令和6年6月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第2401号損害賠償請求事件(A事件)平成29年(ワ)第1450号損害賠償等請求事件(B事件)口頭弁論終結日令和6年2月7日判決 京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488番地両事件原告京都市(以下「原告」という。)同代表者市長松井孝治同訴訟代理人弁護士田辺保雄 同松井俊輔京都市右京区(以下略)A事件被告甲株式会社(以下「被告甲」という。)同代表者代表取締役 A 京都市右京区(以下略)A事件被告 A(以下「被告A」という。)京都市右京区(以下略)B事件被告乙株式会社 (以下「被告乙」という。)同代表者代表取締役 B大阪府守口市(以下略)B事件被告 C(以下「被告C」という。) 上記4名訴訟代理人弁護士田 稔 東京都新宿区(以下略)A事件被告ら補助参加人丙株式会社(以下「補助参加人」という。)同代表者代表取締役 a同訴訟代理人弁護士青木永光 同青木重人同岡村泰郎同青木純代 主文 1 被告甲は、原告に対し、11億3136万2737円及び別紙1遅延損害金 目録番号1の「内金(認容額)」欄記載の金員に対する「起 青木純代 主文 1 被告甲は、原告に対し、11億3136万2737円及び別紙1遅延損害金 目録番号1の「内金(認容額)」欄記載の金員に対する「起算日」欄記載の日から支払済みまで「利率」欄記載の割合による金員を支払え。 2 被告Aは、原告に対し、11億3136万2737円及び別紙1遅延損害金目録番号2の「内金(認容額)」欄記載の金員に対する「起算日」欄記載の日から支払済みまで「利率」欄記載の割合による金員を支払え。 3 被告甲と被告乙が平成26年6月1日にした全ての営業譲渡を取り消す。 4 被告乙は、原告に対し、2億7653万円及びこれに対する前項の確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 5 被告甲と被告Cとが平成26年1月7日に締結した別紙2-1不動産目録1記載の土地に対する根抵当権設定契約を取り消す。 6 被告Aと被告Cとが平成26年1月22日に締結した別紙2-1不動産目録2記載の土地に対する根抵当権設定契約を取り消す。 7 被告甲と被告Cとが平成26年1月22日に締結した別紙2-1不動産目録3記載の建物に対する根抵当権設定契約を取り消す。 8 被告Cは、別紙2-1不動産目録1記載の土地について、別紙2-2登記目 録1記載の根抵当権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。 9 被告Cは、別紙2-1不動産目録2記載の土地について、別紙2-2登記目録2記載の根抵当権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。 被告Cは、別紙2-1不動産目録3記載の建物について、別紙2-2登記目録3記載の根抵当権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。 11 原告の被告乙に対する主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却す る。 12 訴訟費用の負担は次の 物について、別紙2-2登記目録3記載の根抵当権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。 11 原告の被告乙に対する主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却す る。 12 訴訟費用の負担は次のとおりとする。 ⑴ A事件において生じたもの(参加によって生じた費用を含む。)は、被告甲及び被告Aの連帯負担とする。 ⑵ B事件において、原告に生じたものの20分の19及び被告乙に生じたも のは、これを5分し、その3を原告の、その余を被告乙の負担とし、原告に生じたものの20分の1及び被告Cに生じたものは被告Cの負担とする。 13 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 (下線を付した用語については、別紙15用語集で説明がされている。) 第1 請求 1 A事件⑴ 被告甲に対する請求主文1項と同じ⑵ 被告Aに対する請求 主文2項と同じ 2 B事件⑴ 被告乙に対する請求ア主位的請求被告乙は、原告に対し、11億3136万2737円及び別紙遅延損害 金目録番号3の「内金(請求額)」欄記載の金員に対する「起算日」欄記載 の日から支払済みまで「利率」欄記載の割合による金員を支払え。 イ予備的請求主文3項と同じ被告乙は、原告に対し、4億2942万円及びこれに対する前項の確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告Cに対する請求主文5項から10項と同じ第2 事案の概要 1 請求の概要⑴ A事件 平成25年9月、京都市内で豪雨が発生し、原告が管理する畑川の水があふれ、その周辺地域に浸水被害が生じた(下記2⑷の本件浸水事故、本件浸水被害)。これにより、原告において浸水被害を受けた住民に対する損害 25年9月、京都市内で豪雨が発生し、原告が管理する畑川の水があふれ、その周辺地域に浸水被害が生じた(下記2⑷の本件浸水事故、本件浸水被害)。これにより、原告において浸水被害を受けた住民に対する損害賠償等に伴う支出が生じた。原告は、畑川の増水時にその水を排出するために設置した小栗栖排水機場(以下「本件排水機場」という。)の運転監視業務 を被告甲に対して委託していた。 A事件における請求の概要は、次のとおりである。 ア被告甲の従業員が運転監視業務を怠り本件排水機場のポンプを停止させたために本件浸水被害が発生したと主張して、被告甲に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、住民への賠償額や調査費用等相当額及び 別紙遅延損害金目録番号1のとおりの遅延損害金の支払を求める。 イ被告甲の代表取締役である被告Aに対し、本件排水機場の運転監視のための人員配置の体制をとらなかったなどの任務懈怠があると主張して、会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき、アと同額の損害金及び別紙遅延損害金目録番号2のとおりの遅延損害金の支払を求める。 ⑵ B事件 本件浸水事故後、被告甲は、被告乙に営業譲渡を行い(下記2の本件営業譲渡)、A事件被告らは、その所有する不動産について、被告Cとの間で根抵当権設定契約を締結し、その仮登記がされた。 B事件における請求の概要は、次のとおりである。 ア被告乙に対する請求 主位的請求被告乙が信義則上被告甲と法人格が異なることを主張できないと主張して、被告乙に対し、上記⑴アの債務不履行による損害賠償請求権に基づき、上記⑴アと同額の損害金及び別紙遅延損害金目録番号3のとおりの遅延損害金の支払を求める。 予備的請求詐害行為取消請求権に基づき、被告乙に対し、本 務不履行による損害賠償請求権に基づき、上記⑴アと同額の損害金及び別紙遅延損害金目録番号3のとおりの遅延損害金の支払を求める。 予備的請求詐害行為取消請求権に基づき、被告乙に対し、本件営業譲渡の取消しを求めるとともに、価額償還として4億2942万円及びこれに対する本件営業譲渡の取消確定の日の翌日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払を求める。 イ被告Cに対する請求詐害行為取消請求権に基づき、被告Cに対し、各根抵当権設定契約の取消し及び各根抵当権設定仮登記の抹消登記手続を求める。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠(枝番号を含む。以下、特 記ない限りA事件のものである。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者及び関係者(甲5、B事件甲4、5)ア原告は、畑川の管理者であり、その管理のために本件排水機場を設置した。 イ被告甲は、道路の修繕管理部門と排水機場の管理部門からなる株式会社 であり、原告から本件排水機場の運転監視業務の委託を受けていた。被告Aは、被告甲の代表取締役である。被告甲の全株式は株式会社丁が保有しており、本件営業譲渡がされた当時の株式会社丁の代表取締役は被告Aであった。 本件浸水事故時に本件排水機場の運転監視を行っていた被告甲の従業員 はD(昭和28年3月生、当時60歳)であった。 補助参加人は、被告甲が締結していた施設・業務遂行リスクに関する保険契約の保険者である。 ウ被告乙は、被告甲から道路の修繕管理部門に関する営業の譲渡を受けた株式会社であり、Bが代表取締役である。 被告Cは、被告Aの義弟であり、被告乙の監査役である。 ⑵ 本件排水機場の位置 ウ被告乙は、被告甲から道路の修繕管理部門に関する営業の譲渡を受けた株式会社であり、Bが代表取締役である。 被告Cは、被告Aの義弟であり、被告乙の監査役である。 ⑵ 本件排水機場の位置・役割(甲3、5、39)畑川は、一級河川山科川の支川であり、京都市伏見区内を流れる普通河川である。畑川は、その全体は別紙3(青線部分)のとおりであり、別紙4(上図)のとおり南端で山科川と合流する。本件排水機場はその合流地点に設置 されている。 本件排水機場には、1号ポンプ(電気駆動)及び2号ポンプ(ディーゼル駆動)(以下、2つのポンプを併せて「本件ポンプ」という。)が設置され、大雨の際には畑川の水を山科川に排出し、畑川の氾濫を抑止する役割を担っている。その仕組みは、別紙4かり(下図)のとおり、大雨時には、畑川に 設置されたサージタンクゲート(水門)を閉鎖して、山科川から畑川への逆流が発生することを防止するとともに、本件排水機場の吸水槽に畑川の水を貯め、本件ポンプを稼動させて吐出水槽に水を送り込み、山科川へ強制的に水を押し出して畑川の水を排出するというものである。 ⑶ 原告と被告甲間の契約(甲1、2) 本件浸水事故当時、原告は、被告甲との間で、本件排水機場を含む8つの 京都市内の排水機場の運転監視業務にかかる委託契約(以下「本件委託契約」という。)及び保守管理業務にかかる委託契約(以下「本件保守管理契約」という。)を締結して、本件排水機場の運転監視業務及び保守管理業務を委託していた。 ⑷ 豪雨及び浸水被害の発生(甲3) ア平成25年9月15日から16日にかけて、台風18号の影響により豪雨が発生し(以下「本件豪雨」といい、本件豪雨が発生した日について単に「15日」「16日」ということがある。)、本件排水 ア平成25年9月15日から16日にかけて、台風18号の影響により豪雨が発生し(以下「本件豪雨」といい、本件豪雨が発生した日について単に「15日」「16日」ということがある。)、本件排水機場において本件ポンプが自動で稼動を開始し、Dが単独で運転監視業務に就いた。 イ運転監視中、Dは、本件ポンプを停止させたが、本件ポンプの説明書で 定められたとおりの復帰操作を行わなかったため、本件ポンプは16日午前2時50分から午前6時47分までの間停止していた。この間に畑川の水位が上がって溢水し、本件排水機場の周辺地域が浸水し(以下「本件浸水事故」という。)、当該地域に存在する家屋、店舗、車両等に浸水被害が生じた(以下「本件浸水被害」という。)。 ⑸ 本件浸水事故の原因に関する調査結果(甲3、6、B事件甲17)平成25年11月5日、原告が設置した小栗栖排水機場周辺における浸水被害検証委員会において、「小栗栖排水機場周辺における浸水被害検証報告書」(甲3、以下「本件報告書」という。)が作成された。本件報告書は、本件浸水事故の被害状況を再現するための解析の前提となる条件を設定し、 その条件に従って本件ポンプが規則どおり稼動した場合(本件ポンプの停止後速やかに稼動が開始された場合)の畑川の水位を解析し、その場合は溢水が生じることはなく、本件排水機場周辺に浸水被害が発生しなかったと結論付けた。 これを受けて、原告は、本件浸水被害の被害者らに対して損害賠償を開始 し、遅くとも平成25年12月には被告甲との間で損害賠償に関する協議を 開始した。 ⑹ 被告Cによる根抵当権の設定及びその仮登記(B事件甲15。以下の根抵当権の設定及びその仮登記を併せて「本件根抵当権設定等」という。)被告甲と被告Cは、平成26年1 協議を 開始した。 ⑹ 被告Cによる根抵当権の設定及びその仮登記(B事件甲15。以下の根抵当権の設定及びその仮登記を併せて「本件根抵当権設定等」という。)被告甲と被告Cは、平成26年1月7日、被告甲が所有する別紙2-1不動産目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)について、根抵当権 設定契約を締結した。そして、同月21日、同契約に基づき、別紙2-2登記目録1記載の根抵当権設定仮登記がされた。 被告Aと被告Cは、同月22日、被告Aが所有する別紙2-1不動産目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)について、根抵当権設定契約を締結した。そして、同年2月7日、同契約に基づき、別紙2-2登記目録 2記載の根抵当権設定仮登記がされた。 被告甲と被告Cは、同年1月22日、被告甲が所有する別紙2-1不動産目録3記載の建物(以下「本件建物」という。)について、根抵当権設定契約を締結した。そして、同年2月7日、同契約に基づき、別紙2-2登記目録3記載の根抵当権設定仮登記がされた。 ⑺ 被告甲からの被告乙に対する営業譲渡(B事件甲1、乙5の2、6の2)平成26年1月21日、被告乙が設立された。 被告甲は、同月24日、被告乙との間で、道路工事事業に関する営業権、本件建物及び機械備品一式を譲渡する契約、すなわち、被告甲の道路工事の部門に関する営業(以下「本件営業」という。)を譲渡する契約を締結し、 その譲渡を同年6月1日付けで行った(以下「本件営業譲渡」という。)。 3 争点⑴ 被告甲に対する請求ア本件ポンプの停止は被告甲の債務不履行によるものか(争点1-1)イ本件ポンプの停止と本件浸水事故との間の因果関係(争点1-2) ウ損害額(争点1-3) エ過失相殺の可否(争点1- ンプの停止は被告甲の債務不履行によるものか(争点1-1)イ本件ポンプの停止と本件浸水事故との間の因果関係(争点1-2) ウ損害額(争点1-3) エ過失相殺の可否(争点1-4)⑵ 本件ポンプの停止についての被告Aの任務懈怠責任(争点2・被告Aに対する請求)⑶ 被告乙は、法人格否認の法理が適用されて被告甲と同じ損害賠償責任を負うか(争点3・被告乙に対する主位的請求) ⑷ 本件営業譲渡の詐害行為該当性(争点4-1・被告乙に対する予備的請求)及び本件根抵当権設定等の詐害行為該当性(争点4-2・被告Cに対する請求) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 本件ポンプの停止は被告甲の債務不履行によるものか(争点1-1・被告 甲に対する請求)(原告の主張)ア本件ポンプを再稼動させるべき債務の不履行Dは、本件ポンプを停止させた後、復帰操作を誤り、本件ポンプを再稼動させなかったのであり、本件ポンプの停止はDの過失により生じた。 また、被告甲は、高齢であるDに、長時間にわたり、本来2名で行う業務を1名で、深夜の時間帯に行わせていたが、これは、本件委託契約に定められた職員の安全を図る義務及び交代要員を確保する義務に違反しており、このことも本件ポンプの操作ミスを生じさせた。 イ本件排水機場に従業員2名を配置すべき債務の不履行 本件委託契約では、畑川の水位が運転監視水位に到達した場合、被告甲は従業員2名以上で運転監視を行うこととされていた。しかし、被告甲は、本件排水機場の運転監視をD1名に任せていた。本件排水機場にもう1名の従業員が配置されていれば、その者が本件ポンプを再稼動させることができたのであり、当該債務不履行も本件浸水事故の原因である。 (被告甲及び補助参加人の主張) いた。本件排水機場にもう1名の従業員が配置されていれば、その者が本件ポンプを再稼動させることができたのであり、当該債務不履行も本件浸水事故の原因である。 (被告甲及び補助参加人の主張) ア本件ポンプの停止について過失がないこと被告甲の従業員が本件排水機場の操作盤の運転操作について説明を受けたのは、平成16年のことであり、その内容も操作方法の一般的、概括的な説明にとどまるものだった。そのため、Dは、本件排水機場にある2つの操作盤の両方で故障復帰操作をする必要があることを知らなかった。D は本件ポンプを再稼動させようと本件排水機場の3階にある故障復帰ボタンを押し、これによって再稼動できていると信じており、Dがこのように信じたことはやむを得ないことであった。 また、本件ポンプが停止したままになったのは、Dが故障復帰ボタンを押した後、そのまま眠り込んだためであるが、これは、除塵機及びベルト コンベアーに溜まっていたゴミを片付けていた最中に、木材が顔面に当たり怪我をしたからである。人力によってゴミを排除しなければならないような本件排水機場の仕組み自体に問題がある上、不慮の事故が重なったために本件ポンプが再稼動されなかったのであって、被告甲に過失はない。 イ本件排水機場に従業員2名を配置すべき債務について 上記の債務は本件委託契約上の内容ではないこと本件委託契約上、被告甲が負う債務は、本件委託契約の対象である8か所の排水機場に各従業員2名の合計16名以上の従業員を配置することを可能にする程度の従業員を雇用しておくことにすぎない。運転監視のために従業員2名を現に配置することが債務の内容ではない。 24時間・365日にわたって、いつでも8か所の排水機場に従業員2名以上を現に配置できるよう 雇用しておくことにすぎない。運転監視のために従業員2名を現に配置することが債務の内容ではない。 24時間・365日にわたって、いつでも8か所の排水機場に従業員2名以上を現に配置できるようにすることが求められる場合、その人件費だけでも相当な金額になる。本件委託契約の業務委託料は年間4341万円程度であり、運転監視を行った分料金が加算されることを踏まえても、上記のような人員体制をとることができる金額ではないから、被 告甲にそのような債務はない。 過失がないこと被告甲が本件排水機場に従業員2名を配置することができなかったのは、予想をはるかに超えた大雨によって他の排水機場への派遣で従業員全員が出払ってしまったことに加え、2人目の従業員が本件排水機場に向かうも浸水や渋滞によって通常15分程度の道が2時間以上かか ってしまったためであり、やむを得ないものであった。 ウ重過失を要件とすべきであること地方公共団体の行使する国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条2項に基づく求償権の相手方が公務員の場合は、同法1条2項との均衡から、相手方の故意又は重過失が要件とされており、この場合の公務員は、 公務員法上の公務員に限らず公権力を行使する権限が与えられている者である。したがって、地方公共団体である原告が上記の意味での公務員である被告甲に対して債務不履行責任を追及する場合には重過失が要件とされるべきである。 Dは、本件豪雨による緊急事態下に、長時間にわたり本件排水機場の運 転監視業務に従事し、疲労困憊した状態にありながら、本件ポンプを再稼動させようとしていたのだから、結果的に故障復帰操作が誤っていたからといって重過失があるとはいえない。また、本件排水機場に2名以上の従業員を配置しなかった 困憊した状態にありながら、本件ポンプを再稼動させようとしていたのだから、結果的に故障復帰操作が誤っていたからといって重過失があるとはいえない。また、本件排水機場に2名以上の従業員を配置しなかったことをもって、重過失があるともいえない。 ⑵ 本件ポンプの停止と本件浸水事故との間の因果関係(争点1-2・被告甲 に対する請求)(原告の主張)本件報告書が結論付けるとおり、本件浸水事故は、本件ポンプが停止したことが原因となって発生した。 本件報告書の作成にあたり、本件浸水事故の原因分析を目的として、コン サルタント会社の専門技術的な計算に基づく数値を用い、河川工学及び水文 学の専門家を構成員とする第三者委員会によって客観的な検証が行われた。 検証内容は、最終的な本件浸水被害を再現するシミュレータを作成して、本件ポンプが正常に稼動していたとしても本件浸水被害と同じ結果が発生したかどうかのシミュレーションを行うというもので、検証の結果、本件報告書は、本件浸水事故は本件ポンプの停止が原因であると結論付けられており、 本件報告書の内容は合理性を備えている。 (被告甲及び補助参加人の主張)本件報告書は、その解析条件の設定や解析の過程が次の点において不合理であり(その具体的内容は別紙14のとおり。)、本件ポンプの停止と本件浸水事故との間の因果関係が立証されたとはいえない。 ア 1池モデルを採用したことイ流入量の算出に合成合理式を用いたことウ流出係数の設定エ時間降雨量の算出手法オシミュレータの再現性が低い カシミュレーションの過程及び結果 負の内水量が観念されていること 浸水の発生条件が設定されていない本件ポンプの排水量の設定最高計算内水位でも浸水被害が 低い カシミュレーションの過程及び結果 負の内水量が観念されていること 浸水の発生条件が設定されていない本件ポンプの排水量の設定最高計算内水位でも浸水被害が発生する可能性がある ⑶ 損害額(争点1-3・被告甲に対する請求)(原告の主張)原告に生じた損害は、次のアからエまでの合計額からオを差し引いた11億3136万2737円である。 ア被害者らに対する賠償額 7億3862万7682円 本件浸水事故により、本件排水機場の周辺地域では、床上又は床下浸水 による建物、家財、車両や車載品等が損傷するなどの被害が生じた。本件浸水事故は、原告が管理する本件排水機場及び畑川の管理に瑕疵があったことにより生じたものであるから、原告は、国賠法2条1項に基づき、本件浸水事故の被害者らに対し、損害賠償義務を負った。 賠償額の算定において、原告は、領収書等の証拠資料が提出された場合 には、それらに基づき、原状回復に必要かつ妥当な範囲の修繕費用又は現在価値(再調達価格に経年減価を考慮したもの)により賠償額を算定した。 他方、領収書等の証拠資料が提出されない場合は、損害賠償算定基準を定め、同基準に基づいて損害額を算定した上で、被害者らに支給された保険会社からの保険金等を控除して、別紙6のとおり、「氏名」欄記載の被害 者との間で「賠償額」欄記載の金額で示談して、合計7億4550万3518円の賠償金を支払い、後に保険金を受領していたことが判明した被害者については、その保険金の合計額687万5836円を控除して本件における請求額を7億3862万7682円(別紙8のA「原告の請求額」でもある。)とした。 個々の被害者についての争点(被告甲及び補助参加人が否認する部分。)に関する 36円を控除して本件における請求額を7億3862万7682円(別紙8のA「原告の請求額」でもある。)とした。 個々の被害者についての争点(被告甲及び補助参加人が否認する部分。)に関する原告の主張は、別紙10「原告の主張」欄記載のとおりである(以下、個々の被害者を摘示する際は別紙8「№」欄記載の番号を用いる)。 別紙10の各番号の主張は、別紙8の「別紙10との対応番号」欄において同じ番号に丸が付された被害者に対応する(なお、この対応関係はA事 件被告ら及び補助参加人の主張並びに裁判所の判断においても同じである)。 イ原告が保険会社に支払をした金額 2億6233万1350円原告は、被害者に保険金の支払をした保険会社からの求償額が、原告が算定した損害額から控除した保険金の額以下であれば、その求償額を弁済 し、上回る場合は原告が算定した損害額から控除した保険金の額を弁済す ることとし、その内容で各保険会社との間で示談を成立させた。そして、別紙7のとおり、「保険会社(略称)」欄記載の保険会社に対し、同欄の右の欄記載の被害者から代位取得した損害賠償請求権について、「賠償額」欄記載の金額(合計2億6233万1350円)を支払った。 ウ原告所有の建物等の修繕に要した費用 原告が所有する小栗栖市営住宅及び小栗栖中学校が本件浸水被害を受けた。原告は、建物、関連設備等の修繕、清掃、除菌等に要する費用として、次の金額を支出した。 小栗栖市営住宅修繕等費用 4758万2032円小栗栖中学校修繕等費用 478万7740円 エ本件浸水事故の対応に要した費用 1億4002万4394円原告は、本件浸水事故の被害者らに対する賠償額の調査、資料作成など本件浸水事故の対応に要する費用として、1億4002万4 0円 エ本件浸水事故の対応に要した費用 1億4002万4394円原告は、本件浸水事故の被害者らに対する賠償額の調査、資料作成など本件浸水事故の対応に要する費用として、1億4002万4394円を支出した。 オ被告甲の原告に対する委託料等の支払請求権との相殺 6199万04 61円(被告甲及び補助参加人の主張)ア原告の被害者に対する賠償分本件浸水事故の被害者らの被害申告には、浸水状態、浸水の深さについての資料が無い又は不十分であったり、建物平面図などの建物概要に ついての基本的資料が無いものがあったりして、被害の実態を把握することができない。修理見積書などの基本的な資料が添付されていないものもある。これらの被害申告には不当なものがあり、原告が主張する賠償額は、原告が被害者らからの申告内容を鵜呑みにしたもので、被害者らに生じた正確な損害額であるとはいえない。 被告甲及び補助参加人が否認する損害の内訳は、建物家財に関するも の(別紙8B1欄に記載のある被害者に対する賠償。否認する理由は別紙9、別紙10番号1~4の「A事件被告ら及び補助参加人の主張」欄記載のとおりであるが、一部の被害者については別紙10番号11の同欄にも記載がある。)、休業損害に関するもの(別紙8B2欄に記載のある被害者に対する賠償。否認する理由は別紙10番号11の「A事件 被告ら及び補助参加人の主張」欄記載のとおり。)、車両損害(別紙8B3に記載のある被害者に対する賠償。否認する理由は別紙10番号5~10の「A事件被告ら及び補助参加人の主張」欄記載のとおり。)、その他(別紙10番号11の同欄記載のとおり。)である。 また、本件ポンプが稼動していたとしても最高内水位は16.43m にまで達していたか 被告ら及び補助参加人の主張」欄記載のとおり。)、その他(別紙10番号11の同欄記載のとおり。)である。 また、本件ポンプが稼動していたとしても最高内水位は16.43m にまで達していたから、周辺地域に浸水被害が生じることは避けられず、前記で被告甲及び補助参加人が否認する損害額以外の損害額のうち本件ポンプの停止と相当因果関係が認められる金額は、家屋・家財等の損害のうち標高16.5~16.8mの場所で発生したもの(2億3653万8216円)及び車両損害のうち標高が16.0mより高い区域 の駐車場で発生したもの(4612万1472円)の合計2億8265万9688円の限度にとどまる。 イ原告が保険会社に支払をした金額につき合計2億3300万2377円(別紙8Cオ欄の合計額のとおり)の限度で認める。 ウその余の損害については不知である。 ⑷ 過失相殺の可否(争点1-4・被告甲に対する請求)(被告甲及び補助参加人の主張)本件浸水事故が発生したことについて原告にも落ち度があるから、過失相殺がされるべきである。原告の落ち度は次のア~ウのとおりであり、その過失割合は9割を下らない。 ア本件排水機場の設備に不備があること 本件排水機場は、1つ目の故障復帰ボタンを押すと故障表示灯が消灯し、本件ポンプが再稼動したかのような外観が生じるものの、実際には2つ目の故障復帰ボタンも押さないと再稼動されないという仕組みになっており、このような緊急時にミスが起きやすい仕組みを採用した原告に落ち度がある。 また、本件排水機場にはゴミを除去するためのクレーンが無かったことも、不備があり、原告の落ち度である。 イ緊急時の対応に関する研修、教育を行わなかったこと原告は、本件排水機場の管理方法及び緊急 また、本件排水機場にはゴミを除去するためのクレーンが無かったことも、不備があり、原告の落ち度である。 イ緊急時の対応に関する研修、教育を行わなかったこと原告は、本件排水機場の管理方法及び緊急時の運用や機械の操作方法について、被告甲に適切な研修や教育を行うべき立場にあった。原告は緊急 時のマニュアル等を作成した上で、操作方法を間違えないような対策をし、又は誤認識を誘発しやすい表示等を改善又は注意喚起する義務があったのにこれを怠った。 ウ監視システムの利用、本件排水機場の状況確認及び被告甲に対する指示を怠っていたこと 原告は本件豪雨という緊急事態に対して職員10名での体制を敷くこととしたものの、最終的に8名しか出勤しておらず、必要な人員を欠いた状態で災害対応に当たり、本件排水機場内で計測した畑川の水位や本件ポンプの稼動状況などを監視するシステムによる水位の監視を怠った。また、畑川の水位上昇について住民から通報があったにもかかわらず、直ちに原 告の職員を出動させるのを怠った。 エ本件委託契約の業務委託料は原告が求める債務の内容に見合わないこと原告がA事件被告らに対して、24時間・365日にわたって、8か所の排水機場の保守及び運転監視業務を履行し、そのための人員を確保することを求めるならば、原告は相応の業務委託料を支払うべきである。しか し、本件委託契約上の業務委託料はそのような人員を確保できるような金 額ではない。A事件被告らが、原告が求める人員体制を構築できなかったとしても、これを全てA事件被告らの責任とすることはできない。 (原告の主張)原告に過失はなく、過失相殺はされるべきでない。 ア本件排水機場の設備に不備はないこと 本件ポンプの故障復帰操作において、本件ポンプ機の操 らの責任とすることはできない。 (原告の主張)原告に過失はなく、過失相殺はされるべきでない。 ア本件排水機場の設備に不備はないこと 本件ポンプの故障復帰操作において、本件ポンプ機の操作盤と中央監視室の操作盤の両方で操作をする必要があることは事故防止のために必要な仕組みであり、不備ではない。 本件ポンプの故障復帰操作方法は、被告甲に交付された運転操作説明書に記載されている。本件浸水事故は、被告甲が従業員に本件ポンプの操作 方法を習熟させず、その結果、従業員が正しい操作をしなかっただけであって、本件排水機場の仕組み自体に不備があることにはならない。 イ原告に、緊急時の対応に関する研修、教育を行うべき義務はないこと原告は、本件ポンプの操作方法について説明会の実施及び操作説明書の交付をしており、必要かつ十分な説明をしている。これ以上に原告が被告 甲に対して教育、指導を行う義務はない。 ウ監視システムの利用、本件排水機場の状況確認及び被告甲に対する指示をしなかったことが原告の落ち度にならないこと原告は本件排水機場の水位を確認するための監視システムを有していたが、これは水位がリアルタイムで表示されるものではなく、必要に応じて 端末を操作すると操作時点の水位を確認できるというものである。本件豪雨のような事態が生じた場合、原告は市民からの問い合わせ対応、関係機関との調整など多岐にわたる業務をこなす必要があるため、河川の水位の監視は難しく、だからこそ排水機場における運転監視業務を民間事業者に委託して行わせているのである。 ⑸ 本件ポンプの停止についての被告Aの任務懈怠責任(争点2・被告Aに対 する請求)(原告の主張)ア任務懈怠があること被告Aは、被告甲の代表取締役として、本件 ある。 ⑸ 本件ポンプの停止についての被告Aの任務懈怠責任(争点2・被告Aに対 する請求)(原告の主張)ア任務懈怠があること被告Aは、被告甲の代表取締役として、本件委託契約上の業務の遂行に必要な人員を確保するとともに、各排水機場の水位の状況、従業員の 配置状況など各排水機場の管理・監視状況を常に把握できる体制を構築し、かつ、運転監視水位到達時に従業員2名以上を各排水機場に配置して運転監視業務を行うことができる体制を構築するべき義務があった。 しかし、被告甲は、本件豪雨の際、各排水機場への人員配置の状況、各排水機場での管理・監視状況を十分に把握できておらず、本件排水機 場において運転監視水位に到達しているのに、D1名のみしか配置しなかった。被告Aが上記各体制を構築していないことは明らかであり、被告Aは上記義務を怠った。 被告Aは、被告甲が本件委託契約上の運転監視業務を遂行するにあたり、その従業員に対して、本件ポンプの操作方法など業務の遂行に必要 な知識、技能等について教育、指導するなどして業務を適切に履行できる体制を構築する義務があった。しかし、被告甲は、その従業員に対し、十分かつ適切な教育、指導をしておらず、Dは停止したポンプの再稼動という基本的な操作方法さえ十分に理解又は実行できていないから、被告Aは上記義務を怠ったといえる。 イ悪意又は重過失があること被告甲では排水機場管理のための人員を確保する体制の不備が常態化していたところ、被告Aは、被告甲の代表取締役として、豪雨の際に各排水機場管理のための人員体制を整えることをしなかった。そのために、本件浸水事故当時、本件排水機場に2人の従業員を置くことができず、本件浸 水事故の発生に繋がったのであり、被告Aの重過失 に各排水機場管理のための人員体制を整えることをしなかった。そのために、本件浸水事故当時、本件排水機場に2人の従業員を置くことができず、本件浸 水事故の発生に繋がったのであり、被告Aの重過失により本件浸水事故が 生じたといえる。 ウしたがって、被告Aは、被告甲と同じ損害額について責任を負う。 (被告A及び補助参加人の主張)ア前記⑴(争点1-1)(被告甲及び補助参加人の主張)イのとおり、本件委託契約上、被告甲には運転監視のために従業員2名以上を現に配置す る債務はないから、被告Aにもそのための人員配置体制を構築するべき義務はない。被告Aは、技術従業員を30名雇用していたから、8か所の排水機場に各従業員2名の合計16名以上の従業員を配置できる体制を構築していたともいえる。 本件ポンプの故障復帰操作について、前記⑴(争点1-1)(被告甲及 び補助参加人の主張)アのとおり、原告から被告甲に対して具体的に教示されたことはなかった。被告Aが、被告甲の従業員に対して本件ポンプの操作方法などについて教育、指導する体制を構築していなかったわけではない。 イ被告Aは、本件豪雨により8か所の排水機場で同時多発的に運転監視体 制になることは全く予想することができず、被告甲の内部体制がこのような異常事態に対応することができなかったからといって、被告Aに重過失があったとはいえない。 ⑹ 被告乙は、法人格否認の法理の適用により被告甲と同じ損害賠償責任を負うか(争点3・被告乙に対する主位的請求) (原告の主張)被告乙と被告甲は実質的に同一のものであって、被告乙は、原告に対し、被告甲と別異の法人格であることを主張することはできない。 ア被告甲が被告乙を支配していること被告甲と被告乙の人的関係は共通して 告乙と被告甲は実質的に同一のものであって、被告乙は、原告に対し、被告甲と別異の法人格であることを主張することはできない。 ア被告甲が被告乙を支配していること被告甲と被告乙の人的関係は共通しており、被告乙の主要な従業員は被 告Aの影響を受ける地位にあるから、被告甲が被告乙を支配しているとい える。また、被告乙の本店所在地が被告A所有の土地であることも、被告Aが被告乙に対して影響力を有することの証左である。 イ被告乙と被告甲の同一性事業形態の同一性被告乙の本店所在地と被告甲の本店所在地は同一である。被告乙が許 可を受けている建設業種は、被告甲が許可を受けていた建設業種に包含されており、事業目的及び事業内容に共通性がある。 資産、負債の承継本件営業譲渡は、被告甲がその事業の全部を被告乙に譲渡したものである。被告乙には被告甲の物的資産のほとんどが移行されている。設立 後間もない被告乙が、金融機関から運転資金の融資を受けられたのは、被告甲に係る債務を引き受け、被告甲と実質的に同一であると振舞っていたからである。 また、土木施工管理に関する資格を有する多くの被告甲の従業員が被告乙に入社しており、被告甲の人的資産も被告乙に承継されている。 ウ被告乙が債務の弁済を免れる目的で設立されたこと本件営業譲渡が行われた経緯からみて、被告乙が、被告甲から人的・物的資産及び公共工事を含む業務実績を承継しつつ、原告に対する債務に限って弁済を免れることを目的として設立されたものであることは明らかである。 (被告乙の主張)被告乙は、被告甲とは別個独立の法人であり、実質的に同一であるともいえない。 ア被告甲は被告乙の経営を支配していない。 被告甲は、平成25年11月5日に原告から公共事業に (被告乙の主張)被告乙は、被告甲とは別個独立の法人であり、実質的に同一であるともいえない。 ア被告甲は被告乙の経営を支配していない。 被告甲は、平成25年11月5日に原告から公共事業についての入札参 加資格停止処分を受けたことにより、取引先及び金融機関等との間で信用 が低下し、事業継続不可能となった。これを受けて、その従業員であったBが他の従業員も引き連れて被告甲を退社して独立し、被告乙を設立したにすぎない。被告甲又は被告Aは、被告乙の経営に関して影響力を有していない。 イ被告乙は、被告甲が債務の弁済を免れる目的で設立したものではない。 本件営業譲渡は、被告甲が事業継続不可能な状態で、受注した公共工事を遂行しようとしてやむなく実行したものであって、被告甲及び被告乙には原告を害する目的はなく、そのために被告乙を設立したものでもない。 ⑺ 本件営業譲渡の詐害行為該当性(争点4-1・被告乙に対する予備的請求)(原告の主張) ア被告甲は、前記⑴から⑷のとおり、原告に対し、11億円を超える損害賠償債務を負う中で、稼動中であった道路工事部門の事業の全部を譲渡して、原告に対する弁済能力を失わせており、本件営業譲渡は原告の債権回収を阻害する詐害行為に当たる。被告甲は、そのことを認識しながら本件営業譲渡を行った。 イ本件営業譲渡当時の本件営業の価値は、4億2942万円であり、被告乙は、本件営業譲渡が取り消されることにより、原告に対し同額の償還債務を負う。 (被告乙の主張)被告甲は、平成25年11月に原告から入札参加資格停止処分を受けたこ とにより、その運営を続けて行くことが不可能となっていたのであるから、被告甲の資産価値はゼロに等しく、本件営業譲渡は詐害性がない。 ⑻ 本件根抵当 月に原告から入札参加資格停止処分を受けたこ とにより、その運営を続けて行くことが不可能となっていたのであるから、被告甲の資産価値はゼロに等しく、本件営業譲渡は詐害性がない。 ⑻ 本件根抵当権設定等の詐害行為該当性(争点4-2・被告Cに対する請求)(原告の主張)被告甲及び被告Aは、前記⑴から⑸のとおり、原告に対し、11億円を超え る損害賠償債務を負う中で、その所有する不動産について極度額5000万 円の根抵当権を設定し、その仮登記をして、本件土地1、2及び本件建物の担保価値を減少させており、本件根抵当権設定等は原告の債権回収を阻害する詐害行為に当たる。被告甲及び被告Aは、そのことを認識しながら本件根抵当権設定等を行った。 (被告Cの主張) 被告甲は、資金繰りに窮したため、被告Cから平成26年1月に1000万円、同年9月に500万円を借り入れた。被告Cとの間の根抵当権設定契約及びその仮登記は、これらの借入れを担保し、被告甲の資金繰りを目的としたもので、被告甲及び被告Aが原告の債権回収を妨害することを意図したものではない。 第3 当裁判所の判断 1 本件ポンプの停止は被告甲の債務不履行によるものか(争点1-1・被告甲に対する請求)⑴ 認定事実ア本件委託契約の締結経緯及び契約内容(甲1、2、被告A本人、弁論の 全趣旨)被告甲は、被告Aの父が代表者であった昭和40年代から、原告との間で本件排水機場を含む京都市内の複数の排水機場にかかる運転監視業務委託契約及び保守管理業務委託契約を締結していた。これらの契約はいずれも競争入札によるものであったが、ほかに入札する者がおらず、 事実上、被告甲が原告の排水機場の管理を継続して受託していた。 原告と被告甲は、平成25年4 結していた。これらの契約はいずれも競争入札によるものであったが、ほかに入札する者がおらず、 事実上、被告甲が原告の排水機場の管理を継続して受託していた。 原告と被告甲は、平成25年4月1日、本件委託契約及び本件保守管理契約を締結した。本件委託契約と本件保守管理契約は一体となっており、その委託料は、4341万8875円のほかに、運転監視及び水位監視を行った時間(いずれも分単位)を集計して単価を乗じた額が加算 されるものとされていた。 本件委託契約には、被告甲が仕様書に従い誠実に義務を履行しなければならないとの条項があり、本件委託契約に添付された運転監視業務委託仕様書には、次の内容が定められている。 a 受託者は、委託業務として、排水機の運転、操作及び水位監視に関する業務を行い、委託業務遂行にあたり施設について熟知し、業務の 重要性を十分に認識し、適切かつ円滑な業務の処理に努めなければならない。 b 水位監視とは、河川の急激な増水に備え、運転監視の遅れを防止するため、事前に出向き、水位の監視をすることをいう。畑川の水位が水位監視体制を敷くべき水位(水位監視水位:O.P.15m以上) に到達したときは、到達から30分以内に被告甲の従業員1名以上が本件排水機場に到着し、水位監視を行う。 c 運転監視とは、排水機及び水門等を運転操作し、畑川の内水を山科川へ排出することをいう。畑川の水位が運転監視体制を敷くべき水位(運転監視水位:O.P.15.30m以上)に到達したときは、到達 から30分以内に被告甲の従業員1名以上が本件排水機場に到着し、既に水位監視を行っている従業員との合計2名以上が、運転監視を行う。2名以上の運転操作員の出動をもって運転監視体制とする。 運転監視時は常に水位監視に 被告甲の従業員1名以上が本件排水機場に到着し、既に水位監視を行っている従業員との合計2名以上が、運転監視を行う。2名以上の運転操作員の出動をもって運転監視体制とする。 運転監視時は常に水位監視に努め、30分ごとに水位を記録し、排水機場の場内機器の状態把握を適時行い、データ収集に努めるととも に、スクリーンの除塵をしなければならない。 d 委託業務に従事する作業員のうち、運転操作員は排水機及び水門の運転が確実に行える能力を有するものとし、水位監視員は排水機場の水位監視が確実に行える能力を有するものとする。 e 水位・運転監視員が事故等により30分以内に到着できない場合の 出動態勢を確保する。河川の状況により水位監視又は運転監視体制が 長時間に及ぶ場合、各監視員の健康の保持及び排水機場の適切管理のため、勤務時間が関係法令、労使協定等に基づく範囲を越えることのないよう、その交代要員を確保し対応する。 f 受託者は、業務にあたって常に細心の注意を払い、労働基準法及び労働安全衛生規則等を遵守し従事者の安全を図り、事故防止に努めな ければならない。 本件保守管理契約における保守管理業務委託仕様書には、次の内容が定められている。 a 受託者は、委託業務の内容として、排水機場内及び水門の諸施設の管理、清掃並びに管理区域内の環境整備に関する業務、排水機場内及 び水門の各種機器の点検整備及び簡易な修理に関する業務、排水機場内の諸設備の操作、試運転、点検、整備等に伴う記録の作成及び報告に関する業務を行う。 b 受託者は、排水機場等の施設及び設備について、点検・整備、試運転を計画的に行い、排水機場等を良好な状態に保持するとともに、火 災、破損、紛失、盗難等を予防及び監視する管理業務も併せて行う。 点検・ は、排水機場等の施設及び設備について、点検・整備、試運転を計画的に行い、排水機場等を良好な状態に保持するとともに、火 災、破損、紛失、盗難等を予防及び監視する管理業務も併せて行う。 点検・整備業務には、排水機場外の除塵後始末、除塵機等設備の清掃が含まれる。 試運転業務には、排水機設備の作動試験及び運転条件の充足、排水機場外の水門等の設備の作動試験及び除塵機作動試験が含まれる。 年間を通して点検・整備を月4回以上、試運転を出水期(5月~10月)には月2回以上、非出水期には月1回以上行う。出水期前には、連動試運転(増水時を想定し各水位計を操作し、各設備が正常に連動運転することを確認すること)を行う。 イ本件排水機場の構造・設備、操作方法の説明 本件排水機場の監視制御盤取替えに伴い平成16年4月9日に行わ れた運転操作説明会においては、原告の職員立会の下、本件排水機場の操作盤を製造した三菱重工業株式会社の担当者が、被告甲の従業員に対し、本件ポンプを運転した状態から非常停止させ、非常停止状態から復帰させる操作を実際に行い、操作方法を説明した。(甲23~25、弁論の全趣旨) 原告は、被告甲に対し、同日頃、本件ポンプ等の運転操作説明書(甲26、以下「本件説明書」という。)を交付した。本件説明書は、本件浸水事故の際も本件排水機場に備え付けられていた。(争いがない)本件説明書には、本件ポンプの非常停止方法及び故障復帰方法(再稼動方法)が記載されている。非常停止する際には、本件排水機場の 2階にある本件ポンプ機操作盤又は3階にある中央制御室操作盤の非常停止ボタンを操作する必要があり、故障復帰する際には、本件ポンプ機操作盤及び中央制御室操作盤の両方で故障復帰ボタンを操作する必要がある。 ある本件ポンプ機操作盤又は3階にある中央制御室操作盤の非常停止ボタンを操作する必要があり、故障復帰する際には、本件ポンプ機操作盤及び中央制御室操作盤の両方で故障復帰ボタンを操作する必要がある。 本件排水機場に設置された水門及び本件ポンプは、基本的に自動制 御により運転が行われている。(甲3)被告甲の従業員は、本件排水機場の除塵機及びベルトコンベアーが適切に作動するように、ベルトコンベアー付近に溜まったゴミを定期的に取り除いたり均したりする必要があった。(甲5、証人D)ウ被告甲における緊急時の従業員配置の体制 水位監視水位に到達すると、従業員の携帯電話に自動的に通知がされ、この通知を受けて従業員が排水機場に赴き、その後の応援従業員の調整は、営業部部長Eと課長Fが行うこととされていた。 エ本件浸水事故が発生するまでの経過平成25年台風18号は、同年9月13日に小笠原近海で発生し、 日本の南海上を北上した。この台風を取り巻く雨雲や湿った空気が次 々と流れ込み、京都府では記録的な大雨となった。 京都市では、15日午後7時15分に大雨警報、同日午後9時51分に洪水警報、16日午前5時05分に大雨特別警報が発表された。 京都市の降水量は15日午前0時から16日午前10時までの間に250.5㎜を記録し、平年9月の月間降水量176.2㎜を上回った。 (甲3、丙4、5)本件排水機場では、15日午前2時頃から午前9時頃までの間及び同日午後2時30分頃から16日午前9時ころまでの間、下図のとおり、雨量(㎜/10分)が観測された。(甲3) 15日から16日にかけて生じた本件排水機場における事実経過は次の表のとおりである。なお、Dは、本件説明書を読んだことがなく、本件ポンプの操作方 (㎜/10分)が観測された。(甲3) 15日から16日にかけて生じた本件排水機場における事実経過は次の表のとおりである。なお、Dは、本件説明書を読んだことがなく、本件ポンプの操作方法について、以前担当していた者から、停止方法は聞いていたが、復帰方法についてはあいまいな認識しか持っていなかった。(争いがない、甲3~5、証人D) 日時(平成25年9月)事実経過15日午前4時Dが本件排水機場に出勤した。この時点では水位監視水位に達しておらず、連絡もされていなかったが、同人は雨に濡れて出勤するのを嫌っ てこの時刻に出勤をした。 午前6時19分水位監視水位に到達。 午前7時41分水位監視解除。 午後8時03分水位監視水位に到達。 午後8時25分運転監視水位に到達。 DはFに応援要請をしなかった(その理由は後記のとおり。)。 午後8時51分水門が自動的に閉鎖され、1号ポンプが自動的に運転を開始した。 Dは、屋外でベルトコンベアーからゴミ留場に落ちるゴミを取り除く作業を行った。 なお、2号ポンプは、午後11時22分に稼動開始後、断続的に停止と稼働を繰り返し、16日午前2時7分に稼働を停止した。 16日午前2時20分ベルトコンベアーにポリバケツが詰まり、ゴミが流れなくなった。ポリバケツが引っかかった個所は1号ポンプに連動して爪が動く個所であったため、Dは本件ポンプ機操作盤の非常停止ボタンを押して1号ポンプを非常停止させて、ポリバケツの除去作業を行った。 午前2時21分1号ポンプの停止により、自動的に2号ポンプが運転を開始した。 午前2時50分Dは、休憩のために屋内に戻り、作動音の大きいディーゼル駆動の2号ポンプより電気駆動の1号ポンプを優先的に稼 分1号ポンプの停止により、自動的に2号ポンプが運転を開始した。 午前2時50分Dは、休憩のために屋内に戻り、作動音の大きいディーゼル駆動の2号ポンプより電気駆動の1号ポンプを優先的に稼動させるため、本件ポ ンプ機操作盤の非常停止ボタンを押して2号ポンプを停止させた。 午前2時54分Dは、1号ポンプを再稼動させるため、中央制御室操作盤の故障復帰ボタンを押したが、本件ポンプ機操作盤の故障復帰ボタンを押さなかった。 その後、Dは、再度屋外に出て、ゴミを均していた際に木材が顔面に当たって怪我をしたこと、前日午前4時の出勤時からほとんど睡眠をとっていなかったこと、深夜に雨に濡れて体温が下がっていたことなどから、意識がもうろうとして待機室で眠り込んだ。 午前3時50分畑川の水位が上昇している旨の市民からの通報を受けた伏見土木事務所から原告建設局調整管理課(排水機場の管理部署)に連絡がされ、同課職員が本件排水機場及びDに電話を架けたが、連絡が取れなかった。 午前4時30分調整管理課は水位監視システムを用いて、畑川の水位上昇を確認したため、被告甲に対して、本件排水機場に赴いて状況を把握するよう指示をした。 午前6時47分Eが本件排水機場に到着し(到着までに時間を要した理由は後記のとおり。)、待機室に倒れていたDを起こした。Dは、Eから本件ポンプが稼動していないことを伝えられ、3階の中央 制御室に行き、本件ポンプの稼動状況として自動運転になっていることを確認した後、直ちに2階の本件ポンプ機操作盤に向かい、本件ポンプ機操作盤の故障復帰ボタンを押し、本件ポンプを再稼動させた。 オ原告による本件浸水事故の原因調査被告甲作成の平成25年9月24日付け報告書が原告に提出された。同報告 盤に向かい、本件ポンプ機操作盤の故障復帰ボタンを押し、本件ポンプを再稼動させた。 オ原告による本件浸水事故の原因調査被告甲作成の平成25年9月24日付け報告書が原告に提出された。同報告書には、本件排水機場において水位監視体制から運転監視体制に移行する際、2人目の従業員を配置できなかった原因として、台風が予測されるものの、3連休で従業員個々の事情を把握できてお らず、被告甲内全体で危機感が希薄であり、安易な考えで連絡体制が十分に機能しなかった旨、改善策として、社内の人員配置体制を確認・徹底し、運転監視体制に入ることが予想される時点で事前に連絡を取り、運転監視体制の確保を行う旨記載されている。(甲101)平成25年9月26日、原告はD及びEから本件浸水事故当時の状 況について聞き取りを行った。 Dは、運転監視水位到達時に従業員の応援を要請しなかった理由について、①人員不足で、応援を呼んでも無理だと考えた、②本件排水機場は、よく運転監視の開始・解除の間隔が短く、応援を呼んでも空振りのことがよく起こっていたので、1人で対応しようと思った旨述 べた。(甲5)Eは、本件排水機場に応援従業員を配置しなかった理由について、従業員が1人で対応していることに気づいていなかった、本件排水機場へ向かう際に渋滞にぶつかり到着まで時間がかかった旨述べた。 (甲5) ⑵ 本件ポンプの停止についての被告甲の債務不履行責任の成否についての 判断 ア本件ポンプを再稼働させなかったことについて被告甲は、本件委任契約上の義務の一つとして、施設について熟知する義務が定められており(認定事実アa)、その義務の履行補助者である従業員に本件ポンプの操作方法を熟知させる義務を負ってい たと認められる。 被 上の義務の一つとして、施設について熟知する義務が定められており(認定事実アa)、その義務の履行補助者である従業員に本件ポンプの操作方法を熟知させる義務を負ってい たと認められる。 被告甲は、Dに本件説明書を読ませることもせず、本件ポンプの復帰操作についてあいまいな認識のままで運転監視業務に就かせ(認定事実エ)、その結果、Dが本件ポンプの復帰操作を誤ったのであるから、本件ポンプの停止について被告甲に過失が認められる。 また、高齢であるDに、二十数時間にわたり、2名で行うべき運転監視業務を1名で行わせていたことで、Dが疲れ果ててしまい、同人が本件ポンプを停止させて復帰操作をしたと思った後、眠ったまま起きることがなかったため、本件ポンプが長時間停止したのであるが(前提事実(1)イ、認定事実エ)、この事実から、被告甲が本件委託契約 に定められた労働基準法を遵守する義務、運転監視業務が長時間にわたる場合は交代要員を確保する義務に違反していたことが認められる(認定事実アe、f)。被告甲のこの過失も本件ポンプ停止の原因といえる。 被告甲及び補助参加人は、本件ポンプの停止は、原告の本件排水機 場の設備の操作方法に関する説明不足、緊急事態における対応方法に関する指導不足などが原因であって、被告甲に過失がない旨主張する。 これらの主張は、被告甲に施設について熟知する義務が定められていたことに反する主張であり、採用の限りではない。 イ従業員2名を配置して運転監視を行わなかったことについて 被告甲は、本件委託契約上、畑川の水位が運転監視水位に到達した ときは、既に水位監視を行っている従業員1名に加えて、運転監視水位到達から30分以内に従業員1名以上を本件排水機場に配置し、2名以上で運転監 委託契約上、畑川の水位が運転監視水位に到達した ときは、既に水位監視を行っている従業員1名に加えて、運転監視水位到達から30分以内に従業員1名以上を本件排水機場に配置し、2名以上で運転監視を行う債務を負っていた(認定事実アc)。 本件豪雨の際、被告甲の管理職であるEは、本件排水機場に何人出勤しているのかを把握しておらず(認定事実オ)、従業員2名で運 転監視を行わせることがなかったのであるから、被告甲は上記債務を履行しなかったと認められる。 被告甲及び補助参加人は、本件委託契約の委託金額の低さからすれば従業員2名以上を現に配置することは本件委託契約上の債務の内容ではないと主張するが、従業員2名以上で運転監視を行うべきことは 本件委託契約の運転監視業務委託仕様書に明確に定められているから(認定事実アc)、委託金額の多寡はその債務の内容を否定する根拠にはならず、被告甲及び補助参加人の主張は採用することができない。 被告甲及び補助参加人は、従業員2名以上を本件排水機場に配置で きなかったことについて、他の排水機場への配置で従業員が出払ってしまったこと等を理由に被告甲に過失がないと主張するが、従業員2名以上を運転監視のために配置することができるように必要な人的体制を構築しておくことも本件委託契約上の債務の内容なのであるから(認定事実アc)、その主張は採用することができない。 ウ重過失は要件とならないこと本件委託契約上の債務の不履行の成否は、本件委託契約において定められた条項及びその解釈により判断されるべきものであるところ、本件委託契約には被告甲の過失を重過失に限定する条項は見当たらないし、契約締結時に被告甲が過失を重過失に限定することを希望し、原告がそ れを容認していたという事情 されるべきものであるところ、本件委託契約には被告甲の過失を重過失に限定する条項は見当たらないし、契約締結時に被告甲が過失を重過失に限定することを希望し、原告がそ れを容認していたという事情も見当たらない。被告甲及び補助参加人は、 国賠法の解釈が本件委託契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権の要件解釈に反映されるべきと主張するが、国賠法の解釈を優先すべきと解する根拠は見当たらない。 エ以上によれば、本件ポンプの停止は、被告甲の前記ア、イの債務不履行によるものと認められる。 2 本件ポンプの停止と本件浸水事故との間の因果関係(争点1-2・被告甲に対する請求)⑴ 本件報告書の概要本件報告書中、「ポンプ停止による浸水被害の解析」の項目の記載は、別紙11のとおりであり、その概要は次のとおりである。 ア検討条件1) 算出式・流入量の検討① 実績の内水量を用いた流入量の算出② 合成合理式(合理式とは、流域面積、流出係数及び時間降雨量 に一定係数を乗じて流入量を計算する方法である。)を用いた流入量の算出・内水浸水の検討1池モデルの採用。図6-4-1のとおり、畑川を1つの淡水地域とみて、流入量Qと流出量Iを検討する。 2) 流域面積宅地、水田、畑、池及び山地の流出係数と流域面積と平均流出係数が0.74と計算される。 3) 流出係数流出係数(合成合理式におけるf)を0.74としたのでは、流入 量が大きくなりすぎて再現性に劣るため、実際の雨量と内水量の相関 関係を時系列的に分析して、流出係数を実績値から求める。時間ご 係数(合成合理式におけるf)を0.74としたのでは、流入 量が大きくなりすぎて再現性に劣るため、実際の雨量と内水量の相関 関係を時系列的に分析して、流出係数を実績値から求める。時間ごとの累加雨量と累加内水量をプロットしたものが図6-4-3である。 同図を基に求めた時間帯ごとの流出係数は表6-4-1のとおりである。 4) 時間降雨量 本件排水機場に近い流域については、本件排水機場の雨量データを用い、畑川上流にある醍醐観測所に近い流域では、同観測所の雨量データ(本件排水機場と同観測所の雨量データは相関性が高いが、同観測所の累積雨量が本件排水機場のそれより約2割増しである。)を用いる。 5) 洪水到達時間洪水到達時間は10分と算出された。 6) 地盤データ図6-4-8のとおりである。 7) H-V曲線 標高H(T.P.)と内水量Vとの関係図は、図6-4-9のとおりである。 イ検討結果1) ポンプが実績稼動したケース(被害状況の再現検討) 図6-4-10の下段の図のとおりである(引用者注・重要なグラフであることから判決本文においても掲示する。)。実績値と計算値は、16日午前3時頃の内水位が急激に上昇するタイミングが一致していること、16日午前6時40分の最高水位がほぼ一致していること、サージタンクが閉鎖された15日午後9時頃からの水位が上昇する傾向やタ イミングが近い挙動を示していることから、相関が図られた結果となった。 2) ポンプが規則どおり稼動したケース図6-4-12の下段の図のとおりである。最高計算内水位は16日午前3 グが近い挙動を示していることから、相関が図られた結果となった。 2) ポンプが規則どおり稼動したケース図6-4-12の下段の図のとおりである。最高計算内水位は16日午前3時50分の14.9m(T.P.)となった。このケースにおけ る浸水エリアは特になく(図6-4-13)、このことからポンプ停止によって浸水被害が発生したと判断することができる。 3) 時間経過で示す浸水被害状況16日午前2時50分から午前3時40分までの被害再現結果は、図6-4-14のとおりであり、同日午前4時から午前6時40分までの 被害再現結果は、図6-4-15のとおりである。 4) 最大浸水深の空間分布に関する計算結果と実測浸水深との比較図6-4-16のとおりであり、検討結果と実際の浸水被害データとは多くの個所で整合しており、再現した検討結果の妥当性は高いと判断 することができる。 ⑵ 本件ポンプの停止と本件浸水被害との間の因果関係についての判断ア本件報告書の解析結果の信用性本件報告書における中心的な解析結果は、本件ポンプが停止していた時間帯とその前後の時間帯の畑川の水位を解析した結果(図6-4-10) である。この解析結果(計算内水位)と実績内水位については、次のことを指摘することができる。 山科川の水位が上がり始めた15日午後8時頃から水位が最高値に達した16日午前0時過ぎまでの計算内水位の水位と実績内水位の推移が、上下を繰り返しながら若干の上昇傾向を見せるが、急激な上昇は抑 えられているという同じ動きをしている。 本件ポンプが停止した16日午前3時頃から本件ポンプが再稼動した後の16日午前10時頃までの計算内水位の水位と実績内水位の推移が、午前3時 昇は抑 えられているという同じ動きをしている。 本件ポンプが停止した16日午前3時頃から本件ポンプが再稼動した後の16日午前10時頃までの計算内水位の水位と実績内水位の推移が、午前3時頃から午前4時頃にかけて急激に上昇し、午前4時頃から午前9時頃までほぼ最高値で推移し、午前9時頃から午前10時頃にか けて急激に減少するという同じ動きをしている。 そうすると、畑川の水位の解析結果は、その時間的変動開始時刻や、変動時刻、変動するいくつかの極大値や最大値の絶対値において実績内水位と十分に適合しているとみることができる(令和元年9月25日付け専門委員の意見書2頁)。 また、山科川の水位が上がり始めた15日午後8時頃からその水位が最高値に向けて上昇し続けていた16日午前0時過ぎまでの畑川の水位は急激な上昇が抑えられており、かえって16日午前0時過ぎには減少していたこと、16日午前9時頃を過ぎても山科川の水位が大きく下がることはなかったにもかかわらず、同時刻頃から畑川の水位が急激に減少したこ と(前記)からすれば、本件ポンプは、畑川の増水に対して機能してい たと推認することができる。本件ポンプの排水量の規格値は7.0㎥/秒であるが、本件ポンプ再稼動直後の16日午前7時には9.0㎥/秒の排水量が記録され、同日午前10時頃まで8㎥/秒台を維持していたのであり(甲93)、本件ポンプは設計されたとおり又はそれ以上に畑川の増水に対して機能していたと推認することができる。これらの事情も本件報告 書の解析結果の信用性を裏付けるものといえる。 イ被告甲及び補助参加人の主張(この項において「被告甲の主張」という。)について被告甲は、規則どおり稼動した場合の再現方法における条件設定について不合理な点があ 裏付けるものといえる。 イ被告甲及び補助参加人の主張(この項において「被告甲の主張」という。)について被告甲は、規則どおり稼動した場合の再現方法における条件設定について不合理な点があると主張するが、下記のとおり、いずれも採用すること ができない。 1池モデルを採用したことについて内水現象の解析には、内水解析モデルの一部として、内水区域への流入量、外水位という境界条件を与えて内水位及び湛水区域を算出する内水モデルを作成することが一般的に行われている。内水モデルの作成に 使用される内水計算手法には複数の手法があり、対象内水区域の内水特性に応じて、対象内水区域の内水現象が再現できるものを選定する必要がある。内水計算手法の一つとして、内水区域を池と見立て、池への流入量と外水位を境界条件として、連続式により池内の水位を推定する「池モデル」がある。池モデルの中にも、内水区域を1つの水位で代表され る1個の池と仮定する「1池モデル」と、内水区域を多数の池で代表させ、1池モデルでは一括して扱われていた内水区域の湛水状況をある程度細かく表現しようとする「多池モデル」が存在する。(甲42・内水処理計画策定の手引き、専門委員の意見)1池モデルは既往の内水処理計画で最も多く用いられており、多池モ デルは、内水区域が地形的に複数の小部分に分割されており、その小部 分の独立性が比較的高い場合に使用されるのが通例とされている。(甲42、専門委員の意見)畑川流域は、宅地、水田、畑、池及び山地の複数の地目からなるものの、その地形及び土地利用状況からすると、独立性が比較的高いと認められる部分は特になく、ほぼ単一の特性を有していると認められるから、 1池モデルを採用することで十分であり、同モデルを採用するこ の、その地形及び土地利用状況からすると、独立性が比較的高いと認められる部分は特になく、ほぼ単一の特性を有していると認められるから、 1池モデルを採用することで十分であり、同モデルを採用することが不合理とはいえない。(専門委員の意見)流入量の算出に合成合理式を用いたことについて内水現象の解析にあたり、流域内の降雨量から、流域の地形、土地利用状況を条件として流入量を算定する必要がある。そのために使用され る流出計算手法には複数の手法があり、流域の状況等も参考にしながら最も適切な方法を選定することになる。合理式法は流出計算手法の一つであり、雨水の流下集中現象に着目してピーク時の流入量を推計するための簡易な手法として、貯留現象を考慮する必要のない河川では広く用いられている。適用される流域としては、降雨の浸透や凹地貯留の少な い市街化された流域があげられるが、流域面積が大きくなると貯留効果が大きくなり、合理式の適用が難しくなるため、一般には流域面積が100㎢程度以下の流域に用いられている。(甲42)畑川の流域面積は1.62㎢であり、合理式法が一般に用いられている上記流域面積の範囲内である。また、畑川流域程度の小河川に適用する 場合、合理式法によって得られる結果と、多くのパラメータを有するほかの流出計算手法によって得られる結果は同等の精度を有するものとされている(専門委員の意見)。本件報告書では、「Q(流入量〔㎥/秒〕)=1/3.6×A(流域面積〔㎢〕)×f(流出係数)×r(時間降雨量〔㎜/時〕)」という合理式が用いられているところ、この合理式は中小 河川の内水解析において最も用いられているものであり、畑川に適用す るものとしても適切なものといえる(専門委員の意見)。 したがって、流入量の算定 られているところ、この合理式は中小 河川の内水解析において最も用いられているものであり、畑川に適用す るものとしても適切なものといえる(専門委員の意見)。 したがって、流入量の算定にあたり合成合理式を用いることは不合理とはいえない。 流出係数の設定a 流出係数の設定にあたっては、内水河川流域の特性(地形条件、土 地利用条件等)を考慮する必要があり、検証計算が既に実施されている近傍内水河川など、対象流域と同様の条件で過去の降雨量及び流入量のデータが十分にある他の流域で用いられている流出係数を設定したり、そのデータから流出係数を算出して設定したりする方法がある(甲42、専門委員の意見)。 流出係数の設定の際、雨の降り始めの時間帯については、流域内の凹地や土壌の乾燥などを考慮し、特に合成合理式による解析においては通常使用する流出係数よりも小さい数値を設定することも慣用的になされるものである。河川計画の立案など将来予防のための内水解析の場合には、より安全な設計とするためにピーク時の流入量に対応す る流出係数を降雨時間全般にわたって使用するときもあるが(降雨初期で流入量が小さい場面でも流出係数を大きく設定して流入量を大きいものとすることで、将来予防としてはより安全な設定となる。)、本件報告書のように過去の浸水事故の再現を目的とする場合には時間を区切って流出係数を変えることもあり得る(専門委員の意見)。 本件報告書の作成においては、流出係数の理論値0.74を用いて計算したところ、降雨初期の段階の実績内水位と計算内水位で乖離が生じたため、修正が加えられた。かかる修正は、実績内水位を基礎に算出した累加内水量及び実際に観測された降雨量を合計した累加雨量をもとに行われたものであり、理論値を用いた計算 水位と計算内水位で乖離が生じたため、修正が加えられた。かかる修正は、実績内水位を基礎に算出した累加内水量及び実際に観測された降雨量を合計した累加雨量をもとに行われたものであり、理論値を用いた計算よりも現実の現象に より近づいた流出係数に修正されたと認められる。 b 被告甲は、本件報告書で設定された流出係数は、原告が畑川流域の流出係数として従来使用していた数値と比べて過小であるから、不合理であると主張する。しかし、上記aのとおり、本件報告書では、実績値に基づいて現実の現象に近づけた流出係数を設定しているのであるから、これが従前使用していた数値より小さかったとしても不合理 であるとはいえない。 c 被告甲は、畑川流域内で溢水していた場所があることを考慮せずに設定した流出係数は不合理であると主張するが、そのような場所があると認めるに足る証拠はなく、前提を欠く。 時間降雨量の算定が不合理でないこと 内水処理計画策定の手引きによれば、流域平均雨量算定法は原則としてティーセン法を用いることとされる(甲42)。その一方で、ティーセン法は流域内の観測所数が多い場合に用いられるものであるところ(丙21・10頁)、畑川流域は面積が小さく、その流域内で雨量を観測できる場所は本件排水機場の1か所のみであり、流域外であるが近郊 の醍醐観測所を含めても2か所である。そうすると、畑川流域内の時間降雨量を算定するにあたってティーセン法を用いることが適しているとはいえない。本件報告書では、本件排水機場及び醍醐観測所それぞれで観測された累積雨量の違いを踏まえて、可能な限り正確な時間降雨量を算定する方法が用いられており(別紙11の「4)時間降雨量」の項参照)、 その算定が不合理とはいえない。 シミュレータの再現性が低 れた累積雨量の違いを踏まえて、可能な限り正確な時間降雨量を算定する方法が用いられており(別紙11の「4)時間降雨量」の項参照)、 その算定が不合理とはいえない。 シミュレータの再現性が低いとの主張についてa 内水解析モデル(シミュレータ)の再現性の検証は、流入量の算定モデルと内水モデルそれぞれについて個別に検証することとされるが、流入量の実績値が観測されておらず流入量の算定モデルの検証ができ ない場合には、内水区域における水位等で内水解析モデルが全体とし て実績値と適合しているか確認することとされる。計算値と実績値の適合度の検証方法は、その内水解析目的によって多少の違いはあるものの、畑川のような中小河川で内水区域が比較的小規模の場合、実績値に基づくグラフと計算値に基づくグラフを目視で見比べる単純な方法でも十分な検証といえる。そのうち、内水モデルの検証として実績 の湛水区域及び実績内水位と計算上の湛水区域及び計算内水位との適合性を目視によって比較する際は、実測値と計算値の一致の度合いは、内水位の最大値、内水位の波形及び湛水区域の3つの項目を重視して評価する。(甲42、専門委員の意見)本件報告書で作成されたシミュレータは、計算内水位の最大値をT. P.16.8mと算出し、これは実績内水位の最大値T.P.16.86mと概ね整合している。内水位の波形も、内水位の変動開始時刻、変動時刻、変動した際の極大値が複数の箇所で整合している(15日午後9時、午後10時30分頃、午後11時、午後11時30分頃など)。そして、最大浸水深の空間分布に関する計算結果は、実際の浸 水深と全般的によく適合しており、湛水区域についても計算値と実績値が整合している。本件報告書のシミュレータは本件浸水被害の再現モデルとし て、最大浸水深の空間分布に関する計算結果は、実際の浸 水深と全般的によく適合しており、湛水区域についても計算値と実績値が整合している。本件報告書のシミュレータは本件浸水被害の再現モデルとして十分に再現性があると認められる(専門委員の意見)。 b 被告甲は、本件報告書のシミュレータでは16日午前1時から午前3時までに実績内水位と計算内水位に乖離があるから、再現性が低い と主張する。 しかし、この乖離の原因は合理式の特性によるものである。すなわち、合理式による計算では、水位が上がる時の速度も水位が下がる時の速度も同じであることを前提としているが、現実には、水位は上がりにくく、引きやすいところ、合理式はこれを単純化しているため、 一般に合理式を用いた計算の方が実際のハイドログラフの変動よりも 鋭敏になる特性がある(専門委員の意見)。実績内水位と計算内水位との間に、部分的に乖離が認められるとしても、内水解析モデルの構築にあたっては、最高内水位の値とその出現時刻を重視することが多く、これらの点において計算値と実績値がよく適合しているのであれば、水位の変動具合や低減部の適合度がそれほどよくなくとも問題に しないことが一般的である(専門委員の意見)。上記のとおり、合理式法によることが不合理といえない以上、これによって実績値との間に多少の乖離が認められることをもってシミュレータの再現性が低いとはいえない。 シミュレーションの過程及び結果が不合理との主張について a 負の内水量を観念することについて被告甲は、最高内水位の算定過程において負の内水量を観念することが不合理であると主張する。 しかし、負の内水量は、H-V曲線の立ち上がりが急なことに伴う現象で、不可避的に発生するものであり、それに加えてポ 、最高内水位の算定過程において負の内水量を観念することが不合理であると主張する。 しかし、負の内水量は、H-V曲線の立ち上がりが急なことに伴う現象で、不可避的に発生するものであり、それに加えてポンプ運転に よる数位の急激な低下効果によるものであるところ、本件ポンプのように排水能力が高い場合は、初期段階においてマイナスの数値が出ていたとしても、ピーク流量(最高内水位)の計算に大きな影響がない(専門委員の意見)。本件報告書の解析結果は、負の内水量を計算に入れて累積計算内水量を基に計算内水位を算定しているが、これによ って構築されたシミュレータは、再現性が高いことが確認されており、負の内水量を観念することが不合理とはいえない。 b 浸水の発生条件について被告甲は、シミュレーションの過程において浸水の発生条件を示さないまま、本件ポンプが正常に稼動していれば本件浸水事故は発生し なかったという結論を導くことはできない旨主張する。 しかし、浸水事故が、地形状況や降雨量の変化など様々な条件や現象が相まって発生する自然現象である以上、浸水の発生条件を定めることは著しく困難である。これを定めずとも、本件報告書のように実際の現象を可能な限り再現したモデルを用いて本件ポンプが正常に稼動していた場合のシミュレーションを行うことは可能である。 したがって、被告甲の主張は採用できない。 c 本件ポンプが正常に稼動した場合の排水量の設定について本件ポンプの排水量の規格値は1号ポンプと2号ポンプを合わせて7.0㎥/秒であるが、本件報告書のシミュレーションでは本件ポンプが正常に稼動した場合の排水量を7.5㎥/秒と設定している。本件豪 雨当日、本件ポンプが2台とも稼動していた15日午後11時30分から16日午前2時 本件報告書のシミュレーションでは本件ポンプが正常に稼動した場合の排水量を7.5㎥/秒と設定している。本件豪 雨当日、本件ポンプが2台とも稼動していた15日午後11時30分から16日午前2時20分までの間、実績排水量として最大7.95㎥/秒が記録されており、本件ポンプ再稼動直後の16日午前7時には9㎥/秒の排水量が記録され、同日午前10時頃まで8㎥/秒台を維持している(甲93)。○○〇株式会社(本件ポンプのメーカー会社であ る×××株式会社から事業移管を受けた会社)が、内水位と外水位が同じ高さという条件で本件ポンプの排水能力を試算したところ、2台で約9.4㎥/秒との結果も得られている(甲109)。そうすると、本件報告書で採用された排水量の設定値は実績値を踏まえて、謙抑的に設定されているものであり、規格値と異なるからといって不合理と はいえない。 d 最高実績内水位よりも標高の高い地点で浸水被害が発生していることについて被告甲は、本件浸水被害が生じた小栗栖小坂町の標高が17.4mであることを前提に、本件浸水事故当時の畑川の最高実績内水位16.8 6mを超える区域で浸水被害が生じていることから、本件浸水事故の 原因は本件ポンプの停止以外の要因があり、本件報告書のシミュレーション結果は信用できない旨主張する。 被告甲が主張する標高の数値は、国土地理院発行の5mメッシュデータを用いると表示されるものであるところ、同データは、5m間隔の幅で、その範囲内の標高を平準化したものであって、特定の地点の 正確な標高を表すものではない(甲94)。同データ上、小栗栖小坂町内に標高17.4mと表示される地点は存在するが(丙22)、同地点からデータ上で約1㎝程度ずらした地点の標高を表示すると、同じ家屋内の標高であ を表すものではない(甲94)。同データ上、小栗栖小坂町内に標高17.4mと表示される地点は存在するが(丙22)、同地点からデータ上で約1㎝程度ずらした地点の標高を表示すると、同じ家屋内の標高であるにもかかわらず、標高16.7mと表示される(甲96)。被告甲の主張は、本件浸水被害を受けた区域の正確な標高に 基づいておらず、その前提を欠くから採用することができず、本件報告書の解析結果の信用性は否定されない。 ウ以上によれば、本件浸水事故は本件ポンプの停止が原因であったと認められる。 3 損害額(争点1-3・被告甲に対する請求) ⑴ 認定事実ア原告は、本件浸水事故の被害者らに対する損害賠償をするにあたり、「小栗栖排水機場周辺浸水被害に係る損害賠償実施要綱」(甲103)を定め、損害賠償は、建物及びその外構部(門扉、塀及び庭木並びに屋外に置かれていた物品等)の損害、家財等(家具、電化製品等の物品)の損害、車両 の損害、営業損害及び休業損害、その他本件浸水事故と相当因果関係があると認められる損害について行うこととした。 そして、原告は、具体的な損害賠償額の算定のため、「小栗栖排水機場周辺浸水被害に係る損害賠償の算定基準」(甲19)、「小栗栖排水機場周辺浸水被害に係る損害賠償の算定基準(積上げ方式)」(甲104)、 「小栗栖浸水被害に係る車・バイクの装備及び車載品の賠償基準につい て」(甲105)を定めた。損害賠償額の算定における方針は、損害賠償額を原状回復に必要かつ妥当な範囲の費用とし、基本的な算定方式は積上げ方式として、修繕等の費用については、その修繕等の範囲・仕様を、買換え費用については、現在価値(同等品の再調達価格を基に経年減価を考慮したもの)を、領収書等を基に算定することとした。ただし は積上げ方式として、修繕等の費用については、その修繕等の範囲・仕様を、買換え費用については、現在価値(同等品の再調達価格を基に経年減価を考慮したもの)を、領収書等を基に算定することとした。ただし、家屋、家 財・家電製品等、応急対策費用については、被害者らの立証の負担軽減や公平性、迅速性を考慮し、推定損害額により算定する方式を導入することとした。これらの基準の具体的な内容は、別紙5-1のとおりである(以下「本件基準」という)。 イ原告は、賠償を受けようとする被害者から被害申告書の提出を受けて、 基本的に本件基準に基づき、賠償額を算出した。ただし、本件基準に記載されていない又は同基準と異なるものの、実際に行われた対応として、家屋、家財・家電製品等及び応急対策費用について、被害者から積上げ方式によることの申出がない限り、推定損害額を算定する方式により損害額を算出したほか、別紙5-1「実際の対応」欄記載の対応がとられた。(甲 56)ウ原告は、別紙6のとおり、「氏名」欄記載の被害者に対し、「賠償額」欄記載の金額を支払った。同別紙には、被害者ごとの床上・床下浸水の被害状況、建物、家財、車・バイク、休業・営業損害、応急対策費に対する賠償の有無が記載されている。(甲1001~1628、弁論の全趣旨) 原告は、別紙7のとおり、被害者との保険契約に基づき保険金の支払をした「保険会社(略称)」欄記載の保険会社に対し、「賠償額」欄記載の金額を支払った。(甲2007~2624、弁論の全趣旨)⑵ 損害額についての判断ア被害者らに対する賠償額 7億3862万7682円 原告は、本件報告書の検証結果が明らかになった平成25年11月5日 頃から、本件浸水事故の被害者らに対する損害賠償額の算定事務を開始 被害者らに対する賠償額 7億3862万7682円 原告は、本件報告書の検証結果が明らかになった平成25年11月5日 頃から、本件浸水事故の被害者らに対する損害賠償額の算定事務を開始したが、その時点で既に本件浸水事故が発生した日から1か月半以上が経過していた。被害者らが生活の再建を速やかに行いたいと思うことは当然であり、これにより被害状況に関する証拠が散逸することはやむを得ない状況だったといえる。原告は、このような状況下で、可能な限り公平に、か つ600人を超える被害申告者に対して迅速に損害賠償を行う必要があった。そのためには、厳密な損害額の立証を求めずに、損害額の算定基準を定めてこれにより算定した推定額による賠償も許容されるというべきであり、原告が定めた本件基準及び実際の対応(別紙5のとおり)に不合理な点は認められないから、これに基づいて算定された金額は相当なもの として認められる。 当事者間に争いのある個々の損害に関する当裁判所の判断は、別紙10「裁判所の判断」欄記載のとおりである(番号1~4において建物、家財、電化製品等についての判断を示し、番号5~10において車、バイクについての判断を示し、番号11においてその他の争点及び損害額の大きい被 害者に対する争点についての判断を示した。)。 以上により、原告が被害者らに対して賠償した金額のうち、保険金が給付されていた部分を控除した別紙8A「原告の請求額」欄記載のとおりの金額を被告甲が賠償すべき損害と認める。 イ原告が保険会社に支払をした金額 2億6233万1350円 原告は、当該被害者が加入する保険会社からの請求額が、原告が同被害者に対する賠償額の決定の際に控除した保険金額以下の場合は請求額を、これを超える金額の場合は原告が控除し 233万1350円 原告は、当該被害者が加入する保険会社からの請求額が、原告が同被害者に対する賠償額の決定の際に控除した保険金額以下の場合は請求額を、これを超える金額の場合は原告が控除した保険金額を支払う内容で、各保険会社と示談を成立させ、その金額を支払った(甲106、弁論の全趣旨)。 原告は、被害者らから保険金明細書などの提出を受けて被害者らが受領し た保険金額を正確に確認しているから(甲2007以下)、被害者らが受 領した保険金額を超える金額を各保険会社に支払ってはいないものと認められる。 被告甲及び補助参加人は、原告が保険会社に対して支払った金額が補助参加人の査定した損害額を上回る場合、その差額を否認する。しかし、各被害者が加入する各保険会社は、それぞれ適切に損害額を査定して当該被 害者に対して保険金を支給したと考えられるし、上記アのとおり原告が算定した損害額は相当なものと認められるところ、各被害者が受領した保険金額も、その損害額の範囲内であって相当なものと認められる。被告甲及び補助参加人の主張は採用することができない。 以上より、原告が保険会社に対して支払った金額全額が、本件浸水事故 によって原告に生じた損害額と認められる。 ウ原告所有の建物等の修繕に要した費用小栗栖市営住宅修繕等費用 4758万2032円小栗栖市営住宅は、総住戸数17棟690戸の集合住宅である。本件浸水事故によって、全17棟に床下浸水が生じ、そのうち16戸及び集 会所に床上浸水が生じた。本件浸水事故により損傷した住宅及びその設備等について、別紙12の「内容」欄記載のとおり、被害状況の確認・調査をした上で、修復のための工事が行われた。その費用総額は4863万4656円であったが、床上浸水が生じた16戸の修繕 宅及びその設備等について、別紙12の「内容」欄記載のとおり、被害状況の確認・調査をした上で、修復のための工事が行われた。その費用総額は4863万4656円であったが、床上浸水が生じた16戸の修繕工事に要した費用の一部は、工事の効率性等の観点から、天井などの本件浸水事故 と関係のない場所について補修したり、浸水した設備を補修する際にグレードアップしたりした部分があった。その部分を差し引くと、小栗栖市営住宅を修繕するための費用は4758万2032円となる。(甲57~59)小栗栖中学校修繕等費用 478万7740円 原告は、次の表のとおり、「契約日」欄記載の日に、「契約相手」欄 記載の者との間で、「契約代金」記載の金額で、京都市立小栗栖中学校について「契約内容」欄記載の修繕作業を行うことを内容とする契約を締結した。その後、同金額を支払った(合計478万7740円)。 契約日契約相手契約内容契約代金 証拠 平成25年9月頃〇〇スポーツ施設株式会社運動場修繕45万1500円甲36、 平成25年10月頃株式会社○○設備開発ガスヒーポン修繕85万2705円甲30、 平成25年10月頃○○建物総合管理株式会社床上浸水被害の特別清掃及び除菌消毒作業35万7000円甲34、 平成25年10月2日株式会社○○工務店床修繕115万7135円甲32、 平成25年12月17日有限会社○○商店体育館床面修繕 196万9400円甲28、 エ本件浸水事故の対応に要した費用 1億4002万4394円原告は、本件浸水被害を受けた被害者らとの間で示談交渉業務を行うに あたり、人材派遣 修繕 196万9400円甲28、 エ本件浸水事故の対応に要した費用 1億4002万4394円原告は、本件浸水被害を受けた被害者らとの間で示談交渉業務を行うに あたり、人材派遣会社である株式会社〇〇、××株式会社及び△△株式会社との間でそれぞれ労働者派遣契約を締結し、労働者の派遣を受けて上記業務に従事させた。(甲7、8、10、61、62、64)原告は、株式会社●●研究所及び株式会社◎◎コンサルとの間でそれぞれ業務委託契約を締結し、本件浸水被害を受けた被害者らから家屋、車両 等の被害状況を聴き取り、賠償額を算定した結果について、原告に報告書を提出する業務を委託した。(甲7、12、61、66、68、70、72)原告は、株式会社▽▽及び▲▲コンサルタンツ株式会社との間でそれぞ れ業務委託契約を締結し、小栗栖排機場周辺における浸水被害検証委員会における審議のための資料作成等の業務を委託した。(甲7、14、16)以上の各会社との間で締結された契約に基づき、原告は、同各会社に対し、別紙13の「支払日」欄記載の日に、同「金額」欄記載の金額を支払った(合計1億4002万4394円)。(甲7、9、11、13、15、 17、61、63、65、67、69、71、73)オ被告甲の原告に対する委託料等の支払請求権との相殺 6199万0461円(争いがない)カまとめ上記ア~エの合計額からオの金額を控除すると、11億3136万27 37円となる。遅延損害金の起算日は、別紙1遅延損害金目録番号1のとおりである。 4 過失相殺の可否(争点1-4・被告甲に対する請求)⑴ 被告甲は、前記1⑵で認定説示したとおり、Dに本件説明書を読ませることもしないまま、本件ポンプの復帰操作についてあいまいな認識のま ある。 4 過失相殺の可否(争点1-4・被告甲に対する請求)⑴ 被告甲は、前記1⑵で認定説示したとおり、Dに本件説明書を読ませることもしないまま、本件ポンプの復帰操作についてあいまいな認識のままで運 転監視業務に就かせたという過失、労働基準法を遵守する義務、運転監視業務が長時間にわたる場合は交代要員を確保する義務に違反してDを運転監視業務に就かせたという過失、本件排水機場に何人出勤しているのかを把握していないまま、従業員2名で運転監視を行わせることがなかったという過失により、本件浸水事故を生じさせたのであり、被告甲の過失は相当に重いと いえる。 そして、後記⑵のとおり、過失相殺に関する被告甲及び補助参加人の主張はいずれも採用することができないので、被告甲の責任について過失相殺を適用することは相当ではない。 ⑵ 被告甲及び補助参加人の主張について ア本件排水機場の設備及び仕組みについて 本件説明書には、本件ポンプを停止から復帰させるためには「(機側盤、中央盤の両方で操作が必要です。)」と記載されており、被告甲には本件排水機場を熟知する義務(前記1⑴アa)があったことからすれば、復帰操作の仕組みが被告甲の過失を減じる理由とはならない。 また、ベルトコンベアーのゴミを除去するためのクレーンが備え付けら れていたとしても、操作に習熟していなければ緊急時にクレーンの操作を行うことができないが、本件説明書を読んでいないDがクレーンの操作に習熟できていたと考えられず、被告甲及び補助参加人の主張は前提を欠く。 イ緊急時の対応に関する研修、教育を行わなかったとの主張について 被告甲が本件排水機場を熟知する義務には、従業員に対して設備の操作方法を周知して、習熟させることが含まれていると解される イ緊急時の対応に関する研修、教育を行わなかったとの主張について 被告甲が本件排水機場を熟知する義務には、従業員に対して設備の操作方法を周知して、習熟させることが含まれていると解されるので、原告が被告甲の従業員に対して研修、教育を行う義務があったとは認められない。 ウ監視システムの利用、本件排水機場の状況確認及び被告甲に対する指示 について原告建設局調整管理課には、畑川の水位や本件ポンプの稼動状況を確認することができるシステムが設置されていたが、職員が稼動状況等を把握するためにはその都度端末を操作する必要があったのであり (丙30、弁論の全趣旨)、京都市全域の災害状況を把握し、対応を行う必要がある調整 管理課において本件ポンプの稼動状況等を容易に把握できたとはいえない。したがって、調整管理課において本件ポンプの稼動状況等を把握していなかったことが原告の落ち度とはいえない。 エ本件委託契約の業務委託料について被告甲及び補助参加人は、本件委託契約上の委託料の金額からすれば本 件委託契約上定められた債務を履行することができなくとも被告甲の落 ち度であるとはいえない旨主張するが、債務が履行できないのであれば被告甲は応札すべきではなかったのであって、上記主張は採用の限りではない。 5 本件ポンプの停止についての被告Aの任務懈怠責任の成否(争点2・被告Aに対する請求) ⑴ 被告Aの任務懈怠責任についてア被告Aの任務懈怠について本件委託契約上、運転監視水位到達後30分以内に従業員2名以上を各排水機場に配置し、運転監視業務を適切に遂行することは被告甲の債務の内容であったから、被告Aは、被告甲の代表取締役として、本件委託契約 の債務を履行することができるように、被告甲の従業 上を各排水機場に配置し、運転監視業務を適切に遂行することは被告甲の債務の内容であったから、被告Aは、被告甲の代表取締役として、本件委託契約 の債務を履行することができるように、被告甲の従業員に対して、本件委託契約上の業務を適切に遂行するのに必要な知識や技能について教育、指導する体制を構築するとともに、運転監視業務の遂行に必要な人員を確保し、運転監視水位到達後30分以内に従業員2名以上を各排水機場に配置することができるような体制を構築する義務があった。 そうであったにもかかわらず、被告甲の従業員は本件説明書の存在を認識しておらず、本件排水機場の設備の操作方法は従業員間で口伝えに共有されるにとどまり、本件排水機場の試運転業務も本件保守管理契約上定められた回数は行われておらず、これを通して従業員に操作方法を習熟させることもされていなかった(前記1⑴ア、証人D、被告A本人、弁論の 全趣旨)。その結果、Dを含む被告甲の従業員は本件ポンプを含む本件排水機場の設備の操作方法を十分に理解しておらず、その操作に習熟していなかった。そうすると、被告Aは、本件委託契約上の業務を適切に遂行するのに必要な知識や技能について教育、指導する体制を構築する義務を怠ったといえる。 また、被告甲では、本件豪雨の際、従業員の個々の状況が把握されてお らず、応援の要請に応じて従業員が現場に派遣されるような体制が構築されていなかった(前記1⑴オ)。それを承知していたDは、畑川の水位が運転監視水位に到達したにもかかわらず、応援の従業員を呼ぶことをしなかった。なお、被告甲が担当していた8か所の排水機場のうち、本件排水機場を含む7か所の排水機場において従業員2名を運転監視業務に配 置することができていなかった(甲100)。そうする ことをしなかった。なお、被告甲が担当していた8か所の排水機場のうち、本件排水機場を含む7か所の排水機場において従業員2名を運転監視業務に配 置することができていなかった(甲100)。そうすると、被告Aは、運転監視業務の遂行に必要な人員を確保し、従業員2名を各排水機場に配置することができる体制を構築する義務を怠ったといえる。 イ重過失について被告甲は、本件浸水事故に至るまでに長年にわたり本件排水機場を含む 8か所の排水機場の保守管理及び運転監視業務を継続して受託しており、被告Aには、被告甲の従業員に対して本件排水機場の設備や操作方法について十分に指導、教育する体制を整えたり、運転監視のために必要な人員を確保したりするなどして上記アの義務を履行する機会は十分にあったといえる。また、被告甲は従業員39名の小規模な会社であるから、被告 Aは、指導・教育体制や人員配置体制に不備があることを容易に認識することができた。それにもかかわらず、被告Aは上記アの義務を果たさなかったのであるから、被告Aには任務懈怠について重過失が認められる。 ⑵ 損害ア被告Aが任務懈怠により責任を負うべき損害額は、被告甲が責任を負う べき損害額と同じである。 イ遅延損害金の起算日は、別紙1遅延損害金目録番号2記載のとおりである。 6 被告乙は、法人格否認の法理の適用により被告甲と同じ損害賠償責任を負うか(争点3・被告乙に対する主位的請求)、本件営業譲渡及び本件根抵当権設 定等の詐害行為該当性(争点4-1、2・被告乙に対する予備的請求及び被告 Cに対する請求)⑴ 認定事実ア原告は、平成25年11月5日、本件報告書による検証結果を受けて、被告甲に対し、公共事業についての入札参加資格停止処分をした る予備的請求及び被告 Cに対する請求)⑴ 認定事実ア原告は、平成25年11月5日、本件報告書による検証結果を受けて、被告甲に対し、公共事業についての入札参加資格停止処分をした。(争いがない) 被告甲に残された事業は道路工事関連の事業であったが、 上記処分やこれが報道された新聞報道等により取引先や金融機関から取引の継続に消極的な態度を示されるようになったため、事業の運営に大きな影響が生じた(被告A本人、弁論の全趣旨)。他方、被告甲は、原告以外の地方公共団体及び国からは特段の処分を受けることなく、次の表のとおり、同年 9月19日から平成26年4月24日までの間、少なくとも10件の公共工事(受注金額合計4億0156万9920円)を受注した(B事件甲18)。 件名契約工期開始年月日受注金額発注機関 京都縦貫自動車道トンネル側壁清掃業務(2)平成25年9月19日698万2500円京都府 平成25年度維持第B-17号近江大橋有料道路橋梁補修工事平成25年10月8日2499万1050円滋賀県 管内一円(国道176号)防災・安全交付金(橋修)工事橋りょう維持修繕工事平成25年11月14日4413万4650円京都府 管内一円(休息橋他)防災・安全交付金(橋修)工事管平成26年1月9日6026万6850円京都府 内一円(開橋)防災・安全交付金(橋修)工事他 平成24年度繰越事業通学路安全対策工事(その1)平成26年1月28日548万8350円京都府八幡市 管内一円道路緊急安全確保小規模改良(交安)工事管内一円府債務負担行為道路緊急安全確保小 学路安全対策工事(その1)平成26年1月28日548万8350円京都府八幡市 管内一円道路緊急安全確保小規模改良(交安)工事管内一円府債務負担行為道路緊急安全確保小規模改良(交安)工事平成26年2月6日1530万2520円京都府 国道161号知内川大橋他橋梁補修工事平成26年3月29日6210万円国 国道9号道路維持工事平成26年4月1日1億4796万円国 国道9号他道路清掃作業平成26年4月24日2041万2000円国 10 京都縦貫自動車道外1線トンネル側壁清掃業務委託平成26年4月24日1393万2000円京都府イ Bは、平成25年11月12日、被告甲との間で営業譲渡契約を締結した。Bはその当時被告甲の従業員であったが、同契約では、Bが新しい会社(後の被告乙)を設立して同社が被告甲の事業を承継することが予定されていた。契約内容の概要は次のとおりである。(B事件乙6の1、38)① 被告甲は、Bが道路及び道路工作物の工事、維持、修繕、管理部門と して独立することを承認し、被告甲がこれまでに行ってきた営業権をBに譲渡する。 ② Bは被告甲から本件建物を1000万円で、機械備品一式を3930万円で譲り受ける。ただし、機械備品一式のうち3632万円分はリー ス物件であるため、Bがリース契約を引き継ぐこととし、これを控除した1298万円(計算式:1000万円+3930万円-3632万円)を支払うものとする。 ③ Bは、被告甲に対して、被告甲が受注した各工事を被告乙が譲り受けることができるように発注機関に対する手続を行うための代金として暖 簾代2000万円を支払う。 ④ 被告甲が契約し とする。 ③ Bは、被告甲に対して、被告甲が受注した各工事を被告乙が譲り受けることができるように発注機関に対する手続を行うための代金として暖 簾代2000万円を支払う。 ④ 被告甲が契約した仕事については第三者へ回さず、Bへ事業委託するものとし、Bはこれを拒否することができない。 ⑤ Bが設立手続中である会社が設立した場合、同会社にBの契約上の地位が全て承継されることにつき、被告甲はあらかじめ同意する。 ウ原告は、平成25年12月頃から、本件浸水事故の被害者らに対して損害賠償のための基準策定や調査等を行うとともに、本件委託契約の債務不履行に基づく損害賠償について被告甲との間で弁済計画の協議を行った。 この時点で、被告甲の負担すべき賠償額は8億円を超えるものと見積もられていた。(B事件甲17、19、被告A本人、弁論の全趣旨) エ平成26年1月7日付けで、被告Cを貸主、被告甲を借主とする貸金1000万円の金銭消費貸借契約書が作成された。同契約書に収入印紙は貼付されていない。(B事件乙16)被告甲の預金口座には、同日に被告Cから1000万円が入金され、翌8日に1010万円が出金された。(B事件乙11) オ平成26年1月7日から2月7日にかけて、被告甲と被告乙及び被告Cとの間で、本件根抵当権設定等がされた。 カ平成26年1月21日、被告乙が設立された。 被告乙が平成26年2月26日付けで近畿地方整備局建設産業課に提出した建設業許可申請書では、被告乙の各株主の保有株式数及び出資 額は、B(2000株・2000万円)、被告C(1000株・100 0万円)、G(500株・500万円)、E(500株・500万円)とされていた。また、被告乙の設立時の役員は、代表取締役B、監査役被告Cであっ ・2000万円)、被告C(1000株・100 0万円)、G(500株・500万円)、E(500株・500万円)とされていた。また、被告乙の設立時の役員は、代表取締役B、監査役被告Cであった。(B事件甲1、弁論の全趣旨)被告乙の本店所在地は、被告甲の本店所在地と同一であり、後記クのとおり、被告乙の本店建物は被告甲の本店建物と同一である。(B事件 甲1、2、15の3)被告甲の従業員のうち排水機場関連業務担当の従業員以外の全員(23名)が、平成26年から平成27年にかけて、被告甲を退社して、被告乙に入社した。(B事件乙36、証人A、被告C本人)そのうち一部の従業員の被告甲から被告乙への異動態様は、次のとお りである。 従業員氏名異動態様証拠(B事件のもの)B被告甲の工事部部長であったが、平成26年1月21日に被告乙の代表取締役に就任し、その後、被告甲を退社した。 甲1の1、11の1被告C被告甲の従業員であったが、平成26年1月21日に被告乙の監査役に就任した。 甲1の1、11の2H被告甲の総務及び工事課長であったが、平成26年1月21日に被告乙の滋賀営業所所長に就任し、その後、被告甲を退社した。 甲1の1、11の3I被告甲の取締役であったが、平成27年に被告乙の滋賀営業所所長に就任した。なお、的場は、その際に被告乙の大阪支店設立に伴い、同支店の専任技術者に就任した。 甲1の2、1の3、11の7 上記4名を含む9名上記4名に加えJ、K、L、M及びNは、被告甲の監理技術者であったが、平成26年に被告乙の監理技術者に就任した。 甲11の1~11の9Eは、被告甲の営業部等の部長であったが、平成26年に株式会社戊(その一人株主 、M及びNは、被告甲の監理技術者であったが、平成26年に被告乙の監理技術者に就任した。 甲11の1~11の9Eは、被告甲の営業部等の部長であったが、平成26年に株式会社戊(その一人株主は、被告Aが代表取締役を務める株式会社丁である)の代表取締役に就任した。(B事件甲5、8、9)キ被告乙と被告甲は、平成26年1月24日、被告乙が、被告甲がこれまで行ってきた道路及び道路工作物の工事・維持・修繕・管理に関する事業 実績を譲り受ける内容の営業譲渡契約を締結した(以下「本件営業譲渡契約」という)。その内容は、Bが締結した営業譲渡契約(上記イ)の①、②、③と同じである(ただし「B」を「被告乙」に置き換える)。(B事件乙6の2、乙39)ク平成26年2月3日付けで、被告甲と被告乙は、本件営業譲渡契約に基 づいて、被告甲の本店である本件建物を被告乙に対して代金1000万円で売却する売買契約書を作成した。(B事件甲15の3、乙1)同日、被告乙の預金口座から1000万円が振替により出金され、被告甲の預金口座に被告乙から1000万円が入金されている。(B事件乙11、乙18) ケ被告乙は、平成26年2月26日、土木一式工事、とび・土工コンクリート工事、鋼構造物工事、ほ装工事及び塗装工事について建設業許可申請書を提出した。同申請書添付の被告乙の工事経歴書には、上記各工事の工事経歴がない旨記載されている。(B事件甲1の1)被告乙は、同年4月24日、上記各工事業について建設業許可を取得し た。(B事件乙7の2)コ原告は、被告甲及び被告Aを債務者として、本件土地1、同2及び本件建物について仮差押命令を申し立てた。平成26年5月20日に同仮差押 決定がされた。(B事件甲15、乙12、13)サ 原告は、被告甲及び被告Aを債務者として、本件土地1、同2及び本件建物について仮差押命令を申し立てた。平成26年5月20日に同仮差押 決定がされた。(B事件甲15、乙12、13)サ平成26年5月20日、被告甲及び被告乙において、それぞれ、その本店建物を開催場所とする臨時株主総会が開催され、本件営業譲渡契約にかかる事業を同年6月1日に譲渡又は譲受すること(本件営業譲渡)について決議され、承認された。(B事件乙5) シ被告甲は、平成26年5月26日、国土交通省近畿地方整備局京都国道事務所及び滋賀国道事務所に対し、国道9号道路維持工事(上記アの表・番号8)、国道9号他道路清掃作業(同番号9)及び国道161号知内川大橋他橋梁補修工事(同番号7)について、同年6月1日に被告乙に対して承継することの承諾を願い出た。同年5月30日に上記承諾がされ、被 告乙がその事業を承継した。(B事件乙4)ス被告甲は、平成26年6月9日、建設業法12条に基づく全部の業種に係る廃業を届け出て、同日付けで廃業の処分を受けた。被告甲は、同日以降、すべての事業を停止した。(争いがない、被告A本人)セ平成26年6月20日に被告乙の京都信用金庫の預金口座から2298 万円が振替により出金され、被告甲の京都信用金庫の預金口座には、同日に振替により2298万円が入金され、同日中に2300万円が振替により出金されている。(B事件乙11、乙18)ソ平成26年9月10日付けで、被告Cを貸主、被告甲を借主とする貸金500万円の金銭消費貸借契約書が作成された。同契約書に収入印紙は貼 付されていない。(B事件乙17)タ平成26年10月6日、被告乙は、被告甲の京都銀行に対する債務合計3164万8000円について重畳的債務引受をし 書が作成された。同契約書に収入印紙は貼 付されていない。(B事件乙17)タ平成26年10月6日、被告乙は、被告甲の京都銀行に対する債務合計3164万8000円について重畳的債務引受をした。本件土地1にかかる京都銀行を債権者、被告甲を債務者とする根抵当権設定登記について、同日、債務者を被告甲及び被告乙に変更する登記がされた。(B事件甲1 5の1、乙25) 同年11月14日、被告乙は、被告甲及び株式会社丁の南都銀行に対する債務合計7526万9000円について重畳的債務引受をした。(B事件乙24)平成27年3月27日、被告乙は、被告甲の滋賀銀行に対する債務2900万円について免責的債務引受をした。(B事件乙26) 同年5月28日、被告乙は、被告甲の京都中央信用金庫に対する債務1413万2000円について重畳的債務引受をした。本件土地2及び本件建物にかかる京都中央信用金庫を債権者、被告甲を債務者とする根抵当権設定登記について、同日、債務者を被告甲及び被告乙に変更する登記がされた。(B事件甲15の2・3、乙27) 被告乙は、被告甲から上記各債務の合計額相当の現金1億5289万円を受領し、運転資金として使用した。各銀行に対する債務は、被告甲に代わって、返済計画表に則って月々の返済を行った。(B事件乙28~35、被告乙代表者)チ被告乙は、平成26年6月1日から平成27年5月31日までの事業年 度において、4億7305万円の売上げ、1212万円の経常利益を計上した(B事件甲1の4)。 ⑵ 被告乙は、法人格否認の法理の適用により被告甲と同じ損害賠償責任を負うか(争点3・被告乙に対する主位的請求)ア被告甲の代表取締役であり、被告甲の全株式を有する株式会社丁の代表 取締役であ は、法人格否認の法理の適用により被告甲と同じ損害賠償責任を負うか(争点3・被告乙に対する主位的請求)ア被告甲の代表取締役であり、被告甲の全株式を有する株式会社丁の代表 取締役であった被告Aが、被告甲が原告に対して負う債務を免れるために、法人格を濫用して、被告乙を設立し、運営したといえるかについて検討する。 被告乙の設立時の株主は、B、被告C、G及びEとされているところ(認定事実カ)、設立時発行株式に対する払込金を被告Aが全額負担したと 認めるに足りる証拠はない。また、被告乙の運営が被告Aの差配の下に行 われていると認めるに足りる証拠はない。 イ原告の主張については、次のとおり、いずれも採用することができない。 被告甲と被告乙の人的関係は共通しているが、包括的営業譲渡がされた結果であり、そのことから直ちに、被告Aが被告乙を支配しているとはいえないし、被告乙の本店所在地が被告A所有の土地であることと、 被告Aが被告乙の運営に関する指示や差配をすることとは別であり、被告Aの支配の表れとはいえない。 事業形態の同一性、資産・負債の承継についての主張も、包括的営業譲渡がされた結果であり、それ自体から被告甲と被告乙が同一であるとはいえない。 被告甲の代理人は、本件営業譲渡がされる前に、原告との交渉の中で、被告甲を任意整理にして別会社を作ればいいと金融機関からサジェスチョンを受けていると話しており(甲19の1)、本件営業譲渡を特段隠すこともしていないこと、被告乙の設立目的には、原告から公共事業についての入札参加資格停止処分を受けたことで被告甲の運営に大きな影 響が生じ、従業員の生活を確保するという側面があったこと(B事件乙36、39、証人A、被告乙代表者、 には、原告から公共事業についての入札参加資格停止処分を受けたことで被告甲の運営に大きな影 響が生じ、従業員の生活を確保するという側面があったこと(B事件乙36、39、証人A、被告乙代表者、被告C本人)にかんがみると、本件営業譲渡が原告の債権回収を妨害することを主たる目的としてされた濫用的なものともいえない。 ⑶ 本件営業譲渡の詐害行為該当性について(争点4-1・被告乙に対する予 備的請求)ア詐害行為該当性本件営業譲渡は、前述のとおり、被告甲が運営する事業すべて、物的資産である本件建物及び機械備品一式を譲渡するものであるから、被告甲の責任財産を減少させるものであると認められる。 被告乙は、本件営業譲渡にかかる事業は被告甲による運営は不可能で あるため、その価値はゼロに等しく、被告甲の責任財産を減少させるものではない旨主張する。しかしながら、被告甲は入札参加資格停止処分を受けたことで事業運営に支障が出ていたとは認められるものの、事業運営が不可能な状態に陥っていたとまではいえないから、事業価値が全くないということはできない。 被告甲は、平成25年12月以降、原告との間で本件委託契約の債務不履行に基づく損害賠償債務について協議を行い、平成26年4月及び5月には支払催告を受けているのであり(別紙1遅延損害金目録番号1)、原告に対して8億円を超える債務を負担する可能性があること、被告乙への包括的営業譲渡を行えばその債務を支払うことができる能力 を失うことを認識していたと認められる。 また、被告乙の代表取締役であるBは、被告甲が入札参加資格停止処分を受けた頃は同社の従業員であり、原告が被告甲に対して10億円程度の損害賠償請求をする予定であることやその和解協議をする予定であることを知って 乙の代表取締役であるBは、被告甲が入札参加資格停止処分を受けた頃は同社の従業員であり、原告が被告甲に対して10億円程度の損害賠償請求をする予定であることやその和解協議をする予定であることを知っていたから(被告乙代表者)、被告乙は本件営業譲渡が原 告を害することを知っていたと認められる。 以上によれば、原告は本件営業譲渡を詐害行為として取消しをすることができる。 イ価額償還の額原告は、b公認会計士作成の意見書(B事件甲3、21。以下「b意見 書」という。)を基に、被告乙が価額償還すべき金額、すなわち本件営業の価値は4億2942万円であると主張する。 b意見書では、被告甲の平成22年8月1日から平成25年7月31日までの3年間の収支状況と、京都市から入札参加資格停止処分を受けたことにより営業利益が一時的に減少するものの(15%減)、5年経過後に は元の水準に戻る(毎年3.5%の回復)との仮定を基に、DCF法により 被告甲の事業価値が算出され、これに被告甲が被告乙に交付した現金1億5289万円(認定事実タ)が加算され、本件営業の価値は4億2942万円であると評価されている。 被告乙は、c公認会計士作成の意見書(B事件乙40)を基に、①被告甲が入札参加資格停止処分を受けた後、廃業していることからすれば、過 去の収益能力は維持されず収益の減少は15%にとどまらないこと、②5年経過後に元の水準に戻るとする根拠がないことから、b意見書の算定は不合理である旨主張する。しかし、①については、被告甲が廃業するに至ったのは本件営業譲渡をしたことが原因であって、本件営業譲渡における事業価値を算定するにあたり廃業の事実を考慮すべきであるという被告 乙の主張は採用することができない。また、②について、被告乙自身 のは本件営業譲渡をしたことが原因であって、本件営業譲渡における事業価値を算定するにあたり廃業の事実を考慮すべきであるという被告 乙の主張は採用することができない。また、②について、被告乙自身は入札参加資格停止処分を受けていないし、被告甲の事業及びその収益獲得能力がすべて譲渡されていることから、5年程度で元の水準に戻ると仮定することが不合理とはいえず、被告乙の主張は採用することができない。 以上によれば、b意見書は、事業価値の算出過程において不合理な点は 認められず、基本的に信用することができる。ただし、被告乙に交付された現金1億5289万円は、被告乙が同額の債務を負担することと引き換えに受領したものであるから、これを譲渡価値に加算すべきではない。そのため、本件営業譲渡の価値は2億7653万円(4億2942万円-1億5289万円)と認めるのが相当である。 したがって、本件営業譲渡は詐害行為にあたり、取り消すことができる。 原告は、被告乙に対して、その価額償還として2億7653万円の支払を求めることができる。 ⑷ 本件根抵当権設定等の詐害行為該当性(争点4-2・被告Cに対する請求)ア被告Cは、被告Aの義弟かつ被告甲の従業員である上、被告C自身が被 告Aに恩義を感じており、同人の役に立ちたいと思っていた旨述べている ことからすれば(被告C本人)、被告Aと親密な関係で、協力的な立場にあった者といえる。 被告Cと被告甲との間で作成された貸金1000万円の平成26年1月7日付け金銭消費貸借契約書に関し、同日、被告Cから被告甲の預金口座に対して1000万円入金され、その翌日に全額が出金されている(認定 事実エ)。出金後の用途について、被告Aは資金繰りに使用した旨供述するものの、具体的な用途は明らかにせ Cから被告甲の預金口座に対して1000万円入金され、その翌日に全額が出金されている(認定 事実エ)。出金後の用途について、被告Aは資金繰りに使用した旨供述するものの、具体的な用途は明らかにせず、証拠も提出しない。そのため、被告Cと被告甲との間で金銭を循環させているにすぎず、貸金交付の外観だけが作出され実体を伴わないものとみるほかない。また、被告Cと被告甲との間で作成された貸金500万円の同年9月10日付け金銭消費貸 借契約書に関し、被告C及び被告Aは、被告甲の事業資金として使用するために500万円を現金交付した旨供述するが、多額の金銭が移動するにもかかわらず領収書は作成されていないし(被告C本人)、同日時点で既に被告甲は廃業しており(認定事実ス)、事業資金を借りる必要性も認められないから、その供述は信用できない。加えて、これらの金銭消費貸借 契約書には、いずれもその貸金額からすれば収入印紙の貼付が必要であるにもかかわらず、貼付されていない(認定事実エ、ソ)。 さらに、被告Cは、同人にとって合計1500万円を貸すことは大金を失う大きなリスクのあることであり、家族を安心させるために、これらの貸金債務の担保として本件土地1、同2及び本件建物に対する根抵当権を 設定した旨供述するが、根抵当権設定登記をせずにその仮登記をするにとどめている上、貸金1000万円についてその契約書で定められた利息の受領も、返済の催促もしておらず(被告C本人)、言動が整合していない。 以上の事実によれば、被告甲及び被告Cとの間で金銭消費貸借契約が成立したとは認められず、被告Cは、金銭消費貸借契約の存在を仮装した上 で、根抵当権設定契約の締結及びその仮登記をしたものと認められる。こ れらの行為が、被告甲及び被告Aが所有する不動産 立したとは認められず、被告Cは、金銭消費貸借契約の存在を仮装した上 で、根抵当権設定契約の締結及びその仮登記をしたものと認められる。こ れらの行為が、被告甲及び被告Aが所有する不動産の価値を減少させ、その責任財産を減少させることは明らかである。 イ被告甲及び被告Aは、前記⑶アのとおり、原告が被告甲及び被告Aに対して損害賠償請求権を有する可能性があることを当然認識していたし、被告Cとの間で実体のない金銭消費貸借契約書を作成して、被告甲及び被 告Aの所有する不動産にそれぞれ根抵当権を設定し、その仮登記手続をしたことからすれば、原告の債権回収を妨害する目的があったと認められる。 被告Cも、同じく原告を害することを認識していたといえる。 ウ被告甲及び被告Aが、被告Cとの間で根抵当権設定契約を締結し、その仮登記手続をした頃、被告甲及び被告Aに原告が有する債権全額を満足さ せる責任財産を有していたとは認められないから、被告甲及び被告Aは無資力であったといえる。 エしたがって、被告甲及び被告Aと被告Cとの間の、本件土地1、同2及び本件建物についての根抵当権設定契約の締結及びその仮登記は詐害行為にあたり、取り消すことができる。 7 結論よって、原告のA事件被告らに対する請求はいずれも理由があり、被告乙に対する主位的請求は理由がなく、予備的請求は主文3、4項の限度で理由があり、被告Cに対する請求は理由があるから、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官松山昇平 裁判官 田中いゑ奈 裁判官 松山昇平 裁判官 田中いゑ奈 裁判官髙岡寛実 別紙2-1不動産目録 (省略) 別紙2-2登記目録 (省略) 別紙14本件報告書に関する被告甲及び補助参加人の主張 1池モデルを採用すること自体が不合理本件浸水事故を検証するにあたり、多池モデルのうち少なくとも内水区域を 2つの池と仮定する2池モデルをもって検証すべきであり、1池モデルを採用すべきではない。 畑川は、別紙3の⑪の部分から南へ流れる水路と、同別紙⑭~⑯の境目部分から概ね南西方向へ流れる水路の2つの河道で構成されている。本件浸水被害を受けた区域は、後者の河道を境にして北側と南側に大別され、北側と南側で は浸水が大きかった場所が異なり、浸水した水深の程度も異なる。また、本件浸水事故当時の畑川の実績内水位は16.86mであったところ、本件浸水被害区域には標高が16.8mを超える箇所が含まれており、浸水被害が発生するはずがないのに発生している。これは、浸水被害の発生に本件ポンプの停止以外の要因が作用するなど、本件浸水被害区域内でも異なる性質を有している 場所があることにほかならない。このような畑川流域の地形状況及び本件浸水事故の発生状況からすれば、本件浸水被害区域を少なくとも2つに分けて検証すべきである。 さらに、1池モデルは、計算は簡便であるが内水区域がいかなる地形構造を持っていても、河道内及び内水区域内での流水の運動は評価されず、た 、本件浸水被害区域を少なくとも2つに分けて検証すべきである。 さらに、1池モデルは、計算は簡便であるが内水区域がいかなる地形構造を持っていても、河道内及び内水区域内での流水の運動は評価されず、ただ末端 の排水施設のみが評価されるにすぎないという短所がある。本件浸水被害区域には、水路の幅が狭かったり、道路面との高低差が小さかったりと、浸水被害が容易に生じうる場所がある。内水湛水は水路の流下能力不足でも生じうるもので、1つの池に見立てた水が全体として溢れ出さなくとも、流域内で部分的に溢水することは起こりうる。このように、本件ポンプの停止と本件浸水事故 との間の因果関係を検証するためには、本件浸水被害区域において詳しい現地 調査をする必要があるが、そのような調査もされていない。これらのことからすれば、内水区域内での流水の運動を一切捨象してしまう1池モデルを内水計算手法として採用することは不合理である。 流入量の算出に合成合理式を用いることが不合理流入量は、畑川の実績内水位の推移と本件ポンプの排水量から算出できるは ずであるから、合成合理式を用いることは不合理である。 流出係数の設定が不合理本件報告書では流出係数の理論値0.74が部分的に下方修正されているが、これは、原告が、本件ポンプの停止と本件浸水事故の因果関係を基礎づけるために自らに都合の良いように修正したものである(流出係数を下方修正すれば、 流入量が小さくなるため、本件ポンプが稼動していれば本件浸水事故が生じなかったと結論づけやすくなる。)。 本件報告書では、降雨初期時点の流出係数を0.22、0.40と設定しているが、これは、従来から原告が畑川流域の流出係数の数値を「市街化調整区域0.5、市街化区域0.8」「山地の場合0.6(ただし市 本件報告書では、降雨初期時点の流出係数を0.22、0.40と設定しているが、これは、従来から原告が畑川流域の流出係数の数値を「市街化調整区域0.5、市街化区域0.8」「山地の場合0.6(ただし市街化区域内は0.8)、 平地の場合0.8」と設定していたことと比べて明らかに過小である。 また、上記のとおり、畑川流域内で溢水していた場所があると考えられるが、流出係数の修正の際にこれが考慮されていない。本件報告書では、実績内水位を基に流出係数を修正しているが、実績内水位は本件排水機場内で計測された水位であるところ、流域内で溢水した水量が溢水せずに本件排水機場に流 入したとすれば水位はその分高くなるはずであるから、流出係数を0.74から0.22、0.40まで修正することはできなくなる。流出係数が不当に低く設定されているといえる。 さらに、本件報告書では、15日午後9時10分を流出係数の変動時点として0.22から0.40に修正されているが、合理性に欠ける。同日午後8時5 1分に本件排水機場のサージタンクゲート(水門)が閉鎖され、本件排水機場 の水の流れが変わり、水位計もその変更の影響を受けたにすぎない。この事象により降雨量のうち河川に流入する割合を示す流出係数が変化することなど考えられない。 時間降雨量の算出手法が不合理本件報告書では畑川流域を2つに区分して本件排水機場付近の雨量と醍醐観 測所付近の雨量の平均値を使用しているが、流域平均雨量算定手法としてはティーセン法を用いるべきである。 シミュレータの再現性が低いこと原告は、本件ポンプが停止した16日午前2時50分の時点では本件浸水事故が発生しておらず、その後に発生したこと、本件ポンプの停止がなければ本 件浸水事故が発生しなかったことを 現性が低いこと原告は、本件ポンプが停止した16日午前2時50分の時点では本件浸水事故が発生しておらず、その後に発生したこと、本件ポンプの停止がなければ本 件浸水事故が発生しなかったことを立証する必要があるところ、原告が最終浸水被害結果の再現モデルだと主張するシミュレータは、現実に発生した事象を再現したものではなく、具体的時刻に沿って内水位がどのように変化したかが明らかにされたものではない。実際に、本件報告書におけるシミュレータでは16日午前1時から午前3時までの計算内水位と実績内水位には大きな乖離が 生じており、このような再現性の低いシミュレータによる検証では、いつの時点で本件浸水事故が発生したのかを立証することはできない。 その上、本件浸水被害区域の中には、シミュレータに基づき作成された最大浸水深の空間分布図では浸水が発生しないことになっている場所がある。シミュレータが本件浸水事故を再現できていないことの現れである。 シミュレーションの過程及び結果が不合理であることa 負の内水量が観念されている本件報告書では、本件ポンプが正常に稼動していた場合の最高内水位は14.9mであったと算定し、これを前提に本件ポンプが稼動していれば本件浸水事故は発生しなかったと結論づけられているが、最高内水位の算定過程 が不合理である。 本件報告書では、10分ごとに累積流入量と累積流出量の差から累積計算内水量を算出し、これを基に計算内水位を算定しているところ、累積流入量が累積流出量を下回った場合、累積計算内水量を負の値として計算内水位を12.7mと設定し、累積流入量が累積流出量を上回って負の値が解消されない限り、計算内水位を上昇させていない。しかし、そもそも本件浸水事故 の検証にあたっては、16日 を負の値として計算内水位を12.7mと設定し、累積流入量が累積流出量を上回って負の値が解消されない限り、計算内水位を上昇させていない。しかし、そもそも本件浸水事故 の検証にあたっては、16日午前2時50分に実績内水位が14.93mと記録されていることから、この水位が本件ポンプの停止がなければどのように推移したかということを明らかにする必要があり、そのためには、午前2時50分時点での内水量を基準に、その後10分ごとの流入量と流出量の差を加算して算出される計算内水量を基に計算内水位を算定すべきである。累 積流入量と累積流出量の差で計算内水位を算定してしまうと、ある10分間の流入量が流出量を大きく上回ったとしても、その時点までの累積流入量が累積流出量を下回っていれば累積計算内水量は小さく計算され、計算内水位も低いものになってしまう。しかし、実際の現象としては、累積流入量が累積流出量を下回っていたとしても、ある一定時間の流入量が流出量を大きく 上回れば計算内水位は上昇するはずである(その時点までの累積流出量が大きかったとしても、存在しない水をあらかじめ排水しておくことはできないのだから、瞬間的な流入量の大きさは計算内水位の算定に変動を及ぼす)。 また、10分ごとの流入量と流出量の差を加算して計算内水量を算出する場合、流入量が流出量を下回り負の値が算出されたとしても、実際の現象と して内水量がゼロを下回るはずがなく、内水量が負の値になるということは一定時間に内水量が増加しないということにすぎないから、負の値を繰り越すのではなくその都度計算内水量をゼロに修正して計算すべきである。負の値をゼロに修正して計算すれば、本件ポンプが稼動していたとしても最高内水位は16.43mとなるから(その際、本件ポンプの排水量は後記cのとお その都度計算内水量をゼロに修正して計算すべきである。負の値をゼロに修正して計算すれば、本件ポンプが稼動していたとしても最高内水位は16.43mとなるから(その際、本件ポンプの排水量は後記cのとお り設定する)、本件ポンプが稼動していれば最高内水位が14.9mとなると いう本件報告書の前提が誤っていることになり、本件報告書の結論には合理的な疑いが残り、信用できない。 b 浸水の発生条件が設定されていないこと本件報告書では、本件ポンプが正常に稼動していれば本件浸水事故は発生しなかったという結論を導く過程において、浸水の発生条件は全く示されて おらず、本件浸水事故当時どのように浸水の発生条件が満たされたのか、なぜ本件ポンプが正常に稼動していれば浸水の発生条件が満たされないといえるのか明らかにされていない。 c 本件ポンプの排水量の設定が不合理本件ポンプの排水量の規格値は1号ポンプと2号ポンプを合わせて7.0 ㎥/秒であるから、本件ポンプが正常に稼動した場合の排水量を7.5㎥/秒と設定するのは、本件ポンプの排水能力を超えている点で不合理である。また、流れてくるゴミによる詰まりや、ゴミの除去のために本件ポンプを一時停止させる必要性があること等を考慮すると、本件ポンプの排水量はさらに低くなるはずである。実際に16日午前2時から午前2時50分までの間の 実績排水量は、通常よりも30%程度低くなっているから、本件ポンプが正常に稼動していたと仮定した場合の排水量もこれに伴って低く設定すべきである。本件ポンプの排水量を4.9㎥/秒(7.0㎥/秒×(1-0.3))と設定すると、本件ポンプが正常に稼動していた場合でも最高計算内水位は16.43m程度になるから、本件ポンプが正常に稼動していれば本件浸水事 故が 4.9㎥/秒(7.0㎥/秒×(1-0.3))と設定すると、本件ポンプが正常に稼動していた場合でも最高計算内水位は16.43m程度になるから、本件ポンプが正常に稼動していれば本件浸水事 故が生じていなかったといえるかは合理的な疑いが残る。 d 最高計算内水位でも浸水被害が発生する可能性があること本件浸水事故当時の畑川の最高実績内水位は16.86mであったが、原告が主張する本件浸水被害区域には、標高17.4mに位置する小栗栖小坂町における家屋など標高が16.8mを超える箇所が含まれており、浸水被害 が発生するはずがないのに発生している。これは、本件浸水事故が本件ポン プの停止以外の要因によって生じたことが考えられるほか、本件排水機場で観測された最高実績内水位よりも畑川流域内の実際の水位が1m程度高いことが考えられる。本件ポンプが正常に稼動したとしても、その計算内水位よりも畑川流域内の水位が1m程度高くなるならば、本件ポンプが正常に稼動したとしても本件浸水事故が発生した可能性がある。本件報告書のシミュレ ーション結果には合理的な疑いが残り、信用できない。 別紙15用語集用語意味流域河川へ流れ込む雨水が降る範囲流入量流域から河川へ流れ込む雨水の量合成合理式合理式(Q(流入量〔㎥/秒〕)=1/3.6×A(流域面積〔㎢〕)×f(流出係数)×r(時間降雨量〔㎜/時〕))で計算した各時点(本件報告書では10分間隔)の流入量を経時的な変化として把握するため、規則的な計算方法を用いて統合する計算方法。 流出係数雨水のうち地面などに浸透又は保水されずに河川へ流れ込む雨水の割合時間降雨量ある時点の1時間前からその時点までの雨量内水量流域内に溜まる雨水の量 いて統合する計算方法。 流出係数雨水のうち地面などに浸透又は保水されずに河川へ流れ込む雨水の割合時間降雨量ある時点の1時間前からその時点までの雨量内水量流域内に溜まる雨水の量内水位流域内の湛水位。本件排水機場の吸水槽の水位であり、水門閉鎖後は畑川の水位と同じになる。 計算内水位合成合理式で計算した流入量を基に、内水量の時間変化からH-V曲線を用いて計算される内水位実績内水位実際に本件排水機場で観測された畑川の水位外水位本件排水機場の吐出水槽の水位。水門閉鎖後は、山科川の水位と概ね同じ値になる。 洪水到達時間雨水が地上に達してから河川のある地点に流れ着くまでに要する時間H-V曲線標高H(m、T.P.)と内水量V(㎥)の相関図ハイドログラフ河川の流量又は水位の経時的な変化を表したグラフ ティーセン法対象流域を地点雨量が代表する面積に分割し、それを重ね付けして平均値を計算する方法T.P. 地表面の海面の高さを表す場合の基準となる水準面である東京湾中等潮位O.P. 大阪湾最低潮位。O.P.はT.P.より1.3m高い。 内水浸水下水道等の排水施設の能力を超えた雨が降った時や、雨水の排水先の河川の水位が高くなった時等に、雨水が排水できなくなり浸水する現象。
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