令和3年1月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第624号預金返還請求事件(以下「甲事件」という。)令和2年(ワ)第282号預金債権名義変更手続請求事件(以下「乙事件」という。)(口頭弁論終結日令和2年10月27日)判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 甲事件被告信金は,原告に対し,620万9405円及びこれに対する平成30年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件 主位的請求乙事件被告らは,原告に対し,別紙預金債権目録記載の預金債権名義を原告に変更する手続をせよ。 予備的請求乙事件被告らは,原告に対し,連帯して,620万9405円及びこれに対する令和2年8月8日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 甲事件は,原告が被告信金に対し,A(昭和▲年▲月▲日生,平成▲年▲月▲日死亡。)との間に身元保証契約(以下「本件身元保証契約」という。)を締結するとともに不動産を除く全財産について死因贈与契約(以下「本件死因贈与契約」という。)を締結し,別紙預金債権目録記載の預金(以下「本件預金」という。)が 贈与されたとして,本件預金債権額620万9405円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成30年9月15日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 乙事件は,原告が,Aの相続人である乙事件被告らに対し,主位的には,本件預金の名義変更手続を行うことを求め,予備的 による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 乙事件は,原告が,Aの相続人である乙事件被告らに対し,主位的には,本件預金の名義変更手続を行うことを求め,予備的に本件預金の引渡を拒否したことについて債務不履行及び不法行為が成立するとして預金額及びこれに対する乙事件被告らが乙事件答弁書によって本件預金の引渡しを拒否した令和2年8月8日から支払済みまで民法所定の年3分の割合の遅延損害金の支払を求めた事案である。 被告らは,いずれも本件死因贈与が公序良俗に違反し,無効であるなどとして,原告の請求を拒絶した。 2 争いのない事実等以下の事実は争いがないか,括弧内に掲記した証拠により容易に認められる。 原告ア原告は,特定非営利活動法人である。 イ原告代表者の夫であるBは,平成30年3月末まで安城市職員であり,平成27年度及び平成28年度は安城市C部長であり福祉事務所の副所長を兼務していた。 ウ原告は次の事業を行っている(甲34ないし36,乙2,乙15の1ないし5,乙21)。 障害者共同生活援助(グループホーム)支援事業障害者が地域の中で自立的に生活できるようにホームで生活する。 従前,ホームDを運営していた(平成24年度受益対象者5名)。 平成25年5月からホームDa の運営を開始した(平成25年度受益対象者10名)。 さらに,平成27年5月からホームDb の運営を開始した。 高齢者,障害者生活支援サービス事業家事援助全般サービス(見守り,留守番,草取り,食事つくり,話し相手,洗髪,病院への付き添い,薬の代理受領,寝たきり老人の介護,外出介助,法事の手伝い,代筆など要望があれば可能なこと,すべて) 家事援助全般サービス(見守り,留守番,草取り,食事つくり,話し相手,洗髪,病院への付き添い,薬の代理受領,寝たきり老人の介護,外出介助,法事の手伝い,代筆など要望があれば可能なこと,すべて) 高齢者,障害者福祉移送サービス事業自力で外出困難な方たち又は緊急時の送迎と介助 障害者総合支援法に基づく障害者福祉サービス及び地域生活支援事業居宅介護サービス,移動支援事業,日中一時支援事業,短期入所等エ家族代行サービス「Eの会」(乙18,19)原告は,平成26年1月から「Eの会」を発足し,家事支援,病院,福祉施設及び賃貸住宅の身元保証,救急搬送時の手続,手術の立会,危篤時の対応,逝去時の遺族への連絡,葬儀社への連絡,死亡診断書の取得,病室内の荷物の撤去などの万が一支援,葬儀支援,永代供養支援,納骨支援を行うこととなった。 オ原告の経常収益,寄付及び経常収益に対する寄付金の割合の推移原告の会計年度は4月1日から翌年3月31日まで平成24年度(乙15の1の5枚目)寄付金 16万9939円経常収益 1億1362万8017円寄付金割合 0.15%平成25年度(乙15の2の5枚目)寄付金 345万1145円経常収益 1億0875万0706円寄付金割合 3.17%平成26年度(乙15の3の5枚目)寄付金 1159万9408円 経常収益 9845万6535円寄付金割合 11.78%平成27年度(乙15の4の5枚目)寄付金 1373万889 1159万9408円 経常収益 9845万6535円寄付金割合 11.78%平成27年度(乙15の4の5枚目)寄付金 1373万8890円経常収益 1億1391万7087円寄付金割合 12.06%平成29年度(乙15の5の6枚目)寄付金 1846万4247円経常収益 1億4853万1302円寄付金割合 12.43%平成30年度(乙15の6の1枚目)寄付金 5039万0273円経常収益 1億8157万9895円寄付金割合 27.75%AAは,昭和▲年▲月▲日生まれで,平成▲年▲月▲日に83歳で死亡したが,子はなく,夫は既に死亡しており,その相続人は別紙「被相続人A相続関係図」のとおり,Aの甥及び姪である乙事件被告らである(甲2,16,17の1ないし4,18の1及び2,19,20の1ないし6,21の1ないし4,22の1及び2,23の1ないし6,24の1ないし4,25の1ないし5,26の1ないし6,27の1ないし4)。 なお,Aの葬儀費用は32万1840円かかったが(甲40,41),後期高齢者医療費から葬儀費用として5万円が支給された(甲42)。 安城市養護老人ホームAは,安城市が運営し,安城市社会福祉協議会(以下「安城市社協」という。)が指定管理者となっていた安城市養護老人ホームに入所していた。安城市社協 は,安城市における社会福祉事業の能率的運営と組織的活動を推進し,地域福祉の増進を図ることを目的として社会福祉法109条の規定により設立された社会福祉法人であり,安城市からの受託金,負担金等で運営されている(乙24)。 安城市養護老人ホームの施設長 を推進し,地域福祉の増進を図ることを目的として社会福祉法109条の規定により設立された社会福祉法人であり,安城市からの受託金,負担金等で運営されている(乙24)。 安城市養護老人ホームの施設長は平成30年4月1日に同ホームの運営が移譲されるまで安城市職員が施設長として派遣されており,平成27年4月1日から平成30年3月1日までの間は安城市職員であるFが安城市社協に派遣され,安城市養護老人ホームの施設長となっていた。 安城市養護老人ホームは入所者に対して身元保証人を求めており,Aについてもそのいとこが身元保証人となっていたが,辞退したため,安城市養護老人ホームの生活相談員が原告をAに斡旋した。Fが施設長をしていた当時,入所者が32名ないし33名おり,そのうち半分以上が原告との間に身元保証契約を締結しており,令和2年3月1日現在は28人となっている。さらに,そのうちAを除く5名が,原告との間に,定型の死因贈与契約(甲11ないし15)に署名・押印し,死因贈与契約を締結していた。原告代表者は,安城市養護老人ホームに対して,葬儀・納骨までの契約をした入所者については死因贈与契約を締結してもらいたいとの要請をしており,また,全部面倒をみるという契約のときは死因贈与契約を結んでくれるように要望していた。(証人Fの証言(証人調書7,8,15,16頁),原告代表者作成の陳述書(甲38),B作成の陳述書(甲37))。 Aの預金(甲3)Aは被告信金に本件預金をしており,死亡した時点での預金残高は620万9405円であった。 被告信金は,預金契約上の地位その他その取引にかかるいっさいの権利及び通帳について,譲渡,質入れその他第三者の権利を設置することはできないとしていた(乙9)。 本件身元 被告信金は,預金契約上の地位その他その取引にかかるいっさいの権利及び通帳について,譲渡,質入れその他第三者の権利を設置することはできないとしていた(乙9)。 本件身元保証契約原告は,平成29年1月25日,Aとの間で,Fが立会った上で,「Eの会家族代行サービス契約書(高齢者・障がい者のための身元保証支援等契約書)」と題する書面(甲7,乙3。以下「本件身元保証契約書」という。)により本件身元保証契約を締結した。本件身元保証契約書の記載は定型で,受託業務は別表計画書に○が付された支援とされ,別表には次の欄に○が付され,その費用額として次の記載がされている。 ア受託業務及び費用登録料 20万円予備費 5万円身元保証料(管理費) 15万円万一の支援費用 10万円葬儀支援費用 30万円納骨支援費用 10万円合計 90万円イ Aの死亡本契約期間中にAが死亡したとき,原告は相当期間内に残存預り金及び管理にかかる財産全部の精算をしたうえ,精算書の受け渡しとともに残存財産の返還は,相続人調査の上その相続人に行う。但し,生前中契約者本人の意思に基づき同意があれば,生前財産の返却金は本会に寄付するものとする。 ウ契約期間終身有効とする。 本件死因贈与契約原告は,平成29年2月22日,Aとの間に以下の内容の本件死因贈与契約を締結した。その契約書(甲1,10,乙4)は定型で,記載内容は次のとおりである。なお,本件死因贈与契約の締結が本件身元保証契約締結の後とな 成29年2月22日,Aとの間に以下の内容の本件死因贈与契約を締結した。その契約書(甲1,10,乙4)は定型で,記載内容は次のとおりである。なお,本件死因贈与契約の締結が本件身元保証契約締結の後となっ たのは,本件身元保証契約時に死因贈与契約書のひな型を所持していなかったためである(原告代表者作成の陳述書(甲30))。 ア 1条平成29年2月22日,Aは,自己の不動産を除く全財産を原告に対し無償で贈与することを約し,原告はこれを受託した。 イ 2条本件贈与はAの死亡を停止条件として効力を生じ,かつ贈与物件の所有権は当然に原告に移転する。 ウ 3条Aは原告を死因贈与の執行者に指定する。 エ 4条Aは,原告に対し,Aの葬儀及びAの自宅の家財道具一式の片付けを依頼し,原告の定めた報酬基準(本件契約時のもの)に従って,その費用及び実費を負担する。同費用及び実費の支払いについては,Aの死後,原告がAから預かっている財産から清算する。 別件死因贈与契約原告は,平成28年11月2日,GとAと同種の身元保証契約書を作成し(登録料20万円,予備費5万円,身元保証料(管理費)15万円,万一の支援費用10万円,葬儀費用30万円,分骨個人合祀80万円の合計160万円,乙7),平成29年2月3日,G所有の土地6筆(面積合計192.75平方メートル)及び建物1棟を2000万円で売却し,29年4月14日,不動産を除く全財産を原告に死因贈与する旨の契約書(乙5)を作成した(以下「別件死因贈与契約」という。)。 Gは,平成▲年▲月▲日,死亡し,その遺族から同年10月6日付けで,被告信金に対し,原告からの預金払戻請求に応じないようにとの通知書が送達されたた 作成した(以下「別件死因贈与契約」という。)。 Gは,平成▲年▲月▲日,死亡し,その遺族から同年10月6日付けで,被告信金に対し,原告からの預金払戻請求に応じないようにとの通知書が送達されたため(乙6),被告信金は,同年12月26日,上記不動産売買代金20 00万円が含まれる預金4339万3883円を供託した(乙8)。その後,原告とGの遺族との間に訴95号,被告信金第1,和解が成立しており,平成30年度の寄付金にはGからの死因贈与が含まれる。 身元保証に関する規制(乙27,28,35)ア医師法は,正当な事由なく診療治療の求めを拒んではならないとされており(19条1項),各介護施設の基準省令においても,正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定められており(指定介護老人福祉施設の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)4条の2,介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)5条の2及び指定介護療養型医療施設の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第41号)7条),入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは,「正当な事由・理由」に該当しないとされている。 イ厚生労働省老健局は,平成28年3月7日,都道府県,政令市,中核市の全国介護保険・高齢者福祉担当課長会議において,介護保険施設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等において,介護施設が,身元保証人等がいないことをのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう,適切に指導・監督を行うように対応を求め,そのことは新聞等で報道された(乙27,28)。 第4次内閣府消費者委員会(委員長河上正二東京大学教授,現青山学 切な取扱を行うことのないよう,適切に指導・監督を行うように対応を求め,そのことは新聞等で報道された(乙27,28)。 第4次内閣府消費者委員会(委員長河上正二東京大学教授,現青山学院大学教授)の平成29年1月31日付け「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」(以下「本件建議」という。乙35,38,39)上記委員会は以下の建議をした。 ア建議事項1 消費者庁及び厚生労働省は,消費者保護の観点から,以下の取組を行うこと 消費者庁は,身元保証や死後事務等を行う身元保証等高齢者サポート事業による消費者被害を防止するため,厚生労働省その他関係行政機関と必要な調整を行うこと。 厚生労働省は,関係行政機関と連携して,身元保証等高齢者サポート事業において消費者問題が発生していることを踏まえ,事業者に対しヒアリングを行うなど,その実態把握を行うこと。 消費者庁及び厚生労働省は,消費者が安心して身元保証等高齢者サポート事業を利用できるよう,必要な措置を講ずること。 (理由)一人暮らしの高齢者等を対象として,身元保証や日常生活支援,死後事務等に関するサービスを提供する新しい事業形態が生まれている。提供されるサービスの内容は事業者によって異なるが,主要なものとしては以下のサービスが挙げられる。 身元保証サービス病院・福祉施設等への入院・入所時の身元(連帯)保証賃貸住宅入居時の身元(連帯)保証日常生活支援サービス在宅時の日常生活サポート(買物支援,福祉サービスの利用や行政手続等の 証賃貸住宅入居時の身元(連帯)保証日常生活支援サービス在宅時の日常生活サポート(買物支援,福祉サービスの利用や行政手続等の援助,日常的金銭管理等)安否確認・緊急時の親族への連絡等死後事務サービス病院・福祉施設等の費用の精算代行 遺体の確認・引取り指示居室の原状回復,残存家財・遺品の処分ライフラインの停止手続葬儀支援等身元保証等高齢者サポートサービスは,上記で挙げたとおり多岐にわたっており,一人暮らしの高齢者等が,各サービスについて個別に適正な選択を行うことは困難である。身元保証等高齢者サービス事業においては,上記で挙げた多くのサービスを提供する場合があるため,高齢者の利便性に資するが,契約内容が複雑になりがちである。また,個々の費目がいずれもサービスの対価を示すのか,費用体系が明確でないものもみられる。 身元保証等高齢者サポート事業の利用者には,一人暮らしの高齢者が多いとみられる。高齢者は,一般的に次第に心身共に能力が低下していくものであり,契約締結時には判断能力が認められる場合であっても,サービスの提供を受ける必要性が高まった状況においては,サービスが契約どおり履行されているか,本人のみでは十分に確認できるとはいえない。さらに,死後事務の履行については本人には確認するすべがない。 終末期及び死後の事務処理に関する問題は,収入・資産の多寡を問わず,一人暮らしの高齢者全般にとって深刻な問題である。 厚生労働者は,一人暮らしの高齢者等が安心して生活を送る 。 終末期及び死後の事務処理に関する問題は,収入・資産の多寡を問わず,一人暮らしの高齢者全般にとって深刻な問題である。 厚生労働者は,一人暮らしの高齢者等が安心して生活を送ることができるようにするなど,高齢者の福祉の観点から,関係行政機関と連携して,身元保証等高齢者サポート事業に関する実態把握を行うべきである。 そして,実態把握を踏まえ,消費者庁及び厚生労働省は,関係行政機関と連携して,消費者が安心して身元保証等高齢者サポートサービスを利用できるよう,必要な措置を講じるべきである。 上記において必要な措置を検討するに当たっては,例えば以下の内容が考慮されるべきである。 ① 契約内容(解約時のルール等)の適正化,費用体系の明確化(モデル契約書の策定等)② 預託金の保全措置③ 第三者等が契約の履行を確保する仕組みの構築④ 省略イ建議事項2厚生労働省は,高齢者が安心して病院・福祉施設等に入院・入所することができるよう,以下の取組を行うこと。 病院・介護保険施設の入院・入所に際し,身元保証人等がいないことが入院・入所を拒否する正当な理由に該当しないことを,病院・介護保険施設及びそれらに対する監督・指導権限を有する都道府県等に周知し,病院・介護保険施設が身元保証人等のいないことをのみを理由に,入院・入所等を拒む等の取扱いを行うことのないよう措置を講ずること。 省略(理由)病院や施設等が身元保証人等に求めるものとしては,主として以下のものが掲げられている。 入院費・施設等利用料の支払い債務(入院費,施設等利用 省略(理由)病院や施設等が身元保証人等に求めるものとしては,主として以下のものが掲げられている。 入院費・施設等利用料の支払い債務(入院費,施設等利用料,損害賠償等)の保証本人生存中の退院・退所の際の居室等の明渡しや原状回復義務の履行緊急の連絡先本人の身柄の引取り入院計画書やケアプラン等の同意医療行為(手術・予防接種等)の同意 遺体・遺品の引取り・葬儀等ウ建議事項3省略 平成30年3月付け「介護施設等における身元保証人等に関する調査研究事業報告書」(以下「本件報告書」という。乙32)厚生労働省は,上記建議を受けてみずほ情報総研株式会社に,介護施設等における身元保証人等に関する調査を委託し,同社がそれについての報告書を作成した。同報告書の「身元引受人/身元保証人等に求める機能・役割についての整理」欄には,以下の記載がされている。 身元引受人/身元保証人に求める機能役割については入居所の生前と死後に大別される。 死後に,介護施設側で実施することは概ねパターン化されており,身元保証人/身元引受人等に期待する役割の中で,整理が難しくトラブルの原因となり易いのは,生前中の対応に関係するものと考えられる。さらに,生前中における身元引受人/身元保証人等に求める機能・役割は,本人の能力範囲(責任範囲)によって大きく2軸に分けられるものと考えられる。このなかで,介護施設側が身元引受人/身元保証人等に求める機能・役割は,本人の能力範囲(責任範囲)を超えた場合における滞納リスクの回避(連帯保証)と,本人の能力が衰えた場合における のと考えられる。このなかで,介護施設側が身元引受人/身元保証人等に求める機能・役割は,本人の能力範囲(責任範囲)を超えた場合における滞納リスクの回避(連帯保証)と,本人の能力が衰えた場合における,身上保護と財産管理(成年後見制度の活用によってカバーできる範囲)に分けられる。 厚生労働省による通達本件建議及び本件報告書を受け,厚生労働省は,平成30年8月30日付けで「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」と題する通達(乙31)を発令し,「「身元保証」や「お亡くなりになれた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ」と題するポイント集(乙29)を活用して,適切な助言を行うことや介護保険施 設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等は,介護保険施設が身元保証人等がいないことをのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱いを行うことのないよう,適切に指導・監督を求めた。 支払拒否原告は,被告信金に対し,平成30年8月24日,預金の支払を求めたが,被告信金はこれを拒否した。 3 主な争点 公序良俗違反ア被告信金は,本件死因贈与契約は以下の理由で公序良俗違反により無効であると主張し,乙事件被告らはその主張を援用した。 したがって,本件第1の争点は,本件死因贈与契約が公序良俗に違反し,無効と認められるか否かの点であり,この点についての当事者の主張は次のとおりである。 イ被告らの主張 死因贈与契約は身元保証契約とセットでされていること(被告信金第8準備書面第2の1(1頁ないし5))原告はAをはじめとする身寄りのない高齢者と身元保証契約を締結しており,身寄りのない高齢者に対 死因贈与契約は身元保証契約とセットでされていること(被告信金第8準備書面第2の1(1頁ないし5))原告はAをはじめとする身寄りのない高齢者と身元保証契約を締結しており,身寄りのない高齢者に対し,病院・介護施設が身元保証を求めることを奇貨とし,身元保証契約を締結する引換えに死因贈与契約を獲得している。 本件身元保証契約を締結する必要がないこと(被告信金第8準備書面第2の3(7頁,8頁))そもそも,病院及び介護施設は,法令上,身元保証契約を求めることができる規定はなく,医師法及び介護各施設の基準省令において,身元保証をしないことでは医療行為・サービスの提供を拒否する正当な理由に該当しないとされている。 Aは,従前から安城市養護老人ホームに入居していたものであり,その身上監護及び金銭管理は引き続き同老人ホームが行っており,Aの預金残高からすると,保証人を求める必要性は何ら認められない。 本件身元保証契約の内容には履行不能なものが含まれていること(被告信金第8準備書面第2の4(8頁,9頁))病院及び介護施設に対する身元保証であるから,原告は退院・退所が求められた場合,その身元を引き取ることが身元保証の内容であるが,原告は介護を必要とする高齢者の施設を有しておらず,高齢者を引き取ることは想定していない。また,医療行為については委任がされたとしても受任者が同意権を有するとはいえず,委任になじまない。 本件身元保証契約の内容が不明確であること(被告信金第8準備書面第2の2(5頁))本件身元保証契約書では,別表の以下の欄に○が付された上,その料金が記載されているだけであり,契約内容が不明確である。 登録料20万円,予備費5万円,身元保証料(管理 ))本件身元保証契約書では,別表の以下の欄に○が付された上,その料金が記載されているだけであり,契約内容が不明確である。 登録料20万円,予備費5万円,身元保証料(管理費)15万円,万一の支援費用10万円,葬儀支援費用30万円,納骨支援費用10万円死因贈与契約を締結する趣旨が不明確であること(被告信金第8準備書面第2の2(5頁ないし7頁))原告は,死因贈与契約を締結することにより,利用者が手持ち現金を減らさずにすむことを身元保証契約とともに死因贈与契約を締結する理由として主張するが(原告第4準備書面13頁),利用者とあらかじめ葬儀費用等を取り決めておき,死後事務の手続の一環として葬儀手続を行う契約を締結しておけばよいだけのことであり,死因贈与契約を締結する理由が不明である。 対価性がなく,暴利行為であること(被告信金第3準備書面第2の3(5頁ないし11頁),第8準備書面第2の5(9頁,10頁)) 安城市養護老人ホームが本件身元保証契約によって原告に求めるものは,私物の引取りと医療行為の同意であり(証人Fの証言(証人調書3頁)),原告が実際に行った業務は,生前の業務としては,Aの入院時に2,3回付き添い,1回見舞いに行ったこと以外は病院の入院時に身元保証,緊急の連絡先及び医療同意書に署名したというものであり,死後事務として,遺体引取り,私物の引取り,死亡届提出,葬儀,遺体の火葬及び納骨であり,葬儀費用は32万1840円(甲40,41)ほどであり,医療保険から5万円の支給(甲42)がされている。 上記事務は,原告がAの身の回りの世話をするというものではなく,ほんのわずかな付添いと書類への署名及び葬儀等の手配にすぎないのに,原告は,Aから本件身元保証契約を締結し, (甲42)がされている。 上記事務は,原告がAの身の回りの世話をするというものではなく,ほんのわずかな付添いと書類への署名及び葬儀等の手配にすぎないのに,原告は,Aから本件身元保証契約を締結し,90万円の料金を受け取っており,これ自体対価的不均衡が生じている上,原告は本件死因贈与契約を締結することで本件預金620万9405円を取得しようとしており,明らかに対価性を欠き暴利行為である。なお,原告は,A以外にも前記のとおり,Gと160万円で身元保証契約を締結するとともに別件死因贈与契約を締結し,預金4339万3883円を取得しようとしてGの遺族と訴訟となり,和解をしてかなりの金銭を取得しており,身元保証契約以外に死因贈与契約をも締結することは明らかに対価性を欠く。 説明が不十分であり,私署証書によって契約していること(被告信金第3頁), 原告は,本件身元保証契約及び本件死因贈与契約が締結するに際し,死後,葬儀を執り行い,納骨されるお寺などについてAの意向を一切確認しておらず(証人Fの証言(証人調書24頁,25頁),Aの意向を踏まえたサービス設定とはなっていない。しかも,遺言ではなく,公正証書によらない私署証書によるひな型の契約書が作成されている。 消費者契約法4条3項5号に反すること(被告信金第8準備書面第2の6(10頁ないし12頁))。 原告は,本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結した時点で81歳と高齢で身寄りがなく,新たに身元保証人になってくれる者がおらず,施設入所が継続できるのか,病院に入院できるのか,死後の手続がどうなるのか不安をかかえていたことは容易に想像できるところである。そのような状況で,原告代表者は,介護施設は身元保証人がいなくても退所を求めることがで きるのか,病院に入院できるのか,死後の手続がどうなるのか不安をかかえていたことは容易に想像できるところである。そのような状況で,原告代表者は,介護施設は身元保証人がいなくても退所を求めることができず,身元保証契約を締結する必要がないことを知りながら(原告代表者の供述(本人調書26頁)),Aに対し,死後事務を受任し,その費用分を受け取り,その後精算すればよいだけで,現に原告はその費用を受け取っているのに,亡くなったときに入院の費用とか葬儀の費用とかが銀行から下せなくなり,支払えないので死因贈与契約を締結して欲しいと述べて死因贈与契約を締結する必要があるような説明をしている(証人Fの証言(証人調書9頁,10頁))。本件死因贈与契約を締結しなければ,Aの死後に葬儀費用等の支払ができないということはなく,原告代表者の行為は,Aが加齢によりその判断能力が著しく低下し,いとこの身元保証人が辞任し,安城市養護老人ホームから新たに身元保証人を付けるように求められ,身元保証人が付けられないと安城市養護老人ホームを退所しなければならなくなるかも知れないという現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら,その不安をあおり,保証人がいなくても安城市養護老人ホームが退所を求めることが法規上はできず,その不安の裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他正当な理由がある場合でないのに,本件身元保証契約を締結するとともに本件死因贈与契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げ,これによりAが困惑し,本件死因贈与契約の承諾の意思表示をしたものであり,消費者契約法4条3項5号に抵触する。 原告が死因贈与契約を締結することで多額の利益を得ていること(被告信金第3準備書面第2の1ないし3(2頁ないし7頁),第8準備書面第2の り,消費者契約法4条3項5号に抵触する。 原告が死因贈与契約を締結することで多額の利益を得ていること(被告信金第3準備書面第2の1ないし3(2頁ないし7頁),第8準備書面第2の 原告は平成25年3月31日時点で1619万8362円の債務超過であり(甲36),平成24年度の寄付金はわずか16万9939円であったが,平成26年1月から家族代行サービス「Eの会」を発足し,平成27年度からは寄付金額が常時1000万円を超え,収益に対する寄付金の割合が突出して増加するようになり,平成30年度は5039万0273円もの多額の寄付を受けて,原告の財源構造及び寄付金受取状況は我が国のNPO法人の実態とは明らかに異なり異様なものであるが,これは身元保証契約に付随する死因贈与契約によるものである。 原告,安城市及び安城市社協との関係(被告信金第4準備書面第2の2(7頁),第5準備書面,第8準備書面第2の7(12頁,13頁))Aが入所していた安城市養護老人ホームは安城市が安城市社協にその運営を委託していたものであり,その施設長は安城市の職員が派遣されており,原告代表者の夫は福祉事務所の副所長として安城市社協を指導できる立場にあった。このような関係の中,安城市養護老人ホームの入所者のうち半分以上が原告と身元保証契約を締結している上,当時の安城市養護老人ホームの施設長である安城市職員のFが本件身元保証契約及び本件死因贈与契約の立会いをしており,原告と安城市との間の密接な関係があったもので,Aのほか多くの身寄りのない者が安城市養護老人ホームの生活相談員の斡旋で原告を紹介され,身元保証契約及び死因贈与契約を締結しているのであり,かかる原告の廉潔性には大きな疑義が残る。 定型の死因贈与契約書から不動産が除外され が安城市養護老人ホームの生活相談員の斡旋で原告を紹介され,身元保証契約及び死因贈与契約を締結しているのであり,かかる原告の廉潔性には大きな疑義が残る。 定型の死因贈与契約書から不動産が除外されていること(被告信金第8準備書面第2の8(13頁ないし15頁)) 原告は,死因贈与契約のひな型で贈与の対象財産として不動産を除外しており,利用者が建物等を有して死亡した場合,空き家として放置されることとなり,高齢者の現金・預金といった経済的な利益を得ながら,残された不動産の処分は責任を持たないというものである。 利益相反に当たること身元保証契約を締結した者は,その契約内容に沿って誠実にその履行を行い,費用の精算を行う必要があるが,死因贈与契約を締結することでその必要はなくなる上,できる限り,費用をかけないことで自己の利益が増大するから,身元保証契約を締結した者が死因贈与契約を締結することは利益相反である。 ウ原告の主張原告は特定非営利法人であり,本件死因贈与契約の目的は原告の運営費に充てるためである。Aは原告の活動に賛同して本件死因贈与契約を締結したものであり,本件死因贈与契約は何ら公序良俗に違反しない。なお,安城市社協は民間組織であり,安城市とは関連しない。 譲渡禁止特約被告らは,本件預金には譲渡禁止特約が締結されており,本件預金を移転することができないと主張したのに対し,原告は死因贈与契約の執行者としてその引出しを求めているものであり,譲渡禁止特約の効力は及ばないと反論した。したがって,本件第2の争点は,死因贈与契約の執行者である原告が譲渡禁止特約の効力により本件預金を引き出すことができないこととなるか否かの点である。 第3 争点に対する判断 1 当裁判所は,本件 たがって,本件第2の争点は,死因贈与契約の執行者である原告が譲渡禁止特約の効力により本件預金を引き出すことができないこととなるか否かの点である。 第3 争点に対する判断 1 当裁判所は,本件死因贈与契約は平成29年法律第44号による改正前の民法90条の定める公序良俗の規定に違反し,無効であると考える。以下,理由を述べる。 2 本件身元保証契約と本件死因贈与契約との関係について 前記のとおり,原告は身元保証契約を締結することについて,安城市養護老人ホームに対し,死因贈与契約も締結するように要望し,Aを除く5名の者と身元保証契約を締結するとともに死因贈与契約を締結している。安城市養護老人ホーム入所者の半数が身元保証契約を締結しており,その全ての者が死因贈与契約を締結しているわけではないが,原告代表者が安城市養護老人ホームに入所している方はあまりお金がなく(本人調書28頁),Aと契約締結した際,Aが唯一少しお金をもっていると見えた方であったので契約をした旨を供述していること(本人調書5,6頁)や原告代表者は,通常,身元保証契約とともに死因贈与契約書のひな型も所持し,一緒に死因贈与契約を締結しているとしていることからして,原告は,身元保証契約を締結した者のうちそれなりの財産を有する者について死因贈与契約を締結するように要求し,事実上,身元保証契約と死因贈与契約を一体として契約締結していたものと認められる。 3 本件身元保証契約を締結する必要性について前記のとおり,安城市養護老人ホームに対して Aの身元保証をしていたいとこが辞任したため,安城市養護老人ホームの生活相談員が原告を斡旋し,原告がAと本件身元保証契約を締結したものである。 しかしながら,前記のとおり,医師法は,正当な事由な 保証をしていたいとこが辞任したため,安城市養護老人ホームの生活相談員が原告を斡旋し,原告がAと本件身元保証契約を締結したものである。 しかしながら,前記のとおり,医師法は,正当な事由なく診療治療の求めを拒んではならないとされており(19条1項),各介護施設の基準省令においても,正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定められており(指定介護老人福祉施設の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)4条の2,介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)5条の2及び指定介護療養型医療施設の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第41号)7条),入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは,「正当な事由・理由」に該当しないとされ,安城市養護老人ホームはAに対し,保証人を求めることはできないところであった。しかも,前記のとおり,Aと原告が本件身元保証契約を締結した平成29年1月25日の前で ある平成28年3月7日に,厚生労働省老健局は,都道府県,政令市,中核市の全国介護保険・高齢者福祉担当課長会議において,介護保険施設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等において,介護施設が,身元保証人等がいないことをのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう,適切に指導・監督を行うように対応を求め,そのことは新聞等で報道されており,安城市における社会福祉事業の能率的運営と組織的活動を推進し,地域福祉の増進を図ることを目的とし,安城市からの受託金,負担金等で運営されている安城市社協が運営し,安城市職員が施設長である安城市養護老人ホームが厚生労働省令に反して身元保証契約を原告に対して斡旋すること自体極めて問題であり,原 し,安城市からの受託金,負担金等で運営されている安城市社協が運営し,安城市職員が施設長である安城市養護老人ホームが厚生労働省令に反して身元保証契約を原告に対して斡旋すること自体極めて問題であり,原告代表者は介護施設が身元保証をしないことを理由に退所を求めることができないことを認識しながら,本件身元保証契約を締結している(原告代表者の供述(本人調書26頁))。 したがって,本件身元保証契約を締結する必要はなく,Aが入所していた安城市養護老人ホームが身元保証を求めること自体極めて問題であり,原告はそのことを十分に認識していた上で,安城市養護老人ホームが身元保証人を付けるようにAに要求していることを奇貨として,本件身元保証契約を締結していたと認められる。 4 原告と安城市及び安城市社協との関係について安城市社協は安城市の社会福祉増進を図ることを目的に設立され,安城市からの受託金,負担金等で運営される社会福祉法人であり,安城市から安城市養護老人ホームの指定管理者とされ,その施設長は安城市の職員であった。そのような公的な立場にある安城市養護老人ホームの入所者の半数以上が原告との身元保証契約をし,Aを除く5名の者が死因贈与契約を締結していたものであるから,原告と安城市社協が運営する安城市養護老人ホームとの間には癒着構造があったものと言わざるを得ない。しかも,原告代表者の夫は福祉事務所の副所長を兼務しており,安 城市社協を指導できる立場にあり,安城市職員である安城市養護老人ホームの施設長を介して原告を斡旋していたとの疑いをぬぐえない。 5 本件身元保証契約について 明確性について本件契約書では,別表の登録料20万円,予備費5万円,身元保証料(管理費)15万円,万一の支援費用10万円,葬儀支援費用30万円, えない。 5 本件身元保証契約について 明確性について本件契約書では,別表の登録料20万円,予備費5万円,身元保証料(管理費)15万円,万一の支援費用10万円,葬儀支援費用30万円,納骨支援費用10万円の欄に○が付された上,上記のとおり料金が記載されているだけであり,契約内容は不明確といわざるを得ない。 履行可能性について身元保証契約の中核的な内容は,病院及び施設から退院・退所を求められた際,その身元を引き受けるということであるが,弁論の全趣旨によれば,原告は介護を必要とする高齢者の入所施設を有しておらず,事実上,契約者の身元を引き受けることは不可能である上,身元を引き受けるのであれば,契約の内容はそれに備えて入所施設及びその費用等が契約書に記載されるものと考えられる。したがって,原告は身元保証契約の中核内容である身元引受を履行することができないのに,その保証を行っていると認められる。 さらに,万が一の支援費用として10万円の契約内容となっており,これは医療行為が必要となった場合にその同意をすることを契約にしていると思われるが,医療行為の同意は代理になじまず,本人やその親族のみが行えるものと解されており,たとえ同意書に署名したとしても何らの効力も有しないと考えられ,契約内容となっているとは考え難い。 契約内容について本件身元保証契約書は家族代行サービス契約書と題されているが,Aは施設入所者であり,家族代行サービス,すなわち,家事サービス契約を締結する必要はない。 本件建議には,病院や施設等が身元保証人等に求めるものとしては,①入院費・施設等利用料の支払い,②債務(入院費,施設等利用料,損害賠償等)の保証,③ 本人生存中の退院・退所の際の居室等の明渡しや原状 病院や施設等が身元保証人等に求めるものとしては,①入院費・施設等利用料の支払い,②債務(入院費,施設等利用料,損害賠償等)の保証,③ 本人生存中の退院・退所の際の居室等の明渡しや原状回復義務の履行,④緊急の連絡先,⑤本人の身柄の引取り,⑥入院計画書やケアプラン等の同意,⑦医療行為(手術・予防接種等)の同意,⑧遺体・遺品の引取り・葬儀等が掲げられている。 この内,①及び②利用料の支払及び保証は安城市養護老人ホームが原告の預金を預かって事実上,預金管理をしており,本件身元保証契約の内容とする必要はない。 また,⑥のケアプランの同意もAは既に入所しており,その必要性はない。 結局のところ,本件身元保証契約の内容は,①病院に入退院する際の送迎,身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書に署名すること,②退院・退所の際に私物を撤去し,居室を明渡し,原状回復をすること,③死亡届,葬儀,火葬,収骨及び納骨などの死後事務であると解され,それ以外は不要な契約内容であり,登録料20万円及び身元保証料(管理費)15万円がいかなる契約に対するものなのか不明というほかない。 病院に入退院する際の契約についてア送迎について原告代表者の供述によれば,原告は,入院の付き添いを3回行ったと認められるが(本人調書17頁),原告代表者は,退院時には安城市養護老人ホームが付き添った旨の供述(同17頁)をしており,その義務を果たしていないことが認められる。そもそも,入退院の送迎は必要な着替え等を持参し,タクシー等に乗車して行えるものであり,この点について,安城市養護老人ホームがAに対して行うことができ,原告に委託する必要性が認められない。 イ身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書の提出について公益社団法人成 であり,この点について,安城市養護老人ホームがAに対して行うことができ,原告に委託する必要性が認められない。 イ身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書の提出について公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート(平成26年10月)の調査(本件建議(乙35)5頁)によれば,95.9%の病院で入院するに際し,身元保証人を求めていることが認められ,病院から身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書の提出を求められるのが通例であることが認められる。しかしながら,前記のとおり,医師法は正当な事由なく診療治療の求めを拒んでは ならないとし(19条1項),身元保証人がいないことが入院を拒否する正当な理由とはならないと解されており,前記のとおり,本件建議において,病院が身元保証人等のいないことのみを理由に入院等を拒む等の取扱いを行うことがないように措置を講ずるようにとの建議がされていたのであるから,安城市社協が運営する安城市養護老人ホームはAが入院するに際し,保証人がいないことをもって入院を拒否できないことを,安城市を介して愛知県に病院を指導するように求めるべきであり,安易に原告に身元保証を求めるべきではなかったというべきである。 しかも,Aは前記のとおり約620万円の預金を有しており,その支払がされないことは考えられないから,原告が医療費の支払を保証する必要性がない。また,前記のとおり,原告はAの身元を引き取ることができない。したがって,原告が病院に対して身元保証契約書を提出することでいかなる義務を負うこととなるか不明というほかない。 さらに,第三者に医療行為の同意を委ねることはできないと解されており,原告名義で緊急連絡先及び医療行為の同意書が提出されても,それがいかなる意味を有することとなるかも不明である。 というほかない。 さらに,第三者に医療行為の同意を委ねることはできないと解されており,原告名義で緊急連絡先及び医療行為の同意書が提出されても,それがいかなる意味を有することとなるかも不明である。 以上によれば,原告は入院時に,病院に対して身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書の提出をすることで,原告は本来,退院となった場合,Aの身元を引き取る義務を負うこととなるが,前記のとおり,原告がその履行を行うことを想定しているとは考えられず(退院しないことで発生する損害賠償請求についてもAがその義務を負ったとしても,原告がその賠償を負担することとなるとは事実上考え難い。),結局,原告が上記書類を病院に提出することによっていかなる義務を負担することとなるか不明というほかない。 死後事務についてア以上によれば,本件身元保証契約は,①原告が退所した際,その荷物を引き取り,居室の原状回復を行うことと,②死後事務に尽きると考えられる。そし て,原告が介護施設を移動するか,死亡するか以外に安城市養護老人ホームを退所することは考えられず,介護施設を移動する場合には施設間に荷物の引き継ぎがされることとなるから,さほど問題とならないと考えられる。 したがって,結局のところ,本件身元保証契約の主たる契約内容は死後事務を行うことと考えられる。 イ本件報告書(乙32)及び本件建議(乙35)について本件報告書では,死後に,介護施設側で実施することは概ねパターン化されており,身元保証人/身元引受人等に期待する役割の中で,整理が難しくトラブルになり易いのは,生前の対応に関するものと考えられるとされている上(59頁),本件建議で,死後事務については本人が確認するすべがないとされ,死後事務についての問題が 役割の中で,整理が難しくトラブルになり易いのは,生前の対応に関するものと考えられるとされている上(59頁),本件建議で,死後事務については本人が確認するすべがないとされ,死後事務についての問題が指摘されている。これによれば,Aについて身元保証契約を締結する必要があったか疑問である上,死後の事務は,病院・介護施設の費用の精算,死亡届提出,遺体の引取り,居室の原状回復,残存家財の処分,遺品の処分,葬儀,火葬,収骨,納骨,永代供養等と定型的であり,生前に見積りを行い,費用を体系化することが十分に可能であり,本件身元保証契約の内容を明確にすることは可能であったと認められる。 6 本件死因贈与契約について 原告の説明について本件死因贈与契約は公正証書ではなく,私署証書によるひな型の契約書によって作成されているところ,証人Fの証言(証人調書24頁,25頁)によれば,原告代表者は,本件身元契約及び本件死因贈与契約を締結するに際し,死後,葬儀を執り行い,納骨がされるお寺や葬儀の仕方などについてAの意向を一切確認していないことが認められる。本件建議で,終末期及び死後の事務処理に関する問題は,収入・資産の多寡を問わず,一人暮らしの高齢者にとって深刻な問題であることを指摘されており,葬儀のあり方や死後の財産の処分などを決めるに当たっては,高齢者の真意を確認できるように公正証書による遺言の形式をとるの が最も合理的であり,本件死因贈与契約は上記のように私署による死因贈与契約書で作成されている上,原告代表者は葬送という人間の終末の極めて深刻な問題について,ほとんど説明することなく本件死因贈与契約を締結しており,本件死因贈与契約の締結の在り方は極めてずさんで,問題であるといわざるを得ない。 死因贈与契約を 末の極めて深刻な問題について,ほとんど説明することなく本件死因贈与契約を締結しており,本件死因贈与契約の締結の在り方は極めてずさんで,問題であるといわざるを得ない。 死因贈与契約を締結する必要性及び消費者契約法4条3項5号の違反の点について前記のとおり,原告代表者は,身元保証人がいなくても介護施設が入所者に退所を求めることができず,新たに身元保証契約を締結する必要がないことを知りながら,本件身元保証契約を締結しており,証人Fの証言(証人調書9頁,10頁)によれば,原告代表者が本件死因贈与契約を締結するに際し,Aに対し,亡くなったときに銀行預金が引き出せなくなり,入院費用や葬儀費用が支払えないので死因贈与契約を締結して欲しい旨を述べて身元保証契約とともに死因贈与契約を締結する必要があるなどの説明をしていたことが認められる。原告は本件身元保証契約を締結した際,葬儀費用30万円,納骨費用として10万円のほか合計で90万円を受け取っており,Aの死後,葬儀費用等の支払ができないということは考えられず,原告が死後事務のため死因贈与契約を締結したとの趣旨は不明というほかない。 消費者契約法4条3項5号は,消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号,同年6月15日公布,令和元年6月15日施行)により規定されたものであり,本件死因贈与契約当時は施行されていなかったものではあるが,加齢等により判断能力が低下している事情を不当に利用して契約を締結させる消費者被害が発生していることを受けて,その被害を防止しようと立法化がされたものであり,同号が該当するか否かは公序良俗に該当するか否かを判断するに際し,重要な要素となるものと解される。 Aが本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結したのは81歳であり,加齢によ されたものであり,同号が該当するか否かは公序良俗に該当するか否かを判断するに際し,重要な要素となるものと解される。 Aが本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結したのは81歳であり,加齢によりその判断能力が著しく低下していた可能性が高いと思われる。そして, 前記のとおり,安城市養護老人ホームは入所者に対して身元保証人をつけるように求めており,入所者の半数以上が原告と身元保証契約を締結していることからして,安城市養護老人ホーム及び原告は,安城市養護老人ホームの入所者又は入所をしようとする者で身元保証人を付けることができない者に対して身元保証人がいないと安城市養護老人ホームには入所することができず,入所している場合には退所を要求されることがあり得ると思わせて身元保証契約を締結していたと認定するのが相当である。Aは身寄りがなく,いとこが身元保証人を辞任し,入所していた安城市養護老人ホームから新たな身元保証人をつけるように求められていたものであり,Aは身元保証人をつけなければ,安城市養護老人ホームから退所したり,病院に入院できないという現在の生活の維持に過大な不安を抱いていた状況であったと認められる。そして,原告代表者は,安城市養護老人ホームからAについて身元保証人がいなくなったため身元保証人となるように斡旋されたことを受けて,身元保証人がいないため安城市養護老人ホームを退所したり,病院に入院できないという過大な不安をAが抱いていることを知りながら,それを奇貨として,安城市養護老人ホームは身元保証人がいないからといってAに対して退所を求めることができず,身元保証契約を締結しなければならない正当な理由がある場合でないのに,本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結するように求め,Aをして本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を 所を求めることができず,身元保証契約を締結しなければならない正当な理由がある場合でないのに,本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結するように求め,Aをして本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結させたと認定するのが相当であり,原告代表者の行った行為は,高齢者のため契約締結について合理的な判断ができず,現在の生活環境を維持することについての不安に付け込んで契約を締結するのを阻止することを目的とする消費者契約法4条3項5号に抵触するといわざるを得ない。 暴利性について甲40ないし42及び原告代表者の供述(本人調書17頁ないし21頁)によれば,原告が実際に行った業務は,生前の業務としては,Aの入院時に2,3回付き添い,1回見舞いに行ったこと以外は病院の入院時に身元保証,緊急の連絡 先及び医療同意書に署名したというものであり,死後事務として,病院長が作成した死亡届を役所に提出し,遺体引取り,私物の引取り,葬儀会社に依頼して1日葬をし,遺体の火葬及び収骨をし,一時的に記念寺に遺骨を安置し,半年から1年後,原告が建立した地蔵院の永代供養塔に納骨したものであり,葬儀費用は32万1840円(甲40,41)ほどであり,医療保険から5万円の支給(甲42)がされ,全部で経費が50万円ほどであったと認められる。 上記事務は,原告がAの身の回りの世話をするというものではなく,ほんのわずかな付添いと書類への署名及び葬儀等の手配にすぎないのに,原告は,Aから本件身元保証契約を締結し,90万円の料金を受け取っており,これ自体対価的不均衡が生じている上,原告は本件死因贈与契約を締結することで本件預金620万9405円を取得しようとしており,明らかに対価性を欠き暴利行為といわざるを得ない。原告は,A以外にも前記のとおり,Gと 不均衡が生じている上,原告は本件死因贈与契約を締結することで本件預金620万9405円を取得しようとしており,明らかに対価性を欠き暴利行為といわざるを得ない。原告は,A以外にも前記のとおり,Gと160万円で身元保証契約を締結するとともに別件死因贈与契約を締結し,預金4339万3883円を取得しようとしてGの遺族と訴訟となり,その後,和解をしてかなりの金銭を取得しており,原告は,身元保証契約を締結するとともに死因贈与契約をも締結することで,それにかかる経費及び労力に対してはるかに多大で対価性を欠く利益を取得していることが認められる。 死因贈与契約を締結する動機及び原告の収益構造について甲36,前記争いのない事実等によれば,原告は平成25年5月からホームDaの運営を開始し,平成25年3月31日時点で1619万8362円の債務超過であり(甲36),平成24年度の寄付金はわずか16万9939円であり,経営が窮地に立っていたと認められる。ところが,平成26年1月から家族代行サービス「Eの会」を発足し,平成26年度からは寄付金額が常時1000万円を超え,収益に対する寄付金の割合が1割を超えるようになり,平成30年度は5039万0273円もの多額の寄付を受け,収益に対する寄付金の割合は約27%となっていることが認められる。乙12(54頁)によれば,遺贈寄付を受 けた特定非営利活動法人の割合は全体で1.4%,認定・特例認定法人で5%,非認定法人で0.4%であり,原告の財源構造及び寄付金受取状況は我が国の特定非営利活動法人の実態とは明らかに異なり異様なものである。このような実態に照らし,原告に対して遺贈寄付をするのは原告の事業に対する理解によるというのものではなく,遺贈者は原告から身元保証契約を締結するに付随し 法人の実態とは明らかに異なり異様なものである。このような実態に照らし,原告に対して遺贈寄付をするのは原告の事業に対する理解によるというのものではなく,遺贈者は原告から身元保証契約を締結するに付随して死因贈与契約を締結することを求められ,身元保証契約を締結するためにそれに応じているからと認定するのが相当であり,原告が多額の遺贈寄付を集めることができるのは身元保証契約に付随して死因贈与契約を締結し,遺贈寄付を受けていることによるというべきである。そして,原告の収益構造は明らかに遺贈寄付に依存していると認められ,原告が家族サービスEの会を発足し,身元保証契約を締結する事業を行っているのは多額の死因贈与を受けることがその目的の1つとなっていることは明らかといわざるを得ない。 第三者による履行確認について前記のとおり,原告は本件死因贈与契約を締結した上,その契約内容として執行者を原告としており,原告は,本件死因贈与契約の執行者として,Aの死後,その死後事務を行った後の精算金を含めてAの遺産を原告は引き渡すということとなるから,Aの遺族は契約が適切に履行されているか否かを確認することができないこととなり,原告が適切に債務を履行しなかったとしても責任を問われることがあり得なくなる。 したがって,この点でも本件死因贈与契約は問題である。 死因贈与契約の対象として不動産が除かれている点について原告は,死因贈与契約のひな型で不動産を死因贈与の対象から除いており,契約者が不動産,特に建物を有している場合には,それが空き家となり,相続した遺族(通常は遺留分権ではないと思われる。)は不動産以外に遺産がなく,不動産価格が処分費用を上回る場合には負債しか相続しないということとなる。また, 相続 それが空き家となり,相続した遺族(通常は遺留分権ではないと思われる。)は不動産以外に遺産がなく,不動産価格が処分費用を上回る場合には負債しか相続しないということとなる。また, 相続人がいない場合には,空き家が放置されることとなり,付近住民やその自治体に多大な負担を強いることなる。 ところで,原告は,Gについてはその所有不動産を生前に購入しており,契約者が不動産を有し,それが価値を有する場合は,その生前に原告が購入するとの契約を締結し,事実上,その価値を取得していると認められる。 したがって,死因贈与契約のひな型で遺贈対象から不動産を除外する原告の運用は空き家を放置するという結果を生むものであり,極めて問題でといわざるを得ない。 死後事務との利益相反性について死後事務の契約しながら死因贈与契約を締結することは,死後事務の費用を削減すればするほど死因贈与契約によって得られる利益が増加することとなるから,利益相反性が認められ,この点でも問題である。 7 結論以上によれば,①原告は身寄りのない安城市養護老人ホームの入所者である程度財産がある者に対して身元保証契約を締結するに際して死因贈与契約も締結することを求めており,Aも本件身元保証契約を締結するに付随して本件死因贈与契約を一体として締結したこと,②介護施設が身元保証人がいないからといって入所者に対して退去を求めることは厚生労働省令で認められておらず,安城市社協が運営する安城市養護老人ホームは本来,Aに対して新たな身元保証人を求めることはできず,本件身元保証契約を締結する前に厚生労働省が都道府県に対してそのようなことがないように指導を求めているのに,安城市養護老人ホームはAのいとこが身元保証人を辞任すると原告 保証人を求めることはできず,本件身元保証契約を締結する前に厚生労働省が都道府県に対してそのようなことがないように指導を求めているのに,安城市養護老人ホームはAのいとこが身元保証人を辞任すると原告を斡旋し,これによって原告は本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結しており,Aが締結する必要がないのに,Aがそれを認識しておらず,安城市養護老人ホームが身元保証人を付けるように要求していることを奇貨として,本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結していること,③安城市養護老人ホームを運営する安城市社協は同ホームの施設長として安城市職員を 受けているなど安城市の外郭団体として安城市と密接な関係を有しており,公的な機関であるのに安城市養護老人ホームの入所者の半数以上が原告と身元保証契約を締結しており,原告との癒着が認められる上,その背景に原告代表者の夫が安城市社協を指導する立場にある社会福祉事務所の副所長であったことなどからして,安城市及び安城市社協と原告との間に癒着構造が認められ,それが基礎となって本件身元保証契約及び本件死因贈与契約が締結されていること,④本件身元保証契約の内容の中核である利用者が病院・介護施設から退院・退所を求められた場合に,原告はその身元を引き受けることができず,債務の履行可能性がない上,本件身元保証契約書は家族代行サービス契約書と題されているが,Aは施設入所者であり,家族代行サービスが契約内容とはなっておらず,また,Aは約620万円もの預金を有しており,安城市養護老人ホームが保証を求めることは考えらないことや契約書では原告の債務内容が明らかではなく,いずれにしても本件身元保証契約は契約内容が不明確であり,登録料20万円及び身元保証料(管理費)15万円の内容が不明で,問題があること,⑤本件身元保証契約で 約書では原告の債務内容が明らかではなく,いずれにしても本件身元保証契約は契約内容が不明確であり,登録料20万円及び身元保証料(管理費)15万円の内容が不明で,問題があること,⑤本件身元保証契約で,Aが病院に入院する際,身元保証契約書,緊急連絡先及び医療行為の同意書に署名することが契約内容となっていると解されるが,上記のとおり,原告はAの身元を引き取ることを想定していない上,Aは約620万円の預金を有しており,病院が保証を求める必要がなく,医療行為は第三者が同意権を有することは認められないと解されており,結局のところ,原告が身元保証契約,緊急連絡先及び医療行為の同意書を病院に提出することでどのような法的義務を負うこととなるか不明であること,⑥本件身元保証契約及び本件死因贈与契約の内容として死亡届,葬儀,火葬,収骨及び納骨などの死後事務が含まれると解されるが,これらの事務は定型的であり,葬儀社などの外部者にその事務処理を委託できるものであるから,介護施設にとってその事務処理に問題が生じることはほとんどなく,安城市養護老人ホームが原告に入所者の死後事務処理の委託を斡旋する必要性があまりない上,これらの事務は葬儀社に見積りを提出させるなどして費用体系を明らかにすることが容易であるのに原告はそれを行ってお らず,契約上,この事務に対する契約額が明確でなく,問題であること,⑦本件死因贈与契約は公正証書によるものではなく,私署証書によるものであり,Aの意思確認を確実にしているとはいえない上,原告代表者はその説明をほとんどしておらず,契約締結課程に問題があったといわざるを得ないこと,⑧原告代表者は,介護施設が身元保証人がいなくても退所を求めることができず,新たに身元保証契約を締結する必要がないことを知りながら,本件身元保証契約を締結し 課程に問題があったといわざるを得ないこと,⑧原告代表者は,介護施設が身元保証人がいなくても退所を求めることができず,新たに身元保証契約を締結する必要がないことを知りながら,本件身元保証契約を締結した上,Aに対し,亡くなったときに銀行預金が引き出せなくなり,入院費用や葬儀費用が支払えないので死因贈与契約を締結して欲しい旨の説明をしており,本件死因贈与契約を締結する趣旨が不明である上,いとこが保証人を辞任し,保証人をつけなければ,安城市養護老人ホームを退所しなければならないかもしれないというAの不安に乗じて,原告は退所する必要がないことを知りながら本件身元保証契約及び本件死因贈与契約を締結しており,原告の行為は判断能力の衰えた高齢者の保護を図る消費者契約法4条3項5号に抵触すること,⑨原告が負担する死後事務処理の費用は50万円ほどであるのに,本件身元保証契約で90万円を受け取っている上,本件身元保証契約と一体として締結された本件死因贈与契約はAの預金約620万円を受け取るというものであり,明らかに対価性を欠き暴利であるといわざる得ない上,A以外にGとも別件死因贈与契約を締結し,Aの預金約4300万円を取得しようとし,Gの遺族と訴訟となり,和解をしてかなりの金銭を受け取っていること,⑩原告はA以外にも身元保証契約を締結するに付随して一体として死因贈与契約を締結し,それに含めて寄付金による収益が常時年間1000万円を超え原告収益の1割を超えるまでになっており,平成30年度は寄付金が5000万円を超えており,原告が「Eの会」を発足し,身元保証契約を事業とする目的のひとつが多額の寄付金を獲得するためであること,⑪本件死因贈与契約を締結し,その執行者を原告とすることでAの遺族がAの死後事務を適切に行ったことを確認することができなくなっており,この とする目的のひとつが多額の寄付金を獲得するためであること,⑪本件死因贈与契約を締結し,その執行者を原告とすることでAの遺族がAの死後事務を適切に行ったことを確認することができなくなっており,この点でも本件死因贈与契約は問題であることなどの事情に照 らすと,本件死因贈与契約は平成29年法律第44号による改正前の民法90条の規定する公序良俗に違反し,無効であると認定するのが相当である。 第4 以上の次第で,その余の点を判断するまでもなく,本件死因贈与契約は公序良俗に反し,無効であり,原告の本件各請求は理由がないからいずれも棄却し,訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所岡崎支部 裁判官近田正晴 (別紙)預金債権目録 金融機関 H信用金庫I支店 口座番号 ●●●●●●● 口座種類普通預金 口座名義 A 預金残高 620万9405円(平成30年7月24日現在)
▼ クリックして全文を表示