- 1 -主文本件各即時抗告をいずれも棄却する。 理由 ,,本件各即時抗告の趣意は検察官検事鈴木和宏作成名義の即時抗告申立書にこれに対する弁護人の意見は,弁護人森川金寿,同環直彌,同竹澤哲夫,同斎藤一好,同新井章,同内田剛弘,同吉永満夫,同大島久明及び同岡山未央子連名作成名義の意見書及び意見書( )にそれぞれ記載されたとおりであるから, これらを引用する。 論旨は,要するに,原決定は,A1,A2,A3,A4及びA5(以下,一括して「A1ら」という)が有罪判決を受けることとなった治安維持法1条。 及び10条の各規定(1条は「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織,シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ処スと10条は私」,,「有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者若ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」とそれぞれ規定していた)は,天皇が昭和20年8。 月14日にポツダム宣言を受諾するとともに終戦の詔書を発したことにより,ポツダム宣言は国内法的にも効力を有するに至り,その結果,上記各規定は実質的にその効力を失うに至ったとし,かかる事態は,本件につき旧刑訴法36「」3条2号が免訴理由として定める犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキに当たり,鑑定人Bの鑑定意見書(以下「B鑑定」という)等は結論も含め。 裁判所の見解に影響を与えており,旧刑訴法485条6号にいう新証拠といえるから,本件は,同条同号の「免訴ヲ言渡(ス・・・ヘキ明確ナル証拠ヲ新)タニ発見シタル」場合に当たるとして,A 結論も含め。 裁判所の見解に影響を与えており,旧刑訴法485条6号にいう新証拠といえるから,本件は,同条同号の「免訴ヲ言渡(ス・・・ヘキ明確ナル証拠ヲ新)タニ発見シタル」場合に当たるとして,A1らについていずれも再審開始の決定をしたが,原決定には,( )治安維持法の適用法条は天皇が終戦の詔書を発 - 2 -したことによって実質的に失効したとの判断,( )再審の対象とならない同法 の法的効力について再審事由に当たるとした判断,( )B鑑定等は明確な新証 拠であるとした判断について,いずれも明らかな誤りがある,すなわち,( ) 治安維持法は,同年10月15日「治安維持法廃止等ノ件」と題する勅令が,公布されたことにより,同日廃止されるに至ったのであり,それまでは,同法は法的に有効に存在していたことは明らかである,ポツダム宣言の受諾は,同年9月2日の降伏文書調印の時点で初めてなされたものであるところ,同文書の記載自体からは,ポツダム宣言の受諾をもって治安維持法を始めとする関係法令を無効ないし廃止とするような効力が発生しているとは認められない( ),2再審制度は,確定した有罪判決の事実誤認に対する救済制度であるところ,治安維持法の失効の問題は,被告人がなした行為に適用すべき同法が有効なものとして存在していたかどうかという「法的評価」そのものの問題であり,およそ再審の対象となるものではない,本件のような場合の救済手段としては,非常上告の制度があるし,そもそも,A1らは,同年10月17日に大赦令が公布・施行されたことにより,すでに救済を受けている,( )B鑑定は,単なる 法律学者の学術的意見にすぎず,再審理由としての証拠の適格性を有しないばかりか,極めて代替性の高いものであって,これまでにも同趣旨の見解が散見されていたのである けている,( )B鑑定は,単なる 法律学者の学術的意見にすぎず,再審理由としての証拠の適格性を有しないばかりか,極めて代替性の高いものであって,これまでにも同趣旨の見解が散見されていたのであるから,証拠資料としての新規性が認められず,さらに,確定判決の結論を覆すに足る蓋然性の存在,すなわち明確性も認められない,これらの誤りは,本件再審開始決定の根幹に関わる重大なものであるから,原決定は取消しを免れない,というのである。 そこで,検討する。 初めに,本件において,請求人らに再審請求権があるか否かについて,大。 ,,赦による赦免との関係で検討するこの点に関する検察官の所論は本件ではA1らは,大赦により各有罪判決による刑の言渡しの効力を失うという効果が生じ,その時点で,すでに法律上の救済を受けるに至っていたから,再審請求- 3 -は許されないというものである。 ( )A1らの有罪確定判決と大赦令の公布・施行 関係資料によれば,①A1は,昭和20年9月15日,横浜地方裁判所において,治安維持法違反被告事件について,懲役2年,3年間執行猶予の判決を受け,②A2は,同年8月29日,同裁判所において,同被告事件について,懲役2年,3年間執行猶予の判決を受け,③A3は,同年8月30日,同裁判所において,同被告事件について,懲役2年,3年間執行猶予の判決を受け,④A4は,同年8月30日,同裁判所において,同被告事件について,懲役2年,3年間執行猶予の判決を受け,⑤A5は,同年9月15日,同裁判所において,同被告事件について,懲役2年,3年間執行猶予の判決を受け,これら有罪判決は,いずれもそのころ確定したものと認められる。 ところで,治安維持法は,昭和20年10月15日「治安維持法廃止等ノ,」,,件と題する昭和20年勅令第575号 猶予の判決を受け,これら有罪判決は,いずれもそのころ確定したものと認められる。 ところで,治安維持法は,昭和20年10月15日「治安維持法廃止等ノ,」,,件と題する昭和20年勅令第575号が公布・施行されたことにより同日廃止され,次いで,同月17日,昭和20年勅令第579号による大赦令が公布・施行された。同大赦令は,その1条1項で「昭和二十年九月二日前左ニ掲グル罪ヲ犯シタル者ハ赦免ス」と,同項20号で「治安維持法違反ノ罪」と規定しているところ,A1らは,いずれもこれに該当し,かつ,同大赦令が公布・施行された同年10月17日までに,上記各有罪判決が確定していたことが明らかであるから,A1らについては,当時施行されていた恩赦令3条1号により,同日以後,上記各有罪判決による刑の言渡しはその効力を失ったものである。 ( )大赦により赦免されたにもかかわらず,無罪を主張して再審を請求す ることが許されるか否かについては,消極説と積極説がある。 判例をみると,東京高裁昭和27年4月24日決定(高裁刑事判決特報29号148頁)は,確定判決が大赦によりその効力を失ったときは,これに対して無罪を主張して再審を請求することは許されないものと解すべきであるとし- 4 -(,,,ているただし確定判決の後に刑の廃止があった場合につき再審請求権は刑の廃止により消滅しない旨判示する東京高裁昭和40年12月1日決定・高刑集18巻7号836頁がある。 。)学説は,消極説(平野龍一・刑事訴訟法341頁ほか)と積極説(臼井滋夫・法律実務講座刑事編12巻2740頁・総合判例研究叢書刑事訴訟法()1 92頁,鈴木壽一・法律実務講座刑事編12巻2941頁,団藤重光・新刑事訴訟法綱要7訂版593頁,岸盛一・刑事訴訟法要義406頁,横井大三・刑事裁判 40頁・総合判例研究叢書刑事訴訟法()1 92頁,鈴木壽一・法律実務講座刑事編12巻2941頁,団藤重光・新刑事訴訟法綱要7訂版593頁,岸盛一・刑事訴訟法要義406頁,横井大三・刑事裁判例ノート( )362頁,鈴木茂嗣・刑事訴訟法292頁,森本和明・新 刑事手続Ⅲ519頁,高田卓爾・注解刑事訴訟法下巻[全訂新版]351頁,臼井滋夫=河村博・注釈刑事訴訟法[新版]7巻153頁,高田昭正・大コンメンタール刑事訴訟法7巻116頁ほか)に分かれている。 思うに,再審公判において,実体審理をせずに直ちに免訴の判決をすべきであるとしても,名誉回復や刑事補償等との関連では,再審を行う実益があることにかんがみると,積極説が相当と考えられる。したがって,検察官の上記所論は採用することができない。 次に,治安維持法が実質的に失効したとして刑の廃止があったことによる免訴事由を主張する再審請求が許されるか否かについて検討する。 検察官の所論は,( )ポツダム宣言の受諾は,昭和20年9月2日の降伏文 書調印の時点で初めてなされたものであり,また,終戦の詔書の記載からは,同宣言の内容は不明であり,このような詔書を勅令に準じるものとして官報公告と同一の効果を認めることはできないのであって,原決定には,ポツダム宣言を受諾した日時についても,同宣言の内容が国内法的に効力を有するに至った時期についても,その判断を誤っている,さらに,降伏文書の記載自体からは,ポツダム宣言の受諾をもって治安維持法を始めとする関係法令を無効ないし廃止とするような効力が発生しているとは認められず,治安維持法について言えば,同年10月15日「治安維持法廃止等ノ件」と題する昭和20年勅,- 5 -令第575号が公布され,同日廃止されるまでは,法的に有効に存在していたというべきで められず,治安維持法について言えば,同年10月15日「治安維持法廃止等ノ件」と題する昭和20年勅,- 5 -令第575号が公布され,同日廃止されるまでは,法的に有効に存在していたというべきであり,同年8月14日に実質的に失効したとする原決定は誤りである,( )仮にA1らに適用された治安維持法の法条がその判決言渡当時にお いて失効していたとしても,それは,事実の問題ではなく「法的評価」その,ものの問題であるから,およそ再審の対象となるものではない,旧刑訴法485条6号にいう免訴を言い渡すべき場合とは,訴訟条件となる実体的な事実について誤認がある場合を指すのであって,時効の起算点や中断に関する事実を原判決が誤って認定し,時効の起算点が早まったり,中断事由が存在しないことが新証拠によって認められ,その結果,時効完成という免訴事由が認められるような事実関係についての実体的な判断の変更がなされる場合に限られるのであり,刑の廃止があったことが後に分かったというような場合には,非常上告の問題となることはあっても,再審の対象外である,( )そもそも治安維持 法がその適用時において効力を有していたか否かは,法律判断の領域に属し,裁判所の専断事項であることは明白で,法律学者の鑑定にはなじまないし,単なる法律学者の学術的意見の開陳の域を出ないB鑑定は,当該事件における事実の認定を左右するような証拠とはいえず,再審理由としての証拠の適格性を有しない,また,B鑑定には,証拠資料としての新規性が認められず,B鑑定と異なる意見もあるように,未だ確定的かつ統一的な見解など存在しないというのが現状であり,原判決の結論を覆すに足る蓋然性の存在,すなわち「明確ナル証拠」としての性格の存在も認められない,と主張する。 そこで,所論にかんがみ検討するに,原判断には な見解など存在しないというのが現状であり,原判決の結論を覆すに足る蓋然性の存在,すなわち「明確ナル証拠」としての性格の存在も認められない,と主張する。 そこで,所論にかんがみ検討するに,原判断には,以下に述べるとおりの疑問がある。すなわち,所論( )との関係では,治安維持法1条,10条の廃止 につき,その実質的廃止を認めず,昭和20年10月15日公布の上記勅令に([,『』。]よって廃止されたとするのかC作成の鑑定意見書以下C鑑定というの結論,あるいは,それ以前に実質的に廃止されたことを認めるのかにつき)学説上争いがあり(判例をみると,不敬被告事件についての最高裁昭和23年- 6 -5月26日大法廷判決・刑集2巻6号529頁の多数意見は,大赦があったので免訴すべきであるとして,不敬罪がその行為当時消滅していたとの主張につき判断していないが,庄野理一裁判官の少数意見は,ポツダム宣言の受諾によ,。 り不敬罪の保護法益が消滅し不敬罪が実質的に廃止されていた旨述べていたまた,憲法の施行前すでにポツダム宣言の受諾によって直ちに自白に関する証拠上の制限に関する国民の権利が確立したとの所論を排斥した最高裁昭和25年2月1日大法廷判決・刑集4巻2号73頁がある,また,実質的廃止を認。)めるとしても,その時点を,昭和20年8月14日,日本国政府が連合国に対しポツダム宣言受諾を通告したときとするのか(B鑑定は,明示的に判断を示していないが,この見解を前提としているように解される,同日,天皇が終。)戦の詔書を発したときとするのか(原判断,あるいは同年9月2日,降伏文)書に署名がなされたときとするのかなどなど,その見解は様々であると考えられ,いずれを正当として採用すべきであるか,にわかに決し難い。原決定に影響を与えているB 判断,あるいは同年9月2日,降伏文)書に署名がなされたときとするのかなどなど,その見解は様々であると考えられ,いずれを正当として採用すべきであるか,にわかに決し難い。原決定に影響を与えているB鑑定の結論は,憲法学者らの間で有力な見解であることがうかがわれるところ,治安維持法1条の失効に関しては,説得的であるが,同法10条の失効に関しては,必ずしもそうではないようにも思われる。さらに,所論( )との関係では,再審は,事実認定の誤りの是正という点が基本になる のであるから犯罪後の処罰法令の実質的失効が免訴事由に当たるとしても最,(高裁昭和28年7月22日大法廷判決・刑集7巻7号1562頁参照,処罰)法令が実質的に失効したか否かは法解釈そのものという側面を有しており,それを根拠に再審理由があるとすることは,上記のような再審の本質と相容れないようにも思われるところである。すなわち,B鑑定及びC鑑定は,それぞれ国際法学の学説,さらには大日本帝国憲法,治安維持法の解釈に基づく法的判断を行っており,この法的判断が,治安維持法の実質的失効を認めるのか,認めるとしてその時期はいつかという判断に直結している。加えて,所論( )と の関係でも,以上のように相当の見解の対立があることからすると,治安維持- 7 -,「」法の実質的失効を説くB鑑定が旧刑訴法485条6号にいう明確ナル証拠に当たるといえるのかも問題となってくるところである。 以上のようにみてくると,検察官の上記所論を直ちに排斥することは困難であり,免訴を言い渡すべき明確なる証拠を新たに発見した場合に当たるとして再審を開始した原判断をにわかに是認することはできない。しかし,以下の理由により,請求人らが主張する他の再審理由の主張(原決定がいう「再審理由3)が理由あるものと認め たに発見した場合に当たるとして再審を開始した原判断をにわかに是認することはできない。しかし,以下の理由により,請求人らが主張する他の再審理由の主張(原決定がいう「再審理由3)が理由あるものと認められるから(これについて,原決定は,判断を」省略しているが,当審において直ちに判断することとする,原決定は,各請。)求につき再審を開始するとした結論においてこれを是認することができる。 原判決謄本不添付の点について本件各再審請求には,原判決謄本の添付がなされていない。原審において,検察官は,この点について,A2及びA3についての請求に関し,原判決謄本の添付がなく不適法であるから,各再審理由を判断する以前に,旧刑訴法49,,,7条504条により請求は棄却されるべきである旨主張しているのでまずこの点につき検討する。 この点について,原決定は「原判決が保存されておらず,請求人がその謄,本を取得することが物理的に不可能であるなど,本件各請求に原判決の謄本の添付がないことについては請求人の責めに帰すべきでない特殊な事情が存する。そうであれば,原判決の謄本の添付のないことのみをもって請求を棄却すべきではない。かかる特殊な事情が存する場合には,関係資料から再審理由の有無を判断できる程度に原判決の内容を推認できるのであれば,原判決の謄本の添付がなくても再審の請求は適法なものとして認められると解するべきである」と判断しており,正当である。 。 A1らに対する確定判決の判決原本が存在しないところ,請求人らは,判決書を復元し,これを各請求書において別紙として示しているが,その復元の過程は,関係資料に基づく,合理性を有するものと認められるので,これらを基- 8 -に以下の判断を進めて差し支えないものと考える。なお,原決定は,A2及びA3に関して, て示しているが,その復元の過程は,関係資料に基づく,合理性を有するものと認められるので,これらを基- 8 -に以下の判断を進めて差し支えないものと考える。なお,原決定は,A2及びA3に関して,刑の実質的廃止以外の再審理由のような具体的事実関係に基づく再審理由の有無を判断できる程度にまで至っているとは言い難いとするが,後述の再審理由があるとの判断をなす限りにおいては,A2(ただし,後述のとおりの補正をする)及びA3に関しても,本件各請求書において復元され。 た各判決書を基にすることで,差し支えないものと考える。 ,,。 以下各有罪の言渡しを受けた者ごとに判決復元の合理性につき検討する①A1A1については,同人に対する予審終結決定謄本写し(昭和20年8月27日付け。甲二号証の一[各請求人につき,証拠番号は同じであるが,以下,便宜,A1に係る事件記録を基に証拠を特定する)しか訴訟記録が存在しない。]が,特高月報(昭和19年8月分)写し(甲六号証)において,A1が「Dグループ」及び「Eグループ」所属とされているところから,いわゆる横浜事件の関係被告人の予審終結決定(謄本)写し,判決(謄本)写し等を参考の上,A1の予審終結決定記載の認定事実からいわゆる「泊会議」の1件を除いてA1の判決の認定事実とし,証拠としては,A1の当公廷における供述のみか,このほか,A1の予審訊問調書,本件記録編綴のFに対する予審訊問調書謄本の記載,A1の司法警察官訊問調書及びA1の検事に提出せる手記の一部あるいは全部が併記されていると推認しているのは(証拠については,便宜Gの判決にならって復元したとする,合理性があると考えられる。 。)②A2A2については,同人の判決及び訴訟記録として,存在が明らかなものは全くない。A2は,甲六号証において「Hグル は,便宜Gの判決にならって復元したとする,合理性があると考えられる。 。)②A2A2については,同人の判決及び訴訟記録として,存在が明らかなものは全くない。A2は,甲六号証において「Hグループ」に所属しているとされて,いるところから,同グループに所属したとされるGの判決謄本写し,Fの予審終結決定写しを検討したが,これらにA2の具体的犯罪行為は全く現れない。 しかし,甲六号証によれば,A2が,昭和16年9月ころから特に「I」の編- 9 -集活動に関し,他のHの編集部員と提携して,J系共産主義執筆者等を動員して大衆啓蒙に努めたことが容疑事実であったことが認められるので,A2の認定事実もこの事実に限られるものと推認し,証拠としては,Gの判決に挙示されたものを出ないと推認しているが,一応の合理性を有するものと考えられる(ただし,その活動をなした時期は,甲六号証に従い,昭和16年9月ころから昭和17年5月ころの間とすべきであろう。なお,残された関係被告人の判決からすると,Kの家族の救援金を拠出した行為等も含まれていた可能性がないとはいえない。 。)③A3A3については,同人の判決及び訴訟記録で,存在が明らかなものは全くないが,A3は,甲六号証において「Lグループ」に属していたとされている,ので,いずれも同グループに属するとされるM,N及びOの各判決(謄本)写し,A4,P,N及びQの各予審終結決定(謄本)写し並びに甲六号証にA3の名前が現れる各事実を集めるなどして,判決の認定事実を推認し,証拠は,M,N及びOの各判決(謄本)写しと同様,被告人の当公廷における判示同旨の供述を挙示していると推認しているが,合理性があるといえる(なお,A3は,後記同人の口述書写しにおいて,司法警察官から手記の作成を命じられ,事実の歪曲を強いられた ,被告人の当公廷における判示同旨の供述を挙示していると推認しているが,合理性があるといえる(なお,A3は,後記同人の口述書写しにおいて,司法警察官から手記の作成を命じられ,事実の歪曲を強いられた被疑事実を列挙している。推認のための資料は,A。)2の場合より相当に多いといえる。 ④A4A4については,訴訟記録としては,同人に対する予審終結決定写し(昭和20年8月24日付け。甲二号証の七)しか存在が明らかでないので,A4の,,「」予審終結決定写しを主たる根拠としA4が甲六号証においてLグループに属していたとされているので,同グループに所属するとされるM,N及びOの各判決(謄本)写し,P,N及びQの各予審終結決定(謄本)写しを参考にし,A4に対する判決の認定事実も同人に対する予審終結決定の事実と同一で- 10 -あると推認し,証拠としては,M,N及びOの各判決(謄本)写しと同様,被告人の当公廷における判示同旨の供述を挙示しているものと推認できるとしているが,合理性を有すると考えられる。 ⑤A5A5については,同人の判決及び訴訟記録で,存在が明らかなものは全くないが,A5が,甲六号証において「Dグループ「R」及び「Jグループ」,」,所属とされているところから,各グループに共通して所属するとされるなどしたSの判決謄本写しを主たる根拠とし,同じく各グループ所属のK及びFの予審終結決定写し,A1の予審終結決定謄本写し,Tの判決写し,Uの予審終結決定謄本写し,Gの予審終結決定謄本写し及び判決謄本写し等を参考にして,A5の判決の認定事実を推認し(ただし,いわゆる「泊会議」の件は,Gの判決においては認定されていないので,A5についても認定されていないものと推認した,証拠としては,被告人の当公廷における供述のみか,このほか, 定事実を推認し(ただし,いわゆる「泊会議」の件は,Gの判決においては認定されていないので,A5についても認定されていないものと推認した,証拠としては,被告人の当公廷における供述のみか,このほか,。)被告人に対する予審訊問調書,本件記録編綴のFに対する予審訊問調書謄本の記載,被告人に対する司法警察官訊問調書,被告人の検事に提出せる手記の記載の一部あるいは全部が併記されているものと推認した(ただし,復元判決では,証拠については,便宜Sの判決にならった)としているのは,合理性が。 あると考えられる。 なお,付言するに,いわゆる横浜事件関係被告人の残された判決(謄本)写(),,し及び予審終結決定謄本写し等を検討するとそれらに記載の犯罪事実はいずれも,要するに「・・・等の諸般の活動をなし,もって(国体を変革す,,ることを目的とし,かつ,私有財産制度を否認することを目的とする結社である)Z1及びZ2党(ただし,昭和18年6月のZ1解散声明後の行為については,後者のみを掲げているようである)の目的遂行のためにする行為をな。 した(これは,治安維持法1条後段及び10条にそれぞれ該当する事実で,」刑法54条1項前段の観念的競合であり,科刑上一罪となる)というもので。 - 11 -あり,この限度を出るものはない。そうすると,A1らに関しても,予審終結決定(謄本)写しが存する者はもちろん,そうでない者についても,上記甲6号証等の参考資料をも併せ検討すると,それぞれの判決において認定された事実は,上記の限度内の事実であったことは動かないと認められる。そうであるとすると,個々の具体的犯罪行為をすべて詳細に確定できなくても,後述の判断をなす限りにおいては,例えば,A2に関して行った程度の犯罪事実の推認でも差し支えないものと解する。また,挙示 る。そうであるとすると,個々の具体的犯罪行為をすべて詳細に確定できなくても,後述の判断をなす限りにおいては,例えば,A2に関して行った程度の犯罪事実の推認でも差し支えないものと解する。また,挙示証拠も,後に詳述するが,上記程度の限度を出ないものと考えられるから,それぞれ上記の推認が合理的なものといえる。 原決定がいう再審理由3,4について,,,( )請求人らはA1らに無罪の判決をなすべき理由として①原判決は A1らの自白に基づいているが,当該自白は拷問ないしその影響下になされたものであって,信用性を欠くので,旧刑訴法485条6号に該当する事由がある(原決定がいう「再審理由3,②いわゆる横浜事件の捜査に関与した司法」)警察官であるV1警部ほか2名は,同事件の被疑者の一人であるTに対する特別公務員暴行傷害罪によって有罪の確定判決を受けており,旧刑訴法485条7号にいう検察官には司法警察官をも含むと解するのが相当であり,また,V1警部ほか2名は,いわゆる横浜事件の全被疑者に対する拷問の責任を負うべきものであることを考慮すれば,その有罪確定判決は,A1らについても,同条同号にいう「確定判決」に含ませるのが相当であるから,旧刑訴法485条7号に該当する事由がある(原決定がいう「再審理由4,と主張している。 」)これに対し,検察官は,原審において,上記主張①につき,A1及びA5に関しては,そもそも,同主張は,上記両名がすでに第1次再審請求に際して主張し,理由なしとして棄却されたものと同一のものであり,A2に関しては,そもそも,同主張は,同人がすでに第1次再審請求に際して主張していたものと同一のものであり,同一の原由による再審請求を禁じた旧刑訴法505条2項- 12 -に抵触する,仮にそうでないとしても,上記3名に関し 同主張は,同人がすでに第1次再審請求に際して主張していたものと同一のものであり,同一の原由による再審請求を禁じた旧刑訴法505条2項- 12 -に抵触する,仮にそうでないとしても,上記3名に関し,さらには,その余のA3及びA4に関し,各有罪の言渡しを受けた者については,原判決の原本及び記録が存在しないのであるから,有罪認定に用いられた証拠がいかなるものであったかを確定することができず,各有罪の言渡しを受けた者及びFらの供述以外に各有罪の言渡しを受けた者の犯罪事実を証明する証拠がなかったと断言することができない,また,請求人らが新証拠として主張する上記特別公務員暴行傷害事件の有罪確定判決は,Tに対する関係で拷問の事実があったことを認定したにとどまり,A1らに対しても拷問を加えたとの事実を認定をするものではなく,同判決がA1らの供述の信用性判断を左右する直接証拠となるものではない,そして,今回の請求に際して提出された証拠,資料を総合しても,依然として,A1らの供述が内容虚偽であって,それがゆえに確定判決の有罪認定に対して合理的な疑いを抱かせる蓋然性すなわち「明白性」の要件が充足されると認めることはできない,上記主張②につき,同主張も,A1,A2及びA5に関しては,それぞれ前同様であるから,旧刑訴法505条2項に抵触するほか,仮にそうでないとしても,上記3名に関し,さらには,その余のA3及びA4に関し,旧刑訴法485条7号には,司法警察官の職務犯罪が含まれていないことは,文言上明らかであるし,上記有罪確定判決は,A1らに関するものではないから,同条同号に該当しないことも明らかであるなどと主張する。 そこで,これらの主張を踏まえて,以下,検討する。 ( )A1らを含むいわゆる横浜事件の被検挙者のうち33名は,昭和22 年4月,同人らを 同条同号に該当しないことも明らかであるなどと主張する。 そこで,これらの主張を踏まえて,以下,検討する。 ( )A1らを含むいわゆる横浜事件の被検挙者のうち33名は,昭和22 年4月,同人らを取り調べた元神奈川県警部V1,同V2及び元神奈川県警部補V3(告訴状では,V3と表記されていたが,後記各判決では,V3と表記されている)を含む警察官多数を横浜地方裁判所検事局に対し,特別公務員。 暴行傷害罪により告訴したところ,V1,V2及びV3の3名が横浜地方裁判所に特別公務員暴行傷害罪により起訴され,同裁判所は,昭和24年2月25- 13 -日,上記3名に対し,部下の司法警察官数名と共謀していわゆる横浜事件関係者のTに対し暴行陵虐の行為をなし,傷害を負わせた事実を認定してV1を懲役1年6月,V2及びV3をそれぞれ懲役1年に処する旨の判決を言い渡し,同人らが控訴したが,東京高等裁判所は,昭和26年3月28日,上記3名に対し第1審判決とほぼ同じ事実を認定し,それぞれに対し第1審判決と同じ刑を言い渡し,同人らは,さらに上告したが,最高裁判所第一小法廷は,昭和27年4月24日各上告棄却の判決を言い渡し,上記有罪判決は確定した(各判決謄本写しが甲四号証の一ないし三。東京高等裁判所が認定した事実の要旨)は「被告人ら3名は,神奈川県警察部特別高等課に勤務していたもので,被,告人V1は左翼係長警部,被告人V2,同V3は同係取調主任警部補の地位にあって各司法警察官として思想事件の捜査に従事していたが,その職務に従事中,昭和18年5月11日,治安維持法違反事件の被疑者として検挙されたT(当時W会員)の取調べに際し,同人が被疑事実を認めなかったので,被告人らはその他の司法警察官等と共謀して同人に拷問を加えて自白させようと企て,同月12日ころから約1週間 の被疑者として検挙されたT(当時W会員)の取調べに際し,同人が被疑事実を認めなかったので,被告人らはその他の司法警察官等と共謀して同人に拷問を加えて自白させようと企て,同月12日ころから約1週間位の間,数回にわたって,神奈川県神奈川署の警部補宿直室において,Tに対し,頭髪をつかんで股間に引き入れ,正座させた上,手拳,竹刀のこわれたもの等で頭部,顔面,両腕,両大腿部等を乱打し,これにより腫れ上がった両大腿部を靴下ばきの足で踏んだり揉んだりする等の暴行陵虐の行為をなし,よって,Tの両腕に打撲傷,挫傷,両大腿部に打撲挫傷,化膿性膿症等を被らせ,そのうち両大腿部の化膿性膿症についてはその後治療まで数ヶ月を要せしめたのみならず長くその痕跡を残すに至らしめた」というものであった。 。 ( )ところで,請求人らは,旧刑訴法485条7号該当の主張もし,同条 「()()同号の略公訴ノ提起若ハ其ノ基礎ト為リタル捜査ニ関与シタル検察官略被告事件ニ付職務ニ関スル罪ヲ犯シタルコト確定判決ニ因リ証明セラレタルトキ」との規定中の検察官には司法警察官をも含むと解するのが相当であると主- 14 -張する。ことに,治安維持法においては,刑事手続の特則が定められており,その捜査に関しても,例えば,同法26条1項において「検事ハ被疑者ヲ訊,問シ又ハ其ノ訊問ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得」と規定されていることなどからすると,治安維持法の捜査に関して,特に,旧刑訴法485条7号にいう検察官には,司法警察官が含まれると解釈すべき根拠があるようにも思われる。また,上記3名が職務に従事中犯した犯罪に対する有罪確定判決は,Tに関するものであるが,上記3名は,その立場上も,いわゆる横浜事件全体の捜査を指揮するなどし,他の被疑者に対する拷問にも直接関与していたことがう 名が職務に従事中犯した犯罪に対する有罪確定判決は,Tに関するものであるが,上記3名は,その立場上も,いわゆる横浜事件全体の捜査を指揮するなどし,他の被疑者に対する拷問にも直接関与していたことがうかがわれることなどからすると,上記3名の確定判決は,Tに対する被告事件についてのものであるが,A1らに対する被告事件についても相応の関係あるいは意味を有するものであることも否定できない。 ( )結論としては,A1らにつき,旧刑訴法485条7号に該当する事由 があると直ちにはいえないとしても,以下のとおり,A1らについて,旧刑訴法485条6号の事由のあることが肯定される。 すなわち,いわゆる横浜事件関係被告人Tに関する司法警察官3名の上記有罪確定判決が,直ちにA1らにつき旧刑訴法485条7号のそれに該当するといえないとしても,その確定判決の存在により,A1ら及び他のいわゆる横浜事件関係被告人が上記告訴をするに当たって提出した,告訴状の付属書類である各口述書写し(甲五号証の二の1ないし31)及び「警察における拷問について」と題する書面(Q作成)写し(甲五号証の三)並びに陳述書(Q作成。 甲一五号証の一)等の信用性を否定することが極めて困難になったといわなければならない。Tに関しては,上記有罪確定判決において,同人作成の口述書写し(甲五号証の二の3)において述べられているところとほぼ同様の拷問の事実が認定されているところである。また,多数の告訴事実から,Tに対する拷問の事実のみが起訴されたのは,同人の口述書写しにあるように,口述書作成当時も両股に傷跡が残っているなどの立証方法があったからであることがう- 15 -かがわれるから,Tに対する拷問が,いわゆる横浜事件の司法警察官による取調べの中で例外的出来事であったとみるべきものではない。個別的にみる ているなどの立証方法があったからであることがう- 15 -かがわれるから,Tに対する拷問が,いわゆる横浜事件の司法警察官による取調べの中で例外的出来事であったとみるべきものではない。個別的にみると,A1らの各口述書写しにおいては,要旨,以下の事実が供述されている。各口述書は,刑事告訴の目的で作成されたものであり,その内容も必ずしも統一がとれていないが(例えば,A5の場合,拷問の事実だけで,取調べとの関連については,ほとんど供述されていない,その要旨を記載する。 。)①A1(甲五号証の二の7)昭和18年5月26日検挙。同日,山手警察署2階取調室土間において,V2,V4ほか8名くらいから,約1時間にわたり,竹刀,棍棒,竹刀のバラ,泥靴等により,頭,顔,背,膝,手,足を滅多打ちされ,全身疼痛激しく発熱あり。同月27日,同所において,V3,V5ら7,8名から前同様の拷問を受ける。同月30日,同所において,V3,V5から拷問を受ける。同年8月,,,。 ,6日同署特高室においてV3V6から前同様の拷問を受ける同月末日同署2階取調室土間において,V3,V4,V5,V6ら7,8名から,裸にして縛り上げ,正座させた両足の間に太い棍棒を差し込み,膝の上に乗っかかり,ロープ,竹刀,棍棒で全身をひっぱたく拷問を受け,半失神状態で房へ帰る。加えて,差入食物を厳禁し,手記を幾度となく書き改めさせ,手記の捏造を行った。昭和19年4月末,未決移監となり,検事調べに際し,検事に抗議した。予審判事に対しても,事件の捏造を徹底的に暴露し,石川予審判事も,予審調書においては,これを全部取り消した。昭和20年8月25日,石川予審判事は,A1の徹底糾弾に対し,詫び言を繰り返した。 ②A2(甲五号証の二の21)昭和19年1月29日検挙。同日伊勢佐木警察 予審調書においては,これを全部取り消した。昭和20年8月25日,石川予審判事は,A1の徹底糾弾に対し,詫び言を繰り返した。 ②A2(甲五号証の二の21)昭和19年1月29日検挙。同日伊勢佐木警察署調室において,V7警部補の取調べがあり,自白を強要されたが,否認した。その後4,5日して,同署取調室において,V1警部ほか2名が,頭髪をつかんで顔面を殴打した。その後約1ヶ月して,V2警部補,V8部長,V9巡査らが,前同所で取調べを行- 16 -い,否認すると,土間に正座させて頭髪をつかんでねじり,両側からたたいたり蹴ったりして,歩行困難な程度になった。さらに数日後,前記3名が同署宿直室で取調べを行い,まだ十分自白しないと言って,両手を縛り,頭髪をもって引き倒し,木片様のもので背中を打ち,足で全身を踏みつけたが,非常に苦痛を訴えたので,一応中止した。その後,これと同様のことが数回行われた。 このような取調べは同年3月末まで続いた。昭和19年11月2日横浜拘置所へ移監。昭和20年1月末起訴された。その後同年5月ころ,簡単な予審取調べが1,2回あったのみで,終戦後,同年8月20日,予審判事から,警察及び検事局の調書内容を是認すれば,帰れるようにするからと妥協的申し入れがあり,これを承認したので,予審,公判とも事実についての取調べは何ら行わず,形式的な手続だけで,同月29日執行猶予を申し渡されて釈放された。 ③A3(甲五号証の二の13)昭和18年9月9日検挙。横浜臨港警察署に留置。同日,同署3階調室において,最初の訊問調書を取る機会に,否認すると,神奈川県警察部特高課V1,,0警部補ほか2名が竹刀の折れたのや弓の折れたの等で全身を強烈に乱打し膝裏に三角棒をはさんで座らせ,腿の上を泥靴で踏みつけるなどした。2時間,,,,余を経過し虐 川県警察部特高課V1,,0警部補ほか2名が竹刀の折れたのや弓の折れたの等で全身を強烈に乱打し膝裏に三角棒をはさんで座らせ,腿の上を泥靴で踏みつけるなどした。2時間,,,,余を経過し虐殺の憂き目にあうを恐れやむなく訊問を肯定し署名捺印しそのまま人事不省に陥った。大腿部,背部,腕,顔面に受けた傷は,約2週間治らなかった。その3,4日後,特高課左翼係長V1警部,V11警部補らが来て,又もや,前回のごとき暴行傷害を加えて陳述を強いた。その後,訊問調書の資料とするため,同年10月中旬より,毎日,手記の作成を命ぜられ,事実の歪曲を強いられた。そのために,同年11月中ころ,V10警部補からさらに竹刀,鞭をもって乱打されるなどした。取調検事も事実の歪曲をし,起訴行為を正当化せんとした。予審に当たった広沢判事は,昭和20年8月15日の終戦後,妥協的態度に出て,予審も長引き,家族の者達も心配するだろうから,検事の起訴事実を認めるなら,執行猶予にしてやるから穏便にしてはどう- 17 -かと言い,同月30日横浜地方裁判所で,懲役4年の求刑で,懲役2年,3年間執行猶予の判決を宣告された。 ④A4(甲五号証の二の10)昭和18年9月9日検挙。保土ヶ谷警察署に勾留。同月10日,同所柔道場,,,,においてV12警部V13巡査部長V4巡査部長らから自白を強いられ否認すると,両頬を平手で打ち,木剣で腿を乱打した。これが午前,午後と続き,午後3時過ぎに遂に昏倒した。医師が診察に来て,注射を打ち,薬をくれた。翌11日も,V12らから拷問を受ける。傷は2週間ほどで大体治った。 その後,取調べは,主としてV12警部が当たり,下調べが約1ヶ月間断続して行われた後,訊問調書作成の基礎となるべき手記を作成させられ,同年12月下旬完了した。その後,V12は訊問 ほどで大体治った。 その後,取調べは,主としてV12警部が当たり,下調べが約1ヶ月間断続して行われた後,訊問調書作成の基礎となるべき手記を作成させられ,同年12月下旬完了した。その後,V12は訊問調書作成に従事したが,そこでは,捏造とでっち上げがなされた。昭和19年1月25日拘置所に移監されて,昭和20年8月30日釈放まで約1年7ヶ月間,未決被告として過ごした。 ⑤A5(甲五号証の二の5)。 ,昭和18年5月11日検挙昭和19年3月31日拘置所に移監されるまで警察留置期間中,無数の拷問を受けたが,そのうち最も残虐なるものは2回ほどある。第1回は,昭和18年5月18日ころ,山手警察署2階取調室において,V1係長,V3警部補,V14巡査部長らから拷問を受ける。両手を後ろ手に縛し,竹刀で左右から両膝を交互に約30分間にわたり打撃を加えた。もうろう状態になったので,一時打撃を中止したが,意識を回復するや再び打擲を始め,約30分継続した。頭髪をつかみ畳の上をねじり廻した。苦痛のため。 ,,。 昏睡状態になる這って房に帰ったが23日床から起き上がり得なかった第2回は,同年5月21日ころ,磯子警察署2階調室において,V3警部補,V14らから,前同様の拷問を受ける。やはり昏睡状態に陥り,這うようにし,。 て房に帰り5日間ばかりは身体の苦痛のため起き上がることができなかった以上によれば,Tに対する特別公務員暴行傷害罪により有罪確定判決を受け- 18 -た司法警察官3名は,A1らのうち,A4を除く4名に対する拷問にも直接関与している。そして,A1らは,同人らが司法警察官から受けた拷問の回数,内容,程度等に個人的差異はあるものの,いずれもが治安維持法違反被疑事件により勾引されて警察署に引致された直後ころから,警察署留置場に勾留されている間,その 同人らが司法警察官から受けた拷問の回数,内容,程度等に個人的差異はあるものの,いずれもが治安維持法違反被疑事件により勾引されて警察署に引致された直後ころから,警察署留置場に勾留されている間,その取調べ中,相当回数にわたり,拷問を受けたこと,そのため,やむなく,司法警察官の取調べに対し,虚偽の疑いのある自白をし,訊問調書に署名押印した(手記の作成を含む)ことが認められる。虚偽の疑いがある。 自白部分は,外形的な個々の具体的行為を行ったことについてというよりは,個々の具体的行為を,国体を変革することを目的とし,かつ,私有財産制度を否認することを目的とする結社であるZ1及びZ2党の目的遂行のためにする意思をもってなしたことなどの主観的要件等に関するものであったと考えられる(以下の自白の場合も同じ。その後,司法警察官による拷問の影響継続下。)にあって,検事の取調べに対し,前同様の自白をし,訊問調書に署名押印した(手記の作成を含む)者,さらに,予審判事による被告人訊問に対し,前同。 様の自白をした者(なお,後記Fは,このような一人と考えられる)もいた。 ことがうかがわれる。そして,A1らは,昭和20年8月15日の終戦後しばらくして,勾留期間が長期にわたっている中で,予審判事らの示唆に応じ,寛大な処分を得ることを期待して(なお,同年9月15日に判決を受けたA1及びA5は,それぞれ,同月4日,同月2日,判決宣告前に保釈により釈放された,いずれも,予審判事に対し,犯罪事実をほぼ認めて,前同様の自白をし。)て予審終結決定を得(上記のとおり,A1のそれは,同年8月27日付けであり,A4のそれは,同月24日付けである,公判廷においても,公判に付さ。),(,れた罪となるべき事実を認めて前同様の自白をし公判廷の自白といっても各口述書写し等 は,同年8月27日付けであり,A4のそれは,同月24日付けである,公判廷においても,公判に付さ。),(,れた罪となるべき事実を認めて前同様の自白をし公判廷の自白といっても各口述書写し等によれば,複数人共同で,短時間で終了した即決裁判を受けていることがうかがえ,具体的な事実関係を自白したものとは認められない,。)執行猶予付き判決を得たことが認められる。したがって,A1らの上記のいず- 19 -れの自白も,個々の具体的行為を,上記各結社の目的遂行のためにする意思をもってなしたことなどの主観的要件等に関しては,信用性のない疑いが顕著である(旧刑訴法下にあっても,拷問等により得られた任意性のない自白は証拠となし得ないとの考えなどもあり得ようが,ここでは,上記のような公判廷の自白も存するので,まとめて証明力の問題として検討する。 。)一方,各有罪確定判決に挙示された証拠について検討するに,いわゆる横浜事件の関係被告人の残されている判決によると,当該被告人の当公廷における供述のみか,あるいは,これにその被告人の司法警察官訊問調書(後記各残存判決中,検察官訊問調書が挙示されている例は見当たらない,その被告人作。)成の検事に提出した手記(後記各残存判決中,司法警察官に提出した手記が挙示されている例は見当たらない,予審訊問調書が併記されており,一人の被。)告人についてはいわゆる横浜事件関係被告人であるFの予審訊問調書謄本同,(人のこの供述も,同人の口述書写し[甲五号証の二の8]等によると,司法警察官による拷問の影響下にある虚偽の疑いのある自白として,上記の主観的要件等に関して信用性のない疑いが顕著である)も挙示されていたことが認め。 られるから,A1らについても,最大限,同様の証拠が挙示されていたと推認して誤りであると 疑いのある自白として,上記の主観的要件等に関して信用性のない疑いが顕著である)も挙示されていたことが認め。 られるから,A1らについても,最大限,同様の証拠が挙示されていたと推認して誤りであるとはいえない。詳説するに,現存する判決(謄本)写し(甲一号証の一ないし八)によれば,N(昭和20年7月31日宣告。懲役2年,3年間執行猶予,M(同日宣告。懲役2年,3年間執行猶予,O(同年8月2))1日宣告。懲役2年,未決勾留日数200日本刑算入,X(同年9月1日宣)告。懲役2年,3年間執行猶予,Y(同年9月4日宣告。懲役2年,3年間)[ただし,甲一号証の四では判読不能のため,推測となる]執行猶予)及び。 T(同日宣告。懲役2年,3年間執行猶予)の各判決(謄本)写しでは,いずれも被告人の当公廷における(判示同旨の)供述のみを掲げており,G(同年9月15日宣告。懲役2年,3年間執行猶予)の判決謄本写しでは,被告人の当公廷における供述,被告人に対する予審訊問調書の記載,Fに対する予審被- 20 -告人訊問調書謄本の記載,被告人に対する司法警察官訊問調書の記載を掲げており,S(同日宣告。懲役2年,3年間執行猶予)の判決謄本写しでは,被告人の当公廷における供述,被告人に対する予審訊問調書及び予審請求書の各記載,被告人に対する司法警察官訊問調書の記載並びに被告人の検事に提出せる手記の記載を掲げている。以上によれば,昭和20年9月15日宣告分は,被告人の当公廷における供述のほか,被告人のそれまでの自白等を掲げて詳しくなっているが,同月4日以前の宣告分では,被告人の当公廷における供述のみであることが指摘できよう。 すなわち,各被告事件につき,当該被告人の自白(さらには,罪となるべき,。 ,。)事実にFが関係する被告人の場合はFの上記自白が含 ,被告人の当公廷における供述のみであることが指摘できよう。 すなわち,各被告事件につき,当該被告人の自白(さらには,罪となるべき,。 ,。)事実にFが関係する被告人の場合はFの上記自白が含まれる以下同じが挙示証拠のすべてであることがいわゆる横浜事件関係被告人の判決の特徴であり,そのために,当該被告人の自白の信用性に顕著な疑いがあるとなると,直ちに本件各確定判決の有罪の事実認定が揺らぐことになるのである。要するに,治安維持法1条後段,10条違反の各行為につき,個々の具体的行為を,国体を変革することを目的とし,かつ,私有財産制度を否認することを目的とする各結社の目的遂行のためにする意思をもってなしたことなどの主観的要件等につき,当該被告人の自白を除くと,これを証すべき証拠が何ら存在しないことになる。しかも,何らかの間接事実等により,これを推認できるとも考え難い。 以上の理由により,上記3名の司法警察官に対する1審,2審,3審の各判決(謄本)写し(甲四号証の一,二,三,A1らの口述書写しを含む31通)の口述書写し(甲五号証の二の1ないし31「警察における拷問について」),と題する書面(Q作成)写し(甲五号証の三)及び陳述書(Q作成。甲一五号証の一)等は,A1らに対し,無罪を言い渡すべき,新たに発見した明確な証拠であるということができる。 ( )なお,A1ら5名のうち,A1,A2及びA5は,各有罪の確定判決 - 21 -に対し,昭和61年7月3日横浜地方裁判所に再審請求をし,同裁判所は,昭和63年3月28日再審請求棄却決定をし,東京高等裁判所は,同年12月16日即時抗告棄却決定をし,最高裁判所は,平成3年3月14日特別抗告棄却決定をした(これが第一次再審請求である。この3名のうちのA2に関して。)は,第一次再審請 ,東京高等裁判所は,同年12月16日即時抗告棄却決定をし,最高裁判所は,平成3年3月14日特別抗告棄却決定をした(これが第一次再審請求である。この3名のうちのA2に関して。)は,第一次再審請求において,再審請求の理由の有無の判断の手がかりとなる程度の証拠資料の提出もないとして,結局,法律上の方式違反として,旧刑訴法497条,504条により不適法棄却されている。他方,A1及びA5に対する1審決定は「本件再審請求書に原判決謄本の添付がないうえ,請求人に,ついての原判決原本及び訴訟記録は裁判所及び検察庁に保存されておらず(当裁判所の事実取調べの結果によれば,太平洋戦争が敗戦に終わった直後の米国軍の進駐が迫った混乱時に,いわゆる横浜事件関係の事件記録は焼却処分されたことが窺われる,他に原判決認定の犯罪事実及びこれを認めた証拠の内容)について,これを明らかにすべき証拠資料は存在しない」との基本的判断に。 立ち,各再審請求は,旧刑訴法485条6号,7号所定の要件に該当する場合とは認められず,その理由がないので同法505条によりこれを棄却するとし。 ,ているその結論に至る過程で若干の実体的判断をしているがごとくであるが要するに,確定判決の認定事実及びその認定の基礎となった証拠資料の内容の把握ができないということに尽きており,その実質は,前記A2同様,法律上の方式に違反したとする不適法棄却であると解してよい。したがって,A1,A2及びA5の本件各再審請求についてはいずれも旧刑訴法505条2項同,(条同項の規定は「前項ノ決定アリタルトキハ同一ノ原由ニ因リ再審ノ請求ヲ,為スコトヲ得ス」というもので,現行刑訴法447条2項と同旨である)の。 適用を受けないものというべきである。この点に関する検察官の主張は採用の限りでない。 そうすると, 原由ニ因リ再審ノ請求ヲ,為スコトヲ得ス」というもので,現行刑訴法447条2項と同旨である)の。 適用を受けないものというべきである。この点に関する検察官の主張は採用の限りでない。 そうすると,A1らについては,いずれも旧刑訴法485条6号の事由があるので,この点で,本件各再審請求は理由がある。したがって,本件各再審請- 22 -求について再審を開始するとした原決定は,結論において正当であり,本件各即時抗告の申立ては,結局,理由がないことに帰する。 よって,旧刑訴法466条1項により本件各即時抗告を棄却することとし,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官中川武隆裁判官毛利晴光裁判官鹿野伸二)
▼ クリックして全文を表示