令和5(ネ)839 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月3日 名古屋高等裁判所 津地方裁判所 令和2(ワ)564
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判決文本文34,670 文字)

令和5年(ネ)第839号損害賠償請求控訴事件令和6年10月3日名古屋高等裁判所民事第2部判決(原審津地方裁判所令和2年(ワ)第564号) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、110万円及びこれに対する令和3年2月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを40分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 5 この判決の第2項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、4084万5615円及びこれに対する令和3年2月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(略語は、特に定めるもののほか、原判決の例による。以下同じ。) 1 事案の概要⑴ 本件は、平成20年4月1日に被控訴人が設置運営する三重大学(以下「被控訴人大学」ともいう。)の大学院(被控訴人大学院)工学研究科の助教として採用され、現在は准教授である控訴人が、工学研究科の教授ら(既に退官した教授を含む。)は、控訴人に対する種々のハラスメント行為(原判決別紙1 記載の行為)をし、これにより、控訴人は、上記採用以降、不当な地位に置かれ続け、研究者及び教育者として適切な環境を与えられず、その人格を著しく傷つけられ精神的にも追い込まれるなどしたものであって、上記行為はいずれ も違法なものであるし、被控訴人は、控訴人が置かれていた上記の状況を認識しながら、何らの改善措置を講じず、かえっ しく傷つけられ精神的にも追い込まれるなどしたものであって、上記行為はいずれ も違法なものであるし、被控訴人は、控訴人が置かれていた上記の状況を認識しながら、何らの改善措置を講じず、かえって、上記違法行為を助長し、控訴人に対する雇用契約上の安全配慮義務にも違反したなどと主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求として、逸失利益及び慰謝料等の損害合計4084万5615円並びにこれに対する 訴状送達の日の翌日である令和3年2月4日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 ⑵ 原審は、控訴人の本件請求を棄却したため、控訴人は、原判決を取り消し、同請求を認容するよう求めて控訴した。 2 前提事実 前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の2に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点及び当事者の主張争点及び当事者の主張は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決7頁13行目の「B」を「C」と改める。 ⑵ 原判決15頁12行目の「終了の日から」を「終了の日であり、控訴人がその損害及び加害者を知った時から、」と、14行目から15行目にかけての「上記行為による損害賠償請求権は」を「上記各行為を理由とする国家賠償法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求権は、」とそれぞれ改める。 ⑶ 原判決15頁19行目の「職場環境の根本的な解決」を「職場環境につき、控訴人の退職という不当な目的や女性である控訴人に対する底流の差別意識、責任回避の姿勢等から、根本的な解決」と改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異な 決」を「職場環境につき、控訴人の退職という不当な目的や女性である控訴人に対する底流の差別意識、責任回避の姿勢等から、根本的な解決」と改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人の本件請求については、被控訴人に対して 損害賠償金110万円及びこれに対する令和3年2月4日から支払済みまで民 法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 認定事実前提事実に加え、各項末尾の括弧内摘示の証拠(なお、枝番のある証拠は、特に断らない限り、全ての枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実 が認められる。 ⑴ 控訴人の就任前後の経過等ア大学の教員等の任期に関する法律(平成9年法律第82号)は、5条1項で「国立大学法人、公立大学法人又は学校法人は、当該国立大学法人、公立大学法人又は学校法人の設置する大学の教員について、前条第1項各号のい ずれかに該当するときは、労働契約において任期を定めることができる。」と規定し、同条2項で「国立大学法人、公立大学法人又は学校法人は、前項の規定により教員との労働契約において任期を定めようとするときは、あらかじめ、当該大学に係る教員の任期に関する規則を定めておかなければならない。」と規定している。また、同法は、4条1項で、上記任期を定めるこ とができる場合として、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」(1号)、「助教の職に就けるとき。」(2号)、及び「大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間 育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」(1号)、「助教の職に就けるとき。」(2号)、及び「大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき。」 (3号)を規定している。 被控訴人は、同法5条2項に基づき、「国立大学法人三重大学における大学教員の任期に関する規程」(以下「本件教員任期規程」という。)を定め、同規程2条で、任期を定めて雇用(再任を含む。)する大学教員の職等を別表に掲げているところ、多様な人材の確保が求められる教育研究組織の職に 就けるときを掲げるものの、助教の職に就けるときを掲げていないため、平 成19年ないし平成20年当時、被控訴人大学においては、工学研究科の助教を採用する場合にその任期を定めることは許されなかった。 被控訴人大学においては、平成14年4月1日から、工学研究科に循環システム設計講座が設けられ、教授1名、准教授1名及び助教2名が配置されることになったが、当該助教2名のうち1名は機械工学専攻が利用し、もう 1名(本件ポスト)は、機械工学専攻長と建築学専攻長との申合わせにより、両専攻が交互に利用する(利用期間5年(以内))こととされ、同日以降、まず機械工学専攻が利用していたが、平成18年10月末には、本件ポストの助教が転出して空席となった。そこで、次に本件ポストを利用する順番の建築学専攻は、平成19年3月末頃までに任期のない常勤助教の採用を予定 した内容の人事協議書の認可を受けると、予備選考委員会において、本件ポストの後任人事を公募による選考とすることを決定し、「勤務形態・任期:常勤、任期付(5年、再任可)」、「専門分野:建築構造学」、「着任予定:平成20年(200 けると、予備選考委員会において、本件ポストの後任人事を公募による選考とすることを決定し、「勤務形態・任期:常勤、任期付(5年、再任可)」、「専門分野:建築構造学」、「着任予定:平成20年(2008年)4月1日(予定)」とし、備考として「本講座は、大学院工学研究科共通の講座であるが、公募教員は建築学専攻において教 育・研究を行う。」などとする内容の公募要領を作成して、同年10月15日、被控訴人大学のホームページに「三重大学大学院工学研究科システム工学専攻助教公募要領」として掲載したほか、その頃、日本建築学会及びJREC-IN(国立研究開発法人科学技術振興機構が提供する求人公募サービス)の各ホームページにもこれを掲載し、もって、同専攻循環システム設 計講座所属の助教1名を公募した。 もっとも、上記のとおり当時被控訴人大学の工学研究科における助教を採用する場合に任期を定めることは許されていなかったことから、上記公募要領については、平成19年11月30日頃、被控訴人大学の人事労務チームの指摘、要請を受けて、工学研究科の総務の判断により、被控訴人大学のホ ームページに掲載されていたものから、勤務形態・任期に関する記載のうち 「任期付(5年、再任可)」の部分が削除され、「勤務形態:常勤」と修正された。しかし、JREC-INのホームページに掲載されていたものは、上記同様の修正がされなかったことから、任期という雇用条件の重要な点につき、同時期に相異なる内容の公募要領が公開されていた。 上記修正の件については、上記総務からC(当時建築学専攻長)に対し、 平成19年11月30日、メールにより報告され、Cは、これを受けて、同年12月4日、建築学専攻の各教授に対し、メールで、これを報告するとともに、「 、上記総務からC(当時建築学専攻長)に対し、 平成19年11月30日、メールにより報告され、Cは、これを受けて、同年12月4日、建築学専攻の各教授に対し、メールで、これを報告するとともに、「機械工学との覚書で約束している任期については、運用で考慮することになります。」などと通知した。 (以上につき、前提事実、甲1~4、乙62) イ控訴人は、前記アの公募要領を閲覧し、任期の有無が不明瞭であったものの、ひとまず応募することとし、平成20年2月23日、被控訴人大学の建築学専攻の会議室において、面接を受けた(C、B及びDのほかE元教授が面接を担当した。)が、任期に関する明確な説明がなく、5年の任期の終了後の進路等に関する質問を受けたことから、その時点では、5年の任期があ るものと理解していた。 控訴人は、上記面接等を含めた選考の結果、工学研究科のシステム工学専攻循環システム設計講座助教(建築学専攻兼務)として採用されることとなったが、辞令交付式の前日である平成20年3月31日、Cから、電話で、辞令交付式の後に、Cに代わって新たな建築学専攻長となるDの執務室に赴 き、任期に関する同意書に署名押印するよう指示された。控訴人は、同年4月1日、上記助教として採用されたが、上記指示に従い、Dの執務室に赴くと、Dから、あらかじめ用意されていた、「私は、国立大学法人三重大学工学研究科システム工学専攻循環システム設計講座助教に就任するに際し、公募要領に示されている任期に関する条項に従うことに同意します。」、「任 期:平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間(再任可)」 と記載された建築学専攻長D宛ての同意書(本件同意書)に署名押印するよう求められたため、これに従い、本件同意書 期:平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間(再任可)」 と記載された建築学専攻長D宛ての同意書(本件同意書)に署名押印するよう求められたため、これに従い、本件同意書に署名押印して提出し、その写しを受領した。 本件同意書は、D及びCが協議をして文面を起案したもので、建築学専攻の他の教授もその内容を承知しており、建築学専攻の教授の総意として作成 されたものであった。 もっとも、控訴人は、着任後、自ら調査することにより、前記アのとおり工学研究科の助教を採用する場合に任期を定めることは許されていないと認識するようになった。 (以上につき、前提事実、甲4、5、原審における証人B(乙16、30を 含む。以下「証人B」という。)及び控訴人本人(甲130を含む。以下「控訴人本人」という。))ウ本件同意書は、その後、各年度の建築学専攻長に順次引き継がれていた。 しかし、平成24年7月頃、BがFを通じて、控訴人に対し、高等専門学校の助教の募集要領に関する資料を渡し、これを事実上の退職勧奨として受 け止めた控訴人がショックを受けたことなどを契機として、違法な任期の記載がある本件同意書の問題が顕在化し、本件同意書は、建築学専攻の教授の総意として、不正規なものとして破棄することとされた。 G(当時建築学専攻長)は、同年8月20日、Fの立会いの下、控訴人に対して本件同意書の原本を返し、その際、控訴人の求めに応じて、本件同意 書の余白に「本書類は、専攻として不正規であるという共通認識に至ったため、その内容を破棄するとともに、その原本を返却致します。」と手書きで附記した。 (以上につき、前提事実、甲5、7、106~110、原審における証人F て不正規であるという共通認識に至ったため、その内容を破棄するとともに、その原本を返却致します。」と手書きで附記した。 (以上につき、前提事実、甲5、7、106~110、原審における証人F(甲131を含む。以下「証人F」という。)、控訴人本人) エ C(当時建築学専攻長)は、機械工学専攻長との間で、平成20年3月2 5日、本件ポストについて、控訴人が着任する予定の同年4月1日から平成25年3月31日までの5年間を建築学専攻が利用し、以降、両専攻が交互に5年以内で利用する旨の申合せを行っていたが、建築学専攻は、平成25年3月31日までに控訴人を本件ポストから異動させるための席を別途用意することができなかったため、控訴人は、同年4月1日以降も、前記イの 循環システム設計講座助教として執務していた。 その後、機械工学専攻長と建築学専攻長は、建築学専攻に空席が生じ次第控訴人を最優先で速やかに異動させる旨の申合せを新たに行っていたところ、建築学専攻は、平成27年11月頃、助教1名が平成28年1月1日に転出することになり、上記空席が生じることになったため、当時の建築学専 攻長(H元教授)が、控訴人に対し、平成27年11月2日、「所属講座異動に関するお願い」と題する文書を発出して、建築学専攻の助教への異動を打診し、控訴人がこれを承諾したことから、控訴人は、同年12月9日開催の工学研究科教授会の了承を経て、平成28年1月1日付けで、建築学専攻(建築マネジメント講座・構造マネジメント)の助教に異動となった。 (以上につき、前提事実、甲8、乙62、証人F、控訴人本人)⑵ 控訴人の執務状況、環境等ア控訴人は、平成20年4月1日、Cから指定された執務室である建築学科棟▲階 (以上につき、前提事実、甲8、乙62、証人F、控訴人本人)⑵ 控訴人の執務状況、環境等ア控訴人は、平成20年4月1日、Cから指定された執務室である建築学科棟▲階▲号室(以下「本件執務室」という。)において、別の技術職員1名と共に同室のスペースを半々で使用するかたちで、執務を開始した。 被控訴人大学は、平成16年頃以降、幹事校である名古屋大学からの依頼により、中部地域広域の地震被災状況をモニタリングするために活用するとともに、相互に状況を確認できるシステムの設置を通じて大学間の平常時からの共同体制(大学間地震情報共有ネットワークシステム)を構築するため、本件執務室の出入口付近の壁にウェブカメラ1台(本件カメラ)を設置して いた。本件カメラは、別途設置された地震警報受信装置及び地震情報送信装 置と連動して、撮影された映像のうち、過去一定時間の映像並びに地震計トリガ作動時における地震記録及びスキップバック映像が自動的にサーバに保存されるとともに、ネットワークを介して名古屋大学のサーバにも送信され、リモート画面で確認し得る仕組みになっており(同様のウェブカメラは、上記共同体制に参加している他の複数の大学にもそれぞれ設置されてい た。)、被控訴人大学においては、I助教(肩書きは当時のもの。以下「I」という。)がこれを管理していた。 本件カメラは、少なくとも平成16年当時、本件執務室の窓越しに、耐震改修工事がされていなかった向かいの建物(分子素材工学科棟)を撮影対象としていたが、その後上記建物の耐震改修工事が行われたことから、遅くと も平成20年4月当時、本件執務室の室内を撮影対象としており、本件執務室内における控訴人の執務区画も撮影対象の範囲に含まれていた いたが、その後上記建物の耐震改修工事が行われたことから、遅くと も平成20年4月当時、本件執務室の室内を撮影対象としており、本件執務室内における控訴人の執務区画も撮影対象の範囲に含まれていた。 控訴人は、着任に際して、本件カメラの存在について知らされていなかったところ、平成20年4月下旬頃、これに気付き、自らの執務区画が本件カメラの撮影対象の範囲に含まれていることを知ると、これを撤去し、仮に撤 去することができないのであれば撮影方向を変更するよう抗議した。これを受けて、本件カメラは、その頃、その撮影方向が変更されるなどした。その後、控訴人は、Fに対し、同年7月頃、本件カメラの撤去等について相談し、FがBと交渉するなどした結果、本件カメラは、名古屋大学との協議を経て、同年8月頃に撤去された。 (以上につき、前提事実、甲7、25、40、41、44~47、乙1~3、27、62、証人F、証人B、控訴人本人)イ建築学専攻は、教育研究分野の相違によって、構造系(建築や都市の設計に関する分野)と呼ばれる分野や計画系(力学的な物理的挙動の考究や建築の材料を検討する分野)と呼ばれる分野等の複数に分かれているところ、控 訴人の指導は、その着任後、同じ構造系の教授であるCが担当していた。 しかし、控訴人とCは、折り合いが悪く、平成21年4月以降には別々に学生を指導する状態になっていたことなどから、前記⑴の任期の件について控訴人から相談を受けたことのあったFが控訴人の指導を引き受けることを承諾し、C及びBは、控訴人の意向、希望を確認することなく、平成22年4月以降の控訴人の指導担当教授を、計画系の教授であるFに変更した。 これに伴い、控訴人がそれまで指導していた学生2名は、構造 承諾し、C及びBは、控訴人の意向、希望を確認することなく、平成22年4月以降の控訴人の指導担当教授を、計画系の教授であるFに変更した。 これに伴い、控訴人がそれまで指導していた学生2名は、構造系の教授であるC及びIによって指導されることとなったが、上記変更の経緯等につき、CやBから学生や他の教職員らに対して説明はされなかった。 また、控訴人は、平成22年から平成23年までの2年間、建築学専攻の構造系卒業論文発表会の開催に関する案内の配布を受けなかった。これは、 Jにおいて、控訴人は、上記のとおりの指導担当教授の変更により、Fと共に計画系卒業論文発表会に出席し、同時開催の構造系卒業論文発表会には出席しないであろうと推測し、控訴人の意向等を確認することなく、上記案内の配布を取り止めたことによるものであったが、BがJに対して不適切な対応であるなどとして注意指導したため、控訴人は、平成24年以降、上記案 内の配布を再び受けるようになった。 上記のような経過等から、控訴人は、構造系に所属していたにもかかわらず、構造系から事実上排除され、構造系内で孤立した状況に置かれていた。 (以上につき、前提事実、甲25、乙40、62、証人F、証人B、控訴人本人) ウ控訴人は、平成21年度以降、三重県と被控訴人大学の共同出資によって被控訴人大学内に設置された組織であるDiMO(自然災害対策室。現在の地域圏防災・減災センター(みえ防災・減災センター))の室員として活動し、また、平成22年度にDiMOにより開講されることとなった「美し国(うましくに)おこし・三重さきもり塾」(さきもり塾)の運営委員会(塾 長B、副塾長K)の委員を務め、さきもり塾の開講後には、「さきもり特別 研究」の指 講されることとなった「美し国(うましくに)おこし・三重さきもり塾」(さきもり塾)の運営委員会(塾 長B、副塾長K)の委員を務め、さきもり塾の開講後には、「さきもり特別 研究」の指導員を担当して、学生の研究指導に当たっていた。 控訴人は、さきもり塾の事務局から、平成22年11月16日、メールで、平成23年度のカリキュラムに関する協力の要請等を打診され(なお、同様のメールは、控訴人以外の教職員らに対しても同時に送信された。)、引き続いて上記委員(指導員)を担当する意向であった。しかし、さきもり塾に おいて中心的に活動していたLと、控訴人との間で、案件の処理等をめぐって対立が生じたことや、上記運営委員会における控訴人の出席率が悪かったことから、上記運営委員会の執行部であるB、K及びLが協議した結果、翌年度には控訴人に対して上記委員を嘱託しないことを決め、塾長であるBが控訴人に対し、平成22年11月、特に理由を説明することなく、「来年か らは、DiMO・さきもり塾に来なくていい。」などと告げた。その結果、控訴人は、その意向に反して、平成23年度以降、上記室員及び委員を務めなかった。もっとも、上記室員及び委員は、当時、任期に関する明確な定めのある役職ではなかった。 さきもり塾は、平成25年頃、過去5年間の活動実績等を取りまとめた「美 し国おこし・三重さきもり塾軌跡と展望 2009-2013」と題する報告書(最終報告書)を作成したが、平成22年度から平成25年度までの各年度の担当教員一覧として、工学研究科の教員としてB、I、L及びJが記載されている一方で、控訴人は、「さきもり特別研究」の指導員を担当した平成22年度についても記載されていなかった。 (以上につき、前提事実、甲 研究科の教員としてB、I、L及びJが記載されている一方で、控訴人は、「さきもり特別研究」の指導員を担当した平成22年度についても記載されていなかった。 (以上につき、前提事実、甲7、9~11、25、乙15、17、18、62、証人F、証人B、原審における証人K(乙26、45、54を含む。 以下「証人K」という。)、控訴人本人)エ建築学専攻の教授会議は、平成30年3月に転出したJ(当時准教授。同人はコンクリートが専門分野であった。)の後任人事につき、公募によるこ とを計画し、同年度の建築学専攻長であったFを委員長とする予備選考委員 会において、「所属:大学院工学研究科建築学専攻構造マネジメント講座(建築構造・材料学)」、「職名・募集人員:准教授または講師 1名」、「専門分野:コンクリート構造・材料研究分野およびこれに関連する分野(特に、構造設計、材料設計、構造解析などにわたり幅広く担当できる方が望ましい)」、「着任時期:平成31年1月1日以降のできるだけ早い時期」な どとする、平成30年6月1日付け公募要領(平成30年公募)が内定した。 なお、被控訴人大学においては、平成23年度以降、優秀な人材を確保するために公募制や任期制の取組を推進することが年間計画として謳われ、平成28年10月1日に学長裁定により策定された「第3期中期目標期間における三重大学人事・給与システム改革の基本方針」により、教職員の人事に ついて「原則公募を継続する。」とされていた。 控訴人は、Fから、平成30年5月29日、内定していた上記公募要領の内容を説明され、Fに対し、後任人事が(助教からの昇進ではなく)公募になる理由や、専門分野が(控訴人の専門分野である木造ではなく)コンクリートに限定され 30年5月29日、内定していた上記公募要領の内容を説明され、Fに対し、後任人事が(助教からの昇進ではなく)公募になる理由や、専門分野が(控訴人の専門分野である木造ではなく)コンクリートに限定されている理由を問いただしたが、納得のいく説明を受けられな かったため、同月31日、Fの同席の下、B(当時工学研究科長)と話合いをした。しかし、昇進を控えた助教がいる状況下における公募による上記後任人事は前例のないもので不当である旨主張する控訴人と、上記後任人事がコンクリートを専門分野とするJの空席を補充するためのものであり教授会議で決められたことであるなどとして正当である旨主張するBとの間で、 平行線をたどった。また、Bは、控訴人に対し、その席上、「君はここで昇進するつもりであったのか。」とか、「今回は応募しないでほしい。たとえ応募しても、募集と専門が違うので無理である。」などと発言した。 Fは、Bの上記発言が、公募の趣旨に反し、工学研究科長の地位にある者として不適切であるなどと考え、予備選考委員長としての判断に基づき、平 成30年6月1日に公表予定であった平成30年公募を一旦停止すること とし、さらに、同年10月10日、予備選考委員会を開催し、その了承を得て、後記⑶のハラスメント調査委員会の調査結果が明らかになるまで予備選考委員会による手続の進行を停止することとした。 そして、予備選考委員会は、後記⑶のとおり上記調査結果が明らかになった後である令和元年11月19日以降、複数回開催され、最終的に控訴人が 本選考委員会(工学研究科教授会議)に推薦されることとなり、令和2年2月12日に開催された本選考委員会の席上における無記名投票の結果、可とする票を投じた者が25名、否とする票を投じた者が1名、 本選考委員会(工学研究科教授会議)に推薦されることとなり、令和2年2月12日に開催された本選考委員会の席上における無記名投票の結果、可とする票を投じた者が25名、否とする票を投じた者が1名、白票を投じた者が4名で、控訴人が准教授に昇進することが事実上決定した。 控訴人は、令和2年3月1日付けで、准教授に昇進した。 (以上につき、前提事実、甲14、25、乙5、6、30、証人F、証人B、原審における証人G(乙14、25、44、55を含む。以下「証人G」という。)、控訴人本人)オ控訴人は、准教授に昇進した後も、院生用研究室の割当てを受けていなかった。上記割当てを希望していた控訴人は、令和2年9月15日、上記割当 ての件を相談していたFと共に、G(環境設備系の教授で当時の建築学専攻長)に対し、上記割当てを要求した。 当時、建築学専攻においては、院生用研究室の割当てに関する内規等はなく、かねてより、教員個人ごとにではなく各系ごとに院生用研究室が割り当てられるという運用になっていたが、その割当ては、各系の研究分野の特色 等を理由に、教員一人当たりの面積としてみると、各系間に相当程度の較差があった。Gは、上記運用に加え、特に構造系において院生用研究室が逼迫しているなどの実情もないと考えていたため、両者の間で控訴人の要求する割当ての必要性や是非等をめぐって意見が対立し、Gが控訴人の上記要求に応じることなく物別れに終わり、また、Gが上記割当ての件を建築学専攻内 で協議するための場を手配することもなかった。 控訴人は、Gから期待するような回答、対応を得られなかったため、令和2年9月25日以降、Kに対し、自ら又はFを通じて、上記割当ての件を相談し(なお、控訴人 ることもなかった。 控訴人は、Gから期待するような回答、対応を得られなかったため、令和2年9月25日以降、Kに対し、自ら又はFを通じて、上記割当ての件を相談し(なお、控訴人とKは、当時、総合工学コースの講義を共同担当していた。)、Kは控訴人の上記要求に一定の理解を示し、互いに院生用研究室の配分案を示すなどして協議したが、Kは、環境設備系を含めた教室会議で議 論するのが相当であるし、そのための資料が必要であるなどと考えて、控訴人に対し、同月30日に行われた協議の席上で、「この件は教授だけで話し合うので、文書で要望書を提出するように。」、「A先生の書いてくれた文を見ながら考える。」などと発言し、そのような文書提出の前例を知らなかった控訴人から「どういう文を書けばいいんですか。」などと尋ねられると、 「そういうのは自分で考えてごらんよ、大人なんだから。」などと発言した。 その後、控訴人は、上記文書を提出せず、結局、自らの院生用研究室の割当てを受けられなかったことから、主に控訴人の指導を受ける学生(院生)は、Fが使用していた院生用研究室を使用していた。 (以上につき、前提事実、甲124、乙20、43、46~52、証人F、 証人K、証人G、控訴人本人)カ控訴人は、それまでの経緯等から、Kと共同で総合工学コースの講義を担当することについて不安を覚えるようになり、後期の授業開始日であり上記講義の内容に関する打ち合わせが予定されていた令和2年10月1日、Kに対し、メールで、「K先生の言動で業務に支障を来している。」などと告げ て、体調不良を理由に上記打合せを突然キャンセルし、以後の連絡を一切絶つとともに、その頃、Fの同席の下で、M(当時の工学研究科長であり、担任の任免権限を 業務に支障を来している。」などと告げ て、体調不良を理由に上記打合せを突然キャンセルし、以後の連絡を一切絶つとともに、その頃、Fの同席の下で、M(当時の工学研究科長であり、担任の任免権限を有していた。)と面談し、院生用研究室の配分と上記コースの担任の辞任を申し入れた。しかし、Mは、自分の立場から建築学専攻に対して指示できないなどとして、上記申入れには応じられないという態度を示 し、また、Fから、従前より建築学専攻内でハラスメントを受け続けている 控訴人自身が対応することは精神的に過酷であるなどと指摘されても、「別途ハラスメント対策委員会などからの命令等があれば研究科長として動きやすい。」などと述べるにとどまり、控訴人は、Mからも期待するような回答を得られなかった。 その後、Mは、控訴人に対し、令和2年10月28日、メールで、「工学 研究科事務長と相談の上、研究科長として専攻に指示することはしない。控訴人の要望2点については、GとKに既に伝えた。」などと、工学研究科長として建築学専攻内で控訴人の上記申入れの件を解決するよう依頼した旨を通知した。 Kは、控訴人に対し、令和2年11月2日、メールで、控訴人によって上 記コースの担任業務が適切に行われていない旨指摘するとともに、依頼中の業務のうち未着手、保留のものや今後の対応が必要なものがあれば早急に対応、説明するよう要請した。しかし、控訴人は、その要請に応じて返信すると更に関係が悪化するなどと考えて、上記要請に応じず、返信もしなかった。 G(当時建築学専攻長)は、控訴人に対し、令和2年11月12日、メー ルで、「Mから、控訴人が総合工学コースの副担任を辞任したいとの相談を受けたが、もし辞任するのであれば、建築学専攻内で G(当時建築学専攻長)は、控訴人に対し、令和2年11月12日、メー ルで、「Mから、控訴人が総合工学コースの副担任を辞任したいとの相談を受けたが、もし辞任するのであれば、建築学専攻内で解決するよう伝えたと連絡を受けている。」、「Kからは、控訴人が総合工学コースの担任業務の分担をしていないなどの報告を受けている。」、「総合工学コースの副担任を辞任する場合には、控訴人がその理由を説明し、建築学教室で承認した上、 建築学専攻から代わりの副担任を決める必要がある。」などと通知し、また、同月15日、「11月23日までにメール等の文書で辞任の理由等を送付すれば足りる。」などと通知した。 なお、控訴人代理人弁護士は、令和2年11月21日、Gに対し、控訴人からの受任通知書を送付して、総合工学コースの担任の件と院生用研究室の 割当ての件について被控訴人大学のハラスメント対策委員会に申告するこ となどを通知し、同年12月10日、上記委員会に対し、受任通知書・被害申告書を送付した。しかし、上記委員会は、控訴人代理人弁護士に対し、同月23日付けで、これらの件について調査委員会を設置しない旨通知した。 (以上につき、甲37~39、証人F、証人K、証人G、控訴人本人)⑶ ハラスメント調査委員会の設置等 ア控訴人は、津労働基準監督署に対し、平成30年6月4日、被控訴人大学院において度重なる不当な処遇を受けてきたなどと記載された文書を提出した。(甲15、186)イ控訴人は、平成30年10月15日付けで、被控訴人大学の学長宛てに、「工学研究科および建築学専攻におけるハラスメントに関する申し立て(概 要説明書)」と題する書面を提出し、「三重大学の公募に応募した2007年度末以来 15日付けで、被控訴人大学の学長宛てに、「工学研究科および建築学専攻におけるハラスメントに関する申し立て(概 要説明書)」と題する書面を提出し、「三重大学の公募に応募した2007年度末以来、工学研究科循環システム講座および建築学専攻において継続的に受けてきた一連のハラスメント」に関する被害の事実を申し立てるとともに、ハラスメント調査委員会を立ち上げて大学として適切かつ十分な調査を行い、関係者に対する適切な処分及び対応が行われることを希望するなどし た。 これを受けて、被控訴人大学のハラスメント対策委員会は、平成30年10月25日、本件に関する調査を行うことを決定し、N地域イノベーション推進機構教授を委員長とし、O教育学部教授及びP企画総務部企画チーム副課長を委員とするハラスメント調査委員会(以下「本件調査委員会」という。) を設置した。 本件調査委員会は、控訴人が訴えたハラスメントに係る事項について、第1に採用時の不当な取扱いとして、①採用時の任期粉飾による不当な取扱い、②採用面接における女性に対する蔑視発言と執拗な圧迫面接等、③任期に関する念書への押印強要、第2に人事上の継続的な不当行為として、④事実上 の昇進妨害、⑤説明や承諾なしでの上司となる教授の交代、⑥転出を強要す るための公募要領の押しつけ、⑦期限付きポストへの配置とその年限超過の放置、⑧専攻間の話し合いによるポスト異動、第3に執務室の盗撮行為として、⑨ウェブカメラで盗撮・監視され、常時公衆送信された状態での執務の強要、第4に研究や職務上の妨害・排除行為として、⑩助教に認められていない入試問題作成業務の押し付け、⑪指導学生の研究成果に基づく研究発表 の妨害・共著名の削除と、無関係な論文への共著名記載の強要および 4に研究や職務上の妨害・排除行為として、⑩助教に認められていない入試問題作成業務の押し付け、⑪指導学生の研究成果に基づく研究発表 の妨害・共著名の削除と、無関係な論文への共著名記載の強要および指導学生の引き剥がし、⑫メーリングリストや連絡先からの意図的な排除、及び構造系卒業研究発表会並びに修士論文中間発表会からの不当排除、⑬学内組織における任務の突然の解任と報告書への氏名の不掲載、⑭学生の面前や会議・宴席・廊下での意図的な蔑視発言あるいは叱責と整理した上で、当事者 (控訴人、加害者とされた教授等9名のうち8名)及び関係者(F)の聴き取り調査の結果や提出資料を基に事実の確認を行うなどして、平成31年3月27日付けで「工学研究科におけるハラスメントに関する調査報告書」(以下「本件調査報告書」という。)を作成した。 本件調査委員会は、本件調査報告書中で、結論として、第1(上記①及び ③)及び第2(上記⑤)については、控訴人の訴えた事項に係る事実が確認され、控訴人に対する就業上の権利の侵害や業務の妨害と認められるものであり、C、B、E及びDによるハラスメントに該当すると判断する一方で、第3及び第4については、いずれもハラスメントに該当する事実は確認されなかった(ただし、採用時の不当な取扱い及び人事上の継続的な不当行為が 背景にあり、これらのハラスメント行為によって控訴人が深い疑念を抱いたことが、上記申立てに繋がったものと考える。)などと報告し、「採用時の不当な取扱いについて、本学役員会において任期付きで採用することを認めていないポストであると知りながら、機械工学専攻との間でのポストの使用年限があるという専攻の事情を新任の助教に押し付け、当時の教授(C、B、 E教授及びD教授)の総意として任期に関する を認めていないポストであると知りながら、機械工学専攻との間でのポストの使用年限があるという専攻の事情を新任の助教に押し付け、当時の教授(C、B、 E教授及びD教授)の総意として任期に関する同意書を作成し押印させた行 為は、結果的に違法とはならなかったものの、違法性が疑われる程に悪質なハラスメント行為である。」、「人事上の継続的な不当行為については、現在もA助教の所属が不明瞭な状態は継続しており、未だにこの問題は解決されていない。この事項に関しては、A助教が採用された当時の建築学専攻の教授であるC教授、B教授、E教授及びD教授の責任は極めて重い。また、 A助教採用時の経緯を十分に把握していなかったH元教授及びG教授についても、専攻を主導する専攻長の立場にありながら、主体的にこれを解決しようとしなかったことは、2次的なハラスメント行為である。」、「極めて残念なことに、加害者とされる教授からの聴き取りを通じて、A助教採用時の不当な取扱いや現在も継続されている所属が不明瞭な状態について、当事 者意識や責任を取ろうとする態度はほとんど表されなかった。また、任期の粉飾や任期に関する同意書に押印させたことは重大な事案であるにもかかわらず、責任の所在は分からずじまいであった。さらに、A助教が置かれている現状についても、本人の問題、あるいは本人の資質が原因であるかのような発言が多く聞かれ、これらの発言からは、採用されたばかりのA助教を 育てることが専攻の教授の責務であったとの責任意識は全く感じられなかった。」などと意見を述べた。 本件調査報告書の内容及び結論は、平成31年3月28日に開催されたハラスメント対策委員会において、報告された。これを受けて、同委員会は、審理を行った結果、上記結論のとおりのハラスメ た。 本件調査報告書の内容及び結論は、平成31年3月28日に開催されたハラスメント対策委員会において、報告された。これを受けて、同委員会は、審理を行った結果、上記結論のとおりのハラスメントを認定するとともに、 H元教授及びGについても、控訴人が置かれていた不当な状況を承知していながら、建築学専攻長として主体的にこれを解決しなかったことが、管理監督者として不適切な行為であり、ハラスメントであると認定し、これらの認定が承認された。また、出席したQは、「今回の事案は、控訴人から大学側に損害賠償請求があれば応じなければいけないほど、重い事例である。」旨 の意見を述べた。 被控訴人大学は、ハラスメント対策委員会の上記認定を受けて、令和元年9月、学長名で、Bらに対し、口頭による厳重注意をした。また、Bは、控訴人に対し、同年10月11日付けで、「これまで問題となってきた案件について学科教授陣を代表してお詫びし、貴方の人事に関する今後の進め方についてお話ししたいと思います。」などと記載された書面を差し入れ、その 頃、Fの立会いの下、謝罪するなどした。 (以上につき、前提事実、甲6、25、54、134、乙19、22、証人B、原審における証人Q(乙23を含む。以下「証人Q」という。))ウ控訴人は、令和2年12月28日、被控訴人に対し、津地方裁判所に本件の訴えを提起した。(前提事実) エ被控訴人大学は、本件訴えが提起された後である令和3年4月22日開催の役員会において、M(当時工学研究科長)の要望を受け、本件調査委員会において行われた調査が適正であったかどうかについて調査を行うための第三者委員会を設置することを承認、決定した。これを受けて設置された、R弁護士を委員長と 工学研究科長)の要望を受け、本件調査委員会において行われた調査が適正であったかどうかについて調査を行うための第三者委員会を設置することを承認、決定した。これを受けて設置された、R弁護士を委員長とし、S弁護士及びT名古屋市立大学大学院教授を委員と する第三者委員会は、本件調査委員会の議事録等の関係資料を確認し、関係者に対するヒヤリング(聴き取り調査)や文書による照会等を実施するなどして、本件調査委員会の調査方法の適否等の委嘱事項を検討、検証し、令和4年2月3日付けで調査報告書(以下「第三者委員会調査報告書」という。)を作成した。 上記第三者委員会は、第三者委員会調査報告書中で、F以外の第三者(特に問題となる行為当時の工学研究科長)に対する聴き取り調査を実施すべきであったことや、聴き取り調査の対象者に対して調査事項の具体的内容が示されず、調査事項に関する文書やメール等の資料提出についても案内がされず、申立内容の反論反証が事実上困難であったことなどを指摘し、結論とし て、聴取対象者の選定や弁明の機会の保障などの調査方法が適切であったか について疑義があり、また、ハラスメントの認定に関する調査内容にも疑義があることから、再調査を行う必要があるなどと報告した。 被控訴人大学は、上記報告を受けて、本件に関する再調査を行うことを決定し、U弁護士を委員長とし、V名古屋産業大学教授及びW三重県私学協会専務理事を委員とする再調査委員会(以下「本件再調査委員会」という。) を設置した。 本件再調査委員会は、控訴人の前記申立てについて、本件調査委員会が収集した資料に加え、上記第三者委員会の指摘を踏まえ、本件調査委員会による事情聴取対象者のほか問題となる行為当時の工学研究科長に対して書面調 査委員会は、控訴人の前記申立てについて、本件調査委員会が収集した資料に加え、上記第三者委員会の指摘を踏まえ、本件調査委員会による事情聴取対象者のほか問題となる行為当時の工学研究科長に対して書面調査(書面による回答方式)を実施するなどして独自に収集した資料を基に、 控訴人の訴えた前記事項がハラスメントに該当するかどうかなどを検討し、令和5年3月31日付けで「再調査委員会報告書」(以下「本件再調査委員会報告書」という。)を作成した。 本件再調査委員会は、本件再調査委員会報告書中で、控訴人が訴えた前記事項について、いずれも、当該事実が認められないか、又はハラスメントに 該当する事実であるとは認められず、本件調査委員会によるハラスメントの認定は事実誤認であるなどと報告した。 (以上につき、前提事実、甲91~93、乙19、62、証人Q) 3 争点1(不法行為の成否)について⑴ 原判決別紙1記載の行為について ア任期に関する不当な取扱い及び不安定な地位の継続 認定事実⑴によれば、C、B及びDは、控訴人に対し、法令上任期を付することが許されていない本件ポストにつき、そのことを認識しながら、5年という任期を付した労働条件を提示し、採用面接の席上においても、これに言及せず、明言を避け、最終的に、控訴人をして、上記任期が付さ れているものと誤信させ、これを内容とする労働契約を締結させたもので あると認められる。また、控訴人は、本件同意書に署名押印しているが、上記認定のとおりの採用面接までの経緯に加え、辞令交付式の前日及び当日に建築学専攻長から署名押印を求められたという経緯にも照らせば、控訴人においてこれを拒否することは、到底困難な状況であり、上記のとおりの誤信もあい 採用面接までの経緯に加え、辞令交付式の前日及び当日に建築学専攻長から署名押印を求められたという経緯にも照らせば、控訴人においてこれを拒否することは、到底困難な状況であり、上記のとおりの誤信もあいまって、実質的にみれば、その作成を事実上強要されたも のに等しいと評価すべきであるし、本件同意書の内容の点においても、後日に建築学専攻長が、建築学専攻の教授の総意に基づき、破棄することを明確にした上で控訴人に対して原本をわざわざ返還したことからも裏付けられるように、著しく不当なものであったことは明らかというべきである。 控訴人は、本件同意書の返還を受けるまでの4年数箇月という長期間にわたり、自らの助教としての地位が5年の任期に限定されるものであるかどうかが明確でないという、不安定な状況に置かれたものである。控訴人は、着任後に自ら調査するなどして、上記地位は任期を付することが本来許されないものであることを認識したが、被控訴人大学の正式な見解等が 明らかにされていなかったことを踏まえれば、上記状況が解消されたものとみることはできず、不安定な状況が続いていたといわざるを得ない。 さらに、控訴人は、平成28年1月1日に建築学専攻の助教に異動するまで、上記助教に異動できるかどうかや、その異動の時期が定かでないという点において、不安定な状況に置かれたものというべきであり、そのよ うな控訴人は、自らの立場に不安を抱えるなどして、助教としての教育研究活動に集中、専念できなかったものと認められる。 これらの説示に照らせば、C、B及びDは、本件教員任期規程に反し、事実上のものにすぎない機械工学専攻と建築学専攻との間の申合せを優先させ、控訴人の採用面接から本件同意書の徴求までの一連の行為があっ の説示に照らせば、C、B及びDは、本件教員任期規程に反し、事実上のものにすぎない機械工学専攻と建築学専攻との間の申合せを優先させ、控訴人の採用面接から本件同意書の徴求までの一連の行為があっ て以降、平成28年1月1日まで控訴人の地位を著しく不安定な状態に置 いたものであり、就労に関わる事項において控訴人の意に反する不適切な言動により控訴人に不利益を与えたものとして、控訴人に対するハラスメントに当たるものと評価するのが相当であり、社会的にも明らかに不相当であって、不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上も違法なものといわざるを得ない。 これに対し、被控訴人は、控訴人に対して本件同意書の署名押印を強要していないなどと主張するが、前記の認定及び判断のとおりであり、理由がない。 イ本件カメラによる盗撮 認定事実⑵アによれば、本件カメラは、控訴人の執務状況を監視する目 的で設置されたものであると認めることはできないし、そのような目的のために控訴人の着任後にも設置されていたと認めることもできない。これに反する控訴人の主張は、確たる裏付けを欠いていて、憶測の域を出るものではなく、理由がない。 しかし、少なくとも被控訴人大学における本件カメラの管理者であるI が、控訴人に対し、その着任に際して、本件執務室内に本件カメラが設置されていることやその設置目的、控訴人の執務区画がその撮影対象の範囲に含まれていることなどを説明しなかったことは、本件カメラにより撮影された映像がネットワークを通じて被控訴人大学外の第三者も閲覧し又は閲覧し得るかたちで送信されるシステムになっていたことも併せれば、 控訴人のプライバシーを不当に侵害するものであって、不法行為を構成し、国 ットワークを通じて被控訴人大学外の第三者も閲覧し又は閲覧し得るかたちで送信されるシステムになっていたことも併せれば、 控訴人のプライバシーを不当に侵害するものであって、不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである(なお、仮に控訴人の執務区画が本件カメラの撮影対象の範囲に含まれていなかったとしても、認定事実⑵アによれば、本件執務室内における控訴人の行動が本件カメラの撮影対象になり得ることは明らかであるから、上記結論は左右されない というべきである。)。 これに対し、被控訴人は、本件カメラは地震発生時に録画されるものであり、常時撮影されて一般公衆に向けて送信されるものではない旨主張する。 しかし、認定事実⑵アのとおり、本件カメラは、撮影された映像のうち、過去一定時間の映像並びに地震発生時におけるスキップバック映像がサ ーバに保存されるとともに、ネットワークを介して名古屋大学のサーバにも送信される仕組みになっていたものであるから、常時撮影、録画されるものであったと認められる。また、確かに、本件カメラにより撮影された映像は、一般公衆に向けて送信されるものではなかったが、被控訴人大学外の第三者も閲覧し又は閲覧し得るかたちで送信されるシステムになっ ていたことからすれば、控訴人のプライバシーを不当に侵害するという結論が左右されるものではない。 したがって、被控訴人の上記主張は、理由がない。 ウ構造系からの排除 認定事実⑵イによれば、CやBは、指導担当教授という控訴人にとって 極めて重要な事項につき、控訴人の意向等を全く確認することなく、構造系のCから計画系のFに変更し、また、このことが、Jにおいて、控訴人に対して建築学専攻 は、指導担当教授という控訴人にとって 極めて重要な事項につき、控訴人の意向等を全く確認することなく、構造系のCから計画系のFに変更し、また、このことが、Jにおいて、控訴人に対して建築学専攻の構造系卒業論文発表会の開催に関する案内を2年間配布しなかったことにもつながったものであり、その結果、構造系に所属していた控訴人は、その所属が曖昧となり、教育研究活動上、構造系か ら事実上排除され、構造系内で孤立したような就業環境に置かれていたものと認められる。 上記認定の事実に加え、CやBが控訴人の上記のような就業環境を改善するための対策等を講じた形跡がうかがわれないことを併せ考慮すれば、指導担当教授の変更自体については、Cと控訴人との折り合いが悪く、適 切な指導関係を期待し難い状態にあったという、一定の合理的理由があっ たといえることや、控訴人が当時上記変更につき強く反対した形跡はうかがわれないことを斟酌しても、就労に関わる事項において控訴人の意に反する不適切な言動により控訴人に不利益を与えたものとして、控訴人に対するハラスメントに当たるものと評価するのが相当であり、いわば村八分の状態に置かれていたのであるから、社会的にも明らかに不相当であって、 不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上、違法なものといわざる得ない。 これに対し、被控訴人は、控訴人の研究内容が構造系のCよりも計画系のFに近かったことから、上記のとおり指導担当教授を変更した旨主張する。しかし、控訴人の研究内容が構造系のCよりも計画系のFに近かった ことを認めるに足りる証拠はないし、そもそも控訴人本人に確認することなしに、周囲の教授が控訴人に無断で決定すべき事柄ではないというべきである。 被控訴人 も計画系のFに近かった ことを認めるに足りる証拠はないし、そもそも控訴人本人に確認することなしに、周囲の教授が控訴人に無断で決定すべき事柄ではないというべきである。 被控訴人は、指導担当教授の変更について、Cが控訴人に対して事前に説明した旨主張する。しかし、本件調査委員会の聴き取り調査において、 控訴人は、「私の意向は、一度も聞かれたことはありません。」などと、上記のような説明を受けたことを明確に否定している一方で、Cは、「記憶にないですね。当時のこと。説明はしたと思うんですけれども。あまり、丁寧には説明してなかったかもしれないですね。」などと曖昧な説明をしていること(甲25)に照らせば、被控訴人の上記主張は、理由がない。 また、被控訴人は、指導担当教授の変更について、控訴人が異議を申し立てず、Fと親しい関係を維持していることなどからして、控訴人にとって不利益となるものではなく、控訴人の承諾があったというべきである旨主張する。しかし、上記変更後の経過にすぎない被控訴人の主張する事情から控訴人の承諾があったと推認することはできず、被控訴人の上記主張 は、理由がない。 控訴人は、Cが、指導担当教授の変更に際して、控訴人の指導下にあった学生がFの研究室に移ることを妨害した旨主張する。しかし、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。 控訴人は、C、B及びKが、さきもり塾から控訴人を一方的に解任し、控訴人の業績を最終報告書の記載から故意に排除した旨主張する。 しかし、認定事実⑵ウによれば、控訴人は、平成22年度の終了をもって、さきもり塾の委員から一方的に外されたものの、同委員は任期に関する明確な定めのある地位でなく、少なくとも控訴人 しかし、認定事実⑵ウによれば、控訴人は、平成22年度の終了をもって、さきもり塾の委員から一方的に外されたものの、同委員は任期に関する明確な定めのある地位でなく、少なくとも控訴人がその任期の中途で解任されたわけではなかった上、控訴人が上記委員から外された原因は、運営委員会における控訴人の出席率が悪かったことも一因であることが認 められる。加えて、認定事実⑵ウによれば、控訴人は、平成22年度に「さきもり特別研究」の指導員を担当しながら、最終報告書において担当教員として記載されていなかったことが認められるものの、Kは、原審における証人尋問で、「それぞれの授業、防災塾の授業は、多岐にわたっていましたので、各事業で中心となってやっていただいたかた、それから最終年 度まできちんと続けていただいたかたを中心に、主に関わっていただいたかたを中心に記載をしたということでした。」と証言しており(証人調書11~12頁)、工学研究科の教員として氏名が記載されているB、I、L及びJは、いずれも最終報告書上の各年度又は少なくとも最終年度(平成25年度)に記載されていること(甲11)は、上記証言に沿うもので あるともいえる。これらの説示に照らせば、控訴人が担当教員として記載されなかったことは、直ちに不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上違法なものと認めることはできない。ただし、上記運営委員会への出席義務があるか否かは明らかでなく、控訴人以外にも欠席していた委員がいたのではないかと考えられることからすると、控訴人に対して継続的に 一連のハラスメント行為が行われていた中で生じた事実として評価する ことができる。 エ Bによる公募に関する圧力 認定事実⑵エのとおり、建築学専攻は、Jの後任 一連のハラスメント行為が行われていた中で生じた事実として評価する ことができる。 エ Bによる公募に関する圧力 認定事実⑵エのとおり、建築学専攻は、Jの後任人事につき、公募によることを計画し、予備選考委員会において、平成30年公募の要領を内定したこと、同要領においては、「専門分野:コンクリート構造・材料研究 分野およびこれに関連する分野」などとされていたこと、控訴人は、同年5月31日、Bと話合いをし、Bから、「今回は応募しないでほしい。たとえ応募しても、募集と専門が違うので無理である。」などと言われたことが認められる。 控訴人は、構造系における准教授は全員助教から昇進していたにもかか わらず、建築学専攻の教授会議が、構造系の准教授であったJの後任人事を、専門分野が控訴人と異なる要領の公募によることを計画した上、Bが、工学研究科長としての立場を利用し、控訴人に対して公募要領に該当しないので応募しないよう不当な圧力をかける発言をしたものであり、平成30年公募は控訴人を排除する目的に基づくものであるなどと主張する。 しかし、認定事実⑵エのとおり、被控訴人大学においては、平成23年度以降、優秀な人材を確保するために公募制や任期制の取組を推進することが年間計画として謳われ、平成28年10月1日に学長裁定により策定された基本方針により、教職員の人事については「原則公募を継続する。」とされていたものであって、平成30年6月当時、構造系における准教授 が全員助教から昇進していたことを認めるに足りる証拠はない(控訴人は、上記当時、建築学専攻の准教授は、実態として、公募に加え、内部の昇進が通常の方法として採用されていたなどと主張するが、直ちに上記説示を左右しない 進していたことを認めるに足りる証拠はない(控訴人は、上記当時、建築学専攻の准教授は、実態として、公募に加え、内部の昇進が通常の方法として採用されていたなどと主張するが、直ちに上記説示を左右しない。)。平成30年公募の公募要領に係る専門分野は、控訴人のそれ(木造)と異なるコンクリートとされていたが、コンクリートを専門 分野としていたJの後任人事であることに照らせば、直ちに不合理である とはいえない。そうすると、平成30年公募が控訴人を排除する目的に基づくものであるとまで認めることはできない。 また、前記認定のBの発言は、控訴人の求めに応じて行われた話合いの席上におけるものであり、上記のとおり公募要領に係る専門分野が控訴人のそれと異なることを踏まえ、控訴人に対して一層の熟慮を促す趣旨の ものであったと考えることもできるのであり、Bが当時工学研究科長の地位にあったことを斟酌しても、一概に控訴人に対する不当な圧力であると評価することまではできず、Bの上記発言から、平成30年公募が上記目的に基づくものであると直ちに認定することはできない。 そうすると、平成30年公募やBの上記発言をもって、控訴人の主張す る不法行為ないし国家賠償法1条1項の適用上の違法行為が成立すると認めることはできない。ただし、Bが、本件同意書に記載された任期が近づきつつあった平成24年7月頃に、控訴人に対して高等専門学校の助教の募集要領に関する資料を渡していること、後に控訴人が准教授に昇進していることからすると、Bの上記発言が控訴人を排除する目的に基づくも のであった可能性も直ちに否定することができないのであって、控訴人の上記主張も十分理解できるものであり、違法とまでは認められないものの、少なくともBが控訴人に 控訴人を排除する目的に基づくも のであった可能性も直ちに否定することができないのであって、控訴人の上記主張も十分理解できるものであり、違法とまでは認められないものの、少なくともBが控訴人に対して上記資料を渡したことについては、控訴人に対して継続的に一連のハラスメント行為が行われていた中で生じた事実として評価することができる。 オ控訴人の昇進の妨げ 認定事実⑵エのとおり、控訴人は、予備選考委員会において、本選考委員会に推薦され、令和2年2月12日に開催された本選考委員会の席上における無記名投票の結果、可とする票を投じた者が25名、否とする票を投じた者が1名、白票を投じた者が4名で、准教授に昇進することが事実 上決定したこと、控訴人は、同年3月1日付けで、准教授に昇進したこと が認められる。 控訴人は、Bらが前記の本選考委員会において白票又は否決票をそれぞれ投じたものであり、准教授の昇進を決める会議において白票又は否決票が投じられることは極めて不自然で、Bらが、公的な場で控訴人の評価を著しく貶め、その昇進を妨げる行為をしたなどと主張する。 しかし、Bらが前記の白票又は否決票をそれぞれ投じたことを認めるに足りる証拠はないし、上記本選考委員会のように准教授の昇進の可否を決める会議において白票又は否決票が投じられること自体が極めて不自然であるとか、そのことにより被投票者(被推薦者)の評価が著しく貶められるなどと直ちに認めることもできない。また、結果的にみても、控訴 人は、上記本選考委員会において大多数の賛成票を得て、その後に准教授に昇進したものであり、Bらの投票行動のいかんにより准教授に昇進できない可能性が高い状況にあったとはいえないのであって、上 人は、上記本選考委員会において大多数の賛成票を得て、その後に准教授に昇進したものであり、Bらの投票行動のいかんにより准教授に昇進できない可能性が高い状況にあったとはいえないのであって、上記白票等によって控訴人の昇進は何ら妨げられていない。 したがって、控訴人の上記主張は、その余の点について検討するまでも なく、理由がなく、控訴人の主張する不法行為ないし国家賠償法1条1項の適用上の違法行為が成立すると認めることはできない。 カ院生用研究室配分の拒絶 控訴人は、准教授に昇進するに伴って必要な院生用研究室の割当てを受けず、G(当時建築学専攻長)に対して院生用研究室の割当てを要求して も、Gは、これを拒絶した上、建築学専攻内で調整又は審議することも拒絶したなどと主張する。 認定事実⑵オのとおり、控訴人が准教授に昇進した当時、建築学専攻において、教員に対する院生用研究室の割当てに関する内規等はなく、運用上、かねてより各系ごとに院生用研究室が割り当てられていたものであり (その割当ては、各系の研究分野の特色等を理由に、教員一人当たりの面 積としてみると、各系間で相当程度の較差があった。)、控訴人は、准教授に昇進した後、その強い希望、要求にもかかわらず、被控訴人大学から自らの院生用研究室の割当てを受けられなかったものである。 大学院生が充実した研究活動を行い、研究成果を上げるためには、落ち着いて研究活動を行うための研究室が必要であるところ、大学教員にとっ て、自らが教育指導する大学院生の研究環境を整えてやることは、その責務であり、自らが教育指導する大学院生のための院生用研究室の割当てを受けられなければ、上記の教員としての責務を果たすことができない て、自らが教育指導する大学院生の研究環境を整えてやることは、その責務であり、自らが教育指導する大学院生のための院生用研究室の割当てを受けられなければ、上記の教員としての責務を果たすことができないことになってしまうのである。そして、院生用研究室が、他の教員と異なって割り当てられていない教員には、大学院生にとって、他の教員の下で研究 するよりも研究環境が悪いということになり、優秀な大学院生が集まりにくくなるから、優秀な後進を育てるという大学教員にとって本質的な部分において、劣悪な状態に置かれているということになるし、自らの研究に対する補助という面でも、優秀な大学院生による補助を受けられないことになるから、研究者という面での影響も無視することができないものであ る。また、控訴人の指導を受けている大学院生としても、他の研究室を事実上借用させてもらっている状態で、他の大学院生と比べて劣悪な環境に置かれ、差別を受けていることになり、その意味でも、控訴人は精神的苦痛を受けることになるというべきである。 このように、院生用研究室は、准教授である控訴人にとって、教育研究 活動上、極めて必要性及び重要性が高い設備であるから、他の教員と同様にその割当てを受けることが強く保障されるべきであり、Gは、建築学専攻長として、事実上のものにすぎない上記運用を硬直的に維持するのではなく、控訴人の要求に対し、割当ての必要性や是非等につき、各系間の較差の是非等を含め、少なくとも建築学専攻内で十分に検討すべきであった と解されるし、教育研究機関としての本質に関わる事項であるから、工学 研究科全体の問題として検討することも必要であったと解される(なお、そのような十分な検討が行われた場合の結果については、控訴人においても、仮 機関としての本質に関わる事項であるから、工学 研究科全体の問題として検討することも必要であったと解される(なお、そのような十分な検討が行われた場合の結果については、控訴人においても、仮にそれが十分に満足のいく内容でなかったとしても、場合により受け入れなければならないこともあり得るであろう。)。それにもかかわらず、Gは、上記運用を漫然と踏襲し、その一存で、控訴人に対する院生用 研究室の割当てを必要のないものと一蹴して、上記のような検討の手続を採ろうともしなかったのである。 これらの説示に照らせば、Gの上記対応は、控訴人の准教授としての教育研究活動に対する配慮を著しく欠いたものであり、就労に関わる事項において控訴人の意に反する不適切な言動により控訴人に不利益を与えた ものとして、控訴人に対するハラスメントに当たるものと評価するのが相当であり、社会的にも著しく不相当であって、不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上、違法なものといわざるを得ない。 これに対し、被控訴人は、控訴人が合理的理由なく院生用研究室の割当てを求めたのであるから、これに応じなかったGの対応は違法でない旨主 張する。しかし、被控訴人の上記主張は、前記の運用を所与の前提としたものというべきであるから、前記の認定及び判断のとおり理由がない。 なお、Gは、原審における証人尋問で、控訴人以外に控訴人のように院生用研究室の割当てを要求した教員はいなかった旨証言し(証人調書1頁)、被控訴人は、同旨の記載がある建築学専攻教授等の陳述書(乙46 ~52)を複数提出する。しかし、仮にそうであったとしても、上記運用が事実上のものにすぎない以上、不可侵のものとしてこれに拘束されなければならないものではないことは明 教授等の陳述書(乙46 ~52)を複数提出する。しかし、仮にそうであったとしても、上記運用が事実上のものにすぎない以上、不可侵のものとしてこれに拘束されなければならないものではないことは明らかであって、前記の認定及び判断を左右しない。 キ Kによる侮辱的発言 控訴人は、院生用研究室の割当てについて控訴人から相談を受けたKが、 控訴人に対し、「そういうのは自分で考えてごらんよ、大人なんだから」などと侮辱的な発言をしたなどと主張する。 しかし、認定事実⑵オのとおり、控訴人の主張する上記発言の事実が認められ、これは、聞き手によっては揶揄されたものとして不快に感じることのあり得る言辞であり、大学の教授から准教授に対する発言として相当なもの であるとはいえないが、これを単独でみた場合、直ちに不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上違法なものとまで認めることはできない。ただし、控訴人に対して継続的に一連のハラスメントが行われていた中で生じた事実として評価することができる。 ク K及びGによる不当評価 控訴人は、K及びGが控訴人に対し、それぞれ、控訴人が一方的に総合工学コースの担任業務を放棄し、当該業務が停滞しているかのような内容のメールを送信したり、控訴人を教室会議で査問しようとしたりしたなどと主張する。 しかし、認定事実⑵カのとおり、控訴人は、後期の授業開始日であり、 Kと共同で担当していた総合工学コースの講義内容に関する打ち合わせが予定されていた令和2年10月1日、Kに対し、メールで、「K先生の言動で業務に支障を来している。」などと告げ、体調不良を理由に上記打合せを突然キャンセルし、以後の連絡を一切絶つとともに、その頃、M(当時 れていた令和2年10月1日、Kに対し、メールで、「K先生の言動で業務に支障を来している。」などと告げ、体調不良を理由に上記打合せを突然キャンセルし、以後の連絡を一切絶つとともに、その頃、M(当時工学研究科長)に対し、上記コースの担任の辞任を申し入れたものであ る。 上記事実に照らせば、Kにおいて、控訴人が上記コースの担任業務を十分に行うことができていないのではないかなどと疑ったとしても、致し方のない面があるし、控訴人が本来分担すべき担任業務について自ら行わなければならなくなることも、十分に想定され、ひいては、上記コースの講 義が停滞して受講生に不利益が及ぶことも懸念される状況であったとい える。そうすると、K及びGが、控訴人に対し、約1箇月ないし1箇月半が経過した令和2年11月2日又は同月12日になってそれぞれ認定事実⑵カのとおりのメールを送信したことは、上記コースを適切に運営するために必要な業務上の連絡として捉えることができるものであり、直ちにその相当性を欠いているということはできない。 したがって、控訴人の前記の主張は理由がなく、K及びGの上記各行為が不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものとは認めることはできない。 ケ被控訴人理事としてのQによる行為 前提事実に加え、証拠(証人Q)及び弁論の全趣旨によれば、①控訴人 は、令和2年12月28日、本件訴えを提起したこと、②本件訴えに係る訴状は、令和3年2月3日、被控訴人に送達されたこと、③Qは、本件訴えが提起されたことを受けて、被控訴人の理事会の了承に基づき、訴訟代理人弁護士を選任することや、控訴人と関係のある部署が訴訟外で個別に直接対応するなどして混乱することを避けるため、今後 Qは、本件訴えが提起されたことを受けて、被控訴人の理事会の了承に基づき、訴訟代理人弁護士を選任することや、控訴人と関係のある部署が訴訟外で個別に直接対応するなどして混乱することを避けるため、今後の対応については 上記弁護士にその窓口を一本化することを決め、上記部署(工学研究科のほか、企画総務部、財務部及び施設部)に対し、その旨を指示するなどしたことが認められる。 控訴人は、Qが被控訴人の複数の部署(工学研究科を含む。)に対し、控訴人が本件訴えを提起したことを、殊更に悪意をもって言いふらしたな どと主張する。しかし、Qが、前記の認定事実を超えて、控訴人の上記主張のような言動をしたことを認めるに足りる証拠はない。また、Qが前記の認定のとおり指示するなどしたことは、被控訴人の理事としての職責に基づく業務行為であると評価することができ、合理的かつ相当なものであるといえる。 また、控訴人は、Qが上記部署に対し、控訴人からの一切の願い出や問 合せにつき、全て被控訴人代理人弁護士を通じて申し出るように伝え、他の一切のことには直接対応しないように指示したことを主張する。確かに、いまだ教員として在籍し、研究活動や教育活動を行っている者に対する対応として行き過ぎの面があるといえるし、控訴人が、これを一連の村八分的なハラスメントの一つとして捉えることも、無理からぬところはあるが、 代理人弁護士を選任した法人が、当該選任の契機となった案件や同じ当事者間のその他の案件を含め、相手方に対する対応等の一切を上記弁護士を通じて行うこととし、上記対応等を一元化、一本化することも、世上みられることであり、その必要性・相当性を否定することはできないから、直ちに不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上 を上記弁護士を通じて行うこととし、上記対応等を一元化、一本化することも、世上みられることであり、その必要性・相当性を否定することはできないから、直ちに不法行為を構成し、国家賠償法1条1項の適用上違法であると認める ことはできない(なお、控訴人は、Qないし被控訴人による採証行為を含めた訴訟活動についても問題視するようであるが、そのような訴訟活動行為について直ちに違法と認めることはできない。)。 コ小括以上によれば、控訴人の主張する行為(原判決別紙1記載の行為)のうち、 ①任期に関する不当な取扱い及び不安定な地位の継続、②本件カメラによる盗撮、③構造系からの排除、及び④院生用研究室配分の拒絶の点については、それぞれの認定及び判断の限度で、国家賠償法1条1項の適用上違法行為であると認められる(以下、これらの違法行為を丸数字の順に「本件違法行為①」などといい、これらを併せて「本件各違法行為」という。)。なお、国 立大学法人は同項の「公共団体」に、その教職員は同項の「公務員」にそれぞれ該当し、本件各違法行為がいずれも公務員としての職務として行われたものであることは、明らかである。 ⑵ 安全配慮義務違反について認定事実⑶イのとおり、本件調査委員会は、本件違法行為①及び③について、 それぞれ控訴人に対するハラスメントに該当すると判断し、本件調査報告書中 で、本件違法行為①について「採用時の不当な取扱いについて、本学役員会において任期付きで採用することを認めていないポストであると知りながら、機械工学専攻との間でのポストの使用年限があるという専攻の事情を新任の助教に押し付け、当時の教授・・・の総意として任期に関する同意書を作成し押印させた行為は、結果的に違法とはならなかったもの がら、機械工学専攻との間でのポストの使用年限があるという専攻の事情を新任の助教に押し付け、当時の教授・・・の総意として任期に関する同意書を作成し押印させた行為は、結果的に違法とはならなかったものの、違法性が疑われる程 に悪質なハラスメント行為である。」などと、また、本件違法行為③について「人事上の継続的な不当行為については、現在もA教授の所属が不明瞭な状態は継続しており、未だにこの問題は解決されていない。この事項に関しては、A助教が採用された当時の建築学専攻の教授であるC教授、B教授、E教授及びD教授の責任は極めて重い。また、A助教採用時の経緯を十分に把握してい なかったH元教授及びG教授についても、専攻を主導する専攻長の立場にありながら、主体的にこれを解決しようとしなかったことは、2次的なハラスメント行為である。」などと意見を述べるなどし、これを受けて、ハラスメント対策委員会は、平成31年3月28日、本件調査報告書のとおりのハラスメントを認定するとともに、H元教授及びGが、控訴人の置かれていた不当な状況を 承知していながら、建築学専攻長として主体的にこれを解決しなかったことが、管理監督者として不適切な行為で、ハラスメントであると認定したものである。 これらによれば、被控訴人は、控訴人に対し、雇用契約に基づく安全配慮義務として、本件違法行為①及び③によって生じた控訴人の不安定で、構造系内における孤立した就業環境を、速やかに改善すべき義務を負いながら、少なく とも平成31年3月28日まで上記就業環境を十分に改善することを怠り(被控訴人は、平成28年1月1日に至って、ようやく控訴人を建築学専攻の助教に異動させたが、それだけでは、上記改善として不十分である。)、もって、上記義務に違反したものというべきである ることを怠り(被控訴人は、平成28年1月1日に至って、ようやく控訴人を建築学専攻の助教に異動させたが、それだけでは、上記改善として不十分である。)、もって、上記義務に違反したものというべきであるから、被控訴人の上記義務違反という不作為について、上記安全配慮義務に違反した不法行為が成立するというべ きであり、この認定及び判断を左右するに足りる証拠はない。 なお、認定事実⑶エのとおり、本件再調査委員会報告書によれば、上記ハラスメントの認定がいずれも事実誤認であるなどとして否定されていることが認められる。しかし、認定事実⑶イのとおり、本件調査報告書の内容及び結論は、ハラスメント対策委員会において承認されており、その席上、第三者委員会調査報告書において指摘されているような調査方法等の疑義が示され、議論 された形跡は、何らうかがわれないし、QやBも、それぞれ上記結論を前提とする意見を述べたり謝意を表したりしていたものである。それにもかかわらず、上記ハラスメント対策委員会の承認から2年以上が経過し、控訴人によって本件訴えが提起された後である令和3年4月になって、再調査が行われることに至ったという経過は、損害賠償義務を免れるために組織的に行われたのではな いかと疑われる面がある上、本件再調査委員会は、その公平性についても疑問がないわけではなく、新たな調査として書面調査(書面による回答方式)を実施したものにすぎず、本件調査委員会のように直接の聴き取り調査を実施したものではないし、本件調査委員会による調査時からの更なる年月の経過等によって当事者及び関係者の記憶が一層減退していたことも当然想定されるとこ ろである上、所属する組織に対して訴訟により損害賠償請求を行っている控訴人に対する拒否感や嫌悪感が影響してい の経過等によって当事者及び関係者の記憶が一層減退していたことも当然想定されるとこ ろである上、所属する組織に対して訴訟により損害賠償請求を行っている控訴人に対する拒否感や嫌悪感が影響していることも十分に考えられる。これらの事情に照らせば、本件再調査委員会報告書の内容及び結論は、その信用性に疑義があり、少なくとも本件調査報告書の内容及び結論よりも信用性が高いものとはいえないから、本件再調査委員会報告書は、上記認定及び判断を左右する ものではない。 4 争点3(消滅時効の成否)について⑴ 被控訴人は、争点1において控訴人の主張する行為のうち、本件違法行為①ないし③について、いずれも、これらの行為の終了日であり控訴人がその損害及び加害者を知った時から、本件訴えの提起日までに3年以上が経過している ため、被控訴人の援用した消滅時効により、上記各行為を理由とする国家賠償 法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求権が消滅した旨主張する。 ⑵ア前記3⑵の認定及び判断のとおり、本件違法行為①及び③については、被控訴人の控訴人に対する安全配慮義務違反の不法行為が成立する上、これらは、いずれも控訴人の就業環境に関わるもので、かつ、本件調査委員会が本件調査報告書中で指摘するとおり、建築学専攻の教授らによる問題意識の欠 如等の根深い体質が色濃く影響しているというべきであるという共通点があり、控訴人の採用当初から一貫した、控訴人を構造系の教員として長くは置いておきたくないという意識の下で、いわば村八分にされ続けてきたものと評価せざるを得ないことなどからすれば、これらは一連の不法行為に該当するものというべきである。 そして、そのように一連のものとして評価される上記不法行為は、少なくとも きたものと評価せざるを得ないことなどからすれば、これらは一連の不法行為に該当するものというべきである。 そして、そのように一連のものとして評価される上記不法行為は、少なくともハラスメント対策委員会においてハラスメントの認定がされた平成31年3月28日当時まで継続していたというべきであるから、これを理由とする国家賠償法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求権については、本件訴えが提起されるまでに被控訴人の主張する消滅時効が完成して いないことは明らかである。 イ他方、本件違法行為②については、本件カメラが平成20年8月頃に本件執務室から撤去されたことにより、違法行為として完全に終了したものというべきであるし、直ちに前記アのような根深い体質が色濃く影響しているとまでみることはできないから、本件違法行為①及び③と一連の不法行為であ ると評価することはできない。 そして、控訴人は、遅くとも上記終了までには、本件違法行為②による損害及び加害者を知ったというべきであるから、その知った時から本件訴えが提起されるまでには、優に3年が経過していると認められる。 そうすると、本件違法行為②については、控訴人の被控訴人に対する国家 賠償法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求権は、消滅時効が完 成しており、被控訴人がこれを援用することにより、消滅したと認められる。 5 争点2(控訴人の損害)について前記2ないし4の認定及び判断によれば、控訴人は、被控訴人に対し、本件違法行為①、③(これらによる安全配慮義務違反の点を含む。)及び④によって生じた損害の限度で、その賠償を求めることができると認められるので、その観点 から、控訴人の主張する損害について順次検 件違法行為①、③(これらによる安全配慮義務違反の点を含む。)及び④によって生じた損害の限度で、その賠償を求めることができると認められるので、その観点 から、控訴人の主張する損害について順次検討する。 ⑴ 平成22年から令和元年までの10年分の、工学研究科における助教と准教授との給与の差額(請求額1200万円)本件違法行為①、③又は④がなければ、控訴人が、平成22年に、あるいは遅くとも令和元年までに、当然に准教授に昇進することができたとか、その昇 進の蓋然性が高かったと認めるに足りる証拠はない(その可能性が存在したとしても、その程度は定かでないというほかない。)。 したがって、上記損害に関する控訴人の主張は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。 ⑵ 工学研究科の教授らの不法行為により控訴人が対応を強いられた日当(請求 額521万2500円)控訴人が、本件違法行為①、③又は④により、その主張するような時間外手当相当額の損害(原判決別紙2)を被ったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記損害に関する控訴人の主張は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。 ⑶ 得られるべきであった研究費(請求額400万円)控訴人の主張する研究費は、いずれも、教員ないし室員としての教育研究活動等のために使用されるべきものであり、私的に使用することが許されないものであるから、控訴人が本件違法行為①、③又は④により上記研究費相当額の財産的損害を被ったと認めることはできない。 したがって、上記損害に関する控訴人の主張は、その余の点について検討す るまでもなく、理由がない。 ⑷ 校費の計画的予算執行(年度内執行)が と認めることはできない。 したがって、上記損害に関する控訴人の主張は、その余の点について検討す るまでもなく、理由がない。 ⑷ 校費の計画的予算執行(年度内執行)が行えず執行できなかった費用(請求額91万9878円)控訴人の主張する予算(費用)は、教員としての教育研究活動等のために充てられるべきものであり、私的に使用することが許されないものであるから、 前記⑶の認定及び判断と同様であり、上記損害に関する控訴人の主張は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。 ⑸ 慰謝料(請求額1500万円)前記2ないし4の認定及び判断によれば、控訴人は、本件違法行為①、③及び④により、長年にわたり建築学専攻の構造系内において継続的に村八分のよ うに扱われ、不安定で孤立した就業環境を強いられ、また、院生用研究室の割当てに関する適切な対応も受けられなかったものであり、相当程度の精神的苦痛を受けたというべきである。 上記説示の事情のほか、本件に表れた一切の事情に照らせば、控訴人の上記精神的苦痛に対する慰謝料は、100万円をもって相当と認める。 ⑹ 弁護士費用(請求額371万3237円)本件の事案の内容及び前記⑸の慰謝料額、その他本件に表れた一切の事情に照らせば、弁護士費用は、10万円と認めるのが相当である。 ⑺ 合計 110万円(100万円+10万円) 6 まとめ 以上によれば、控訴人は、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項及び民法709条に基づく損害賠償請求として、110万円及びこれに対する不法行為の後であり訴状送達の日の翌日である令和3年2月4日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めることができ 9条に基づく損害賠償請求として、110万円及びこれに対する不法行為の後であり訴状送達の日の翌日である令和3年2月4日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めることができると認められる。控訴人及び被控訴人は、それぞれ、その他にも種々主張するが、いずれも、当裁判所の以上の認定及び判断を左右するものではない。 第4 結論 よって、控訴人の本件請求を棄却した原判決は一部相当でなく、本件控訴は一部理由があるから、上記のとおり原判決を変更することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判官 寺本明広 裁判官 亀村恵子 裁判長裁判官長谷川恭弘は、退官につき署名押印できない。 裁判官寺本明広

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