平成26年2月18日判決言渡平成24年(行ウ)第854号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求渋谷税務署長が平成23年5月31日付けで原告に対してした平成16年▲月 ▲ 日相続開始の相続税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,父である被相続人A(以下「亡A」という。)の平成16年 ▲ 月 ▲ 日死亡により開始した相続(以下「本件相続」という。)につき,亡Aの相続財産にB株式会社(以下「B」という。)の株式(以下「本件株式」という。)が含まれ,その価額が1株当たり1083円であるとして相続税の申告をしていたものの,その後,本件株式の譲渡をめぐって原告と株式会社C(以下「C」という。)等との間に係属した訴訟において東京地方裁判所が平成22年11月19日に言い渡した判決により,亡Aの相続財産に含まれていたのは本件株式ではなくCに譲渡された本件株式の売買代金請求権(1株当たり642円)であったことが確定したなどとして,国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下「通則法」という。)23条2項1号に基づき,平成23年1月18日付けで上記相続税に係る更正の請求をしたところ,渋谷税務署長から,更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)を受けたことから,その取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め (1) 通則法23条(更正の請求)ア 1項納税申告書を提出した者は,次の各号の一に該当する場合には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に 法令の定め (1) 通則法23条(更正の請求)ア 1項納税申告書を提出した者は,次の各号の一に該当する場合には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には,当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。 一当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより,当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には,当該更正後の税額)が過大であるとき。 二,三 (略)イ 2項納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は,次の各号の一に該当する場合(納税申告書を提出した者については,当該各号に掲げる期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には,同項の規定にかかわらず,当該各号に掲げる期間において,その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。 一その申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により,その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して2月以内 二,三 (略)ウ 3~7項(略) む。)により,その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して2月以内 二,三 (略)ウ 3~7項(略)(2) 相続税法27条(相続税の申告書)1項相続又は遺贈(括弧内略)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は,当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(括弧内略)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において,その者に係る相続税の課税価格(括弧内略)に係る第15条から第19条まで,第19条の3から第20条の2まで及び第21条の14から第21条の18までの規定による相続税額があるときは,その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内(括弧内略)に課税価格,相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠(枝番号の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 本件相続の開始ア亡Aは,Cの代表取締役会長であったところ,平成16年 ▲ 月 ▲ 日に死亡した。 イ亡Aの相続人は,妻であるD及び子である原告の2名であり(以下,D及び原告を「本件相続人ら」という。),その法定相続分は各2分の1である。 (2) 本件株式の所有及び譲渡の経緯ア亡Aは,生前,Cの子会社であり,自身が代表取締役会長であったBの株式(本件株式)154万6668株を所有していた(甲1)。なお,本件株式は,取引相場のない株式である。 イ本件相続人らは,平成17年2月25日付けで,Cと 自身が代表取締役会長であったBの株式(本件株式)154万6668株を所有していた(甲1)。なお,本件株式は,取引相場のない株式である。 イ本件相続人らは,平成17年2月25日付けで,Cとの間で,本件株式 154万6668株を,1株当たり642円,合計9億9296万0856円で譲渡する旨の契約を締結した(当該契約は形式上2つに分けられており,この2つの契約を併せて「本件各譲渡契約」といい,各契約に係る契約書を併せて「本件各譲渡契約書」という。乙6)。 本件各譲渡契約書には,要旨次のとおり記載されている(乙6)。 (ア) 対象株式は,平成16年 ▲ 月 ▲ 日に死亡した亡Aの保有に係る本件株式99万1368株及び55万5300株(合計154万6668株)で,同人の相続人は本件相続人らであり,その持分は各2分の1である。なお,上記株式は,その大半がもとCの保有していた株式であり,これを亡Aに従前Cが譲渡したものである(各第2項)。 (イ) Cは,第2項記載の経緯により,本件相続人らが保有する本件株式99万1368株及び55万5300株を第4項以下に記載の内容に基づき譲り受けることを本件相続人らに申し入れ,本件相続人らは,これを承諾した(各第3項)。 (ウ) 対象株式につき,従前Cが亡Aに譲渡した金額を含む平均取得金額は1株当たり642円であり,これによれば,総額6億3645万8256円及び3億5650万2600円(合計9億9296万0856円)で取得したものであるため,Cは,本件相続人らに対し,同額で譲り受けたい旨申し入れ,本件相続人らは,これを承諾した(各第4項)。 (エ) 譲渡手続は,以下記載の手続に基づき実行される(各第5項)。 すなわち,本件相続人らは,本契 同額で譲り受けたい旨申し入れ,本件相続人らは,これを承諾した(各第4項)。 (エ) 譲渡手続は,以下記載の手続に基づき実行される(各第5項)。 すなわち,本件相続人らは,本契約締結後,速やかにBに対し,対象株式をCに譲渡することについての承諾を求め,これにより対象株式の譲渡実行が確定した場合,Cは,同日より1週間以内に本件相続人らに株式譲渡代金を支払う。本件相続人らは,株式代金支払日と同日限り対象株式の株券をCに引き渡す。 (3) 当初申告の経緯 ア本件相続人らは,平成17年9月9日付けで,本件相続についての遺産分割協議書(以下「本件遺産分割協議書」という。)を作成した。本件遺産分割協議書には,亡Aの遺産として分割すべき財産の一つとして,本件株式154万6668株が記載され,本件相続人らがこれを77万3334株ずつ取得する旨が記載されている(乙7)。 イ原告は,本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の法定申告期限(相続税法27条1項)内である平成17年9月13日,渋谷税務署長に対し,本件相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を提出した(以下「本件申告」という。)。本件申告書には,亡Aの相続財産の一つとして本件株式154万6668株が記載され,本件相続人らがこれを77万3334株ずつ取得し,その価額は1株当たり1083円,それぞれ合計8億3752万0722円である旨が記載されている(乙1)。 本件申告書に記載された本件株式の価額(1株当たり1083円)は,財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17による国税庁長官通達。ただし,平成17年5月17日付け課評2-5による改正前のもの。以下「評価通達」という。)の定めに従って算出された 価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17による国税庁長官通達。ただし,平成17年5月17日付け課評2-5による改正前のもの。以下「評価通達」という。)の定めに従って算出された本件株式の評価額である。 (4) 第一次更正の請求の経緯等ア原告は,平成18年7月25日,本件申告における本件株式の評価額に誤りがあること等を理由として,渋谷税務署長に対し,通則法23条1項1号に基づき,本件相続税に係る更正の請求をした(以下「第一次更正の請求」という。)。第一次更正の請求において,原告は,本件株式が本件相続に係る相続財産であることを前提に,その評価額が,評価通達の定めに従って算出した1株当たり1083円ではなく,本件各譲渡契約における1株当たりの譲渡価額642円である旨を主張した(乙8)。 イ渋谷税務署長は,平成18年10月23日付けで,第一次更正の請求に つき,更正をすべき理由がない旨の通知処分をした(以下「第一次通知処分」という。乙9)。 ウ原告は,平成18年11月21日付けで,渋谷税務署長に対し,第一次通知処分について異議申立てをしたが(以下「第一次異議申立て」という。),渋谷税務署長は,平成19年2月20日付けで,第一次異議申立てを棄却する旨の決定をした(以下「第一次異議決定」という。乙5,10)。 エ原告は,第一次異議決定を不服として,平成19年3月22日付けで,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが(以下「第一次審査請求」という。),国税不服審判所長は,平成20年3月14日付けで,第一次審査請求を棄却する旨の裁決をした(以下「第一次審査裁決」という。乙11,12)。 オ渋谷税務署長は,平成20年6月30日付けで,原告に対し,本件相続税につき,株式会社Eに対す 日付けで,第一次審査請求を棄却する旨の裁決をした(以下「第一次審査裁決」という。乙11,12)。 オ渋谷税務署長は,平成20年6月30日付けで,原告に対し,本件相続税につき,株式会社Eに対する貸付金の申告漏れ及び妻に対する贈与加算の申告漏れがあったとして,更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした(乙2)。ただし,上記更正処分も,亡Aの相続財産に本件株式が含まれ,その価額が1株当たり1083円であることを前提とするものであった。 (5) 別訴判決原告は,平成21年8月3日,C及びその顧問弁護士であったF(以下,Cと併せて「Cら」という。)を被告として,①主位的に,本件各譲渡契約に当たり,Cらの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式をCに譲渡させられたして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,②予備的に,原告には,亡AとCとの間に本件株式を取得価格でCに譲渡する旨の合意が存在しないのに存在したとの錯誤があったため,Cとの間の本件各譲渡契約は無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,本件株式77万3334株の相続税法上の評価額(1株当たり1083円)と実際の譲渡代金額(1株 当たり642円)との差額3億4104万0294円等の各自支払を求める訴訟を東京地方裁判所に提起したが(同裁判所平成21年(ワ)第27040号),同裁判所は,平成22年11月19日,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した(以下,上記訴訟を「別訴」といい,上記判決を「別訴判決」という。甲1)。 原告は別訴判決につき上訴をせず,別訴判決は確定した。 (6) 本件更正の請求の経緯等ア原告は,本件相続税につき,通則法23条1項所定の更正の請求の期間が経過した後である平成23年1月18日,別訴判決により, せず,別訴判決は確定した。 (6) 本件更正の請求の経緯等ア原告は,本件相続税につき,通則法23条1項所定の更正の請求の期間が経過した後である平成23年1月18日,別訴判決により,相続財産に帰属するとされていた本件株式が亡Aの生前に売却されていたことが確定したものであり,これによれば,相続財産は本件株式ではなく本件株式の売買代金請求権(1株当たり642円)であることを理由として,同条2項1号に基づき,更正の請求をした(以下「本件更正の請求」という。乙3)。 イ渋谷税務署長は,平成23年5月31日付けで,本件更正の請求につき,更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)をした(乙4)。 ウ原告は,平成23年7月28日付けで,渋谷税務署長に対し,本件通知処分について異議申立てをしたが(以下「本件異議申立て」という。),渋谷税務署長は,同年10月27日付けで,本件異議申立てを棄却する旨の決定をした(以下「本件異議決定」という。乙13,14)。 エ原告は,本件異議決定を不服として,平成23年11月25日付けで,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが(以下「本件審査請求」という。),国税不服審判所長は,平成24年7月4日付けで,本件審査請求を棄却する旨の裁決をした(以下「本件審査裁決」という。甲2,乙15)。 オ原告は,平成24年12月21日,本件通知処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 (7) 課税処分等の経緯以上のうち,原告の本件相続税に係る課税処分等の経緯は,別表1に記載のとおりである。 3 争点本件更正の請求が通則法23条2項1号所定の要件を満たす適法なものかどうか。 4 争点に関する当事者の主張(原告の主張)(1) 別表1に記載のとおりである。 3 争点本件更正の請求が通則法23条2項1号所定の要件を満たす適法なものかどうか。 4 争点に関する当事者の主張(原告の主張)(1) 通則法23条2項の趣旨等通則法23条の更正の請求の制度は,納税申告等によっていったん確定した税額に誤りがあったため,国に生じた不当利得の返還を求める趣旨のものであるが,国家財政上の要請から,その請求期間等に所定の制限が設けられている。しかし,その制限規定については,最近の裁判例において納税者の権利救済を重視して弾力的に解釈される傾向にあり,かつ,平成23年法律第114号による通則法の改正によって大幅に緩和されたところである。これらのことを踏まえて,本件においても,通則法23条2項1号等の規定が弾力的に解釈,適用されるべきである。 そして,通則法23条2項1号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」の「事実」とは,広く課税計算の基礎又は前提となって,その事実により特定の課税計算の内容を明確に左右するようなものであれば,これら諸事実をすべて含むものと解すべきである。 (2) 別訴提起の経緯及び別訴判決の内容ア原告は,本件各譲渡契約に際し,Cから,亡Aとの約束どおり本件株式を1株当たり642円で譲渡してほしい旨の強い要請があったことから,十分な検討も経ない状態で,1株当たり642円で本件株式を譲渡した。 このように,原告は,本件株式につき1株当たり642円の経済的利益を 取得したにすぎないにもかかわらず,本件相続税については,評価通達の定めに従って1株当たり1083円と評価して本件申告をし,相続税を過大に納付していた。そこで,原告は,本件株式を1株当たり642円で評価し直すように求めて,第一次更 本件相続税については,評価通達の定めに従って1株当たり1083円と評価して本件申告をし,相続税を過大に納付していた。そこで,原告は,本件株式を1株当たり642円で評価し直すように求めて,第一次更正の請求をしたが,原処分庁,異議審理庁及び国税不服審判所長とも,本件株式の時価は1株当たり1083円であるとして,更正をすべき理由がない旨の判断をした。 これにより,原告は,国の各機関から本件株式の1株当たりの時価が1083円であることについてお墨付きを得たと確信し,そうであれば本件相続人らがCにだまされたものと考え,別訴を提起した。 イ別訴においては,亡Aが本件株式を取得した経緯や,亡Aが本件株式を取得価格でCに売り渡すことを約束していたか否か等について審理された。 その結果,別訴判決は,亡Aの生前に,亡AとCの役員らとの間で,亡Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でCに譲渡する旨の合意が成立していたことを認定し,原告の請求を棄却した。別訴判決により,原告は上記合意があったことを初めて知ることとなったものであり,また,本件相続開始時における本件株式の価額(時価)が上記取得価格(平均価格)である1株当たり642円であったことが最終的に確認されたものである。 (3) 別訴判決の「判決」該当性前記(2)イのとおり,別訴判決は,亡AとCとの間における亡Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で売り渡す旨の約束(すなわち,亡AとCとの間に売買契約又は売買予約が成立していたこと)を認定しており,これにより,①本件相続に係る相続財産は本件株式自体ではなくその売買代金請求権であること,又は,②本件株式自体が相続財産であるとしても,亡AとCとの間に本件株式の売買予約が存在していたこと(すなわち,本件株式は当該売買予 係る相続財産は本件株式自体ではなくその売買代金請求権であること,又は,②本件株式自体が相続財産であるとしても,亡AとCとの間に本件株式の売買予約が存在していたこと(すなわち,本件株式は当該売買予約による制約を受けるものであること)が確定し,いずれにしても,本件相続開始時における本件株式の価額(時価)が上記取得価格(平均 価格)である1株当たり642円であったことが確定したものである。なお,①につき,本件株式の株券の交付がされていなかったとしても,税法上資産の譲渡を認識するために株券の交付が必要なわけではない。また,②につき,当該売買予約の目的物(本件株式154万6668株)及び代金額(本件株式の取得価格(平均価格)すなわち1株当たり642円)は確定していたし,予約完結権をCが有していたことは明らかであるから,予約契約の成立要件を欠くものではない。 前記(1)のとおり,通則法23条2項1号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」の「事実」とは,その事実により特定の課税計算の内容を明確に左右するようなものを含むものと解すべきであるところ,別訴判決は,上記のような内容のものであるから,同号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」に該当する。 このように解することは,青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号に規定する「判決」に当たるとした最高裁昭和51年(行ツ)第98号同57年2月23日第三小法廷判決・民集36巻2号215頁(以下「昭和57年最判」という。),法人税申告書上の所得税額控除額の記載の誤りを理由とする更正の請求につき,法人税法68条3項の趣旨に反するということはできず,通則法23条1項1号所定の要件を満たすとした最高裁平成19年(行ヒ)第28号同21年7月10日第二小 の記載の誤りを理由とする更正の請求につき,法人税法68条3項の趣旨に反するということはできず,通則法23条1項1号所定の要件を満たすとした最高裁平成19年(行ヒ)第28号同21年7月10日第二小法廷判決・民集63巻6号1092頁(以下「平成21年最判」という。)等の裁判例とも整合的である。 (4) やむを得ない理由があること通則法23条2項1号に基づく更正の請求をする場合につき,同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由が必要であると解したとしても,原告は,同項1号に基づいて第一次更正の請求をしたが,それが認められなかったが故に別訴を提起し,別訴判決によってやむ を得ず本件更正の請求をしたものであって,やむを得ない理由がある。 (5) 結論以上のとおり,別訴判決は通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当するから,同号に基づく本件更正の請求は適法である。 (被告の主張)(1) 通則法23条2項の趣旨等通則法23条1項の規定が,納税者による更正の請求を原則として法定申告期限から1年以内に限っているのに対し,同条2項は,後発的事情によってその課税の前提となった経済的成果の基因たる私法上の事実関係に変動が生じた場合に,変動後の事実関係に適合せしめたるための納税者の救済措置を定めるものであり,法定申告期限から1年を経過した後であっても,例外的に更正の請求ができる場合があることを規定している。 そして,通則法23条2項1号にいう「判決」とは,申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実についての私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味しており,また,同項の規定の趣旨と各列挙事由の内容に照らすと,同項1号の「判決 又は税額等の計算の基礎となった事実についての私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味しており,また,同項の規定の趣旨と各列挙事由の内容に照らすと,同項1号の「判決」に基づいて更正を請求するためには,当該訴訟が基礎事実の存否,効力等を直接の審理の対象とし,判決により基礎事実と異なることが確定されるとともに,申告時,納税者が,基礎事実と異なることを知らなかったことが必要である。 (2) 別訴判決が「判決」に該当しないことア前記(1)のとおり,通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当するというためには,当該判決に係る訴訟において,課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の存否,効力等が直接,審理の対象とされていることが必要である。 イしかし,別訴は,原告が,①主位的に,本件各譲渡契約に当たり,Cらの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式をCに譲渡させられたとし て,不法行為に基づく損害賠償請求を,②予備的に,原告には,亡AとCとの間に本件株式を取得価格でCに譲渡する旨の合意が存在しないのに存在したとの錯誤があったため,Cとの間の本件各譲渡契約は無効であるとして,不当利得に基づく返還請求をした事案である。かかる訴えは,原告が損害賠償又は不当利得返還を求めた民事訴訟法上のいわゆる給付の訴え(給付訴訟)であって,本件株式の帰属に係る事実の存否や効力,本件株式の時価について直接審理の対象としたものではない。 したがって,別訴判決は,通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当しない。 ウ原告が引用する昭和57年最判は,そもそも,原告が主張するように「青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号にいう『判決』に当たる」などと明示的に判断をしたもの 該当しない。 ウ原告が引用する昭和57年最判は,そもそも,原告が主張するように「青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号にいう『判決』に当たる」などと明示的に判断をしたものではない。また,青色申告承認の取消処分に係る訴訟の場合には,青色申告書による申告の承認を得ているか否かという事実,すなわち,通則法23条2項1号の「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」が直接審理の対象となっており,訴訟の結果,当該計算の基礎としたところと異なることが確定することがあり得ることから,同号による更正の請求が認められる余地があるとしても,別訴においては,本件相続税の計算の基礎となった本件株式の帰属に係る事実の存否等が直接審理の対象とされていないのであるから,本件相続税の計算の基礎となった事実が別訴判決によって異なることが確定することはあり得ない。 また,原告がそのほかに引用する平成21年最判等の裁判例は,通則法23条1項1号に関する事案のものであるなど,同条2項1号にいう「判決」該当性に係る被告の主張と抵触するものではない。 (3) 別訴判決によって「申告(略)に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」 とはいえないことア別訴判決は,原告のCに対する本件株式の譲渡に際し,虚偽の説明がされたか否かという争点について判断するに当たって,Cの役員であるG及びHが原告に対して行った説明が虚偽ではないと評価するに当たり,その前提事実として,「Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立したといえる」こと等を判示したものにすぎず,亡Aの生前において,亡AとCとの間で本件株式に関して り,その前提事実として,「Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立したといえる」こと等を判示したものにすぎず,亡Aの生前において,亡AとCとの間で本件株式に関して,何らかの契約関係が存在していたか否か,存在していたとしてどのような契約であったと認められるか,その契約を前提とした場合に,本件相続時において原告が本件株式の帰属主体であったといえるか否か,本件株式の時価が幾らであったかなどについて判示したものではない。別訴は,あくまでも,C側の原告に対する説明内容が虚偽であったか否かが争点であり,亡Aの生前において亡AとCとの間で本件株式についていかなる契約関係があったかが直接の審理の対象となっていたものではない以上,この点について判示されていないことは,当然のことである。 したがって,別訴判決は,本件相続時における本件株式の価額が1株当たり642円であったことを確定したなどとは到底いえないし,そのほか,本件申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なることを確定したものとはいえない。 イさらに,別訴判決の判示内容から,本件株式の売買契約又は売買予約が成立していたとは認められない。 すなわち,本件相続開始当時,株式の譲渡については,「株式ヲ譲渡スニハ株券ヲ交付スルコトヲ要ス」(平成17年法律第87号による改正前の商法205条1項)と規定されており,株券の交付が権利移転の成立要件であると解されていたところ,別訴判決によっても,生前に亡AからCに対して本件株式に係る株券が交付された事実を認めることはできないか ら,別訴判決の判示内容によって亡AとCとの間で本件株式の売買契約が成立していたとはいえない。したがって,別訴判決により本件株式に係る売買契約が成 が交付された事実を認めることはできないか ら,別訴判決の判示内容によって亡AとCとの間で本件株式の売買契約が成立していたとはいえない。したがって,別訴判決により本件株式に係る売買契約が成立していたと認定されたとする原告の主張は理由がない。 また,別訴判決が認定した事実だけでは,売買予約の目的物である本件株式の株数や代金額のほか,売買予約の重要な内容と解される予約完結権を亡AとCのいずれが有するのか,あるいは双方が有するのか等について何ら明らかとなっていないことからすると,別訴判決により本件株式に係る売買予約が成立していたと認定されたということはできない。加えて,本件各譲渡契約書に売買予約に係る記載がないことは,そもそも,客観的事実としても,亡AとCとの間において売買予約が締結されていなかったことを示すものにほかならない。なお,仮に本件株式に係る売買予約が成立していたとしても,売買予約の成立は,当該売買予約に係る財産の権利関係に直ちに影響を与えるものではないから,本件株式の評価額が評価通達に定める評価方法により算出された1株当たり1083円であることに変わりはない。 ウ以上のとおり,別訴判決によって「申告(略)に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(通則法23条2項1号)ということはできない。 (4) 結論以上のとおり,別訴判決は,通則法23条2項1号に規定する場合に当たるものではない。したがって,本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとしてされた本件通知処分は適法である。 5 税額等に関する当事者の主張なお,当事者が主張する原告の本件相続税に係る課税価格及び納付すべき相続税額は,次のとおりである。 き理由がないとしてされた本件通知処分は適法である。 5 税額等に関する当事者の主張なお,当事者が主張する原告の本件相続税に係る課税価格及び納付すべき相続税額は,次のとおりである。 (被告の主張) 原告の本件相続税に係る課税価格及び納付すべき相続税額は,別表2記載のとおり(課税価格54億1034万8000円,納付すべき相続税額26億0191万1300円)であり,その詳細は別紙2記載のとおりである。 (原告の主張)原告の本件相続税に係る課税価格及び納付すべき相続税額は,別表4の「請求額」欄に記載のとおり(課税価格50億6930万8000円,納付すべき相続税額24億3103万3200円)である。 第3 当裁判所の判断 1 通則法23条2項の意義等通則法23条2項は,申告等の時には予想し得なかった事態その他納税義務者が同条1項の更正の請求をしなかったのもやむを得ないと考えられる事由が後発的に生じたことにより,当該申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎に変動が生じた場合に,確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるため,同条1項所定の更正の請求の期間経過後であっても更正の請求をすることを認めて,納税義務者の権利救済の途を拡充したものと解される。 そして,本件更正の請求は,通則法23条1項所定の更正の請求の期間経過後に,別訴判決がされたことを理由に,同条2項1号に基づいてされたものであるところ(前記前提事実(6)ア),本件更正の請求が同号の要件を満たして適法なものであるといえるためには,別訴判決により「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)といえる必要があり,また,上記の るためには,別訴判決により「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)といえる必要があり,また,上記のような同項の制度趣旨からすれば,同条1項所定の更正の請求の期間経過後に当該理由に基づく更正の請求をすることにつきやむを得ない理由があるといえる必要があるものと解される(最高裁平成13年(行ヒ)第230号同15年4月25日第二小法廷判決・裁判集民事209号689頁参照)。 2 別訴判決の内容 そこで,別訴判決について見ると,別訴の内容は前記前提事実(5)のとおりであり,別訴判決の具体的内容は次の(1)ないし(3)のとおりである(甲1。なお,別訴判決中の証拠の記載は省略する。また,「原告」は原告を,「A」は亡Aを,「被告会社」はCを,「G」はCの取締役会長であったGを,「H」はCの取締役副会長であったHを,それぞれ指している。)。 (1) すなわち,まず,争いのない事実等として,「Aの相続財産のうちにBの株式154万6668株(以下「本件株式」という。)があり,原告及びDは77万3334株ずつ取得した。」,「平成17年2月25日,原告及びDは,本件株式を共同して譲渡代金9億9269万0856円で被告会社に譲渡し,同月27日,Bはこの株式譲渡を取締役会で承認した。」等の事実を認定している。 (2) そして,「争点(1)(被告会社に対する本件株式の譲渡に際し,虚偽の説明がされたために適正価格を大幅に下回る対価で譲渡することとなったか)」につき,「平成16年5月ころ,Aは,当時,被告会社の代表取締役であったGとHに対し,『Bの株を買った値段で戻すよ。』と言った。」,「平成17年7月23日ころ,(略),Hが,原告に対し,Aが か)」につき,「平成16年5月ころ,Aは,当時,被告会社の代表取締役であったGとHに対し,『Bの株を買った値段で戻すよ。』と言った。」,「平成17年7月23日ころ,(略),Hが,原告に対し,Aが本件株式を取得した経緯を説明し,本来は被告会社が取得すべき株式であり,Aの本件株式取得が問題視されかねないこともあり,Aが被告会社に戻すと言っていたことを告げた上,本件株式の被告会社へのAの取得価格(平均価格642円)での譲渡を要請した。また,Gは『決まっていた話なんだよな』と言った。」等の具体的な認定事実を前提として,「Aは,生前,本件株式をその取得価格(平均価格)で被告会社に譲渡することを被告会社の代表権を有するGとHに申し入れていたものである。Aが被告会社の創業者でワンマン経営者であり,その命令は社内において絶対的であったこと,申入れの内容はGやHの意向にも合致していたことからすると,このAの申入れによって,口頭で,Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が 成立したといえる。Aの死後,GとHは,これを原告に説明し,その結果,原告は本件株式の被告会社への譲渡の具体的手続をとっているが,GとHの説明内容は,Aの生前にAと被告会社との間でされた合意の履行を求めるという点で何ら虚偽であったとはいえない。よって,被告会社が虚偽の説明をしたとする原告の主張は理由がない。」と判示している。なお,上記判示中の「被告」は「被告会社」(C)を指すものと解される。 また,「争点(2)(被告Fに職務上の注意義務違反が認められるか)」につき,「原告は,被告会社が本件株式の譲渡に際し虚偽の説明をしたことを前提として,被告Fに職務上の注意義務違反があったと主張する。しかし,被告会社の説明内容が虚偽であるとは認められない れるか)」につき,「原告は,被告会社が本件株式の譲渡に際し虚偽の説明をしたことを前提として,被告Fに職務上の注意義務違反があったと主張する。しかし,被告会社の説明内容が虚偽であるとは認められないのは前記1で判断したとおりである。よって,その余について判断するまでもなく,被告Fに注意義務違反があるとはいえない。原告の主張は理由がない。」と判示している。なお,「前記1」とは,「争点(1)」に係る判示を指している(以下同じ)。 さらに,「争点(3)(本件株式の譲渡につき原告に錯誤があったか(予備的請求原因))」につき,「原告は,本件株式の譲渡に際し,Aと被告会社との間に本件株式を取得価格で被告会社に譲渡する旨の合意が,存在しないにもかかわらず存在したものと誤信して錯誤におちいったと主張する。しかし,前記合意が存在しないとはいえないのは前記1で認定したとおりである。よって,原告の主張は前提を欠き,理由がない。」と判示している。 (3) その上で,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却するとの結論を示している。 3 別訴判決の通則法23条2項1号該当性(1) 原告の主張原告は,別訴判決により,①本件相続に係る相続財産は本件株式自体ではなくその売買代金請求権であること,又は,②本件株式自体が相続財産であるとしても,亡AとCとの間に本件株式の売買予約が存在していたこと(な お,以下,「①」,「②」は上記の①,②を指すこととする。)が確定し,いずれにしても,本件相続開始時における本件株式の価額(時価)が1株当たり642円であったことが確定したものであるから,別訴判決は通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当する旨を主張する。 (2) ①についてア本件申告は,本件株式が本件相続に たり642円であったことが確定したものであるから,別訴判決は通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当する旨を主張する。 (2) ①についてア本件申告は,本件株式が本件相続に係る相続財産に含まれるものとして,その価額を相続により取得した財産の価額に計上し,これに基づいて課税標準等及び税額等を計算することによりされたものであるところ(前記前提事実(3)イ),①に係る原告の主張は,本件株式が亡Aの相続財産に含まれることを「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」(通則法23条2項1号)とし,別訴判決により,本件株式は本件相続開始時には既にCに譲渡されていて亡Aの相続財産に含まれないこと(亡Aの相続財産に含まれるのはCに対する本件株式の売買代金請求権であること)が確定した旨をいうものと解される。 イしかし,別訴の訴訟物は,本件相続開始後にされた本件株式の本件各譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり(前記前提事実(5)),本件相続開始時における本件株式の帰属自体ではなく,それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから,別訴判決における訴訟物に関する判断によって,本件相続開始時における本件株式の帰属が確定するものということはできない。 また,別訴判決の理由中の判断を見ても,亡AとCとの間で,亡Aの生前に,「口頭で,Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示はあるものの(前記2(2)),これに先立ち,争いのない事実等として,亡Aの相続財産に本件株式が含まれ ていること及び本件相 取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示はあるものの(前記2(2)),これに先立ち,争いのない事実等として,亡Aの相続財産に本件株式が含まれ ていること及び本件相続人らが本件相続開始後である平成17年2月25日に本件株式をCに譲渡したことを認定している(前記2(1))。そうすると,上記判示部分は,あくまでも,本件株式が亡Aの相続財産に含まれ,これを本件相続により本件相続人らが相続したことを前提に,その後にされた本件各譲渡契約につき,G及びHが原告に対して本件株式をCに譲渡することを要請した際の説明内容について不法行為法上違法といえるような虚偽のものと評価することはできないことや,本件各譲渡契約の動機において原告に錯誤があったとは認められないことをいうための説示にすぎないものと解され(上記判示部分の「合意」とは,契約の成立まで当然に意味するものではない前法律的な意味での事情を指すものと解し得る。),本件株式が亡Aの生前に亡AからCに譲渡されたことをいう趣旨のものとは解されない。すなわち,別訴判決は,その理由中にせよ,本件株式が本件相続開始時には既にCに譲渡されていて亡Aの相続財産に含まれないことを判示したものということはできない。 したがって,いずれにしても,別訴判決により,本件株式が亡Aの相続財産に含まれないことが確定したものということはできない。すなわち,①につき,別訴判決により「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(通則法23条2項1号)ということはできない。 (3) ②についてア本件申告は,本件株式の価額を評価通達の定めに従って1株当たり1083円であると算出し,その価額を相続 が確定した」(通則法23条2項1号)ということはできない。 (3) ②についてア本件申告は,本件株式の価額を評価通達の定めに従って1株当たり1083円であると算出し,その価額を相続により取得した財産の価額に計上し,これに基づいて課税標準等及び税額等を計算することによりされたものであるところ(前記前提事実(3)イ),②に係る原告の主張は,本件株式に係る売買予約の存在が本件株式の価額の評価に影響を与えるものであることを前提にして,本件株式について亡AとCとの間に売買予約が存在し なかったことを「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」(通則法23条2項1号)とし,別訴判決により,本件株式について亡AとCとの間に売買予約が存在していたこと(すなわち,本件株式は本件相続開始当時売買予約による制約を受けていたこと)が確定した旨をいうものと解される。 イしかし,前記(2)のとおり,別訴の訴訟物は,本件相続開始後にされた本件株式の本件各譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり,本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否自体ではなく,それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから,別訴判決における訴訟物に関する判断によって,本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否が確定するものということはできない。 また,別訴判決の理由中の判断には,亡AとCとの間で,亡Aの生前に,「口頭で,Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示がある(前記2(2))。しかしながら,(ア)判決中に整理されたC ,亡AとCとの間で,亡Aの生前に,「口頭で,Aの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で被告に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示がある(前記2(2))。しかしながら,(ア)判決中に整理されたCの主張において,亡Aとの間で本件株式の売買予約が成立していた旨の明確な主張はされておらず,Cは「亡Aが平成16年5月頃に本件株式を買った値段で戻すよと言った」旨の事実を主張するにとどまっていること,(イ)争点に対する判断においても,上記判示部分の「合意」が本件株式の売買予約の成立を意味するものであることは何ら示されていないこと,(ウ)原告からCへの本件株式の譲渡の原因は平成17年2月25日の本件各譲渡契約であると認定されており(前記2(1)),それが売買予約の存在を前提とした売主又は買主の予約完結権の行使によるものであることも何ら示されていないこと(甲1)からすると,上記判示部分は,本件各譲渡契約につき,G及びHが原告に対して本件株式をCに 譲渡することを要請した際の説明内容について不法行為法上違法といえるような虚偽のものと評価することはできないことや,本件各譲渡契約の動機において原告に錯誤があったとは認められないことをいうための説示にすぎないものと解され(前記(2)のとおり,上記判示部分の「合意」とは,契約の成立まで当然に意味するものではない前法律的な意味での事情を指すものと解し得る。),亡AとCとの間に本件株式の売買予約が成立したことをいう趣旨のものであることが明らかであるとまではいえない。 したがって,本件株式についての売買予約の存否が「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」(通則法23条2項1号)に当たるかどうかはさておき,いずれにしても,別訴判決により,本件株式について亡AとCと 予約の存否が「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」(通則法23条2項1号)に当たるかどうかはさておき,いずれにしても,別訴判決により,本件株式について亡AとCとの間に売買予約が存在していたことが確定したものということはできない。すなわち,②につき,別訴判決により「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)ということはできない。 ウところで,原告は,本件申告につき,通則法23条1項所定の更正の請求の期間内である平成18年7月25日,本件申告における本件株式の評価額に誤りがあること等を理由として,第一次更正の請求をしている。この第一次更正の請求において,原告は,Cから,本件株式につきCが亡Aの平均取得価格(1株当たり642円)で買い戻すとの約定があったとの説明を受けたため,やむなく本件各譲渡契約に応じたなどとして,本件株式の評価額は,評価通達の定めに従って算出した1株当たり1083円ではなく,本件各譲渡契約における1株当たりの譲渡価額642円とすべき旨を主張し(前記前提事実(4)ア,乙8),更に,第一次異議申立て及び第一次審査請求において,本件株式の評価額を1株当たり642円とすべき理由として,「本件株式は被相続人がその取得時において『譲渡時(相続 を含む)には当然の所有権者である株式会社Cに平均取得価額で買戻させる』との約定があり,相続人はその説明を承知して約定を履行した」こと等を主張していた(乙10,11)。これらの主張は,②に係る原告の主張(亡AとCとの間に本件株式につき1株当たり642円での売買予約が存在していたため,本件相続開始時における本件株式の価額(時価)は1株当たり642円で 0,11)。これらの主張は,②に係る原告の主張(亡AとCとの間に本件株式につき1株当たり642円での売買予約が存在していたため,本件相続開始時における本件株式の価額(時価)は1株当たり642円であったこと)と実質的に同一であるか又は実質的に同一の事実関係に基づくものである。 そうすると,仮に別訴判決により②の事実が確定したと解するとしても,それは,原告にとって,予想し得なかった事態というよりも,むしろ第一次更正の請求に係る手続当時から自ら主張していた内容に沿うものであって,通則法23条1項所定の更正の請求に係る手続において②の事実を理由とする主張をすることも可能であったというべきであるから,同項所定の更正の請求の期間経過後に改めて当該理由に基づく更正の請求をすることにつき,やむを得ない理由があるということはできないと解される。 (4) 昭和57年最判及び平成21年最判について原告は,別訴判決が通則法23条2項1号に規定する場合に該当すると解すべき根拠として,昭和57年最判及び平成21年最判を挙げる。 しかし,昭和57年最判は,青色申告書による法人税の確定申告につき青色申告承認の取消処分後に法人税法(昭和43年法律第22号による改正前のもの)57条の規定による繰越欠損金の損金算入を否認して更正処分がされ,次いで青色申告承認の取消処分が課税庁により職権で取り消された場合,被処分者は,通則法23条2項の規定により減額更正の請求をすべきであって,同更正処分の無効確認訴訟において繰越欠損金の損金不算入を無効事由として主張することはできない旨を判示したものであり,そもそも,何らかの判決が同項1号に規定する「判決」に該当するかどうかを問題としたものではない。また,昭和57年最判の判示が青色申告承認の取消処分の取 て主張することはできない旨を判示したものであり,そもそも,何らかの判決が同項1号に規定する「判決」に該当するかどうかを問題としたものではない。また,昭和57年最判の判示が青色申告承認の取消処分の取消判 決が同号に規定する「判決」に該当することを含意しているとしても,それは,青色申告承認は青色申告に係る種々の特例の適用の要件となるものであり,青色申告承認が取り消されているか否かという事実は「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」(同号)に該当するといえるところ,青色申告承認の取消処分の取消判決がされれば,遡って青色申告承認が取り消されていないこととなり,上記事実が「当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)といえるからであると解され,既に述べたとおり「申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」とはいえない別訴判決の場合と状況を異にするのは明らかである。 また,平成21年最判は,法人税に係る更正の請求につき,通則法23条1項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものであって,同条2項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものではなく,別訴判決が同号に規定する場合に該当するかどうかの判断に直接影響を与えるものではない。 したがって,昭和57年最判及び平成21年最判は,いずれも,別訴判決が通則法23条2項1号に規定する場合に該当すると解すべき根拠となるものではない。 (5) 小括以上のとおりであるから,原告の主張を検討しても,本件更正の請求につき,別訴判決を根拠として,通則法23条2項1号の要件を満たして適法なものということはできない。 4 本件 5) 小括以上のとおりであるから,原告の主張を検討しても,本件更正の請求につき,別訴判決を根拠として,通則法23条2項1号の要件を満たして適法なものということはできない。 4 本件通知処分の適法性以上のとおり,本件更正の請求は,通則法23条1項所定の更正の請求の期間経過後にされたものであり,同条2項1号の要件を満たして適法なものとい うこともできないから,これに対して更正をすべき理由がないとしてされた本件通知処分は適法である。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官貝阿彌亮 裁判官黒田吉人は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官谷口豊 別紙2被告主張額(1) 課税価格の合計額(別表2順号10の「合計額」欄の金額)108億2898万4000円上記金額は,本件相続人らが,相続により取得した次のアの財産の価額から,各人が負担した次のイの債務等の金額を控除し,次のウの相続開始前3年以内の贈与財産価額を加算した後の各人の課税価格につき,通則法118条1項の規定により,本件相続人ら各人ごとに1000円未満の端数金額を切り捨てた後の次の各金額(別表2順号10の本件相続人らの各課税価格)を合計した金額である。 原告 54億1034万8000円他の相続人(D) 54億1863万6000円ア相続により 続人らの各課税価格)を合計した金額である。 原告 54億1034万8000円他の相続人(D) 54億1863万6000円ア相続により取得した財産の価額(別表2順号6の「合計額」欄の金額)136億1135万8664円上記金額は,本件相続人らが本件相続により取得した財産の総額であり,その内訳は次のとおりである。 (ア) 土地の価額(別表2順号1の「合計額」欄の金額)1億7901万1259円上記金額は,本件申告書第11表の種類「土地」欄における各土地に係る価額の合計額と同額である。 (イ) 家屋・構築物の価額(別表2順号2の「合計額」欄の金額)3750万4990円上記金額は,本件申告書第11表の種類「家屋・構築物」欄における家屋の価額と同額である。 (ウ) 有価証券の価額(別表2順号3の「合計額」欄の金額)70億6311万9347円 上記金額は,本件申告書第11表の種類「有価証券」欄における各株式等に係る価額の合計額と同額である。 なお,本件株式そのものが被相続人(亡A)に帰属する相続財産であり,その価額は,評価通達に定める類似業種比準価額である1083円に,154万6668株を乗じた16億7504万1444円である。 (エ) 現金・預貯金等の価額(別表2順号4の「合計額」欄の金額)3億3301万6431円上記金額は,本件申告書第11表の種類「現金・預貯金等」欄記載の現金及び預金に係る各価額の合計額と同額である。 (オ) その他の財産の価額(別表2順号5の「合計額」欄の金額)59億9870万6637円上記金額は,本件申告書第11表の種類「家庭用財産」及び「その他の財産」欄記載の各財産に係る各価額の合計額に,亡Aが株式会社Eに対し 表2順号5の「合計額」欄の金額)59億9870万6637円上記金額は,本件申告書第11表の種類「家庭用財産」及び「その他の財産」欄記載の各財産に係る各価額の合計額に,亡Aが株式会社Eに対して有していた貸付金2億5050万円を加えた金額である。 イ債務等の金額(別表2順号7の「合計額」欄の金額)28億4267万7337円上記金額は,本件相続人らが承継又は負担する亡Aの債務及び葬式費用の金額であり,本件申告書第13表のうち,表「3 債務及び葬式費用の合計額」の⑦「(各人の合計)」欄の金額と同額である。 ウ純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額(別表2順号9の「合計額」欄の金額)6030万3618円上記金額は,相続税法(平成17年法律第102号による改正前のもの。 以下同じ。)19条1項の規定により他の相続人の課税価格に加算する本件相続開始前3年以内に他の相続人が亡Aから贈与を受けた財産の価額である。 その内訳は,本件申告書14表の表「1 純資産価額に加算される暦年課税 分の贈与課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額の明細」の④「(各人の合計)」欄の金額1512万円に,そのほか本件相続開始前3年以内に他の相続人が亡Aから贈与を受けたものと認められる金員4518万3618円を加算した金額である。 (2) 原告の納付すべき相続税額本件相続に係る原告の納付すべき相続税額は,相続税法15条ないし20条の2の各規定に基づき,次のとおり算定した26億0191万1300円である。 ア課税遺産総額(別表3順号3の金額)107億5898万4000円上記金額は,上記(1)の課税価格の合計額から,相続税法15条の規定により,5000万円と1000万円に本件相続に係る相続人の数である2を乗じた金額2000万円 )107億5898万4000円上記金額は,上記(1)の課税価格の合計額から,相続税法15条の規定により,5000万円と1000万円に本件相続に係る相続人の数である2を乗じた金額2000万円との合計額7000万円を控除した後の金額である。 イ法定相続分に応ずる取得金額(別表3順号5の各欄の金額)原告(法定相続分2分の1) 53億7949万2000円他の相続人(法定相続分2分の1) 53億7949万2000円上記各金額は,相続税法16条の規定により,本件相続人らが上記アの金額を民法900条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額(ただし,昭和34年1月28日付け直資10による国税庁長官通達「相続税法基本通達の全部改正について」(平成17年5月31日付け課資2-4ほかによる改正前のもの)16-3の取扱いにより,各相続人ごとに1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)である。 ウ相続税の総額(別表2順号11の金額及び別表3順号7の金額)52億8549万2000円上記金額は,上記イの各金額に,それぞれ相続税法16条に定める税率を乗じて算出した金額の合計額である。 エ算出税額(別表2順号13の「原告」欄の金額) 26億4063万1803円上記金額は,相続税法17条の規定により,上記ウの金額に,上記(1)の課税価格の合計額108億2898万4000円のうち原告に係る課税価格54億1034万8000円の占める割合(別表2順号12の「原告」欄のあん分割合)を乗じて算出した金額である。 オ税額控除額(別表2順号14の「原告」欄の金額)3872万0500円上記金額は,本件申告書第8表の表「1 外国税額控除」中の原告に係る「⑧ 控除額」欄の金額と同額である。 カ ある。 オ税額控除額(別表2順号14の「原告」欄の金額)3872万0500円上記金額は,本件申告書第8表の表「1 外国税額控除」中の原告に係る「⑧ 控除額」欄の金額と同額である。 カ原告の納付すべき相続税額(別表2順号15の「原告」欄の金額)26億0191万1300円上記金額は,上記エの金額から上記オの金額を控除した後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により,100円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)である。 以上
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