- 1 -主文 原判決主文第2項ないし第5項を取り消す。 被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。 控訴人らと被控訴人との間で生じた訴訟の総費用は被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨主文と同旨。 第2事案の概要 本件は,宮城県の住民を構成員とし,同県の区域内に事務所を有する権利能力のない社団である被控訴人が,平成6年度及び同7年度における宮城県警察本部総務室総務課(以下「総務課」という)の事務連絡又は業務視察を目的。 とする県外出張に係る旅費の支出について,これらの出張は架空のもの又は業務上必要のないものであり,宮城県は上記旅費相当額の損害を被ったとして,(。 「」。)地方自治法平成14年法律第4号による改正前のもの以下法という242条の2第1項4号に基づき,上記旅費を受領した職員等10名に対し,宮城県に代位して損害賠償を求めた事案である。 原審は,捜査関係用務とされた原判決添付別紙1の番号25ないし28,33及び34並びに同別紙2の番号1,2,5,6,26,27,34,35,55及び56記載の各出張(以下「本件各出張」という)以外の出張に係る。 訴えはいずれも不適法として訴えを却下したが,本件各出張に係る訴えは適法と判断した上,本件各出張はいずれも架空の出張であると認定判断し,控訴人ら4名につき,本件各出張に関する旅費相当額の支払を求める限度で被控訴人の請求を認容し,第1審相被告Aに対する被控訴人の請求を棄却した。 ,,原判決に対して控訴人らのみが不服を申し立てたところ差戻前の控訴審は本件各出張に係る旅費の支出につき適法な監査請求の前置がないとして控訴人- 2 -ら敗訴に係る部分の原判決を取り消し,取消しに係る被控訴人の訴えをいずれも却下した。 これに対して被控訴人 控訴審は本件各出張に係る旅費の支出につき適法な監査請求の前置がないとして控訴人- 2 -ら敗訴に係る部分の原判決を取り消し,取消しに係る被控訴人の訴えをいずれも却下した。 これに対して被控訴人が上告受理の申立てをしたところ,上告審は,本件各出張に係る旅費の支出につき適法な監査請求の前置に欠けるところはないとして,差戻前の控訴審判決を破棄し,本案の審理をさせるために本件を当審に差し戻した。 当審においては,適法な監査請求の前置があったことは争われず,本件各出張が架空の出張,いわゆる空(から)出張であるか否かが争われている。 前提となる事実(いずれも当事者間に争いがない)。 (1)被控訴人は,宮城県の住民を構成員とし,同県の区域内に事務所を有する権利能力のない社団である。 (2)宮城県は,平成6年度及び同7年度において,総務課の事務連絡又は業務視察を目的とする県外出張に係る旅費として,原判決添付別紙1,2記載のとおりの支出をした。 これらの出張のうち,本件各出張は,控訴人Bが関係課からの依頼により行った捜査関係用務による出張及び同行者の出張とされている。 (3)控訴人Cは,平成5年3月25日から同7年3月12日まで総務課の課長を務め,原判決添付別紙1の番号25ないし28,33及び34記載の各出張につき旅行命令を発した。 ,,控訴人Dは同月13日から平成9年3月23日まで総務課の課長を務め同別紙2の番号1,2,5,6,26,27,34,35,55及び56記載の各出張につき旅行命令を発した。 (4)控訴人Bは,平成6年3月29日から同11年3月10日まで総務課の課長補佐を務め,原判決添付別紙1の番号25,27及び33並びに同別紙2の番号1,5,26,34及び55の各出張の出張者である。 控訴人Eは,平成2年3月から同7年3月まで 1年3月10日まで総務課の課長補佐を務め,原判決添付別紙1の番号25,27及び33並びに同別紙2の番号1,5,26,34及び55の各出張の出張者である。 控訴人Eは,平成2年3月から同7年3月までの間総務課において勤務し- 3 -(平成6年3月までは秘書係長,同年4月以降は課長補佐,同別紙1の番)号26,28及び34の各出張の出張者である。 (5)被控訴人は,平成14年6月24日,本件各出張等につき,宮城県監査委員に監査請求をしたところ,同監査委員は,同年8月21日,監査請求を棄却した。被控訴人が上記日時に監査請求したことについては正当な理由があった。 被控訴人は,同月30日,本件訴訟を提起した。 争点と争点に関する当事者の主張本件の争点は,本件各出張が架空の出張,いわゆる空出張であったか否かであり,争点についての当事者の主張は,以下のとおりである。 (1)被控訴人の主張控訴人らは,本件各出張は控訴人Bが総務課職員1名を同行して,関係課の依頼に基づき,特定の情報提供者(以下「本件情報提供者」という)か。 ら銃器取引関係の情報提供を受けるために,東京又は千葉に出張したものである旨の主張をするが,以下の事情に照らせば,本件各出張には不自然な点が多く,実際には行われなかった架空の出張というべきである。 ア平成6年度及び同7年度に宮城県警で空出張が行われていた可能性(ア)各都道府県警察の裏金疑惑についての報道等近時,警視庁,北海道警察,静岡県警察,福岡県警察等で,捜査費,捜査報償費,出張旅費等の不正支出が明らかになったり,裏金作りの疑惑が生じている。宮城県警察(以下「宮城県警」という)もその例外。 ではない。 ,,宮城県警の署長や所属長を歴任した元警視が平成16年4月16日新聞社の取材に対し,旅費や捜査報償費等で組織的に裏 惑が生じている。宮城県警察(以下「宮城県警」という)もその例外。 ではない。 ,,宮城県警の署長や所属長を歴任した元警視が平成16年4月16日新聞社の取材に対し,旅費や捜査報償費等で組織的に裏金作りをしていたと証言した。また,これとは別に,宮城県警の元巡査部長が,新聞社の取材に対し,長年,架空領収書を書き続けいていた旨の証言をした。 - 4 -これらのことからすれば,宮城県警においても,空出張による裏金作りがされていたものと考えられる。 (イ)平成9年度以降の総務課職員による出張の減少総務課職員の出張件数は,平成6年度,同7年度の各1月から3月までについては,事務連絡の出張が平成6年度が26件(74万9740円,同7年度が21件(52万2360円,業務視察の出張が平成))6年度は5件(32万6560円,同7年度が12件(59万467)0円)であるのに対し,平成9年度から同12年度以降の各1月から3,(),月までについては事務連絡の出張が平成9年度が3件6500円(),(),同10年度が1件4万1980円同11年度が3件7800円同12年度が1件(2万3780円,業務視察の出張はこの間1件も)行われていない。 ,,このように出張件数が激減したことは実働部分への予算の重点配分管理部門の予算の削減,予算編成上のマイナス・シーリングによる旅費予算の減額等によるものであるとする控訴人らの主張では到底説明できるものではなく,平成9年度以降の出張の激減は,それ以前の平成6年度及び同7年度の総務課の出張旅費の支出が不正であったことを裏付けるものである。 (ウ)旅費受領代理人制度現実を直視すれば,旅費受領代理人制度は,空出張を容易にする制度にほかならない。宮城県知事部局等すべての部署で明らかになった空出 不正であったことを裏付けるものである。 (ウ)旅費受領代理人制度現実を直視すれば,旅費受領代理人制度は,空出張を容易にする制度にほかならない。宮城県知事部局等すべての部署で明らかになった空出張の事例では,この制度が悪用され,もらってもいない出張旅費を受け取ったものとして署名押印がされ,裏金が作られていたのである。だか,,。 らこそこの制度は平成9年度には宮城県全体で廃止されたのである宮城県警においても,同様の方法で裏金作りが行われていたと考えるのが相当かつ合理的である。 - 5 -イ本件各出張が実際に行われたとすることについての疑問点(ア)支出項目総務課の出張に関し「捜査関係用務」という支出項目はなく,本件各出張に係る旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄等には「事務連絡」,と記載されている。控訴人らは,これについて,慣例や通例に基づくものである旨の弁解をするが,一般警察活動費から旅費を支出する場合に旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄等に「事務連絡」と記載した理由については何ら説明できていない。 (イ)出張の態様本件各出張には,総務課の職員1名が控訴人Bに同行したとされているが,捜査を担当している関係課の職員は同行していない。このように捜査を担当している関係課の職員抜きで本件情報提供者と接触することは,捜査の方法として不自然極まりない。仮に捜査関係用務で出張をするのであれば,関係課の職員を必ず同行させて,その者に本件情報提供者に対し必要な質問をさせるはずである。 また,本件各出張に同行したとされる総務課職員は,万が一の事態が生じた場合の連絡要員であるという。しかし,控訴人Bは,本件各出張については特に危険を感じていなかった旨の供述をしており,しかも,同行者の役割は,情報提供者と接触した控訴人Bが約束の時間までに戻 生じた場合の連絡要員であるという。しかし,控訴人Bは,本件各出張については特に危険を感じていなかった旨の供述をしており,しかも,同行者の役割は,情報提供者と接触した控訴人Bが約束の時間までに戻,,らなかったら総務課に連絡をするというものでありこれだけであれば控訴人Bが一定の時間に自ら総務課に連絡をすることにすれば足りたは。 ,,ずであるこのようにみると本件各出張に同行者を付ける必要はなく必要もないのに同行者を付けるのは空出張の典型的なパターンである。 東京と千葉とは電車で1時間程度の距離なのであるから,千葉で本件情報提供者と面談したとしても千葉に宿泊する必要はなく,東京で宿泊しても差し支えないし,新幹線を利用すれば宿泊せずにその日のうちに- 6 -仙台に帰ることがあってもいいはずである。千葉への出張であるから千葉に泊まるというのは空出張のパターンそのものである。 (ウ)本件情報提供者についての控訴人Bの供述控訴人Bは,本件情報提供者について,甲に住んでおり,乙で○○の卸売業を営んでおり,乙に店か事務所があり,身長は×㎝前後,体重は×~×㎏くらい,年齢が×歳代の前半で,本件情報提供者から平成6年10月から同8年2月まで情報を得たが,本件情報提供者についてそれ。 ,,以上は説明できない旨の供述をするしかしこれだけの説明があれば関係者には本件情報提供者がだれであるか特定できるはずであり,それ以上のことは供述できないとする合理的な理由が見出し難い。 控訴人Bは,本件情報提供者に旧知の友にでも会うように接していたというにもかかわらず,その出身地や,本件情報提供者が取り扱っていた○○が具体的にどのようなものであるかについては忘れたと供述し,本件情報提供者の活動範囲,本件情報提供者の営業が会社か個人か,さらには本件情報提供者とし その出身地や,本件情報提供者が取り扱っていた○○が具体的にどのようなものであるかについては忘れたと供述し,本件情報提供者の活動範囲,本件情報提供者の営業が会社か個人か,さらには本件情報提供者とした世間話の内容についても覚えていないと供述する。しかし,これらすべてについて一切記憶がないというのは余りにも不自然であり,時間の経過のみでは説明できない。 控訴人Bは,本件情報提供者と連絡が取れなくなってから本件情報提供者の身に危険が及んだのではないかと心配したが,関係課で調査をしたが分からなかったと聞いたと供述するのみで,控訴人Bとしては特に行方を捜すなどしていない。しかし,控訴人Bは,本件情報提供者と馬が合い,旧知の友のように親しくしており,また,本件情報提供者から情報提供を受けるに当たり本件情報提供者のことは絶対守ると言っていたというのであれば,このような控訴人Bの態度は余りに冷淡なものであり,不自然である。 控訴人Bは,本件情報提供者から提供を受けた情報に基づいて立件さ- 7 -れたかどうかを関係課に確認をしていない旨の供述をする。しかし,控訴人Bとしては,自らが情報提供を受けた事件の帰趨については当然関心があるはずであり,関係課に確認をしないとは考え難い。 控訴人Bとしては,本件情報提供者が仕事で仙台に来た際に宮城県警に控訴人Bを訪ねてきたことがあったのであるから,最初に千葉で本件情報提供者に会った際,今後仙台方面に来る予定の有無を聞くのが通常であるが,控訴人Bはこれを聞いていない旨の供述をする。また,本件情報提供者は銃器取引に関係する情報を提供したとされているところ,この情報提供は,本件情報提供者の身辺に重大な危険をもたらすことが予想されるのであるから,本件情報提供者としては,なぜこのような情報を警察に提供する気になったのか, 報を提供したとされているところ,この情報提供は,本件情報提供者の身辺に重大な危険をもたらすことが予想されるのであるから,本件情報提供者としては,なぜこのような情報を警察に提供する気になったのか,そのことに不安を感じているか等について控訴人Bに述べたはずであるが,控訴人Bは,これらのことを聞いていない旨の供述をする。さらに,控訴人Bは,本件情報提供者と8回にわたり面談していたのであるから,本件情報提供者が控訴人Bを信頼するようになったきっかけの出来事についての話が本件情報提供者の口から出ていたものと考えられるが,控訴人Bはこれについて語ることができないでいる。 また,控訴人Bが東京や千葉に出向いて本件情報提供者と繰り返し会う中で,本件情報提供者から控訴人Bに対し直接担当課の者に話をしてもよいという話があったり,控訴人Bから担当課の職員を同行させてもよいかと打診することがあったりしてもおかしくない。そのような話や打診がなかったとすれば,それも不思議なことである。 (エ)本件情報提供者に関する情報の管理控訴人Bは,本件情報提供者の連絡先や本件情報提供者からもたらされた情報について関係課に問い合わせたところ,ないという回答があった旨の供述をする。しかし,本件情報提供者からもたらされた情報の信- 8 -憑性は,本件情報提供者がどのような者であるか,銃器取引をしている組織とどのような関係にあるのかといった事情により判断されるのであるから,関係課は,これらの事情についての裏付け捜査をしているはずであり,このような情報は,事件記録とは切り離された形で保管されているはずである。したがって,控訴人Bの手元や関係課に本件情報提供者の自宅住所等を特定する情報が残っておらず,宮城県警側から連絡を取ろうとしてもその方法がないということは考えられない。 保管されているはずである。したがって,控訴人Bの手元や関係課に本件情報提供者の自宅住所等を特定する情報が残っておらず,宮城県警側から連絡を取ろうとしてもその方法がないということは考えられない。 関係課に本件情報提供者に関する情報がないとすれば,それは,控訴人Bが本件情報提供者と会った事実がなく,そもそも関係課に本件情報提供者に関する情報が何もなかったとしか考えられない。 (オ)本件各出張に関する記憶控訴人Bは,本件各出張のうち用務先が千葉市である3回の出張でどこのホテルに泊まったか,その都度同じホテルに泊まったかどうかについて記憶にない旨の供述をする。しかし,千葉に泊まることは前もって決まっていたのであるから,行く前に泊まるホテルを予約するのが通常であり,2回目以降の出張に当たっては,1回目に宿泊したホテルに不都合がなければ同じホテルを予約するものと考えられる。仮に現地に着いてからホテルを探したとすれば,どのホテルにするかについて,控訴人Bと同行者の2名であれこれ相談しながら決めたのだろうから,その過程を思い出すことは可能なはずである。控訴人Bが宿泊したホテルを特定できないのは,本件各主張が空出張であり,千葉に泊まったことがないからである。 本件情報提供者との接触場所についても同じことがいえる。千葉に着いてから控訴人Bの側で接触場所の喫茶店を探したのであれば,出張した2名であれこれ相談しながら決めたに違いなく,また,控訴人Bの同行者は,控訴人Bの身の保全という目的で同行したのであるから,接触- 9 -場所の喫茶店がどこであるかを控訴人Bから聞き,メモをするなどしていたはずである。それにもかかわらず,控訴人Bと同行者のいずれもがどの喫茶店で面会したのか,毎回同じ喫茶店で面会したのかを思い出せないというのはあり得ない。東京での接 Bから聞き,メモをするなどしていたはずである。それにもかかわらず,控訴人Bと同行者のいずれもがどの喫茶店で面会したのか,毎回同じ喫茶店で面会したのかを思い出せないというのはあり得ない。東京での接触場所についても同様の疑問がある。 さらに,控訴人Bは,本件各出張に関する記載がある自分の手帳を廃棄した旨の供述をする。しかし,控訴人Bの手帳には,本件各出張に限らずほかの出張についても,出張先までの交通手段や出張先での予定等が記載されていたはずであり,このような手帳を廃棄することはあり得ない。 (2)控訴人らの主張ア本件各出張が架空の出張であることは否認する。本件各出張は,関係課からの協力依頼に応じて控訴人Bが本件情報提供者に接触するためにした。 ,。 ものである被控訴人の主張は以下に述べるようにいずれも理由がないイ平成6年度及び同7年度の宮城県警の空出張の疑惑について(ア)各都道府県における裏金疑惑についての報道等他の都道府県警察で不正経理があるとの報道がされているとしても,これらの報道がどのような根拠に基づいてされたものか必ずしも明らかではないのであり,これらの報道内容をすべて真実とみるのは無理がある。また,仮に他の都道府県警察に不正経理があったとしても,宮城県警で不正経理がされていることの根拠になるものではない。 宮城県警の元職員による告発報道については,これが匿名のものであ,,るため取材に応じた人物が警察に対しどのような感情を持っているか取材に応じた動機は何か,告発内容のどこまでが体験事実でどこからが推測なのか等の報道内容の信用性を評価するための事実が明らかではない。また,報道内容は,ほとんどが警察の不適正な会計経理問題に関す- 10 -る従前の報道内容に類似したもので,具体性がなく,警察での勤務経験がないもの の信用性を評価するための事実が明らかではない。また,報道内容は,ほとんどが警察の不適正な会計経理問題に関す- 10 -る従前の報道内容に類似したもので,具体性がなく,警察での勤務経験がないものであっても,過去の報道に強い関心を持っている者であればこのような発表をすることは不可能ではないという程度のものである。 したがって,これらの告発報道記事にさしたる証拠価値を認めることはできない。 (イ)平成9年度以降の総務課職員による出張の減少総務課職員による事務連絡や業務視察の出張は,平成9年度以降減少しているが,これは,県財政当局の歳出抑制の予算編成方針の下,一般警察活動費の旅費額が事実上減少したことや,宮城県警全体で現場重視の予算執行態勢を構築したことによるものであり,従前行われていた総務課の出張が架空のものであったことを裏付けるものではない。 (ウ)旅費受領代理人制度本件各出張については,旅費の受取先が旅費受領代理人であり,旅費が支出されても直ちに出張者個人に支給されるものではなく,出張者の旅費は,当該所属の旅費受領代理人(総務課においては庶務担当補佐)の旅費受領の専用口座に振り込まれ,旅費受領代理人がこれを現金化して出張者に渡すという方法によっていた。この「旅費受領代理人制度」は,平成6年度及び同7年度当時,宮城県のすべての機関がこの制度によって旅費の支給をしていたものである(宮城県全体の制度の変更により,平成9年度以降は,旅費は出張者個人の口座に振り込むこととされた。そして,本件各出張については,当時の総務課における取扱い。)に従い,旅行命令(依頼)票の受領印欄に出張者本人が押印し,同欄下部に出張者本人が姓を自署しているのであり,本件各出張に係る旅費が旅費受領代理人を経由して出張者本人に交付されたことが明らかである。 従い,旅行命令(依頼)票の受領印欄に出張者本人が押印し,同欄下部に出張者本人が姓を自署しているのであり,本件各出張に係る旅費が旅費受領代理人を経由して出張者本人に交付されたことが明らかである。 ウ被控訴人が指摘する疑問点について- 11 -(ア)支出項目について本件各出張の旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄及び復命書の「用務」欄には「事務連絡」と記載されている。 ,そもそも,旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄は,県の財務会計電算処理システムに基づきあらかじめ定められた旅行内容コードの中から当該予算を支出する予算の「目」に応じて記載するものであり,捜査関係用務の出張旅費を刑事警察費から支出する場合であれば,旅行内容欄に「刑事事件捜査」又は「保安事件捜査」と記載するが,当該捜査関係用務の出張旅費を一般警察活動費から支出する場合には,総務課においては,慣例的に,一般的に総務課で通常行われている業務に係る旅行内容コードである「事務連絡」を記載していたものである。したがって,本件各出張の旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄に「事務連絡」と記載されていたからといって,総務課で捜査目的の出張がおよそ行われていなかったということはできないし,このような記載があることは本件各出張が架空のものであることを裏付けるものではない。 (イ)出張の態様について総務課は,捜査を行うことを日常業務としている部署ではないが,捜査本部体制が採られたり,上司の指示,命令があった場合には,総務課の職員であっても捜査に従事していたのであり,総務課の職員が捜査関係用務について出張することは異例でもなければ不自然でもない。 本件各出張は,控訴人Bが同人を信頼する本件情報提供者に会って情報を収集するという目的で行われたものであり,相手方との信頼関係の点で余人に代え難い いて出張することは異例でもなければ不自然でもない。 本件各出張は,控訴人Bが同人を信頼する本件情報提供者に会って情報を収集するという目的で行われたものであり,相手方との信頼関係の点で余人に代え難い場合であり,このような場合には,総務課の職員であっても,上司の命による捜査関係用務に従事することは当然のことである。 控訴人Bが関係課の職員の同行を断ったのは,控訴人Bが本件情報提- 12 -供者から控訴人Bとしか会わないとの条件を付けられ,これを承諾して本件情報提供者に協力を求めたという経緯があることや控訴人B自身は本件情報提供者と単独で面会することに危険を感じていなかったことによるものである。それにもかかわらず控訴人Bが総務課の職員1名と共に出張することになったのは,平成6年度当時の総務課の課長であった控訴人Cが,万が一の場合を考え,出張先における不測の事態に備えるため,連絡員1名の同行を命じたことによるものである。したがって,控訴人Bが関係課の職員の同行を断りながら,総務課の職員を同行したことに不自然な点はない。 また,控訴人Cや控訴人Dは,部下の安全を配慮すべき義務があるのであるから,控訴人Cや控訴人Dが総務課の職員1名の同行を命じたことが不必要なものであったということもできない。 (ウ)本件情報提供者についての控訴人Bの供述について銃器犯罪等の組織犯罪に関連する捜査協力者については,その存在が公の場において明らかにされれば,犯罪組織から報復を受ける危険性が高いことから,当該協力者の存在自体を秘匿する必要性が極めて強いものとなっている。さらに,控訴人Bには,地方公務員法34条に定める守秘義務のほか,刑事訴訟法196条,犯罪捜査規範9条,10条,11条等の法令に基づく守秘義務や捜査協力者の安全を守る義務等がある。控訴人Bは,本件 さらに,控訴人Bには,地方公務員法34条に定める守秘義務のほか,刑事訴訟法196条,犯罪捜査規範9条,10条,11条等の法令に基づく守秘義務や捜査協力者の安全を守る義務等がある。控訴人Bは,本件情報提供者に関し,本件情報提供者が特定されない限度で具体的な供述をしているのであり,その供述の信用性は高いものである。また,平成6年度及び同7年度当時,宮城県警において銃器犯罪の捜査を行っていた部署は,生活保安課,暴力団対策課,公安課,外事課等複数あったのであり,本件情報提供者から捜査情報の提供を受けた事件を担当していたのがどの課であるかを明らかにすると,どのような組織がそれに関与していたのかが明らかになり,そのことから,本- 13 -件情報提供者がだれであるかが判明するおそれがあるので,これを具体的に開示することはできない。 控訴人Bは,本件情報提供者が特定されない限度において,本件情報提供者との接触の事実,本件情報提供者の存在の事実及び本件情報提供者から得た情報内容について,最大限の供述をしているのである。 (エ)本件情報提供者に関する情報の管理について本件情報提供者からの情報提供に関し控訴人Bが作成した報告書やメモは,各出張後,関係課に提出しているところ,これらの文書は関係課には既にないとのことである。 これらの文書は,情報内容を的確かつ迅速に伝達することでその目的を達することになるものであるから,本件各出張から10年以上が経過している以上,これら文書が既に存在しないのはむしろ当然のことである。 (オ)本件各出張に関する記憶について本件各出張がされてから10年以上が経過しているのであるから,控訴人Bや本件各出張に同行したことがある控訴人Eにおいて本件各出張についての記憶にあいまいになっている部分があっても当然である。本件各出張 各出張がされてから10年以上が経過しているのであるから,控訴人Bや本件各出張に同行したことがある控訴人Eにおいて本件各出張についての記憶にあいまいになっている部分があっても当然である。本件各出張で千葉市に行った際宿泊したホテルについては,控訴人Bにとっては,知らない町の知らないビジネスホテルに宿泊したにすぎなかったのであり,また宿泊先のホテルは捜査関係用務の本質的な事項ではないのであるから,その場所や名前について記憶が残っていないとしても当然である。 なお,控訴人Bは,もともと警察官なのであるから,捜査関係用務での出張がとりたてて特別なものであったわけではない。また,控訴人Bは,平成6年度,同7年度の2年間で,事務連絡・業務視察として計31件,随行として計7件の県外出張をしていたのであり,出張先での宿- 14 -泊も珍しいことではなかった。 第3当裁判所の判断 本件に関する事実関係について(,,,,,前記の前提となる事実に証拠甲1 11の3012の26及び817,乙13,14,17,18,20,21ないし26,41ないし43,,,,,,(,)) 証人F第1審相被告G控訴人C控訴人E控訴人B原審当審及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件に関する事実関係につき,以下の事実が認められる。 (1)本件各出張ア宮城県は,平成6年度及び同7年度において,総務課の事務連絡又は業務視察を目的とする県外出張に係る旅費として,原判決添付別紙1,2記載のとおりの支出をした。 そのうちの本件各出張は,控訴人Bが関係課から依頼され捜査関係用務として行ったとされる平成6年10月27日から同月28日の出張(原判決添付別紙1の番号25,26の出張。以下「本件出張1」という,。)同年11月9日から同 訴人Bが関係課から依頼され捜査関係用務として行ったとされる平成6年10月27日から同月28日の出張(原判決添付別紙1の番号25,26の出張。以下「本件出張1」という,。)同年11月9日から同月10日の出張(原判決添付別紙1の番号27,28の出張,以下「本件出張2」という,同年12月20日から同月2。)2日の出張(原判決添付別紙1の番号33,34の出張。以下「本件出張3」という,平成7年4月11日から同月12日までの出張(原判決。)添付別紙2の番号1,2の出張。以下「本件出張4」という,同年6。)月13日から同月14日の出張(原判決添付別紙2の番号5,6の出張。 以下「本件出張5」という,同年10月26日から同月27日の出張。)(,。 「」。),原判決添付別紙2の番号2627の出張以下本件出張6という同年12月21日から同月22日の出張(原判決添付別紙2の番号34,35の出張。以下「本件出張7」という)及び平成8年2月20日から。 同月21日の出張(原判決添付別紙2の番号55,56の出張。以下「本- 15 -件出張8」という)の合計8回の出張(同行者1名がいるため出張者の。 延べ人数は16名)である。 なお,本件各出張の旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄及び復命書の「用務」欄にはいずれも「事務連絡」と記載されている。 イ控訴人Cは,平成5年3月25日から同7年3月12日まで総務課の課長を務め,本件出張1ないし3につき旅行命令を発した。 控訴人Dは,同年3月13日から平成9年3月23日まで総務課の課長を務め,本件出張4ないし8につき旅行命令を発した。 控訴人Bは,平成6年3月29日から同11年3月10日まで総務課の課長補佐を務め,本件出張1ないし8を行ったとされている。 控訴人Eは,平成2年3月から同7年3月 張4ないし8につき旅行命令を発した。 控訴人Bは,平成6年3月29日から同11年3月10日まで総務課の課長補佐を務め,本件出張1ないし8を行ったとされている。 控訴人Eは,平成2年3月から同7年3月までの間総務課において勤務し(平成6年3月までは秘書係長,同年4月以降は課長補佐,本件出張)1ないし3の控訴人Bの出張に同行したとされている。 証人Fは,平成6年3月から同15年3月までの間総務課に所属した事,,。 務吏員であり本件出張45の控訴人Bの出張に同行したとされているまた,本件出張6ないし8の控訴人Bの出張に同行したのも総務課所属の事務吏員又は技術吏員とされている。 (2)総務課の業務,構成などア総務課の所掌事務は,組織規則上,機密に関すること,公印の管守に関,,,すること公安委員会の庶務に関すること県議会との連絡に関すること公文書の保管に関すること,警察職員の応援要請及び派遣に関することとされており,実際の主たる業務は,公安委員会の庶務,県議会との連絡調整,公文書の管理,公文書の集配及び印刷,県警本部長の秘書であった。 平成6年度の総務課には,課長1名,管理官1名,課長補佐3名,庶務係2名,秘書係3名,文書逓送係2名,浄書印刷係3名の合計15名が所属していた。そのうち警察官は,課長(警視,管理官(警視,課長補))- 16 -()(),,佐1名警部及び秘書係主任1名巡査部長の4名でありその他は事務吏員又は技術吏員であった。なお,秘書係主任(巡査部長)は,本部長車両運転等の秘書業務等を担当していた。 管理官は,課長に次ぐ地位であり,総務課の人事及び業務の全般を管理していた。 イ控訴人Bは,本件各出張当時,宮城県警の警部であり,総務課の秘書担当の課長補佐として,県議会との連絡業務,公安委員会業 管理官は,課長に次ぐ地位であり,総務課の人事及び業務の全般を管理していた。 イ控訴人Bは,本件各出張当時,宮城県警の警部であり,総務課の秘書担当の課長補佐として,県議会との連絡業務,公安委員会業務,秘書業務等を担当しており,県議会の連絡業務としては,県議会担当の課長補佐として,県議会の定例会又は委員会等に伴う議員の調査,質問,要望等についての担当部署との連絡調整,議会事務局との連絡調整を担当していた。 ウ控訴人Eは,宮城県警の事務吏員であるが,平成6年4月から同7年3月までの間,総務課の文書管理担当の課長補佐として,調査研究・指導業務,文書の整理・保管業務,秘密文書関係業務,浄書印刷関係業務,公安委員会・県議会関連業務等を担当していた。 なお,議会関係業務は,控訴人Bと控訴人Eのいずれもが課長補佐として担当していたが,主として担当していたのは控訴人Bであった。 エ総務課職員の出張は,上から課長命令でされることが多かったが,職員側から出張伺いを出して課長の最終決裁を受けるという場合もあった。この出張伺いは,実際には事前に職員が管理官に相談し,管理官が認めたものについてされており,最終決裁権者である課長の決裁が下りないということはなかった。 (3)本件訴訟提起までの経過ア被控訴人は,平成8年6月24日,宮城県の情報公開条例に基づき,宮城県知事に対し,平成6年度及び同7年度における総務課の職員による出張に関する一切の資料等の開示を求める請求をしたが,当該開示請求に係る文書は条例上の対象機関ではない宮城県警本部が保有する文書であった- 17 -ため,宮城県知事によって,条例に規定する実施機関である知事が管理する公文書ではないことなどを理由に当該請求を不受理とする処分がされた。 この処分に対し,被控訴人は,取消請求訴訟を提起したとこ -ため,宮城県知事によって,条例に規定する実施機関である知事が管理する公文書ではないことなどを理由に当該請求を不受理とする処分がされた。 この処分に対し,被控訴人は,取消請求訴訟を提起したところ,その控訴審で,上記不受理処分を取り消す旨の判決がされ,上記判決は,平成12年3月31日の経過により確定した。 イ上記判決の確定を受けて,宮城県警は,開示請求の対象となる文書の特定や開示の可否の判断のために,平成6年度及び同7年度当時の総務課職員から出張用務等についての聴き取りなどの調査をし,平成12年5月31日,平成6年度及び同7年度における総務課職員の出張に係る支出負担行為兼支出命令決議書,旅行命令(依頼)票,復命書等を開示した(以下「第1次開示」という。 。)この第1次開示では,本件各出張以外の出張に関しては旅行期間,目的地,用務等に関する情報が記録された部分を含めて主要な部分が開示されたが,本件各出張に関しては,支出負担行為兼支出命令決議書につき支出負担行為日,支出命令日,支払日,旅費額等が,旅行命令(依頼)票につき旅行命令日,旅行者氏名,旅行期間,旅行内容,目的地,旅費の支給額及び受領月日等が,復命書につき作成日付,出張者の職及び氏名,用務,用務先,旅行期間等が,それぞれ墨塗りされて開示されなかった。本件各出張が他の出張と異なる扱いをされたのは,調査において,本件各出張が捜査関係用務とされていたためであり,不開示の理由として,開示をすることにより,犯罪の予防又は捜査,人の生命,身体又は財産の保護その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがあると認められるとの理由が付された。 そのため,被控訴人は,一部を不開示とした第1次開示に係る決定を不服として異議申立てを行った。 - 18 -ウ被控訴人は,平成12年,控訴人 が生ずるおそれがあると認められるとの理由が付された。 そのため,被控訴人は,一部を不開示とした第1次開示に係る決定を不服として異議申立てを行った。 - 18 -ウ被控訴人は,平成12年,控訴人C,控訴人D及び第1審相被告Aを被告として,平成6年度及び同7年度の総務課職員の出張のうち,原判決添付別紙1の番号39,40,43ないし49,54,55,同別紙2の番号40ないし48,53,54,57ないし63の各出張について,出張旅費相当額149万円余りの返還を求める住民訴訟を提起した(仙台地方裁判所平成▲年(行ウ)第▲号。以下「第1次訴訟」という。 。)被控訴人が平成6年度及び同7年度の総務課職員の出張のうちこれらの出張について第1次訴訟を提起したのは,特に空出張又はムダ出張ではないかとの疑いが強いものと考えたことによる。なお,上記の出張はいずれも1月から3月のいわゆる会計年度末に行われた出張であった。 第1次訴訟は,平成14年5月7日,被告らの認諾により終了した。 エ一方,宮城県知事は,第1次開示に対する被控訴人の異議申立てを受けて,第1次開示に係る決定を一部変更する決定をし,平成14年5月24日,本件各出張に係る事項中,第1次開示で開示されなかった事項のうち警部補及び警部補相当職以下の職にある者の氏名等を除くすべての事項につき開示した。 この情報開示に基づき,被控訴人は,同年6月24日,監査委員に対して監査請求を行い,監査委員からの請求棄却の通知(甲2)を受けて,本件訴訟を提起した。 争点について(1)はじめに本件においては,控訴人らがその支出に関与し,捜査関係用務とされた本件各出張が実際に行われたものか,それとも架空の出張にすぎないものかが争われている。 総務課の職員がその所掌事務ではない捜査関係用務で出張することがあり 人らがその支出に関与し,捜査関係用務とされた本件各出張が実際に行われたものか,それとも架空の出張にすぎないものかが争われている。 総務課の職員がその所掌事務ではない捜査関係用務で出張することがあり得るのかとの疑問が生ずるのは自然であるところ,控訴人らは,関係課から- 19 -要請されて総務課の職員が応援に出ることはあり得ることであり,本件各出張は,控訴人Bが関係課からの依頼を受け控訴人Bと関係があった本件情報提供者から銃器取引に関する捜査情報を収集するために真実行われたものであると主張している。 そして,控訴人らの主張するとおり,仮に真実銃器取引に関する捜査情報を収集する目的で本件各出張が行われたとすれば,銃器犯罪の多くは組織犯罪であるから,情報提供者に関する情報は,単に刑事訴訟法,犯罪捜査規範等の法令に基づき捜査上の秘密を守る義務があるというだけではなく,情報提供者の安全を確保するためにも,厳重に秘匿されなければならないという問題がある。本件において,本件各出張が真実行われた出張か,架空の出張かを判断するに当たっては,上記の問題を念頭に置いておく必要がある。 (2)控訴人Bらの供述内容本件各出張に関しては,本件情報提供者と会って銃器に関する情報を聞いたとする控訴人Bの供述,控訴人Bに対して旅行命令を発したとする控訴人Cの供述,控訴人Bの本件各出張に同行したとする控訴人E,証人Fの各供述がある(以下,これら4名の供述を「控訴人Bらの供述」ともいう。 。)そこで,まずこれらの各供述の内容についてみることとする。 ア控訴人Bの供述控訴人Bの供述(原審及び当審における供述のほか,控訴人Bの陳述書,,。 。)である乙第12号証第38号証第54号証の記載を含む以下同じは,概要,以下のようなものである。すなわち,控訴人Bは, Bの供述(原審及び当審における供述のほか,控訴人Bの陳述書,,。 。)である乙第12号証第38号証第54号証の記載を含む以下同じは,概要,以下のようなものである。すなわち,控訴人Bは,平成2年の秋ころ,塩釜警察署の外勤課長だった当時,同署の署員と交通取締りなどに関してトラブルとなった本件情報提供者が抗議のために塩釜警察署を訪れた際,当直の責任者として本件情報提供者に対応し,当該トラブルを処理したことで本件情報提供者と知り合った。本件情報提供者は,平成3年春ころ,塩釜警察署に控訴人Bを訪ねてきたが,その後も仕事で宮城県内- 20 -に来たなどと言っては控訴人Bのところに時々立ち寄るようになり,控訴人Bが平成4年3月に東北管区警察局に異動した後も,控訴人Bの異動を聞いてきたと言って控訴人Bを訪ねてきた。控訴人Bは,本件情報提供者になぜそれまでして控訴人Bを訪ねてくるのか聞いたところ,本件情報提供者は,控訴人Bと馬が合うなどと言った。本件情報提供者は,控訴人Bを訪ねてきては世間話などをしていたが,このころから,世間話として銃器に関する話を口にするようになった。本件情報提供者は,控訴人Bが平成6年3月に総務課に異動して間もなく宮城県警本部に控訴人Bを訪ねてきたが,このとき初めて宮城県内の銃器の話をした。控訴人Bは,宮城県内の銃器取引に関係するものであったことから,本件情報提供者から詳しく話を聞き,これを関係課の警察官に参考情報として伝えたところ,同年4月上旬ころ,当時総務課の課長であった控訴人Cから,関係課から本件情報提供者からの情報収集について協力依頼があったので,銃器に関する情報を収集するようにと指示された。控訴人Bは,その後本件情報提供者が訪ねてきた際,本件情報提供者に捜査情報の提供を依頼したところ,本件情報提供者は 報収集について協力依頼があったので,銃器に関する情報を収集するようにと指示された。控訴人Bは,その後本件情報提供者が訪ねてきた際,本件情報提供者に捜査情報の提供を依頼したところ,本件情報提供者は,自分の身に危険が及ぶからなどと言って情報提供に難色を示したが,控訴人Bの求めに応じて携帯電話の番号を教えてくれた。その後,本件情報提供者の訪問が途絶えたため,控訴人Bが本件情報提供者の携帯電話に電話を架けたところ,本件情報提供者は仕事が忙しいのでしばらく仙台に行けないとのことであり,その後しばらくして,本件情報提供者から仙台に行く用件がなくなったので,こちらに来られないかとの連絡があった。そのため,控訴人Bは,東京方面に出張して本件情報提供者から捜査情報の提供を受けようと考え,本件出張1を行い,その際,同年3月に本件情報提供者から聞いた話を詳しく確認した。控訴人Bは,本件情報提供者と会うことについて身の危険は感じず,同行者は必要ないと思ったが,総務課の課長であった被控訴人Cから何かあったら困るので同行- 21 -者を連れていけと言われたため,毎回,総務課の職員1名と出張した。また,本件情報提供者が控訴人B以外の者とは会わないと言ったため,同行者を本件情報提供者に引き合わせることはしなかった。控訴人Bは,本件情報提供者に,捜査情報の提供に応じるようになった理由について特に確認していないが,本件情報提供者が正義感から情報提供をするようになったか,あるいは,控訴人Bが情報を欲しがっている気持ちを察してくれたものと思っている。後に新聞報道で本件情報提供者から得た情報が捜査の役に立ったことが分かったが,その報道がいつされたかは本件情報提供者を守るために言うことはできない。 イ控訴人Cの供述本件出張1ないし3の旅行命令を発した控訴人Cの供述(当 者から得た情報が捜査の役に立ったことが分かったが,その報道がいつされたかは本件情報提供者を守るために言うことはできない。 イ控訴人Cの供述本件出張1ないし3の旅行命令を発した控訴人Cの供述(当審における供述のほか,第1次訴訟の本人尋問調書である乙第21号証,控訴人Cの陳述書である第37号証の各記載を含む。以下同じ)は,概要,以下の。 とおりである。すなわち,ある日,県警本部の関係課(刑事部,公安部,生活安全部のいずれれか)の課長が控訴人Cのところに来て「お宅のB,補佐が銃器に関する良い情報源を持っている。担当外で申し訳ないが,詳しい内容が欲しいので協力してもらいたい」と依頼してきた。控訴人C。 は,控訴人Bは総務課に来る前の所属は管区警察局であり,一線の捜査活動から離れていたのに重要な情報を持つ協力者がいたことに少し驚いた。 当時は,全国の警察が銃器の取締りに一丸となって取り組んでいた時期でもあったため,控訴人Cは,関係課からの依頼を受けると控訴人Bに関係課に協力するよう指示した。控訴人Bは,本件情報提供者との接触に何ら不安を感じていないようであり,関係課からの同行を断ったとのことであったが,不測の事態に備え,総務課の職員(事務吏員又は技術吏員)1名を同行させ,連絡役をさせるよう指示した。警察官を同行させなかったのは,当時,総務課には警察官が4名しかおらず,余裕がなかったためであ- 22 -る。控訴人Bは,出張から帰ると帰った旨の報告はしたが,収集した情報の話はせず,控訴人Cも秘密保持の観点からあえて聞かなかった。控訴人Cは,平成7年3月に総務課から他の部署へ異動したが,異動するに当たり,後任の控訴人Dに対しこれまで控訴人Bが関係課の要請により捜査関係用務で出張していた経緯を説明し,今後も関係課には協力する必要がある旨の申 年3月に総務課から他の部署へ異動したが,異動するに当たり,後任の控訴人Dに対しこれまで控訴人Bが関係課の要請により捜査関係用務で出張していた経緯を説明し,今後も関係課には協力する必要がある旨の申し送りをした。 ウ控訴人Eの供述本件出張1ないし3につき,控訴人Bに同行したとされる控訴人Eの供述(原審における供述のほか,控訴Eの陳述書である乙第18号証,第36号証の各記載を含む。以下同じ)は,概要,以下のとおりである。す。 なわち,控訴人Eは,課長であった控訴人Cから控訴人Bの本件出張1ないし3に同行するよう命じられた。その内容は,控訴人Bが出張先で人に会うので,もし控訴人Bが予定の時間に戻ってこなかった場合には総務課に連絡するようにというものであった。当時は,捜査関係用務というはっきりした認識は持っていなかったが,指示の内容から控訴人Bが協力者に会うものと思った。控訴人Bに聞こうとしたが,控訴人Bは聞かなくてよ,。 ,いと言ったためそれ以上は聞けなかった控訴人Bが人と会ったときは会う場所の近くのコンビニで本を読んだり,喫茶店に入ったりして時間を。 ,,つぶした3回の出張ではいずれも予定の時間に控訴人Bが戻ったので。 ,総務課に連絡するようなことはなかった出張で2泊したときがあったがそのときは控訴人Bが人と会ったのは1日目だけであり,2日目は,控訴人Eは控訴人Bとは別に東京都内を歩き回ったような記憶がある。 エ証人Fの供述控訴人Bに同行して出張したとする証人Fの供述(原審における供述の,。 。),ほか証人Fの陳述書である乙第20号証の記載を含む以下同じは概要,以下のとおりである。すなわち,証人Fは,国鉄を退職し,昭和6- 23 -2年4月,宮城県警の事務吏員に採用されたが,平成6年3月から総務課に所属する 乙第20号証の記載を含む以下同じは概要,以下のとおりである。すなわち,証人Fは,国鉄を退職し,昭和6- 23 -2年4月,宮城県警の事務吏員に採用されたが,平成6年3月から総務課に所属するようになった。総務課に勤務するようになって,他の職員の出張に随行するという形でかなり多くの出張をした。これは課長ができるだけ多く経験させようと配慮してくれたほか,総務課内の地位が低かったため「鞄持ち」のような形で随行させやすかったためではないかと思っている。課長から連絡要員として控訴人Bの出張に同行するよう命じられ,千葉へ2回出張した。控訴人Bに出張の内容を聞いたが,人と会うとしか教。 ,えられなかったので捜査関係用務であったとは知らなかった出張先では,。 控訴人Bが人と会う場所を確認し近くのコンビニなどで時間をつぶした約束の場所に時間どおりに戻ってこないときは総務課の方に電話連絡することになっていたが,そのような事態にはならなかった。控訴人Bの出張が捜査関係用務であると知ったのは,平成14年7月の監査委員の監査があったときである。 (3)控訴人Bらの供述の検討控訴人Bらの供述は上記(2)のとおりであるところ,控訴人Bらは,いず,,れも被控訴人から架空の出張と疑われている出張に関わった者であるからそのまま信用するわけにはいかず,また,例えば出張先の宿泊記録や出張のための乗車券の領収書など,控訴人Bらの上記供述を裏付ける客観的な証拠はない。 しかしながら,当裁判所は,控訴人Bらの上記供述は信用し得るものと考える。その理由は,以下のとおりである。 ア前記1で認定したとおり,被控訴人は,宮城県知事に対し,平成6年度及び同7年度における総務課の職員による出張に関する一切の資料等の開示を求める請求をしたところ,宮城県知事によって不受理とす る。 ア前記1で認定したとおり,被控訴人は,宮城県知事に対し,平成6年度及び同7年度における総務課の職員による出張に関する一切の資料等の開示を求める請求をしたところ,宮城県知事によって不受理とする処分がされたが,この不受理処分の取消請求訴訟において,不受理を違法とする判決が平成12年3月に確定し,これを受けて,宮城県警は,開示請求に係- 24 -る文書の特定や開示の可否の判断のための聴き取りなどによる調査を行い,その結果,同年5月31日,平成6年度及び同7年度における総務課職員の出張に係る支出負担行為兼支出命令決議書,旅行命令(依頼)票,復命書等の第1次開示がされたのであるが,本件各出張は,宮城県警による調査の際,捜査関係用務とされたため,他の出張と異なり,支出負担行為兼支出命令決議書につき支出負担行為日,支出命令日,支払日,旅費額等が,旅行命令(依頼)票につき旅行命令日,旅行者氏名,旅行期間,旅,,,,行内容目的地旅費の支給額及び受領月日等が復命書につき作成日付出張者の職及び氏名,用務,用務先,旅行期間等が,それぞれ墨塗りされて開示されなかったのである。 このように,本件各出張は,開示をすべきか否かを調査した時点で既に捜査関係用務とされ,そのため一部を不開示とされたのであるが,仮に被控訴人が主張するように,本件各出張が裏金作りのための架空の出張であるとしたら,本件各出張に係る8回の出張のみを他とは異なって捜査関係用務としたことについての合理的な説明がつかないように思われる。なぜならば,架空の出張であるならば目立たせないように配慮するのが通常で,,「」あると思われそうであれば総務課の他の出張と同じように事務連絡又は「業務視察」とした方がよいと思われるからである。総務課が平成6年度と同7年度に出張したのは に配慮するのが通常で,,「」あると思われそうであれば総務課の他の出張と同じように事務連絡又は「業務視察」とした方がよいと思われるからである。総務課が平成6年度と同7年度に出張したのは原判決添付別紙1,2のとおり,多数回に上っており,その中で捜査関係用務とされたのは本件各出張のみである。 捜査は,総務課の所掌事務ではないのであるから,捜査関係用務とすれば目立つことは避けられず,わざわざ架空の出張を一般的には疑われる捜査関係用務として目立たせる必要はない。まして,甲第12号証の2によれば,総務課の課長であった控訴人Cは,平成6年,7年当時は他県の状況を調査し見聞を広めることは職員のためになり,将来的には良い仕事をすることによって県民のためになると考え,予算があればできるだけ職員を- 25 -出張させるような運用をしていたというのである。そのような運用の是非はともかくとして,当時は,業務視察又は事務連絡との名目でかなり緩やかに出張することができたものといえるから,架空の出張を隠すなら捜査関係用務としない方がよかったものと思われる。 それにもかかわらず,当初から宮城県警があえて本件各出張を捜査関係用務として他の出張と異なる扱いをしたことからすると,本件各出張が捜査関係用務として実際に行われたのではないかとの心証を抱かせるところである。 イ次に控訴人Bに同行したとされる控訴人E及び証人Fの供述をみると,両名とも連絡要員として同行し,控訴人Bが人と会うとしか知らされていない,結果的には連絡する事態はなかったので何もすることがなかった旨の供述している。すなわち,両名とも捜査関係用務での出張としてはさし。 ,,たる働きをしていないと供述しているのであるまた証人Fにあってはそもそも当該出張が捜査関係用務であったことを知らず,捜査関 供述している。すなわち,両名とも捜査関係用務での出張としてはさし。 ,,たる働きをしていないと供述しているのであるまた証人Fにあってはそもそも当該出張が捜査関係用務であったことを知らず,捜査関係用務であることを知ったのは監査委員による監査のときであったという。また,控訴人Eにあっては,2日間宿泊した本件出張3について,控訴人Bが人に会ったのは1日だけであり,そのため控訴人Eは2日目は控訴人Bとは別に東京都内を歩き回った記憶があると供述している。 仮に架空の出張であるとしたら,関係者で口裏を合わせた上で,本件各出張が有用であったように供述するのが通常であるように思われるのに,被控訴人Eや証人Fは,自らの出張がさほど有用であったとは供述していないし,控訴人Eに至っては2日目は独りで東京都内を歩き回った記憶があるなどと不利益とさえいえる供述をしているのである。 このようにみると,控訴人Eや証人Fは,自らの体験をありのままに供述したようにうかがわれるのであって,信用することができるものと思われる。 - 26 -ウ控訴人Cの供述は,関係課の課長から当時課長補佐であった控訴人Bが銃器に関する良い情報源を持っていると協力を依頼され,少し驚いたが当時は全国の警察が銃器の取締りに一丸となっていた時でもあり,協力に応じることにしたというものであるところ,証拠(乙32の2,35の1ないし6)によれば,平成6年から同7年にかけては,全国で悪質な銃器犯罪が多発し,そのため,宮城県警でも,既に平成5年には警視庁や大阪,神奈川,千葉,埼玉などの各府県警が設置していた銃器対策室を平成6年11月30日付けで生活安全部内に設置し,また,平成7年1月4日付けの「日刊警察」には,警察庁長官が当面の最も緊急かつ重要な課題は銃器犯罪対策であるとの年頭の所信を述べるなど た銃器対策室を平成6年11月30日付けで生活安全部内に設置し,また,平成7年1月4日付けの「日刊警察」には,警察庁長官が当面の最も緊急かつ重要な課題は銃器犯罪対策であるとの年頭の所信を述べるなどしていることが認められ,これによれば,平成6年当時は,我が国の警察が全力を挙げて銃器犯罪の取締りに当たっていたことが認められる。 そうであってみれば,宮城県警においても,銃器に対する情報提供者がいれば,担当部署を超えて警察全体でその協力を求めようとすることは大いにあり得ることであると思われ,関係課の課長から総務課の課長に協力要請があったとする控訴人Cの上記供述も,信用し得ないものではないというべきである。 エ控訴人Bは,細部についていえば十分な供述をしているとはいい難いところがあるが,本件情報提供者を保護するという観点からすれば,納得の得られる供述をしていないからといって,必ずしも疑わなければならないとはいえず,全体的にはほぼ一貫した供述をしているといえ,出張に同行した控訴人Eや証人Fの供述,旅行命令を発した控訴人Cの供述と相まってそれなりに信用することができるものと思われる。なお,控訴人Bの供述についての詳細な検討は,後述のとおりである。 オ小括以上のように,控訴人Bらの供述は,信用し得るものと考えられるので- 27 -ある。 (4)被控訴人の指摘する本件各出張の疑問点の検討ア宮城県警の空出張による裏金作りの疑惑について被控訴人は,平成6年度及び同7年度に宮城県警で空出張による裏金作りが行われていたことをうかがわせる事情として,他都道府県警察に関する新聞報道,宮城県警に関する告発報道があるほか,平成9年度以降総務課職員による出張が減少していること,旅費受領代理人制度にそもそもの問題があることを指摘する。そこで,以下,順次検討す 県警察に関する新聞報道,宮城県警に関する告発報道があるほか,平成9年度以降総務課職員による出張が減少していること,旅費受領代理人制度にそもそもの問題があることを指摘する。そこで,以下,順次検討する。 (ア)証拠(甲13の1,13の2の1ないし4,13の3ないし6,22,23の1ないし4,24ないし27,28の1ないし18)によれば,平成16年に,静岡県警察,北海道警察,福岡県警察で,旅費,食糧費,捜査費,捜査報償費等の不正支出が明らかになり,不正支出をした当時の幹部等がこれを道や県に返還する旨の新聞報道がされたほか,高知県警察,京都府警察,岐阜県警察,愛媛県警察についても,不正経理が行われている旨の報道がされたこと,それ以前にも,各地の警察で不正経理が行われているとの報道が繰り返しされていたことが認められる。 しかしながら,これらの新聞報道は,いずれも宮城県以外の都道府県警察におけるものであり,その対象となる費目や方法も様々なものがあり,疑いの程度にも様々なものがあると考えられるのであるから,これらの報道がされたことは,平成6年度及び同7年度における総務課職員の出張において不正経理がされていたことを直接裏付けるものとはいい難い。 (イ)次に,証拠(甲41の1ないし9)によれば,平成16年4月,宮城県警の署長や所属長を歴任した元警視が,新聞社の取材に対し,旅費や捜査報償費等で組織的な裏金作りをしていたと証言した旨の報道がさ- 28 -れたこと,宮城県警の元巡査部長が,新聞社の取材に対し,長年架空領収書を書き続けていた旨の証言をした旨の報道がされたことがそれぞれ認められる。 しかしながら,これらの報道は,取材に応じた者がいずれも匿名であり,その具体的な経歴や退職に至る経緯,宮城県警に対し抱いている感情等報道内容の信用性を評価す 報道がされたことがそれぞれ認められる。 しかしながら,これらの報道は,取材に応じた者がいずれも匿名であり,その具体的な経歴や退職に至る経緯,宮城県警に対し抱いている感情等報道内容の信用性を評価するための事情が明らかでないのであるから,本件各出張が架空のものであるか否かの判断に当たり,その基礎となる事実として採用することは困難であるといわざるを得ない。 (ウ)弁論の全趣旨によれば,総務課職員の事務連絡又は業務視察目的の,,出張件数は平成6年度及び同7年度の各1月から3月までについては事務連絡の出張が平成6年度が26件(74万9740円,同7年度)が21件52万2360円業務視察の出張が平成6年度は5件 (),(2万6560円,同7年度が12件(59万4670円)であるのに),,対し平成9年度から同12年度までの各1月から3月までについては事務連絡の出張が平成9年度が3件(6500円,同10年度が1件)(4万1980円,同11年度が3件(7800円,同12年度が))1件(2万3780円,業務視察の出張はこの間1件も行われていな)いことが認められ,被控訴人は,この激減ぶりは実働部分への予算の重点配分,管理部門の予算の削減,予算編成上のマイナス・シーリングによる旅費予算の減額等によるものだという控訴人らの主張では到底説明できるものではなく,平成6年度及び同7年度の総務課の旅費支出が不正であったことをうかがわせるものである旨の主張をする。 そして,なるほど,上記の事実に,前記1で認定したとおり,第1次訴訟において被告らによって認諾された請求に係る出張がいずれも1月から3月の間にされた出張であることをも併せ考えれば,平成6年度及び同7年度においては,1月から3月までのいわゆる会計年度末に予算- 29 -消化 らによって認諾された請求に係る出張がいずれも1月から3月の間にされた出張であることをも併せ考えれば,平成6年度及び同7年度においては,1月から3月までのいわゆる会計年度末に予算- 29 -消化のための不必要な出張が行われていたのではないかと疑われるところである。 ,,,しかしながら本件各出張は捜査関係用務とされているのであって事務連絡や業務視察とは異なる目的のために行われているのであるから,仮に平成6年度及び同7年度の事務連絡や業務視察目的の出張に不当と評価し得るものがあったとしても,そのことは,本件各出張が実際に行われたものであるか否かの判断を左右するものということはできない上,8回の本件各出張のうち,1月から3月までの間に行われたのは本件出張8のみであり,それ以外は,例えば本件出張4が年度初めの平成7年4月に行われるなど,いずれも他の時期に行われているのであるから,被控訴人の上記主張は採用することができない。 (エ)本件各出張については,旅費の受取先が旅費受領代理人であり,旅費が支出されても直ちに出張者個人に支給されるものではなく,出張者の旅費は当該所属の旅費受領代理人(総務課においては庶務担当補佐)の旅費受領の専用口座に振り込まれていたことは,当事者間に争いがない。 ,(,),しかしながら 証拠 乙36控訴人C及び弁論の全趣旨によれば出張者に支払われるべき旅費がいったん旅費受領代理人の旅費受領の専用口座に振り込まれ,旅費受領代理人がこれを現金化して出張者に渡すという「旅費受領代理人制度」は,平成6年度及び同7年度当時,宮城県のすべての機関で採用されていたものであり,平成9年度以降になって旅費は出張者個人の口座に振り込むこととされたものであることが認められる。このように,平成6年度及び同7年度においては 度当時,宮城県のすべての機関で採用されていたものであり,平成9年度以降になって旅費は出張者個人の口座に振り込むこととされたものであることが認められる。このように,平成6年度及び同7年度においては,宮城県全体でこのような制度で旅費の支給を行っていたのであるから,本件各出張の旅費が旅費受領代理人の専用口座に振り込まれたからといって,本件各出張が架空の出張であるといえないことは明らかである。 - 30 -イ本件各出張の旅行命令(依頼)票等の記載について()「」「」本件各出張の旅行命令依頼票の旅行内容欄及び復命書の用務欄には「事務連絡」と記載されていることは,前記1で認定したとおりであり,捜査関係用務の出張であれば,被控訴人の主張のとおり,なぜそのような記載をしなかったのかという疑問が生ずるところである。 しかしながら,証拠(乙30,33,34,37)及び弁論の全趣旨によれば,平成6年度及び同7年度当時は,警察活動費の旅費は,一般警察活動費,刑事警察費及び交通指導取締費の「目」ごとに予算が計上されており,総務課には一般警察活動費のみが配分されていたこと,そのため,捜査を担当する関係課に配分された予算で出張するのであれば,旅行内容欄等に刑事警察費に当たる「刑事事件捜査」と記載することができたが,本件各出張は,総務課に配分された一般警察活動費で行ったため,刑事警察費に当たる「刑事事件捜査」と記載することができず,総務課が一般的な出張旅費に用いていた「事務連絡」を旅行内容欄等に記載したことが認められる。 したがって,本件各出張の旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄及び復命書の「用務」欄には「事務連絡」と記載されていることからは,本件各出張が捜査関係用務ではなかったとはいえない。なお,本件各出張は,正しくは捜査を担当する関 旅行命令(依頼)票の「旅行内容」欄及び復命書の「用務」欄には「事務連絡」と記載されていることからは,本件各出張が捜査関係用務ではなかったとはいえない。なお,本件各出張は,正しくは捜査を担当する関係課の予算で行われるべきであったかとも思われるが,そうすると,同行者である総務課の事務吏員又は技術吏員を刑事警察費の「刑事事件捜査」の費目で出張させられるかという問題もあるように思われる。しかし,いずれの費目で出張したとしても,本件各出張が必要な出張であれば,宮城県に損害を与えたとはいえない。 ウ事務吏員等の同行等について(ア)被控訴人は,控訴人Bの出張に関係課の警察官が同行せず,総務課の事務吏員又は技術吏員を同行したのは不自然であり,本件各出張は空- 31 -出張であったと主張する。そして,本件各出張に同行したとされているのはいずれも総務課の事務吏員又は技術吏員であったことは,前記1で認定したとおりである。 しかしながら,控訴人Bの供述によれば,控訴人Bはそれまでの付き合いから本件情報提供者に会うことに身の危険を感じなかったことから同行者を断ったものの,課長から何かあったら困る,連絡役に総務課の職員を連れていけと言われたため総務課の事務吏員等が同行者になった,本件情報提供者は控訴人B以外の者には会わないということであったため,同行した事務吏員等も本件情報提供者に会わせなかったというのである。これによれば,本件情報提供者は,控訴人Bには会うが関係課には直接協力することは避けていたものとうかがえるから,控訴人Bが関係課の警察官を同行しなかったことや関係課の警察官に引き合わせしようとしなかったことについてはそれなりに合理的な理由があるものといえる。また,同行したのが事務吏員等であって警察官でなかったことについては,控訴人B自身は,同行者 とや関係課の警察官に引き合わせしようとしなかったことについてはそれなりに合理的な理由があるものといえる。また,同行したのが事務吏員等であって警察官でなかったことについては,控訴人B自身は,同行者は不要と考えていたものの,不測の事態が生じることをおそれた総務課の課長が同行を命じたものであり,前記1で認定したとおり,当時,総務課には警察官が控訴人Bを含めて4名しかおらず,そのうち,2名は課長と管理官であり,残りの1名の巡査部長は本部長車両の運転業務等を担当していたというのであるから,事実上同行可能な総務課の職員は事務吏員又は技術吏員しかいなかったのである。そうであってみれば,控訴人Bの出張に総務課の事務吏員又は技術吏員が同行したからといって不自然ということはできない。なお,本件は,本件情報提供者に協力を求めるというものであり,本件情報提供者に接触すること自体を秘匿する必要性が高かった上,控訴人B以外には会わないというのが本件情報提供者の条件であったというのであるから,控訴人Bが単独で本件情報提供者に会ったこと自体は- 32 -やむを得ないというべきところ,不測の事態を避けるために単独捜査はすべきではないというのが捜査の原則であることからすると,万一に備え,総務課の課長が連絡員の同行を命じたのも相当な措置であったといえる。 (イ)また,被控訴人は,千葉であれば千葉に宿泊せずに東京に宿泊することができるし,更には新幹線を使えば日帰りができたのに,あえて千葉に宿泊しているから空出張であると主張する。 しかしながら,控訴人Bの供述によれば,本件情報提供者に会うのは本件情報提供者の仕事が終わった夕方か,夜であったことがうかがわれるから,千葉に宿泊したことをもって不自然ということはできない。また,第1審相被告Gの供述によれば,平成6年当時, 報提供者に会うのは本件情報提供者の仕事が終わった夕方か,夜であったことがうかがわれるから,千葉に宿泊したことをもって不自然ということはできない。また,第1審相被告Gの供述によれば,平成6年当時,総務課の出張は,遠距離であってもいったん総務課に出勤し,その後,出張に出発し,出張から帰ったときも直接自宅に戻らず,総務課に帰った旨の報告をしてから帰宅するのが通常の例であったことが認められるから,そのような出張の仕方の是非はともかくとして,夕方や夜に本件情報提供者と会う以上,勤務時間内に総務課に戻ることは不可能であり,千葉に宿泊したからといって空出張を疑わせるということはできない。 エ本件情報提供者についての控訴人Bの供述について(ア)被控訴人は,控訴人Bが本件情報提供者について甲に住んでおり,乙で○○の卸売業を営んでおり,乙に店か事務所があり,身長は×㎝前後,体重は×~×㎏くらい,年齢が×歳代の前半であるなどと供述し,これだけの説明があれば,関係者なら本件情報提供者がだれであるか特定し得るのに,それ以上は説明できないとして供述を拒むのはおかしいと主張する。 なるほど,被控訴人の主張するとおり,控訴人Bの供述したところのみであっても,関係者に本件情報提供者がだれであるかについての手掛- 33 -かりを与える危険性はあるかもしれず,控訴人Bは,本件情報提供者に関する情報は完全に秘匿すべきであったといえるかもしれない。 しかしながら,控訴人Bの上記の供述は,あくまで被控訴人が提起した本件訴訟に対して自らやかつての上司,同僚を防御するためにしたものであり,ある程度は本件情報提供者のことを話さなければ被控訴人のみならず裁判所をも納得させられないであろうと控訴人Bが判断したことによるものと思われる。このように判断したことが不合理といえないこ のであり,ある程度は本件情報提供者のことを話さなければ被控訴人のみならず裁判所をも納得させられないであろうと控訴人Bが判断したことによるものと思われる。このように判断したことが不合理といえないことは明らかであり,本件情報提供者についてより具体的な供述をしないことをもって,控訴人Bの供述がおかしいということはできない。 (イ)被控訴人は,控訴人Bが旧知の友にでも会うように本件情報提供者,,,,に接していたと言いながらその出身地仕事の具体的内容活動範囲世間話の内容等について覚えていないというのは不自然である旨主張する。 しかしながら,控訴人Bの供述によれば,控訴人Bは仕事の関係で本件情報提供者と知り合い,会った場所も本件各出張を除けばいずれも警察内部であったというのであるから,控訴人Bが特に興味を抱いたことのみを記憶し,それ以外のことは記憶に残していないとしても,別段不思議なことではない。人の記憶とはもともとそのようなものであり,何に対して興味を持つかは人によって異なるのである。なお,控訴人Bの供述中には,本件情報提供者が訪ねてきたときは旧知の友が訪ねてきたときのように話をしたとする部分があるが,これは,本件情報提供者が訪ねてきたときの様子を述べたものにすぎず,控訴人Bが旧知の友のように本件情報提供者と日頃親密な付き合いをしていたと述べているわけではない。 (ウ)被控訴人は,控訴人Bが本件情報提供者の行方が分からなくなったと関係課から知らされながら自ら行方を捜すようなことはしていないの- 34 -は余りにも冷淡であり,不自然であると主張する。 しかしながら,控訴人Bは,本件情報提供者とは仕事上の知り合いであり,銃器関係の情報の収集も職務として行ったものである。その上,捜査を担当する関係課の調査でも所在が分からないもの であると主張する。 しかしながら,控訴人Bは,本件情報提供者とは仕事上の知り合いであり,銃器関係の情報の収集も職務として行ったものである。その上,捜査を担当する関係課の調査でも所在が分からないものを総務課に属していた控訴人Bが調べたところで分かるはずはないと思われる。控訴人Bが本件情報提供者の行方を自ら捜すようなことをしていないからといって,特に冷淡であるとか,不自然であるとかなどということはできない。 (エ)被控訴人は,控訴人Bが本件情報提供者から提供を受けた情報に基づいて立件されたかどうかを関係課に確認していないのは不自然であると主張する。 しかしながら,仮に控訴人Bが捜査の行方に関心があったとしても,捜査の経過は捜査の秘密に属することであるから,捜査担当者でない者が捜査担当者にその後の経過を聞かないことが警察官としての職業倫理と思われるのであり,控訴人Bが関係課に立件されたかどうかを確認していないことをもって不自然とはいえない。 (オ)被控訴人は,控訴人Bがなぜ危険を犯してまで本件情報提供者が情報を提供する気になったのか聞いていないのは不自然であると主張する。 しかしながら,控訴人Bの供述によれば,控訴人Bは本件情報提供者から世間話として銃器の話を聞いたことがきっかけとなって本件情報提供者に情報の提供方を依頼するようになったというのであるから,本件情報提供者は自ら進んで銃器に関する情報を控訴人Bに提供したわけではなく,頼まれて仕方なく控訴人Bに協力したにすぎないものと思われる。現に控訴人Bの供述によれば,控訴人Bは捜査報償費を提供しようとしたものの,本件情報提供者はその受領を強く拒絶したというのであ- 35 -る。そうであってみれば,情報の提供方につき協力を依頼しておきながらその相手方に対して協力する気になった動機を聞 しようとしたものの,本件情報提供者はその受領を強く拒絶したというのであ- 35 -る。そうであってみれば,情報の提供方につき協力を依頼しておきながらその相手方に対して協力する気になった動機を聞く方がむしろおかしいのであり,その動機を控訴人Bが聞かなかったことが不自然であるとはいえない。 (カ)被控訴人は,控訴人Bが多数回にわたって本件情報提供者と会っていながら関係課の者に直接話させようとしなかったことは不自然である旨の主張をする。 しかしながら,控訴人Bの供述によれば,本件情報提供者はあくまで任意の協力者であり,初めから控訴人B以外の警察官とは会わないと言っていたというのであるから,控訴人Bが関係課の者に直接話させようとしなかったことをもって不自然とはいえない。 (キ)被控訴人は,控訴人Bが千葉に宿泊した出張につき泊まったホテルや本件情報提供者と接触した場所について記憶がないと供述するのは不自然であると主張する。 しかしながら,千葉駅周辺には,控訴人Bらが宿泊に利用したビジネスホテルや接触したとされる喫茶店,居酒屋が多数あることがうかがえるから(乙38,39,弁論の全趣旨,出張から10年も経っていれ)ば,現在それを特定し得ないからといって不自然ではない。なお,千葉駅周辺のビジネスホテルであれば事前の予約も必要はないものと思われる。 (ク)被控訴人は,控訴人Bが平成6年,同7年当時の手帳を廃棄したとするのは不自然であると主張する。 しかしながら,世の中にはもちろん古い手帳を大切に保存している者,,もいるであろうが去年の手帳であっても廃棄する者もいるのであって10年以上も前の手帳を控訴人Bが保存していないからといって不自然であるとはいえない。控訴人Bは,手帳は毎年1年間は保存するがその- 36 -後は廃棄していたと供述 ても廃棄する者もいるのであって10年以上も前の手帳を控訴人Bが保存していないからといって不自然であるとはいえない。控訴人Bは,手帳は毎年1年間は保存するがその- 36 -後は廃棄していたと供述するところ(当審,警察官の手帳には職務上)知り得た秘匿性の高い個人情報も記載されているものと思われるのであり,不用意な扱いをするとそのような秘匿性の高い個人情報が外部に流出する危険性があるものと思われる。したがって,控訴人Bが使い終わった手帳を1年後には廃棄していたというのはむしろ自然なことのように思われる。 オ本件情報提供者に関する情報の管理について被控訴人は,本件情報提供者に関する情報が関係課に保存されていないことからすると,そもそも本件情報提供者の情報はなかったというべきであると主張する。 しかしながら,控訴人Bの供述によると,情報が役立ったことは新聞報道で知ったというのであるから本件情報提供者に関する事件は既に終了しているものとうかがわれ,また,控訴人Bは本件情報提供者から得た情報を書面にして関係課に渡したものの裁判資料になるような体裁の報告書は作成しなかったというのであるから関係課の捜査担当者の捜査のための参。 ,,考資料として使用されたことがうかがわれるそうであるとすれば現在関係課に本件情報提供者に関する情報が保存されていないからといって何ら不自然とはいえない。むしろ,情報提供者の身に危険が及ぶために厳重に秘匿されるべき情報が事件捜査終了後においても当該捜査担当者以外の者の目に触れるような形でいつまでも保存されていることは危険なことと思われる。したがって,関係課が本件情報提供者に関する情報資料を廃棄したとすれば,それは個人情報保護の視点のみならず,本件情報提供者に対する危険をできるだけ排除するという視点からもむしろ妥当 ことと思われる。したがって,関係課が本件情報提供者に関する情報資料を廃棄したとすれば,それは個人情報保護の視点のみならず,本件情報提供者に対する危険をできるだけ排除するという視点からもむしろ妥当な措置であるとみることができる。 カ小括以上にみたとおり,被控訴人が本件各出張の疑問点として主張するとこ- 37 -ろは,いずれも採用することができない。 (5)まとめ上記(3)で検討したとおり,控訴人Bらの供述は信用するに足りるものであり,また,上記(4)で検討したとおり,疑問点として被控訴人の指摘するところはいずれも理由があるものとはいえず,控訴人Bらの供述の信用性を否定するに足りない。他に本件各出張が架空の出張であることを認めさせるに足りる証拠はない。 そして,銃器に関する情報を収集するために控訴人Bが本件情報提供者と会うために出張したとすると,同行者の出張も含めて本件各出張が不必要な出張であったとはいえない。 結論 以上によれば,本件各出張が架空の出張であることを前提とする被控訴人の控訴人らに対する本件請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも失当として棄却すべきものである。 よって,原判決中,当裁判所の上記判断と異なる部分は不当であるからこれ,,を取り消し被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却することとして主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官大橋弘裁判官山口均- 38 -裁判官岡田伸太
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