- 1 -主文 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 主位的請求渋谷区長が平成19年10月30日付け開発許可第○号をもってした別紙物件目録記載の土地に係る開発許可が無効であることを確認する。 予備的請求渋谷区長が平成19年10月30日付け開発許可第○号をもってした別紙物件目録記載の土地に係る開発許可を取り消す。 第2事案の概要本件は,渋谷区長が別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)。 に係る開発行為について都市計画法(平成20年法律第40号による改正前のもの。以下「法」という)29条1項に基づく許可をしたことに関し,本件。 土地の近隣等に居住する原告らが,同許可は,開発許可権限のない者がしたものであり,また,法33条1項に定める開発許可の基準に適合しないという違法があると主張して,主位的にその無効確認を求め,予備的にその取消しを求める事案である。 前提事実(争いのない事実及び文中記載の証拠等により認められる事実)(1) 原告らア原告Aは,本件土地の北側に隣接して所在する土地を所有し,同土地上に建物を所有して,同建物に居住する者である。原告Bは,原告Aの妻で,。 (「」。)あり同建物に居住する者である同原告ら以下原告Aらというの住居は,別紙付近見取図において青線で囲まれた部分にある。 イ原告Cは,本件土地の西側に道路(幅約3.5m)を挟んで所在する土- 2 -地上に建物を所有して,同建物に居住する者である(乙12。同原告の)住居は,別紙付近見取図において緑線で囲まれた部分にある。 ウ原告Dは,同原告の住所において訴外宗教法人Eが所有する建物に居住する者である。 (2) 本件土地の状況本件土地は,α駅南方の徒歩圏内 住居は,別紙付近見取図において緑線で囲まれた部分にある。 ウ原告Dは,同原告の住所において訴外宗教法人Eが所有する建物に居住する者である。 (2) 本件土地の状況本件土地は,α駅南方の徒歩圏内に所在し,丘の上の平坦地で,その近隣は,戸建て住宅のほかは低層のマンションがいくつかある程度の良好な低層住宅地である(甲5。本件開発行為が開始される以前,本件土地には,2)階建ての外国人向け戸建て賃貸住宅が約25棟建てられており,建物の間隔も十分にとられ,樹木が多数茂る緑豊かな住宅地であった(甲6。また,),,,本件土地では埋蔵文化財調査の段階において大規模複合遺跡が発見され竪穴式住居跡,高床式倉庫跡のほか多数の出土品が発見された(甲7の1ないし5。 )(3) 本件開発許可渋谷区長は,訴外F株式会社に対し,平成19年10月30日付けで,本件土地の一部を開発区域とする開発行為(以下「本件開発行為」という)。 の許可(以下「本件許可」という)をした。本件開発行為の概要は,以下。 のとおりである(乙5,10,11。 )ア公法規制用途地域第二種低層住居専用地域イ予定建築物の用途共同住宅ウ開発区域面積 1 万7214.86㎡エ開発行為の内容区画の変更建築基準法42条1項3号道路の廃止形質の変更切土最大約4.6mオ公共施設の整備道路特別区道第×号線,同××号線の整備(6mに拡幅)公園提供公園面積607㎡- 3 -下水道公設桝及び取付管消防用貯水施設容量100m3(4) 予定建築物ア本件許可に係る開発区域(以下「本件開発区域」という)には,地上。 6階・地下2階建て,鉄筋コンクリート造,建物の高さ17.95mの共同住宅(賃貸用マンション)10棟(以下「本件建築物」という)が建。 築される予定で 域(以下「本件開発区域」という)には,地上。 6階・地下2階建て,鉄筋コンクリート造,建物の高さ17.95mの共同住宅(賃貸用マンション)10棟(以下「本件建築物」という)が建。 築される予定である。本件建築物は,本件開発区域の中央から西側部分にかけて配置され,長方形の通路状の空間(中庭)を中心として立ち並び,(,)。 外観上は一体的なものとして建築されることが予定されている甲13イ本件建築物については,平成20年4月10日,建築確認がされた(甲9ないし18。 )(5) 原告Aらは,東京都開発審査会に対し,平成19年12月28日,本件許,,,可の取消しを求める審査請求をしたが同審査会は平成20年7月28日同審査請求を棄却する裁決をした(甲8。 ),,。 ,,(6) 原告らは平成21年1月27日本件訴えを提起したまた原告らは同年7月2日,本件建築物の建築確認の取消しを求める訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実。 ) 争点及び当事者の主張の概要本件の争点は①原告らについて本件訴えの原告適格が認められるか否か争,(点1,②原告C及び同Dの取消請求(予備的請求)に係る訴えは同原告らに)よる審査請求を欠き不適法というべきか否か(争点2,③渋谷区長は本件許)可を行う権限を有するか否か(争点3,④本件許可は法33条1項の定める)基準に適合しないものとして違法か否か(争点4)であり,これらの点に関する当事者の主張の概要は以下のとおりである。 (1) 原告らについて本件訴えの原告適格が認められるか否か(争点1)(原告らの主張)- 4 -ア原告Aら及び原告Cについて(ア)原告Aら及び原告C(以下「原告Aら及びC」という)は,それ。 ぞれ,本件建築物が地震により倒壊した場合にはその生命身体又は財産に危害 らの主張)- 4 -ア原告Aら及び原告Cについて(ア)原告Aら及び原告C(以下「原告Aら及びC」という)は,それ。 ぞれ,本件建築物が地震により倒壊した場合にはその生命身体又は財産に危害,損害が及ぶおそれがあり,また,本件建築物の日影によって日常的に日照被害を蒙り,本件建築物によるビル風によってその生活環境が害され,本件建築物の建築による周辺土地の地盤沈下ないし地盤隆起のために所有建物に損害が発生するおそれがあるほか,地域の環境に調和した良好な生活環境を享受する権利及び良好な住生活を営むことができる権利が日常的に侵害される。 (イ)都市計画法が都市計画区域における開発行為を原則許可制とした趣旨は,昭和30年代以降の広範な都市化現象の進行に伴い,不良市街地が形成され,地方公共団体の公共施設の整備が追いつかず,そのため,排水施設の不備により周辺に溢水の被害を及ぼし,道路が不備なため円滑な交通が阻害され,消防活動に支障を来すなどの弊害が生じる結果となっていたところ,このような弊害を除去し,都市住民に健康的で文化的な生活を保障し,機能的な経済活動の運営を確保するためには,総合的な土地利用計画を確立し,その実現を図ることが必要とされたことにある。このように,開発許可制度は,都市計画の実現を図るために極めて重要な制度として位置付けられている。 ところで,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁(以下「平成17年判決」という)は,都市計画事業認可処分の取消訴訟の原告適格について判断。 を示し,都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定は,事業に伴う騒音,振動等によって,事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し,もって健康で文化的な都市生活を確保し, 都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定は,事業に伴う騒音,振動等によって,事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し,もって健康で文化的な都市生活を確保し,良好な生活環境を保全することをも,その趣旨及び目的とす- 5 -るものと解されるとし,事業地の周辺地域に居住する住民に対し,違法な事業に起因する騒音,振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとしたものであって,被害の内容,性質,程度等に照らせば,この具体的利益は一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであると判示した。 開発許可制度も「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって,国土の均衡ある発展と公共の福祉に寄与すること(法1条)を目的と」する都市計画法上の制度であり「健康で文化的な都市生活(法2条),」を確保すること等を基本理念とする「都市計画」を担保するための制度であることは前記のとおりであるから,当該開発許可の対象たる土地の周辺地域に居住する住民に対し,違法な開発行為に起因する騒音,振動その他の影響によって健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものであり,その具体的利益は一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであると解すべきである。 したがって,当該開発許可の対象たる土地の周辺地域に居住する住民のうち当該開発行為が行われることにより騒音,振動その他による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者には,当該開発許可処分の取消訴訟の原告適格が認められる。 (ウ)原告Aら及びCは,本件開発行為により,①周辺地域の生活環境の悪化,災害防止上の悪影響,通行の安全上の悪影響,②開発区域からの,,,,溢水出水 分の取消訴訟の原告適格が認められる。 (ウ)原告Aら及びCは,本件開発行為により,①周辺地域の生活環境の悪化,災害防止上の悪影響,通行の安全上の悪影響,②開発区域からの,,,,溢水出水土砂の流出③開発区域内及びその周辺の土地の地盤沈下地すべり,④開発行為のための工事による騒音,振動などによって,生命身体の安全,健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある。したがって,同原告らは,本件訴訟において原告適格を有する。 - 6 -イ原告Dについて都市計画区域内で生活する人々は「都市計画決定の公共性」を考慮し,て不動産を所有し,管理し,生活を構築しているのであり,計画区域内に居住する者は,都市計画決定の保護内容につき,保護に値するさまざまな法的利益を直接に享有する立場にある。このように,都市計画法に基づく行政処分は,都市計画決定の公共性にかかわるものであって,その処分がもたらす影響は,都市計画が定められた区域全体に及ぶから,当該処分の取消しを求める「法律上の利益を有する者」は,当該都市計画区域内に不動産を所有し,又は居住する者すべてを意味すると解されるべきである。 本件開発区域と同一の特別区内に居住する原告Dは,本件開発行為により,都市計画区域による良好な住環境を享受する利益が侵害されるおそれがあるから,同原告は,本件訴訟において原告適格を有する。 ウ都市計画区域内の不動産につき権利を有する者の利益の内容(ア)都市計画法と建築基準法は実質的に一体の関係にあり,法8条に基づいて決定された「地域地区」に関する都市計画は,それだけでは当該都市計画決定が目的としている都市環境を産み出すものではなく,建築基準法第3章の諸規定が定める各地域地区ごとに具体的に定めている建築物に関する規制を遵守した建築物が建築され 計画は,それだけでは当該都市計画決定が目的としている都市環境を産み出すものではなく,建築基準法第3章の諸規定が定める各地域地区ごとに具体的に定めている建築物に関する規制を遵守した建築物が建築されることによって,初めて当該地域地区に関する都市計画決定が目的とした都市環境が出来上がるという関係になっている。 このことは,当該地域地区に関する都市計画が定められている区域内の土地に建築物を建築しようとする者は,その全員が,定められた地域地区に応じた建築基準法第3章の建築規制を遵守することが義務付けられているとともに,それらの建築規制を各自が遵守することによって,「」自らも各地域地区に関する都市計画決定が目的とする良好な都市環境の中で居住し,又は不動産を利用できるという共通の利益を享受するこ- 7 -とができるということを意味している。 このような,特定の都市計画区域内の不動産につき権利を有する者が共通して有する利益は「国益「社会益」のように国家・社会が有す,」る一般的公益とは異なり,その利益を享受し得る個々人の利益と解することができる。都市計画法と建築基準法は,このような個々人の利益を保護することをもその立法趣旨に含んでいると解することができる。すなわち,法3条2項が,都市の住民に対して国及び地方公共団体が都市計画法の目的を達成するために行う措置に協力し,良好な都市環境の形成に努めなければならないことを求めていることからすると,都市計画法は,都市の住民を国や地方公共団体による措置の反射的効果を享受するだけの客体としてではなく,国や地方公共団体と協働して「良好な都」。 ,市環境を作る主体として位置付けているものと解すべきであるまた建築基準法1条は,国民の生命,健康及び財産の保護を謳っており,同法が個々人の利益を保護する趣旨を 共団体と協働して「良好な都」。 ,市環境を作る主体として位置付けているものと解すべきであるまた建築基準法1条は,国民の生命,健康及び財産の保護を謳っており,同法が個々人の利益を保護する趣旨を含んでいることは疑う余地がない。 以上のような都市計画法と建築基準法の関係と立法趣旨に鑑みれば,当該都市計画区域内において定められた「良好な都市環境」を作り出すのは国や地方公共団体とともに「都市の住民」であって,かつ「都市,の住民」は,当該都市計画区域における建築規制を互いに遵守することに加え,それによって作り出される「良好な都市環境」を協働して守ることもその責務とされているというべきである。したがって,都市計画区域内の住民は,当該区域における良好な都市環境を各自が享受できるという都市計画法及び建築基準法によって保護された利益を有しており,それは「専ら一般的公益の中に吸収」されるものではなく,当該,建築規制に反した違反行為を自ら訴訟その他の法的手段によって是正させることができるものと解することができる。 (イ)良好な居住環境を享受し得る利益は,開発区域内の住民にのみなら- 8 -ず,開発区域外の周辺住民にも認められるべきであり,法33条1項各号の規定は,明らかに開発区域外の都市環境や都市基盤への影響を想定し,それに適合していることを開発許可の基準としている。すなわち,アに述べたところのほかに,同項1号の「予定建築物」は,開発区域外の住民に対して日照,通風,眺望,圧迫,熱の輻射,倒壊,崩落などの影響を与えないわけがない。同項2号が定める「環境の保全「災害」,の防止「通行の安全「事業活動の効率」が,いずれも開発区域内」,」,にのみ影響がとどまり,開発区域外への影響が全くないかのごとき認識は非現実的である。開発区域外の相当規模 保全「災害」,の防止「通行の安全「事業活動の効率」が,いずれも開発区域内」,」,にのみ影響がとどまり,開発区域外への影響が全くないかのごとき認識は非現実的である。開発区域外の相当規模の道路への接続が明記されていることは,開発区域外の道路への影響が考えられるからにほかならな。 ,,,「」い同項6号9号10号等では周辺の地域における環境の保全との調和が求められている。同項11号の「道路,鉄道等による輸送の」,。 便等は明らかに開発区域外の施設への負荷を想定しての規定である(被告の主張)ア原告Aら及びCについて(ア)同原告らは,本件建築物の倒壊等による被害を受けるおそれがあると主張するが,それらはあくまで本件建築物の建築によって生ずるものであって,本件許可によって直接生ずるものではないから,これらの被害を受けるおそれがあることをもって本件許可に関し原告適格を認める余地はない。 (イ)また,同原告らが引用する平成17年判決は,都市計画法13条1項柱書きに「都市計画の基準に関して,当該都市について公害防止計画が定められているときは都市計画がこれに適合したものでなければなら」,,ないと定められていることなどから都市計画事業の認可については事業に伴う騒音,振動等によって事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止することがその趣旨,目的- 9 -に含まれると解釈したものであるところ,開発許可制度においては,そもそも法13条1項の適用はないのであるから,事案を異にするというべきである。そして,法1条や法2条の規定から直ちに,平成17年判決の結論を開発許可制度に持ち込むことには根拠がない。 (ウ)もっとも,開発許可制度は,法1条及び2条が定める法の目的,趣旨及び基本理念 である。そして,法1条や法2条の規定から直ちに,平成17年判決の結論を開発許可制度に持ち込むことには根拠がない。 (ウ)もっとも,開発許可制度は,法1条及び2条が定める法の目的,趣旨及び基本理念の下に,一定規模以上の区域について建築物の建築等を目的として区画形質の変更を行う場合,これを行政庁の許可にかからしめ,法の定める一定の基準(33条1項各号)を満たす場合に,これを解除するという制度として設けられたものであって,①開発許可区域内の土地について乱開発による不健全な居住環境の出現を防止するとともに,②都市計画に合致した秩序ある都市開発の実現を目的とするものということができる。このうち,②の点は,一般的公益を保護するものであるが,①の点は,開発区域内において良好な居住環境を享受し得る利益を個別具体的に保護するものと解される。以上によれば,開発区域外の周辺住民についても,法29条1項及び33条1項各号の規定によって良好な居住環境を享受し得る利益を保護することが想定されているのであれば,原告適格を認める余地があると解される。 そこで,原告Aら及びCが本件開発行為により被る被害として主張するところの内容に即して,法33条1項各号を検討すれば,以下のとおりである。 ①同項2号については,開発区域内における環境保全,災害防止等を図るものであることは文言上明らかであるから,同号を根拠に周辺住民に原告適格を認めることはできない。 ②同項3号については,下水の排水が周辺地域に影響することを考えれば,周辺住民の良好な居住環境をも保護するものと解する余地はある。しかしながら,原告Aら及びCの居宅は,本件開発区域からの雨- 10 -水,汚水などの排水で溢水等の被害を受ける位置関係にない。したが,。 って同号を根拠に同原告らの原告適格を基礎付けるこ る。しかしながら,原告Aら及びCの居宅は,本件開発区域からの雨- 10 -水,汚水などの排水で溢水等の被害を受ける位置関係にない。したが,。 って同号を根拠に同原告らの原告適格を基礎付けることはできない③同項7号については,がけなどが隣接地と開発区域の間にあるような場合には,開発区域外の隣接地の住民の生命,身体の安全等が脅かされることも想定されるので,周辺住民についてもその利益を保護する趣旨と解される。しかしながら,原告Aら及びCの居宅周辺でがけ崩れが起こること自体想定し難いし,本件開発区域からのがけ崩れにより被害を受けることも到底想定できない。したがって,同号を根拠に同原告らの原告適格を基礎付けることはできない。 ④同項9号については,開発区域内の自然環境の保全を図ることによって良好な都市環境を確保しようとするものであり,開発区域外の住民が直接具体的な侵害を受けることを防止する趣旨を含むとは認められない。 ⑤同項10号については,共同住宅には適用がないから,同号をもって周辺住民の原告適格を認めることはできない。 イ原告Dについて同原告は,本件開発区域と同一の特別区内に居住する者として,良好な住環境を享受する利益が本件許可によって侵害されるおそれがあることを理由として,原告適格があると主張するが,同原告の住居は,本件開発区域から約2.7km離れていることからすると,同原告が主張する利益が法律上保護されていないことは明らかである。 (2) 原告C及び原告Dの取消請求(予備的請求)に係る訴えは同原告らによる審査請求を欠き不適法というべきか否か(争点2)(同原告らの主張)法52条は,法29条1項に基づく開発許可の取消訴訟について審査請求前置主義を定めているが,開発審査会で出される結論は,公益の実現,- 11 -つまり処 うべきか否か(争点2)(同原告らの主張)法52条は,法29条1項に基づく開発許可の取消訴訟について審査請求前置主義を定めているが,開発審査会で出される結論は,公益の実現,- 11 -つまり処分庁が都市計画法又は建築基準法に照らし正しい処分をするという同じ要求に対する行政庁としての最終的かつ統一的結論であるから,審査請求は,原告適格のある者のうち1人が行えば原告適格を有する者すべてが行ったのと同じ意味を持ち,同じ効果を有すると解すべきである。 仮に最高裁昭和58年(行ツ)第75号同61年6月10日第三小法廷判決・集民148号159頁の判示に拠るとしても,同原告らと原告Aらとは,本件許可に対し一体的な利害関係を有し,実質的にみれば,原告Aらのした審査請求は同時に同原告らのための審査請求でもあるという関係にあるから,審査請求の手続が経由されたと同視すべきである。 (被告の主張)同原告らの予備的請求に係る訴えは,同人らが本件許可に係る審査請求を行っていないから,不適法であり,却下されるべきである。 (3) 渋谷区長は本件許可を行う権限を有するか否か(争点3)(原告らの主張)法29条1項は,開発許可の権限を都道府県知事又は所定の指定都市等の長に属するものと定めている。開発許可は,都市計画区域の指定を一定の場合に変更するのと同じ意義を有する重大な権限であり,都市計画区域の指定については都道府県知事に限ってその権限が付与されていること(法5条)に照らすと,法29条1項の規定は,開発行為の許可権限を有するものを同項所定の者に限定し,他に委任することはできないことを規定したものと解すべきである。法令上の権限のない者による開発許可は,当然無効である。 被告が根拠として主張する地方自治法252条の17の2第1項は事,「」,務の一部を市町村 きないことを規定したものと解すべきである。法令上の権限のない者による開発許可は,当然無効である。 被告が根拠として主張する地方自治法252条の17の2第1項は事,「」,務の一部を市町村が処理することができると規定しているのみであって権限を委任できるとは規定していない。 (被告の主張)- 12 -地方自治法252条の17の2第1項は,都道府県は都道府県知事の権限の属する事務の一部を条例の定めるところにより市町村(特別区にも同条は適用される。同法283条1項)に処理させることができると定め。 ている(条例による事務処理の特例制度。そして,東京都は,特別区に)おける東京都の事務処理の特例に関する条例を定め,法29条1項の開発許可権限を各特別区が処理することとした(同条例2条の表7項。 )地方自治法252条の17の2第1項にいう「事務の一部」とは,文理からする限り「都道府県知事の権限に属する事務」の一部と解される。 ,また,実質的にみても,開発区域内の土地についてどのように公共施設等を整備していくかという判断を各特別区の状況に応じてより身近な自治体である各特別区が行うことは合理的であるから,原告らが主張するように「事務の一部」を特定の事務の一部と解しなければならない根拠はない。 上記条例により,開発許可の権限の全部を渋谷区長が処理することができると解すべきことは明らかである。 (4) 本件許可は法33条1項各号の定める基準に適合しないものとして違法か否か(争点4)ア予定建築物の用途制限違反(1号)(原告らの主張)本件建築物は,第二種低層住居専用地域における容積率の制限(200%)や高さの制限(12m)を超えているから,違法であり,法33条1項1号に適合しない。同号は,予定建築物が「住宅「共同住宅「店」,」,舗」 二種低層住居専用地域における容積率の制限(200%)や高さの制限(12m)を超えているから,違法であり,法33条1項1号に適合しない。同号は,予定建築物が「住宅「共同住宅「店」,」,舗」等の種類において建築基準法の制限に適合していることのみを意味するという説明がなされることがあるが,それは誤りである。都市施設の規模や機能に最も関係のある指標が,容積率,建ぺい率,建築物の高さであるから,これらについての適合性も審査されなければならない。 (被告の主張)- 13 -同号の基準は,予定建築物が建築基準法による用途規制を受けるものであるときは,その用途が用途規制に適合しているべきである旨を定めるものである。本件建築物の用途は共同住宅であるから,第二種低層住居専用地域の用途規制に反するものではない。原告らの主張は,開発許可処分と建築確認処分を混同するものである。 イ道路,公園,広場,空地等の不適切性(2号)(原告らの主張)(「」。)法33条1項2号に関して都市計画法施行令以下法施行令というが定める基準は,最低限のものにすぎず,同号のイないしニに記載されている具体的な状況に応じて,道路等が「適当に配置され」ているかどうかをさらに検討し,これを周辺住民に対して開示した上でその意見を取り入れ,より適切な内容となるよう手続保障をすることによりその許可は初めて辛うじて正当化されるものである。 本件許可に係る開発計画では,大規模な共同住宅が建築されるのであるから,相当大規模な公園その他の空地が必要であるところ,提供公園の面. ,,積は607㎡であり総敷地面積の35%にすぎないから環境の保全上災害の防止上等の支障がないような規模又は構造で配置されているとは認められない。また,本件開発区域の約90%の部分には縄文,弥生時代の遺跡が 07㎡であり総敷地面積の35%にすぎないから環境の保全上災害の防止上等の支障がないような規模又は構造で配置されているとは認められない。また,本件開発区域の約90%の部分には縄文,弥生時代の遺跡が存在し,本件建築物を建築した場合,国民共有の文化的財産が破壊される。さらに,総戸数139戸の住戸を設ける10棟の中層マンションを建築するにもかかわらず,公道への出入りが可能な道路は,本件開発区域の南東部に一箇所設けられるのみである。これらのことからも,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上等の支障がないような規模又は構造で配置されているとは認められない。 (被告の主張)原告らの主張は,法に基づかず,根拠のない主張であり,失当であるこ- 14 -とは明らかである。 ウ用途配分の不適切性(6号)(原告らの主張)本件建築物は,従前の住居環境や他の公益的施設の状況に照らしてみると,突出して大規模かつ高層な建物集団である。このこと自体,開発区域における利便の増進と開発区域及びその周辺の区域における環境の保全とが図られる用地用途が配分されているとはいえない。 (被告の主張)法33条1項6号の基準は,開発区域の面積が20ha以上の開発行為に適用されるものである(法施行令27条)から,本件開発行為には適用がない。 エ緩衝帯配置の不適切性(10号)(原告らの主張)法33条1項10号が対象とする建築物は,工場には限られず,また,騒音,振動以外の環境汚染,ビル風,日影及び熱などによる生活環境の侵害も含まれると解される。本件建築物がこれらの点で周辺住民の住環境に,,,悪影響を与えることがないよう周辺を十分に広い公園緑地などで包囲遮断する配慮が必要であるが,本件開発計画にはそのような観点が欠落している。 (被告の主張),,同号にいう建築物は に,,,悪影響を与えることがないよう周辺を十分に広い公園緑地などで包囲遮断する配慮が必要であるが,本件開発計画にはそのような観点が欠落している。 (被告の主張),,同号にいう建築物は一般的には工場を指していると解されているから同号は本件開発行為には適用がない。 オ植物の生育の確保の不適切性(9号)(原告らの主張)法33条1項9号を受けて定められた法施行令28条の2第1項は,高さ10m以上の健全な樹木又は樹木の集団については,その存する土地を- 15 -公園又は緑地として配置する等により,保存の措置が講ぜられていることを求めている。しかしながら,本件開発行為により,大半の樹木は伐採されている。 (被告の主張)本件開発区域内に高さ10m以上の樹木は約20本あったが,広く分散しており,すべてを保存することができなかったので,法施行令28条の2第1項ただし書の「やむを得ないと認められる場合」に該当することから,そのうちの6本をそのまま保存している。 第3当裁判所の判断 争点1(原告らについて本件訴えの原告適格が認められるか否か)について(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1「」,項にいう当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とは当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該 益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに- 16 -当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項,平成17年判決参照。 )(2) 原告Aら及びCは,本件建築物が地震により倒壊した場合,その生命身体又は財産に危害,損害が及ぶおそれがあり,また,本件建築物の日影によって日常的に日照被害を蒙り,本件建築物によるビル風によってその生活環境が害されるおそれなどがあるところ,法33条1項1号は,開発区域外の住民に対して予定建築物等が日照,通風,倒壊等による影響を及ぼすことを前提としてこれを保護する趣旨で設けられた開発許可の基準であると解すべきであるから,原告適格が認められるべきである旨主張する。 しかしながら,そもそも,開発許可の対象となる「開発行為」とは,土地の区画形質の変更をいう(法4条12項)ところ,上記の原告らが主張する上記の不利益は,その性質上,開発許可がされて開発行為が行われること自体によりもたらされ 発許可の対象となる「開発行為」とは,土地の区画形質の変更をいう(法4条12項)ところ,上記の原告らが主張する上記の不利益は,その性質上,開発許可がされて開発行為が行われること自体によりもたらされるものではなく,開発行為の後,予定建築物について建築の確認がされてそれが実際に建築されることによりもたらされる不利益であるといわざるを得ない。 また,法33条1項1号は,開発行為が行われる場合において,予定建築物等が建築基準法による用途の制限を受けるものであるときは,その用途がこれに適合していることを要する旨の規定であるところ,その趣旨は,予定建築物等が用途の制限に適合していることについてはその建築の際に改めて確認されるが,その時点で予定建築物等の立地が否定されることによる混乱を避けるため,開発行為の段階であらかじめ確認しておく点にあるものと解される。そして,同号が,審査の基準を「予定建築物等の用途が(中略)用途の制限に適合していること」と規定していること,また,開発許可申請の手続においては,予定建築物等の用途を記載した申請書を提出すれば足り,予定建築物等の詳細を明らかにすることは求められていないこと(法30条- 17 -1項2号)を勘案すると,開発許可の段階での審査は,予定建築物等が建築基準法第3章第3節の各規定が定める「建築物の用途」に関する制限に適合しているか否かに限られ,予定建築物等が地震に対して安全な構造のものかどうか同法20条や日影による高さの制限を満たしているかどうか同(),(法56条の2)といった点は,建築確認の段階で別途審査すべきことが予定され,開発許可の段階では審査されないことが明らかである。そうすると,法33条1項1号は,予定建築物等の倒壊,日影,ビル風などにより周辺住民等が受ける不利益を保護する規定であると 査すべきことが予定され,開発許可の段階では審査されないことが明らかである。そうすると,法33条1項1号は,予定建築物等の倒壊,日影,ビル風などにより周辺住民等が受ける不利益を保護する規定であると解することはできない。 以上のことからすると,上記の原告らが主張する上記の不利益を理由として,同号に基づき,上記の原告らについて本件許可に係る抗告訴訟の原告適格を認めることはできないというべきである。このように解したとしても,上記の原告らは,本件建築物の建築確認の適否を争うことによってその主張する不利益に関する救済を受ける機会を得ることができ,現に,それに関する抗告訴訟を提起していることは前記のとおりであるから,上記の原告らの保護に欠けることはないと解される。 (3) 原告Aら及びCは,本件開発行為により,周辺地域の生活環境の悪化,災害防止上の悪影響,通行の安全上の悪影響が生ずるおそれがあるところ,法33条1項2号は,開発区域外の住民に対して「環境の保全「災害の防,」,止「通行の安全」等の点で影響を及ぼすことを前提としてこれを保護す」,る趣旨のものであると解すべきであるから,上記の原告らについて原告適格が認められるべきである旨主張する。 そこで検討するに,法33条1項2号は,開発区域内に設けるべき道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地について,同号イないしニに掲げる事項を勘案して,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で,その配置と設計をすべきことを定めるものであるところ,その趣旨は,開発許可段階で想定される予定建- 18 -築物等の敷地の周辺に,道路,公園,広場等の利便施設を確保しようとするものと解される。また,同号は「主として,自己の居住用の住宅の建築の用に供する目的で行 発許可段階で想定される予定建- 18 -築物等の敷地の周辺に,道路,公園,広場等の利便施設を確保しようとするものと解される。また,同号は「主として,自己の居住用の住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為」について適用されるものであるところ,その趣旨は,そのような開発行為を行う場合においては,開発行為を行う者以外の者が開発区域内に居住するなどして開発行為の成果を利用することになるため,そのような居住者等の利益を特に保護する必要があるという点にあると解される。以上のような同号の内容と趣旨に照らすと,同号は,開発区域内の居住者等について,環境の保全,災害の防止,通行の安全又は事業活動の効率といった利益を図るために,道路,公園,広場等を設けるべきこととしたものであると解することが相当である。そして,このことを前提とすると,同号が,そのイにおいて「開発区域の(中略)周辺の状況」を勘案すべきこととし,また,開発区域内の主要な道路が開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計を定めるべきこととしたのは,開発区域内の空地の配置と道路の接続が適切になされているかどうか等を判断するに当たり,開発区域外の事情を考慮すべきこととしたものにすぎず,開発区域外の周辺住民の利益を保護すべきこととしたものとはいえないと解される。 なお,仮に,法33条1項2号について,開発区域外の周辺住民の利益を保護すべきこととしたと解する余地があるとしても,開発区域内に道路,公園又は広場を設置すること又は設置しないことにより開発区域外の周辺住民にもたらされる可能性がある影響は,開発区域内外の道路における車両の通行態様,開発区域内の緑地の密度,開放的な空間の広さなどの点において従前よりも負の変化が生じるといったものであり,このような影響は,広い意味での生活環境 る影響は,開発区域内外の道路における車両の通行態様,開発区域内の緑地の密度,開放的な空間の広さなどの点において従前よりも負の変化が生じるといったものであり,このような影響は,広い意味での生活環境の悪化であって,直ちに周辺住民の生命,身体の安全や健康を脅かしたりその財産に著しい被害を生じさせたりすることまでは想定し難いところである。そして,このような生活環境に関する利益は,基本的には- 19 -公益に属する利益というべきであって,法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず,法が周辺住民等において上記のような影響を受けないという利益を周辺住民等の個別的な利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない(最高裁平成20年(行ヒ)第247)。 号同21年10月15日第一小法廷判決・裁判所時報1493号5頁参照しかるに,法33条1項2号,同号の基準を適用するについて必要な技術的細目として同条2項に基づいて定められた法施行令25条並びに都市計画法施行規則20条の2及び21条の各規定は,その内容からして,上記の利益を周辺住民の個別的な利益として保護する趣旨を含むものと解することはできず,他に,この点に関して手掛りとなることが明らかな規定を見出すこともできない。 ,。 以上のとおりであるから上記の原告らの主張を採用することはできない(4) 原告Aら及びCは,法33条1項6号,9号及び10号が,それぞれ「周辺の地域における環境の保全」を要件としていることからして,これらの規定は,周辺住民の良好な住環境をその個別的な利益として保護する趣旨のものである旨主張する。 そこで検討するに,同項6号は,公益施設,公益的施設及び予定建築物等に供される敷地が,開発区域における利便の増進と,開発区域及びその周辺の地域における環境の保 保護する趣旨のものである旨主張する。 そこで検討するに,同項6号は,公益施設,公益的施設及び予定建築物等に供される敷地が,開発区域における利便の増進と,開発区域及びその周辺の地域における環境の保全とが図られるように適切に配分されるような設計がされることを要する旨を定めているところ,その趣旨は,開発行為を行う者が,公共施設や公益的施設の管理予定者と協議して(法32条,法施行令23条参照,公益施設等に供される敷地を確保しておくべきことを明らか)にしたものと解される。また,同項9号は,開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存,表土の保全その他の必要な措置に関し,開発区域及びその周辺の地域の環境の保全が図られるように設計がされることを要する旨を定めているところ,その趣旨は,自然環境の保全を図ることによって- 20 -良好な都市環境を確保しようとするものと解される。これらの規定は,公共施設や公益的施設の設置により得られる利益(6号)や,開発区域における樹木の保存や表土の保全により得られる利益(9号)を保護しようとするものであり,それらの利益は,周辺住民にとって,広い意味での生活環境に関するものであって,基本的には公益に属する利益であるというべきところ,これらに関し,周辺住民の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むと解すべき手掛りとなることが明らかな規定を見出すことはできない。したがって,法が上記の利益を周辺住民の個別的利益としても保護する趣旨であると解するのは困難といわざるを得ない。 これに対し,同項10号は,開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため,騒音,振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されるような設計がされることを要する旨の規定であるところ,その趣旨は,騒音,震動等による環境の 地域における環境を保全するため,騒音,振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されるような設計がされることを要する旨の規定であるところ,その趣旨は,騒音,震動等による環境の悪化をもたらすおそれがある予定建築物等について(法施行令28条の3参照,開発許可の申請時点では)それを具体的に把握することができないという開発許可制度の規制方法からして,具体的な騒音,振動等の環境障害に対しては本来の公害規制法令による規律を期待するものの,開発許可の段階においても,騒音,振動等に対する公害対策のための余地を残しておく点にあると解される。また,法33条1項10号の基準を適用するについて必要な技術的細目として同条2項に基づいて定められた法施行令28条の3及び都市計画法施行規則23条の3の各規定をみると,開発許可に際し,法33条1項10号は,騒音,振動等による環境の悪化を防止するために設けるべき緑地帯その他の緩衝帯につき相当程度具体的に審査すべきこととしているものと解される。そして,予定建築物等に起因する騒音,振動等による被害を直接的に受けるのは,開発区域の周辺の一定範囲の地域に居住する住民に限られ,その被害の程度は,居住地が開発区域に接近するにつれて増大するものと考えられるところ,開発区- 21 -域の周辺に居住する住民が,上記の被害を反復,継続して受けた場合,その被害は,これらの住民の健康やひいては身体等の安全等を脅かすようなものにも至りかねない。以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通じて保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,予定建築物等の用途からみてその騒音,震動等による環境の悪化の被害が直接的に及ぶことが想定される一定範囲の地域の住民の身体等の安全等を個々人の個別的な利益としても保護 性質等にかんがみれば,同号は,予定建築物等の用途からみてその騒音,震動等による環境の悪化の被害が直接的に及ぶことが想定される一定範囲の地域の住民の身体等の安全等を個々人の個別的な利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,予定建築物等の用途からみてそれが騒音,震動等による環境の悪化の被害をもたらすことが予想される場合,直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の取消しを求めるにつき同号に基づく法律上の利益を有するものとして,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 しかしながら,本件開発行為における予定建築物等である本件建築物の用途は,共同住宅であるから,その用途からみて,直ちに騒音,振動による環。 ,,境の悪化をもたらす予定建築物等に当たるとはいえないそうすると騒音振動の点で被害を受けることを理由として,上記の原告らに同号に基づく原。 ,,告適格を認めることはできないといわざるを得ないまた上記の原告らは本件建築物がもたらす日影及びビル風の被害を受けるとも主張するが,開発許可に係る申請においては予定建築物等の具体的な形状等が明らかにされないことは前記判示のとおりであるから,法33条1項10号適合性の判断に際して,予定建築物等がもたらす日影及びビル風による被害の有無及び程度が審査されることは予定されていないといわざるを得ない。そうすると,同号は,日影及びビル風により周辺住民等が受ける不利益を保護する規定であると解することはできない。 ,。 以上のとおりであるから上記の原告らの主張を採用することはできない(5) 原告Aら及びCは,開発区域からの溢水,出水,土砂の流出により生命身- 22 -体の安全等に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるから あるから上記の原告らの主張を採用することはできない(5) 原告Aら及びCは,開発区域からの溢水,出水,土砂の流出により生命身- 22 -体の安全等に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるから,上記の原告らについて原告適格が認められるべきである旨主張する。 そこで検討するに,法33条1項3号は,排水路その他の排水施設について,同号イ及びロに掲げる事項を勘案して,開発区域内の下水を有効に排出するとともに,その排出によって開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていることを開発許可の基準としているところ,その趣旨は,降水量,開発区域の規模,形状及び周辺の状況等によっては,必要な措置を講じないままに開発行為を行うと,下水の排出によって開発区域内及び周辺に溢水等による被害が生じ,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることにかんがみ,そのような事態を防止するために,開発行為の段階で排水施設等の構造及び能力に関する設計内容を審査することとしたものと解される。 そして,溢水等が起きた場合の被害は,開発区域内のみならず開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想される。また,同号の基準を適用するについて必要な技術的細目として法33条2項に基づいて定められた法施行令26条及び29条並びに都市計画法施行規則22条1項及び26条の各規定をみると,法33条1項3号は,開発許可に際し,溢水等による被害を防止するために設けるべき排水施設等について具体的かつ詳細に審査すべきこととしているものと解される。以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定さ 査すべきこととしているものと解される。以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,開発区域及びその周辺の地域に下水の排出によって溢水等による被害が生じるおそれがある場合には,当該溢水等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の取消- 23 -しを求めるにつき法律上の利益を有するものとして,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 これを本件についてみると,証拠(乙5,12,15,16)によれば,本件開発行為以前において,本件開発区域は,その北西角部分が下り勾配となっていたものの,それ以外の部分は高低差の比較的少ない土地であったこと,また,本件開発行為により,本件開発区域に盛土されることはなく,本件建築物の敷地や中庭部分が切土され,従前よりも4m余り地盤が下げられ,,,ることが認められるところこれらの事情からすると本件開発行為により本件開発区域からの溢水等により周辺の地域に被害が生じるおそれが従前よりも増したということは困難である。また,前記のとおり,原告Aらの居住する土地は本件開発区域と接しており,原告Cの居住する土地は本件開発区域と道路を挟んだ位置にあるところ,証拠(乙12,16)によれば,原告Aらの居住する土地の高さと,同土地付近の本件開発区域の高さは,概ね同じ水準にあり,かつ,原告Aらの居住する土地に繋がる東西方向の道路(特別区道第×××号)は西方に向かって低くなっていること,また,原告Cの居住する土地 さと,同土地付近の本件開発区域の高さは,概ね同じ水準にあり,かつ,原告Aらの居住する土地に繋がる東西方向の道路(特別区道第×××号)は西方に向かって低くなっていること,また,原告Cの居住する土地の高さと同土地付近の本件開発区域の高さも,概ね同じ水準にあり,かつ,原告Cの居住する土地が接する南北方向の道路(特別区道第××号)は北方に向かって低くなっていることが認められる。これらの事情からすると,仮に本件開発区域から溢水等が生じたとしても,それが上記の原告らの土地に滞留して,その生命,身体の安全等に対する被害を及ぼす可能性は極めて低いといわざるを得ない。したがって,上記の原告らは,当該溢水等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者に当たるということはできないというべきである。 ,。 以上のとおりであるから上記の原告らの主張を採用することはできない(6) 原告Aら及びCは,開発区域内及びその周辺の土地の地盤沈下,地すべりにより生命身体の安全等に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるか- 24 -ら,上記の原告らについて原告適格が認められるべきである旨主張する。 そこで検討するに,法33条1項7号は,地盤の沈下,がけ崩れ,出水その他による災害を防止するため,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていることを開発許可の基準としているところ,その趣旨は,開発行為により上記の災害が生ずるおそれがあるのに,必要な措置を講じないままに開発行為を行った結果,上記の災害が発生して,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることにかんがみ,上記の災害を防止するために,開発許可の段階で,開発行為の設計内容を十分審査することとしたものと解される。そして,この地盤沈下,がけ崩れ の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることにかんがみ,上記の災害を防止するために,開発許可の段階で,開発行為の設計内容を十分審査することとしたものと解される。そして,この地盤沈下,がけ崩れ等が起きた場合における被害は,開発区域内のみならず開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想される。また,同号の基準を適用するについて必要な技術的細目として法33条2項に基づいて定められた法施行令28条及び29条並びに都市計画法施行規則23条及び27条の各規定をみると,法33条1項7号は,開発許可に際し,地盤沈下,がけ崩れ等を防止するためにがけ面,擁壁等に施すべき措置について具体的かつ詳細に審査すべきこととしているものと解される。 以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,地盤沈下,がけ崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,開発行為により地盤沈下,がけ崩れ等が生ずるおそれがある場合には,地盤沈下,がけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である(最高裁平成6年(行ツ)第189号同9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁- 25 -参照。 )しかるに,前記(5)で認定した本件開発区域の形状,開発行為の内容,本件開発区域と上記の原告らが居住する土地との接合状況及び高低差等に照らすと,本件開発行為により,がけ崩れが生ずるおそれがあると認 しかるに,前記(5)で認定した本件開発区域の形状,開発行為の内容,本件開発区域と上記の原告らが居住する土地との接合状況及び高低差等に照らすと,本件開発行為により,がけ崩れが生ずるおそれがあると認めることはできず,上記の原告らががけ崩れによる直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住していると認めることもできない。また,本件開発行為により,上記の原告らの土地について地盤沈下等が生ずるおそれがあることを認めるに足りる的確な証拠はない。 ,。 以上のとおりであるから上記の原告らの主張を採用することはできない(7) 原告Aら及びCは,開発行為のための工事による騒音,振動等によって,生命身体の安全,健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるから,上記の原告らについて原告適格が認められるべきである旨主張する。 しかしながら,法33条1項各号には,開発行為のための工事自体から生じる騒音,振動等を一定の程度内に規制することを念頭においた基準は見当たらず,工事自体から騒音,振動等が生じることによって開発許可が違法と。 ,,なることはないと解さざるを得ないしたがって工事自体から生じる騒音振動の被害を受けるおそれがあることを理由として,開発許可の取消訴訟の原告適格を理由付けることはできないというべきである。このように解したとしても,工事自体から上記の被害が生じた場合には,民事訴訟による救済を求めること等は妨げられないから,上記の原告らの保護に欠けることはないと解される。 (8) 原告Aら及びCは,開発許可制度は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって国土の均衡ある発展と公共の福祉に寄与すること(法1条)」を目的とする都市計画法上の制度であり「健康で文化的な都市生活(法,」2条)を確保すること等を基本理念とす と秩序ある整備を図り,もって国土の均衡ある発展と公共の福祉に寄与すること(法1条)」を目的とする都市計画法上の制度であり「健康で文化的な都市生活(法,」2条)を確保すること等を基本理念とする「都市計画」を担保するための制- 26 -度であるところ,同様の都市計画法上の制度である都市計画事業に関して平成17年判決が判示したとおり,法は,違法な開発行為に起因する騒音,振動その他の影響によって周辺住民が健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものであって,その具体的利益は一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであると解すべきであるから,上記の原告らについては,開発許可の抗告訴訟について原告適格が認められるべきであると主張する。 しかしながら,平成17年判決は,都市計画区域についての都市計画において定められた都市施設(都市高速鉄道)の整備に関する事業の認可の適否が争われた事案であるのに対し,本件は,共同住宅の建築の用に供する目的で行う開発許可の適否が争われている事案であって,適用法条を異にし,それぞれ適法とされる要件の定めが異なるから,それぞれの処分に当たって保護されるべきものとされる法律上の利益の内容も異なるといわざるを得ない。したがって,都市計画法上の制度であるという類似性から直ちに,違法な開発行為に起因する騒音,振動その他の影響によって周辺住民が健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益が保護されていると解すべきであるとする上記の原告らの主張は,採用することができない。 (9) 原告Dは,本件開発区域と同一の特別区内に居住する者として,当該区内において定められた都市計画区域による良好な住環境を享受する利益が本件許可によって侵害されるから,本件許可を争う原告適格が認めら ) 原告Dは,本件開発区域と同一の特別区内に居住する者として,当該区内において定められた都市計画区域による良好な住環境を享受する利益が本件許可によって侵害されるから,本件許可を争う原告適格が認められるべきであると主張する。しかしながら,同原告の上記主張は,前記(1)で述べたところに照らし,採用の余地はない。 また,原告らは,都市計画法と建築基準法は実質的に一体の関係にあり,法8条の地域地区が定められている区域内の土地に建築物を建築しようとする者は,当該地域地区に応じた建築基準法第3章の建築規制を遵守することが義務付けられ,それらの建築規制を各自が遵守することによって,自らも- 27 -当該地域地区に関する都市計画決定が目的とする「良好な都市環境」の中で居住し,または不動産を利用できるという共通の利益を享受することができるところ,この利益は一般的公益ではなく個々人の利益と解すべきであるから,原告らには,本件許可の抗告訴訟に関する原告適格が認められるべきである旨を主張する。 この点,開発行為とは,主として建築物の建築等の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいうのであるから(法4条12項,都市計画法に)より規律される開発行為と,建築基準法により規律されるその後の建築物の建築とは,一連の社会的な行為の一部をそれぞれ構成するものという意味で関連するものということができる。しかしながら,都市計画法は,開発許可の基準に関し,同法33条1項各号に定める要件を設けるにとどめ,予定建築物等の具体的な形状,構造等を想定した上で開発行為及びその後の建築の,,許否を審査するものとはしておらず予定建築物等の建築の許否については建築基準法に基づく建築確認等の段階において行われる仕組みとなっていることに照らすと,建築基準法の趣旨及び目的や建築確認の際 ,,許否を審査するものとはしておらず予定建築物等の建築の許否については建築基準法に基づく建築確認等の段階において行われる仕組みとなっていることに照らすと,建築基準法の趣旨及び目的や建築確認の際に適用される同法の各規定が,周辺住民の個別的利益を保護する趣旨を含むものであるとしても,そのような利益を,都市計画法が開発許可の段階においても当然に保護する趣旨であると解釈することは困難であるといわざるを得ない。もっとも,予定建築物等がいかなる形状,構造等であったとしても,それが建築されるとすれば建築基準法の趣旨及び目的や同法の各規定により保護されるべき周辺住民の個別的利益を害することとなるのが明らかであるといった特段の事情が,開発許可の段階において認められるとすれば,上記と別異に解する余地がないではないとも考えられるけれども,本件において上記のような特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 以上のとおりであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えはいずれも- 28 -,,,,不適法であるからこれを却下し訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条民事訴訟法61条,65条本文を適用して,主文のとおり判決する。 なお,原告らは,第4回口頭弁論期日において,裁判長がした口頭弁論の終結の宣言に異議がある旨述べた。しかしながら,この口頭弁論の終結の宣言は,裁判長が合議体の発言機関として行ったものであり,同法150条に基づく異議の対象とはならない。よって,上記異議は不適法であり,却下する。 東京地方裁判所民事第3部八木一洋裁判長裁判官高橋信慶裁判官裁判官谷口豊は,転補のため署名押印することができない。 八木一洋裁判長裁判官 東京地方裁判所民事第3部 八木一洋裁判長 高橋信慶裁判官 谷口豊裁判官 転補のため署名押印することができない。
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