主文 被告人を懲役6年及び罰金80万円に処する。 未決勾留日数中220日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 法定の除外事由がないのに,平成14年9月23日ころから同月30日ころまでの間,兵庫県内又はその周辺において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン若干量を自己の身体に摂取し,もって,覚せい剤を使用した第2 分離前の共同被告人A及び氏名不詳者らと共謀の上,営利の目的で,同月30日午前8時50分ころ,神戸市a区bc丁目d番地所在のe東側駐車場において,分離前の共同被告人Bから,同人が自己の支配下において本邦に上陸させた集団密航者であるCら8名を,同所に待機させた普通乗用自動車に乗車させて引渡しを受け,もって,集団密航者を本邦に上陸させた者からその外国人の全部を収受したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明)被告人及び弁護人は,判示第1の事実について,被告人の尿から覚せい剤成分が検出された事実は争わないが,被告人は全く身に覚えがない,ただし,被告人が中国に渡航した際,知人から精力剤として譲り受けて服用した錠剤に覚せい剤成分が含まれていた可能性があり,被告人は覚せい剤をそれとは知らずに体内に摂取したものであるから無罪であると主張するところ,前掲関係各証拠によれば,判示第1の事実は優に認められるのであるが,その理由について補足して説明する。 前掲関係各証拠によれば,平成14年10月2 摂取したものであるから無罪であると主張するところ,前掲関係各証拠によれば,判示第1の事実は優に認められるのであるが,その理由について補足して説明する。 前掲関係各証拠によれば,平成14年10月2日採取された被告人の尿から覚せい剤成分が検出されたこと,覚せい剤の尿中への排泄限度(体内残留期間)が一般に1週間ないし10日程度であること,被告人が平成14年9月23日ころから判示第2の事実で逮捕された同月30日までの間,兵庫県内またはその周辺に所在したことが認められるところ,覚せい剤は厳格に規制された薬物であって,日常生活の中で知らない間にこれが体内に吸収されることは通常あり得ないことであるから,前記認定の各事実によれば,被告人の意に反して体内に覚せい剤が摂取されたことについて,合理的弁解がたつなど特別の事情のない限り,被告人が判示期間に,判示兵庫県内又はその周辺において,自己の意思により覚せい剤を使用したことが合理的疑いを超えて認定できるというべきである。 そこで,被告人の弁解について検討すると,被告人は,当公判廷において,平成14年9月2日から同月13日まで中華人民共和国(以下「中国」という。)に渡航したが,その間,Dなる人物と知り合い行動を共にするうち同人から精力剤と称する錠剤(白色錠剤4錠,アルミ箔製包装袋入り茶色錠剤2錠)をもらい受け,前記錠剤のうち,白色錠剤4錠と茶色錠剤のうち1錠は9月13日ころに中国で服用し,茶色錠剤のうち1錠は,日本に帰国後の同月24日ころに服用したが,これに覚せい剤成分が含まれていたとしか思えず,当時,自分はこれら錠剤に覚せい剤成分が含まれていることを全く知らなかったと供述する。 しかしながら,前記のとおり,覚せい剤の体内残留期間に関する知見(1週間ないし10日程度)によれば,時期的に見て,被告人の尿 れら錠剤に覚せい剤成分が含まれていることを全く知らなかったと供述する。 しかしながら,前記のとおり,覚せい剤の体内残留期間に関する知見(1週間ないし10日程度)によれば,時期的に見て,被告人の尿から検出された覚せい剤成分は,被告人の供述する中国滞在中に服用した錠剤によるものでないことは明らかである。次に,日本に帰国後の同月24日ころに服用したとする茶色錠剤の点について検討すると,被告人は,捜査段階においては,これらの錠剤につき茶色の錠剤も含め全て中国滞在中に服用した旨供述していたのに,公判廷においては前記のとおり茶色の錠剤のうち1錠を帰国後日本で服用した旨その供述を変更し,格別の理由なく,茶色の錠剤の服用時期についてその供述を著しく変遷させたことが認められる。そして,前掲鑑定書(116)及び証人Eの証言によれば,前記被告人の尿1ミリリットル中から20マイクログラムもの高濃度の覚せい剤成分が検出されたことが認められ,その分析によれば,前記被告人の尿は,覚せい剤が体内に摂取されてから3日目位の尿である可能性が高いと認められるから,茶色錠剤1錠を同月24日ころに服用した旨の前記被告人の弁解もまた,時期的に見て成立しないというべきであるが,その弁解の変遷は,被告人の尿中から検出された覚せい剤成分が高濃度であって,中国渡航中に前記各錠剤を服用したためであるとの弁解が通用しないと判明するや俄になされたものと窺われるのであって,そもそも,その弁解供述自体が到底信用できるものではない。 以上のとおり,被告人及び弁護人の主張は理由がない。 (累犯前科)被告人は,平成10年3月25日札幌地方裁判所で覚せい剤取締法違反罪により懲役2年6月に処せられ,平成12年11月10日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(検 被告人は,平成10年3月25日札幌地方裁判所で覚せい剤取締法違反罪により懲役2年6月に処せられ,平成12年11月10日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号71)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第2の所為は刑法60条,出入国管理及び難民認定法74条の4第2項,1項にそれぞれ該当するところ,被告人には前記の前科があるので刑法56条1項,57条により判示第1の罪の刑及び第2の罪の懲役刑にそれぞれ再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の,罰金刑についてはその所定金額の範囲内で被告人を懲役6年及び罰金80万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中220日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,覚せい剤を自己使用した覚せい剤取締法違反の事案(判示第1)と分離前の共同被告人Aらと共謀の上,営利の目的で,分離前の共同被告人Bから,同人が本邦に上陸させた集団密航者8名を,待機させた普通乗用自動車に乗車させて引渡しを受け収受した出入国管理及び難民認定法違反の事案(判示第2)である。 覚せい剤使用の点について見ると,被告人はこれまで累犯前科を含む同種前科8犯があるにもかかわらず,格別の理由なく,再び覚せい剤を使用したものであって,被告人の覚せい剤に対する親和性,依存性には根深 覚せい剤使用の点について見ると,被告人はこれまで累犯前科を含む同種前科8犯があるにもかかわらず,格別の理由なく,再び覚せい剤を使用したものであって,被告人の覚せい剤に対する親和性,依存性には根深いものがあるが,被告人は本件覚せい剤使用につき不合理な弁解に終始して反省の態度が全く見られないなど,犯情は悪く,再犯のおそれも懸念される。 次に,出入国管理及び難民認定法違反の点について見ると,その犯行は,暴力団員であった被告人やいわゆる蛇頭関係者ら国内外の多数の者が関与して,営利目的による集団密航犯罪を請負い,周到な準備の上,組織的計画的に敢行されたものであるが,直後に検挙されたとはいえ,この犯行により,8名の密入国者がいったんは本邦に上陸したのであり,我が国の出入国管理秩序を脅かした重大かつ悪質な事案であるところ,被告人は,報酬を受領する約束の下,集団密航者らを収受,運搬するためにレンタカーを借り,その運転手役を果たすなど,犯行の日本側の受け入れ役として不可欠ともいうべき重要な役割を果たしたこと,加えて,被告人は,犯行を認めているものの,共犯者らとの関わり等については曖昧な供述に終始しており,その遵法精神の乏しさは深刻であり,これらの事情に徴すると,その刑事責任は重いというべきである。 そうすると,被告人の刑事責任は重大であって,判示第2の犯行について集団密航者らが上陸直後に検挙されたこと,被告人は報酬を受領していないこと,被告人が暴力団組織からの離脱を表明し,今後は老齢の実母の下で真面目に生活する旨述べていることなど,被告人のためにしん酌すべき事情をいかに考慮しても,主文の刑は免れない。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年8月8日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森 主文 べき事情をいかに考慮しても,主文の刑は免れない。よって,主文のとおり判決する。 平成15年8月8日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二 裁判官橋本一 裁判官沖敦子
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