平成25(行コ)80 事件記録閲覧謄写許可処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第322号)

裁判年月日・裁判所
平成25年9月12日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文4,008 文字)

-1-平成25年9月12日判決言渡平成25年(行コ)第80号事件記録閲覧謄写許可処分取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 公正取引委員会が株式会社A(以下「本件申請者」という。)に対し平成23年5月9日付けでした平成○年(判)第○号事件に係る事件記録(以下「本件事件記録」という。)の謄写に応ずる旨の決定(公官審第○。以下「本件決定」という。)のうち査第66号証,第67号証及び第79号証に係る部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,音楽の著作物の著作権に係る管理事業を営む一般社団法人である控訴人が,公正取引委員会から私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)7条1項の規定に基づく排除措置命令(以下「本件排除措置命令」という。)を受けたことから,同法49条6項の規定に基づく審判請求をし,審判手続が進んでいたところ,公正取引委員会において,控訴人の競争事業者である本件申請者から同法70条の15第1項の規定に基づく本件事件記録の謄写の申請を受け,これに応ずる旨の本件決定をした(ただし,同委員会においても個人に関する情報又は事業者の秘密が記載されておりその謄写を拒む「正当な理由」があるとした部分については不開示とされている。)ため,本件事件記録のうち査第66号証,第67号証及び第79号証の開示部分についてはその謄写を拒む「正当な理由」があり,本件決定のうち上記各書証の開示部分に係る部分(以下「本件開示決定」という。)は公-2-正取引委員会がその裁量権の範囲を逸脱してした違法な処分であると主張し,同委員会の所属する国を被告として,本件 件決定のうち上記各書証の開示部分に係る部分(以下「本件開示決定」という。)は公-2-正取引委員会がその裁量権の範囲を逸脱してした違法な処分であると主張し,同委員会の所属する国を被告として,本件開示決定の取消しを求める事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴をした。 2 法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張の要旨は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4(3頁1行目から38頁15行目まで(原判決別紙を含む。))に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件開示決定は適法であって控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,下記2のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1ないし3(38頁17行目から68頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の主張について(1) 控訴人は,本件排除措置命令が本件取消審決によって取り消され(独占禁止法66条3項,70条の2第3項),処分時に遡って本件排除措置命令が存在しなかったという法的効果が生じているから,本件排除措置命令との関係においてはじめて成立する「被害者」という概念は本件では生じる余地がないと主張する。 しかしながら,一般に,法が定めた要件を充足する有効な行政処分がされた後に,その行政処分が前提とした事実関係や法律関係に遡及的に変動が生じたとしても,そのことから直ちにその変動が生じた事実関係や法律関係に従って当然に当該行政処分の効力に変動が生じることにはならないと解すべきである。すなわち,一般に,抗告訴訟において,裁判所は,もとより,行政庁が行政処分をした時を基準時として当該 実関係や法律関係に従って当然に当該行政処分の効力に変動が生じることにはならないと解すべきである。すなわち,一般に,抗告訴訟において,裁判所は,もとより,行政庁が行政処分をした時を基準時として当該行政処分の違法性について-3-判断をすべきものであるし,当該行政処分後に事実関係や法律関係の変動が生じた場合には,その効力が遡及するものであっても,その事実関係や法律関係の変動に応じてたとえば当該行政処分を一部変更する処分をしたり撤回するなど,改めていかなる行政処分をすべきであるかについては,原則として行政庁が第一次的に判断すべきであるから,そのような判断を待つことなしに,事実関係や法律関係の変動に応じて直ちに行政処分の効力もまた変動したものとしてそれを前提として裁判所が判断することは原則として許されないと解すべきである。 そして,本件においては,たしかに本件排除措置命令を取り消す旨の本件取消審決がされたものの,本件取消審決に対してはその取消しを求める訴えが係属中であり,このような段階において,処分行政庁が本件決定の撤回又は取消しを行うのか,あるいは本件決定は適法要件を満たすと判断してこれを維持するのかなどいかなる対応をするかは,行政庁の第一次判断権に委ねられているというべきであって,そのような事情の下で,裁判所が,本件取消審決がされたことにより直ちに本件申請者は独占禁止法70条の15第1項にいう「利害関係人」あるいは「被害者」ではなくなったとして本件決定が違法になったと判断することは,許されないと言わざるを得ない。 (2) 控訴人は,我が国の現行法制度の下で「弁護士・依頼者秘匿特権」が具体的な権利ないし利益として存在し,この具体的な権利ないし利益は公正取引委員会が利害関係人による閲覧又は謄写の申請に応ずることを拒否するこ は,我が国の現行法制度の下で「弁護士・依頼者秘匿特権」が具体的な権利ないし利益として存在し,この具体的な権利ないし利益は公正取引委員会が利害関係人による閲覧又は謄写の申請に応ずることを拒否することができる「正当な理由」となると主張する。そして,控訴人は,「弁護士・依頼者秘匿特権」,すなわち,依頼者と代理人である弁護士との間のコミュニケーションを依頼者にとっての有利・不利を問わず原則として絶対的に保護するという権利ないし利益は,憲法21条2項後段,同22条1項,同31条,同32条,同34条及び37条,並びに同35条により,具体的な権利として保障されている旨主張する。 -4-しかしながら,通信の秘密について定める憲法21条2項後段が,国民に対する一般的な通信の秘密の保障を超えて,弁護士と依頼者との間のコミュニケーションを特別に具体的な権利ないし利益として絶対的に保障していると解すべき理由は見出し難い。同様に,職業選択の自由について定める同22条1項,適正手続の保障について定める同31条,裁判を受ける権利について定める同32条,抑留や拘禁の要件や刑事被告人の権利等について定める同34条及び同37条,令状主義について定める同35条が,それぞれの条項が定める一般的な保障や権利利益等の保護を超えて,特に弁護士と依頼者との間のコミュニケーションを特別に具体的な権利ないし利益として保護していると解することはできない。そして,原判決が詳細に検討しているように,他に,控訴人が主張する「弁護士・依頼者秘匿特権」が我が国の現行法の法制度の下で具体的な権利又は利益として保障されていると解すべき理由は見出し難い。 また,控訴人は,本件開示決定は我が国の現行の法制度の下で認められる「弁護士の職務活動の成果(ワーク・プロダクト)の法理」に反し 利又は利益として保障されていると解すべき理由は見出し難い。 また,控訴人は,本件開示決定は我が国の現行の法制度の下で認められる「弁護士の職務活動の成果(ワーク・プロダクト)の法理」に反し,さらに,文書提出命令について定める民事訴訟法220条4号ニ又はハによって提出を拒否できる文書について,独占禁止法70条の15に基づく事件記録の閲覧又は謄写の請求という方法を使うことで潜脱されることになるのは不合理である旨主張する。 しかしながら,原判決が説示するように,控訴人の主張する「弁護士の職務活動の成果(ワーク・プロダクト)の法理」は我が国の現行の法制度の下で当然に認められている法理であると解すべき根拠は見出し難い。また,独占禁止法70条の15所定の事件記録の閲覧謄写請求権は,審判手続における当事者の防御権行使等のためだけではなく,審判手続に参加し得る者が参加又は意見陳述の要否を検討し,法違反行為の被害者が差止請求訴訟又は損害賠償請求訴訟を提起しあるいは維持するための便宜を図る趣旨で設けら-5-れたものであり(最高裁判所第三小法廷平成15年9月9日判決・集民210号595頁参照),民事訴訟における書証の申出の方法として設けられた文書提出命令の申立てとは制度の趣旨も目的も異なり,申請する主体や認められるべき要件も異なっているのであって,控訴人の主張するようにこれらの認められる範囲が正確に重ならなければならないと解すべき理由はない。 そのほか,控訴人は,公正取引委員会には本件開示請求を拒否すべき「正当な理由」があるとしてるる主張するが,いずれも原判決説示のとおりであって理由がない。 3 以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文 主文 主張するが,いずれも原判決説示のとおりであって理由がない。 3 以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部 裁判長裁判官貝阿彌誠 裁判官定塚誠 裁判官生島弘康は,転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官貝阿彌誠

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