主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人貞家克己、同菊池信男、同宮村素之、同森脇勝、同相川俊明、同柳本俊三、同星晃一の上告理由について公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。これと趣旨を異にする所論引用の大審院判例(大正九年(オ)第八四一号同一〇年二月一日判決・民録二七輯三巻一六〇頁、昭和四年(オ)第二八九号同年一二月一一日判決・民集八巻一二号九一四頁)は、変更されるべきであり、また、その他の引用の大審院判例は、事案を異にし、本件に適切でない。これを本件についてみるに、原審の確定するところによれば、(一) 本件係争地は、公図上水路として表示されている国有地であつたが、古くから水田、あるいは畦畔に作りかえられ、本件田あるいはその畦畔の一部となり、水路としての外観を全く喪失し、本件係争地及び本件田は、被上告人の祖父が訴外Dから借り受けて小作していた当時から、幅六〇糎ないし七五糎程度の細い畦畔によつて合計四五枚の水田に区分けされていた(原判決別紙図面参照)、(二) 被上告人は、昭和二二年七月二日自作農創設特別措置法により上告人から本件田の売渡を受けたが、その当時の本件田と本件係争地の位置関係及び使用状況は、被上告人の祖父が耕作してい- 1 -た状態と全く同様であつたため、被上告人は、本件田及 創設特別措置法により上告人から本件田の売渡を受けたが、その当時の本件田と本件係争地の位置関係及び使用状況は、被上告人の祖父が耕作してい- 1 -た状態と全く同様であつたため、被上告人は、本件田及び本件係争地を含んだ水田と畦畔全体を売り渡されたものと信じ、水田あるいは畦畔として平穏かつ公然に本件係争地の占有を続けたというのであり(この事実の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができる。 創設特別措置法により上告人から本件田の売渡を受けたが、その当時の本件田と本件係争地の位置関係及び使用状況は、被上告人の祖父が耕作してい- 1 -た状態と全く同様であつたため、被上告人は、本件田及び本件係争地を含んだ水田と畦畔全体を売り渡されたものと信じ、水田あるいは畦畔として平穏かつ公然に本件係争地の占有を続けたというのであり(この事実の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができる。)、右事実によれば、本件係争地は、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、被上告人の祖父の時代から引き続き私人に占有されてきたが、そのために実際上公の目的が害されることもなく、もはやこれを公共用財産として維持すべき理由がなくなつたことは明らかであるから、本件係争地は、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の対象となりうるものと解すべきである。これと同旨の見解に立つて本件係争地に対する被上告人の取得時効の成立を肯定した原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官岡原昌男裁判官大塚喜一郎裁判官吉田豊裁判官本林讓裁判官栗本一夫- 2 - 一夫
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