判決平成14年10月2日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第2259号建物収去土地明渡請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは連帯して,原告らに対し,別紙物件目録3記載の建物を収去して,同目録1記載の土地を明け渡せ。 被告らは連帯して,原告らに対し,平成12年9月1日より上記明渡完了まで1か月につき1万8000円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,土地所有権に基づく妨害排除請求として,同土地上に建物を所有する被告らに対して,建物収去土地明渡しを求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償請求として,同明渡しを終えるまでの間の賃料相当損害金の支払いを求める事案である。 1 争いのない事実等(証拠の標目の記載のない事実は当事者間に争いがなく,証拠の標目の記載のある事実は証拠によって容易に認定できる事実である)(1) 当事者本件訴訟の当事者,関係者の親族関係は別紙親族関係図のとおりである。 原告Aは,亡B・亡C夫妻の3男・亡Dの妻であり,その余の原告は亡Dと原告Aの間の子である。被告Eは亡B・亡C夫妻の5女であり,被告Fは被告Eの子である。 (2) 別紙物件目録4記載の換地前本件土地(以下「換地前本件土地」という)はもともと亡Bが所有していた。後述のとおり,原告らは亡Bから本件土地の贈与を受け,現在これを所有していると主張している。 (3) 換地前本件土地は,平成11年9月1日,土地区画整理法による換地処分 と亡Bが所有していた。後述のとおり,原告らは亡Bから本件土地の贈与を受け,現在これを所有していると主張している。 (3) 換地前本件土地は,平成11年9月1日,土地区画整理法による換地処分(以下「本件換地処分」という)により,別紙物件目録1記載の本件土地(以下「本件土地」という)となった。 (4) 被告らは現在,本件土地上において,別紙物件目録3記載の被告ら所有建物(以下「被告ら所有建物」という)を所有し(共有持分各3分の1ずつ),本件土地を占有している。 被告ら所有建物は元々,昭和35年8月23日に建築され,同月31日に,亡B・亡C夫妻の6男・G名義で保存登記された1戸の建物(以下「北側建物」という)の一部であったが,昭和50年3月12日に別紙物件目録7記載の建物(以下「2の3の建物」という)と同目録8記載の建物(以下「2の4の建物」という)に区分・分筆登記され,以下の経緯で,2の3の建物は亡Dの所有に,2の4の建物は被告らの所有にそれぞれ帰することになり,本件換地処分を経て,2の4の建物の所在及び家屋番号が変更され,被告ら所有建物となったものである。 昭和50年3月3日 Gが亡Dとの間で,北側建物の東半分を亡D所有の財産と交換(乙2)同日 Gが被告らに対し北側建物の西半分を贈与(乙3)昭和50年3月12日北側建物が,2の3(東側)と2の4(西側)に区分・分筆登記される(乙17)昭和50年3月24日 2の3の建物につき,Gから亡Dへの所有権移転登記手続(乙2)同日 2の4の建物につき,Gから被告らへ所有権移転登記手続(乙3)平 の3の建物につき,Gから亡Dへの所有権移転登記手続(乙2)同日 2の4の建物につき,Gから被告らへ所有権移転登記手続(乙3)平成11年9月1日本件換地処分の結果,2の4の建物の所在及び家屋番号が現在の被告ら所有建物の所在及び家屋番号に変更本件土地上には,北側建物の南側にも,昭和35年2月5日に建築され,昭和39年5月4日に亡B名義で保存登記された建物(以下「南側建物」という)があった。南側建物は,昭和45年7月27日に亡Cに売却された後,昭和50年1月14日に別紙物件目録5記載の建物(以下「2の1の建物」という)と別紙物件目録6記載の建物(以下「2の2の建物」という)に区分・分筆登記され,西半分(2の1の建物)は亡B・亡C夫妻の6女・H及びその家族に,東半分(2の2の建物)は亡B・亡C夫妻の長女・I及びその家族にそれぞれ贈与された(乙17ないし19)。 原告らは,本訴と同様に,2の1の建物及び2の2の建物の各所有者に対しても,建物収去土地明渡請求の訴訟を提訴したが,2の1の建物所有者(Hら)との間の裁判においては,Hらと原告らとの間で黙示の使用貸借契約が締結されたという理由により原告らの請求を棄却する1審判決が出され(乙20),原告らが控訴した。また,2の2の建物所有者(Iの遺族ら)との間の裁判では,平成30年12月末日又は建物朽廃時のいずれかが先に到来した時点までの使用貸借契約が存在することを確認する内容の裁判上の和解が成立した(甲20)。 2 争点(1) 亡Bから原告らへの換地前本件土地の贈与ア原告らの主張亡D及び原告らは,亡Bから,昭和50年1月20日,換地前本件土地の贈与 0)。 2 争点(1) 亡Bから原告らへの換地前本件土地の贈与ア原告らの主張亡D及び原告らは,亡Bから,昭和50年1月20日,換地前本件土地の贈与を受けた(亡D及び原告らの持分は各4分の1ずつ)。その後,亡Dが死亡したことにより,亡Dの持分を原告らが相続した。 被告らは,上記贈与当時,亡Bは脳軟化症に罹患して事理弁識能力がなかったというが,当時,亡Bは,脳梗塞により左手足が不自由であったものの,言語障害も痴呆症もなく,判断能力はあった。 従って,現在,本件土地は原告らが所有している。 ところが,被告らは,何らの権限なくして本件土地を占有しているのであるから,原告らは,被告らに対し,本件土地所有権に基づく妨害排除請求として,被告ら所有建物を収去し,本件土地を明け渡すことを求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償請求として,平成12年9月1日から同明渡に至るまで,1か月1万8000円の割合による金員の支払いを求める。 イ被告らの認否亡Bが亡D及び原告らに換地前本件土地を贈与したという主張は否認する。 本件土地について上記贈与の登記がなされているが,これは,亡Dが,保管していた亡Bの実印等を冒用して行ったものである。亡Bは昭和46年以来脳軟化症に罹患していたため,事理弁識能力を有していなかった。 むしろ,被告らは,昭和50年3月3日ころ,2の4の建物の贈与を受ける際に,その敷地を取得することを亡Dその他の関係者の前で合意したのであるから,2の4の建物すなわち現在の被告ら所有建物の敷地の所有権を有している。 (2) 被告らの取得時効ア被告らの主張 地を取得することを亡Dその他の関係者の前で合意したのであるから,2の4の建物すなわち現在の被告ら所有建物の敷地の所有権を有している。 (2) 被告らの取得時効ア被告らの主張仮に被告らが被告ら所有建物の敷地の贈与を受けた事実が認められないとしても,被告らは,前記のとおり,昭和50年3月3日ころ,2の4の建物の贈与を受ける際に,その敷地を取得することを亡Dその他の関係者と合意したことによって,2の4の建物すなわち現在の被告ら所有建物の敷地部分については自己の所有と信じ,所有の意思を持って占有してきたのであるから,10年ないし20年の経過によって,本件土地の敷地部分を時効取得している。 イ原告らの認否被告らは,占有している土地が亡Bのものであると認識していたのであって,他主占有であったから取得時効は成立しない。 (3) 被告らの使用借権ア被告らの主張仮に,被告らに被告ら所有建物の敷地部分の所有権が認められなかったとしても,被告らは同部分について使用借権を有している。 被告らは,昭和50年3月3日に本件建物の贈与を受け,同月24日に移転登記手続を完了した。これらの手続の際には,亡Dも同行し,そのことを認識,了解したのであるから,亡D及び原告らと被告らとの間において,黙示の使用貸借契約が締結されたというべきである。 また,原告らは,区画整理事業に伴う換地について,神戸市に対し,平成3年2月25日付の誓約書を差し入れている。その中で,原告らは,換地前本件土地は,原告らの住居以外に,借地人が家屋を建築し使用していることを理由に,現況に準じた境界線で仮換地を決定することを求めている。従って,原告らが被 書を差し入れている。その中で,原告らは,換地前本件土地は,原告らの住居以外に,借地人が家屋を建築し使用していることを理由に,現況に準じた境界線で仮換地を決定することを求めている。従って,原告らが被告らを換地前本件土地の賃借人として認めていたことが明らかである。そして,本件換地処分後の現在も,本件土地の使用状況は全く変わりがないのであるから,このことからも,原被告間に本件土地について使用貸借が成立していることが明らかである。 イ原告らの認否否認する。 北側建物は,換地前本件土地と,その西隣にある,Gが所有していた東雲通6丁目1番地の1の仮換地として指定を受けていた土地とにまたがって建てられたものであった。そして,北側建物が,東側の2の3の建物と西側の2の4の建物に区分・分筆されたことにより,2の4の建物は,上記仮換地指定地の上に存することになった。ところが,Gが,昭和46年ころ,神戸市に対して仮換地の指定変更を求め,神戸市が仮換地を上記指定地と異なる土地に変更したため,2の4の建物の敷地は,誰の仮換地でもない神戸市の保留地となり,2の4の建物は敷地の使用権を喪失してしまったものである。 以上の次第で,亡Dらが元々所有権を有しない2の4の建物の敷地について,亡D及び原告らが被告らとの間で使用貸借契約を締結できるはずがないのであって,被告らの主張は失当である。 (4) 本訴請求の権利濫用性,信義則違反性ア被告らの主張換地前本件土地を亡Dらに贈与した亡Bの意思としては,亡Dらが同土地の所有権に基づいて,被告ら,Iら,Hらに対して建物収去土地明渡を求めることは予定していなかったはずである。また,亡Dは,被告らの2の4の建物につい Dらに贈与した亡Bの意思としては,亡Dらが同土地の所有権に基づいて,被告ら,Iら,Hらに対して建物収去土地明渡を求めることは予定していなかったはずである。また,亡Dは,被告らの2の4の建物についての所有権移転登記手続を了解,協力している。さらに,亡Dらは,上記のとおり,神戸市に対しては,被告ら借地人が存在するという現状に応じた境界線で換地処分がなされることを求めているのである。 以上の事実に照らすと,原告らが,被告らに土地使用権限がないからといって明渡しを求めることは権利の濫用であり,信義則違反であるから許されない。 イ原告らの認否否認する。 第3 争点に対する判断 1 亡Bから亡D及び原告らへの換地前本件土地の贈与の有無証拠(甲1,10の1・2,11,33,原告A本人)によれば,亡D及び原告らは亡Bから,昭和50年1月20日に換地前本件土地の贈与を受けた(亡D及び原告らの持分はいずれも4分の1)と認めることができる。また,証拠(甲10の1・2,11,21ないし31,34)によれば,亡Dは,昭和46年ころから亡B・亡Cと同居して生活を共にし,亡B・亡Cの葬儀を主宰していることに鑑みると,亡Dは亡Bの跡取りであったと推認することができるから,亡Bには亡Dに換地前本件土地を贈与したことについて動機も認めることができる。 これに対して,被告らは,当時,亡Bは脳軟化症に罹患して事理弁識能力がなかったのであって,上記贈与は,亡Bの実印を保管していた亡Dらがこれを冒用して行ったものであり,無効である旨主張し,被告E本人も同趣旨の供述をする。 そして,当時,亡Bは脳梗塞,脳軟化症に罹患していたことについては当事者間に争いのないところである。 しかしながら,証拠 たものであり,無効である旨主張し,被告E本人も同趣旨の供述をする。 そして,当時,亡Bは脳梗塞,脳軟化症に罹患していたことについては当事者間に争いのないところである。 しかしながら,証拠(甲18)によれば,被告Eは,原告らと亡Iの遺族との間の別件訴訟においては,昭和50年2月3日,亡Bが自ら遺言書(甲15)を作成し,その内容も理解していたと供述している。そして,本訴における主張との食い違いに関しては,亡Bはぼけていたからいい時もあれば悪い時もあったなどと述べるにとどまるのであって,このような弁解を信用することはできないから,結局,亡Bが事理弁識能力を欠いていた旨の被告Eの供述は信用することができず,その他に亡Bが事理弁識能力を欠いていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,被告らは,本件建物の敷地部分については,昭和50年3月3日ころ,亡Dらその他の関係者との合意によって被告らが取得した旨主張するけれども,かかる合意を認めるに足りる証拠はない。 以上の次第で,亡D及び原告らは亡Bから換地前本件土地の贈与を受けたと認めることができ,その後,亡Dが平成9年12月7日に死亡したことによって,亡Dの持分を原告らが相続したことが認められる。 2 被告ら所有建物の敷地の取得時効の成否被告らは,昭和50年3月3日に本件建物の贈与を受けた際に,本件建物の敷地についても,亡Bから贈与を受けたものと認識して以後占有を続けていたのであるから,それから10年又は20年を経過することによって,本件建物敷地部分を時効取得した旨主張する。 しかしながら,被告Eは,他の兄弟姉妹であるG,I,H,Jとともに,昭和50年1月31日,亡Bの実印を紛失したことを理由にして新たな実印を作成し,換地前本件土地をG名義に た旨主張する。 しかしながら,被告Eは,他の兄弟姉妹であるG,I,H,Jとともに,昭和50年1月31日,亡Bの実印を紛失したことを理由にして新たな実印を作成し,換地前本件土地をG名義にした後に,I,被告E,G,H名義にすることなどを内容とする「制約書」なる書面を作成したり(甲14,弁論の全趣旨),同年2月3日には,亡Bに,換地前本件土地をI,被告E,Hの3人に遺贈する旨「遺言証」なる書面を作成させたり(甲13,弁論の全趣旨)しているのであって,これらの事実からすると,亡Dと,被告Eら兄弟姉妹との間には,亡B及び亡Cの財産,とりわけ,換地前本件土地の取得を巡って反目があったことが認められる。 そして,換地前本件土地の取得についてそのように高い関心を有していた被告Eが,同土地が昭和50年1月20日に亡D及び原告らに贈与され,同年2月27日に移転登記手続も経由されたというのに,そのことをその後長年にわたって全く知らなかったとは考えられないことである。 また,弁論の全趣旨によれば,被告らは本件土地の公租公課を支払ったことがないことが認められる。 以上の事実を総合すると,被告らに,2の4の建物すなわち現在の被告ら所有建物の敷地部分について,所有の意思を認めることはできないから,同土地についての取得時効は成立しない。 3 原告らと被告らとの間の使用貸借の成否(1) 2の4の建物の敷地は換地前本件土地か原告らは,2の4の建物の敷地は換地前本件土地ではなく,Gが仮換地指定を求めていた土地であったが,Gが他の土地に仮換地の指定変更を求めたことによって,神戸市の保留地となってしまったのであって,かかる土地について亡D及び原告らと被告らとの間で使用貸借契約を締結することはあり得ない旨主 であったが,Gが他の土地に仮換地の指定変更を求めたことによって,神戸市の保留地となってしまったのであって,かかる土地について亡D及び原告らと被告らとの間で使用貸借契約を締結することはあり得ない旨主張する。 たしかに,昭和35年8月30日付の分筆登記図(甲7)には,換地前本件土地とその西隣地にまたがって木造二階建建物が建築されている様子が図示されており,かつ,同西隣地には,東雲通6丁目6番地の1という記載があることが認められる。 しかしながら,そもそも,上記分筆登記図は,その作成の趣旨も明確でない,私的に作成された測量図面であるし,上記の記載から直ちに原告らの主張を認めることも困難である。むしろ,神戸市都市計画局区画整理部の清算課長からの調査嘱託の回答結果(乙14の1・2)には,換地前本件土地の西隣地は,K及びLが所有する2の4,2の8の土地であったことが明確に記載されていること,北側建物(乙1),その西半分である2の4の建物(甲3,乙3),南側建物(乙17),その西半分である2の1の建物(乙18)のいずれの登記簿謄本にも,建物の所在は換地前本件土地であると記載されており,神戸市保留地に関する記載は全くないことなどの事実に照らすと,やはり,北側建物は換地前本件土地の上に建てられていたと認めることができる。 (2) そこで,以下,上記認定を前提に,使用貸借契約の成否について検討する。 証拠(甲16の1・2,乙1,5,原告A本人,弁論の全趣旨)によれば,北側建物及び南側建物はいずれも,亡Bが,換地前本件土地の一部を分筆売却して得た資金によって建てられたものであって,G名義で保存登記がされた北側建物についても,実質的には亡B夫妻のものであったことが認められる。 ところで,北側 前本件土地の一部を分筆売却して得た資金によって建てられたものであって,G名義で保存登記がされた北側建物についても,実質的には亡B夫妻のものであったことが認められる。 ところで,北側建物及び南側建物がそれぞれ西半分と東半分とに区分・分筆され,現所有者らが所有するに至るまでの経緯は以下のとおりである。 昭和49年6月30日亡CがHらに対し南側建物の西半分を遺贈(乙6の1・2)同日亡CがIらに南側建物の東半分を遺贈(乙22の1・2)昭和49年10月31日亡C死亡昭和50年1月14日南側建物が2の1の建物と2の2の建物に区分・分筆される(乙1ないし3)昭和50年1月20日亡Bが亡D及び原告らに対し換地前本件土地を贈与(前記認定事実)昭和50年3月3日 Gが,北側建物の東半分を亡Dの所有財産と交換(乙2)同日 Gが被告らに対し北側建物の西半分を贈与(乙3)昭和50年3月12日北側建物が2の3の建物と2の4の建物に区分・分筆される(乙17)昭和50年3月24日 2の4の建物につきGから被告らへ所有権移転登記手続(乙3)同日 2の3の建物につきGから亡Dへの所有権移転登記手続(乙2)昭和50年5月22日 2の1の建物につき亡CからHらへの所有権移転登記手続(乙18)同日 2の2の建物につき亡CからIらへの所有権移転登記手続(乙 月22日 2の1の建物につき亡CからHらへの所有権移転登記手続(乙18)同日 2の2の建物につき亡CからIらへの所有権移転登記手続(乙19)昭和52年9月7日亡B死亡以上のとおり,亡Cの死亡の前後の約1年間に,また,亡Bの死亡の約3年前から約2年前にかけて,亡B及び亡Cが,いちどきに,換地前本件土地及びその上の各建物を子どもたちに分け与え,その後,ほどなく所有権移転登記手続が行われていることに照らすと,これらの一連の不動産の処分はいずれも(G名義の北側建物のGから被告らに対する贈与も含めて),実質的には亡B・亡C夫妻のものであった不動産をなるべく公平に子どもたちに分け与えようという亡B及び亡Cの意思に基づくものであると推認することができる。このことに,亡Cが,H及びIに対し,南側建物の西半分,東半分を,その敷地と共に贈与する旨の遺言書(乙6の1,乙22の1)を作成していること,せっかく北側建物,南側建物を子どもたちに譲渡しても,換地前本件土地の利用権を付与しなければ無意味になってしまうことを併せ考えると,亡B,亡C夫妻の意思としては,換地前本件土地については跡継ぎである亡D及びその家族に贈与するものの,他方で,I,H,被告Eらには換地前本件土地の利用権を与えようと考えていたものと推認される。従って,亡Bは,換地前本件土地を亡Dらに贈与するに際し,亡Dらに対し,I,H,被告Eらに換地前本件土地を使用させるよう申し渡し,亡Dもこれを了解したとみるのが自然である。 また,被告Eは,2の4の建物の移転登記手続を,G,亡Dと共に司法書士事務所に赴いて行ったと供述するところ,被告らに対する2の4の建物の贈与と亡Dに対する2の みるのが自然である。 また,被告Eは,2の4の建物の移転登記手続を,G,亡Dと共に司法書士事務所に赴いて行ったと供述するところ,被告らに対する2の4の建物の贈与と亡Dに対する2の3の建物の交換がいずれも昭和50年3月3日に行われており,これらの不動産の所有権移転登記手続も同月24日に一度に行われていること(法務局の受付番号が連番であることから明らかである)は,上記供述を裏付けるものということができる。そうすると,亡Dは,G(実質的には亡B及び亡C夫妻)が,2の4の建物を被告Eに贈与したことを現認し,かつ,被告Eの換地前本件土地利用について格別異議を述べなかったと認めることができる。 さらに,証拠(乙14の3)によれば,亡D及び原告らは,区画整理事業に伴う換地について,神戸市に対し,平成3年2月25日付の誓約書を差し入れているところ,同誓約書には,換地前本件土地は現に亡Dらの住居のほか借地人が家屋を建築して使用しているので,減歩は土地の使用上支障を生じるおそれがあるので,現況に準じた境界線で仮換地を決定してほしいと述べていることが認められる。このことからすると,亡D及び原告らは,I,H,被告Eらの換地前本件土地使用権を承認していたものと認めることができる。 以上の事実を総合すると,亡D及び原告らは,亡Bから換地前本件土地の贈与を受けるに当たり,被告Eらが換地前本件土地上に2の4の建物を所有して換地前本件土地を無償で使用することについて承諾していたものと認めることができる。そうすると,遅くとも,被告らが2の4の建物の贈与を受けた昭和50年3月3日の時点において,被告らと亡D及び原告らとの間で,2の4の建物の敷地部分について黙示の使用貸借契約が締結されたと認めることができる。そして,上記認定の が2の4の建物の贈与を受けた昭和50年3月3日の時点において,被告らと亡D及び原告らとの間で,2の4の建物の敷地部分について黙示の使用貸借契約が締結されたと認めることができる。そして,上記認定の亡B及び亡Cの意思及びこれを亡Dも了解していたと推認されることに鑑みると,上記使用貸借契約は,少なくとも,2の4の建物すなわち現在の被告ら所有建物が存続し,かつ,被告らがこれを所有する限り存続するものと解すべきである。 そして,上記使用貸借契約は,本件換地処分後の本件土地についても当然に継続すると解される。 4 結論以上の次第で,その余の争点(本件請求の権利濫用,信義則違反性)について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないのでこれを棄却する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官太田敬司
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