大された昭和60年法においてさえも国民年金法の強制適用の対象とはされず、平成元年法に至って初めて強制適用されることとなったものである上、国民年金法30条の4(あるいは、それに相当する規定)の適用を受けることもできず、障害基礎年金の支給を受ける可能性を奪われていた。更に、平成元年法によって学生が国民年金法の強制適用の対象とされた後も、法改正前に障害を負いながら障害基礎年金の支給を受けられないでいた者に対しては、何ら救済措置は講じられなかった。 このような事態を生じさせた国民年金法の規定は、20歳以上の学生の間の疾病又は負傷によって障害を負った者から所得保障としての年金の支給を受ける権利を奪うものである点において憲法25条に違反するとともに、これらの者を、何ら合理的な理由がないにもかかわらず他の国民から差別し、年金の支給を受けられないという不利益を与える点において憲法14条にも違反するものといわざるを得ない。その理由は、次のとおりである。 (2) 学生を国民年金法の強制適用の対象外としたことの違憲性ア)第2、1記載のとおり、学生は、昭和34年法7条2項7号によって国民年金法の強制適用の対象から除 い。その理由は、次のとおりである。 (2) 学生を国民年金法の強制適用の対象外としたことの違憲性ア)第2、1記載のとおり、学生は、昭和34年法7条2項7号によって国民年金法の強制適用の対象から除外された。その後、昭和60年法によって国民年金法の強制適用の対象者が拡大され、被用者年金の被保険者の配偶者等にも国民年金法が強制適用されるようになったにもかかわらず、学生のみがその対象から除外され(昭和60年法7条1項1号イ)、平成元年法になってようやく強制適用の対象とされたのにすぎない。 もっとも、平成元年法以前も、学生が国民年金に任意加入をすることができることにはなっていたが、任意加入制度の存在は周知徹底されず、多くの学生が任意加入制度の存在を知らないままであり、原告らもやはり制度の存在を知らなかった。また、任意加入については、保険料の納付義務を免除するなどの制度も設けられておらず、所得のない学生としては、任意加入をするか否かを自ら決定することができず、親の判断に任せるほかない立場に置かれており、学生が保険料納付義務を負ってまで国民年金に任意加入することを期待することもできない状態にあった。 さらには、任意加入をしようとしたにもかかわらず、担当者から「その必要はない。」といわれたため、加入しなかった者さえ存在するのである。その結果、任意加入制度は、有名無実の存在であって、学生は、実質的に見れば国民年金の適用から完全に排除されていたのに等しい状態になっていたものであり、このことは、昭和34年から平成元年までの間に、国民年金に任意加入した学生の割合が、全体のわずか1-2パーセント程度にすぎなかったことからも裏づけられる。そして、このような中で、国民年金に任意加入しないままで疾病にかかり、又は受傷して障害を負いながら、障害基礎年金の支給を受 が、全体のわずか1-2パーセント程度にすぎなかったことからも裏づけられる。そして、このような中で、国民年金に任意加入しないままで疾病にかかり、又は受傷して障害を負いながら、障害基礎年金の支給を受けられない者(以下「学生無年金者」という。)が多数生じることになったのである。 イ)ところで、国民年金制度は、「国民皆保険」の理念の下、できるだけ多くの国民に年金保障を与えることを目的として始められたものなのであるから、すべての国民に被保険者資格を付与するのが本来の姿であるといわなければならない。特に、(1)においても指摘したとおり、障害者については年金の支給を受ける権利が認められるべきなのであるから、学生無年金者のように、障害者でありながら障害基礎年金の支給を受けることができない者が生ずることのないような制度設計を行うべきことは、憲法上の要請でもあったというべきである。 ところが、学生は、国民年金法の強制適用の対象とされず、他の国民と差別的な取扱いを受けてきた。被告らは、このような取扱いがされた理由として、①学生は類型的に稼得活動に従事していないので、保険料納付義務を負わせるのには問題があること、②学生の中には、学校を卒業し、社会に出た後は、被用者年金制度に加入する者が非常に多いこと、③卒業後、他の公的年金に加入すると、多くの場合に保険料が掛け捨てになることを挙げているが、以下に述べるとおり、これらは何ら合理的な理由といえるものではない。 まず、①についてみると、学生は稼得活動に従事していないことが多いことは事実であるが、稼得活動に従事しておらず、収入がない者に対しては、保険料の納付義務を免除するとか、稼得活動に従事していない間は保険料の納付を猶予し、収入が得られるようになった後に保険料の追納を認めるなどの対処をすることは十分に ておらず、収入がない者に対しては、保険料の納付義務を免除するとか、稼得活動に従事していない間は保険料の納付を猶予し、収入が得られるようになった後に保険料の追納を認めるなどの対処をすることは十分に可能であったはずである。 現に、昭和34年法当時から、被保険者資格を認められた者に対しては保険料納付義務の免除制度が設けられており、平成元年法によって学生にも国民年金の被保険者資格が認められた後は、学生についても保険料納付義務の免除が認められるようになり、平成12年法によって、学生の所得を基準とした保険料納付義務の免除制度や、免除に係る保険料の追納制度が導入されるなどしているのである。これらの事実は、制度設計次第では、学生も強制適用の対象とすることが十分に可能であることを示しているにもかかわらず、平成元年法による改正に至るまで、これらの制度の導入の可否について検討をすることなく、学生を強制適用の対象から除外し続けたことには何ら合理性がないものといわなければならない。 また、②の点についてみると、学生の中には、卒業後、家業を継ぐなどして自営業に従事する者も少なくなかったことは周知の事実であり、学生の大部分が卒業後は被用者保険に加入するという前提事実の認識それ自体に誤りがある。 更に、③の点については、各種の公的年金制度相互の間において被保険者期間の通算制度を導入すれば容易に対処することが可能となるはずのものであり、現に、昭和34年法制定の僅か2年後には、昭和36年の通算年金通則法によって、被保険者期間の通算制度が導入されているのである。したがって、この点が、学生を強制適用の対象から除外する根拠になり得るものであるとは到底いい難い。 以上の次第であって、学生を国民年金法の強制適用の対象から除外すべき理由は当初から存在しなかったのであるから 、この点が、学生を強制適用の対象から除外する根拠になり得るものであるとは到底いい難い。 以上の次第であって、学生を国民年金法の強制適用の対象から除外すべき理由は当初から存在しなかったのであるから、国民年金法のこの点に関する規定は、昭和34年法の当初から、20歳以上の学生とその他の国民とを不当に差別するものであって憲法14条に違反し、また、20歳以上の学生を、何らの合理的理由もなく国民年金法の強制適用の対象とせず、その結果として、社会保障としての障害保障給付を与えないという点において、憲法25条に違反していたものである。そして、昭和60年法において、国民年金の強制適用の対象者の範囲が拡大されたにもかかわらず、学生のみが放置されたことにより、その違憲性は更に顕著なものになったというべきである。 (3) 国民年金法の施行時において50歳を超えていた者との間の差別的な取扱いについてなお、昭和34年法74条は、拠出制年金制度の施行日である昭和36年4月1日において50歳を超える者(以下、「施行日50歳超者」という。)は、国民年金法の強制適用の対象から除外する旨を定め、同法75条において国民年金に任意加入をすることができる旨を定めていた。これらの点は学生と同様であったのであるが、任意加入をした場合にも保険料の納付義務の免除制度が適用される点、及び任意加入をしない場合であっても、経過的福祉年金の支給を受けることができるものとされていた点において、学生とは大きく異なった取扱いがされていた。このように、施行日50歳超者と学生とは、国民年金法の強制適用の対象から除外されているという点は同様であるにもかかわらず、一方は、任意加入した場合には、保険料の免除を受けることが可能であり、また、任意加入をしなくても一定の給付が受けられるにもかかわらず、他方 対象から除外されているという点は同様であるにもかかわらず、一方は、任意加入した場合には、保険料の免除を受けることが可能であり、また、任意加入をしなくても一定の給付が受けられるにもかかわらず、他方には、そのいずれの救済措置も認められておらず、しかも、このような差別的取扱いがされることには何ら合理的な理由も存しない。そうすると、昭和34年法のうち、上記の部分は、学生と施行日50歳超者との間で不合理な差別を定めたものであって、憲法14条に違反するものというべきである。 (4) 20歳未満の者との間の差別的な取扱いについてア)前示(第2、1、2))のとおり、昭和34年法においては、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害状態にあるときにも、障害福祉年金が支給するものとされており(同法57条)、昭和60年法によって障害福祉年金が廃止された後は、障害福祉年金を支給されていた者で、障害基礎年金の受給資格が認められる程度の障害を負っている者に対しては、障害基礎年金が支給されることとなった(改正法附則25条)。このように、20歳未満のうちに疾病に罹患し、あるいは負傷したために障害を負った者に対しては、国民年金法の制定当初から、国民年金の被保険者資格がなく、したがって、保険料の納付も全くしていなかったのにもかかわらず、一定の年金が支給されることとされていた。 このような規定が設けられた理由は、「20歳に到達する前に障害を負った者は、保険事故が起こった時点では被保険者としての資格を有さず、予め保険料を納付して保険事故に備えることができない反面、若年において重度の障害にある場合は、通常 、「20歳に到達する前に障害を負った者は、保険事故が起こった時点では被保険者としての資格を有さず、予め保険料を納付して保険事故に備えることができない反面、若年において重度の障害にある場合は、通常その障害が回復することは困難であり、稼得能力を生涯にわたって奪われていると考えられるためである。」とされているが、このような事情は、20歳を超えた学生についても全く同様に当てはまるのであり、20歳の前後で差別的な取扱いをすべき理由は何ら見当たらない。 イ)被告らは、20歳未満の者は、国民年金に加入する余地が全く認められていなかったのであるから、任意加入が可能であった20歳以上の学生とは状況を異にするとか、国民年金制度の基本的性格は拠出制の保険制度なのであるから、無拠出の年金支給を安易に拡大することはできないなどといった主張をする。しかしながら、学生の任意加入制度は有名無実のものであり、このような制度が存在したかどうかが結論に影響を及ぼすものではないことは(2)において指摘したとおりである。また、障害者に対しては年金の支給を受ける権利が与えられるべきことは(1)で指摘したとおりであり、保険料の納付をしなかった障害者に対しては障害基礎年金が支給されなくてもやむを得ないという被告らの見解は、根本的に誤っているものというべきであるし、現在の国民年金制度自体、法30条の4に基づく障害基礎年金を初めとした無拠出の保険給付を認めている上、保険料についてその3分の1を国庫の負担とするなど、民間の拠出制保険制度とは大きく性格を異にしているのであって、国民年金制度は拠出制の保険制度であるという前提認識にも誤りがあるものというべきであって、いずれにせよ、到底採用できるものではない。 そうすると、法30条の4の規定は、20歳以上の学生と、20歳未満の国民とを不 拠出制の保険制度であるという前提認識にも誤りがあるものというべきであって、いずれにせよ、到底採用できるものではない。 そうすると、法30条の4の規定は、20歳以上の学生と、20歳未満の国民とを不当に差別する点において憲法14条に違反するとともに、学生無年金者を生じさせるという点において憲法25条に違反するものというべきである。 (5) 国民年金法の憲法に適合した正しい解釈について以上のとおり、国民年金法が学生に被保険者資格を与えなかったことや、法30条の4が20歳以上の学生をその適用対象から排除したことなどは、憲法に違反するものというべきであるから、これらの規定を憲法に適合するよう合理的な解釈がされるべきものである。 そこで、原告らは、上記の観点から、法30条の4の規定を憲法に適合したものとするため、20歳未満の者だけではなく、20歳以上の学生が疾病にかかり又は負傷して障害を負った場合も障害基礎年金を支給する旨拡張ないし類推解釈をすべきであると主張する。そして、このような解釈に基づけば、原告らが全員障害基礎年金の受給資格を有することは明らかであり、本件各不支給処分は、いずれも違憲、違法である。 2)被告ら(1) 国民年金制度の変遷についてア)昭和34年法とその基本的な考え方(ア) 拠出制年金を基本とする国民年金制度国民年金制度は、昭和33年6月の社会保障制度審議会答申、同年7月の国民年金委員報告を受け、自民党国民年金実施対策特別委員会による審議、厚生省による国民年金制度要綱第1次案の発表等を経て、昭和34年2月に国民年金法案が国会に提出され、第31回国会において同法案が一部修正の上可決され、成立したものである。 この国民年金制度の仕組みを検討するに当たっては、拠出制と無拠出制のいずれを基本とするかについて議論 金法案が国会に提出され、第31回国会において同法案が一部修正の上可決され、成立したものである。 この国民年金制度の仕組みを検討するに当たっては、拠出制と無拠出制のいずれを基本とするかについて議論が分かれたが、最終的には、① 自ら保険料を納付し、その納付金額に応じて年金を受領するという仕組みをとることによって、老齢のように予測できる事態に対しては、自らの力でできるだけの備えをするという原則を堅持することが、制度の健全な発展にとって不可欠の前提と考えられたこと② 無拠出制を基本とした場合、わが国のように老齢人口の急激な増加が予想される社会においては、将来の国の財政負担が膨大なものとなり、将来の国民に過度の負担を負わせることになりかねず、また、その時々の財政事情に給付が左右され、安定的な運営ができないこと③ 無拠出制を基本として上記②の事態を避けようとすれば、年金額などの制度の内容は社会保障の名に値しないほどに不十分なものにならざるを得ないことなどを考慮して、拠出制を基本とするものとされた。もっとも、④ 当時の社会状況、すなわち、戦争によって財産を失い、扶養者を亡くした老齢者、障害者及び母子世帯が多数存在するという状況に照らし、生活の資を得る術を失ったこれらの者に年金的保護を及ぼす必要性が高いこと⑤ 年金額のうち3分の1は国庫負担とされているところ、保険料の支払能力のない者は、その援助を受けられない結果となり、公平を失すること⑥ 多数を占めるこれらの者に年金を支給することによって、結果的に国民年金制度を広く普及させる効果が期待できること⑦ 公的扶助制度のみによると、扶助の水準は最低生活水準とされてしまうことなどに照らし、国民年金制度発足時点において、既に高齢や障害などの事故が発生している者、他制度から移行したこと等により こと⑦ 公的扶助制度のみによると、扶助の水準は最低生活水準とされてしまうことなどに照らし、国民年金制度発足時点において、既に高齢や障害などの事故が発生している者、他制度から移行したこと等により加入期間が短いため拠出制の年金の支給要件を満たすことができない者、又は所得能力が低いため、保険料を納めることができない者に対しては、経過的、補完的かつ限定的なものとして、全額租税財源によるが、拠出制年金よりも低額の福祉年金を給付することとされた。この結果、導入されたのが、無拠出制による老齢福祉年金、障害福祉年金及び母子福祉年金である。 (イ) 拠出期間(年齢区分)また、国民年金の被保険者は、20歳以上60歳未満の国民とされた。この点についても、25歳以上の国民を被保険者とすべきであるとの意見も提出されていた中で、① 他の公的年金制度との均衡② 開始年齢を早めることにより一人当たりの保険料を引き下げることができること③ しかし、余りに開始年齢を早くすると、稼得活動に従事していない被扶養者に保険料を負担させることになること④ 当時は、大部分の国民がせいぜい高等学校卒業程度で稼得活動に入っており、25歳からでは遅きに失するとされたことなどから、20歳以上の国民を被保険者としたものである。 (ウ) 学生の取扱いについて(ア)において記載したとおり、国民年金制度は拠出制年金を基本とする制度であるところ、学生については、① 類型的に稼得活動に従事していないため、保険料納付義務を負わせることについては問題があると考えられたこと② 学校を卒業し社会に出た後は、被用者年金制度に加入する者が非常に多いと考えられたこと③ 学生である間は国民保険の保険料を納付させた場合、当該学生が、卒業後就職して被用者年金制度に加入すると、国民年金の対象者からは 出た後は、被用者年金制度に加入する者が非常に多いと考えられたこと③ 学生である間は国民保険の保険料を納付させた場合、当該学生が、卒業後就職して被用者年金制度に加入すると、国民年金の対象者からはずれることになり、保険料が掛け捨てになってしまうことなどの事情が認められたため、高等学校及びこれと同程度以上の学校の学生又は生徒は、国民年金法の強制適用の対象からは除外することとされた。 もっとも、学生であっても、定時制課程にある者、夜間部の学生、通信教育を受けている者等については、既に社会に出て働いている者であるから、被保険者資格を認めることとされ、また、強制適用の対象外である学生についても、任意加入の道を用意することとされた。 イ)昭和60年法と学生の取扱いについて(ア) 昭和60年法による制度改正その後、昭和60年に、各種公的年金制度間の格差の是正や年金の重複給付問題の解消、年金制度の財政基盤の安定化等のため、全国民を一つの年金制度に取り込むという観点から国民年金法の改正が行われ、国民年金の適用を被用者年金制度に加入する者も含めて全国民に拡大し、全制度が被保険者の数に応じて公平に費用を負担することにより、全国民共通の基礎年金を給付し、他の公的年金制度は、原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金を支給する制度に改めるための法改正が行われた。 また、これに併せて、①法改正前においては、保険料納付期間は20歳から60歳までの40年間とされていたものの、制度発足後未だ40年を経ていなかったこともあって、年金給付を受けるための受給資格期間は、最短では10年間からとされ、この期間を超えて保険料を納付した者については、保険料納付期間に一定の金額を乗じた額を給付額とすることによって年金額を増やすこととされ、その標準的な年金額は25年間 は、最短では10年間からとされ、この期間を超えて保険料を納付した者については、保険料納付期間に一定の金額を乗じた額を給付額とすることによって年金額を増やすこととされ、その標準的な年金額は25年間納付の場合を基準としていたところ、保険料納付期間が長期化するに伴い、将来の年金水準が高額化することにより、現役世代の賃金水準と均衡を失してしまうおそれが生じたことから、改正法施行日(昭和61年4月1日)において60歳未満の者については、生年月日別の単価や乗率を15年ないし20年の経過期間をかけて徐々に低減させていくことにより年金水準を適正化するための改正や、②女性独自の年金権を確立するため、被扶養配偶者についても国民年金法の強制適用の対象とするための改正等も行われた。 (イ) 昭和60年法が学生を国民年金法の強制適用の対象としなかった理由上記の制度改正によって、国民年金法の強制適用の対象者の範囲が大幅に広げられることとなったものの、学生については、依然として強制適用の対象外とされたままであったが、その理由は次のとおりであった。 すなわち、① 定型的に稼得活動に従事せず、また、被扶養配偶者のように被用者年金制度を通じて保険料負担を行うとみることもできないような学生に対し、保険料納付義務を強制することが制度上許されるかどうかについては疑問が存した上、仮に被保険者資格を認めて保険料納付義務を課した場合には、結局、親が保険料を負担することとなり、既に学費を初めとして相当の負担をしている親の負担がさらに増大することとなり、これについて国民の合意が得られるのかも疑問であったこと② かといって、学生に被保険者資格を認めた上で、保険料納付義務を免除した場合には、就職し、したがって、保険料納付義務を負っている同年代の者との間に不平等を生じさせるの れるのかも疑問であったこと② かといって、学生に被保険者資格を認めた上で、保険料納付義務を免除した場合には、就職し、したがって、保険料納付義務を負っている同年代の者との間に不平等を生じさせるのではないかとの批判が存在したこと③ 学生についても、任意加入をする道は開かれていたことなどから、昭和60年法においては、学生を強制適用の対象に含めるには至らなかったものである。もっとも、年金水準を適正化するための改正が行われた結果、将来的には、保険料納付期間が40年に達しないと標準的な年金額の支給を受けられなくなるため、任意加入をしない限り、学生の間の被保険者資格を認めないという制度をそのままにしておいて良いかどうかについて改めて検討をする必要が生じたことや、学生無年金者の問題が指摘され出していたことなどから、改正法の附則4条1項に検討規定が設けられ、次期改正において、学生の被保険者資格の問題について改めて検討することとされたものである。 ウ)平成元年法による改正とその後の改正その後、昭和63年11月に提出された年金審議会の意見(国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見)、これを受けて平成元年2月に諮問された厚生省の改正案(国民年金制度及び厚生年金制度改正案要綱)、これに対する年金審議会の答申のいずれにおいても、20歳以上の学生に国民年金の被保険者資格を認めるべきであるが、その際、親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮をすべきであるとの結論が出されたため、平成元年法において、平成3年4月から、20歳以上の学生も国民年金法の強制適用の対象とする旨が定められた。 そして、学生の保険料納付義務の免除に関しては、親元の所得を考慮して、申請により免除を行う制度が導入されることとなった(平成元年法90条1項5号)。 しかしながら、その 象とする旨が定められた。 そして、学生の保険料納付義務の免除に関しては、親元の所得を考慮して、申請により免除を行う制度が導入されることとなった(平成元年法90条1項5号)。 しかしながら、その後、上記の制度は、通常は無収入と想定される学生について、保険料の拠出を求める結果、親に保険料拠出を頼る事態を招いており、親に過大な負担を強いる結果になっているなどの指摘がされたため、平成12年の法改正によって、学生本人の所得を基準とし、保険料の納付を猶予する制度(平成12年法26条かっこ書、同法90条の3、同法94条)が導入されるに至ったものである。 (2) 障害者の障害基礎年金を受ける権利に関する主張について原告らは、障害者は、憲法25条等によって障害基礎年金を受ける権利が保障されているという趣旨の主張をする。しかしながら、憲法25条は、その文言上、障害者に障害基礎年金を受ける権利を保障しているわけではなく、その他にも、障害者に障害基礎年金を受ける権利を保障していると解するに足りるだけの実定法上の根拠があるわけではないのであるから、原告らの主張は失当である。むしろ、憲法25条の規定の趣旨に答えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない(最高裁判所大法廷昭和23年9月29日判決、刑集2巻10号1235頁)。そして、障害者に対する所得保障措置は、生活保護も含めた様々なものがあり得るのであって、年金の支給のみが憲法25条に適合する所得保障措置であるということは到底できないのであるから、この点においても原告らの主張は失当であるといわざるを得ない。 (3 めた様々なものがあり得るのであって、年金の支給のみが憲法25条に適合する所得保障措置であるということは到底できないのであるから、この点においても原告らの主張は失当であるといわざるを得ない。 (3) 学生を国民年金法の強制適用の対象から除外した理由について平成元年法に至るまで学生を国民年金法の強制適用の対象から除外していた理由は、(1)のア)、イ)に記載したとおりであって、①類型的に稼得活動に従事していないため、保険料納付義務を負わせることについては問題があると考えられたこと、②学校を卒業し社会に出た後は、被用者年金制度に加入する者が非常に多いと考えられたこと、③学生である間は国民保険の保険料を納付させた場合、当該学生が、卒業後就職して被用者年金制度に加入すると、国民年金の対象者からはずれることになり、保険料が掛け捨てになってしまうことなどを考慮したものであって、合理的な理由に基づくものである。しかも、学生は、国民年金に任意加入をすることもできたのであるから、国民年金制度による保障から完全に排除されていたわけでもない。 なお、原告らは、上記③の点について、「国民年金と被用者年金との間の被保険者期間の通算制度を導入すれば容易に解決し得た問題であり、現に、昭和36年の通算年金通則法によって解決されている。」という趣旨の主張をするが、その主張は失当である。すなわち、被保険者期間の通算を行うためには、それぞれ異なる各種年金制度相互間の調整が必要であり、通算制度の設計は、原告らが主張するほどに容易なものではなく、通算年金通則法もこの点を完全に解決していたわけではない。完全な通算調整は、基礎年金制度が導入された昭和60年法によって初めて実現したのである。このことからしても、上記③の点が、容易に解決できるような性質のものではなかったことは明 していたわけではない。完全な通算調整は、基礎年金制度が導入された昭和60年法によって初めて実現したのである。このことからしても、上記③の点が、容易に解決できるような性質のものではなかったことは明らかである。 これらの点を考慮すれば、学生を国民年金法の強制適用の対象から除外した規定が憲法25条、14条に違反するものではないことは明らかである。 (4) 施行日50歳超者との差別的取扱いに関する主張について原告らの主張はすべて争う。 (5) 法30条の4の合理性についてまず、昭和34年法が、国民年金の被保険者を20歳以上の国民としたのは、(1)、ア)、(イ)において主張したとおり、各種の事情を考慮した上で、20歳を就労年齢の開始時とし、その年齢以上の者は、就労が可能なのであるから、原則的には、保険料の納付義務を課することとしても問題はないものと考えられたことによるものである。したがって、国民年金法の強制適用の対象者を20歳以上か、それ未満かによって区別したことには合理的な根拠があるものというべきである。 そして、法30条の4は、国民年金の被保険者資格を有する者が20歳以上の国民とされたため、国民年金に加入したくても加入することのできない20歳未満の者に対し、補完的に障害年金を給付するとしたものであって、任意加入が可能であり、かつ、そうであるのに加入しなかった者とは、およそ利益状況を異にする。また、稼得能力の減損に対する保障をその中心とする国民年金制度において、20歳に達しながら、あえて稼得活動に従事することなく自ら学生であることを選択した者(いわゆるエリート)に対し、障害年金給付を行わないことが、それ自体法の趣旨に反するとか、不合理であるということはできない。したがって、同条が、20歳未満の者のみを対象としたことにも合理的な根 た者(いわゆるエリート)に対し、障害年金給付を行わないことが、それ自体法の趣旨に反するとか、不合理であるということはできない。したがって、同条が、20歳未満の者のみを対象としたことにも合理的な根拠があるものというべきである。 (6) 法30条の4の拡張ないし類推適用の主張について法30条の4は、20歳未満のうちに疾病又は負傷により障害を負った者に対して障害基礎年金を支給する旨を定めた規定であるから、これを20歳以上の学生に適用することは、その文言に明らかに反し、到底許されるものではない。原告らは、法30条の4は憲法に違反するから合憲拡張解釈をすべきであるという趣旨の主張をするが、仮に同条が違憲無効であるというのであれば、20歳未満のうちに疾病又は負傷により障害を負った者に対しても障害基礎年金を支給することができなくなるだけであって、20歳以上の学生が疾病又は負傷により障害を負った場合に障害基礎年金を支給すべきであるとの結論が導き出されるものではない。原告らの主張は、結局、裁判所に新たな立法措置を求めるものにほかならず、採用することができないものであることは明らかである。 3 憲法31条、禁反言、信義則違反の有無について1)原告らア)1、1)において主張したとおり、国民年金制度は、国民皆保険の理念の下、すべての国民に国民年金の被保険者資格が与えられるのが本来の姿である上、法30条の4のような特例規定が存在しない限り、国民年金の被保険者資格が認められないということは、疾病又は負傷によって障害を負ったとしても障害基礎年金の受給資格が認められないということを意味する。したがって、20歳以上の学生について、任意加入をしない限り、国民年金の被保険者資格を認めないという制度を導入することは、任意加入をしない学生を国民年金制度の対象から排除 ないということを意味する。したがって、20歳以上の学生について、任意加入をしない限り、国民年金の被保険者資格を認めないという制度を導入することは、任意加入をしない学生を国民年金制度の対象から排除し、障害を負った場合でも障害基礎年金の受給資格を与えないという制裁を課すことになるのであるから、被告らとしては、そのような制度を導入するのであれば、憲法31条に照らし、その前提として十分な告知手続を採るべき義務、すなわち、20歳以上の学生は、国民年金の被保険者資格を与えられておらず、被保険者資格を得るためには任意加入をする必要があることを周知徹底すべき義務があるものといわなければならない。 また、任意加入の必要があることを周知徹底しないまま放置し、その結果、任意加入制度の存在を知らなかったために、その手続を行わなかった20歳以上の学生が、疾病又は負傷によって障害を負った場合に、任意加入をしていなかったことを理由に、障害基礎年金の支給を拒絶することは、信義則、禁反言に違反するものともいわなければならない。 イ)被告らは、20歳以上の学生は国民年金法の強制適用の対象から除外されており、被保険者資格を得るためには任意加入が必要であることを周知徹底することを怠り、その結果、ほとんどの学生が、そのような制度の存在を知らなかったため、任意加入手続を行わなかった。原告らも同様に、任意加入制度の存在を知らないまま、その手続を行わなかったところ、疾病又は負傷によって障害を負うに至ってしまったものである。 したがって、このような原告らに対し、任意加入手続を行わなかったことを理由に障害基礎年金の支給を拒絶することは憲法31条、信義則、禁反言に違反するものであり、この点においても、本件各処分は違憲、違法というべきである。 2)被告ら原告らの主張はすべて争う。 ことを理由に障害基礎年金の支給を拒絶することは憲法31条、信義則、禁反言に違反するものであり、この点においても、本件各処分は違憲、違法というべきである。 2)被告ら原告らの主張はすべて争う。 原告らは、任意加入をしなかった者に対して障害基礎年金の支給を拒否することが制裁に当たるとの理解の下に、憲法31条の適用や、周知徹底義務(信義則、禁反言違反の主張を含む。)の主張をしているものと考えられるが、社会保障給付は、受益的な行為である上、任意加入をしなかった者が障害基礎年金の給付を受けられないことも、国民年金制度に加入していない以上、その適用を受けられないという当然の結果にすぎず、何ら制裁的要素を含むものではない。したがって、原告らの主張は、その前提を欠き、それ自体失当というべきである(なお、原告らが、憲法31条は受益的行為についても適用されるべきであると主張するのであれば、その主張は、同条の文言に明らかに反するものであって、やはり失当といわざるを得ない。)。 また、法律は公布されればそれによって当然効力を生じるのであって、そこで定められた制度について周知徹底手続を必要とするものではないのであるから、被告らが任意加入制度について周知徹底義務を負うとか、それに違反しながら障害基礎年金の支給を拒絶することが信義則、禁反言に違反するという余地はなく、原告らの主張は、この点においても失当である。 以上のとおり、原告らの主張は、その前提を欠くものというべきであるが、その点を措くとしても、被告らは、平成元年法による改正が行われる前までの間、地方公共団体等が作成したパンフレット等の配布や、テレビ、ラジオ放送等によって、20歳以上の学生には当然には国民年金の被保険者資格が認められないことを指摘し、任意加入を勧める広報活動を積極的に進めており、原 体等が作成したパンフレット等の配布や、テレビ、ラジオ放送等によって、20歳以上の学生には当然には国民年金の被保険者資格が認められないことを指摘し、任意加入を勧める広報活動を積極的に進めており、原告らに関しても、20歳当時の住所地の都県や市区が作成したパンフレットに任意加入制度を紹介する記事が登載され、それが各戸に配布されるなどしていたのであるから、任意加入制度の存在を知ることは十分に可能であったというべきである。原告らは、「任意加入制度が周知徹底されていなかったことは、学生の任意加入率が極めて低かったことからも裏づけられる。」という趣旨の主張をしているが、任意加入率の低さは、任意加入制度が知られていなかったことによるものではなく、将来の保険事故に備えるということに対する学生の認識が低いことによるものである。このことは、保険料の納付の猶予制度等が整備された現行法下においてさえも、保険料を納付し、あるいは納付の猶予申請等を行う学生は、全体の4割、5割に達しないということからも裏づけられるものである。したがって、被告らが周知徹底義務に違反したという主張も当を得ないものというほかはない。 4 国家賠償請求について1)原告ら(1)原告らは、障害を負ったことが明らかになった当時既に20歳を超えていたが、学生であり、かつ国民年金に任意加入をしていなかったため、障害基礎年金を受給できず、親からの全面的な援助を受けるなどしてようやく生活しているいるが、親が高齢になっている現在においては、親亡き後の生活に大きな不安を抱かざるを得ない状況におかれている。しかしながら、障害者にとって障害基礎年金は極めて重要なもので、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために絶対不可欠なものであることは、1、1)、(1)に指摘したとおりなのであり、それにもか る。しかしながら、障害者にとって障害基礎年金は極めて重要なもので、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために絶対不可欠なものであることは、1、1)、(1)に指摘したとおりなのであり、それにもかかわらず、生活のための命綱ともいうべき障害基礎年金の支給を受けられない原告らの状態は、「健康で文化的な最低限度の生活」の保障をも得られない非人間的なものであるといっても過言ではない。 原告らがこのような状況におかれているのは、昭和34年法が制定された際、20歳以上の学生を国民年金法の強制適用の対象から除外し(任意加入の道は残されているが、任意加入制度は全くといってよいほど周知されていなかったことも既に指摘したとおりである。)、しかも、障害を負った場合について何らの救済規定も設けられなかったためである。そして、その後、学生無年金者の発生等によって制度の欠陥が明白になったにもかかわらず、平成元年法による制度改正に至るまで、学生には国民年金の被保険者資格が認められず、また、平成元年法を成立させる際にも既に生じていた学生無年金者については何ら救済措置が講じられなかった。国民年金法は、憲法25条に基づいて国民の生存権保障のために「国民皆年金」の理念に基づいて制定されたものであり、すべての国民が、同法によって被保険者資格を与えられ、あるいは救済規定に基づいて年金の支給を受ける権利を保障されるべきなのであるから、このような事態は、明らかに憲法14条、25条に違反するものといわなければならないところ、このような事態を生じさせたことについて国会には立法の不作為、内閣には法案不提出の不作為の違法があり、そのことについて故意、過失も存するものというべきであるから、被告国は、国家賠償責任を免れない。 この点を更に具体的に説明すると次のとおりである。 ア)昭和3 閣には法案不提出の不作為の違法があり、そのことについて故意、過失も存するものというべきであるから、被告国は、国家賠償責任を免れない。 この点を更に具体的に説明すると次のとおりである。 ア)昭和34年法制定に関する国家賠償責任既に主張したとおり、学生を国民年金法の強制適用の対象から除外することに合理的な理由はなく、そのまま放置していれば、原告らのような学生無年金者が生じることになることは当然に予想されたものであり、このことは昭和34年法案を提出した内閣や、その審議を行った国会(以下、これらをまとめて「国」ということがある。)としても当然に予想すべき事柄であった。 したがって、国としては、そのような事態を防止するため、学生も国民年金法の強制適用の対象とした上で、保険料の納付義務を免除する道を開いておくか、20歳未満の者の場合と同様に、国民年金の被保険者資格がなくとも、障害を負った場合には障害福祉年金を支給するか、いずれかの立法措置を行うべき義務があったのに、そのいずれの措置も怠ったのであり、これは国家賠償法上も違法であって、故意、過失も認められるものというべきである。 イ)昭和51年ころまでに救済措置を講じなかった立法不作為についての国家賠償責任仮に昭和34年法を立法したことには違法が認められないとしても、その後、学生の任意加入者がほとんどいない一方、任意加入をしないまま障害を負い、その結果、障害年金の支給を受けられない者が実際に現れるようになり、制度の欠陥が明らかとなった。そして、遅くとも昭和51年ころまでには、全国脊髄損傷者連合会等が、厚生省(当時。以下、同じ。)等に対し、このような欠陥の存在や、障害年金の支給を受けられない者の生活がいかに悲惨なものであるかを訴え、救済措置を求める活動を始めており、国としても、上記のよう 等が、厚生省(当時。以下、同じ。)等に対し、このような欠陥の存在や、障害年金の支給を受けられない者の生活がいかに悲惨なものであるかを訴え、救済措置を求める活動を始めており、国としても、上記のような事情を十分に認識し得る状況になっていたものである。 したがって、国としては、遅くとも昭和51年ころまでには、国民年金法を改正し、ア)に記載したような規定を設ける義務があったのに、これを怠ったものであり、これは国家賠償法上も違法であって、故意、過失も認められるものというべきである。 ウ)昭和60年の法改正に際して救済措置を講じなかった立法不作為についての国家賠償責任仮にイ)の主張が認められないとしても、全国脊髄損傷者連合会等は、その後も、厚生省や国会議員等に対して救済措置を求める活動を継続して行い、①無年金者を生じさせるような国民年金制度の改善、②過去の無年金者に対しても、遡及して救済措置を講ずること、③そのために、老齢年金について特例納付の制度が設けられたのと同様に、障害者についても特例納付の制度を設けること等を訴えた。そして、それを踏まえ、国会においても無年金者問題の解決を訴える質問がされるなどし、救済措置の必要性はますます明らかとなっていた。そして、昭和60年法案提出の前提となった国民年金審議会においても、委員から、学生無年金者の救済の必要性等についての意見が出され、その答申においても、「将来の学生の適用のあり方を検討すべきである。」という趣旨の意見が出されていたのであるから、国としては、無年金者問題の解決に真剣に取り組み、そのための法改正を行うべき義務があったというべきである。具体的には、今後無年金者を生じさせないために、ア)記載のような規定を設けるとともに、既に生じていた無年金者を救済するため、保険料を遡って納付させる代わ 改正を行うべき義務があったというべきである。具体的には、今後無年金者を生じさせないために、ア)記載のような規定を設けるとともに、既に生じていた無年金者を救済するため、保険料を遡って納付させる代わりに障害基礎年金を支給するなどといった遡及的な救済措置を講ずる義務があったものである(なお、後者に関していえば、老齢年金の関係では、昭和45年7月1日から昭和47年6月30日まで、昭和49年1月1日から昭和51年12月31日まで、昭和53年7月1日から昭和55年6月30日までの各2年間3回にわたって、過去の滞納期間の保険料を納付させて、所定の拠出要件を満たすよう特例措置が講じられているのであるから、障害年金についてこのような特例措置を講ずることができない理由はなかったものというべきである。)。 ところが、国は、昭和60年法において国民年金制度に大改革を加え、強制適用の対象者も大幅に拡大する立法措置を講じたにもかかわらず、上記のような団体の訴えや、国民年金審議会委員の意見等を完全に無視し、学生についてのみ何らの救済措置をも講じなかったものであって、このような立法不作為は違法であり、故意、過失も認められるものというべきである。 エ)平成元年法において、遡及的な救済措置を講じなかった立法不作為についての国家賠償責任仮にウ)の主張が認められないとしても、国は、平成元年法においてようやく学生を国民年金法の強制適用の対象に含めることとしながら、それまでに生じていた無年金者については、何らの救済措置をも講じることをしなかった。 しかしながら、既に指摘した点に照らしてみれば、国としては、保険料の特例納付制度を設けるなどして、過去の無年金者に対しても救済措置を講ずべき義務があったものというべきであり、これを怠った立法不作為は違法であり、故意、過失も認 に照らしてみれば、国としては、保険料の特例納付制度を設けるなどして、過去の無年金者に対しても救済措置を講ずべき義務があったものというべきであり、これを怠った立法不作為は違法であり、故意、過失も認められるものというべきである。 (2) 以上の点につき、被告国は、国会の立法や立法不作為が違法といえるためには、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず、国会があえて当該立法を行うといった極めて例外的な場合に限られるところ、本件においては、そのような事情は認められず、また、国会の立法不作為が認められない以上、内閣の法案不提出の不作為も認められないという趣旨の主張をする。 しかしながら、本件は、①生存権という憲法の保障する基本的人権の中でも人間存在の根元であり、人権享有の前提となる重大な権利の侵害が問題となっており、しかも、その侵害が法の下の平等という憲法の定める基本的理念に反する形で行われている事案であって、②その権利侵害が制度の狭間で生じたことであって、侵害を受けている者(学生無年金者)の数は国民全体の中で極めて少数であり、このような者が多数決原理に基づく議会制民主主義による政治過程の中で自らの救済を図っていくことはほとんど不可能であり、司法救済の必要性が高い事案である。このように日本国憲法秩序の根幹的価値にかかわる基本的人権の侵害が一方で行われており、他方でその救済の高度の必要性が認められる場合には、憲法の一義的な文言に違反しているかどうかにこだわることなく国家賠償法による救済が認められるべきであるから、被告国の主張は失当である。 また、本件においては、憲法25条に基づいて国民皆年金の理念の下、すべての国民に国民年金法に基づく年金給付が認められるべきであることは既に主張したとおりであり、このことからすれば、学生無年金 る。 また、本件においては、憲法25条に基づいて国民皆年金の理念の下、すべての国民に国民年金法に基づく年金給付が認められるべきであることは既に主張したとおりであり、このことからすれば、学生無年金者を生じさせる立法は、憲法の一義的な文言に違反するものというべきであるから、この点においても被告国の主張は失当というべきである。 さらに、被告国は、内閣の法案提出の違法を立法の不作為の違法とは別個に観念する余地はないという趣旨の主張もしているが、実際に内閣提出に係る法案が多数を占めている実情、特に国民年金法のような制度に関する法改正は、従前からもっぱら内閣主導で準備されてきているという実績にかんがみると、国会とは別に内閣の法案不提出の責任を問う必要が高いものというべきであるから、この点に関する被告国の主張も失当である。 (3) 以上のとおり、被告国は原告らに対して国家賠償責任を負うところ、原告らは、障害基礎年金の給付を受けることができず、「健康で文化的な最低限の生活」さえも保障されないという非人間的な状況にさらされ続けてきたばかりではなく、現在では国民年金の強制適用の対象者となったため、国民年金の保険料納付義務を負わされるに至っている。そして、後者の点は、障害年金の受給者は当然に保険料の納付義務を免除されること(法89条1項1号)とは著しく異なる、差別的取扱いというべきである上、障害年金の支給さえ受けられず、経済的に困窮している原告らに対し、保険料の納付義務を負わせるという追い打ちともいうべき非情で苛酷な措置といわなければならない。 これらによって原告らが受けた精神的打撃には計り知れないものがあり、それを慰謝するための慰謝料の額は2000万円を下回らない。 2)被告国原告らの主張はすべて争う。 (1) 立法不作為の違法に関する主張につい て原告らが受けた精神的打撃には計り知れないものがあり、それを慰謝するための慰謝料の額は2000万円を下回らない。 2)被告国原告らの主張はすべて争う。 (1) 立法不作為の違法に関する主張について国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反する廉があるとしても、その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。そして、国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというがごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものというべきである(最高裁判所第一小法廷昭和60年11月21日判決、民集39巻7号1512頁)。 この観点から考えた場合、障害者に対して障害基礎年金を支給すべきことが憲法25条の文言上一義的に明確であるとはいい難いこと、かえって、学生を国民年金法の強制適用の対象外としたことや、法30条の4が20歳未満のうちに疾病に罹患し、又は負傷したため障害を負った者についてのみ、国民年金の被保険者資格の有無にかかわりなく障害基礎年金を給付することとしたことには合理的な理由があることは既に主張したとおりであり、原告らの主張は失当である。また、過去に生じていた無年金者に対し、救済措置を講ず 者資格の有無にかかわりなく障害基礎年金を給付することとしたことには合理的な理由があることは既に主張したとおりであり、原告らの主張は失当である。また、過去に生じていた無年金者に対し、救済措置を講ずべきであるかどうか、講ずべきであるとして、どのような救済措置を講ずべきであるかについても、様々な見解があり得るところであり、国民年金法の遡及適用を認めるべきことが憲法25条の文言上一義的に明確であるとは到底いい難いのであるから、この点に関する原告らの主張も失当である。 なお、原告らは、障害基礎年金の支給を受けられないことに加え、保険料納付義務を負わされていることを問題視し、保険料納付義務が当然に免除されている障害基礎年金受給者と比べ、差別的な取扱いをされているという趣旨の主張をしている。しかしながら、障害基礎年金受給者が保険料納付義務を免除されているのは、障害基礎年金を受けている者の場合、障害が回復することはほとんど期待できず、一生障害基礎年金を受給することが予想されるところ、障害基礎年金受給者が、それに加えて老齢基礎年金を受給することはできないため(法20条)、将来受給できる可能性が低い老齢基礎年金のために保険料を納付させることは相当ではないものと考えられたことによるものであり、障害基礎年金の支給を受けていない者とは利益状況が異なることは明らかである。また、原告らに収入がない場合には、法90条に基づいて保険料納付義務の免除を受けることも可能なのであるから、原告らが非情で苛酷な措置を受けているとの主張は失当である。 (2) 内閣の法案不提出の違法に関する主張について最高裁判所第二小法廷昭和62年6月26日判決(判例時報1262号100頁)は、立法不作為と内閣の法案不提出の違法が主張された事案において、「立法について固有の権限を有する国会 関する主張について最高裁判所第二小法廷昭和62年6月26日判決(判例時報1262号100頁)は、立法不作為と内閣の法案不提出の違法が主張された事案において、「立法について固有の権限を有する国会ないし国会議員の前記立法不作為につき、国家賠償法1条1項の適用上違法性を肯定することができないこと前記のとおりである以上、国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の前記法律案不提出についても、同条項の適用上違法性を観念する余地のないことは当然というべきである」と判示しており、この判示に照らしてみれば、立法の不作為とは別個に内閣の法律案提出行為自体の違法性を観念する余地はないものというべきである。 第4 争点に対する判断(その1)-原告A及び原告Bの法30条の4該当性について(争点①)原告A及び原告Bは、「同原告らは、法30条の4に基づき、障害基礎年金の支給が認められるべきである。」と主張するところ、この主張が認められるならば、憲法違反の主張について判断するまでもなく、本件不支給処分1、2は取り消されるべきこととなるので、まずこの点について判断する。 1 原告Aについて基礎となる事実等において認定した事実及び証拠(甲1の2、甲18の1-4、甲56)によれば、原告Aは、22歳の時に脳腫瘍によって障害を負ったものであるが、同原告の脳腫瘍は中心性神経細胞腫といわれるものであったこと、原告Aの生育歴を振り返ると、高校3年(17歳)時の昭和57年5月の定期健康診断において、視力がそれまでの両眼1・0から、右眼0・7、左眼0・3と急激に低下したため、同年7月、8月に杏林大学病院眼科を受診していること(甲18の2)、その後、20歳時の昭和60年1月には、成人を祝う祝宴で飲酒した翌日から極度の頭痛等の症状が発生したため医師の診察を受け、くも膜下 、同年7月、8月に杏林大学病院眼科を受診していること(甲18の2)、その後、20歳時の昭和60年1月には、成人を祝う祝宴で飲酒した翌日から極度の頭痛等の症状が発生したため医師の診察を受け、くも膜下出血を疑われたことがあったこと(もっとも、この際には、症状が改善したことなどもあって、最終的にはくも膜下出血ではなく、急性アルコール中毒であると診断されている。)が認められる。 そして、証拠(甲18の4、甲56)によれば、中心性神経細胞腫は、脳の中心部に発生し、極めてゆっくりと大きくなり、発生から症状発現までに長期間を要する点に特徴があり、また、その初発症状としては、水頭症による頭痛や視神経の圧迫による視力低下が多いこと、BUdRを用いた星状膠細胞系腫瘍の成長解析データによれば、腫瘍の体積が2倍になるのには、理論上115日を要するものとされており、これを前提として原告Aの中心性神経細胞腫の成長過程を逆算すると、高校3年時における同細胞腫の大きさは、長径が2・1mm以上、垂直方向の大きさは1・7mm以上であったと推定され、その大きさや発生部位に照らしてみれば、同細胞腫が視神経を圧迫し、視力低下をもたらした可能性が高いこと、昭和60年1月の極度の頭痛等は、回顧的に見れば、明らかに同細胞腫に基因するものであったといえることが認められる。なお、被告らの主張中には、高校3年時の視力低下は、中心性神経細胞腫とは関係のない一般的な視力低下にすぎなかったという趣旨に受け取れる部分も存するが、上記のような中心性神経細胞腫の成長過程の分析結果や、視力低下が急激に起こっていること、その後の症状経過等に照らしてみれば、原告Aの視力の低下は、中心性神経細胞腫によるものであったと認めるのが合理的とするのが専門医であるE医師(甲18の4)や、F医師(甲56)の見解であ ていること、その後の症状経過等に照らしてみれば、原告Aの視力の低下は、中心性神経細胞腫によるものであったと認めるのが合理的とするのが専門医であるE医師(甲18の4)や、F医師(甲56)の見解であるし、この認定を覆すに足りる証拠は存しない。 ところで、法30条の4所定の「初診日」とは、疾病又は負傷及びこれらに基因する疾病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を意味するところ(法30条1項)、上記の認定事実によれば、原告Aは、20歳未満である高校3年時に、中心性神経細胞腫(疾病)に基因する視力低下(疾病)について初めて医師(杏林大学病院眼科医)の診療を受け、その後、20歳に達した日より後になって、中心性神経細胞腫による障害等級に該当する程度の障害を負うにいたったものということができるから、同原告は、法30条の4所定の要件に該当するものというべきである。 これに対し、被告らは、高校3年時の診療は、単なる視力低下に対するものであって、中心性神経細胞腫に対する診療ではないから、「初診日」には当たらないという趣旨の主張をするが、疾病(中心性神経細胞腫)に基因する疾病(視力低下)に対する診療行為が行われている以上、その原因となっている疾病(中心性神経細胞腫)が確定されていなくとも、その診療行為の日を「初診日」と解することに、条文の文言上の妨げはないものというべきである。実質的にみても、「初診日」の要件が要求されているのは、医師の診療行為という客観的な事実によって疾病の存在を確認しようとするところにあると解されるところ、たとえ当該診療行為当時、原因となっている疾病(本件でいえば中心性神経細胞腫)の診断がされていなくとも、診療行為が行われた事実及びその診療内容と、その後に明らかになった事情を併せれば、当該診療行為当時に原因となっている疾病 原因となっている疾病(本件でいえば中心性神経細胞腫)の診断がされていなくとも、診療行為が行われた事実及びその診療内容と、その後に明らかになった事情を併せれば、当該診療行為当時に原因となっている疾病が発生していたことが客観的に明らかになっていると認められるのであれば、上記の趣旨は満たされるものというべきである。これに対し、被告らのような解釈によれば、当該診療行為当時、原因となっている疾病が客観的には発生しており、資料上も疾病の発生を裏づけることができるにもかかわらず、診療に当たった医師が正確な診断を行ったかどうかで当該診療行為の日が「初診日」に当たるかどうかが左右されることとなり、そのような結論は妥当とはいい難い。したがって、被告らの主張は失当であり、採用することはできない。 以上によれば、原告Aは、法30条の4の要件に該当するものというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、同原告の本訴請求中本件不支給処分1の取消しを求める部分は理由があり、認容されるべきものである。 2 原告Bについて基礎となる事実等において認定したとおり、原告Bは、脳動静脈奇型破裂による四肢体幹機能障害により身体障害等級1級の障害を負ったものであるところ、証拠(甲19、原告B本人)によれば、同原告は、幼稚園に入る前の4歳ころから大量の鼻血を出すことがあり、週に1回以上耳鼻咽喉科医の診療を受けていたもので、このような状態が小学校5年生になるころまで続いていたことが認められる。同原告は、上記の受診をもって法30条の4第1項所定の「初診日」に当たると主張するのであるが、正確な受診日や診療内容は全く明らかではないのみならず、脳動静脈奇型と鼻血との間に何らかの関係があるのかどうかも定かではないといわざるを得ないから(甲第2号証の2、27頁によれば、脳出血 のであるが、正確な受診日や診療内容は全く明らかではないのみならず、脳動静脈奇型と鼻血との間に何らかの関係があるのかどうかも定かではないといわざるを得ないから(甲第2号証の2、27頁によれば、脳出血の発症後原告Bの診療を行ったG医師は、「脳出血の発生に先立って眼球運動障害、聴力障害、めまい、耳鳴り、顔面感覚障害などの症状があった可能性がある。」という趣旨の所見を述べていることが認められるものの、同医師の見解を前提としたとしても、原告Bの脳動静脈奇型と鼻血との間に関係があることを認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。)、上記主張を採用することはできない。 また、原告Bは、「国民年金法30条の4が初診日を問題としているのは、疾病の発症時期や負傷時期を客観的に明確にするためであると解されるのであるから、医師の診断を経なくても、これらの時期を明確に判断することができるときには、その時期が初診日に当たるものと解すべきであるところ、原告Bの脳動静脈奇型は、先天性のものであって、出生時から存していたことが明らかなのであるから、出生日が初診日に当たると解すべきである。」という趣旨の主張をする。しかしながら、「初診日」という概念は、医師が診療を行ったことを前提とするものであることは明らかであり、そうである以上、症状の発症時期が客観的に明らかであれば、医師の診療がなくともその時期が「初診日」に当たるとするのは、法解釈の限界を超えた主張であるというほかはない。したがって、上記主張も失当といわざるを得ない。 そうすると、原告Bのケースが法30条の4に当たるというのは困難であるというほかはない。 第5 争点に対する判断(その2)-争点②ないし④(原告らの憲法違反ないし立法不作為の主張)について 1 国民年金法の制定とその改正経過等について に当たるというのは困難であるというほかはない。 第5 争点に対する判断(その2)-争点②ないし④(原告らの憲法違反ないし立法不作為の主張)について 1 国民年金法の制定とその改正経過等について第2、1に認定した事実に証拠(甲23、32-43、46-52、59-69、71-81、乙6-15、25-30、33、34、36、37(ただし、いずれも枝番を含む。)、及び証人H、同Iの各証言)を併せ、国民年金法が制定されてから今日に至るまでの改正経過やそのための検討作業の経過等を、学生の被保険者資格や障害年金制度を中心に振り返ってみると、次の事実を認めることができる。 1)国民年金法の立案我が国においては、昭和20年代から戦後の人口の老齢化と家族制度の崩壊といった現象に対応するため、年金制度の必要性が指摘され、昭和25年の社会保障制度審議会の勧告においても、全国民に対する拠出制の年金保険制度の樹立が望ましいと述べつつも、その実現には経済の回復を待たなければならないとしていた。その後、経済状態もようやく回復傾向を示したことなどから、昭和32年5月には、内閣総理大臣が同審議会に対し、「国民年金制度に関する基本方策いかん」との諮問を発したため、同審議会では、国民年金特別委員会を設けて検討に着手し、昭和33年6月14日、「国民年金制度に関する基本方策について」と題する答申をした。これを受けて、大蔵省が「国民年金制度に関する社会保障制度審議会の答申の問題点」と題する意見を発表し、厚生省においても立案作業を進め、同年9月24日には厚生省の国民年金制度要綱第一次案が発表された。さらに、自由民主党国民年金実施対策特別委員会も、厚生省の意見を聴きながら検討をし、同年12月20日、国民年金制度要綱を発表し、これらを基に、政府は、国民年金法案を作成し、昭 第一次案が発表された。さらに、自由民主党国民年金実施対策特別委員会も、厚生省の意見を聴きながら検討をし、同年12月20日、国民年金制度要綱を発表し、これらを基に、政府は、国民年金法案を作成し、昭和34年2月4日、国会に提出した。国会においては、援護年金との語句が福祉年金と修正されたほかは、政府原案のまま可決された。 以上の検討過程においては、検討の発端が人口の老齢化と家族制度の崩壊への対応にあったことから、老齢年金制度が検討の中心となり、被保険者資格や保険料の額等も、老齢年金のみならず障害年金及び母子年金等を通じた一体のものとして立案されているものの、主として適切な額の老齢年金を確保することを念頭において立案されているものである。 また、本件で問題となっている学生の取扱いについては、これに当然には被保険者資格を与えないこととしたのは自由民主党の要綱以降であり、任意加入していない限り障害福祉年金の支給対象とならないこととしたのは、明示的には政府原案以降であって、それ以前の厚生省の要綱第一次案においては「22歳になるまでに障害になったため拠出制の障害年金を受けられなかったとき」無拠出障害年金を支給するとされ(乙8、107頁)、自由民主党の要綱においても「保険料拠出の能力又は期間がなかったため(中略)に拠出制の障害年金を受けることができない者」に無拠出の障害年金を支給することとされていた。 国会審議においては、学生を任意加入とすること自体についての反対意見もあったが、その意見も本件で問題となっているような事態を具体的に指摘して表明されたものではなかった。 2)国民年金法の制定(昭和34年法)国民年金法は、昭和34年法律第141号として成立し(以下「昭和34年法」という。)、これによって国民年金制度が創設されたが、この当時における はなかった。 2)国民年金法の制定(昭和34年法)国民年金法は、昭和34年法律第141号として成立し(以下「昭和34年法」という。)、これによって国民年金制度が創設されたが、この当時における国民年金制度の基本的性格や、被保険者や障害年金に関する定め等は、次のとおりであった。 (1) 拠出制を基本とする制度国民年金法案の検討過程においては、制度の基本を拠出制のものとするか無拠出制のものとするかという点についても議論があったが、最終的には、拠出制の制度とすることとされた。その理由は、立法担当者の説明によれば、ア)老齢のように誰でもいつかは到達するに違いない事態についてはもちろんのこと、身体障害又は一家の働き手である夫の死亡という事態に対しても、予め若くて健康である間に、自らの力でできるだけの備えをすることは、生活態度として当然であり、自己責任の原則を基本とすべきであると考えられたこと、イ)無拠出制を基本とした場合、膨大な財政支出を必要とすることになるため、特に、我が国のように老齢人口が将来急激に増加していく国においては、将来の国民に過重な負担を負わせる結果となるし、これを避けるために年金額を抑えようとすれば、極めて少額の年金を支給できるにすぎなくなること、ウ)無拠出制を基本とした場合には、その収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく、場合によっては突発的な財政需要激増のために年金の額をにわかに引き下げなければならない事態も起こりかねず、これでは年金制度の本質的要請である安定性と確実性が損なわれること、という点にあった。もっとも、国民年金制度導入の理由は、将来における人口の老齢化に備えようとすることと共に、現在の老齢者、身体障害者及び母子に年金的保護を及ぼす必要があると考えられたことにもあったことから、 あった。もっとも、国民年金制度導入の理由は、将来における人口の老齢化に備えようとすることと共に、現在の老齢者、身体障害者及び母子に年金的保護を及ぼす必要があると考えられたことにもあったことから、上記の者については、財源を一般会計の負担に負う無拠出制の年金制度を設けることとされた(以上につき乙6)。 以上の結果、国民年金制度は、拠出制を基本とする老齢、障害、母子、遺児及び寡婦の5年金と、無拠出制を基本とする老齢、障害及び母子福祉年金によって構成されることとなった。 (2) 被保険者国民年金の被保険者は、20歳以上60歳未満の国民であり、これらの者は、法律上当然に国民年金の被保険者となる(強制適用)こととされたが(昭和34年法7条1項)、次の者は、強制適用の対象外とされた。 ア)被用者年金各法の被保険者又は組合員(昭和34年法7条2項1号)イ)被用者年金等による老齢年金、退職年金又は障害年金の受給権者(同項2号)ウ)被用者年金等による老齢年金又は退職年金の受給資格期間を満たしている者(同項3号)エ)被用者年金等による遺族年金の受給権者(同項4号)オ)被用者年金以外の公的年金の受給権者(同項5号)カ)以上に掲げる者の配偶者(同項6号)キ)学生(同項7号)ク)拠出制度開始の日である昭和36年4月1日において50歳を超えている者(法74条)(3) 被保険者の範囲についての考え方上記のとおり、国民年金の被保険者は、20歳以上60歳未満の国民とされたが、これは、被保険者を25歳以上55歳未満の国民とする社会保障制度審議会の答申よりも、被保険者となる者の範囲を広げたものであった。このような定めがされたのは、他の公的年金との釣合いや、加入者の数を増やし、保険料を引き下げることを考慮した結果であったが、そのほか、下限を20歳以上としたこ 者となる者の範囲を広げたものであった。このような定めがされたのは、他の公的年金との釣合いや、加入者の数を増やし、保険料を引き下げることを考慮した結果であったが、そのほか、下限を20歳以上としたことについては、大部分の国民がせいぜい高等学校卒業程度で所得活動に入ることを考えると、25歳という被保険者期間の開始年齢は遅すぎること、上限を60歳未満としたことについては、老齢年金の支給開始年齢が65歳とされている関係上、老齢年金の支給を受けるまでの待機期間が10年間というのは長すぎることや、被用者の定年が一般に55歳であるのに対し、自営業者の場合は、所得活動に従事する期間がこれよりも長いことが考慮されたものである。 また、強制適用の対象から除外された者のうち、ア)からオ)の者は、既に何らかの年金的保護の対象とされていることから、カ)については、配偶者の年金受給権を国民年金法によって保護すべきなのか、他の公的年金制度によって保護すべきなのかという点について、整理がつかず、将来の課題とされたことから、ク)については、老齢年金の支給を受けるためには、被保険者期間が最低10年間はなければならないものとされている関係上、60歳に達するまでの期間が10年に達しない者を強制適用の対象とすることは適当ではないと判断されたことによるものであった。 他方、本件で問題となっている学生(上記キ))が強制適用の対象から除外された理由をみると、立法当時の担当者の説明においては、卒業後は、被用者年金制度に加入する者が非常に多いと考えられたことから、強制適用の対象から除外されたとされているほか(乙6)、学生は一般に稼得活動に従事していないため保険料の負担能力のない者であると考えられたこと、昭和36年当時の大学への進学率は未だ10パーセントにも満たず、学生の全被保険者 たとされているほか(乙6)、学生は一般に稼得活動に従事していないため保険料の負担能力のない者であると考えられたこと、昭和36年当時の大学への進学率は未だ10パーセントにも満たず、学生の全被保険者に占める割合はわずかであったこと(甲51)、年金制度の本質は、稼得活動のある者が、それを失った場合に備えるという点にあるところ、稼得活動に従事していない学生には、稼得能力を失うというリスクがないのであるから、強制適用の対象とする理由がないこと(乙36)などから、強制適用の対象から除外されたものとの指摘がされている。 なお、上記の除外者以外の者は、保険料の負担能力の有無を問わず、強制適用の対象とされているのであるが、このような定めがされた理由は、ア)拠出能力の低いといわれる人々こそ、たとえ額は多くなかろうとも年金を最も必要とする人々であるから、このような人々を初めから除外したのでは、年金制度の目的を達せられない結果となることイ)年金制度のように長期の拠出を基にして考えられるべき制度において、たまたまある人の一時期における拠出能力の有無だけを問題にして制度の適用外又は適用内を決めたりすると、その人が年金制度によって守られない期間が多くなり、結果としては、拠出能力の乏しい人にかえって不利な制度となってしまうことウ)20歳から60歳に及ぶ40年間を通じて拠出能力が全くないということは、異例中の異例であって、すべての人に必ず拠出させ、拠出能力がないと認められる間は、年金制度による保護は弊害を生じない限度でできるだけ与え、保険料の拠出は免除するという方法をとることが制度の趣旨に一番かなうことエ)実際問題として、拠出能力のある者のみを強制適用の対象とした場合には、国民年金制度の適用対象者が極めて限定され、「国民年金」の名に値しなくなることなどが考 ることが制度の趣旨に一番かなうことエ)実際問題として、拠出能力のある者のみを強制適用の対象とした場合には、国民年金制度の適用対象者が極めて限定され、「国民年金」の名に値しなくなることなどが考慮されたと説明されている。 (4) 任意加入制度国民年金制度の強制適用の対象外とされた者の中でも、被用者年金各法の適用を受けず、また、これらの法律に基づく年金給付(遺族給付を除く。)の受給権者でもない者(上記(2)のエ)ないしキ)に掲げた者。)については、本人の希望により、都道府県知事の承認を受けて被保険者となることが認められていた(昭和34年法附則6条1項。なお、この点は、昭和36年法律第167号により、知事の承認との要件はなくなり、単に「知事に申し出て、被保険者となることができる。」との規定に改められた。)。そして、国民年金に任意加入した者は、いつでも任意のときに被保険者資格を喪失することができるが(同条4項)、任意加入をした者について、保険料負担の免除規定は適用されないものとされていた(同6項)し、上記昭和36年の法改正前には、都道府県知事は保険料の納付が困難と認める者については任意加入の承認をしないとの取扱いが想定されていたから(乙6の126頁)、実際上、本人及びその世帯主が保険料免除事由に該当する者は任意加入自体ができないことも想定された。 また、昭和36年4月1日において55歳を超えない者は、強制適用の対象からは除外されていたものの(上記(2)のク))任意加入が認められ(同法附則7条1項)、65歳までの10年間保険料を拠出すれば、老齢年金の支給を受けることができるほか、他の年金的保護の対象ともされていた。そして、これらの者については、他の任意加入者とは異なり、保険料の納付義務の免除も認められることになっていた(同法附則6条の 年金の支給を受けることができるほか、他の年金的保護の対象ともされていた。そして、これらの者については、他の任意加入者とは異なり、保険料の納付義務の免除も認められることになっていた(同法附則6条の場合とは異なり、7条には、保険料の納付義務の免除に関する規定を適用しない旨の定めが置かれていない。)。 (5) 保険料の納付義務と保険料の免除国民年金の被保険者は、保険料を納付する義務を負うが、国民年金の障害年金又は母子福祉年金の受給権者や生活保護法による生活扶助を受けている者等は当然に(同法89条)、また、所得がない者等は、その申請に基づいて都道府県知事が決定をすることによって(同法90条)、保険料の免除を受けることができるものとされていた。 (6) 障害年金等の支給ア)障害年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときは、一定の保険料拠出をしていたことを条件として、障害年金が支給されるものとされていた(同法30条)。 この場合に要求される、保険料拠出要件とは、(ア) 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であること、(イ) 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が5年以上であり、かつ、その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること(ウ) 初診日の属する月前における直近の基準月(1月、4月、7月、10月のいずれか)の前月までに引き続き3年間被保険者であり、かつ、その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6か月を超えない保険料免除期間で満たされていること(エ) 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき、老齢年金を受けるに必要な拠出要件を満た かつ、その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6か月を超えない保険料免除期間で満たされていること(エ) 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき、老齢年金を受けるに必要な拠出要件を満たしていることのいずれかを満たしていることであった。 イ)障害福祉年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときにおいて、ア)所定の要件を備えていない場合であっても、(ア)被保険者期間が初診日の属する月前における直近の基準月まで3年間以上引き続いている場合には、基準月の前月から起算した直近の3年間が保険料納付済期間か保険料免除期間で満たされていること(逆に言えば、保険料滞納期間が全くないこと)(イ) (ア)の場合のうち、その被保険者期間に初診日の属する月の前月までに保険料免除期間を除いたもの、すなわち、保険料納付済期間と保険料滞納期間との合算期間が5年以上ある場合においては、その5年以上の合算期間のうち、保険料納付済期間が3分の2以上を占めていること(ウ) 被保険者期間が初診日の属する月前における直近の基準月の前月まで3年以上引き続いていない場合においては、基準月の前月までの引き続いた期間の全部が保険料納付済期間又は保険料免除期間によって満たされていることとの要件のいずれかを満たした場合には、障害福祉年金が支給されるものとされていた(同法56条)。その年金額は、満額の障害年金額(4万2000円)の半額以下(1万8000円)であった(昭和34年法33条、58条)。 また、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であると 3条、58条)。 また、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害状態にあるときにも、障害福祉年金が支給されることとされ(同法57条)、更に、昭和34年法の施行日において、既に20歳以上であり、かつ、一定の障害の状態にある者に対しても、経過的障害福祉年金が支給されることとされていた(法81条)。 (7) 昭和34法制定時において積み残された問題や、将来の検討課題等同一の者が、国民年金制度と他の公的年金制度の適用を受けることとなった場合、その被保険者期間の通算関係をどのように処理するかという問題は、昭和34年法においては解決することができなかったため、速やかに検討を加えた上、他の法律をもって処理することとされた(法7条3項)。 また、立法当時の立法担当者の説明(乙6)によれば、上記のほか、将来的な検討課題としては、保険料免除基準の具体化、前納制度の具体化、付加老齢年金制度の実施、脱退手当金制度の実施、記録事務処理方式の決定、積立金の運用方式の検討、老齢年金の受給資格年齢の引下げ、障害年金の支給対象となる障害の範囲及び等級の拡大及び引上げ、母子世帯における受給資格範囲の拡大、福祉年金における支給停止条項の緩和、支給額の引上げ、経済発展に対応する年金額の自働的引上げ、所得比例制の導入、完全積立方式の修正等があると指摘されているが、学生の被保険者資格の問題については、特に指摘はされていない。 3)昭和60年法までの法改正昭和34年法制定後、昭和36年には、通算年金通則法(同年法律第181号)が成立し、懸案事項とされていた、国民年金と他の公的年金制度との間の被 摘はされていない。 3)昭和60年法までの法改正昭和34年法制定後、昭和36年には、通算年金通則法(同年法律第181号)が成立し、懸案事項とされていた、国民年金と他の公的年金制度との間の被保険者期間の通算問題について一応の解決が図られた。 また、国民年金法は、その後も毎年のように改正が行われ、支給額の増額等が実施されたほか、制度の改善も行われた。障害年金の関係で見ると、主な改正点としては、次のような点があった。 (1) 適用対象の拡大昭和34年法においては、内科的疾患を原因とする障害や精神障害を持つ者に対しては障害年金の支給が認められていなかったが、昭和39年(同年法律第87号)、昭和40年(同年法律第93号)、昭和41年(同年法律第92号)の法改正により、すべての障害について障害年金が支給されることとされた。 (2) 受給要件の緩和また、障害年金の支給要件である被保険者期間等についても、昭和36年(同年法律第167号)の法改正により、初診日の属する月の直近の基準月の前月までの1年間が保険料納付済期間で満たされている場合には、障害年金が支給されることとされ(従前は、最低3年間被保険者期間があることが要求されていた。2)、(6)、ア))、昭和37年(同年法律第92号)の法改正により、初診日の属する月の直近の前月まで引続き3年間被保険者であり、かつ、そのすべての期間が保険料納付済期間及び保険料免除期間で満たされている場合にも障害年金を支給することとされ(従前は、保険料免除期間は1年6月を超えないことが要求されていた。同上。)、昭和41年(同年法律第92号)の法改正により、被保険者期間が引き続いていなくても、初診日の属する月の直近の前月までの被保険者期間が合算して3年以上あり、その期間のうち、最近の3年間が保険料納付済期 和41年(同年法律第92号)の法改正により、被保険者期間が引き続いていなくても、初診日の属する月の直近の前月までの被保険者期間が合算して3年以上あり、その期間のうち、最近の3年間が保険料納付済期間か保険料免除期間によって満たされているか、又は被保険者期間が合算して1年以上あり、その期間のうち最近の1年間が保険料納付済期間で満たされていれば、障害年金を支給することとされた。 また、障害の認定を行うべき日についても、昭和34年法においては、その疾病がなおった日(その症状が固定し治癒の効果が期待できない状態に至った日を含む)とされていたものが(昭和34年法30条)、昭和39年(同年法律第87号)の法改正により初診日から3年を経過した日に改正され、更に昭和51年(同年法律第63号)の法改正により、初診日から1年6月を経過した日に短縮された。 4)昭和60年改正前における学生無年金問題等(1) 学生無年金問題の発生上記のとおり、学生は、国民年金法の強制適用の対象からは除外され、その適用を受けるためには任意加入をする必要があったのであるが、任意加入をした学生は極めて少数であり、国民年金制度の発足から平成元年法によって強制適用の対象とされるまで、全学生の1・25パーセント程度の者が任意加入をしたにすぎないといわれている(甲77)。その結果、学生の間に疾病又は傷害によって障害を負いながら、任意加入をしていなかったために障害年金の支給を受けられない者(学生無年金者)が発生するようになった。その正確な数を認めるに足りる証拠はないが、平成14年7月に出された無年金障害者に対する「J試案」(後述)においては、学生無年金者の数は、推定で4000人程度であるとされている(甲70)。 (2) 学生無年金者を含めた無年金者の救済を求める活動について 出された無年金障害者に対する「J試案」(後述)においては、学生無年金者の数は、推定で4000人程度であるとされている(甲70)。 (2) 学生無年金者を含めた無年金者の救済を求める活動について障害者の団体等は、国民年金法制定当時から、障害者に対する障害年金による保護の拡充を求める運動を行っていたが、昭和40年代終わりから昭和50年代初めころにかけて、学生無年金者を含む無年金障害者に対し、障害年金の給付をするよう求める運動を活発に行うようになっていった。 例えば、全国脊髄損傷者連合会は、昭和50年6月に行った無年金会員に対するアンケート調査の結果に基づき、昭和51年1月、厚生省(当時)年金局長に対し、重度障害者の年金無給者に障害福祉年金と同額の年金を支給していただきたい旨の要望書を提出した。これに対し、同局長からは、拠出制の年金制度の下においては、年金を拠出していなかった無年金者に対して年金制度で何らかの処置を講ずることは極めて困難であり、社会福祉施策全体を通じて配慮していくべきものと考えるという趣旨の回答がされたが、同会は、これに納得せず、厚生省や衆参両院及びその議員らに対する要請行動等を行った。その行動の内容は、当初は無条件で障害福祉年金の支給を求めるものであったが、昭和54年ころからは、老齢年金の関係で特例納付(滞納していた保険料を遡って納付することを認める代わりに、老齢年金の受給資格を与えること。)が行われた例があることを根拠として、障害年金についても特例納付を認めて欲しいという主張を掲げるようになっていった。これに対し、厚生省側は、現行制度の下で無年金者に対する年金的救済は難しく、特例納付も極めて例外的な救済措置であり、障害者に対してまで適用することはできないという趣旨の回答に終始し、無年金者問題の改善は進展しなか 省側は、現行制度の下で無年金者に対する年金的救済は難しく、特例納付も極めて例外的な救済措置であり、障害者に対してまで適用することはできないという趣旨の回答に終始し、無年金者問題の改善は進展しなかったが、同会関係者によれば(甲39)、昭和50年代に同会が行った要請行動等は、厚生省との交渉が11回、請願活動が4回、衆参社会労働委員会議員に対する陳情2回等に及んでおり、その中では、学生無年金者問題も取り上げられていた。 また、政府主催の審議会等においても、昭和58年11月28日(乙25の1)、同年12月8日(乙26の2)、昭和59年1月10日(乙26の4)開催の国民年金審議会において、委員から学生無年金者の問題が存在することや、その救済の必要を唱える意見が出されたほか、昭和58年7月28日に発表された障害者生活保障問題専門家会議報告書(甲43)において、「現行の障害者に対する所得保障制度においては、制度間に格差が存在するのみならず、ややもすれば保障の手が及びえない者もみられる。このため、すべての成人障害者が自立生活を営める基盤を形成する観点から、所得保障制度全般にわたる見直しを行うべきである。」という提言がされるなど、学生無年金者を含む無年金者の存在や、その救済の必要性に関する問題意識が高まりつつあったことがうかがわれる。 5) 昭和60年法の検討作業と改正法の成立等(1) 昭和60年法の検討作業と改正法の成立厚生省は、各種公的年金制度共通の基礎年金制度を創設すること等を中心とする年金制度の大改革を目指した国民年金法の全面改正についての検討を進め、昭和58年11月28日、国民年金審議会及び社会保険審議会に対し、制度改正案についての諮問を行った。これに対し、昭和59年1月24日には社会保険審議会会長から、同月26日には国民年金審 検討を進め、昭和58年11月28日、国民年金審議会及び社会保険審議会に対し、制度改正案についての諮問を行った。これに対し、昭和59年1月24日には社会保険審議会会長から、同月26日には国民年金審議会会長から、それぞれ厚生大臣あて答申がされたが、国民年金審議会の審議においては、委員から任意加入していなかった学生が障害年金を受給できないことにつき、「教育を受けている期間というのは、ちょうど20歳未満の状態が延長されたようなわけで、そういたしますと、非常に酷な・・・」(乙26の3、55頁)、「(学生の障害のほう)・・・それは何か救えないかなあと依然として思います。」(乙26の4、53頁)等の指摘もあったことから、同審議会会長の答申においては、制度改正案を了承するが、今後の検討課題として、「学生の適用のあり方については、引き続き検討すべきである。」との指摘がされていた。 同月25日には、厚生大臣から社会保障制度審議会会長にあて、国民年金法等の一部を改正する法律案要綱の諮問が行われ、同年2月23日には、同審議会会長から厚生大臣に対し、要綱案に対する意見が提出されたが、その中では、要綱案の内容を大筋では理解するものの、重要な問題点が残されているとの指摘がされ、その1つとして、「20歳未満で障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できるのに対し、任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない。」という問題があるとの指摘がされていた。 また、障害者団体等は、国民年金法改正作業を無年金者問題解消の絶好の機会と捉え、厚生省に対して陳情活動等を行ったほか、衆参両院やその議員に対し、無年金者問題の解決を求める活動を行った。 改正案(昭和60年法)は、国会に上程され、一部修正の上、昭和60年4月24日に可 と捉え、厚生省に対して陳情活動等を行ったほか、衆参両院やその議員に対し、無年金者問題の解決を求める活動を行った。 改正案(昭和60年法)は、国会に上程され、一部修正の上、昭和60年4月24日に可決され、同年5月1日、法律第34号として公布された。 (2) 昭和60年法の内容成立した昭和60年法の内容のうち、被保険者についての定めや障害年金に関する定めは次のとおりであった。 ア)被保険者国民年金の被保険者は、次の各号のいずれかに該当する者とされ、国民年金法の強制適用を受ける被保険者の範囲が拡大された(昭和60年法7条)。 (ア) 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しない者。ただし、次のいずれかに該当する者を除く(7条1項1号)a)学校教育法41条に規定する高等学校の生徒、同法52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるもの(同号イ)b)被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるものを受けることができる者(同号ロ)(イ) 厚生年金保険の被保険者(7条1項2号)(ウ) 第2号被保険者(上記(イ)記載の者)の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(同項3号)以上のとおり、昭和60年法の段階でも、学生は国民年金法の強制適用の対象とはされず、従前と同様に任意加入ができるものとされるのにとどまった(具体的には、都道府県知事に申し出て、国民年金に任意加入することができ(国民年金法附則5条1項)、任意に脱退することができる代わりに保険料の免除を受けることはできないものとされていた(同条4項、10項))。もっとも、改正法附則4条1項において、「学生の取扱いについては、学生の保険料負担能力 、任意に脱退することができる代わりに保険料の免除を受けることはできないものとされていた(同条4項、10項))。もっとも、改正法附則4条1項において、「学生の取扱いについては、学生の保険料負担能力等を考慮して、今後検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるもの」との定めが置かれた。 イ)障害基礎年金について従前の障害年金は、「障害基礎年金」と名称が改められた。 また、従前の障害福祉年金は廃止され、その代わりに、20歳未満の間にかかった疾病等によって障害の状態となった者に対しても、障害基礎年金を支給する旨の規定(昭和60年法30条の4。内容は、現行規定と同様である。)が設けられ、従前障害福祉年金(その年額は、障害の等級が一級の者につき46万0800円、二級の者につき30万7200円であった。)の支給を受けていた者に対しても、障害基礎年金を受給対象となる障害の程度を負っていれば障害基礎年金(その年額は、障害の程度が一級の者につき75万円、二級の者につき60万円であった。ただし、昭和59年度価格。)を支給することとされた(昭和60年法附則25条)。 また、障害基礎年金の受給資格についても見直しが行われ、初診日の属する月前の被保険者期間のうち、保険料納付済期間及び保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上であれば、被保険者期間の長さを問わず、障害基礎年金が支給されることとなった。 ウ)無年金者問題について昭和60年法においては、無年金者問題に関する特段の措置は講じられなかったが、衆参両院は、昭和60年法案を可決する際の附帯決議において、この点に言及する決議を行っていた。すなわち、衆議院においては、「無年金者の問題については、今後とも更に制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」との、参議院において 言及する決議を行っていた。すなわち、衆議院においては、「無年金者の問題については、今後とも更に制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」との、参議院においては、「無年金者の問題については、適用業務の強化、免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」との各附帯決議がされたものである。 6)平成元年法とその後の改正上記のとおり、昭和60年法附則において学生の取扱いについて検討をすることが要求されたところから、この点についての検討が進められ、昭和63年11月29日に提出された年金審議会の意見(国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見)において「現在、20歳以上の国民のうち、唯一、国民年金の強制適用の対象から外されている学生については、従来から障害年金を中心に無年金問題が指摘されているところであり、さらに、基礎年金のフル・ペンションの確保を図っていくという観点(昭和60年法により、老齢基礎年金は、将来的には、被保険者期間40年で初めて満額支給されるような制度設計がされることとなったため、学生についても、20歳から被保険者期間を開始させる必要が生じたことを指す。)からも、この際、これを強制適用の対象にすべきである。」との意見が出された。これを受けた厚生省は、学生を国民年金の強制適用の対象に含めることなどを内容とする国民年金制度及び厚生年金保険制度改正案要綱を作成し、平成元年2月3日には年金審議会に対し、同月7日には社会保障制度審議会に対し、それぞれ諮問を行い、了承されたが、年金審議会の答申においては、「学生に対する国民年金の適用に当たっては、親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮がなされるべきである。」との意見が付された。これらを受けて平 行い、了承されたが、年金審議会の答申においては、「学生に対する国民年金の適用に当たっては、親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮がなされるべきである。」との意見が付された。これらを受けて平成元年法案が成立し、平成3年4月から、20歳以上の学生も国民年金法の強制適用の対象とする旨が定められた。 このように、平成元年法においては、学生の保険料納付義務の免除に関しては、親元の所得を考慮して、申請により免除を行う制度が導入されることとなった(平成元年法90条1項5号)。しかしながら、総務庁が平成9年に実施した行政監察の結果により、保険料を納付している学生のうち9割以上はこれを親が負担しており、加入すべき学生のうちに、保険料の納付を免除されている者が31パーセント、未納者が10パーセント、未加入が11パーセントも存在するとの実態が明らかとなったことから、同庁は、平成10年6月、厚生省に対し、収入のない学生については、在学期間中一律に保険料納付義務を免除する仕組みを導入するよう勧告した(甲23の19、20)。このほか上記の制度については、通常は無収入と想定される学生について、保険料の拠出を求める結果、親に保険料拠出を頼る事態を招いており、親に過大な負担を強いる結果になっているなどの指摘がされたため、平成12年法律第18号による改正(以下「平成12年法」という。)によって、学生本人の所得を基準とし、保険料の免除ではなく納付を猶予する制度(平成12年法26条かっこ書、90条の3、94条。以上の規定の結果、同法90条の3によって保険料納付義務の免除を受けた期間は、老齢基礎年金の関係では同法26条かっこ書によって保険料免除期間には算入されず、同法94条に基づく保険料の追納を行う必要があるが、障害基礎年金の支給に関する同法30条においては、同法 を受けた期間は、老齢基礎年金の関係では同法26条かっこ書によって保険料免除期間には算入されず、同法94条に基づく保険料の追納を行う必要があるが、障害基礎年金の支給に関する同法30条においては、同法90条の3によって保険料納付義務を免除された期間も、支給要件としての保険料免除期間に含まれることになる。)が導入されるに至ったものである。 7)学生無年金者問題等について上記の平成元年法により、学生の被保険者資格の問題は解決されたが、既に生じていた学生無年金者や、その他の無年金者についての立法的解決はされなかった。 このため、これを不服とする障害者団体等は、厚生省や衆参両院及びその議員らに対する陳情活動等を繰り返し行った。例えば、全国脊髄損傷者連合会は、昭和60年から平成3年までの間に請願活動を4回、厚生省交渉3回、厚生政務次官への直接陳情1回のほか衆参両院の社会労働委員会への要望活動等を行い、更に、平成4年から平成14年までの間には、請願活動5回、厚生省との交渉10回、厚生委員会の各議員に対する直接要請活動3回等を行っている(甲39)。そして、新聞等においても、無年金者問題を取り上げ、その解決を求める社説を掲載するなどの動きがみられるようになった(甲23の4-9)これらの要請行動を受けて、平成4年には初めて参議院で「無年金障害者の救済に関する請願」が採択され、また、平成6年の国民年金法改正案が可決された際には、衆議院においては「無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め検討すること」との、参議院においては「無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること」との各附帯決議がされるに至ったが、附帯決議を踏まえた施策が実現されるには至らなかった。 更に、平成14年7月には、 ある障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること」との各附帯決議がされるに至ったが、附帯決議を踏まえた施策が実現されるには至らなかった。 更に、平成14年7月には、J厚生労働大臣が、無年金障害者に対する「J試案」を発表し、その中で「考え方と結論」として、「すでに述べた如く、無年金障害者は本人はもとより、その扶養者である両親をはじめとする親族等は高齢化が著しく、看過できない事態に立ち至っている。純粋に年金制度を中心に考えれば、保険料を負担した者にのみ給付は存在し、それに従わなかった者は排除される。しかし、現在の成熟した年金制度の下では発生しない無年金障害者が、学生など政策的移行期であったが故に発生した側面も否定できない。学生など任意加入であった者を中心に救済する案も存在するが、福祉的措置をとるためには立法化が必要であり、法制上からも対象者は無年金者をすべて同様にとり扱うことが妥当であるとの結論に達した。・・・(中略)いずれにせよ、無年金障害者の生活実態は推測の域を出ず、速やかに実態調査を実施して、これらの人たちへの対応を開始しなければならない。」との意見を表明したが、現在においても、この意見を具体化した案が公表されるには至っていない。 2 障害者の年金受給権に関する主張について原告らは、「障害者に対しては、年金による所得保障が与えられるべきであるのが憲法25条の要請である。」として、原告らに対し、障害基礎年金が支給されないことそれ自体が憲法に違反するという趣旨の主張をする。 しかしながら、憲法25条は、その文言上、障害者に障害基礎年金を受ける権利を保障しているわけではないのであるから、同条の文言から直ちに障害者に対して年金の受給権が保障されているものと解することはできない(なお、原告らが主張してい 文言上、障害者に障害基礎年金を受ける権利を保障しているわけではないのであるから、同条の文言から直ちに障害者に対して年金の受給権が保障されているものと解することはできない(なお、原告らが主張している障害者基本法3条や20条の規定や、障害者の権利宣言も、障害者に対して抽象的な所得保障を求めているのにとどまり、年金を支給すべき旨を具体的に求めた規定であると解することはできない。)。むしろ、憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的考察とそれに基づいて政策的判断を必要とするのであるから、憲法25条の規定の趣旨に答えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合に初めて憲法違反の問題が生ずるものというべきである(最高裁判所大法廷昭和23年9月29日判決、刑集2巻10号1235頁)。 この観点から考えた場合、障害者は、その障害ゆえに就労できない者が極めて多く、また、仮に就労できたとしても、健常者と同水準の収入を得ることができる者は極めて少数にとどまっている現状がある一方、軽度重度を問わず、介護や日常家事援助の必要、タクシーでの移動、補装具・自助具の使用等、障害ゆえの各種支出が増大する傾向にあることは事実である以上、このような障害者に対しては、何らかの所得保障措置が講じられるべきことは憲法 日常家事援助の必要、タクシーでの移動、補装具・自助具の使用等、障害ゆえの各種支出が増大する傾向にあることは事実である以上、このような障害者に対しては、何らかの所得保障措置が講じられるべきことは憲法25条の要請であるという余地はあるとしても、所得保障のための方策としては、生活保護を含めた様々なものがあり得るのであって、現行の生活保護法には、介護扶助も含まれており、障害者に対する所得保障についての配慮もされていることは明らかである。原告らは、生活保護につき、様々の問題点を指摘し、障害者に対する所得保障措置としての意味を持たないという趣旨の主張もしており、それらに照らすと、制度の運用に当たっては生活保護を受ける者の人格に対するより慎重な配慮が必要であり、保護の水準についてもさらに充実強化することが望ましいことは十分にうかがわれるが、限りある財源に基づいて制度を設計しかつ運用するとの制約の下においては、保護を与えるべき要件該当性につき厳格な審査をすることや、保護の水準をそれほど高くすることができないこともやむを得ないのであって、現行の生活保護制度が憲法25条の要請を満たすものとして機能していることは否定できないところである。そうであるとすると、原告が主張するように年金のみが憲法25条が要求する所得保障措置であって、それ以外の制度を採用することは社会保障立法に関する裁量権を逸脱・濫用するものであると断定することは到底困難であるといわざるを得ない。 なお、原告らの主張は、「憲法25条を具体化する措置として、障害基礎年金制度が設けられた以上、すべての障害者に対して障害基礎年金を支給するのが憲法25条の要請というべきである。」という趣旨にも理解することができる。しかしながら、現行の国民年金制度は、拠出制年金を基本とし、補完的に無拠出制の年金制度を 者に対して障害基礎年金を支給するのが憲法25条の要請というべきである。」という趣旨にも理解することができる。しかしながら、現行の国民年金制度は、拠出制年金を基本とし、補完的に無拠出制の年金制度を設けているものであるところ、上記のとおり、別途生活保護の制度も存在する以上、このような年金制度を設けたこと自体が憲法25条に違反するということはできないし(そのような主張は、結局、すべての障害者に対して年金を支給すべきであるという主張にほかならず、この主張を採用することができないことは既に説示したとおりである。)、そのような制度の下で、年金の支給を受けられないこととなった事情は様々であるにもかかわらず、そのような事情を一切捨象して、障害基礎年金の支給を認めなければ憲法25条に違反するということも困難であるといわざるを得ない。 したがって、この点に関する原告らの主張は採用することはできないものといわざるを得ない。 3 昭和34年法に関する憲法違反の主張について次に、原告らは、「昭和34年法が、①学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したこと、②20歳未満の者が障害を負うに至った場合には障害福祉年金を支給することとしたにもかかわらず、20歳以上の学生が障害を負うに至った場合には障害福祉年金を支給しないこととしたこと、③施行日50歳超者を学生と同様に強制適用の対象から除外し、任意加入を認めることとしながら、任意加入をした場合には保険料の納付義務の免除を認め、また、任意加入をしない場合であっても老齢基礎年金の支給を認めたことは、いずれも差別的取扱いであって憲法14条、25条に違反する。」という趣旨の主張をするので、この点について判断する。 1)学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことについてこの点に関し、原告らは、「学生を国民年金法 って憲法14条、25条に違反する。」という趣旨の主張をするので、この点について判断する。 1)学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことについてこの点に関し、原告らは、「学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことには合理的な理由はなく、他の20歳以上の国民との間で不合理な差別をしたものであって憲法14条に違反し、また、憲法25条にも違反する。」という趣旨の主張をし、被告国は、「上記の取扱いは、①学生は稼得活動に従事しておらず、保険料納付義務を課すのは酷であること、②卒業後は、ほとんどの者が被用者年金に加入することが予想され、この場合には、国民年金の保険料が掛け捨てになる結果となること、③国民年金は、稼得能力の喪失に対する保障を本質とするものであるところ、稼得活動に従事していない学生については、稼得能力の喪失のリスクは存在しないことなどを理由とするものであって、合理的な理由があった。」という趣旨の主張をする。 そこで検討するに、被告国の主張のうち、②の点は、被保険者期間の通算措置が講じられれば解消される問題であるところ、昭和34年法制定時においては、通算措置が設けられるには至らなかったものの、昭和34年法7条3項において、通算措置について別に法律を設けることが予定され、昭和36年には、通算年金通則法が制定されたことは既に認定したとおりなのであるから、この点を理由に学生を強制適用の対象から除外することには直ちに合理的な理由があったものとはいい難い(被告国は、通算年金通則法によっても、被保険者期間の通算問題が完全に解消されたわけではないという趣旨の主張もしているが、たとえ完全な問題解消には至っていなかったとしても、一応の問題解決がされている以上、この点を除外の理由とすることに合理的な理由はないものといわざるを得ない。)。 はないという趣旨の主張もしているが、たとえ完全な問題解消には至っていなかったとしても、一応の問題解決がされている以上、この点を除外の理由とすることに合理的な理由はないものといわざるを得ない。)。また、③の点についても、学生が障害を負い、稼得能力を失った場合には、卒業後も将来にわたって稼得能力を喪失することになるのであるから、少なくとも、障害年金に関する限り、学生についても稼得能力喪失のリスクは存在したものというべきなのであって、「学生については、稼得能力喪失のリスクはない。」との主張には理由がないことは明らかである。 しかしながら、昭和34年法は、前記のとおり、立法の経緯から老齢年金を中心とした制度設計がされているのであって、学生の場合は多くの者が卒業後に被用者保険等の被保険者となるほか自ら相応の収入を得て老後に備えることが可能となるのであって、たとえ上記のように法改正により保険料の掛け捨てにならない状況が生じたとしても、学生の期間中に保険料を納付しないことによって生ずる不利益はほとんど生じないか生じたとしてもそれほど大きなものではなく、未だ自らの収入のない状況下で保険料を負担してまで老後に備える必要があるとは考えられず、制度の中心としての老齢年金に着目して学生に被保険者資格を認めなかったことには、それなりの合理性があると考えられる。このように考えても、上記のように障害年金について被保険者となる必要性は学生以外の者と変わりがないことから、あえてその必要性のみに着目して被保険者資格を付与するとの選択肢も考えられないではないが、同法における保険料の額もまた適切な額の老齢年金を支給できるように設定されているのであって、保険料の大部分は老齢年金のためのものであり、障害年金のためにのみ必要な保険料はそのうちのごく一部分にすぎず、しかも学 保険料の額もまた適切な額の老齢年金を支給できるように設定されているのであって、保険料の大部分は老齢年金のためのものであり、障害年金のためにのみ必要な保険料はそのうちのごく一部分にすぎず、しかも学生のうちに障害を受ける者の割合もかなり低いものであることからすると(乙第5号証240頁記載の平成元年の試算によると、障害年金の支給のみに必要な費用から国庫負担分を差し引いた被保険者1人当たりの保険料月額は189円であって、当時の保険料月額6800円の3パーセントにも満たないこと、厚生年金被保険者中の障害年金受給者数から推計した障害者の発現率が障害等級1級につき0・001249、2級につき0・0035334であることが認められる。)、このような選択をすることは、必要性に見合う限度を遥かに超える負担を強いる結果を招く点において不適切なものといわざるを得ず、主たる制度である老齢年金に着目して被保険者資格を付与しない方が、障害年金のみに着目して被保険者資格を与えるよりも、むしろ適切な選択であると認められる。このことは、平成元年法が学生を強制加入の対象とし、そのこと自体は本件のような問題を解決する一つの選択肢として許されるべきものではあったものの、運用の実際において多くの未加入者や保険料未納者が発生するとの問題点が生じたことから、総務庁の行政監察に基づく勧告もあって、現行法の学生納付特例制度を設けて学生については広汎に保険料免除を認めるという見方によっては強制加入制度と矛盾するとも取れる制度を導入せざるを得なかったことからも裏付けられるところである。 以上によると、昭和34年法が学生に被保険者資格を与えなかったこと自体には合理的な理由があり、憲法14条及び25条に違反するものとはいえないのであって、むしろ問題は、学生を強制適用の対象にしないのであれば よると、昭和34年法が学生に被保険者資格を与えなかったこと自体には合理的な理由があり、憲法14条及び25条に違反するものとはいえないのであって、むしろ問題は、学生を強制適用の対象にしないのであれば、障害年金又は障害福祉年金の受給がより容易になるような制度を設ける必要はなかったのかどうか、あるいはそのような制度を設けなかった点において、学生以外の法律上当然には被保険者資格を有しない者との間に不合理な差別が存在するか否かという点にあるというべきであり、これらは原告らが前記3冒頭の②及び③として主張する問題において検討すべきものである。 なお、原告らは、「学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことが憲法違反であるとはいえないとしても、国民年金に任意加入をした学生について、他の被保険者と同様の保険料納付義務免除を認めなかったことは差別的取扱いであり、憲法14条、25条に違反する。」という趣旨の主張もしている。 しかしながら、上記で説示したとおり、老齢年金との関係においては、学生に被保険者資格を付与する必要性自体に疑問があるから、あえてこの関係において保険料納付義務免除制度を設ける必要性も乏しいものといわざるを得ず、原告らの主張も、この制度の適用によって障害福祉年金の受給を可能にすべきであったという点に主眼があると思われるところである。そうであるとすると、この点もまた、上記の障害福祉年金の受給がより容易になるような制度を設けなかったことの適否にかかる問題として検討すべきものである。 2)障害福祉年金の受給が困難であったことに関する主張について次に、原告らは、「20歳未満のうちに障害を負った者は、国民年金に加入していなくとも障害福祉年金の支給を受けられるのに、20歳以上の学生が障害を負った場合には、その支給を受けられないのは差別的取扱いで に、原告らは、「20歳未満のうちに障害を負った者は、国民年金に加入していなくとも障害福祉年金の支給を受けられるのに、20歳以上の学生が障害を負った場合には、その支給を受けられないのは差別的取扱いであり、憲法14条、25条に違反する。」と主張する。 まず、20歳前に障害を負った者に障害福祉年金を支給することとした趣旨については、「若年において重度の障害にあることは、通常その障害が回復することは極めて困難であり、したがって稼働能力はほとんど永久的に奪われていると考えるのが常識的である。他方、年齢的にみても親の扶養を受ける程度をできるだけ少なくしなければならないし、この意味から所得保障の必要度はこのような者にこそ高い。しかもかかる事例は、恒常的に発生するものである。」との説明がされているところ(乙8、167頁)、ここで指摘されていることは、学生が20歳に達したのちに障害を負った場合にも妥当すると考えるのが素直な見方というべきであり、そもそも強制適用の下限を大部分の者が所得活動に入っているとの想定の下に20歳と設定しつつ、学生については定型的にみて所得活動を行っていないことから20歳に達しても強制加入の対象にしなかったことは、昭和34年法の立法思想自体が20歳以上の学生を20歳未満者と同視しているものとも考えられるのであるから、この点からしても20歳以上の学生についても障害福祉年金の支給対象に加えるのが自然な考え方であろう。このように障害福祉年金の制度趣旨からしても、昭和34年法に現れた立法思想の一貫性の観点からしても、20歳以上の学生を障害福祉年金の支給対象から除外すべき理由は見出し難い。現に、昭和34年法の立案段階で作成された案のうち、前記のとおり、厚生省の要綱第一次案においては無拠出障害年金の受給資格として「22歳になるまでに障害に 金の支給対象から除外すべき理由は見出し難い。現に、昭和34年法の立案段階で作成された案のうち、前記のとおり、厚生省の要綱第一次案においては無拠出障害年金の受給資格として「22歳になるまでに障害になったため拠出制の障害年金を受けられなかったとき」としており、この案によれば、学生時代に障害を負った者のほとんどが無拠出障害年金を受給し得ることとなるし、自由民主党の要綱においても、「保険料拠出の能力又は期間がなかったため」に「拠出制の障害年金を受けることができない者」に無拠出の障害年金を支給することとされており、これと学生には定型的に稼得能力がないため法律上当然には被保険者資格を与えなかったとの説明を組み合わせると、同要綱案を素直に立法化すれば、学生時代に障害を負った者にも障害福祉年金を支給することとなったと考えられる。このような観点からすると、障害福祉年金の受給について、20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との間に取扱いの差異を設けることには疑問があるものといわざるを得ない(なお、この点については、20歳以後に障害を負った学生に障害福祉年金を支給することとすると、同年齢の学生以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給し得ないこととの均衡を失するとの疑問が生じないでもない。しかしながら、学生以外の20歳以上の者については、法は稼得活動に従事している者とみなして強制適用の対象としつつ学生については稼得活動に従事していないことに着目して強制適用の対象としていないのであって、このこと自体に前記のとおり合理性がある以上、障害福祉年金の受給要件において保険料納付の要否に差を設けることもまた合理性があると認められるし、前記のとおり保険料の大部分は老齢年金の支給を受けるためのものであって、学生以外の20歳以上の者は主として老齢年金の 給要件において保険料納付の要否に差を設けることもまた合理性があると認められるし、前記のとおり保険料の大部分は老齢年金の支給を受けるためのものであって、学生以外の20歳以上の者は主として老齢年金の支給を受けるために保険料を納付し、その過程においてたまたま障害を負った場合には障害年金等の支給を受けられるという関係にあるにすぎず、学生以外の20歳以上の者が障害年金又は障害福祉年金を受給するために支出する保険料の負担はきわめてわずかなものであることからしても、上記の点が均衡を失すると評価することはできない。)。 この点について、被告は、そのような学生は20歳に達しながらあえて稼得活動に従事することなく自ら学生であることを選択した者(いわゆる「エリート」)であるから、これに障害年金給付を行わないことも不合理ではないと主張する。この主張の趣旨は、必ずしも明らかではないが、その趣旨が、学生に無拠出の障害年金を支給することは、同年齢の学生以外の者との間に不平等を生ずるという点にあるとするならば、その主張が失当であることは既に指摘したとおりである。また、上記の主張が、そのような学生やその父兄は経済的に余裕を有する者であるとの前提の下に、あえて社会の保護の手を差し伸べる必要がないという趣旨であれば、そのような前提事実の有無を確かめる必要があるが、昭和34年法の立案当時、このような前提事実の有無が調査された形跡はなく、いわばそのような社会通念を前提として立案がされたと認めるのが相当である。そして、高等教育には相当な費用が必要であって、そのことのために高等教育を受けることを断念する者も多く、当時大学に進学する者は同年齢の者の1割にも満たないいわば希少な存在であって(乙13)、実際上も高等教育を受ける者の父兄には一般の水準以上の所得を有する者が少なくな を受けることを断念する者も多く、当時大学に進学する者は同年齢の者の1割にも満たないいわば希少な存在であって(乙13)、実際上も高等教育を受ける者の父兄には一般の水準以上の所得を有する者が少なくなかったことは、公知の事実である。他方、夜間部に限らず昼間部の大学においても、父兄からの援助をほとんど得られないために各種の奨学金や自らのアルバイト等によって苦労して勉学を続ける者がいたことも公知の事実であり、乙第31号証、第32号証によると、昭和36年の調査による大学生の家庭の収入状況は、その職業によってかなりの差異があり、その平均収入が全勤労者世帯の平均収入とほとんど異ならないものもあることが認められるのであるから、上記のように大学生やその父兄が一般に経済的に余裕を有するものであるとの事実の有無については、少なくとも客観的に見る限り疑問があるといわざるを得ない。しかしながら、上記のような進学率等当時の状況からすると、未だ当時においては大学の大衆化が進んでいなかったのであるから、一般人が大学生とその父兄に対して経済的に余裕を有する者であるとのイメージを有していたことも不思議ではなく、立法者がそのような社会通念を前提として制度を設計することもまた不合理とは断じ難い。立法過程においても、この点を具体的に指摘した反対論がなかったことはもとより、法律成立後かなりの期間、この点が問題として指摘されなかったことも、これを裏付けるものである。 その上、仮に学生について20歳前に障害を受けた者と同様に障害福祉年金の受給資格を与える場合はもとより、学生の任意加入者に対する保険料免除制度を設けることにより学生の任意加入を容易にした場合においても、障害年金の受給要件からすると、学生が20歳に達した後に障害を受けたことによって障害年金の支給を受けることはできず、 対する保険料免除制度を設けることにより学生の任意加入を容易にした場合においても、障害年金の受給要件からすると、学生が20歳に達した後に障害を受けたことによって障害年金の支給を受けることはできず、せいぜい障害福祉年金を受給し得るにすぎないのであるから、これらの制度が採用されないことによって学生が受ける不利益は、制度の根幹をなす障害年金自体を受けられないというものではなく、かなり少額の給付にとどまる付加的な制度としての障害福祉年金の恩恵にあずかれないというのにとどまり、その不利益の程度及び制度自体の整合性という観点から見て比較的軽微といわざるを得ない。 このように原告らの指摘する不利益の程度と立法の前提とされた社会通念の内容からすると、原告ら主張の点は、上記のような疑問を生じさせるものではあるが、任意加入に伴う保険料免除制度がなかったことも含めて、憲法に違反するものとはいえない。 3)施行日50歳超者との間の差別的取扱いに関する主張について更に、原告らは、「施行日50歳超者と学生との間でも差別が生じており、憲法14条、25条に違反する。」と主張する。 しかしながら、学生は、稼得活動に従事しておらず、保険料納付義務を負担させるのは相当ではないという理由で国民年金法の強制適用の対象から除外されたのに対し、施行日50歳超者は、保険料負担能力の問題ではなく、本来的には国民年金の被保険者資格が認められるべき者であるが、国民年金に加入させたとしても、被保険者期間が老齢年金支給の最低要件である10年に達しないという理由で強制適用の対象から除外されているのであるから、この両者で利益状況を異にすることは明らかであり、これを同列に置いて差別を論じるのは、そもそも当を得ないものというべきである。 また、原告らが差別であると主張する点の第1は、施行日50 であるから、この両者で利益状況を異にすることは明らかであり、これを同列に置いて差別を論じるのは、そもそも当を得ないものというべきである。 また、原告らが差別であると主張する点の第1は、施行日50歳超者は、国民年金に任意加入しなくとも老齢福祉年金を受給できるのに、20歳を超えた学生は、国民年金に任意加入していなければ障害年金を受給できないという点であるが、施行日50歳超者は、国民年金法の施行日に50歳を超えていたという理由で老齢福祉年金を受給できるのに対し、学生の場合には、国民年金法の施行日においては、障害年金を受給すべき事由は生じていないのであるから、この両者で取扱いが異なったとしても何ら差別に当たるものではない。別の言い方をすれば、国民年金制度が施行された当時、既に年金の支給事由が生じていた者や、それに準じる状況にあった者に対し、経過的措置として福祉年金が支給されることと、国民年金制度が施行された後に、年金の支給要件を満たさなかった者に対して年金が支給されないことは別個の問題であり、これを差別ということはできないのである。 原告らが差別であると主張する点の第2は、施行日50歳超者が国民年金に任意加入した場合には保険料納付義務免除制度が適用されるのに対し、学生が任意加入した場合には適用されないという点であるが、施行日50歳超者は、本来的には国民年金の被保険者資格が認められるべき者であることは既に指摘したとおりなのであるから、これらの者について国民年金法の強制適用の対象者に準じて保険料納付義務免除制度が適用されたからといって、それとは事情が異なる学生についても同様にすべきであるということはできないものというべきである。 4)結論以上の次第で、昭和34年法が憲法14条、25条に違反するという原告らの主張はすべて失当であり、採用す が異なる学生についても同様にすべきであるということはできないものというべきである。 4)結論以上の次第で、昭和34年法が憲法14条、25条に違反するという原告らの主張はすべて失当であり、採用することができないものといわざるを得ない。 4 憲法31条、禁反言、信義則違反の主張についてまた、原告らは、「任意加入制度の周知徹底義務を怠っていながら、任意加入をしていないことを理由に障害基礎年金の支給を拒むことは憲法31条、禁反言、信義則に違反し、許されない。」という趣旨の主張もする。 しかしながら、法律の規定は、それが施行されれば特段の周知徹底手続を要することなく適用されることになるのが原則であり、本件に関して、特に周知徹底義務が要求されるものと解するだけの根拠はないものといわざるを得ないし(原告らは、学生を国民年金法の強制適用の対象から除外し、被保険者になるためには任意加入をすることを要求する制度を設けたことを不利益処分と位置づけた上で、憲法31条に基づき、特別の告知手続が要求されると主張するもののようであるが、社会保障制度は、受益的な制度であって、それ自体としては憲法31条の適用対象となるものではない上に、学生の取扱いも、社会保障制度の一環として位置づけられるべきものであって、憲法31条の適用対象となるような不利益処分であるということはできず、いずれにせよ上記主張は失当である。)、証拠(乙21ないし24(各枝番を含む。))によれば、学生の任意加入制度については、毎年一定の広報活動が行われていたことが認められることからすれば、周知徹底義務に違反があったと断定することにも疑問があるものといわざるを得ず、いずれにせよ上記主張を採用することもできないものといわざるを得ない。 5 昭和51年ころまでに救済措置を講じなかった立法不作為の主張につ 反があったと断定することにも疑問があるものといわざるを得ず、いずれにせよ上記主張を採用することもできないものといわざるを得ない。 5 昭和51年ころまでに救済措置を講じなかった立法不作為の主張について原告らは、「昭和51年ころまでには、学生を国民年金法の強制適用の対象に加え、無年金者が生じないよう配慮すべき義務があったのに、その立法を怠ったことは憲法14条、25条に違反する。」という趣旨の主張をする。 しかしながら、前記1、4)において認定したとおり、昭和51年当時は、学生無年金者問題が取り上げられ始めたばかりの時期であって、直ちに立法による対応が必要であると認識すべき状況になっていたということは困難であるといわざるを得ない。 したがって、この点に関する原告らの主張も失当といわざるを得ない。 6 昭和60年法の違憲性等に関する主張について1)原告らは、昭和60年法についても昭和34年法と同様の理由により違憲であると主張する。 この主張のうちには、大きく分けると、第1に、学生を強制加入の対象としなかったこと自体が違憲であるとの主張と、第2に、学生について障害を理由とする年金の受給がより容易になるような制度を設けなかったことの違憲性(これは一義的に特定し得る制度の不採用を問題とするものではなく、強制加入制度を含む様々な選択肢があったにもかかわらず、何らの措置も採らなかったことを問題としているものと理解できる。)、あるいはその点において、学生以外の法律上当然には被保険者資格を有しない者との間に不合理な差別が存在するか否かという主張の双方が含まれているところ、第1の主張については、既に昭和34年法について説示したとおり、そのこと自体をとらえて憲法違反と断じることはできない(なお、昭和60年法においては、老齢基礎年金の満額支給を受ける まれているところ、第1の主張については、既に昭和34年法について説示したとおり、そのこと自体をとらえて憲法違反と断じることはできない(なお、昭和60年法においては、老齢基礎年金の満額支給を受けるためには被保険者期間が40年間必要となったため、学生の期間中に被保険者資格を認めないことにより、学生時に任意加入をしない限り老齢基礎年金の満額支給を受けられないこととなった。しかしながら、卒業後一貫して保険料を納付し続けた場合には、そのことによる不利益は軽微なものであり、卒業後の自らの収入によりこれに備える手段を講ずることも十分に可能なのであるから、この程度の不利益のみに着目して、一般に収入のない学生を強制加入の対象に加え保険料の納付義務を課することは、結局その保険料を学生の親が負担せざるを得なくなり、親が子の老後の備えまでさせられるという平成元年法について指摘された問題点を生じさせる点において不適切な面もあるから、この時点で学生に強制加入制度を採用しなかったこと自体をとらえて違憲と断ずることはできない。)。 2)しかしながら、第2の主張については、前記3、2)で説示したとおり、昭和34年法制定当時においても、障害福祉年金の受給につき20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との間に取扱いの差異を設けることには疑問があったところであり、その後の状況の変化を考慮すると、昭和60年法制定時においては、この点について何らの立法的手当をしないまま放置しておくことは憲法14条に違反する状態となっていたものと認められる。 すなわち、昭和34年法制定当時、既に上記の疑問がありながらも、それが憲法違反とまではいえないとの判断に至ったのは、前記のとおり、学生が受ける不利益の程度と立法の前提とされた社会通念の内容を重視した結果である。このうち不利益 時、既に上記の疑問がありながらも、それが憲法違反とまではいえないとの判断に至ったのは、前記のとおり、学生が受ける不利益の程度と立法の前提とされた社会通念の内容を重視した結果である。このうち不利益の程度についてみると、20歳前に障害を負った者は、昭和34年法においては、制度の根幹をなす障害年金自体は任意加入していない学生と同様に受給し得ず、給付額のかなり低い付加的な制度としての障害福祉年金の支給を受けられたにすぎなかったが、昭和60年法においては、障害年金に代わって設けられた障害基礎年金を受給し得ることとなり、障害福祉年金は廃止されたものの、従来その給付を受けていた者は障害の程度に応じて障害基礎年金の給付を受けることとなった。このように昭和60年法においては、20歳前に障害を受けた者については、給付の額が大幅に増加したのみならず、被保険者資格がないにもかかわらず、制度の根幹をなす障害基礎年金の給付を受けられることとなったのであり、20歳以後に障害を受けた学生との取扱いの差異は、量的に著しく拡大するとともに質的にも異なったものとなったと評価すべきである。 その上、文部省の平成12年度学生基本調査報告書によると、大学への進学率は、昭和34年には8・1パーセントであったところ、その後は徐々に増加し、昭和47年に20パーセントを超えた以降は平成6年に30パーセントを超えるまでの間、20パーセント台の中位で安定的に推移しており、昭和60年には26・5パーセントと昭和34年の3倍を超えていたことが認められ、国民の意識においても、昭和50年ころまでには大学への進学はそれほど特殊なことではなく、大学生とその父兄が経済的に恵まれた者に限られるとの認識も消滅したものと推認できるのであって、それとともに昭和34年法が前提とした社会通念ももはや存在しなく 学への進学はそれほど特殊なことではなく、大学生とその父兄が経済的に恵まれた者に限られるとの認識も消滅したものと推認できるのであって、それとともに昭和34年法が前提とした社会通念ももはや存在しなくなったと認めることができる。 これらのことからすると、昭和60年の法改正時点においては、原告ら主張の点について、昭和34年法の合憲性を辛くも支えていた事情はいずれも消滅しており、その不合理性のみが露呈するに至ったと認められ、これを是正すべき立法措置を講ずることなく放置することは、憲法14条に違反する状態が生じていたと評価すべきであるし、昭和60年法が従来障害福祉年金を受給していた者につき障害基礎年金を支給することとしながら、同法制定以前に20歳に達してから在学中に障害を受けたいわゆる学生無年金者に何らの措置を講じないことも、両者間に憲法14条に違反する状態をもたらしたものと評価すべきである。 3)なお、昭和60年法においてはもとより昭和34年法においても学生は任意加入が可能であり、任意加入をして保険料を納付していた者については、在学中の20歳以後に障害を負った学生にも障害福祉年金又は障害基礎年金が支給されることとなっていたが、任意加入制度には保険料免除制度が伴っていなかったために、本人にも父兄にも資力がない者には任意加入をすること自体ができず、その場合には障害に関する年金を受給することができないという欠陥があった上、学生の任意加入者はわずか1パーセント程度にすぎず、その理由については様々なものが考えられるとしても、このように加入率が著しく低いことは当該制度が機能していなかったことを示すものであり、このような機能していない制度の存在をもって上記の点を合理化することはできない。 そのほか、この点については、未だ稼得活動を行っていなかった者に生 当該制度が機能していなかったことを示すものであり、このような機能していない制度の存在をもって上記の点を合理化することはできない。 そのほか、この点については、未だ稼得活動を行っていなかった者に生じた障害については、本来、他の社会保障制度によって救済が図られるべきものであって年金制度によるべきものではないから、その一部の者について例外的に年金制度による救済が図られたとしてもそのことは政策的な当不当の問題が生ずるにとどまり、法的な違法の問題は生じないとの見解も存在する(乙36)。しかしながら、このような見解は年金問題のみを担当する者の組織法的な責任の有無を考える場面においてはともかく、国家の制度として確立された年金制度自体の適否を考える場面においては採用し得ない見解であり、それが本来当該制度によって保護を図るべき者か否かにかかわらず、その制度において一部の者にのみ救済が与えられ、それと同様の理由から救済が必要とされる者に対して何らの救済も与えられていない場合には、その制度に代わる制度において同等の救済が与えられていることが認められない限り、平等原則違反による違憲違法の問題が生ずるといわざるを得ないし、年金制度に代わる他の制度において、20歳以後に障害を負った学生に対し、障害福祉年金と同等の救済が与えられているとも認められない以上(生活保護制度は、年金制度とは全く異なった趣旨から厳格な要件の下に給付を認めるものであるから、これをもって同等の救済と評価することはできない。)、上記2)の結論はやむを得ないところである。 また、障害による稼得能力を喪失する事態に対する備えは、本来、各個人又はその扶養義務者においてもなすべきものであり、国家がこれに救済措置を行うのは、後見的な見地からの恩恵的な措置ともみ得るところであるが、たとえ恩恵的な措置 喪失する事態に対する備えは、本来、各個人又はその扶養義務者においてもなすべきものであり、国家がこれに救済措置を行うのは、後見的な見地からの恩恵的な措置ともみ得るところであるが、たとえ恩恵的な措置であっても、私人が行うものとは異なり、国家が公金を用いて行うものである以上は、それが平等原則に反するものであってはならないことはいうまでもない。もとより国家の制度として行う以上、その対象者が膨大なものとなることから、個々人間の厳密な平等を図ることは断念して大まかな類型に即した制度設計をせざるを得ない場合もあることはいうまでもないが、そのような場合においても、類型の設定に当たって、合理的な理由がないにもかかわらず、類型的に見て同等又はそれに近い取扱いをすべきグループ間において、著しく異なった取扱いを定めることは、平等原則に反するものといわざるを得ない。そして、昭60年法における20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との取扱いの差異は、少なくともそのままの状態では合理的な理由のない差別的取扱いとして平等原則に違反するものであり、そのような評価を受けない程度に是正する措置が必要な状態であったと認められる。 4)前記2)のとおり、昭和60年法には、学生について在学中の障害を理由とする年金の受給がより容易となるような制度を設けなかった点において、学生以外の法律上当然には被保険者資格を有しないものとの間に不合理な差別が存在し、憲法14条に違反する状態が生じており、この点について、そのような評価を受けない程度に是正する立法上の措置が必要な状態が生じていたと認められるところ、その是正措置は、もとより一義的に定まるものではなく、上記の不合理な状態を解消するに足りる措置としての複数の選択肢の中から、立法者がその裁量に基づいて選択したものを採用す ていたと認められるところ、その是正措置は、もとより一義的に定まるものではなく、上記の不合理な状態を解消するに足りる措置としての複数の選択肢の中から、立法者がその裁量に基づいて選択したものを採用すれば足りるものであったというべきである。 すなわち、是正措置として、最も端的なものは、学生である間に障害を負った者については、同法制定前に障害を負った者も含めて、その年齢を問わずに20歳前に障害を負った者と同様に障害基礎年金の支給をするというものであるが、仮にそのような措置ではなく、平成元年法のように20歳に達した学生を強制加入の対象とし、保険料免除制度の適用を受けられるようにし、その免除期間中に障害を負った場合にも障害基礎年金の受給を可能にするとの措置を採り、制度改正前に障害を負った学生ついてもこれに見合う何らかの救済措置を採った場合でも、このような制度には前記のように現行法における学生納付特例制度が伴わない限り不適切な面もないではないが、任意加入を要せずに当然に被保険者資格が与えられる点及び保険料免除制度の利用により本人及び親の双方に資力のない者にも障害基礎年金受給の可能性が生じている点において、上記の差別は大きく是正されているのであり、両者間に存する差異はもはや憲法違反と評価するほどのものとは認め難いのである。 また、昭和60年法においては、従来の障害福祉年金制度は廃止されたが、仮にこれを存続させ、20歳以後に障害を負った学生を同法制定前に障害を負った者を含めてその支給対象とするとの制度とした場合においても、上記の差別は完全ではないものの大きく是正されるのであり、残存する差異のみをとらえて憲法違反と評価することはできないと考えられるのである。そのほかにも、これらと同等以上の是正策は種々考案可能と考えられるところであり、立法者としては く是正されるのであり、残存する差異のみをとらえて憲法違反と評価することはできないと考えられるのである。そのほかにも、これらと同等以上の是正策は種々考案可能と考えられるところであり、立法者としては、その裁量によって最も適切と考えられるものを採用すれば足りたというべきである。 しかるに、昭和60年法制定時には、これらの是正措置はいずれも採用されず、上記の差別がそのまま放置されたのであるから、この点において、同法自体は憲法に違反するものであり、立法不作為の違法が存在したものというべきである。 7 原告B、原告C及び原告Dに対する本件不支給処分の適否昭和60年法は、前記6のとおり、それ以前に生じた学生無年金者に対する救済措置を含めて、学生について在学中の障害を理由とする年金の受給がより容易になるような制度を設けなかった点において、学生以外の法律上当然には被保険者資格を有しない者との間に不合理な差別が存在し、憲法14条に違反する状態が生じていたと認められるが、それに対する是正措置は一義的に定まるものではなく、種々の選択肢があったと認められるところであって、そのうちのある選択肢が採用されていれば上記処分が当然に違法になることもあり得るところであるが、採用された選択肢の内容によっては、上記処分自体の効力には影響がない場合も、またその採用された選択肢の要件を満たすか否かが原告らの行動によって定まる場合も想定されるところである。 そうであるとすると、採用されるべき是正措置が特定できない限り、上記各処分の適否の判断はできないといわざるを得ないが、是正措置のうちのいずれを採用すべきかは立法者の裁量に委ねられているのであるから、当裁判所としては、そのうちのいずれかの是正措置が採用されたことを前提として、上記各所分の適否を判断することはできない。したが うちのいずれを採用すべきかは立法者の裁量に委ねられているのであるから、当裁判所としては、そのうちのいずれかの是正措置が採用されたことを前提として、上記各所分の適否を判断することはできない。したがって、このような場合には、処分当時の法令に従ってされた上記各処分を取り消すことはできず、原告らの救済は専ら立法不作為に基づく国家賠償請求によるべきものと考えられる。 8 国家賠償請求について(争点④)原告らの国家賠償請求は、いずれも立法の不作為を違法と主張するものであって、現行法の正しい適用をしなかったことを主張するものではないところ、原告Aについては、処分庁が現行法自体の適用を誤ったことによって障害基礎年金が支給されなかったにすぎず、本来、立法不作為の有無にかかわらず障害基礎年金を受給し得る地位を有していたと認められ、立法不作為によって何らの損害も受けていないことになるから、原告Aの国家賠償請求はその余の点を判断するまでもなく失当といわざるを得ない。 他方、その余の原告3名の国家賠償請求については、その前提となる立法不作為の違法については、前記6のとおり認定することができるし、そのような問題点は各種障害者団体の要請行動や年金審議会委員の指摘等から明らかとなっていたものと認められるから、国家賠償請求の要件となるべき故意又は過失の存在もまた肯定することができる。 そして、証拠(甲19ないし21、原告B及びC各本人、証人K)によれば、原告B、原告C及び原告Dは、障害基礎年金の支給を受けられないことにより、日常生活や社会生活を営む上において様々な不便を強いられ、そのことによって多大の精神的打撃も受けたことが認められる。もっとも、昭和60年法の下においても、学生に任意加入の道が開かれていたことは事実であり、同原告らにおいて、任意加入をし、保険料 強いられ、そのことによって多大の精神的打撃も受けたことが認められる。もっとも、昭和60年法の下においても、学生に任意加入の道が開かれていたことは事実であり、同原告らにおいて、任意加入をし、保険料を納付することが経済的に困難であったと認めるに足りる証拠は存しないし、立法不作為の違法を是正する措置の内容によっては、その適用下における同原告らの行動いかんによって給付を受けられなくなる可能性も否定できないのであるから、慰謝料の額の算定に当たっては、この点も考慮に入れる必要があると考えられる。そして、以上に指摘した点やその他諸般の事情を考慮すると、同原告らに対して支払われるべき賠償額は各500万円が相当であると認める。 以上の次第で、原告Aの国家賠償請求は、理由がなく棄却すべきであるが、その余の原告らの国家賠償請求は、いずれも500万円の支払を求める限度で理由があるものとして認容し、これを超える部分は理由がないものとして棄却すべきである。 第6 結論よって、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条、65条を適用し、仮執行の宣言の申立てについては、不相当であるので却下することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官新谷祐子
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