主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 甲事件原告らが,被告に対し,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2(1)(甲事件原告らの主位的請求)被告は,甲事件原告らに対し,それぞれ以下の各金員を支払え。 ア平成19年4月から本判決確定の日まで,毎月20日限り,1か月あたり別紙1賃金一覧表請求額欄記載の各金員及び同各金員に対する各当月21日から支払済みまで年6分の割合による金員イ70万円及びこれに対する平成19年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(2)(甲事件原告らの予備的請求)被告は,甲事件原告らに対し,それぞれ740万4000円及びこれに対する平成19年4月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3(1)(乙事件原告らの主位的請求)ア乙事件原告らが,被告に対し,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 イ被告は,乙事件原告らに対し,それぞれ以下の各金員を支払え。 (ア)平成20年4月から本判決確定の日まで,毎月20日限り,1か月あたり別紙2賃金一覧表請求額欄記載の各金員及び同各金員に対する各当月21日から支払済みまで年6分の割合による金員(イ)金90万円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで 年5分の割合による金員4(乙事件原告らの予備的請求)被告は,乙事件原告らに対し,それぞれ997万2000円及びこれに対する平成20年4月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要等 事案の概要本件は,被告に雇用されていた原告らが,60歳を迎え,退職することになったところ,被告が採用している60歳定年制が,高年齢者等の雇用の安定等に関す 金員を支払え。 第2事案の概要等 事案の概要本件は,被告に雇用されていた原告らが,60歳を迎え,退職することになったところ,被告が採用している60歳定年制が,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年雇用安定法」という。)9条1項に違反して無効であり,その結果,被告では定年制の定めがないものとなるとして,a)原告らが被告との労働契約上の権利を有する地位にあることの確認,b)各々の退職日とされた日の翌日以降から本判決確定の日までの賃金及びこれらに対する各支払期以降,商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,更に被告が原告らの従業員たる地位を否認し,就労を拒絶したことによって原告らに本訴提起を余儀なくさせた被告の行為が不法行為にあたるとして,民法709条に基づき弁護士費用相当額の損害賠償及びこれらに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(起算日は,甲事件原告らについて平成19年4月1日,乙事件原告らについて,平成20年4月1日)を求めるとともに,予備的請求として,仮に被告における60歳定年制の定めが無効でないとしても,原告らを退職扱いして就労拒絶した被告の行為が高年雇用安定法9条1項に違反し,民法709条の不法行為にあたるとして,退職後,甲事件原告らについて3年間,乙事件原告らについて4年間の各賃金,弁護士費用相当の損害金及びこれらに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(起算日は,甲事件原告らについて平成19年4月1日,乙事件原告らについて,平成20年4月1日)を求める事案である。 前提事実(ただし,文章の末尾等に証拠等を掲げた部分は証拠等によって認 定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)(1)当事者アW公社は,昭和60年4月1日,N株式会社等に関する法律(以下「N (ただし,文章の末尾等に証拠等を掲げた部分は証拠等によって認 定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)(1)当事者アW公社は,昭和60年4月1日,N株式会社等に関する法律(以下「N株式会社法」という。)に基づき民営化され,N株式会社が設立された。 その後,組織の再編が行われ,持株会社であるN株式会社が発足したが,N株式会社法の一部を改正する法律(平成11年法律第98号)により分割再編成され,西日本地域(関西,東海,北陸,中国,四国,九州,沖縄地区)の地域通信事業等を承継する株式会社として同年7月1日,同会社から独立した態様で被告が設立された。 なお,N株式会社は,同分割再編成により自らは事業を行わないで,被告を含む地域会社の保有する株式総数を保有し,地域会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供を確保する等の純粋持株会社として存続することとなった。 (証拠等略)イ原告らは,いずれも期間の定めなく公社に採用され,その後,N株式会社を経て,被告の従業員となった者である。 なお,被告の従業員で労働組合員となりうる者の約99%は,A労組に所属しているが,原告らは,少数派組合(以下「B労組」という。)に所属している。 ところで,被告における給与は,毎月末日締め,当月20日払であるが,職務手当(医師手当に限る。),特殊勤務手当,時間外手当,休日手当,深夜手当及び呼出手当については,毎月末日締め,翌月20日払である(証拠等略)。 (2)被告(前身時代を含む。)における定年制度とキャリアスタッフ制度についてアN株式会社は,平成4年4月1日,60歳定年制を導入した(証拠等略)。 イN株式会社は,平成10年12月25日,公的年金制度の改正により年金支給開始年令が段階的に引き上げられることに伴って,定年年齢と年金受給年齢とのギ 1日,60歳定年制を導入した(証拠等略)。 イN株式会社は,平成10年12月25日,公的年金制度の改正により年金支給開始年令が段階的に引き上げられることに伴って,定年年齢と年金受給年齢とのギャップが生じたこと,少子高齢化社会の到来による退職者の増加に対応して有スキル者の確保の要請及び高年齢者の雇用確保の要請に応えるべく,キャリアスタッフ就業規則を制定し,定年退職する従業員に対する再雇用制度(後記のキャリアスタッフ制度と同様のもの)を創設し,同年4月1日から制度を導入した(証拠等略)。 ウ被告は,平成11年7月1日に設立されたところ,その就業規則において,「定年を満60歳,定年退職日を定年に達した日以後の最初の3月31日」とした(以下,同定年制を「本件定年制」という。)上で,キャリアスタッフ就業規則を定めて被告を定年退職した者又は被告から転籍し転籍先で定年退職した者を以下の(ア),(イ)の条件で定年退職後に期間を定めて被告に雇用する制度(以下「キャリアスタッフ制度」という。)を引き続き導入した(証拠等略)。 (ア)再雇用対象者再雇用対象者については,会社を定年退職した社員(会社からグループ会社に転籍し,定年退職した者を含む。)(イ)雇用期間雇用期間は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とし,当該雇用期間は,被告の業務上の必要性及び本人の希望により,後記(ウ)の雇用終了日に至るまで更新することができる。 なお,選考は,キャリアスタッフとして雇用されるところ,再雇用対象者のうち,会社の指定する業務,勤務場所において勤務可能で,健康に問題がないと認められる者から選考する。また,一雇用期間の欠勤日数が一定の日数を超えたとき並びに健康状態に問題があると認められたときは更新されない。 ところで,雇用にあたっての具体的勤務場 康に問題がないと認められる者から選考する。また,一雇用期間の欠勤日数が一定の日数を超えたとき並びに健康状態に問題があると認められたときは更新されない。 ところで,雇用にあたっての具体的勤務場所,業務内容については業務上の必要性,本人の希望等を総合的に勘案して決定する。 (ウ)雇用終了日定年退職後に被告に雇用される者の雇用終了年齢は,以下のa)ないしd)の区分に応じて当該各区分に定める年齢とし,雇用終了日は,雇用終了年齢に達した日以後の最初の3月31日とする。 a)昭和16年4月1日以前生まれの者満62歳b)昭和16年4月2日から昭和18年4月1日生まれの者満63歳c)昭和18年4月2日から昭和20年4月1日生まれの者満64歳d)昭和20年4月2日以後生まれの者満65歳(3)被告の事業構造の変更についてア被告は,平成11年7月の設立当初から,厳しい経営環境にさらされ,経営状況の改善に取り組んでいたところ,平成13年4月,事業構造の変更方針を定めた「雇用形態の多様化」を発表して,事業構造を変更(その主な内容は「営業系地域会社」,「設備系地域会社」及び「共通系地域会社」とする複数の会社〔以下「地域会社」という。〕を設立し,被告の業務の相当部分を地域会社に業務委託するというものである。)するとともに従来の人事処遇体系を抜本的に見直し,雇用形態・処遇体系の多様化を図ることとした。 イ被告は,平成13年10月末ころ,A労組との間で上記「雇用形態の多様化」を踏まえた被告の構造改革案について合意した。 ウそこで,被告は,同事業構造の変更方針に従って平成14年5月ころまでに,株式会社A,株式会社B(両会社は被告が全額出資して設立した会社である。)等とともに全額を出資して各地に地域会社を設立し,業務委託を実施した。 ( 業構造の変更方針に従って平成14年5月ころまでに,株式会社A,株式会社B(両会社は被告が全額出資して設立した会社である。)等とともに全額を出資して各地に地域会社を設立し,業務委託を実施した。 (以上のア,ウについて,甲20,乙3,弁論の全趣旨) (4)被告の雇用形態等選択制度とキャリアスタッフ制度の廃止について被告は,平成14年1月4日,上記(3)の事業構造の変更方針に伴い,被告における雇用形態及び処遇体系等につき,平成15年3月31日の時点において以下のア(ア)記載の対象者(51歳以上となる社員等)に対し,選択時期を同月4日から同月31日までの間として,以下のア(イ),イ記載の内容を含む制度(以下「本件制度」という。)を前提に,雇用形態の選択を求めた。 なお,本件制度は,A労組と合意の上,実施された。 本件制度は,キャリアスタッフ制度の枠組みを基本としたものであり,その後,主に各年度末(毎年3月31日)の時点で50歳となる者等を対象とし,その間に一時金型が廃止される等の変更が行われたものの,現在まで存続している。他方,キャリアスタッフ制度は,キャリアスタッフの主な業務であった定型的・反復的業務のほとんどが地域会社へ移管されたことを受けて,平成14年4月30日をもって廃止された。 ア雇用形態及び処遇体系等の通知(ア)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者は,平成14年1月4日から同月31日までの間に,後記イの雇用形態及び処遇体系等を選択し,被告が定める者に対し,通知しなければならない。 (イ)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者が後記イの雇用形態及び処遇体系等を選択及び通知しない場合は,後記イ(ウ)の60歳満了型を選択したものとみなす。 イ選択する雇用形態及び処遇体系等(ア)繰延型a) において51歳以上である者が後記イの雇用形態及び処遇体系等を選択及び通知しない場合は,後記イ(ウ)の60歳満了型を選択したものとみなす。 イ選択する雇用形態及び処遇体系等(ア)繰延型a)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者が平成14年4月30日に被告を退職し,同年5月1日に地域会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,61歳以降は最長 65歳までキャリアスタッフ制度と同様の枠組み(雇用終了日及び更新を含む。)で,契約社員として地域会社に再雇用される。勤務地が一定の府・県内に限定され,労働者は,その範囲内で勤務地を選択できる。 b)所定内給与が20%ないし30%低下するが,激変緩和措置として,地域会社における退職手当及び(61歳以降の)契約社員期間において給与加算を行い,雇用保険等,公的給付や企業年金(税制適格年金)の支給との組み合わせを行う。 (イ)一時金型雇用形態としては上記(ア)a)と同様であるが,所定内給与が20%ないし30%低下することに対する激変緩和措置については,地域会社における退職手当及び平成14年4月30日の被告退職時に一時金(給与減額分×60歳までの残年数の約半額)として支給する。 なお,この激変緩和措置の額は,減額された賃金相当分(給与減額分×60歳までの残年数)の概ね半額程度を補うものである。 (ウ)60歳満了型a)被告の本社及び支店において当該本社及び支店の業務に従事し,又は地域会社以外の被告の関連会社に出向し,社員就業規則第73条(定年)に基づき,60歳まで勤務する。 なお,キャリアスタッフ制度が廃止されるため,60歳を超えた再雇用はなくなるとされた。 b)被告の就業規則に基づく転用・配置換え等又は出向により,市場性の高い地域を中心として,勤務地を問わず る。 なお,キャリアスタッフ制度が廃止されるため,60歳を超えた再雇用はなくなるとされた。 b)被告の就業規則に基づく転用・配置換え等又は出向により,市場性の高い地域を中心として,勤務地を問わず(全国への広域配転)成果業績に応じて高い収入を得る機会を追求する意欲を持った者に応える。 なお,従前から,就業規則上,勤務地は,府・県内に限定されてい なかった。 (証拠等略)(5)再選択の機会について被告は,業務運営体制が平成18年7月に「N株式会社西日本グループの新たな業務運営体制」となることに伴い,支店機能を地域会社へ大幅に移行する等,事業環境が著しく変化することを踏まえて,以下のア記載の対象者に対して,これに先立つ平成18年1月16日から同年2月10日までの間,以下のイ,ウ記載の内容で雇用形態及び処遇体系等の再選択の機会を設けた。 ア対象者平成14年1月31日までの間に既に本件制度に定める上記(4)イ(ウ)の60歳満了型を選択及び通知している者(本件制度に定める上記(4)ア(イ)に基づき60歳満了型を選択したとみなされた者を含む。)で,平成17年3月31日の時点において51歳以上59歳以下の者イ雇用形態及び処遇体系等の選択・通知等(ア)上記アの対象者は,平成18年2月10日までの間に,後記ウの雇用形態及び処遇体系等を選択し,被告が定める者に対し,通知しなければならない。 (イ)上記アの対象者が後記ウの雇用形態及び処遇体系等の選択及び通知しない場合は,後記ウ(イ)の60歳満了型を選択したものとみなす。 ウ選択する雇用形態及び処遇体系等(ア)退職・再雇用型a)上記アの対象者が,被告を退職し,地域会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,契約社員として地域会社に再雇用され,65歳までの雇用を実現する 遇体系等(ア)退職・再雇用型a)上記アの対象者が,被告を退職し,地域会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,契約社員として地域会社に再雇用され,65歳までの雇用を実現する。 b)勤務地が府・県内に限定される一方で,所定内給与が20%ないし30%低下するが,地域会社における退職手当及び雇用保険等公的 給付や企業年金の支給の組み合わせにより対応する。なお,激変緩和措置は設定しない。 (イ)60歳満了型上記(4)イ(ウ)と同旨(証拠等略)(6)原告らの選択状況及び退職扱いについてア被告は,原告らに対し,平成14年4月,構造改革に伴ってキャリアスタッフ制度が廃止になること,60歳満了型を選択すれば,同制度が廃止されるため,60歳を超えての雇用がなくなることについて説明をした。 さらに,被告は,平成18年の雇用形態及び処遇体系等の再選択の際,原告らの所属するB労組にその旨の説明をした。 原告らは,いずれの機会においても,いずれの雇用形態を選択するかの意思表示をしなかったため,上記(4)ア(イ),(5)イ(イ)に従って被告から60歳満了型を選択したものとみなされた。 イ原告らは,いずれも,被告との間で期間の定めのない労働契約関係を有したまま,甲事件原告らは,平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に,乙事件原告らは,平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間に,いずれも満60歳の誕生日を迎え,甲事件原告らについては,平成19年3月31日の経過をもって,乙事件原告らについては,平成20年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 (証拠等略)(7)高年雇用安定法の改正について高年雇用安定法は,平成16年法律第103号(同年6月11日公布)によって改正され(以下「本件改 経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 (証拠等略)(7)高年雇用安定法の改正について高年雇用安定法は,平成16年法律第103号(同年6月11日公布)によって改正され(以下「本件改正」という。),本件改正後の高年雇用安定法9条(以下,高年雇用安定法というときは特に指定しない限り本件改正後 のものをいう。)は,平成18年4月1日施行された。 高年雇用安定法9条1項は,65歳未満の定年の定めをしている事業主が,その雇用する高年齢者(55歳以上の者〔同法2条1項,同法施行規則1条〕)の65歳(ただし,同法附則4条1項により段階的な施行が定められているため,平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間は62歳,平成19年4月1日から平成22年3月31日までの間は63歳,平成22年4月1日から平成25年3月31日までは64歳)までの安定した雇用を確保するため,以下のアないしウの措置のいずれかを講じなければならないとしている。 ア当該定年の引上げイ継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入ウ当該定年の定めの廃止(8)厚生年金の支給開始年齢の引上げについて厚生年金の支給開始年齢について,平成6年11月9日号外法律第95号による厚生年金保険法の改正により,平成13年以降,老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳まで段階的に引き上げられることとされた(証拠等略)。 (9)高年雇用安定法9条1項1号及び3号の措置について被告は,定年の引上げ及び定年の廃止を行っていないため,高年雇用安定法9条1項1号及び3号に該当する措置を実施していない。 (10)高年雇用安定法についての説明被告は,高年雇用安定法と直接関連づけて上記(4)(5)の各選択の際 廃止を行っていないため,高年雇用安定法9条1項1号及び3号に該当する措置を実施していない。 (10)高年雇用安定法についての説明被告は,高年雇用安定法と直接関連づけて上記(4)(5)の各選択の際も含めて原告らに本件制度の説明をしたことはない。 (11)原告らの雇用継続の求め原告らは,被告に対し,満60歳に達した後に最初に迎えた4月1日以降 における雇用の継続を求めたが,被告は,満60歳に達した後に迎える最初の3月31日をもって,原告らを,定年退職とした。 争点 (1)高年雇用安定法9条1項の義務違反の効力(争点1)(2)被告が高年雇用安定法9条1項2号で定める措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号で定める「継続雇用制度」に合致するか)(争点2)(3)高年雇用安定法9条1項違反の効果として被告における定年の定めがないことになるか(争点3)(4)原告らの雇用契約上の権利を有する地位を被告が否認すること等について,不法行為が成立するか(甲乙事件提起,遂行のための弁護士費用相当損害賠償金請求の成否)(争点4)(5)高年雇用安定法9条1項違反の効果として不法行為責任が成立するか(争点5) 争点に対する原告らの主張(1)高年雇用安定法9条1項の義務違反の効力(争点1)(原告ら)ア高年雇用安定法9条1項が私法的効力を有する強行規定であること高年雇用安定法9条1項は,以下の各事情を踏まえると,希望者全員について65歳まで労働契約が切れ目なく継続することを要求しているというべきであって,その内容は,同法の要求する雇用保障の最低基準であり,公の秩序を構成している。したがって,同条項は,私法的効力を有する強行法規(公の秩序に関する規定)というべきである。 (ア)同条1項は,従来,事業主に定年 ,同法の要求する雇用保障の最低基準であり,公の秩序を構成している。したがって,同条項は,私法的効力を有する強行法規(公の秩序に関する規定)というべきである。 (ア)同条1項は,従来,事業主に定年の引上げ等の努力義務を15年以上にわたり課していたにすぎなかったものを,本件改正によって,法的義務に引き上げたものである。 (イ)高年雇用安定法は,公法的性格をもつが,そのことにより直ちに私法的効力が否定されるものではない。 ところで,高年雇用安定法1条が,高年齢者の安定した雇用の確保の促進を目的としていることからも明らかなとおり,同法9条1項の立法趣旨は,年金支給開始年齢の引上げに対応して,雇用主に対して65歳までの安定した雇用を保障させ,もって国民の生存権(憲法25条),勤労権(憲法27条)を保障するという点にある。 同法は,高年齢者の生活保障という観点が中心であるが,高齢労働者自身の生きがいの観点や,近年では少子化に伴う労働力不足に対応するという政策的観点も重視している。 また,同法9条1項により高年齢者の雇用確保の方策として事業主に義務づけた内容は,まず定年の引上げ(1号)と定年の定めの廃止(3号)であり,いずれも少なくとも65歳まで従前の労働契約が存続することを予定している。しかし,我が国の実情の下で,一挙にそうした措置を法的に強制することが困難であるため,同法は,同項2号において,本来望ましい措置に加えて,継続雇用制度というより緩やかな選択肢を用意し,原則として,希望する者全員を継続雇用の対象として,「継続雇用」すなわち,労働契約の内容の変更があったとしても,65歳まで切れ目なく労働契約が継続することを前提とした制度を導入せよと定めた。そのような事情にもかかわらず,事業主が同号で定める緩やかな選択肢すら実施しないことは, の内容の変更があったとしても,65歳まで切れ目なく労働契約が継続することを前提とした制度を導入せよと定めた。そのような事情にもかかわらず,事業主が同号で定める緩やかな選択肢すら実施しないことは,反社会性がより一層強いというべきである。 (ウ)特定の規定が,私法的強行性をもつかどうかの判断にとって決定的なのは法律の条項違反に対して罰則が予定されているか否かではなく,また,行政指導規定の有無でもなく,事業主(使用者)に,具体的な作為・不作為が命じられているのか,単なる「努力」ないし「配慮」が求められているに過ぎないのかによるべきである。殊に労働者保護法の分 野において,努力義務やそれに類した表現ではなく,一定の作為・不作為を端的に使用者に義務づける旨が規定されている場合には,むしろ,特段の事情のない限り,それに私法的な強行的効力を認めるのが立法者の意思であったと解すべきである。高年雇用安定法9条1項は,上記趣旨とともに事業主に一定の作為義務を課し,あるいは労働条件に関する一定の基準を設定している(同項は,3つの選択肢を用意しているが,原則として希望者全員の65歳までの雇用保障を規定したという点では一義的に明確であり,これは雇用年齢に関する基準そのものである。)ところ,以上のようなことを踏まえると同項には私法的効力を認めるのが相当である。 なお,同項で定める作為義務の内容が一義的に定められていないとしても,私法的効力を否定することにはならない。少なくとも事業主が定めた制度が同項で定める作為義務に違反するか,また,同違反を前提として60歳を超えて労働契約関係が存続しているか,同違反を踏まえて不法行為が成立するか,裁判所が判断することは可能である。 (エ)高年雇用安定法9条2項は,労働者過半数代表等との書面協定(協議が整わない場合, 超えて労働契約関係が存続しているか,同違反を踏まえて不法行為が成立するか,裁判所が判断することは可能である。 (エ)高年雇用安定法9条2項は,労働者過半数代表等との書面協定(協議が整わない場合,当面は就業規則またはそれに準ずる規則によることも可能[附則5条1項])で定められた基準にしたがって,対象者を選定する制度を同法9条1項2号の措置と同一視する旨規定しているが,これは,65歳定年制の義務づけを緩和するため,選択肢のひとつとして認められた継続雇用制度について,さらにその要件を緩和する過渡的な措置(要件)を規定したものである。ところで,同法が同号で定める継続雇用制度を緩和するため,かかる詳細な要件を法定していることは,事業主に継続雇用制度を含む何らかの高年齢者雇用確保措置をとることを私法的にも義務づけていることを窺わせる。 また,同法8条は,契約の効力に関する明文規定を持っていないが, 同条が私法的強行性を持つことについては異論を見ない。したがって,契約の効力に関する明文規定がないことをもって私法的強行性を否定することにはならない。 (オ)高年雇用安定法が,定年年齢に関わる事柄を,60歳以下(8条)と65歳以下(9条)に区別して規定していることも,以下の事情からして私法的効力について両者を峻別する根拠にはなりえない。 前者は60歳以下の定年制を全面的に禁止し,後者は,定年年齢の引き上げ,定年制の廃止と並んで,継続雇用制度という独自の選択肢を認めるものであって,両者は義務内容を異にし,60歳以下の定年制と65歳以下の定年制については区別して規定する必要があったからである。 (カ)仮に高年雇用安定法9条1項違反がある場合に何らの私法的効力も認めないとすると,同法を遵守せず行政の指導にも従わずに60歳定年制に固執する悪質な事業主ほ して規定する必要があったからである。 (カ)仮に高年雇用安定法9条1項違反がある場合に何らの私法的効力も認めないとすると,同法を遵守せず行政の指導にも従わずに60歳定年制に固執する悪質な事業主ほど雇用責任を免れるという,「違法のやり得」を国家が認めることになり,他方で,労働者は,年金支給もなく,再就職も困難な中,たちまち生活困窮に陥るのに,全く救済されないことになり,およそ社会的正義に反する不当な結論となるばかりか,事業主による違法行為を助長することにもなりかねず,65歳までの雇用保障を義務化した同法の趣旨が没却される。 これに対し,同項違反の私法的効力により,期間の定めのない労働契約が存続すると解しても,雇用主に終身雇用を義務付けるものではなく,客観的合理的理由ある解雇は可能であるから不当とはいえない。 イ高年雇用安定法9条1項違反の私法的効力について(ア)高年雇用安定法9条1項1号及び3号は,定年の引上げ(1号)ないし定年の定めの廃止(3号)により,同2号は,60歳を超える労働者を継続雇用制度すなわち「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」により,事 業主に,原則として,希望者全員を雇用する義務を負わせている。例外的に,同条2項の手続要件(労使協定等)及び実体要件(選定基準の具体性,客観性,妥当性)を満たす基準を設定した場合にのみ,事業主は,当該基準から外れる労働者に限って,雇用を保障する義務から免れ得る。 したがって,このような適切な除外要件を整備しなかった事業主は,原則に戻って希望者全員を65歳まで雇用する義務を負うことになる。 (イ)原告らは,被告の定める定年前に地域会社に移籍していない点及び地域会社の業務上の必要性の点を除けば,いずれも地域会社の定める採用基 戻って希望者全員を65歳まで雇用する義務を負うことになる。 (イ)原告らは,被告の定める定年前に地域会社に移籍していない点及び地域会社の業務上の必要性の点を除けば,いずれも地域会社の定める採用基準を満たしている。ところで,原告らの定年後の継続雇用に当たって,本件制度による移籍及び地域会社の業務上の必要性を同雇用の要件とすることは,後記(2)の(原告ら)の主張のとおり高年雇用安定法違反であるため,少なくとも,被告は,原告らについて雇用を保障する義務を負っていることは明らかである。 したがって,被告は,原告ら労働者に対し,労働契約上の責任ないし不法行為責任を負う。 (被告)ア高年雇用安定法9条1項の義務の性質-私法的強行性のないこと高年雇用安定法9条は,以下のことからすると,私法的効力はなく,したがって,事業主と労働者間の法律関係について,事業主に私法上の義務を課すものではない。 (ア)高年雇用安定法は「高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに,経済及び社会の発展に寄与すること」(1条)を目的として,事業主だけではなく,国や地方公共団体をも名宛人として種々の施策を要求しているが,事業主と個別労働者との関係を前提にしている規定であっても努力義務規定が多く(15条,19条等),義務規定に反した場合にも罰則の制裁はなく,厚生労働大臣による指導,助言及び勧 告のみが予定されている(10条,17条の2第1項,18条の2第2項)。また,違反した場合の私法上の効果については,何らの規定もおかれていない。 これらのことから同法は個別的労働関係法ではなく労働市場の法に属する公法的性格の法であると解される(証拠等略)。 (イ)ところで,労基法は,個々の使用者及び労働者間の労働条件の最低基準を画することを目的とするものであって,その違 関係法ではなく労働市場の法に属する公法的性格の法であると解される(証拠等略)。 (イ)ところで,労基法は,個々の使用者及び労働者間の労働条件の最低基準を画することを目的とするものであって,その違反に対しては罰則をもって臨む強行法規であり,労働者保護法分野の法律であるからといって,高年雇用安定法と労基法を同列に論じることはできない。労基法は,同法違反の場合の私法的効力については明文を定め,その場合の契約の効力や無効となった場合の補充的規定をおいているが,高年雇用安定法にはそのような私法的効力に関する各規定がなく,したがって,同法違反について,私法的強行性を付与したものでないことはより一層明らかである。 なお,公法的措置が十分でないから,私法的効力が認められるという主張は論理が逆転している。 (ウ)仮に原告が主張するような私法的効力が高年雇用安定法9条1項にあれば,わざわざ同項3号で事業主に対して「当該定年の定めの廃止」を講じるよう求める必要はない。端的に強行法規違反として,当然に当該規定は無効になるからである。 (エ)高年雇用安定法9条1項3号が事業主に対して定年制の撤廃を求めていることからも分かるとおり,同条は,事業主に対して一定の措置を講じるよう求める公法法規に過ぎず,私法的効力を有する強行法規と解することはできない。 (オ)原告らは,事業主に具体的な作為・不作為を命じる条項であれば,原則として私法的効力がある旨主張するが論理の飛躍がある。 しかも,高年雇用安定法9条の定める高年齢者雇用確保措置についていえば,同条1項は定年の引上げ,継続雇用制度,又は定年の定めの廃止のいずれかを選択すべきものとしているに過ぎず,同項が事業主に求めている具体的な作為の内容は一義的に定まっているわけでない。また,同項2号で定める継続雇用 引上げ,継続雇用制度,又は定年の定めの廃止のいずれかを選択すべきものとしているに過ぎず,同項が事業主に求めている具体的な作為の内容は一義的に定まっているわけでない。また,同項2号で定める継続雇用制度の具体的内容もまた多様なものが予定されており,この点でも同号が事業主に求めている具体的な作為の内容は一義的に定まっているわけでない。 (カ)仮に事業主が継続雇用制度を導入しなかった場合,高年雇用安定法9条1項によって,労働者と使用者の間に期間の定めのない労働契約が成立すると解すると,定年の引き上げをはじめとする高年齢者雇用確保措置の実施を,対象者に何ら制限を設けることなく,強行法規的に事業主に強いるものであって,継続雇用制度についてその対象者を労使協定によって制限することを認めた同法9条2項と矛盾することになるし,事業主の契約の自由を著しく害することになり,不当である。 イ高年雇用安定法9条1項違反の効力被告は,原告ら労働者に対し,高年雇用安定法9条1項違反を理由として労働契約上の責任ないし不法行為責任を負うことはない。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か)(争点2)(原告ら)本件制度は,以下のことからして高年雇用安定法9条1項2号の定める継続雇用制度に該当しない。 ア高年雇用安定法9条1項の制度趣旨高年雇用安定法は,その立法目的(1条)及び立法趣旨とともに同法9条の本件改正の経緯(年金の支給開始年齢との関連性の中で事業主に対し て,高年齢者雇用確保措置の実施を法的義務とした。)を踏まえると,同条1項2号の規定する「継続雇用制度」は,高年齢者が少なくとも年金支給開始年齢までは,切れ目なく継続して働くことを可能にし,これに て,高年齢者雇用確保措置の実施を法的義務とした。)を踏まえると,同条1項2号の規定する「継続雇用制度」は,高年齢者が少なくとも年金支給開始年齢までは,切れ目なく継続して働くことを可能にし,これにより生活できる収入を確保することができる制度でなければならない。 イ本件制度は,地域会社の従業員を継続雇用するに過ぎないこと被告の従業員が60歳満了型を選択した後,60歳の定年に達して退職した場合,その従業員は,本件制度における「地域会社を定年退職した者」に該当せず,60歳を超えて地域会社の契約社員となることはできない。 すなわち,もともと被告の従業員であっても,50歳の時点で,被告を退職して地域会社に再雇用されるという選択をしない限り,60歳を超えて地域会社の契約社員となることはできない。 ところで,高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度について,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう」と規定しており,雇用者に対し,60歳定年制を設けたときには,この60歳定年の時点において,「現に雇用している高年齢者」について,「その定年後も引き続いて雇用する制度」を設けることを義務づけている。これは,従業員が定年である60歳に至るまで事業主がその従業員を継続して雇用していることを当然の前提とした上で,その従業員に対して,定年後も継続して雇用する制度を設けることを求めている。 そうすると,被告を51歳で退職して地域会社に再雇用された従業員について,同号に従って継続雇用制度等の高年齢者雇用確保措置を講じなければならないのは地域会社であり,他方,退職再雇用に応じず被告で60歳の定年退職を迎える従業員について,高年齢者雇用確保措置を講じなければならないのは被告となる。原告らとの関係で,高年齢者雇用 なければならないのは地域会社であり,他方,退職再雇用に応じず被告で60歳の定年退職を迎える従業員について,高年齢者雇用確保措置を講じなければならないのは被告となる。原告らとの関係で,高年齢者雇用確保措置を講ずべき「事業主」は被告にほかならないのであり,被告は,継続雇用 を希望する従業員について,定年後に子会社等での継続雇用を確保しなければ,「事業主」として責務を果たしたことにはならない。 ところが,本件制度では,地域会社が継続して再雇用を予定している労働者は,地域会社を60歳で定年退職した者だけであり,被告を60歳定年で退職した労働者は,希望をしても,地域会社の契約社員となることはできない。その意味で,地域会社の契約社員制度は,地域会社にとり「継続雇用制度」となることはあり得るとしても,被告にとっては,高年雇用安定法9条1項2号で定める「継続雇用制度」にはなりえない。 仮に地域会社への転籍を条件とする雇用継続が同号で定める継続雇用制度に該当する場合があると解するとしても,それが認められるためには転籍先の会社における65歳までの雇用が,転籍元における65歳までの継続雇用と実質的に同一視しうるほどの内容と確実性を備えている必要がなければならないというべきである。 被告は,厚生労働省(以下「厚労省」という。)のホームページに掲載されている改正高年齢者雇用安定法Q&A(以下「Q&A」という。)の回答にある「両者一体として一つの企業と考えられる場合」の要件たるa)緊密性もb)明確性も立証しておらず,本件制度は,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度には該当しない。なお,実質的にも,60歳を前に実施する子会社への転籍は,転籍先の会社解散・業績不振による賃金の大幅切下げ,解雇等のリスク等,雇用不安が高まり,高年齢者の安定した雇用の確保の促 制度には該当しない。なお,実質的にも,60歳を前に実施する子会社への転籍は,転籍先の会社解散・業績不振による賃金の大幅切下げ,解雇等のリスク等,雇用不安が高まり,高年齢者の安定した雇用の確保の促進という同法の趣旨からは相当ではない。 ウ地域会社の契約社員制度は,65歳までの雇用を保障していないこと地域会社の契約社員就業規則によれば,地域会社での雇用期間は1年間とされ(47条),「会社の業務の必要性及び本人の希望により」更新される旨規定されている(48条)。 しかし,年金支給年齢までの継続雇用を確保するという高年雇用安定法 の趣旨からすれば,更新制度を設けるとしても,60歳で定年を迎えた従業員が希望すれば,全員が,年金支給開始年齢に達するまで,雇用が継続されるものでなければならず,1年契約の形式がとられる場合は,高年齢者が希望する限り更新されるような制度であることが不可欠である。 しかるに,上記契約社員制度は,会社の業務上の必要性がない場合には,更新されないとされ,65歳までの雇用が制度的に保障されていない。 したがって,地域会社による契約社員制度があるからといって,65歳までの雇用を保障するものとはいえず,同法9条1項2号で定める「継続雇用制度」には該当しない。 エ地域会社の契約社員制度は,高年雇用安定法の求める賃金収入を被告の労働者にもたらさないこと本件制度が,高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」に合致するというためには,合理的に思考する労働者の少なくとも相当数が,実質的に自由な意思で継続雇用を選択するであろうと言える内実を持っていなければならない。 しかし,本件制度で採られている繰延型または一時金型は,それらを選択した場合,60歳満了型を選択した場合(選択したと見なされる場合を含む。)と比較すると,5年間余計に働い っていなければならない。 しかし,本件制度で採られている繰延型または一時金型は,それらを選択した場合,60歳満了型を選択した場合(選択したと見なされる場合を含む。)と比較すると,5年間余計に働いても,受領する総賃金額は後者よりも減少した額となる。 このような内容を有する本件制度は,同法が求める65歳までの安定した賃金収入(労働者の権利と生活)を保障したものとはいえず,合理的に思考する労働者の少なくとも相当数が,実質的に自由な意思で選択するような内実を持っていない。したがって,本件制度は,同号で定める「継続雇用制度」に該当するとはいえない。 本件制度で退職・再雇用型を選択した被告の従業員が多いのは,被告による異職種・遠距離配転という「脅し」と,被告とA労組の共同による不 当労働行為により,強要されたものであり,決して,合理的な意思に基づいた選択ではない。 なお,被告は,地域会社で契約社員として雇用されることにつき,異職種・遠距離配転をしなくても良い等のメリットがある旨主張するが,同法9条1項の趣旨は,年金支給年齢が60歳から65歳に引き上げられたことにより,5年間の収入の途が絶たれることについて,継続雇用制度の導入等により5年間の雇用を保障し,労働者の生活を維持・安定させることにあり,かかる趣旨からすれば,その制度を選択すれば,選択しないことに比べて収入が減少するが,異職種・遠距離配転をしなくても良い等のメリットがあるということだけで,高年雇用安定法の「継続雇用制度」を事業者に義務づけ,労働者の雇用を確保するという趣旨を満たすことはできない。 オ雇用形態等の選択時期の問題性について高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度を「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」とし,同 ない。 オ雇用形態等の選択時期の問題性について高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度を「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」とし,同法8条は,法定定年として「60歳を下回ることはできない」と規定している。そして,同法の「高年齢者」とは,55歳以上の者を意味する(高年雇用安定法2条1項,同法施行規則1条)ことからすると,上記継続雇用制度は,使用者が60歳定年を控えた「現に雇用している」労働者に対し,その定年後も引き続いて雇用する制度が設けられなければならず,早くとも55歳以上の時点で従業員が選択できる制度でなければならない。 また,上記のとおり本件制度における継続雇用制度は,地域会社で期間1年の契約社員として雇用されるものであり,その更新は,業務上の必要性が要件とされているところ,この業務上の必要性は,被告ではなく別法人たる地域会社の業務上の必要性であるから,労働者のみならず,被告も 継続雇用されるかどうか予想できない。 さらに,被告の労働者は,50歳になった段階で,繰延型・一時金型・60歳満了型の選択を迫られることになるため,とても,10年以上も後の地域会社の業務上の必要性を判断することはできない。 しかるに,本件制度は,50歳の時点で,地域会社へ転籍するかしないかの選択をさせており,不合理かつ「高年齢者が希望するときは」とする同法9条1項2号の要件にも該当しない。 カ雇用形態等の選択について(ア)平成14年の雇用形態等の選択について被告は,原告らがいずれも退職・再雇用型(繰延型・一時金型)ではなく,60歳満了型を選択したのであるから,定年後に継続して雇用されないとしても何ら違法ではないと主張する。 しかし,原告らは,雇用形態選択手続において,繰延型・一時金型・ (繰延型・一時金型)ではなく,60歳満了型を選択したのであるから,定年後に継続して雇用されないとしても何ら違法ではないと主張する。 しかし,原告らは,雇用形態選択手続において,繰延型・一時金型・60歳満了型のいずれも「選択」していない。被告が一方的に60歳満了型を選択したものとみなしているだけである。なお,被告は,雇用形態選択手続や「再選択」においても,労働者に対してまともな説明をしていない。 したがって,原告らが自由意思により,60歳定年(継続雇用を希望しないこと)を選択したといえないことは,客観的に明らかである。 (イ)平成18年1月~2月に実施した「再選択」について被告は,平成18年7月,「N株式会社西日本グループの新たな業務運営体制」を実施するために,同年1月16日から2月10日の間において,雇用形態の「再選択」を実施した際,原告らは退職・再雇用型を選択しなかったのだから,継続雇用されないとしても仕方がない旨主張する。 しかし,高年雇用安定法9条1項2号が「現に雇用している高年齢者 が希望するときは」と規定している以上,労働者の自由意思に基づく選択の機会が制度上も実際の手続においても保障されなければならず,そうでない以上,同号で定められた継続雇用措置が講じられたとはいえず,当該定年制はやはり違法無効となる。 被告における上記再選択は,あくまで,「N株式会社西日本グループの新たな業務運営体制に伴い,支店機能が地域会社へ大幅に移行するなど,事業環境が著しく変化すること等に鑑み,60歳満了型既選択社員に対し,選択型の雇用形態・処遇体系の多様化を実施する」というための手続であり,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に関する希望聴取手続とは全く無関係のものであって,希望聴取手続そのものでないことはもちろん,希望聴取手続に代 系の多様化を実施する」というための手続であり,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に関する希望聴取手続とは全く無関係のものであって,希望聴取手続そのものでないことはもちろん,希望聴取手続に代替する性質すら有していない。 また,再選択にあたって,労働条件の比較や「再選択」が高年齢者に対する継続雇用の希望を聴取するものである等の説明や雇用形態選択通知書が対象従業員に配布された事実はなく,実施スケジュールに記載された面談が行われた事実は,少なくとも原告らに限ってはない等,実際の手続上も選択機会が保障されたものではなかった。 したがって,「再選択」が継続雇用を希望するかどうかの選択に代用できるものではなく,原告らが「再選択」において「退職・再雇用」型を選択しなかったからといって,継続雇用を希望しなかったことにはならない。 (被告)本件制度は,以下のことからして高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当する。 ア本件改正の趣旨本件改正の趣旨は,企業の実情に応じた継続雇用制度を設けることであり,高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度について「現に雇用し ている高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と規定しているのみであり,「生活できる収入の確保」といった雇用の条件制限を加えていない。 イ同号で定める継続雇用制度と転籍について高年雇用安定法が同一企業での継続雇用のみならず,同一企業グループも含んだ広い範囲での継続雇用制度の実現を図っていることは,昭和63年6月17日に閣議決定された第六次雇用対策基本計画以降の立法過程において,一貫して同一企業と同一企業グループが並列的に並べられていることから容易に判断しうる。 したがって,高年齢者が雇用されていた企業以外の企業に雇用される場合であ 用対策基本計画以降の立法過程において,一貫して同一企業と同一企業グループが並列的に並べられていることから容易に判断しうる。 したがって,高年齢者が雇用されていた企業以外の企業に雇用される場合であっても,一定の要件に該当し65歳までの安定した雇用が確保されると認められる限り,同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当する。 この点,厚労省のQ&Aは,「高年齢者が希望をすれば,65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば,継続雇用制度を導入していると解釈される」(乙12:Q2,3),「高年齢者が雇用されていた企業以外の企業であっても,両者一体として一つの企業と考えられる場合であって,65歳まで安定した雇用が確保されると認められる場合には,改正高年齢者雇用安定法第9条が求める継続雇用制度に含まれるものであると解釈できます」(乙12:Q7-1)との見解を示しており,グループ企業で継続雇用制度が設けられており,その継続雇用制度を利用できる場合には,「定年まで高齢者が雇用されていた企業」に継続雇用制度が設けられていなくても高年雇用安定法9条に反しないとしている(なお,同法の枠組みを決定,立案した主務官庁は,厚労省であり,同省が制度の趣旨のみならず運用上で生ずる問題点を十分認識したうえで法案を作成していること,同省が実務上生じるであろう問題点を意識して作成したQ&Aを作成していることから,Q&Aは,行政解釈の基準であるのみならず,立法者 の意思として法解釈上十分に尊重されるべきである。)。 ところで,被告とその従業員の再雇用先(転籍先)となる地域会社は,再雇用先として以下のとおりQ&Aが指摘する緊密性の要件とともに明確性の要件(乙12:Q7-1)を満たしているので,同条に合致する継続雇用制度といえる。被告では,50歳となる従業員に対し,地 社は,再雇用先として以下のとおりQ&Aが指摘する緊密性の要件とともに明確性の要件(乙12:Q7-1)を満たしているので,同条に合致する継続雇用制度といえる。被告では,50歳となる従業員に対し,地域会社において65歳までの雇用を実現することができる退職・再雇用の途と,現状のままで60歳の定年まで勤務する「60歳満了型」を選択させており,当該継続雇用制度を利用する機会が与えられているので,地域会社の継続雇用制度が被告の従業員との関係でも継続雇用制度に該当することは明らかである。 (ア)緊密性について被告が地域会社として移行先に指定した地域会社は,いずれも被告もしくは被告が100パーセント出資をしている株式会社A,株式会社B,株式会社Cの完全子会社であって,被告と地域会社との間に密接な関係がある。 したがって,本件制度は,緊密性の要件を具備している。 (イ)明確性について繰延型・一時金型を選択した場合,「60歳定年制により60歳まで勤務した後,61歳以降は,現行のキャリアスタッフ(「キャリアスタッフ就業規則」(平成11年7月1日社長達第5号に定めるもの)をいう。)と同様の枠組みで,契約社員として地域会社に再雇用され,最長65歳までの雇用を実現する」とされており,健康に問題がある者及び欠勤日数が一定日数を超えた者を除き,地域会社において65歳まで継続雇用を行うことが担保されている。勿論,これまで業務上の必要性がないとの理由により雇用更新が拒否された例はない。 したがって,本件制度は,明確性の要件も具備している。 なお,60歳以前に従業員を地域会社に転籍させることについて,従業員が自らの意思で選択するものであって,60歳定年制(高年雇用安定法8条)に反するものではない。 ウ再雇用先の地域会社での更新について高年雇用安定法9条2 を地域会社に転籍させることについて,従業員が自らの意思で選択するものであって,60歳定年制(高年雇用安定法8条)に反するものではない。 ウ再雇用先の地域会社での更新について高年雇用安定法9条2項は,一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを認め,希望したとしても継続雇用制度の対象とならない労働者の存在を容認しているところ,以上のことからすると,事業主には,高年齢者が希望すれば必ず有期契約を更新する制度を導入しなければならないという義務まではない。 また,地域会社では労働者から継続雇用の希望があった場合,「会社の業務上の必要性」は考慮されず,健康上に問題がないこと及び欠勤日数が一定日数を超えないことの2要件のみで継続雇用の是非を判断し,運用されており,これまで地域会社の業務上の必要性から更新が認められなかった事例はない。したがって,本件制度の下においては希望する者は地域会社で65歳まで安定して就労することが可能となっている。 エ本件制度の合理性について高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度を「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と規定しているのみで,その間の労働条件には何らの制限を設けておらず,勿論,「相応の賃金」ないし「十分なメリット」を保障しなければならないといった規定等もない。 同号の趣旨は,上記のとおり企業の実情に応じた継続雇用制度を設けることであり,同項は,企業に継続雇用の導入を義務付けるものの,継続雇用の際の賃金水準まで規定しているわけではない。 本件改正を建議した労働政策審議会の建議内容からすると,継続雇用制度の導入を促進するに際し,その具体的内容について,一律にかくあるべ しとすることは適当でなく,各企業が自社の実情に応じて, い。 本件改正を建議した労働政策審議会の建議内容からすると,継続雇用制度の導入を促進するに際し,その具体的内容について,一律にかくあるべ しとすることは適当でなく,各企業が自社の実情に応じて,労使協議の上,柔軟に制度設計することに委せる趣旨の報告をし,一定の労働条件の保障を求めておらず,賃金等の雇用条件が企業の裁量に委ねられていることは明らかであり,むしろ同号は,「相応の賃金」の保障を求めているどころか,場合によっては賃金制度の変更もやむをえないという前提に立っているというべきである。 また,厚労省の作成する改正高年齢者雇用安定法パンフレット(乙12,以下「パンフレット」という。)やQ&Aの記載からも高年雇用安定法は,賃金等の雇用条件については企業の裁量に委ねていると解されること,本件制度における地域会社での賃金は被告の70%ないし80%であること,地域会社における就労の条件には65歳までの継続雇用の他にも,勤務地の限定,給与水準の低下に対する激変緩和措置の導入というメリットが設けられており,他方,60歳満了型を選んだ従業員の多くは,構造改革に伴う大幅なアウトソーシングの結果,被告に残った業務のなかで業務上の必要性に応じて配置転換が行われる可能性があるので,60歳満了型と退職・再雇用型のそれぞれを選んだ場合の総所得のみを比較して,従業員にとってのメリットを論じることは合理的ではない。以上のことを踏まえると,被告が定めた本件制度は,裁量の逸脱がなく,何らの違法もない。 なお,被告は,従業員の約99%が加入するA労組との間で,本件継続雇用制度について合意に達しており,現に平成14年の構造改革当時,雇用形態選択の対象である従業員の98.4%は退職・再雇用型(繰延型と一時金型の両者を含む)を選択している。このことは退職・再雇用型が従業 度について合意に達しており,現に平成14年の構造改革当時,雇用形態選択の対象である従業員の98.4%は退職・再雇用型(繰延型と一時金型の両者を含む)を選択している。このことは退職・再雇用型が従業員にとって十分なメリットがあることを何よりも雄弁に物語っている。 オ選択時期について本件制度は,努力義務でしかなかった高年齢者雇用確保措置を先取りして導入していたものであるところ,高年雇用安定法は,継続雇用制度の選 択時期については何ら規定しておらず,いつの時点で希望を聴くべきかについて何らの制限もしていない。したがって,50歳で選択させたからといって高年雇用安定法に反することにはならない。 なお,被告は,平成18年1月の時点で60歳満了型既選択社員に対して,再度,退職・再雇用型を選択し直す機会を付与している。 カ原告らの本件制度に対する対応と選択について(ア)原告らは,被告が定めた本件制度自体について,反対してきたところ,従前のまま60歳の定年まで雇用を維持すべきであるというのが原告らの意思である。原告らは自らの意思で,65歳まで勤務できる退職・再雇用の途を選択することなく,あえて何らの選択をしない形で60歳で定年退職となる「60歳満了型」を選択したのである。 平成18年1月16日から同年2月10日の間に60歳満了型既選択従業員に対して実施された雇用形態の再選択の際,原告らもこの雇用形態の再選択の対象者であったが,この時も原告らは,退職・再雇用を選択しなかった。もし,原告らが高年雇用安定法の趣旨に従い65歳までの雇用を確保せよというのであれば,このチャンスに退職・再雇用型を選択すれば足りたはずである。 なお,被告が,原告らを脅したり,A労組とともに共同不法行為を行った事実はない。 (イ)被告は,平成18年の雇用形態の再選択について ば,このチャンスに退職・再雇用型を選択すれば足りたはずである。 なお,被告が,原告らを脅したり,A労組とともに共同不法行為を行った事実はない。 (イ)被告は,平成18年の雇用形態の再選択について,原告らの所属するB労組に対して説明をしている。 また,原告らが所属するB労組は本件改正を十分認識した上で,要求書や団体交渉において,本件改正についてしばしば言及し,60歳満了型を選択した従業員が65歳まで就労できるよう求めているのであって,その組合員である原告X1は,もちろん,他の原告らも上記事情は当然認識していた。被告は,原告らからの要求に対して,本件改正に十分対 処できている旨明確に回答している。 原告らは,被告が提案した雇用形態選択制度そのものに反対なのであって,高年雇用安定法に合致していないから反対したのではない(よもや,原告らとて法改正を知らなかったから,60歳満了型にこだわり続けたなどと主張はするまい。)。本件制度の内容を熟知した上で定年までの60歳満了型を選んだのである。しかも,被告が実施した本件制度は,同法9条1項2号に言う「継続雇用制度」に合致するものであるから,雇用形態の選択が継続雇用と無関係でないことは明らかである。 原告らは,雇用形態の選択及び再選択の機会においてもあえて65歳までの退職・再雇用型を選択せず,60歳満了型を選択したとみなされることを選んだのであるから,原告らは自己の意思で被告を定年退職したのであって,今更原告らから本件制度に伴う再選択が継続雇用と無関係である等ということはできない。 (3)高年雇用安定法9条1項違反の効果として被告において定年の定めがないことになるか(争点3)(原告ら)被告における定年制の定年年齢は60歳であるが,原告らを被告において継続雇用する制度は存在しない。 ところで, 9条1項違反の効果として被告において定年の定めがないことになるか(争点3)(原告ら)被告における定年制の定年年齢は60歳であるが,原告らを被告において継続雇用する制度は存在しない。 ところで,被告における定年年齢を60歳とする本件定年制は,私法的強行性のある高年雇用安定法9条1項に違反するもので,無効である(労基法92条1項)。また,本件制度は,高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」にも該当しない。したがって,被告では定年の定めがない状態になったと解すべきであり,そうでなくとも,被告が同項の義務を履行しない限り,定年年齢に達していないとして,雇用契約上の地位にあると解すべきである。そうすると,原告らは,同地位に基づいて通勤費,一般財形奨励金,持株奨励金を含めた賃金請求権も有している。 本件就労拒絶前3か月間の甲事件原告らの賃金額は,別紙1賃金一覧表月額欄記載のとおりであり,1か月の平均額は,同一覧表請求額欄記載のとおりである。同じく,本件就労拒絶前3か月間の乙事件原告らの賃金額は,別紙2賃金一覧表月額欄記載のとおりであり,1か月の平均額は,同一覧表請求額欄記載のとおりである。 他方,被告は,原告らが被告に対して,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを否定している。 そこで,原告らは,被告に対し,原告らが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,それぞれの労働契約に基づき,甲事件原告らについては平成19年4月から本判決確定まで,乙事件原告らについては平成20年4月から本判決確定まで,それぞれ毎月20日限り,1か月あたり,甲事件原告らについては別紙1賃金一覧表請求額欄記載の賃金,乙事件原告らについては別紙2賃金一覧表請求額欄記載の賃金及びこれらに対する各当月21日から支払済みまで商事法定利率年 限り,1か月あたり,甲事件原告らについては別紙1賃金一覧表請求額欄記載の賃金,乙事件原告らについては別紙2賃金一覧表請求額欄記載の賃金及びこれらに対する各当月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 (被告)否認ないし争う。 高年雇用安定法9条1項は,公法上の義務を定めたのみであって,私法的効力を有しない。また,本件制度は,同項2号の「継続雇用制度」に適合する制度であって,同号に違反する事実はない。 したがって,被告における定年年齢を60歳とする定年の定めが,高年雇用安定法9条1項を根拠に無効になり,原告らと被告の間に期間の定めのない労働契約が成立することはない。 なお,原告らの主張する賃金額の中には,労働の対価ではない通勤費や福利厚生の一環である一般財形奨励金,持株奨励金が含まれているが,これらは賃金に含まれるべきものではない。 (4)原告らの雇用契約上の権利を有する地位を被告が否認すること等について,不法行為が成立するか(甲乙事件提起,遂行のための弁護士費用相当損害賠償金請求の成否)(争点4)(原告ら)被告は,上記(1)ないし(3)の(原告ら)の主張するところからも明らかなとおり,違法にも原告らの雇用契約上の権利を有する地位を否認し,原告らの就労を拒絶する。 原告らは,被告の上記行為により原告らの訴訟代理人でもある弁護士を通じてそれぞれ甲事件あるいは乙事件を提起せざるを得ず,その結果,弁護士費用として,甲事件原告らはそれぞれ70万円相当の,乙事件原告らはそれぞれ90万円相当の各損害を被った。 したがって,被告は,不法行為により,弁護士費用相当損害金として,甲事件原告らそれぞれに対し各70万円(主位的請求)を,乙事件原告らそれぞれに対し各90万円(主位的請求)の賠償責任を負っている た。 したがって,被告は,不法行為により,弁護士費用相当損害金として,甲事件原告らそれぞれに対し各70万円(主位的請求)を,乙事件原告らそれぞれに対し各90万円(主位的請求)の賠償責任を負っている。 (被告)否認ないし争う。 (5)高年雇用安定法9条1項違反の効果として不法行為責任が成立するか(争点5)(原告ら)ア高年雇用安定法9条1項違反による権利侵害(違法性)仮に被告の60歳定年制が無効でないとしても,被告による原告らの退職扱い及び就労拒絶は,高年齢者雇用確保措置を講ずる義務(同条1項)に違反していることは明らかである。 原告らは,被告の同行為により,希望する限り,被告において継続して雇用されてそのキャリアを生かしながら賃金を得る権利を侵害されている。 したがって,被告は,原告らに対し,不法行為責任を負う。 イ損害(ア)賃金相当損害金(予備的請求)被告らの上記違法な行為がなければ,甲事件原告らは定年退職日以後3年間,乙事件原告らは定年退職日以後4年間にわたり,継続雇用制度により,少なくとも被告の子会社において雇用された場合の賃金と同等の賃金を得られたというべきである。(なお,法の趣旨は,労働者が60歳を超えて継続して同一雇用主に雇用されてそのキャリアを生かして働くというところにあるから,抽象的な他所への就労可能性をもって,被告の責任を軽減することは許されない。)継続雇用制度により地域会社で雇用された場合の年間賃金額は,被告の計算によれば,原告らについて,基本給161万8000円,特別手当65万円,合計226万8000円(甲12c))となる。 したがって,被告の不法行為による賃金相当損害金の額は,甲事件原告らについて,上記金額の3年分である680万4000円を,乙事件原告らについて,上記金額の4年分である907 円(甲12c))となる。 したがって,被告の不法行為による賃金相当損害金の額は,甲事件原告らについて,上記金額の3年分である680万4000円を,乙事件原告らについて,上記金額の4年分である907万2000円をそれぞれ下らない。 (イ)弁護士費用原告らが本件訴訟に要した弁護士費用のうち,甲事件原告については,各人ごとに少なくとも60万円(予備的請求),乙事件原告については各人ごとに少なくとも90万円(予備的請求)は,被告による不法行為と相当因果関係にある損害である。 (被告)否認ないし争う。 本件制度は同条1項2号の「継続雇用制度」に適合する制度であって,同号に違反する事実はない。 したがって,被告が原告らに対し,高年雇用安定法9条1項違反を根拠 に民法上の不法行為責任を負う余地はない。 第3当裁判所の判断 前提事実並びに証拠(証拠等略)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)定年に関する法的規制及び高年雇用安定法の改正についてア昭和46年10月1日,高年雇用安定法の前身である中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法(以下「特別措置法」という。)が施行された。 イ特別措置法は,昭和61年,同法の一部を改正する法律(昭和61年4月30日法律43号)により高年雇用安定法へと名称変更され,その際,事業主が,その雇用する労働者の定年の定めをする場合には,当該定年が60歳を下回らないよう努力する義務が事業主に課せられた(4条)。 なお,これに先立つ昭和60年10月,雇用審議会は,答申第19号を発し,21世紀を展望した今後の高年齢者の雇用・就業の在り方の方向として,65歳程度までは雇用・就業の場の確保が図られ(・・略・・)るような社会をめざすこと,我が国の雇用慣行からみて同一企業又は同一企業グループにおいて継続 後の高年齢者の雇用・就業の在り方の方向として,65歳程度までは雇用・就業の場の確保が図られ(・・略・・)るような社会をめざすこと,我が国の雇用慣行からみて同一企業又は同一企業グループにおいて継続して雇用・就業の場の確保を図ることとした。 (証拠等略)ウ昭和61年6月6日,「長寿社会対策大綱」が閣議決定され,高齢者の雇用・就業の機会の確保について,60歳定年の定着及び60歳台前半層を含めた高齢者の雇用・就業の場の維持,拡大を積極的に推進し,当面65歳程度までの継続雇用を促進するとされた(証拠等略)。 エ昭和63年6月17日,同年度から昭和67年度(平成4年度)までの5年間を計画期間とする「第六次雇用対策基本計画」が閣議決定され,その中で,65歳程度までの継続雇用について,我が国の雇用慣行の長所を生かしつつ,同一企業あるいは同一企業グループ内において高年齢者の雇用を維持し,長年にわたり培われてきた経験や能力を活用することを中心 とした仕組みの形成が最も重要であるとして,(・・略・・)60歳定年の定着を図るため,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に定められた行政指導を講ずること等により,企業に対する指導を強力に実施することとされ,また,65歳まで,同一企業あるいは同一企業グループ内において,定年延長,再雇用,勤務継続が行われることを促進する等の一定の対策を進めることとされた(証拠等略)。 オ平成2年3月1日,労働大臣(当時)から諮問を受けた雇用審議会は,65歳までの雇用機会を確保する方策として,「事業主が雇用を確保する具体的な方法としては,定年の引上げ,再雇用制度,勤務延長制度等,多様な方法を講ずる必要がある。」,「定年退職者ができるだけ失業を経ることなく再就職することができるように,同一企業グループに限らず,高年齢者が としては,定年の引上げ,再雇用制度,勤務延長制度等,多様な方法を講ずる必要がある。」,「定年退職者ができるだけ失業を経ることなく再就職することができるように,同一企業グループに限らず,高年齢者が培ってきた技能や経験が生かされる職場であれば広く再就職の機会に関するあっせん,情報の提供などの援助に努める必要がある。」等とし,65歳までの雇用機会を確保する法的整備については,「65歳までの雇用機会を確保する措置に関する規定については事業主の自主的努力を促進する趣旨の規定とすることが適当である。」,「60歳定年達成」「の目標に向けて適切な措置を講ずることが妥当である。」こと等を答申した(答申第21号)。 その後,同答申を踏まえた高年雇用安定法の一部を改正する法律案が国会に提案され,同法律案を審議する平成2年6月5日の衆議院社会労働委員会において,当時の労働省職業安定局高齢・障害者対策部長が,「継続雇用の推進につき,同一企業のみならず,同一企業グループの中で雇用を継続的に確保することも一つの現実的な方法として,労使間の話し合い等で選択できる一つの手段ではないかと考えている。」旨答弁している。また,同月21日の参議院社会労働委員会において,同部長が,「同一企業あるいは同一企業グループ,そういったものを基本に置きながらの継続雇 用を進めていくということが一つの基本的な施策としてある。」,「いろんな関連会社への継続雇用の措置を講ずることもありうる。」旨答弁している。これらを受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律が成立し,同月29日,同年法律第60号として公布された。 (証拠等略)カ同改正後の高年雇用安定法は,4条の5を新設し,事業主が,60歳以上65歳未満の定年に達した者が当該事業主に再び雇用されることを希望するときは,原則として,そ 号として公布された。 (証拠等略)カ同改正後の高年雇用安定法は,4条の5を新設し,事業主が,60歳以上65歳未満の定年に達した者が当該事業主に再び雇用されることを希望するときは,原則として,その者が65歳に達するまでの間,その者を雇用するように努めなければならない旨規定(継続雇用の努力義務の新設)した。 なお,同規定は,60歳を越えると健康や体力の面等で個人差が拡大するため,事業主に対して,65歳までの雇用を一律に求めることは困難であること,他方で,事業主はその雇用する高年齢者について雇用機会を確保すべき責務を一般的に有することから,事業主は,定年を定めた場合であっても,定年後の再雇用を希望する定年到達者に関しては,その個々の状況を考慮しつつ定年後も雇用するように努めることが少なくとも必要であることを踏まえて定年後の再雇用の努力義務を設けたものである。 (証拠等略)キ平成4年7月10日,同年度から平成8年度までの5年間を計画期間とする「第七次雇用対策基本計画」が閣議決定され,65歳までの継続雇用の推進について,平成5年度までに60歳定年の完全定着を図るとともに,60歳定年を基盤として,働くことを希望する高齢者全員が65歳まで継続して働くことができる雇用システムの確立を図るため継続雇用制度の一層の普及に向けての体制を整える等の方策を図ることとされた(証拠等略)。 ク平成5年12月22日,労働大臣(当時)から諮問を受けた雇用審議会 は,60歳未満定年制を解消するための法的措置を講ずる必要があること,60歳を超える者について多様な形態による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり,そのために同一企業又は同一企業グループ内において定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくこと等が重要であること等 による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり,そのために同一企業又は同一企業グループ内において定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくこと等が重要であること等を答申した(答申第23号)。また,中央職業安定審議会は,平成6年1月14日,労働大臣(当時)に対し,65歳までの雇用機会の確保等総合的な高齢者雇用対策の確立について建議を行った。上記答申及び建議を受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律案が国会に提案され,国会の審議を経て同法律が成立し,平成6年6月17日,同年法律第34号として公布された。 同改正後の高年雇用安定法は,事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には,当該定年は,原則として,60歳を下回ることができないもの(4条)とそれまでの努力義務から60歳定年の義務化を図ったほか,同改正において,事業主は,その雇用する労働者が,その定年(65歳未満の者に限る。)後も当該事業主に引き続いて雇用されることを希望するときは,当該定年から65歳に達するまでの間,当該労働者を雇用するように努めなければならない旨の規定を維持したまま(4条の2),新たに65歳までの継続雇用制度の導入・改善計画の作成についての労働大臣の指示について定めた。 なお,答申第23号も,60歳以上の雇用に関し,60歳を越えると健康等の個人差が拡大するとともに,就業ニーズも多様化することから,一律に定年延長によるのではなく,多様な形態による雇用・就業の場の確保が図られるようにするため,「同一企業又は同一企業グループ内において65歳までの定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくことが重要であり,事業主の自主的努力を更に促進するための法的措置を講ずることが適当」としていた。 また,平成6年に 歳までの定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくことが重要であり,事業主の自主的努力を更に促進するための法的措置を講ずることが適当」としていた。 また,平成6年に老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢を60歳から65歳へと段階的に引き上げることが決定された。 (証拠等略)ケ上記キで記載した4条の2は,その後,平成12年法律第60号によって改正され,65歳未満の定年の定めをしている事業主は,当該定年の引上げ,継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入又は改善その他の当該高年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならないものと規定された。 なお,平成12年に老齢厚生年金の報酬部分の支給開始年齢も引き上げることが決定された。 (証拠等略)コ前提事実(8)記載のとおり厚生年金の支給開始年齢について,60歳から65歳まで段階的な引上げが予定される一方,上記ク記載のとおり平成6年法律第34号による高年雇用安定法の改正後,事業主は,原則として60歳を下回る定年の定めをすることができない旨義務付けられたものの,高年齢者の65歳までの雇用については必要な措置を講ずべき努力義務を負うにとどまっていた。 そのような状況の下,平成15年4月以降,厚生労働省において「今後の高年齢者雇用対策に関する研究会」が開催された。 労働政策審議会は,同年10月以降,同研究会で出された意見を踏まえて検討を行い,平成16年1月20日,厚生労働大臣に対し,「今後の高齢者雇用対策について(報告)」と題する建議(以下「平成16年建議」という。)を行った。この建議のうち,「65歳までの雇用の確保策」については,別紙3の「65歳までの 厚生労働大臣に対し,「今後の高齢者雇用対策について(報告)」と題する建議(以下「平成16年建議」という。)を行った。この建議のうち,「65歳までの雇用の確保策」については,別紙3の「65歳までの雇用の確保策」のとおりである。 (証拠等略) サ平成16年建議を受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律案が国会に提案され,国会での審議を経て同法律が成立し,平成16年6月11日,同年法律第103号として公布され,高年雇用安定法9条については平成18年4月1日,前提事実(7)のとおり施行された。 (2)地域会社について本件制度において,被告が地域会社として移管先に指定したのは,西日本地域を16ブロックに分けてそのブロック毎に設立した営業系地域会社(株式会社A関西をはじめとする全15社),設備系地域会社(株式会社B関西をはじめとする全16社)及び共通系地域会社(株式会社C関西をはじめとする全16社)である。 同各地域会社は,いずれも被告もしくは被告が100パーセント出資をしている株式会社A,株式会社B等,N株式会社グループに属する会社の完全子会社である(証拠等略)。 (3)本件制度に対するA労組の対応状況本件制度について,被告の組合員となり得る者の98.9%を占める圧倒的な多数労組であるA労組は,平成13年4月に被告から本件構造改革の提案を受け,以後,約7か月にわたって,職場から中央レベルまで各層における組織的な検討を踏まえ,最終的に承認する旨の機関決定をし,被告との間で同年11月30日に雇用形態・処遇体系の多様化を含む本件構造改革を実施することについて全面的に合意した。 そして,平成14年の被告における構造改革の際,選択対象者である労働者の実に98.4パーセントの者が雇用の選択に当たって,退職・再雇用型(繰延型と一時金型を含んだ することについて全面的に合意した。 そして,平成14年の被告における構造改革の際,選択対象者である労働者の実に98.4パーセントの者が雇用の選択に当たって,退職・再雇用型(繰延型と一時金型を含んだもの)を選択した。 (弁論の全趣旨)(4)本件制度についての原告らないしB労組に対する説明についてア被告は,平成13年5月,「構造改革に伴う労働条件諸制度の見直し等 について」と題する文書をB労組に提示し,51歳以上の従業員に関する退職・再雇用型について説明した。 被告は,同年12月7日,「雇用形態・処遇体系に伴う意向確認の実施について」を発表し,そのころから翌平成14年1月ころにかけて,従業員に対し,前提事実(4)イ記載の雇用形態及び処遇体系について説明し,意向確認調書や雇用形態選択通知書を交付した上で,平成14年1月4日から同月31日までの間,雇用形態等の選択を求めた。 (証拠等略)イ被告は,平成17年11月8日,B労組に対し,「N株式会社西日本グループの新たな業務運営体制について」と題する文書を送付し,業務運営体制を見直して,支店機能(業務)を地域会社へ大幅に移行すること等を通知した。 被告は,平成17年12月21日,「60歳満了型」社員のうち51歳以上59歳以下の者について平成18年4月以降の就業形態について,賃金水準が20%ないし30%ダウンする等の条件で被告を退職して新地域会社に再雇用されるか,被告に残留するかを選択させるべく,雇用形態選択通知書の提出を求めることとし,その旨(具体的な取扱いについては,社長達に記載されていた。)をB労組に通知した。 B労組は,平成18年1月4日,「50歳『退職再雇用』および再度の雇用選択に関する申入書」を被告に提出し,被告が高年雇用安定法に基づいて60歳越えの雇用延長について制度化す 。)をB労組に通知した。 B労組は,平成18年1月4日,「50歳『退職再雇用』および再度の雇用選択に関する申入書」を被告に提出し,被告が高年雇用安定法に基づいて60歳越えの雇用延長について制度化する義務を負っているとの見解の下に被告の従業員についても,60歳定年制を改め,継続雇用措置を設けるよう求めた。 被告は,B労組に対し,平成18年1月12日,本件制度で本件改正に対処できると認識している旨回答し,平成18年1月16日から同年2月10日にかけて,60歳満了型を選択している社員に対し,雇用形態の再 選択を実施した。その際,原告らは,直属の上司から「退職再雇用型」か「60歳満了型」のいずれを選択するかの回答を求められた。 (証拠等略)ウ被告が原告らに対して上記各選択を求めた際,特定の選択をし,あるいはしないように脅迫ないし強制をしたような事情はない。 (証拠等略)(5)本件制度による地域会社での再雇用後の更新状況について地域会社における雇用更新は部長達(証拠等略)に基づいて運用されているところ,継続雇用の希望があった場合,健康に問題がないこと,欠勤日数が一定日数を超えないことの2要件が満たされる限り,雇用が更新されることになっている。これまでの間,業務上の必要性がないとの理由で雇用更新が拒否された例はない。 (証拠等略)(6)原告らの雇用選択の際の対応状況等被告は,上記(4)のとおり平成14年1月4日から同月31日までの間に原告らを含む労働者に雇用形態等の選択を実施し,その後,平成18年1月16日から同年2月10日にかけて雇用形態の再選択を実施したが,原告らは,いずれの機会にも退職・再雇用型の選択をしなかった。 その後,甲事件原告らは,被告に対し継続雇用を求めたが,平成19年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したもの の再選択を実施したが,原告らは,いずれの機会にも退職・再雇用型の選択をしなかった。 その後,甲事件原告らは,被告に対し継続雇用を求めたが,平成19年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 また,乙事件原告らは,被告に対し継続雇用を求めたが,平成20年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 (証拠等略) 前提事実及び上記認定の事実を前提に争点について検討する。 (1)高年雇用安定法9条の私法的効力について(争点1)ア原告らは,同条には私法的効力があり,したがって,事業主と労働者間 の法律関係について,60歳定年を定める就業規則を無効ならしめ,あるいは民法上の不法行為責任を課すものである旨主張するところ,以下の事情を踏まえると,同主張は理由がなく,かえって,同条は,私人たる労働者に,事業主に対して,公法上の措置義務や行政機関に対する関与を要求する以上に,事業主に対する継続雇用請求権を付与するのと同様の効果をもたらす規定(直截的に私法的効力を認めた規定)とまで解することはできない。 (ア)同法は,定年の引上げ,継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進,高年齢者等の再就職の促進,定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ,もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに,経済及び社会の発展に寄与することを目的とし(1条),事業主のみならず国や地方公共団体も名宛人として,種々の施策を要求しており,社会政策誘導立法ないし政策実現型立法として,公法的性格を有している。 (イ)また,上記1(1)で認定した同法の改正経過ををみると,60歳を超えると健康や体力の面等で個人差が拡大するため,事業主に対して,65歳までの雇用を一律に求める して,公法的性格を有している。 (イ)また,上記1(1)で認定した同法の改正経過ををみると,60歳を超えると健康や体力の面等で個人差が拡大するため,事業主に対して,65歳までの雇用を一律に求めることは困難であることが指摘され,本件改正の基礎となった平成16年建議も,「継続雇用制度についても,一律の法制化では各企業の経営やその労使関係に応じた適切な対応が取れないとの意見もあることから,各企業の実情に応じ労使の工夫による柔軟な対応が取れるよう,労使協定により継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することもできるようにすることが適当である」,「企業経営上の極めて困難な状況に直面しているケース等については,企業の実情を十分に考慮した助言等に止める等その施行に当たっての配慮が必要である。」とされる等,継続雇用制度の内容を一律に定めておらず,事 業主側の事情等も考慮すべきとしている。これを受けて成立した同条1項は,国が事業主に対して公法上の義務を課す形式をとっているほか,同項各号の措置に伴う労働契約の内容ないし労働条件についてまでは規定していない上,同項2号も,継続雇用制度について,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。」と定義づけ,多様な制度を含みうる内容の規定となっている。仮に同項によって事業主に作為義務があるとしても,その作為内容が未だ抽象的で,直ちに私法的強行性ないし私法上の効力を発生させる程の具体性を備えているとまでは認め難い。 (ウ)そして,同条2項は,一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容し(したがって,高年齢者が希望したとしても必ず同法所定の65歳まで雇用しなけ とまでは認め難い。 (ウ)そして,同条2項は,一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容し(したがって,高年齢者が希望したとしても必ず同法所定の65歳まで雇用しなければならないものではなく,基準に基づいて選抜を行い継続雇用制度の対象としないことも容認する趣旨),高年雇用安定法の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて柔軟な措置を講ずることを許容しているものと解される。 (エ)しかも,事業主と個別労働者との関係を前提とする同法の規定は,努力義務規定が多く(15条,19条等),義務規定に反した場合の実効確保措置についても厚生労働大臣による助言・指導・勧告というより緩やかな措置に止まり,罰則や企業名公表制度等の制裁までは予定されていない。 (オ)さらに,同法9条の直前に規定されている8条は,9条について努力義務が削除された後も定年年齢を65歳まで引き上げることなく60歳を下回らないと義務付けたままになっている上,同法には9条1項の義務に違反した場合について,労基法13条のような私法的効力を認める旨の明文規定も補充的効力に関する規定も存しない。 仮に同条1項の義務をもって私法上の義務と解すると,同義務内容と なる給付内容が特定できないといった解釈上困難な問題を惹起するのみならず,仮に個々の労働者に事業主に対して雇用を保障する義務があるとした場合,その給付内容をどのように特定するか,その義務の履行を法律上強制することが可能か否か,裁判上強制した場合に実効性を確保しうるか,定年延長ないし定年廃止を事実上強制することが包含する問題性がある(同条1項2号が予定する継続雇用制度は事業主の実情を踏まえた雇用態様が想定されているが,事業主の実情をおよそ無視して能力や意欲等の多様な対象高年齢労働者を何らの制限な ることが包含する問題性がある(同条1項2号が予定する継続雇用制度は事業主の実情を踏まえた雇用態様が想定されているが,事業主の実情をおよそ無視して能力や意欲等の多様な対象高年齢労働者を何らの制限なくして全て雇用し続けることを義務づけるという結論をとることは,高年齢者の安定した雇用の確保の基盤をかえって危うくする危険性がある。)等,多くの困難な実践的解釈上の問題を生じることとなる。 (カ)ところで,原告は,同法9条1項違反の私法的効力が認められなければ,法を遵守せず行政の指導にも従わない悪質な事業主ほど雇用責任を免れ,他方で,労働者を困窮生活に陥れるのみならず,事業主による違法行為を助長することにもなりかねず,65歳までの雇用保障を義務化した法の趣旨を没却する旨主張するが,同主張は未だ抽象的な問題性を論じる域を出ておらず,採用の限りではない。 イそうすると,事業主の高年雇用安定法9条違反という事実が直ちに事業主に対して私法上の債務不履行責任ないし不法行為責任を基礎付けるものではない。また,事業主である被告は,原告に対し,同9条1項に基づいて私法上の義務として労働者に対して継続雇用義務ないし雇用を保障する義務を負っているとまではいえない。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か)(争点2)被告が本件において定年の引上げ及び定年の定めの廃止を行っておらず, 高年雇用安定法9条1項1号,3号に該当する措置をいずれも実施していないことは当事者間に争いがない。そこで,被告が実施した本件制度が同項2号の継続雇用制度に該当するかについて検討する。 ア高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度の許容する制度枠組み上記1(1)及び2(1 間に争いがない。そこで,被告が実施した本件制度が同項2号の継続雇用制度に該当するかについて検討する。 ア高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度の許容する制度枠組み上記1(1)及び2(1)で認定した高年雇用安定法の上記立法目的,法的性格及び上記認定の高年雇用安定法の改正経緯を踏まえると,高年雇用安定法9条の趣旨は,高年齢者の60歳以後の安定した雇用を確保するための措置を講じることによって,年金支給開始年齢までの間における高年齢者の雇用を確保するとともに高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことを可能とする労働環境を実現することにあると解するのが相当である。 ところで,現行9条の改正の基礎となった平成16年建議の内容や同条の改正経緯,同条1項が同項各号の措置に伴う労働契約の内容等についてまでは規定していないこと,同条2項が一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容していることを踏まえると,同条は,上記同条の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解するのが相当であり,また,同条で定める雇用確保措置によって確保さるべき雇用の形態は,必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず,同希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務,隔日勤務等の多様な雇用形態を含むものと解するのが相当である。 イ本件制度が高年雇用安定法9条1項2号に該当すること(ア)地域会社での再雇用(転籍)について原告らは,本件制度は地域会社の従業員を継続雇用するに過ぎず,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,同号で定める継続雇用制度は,上記アで説示したとおり同法の趣旨に反しない限り,各事業主が 従業員を継続雇用するに過ぎず,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,同号で定める継続雇用制度は,上記アで説示したとおり同法の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解されるところ,同条の雇用確保措置によって確保さるべき雇用の形態も,上記アで説示したとおり必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず,同希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務,隔日勤務等も含めて多様な雇用形態を含むものと解される。 また,上記1(1)で認定した高年雇用安定法の改正経緯によれば,60歳を超える者の雇用確保については一貫して,多様な形態による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり,そのために同一企業又は同一企業グループ内において定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくこと等が重要であるとされており,それを踏まえて同法9条が規定されたと解されるのであるから,少なくとも,同条は,同一企業のみならず同一企業グループにおいて継続して雇用・就業の場の確保を図ることも高年雇用安定法の目的を達する方法・手段として想定していたことは明らかであり,同条1項2号で定める継続雇用制度に,転籍という方法による雇用継続がおよそ含まれないと解することはできない。 もっとも,同条1項2号の上記趣旨及び同号が「事業主に対してその雇用する高年齢者の安定した雇用を確保するために同項各号に定める措置を講じなければならない。」としていることを総合すると,事業主が転籍型の継続雇用制度を採用する場合,特段の事情でもない限り,事業主と転籍先との間で少なくとも同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような とを総合すると,事業主が転籍型の継続雇用制度を採用する場合,特段の事情でもない限り,事業主と転籍先との間で少なくとも同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性が認められなければならないと解するのが相当である。 そこで,本件であるが,本件制度では,被告を退職した後に再雇用さ れる予定の別会社たる地域会社(転籍先)は,いずれも被告あるいは,被告が全額出資して設立した会社等が全額出資して設立した会社であり(上記前提事実(3)),資本的な密接性が認められるのみならず,再雇用に関する就業規則を制定して,一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に再雇用及び更新されることとし,現にそのように運用されているというのであるから,本件制度は,事業主と転籍先との間に同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性が認められるといえ,本件制度が地域会社における再雇用制度であることをもって同条1項2号に反するとはいえず,かえって,同号で定める継続雇用制度に適合する制度であるといえる。 (イ)原告らの上記第2の4ウの主張について原告らは,地域会社の契約社員制度は,会社の業務上の必要性がある場合に更新されるものであり,労働者が希望した場合に65歳まで雇用を保障していないから,本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度にあたらない旨主張している。 しかし,同条1項2号で定める継続雇用制度は上記のとおり各事業主が実情に応じて柔軟な措置をとることが許容されているところ,労働者が希望した場合に無条件で年金支給開始年齢までの雇用が保障されていないことをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しないということはできない。 そして 置をとることが許容されているところ,労働者が希望した場合に無条件で年金支給開始年齢までの雇用が保障されていないことをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しないということはできない。 そして,地域会社での定年後の雇用期間はキャリアスタッフ制度と同様に一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に雇用終了年齢に至るまで再雇用(更新)される扱いとなっており,上記(2)アで説示した同法9条の趣旨に反するとまではいえず,後述するところも勘案すると,同号で定める継続 雇用制度に適合する制度であるといえる。 したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 (ウ)原告らの上記第2の4(2)エの主張ついて原告らは,地域会社の契約社員制度は,法の求める賃金収入を被告の従業員にもたらさない(本件制度のうち,最終,65歳までの継続雇用が可能となる繰延型,一時金型は,60歳を超えて継続雇用された場合に得られる賃金額が60歳満了型を選択した場合よりも低くなる。)から,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,高年齢者の雇用は事業主に相応の負担を生じさせるものであること,また,同条1項2号で定める継続雇用制度は上記のとおり各事業主が実情に応じた柔軟な措置をとることを許容していることを踏まえると,労働条件が低下することをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しないとまではいえない。 そして,平成16年建議において「65歳までの雇用確保に当たっては,今後の労働力供給動向を踏まえた人材の確保,雇用・就業ニーズの多様化や厳しい経営環境の中での総コスト管理の観点からも,労使間で賃金,労働時間,働き方等について十分に話し合い,賃金・労働時間・人事処遇制度の見直しに取り組むこ えた人材の確保,雇用・就業ニーズの多様化や厳しい経営環境の中での総コスト管理の観点からも,労使間で賃金,労働時間,働き方等について十分に話し合い,賃金・労働時間・人事処遇制度の見直しに取り組むことが必要である。」と指摘されており,立法段階において,各企業の実情を考慮すること,殊に限られた経営資源の中で65歳までの雇用確保を求める場合,賃金減額や労働時間の短縮を検討することも必要との認識があったと解されること,地域会社における退職金等において一定の措置が採られていること,勤務地も限定的なものとなり,かつ,雇用保険等,公的給付や企業年金の支給との組み合わせ等により,多様な生活スタイルに応えるものとなっていると評価しうることを総合考慮すると,繰延型又は一時金型を選択した場 合に総所得が低下する場合があるとしても,そのことのみをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に反するとまではいえない。 加えて,本件制度は,被告の労働者の99%近い従業員が加入するA労組の合意が得られていること及び現にこれら労働者による雇用形態等の選択がされて機能していると解されることを勘案すると,労使の協議・工夫による制度と評価でき,この点からも同法9条の趣旨に反した制度とはいえない。 したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 (エ)原告らの上記第2の4(2)オの主張ついて原告らは,雇用形態等の選択について,早くとも55歳以上の時点で従業員が選択できる制度でなければならないのに,被告は,50歳の時点で雇用形態等の選択をさせており,高年雇用安定法9条1項2号に反する旨主張する。 しかし,継続雇用に関する希望を聴取する時期や方法は高年雇用安定法に明定されておらず,基本的には事業主側の裁量に任されているところ,被告は,上記前提事実(4)(5)で記載したとお する旨主張する。 しかし,継続雇用に関する希望を聴取する時期や方法は高年雇用安定法に明定されておらず,基本的には事業主側の裁量に任されているところ,被告は,上記前提事実(4)(5)で記載したとおり,平成14年1月ころ及び平成18年1月ないし2月に被告の労働者に対し,雇用形態や処遇体系等を説明した上でその選択の機会を設けており,その際,選択内容である雇用形態や処遇の内容(労働条件等)について具体的に説明し,意向聴取もしていることに同選択の際,被告において,原告らに特定の選択をし,あるいはしないように脅迫ないし強制をしたような事情もないことを総合すると,被告が原告らに求めた同選択について,高年雇用安定法違反と認めることはできない。 なお,50歳の時点で処遇形態等の選択をさせ,その後選択の機会を与えないとすることについては,当否の問題がなくはないものの,本件では再選択の機会があることから,少なくとも高年雇用安定法9条1項 等に反するとはいえない。 以上によれば,継続雇用の希望聴取時期や方法に関して被告に裁量違反を認めることができない。 したがって,原告らの上記主張は理由がない。 (オ)原告らの上記第2の4(2)カの主張について原告らは,平成14年の雇用形態等の選択の際及び平成18年の再選択の際,被告が従業員にまともな説明をしておらず,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度が予定する選択の機会が与えられていない旨主張する。 しかし,高年雇用安定法上,同法と当該事業主が採用している継続雇用制度との関係を具体的に説明すべき義務を明定した規定はなく,本件制度が同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当することは上記イの(ア)ないし(エ)で認定説示したとおりであるところ,被告は,本件制度の対象となる従業員に対し,平成14年の雇用形態及び処 く,本件制度が同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当することは上記イの(ア)ないし(エ)で認定説示したとおりであるところ,被告は,本件制度の対象となる従業員に対し,平成14年の雇用形態及び処遇体系の選択を求める際,選択内容である雇用形態や処遇の内容(労働条件等)について具体的に説明しており,それ以上に本件制度と同法との関係について,その当否は別として,説明をすべき義務まではなかったと解するのが相当である。 また,本件制度による雇用形態等の選択ないし再選択が,事業上の必要性を主たる要因として実施されていたとしても,そのことによって本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に該当しないことになるわけではない。 なお,上記のとおり上記雇用形態等の選択ないし再選択にあたり,被告が原告らに対して特定の選択をし,あるいはしないように脅迫ないし強制をしたような事情はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (3)補足その他,本件全証拠によっても被告の不法行為責任を基礎付ける事実を認めるに足る証拠はない。 (4)まとめ以上によれば,被告は,高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当する本件制度を実施しており,被告について,同項違反は認められない。仮に同条項に反したとしても被告の60歳定年制が無効となって,定年の定めのないものとなるわけではなく,また,直ちに私法上の債務不履行責任ないし不法行為責任を基礎付けるものではないことは上記のとおりである。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの地位確認請求,賃金請求及び不法行為に基づく損害賠償請求(主位的及び予備的の両方を含む。)は,いずれも理由がない。 第4 結論 以上の次第で,その余の点(損害等)について判断するまでもなく,原告らの請求はいず 求,賃金請求及び不法行為に基づく損害賠償請求(主位的及び予備的の両方を含む。)は,いずれも理由がない。 第4 結論 以上の次第で,その余の点(損害等)について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから,棄却することとして主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部中村哲裁判長裁判官中山誠一裁判官足立堅太裁判官 (別紙3)「65歳までの雇用の確保策」高齢者雇用を進めるには,年齢にかかわりなく意欲と能力のある限り働き続けることを可能とする環境の整備が必要であるが,厳しい雇用失業情勢の中では中高年齢者は一旦離職すると再就職は困難であり,また,未だ円滑な企業間の労働移動も可能とはなっていない。 これまで,65歳までの雇用確保措置の導入については労使による自主的な努力がなされてきたところであるが,厳しい経済情勢もあって,近年においてはその実施状況が必ずしも進んでいないことや,既に年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられつつあること等も踏まえると,高齢者のそれまでの豊富な職業経験や知識を最大限活かす上でも,今後各企業において,労使の工夫を凝らしながら,意欲と能力のある限り少なくとも65歳までは働き続けることが可能となる取組をさらに求めていくこととすべきである。 意欲と能力のある限り年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現を目指すという観点に立てば,本来は定年制も含め年齢による雇用管理を全面的に禁止すること(年齢差別禁止)も考えられるが,定年制をはじめ年齢という要素が未だ大きな役割を担っており,年齢に代わる基準が確立されていない我が国の雇用管理の実態にかんがみれば,直ちに年齢差別禁止という手法をとることは,労働市場の混乱を招くおそれがあり困難である。 また,年金の支給開始年齢を念頭に,法定 代わる基準が確立されていない我が国の雇用管理の実態にかんがみれば,直ちに年齢差別禁止という手法をとることは,労働市場の混乱を招くおそれがあり困難である。 また,年金の支給開始年齢を念頭に,法定定年年齢(60歳)を65歳に引き上げることも方策の1つとして考えられるが,経済社会の構造変化等が進む中で厳しい状況が続く企業の経営環境等を考慮すれば,65歳までの雇用確保の方法については個々の企業の実情に応じた対応が取れるようにするべきであり,直ちに法定定年年齢を65歳に引き上げることは困難である。 したがって,我が国の雇用管理の実態や企業の経営環境等も踏まえた上で,意 欲と能力のある限り65歳までは働き続けることが可能となる取組をさらに求めるためには,法定定年年齢60歳は維持した上で,定年の定めをしている事業主は,65歳までの雇用の確保に資するよう,当該企業の定年年齢の引上げ又は継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)の導入を行わなければならないこととすることが適当である。 この場合,各企業の実情に応じて職種等の別に定年年齢を定めるなどの工夫を行うことも有効であると考えられる。 継続雇用制度についても,一律の法制化では各企業の経営やその労使関係に応じた適切な対応が取れないとの意見もあることから,各企業の実情に応じ労使の工夫による柔軟な対応が取れるよう,労使協定により継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することもできるようにすることが適当である。 なお,事業主が労使協定をするため努力をしたにもかかわらず協議が不調に終わった場合には,高齢者雇用に係る継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を作成し就業 こともできるようにすることが適当である。 なお,事業主が労使協定をするため努力をしたにもかかわらず協議が不調に終わった場合には,高齢者雇用に係る継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を作成し就業規則等に定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することを施行から一定の期間認めることが適当である。その期間については高年齢者の雇用確保の状況,社会経済情勢の変化等を考慮して政令で定めることとし(具体的には当面施行から3年間,中小企業は5年間),その後の上記の状況の変化,特に中小企業の実情等を踏まえ,当部会の意見を聴いて見直すこととする。 また,各企業が5年,10年先を見据えて計画的に取り組むことも可能となるよう,定年又は継続雇用制度の対象年齢については直ちに65歳までとするのではなく,年金(定額部分)支給開始年齢に合わせて2013年(平成25年)までに段階的に引き上げていくこととすべきである。また,制度の導入等についての準備期間も考慮し,その施行については2006年4月からとすることとし, 具体的には,2006年4月から2007年3月までは62歳,2007年4月から2010年3月までは63歳,2010年4月から2013年3月までは64歳,2013年4月からは65歳とすることが適当である。 さらに,65歳までの雇用確保に当たっては,今後の労働力供給動向を踏まえた人材の確保,雇用・就業ニーズの多様化や厳しい経営環境の中での総コスト管理の観点からも,労使間で賃金,労働時間,働き方などについて十分に話し合い,賃金・労働時間・人事処遇制度の見直しに取り組むことが必要である。また,労働者自身も絶えず自らの体力,能力,適性の維持・向上に努めるとともに,早い段階から定年後も見据えた職業生活設計を行うことが必要である。 なお,労使が真摯 度の見直しに取り組むことが必要である。また,労働者自身も絶えず自らの体力,能力,適性の維持・向上に努めるとともに,早い段階から定年後も見据えた職業生活設計を行うことが必要である。 なお,労使が真摯に協議した結果として直ちに制度を実施しないことを合意しているケースや,企業経営上の極めて困難な状況に直面しているケースなどについては,企業の実情を十分に考慮した助言等に止めるなどその施行に当たっての配慮が必要である。 また,中小企業団体が実施する継続雇用制度の導入等についての普及,啓発活動や,制度の導入前後におけるコンサルタント等を活用した支援事業に対して,政府としても,積極的に協力,支援することが必要である。 本項目については,労働者代表委員から,継続雇用制度の対象となる労働者の基準を就業規則で定めることについては,事業主が一方的かつ恣意的に対象者を選別することを可能とするおそれがあり,その点について懸念があるとの意見があった。また,雇用主代表委員から,経営への影響が大きいこと,年金支給開始年齢までを雇用でつなげることは,社会的なコスト負担を企業に転嫁するものであること,持続的な経営のためには若年層の雇用とのバランスを保つことが必要であること,中小企業の場合,高齢者向けの職域拡大等には制約があることなどから継続雇用制度の一律義務化ではなく,企業の実態に合わせた自主的な取組に委ねるべきとの意見があった。
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