- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中170日を本刑に算入する。 理由 1 弁護人奥村徹の上告趣意のうち、大阪高等裁判所令和4年(う)第758号同5年1月24日判決・判例タイムズ1512号136頁を引用して判例違反をいう点について原判決は、就寝中の被害児童(当時10歳)に対する強制わいせつ、強制性交等未遂及び強制性交等の各犯行の機会に同児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項各号のいずれかに掲げる姿態(以下、単に「姿態」という。)をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという各児童ポルノ製造(以下「本件各児童ポルノ製造」という。)の事実について同法7条5項を適用した第1審判決を是認した。 この判断は、児童に対する強制わいせつ、準強制わいせつ及び強制性交等の各犯行の機会に同児童に姿態をとらせ、これを撮影するなどして児童ポルノを製造した場合には、児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、児童ポルノ法7条4項の児童ポルノ製造罪が成立し、同条5項は適用されないとした所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。 しかしながら、児童ポルノ法7条5項が、ひそかに児童の姿態を撮影するなどして児童ポルノを製造するという行為態様の違法性の高さに鑑み、同条3項及び4項令和5年(あ)第1032号強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等未遂、強制性交等被告事件令和6年5月21日第三小法廷判決- 2 -の各児童ポルノ製造に せつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等未遂、強制性交等被告事件令和6年5月21日第三小法廷判決- 2 -の各児童ポルノ製造に加えて、処罰対象となる児童ポルノ製造の範囲を拡大するために制定されたという立法の趣旨及び経緯、並びに、同条4項、5項の各児童ポルノ製造罪の保護法益及び法定刑に照らせば、児童に姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立し、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は、同項を適用することができると解するのが相当である。そのように解さなければ、事案によっては、同罪で公訴を提起した検察官が同条4項の児童ポルノ製造罪の不成立の証明を、被告人がその成立の反証を志向するなど、当事者双方に不自然な訴訟活動を行わせることになりかねず、さらには、ひそかに児童の姿態を撮影するなどして児童ポルノを製造したことは証拠上明らかであるのに、裁判所が同条5項を適用することができないといった不合理な事態になりかねない。同項にいう「前2項に規定するもののほか」との文言は、以上の解釈を妨げるものではない。 よって、本件各児童ポルノ製造の事実について児童ポルノ法7条5項を適用した第1審判決を是認した原判断は正当である。 したがって、刑訴法410条2項により所論引用の判例を変更し、原判決を維持するのを相当と認めるから、所論の判例違反は、結局、原判決破棄の理由にならない。 2 その余の上告趣意について弁護人奥村徹の上告趣意のうち、その余の判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか、引用の判例が所論のような趣旨を示した い。 2 その余の上告趣意について弁護人奥村徹の上告趣意のうち、その余の判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか、引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから前提を欠くものであり、その余は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 3 よって、刑訴法408条、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 ( 裁判長裁判官今崎幸彦裁判官宇賀克也裁判官林道晴- 3 -裁判官渡惠理子)
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