【DRY-RUN】主 文 控訴人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中控訴人Bに関する部分を取消す。 控訴人Bに対する被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用中控訴人Aと被控訴人間
主文 控訴人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中控訴人Bに関する部分を取消す。 控訴人Bに対する被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用中控訴人Aと被控訴人間に当審において生じた分は同控訴人の負担とし、控訴人Bと被控訴人間に生じた分は第一、二審共被控訴人の負担とする。 事実 控訴人等代理人は「原判決中控訴人等に関する部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は左記を附加する外原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。 控訴人等代理人は抗弁として、仮に亡Cの遺言が有効であるとしても被控訴人がこの遺言により別紙目録記載の不動産(以下本件不動産という。)の包括遺贈を受けたとしてその所有権を主張し、右Cの代襲相続人である控訴人Aの所有権を否認する為には先ず同控訴人に対し相続回復請求権を行使して自己に相続権のあることを確定することを要し、かかる手続を経ることなく直ちに所有権の主張をすることは許されない。 このことは民法第八百八十四条の法意に照らし明らかである。 と述べ、被控訴代理人は、包括受遺者については民法第八百八十四条の適用ないし準用はないと解すべきであるから被控訴人において先ず同条の相続回復請求権を行使することを要するとする控訴人等の主張は失当である。と述べ、立証として、新たに、被控訴代理人は当審における証人D及び被控訴本人の尋問を求め、なお原判決六枚目表一行目に「筆跡鑑定の結果」とあるのを「鑑定人Eの鑑定の結果」と訂正する。と述べ、控訴人等代理人は当審における証人F及び控訴本人Aの各尋問を求めた。 理 を求め、なお原判決六枚目表一行目に「筆跡鑑定の結果」とあるのを「鑑定人Eの鑑定の結果」と訂正する。と述べ、控訴人等代理人は当審における証人F及び控訴本人Aの各尋問を求めた。 理由 第一、 被控訴人が訴外亡Cの四男であり、控訴人Aが同訴外人の長男である亡Gの庶子女であること、右Cは昭和十年七月十二日死亡しその法定の推定家督相続人であつた右Gは既に昭和三年四月三十日死亡していたので控訴人Aが代襲相続によりCの家督を相続したことは、いずれも当事者間に争いがない。 第二、 そこで、先ず被控訴人主張の包括遺贈の有無について考察する。 原審証人Dの証言(第一、二回)によれば甲第二号証中末尾のCの氏名は前記亡Cの自署したものであることを認めうべく、この事実と右甲第二号証の存在、原審証人Hの証言、原審竝びに当審における証人Dの証言(原審第一回)及び被控訴本人の尋問の結果竝びに原審鑑定人Eの鑑定の結果とを綜合して真正に成立したものと認められる甲第一号証の一、二竝びに成立に争いのない甲第六号証によれば、右Cはその生前昭和六年十月二十九日附を以て「おれがけんりの物はみな好治にゆずる。きようだいに平きん百五十円ずつゆずりとしてくれる事、ちいのに百五十円ゆずりとしてくれる事」等の文言を記載した自筆の遺言書(甲第一号証の一、二)を作成していたことが認められる。(後に認定する通り、この遺言書は昭和二十六年八月十三日頃に至りはじめて被控訴人が発見した。)控訴人等は右遺言書は偽造のものであると主張するけれども右主張に副うが如き原審竝びに当審における証人Fの証言及び控訴本人Aの尋問の結果は前記引用の各証拠に照らし信を措き難く、他に右主張を肯認するに足る証拠はない。右遺言書によれば、Cは自己の遺産の全部をその内から控訴人A及び被控訴人の兄弟姉 証人Fの証言及び控訴本人Aの尋問の結果は前記引用の各証拠に照らし信を措き難く、他に右主張を肯認するに足る証拠はない。右遺言書によれば、Cは自己の遺産の全部をその内から控訴人A及び被控訴人の兄弟姉妹等に対しそれぞれ金百五十円宛を贈与すべき負担附にて被控訴人に対し包括遺贈したものと解すべく、本件不動産が元Cの所有に属し同人死亡当時その遺産に属するものであつたことは控訴人等の明らかに争わないところであるから、被控訴人は右遺贈によりCより本件不動産を承継取得したものというべきである。(控訴人Aが遺留分権利者として有した右遺贈に対する減殺請求権が既に時効により消滅したことは当事者間に争いがない。)控訴人等は、右遺言書の文言からは本件不動産が被控訴人に遺贈されたものと断定できないというけれども、かかる主張の理由ないことは前記説明の通りである。 第三、 そこで更に、控訴人等の抗弁について順次判断する。 (一) 時効取得の抗弁について。 控訴人Aは民法第百六十二条第二項によりCの死亡後十年の経過により、仮にそうでないとしても同条第一項により同死亡後二十年の経過により、本件不動産の所有権を時効により取得したと主張するけれども、同控訴人が右の期間所有の意思を以て本件不動産を占有していた事実は控訴人等の提出援用にかかるすべての証拠によるもこれを認め難く、却て成立に争いのない乙第一、二号証、原審証人H、I、J、原審及び当審における証人D(原審第一回)、Fの各証言、原審及び当審における被控訴本人及び控訴本人Aの各尋問の結果を綜合すれば、控訴人Aは大正十二年一月二十二日生でC死亡当時は満十二歳でありしかもC死亡の前年である昭和九年頃より昭和十四年頃迄の間群馬県桐生市所在の知人宅に住込で女中奉公をしていた関係から、Cの死亡当時同控訴人はCの遺産の内容所在等を殆 二日生でC死亡当時は満十二歳でありしかもC死亡の前年である昭和九年頃より昭和十四年頃迄の間群馬県桐生市所在の知人宅に住込で女中奉公をしていた関係から、Cの死亡当時同控訴人はCの遺産の内容所在等を殆ど承知していなかつたこと、一方被控訴人はCの四男であるが、Cの長男Gは前記の通り昭和三年四月三十日死亡し、次男Hは大正十五年中I家に養子に入り、三男も亦さきに夭折しCの子の内男子であつてC家にあるものは被控訴人一人であつた関係から、Cは生前よりその死亡後の遺産は全部被控訴人に譲る旨を洩らしていたので、被控訴人はCの死亡以来その遺産の全部を自己の所有物として管理し、これに対し控訴人Aは勿論同人の後見人であつたDその他親戚一同何等の異議なく、かかる状態が昭和二十六年中迄継続したこと、控訴人Aは昭和二十七年四月頃居住地民生委員に生活扶助を申請した際役場係員より注意を受けてCの遺産につき調査をした結果、本件不動産がCの遺産に属することを知り爾来家督相続による所有権取得を主張して本件不動産に関し被控訴人との間に紛争を生ずるに至つたことを各認めることができ、この認定を覆すべき証拠は他に存しない。右認定の事実関係からすれば、C死亡後少くとも昭和二十六年頃迄の間は被控訴人が所有の意思を以て本件不動産を占有していたのであつて、その間控訴人Aが自ら、又は同人の後見人Dが同控訴人の為に、各所有の意思を以てこれを占有していたような事実はないと認めるのが相当である。従つて控訴人AがCの死亡後十年又は二十年間本件不動産を占有していたことを前提とする右抗弁は理由がない。 (二) 相続回復請求により相続権の確定を要する旨の抗弁について。 民法第八百八十四条に定める相続回復の請求は、法律上真正の相続人でないに拘らず戸籍簿に相続人として登載せられている者等いわゆる表見相続人が 相続回復請求により相続権の確定を要する旨の抗弁について。 民法第八百八十四条に定める相続回復の請求は、法律上真正の相続人でないに拘らず戸籍簿に相続人として登載せられている者等いわゆる表見相続人がある場合に、真正の相続人がその者に対し侵害せられた自己の相続権の回復を求めるものであるところ、本件において、控訴人Aは前記の如く代襲相続によりCの家督を相続したものであつて右の如き表見相続人ではないのであるから同控訴人に対し相続回復の請求をなしうべき限りでない。民法第八百八十四条の規定が包括受遺者に適用乃至準用ありとしても、元来右規定は、相続財産を一括して請求することなく相続財産を構成する個々の財産の返還を請求することを妨げるものではない。これと異る前提に立つ控訴人等の抗弁の理由ないことは明らかである。 (三) 権利濫用の抗弁について、控訴人等は、被控訴人がCの死亡後十七年間も本件遺言書を発見しなかつたのは重過失であり、為に控訴人Aの遺留分減殺請求権を行使不能に陥らしめ右請求権が時効により消滅するのを待つてCの遺産全部につき所有権を主張する本訴請求は権利の濫用であるというのであるが、原審竝びに当審における証人D(原審第一回)、Fの各証言、被控訴本人及び控訴本人Aの各尋問の結果を綜合すれば、前記Cの遺言書はCの死亡後十六年余を経過した昭和二十六年八月十三日頃に至りはじめて被控訴人が自宅の仏壇抽斗内より発見したのであるがその後昭和二十七年四月頃控訴人Aが前記の如き事情からCの遺産について調査を始め家督相続による自己の権利を主張するに及び同年六月頃になつて被控訴人は右遺言書を同控訴人その他親戚一同に披露したことを認めることができるのであつて、右遺言書の発見がおくれたことは控訴人等主張の通りであるけれども、そのことにつき被控訴人に故意又は過失の つて被控訴人は右遺言書を同控訴人その他親戚一同に披露したことを認めることができるのであつて、右遺言書の発見がおくれたことは控訴人等主張の通りであるけれども、そのことにつき被控訴人に故意又は過失の責任があるものとは認められず、たといその間において控訴人Aが自己の遺留分減殺請求権を行使することが不能であつたとしてもその為に被控訴人の本訴請求が権利の濫用であるとすることは相当でない。又右の各証拠によれば被控訴人は本件不動産を別にしてなお約一町三段歩の田畑を所有するに反し控訴人Aには格別の資産なく内縁の夫Fとの間に五人の子女を抱えその生活は必ずしも楽ではないことを窺い得べく、又、被控訴人及び控訴人Aの身分関係は前記第一に記載の通りであつて家督相続制度を認めていた当時の観念からすれば控訴人Aはその主張の如くC家の本家継承者であるといいうるけれども、そうだからといつて被控訴人の本訴請求が権利の濫用であるとすることはできない。 又控訴人等の主張する被控訴人より控訴人Aに対する金員の贈与については同控訴人より被控訴人に対しこれが履行を求めるは格別、被控訴人が未だ右金員の贈与を同控訴人に対し実行していないとしても(この点は被控訴人の明らかに争わないところである。)その為に本訴請求が権利の濫用となるものではない。その他控訴人等の主張するところはいずれも被控訴人の本訴請求が権利の濫用であると認むべき事由とするに足らないのであつて、この点に関する控訴人等の抗弁も亦採用できない。 (四) 対抗力についての抗弁について。 本件不動産の内別紙目録第一ないし第三の田三筆につき昭和三十一年四月二十三日前橋地方法務局K出張所受附第一、〇九八号を以て控訴人Aの為に家督相続による所有権取得登記がなされ、同目録第四の宅地につき同年四月二十三日前同出張所受附第一、一〇〇号 につき昭和三十一年四月二十三日前橋地方法務局K出張所受附第一、〇九八号を以て控訴人Aの為に家督相続による所有権取得登記がなされ、同目録第四の宅地につき同年四月二十三日前同出張所受附第一、一〇〇号を以て控訴人Aの為に所有権保存登記及び同年七月二十六日前同出張所受附第二、二〇四号、同年八月二日同出張所受附第二、二七二号を以て控訴人Bの為に被控訴人主張の如き抵当権設定登記と所有権移転請求権保全の仮登記がなされ、同目録第五の畑につき前同出張所同年四月二十三日受附第一、〇九九号を以て控訴人Aの為に家督相続による所有権取得登記がなされたことはいずれも当事者間に争いなく、右争いない事実と原審証人Lの証言、原審竝びに当審における証人Fの証言及び控訴本人Aの尋問の結果を綜合すれば、控訴人Bは昭和三十一年七月十九日控訴人Aに対し貸与した金十万円の担保として別紙目録第四の宅地につき抵当権の設定を受け次で同控訴人との間に右消費貸借に基く債務の不履行の場合には代物弁済として右宅地の所有権を取得すべき旨の停止条件附代物弁済契約を締結し控訴人Bにおいてその旨の前記各登記を経由したものと認めることができ<要旨>る。この認定を覆すべき証拠はない。被控訴人は前記の通りCより本件不動産の包括遺贈を受けその遺贈の</要旨>効力はC死亡の時において生じたものであるけれども、民法第百七十七条によりその遺贈による所有権取得の登記をしなければその取得を以て第三者に対抗することができないのであつて、Cの家督相続人である控訴人Aが同条に所謂第三者に該当しないことは明らかであるけれども、右の如くCの家督相続人である控訴人AよりCの遺産に属する前記宅地につき抵当権及び代物弁済に関する権利を取得しその旨の登記及び仮登記を経由した控訴人Bは同条に所謂第三者に該当するものと解するのが相当である Cの家督相続人である控訴人AよりCの遺産に属する前記宅地につき抵当権及び代物弁済に関する権利を取得しその旨の登記及び仮登記を経由した控訴人Bは同条に所謂第三者に該当するものと解するのが相当である。被控訴人が本件不動産につき遺贈による所有権取得登記を経由していないことはその主張自体に徴し明らかであるから、その内前記宅地については被控訴人は自己の所有権を控訴人Bに対し主張することができないものというの外はない。これに反する被控訴人の見解は当裁判所の採用しないところである。この点に関する控訴人Bの抗弁は理由があるものといわねばならない。 第四、 よつて被控訴人の本訴請求中控訴人Aに対する所有権確認及び抹消登記手続の請求はいずれも理由ありとして認容すべく、これと同旨の原判決は相当であるから同控訴人の本件控訴を棄却し、控訴人Bに対する所有権確認及び抹消登記手続の請求はいずれも理由がないから棄却すべく、これと異る原判決は不当であるから取消し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十六条、第九十五条、第八十九条を適用し主文の通り判決する。 (裁判長判事奥田嘉治判事岸上康夫判事下関忠義)
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