平成27(行ウ)24 公金支出金返還等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年3月1日 東京地方裁判所
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判決文本文48,848 文字)

平成31年3月1日判決言渡平成27年(行ウ)第24号公金支出金返還等請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用及び参加によって生じた費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告は,足立区戸籍・区民事務所窓口の業務委託に関して,一切の公金の支出,新たな契約の締結又は債務その他の義務の負担をしてはならない。 2 被告は,Aに対し,2億3500万4500円及びうち別紙2支払執行日及 び支払金額一覧表の支払金額欄記載の各金員に対する同欄に対応する支払執行日欄記載の各日から各支払済みまでの年5分の割合による金員を足立区に支払うよう請求せよ。 3 被告は,被告補助参加人に対し,前項と同額の金員を足立区に支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要本件は,足立区の住民である原告らが,足立区が被告補助参加人(以下「参加人」という。)との間で締結した足立区戸籍・区民事務所窓口の業務等委託に係る契約(以下「本件委託契約」という。)は,足立区民のプライバシーを侵害し,地方自治法,戸籍法,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労 働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)等に違反する違法・無効なものであるから,これに基づく参加人への委託料の支出命令は違法な公金の支出であると主張して,足立区の執行機関である被告に対し,①地方自治法242条の2第1項1号に基づき,足立区戸籍・区民事務所窓口の業務委託に関する一切の公金の支出,新たな契約の締結又は債務その他の義務の負 担の差止めを求め,②同項4号本文に基づき,上記支出命令に係る当該職員で あるAに対して,本件委託契約に基づき足立区が参加人に対して支出した平成25年 の締結又は債務その他の義務の負 担の差止めを求め,②同項4号本文に基づき,上記支出命令に係る当該職員で あるAに対して,本件委託契約に基づき足立区が参加人に対して支出した平成25年12月分から平成27年1月分までの委託料合計2億3500万4500円と同額の損害賠償の請求(遅延損害金の請求を含む。)をすることを求め,③同号本文に基づき,上記委託料を受領した参加人に対して,上記と同額の不当利得返還の請求(利息の請求を含む。)をすることを求める住民訴訟である。 1 前提事実(以下の事実は当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)(1) 当事者等ア原告らは,足立区の住民である。 イ被告は,足立区の執行機関である。 ウ Aは,後記(3)の本件各支出命令がされた当時,被告(足立区長)の職にあった者である。 エ参加人は,足立区との間で,本件委託契約を締結した株式会社である。 (2) 本件委託契約の概要(甲2,5,6,52,56,57,81,乙16,丙6) 足立区は,公募型プロポーザル方式による事業者選定手続により選定された参加人との間で,平成25年3月25日付けで,契約期間を同日から平成27年9月30日までとして,足立区が参加人に足立区戸籍・区民事務所窓口の業務(①戸籍届書受付・入力業務,②戸籍届書関連業務,③住民異動届等の受付・入力及び関連業務,④印鑑登録等業務,⑤証明発行業務,⑥窓口 案内業務,⑦特別永住者業務,⑧住居表示業務,⑨公金取扱業務等)を委託すること等を内容とする本件委託契約を締結し,参加人は,平成26年1月1日から平成27年9月30日まで,本件委託契約に基づき,上記の窓口業務を行った。なお,本件委託契約については,平成2 等)を委託すること等を内容とする本件委託契約を締結し,参加人は,平成26年1月1日から平成27年9月30日まで,本件委託契約に基づき,上記の窓口業務を行った。なお,本件委託契約については,平成26年9月29日付けの合意により同年10月1日から,同月28日付けの合意により同年11月1 日から,平成27年1月1日付けの合意により同日から,参加人が本件委託 契約に基づき実施義務を負う窓口業務の範囲が変更されており,例えば上記③のうち住民異動届等の受付・入力業務は平成26年11月1日から,上記①のうち戸籍届書受付業務は平成27年1月1日から,参加人が本件委託契約に基づき実施義務を負う窓口業務の範囲から除かれている(以下,時期を問わず,参加人が本件委託契約に基づき実施義務を負う足立区戸籍・区民事 務所窓口の業務を「本件委託窓口業務」という。)。 (3) 本件各支出の実行(乙9,10,11の1~11の14)本件委託契約に基づき足立区が参加人に対して負う平成25年12月から平成27年1月までの各月分の委託料の支払債務の履行のため,別紙2支払執行日及び支払金額一覧表記載のとおり,同表支払執行日欄記載の各日に専 決権者である足立区戸籍住民課課長が各支出命令(以下「本件各支出命令」という。)をし,同欄に対応する同表支払金額欄記載の各金員(合計2億3500万4500円)の支出(以下「本件各支出」という。)がされた。 (4) 住民監査請求(甲1,弁論の全趣旨)原告らは,平成26年11月7日及び同月14日,足立区監査委員に対し, 本件委託契約に基づく一切の公金の支出の差止め等を求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った。 足立区監査委員は,平成26年12月25日,本件監査請 監査委員に対し, 本件委託契約に基づく一切の公金の支出の差止め等を求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った。 足立区監査委員は,平成26年12月25日,本件監査請求を棄却し,この結果は,同日,原告らに通知された。 (5) 本件訴えの提起(顕著な事実) 原告らは,平成27年1月21日,本件訴えを提起した。 3 争点(1) 適法な住民監査請求前置の有無(2) 本件委託契約はプライバシー権を侵害するか否か(3) 本件委託契約は地方自治法及び地方財政法に違反するか否か (4) 本件委託契約は戸籍法に違反するか否か (5) 本件委託契約は労働者派遣法に違反するか否か(6) 本件各支出命令の違法性(7) 専決職員に対する指揮監督上の義務違反の有無 4 当事者の主張(1) 争点(1)(適法な住民監査請求前置の有無)について (被告の主張)支出負担行為としての契約の締結やその履行としての公金の支出命令及び支出行為は,本来それぞれ別個の財務会計上の行為として行われるから,それらが違法かどうかが争われる住民訴訟においては,それぞれについて別個にその固有の適法要件を満たすかどうかが判断される。すなわち,これらの 財務会計上の行為それぞれについて,適法な住民監査請求を経る必要があり,これを欠く住民訴訟は不適法である。 本件では,原告らは,本件監査請求において,もっぱら本件委託契約の締結に関する違法事由のみ主張しており,このことからすると,原告らが本件監査請求の対象としたのは本件委託契約の締結(支出負担行為)についてだ けであることは明らかである。したがって,本件委託契約の履行としての本件各支出命令については住民監査 すると,原告らが本件監査請求の対象としたのは本件委託契約の締結(支出負担行為)についてだ けであることは明らかである。したがって,本件委託契約の履行としての本件各支出命令については住民監査請求を経ていないから,訴訟の対象である違法な財務会計上の行為を本件各支出命令であるとする本件訴えは不適法であり却下すべきである。 (原告らの主張) 一定の事業に係る一連の財務会計上の行為を対象とする,当該事業自体の違法を理由とする住民監査請求は,当該一連の行為を全体として一体とみてその適否等を判断することができ,本件が事業自体の違法を理由とする住民監査請求であるといえるならば,その違法性・不当性が一体的に判断されるため,訴訟要件を満たす。 原告らは,本件監査請求において,足立区と参加人が締結した本件委託契 約自体が憲法,戸籍法,労働者派遣法等に違反する不当又は違法なものであるから,その事業に関する公金の支出は不当又は違法であると主張して,当該事業に関する平成25年度以降の一切の公金の支出を対象として,既支出分の返還と今後の支出の差止めを求めており,本件委託契約に関わる公金の支出を全体として一体とみてその違法性又は不当性を主張し,その判断を求 めている。よって,本件各支出命令についても住民監査請求が行われているといえるから,本件訴えは適法である。 (2) 争点(2)(本件委託契約はプライバシー権を侵害するか否か)について(原告らの主張)ア戸籍には,氏名,出生の年月日,戸籍に入った原因及び年月日,実父母 の氏名及び実父母との続柄,養子であるときは養親の氏名及び養親との続柄,夫婦については夫又は妻である旨等が記載される。このような戸籍に記載される情報の内容・性質に照らせば,戸籍に含まれる足立 の氏名及び実父母との続柄,養子であるときは養親の氏名及び養親との続柄,夫婦については夫又は妻である旨等が記載される。このような戸籍に記載される情報の内容・性質に照らせば,戸籍に含まれる足立区民の個人情報は,明らかに私生活上の事柄を含むものであり,一般通常人の感受性を基準にしても公開を欲しないであろうと考えられる事柄であり,かつ一 般の人には知られていない事柄であるといえる。したがって,戸籍に記載された情報は,足立区民のプライバシーに属する情報であり,この情報が法令上権限を有しない者には知られないようにする利益は,権利として保護されるべきものである。 本件委託契約により,足立区民の戸籍情報は,足立区から参加人の管理 に委ねられ,その従業員が足立区民の戸籍情報を閲覧し得る状態に置かれた。足立区民の戸籍情報が足立区の支配下から流出し,法令上の権限のない参加人に委ねられ,頻繁に入れ替わる参加人の従業員の知り得る状態に置かれたこと,参加人の従業員が足立区民の情報を全く保有していないかどうかは不明であること等からすると,戸籍情報を法令上権限のない参加 人の管理下に委ね,このような状態に置いたこと自体によって,足立区民 のプライバシー権の侵害があったというべきである。 イ戸籍情報を管理する権限と責任を法令上有する足立区の職員は,参加人の従業員に対して直接指揮命令できない上,本件委託窓口業務に従事した参加人の従業員の多くは,短期雇用者であり,このような者が戸籍情報という重大な個人情報に関わることにより,戸籍情報漏洩の危険が高まるこ とは明らかである。 ウ被告は,個人情報を取り扱う業務を委託するときは,委託の内容等について,足立区情報公開・個人情報保護審議会の意見を聞く必要があるところ(足立 漏洩の危険が高まるこ とは明らかである。 ウ被告は,個人情報を取り扱う業務を委託するときは,委託の内容等について,足立区情報公開・個人情報保護審議会の意見を聞く必要があるところ(足立区個人情報保護条例16条),参加人は平成18年に戸籍情報を漏洩する事件を起こしており,被告は当該事件について審議会に何ら報告 していない。当該事件に係る情報が本件委託契約締結前に開示されていれば,足立区は参加人との間で本件委託契約を締結することはなかったのであり,このような重大な情報を秘匿して締結された本件委託契約は違法である。 エしたがって,参加人に戸籍業務を委託する本件委託契約は足立区民のプ ライバシー権を侵害するものであって,違憲・違法である。 (被告の主張)ア戸籍データは,本件委託窓口業務と関係なく足立区が管理しているのであり,これを参加人の管理に委ねたということはない。すなわち,戸籍データは足立区の管理するサーバに記録されており,参加人の従業員は届出 等のあった戸籍情報について必要な入力等をする限りにおいて閲覧できるのみであり,それらを印字したり,携帯電話等の媒体にコピーしたりして持ち出すことはできない。 イ原告らは,多くの短期雇用者が戸籍情報という重大な個人情報に関わることになり,戸籍情報漏洩の危険が高まることは明らかと主張するが,単 に短期雇用者というだけで情報漏洩の危険が高まることにはならないこと は明らかである。また,足立区及び参加人において,それぞれ,個人情報保護体制,情報セキュリティ体制を整備している。 ウ原告らは,参加人に戸籍情報漏洩事件があり,被告がこれを認識していたにもかかわらず,審議会等に説明報告しなかったと主張するが,そもそも当該事案において,戸籍情報が漏 ィ体制を整備している。 ウ原告らは,参加人に戸籍情報漏洩事件があり,被告がこれを認識していたにもかかわらず,審議会等に説明報告しなかったと主張するが,そもそも当該事案において,戸籍情報が漏洩したことは確認されていない。 エしたがって,本件委託契約が足立区民のプライバシー権を侵害するものでないことは明らかである。 (3) 争点(3)(本件委託契約は地方自治法及び地方財政法に違反するか否か)について(原告らの主張) ア地方自治法2条14項は,「地方公共団体は,その事務を処理するに当っては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と,同条15項は,「地方公共団体は,常にその組織及び運営の合理化に努め‥なければならない。」と規定している。また,地方財政法4条1項は,「地方公共団体の経費は,その目的 を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。」と規定している。 イ本件委託契約の内容は,一連の戸籍業務を細分化し,戸籍法等に関する研修を受けていない民間事業者である参加人の従業員に,戸籍法上の判断を伴う業務を委託するものであるにもかかわらず,本件委託契約の性質が, 請負契約であることから,参加人の従業員が本件委託窓口業務について足立区の職員から指示等を受けることが労働者派遣法上の制限を受けるため,参加人に本件委託契約に基づいて本件委託窓口業務を行わせる場合には,足立区の職員のみで業務を行う場合と比べてミスが生じやすくなり,区民に対するサービスの低下や足立区の職員によるミスの確認の手間が生ずる ことが想定される。 ウ現に,次のような不都合が生じた。 (ア) 待ち時間の増加本件委託窓口業務 ,区民に対するサービスの低下や足立区の職員によるミスの確認の手間が生ずる ことが想定される。 ウ現に,次のような不都合が生じた。 (ア) 待ち時間の増加本件委託窓口業務において,判断業務は足立区の職員が行わなければならないため,同じシステムの稼働を参加人の従業員と足立区の職員が二度行うことになり,待ち時間が増加した。 (イ) 不適切な対応本件委託窓口業務の開始後,高齢の女性が,認知症の一人暮らしの妹の成年後見を申し立てるために,同人の戸籍謄本の交付請求をしたところ,参加人の従業員から,「委任状がなければ出せません」とだけ言われ,施設に電話をするなど本人確認等の措置を何らとられないと いった不適切な対応がされた。 (ウ) ミスの増加本件委託窓口業務の開始後,戸籍届出の入力ミス,戸籍事項の移記のミス等足立区職員による直営時代には考えられないような多数かつ様々なミスが発生した。 (エ) コストの増加本件委託契約の締結により,足立区において,平成26年度,委託費用が足立区職員の人件費の減少額より1188万円も多くなった。 エしたがって,以上のような本件委託契約を締結すること自体が,地方公共団体に「最少の経費で最大の効果を挙げる」こと及び「その組織及び運 営の合理化に努める」ことを求める地方自治法2条14項,15項に違反するほか,「その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて」経費を支出することを禁止する地方財政法4条1項に違反する。 (被告の主張)ア待ち時間の増加について 本件委託契約締結以前は,受付票発券後の手続に要する時間を計測し ていなかったため,本件委託契約の前後で比較できず,本件委託契約により待ち時間が増加したかは明らかでない。 について 本件委託契約締結以前は,受付票発券後の手続に要する時間を計測し ていなかったため,本件委託契約の前後で比較できず,本件委託契約により待ち時間が増加したかは明らかでない。また,戸籍の届出等の場合,参加人の従業員が,届書の記載内容を一旦全て入力するが,その際,ポップアップによって問われる審査作業は何ら行わず,受理決定ないし保留のボタンを機械的に押して,それ以降の作業を進めるのに対し,足立 区の職員は入力内容を見直すとともにポップアップを利用して審査作業を行うのであるから,参加人の従業員と足立区の職員が同じ作業をするものではない。 イ不適切な対応について原告らが指摘する不適切な対応は,その事実の有無は不明であるが, そもそも足立区の職員であっても認知症の方が入所している施設に電話で確認するなどということはできないため,原告らの主張は失当である。 ウミスの増加について戸籍移記の入力ミス等が一定数生じていることは認めるが,膨大な戸籍等の事務を行う中では不可避的に発生してしまうものである。 エコストの増加について地方公共団体の支出に関して,「最少の経費で最大の効果を挙げる」といえるかについては,一定の裁量が与えられているというべきであり,複数の効果又は目的の中から,最少の費用で済むものを選択すべきことを地方公共団体に義務付けたものとはいえない。平成26年度の支出の 増加は,足立区において当時課題になっていた「客溜まりの拡張」,「各種窓口数の増加」,「フロアマネージャーの設置」,「待ち時間の短縮」等の区民サービスの向上に重点を置いて検討が進められたものであること,初めての専門典型業務の外部化であり,委託内容の見直しが想定され,大幅なコスト削減を見込めるほど ャーの設置」,「待ち時間の短縮」等の区民サービスの向上に重点を置いて検討が進められたものであること,初めての専門典型業務の外部化であり,委託内容の見直しが想定され,大幅なコスト削減を見込めるほどの長期の契約を締結するこ とができなかったこと等の事情があり,区民サービスの向上については, 委託当初はともかくその後は,足立区民からは好意的な意見も多数寄せられ,コストの削減については,今後の契約スキームの中で実現を目指している。また,本件委託契約により,受付窓口数が8か所から16か所に倍増し,フロアマネージャーが昼休みのみの1名配置体制から常時3名配置体制へと充実し,昼休憩時間における窓口応対を強化する等, サービスが向上しているところ,これらを足立区職員だけで実現しようとする場合に比べて委託費用は年間2500万円のコストメリットがあることが試算されている。さらに,公共サービスの外部委託化の効果は,当該委託業務単体で見るべきではなく,足立区全体の事業運営の観点からも検討されるべきであり,戸籍事務の外部委託により職員を喫緊の課 題を所管する他の部署等(孤立ゼロプロジェクトや生活困窮支援等)に投入することで全体として区民サービスを更に充実させることにも成功している。 オよって,本件委託契約は地方自治法及び地方財政法に違反するものではない。 (4) 争点(4)(本件委託契約は戸籍法に違反するか否か)について(原告らの主張)ア本人確認について平成19年法律第35号による戸籍法の一部改正により,戸籍公開制度の見直しが行われたほか,戸籍の記載の真実性を担保するための措置とし て,窓口出頭者が届出事件の本人であるかどうかを確認するため,当該出頭した者を特定するために必要な氏名等を示す運転 公開制度の見直しが行われたほか,戸籍の記載の真実性を担保するための措置とし て,窓口出頭者が届出事件の本人であるかどうかを確認するため,当該出頭した者を特定するために必要な氏名等を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めることができるなどとされた。 他方で,「戸籍事務を民間事業者に委託することが可能な業務の範囲について」(平成25年3月28日付け法務省民一第317号法務省民事局民 事第一課長通知。以下「317号通知」という。)では,民間事業者に 「事実上の行為又は補助的行為」に限って委託できるとされている。 本件委託契約上,届書の受領や本人確認の際に,窓口において書類の不備等を理由として届書を受領しない場合の扱い方やその後の処理について具体的に明記されていない。戸籍法の建前では,窓口に出頭した者の本人確認は,運転免許証等の公の身分証明書と対比して確認する。し かし,公の身分証明書が提出されない場合は,生年月日や親族の氏名などの質問を発して,それに対する回答を聞いて本人かどうかを確認する。 答え方あるいはそのときの動作等も確認の要素になるところ,このような確認方法は,機械的・事務的な行為ではない。また,民間事業者が,窓口において書類の不備等を理由として届書を受領しない行為をするこ とは,民間事業者が実質的な不受理決定を行うに等しいものである。したがって,本人確認を民間事業者である参加人に委託する本件委託契約は上記改正後の戸籍法に違反する。 イ虚偽の養子縁組に対する審査について養子縁組の届出に関する取扱いについては,平成22年12月27日付 け法務省民一第3200号法務省民事局長通達及び同日付け法務省民一第3201号法務省民事局民事第一課長依命通知が 養子縁組の届出に関する取扱いについては,平成22年12月27日付 け法務省民一第3200号法務省民事局長通達及び同日付け法務省民一第3201号法務省民事局民事第一課長依命通知が発出されており,届出地市区町村長による審査及び照会等について詳細な定めが置かれている。したがって,養子縁組の届出に対する審査は権限と責任がある公務員が行うことが予定されており,民間事業者に委託することは違法であ る。 ウ 317号通知に違反するものであること戸籍業務のうち民間委託することが許容される業務は,競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(以下「公共サービス改革法」という。)により特例が設けられている「受付」及び「引渡し」の業務と, 市区町村長の判断行為という要素が全く含まれず「裁量の余地がない」 事実行為又は補助行為に限られる。また,317号通知は,市区町村長の判断が必要となる業務については,市区町村長の職員が関与する体制を確保する必要があるとしている。 参加人と足立区は,本件委託契約を締結し,参加人は「判断基準書」及び「業務手順書」に基づき業務を実施しているが,足立区は,従来足 立区の職員が行っていた判断要素を含む業務を判断基準のマニュアル化(判断基準書の作成)によって参加人に行わせていることになり,明らかに317号通知が許容する業務委託が可能な範囲に違反する。 補正については,市区町村長の判断が伴うものについては,民間事業者が行うことはできないところ,本件委託契約は,民間事業者たる参加 人の従業員が被告の判断を伴う補正かどうかに関係なく,参加人が補正を行うことが予定された内容であった。これは,事実上の行為又は補助的行為とはいえず,317号通知に違反する。 る参加 人の従業員が被告の判断を伴う補正かどうかに関係なく,参加人が補正を行うことが予定された内容であった。これは,事実上の行為又は補助的行為とはいえず,317号通知に違反する。 317号通知は,「不測の事態等に際しては当該職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制が確保されていれば‥戸籍法上問題は生じ ない」としているが,ここにいう不測の事態とは,首都圏直下型大震災などの大災害が発生した場合や,民間事業者において争議が発生し,労働者がストライキを実施するといった場合等をいうものと解される。しかし,足立区は,包括的業務委託であるとして,判断要素を含む戸籍業務の中心部分を含め大半の業務を民間事業者に委託し,職員も大幅に削 減した。これにより,足立区の職員による戸籍業務の執行体制は脆弱化したといわざるを得ず,不測の事態が生じた場合には民間事業者をカバーできないということになり,市区町村の職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制の確保を求めている317号通知の趣旨に反する。 エ戸籍法上の受理を参加人が行うものであったこと 戸籍法上の受理は,戸籍事務管掌者である市区町村長が,提出された 届書等の書類を適法なものと判断してこれを受領することを認容する行政処分とされ,受理の決定は,市区町村長が,届け出られた届出等が民法及び戸籍法所定の要件を具備していることを審査した上でされなければならない。また,317号通知によれば,戸籍事務の民間委託については,裁量の余地のない「事実上の行為又は補助的行為」に限定されて いる。しかし,本件委託契約の内容は,受託した民間事業者である参加人が,システム上で審査を行い,処分決定を行うものとなっており,戸籍法上の受理の審査権限を参加人に委ねる内容とな 」に限定されて いる。しかし,本件委託契約の内容は,受託した民間事業者である参加人が,システム上で審査を行い,処分決定を行うものとなっており,戸籍法上の受理の審査権限を参加人に委ねる内容となっていた。 オ是正指導後も違法が解消されていないこと(ア) 証明書の交付等の業務 足立区は,東京労働局の是正指導を受けた後も,証明窓口の受付,入力・証明書出力,照合,交付(引渡し)の外部委託を継続している。 戸籍法10条の4は,市町村長は,同法10条の2第1項から5項までの第三者による戸籍謄本等の交付の請求がされた場合において,「これらの規定により請求者が明らかにしなければならない事項が明 らかにされていないと認めるときは,当該請求者に対し,必要な説明を求めることができる。」としているが,必要な説明を求めることは証明書の交付・不交付の判断と直結しており,民間事業者が説明要求することは公権力の行使を民間事業者が行うことになり違法である。 (イ) 身分事項移記等の業務 足立区は,東京労働局の是正指導を受けた後も,身分事項移記等の二次入力の外部委託を継続している。戸籍業務における移記は,高度で専門性を有する業務であり民間事業者が行う事項ではない。 カ戸籍情報システム上の問題について戸籍情報システムの管理及び処理体制は,戸籍データ等を管理する保 護管理者,端末装置の管理責任者,及び実際に端末を操作する操作者を 明確にしなければならないが(平成6年11月16日付け法務省民二第7000号法務省民事局長通達及び同日付け法務省民二第7001号法務省民事局民事第二課長依命通知),参加人の従業員は民間事業者が雇用する労働者であり,保護管理者及び管理責任者の管理監督権限,すなわち足立区の管理監督権限が及 達及び同日付け法務省民二第7001号法務省民事局民事第二課長依命通知),参加人の従業員は民間事業者が雇用する労働者であり,保護管理者及び管理責任者の管理監督権限,すなわち足立区の管理監督権限が及ばないことは明らかであり,本件委託契 約において,操作者が処理できる事務の範囲が明確になっていたとはいえない。 端末装置の操作は,事前に登録されたパスワード,識別カード等によって正当な権限を有すると確認された者でなければできず,パスワード等は保護管理者によって設定,更新等の運用方法を定めて厳重に管理し なければならないが(上記7001号通知及び同日付け法務省民二第7002号法務省民事局長通達),参加人の従業員は事実上の行為及び補助的行為を行う者にすぎないから,正当な権限を有しないというべきである。 キこのように,本件委託契約(仕様書,手順書を含む。)の内容は,「事 実上の行為又は補助的行為」を超える業務を委託するものとなっており,戸籍法に違反し違法である。 (被告の主張)ア本人確認について本件委託契約の対象となっているのは,戸籍法施行規則11条の2第 1号及び2号に定める特定の書類の提示による本人確認である。説明による本人確認(同条3号)は当初委託の範囲に含まれていたが,それもあらかじめ手順書等で定められた事項を質問し,それが戸籍等のデータと合致することを確認するという裁量の余地のない事実行為又は補助行為にとどまるものである。そして,仮に当該質問事項を通じて本人確認 ができない場合は,足立区職員に引き継がれていたのであるから,裁量 的判断が求められる事項が本件委託契約の対象になっていたわけではない。 イ養子縁組の届出について本件委託契約において,養子縁組の届出に がれていたのであるから,裁量 的判断が求められる事項が本件委託契約の対象になっていたわけではない。 イ養子縁組の届出について本件委託契約において,養子縁組の届出に関する事務は対象とされていないから,原告らの主張は失当である。 ウ 317号通知に違反するものでないこと本件委託契約における審査業務には,「交付・不交付の決定」や「受理・不受理の決定」といった判断を要する業務は含まれていない。判断基準書は想定される様々な事例において参加人の従業員がどのような事務処理をすべきか,その実務上の留意事項をまとめたものにすぎない。 本件委託契約の内容として,被告の判断が必要なものについての補正まで参加人に委託した事実はない。 317号通知が引用する平成20年1月17日付け内閣府通知「市町村の出張所・連絡所等における窓口業務に関する官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等につ いて」(以下「平成20年内閣府通知」という。)が定める「不測の事態」とは,文脈からして,通常の取扱いでは生じない事態,つまり受託事業者が業務を実施している中で発生し得る対処できない事態をいうのであって,そのような事態が生じた場合には,民間事業者が業務を実施する官署内に常駐している職員が臨機適切に対応することが可能である から,原告らの主張は失当である。 エ戸籍法上の受理を参加人は行っていないこと仕様書にある「審査」,「処分決定」というのは,システム入力作業における選択すべきシステム項目の名称を指すにすぎず,参加人の従業員が審査や処分決定を行うことを内容とするものではない。 参加人の従業員は,受理しない旨通知するのではなく,飽くまでも書類 る選択すべきシステム項目の名称を指すにすぎず,参加人の従業員が審査や処分決定を行うことを内容とするものではない。 参加人の従業員は,受理しない旨通知するのではなく,飽くまでも書類 が不足している旨伝えるのみであり,本人確認書類が不足していたり聞き取りによっても正しい回答が得られなかったりする場合には,その届出を足立区職員に引き継いでおり,受理しない旨の判断を参加人の従業員が行っていたことはない。 オ是正指導後の業務に関する原告らの主張について (ア) 証明書の交付等の業務について本件業務委託における証明書の交付事務においては,参加人は,単に証明書等を引き渡すのみであり,いずれにせよ,それ以外の場合を含め「必要な説明を求める」ことは委託の内容になっていない。 (イ) 身分事項移記等の業務について 移記事項の入力は,高度で専門性を有するとしても,定型的な業務であって,事実上の行為又は補助的行為に当たり,そのため移記事項の入力業務に関しても,本件委託窓口業務の内容は,戸籍法に違反するものではない。 カ戸籍情報システム上の問題について 原告らが主張する戸籍情報システムに関する通達において端末装置の管理責任者がすべきとされているのは,各端末装置の操作者が処理することができる事務の範囲を「明確」にすることであり,端末操作者やその事務の範囲を「指定」することではない。 キよって,本件委託契約は戸籍法に違反するものではない。 (5) 争点(5)(本件委託契約は労働者派遣法に違反するか否か)について(原告らの主張)ア労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分について労働者派遣の役務の提供を受ける者は,厚生労働大臣から労働者派遣事業の許可を受けた者以外の労働者派遣 否か)について(原告らの主張)ア労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分について労働者派遣の役務の提供を受ける者は,厚生労働大臣から労働者派遣事業の許可を受けた者以外の労働者派遣事業を行う事業主から,労働者 派遣の役務の提供を受けてはならないとされている(労働者派遣法24 条の2)。また,「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。以下「区分基準」という。)によれば,請負の形式による契約により行う事業が労働者派遣事業とみなされないためには,請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであることが必要である。 イエスカレーションという名の疑義照会(ア) 本件委託契約は,「判断基準書」,「業務手順書」で定められていない事項について,発注者たる足立区に対してエスカレーションと称する行為により疑義照会をすることが定められており,足立区が参加人の業務に関与することがあらかじめ想定されたものであった。 (イ) 証明発行業務において,「住民基本台帳事務における支援措置等の申出者,不現住調査対象者等であることが確認できた場合は,対応について区担当者に照会すること」とされており,参加人の従業員が,足立区の職員に対してエスカレーションを行うことが予定されていた。 (ウ) 疑義照会において,届出入力,照会作業中の疑義について,足立 区に確認し指示を受けることになっており,足立区職員が参加人の従業員に対し,指示を行うことが予定されている。 (エ) そして,参加人は戸籍等の請負業務を統括する管理職とは別に「現場リーダー」や「サブリーダー」を設け,これらの者を通じて発注者である足立区と業務の調整や照会等を行っているが,その れている。 (エ) そして,参加人は戸籍等の請負業務を統括する管理職とは別に「現場リーダー」や「サブリーダー」を設け,これらの者を通じて発注者である足立区と業務の調整や照会等を行っているが,その実態は 足立区が直接委託先労働者に対し指揮命令を行っていると評価できるものである。 (オ) このように,本件委託契約は,参加人の従業員が足立区の職員に対して,エスカレーションを行うことが予定された内容のものであって,労働者派遣法に違反する。 ウ足立区の職員による指揮監督 (ア) 足立区は,仕様書を改定し,業務手順書について,「発注者が提供する業務指示書や業務分析を基に,業務を円滑に遂行するために必要な業務手順書(マニュアル)を作成すること。なお,業務に合わせて随時更新すること」と明記しているが,これはつまり,足立区が示した業務指示書等に基づき参加人が業務手順書を作成するというものであり, 足立区の指示に基づくものである。 (イ) 戸籍届書受付・入力業務においては,「既存データと書類などに論理的な矛盾が発生した場合には,区担当者に報告し指示を受けたうえで修正等の処理を行うこと」と規定されており,足立区の職員が参加人の従業員に指示することが契約内容となっていた。 (ウ) 戸籍届書関連業務においても,「不受理申出が発生した場合には,区担当者の指示を受けたうえでシステムへ登録すること」と規定されており,足立区の職員が参加人の従業員に指示することが契約内容となっていた。 (エ) 「業務運用に関する御打合書」によれば,届書の補記方法の対応 について,「職員様からの指示で,B社が原本に補記を行う」とされ,訂正の種別についての確認の対応について,「職権による訂正,24条訂正,訂正の種別は職員様 書」によれば,届書の補記方法の対応 について,「職員様からの指示で,B社が原本に補記を行う」とされ,訂正の種別についての確認の対応について,「職権による訂正,24条訂正,訂正の種別は職員様より指示する」と記載されているなど,足立区の職員が参加人の従業員に対し,戸籍の訂正・更正について,指示することが明記されている。 (オ) 住民異動届等の受付・入力及び関連業務においても,当初仕様は,「既存データと書類などに論理的な矛盾が発生した場合には,区担当者に報告し指示を受けたうえで修正等の処理を行うこと」と規定されていた。 (カ) 印鑑登録等業務についても,「受付・処理等において疑義が生じ た場合には,区担当者に報告し指示を受けたうえで修正等の処理を行 うこと」と規定されていた。 (キ) このように,本件委託契約が,足立区の職員の参加人の従業員に対する指揮・監督を予定したものであることは明らかである。 エ足立区による人事管理足立区は,参加人の労働者・業務従事者に対して,被告宛ての「守秘義 務誓約書」を提出させているところ,これは,「労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと」との区分基準に抵触し,偽装請負に当たる。 オこのように,本件委託契約(仕様書を含む。)は,足立区の職員が参加人に対して指示を行うことが明確に規定されており,足立区の職員による 指揮監督を予定したものであったことは明らかであるから,労働者派遣法に違反し違法である。また,本件委託窓口業務開始後,実際に,足立区が参加人に対して指揮命令を行っており,これは,本件委託契約において,エスカレーション等を行うことを規定したことに起因するものである。 (被告の主張) アエ 口業務開始後,実際に,足立区が参加人に対して指揮命令を行っており,これは,本件委託契約において,エスカレーション等を行うことを規定したことに起因するものである。 (被告の主張) アエスカレーションは責任者間で行う調整行為であることについて原告らが指摘する関係書類の各記載は,いずれも,飽くまで参加人の責任者から足立区の職員に対する疑義照会(エスカレーション)を想定したものであり,このことは本件委託窓口業務開始後に参加人が「責任者」として「サブリーダー」を増員したことにも現れている。もっとも, この点について,東京労働局の是正指導において,実態として,責任者間で行う調整行為と評価することはできないとされたため,労働者派遣法に違反するとされたが,それは運用の問題としてそのように評価されたということであって,本件委託契約において偽装請負を想定したものではなかった。また,東京労働局から指摘された事項については,その 後,いずれも是正し,同労働局からも是正が完了した旨の確認を受けて いる。 イ足立区の指揮監督を受けていないことについて本件委託契約には,参加人が行うことになる窓口業務の業務手順等を設計する「サービス設計プロジェクト業務」が含まれているところ,業務手順書は,参加人が,当該サービス設計プロジェクト業務の中で,足 立区の戸籍窓口業務を分析し自らが行う業務フロー等を設計し作成したものである。業務指示書は,参加人が作成した業務手順書等の書類の記載に不備があった場合に,それを指摘するメモにすぎず,業務手順書等の内容を指示するものではない。したがって,飽くまで参加人は,自らの専門的技術・経験に基づき本件委託窓口業務を行っているのであって, 足立区の具体的な指揮監督を受けているものではない。 順書等の内容を指示するものではない。したがって,飽くまで参加人は,自らの専門的技術・経験に基づき本件委託窓口業務を行っているのであって, 足立区の具体的な指揮監督を受けているものではない。 ウ足立区による人事管理はされていないことについて原告らの指摘する「守秘義務誓約書」は,飽くまで参加人の従業員から参加人に宛てて提出されているものであり,その上で,業務に従事する労働者の決定を参加人が行っている以上,発注者である足立区が受託 事業者である参加人に対し,その写しの提出を求めても,それにより労働者派遣事業に当たると判断されることはない。 エしたがって,本件委託契約は,労働者派遣法に違反するとは認められない。 (6) 争点(6)(本件各支出命令の違法性)について (原告らの主張)本件委託契約は,以上のとおり,足立区民のプライバシーを侵害し,地方自治法,戸籍法,労働者派遣法等に違反し,無効なものであるから,これに基づく本件各支出命令は違法である。 仮に本件委託契約が無効でないとしても,本件委託契約の定めにより,足 立区には解除権が与えられていた。また,足立区が参加人に対して,事実上 働きかけを真摯に行えば,当該契約条項に従って,本件委託契約の解消に参加人が応ずる蓋然性は高かったといえる。 したがって,本件は,最高裁平成25年3月21日第一小法廷判決・民集67巻3号375頁にいう「当該普通地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているとき」又は「当該契約が著しく合理性を欠きそのためそ の締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真しに行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が のためそ の締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真しに行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるとき」に該当するから,本件委託契約に基づく債務の履行とし て支出命令を行う権限を有する足立区戸籍住民課課長は,違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務があり,当該職員が上記債務の履行として行った本件各支出命令は財務会計法規上の義務に違反する違法なものである。 (被告の主張) 本件委託契約は,公序良俗に反する等無効になるべき事情はない。仮に労働者派遣法に違反するとしても,そのことによって直ちに無効となるわけではない。 また,足立区は,東京法務局及び東京労働局からの指摘を踏まえ,直ちに対応し,両局から是正の確認を受け,本件委託窓口業務の変更を行い,委託 料を減額している。したがって,このような経緯からみても,足立区戸籍住民課課長が漫然と違法な本件委託契約に基づく義務の履行として本件各支出命令を行ったとは認められない。 したがって,本件各支出命令に財務会計法規上の義務に違反する違法は認められない。 (7) 争点(7)(専決職員に対する指揮監督上の義務違反の有無)について (原告らの主張)財務会計上の行為を法令上本来的に有するとされている地方公共団体の長その他の職員がその権限に属する事務を補助職員に専決させている場合,長等は「当該職員」(地方自治法242条の2第1項4号)に当たる。したがって,本件各支出命令を足立区戸籍住民課課長が専決処理していても,その がその権限に属する事務を補助職員に専決させている場合,長等は「当該職員」(地方自治法242条の2第1項4号)に当たる。したがって,本件各支出命令を足立区戸籍住民課課長が専決処理していても,その 当時被告の職にあったAが「当該職員」に該当することは明らかである。 Aは,足立区戸籍住民課課長に対し,本件委託契約に基づく支出命令に際し,法令を遵守させる義務を一般的抽象的に負っていた。それにもかかわらず,Aは,支出命令段階で,法令違反をチェックする体制を整備していなかった。したがって,Aの指揮監督上の義務違反が認められる。 また,地方公共団体の長は,自ら当該財務会計上の非違行為を行ったと同視し得る程度の個別具体的な指揮監督義務の懈怠があれば,賠償責任を負うと解されるところ,本件で,Aは,本件各支出命令に先行して,自ら,憲法,地方自治法,戸籍法,労働者派遣法等に違反する本件委託契約を締結しているので,自ら当該財務会計上の非違行為を行ったと同視し得る程度の個別具 体的な指揮監督義務の懈怠が認められる。 よって,Aには,指揮監督上の義務違反が認められる。 (被告の主張)地方公共団体の長が負う指揮監督の義務は,一般的な選任監督責任ではなく,個別具体的な指揮監督義務である。仮に本件各支出命令に財務会計上の 違法が認められるとしても,Aは,東京法務局及び東京労働局からの指摘の後,直ちにこれに対応し,速やかに本件委託窓口業務を変更して公金支出を適法化するよう指示しており,Aに指揮監督上の義務違反はない。 本件委託契約は,317号通知が発出された後に締結されたものであり,317号通知によれば,原告らが違法と主張する本人確認業務や移記業務に ついては,特段の制限なく委託が認められており,Aがこれに従ったと 約は,317号通知が発出された後に締結されたものであり,317号通知によれば,原告らが違法と主張する本人確認業務や移記業務に ついては,特段の制限なく委託が認められており,Aがこれに従ったとして も,違法とされることに予見可能性はなく,この意味でも,Aに過失等の帰責事由はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(適法な住民監査請求前置の有無)について(1) 被告は,本件監査請求において,原告らは支出負担行為たる本件委託契 約の違法のみ主張しており,本件各支出命令の違法を主張していないから,本件監査請求の対象は,本件委託契約のみであり,本件訴えは本件各支出命令について適法な住民監査請求を経ていないため不適法である旨主張する。 (2) 公金の支出は,支出の原因となるべき契約その他の支出負担行為(地方自治法232条の3),長の支出命令(同法232条の4第1項),及びこ れに基づき会計管理者が行う支出(同条2項)からなり,それぞれ住民監査請求において審査すべき事項を異にする別個の財務会計行為であり,違法事由も必ずしも一致しない。しかし,支出負担行為の法令違反の違法事由は,その後の支出命令及び支出における支出負担行為の法令違反の確認義務違反の違法事由と重なること,これらの行為を対象とする住民監査請求の目的は, 最終的な現実の支出の適正を図ることに収斂されること等からすると,支出負担行為に対する住民監査請求は,後行行為である支出命令及び支出については住民監査請求の対象に含まない趣旨が明白であるような場合を除いて,これらを対象に含むものというべきである。 (3) これを本件についてみるに,原告らは,本件訴えにおいて,違法な財務 会計上の行為として本件各支出命令を主張しているところ,本件監査請求に ,これらを対象に含むものというべきである。 (3) これを本件についてみるに,原告らは,本件訴えにおいて,違法な財務 会計上の行為として本件各支出命令を主張しているところ,本件監査請求においては,本件委託契約及びこれに基づく本件各支出が,個人のプライバシーを侵害し,戸籍法及び労働者派遣法に違反する旨主張していたことが認められる(甲1)から,専ら本件委託契約の違法事由のみ主張していたとしても,支出負担行為たる本件委託契約のみならず,本件各支出命令及び本件各 支出をも本件監査請求の対象としていたことは明白である。 よって,本件訴えは,適法な住民監査請求を経たものと認められ,適法な住民監査請求の前置を欠く旨の被告の主張は採用できない。 2 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 足立区は,平成18年に,「国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し,その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から,これを見直し,民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより,公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革を 実施するため,その基本理念,公共サービス改革基本方針の策定,官民競争入札及び民間競争入札の手続,落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置,官民競争入札等監理委員会の設置その他必要な事項を定める」こと(1条)を趣旨とする公共サービス改革法が制定されたことを受け,平成21年度に,「足立区の公共サービス改革を推進するための指 針」を策定し,改革の手法として,行政の関与度や形態により,直営,委託,指定 趣旨とする公共サービス改革法が制定されたことを受け,平成21年度に,「足立区の公共サービス改革を推進するための指 針」を策定し,改革の手法として,行政の関与度や形態により,直営,委託,指定管理者制度,PFI(PrivateFinanceInitiative),市場化テスト,地域・区民協働,民営化などを提案した。さらに,足立区は,平成23年6月,外部化ガイドラインを策定し,外部化すべきものかの判断やふさわしい外部化手法の選定について,足立区としての考 え方を整理した。(乙2,弁論の全趣旨)(2) 足立区は,戸籍・区民事務所窓口の業務の一部を外部委託することとし,公募型プロポーザル方式による事業者選定手続を開始し,参加人との間で,平成25年3月25日付けで,契約金額を4億0215万円,契約期間を同日から平成27年9月30日までとして,足立区が参加人に足立区戸籍・区 民事務所窓口の業務(①戸籍届書受付・入力業務,②戸籍届書関連業務,③ 住民異動届等の受付・入力及び関連業務,④印鑑登録等業務,⑤証明発行業務,⑥窓口案内業務,⑦特別永住者業務,⑧住居表示業務,⑨公金取扱業務等)を委託すること等を内容とする本件委託契約を締結し,参加人は,平成26年1月1日から,本件委託窓口業務を開始した。本件委託窓口業務では,審査・決定など法令上足立区の職員が自ら責任を持って行うべき業務(公権 力の行使に当たるもの)は除かれていた。本件委託契約の条項(12条1項)において,発注者(足立区)は,必要があるときは,受注者(参加人)と協議の上,本件委託契約の全部又は一部を変更,中止又は解除することができる旨定められていた。(甲2,81,113の1~3)(3) 足立区と参加人は,平成25年11月25日付け合意により,平 と協議の上,本件委託契約の全部又は一部を変更,中止又は解除することができる旨定められていた。(甲2,81,113の1~3)(3) 足立区と参加人は,平成25年11月25日付け合意により,平成26 年1月1日から,本件委託契約の内容を一部変更し,参加人の従業員による休養室利用に関する定めが追加された。(甲3)(4) 東京法務局は,平成26年2月21日,足立区に対し,本件委託窓口業務の範囲が大規模かつ先進的な内容であることから,同月25日に実情調査を行う旨通知した。(弁論の全趣旨) (5) 東京法務局は,平成26年2月25日,足立区の戸籍事務に関し,現地調査を行い,東京法務局長は,同年3月17日付けで,被告に対し,概要,以下のとおり,戸籍事務現地調査の結果について通知した。(甲43)ア受理決定等の処分決定について戸籍法上の受理とは,戸籍事務管掌者である市区町村長が,提出された 届書等の書類を適法なものと判断してこれを受領することを認容する行政処分とされている。そして,受理の決定は,市区町村長が,届け出られた届出等が民法及び戸籍法所定の要件を具備していることを審査した上でなされなければならない。 このことは,戸籍情報システムにより戸籍事務を処理する場合でも当然 同様であり,戸籍情報システム標準仕様書上も,審査した上で受理決定 をすることが予定されている。 したがって,戸籍事務を民間事業者に委託する場合の業務手順(業務フロー)の構築に当たっては,上記の手順を踏まえる必要がある。 しかしながら,足立区の業務手順では,区職員の審査前に民間事業者が受理決定(処分決定)の入力行為を行うことになっているので,早急に 上記手順を踏まえた業 の手順を踏まえる必要がある。 しかしながら,足立区の業務手順では,区職員の審査前に民間事業者が受理決定(処分決定)の入力行為を行うことになっているので,早急に 上記手順を踏まえた業務手順の見直しをするよう求める。 イ窓口対応について戸籍事務を民間事業者に委託することが可能な業務として,届書の受領及び本人確認があるが(317号通知参照),民間事業者が,窓口において書類の不備等を理由として届書を受領しない行為(届出人を帰して しまうなど)をすることは,民間事業者が実質的な不受理決定を行っているに等しいので,民間事業者への委託の範囲を超えているものと考えられる。 足立区が民間事業者に委託している「戸籍届書受付業務」において,届書に不備等があった場合には,上記の委託範囲の考え方を踏まえ,区職 員が適切な対応をとることが必要なので,その対応が可能な体制を構築するよう求める。 ウ補正・付せん処理について市区町村長が,戸籍に関する届書の記載に誤記・遺漏等があることを発見した場合には,原則として届出人に補正をさせることになるが,その 誤記・遺漏等がきわめて軽微であって,届書の記載全体の内容からして届出事件本人の同一性が確認できる場合には,例外的に,市区町村長が,①届書に直接補記訂正をなし,その旨を届書の欄外に記載する方法(昭和27年6月19日付け民事甲第849号回答等),又は②届書に誤記・遺漏等がある旨を記載した「付せん」を貼付する方法(東京法務局戸 籍事務取扱準則33条)により便宜補正することが認められている。そ して,市区町村長がする上記補正は,市区町村長が補正したことを届書上明らかにしておくことが求められている。 したがって, 準則33条)により便宜補正することが認められている。そ して,市区町村長がする上記補正は,市区町村長が補正したことを届書上明らかにしておくことが求められている。 したがって,足立区が民間事業者に委託している「戸籍届書受付業務」において,民間事業者が,届書に補正(ただし,区長の判断が必要ないものに限る。)をする場合であっても,届書上,区長が補正したもので あることを明らかにしておく必要があるので,補正に係る届書上の処理について,適切な処理がなされるよう求める。 エ労働関係法令上の確認について請負契約をした民間事業者の労働者に,市区町村職員が直接の指揮・命令をすれば労働関係法令に違反する場合もあることから,東京労働局に 対し,現在,足立区が実際に行っている業務委託の詳細な内容について提供した上で,当該業務委託についての労働関係法令上の問題の有無を照会し,その結果を報告するよう求める。 (6)ア被告は,平成26年3月31日付けで,東京法務局長に対し,上記(5)の指摘に対し,概要,以下のとおり,事務改善報告を行った。(甲4 3,乙13の1)(ア) 受理決定等の処分決定について足立区職員の審査前に委託業者が処分決定入力を行っている現業務手順(業務フロー)について,委託業者は,①届書,②受領,③戸籍入力を行い,足立区が④受理判断,⑤処分決定を行うこととする。 (イ) 窓口対応について本人の申請に対する意思表示がある場合,受領のための必要条件の説明を受託事業者より行い,本人意思による修正・変更・追加・申請の取下げ等を促すこと,本人の申請に対する意思表示がある場合で,本人意思による修正・変更・追加・申請の取下げ等に至らない場合,足立区職 託事業者より行い,本人意思による修正・変更・追加・申請の取下げ等を促すこと,本人の申請に対する意思表示がある場合で,本人意思による修正・変更・追加・申請の取下げ等に至らない場合,足立区職 員による不受理判断等の対応を行うことを改めて徹底する。 (ウ) 補正・付せん処理について市区町村長が補正したことを届書上明らかにすべきという点について,戸籍に関する届書の記載に誤記・遺漏等があることを発見した場合には,①届書の欄外に枠がある場合には,その枠内に補記訂正を記載する方法を採用し,足立区が補正したことを公印処理することによって届書上明 らかにし,②届書の欄外に枠が設けられていない場合,又は適切な処理が望めない場合(補記訂正が枠内に収まらない場合等)には,付せんを貼付し補記訂正を記載する方法を採用し,足立区が補正したことを公印処理することで届書上明らかにする。 (エ) 労働関係法令上の確認について 東京労働局に東京法務局からの通知内容を伝え,協力を依頼したところ,担当者より,請負業務を行うに当たっての留意点について指摘がされた。 イ足立区は,平成26年5月7日付けで,東京法務局に対し,概要,以下のとおり,補足説明を行った。(乙13の2) (ア) 受理決定等の処分決定について受託事業者が戸籍業務画面で「異動処理」を選択し,パスワードを入力し実行を押すと,届出選択画面に移行する。ここで届書に記載されている内容や必要事項をシステム入力し,システム上で審査し処分決定画面に移る。改善前は,この処分決定画面の処分欄プルダウンを「受理」 で入力して「実行」を押すことでシステム上の処分決定,受理決定という行為を行っていたが,改善後は,この処分決定画面の処分欄プルダウン 。改善前は,この処分決定画面の処分欄プルダウンを「受理」 で入力して「実行」を押すことでシステム上の処分決定,受理決定という行為を行っていたが,改善後は,この処分決定画面の処分欄プルダウンから「保留」を選択入力することで入力情報は一旦保存され,システム上も事実行為としても受理決定をしていない。 システム上この状態で足立区職員に引き渡され,足立区職員が届書の 書類上の受理判断,受理決定を行う。先に入力された情報を受領番号で 呼び出し,書類上で受理判断,受理決定をした後,その届書入力画面でもう一度入力内容を確認し,「審査」を押し,処分決定画面に移り,処分欄に「受理」を選択して「実行」を押し処分決定を行う。 処分決定を入力する前には,システム審査をしなければ入力できないが,受託事業者はシステム審査でエラー表示が出た場合,画面を先に進 める必要から,「はい」を選択して一旦エラーを解消し,「保留」を入力し,その後,足立区の職員が同じ画面によりシステム審査を行い,当該エラーについて判断をする。 (イ) 窓口対応について窓口において,届書類の記入漏れやあり得ない誤記などがあった場合, 法令で当然記載しなければならないと定められている範囲内の内容であれば,受託事業者は,届出人にその部分を説明し了承のもとで届出人本人に加除訂正してもらう。法定添付書類等の添付漏れがあった場合,受託事業者は法令等に規定された要件を説明し,追加等を求めることとなるが,説明に納得してもらえない場合は,足立区の職員が応対し,不受 理を説明するため,受託事業者が取下げを促すことはない。 (7) 足立区と参加人は,平成26年4月1日付け合意により,消費税率の改正に伴い,本件委託契約の契約金額を4億1160万円とした 受 理を説明するため,受託事業者が取下げを促すことはない。 (7) 足立区と参加人は,平成26年4月1日付け合意により,消費税率の改正に伴い,本件委託契約の契約金額を4億1160万円とした。(甲4)(8) 東京労働局は,平成26年4月30日,足立区の本件委託窓口業務について現地調査を行った。(乙16) (9) 東京法務局は,平成26年5月8日,改善事項の確認のため,足立区の戸籍事務の現地調査を行い,東京法務局長は,同月23日付けで,被告に対し,概要,以下のとおり,戸籍事務現地調査の結果について通知した。(甲44,乙14)受理決定等の処分決定,窓口対応及び補正・付せん処理については,取扱 いが見直されたことを確認し,指摘事項に係る問題は解消されたものと認め る。労働関係法令上の問題の有無については,東京労働局による調査結果等が判明次第,報告願う。 (10) 被告は,平成26年6月3日,定例記者会見において,本件委託窓口業務に関し,当初3時間以上待たされたという声もいただいた,当初混乱させたことは足立区民にお詫びしたい旨の発言をした。(甲87,88,乙 6)(11) 東京労働局長は,平成26年7月15日付けで,被告に対し,概要,以下のとおり,是正指導を行った。(甲86,乙5の1)ア違反事項本件委託窓口業務の実態は,①受託者である参加人が,受託した業務の 完了までの間に,あらかじめ「判断基準書」,「業務手順書」等で定められていない事項については,発注者である足立区に対してエスカレーションと称した行為により疑義照会することが定められており,足立区が参加人の業務に関与することがあらかじめ想定された内容になっていること,②足立区と参加人の間で行うエスカレーションについて, カレーションと称した行為により疑義照会することが定められており,足立区が参加人の業務に関与することがあらかじめ想定された内容になっていること,②足立区と参加人の間で行うエスカレーションについて,責任者間で行う 調整行為と評価することはできず,事実上の指揮命令となっていることから,区分基準2条1号イ(1)(労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと)及び2号ハ(2)(自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて,業務を処理すること)を満たしておらず,労働者派遣事業に該当する。したがって,足立区は,厚 生労働大臣の許可を受けずに労働者派遣事業を行っている事業主から,労働者派遣の役務の提供を受けていることから,労働者派遣法24条の2に違反する。 イ是正のための措置(ア) 上記違反事項については,派遣労働者の雇用安定を図るための措 置を講じることを前提に是正すること。 (イ) 現在行っている全ての業務委託契約について,上記と同様の違反等がないか点検を行い,労働者派遣法に違反する事項がある場合は,労働者の雇用の安定を図るための措置を講じることを前提に,速やかに是正すること。 (ウ) 上記(ア)に係る是正状況並びに上記(イ)に係る是正状況及び点検 結果を,平成26年8月20日までに東京労働局に書面にて報告すること。 (12) 被告は,東京労働局長に対し,概要,以下のとおり,是正報告書(中間報告)をそれぞれ提出した。(甲50~52,55,56)ア平成26年8月18日(第一次中間報告) イ平成26年9月24日(第二次中間報告)(ア) 「判断基準書」,「業務手順書」等で定められていない事項の疑義照会については契約書(仕様書 平成26年8月18日(第一次中間報告) イ平成26年9月24日(第二次中間報告)(ア) 「判断基準書」,「業務手順書」等で定められていない事項の疑義照会については契約書(仕様書)の業務内容から削除する件(以下「削除の件」という。)現在,仕様書等の改正に着手しており,平成26年10月からの人員 配置に伴い段階的に変更する。 (イ) 受託事業者の委託範囲を一部除外し,区が受付することで,疑義照会が発生しない委託内容に変更する件(以下「変更の件」という。)第一次是正策として,戸籍届書窓口のうち受託事業者が行っている受付業務の一部について,平成26年10月上旬を目処として足立区職員 に変更する。今後,派遣労働者の雇用安定を図りながら,平成27年4月1日までに段階的に解消する。 ウ平成26年10月20日(第三次中間報告)(ア) 削除の件平成26年9月29日付けで「平成25年3月25日締結の委託契約 に付随する覚書」を取り交わし,平成26年10月1日から契約変更を 行った。 (イ) 変更の件平成26年10月1日付けで足立区職員3名を戸籍住民課に配置した。 戸籍届出窓口業務と住民異動窓口業務の一部を区が行う事務フローに変更し,対象事務については疑義照会が発生しないよう実施している。 エ平成26年11月17日(第四次中間報告)変更の件に関し,平成26年11月1日付けで足立区職員3名を戸籍住民課に配置した。これにより,住民異動窓口の受付・入力業務と証明発行窓口のうち,委任状・第三者請求等の受付を区が行う仕様内容に変更し,対象部分については疑義照会が発生しないよう実施している。 オ平成26年12月19日(第五次中間 入力業務と証明発行窓口のうち,委任状・第三者請求等の受付を区が行う仕様内容に変更し,対象部分については疑義照会が発生しないよう実施している。 オ平成26年12月19日(第五次中間報告)変更の件に関し,戸籍届出窓口の是正策完結予定,契約変更予定及び人員配置予定を平成27年1月に変更した。 カ平成27年1月20日(第六次中間報告)変更の件に関し,平成27年1月1日付けで足立区職員4名を戸籍住民 課に配置した。これにより,戸籍届出窓口の受付と受理案内業務を足立区が行う仕様内容に変更し,対象部分については疑義照会が発生しない委託内容とした。是正に必要な足立区職員の人員配置は終了した。 (13) 足立区と参加人は,平成26年9月29日付け合意により,同年10月1日から,本件委託契約の内容を変更し,受注者から発注者へのエスカレ ーションを行わないように,判断基準書及び業務手順書を見直し,発注者に報告することとされ,以下のとおり,仕様が変更された。(甲5,丙6)ア戸籍届書入力業務当初仕様では,既存データと書類などに論理的な矛盾が発生した場合には,足立区担当者に報告し指示を受けた上で修正等の処理を行うこととさ れていたが,当該部分は削除され,届書入力納品後,修正等が発生した場 合は,足立区に引き継ぐこととされた。 イ戸籍届書関連業務当初仕様では,附票入力時に既存の附票データと届書情報に論理的な矛盾が発生した場合には,足立区担当者へ報告し指示を受けた上で修正等を行うこととされていたが,当該部分は削除された。 当初仕様では,不受理申出が発生した場合には,足立区担当者の指示を受けた上でシステムへ登録することとされていたが, を受けた上で修正等を行うこととされていたが,当該部分は削除された。 当初仕様では,不受理申出が発生した場合には,足立区担当者の指示を受けた上でシステムへ登録することとされていたが,当該部分は削除された。 ウ住民異動届等の受付業務論理的な矛盾及び疑義が発生した場合は,足立区に引き継ぐこととされ た。 エ住民異動届等の入力業務当初仕様では,既存データと書類などに論理的な矛盾が発生した場合には,足立区担当者に報告し指示を受けた上で修正等を行うこととされていたが,そのような場合は,足立区に引き継ぐこととされた。 オ印鑑登録等業務受付・処理等において疑義が生じた場合には,足立区担当者に報告し指示を受けた上で修正等の処理を行うこととされていたが,当該部分は削除された。 カ証明発行業務 住民基本台帳事務における支援措置等申出者,不現住調査対象者等であることが確認できた場合は,対応において足立区担当者に照会することとされていたが,当該部分は削除された。 (14) 足立区と参加人は,平成26年10月28日付け合意により,同年11月1日から,本件委託契約の内容を変更し,本件委託窓口業務から,住 民異動届等の受付・入力業務,委任状による証明書等の発行申請や第三者 による請求の場合の受付・入力・発行・照合業務及び不交付の場合の案内業務を外し,足立区の職員が行うこととした。(甲6,乙16,丙6)(15) 足立区と参加人は,平成27年1月1日付け合意により,同日から,本件委託契約の内容を変更し,本件委託窓口業務から,戸籍届書受付業務及び受理案内業務を外し,足立区の職員が行うこととした。(甲56,5 7,乙16,丙6)(16) 付け合意により,同日から,本件委託契約の内容を変更し,本件委託窓口業務から,戸籍届書受付業務及び受理案内業務を外し,足立区の職員が行うこととした。(甲56,5 7,乙16,丙6)(16) 被告は,平成27年3月25日付けで,東京労働局長に対し,変更の件に関し,予定された職員の配置のほか,業務標準書等の点検及び再整備が完了し,適正に業務委託が行われていることなどを報告する是正報告書(最終報告)を提出した。(甲57,乙4の1) (17) 東京労働局は,平成27年4月15日,足立区の本件委託窓口業務に関し現地調査を行い,その結果,特段指摘事項はなく,適正に行われていることが確認され,被告は,同月21日,東京法務局長に対し,その旨報告するとともに戸籍事務の改善について報告した。(甲57,乙4の2,4の3,乙16) (18) 足立区と参加人は,本件委託契約が平成27年9月30日で終了することに伴い,同月28日付けで,契約金額を6776万7840円,契約期間を同年10月1日から平成28年3月31日までとして,足立区が参加人に足立区戸籍住民課窓口等業務を委託することを内容とする契約を締結した。同契約では,前記(14)及び(15)の業務が外された本件委託窓口業 務から,さらに戸籍異動の入力や移記入力等の業務が外された内容の業務が足立区から参加人に委託された。(乙15,16,丙6)(19) 足立区と参加人は,平成28年3月16日付けで,契約金額を7億0026万7680円,契約期間を同日から平成33年5月31日までとして,足立区が参加人に足立区戸籍住民課窓口等業務を委託することを内容 とする契約を締結した。(乙18) (20) 上記の数次にわたる契約変更等により,参加人が,現在,足立区から受託して 立区が参加人に足立区戸籍住民課窓口等業務を委託することを内容 とする契約を締結した。(乙18) (20) 上記の数次にわたる契約変更等により,参加人が,現在,足立区から受託している業務は,戸籍窓口における付帯業務(通知作成・送付,人口動態情報の整理等),住民票窓口における異動関連交付業務,証明窓口業務,及びフロアマネージャー業務となった。(乙16,丙6,7) 3 争点(2)(本件委託契約はプライバシー権を侵害するか否か)について (1) 原告らは,戸籍には個人のプライバシーが記載され,足立区において管理する必要があるところ,本件委託契約は,戸籍謄本等の交付等の業務を参加人に委ねるものであり,頻繁に入れ替わる参加人の従業員の知り得る状態に置かれたこと等によって,原告ら足立区民のプライバシー権を侵害するものである旨主張する。 (2) 足立区においては,戸籍事務を電子情報処理組織によって取り扱っているところ,戸籍には,本籍のほか,戸籍内の各人について,氏名,出生の年月日,戸籍に入った原因及び年月日,実父母の氏名及び実父母との続柄,養子であるときは養親の氏名及び養親との続柄,夫婦については夫又は妻である旨,他の戸籍から入った者についてはその戸籍の表示,その他法務省令で 定める事項が記載される(戸籍法13条)。このような個人情報は,私生活上の事柄に属するものであり,法制度上も,戸籍謄本等を交付請求できる主体・目的等に制限があり,一般通常人を基準にしても公開を欲しないであろうと考えられる事柄であり,かつ,その多くは一般に知られていない事柄であるから,これらの情報は,各人のプライバシーに属する情報であり,これ をみだりに他人に知られない利益は権利として保護されるべきものといえる。 (3) 多くは一般に知られていない事柄であるから,これらの情報は,各人のプライバシーに属する情報であり,これ をみだりに他人に知られない利益は権利として保護されるべきものといえる。 (3) しかし,公共サービス改革法34条1項1号は,戸籍謄本等の交付の請求の受付及び引渡しの業務を,官民競争入札又は民間競争入札の対象とすることができる旨規定している。そして,これを受けた平成20年内閣府通知 において,民間事業者に取り扱わせることができる窓口業務として,①戸籍 の附票の写しの交付については,交付請求の受付における請求者の確認,請求書の記載事項,添付書類の確認(第三者からの請求の受付も含む。),写しの作成における端末の入出力の操作,②戸籍の届出については,届出の受付における届出人の確認,届書の記載事項,添付書類の確認,戸籍の記載における端末の入出力の操作,③戸籍謄抄本等の交付については,交付請求の 受付における請求者の確認,請求書の記載事項,添付書類の確認(第三者からの請求の受付も含む。),謄抄本等の作成における端末の入出力の操作等が挙げられており(乙1),317号通知においても,民間事業者が業務を実施する官署内に市区町村職員が常駐し,不測の事態等に際しては当該職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制が確保されていれば,平成2 0年内閣府通知に基づく民間業務委託を可能としている(甲82)。参加人の従業員が業務を行うのは,足立区役所等足立区の職員が常駐する官署内であるから,上記体制は確保されているといえ,足立区が戸籍届書受付・入力業務等を民間事業者である参加人に委託すること自体が法令に違反するとはいえない。また,参加人の従業員が行う本件委託窓口業務は,戸籍届書や証 明申請書を受け付け,必要な事項を 戸籍届書受付・入力業務等を民間事業者である参加人に委託すること自体が法令に違反するとはいえない。また,参加人の従業員が行う本件委託窓口業務は,戸籍届書や証 明申請書を受け付け,必要な事項を足立区が管理する端末を使って入力し,証明書を交付するだけであり(乙16),データ化された戸籍を参加人に提供するものでもなければ,参加人の管理下に置くものでもない。参加人の従業員は,スマートフォンなどの記録媒体を勤務場所に持ち込むことは禁止され,携帯品は透明な袋に入れて持ち込むことになっているなど個人情報を持 ち出すことができない体制もとられている(乙16,19)。以上のような事情に照らせば,戸籍届書受付・入力業務等を民間事業者たる参加人に委託することが,当然に個人のプライバシー権を侵害することになるとは認められない。 (4)ア原告らは,参加人の従業員の多くは短期雇用者であるから,戸籍情報 漏洩の危険が高まる旨主張する。 証拠(甲26)によれば,参加人では,平成25年11月の試行段階から入っている従業員も含めて延べ134名が本件委託窓口業務に従事し,平成26年9月当時95名が登録されていること,95名の内訳は,正社員が6名,契約社員が56名,パートが33名であったことが認められる。 このように相当数の短期雇用者が本件委託窓口業務に従事していたと認められるが,足立区では,担当者のセキュリティ研修の実施,委託従事者の利用する端末の操作履歴やパスワードの管理,戸籍情報へのアクセス履歴の記録及びチェック,足立区が委託した個人情報保護業務に従事している者又は従事していた者に対する罰則の強化(足立区個人情報保護条例の 改正),特定事務委託調査委員会の設置等,個人情報保護体制を整備しており ック,足立区が委託した個人情報保護業務に従事している者又は従事していた者に対する罰則の強化(足立区個人情報保護条例の 改正),特定事務委託調査委員会の設置等,個人情報保護体制を整備しており(甲29,32,弁論の全趣旨),参加人においても,情報セキュリティ教育の実施,私物の事務スペースへの持込禁止等情報セキュリティ体制を構築していたと認められ(乙19,弁論の全趣旨),かかる事情に照らせば,短期雇用者であれば,個人情報の流出の危険が高まるなどという ことはいえないし,実際にも,そのような事態が生じているとは認められない。 イ原告らは,参加人は過去に情報漏洩事件を起こしており,被告は,当該事件について審議会に何ら報告しておらず,重大な情報を秘匿した違法がある旨主張する。 証拠(丙1~5)によれば,平成18年8月8日,男性1名が参加人を訪れ,「戸籍データを持っているので確認してほしい」と告げ,持参したノートパソコンを立ち上げ,情報の一部の画面を閲覧させたこと,参加人としては,データそのものが手元になかったことから,当該データが真正なものかどうか確認できなかったが,データが真正なものであり,かつ, 流出が事実であれば極めて重大な事態であると判断し,同日,警察に届け 出たこと,同月10日,当該男性が再び,参加人を訪れ,8日と同様に持参データの確認を求めたが,その真偽を確認することはできなかったこと,同年9月4日,当該男性と参加人の協力会社の従業員1名が逮捕され,同年11月,両名は恐喝未遂罪で起訴され,有罪判決を受けたことが認められる。しかし,上記男性から見せられたデータが真正な戸籍データ であるか否かについては公表されておらず,上記協力会社の従業員が業務上担当していた戸籍システムの され,有罪判決を受けたことが認められる。しかし,上記男性から見せられたデータが真正な戸籍データ であるか否かについては公表されておらず,上記協力会社の従業員が業務上担当していた戸籍システムの機器設置調整及びシステム更改の作業において,足立区に訪問履歴がないことも確認されており(丙1~3),戸籍データが現に流出したか否かは確認されていない。また,当該事件を受けて,参加人では,直ちに対策本部を設置し,戸籍システムのセキュリティ 強化策を検討し,これを公表するなどの対策をとっている(丙2,4,5)。そうすると,委託先として参加人を選定することが不相当とはいえないし,そもそも審議会の意見を聴くとされているのは,委託の内容及び条件である(足立区個人情報保護条例16条1項)から,情報漏洩の事実が確認できない上記事件について,審議会に報告していなかったからとい って,本件の委託の手続に瑕疵があったとも認められない。 (5) 以上のとおり,本件委託契約が原告ら足立区民のプライバシー権を侵害するものとは認められない。 4 争点(3)(本件委託契約は地方自治法及び地方財政法に違反するか否か)について (1) 原告らは,本件委託契約は,地方自治法2条14項及び15項並びに地方財政法4条1項に違反する旨主張するところ,地方公共団体が公共サービスの外部委託契約を締結することは,契約の目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的・経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した執行機関の合理的な裁量に委ねられており,当該執行機 関の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるとき でなければ,当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解するのが相当であ 該執行機 関の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるとき でなければ,当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解するのが相当である。 (2) 前記2の認定事実及び証拠(甲113の3,乙2,16)によれば,平成18年の公共サービス改革法の成立及び平成20年内閣府通知等により,公共サービスの外部委託を推進するための制度整備が進み,足立区において も,平成23年6月,外部化ガイドラインを策定し,外部化に関する基本的な考え方として,①区民サービスの向上,②区民との協働,③地域経済の活性化,④行政運営システムのスリム化・効率,⑤専門的な知識等の効果的活用を掲げ,外部化すべきかの判断や外部化手法の選定等について考え方を整理しつつ,戸籍事務等の民間委託を検討し,平成24年12月から,公募型 プロポーザル方式による事業者選定手続を開始し,選定委員会による検討を経て,平成25年3月25日,参加人との間で本件委託契約を締結したことが認められる。このように,公共サービス改革法が趣旨に掲げる民間にできるものは民間に委ねるという観点に基づく,区民サービスの向上,行政コストの削減,人材の有効活用といった本件委託契約の目的は正当なものといえ るし,本件委託契約を締結するに至った経緯等もそれ自体が不当なものであったとはいえない。 (3) 原告らは,本件委託契約は,同じシステムの稼働を参加人の従業員と足立区の職員が二度行うことになるから,二重手間であり,待ち時間の増加をもたらすものであるほか,足立区の職員のみで業務を行う場合に比べてミス が生じやすくなり,サービスの低下,コストの増加等をもたらすものであるから,地方自治法2条14項,15項等に違反するものであり,現に,本件 るほか,足立区の職員のみで業務を行う場合に比べてミス が生じやすくなり,サービスの低下,コストの増加等をもたらすものであるから,地方自治法2条14項,15項等に違反するものであり,現に,本件委託窓口業務開始後,待ち時間の増加,不適切な対応,ミスの増加,コストの増加といった事態が生じているなどと主張する。 ア待ち時間の増加について 証拠(甲113の3,乙16)及び弁論の全趣旨によれば,参加人の従 業員は,受付をした届書等の全ての項目をシステムに入力した後,足立区の職員による審査のために,端末画面のプルダウンメニューから「受理」ないし「保留」を押して画面を遷移させ,その後,足立区の職員が審査作業を行うものと認められるから,参加人の従業員と足立区の職員が同じ作業を行うものとは認められない。そして,入力業務と審査業務を機械的に 分担することで,作業効率を上げることも可能と解されることから,このような業務の分担を行うこと自体は許容されるといえ,原告らの二重手間である旨の主張は当たらない。原告らは,参加人自身が作成した本件委託窓口業務の資料(甲59)において,処理時間の増加を認めている旨主張しているところ,同資料には「業務スピードが改善(短縮化)されるとは 限りません。」といった記載がみられるものの,当該記載は委託による効果を正しく理解することで,委託後の足立区の職員体制や認識齟齬によるトラブルを回避することを目的とする前提として記載されているものと認められ,本件委託契約により待ち時間が増加し得ることの根拠となるものではない。 なお,原告らは,本件委託契約により,現に待ち時間が増加した旨主張する。確かに,前記2の認定事実及び証拠(甲61,63,原告C)によれば,本件委託窓口業務開始後 根拠となるものではない。 なお,原告らは,本件委託契約により,現に待ち時間が増加した旨主張する。確かに,前記2の認定事実及び証拠(甲61,63,原告C)によれば,本件委託窓口業務開始後,申請者を長時間待たせたことがあったこと,その点について被告が記者会見において謝罪していることが認められる。しかし,本件委託契約締結前は,窓口業務の時間計測がされていない ため,本件委託窓口業務開始の前後を比較して,実際に待ち時間が増加したといえるかは明らかでないといわざるを得ない。 イ不適切な対応について原告らは,高齢の女性が認知症の一人暮らしの妹の成年後見申立てのために妹の戸籍謄本の交付請求をしたところ,委任状がないため交付できな いとだけ言われ,施設に電話して本人確認するなど必要な措置をとられな かったなど不適切な対応があった旨主張する。しかし,上記事実があったことを裏付ける的確な証拠はない。また,仮に上記事実があったとしても,戸籍謄本の交付請求の任に当たっている者(当該高齢の女性)が,請求者(その妹)と異なる者であるときは,請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しな ければならないのであるから(戸籍法10条の3第2項),そもそも,原告らが主張するような本人確認方法は法令上許容されていないといわざるを得ない。 ウミスの増加について原告らは,本件委託契約は,足立区の職員のみで業務を行う場合と比べ てミスが生じやすくなるものであり,本件委託窓口業務開始後,実際に様々なミスが生じているなどと主張する。しかし,参加人においては,判断基準書及び業務手順書を作成することで,事務の合理化・効率化を図るとともに,本件委託窓口業務に従事する従業員 口業務開始後,実際に様々なミスが生じているなどと主張する。しかし,参加人においては,判断基準書及び業務手順書を作成することで,事務の合理化・効率化を図るとともに,本件委託窓口業務に従事する従業員間の知識・技能の共有に努め,ミスの発生を可及的に防止するための措置がとられていることが認め られる(甲10~25)。また,本件委託窓口業務開始後,届書の内容のシステムへの入力ミス等があったことが認められるものの(甲93~112,乙16,17の1~17の25),膨大な戸籍事務等を取り扱う中で,一定数のミスが生じることは不可避であるし,参加人においては,月次報告において単にミスを報告するだけではなく,これを分析・検証し, 対策を検討するなど,以後のミスの発生を防止するための対応もされていることが認められる(甲93~112,乙17の1~17の25)。以上の事情を踏まえると,単に一定数のミスが生じ得ることないし生じたことをもって,直ちに本件委託契約が地方自治法等に違反するものとは認められない。 エコストの増加について 原告らは,本件委託契約によりコストが増加しており,地方自治法等に違反する旨主張する。足立区において,平成26年度,本件委託契約に伴って減少した区職員の人件費と参加人に対する委託費用とを比較すると,後者が1188万円多くなっていることについて,当事者間に争いはない。しかし,本件委託契約により,窓口が8か所から16か所に増加し, フロアマネージャーが昼休憩時間1名であったのが常時3名に増員され,午後0時から午後5時までの勤務形態を設置して昼休憩時間の窓口応対を強化するなど,サービス水準の向上が図られており,これらを区直営で実施した場合と比較して約2500万円のコストメリットがある旨 れ,午後0時から午後5時までの勤務形態を設置して昼休憩時間の窓口応対を強化するなど,サービス水準の向上が図られており,これらを区直営で実施した場合と比較して約2500万円のコストメリットがある旨の試算もされている(乙7。なお,当該試算に不合理な点は認められない。)。ま た,足立区においては,本件委託契約により,職員を孤立ゼロプロジェクト,生活困窮者支援,幼児プロジェクト,福祉事務所など喫緊の課題対策部門に配置することが可能となっている(甲92)。そうすると,本件委託契約により一時的なコストの増加があったとしても,足立区全体の業務の効率化,サービスの向上という観点から,本件委託契約を締結したこと が不合理であるとはいえず,これが違法であるとは認められない。 (4) 以上のとおり,本件委託契約の目的,内容等に照らし,当該契約を締結した執行機関の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであったということはできず,地方自治法及び地方財政法に違反するものとは認められない。 5 争点(4)(本件委託契約は戸籍法に違反するか否か)について(1) 戸籍法1条1項及び4条によれば,戸籍に関する事務は,市区町村長が管掌するとされている。公共サービス改革法の制定により,戸籍謄本等の交付請求の受付及び引渡しの業務を民間事業者に委託することができるようになったが,同法の趣旨・目的は,民間にできることは民間に委ねることで, 公共サービスの質を維持向上し,経費を削減することにあるから,民間事業 者に委託できるのは,飽くまでも民間にできること,すなわち,裁量の余地のない事実上の行為又は補助的行為に限られるというべきであり,市区町村長の判断が必要となる業務については,民間事業者に委託することはできないという ,飽くまでも民間にできること,すなわち,裁量の余地のない事実上の行為又は補助的行為に限られるというべきであり,市区町村長の判断が必要となる業務については,民間事業者に委託することはできないというべきである。平成20年内閣府通知及び317号通知も同様の趣旨のもと,民間事業者に取り扱わせることができる業務を整理しているものと 理解できる。 原告らは,本件委託契約は,参加人に事実上の行為又は補助的行為を超える業務を委託するものであるから,戸籍法に違反する旨主張するので,以下検討する。 (2)ア本件委託契約の仕様書において,足立区が参加人に委託するのは,戸 籍・区民事務所窓口の業務(①戸籍届書受付・入力業務,②戸籍届書関連業務,③住民異動届等の受付・入力及び関連業務,④印鑑登録等業務,⑤証明発行業務,⑥窓口案内業務,⑦特別永住者業務,⑧住居表示業務,⑨公金取扱業務等)のうち,審査・決定など法令上足立区の職員が自ら責任を持って行うべき業務(公権力の行使に当たるもの)を除く全てである旨 が記載されている(甲5,81)。 上記①及び②の業務のフローは,「受付」,「照合・入力」,「審査・受理決定」,「受理案内」,「附票と移記入力及び謄本作成等」,「決裁」,「附帯業務(通知作成,送付,人口動態等)」と進むが,委託の対象とされているのは,このうち「審査・受理決定」及び「決裁」以外の業 務であり,「審査・受理決定」及び「決裁」の業務は,足立区が行うことになっていた(乙12,16)。 上記③の業務のフローは,「受付」,「受理審査・決定」,「入力」,「照合(国保・就学等処理)」,「検認」,「交付(引渡し)」,「最終点検」と進むが,委託の対象とされているのは,このうち「受理審査・決 定」,「検認」及 受付」,「受理審査・決定」,「入力」,「照合(国保・就学等処理)」,「検認」,「交付(引渡し)」,「最終点検」と進むが,委託の対象とされているのは,このうち「受理審査・決 定」,「検認」及び「最終点検」以外の業務であり,「受理審査・決 定」,「検認」及び「最終点検」の業務は,足立区が行うことになっていた(乙12,16)。 上記⑤の業務のフローは,「受付」,「入力・証明書出力」,「照合」,「検認」,「交付(引渡し)」と進むが,委託の対象とされているのは,このうち「検認」以外の業務であり,「検認」の業務は,足立区が 行うことになっていた(乙12,16)。 イ以上の事実からすると,本件委託契約上,市区町村長(被告)の判断が必要な業務は,本件委託窓口業務からは除かれていたと認められる。 (3) 原告らは,本件委託契約では,窓口に来た者の本人確認も委託の対象となっており,公の身分証明書を提出できない場合は,口頭で質問を発して 確認することになるところ,このような確認は機械的・事務的なものではなく,参加人の判断を伴い,その判断により届出人を帰してしまうなど事実上の不受理を行うものであった旨主張する。この点,東京法務局の現地調査による結果通知においても,参加人が,窓口において書類の不備等を理由として届書を受領しない行為(届出人を帰してしまうなど)は,民間 事業者が実質的な不受理決定を行っているのに等しいので,民間事業者への委託の範囲を超えている旨指摘されている。 戸籍謄本等の交付請求の際の本人確認方法としては,戸籍法施行規則11条の2第1号及び2号において,特定の書類を1又は2以上提示する方法が,3号において,1号及び2号によることができない場合に,戸籍の 記載事項について市区町村長の求め ては,戸籍法施行規則11条の2第1号及び2号において,特定の書類を1又は2以上提示する方法が,3号において,1号及び2号によることができない場合に,戸籍の 記載事項について市区町村長の求めに応じて説明する方法その他の市区町村長が現に請求の任に当たっている者を特定するために適当と認める方法が定められている。 足立区は,本件委託契約において,参加人に対し,上記1号及び2号による確認の方法のほか,3号による確認の方法も委託していたと認められ る(甲11,15,21)。しかし,口頭で本人確認を行う方法として は,聴取事項として,「干支,前住所,家族の氏名,家族の生年月日,続柄等」と定められており(甲11,15),これに基づき聴取した内容が,戸籍の記載事項と符合するかを確認するものであるから,その判断作業は単純なものであり,裁量の余地のあるものではない。したがって,このような方法による本人確認を委託することが,直ちに戸籍法に違反する ものとは認められない。なお,前記2の認定事実のとおり,参加人は,上記東京法務局の指摘を受けて,申請等のために必要な書類が不足している場合には,申請者に対して,本人自らの意思に基づいて修正等をするか,申請の取下げを行うか否かを確認し,本人意思による修正や取下げ等に至らない場合は,足立区職員による不受理判断等の対応を行うことを徹底し たことが認められる。 (4) 原告らは,本件委託契約において,養子縁組の届出に関する業務も委託の対象にしているところ,当該業務を民間事業者に委託することは許されない旨主張する。しかし,平成20年内閣府通知及び317号通知は,戸籍の内容に応じた区別をすることなく,民間事業者に委託可能な戸籍に係る業務 の範囲を示していること(甲82,乙1)等か 許されない旨主張する。しかし,平成20年内閣府通知及び317号通知は,戸籍の内容に応じた区別をすることなく,民間事業者に委託可能な戸籍に係る業務 の範囲を示していること(甲82,乙1)等からしても,養子縁組の届出に関する業務を民間事業者に委託することが一切禁じられるものとは解されないし,前記(2)アのとおり,本件委託契約上,判断作用を含む「審査・受理決定」は委託の範囲に含まれていないことからすると,本件委託契約が養子縁組の届出に関する業務を参加人に委託する点において法令に違反するとは 認められない。 (5)ア原告らは,参加人は,判断基準書及び業務手順書に基づき業務を実施しているが,これは判断要素を含む業務をマニュアル化して参加人に行わせるものであり,317号通知に違反する旨主張する。しかし,判断基準書及び業務手順書は参加人において作成しているものであり,各業務の手 順や留意事項等を記載しているにすぎず(甲10~25,弁論の全趣 旨),これによって参加人の従業員が判断作用を含む業務を行っているとは認められない。 イ原告らは,本件委託契約は,被告の判断が伴う補正についても,参加人に委託するものであり,317号通知に違反する旨主張する。この点,前記2の認定事実のとおり,東京法務局の現地調査による結果通知におい て,市区町村長がする補正は,届書上,市区町村長が補正したものであることを明らかにしておく必要がある旨指摘されている。しかし,かかる指摘は,補正の主体の明示に関するものであって,このほか,足立区が参加人に対し,被告の判断が必要な事項についてまで,補正を委託していた事実を認めるに足りる証拠はない。 ウ原告らは,足立区では,317号通知にいう「不測の事態等に際しては当該職員自 区が参加人に対し,被告の判断が必要な事項についてまで,補正を委託していた事実を認めるに足りる証拠はない。 ウ原告らは,足立区では,317号通知にいう「不測の事態等に際しては当該職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制」が確保されておらず,同通知に違反すると主張する。 平成20年内閣府通知は,民間事業者に戸籍等の業務を取り扱わせる際に,民間事業者が業務を実施する官署内に市区町村職員が常駐し,不測の 事態等に際しては当該職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制を確保する必要があるものとし(乙1),317号通知においても,そのような体制を構築していれば,戸籍法上の問題は生じないとしている(甲82)。これらの定めの趣旨は,民間事業者が委託事務を処理する過程で,通常と異なる事態や,想定していなかった事態等が生じた場合に,民 間事業者の判断に委ねるのではなく,市区町村の職員が対応することで,市区町村自体が戸籍事務を適切に管理することができるようにしたものと解される。 この点,参加人の従業員が本件委託窓口業務を行うのは,足立区役所等,足立区の職員が常駐する官署内であるから,上記のような事態が生じ た場合には,足立区職員による対応が可能な体制を構築していると認めら れる。 (6) 原告らは,本件委託契約は,参加人の従業員がシステム上で審査を行い,処分決定を行うもので,戸籍法に違反する旨主張する。この点,参加人は,当初の業務手順書において,システム上,処分決定及びその実行をするために「処分決定」及び「実行」のキーを押下することとされ(甲15), 前記2の認定事実のとおり,東京法務局の現地調査による結果通知においても,足立区の職員の審査前に参加人が受理決定(処分決定)の入力行為を行うことに 実行」のキーを押下することとされ(甲15), 前記2の認定事実のとおり,東京法務局の現地調査による結果通知においても,足立区の職員の審査前に参加人が受理決定(処分決定)の入力行為を行うことになっている点について,業務手順の見直しを求められている。しかし,前記2の認定事実及び証拠(乙16)によれば,上記システム入力の実態は,参加人の従業員が,受け付けた届書等の全ての項目を入力した後,足 立区の職員による審査等の処理のために画面を遷移させるために,端末画面のプルダウンメニューから「受理」を選択して,「決定」のキーを押すというものであり,「受理」というのはプルダウンメニューにあるリストの名称にすぎず,これによって受理決定を行うというものではなく,足立区職員に引き継ぐ目的で,入力状態を保存・維持するために行っていたものと認めら れる。また,足立区において,上記東京法務局の指摘を受けて,「受理」のメニューを「保留」というメニューに変更しており,外観上も,参加人の従業員が受理決定をしているとの疑義が生じないような措置がとられている(前記2(6)イ(ア))。よって,参加人の従業員が処分決定を行っていたとは認められない。 (7)ア原告らは,参加人の従業員は,東京労働局の是正指導後も,証明書の交付等の業務において,請求者に必要な説明を求めることで,証明書の交付・不交付の判断を行っており違法である旨主張する。しかし,前記(2)アのとおり,参加人は,「検認」の業務は請け負っておらず,仕様書上も,参加人が,請求者に「必要な説明」を求めることは定められていない (甲5,81)。 イ原告らは,参加人の従業員は,東京労働局の是正指導後も,身分事項移記等の業務を行っており,戸籍業務の移記は,高度で専門性を有する業務 ことは定められていない (甲5,81)。 イ原告らは,参加人の従業員は,東京労働局の是正指導後も,身分事項移記等の業務を行っており,戸籍業務の移記は,高度で専門性を有する業務であるから,民間事業者が行うことは違法である旨主張する。しかし,身分事項の入力業務自体は,機械的な作業で,裁量の余地のないものであるから,これを委託したからといって,戸籍法に違反するとはいえない。 (8) 原告らは,本件委託契約において,戸籍情報システムの端末の操作者が処理できる事務の範囲が不明確であった上,端末装置の操作は,正当な権限を有する者でなければならないが,参加人の従業員は事実上の行為を行うにすぎないから,正当な権限を有しない旨主張する。 電子情報処理組織による戸籍事務の取扱いや技術的基準については,平 成6年11月16日付け法務省民二第7000号法務省民事局長通達(甲119),同日付け法務省民二第7001号法務省民事局第二課長依命通知(甲120)及び同日付け法務省民二第7002号法務省民事局長通達(甲121)がそれぞれ発出されている。上記7000号通達では,戸籍データ等を適切に管理するために保護管理者を指定すること,コンピュー タの端末装置の管理責任者を指定し,かつ,各端末装置の操作者が処理することができる事務の範囲を明確にすること等が定められ,上記7002号通達では,戸籍情報システムは,事前に登録されたパスワード,識別カード等によって,端末装置の操作者が正当な権限を有する者であることを確認した上でなければ,端末装置の操作をすることができない機能を有す るものとすること等が定められている。 足立区では,上記通達等を受けて,「足立区戸籍情報に係るデータ保護管理要綱」を定め,同要綱において,管 末装置の操作をすることができない機能を有す るものとすること等が定められている。 足立区では,上記通達等を受けて,「足立区戸籍情報に係るデータ保護管理要綱」を定め,同要綱において,管理責任者として,区民部戸籍住民課各係長及び区民事務所長,戸籍住民課以外の戸籍データを利用する課の長を充てることとし,当該管理責任者が端末操作者を指定するものとして いる(乙16)。そして,端末操作者として,本件委託窓口業務開始後 は,参加人が受託事務の中で事務を指定して指名した職員を端末操作者として指名している(乙16)。このように,足立区においては,端末操作者は,あらかじめ事務の範囲が既に指定された上で指名されるのであるから,処理できる事務の範囲が不明確であるとはいえない。また,そもそも上記7002号通達が定めているのは,戸籍情報システムが有すべき機能 についてであるから,原告らの主張はその前提を誤るものである上,端末の出入力を委託することは平成20年内閣府通知及び317号通知によっても認められているところであるから,足立区が指名する端末操作者が正当な権限を有しないとは認められない。 (9) 以上のとおり,本件委託契約は,参加人に事実上の行為又は補助的行為 を超える業務を委託するものとはいえず,戸籍法に違反するとは認められない。 6 争点(5)(本件委託契約は労働者派遣法に違反するか否か)について(1) 労働者派遣法は,5条1項において,労働者派遣事業を行おうとする者は,厚生労働大臣の許可を受けなければならない旨を定め,2条4号におい て,この許可を受けた者を派遣元事業主と定義し,24条の2において,労働者派遣の役務の提供を受ける者は,派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主から,労働者派遣の を定め,2条4号におい て,この許可を受けた者を派遣元事業主と定義し,24条の2において,労働者派遣の役務の提供を受ける者は,派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主から,労働者派遣の役務の提供を受けてはならない旨を定めている。また,同法の施行に伴い,労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行うため,区分基準が設けられ,同基準において,請負の形式による契 約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主が,労働者派遣事業を行う事業主に該当しないためには,①業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと等により自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること,及び②請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するもので あることが必要である旨定められている(乙5の1)。原告らは,本件委託 契約は,足立区の職員が参加人に対して指示を行うことを予定したものであり,参加人は足立区から独立して本件委託窓口業務を処理するものとはいえないため,労働者派遣事業に当たり,労働者派遣法に違反する旨主張するので,以下検討する。 (2) 本件委託契約は,足立区が参加人に対し,足立区役所等において,本件 委託窓口業務を委託することを内容とする請負契約とされているところ,当初の仕様書では,受注者(参加人)から発注者(足立区)へのエスカレーションと称する疑義照会を最小限とするため,受注者において判断基準書及び業務手順書を可能な限り詳細に文書化するものと定められていた(甲5,81)。また,前記2の認定事実のとおり,当初の仕様書では,戸籍届書入力 業務,戸籍届書関連業務,住民異動届等の入力業務,印鑑登録等業務及び証明発行業務において,論理的な められていた(甲5,81)。また,前記2の認定事実のとおり,当初の仕様書では,戸籍届書入力 業務,戸籍届書関連業務,住民異動届等の入力業務,印鑑登録等業務及び証明発行業務において,論理的な矛盾や疑義等が発生した場合には,足立区の担当者に報告して指示を受けたり,照会したりすることが定められていた。 そして,業務手順書の一つである「足立区戸籍異動手順書(届書)」(甲15)では,「疑義照会」との項目で,「届書入力,及び照会作業時に発生 した疑義(記載方法の確認や問合せ)について,自治体様に確認し,ご回答をいただくことです。」,「職員様による確認,判断が必要な場合において口頭で疑義をした際には,内容を疑義照会シートに記入し,疑義をした担当者名と,回答を頂いた職員様名,日付を記入し所定のファイルへ格納します。」といった疑義照会を行うことやその方法について定めた記載がされて いることが認められる。 これらの事実からすると,本件委託契約において,判断基準書及び業務手順書に定められていない事項等が発生した場合には,参加人の従業員から足立区の職員へのエスカレーション(疑義照会)を行うことが想定されていたものと認められる。 (3) そして,その実際の運用をみても,足立区と参加人との間で,平成25 年11月29日に行われた打合せにおいて,届書の補記方法について,足立区の職員からの指示で参加人の従業員が原本に補記を行うことや,戸籍の訂正の種別について,足立区の職員が参加人の従業員に指示することなどが確認されているほか(甲115),足立区と参加人との間で,どのようなケースでエスカレーション対応をするかの協議が行われ,円滑なエスカレーショ ン体制構築のため,参加人側にサブリーダーを選定することなどが決められている 15),足立区と参加人との間で,どのようなケースでエスカレーション対応をするかの協議が行われ,円滑なエスカレーショ ン体制構築のため,参加人側にサブリーダーを選定することなどが決められている(乙17の1~5)。そして,前記2の認定事実のとおり,このようなエスカレーションの実態について,東京労働局は,平成26年4月30日に現地調査を行い,同年7月15日付けで,あらかじめ判断基準書及び業務手順書で定められていない事項については,足立区に対してエスカレーショ ンと称した行為により疑義照会することが定められており,足立区が参加人の業務に関与することが想定された内容になっていること,足立区と参加人の間で行うエスカレーションは,責任者間で行う調整行為と評価することはできず,事実上の指揮命令になっていること等から,労働者派遣法24条の2に違反するとして,足立区に対し是正指導を行っていることが認められ る。 (4) 以上のとおり,本件委託契約において予定され,現に実施されていた参加人から足立区に対して行うエスカレーション(疑義照会)は,参加人の責任者と足立区との間で行われているとはいえず,足立区の職員が参加人の従業員に対し,直接指揮監督を行っていたものと認められるところ,これを区 分基準に照らしてみると,参加人は,業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものとはいえず,請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものともいえないため,本件委託契約は,足立区が,厚生労働大臣から労働者派遣事業の許可を受けているとは認められない参加人から労働者派遣の役務の提供を受けることを内容と する労働者派遣契約の性質を有していたものといえるから,労働者派遣法2 4条の2に違反する契 の許可を受けているとは認められない参加人から労働者派遣の役務の提供を受けることを内容と する労働者派遣契約の性質を有していたものといえるから,労働者派遣法2 4条の2に違反する契約であったと認められる(なお,原告らは,足立区が参加人に対して,被告宛ての守秘義務誓約書を提出させていることも,区分基準に照らし,偽装請負に当たる事情である旨主張するが,弁論の全趣旨によれば,同守秘義務誓約書は,参加人が参加人の従業員に対して提出を求めたものであり,これをもとに,参加人において本件委託窓口業務に従事する 従業員の決定を行っていたものであり,足立区は,発注者としての立場から,情報漏洩防止のため,同守秘義務誓約書の写しの提出を参加人に求めていたにすぎないことが認められるから,このような事情が,本件委託窓口業務が労働者派遣事業に当たることを基礎付けるものとはいえない。)。 この点,被告は,本件委託契約におけるエスカレーションは,参加人の責 任者から足立区に対するものを想定しており,偽装請負には当たらない旨主張する。しかし,前記(2)のとおり,参加人で作成した業務手順書において,口頭で疑義照会をした際には,疑義照会をした担当者名等を疑義照会シートに記入する旨記載されているところ,参加人の責任者が疑義照会するのであれば,疑義照会をした担当者名を記載する必要性は乏しく,当該記載 は,むしろ,参加人の個々の従業員が疑義照会をすることを想定したものと認めるのが相当である。また,本件委託契約締結後に,サブリーダーを選定してはいるが,その実態も,東京労働局から責任者間で行う調整行為とは評価できないと認定されている。よって,被告の上記主張は採用できない。 7 争点(6)(本件各支出命令の違法性)について (1) が,その実態も,東京労働局から責任者間で行う調整行為とは評価できないと認定されている。よって,被告の上記主張は採用できない。 7 争点(6)(本件各支出命令の違法性)について (1) 地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法に締結されたものであるとしても,それが私法上無効ではない場合には,当該地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているときや,当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを 真摯に行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったと いうような,客観的にみて当該地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるときでない限り,当該契約に基づく債務の履行として支出命令を行う権限を有する職員は,当該契約の是正を行う職務上の権限を有していても,違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものとはいえず,当該職員が上記債務の履行とし て行う支出命令がこのような財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることはないと解するのが相当である(前掲最高裁平成25年3月21日第一小法廷判決・民集67巻3号375頁参照)。 (2) これを本件についてみるに,本件委託契約は,前記6のとおり,労働者派遣法24条の2に違反する違法なものであったといえるが,労働者派遣法 の取締法規としての性質のほか,請負契約と労働者派遣契約との区別が自明のものとはいえず,当該契約の内容や趣旨・目的,運用実態等に照らした慎重な判断を要するものであること,前記2の認定事実のとおり,足立区は,東京労働局の是正指導を受け,参加人から足立区へのエスカ 自明のものとはいえず,当該契約の内容や趣旨・目的,運用実態等に照らした慎重な判断を要するものであること,前記2の認定事実のとおり,足立区は,東京労働局の是正指導を受け,参加人から足立区へのエスカレーションを行わないようにしたほか,戸籍住民課に職員を段階的に増員配置することで, 戸籍届書受付業務及び受理案内業務等を本件委託窓口業務から外すなどの対応をとっており,このような是正後の運用について,東京労働局からも,現地調査の結果,適正に行われている旨確認を受けており,違法状態を解消していると認められるところ,このように,事後的とはいえ,契約条項や運用を一部手直しすることで違法状態を解消し得るものであったことなどからす れば,本件委託契約が労働者派遣法24条の2に違反することにより私法上無効であるとまではいえない。なお,この点に関し,原告らは,東京労働局の是正指導後も,足立区の職員による参加人の従業員に対する指揮監督が行われている旨主張する。しかしながら,原告らが指揮監督である旨主張する参加人の窓口業務等委託月次報告の各記載(乙17の9~17の12,17 の14~17の17)をみても,いずれも,足立区が,参加人に対し,本件 委託窓口業務の内容・範囲を確認し,その注意を促す程度のものにとどまっていると認められ,これらの記載をもって,足立区が参加人に対し,業務の遂行に関する具体的な指揮監督を行っているとは評価できない。 また,足立区が本件委託契約の取消権又は解除権を有していたとも認められない。この点,原告らは,本件委託契約の条項において,発注者は,必要 があるときは,受注者と協議の上,本件委託契約の全部又は一部を変更,中止又は解除することができる旨規定されていることから,足立区は解除権を有していた旨主張する。 の条項において,発注者は,必要 があるときは,受注者と協議の上,本件委託契約の全部又は一部を変更,中止又は解除することができる旨規定されていることから,足立区は解除権を有していた旨主張する。しかし,当該条項は,飽くまで,発注者たる足立区と受注者たる参加人との間の協議に基づいて,本件委託契約を変更,中止又は解除することができる旨定められているものと解するのが相当であって, 足立区に一方的な取消権ないし解除権を付与したものとは認められない。 そして,上記のとおり,本件委託契約が契約条項や運用の一部手直しにより労働者派遣法24条の2違反の違法状態を解消し得るものであったという事情を踏まえると,本件委託契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存したとはいえず,ま た,足立区が参加人に事実上の働きかけを真摯に行えば参加人において本件委託契約そのものの解消に応ずる蓋然性が大きかったともいえず,客観的にみて足立区が本件委託契約を解消することができる特殊な事情があったとは認められないというべきである。 (3) 以上のとおり,本件委託契約は私法上無効とはいえないところ,足立区 が本件委託契約の取消権又は解除権を有していたとは認められず,また,客観的にみて足立区が本件委託契約を解消することができる特殊な事情があったとも認められないから,足立区戸籍住民課課長が本件委託契約に基づく債務の履行として行った本件各支出命令が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであったということはできない。 8 よって,本件各支出命令は適法であり,また,被告が今後,足立区戸籍・区 民事務所窓口の業務委託に関して行う公金の支出,新たな契約の締結又は債務その他の義務の負担が違法なものとなる 8 よって,本件各支出命令は適法であり,また,被告が今後,足立区戸籍・区 民事務所窓口の業務委託に関して行う公金の支出,新たな契約の締結又は債務その他の義務の負担が違法なものとなるとも認められず,これらが違法であることを前提とする原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官西村康夫 裁判官味 元 厚二郎(別紙1省略) (別紙2)支払執行日及び支払金額一覧表 委託料の年月支払執行日支払金額(円)平成25年12月分平成25年12月24日7,350,000平成26年1月分平成26年2月17日18,375,000平成26年2月分平成26年3月11日18,375,000平成26年3月分平成26年4月24日18,375,000平成26年4月分平成26年5月23日18,900,000平成26年5月分平成26年6月17日18,900,000平成26年6月分平成26年7月9日18,900,000平成26年7月分平成26年8月18日18,900,000平成26年8月分平成26年9月16日18,900,000平成26年9月分平成26年10月19日18,900,000平成26年10月分平成26年11月17日16,118,500平成26年11月分平成26年12月15日14,337,000平成26年12月分平成27年1月13日14,337,000平成27年1月分平成27年2月10日14,337,000合計金 11月分平成26年12月15日14,337,000平成26年12月分平成27年1月13日14,337,000平成27年1月分平成27年2月10日14,337,000合計金2億3500万4500円

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