平成21(行コ)35 通知取消等請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成20年(行ウ)第17号)

裁判年月日・裁判所
平成22年3月25日 福岡高等裁判所 公用負担・公用収用など
ファイル
hanrei-pdf-80727.txt

判決文本文35,080 文字)

主文 原判決主文第2項を取り消す。 控訴人の主位的な確認請求に係る訴えを却下する。 控訴人のその余の控訴を棄却する。 控訴人の当審において追加した予備的な確認請求を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判(控訴人) 原判決を取り消す。 被控訴人が株式会社P1(以下「P1」という)に対し平成19年10月。 31日付け建指第○号をもってした「株式会社P1の福岡市α×番所在の建,物において平成19年9月28日と29日の2日間で行われた人力による掘削工事は,建築基準法第3条第2項の『条例の施行の際,現に工事中の建築物』に該当しないと判断します」との通知(以下「本件通知」という。)を取り消す。 3(1)主位的請求P1が平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)の交付を受けて得た建築確認に基づく工事をする権利を有していることを確認する。 (2)予備的請求(当審における追加的請求)平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)による建築確認に基づ,。 く工事につき福岡市平成19年条例第29号の適用がないことを確認する 福岡市長は,控訴人に対し,控訴人が,平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)による建築確認に基づく工事をすることに対し,工事の施工の停止を命じてはならない。 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 (被控訴人) 本件控訴を棄却する。 控訴人の当審における予備的請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。 第2事案の概要 審理経過等控訴人は,P1から,P1が平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)による建築確認(以下「本件建築確認」という)を受けた建築計画に基。 。 ,づ 担とする。 第2事案の概要 審理経過等控訴人は,P1から,P1が平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)による建築確認(以下「本件建築確認」という)を受けた建築計画に基。 。 ,づく建築工事を請け負った建築業者である本件建築確認を受けた建築計画は所定の接道要件を満たしておらず,平成19年10月1日施行の福岡市建築基準法施行条例(福岡市平成19年条例第29号。以下「本件条例」という)。 施行の際,工事中の建築物に当たるといえない限り,本件条例に抵触するものであるところ,被控訴人建築局指導部建築指導課長は,同月31日ころ,P1に対し「本件建築確認の建築物につき平成19年9月28日及び29日に行,われた工事について,本件条例施行の際に『現に建築の工事中の建築物』(建築基準法3条2項)に当たらないと被控訴人は判断する」旨の通知(本件通。 知)をした。 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)控訴人は,本件条例施行の際,上記建築物の計画に基づく工事に着手しているから,上記建築物は「現に建築・・・工事中の建築物(同法3条2項)に当たり,本件通知は違法であると主」張して行政事件訴訟法3条2項に基づき本件通知の取消しを求め以下本,,(「件取消請求」という,(2)同法4条に基づき,P1が本件建築確認に基づく。)工事をする権利を有することの確認を求め(以下「本件主位的確認請求」という,(3)同法3条7項に基づき,福岡市長が,控訴人に対し,本件条例違反。)を理由に建築基準法9条1項に基づき工事の施工の停止を命ずることは違法で,(「」あるとして福岡市長による停止命令の差止めを求めた以下本件差止請求という)事案である。 。 ,,,原判決は控訴人の(1)(3)に係る訴えを却下し(2)の請求を棄却したた (「」あるとして福岡市長による停止命令の差止めを求めた以下本件差止請求という)事案である。 。 ,,,原判決は控訴人の(1)(3)に係る訴えを却下し(2)の請求を棄却したため控訴人が控訴した。 控訴人は,当審において,(2)の請求(本件主位的確認請求)の予備的請求として,本件建築確認に基づく工事につき本件条例の適用がないことの確認を求める請求(以下「本件予備的確認請求」という)を追加した。 。 前提事実,争点及び当事者の主張前提事実,争点及び当事者の主張は,後記(1)のとおり原判決を補正し,後記(2)のとおり当審での主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び3のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決の補正ア3頁3行目の「以下「本件建物」という」を削除し,同6行目及び(。)同19行目の「本件建物の」を「控訴人が設計した建物の」といずれも改める。 イ同17行目の「甲1ないし3」を「甲1ないし3。控訴人の業務に()つき弁論の全趣旨」と改める。 )ウ同21行目の「以下「本件建築確認」という」を「本件建築確認。 (。)(以下,本件建築確認を受けた建築計画に基づき建築予定の建物を「本件建物」という」と改める。 。)「(「」。)エ4頁10行目の平成19年条例第29号以下本件条例というを定め」を「建築基準法43条2項に基づき本件条例を定め」と改め,,る。 オ同15行目の「上記の要件を満たすものではなく」から同16行目の,「抵触するものであった」までを,以下のとおり改める。 。 「上記の要件を満たすものではなかった。 建築基準法3条2項は「この法律又はこれに基づく・・・条例の規定,の施行又は適用の際・・・現に建築,修繕若しくは模様替の工事中の を,以下のとおり改める。 。 「上記の要件を満たすものではなかった。 建築基準法3条2項は「この法律又はこれに基づく・・・条例の規定,の施行又は適用の際・・・現に建築,修繕若しくは模様替の工事中の建築 物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず,又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては,当該建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては,当該規定は適用しない」旨定め。 ている。したがって,本件建物が,本件条例の施行の際「現に建築・・,・工事中の建築物」といえない場合には,本件条例に違反した建築物となる。 そして,建築基準法9条1項は,特定行政庁(建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長。本件では福岡市長。2条35号)は,建築基準法令(建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定。6条1),,項に違反した建築物又は建築物の敷地については当該建築物の建築主当該建築物に関する工事の請負人に対し,当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付けて,当該建築物の除却,移転,改築,増築,修繕,模様替,使用禁止,使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる,と定めている」。 カ同22行目の「本件」を削る。 キ7頁20行目の「本件確認請求に関する本案前の争点」を「本件主位的確認請求及び本件予備的確認請求の適法性についての争点」と改める。 (2)当審で付加された主張ア争点1について(控訴人)最高裁平成17年10月25日第三小法廷判決(以下「最高裁平成17年判決」という)は,行政指導にすぎないとされる医療法30条の7に。 基づく勧告であっても,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には相当程度の確実さをもって,病院を開 (以下「最高裁平成17年判決」という)は,行政指導にすぎないとされる医療法30条の7に。 基づく勧告であっても,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなり,ひいては病院経営を断念せざるを得ないとい う結果をもたらすことを考慮し,勧告の処分性を認めた。本件では,被控訴人建築指導課長のP2は,本件通知を無視して工事を続行すれば中止命令を出す旨明言しており,控訴人が本件通知にもかかわらず工事を続行した場合には工事停止命令がされることが相当程度の確実さをもって認められるから,本件通知は工事を断念させるという工事停止命令と同じ事実上の効果を有しており,処分性が認められるべきである。 また,本件建物が「現に建築・・・工事中の建築物」に当たるとの理由で本件通知が取り消されれば,本件工事は本件条例の適用を受けないことになるから,これが紛争の適切な解決ないし救済となる。 (被控訴人)争う。 イ争点3について(控訴人)(ア)本件主位的確認請求の確認の利益について本件建物の工事を続行すれば停止命令を受けることが予想されるため,控訴人は本件通知に反して工事を続けることはできず,他方,工事をしなければ,P1から債務不履行責任を追及される。控訴人の法的地位には,このように危険と不安が生じている。控訴人が工事を続行するには,P1が本件建築確認に基づく工事をする権利を有していることが必要であるから,P1が同権利を有することが,控訴人の権利又は法的地位を左右する。本件主位的確認請求が認容された場合,本件工事について停止命令がされることはなくなるから,本件主位的確認請求は,控訴人の権利ないし法的地位の不安や危険の除去に有効適切である。 (イ)本件予備的確認請求の確 的確認請求が認容された場合,本件工事について停止命令がされることはなくなるから,本件主位的確認請求は,控訴人の権利ないし法的地位の不安や危険の除去に有効適切である。 (イ)本件予備的確認請求の確認の利益について被控訴人が本件通知をした目的は,本件建物は「現に建築・・・工事中の建築物」に該当しないから,工事が続行された場合には,福岡市長 ,,が停止命令を発するというものであって控訴人が工事を続行した場合控訴人は請負人として工事停止命令を受ける可能性がある。そして,本件建物が「現に建築・・・工事中の建築物」に当たるか否かについて,司法判断が示されなければ紛争解決に至らないから,本件予備的確認請求には確認の利益がある。 (被控訴人)本件主位的確認請求の確認の利益につき,争う。 ウ争点4について(控訴人)停止命令を受けてその取消訴訟を提起してこれが認容されたとしても,停止命令により生じた工事の遅れを取り戻したり,工事遅延により毀損された信用の回復を図ることはできないから,停止命令により控訴人は回復不能な損害を被る。 (被控訴人)争う。 エ争点5について(控訴人)控訴人は,近隣の住民による反対運動を考慮し,突発事故の発生を防止するため,重機を用いた工事でなく,手作業による掘削工事を行ったもので,手作業による掘削工事は,控訴人にとって建築物の実現のための唯一の合理的な工事方法であった。本件建築確認がされた時から本件条例の施行日までの間に時間的な余裕があれば,控訴人は,反対運動の沈静化を待ち,又は妨害禁止仮処分等により重機を用いた合理的な建築工事をすることができるが,本件の場合,その時間的な余裕がない切迫した状況下での着工であった。 控訴人は,本件通知を受けた平成19年11月1日まで手作業による根 切り工事を継続し,26. 的な建築工事をすることができるが,本件の場合,その時間的な余裕がない切迫した状況下での着工であった。 控訴人は,本件通知を受けた平成19年11月1日まで手作業による根 切り工事を継続し,26.7%相当の工事を進捗させ,下請業者には出来高査定により103万円余の工事代金を支払った。これは,本件建築確認を受けた設計図書に基づく根切り工事であり,重機によるか手堀りによるか以外に変更はなく,手堀りとしては相当な出来高であったから,本件建物は工事中の建築物に当たる。 控訴人が不利な手作業による掘削工事を選択した理由としては,本件条例の規制を避ける目的があったが,本件条例の施行以前は工事に着工することは自由なのであるから,控訴人のこの目的やこれに基づく着工は何ら非難されるべきものではない。 (被控訴人)本件工事が建築物の工事の着手といえるかについては,客観的に判断すべきであり,近隣住民の反対運動といった事情を考慮する余地はない。 本件条例が施行されるまでに実施された工事をもって工事の着手といえるかが検討されるべきであり,本件条例施行後に実施された工事は考慮すべきではない。本件工事は,既存建物の解体等の準備工事が全くなされていない状態で実施されたものであり,その規模や手順からして,工事の着手とはいえないものであった。 第3当裁判所の判断 争点1(本件通知に処分性が認められるか)について(1)当裁判所も,本件通知は,抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行訴法3条2項)に当たらないから,本件取」消請求は不適法であると判断する。その理由は,後記(2)のとおり,当審で補足された主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1(1)(2)のとおりであるから,これを引用する(ただし,13頁7行目 判断する。その理由は,後記(2)のとおり,当審で補足された主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1(1)(2)のとおりであるから,これを引用する(ただし,13頁7行目の「証人○○」を「証人○○」と改める。 。)(2)当審で補足された主張に対する判断 ア控訴人は「最高裁平成17年判決は,行政指導にすぎないとされる医,療法30条の7に基づく勧告であっても,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなり,病院経営を断念せざるを得ないという結果をもたらすことを理由として,その処分性を認めているところ,本件通知も控訴人がこれに反して工事を続行した場合には建築基準法9条に基づく工事停止命令がされることが相当程度の確実さをもって認められるから,工事を断念させるという工事停止命令と事実上の同じ効果を有しており,処分性が認められる」旨主張する。 。 しかし,本件通知は,被控訴人建築局指導部建築指導課長P2名義でされた同人の見解の通知であり,法令上の根拠はないもので,建築基準法9条1項の是正措置の前提や条件としての効力はなく,本件通知の存否は上記是正措置の発令に何ら影響を及ぼすものではない。仮に,控訴人が本件建物の工事につき福岡市長から建築基準法9条1項の是正措置を命じられたとしても,それは,本件通知に違反したことに基づくものではなく,本件建物に本件条例の適用があり,本件建物は違法であるとの福岡市長の判断に基づくものであって,本件通知の効力とは無関係であるから,本件通知は,これに違反したときに相当程度の確実さをもって工事停止命令等の是正措置が発令されるという事実上の効果を有するものとは認められない。 したがって,控訴人の主張 の効力とは無関係であるから,本件通知は,これに違反したときに相当程度の確実さをもって工事停止命令等の是正措置が発令されるという事実上の効果を有するものとは認められない。 したがって,控訴人の主張は前提を欠くものであり,採用できない。 イ控訴人は「本件建物が工事中の建築物に当たるとの理由で本件通知が取り消されれば,本件建物は本件条例の適用を受けないことになるから,紛争の適切な解決ないし救済となる」と主張する。 。 しかし,本件通知の取消しの効果として,当然に建築基準法9条1項の是正措置が発令できなくなるということにはならないから,本件通知の取 消しによっても,控訴人が上記是正措置を受ける危険,不安は除去できないと認められる。したがって,本件通知の取消しは,紛争の適切な解決ないし救済とはならないというべきであり,控訴人の前記主張は採用できない。 争点3(本件主位的確認請求及び本件予備的確認請求の確認の利益の有無)について(1)本件主位的確認請求及び本件予備的確認請求に係る訴えは,公法上の当事者訴訟のうち,行訴法4条の「公法上の法律関係に関する確認の訴え」であると認められる。 確認の訴えは,確認の対象となり得るものが形式的には無限定であることから,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するため,その利益があることが訴訟要件として要求される。このような趣旨からすれば,確認の利益は,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合に認められるべきものである(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照。 )(2)ア控訴人は,本件請負契約に基づきP1に対しては本件建物の建築工事を施 つ適切である場合に認められるべきものである(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照。 )(2)ア控訴人は,本件請負契約に基づきP1に対しては本件建物の建築工事を施工する債務を負っている(前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2の2(1)(2)。ただし,補正後のもの。以下同じ。他方,本件。)建物は本件条例に適合しない建物であるから,本件条例の施行の際,本件建物が「現に建築・・・工事中の建築物」といえない場合には,本件条例に違反した建築物となり,控訴人は,建築工事の請負人として,福岡市長から建築基準法9条1項による是正措置を命じられるおそれがある(同第2の1(4) 。そして,被控訴人は,本件通知を通して,P1に対し,本)件建物は,本件条例の施行の際「現に建築・・・工事中の建築物」に当, たらず,本件条例が適用されると判断していることを明らかにしていることからすると(同第2の2(5) ,控訴人が請負人として本件建物の建築)工事を施工した場合には,福岡市長から建築基準法9条1項に基づく是正措置を命じられる可能性が高く,このような是正措置を命じられることにより,控訴人は,その信用が毀損されたり,除却のための費用を支出するといった損害を受けるおそれがある。 以上からすれば,控訴人は,施主であるP1に対しては,本件建物の建築工事を施工すべき債務を負う一方で,同工事を施工すれば,福岡市長から建築基準法9条1項の是正措置を命じられる可能性が高いという立場にあり,その法的地位に,現実的かつ具体的な危険,不安が現に存在しているということができる。 イしかし,他方で,前記1(1)のとおり,本件通知はその取消しを求めることはできる行政処分に当たらず,他に,控訴人において,本件建物に本件条例の適用があるか 現に存在しているということができる。 イしかし,他方で,前記1(1)のとおり,本件通知はその取消しを求めることはできる行政処分に当たらず,他に,控訴人において,本件建物に本件条例の適用があるか否かを明らかにするため,抗告訴訟の対象とすることのできる処分等も見当たらない。また,後記3(1)のとおり,本件建築確認に基づく工事に対し建築基準法9条1項の是正措置の差止めを求める請求も,行訴法3条7項の要件を満たさないから,これをすることはできない。 したがって,本件建物に本件条例の適用がないことの確認を求める訴えが認められない以上は,控訴人としては,本件建物についての本件条例の適用の有無につき,その適用があるという被控訴人の見解を知りつつ,本件建物の建築工事を実施し,福岡市長から建築基準法9条1項の是正措置を命じられた上で,その是正措置が違法であるとしてその取消しを求める抗告訴訟を提起しなければならないこととなる。しかし,上記是正措置を命じられる可能性が高いことを考慮すると,上記適用の有無を確定しないまま,あえて建築工事を行うべきであるとするのは,その手段として迂遠 であるばかりか,建築工事の材料及び労力を無駄に費やすこととなり,社会経済的な損失を生じさせることになる。 以上からすれば,控訴人において,本件建物について本件条例の適用があるか否かの確認を求めるについて,その必要性は高いものといえる。 ウそこで,進んで,本件各確認請求において,確認の対象とされているものが,そのものとして適切か否かについて検討するに,本件主位的確認請求は,P1が本件建築確認に基づく工事をする権利を有することの確認を求めるものである。そして,第三者の権利であっても,控訴人と被控訴人との間で現在それを確定することが控訴人の法律的地位の危険,不安を除去するの 本件建築確認に基づく工事をする権利を有することの確認を求めるものである。そして,第三者の権利であっても,控訴人と被控訴人との間で現在それを確定することが控訴人の法律的地位の危険,不安を除去するのに適切であるときは確認の利益があるといえるが,建築確認は当該建築物についての建築計画が当時の建築基準関係規定に適合した建物であることを確認するものにすぎず(建築基準法6条1項,施主や請負人)に対し,当該建築物の計画に基づき工事をする権利を付与する効果を有するものではなく,ただ,それを受けなければ工事をすることができないという法的効果があるにすぎない(最高裁判所昭和58年10月26日第二小法廷判決・民集第38巻第10号1169頁参照。したがって,控訴)人と被控訴人との間で,P1が本件建築確認に基づく権利を有していることを確認することにより,必ずしも,本件建物に本件条例の適用がないことが明らかになるとはいえず,控訴人の法律的地位の危険,不安を除去するのに適切であるとはいえないから,本件主位的確認請求についてはその確認の利益は認められないというべきである。 他方,本件予備的確認請求は,本件建築確認に基づく工事について本件条例の適用がないことの確認を求める請求であるところ,これが明らかになれば,控訴人は,福岡市長から,本件条例に違反する建築物であるとの理由で建築基準法9条1項に基づく是正措置を命じられる危険,不安がなくなり,本件請負契約に基づくP1に対する建物建築義務を履行すること ,,。 ができるから前記アの控訴人の危険不安を除去するのに適切といえるしたがって,本件予備的確認請求については,確認の利益を認めるのが相当である。 ,,,(3)被控訴人は47年判決を引用した上で工事遅延による経費の増大は経済的な損害にすぎないから いえるしたがって,本件予備的確認請求については,確認の利益を認めるのが相当である。 ,,,(3)被控訴人は47年判決を引用した上で工事遅延による経費の増大は経済的な損害にすぎないから事後的に回復可能なものであり,また,P1からの損害賠償請求については,工事停止命令が違法であれば控訴人がこれを負うことはなく,他方,工事停止命令が適法であれば控訴人が当然受忍すべきものである旨主張する。 しかし,47年判決は,訴訟の形式をいわゆる無名抗告訴訟と解した上でのものとも考えられ,公法上の法律関係に関する確認の訴えである本件予備的確認請求に当然に妥当するものではない。そして,前記2(1)のとおり,行訴法4条による公法上の法律関係に関する確認の訴えにおける確認の利益は,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するための要件であり,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合には,これを認めることができるというべきであって,確認の訴えによらなければ事後的に回復不可能な損害を被ることまでは要しないと解すべきである。 よって,被控訴人の上記主張は,いずれも前提を欠くものであり,採用できない。 争点4(本件差止請求における重大な損害を生ずるおそれの有無)について(1)当裁判所も,福岡市長が控訴人に対し建築基準法9条1項に基づき停止命令をすることで,控訴人に「重大な損害を生ずるおそれがある(行訴法」37条の4第1項本文)とはいえないから,本件差止請求は行訴法3条7項の差止めの訴えの要件を満たさず,不適法であると判断する。その理由は,後記(2)のとおり,当審で補足された主張に対する判断を加えるほかは,原 判 )とはいえないから,本件差止請求は行訴法3条7項の差止めの訴えの要件を満たさず,不適法であると判断する。その理由は,後記(2)のとおり,当審で補足された主張に対する判断を加えるほかは,原 判決の「事実及び理由」欄の第3の3のとおりであるからこれを引用する。 (2)当審で補足された主張に対する判断控訴人は「停止命令を受けてその取消訴訟を提起してこれが認容された,としても,停止命令により生じた工事の遅れを取り戻したり,工事遅延により毀損された信用を回復することはできないから,控訴人は,回復不能な損害を被る」旨主張する。 。 しかし,前判示(前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第3の3(1)ア)のとおり「重大な損害」といえるか否かについては,控訴人の権,利利益やこれに対する侵害の性質及び程度,当該処分によって達成すべき行政目的の緊急性,即時性の内容及び程度等を比較衡量し,当該処分によって控訴人に生じる損害が,当該処分の取り消しの訴えによって回復することが困難であるか否かという観点から判断すべきであるところ,建築基準法9条1項に基づく停止命令により工事が遅延し控訴人に損害が生じたとしても,,,控訴人が停止命令の取消しを求める抗告訴訟を提起しこれが認容されれば停止命令による工事の遅延は控訴人の責めに帰すべき事由によるものといえないことが明らかになるから,工事遅延による控訴人の信用毀損や経済的損害はその回復が可能であるというべきである。 したがって,停止命令により控訴人が被る損害は「重大な損害」とは認,められず,控訴人の主張は採用できない。 争点5(本件建物が工事中の建築物に当たるか)について(1)認定事実証拠(甲12の1・2,甲15ないし19,21の1ないし3,甲23,24,28,31,乙1,2,証人○○)及び弁論 きない。 争点5(本件建物が工事中の建築物に当たるか)について(1)認定事実証拠(甲12の1・2,甲15ないし19,21の1ないし3,甲23,24,28,31,乙1,2,証人○○)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができる。 ア本件建物の建築については,近隣の住民による反対運動があり,控訴人は,平成19年7月28日及び同年8月18日の2回にわたり近隣の住民 に対する説明会を開催し,近隣のマンションの管理組合からの質問状に対して回答書を提出したが,同管理組合は,控訴人に対し,平成19年8月31日付けで同回答書に対する抗議書を提出し,その代表者らは,控訴人。 ,が開催した同年9月12日の説明会にも参加しなかった上記抗議書には「建物完成時には,市条例違反となることが明らかな建築を遂行しようという暴挙をする・・・強く抗議します「着工を許すわけにはいきませ。」ん。前面道路内の当マンション所有地に杭などを打ち込むことにより,工事車両の進入を阻止します」旨の記載があった。 。 同月19日,控訴人が本件土地の草刈りに着手したところ,近隣の住民が作業員に対し工事中止を申し入れた。また,同月21日には,本件土地の近隣道路に「P1マンション建設反対!!福岡市新条例逃れの9月着工断固阻止!!」等と書かれた看板が立てられた。 イ平成19年9月当時,本件土地には既存建物(木造2階建,樹木,庭)石等があり,これらが,本件建物の建築場所にかかるため,本件建物の建築のためには,これらの既存建物を解体撤去し,樹木・庭石を撤去する必要があった。 P1と控訴人は,同年10月1日から本件条例が施行されることから,本件建物を建築するには,同日の前に本件建物の工事に着工し,被控訴人から本件建物が「現に建築・・・工事中の建築物」であると認めら た。 P1と控訴人は,同年10月1日から本件条例が施行されることから,本件建物を建築するには,同日の前に本件建物の工事に着工し,被控訴人から本件建物が「現に建築・・・工事中の建築物」であると認められる必要があり,そのためには根切り工事及び山留め工事(以下「根切り工事」というときは,山留め工事も含む)や杭工事をまず実施する必要がある。 と考え,同年9月中に既存建物の存しない土地部分の根切り工事や杭工事を重機を使って開始し,既存建物の解体撤去,樹木・庭石の撤去は,その後,根切り工事や杭工事と並行して行う計画を立てた。 しかし,重機を使うためには,重機の搬入路を作るため,本件土地の南側にある高さ約3メートルの間知ブロックを道路側から重機を使って取り 壊す必要があった。控訴人は,前記アの反対運動の中で,同年9月中に同取り壊し作業を行うことは困難であると判断し,根切り工事は手作業で行い,重機を使う作業は同年10月15日ころから始めることとし,同月27日ころ,根切り工事を発注していた下請業者に対し,その旨発注内容を変更した。その際,予定された工事内容は,原判決別紙現場確認報告書の①ラインないし③ラインに沿って段を付け,同書の断面のとおり掘削○あ。 ,,するというものであったなおこのように段を付けることになったのは掘削面の崩落を防止するためであった。 ウ同年9月27日,P1は,本件建築確認を受けた。 同月28日午後零時ころから,合計8名の下請作業員により,打込み単管及び敷板を本件土地に搬入し,同日午後3時ころから午後4時30分ころまでの間,6名の作業員により,スコップを用いた手作業により本件掘削部分の地面を掘削し横矢板を土中に入れたが,掘削した幅はせいぜい20cm程度で,長さも数mにすぎなかった。 控訴人は,同月29日午後3時ころ 6名の作業員により,スコップを用いた手作業により本件掘削部分の地面を掘削し横矢板を土中に入れたが,掘削した幅はせいぜい20cm程度で,長さも数mにすぎなかった。 控訴人は,同月29日午後3時ころから,4名の下請作業員により,上記掘削を継続した。被控訴人職員は,同日午後,本件掘削部分付近を見分して,その状況を確認した。控訴人は,同日午後4時ころ,近隣住民から控訴人P3支店に苦情の電話があったこと及び被控訴人職員の上記見分が既に終わっていたことから,作業を終了した。 エ控訴人は,上記ウの2日間の作業により,本件掘削部分を長さ約2.5m,幅約30cm,深さ15ないし20cm掘削し,横矢板(足場板)1枚を。 ,,土中に入れたにすぎなかったまた原判決別紙現場確認報告書のとおり本件掘削部分は掘削予定の範囲を示す①ラインの外側を掘削したものであり,掘削予定部分に植栽があったことから,これを避けて,同図の①ラインから約1m外側の部分を,その付近にあった既存の側溝に沿って掘削し たものであった。なお,この既存の側溝は撤去する必要があった。 控訴人は,翌30日には本件建物建築のための工事を行わず,同日までに,既存建物の解体撤去,樹木・庭石等の撤去,整地,仮囲い,工事用の進入口の整備,資材・建築機械の搬入等の作業はいずれも行っていなかった。 オ控訴人は,その後,同年10月1日から本件通知を受領した同年11月1日ころまで下請作業員2,3名が手作業で掘削を行う等の工事を行ったが,結局重機の使用には至らなかった。 (2)ア建築基準法3条2項は,新法等の適用に関する経過規定であり,新規定の施行又は適用時において「現に建築・・・工事中の建築物」については,その建築を許容し,その限度で新規定による行政目的の達成を一部後退させて,建築主の期待を保護するこ に関する経過規定であり,新規定の施行又は適用時において「現に建築・・・工事中の建築物」については,その建築を許容し,その限度で新規定による行政目的の達成を一部後退させて,建築主の期待を保護することとしたが,その反面において,この要件を満たさないものについては,適法に建築確認を受けた建築物であっても,新規定が適用され,これによる行政目的の達成が優先されることになる。 このように,上記規定は,新規定による行政目的の達成と建築物の完成に対する建築主の期待や経済的な利益の調整を図ったものであり,その文理及び趣旨に加え,これが行政庁による法規の適用の基準となるものであることからすると「現に建築・・・工事中の建築物」に該当するという,ためには,新規定の施行又は適用時において,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,新規定の施行の日までに,その工事が継続して実施されていることを要するというべきである。 イこれを本件についてみると,控訴人が本件工事を開始したのは,本件条例が施行される3日前のことであったが,本件条例施行日までに行われた作業は,合計約2時間30分程度,作業員数名がスコップによる手掘りで 地面を掘削したというにすぎず((1)ウ,その成果は,根切り工事とし)て本来掘削予定であった部分に植栽があったことから,これを避け,本来掘削予定であった部分とは異なる場所(掘削予定の部分から約1m離れている)を,撤去予定の既存の側溝に沿って,長さ約2.5m,幅約30。 cm,深さ15ないし20cmにわたって掘ったにすぎない((1)エ。した)がって,本件工事は,外形的には,根切り工事というより,その準備として,既存の側溝の撤去を目的として行われた工事と見るのが相当なもの さ15ないし20cmにわたって掘ったにすぎない((1)エ。した)がって,本件工事は,外形的には,根切り工事というより,その準備として,既存の側溝の撤去を目的として行われた工事と見るのが相当なものであった。 そして,控訴人は,近隣住民の反対運動のために重機を用いることができなかったが,本件条例施行後には,重機を用いて根切り工事を行うことを計画しており,技術的には根切り工事を手作業で行う必要はなかった((1)イ。また,本件建物の建つ場所には既存建物や植栽等があり,通)常,根切り工事は,既存建物の解体撤去及び整地がされ,建築物を支持し得る地盤が確保された段階でこれに引き続き行われるものであるのに,控訴人は,被控訴人に「現に建築・・・工事中の建築物」と認めさせるために,既存建物の撤去解体や植栽等の撤去を実施することなく,既存建物のない部分の根切り工事を手堀りで先行して行うこととしたものであった((1)イ。 )さらに,控訴人は,本件掘削部分を被控訴人の職員が見分した後,作業の可能な時間もあったのに,間もなく作業を終了した((1)ウ。 )これらの事情からすれば,本件工事は,本件建物の建築工事の一環として行われたものとは評価することはできず,専ら,本件条例の施行時において「現に建築・・・工事中の建築物」と被控訴人に認められるために,形式的に行われた作業というべきであり,その掘削量及び掘削位置に照らしても,外形的に建物の建築工事には当たらず,建築物の実現を直接の目的とする工事とはいい難く,建築主の建築意思が外部から客観的に認識で きる状態に達していたとはいえない。 したがって,本件建物について,本件条例施行の時点で,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,その工 していたとはいえない。 したがって,本件建物について,本件条例施行の時点で,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,その工事が継続して実施されたと認めることはできず,本件建物は「現に建築・・・工事中の建築物」に,当たらないというべきである。 (3)控訴人の主張についての判断ア控訴人は,本件工事は,土砂崩れを防止するため,掘削部分を段切りにする必要があったことから本件掘削部分を掘削したもので,本件建物建築上必要な工事であったと主張する。 しかし,本件掘削部分は,控訴人が崩落を防止するために段切りにしようとした原判決別紙現場確認報告書の①ラインから約1m外れており(1)(イエ,前記(2)イのとおり,本件工事は,外形的には,根切り工事とい)うより,その準備としての既存の側溝の撤去のための工事と評価されるものであったから,本件建物の根切り工事であると認めることはできない。 イ控訴人は「反対運動の沈静化を待ったり,妨害禁止仮処分等を行う時,間的な余裕がない状況下で,近隣の住民による反対運動を考慮し,突発事故の発生を防止するためには,重機を用いることなく,手作業で掘削工事,。」を行うことが建築物の実現のための唯一の合理的な工事方法であった旨主張する。 しかし「現に建築・・・工事中の建築物」といえるかは,前記のとお,,,,り新規定の施行の際建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達していると認められることが必要であるところ,本件工事を手堀りで行うべき技術的な必,,,,要性の点はおくとしても前記(2)イのとおり本件工事は外形的には,,,その掘削量及び掘削位置に照らし根切り工事では が必要であるところ,本件工事を手堀りで行うべき技術的な必,,,,要性の点はおくとしても前記(2)イのとおり本件工事は外形的には,,,その掘削量及び掘削位置に照らし根切り工事ではなくその準備として 既存の側溝の撤去を目的として行われた工事と評価されるものであった。 したがって,本件工事をもって,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始されたとも,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しているともいえず,控訴人の主張は採用できない。 ウ控訴人は「本件通知を受けた平成19年11月1日までの作業により,. ,本件建築確認を受けた設計図書に基づき267%相当の工事を進捗させ下請け業者には出来高査定により103万円余の工事代金を支払い,相当の成果を上げたから,本件建物は工事中の建築物に当たる」旨主張する。 が「現に建築・・・工事中の建築物」といえるかは,前記(2)アのとお,,,,り本件条例施行の際建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達していると認めらることが必要であって,本件条例施行後に実施された工事を考慮することはできないというべきであるから,採用できない。 エ控訴人は「控訴人が不利な手堀り工事を選択した理由には,本件条例,の規制を避ける目的があったが,本件条例の施行以前は工事に着工することは自由であったから,何ら非難されるべきものではない」旨主張する。 が,本件工事を行った控訴人の目的いかんにかかわらず,本件工事をもって,外形的に見て,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始されたとも,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しているともいえないことは前記イのとおりであるから,採用できない。 (4)小括したがって,本 物の実現を直接の目的とする工事が開始されたとも,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しているともいえないことは前記イのとおりであるから,採用できない。 (4)小括したがって,本件建物は,本件条例施行の際「現に建築・・・工事中の,建築物(建築基準法3条2項)に当たらないから,本件建物の建築工事で」ある本件建築確認に基づく工事につき,本件条例の適用がないということはできない。 結論 以上から,控訴人の本件取消請求,本件主位的確認請求及び本件差止請求に係る各訴えはいずれも不適法であり,本件予備的確認請求は理由がない。 したがって,本件主位的確認請求を適法としてこれを棄却した原判決主文第2項は相当ではないから,これを取り消して,同請求に係る訴えを却下し,控訴人の本件取消請求及び本件差止請求に係る各訴えを不適法としてこれらを却下した原判決主文第1項は相当であり,この点についての控訴人の控訴は理由がないから,これを棄却することとし,控訴人の当審における本件予備的確認請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部裁判長裁判官西謙二裁判官伊藤由紀子裁判官桂木正樹(原裁判等の表示)主文 原告の通知取消請求(請求1)及び工事停止命令差止請求(同3)に係る各訴えをいずれも却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告が株式会社P1(以下「P1」という)に対し平成19年10月31。 日付け建指第○号をもってした「株式会社P1の福岡市α×番所在の建物に,おいて平成19年9月28日と29日の2日間で行われた人力による掘削工事は,建築基準法第3条2項の『条例の施行の際,現 。 日付け建指第○号をもってした「株式会社P1の福岡市α×番所在の建物に,おいて平成19年9月28日と29日の2日間で行われた人力による掘削工事は,建築基準法第3条2項の『条例の施行の際,現に工事中の建築物』に該当しないと判断します」との通知(以下「本件通知」という。)を取り消す。 P1が平成19年9月27日付け建築確認済証(第○号)の交付を受けて得た建築確認(以下「本件建築確認」という。)に基づく工事をする権利を有していることを確認する。 福岡市長は,原告に対し,原告が前項の建築確認に基づく工事をすることに対し工事の施工の停止を命じてはならない。 第2事案の概要等 事案の概要本件は,P1から建物の建築工事を請け負った原告が,被告に対し,同建物は,福岡市建築基準法施行条例(以下「本件条例」という)の規定の施行の。 際「現に建築の工事中の建築物」(建築基準法3条2項。以下「工事中の建築物」という。)に当たらない旨の本件通知があったが,上記建物はこれに当たると主張し,①本件通知は違法であるとして,その取消しを求め(以下「本件取消請求」という,。),,②P1は本件建築確認に基づき建物の建築工事をする権利を有するとしてその確認を求め(以下「本件確認請求」という,。)③福岡市長が,原告に対し,本件条例違反を理由に,建築基準法9条1項に基づき,建物の建築工事の施工の停止を命ずることは違法であるとして,停止命令の差止めを求めた(以下「本件差止請求」という)。 事案である。 前提事実(1)P1は,平成19年6月27日ころ,建築一式工事等を主たる業務とする株式会社である原告に対し,福岡市α×番の土地(以下「本件土地」という)上に建築予定の新築建物(以下「本件建物」という。)の基本設計業務・。 実施 年6月27日ころ,建築一式工事等を主たる業務とする株式会社である原告に対し,福岡市α×番の土地(以下「本件土地」という)上に建築予定の新築建物(以下「本件建物」という。)の基本設計業務・。 実施設計業務を依頼し,さらに,原告は,同年7月27日ころ,P1から,(「」。),木造2階建建物以下既存建物というの解体工事及び以下のとおり本件建物の建築工事を請け負った(以下「本件請負契約」という。 。)ア工事名称株式会社P1様P4マンション新築工事イ住宅名称RC造共同住宅ウ構造鉄筋コンクリート造エ面積2669.7㎡オ工期平成19年9月29日から平成20年9月30日までカ請負代金7億5180万円(消費税相当額を含む)。 キ支払期契約時(平成19年7月30日)100万円着工時(同年9月28日)7518万円引渡時(平成20年9月30日)6億7562万円(甲1ないし3)(2)P1は,P5株式会社(以下「P5」という)に対し,平成19年9。 月11日,本件建物の建築確認申請をし,P5は,同月27日,次の内容の()(「」建築工事につき建築確認確認済証第○号を行った以下本件建築確認という。 。)ア建築場所本件土地イ建物名株式会社P1様P4マンション新築工事ウ用途共同住宅エ工事種別新築工事 オ構造鉄筋コンクリート造カ規模地下1階,地上8階キ敷地面積1426.06㎡ク延べ面積2728.78㎡(甲4,同5)(3)原告は,平成19年9月28日及び同月29日に,作業員の手堀りにより,本件土地のうち,別紙現場確認報告書記載の赤色に着色した部分(以下「本件掘削部分」という)を長さ約2.5m,幅約30cm,深さ15な。 いし2 9年9月28日及び同月29日に,作業員の手堀りにより,本件土地のうち,別紙現場確認報告書記載の赤色に着色した部分(以下「本件掘削部分」という)を長さ約2.5m,幅約30cm,深さ15な。 いし20cm掘削した(以下「本件工事」という。 。)(争いがない事実,乙2,弁論の全趣旨)(4)福岡市は,平成19年条例第29号(以下「本件条例」という。)を定め,平成19年10月1日施行した。本件条例の27条1項本文は,延べ面積が1000㎡を超える建築物の敷地は,幅員6メートル以上の道路に6メートル以上接し,かつ,その接する部分に主要な出入口を設けなければならないと規定するものであったが,本件建物は,幅員4mの道路と47.55mにわ,,,たり接しているが上記の要件を満たすものではなく本件条例の施行の際,。 工事中の建築物に当たるといえない限り本件条例に抵触するものであった(甲5,争いがない事実)(5)被告建築局指導部建築指導課長P2(以下「P2」という。)は,平成19年10月31日ころ,P1に対して,次の内容の「工事中の建築物』に該当『するかの判断について」と題する通知(建指第○号)をした(本件通知,甲6。 )「本市では,福岡市建築基準法施行条例(以下「本件条例」という)を。 平成19年10月1日に施行しましたが,建築基準法第3条第2項の『条例の施行の際,現に工事中の建築物』に該当しない場合は,条例が適用されます。 貴社の下記建築物において平成19年9月28日と29日の2日間で行われた人力による掘削工事(9月30日には工事は行われていない)は,予定されている規模の建築物の完成を直接の目的とする工事としては極めて小規模な作業であり,また,工事監理者から市に提出された着工報告書によると,後日,重機による掘削が予定されてい われていない)は,予定されている規模の建築物の完成を直接の目的とする工事としては極めて小規模な作業であり,また,工事監理者から市に提出された着工報告書によると,後日,重機による掘削が予定されていることから,先行して人力で掘削する工事上の必然性もありません。 したがって,建築基準法第3条第2項の『条例の施行の際,現に工事中の建築物』に該当しないと本市は判断します。 記建築主株式会社P1代表取締役P6敷地の地名地番福岡市α×番建築確認日平成19年9月27日建築確認済証番号第○号」(6)原告は,被告建築局指導部宛てに,平成19年12月28日付けで,本,,「」件通知に対して本件工事は建築基準法3条2項の現に工事中の建築物に該当するので,改めて被告の判断を照会したい旨記載された「意見照会」と題する書面を送付した。 これに対し,P2は,原告に対し,平成20年2月13日付けで,被告の本件通知における判断に変更がないことを回答する旨記載された「意見照会に対する回答」と題する書面(建指第○-○号)を交付した。 (甲7,同8) 争点及び当事者の主張(1)本件取消請求に関する本案前の争点ア本件通知に処分性が認められるか(争点1)(ア)原告の主張行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項の「行政庁の処分そ の他公権力の行使に当たる行為」には,法的地位に直接的な影響を及ぼすものも含まれる。 そして,本件の場合,被告は,本件条例が適用されればその規定に違反することとなる本件建物につき,本件条例が適用されるか判断するために現地調査を行った上で,工事中の建築物に当たらない旨の本件通知をしているのであるから,本件建物の建築工事を継続した場合,福岡市長により停止命令が発されることは明らかであり,そうである以上, るために現地調査を行った上で,工事中の建築物に当たらない旨の本件通知をしているのであるから,本件建物の建築工事を継続した場合,福岡市長により停止命令が発されることは明らかであり,そうである以上,原告としては,停止命令が発せられるまでもなく,同工事を中止せざるを得ない。 よって,本件通知が,請負人として,契約上の義務の履行としての工事を実施している原告の法的地位に直接的な影響を及ぼし,工事の続行を断念させたことは明らかであり,本件通知は「行政庁の処分その他公権力の行使」に当たる。 なお,実際に停止命令を受けた段階で抗告訴訟を提起することは可能であるが,そこで問題となるのは,本件通知段階と何ら変わらないのであって,いたずらに問題を先送りにするだけにすぎないし,停止命令に対する取消訴訟で原告の主張が容れられても,時間の経過によって,既に損害は拡大し,より回復困難なものとなるため,原告の権利利益の救済としては不十分である。 (イ)被告の主張本件通知は,建築基準法等に具体的な根拠を有するものでも,同法等に基づく処分権限者の行為でもなく,原告社員からの問い合わせに対し,,「」,て被告担当職員が本件工事は本件建物の工事の着工とはいえず本件建物は工事中の建築物に該当しない旨の認識を書面の形で示したものにすぎず,本件通知と後に行われる可能性のある工事停止命令とは無関係である。したがって,原告に何らかの権利,義務を形成し,その範 囲を確定したものではないから,本件通知は行訴法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない。 イ原告適格の有無(争点2)(ア)原告の主張原告は,本件通知がなければ,本件建物の建築工事を続行し,本件建物を完成することができたところ,本件通知がある以上,続行すれば工事停止 該当しない。 イ原告適格の有無(争点2)(ア)原告の主張原告は,本件通知がなければ,本件建物の建築工事を続行し,本件建物を完成することができたところ,本件通知がある以上,続行すれば工事停止命令を受けることが必須であったため,工事を中断せざるを得なかったのであり,これにより,原告は工事遅延による経費の増大,契約解除及び損害賠償請求のおそれ等の不利益を被ることが考えられるのであって,本件通知が取り消されることについて,原告は法律上の利益を有している。 (イ)被告の主張本件通知は,本件工事が本件建物の実現を直接の目的とする工事の着工に当たらない旨の判断を示すにすぎず,本件工事とは別に行われる本,,件建物の建築工事に対し工事停止命令を発するか否かは別問題であり仮に,建築主であるP1が着工時における建築法令に適合した新たな建築確認に基づいて建築行為を行う場合,工事停止命令を発することはないのであるから,本件通知が原告の請負者としての契約上の地位に直接影響を与えるといった関係にないことは明らかであり,原告は,本件通知を取り消す法律上の利益を有する者とはいうことができない。 (2)確認の利益の有無(争点3。本件確認請求に関する本案前の争点)ア原告の主張原告の地位の安定化のために,第三者と被告の間の法律関係を安定させることが必要であれば,確認の利益が認められるところ,P1が,本件建築確認に基づく工事を行う権利を有しなければ,原告が請負業者として上記工事を続行しても,被告から工事停止命令を受け,建築物の除去等を命 ぜられることがあるのであって,それにより原告は甚大な損害を被るのに対し,P1が上記権利を有していることが確認されれば,原告は上記工事を続行でき,上記損害を回避又は軽減することができるのであるから,原告には確認の利益 であって,それにより原告は甚大な損害を被るのに対し,P1が上記権利を有していることが確認されれば,原告は上記工事を続行でき,上記損害を回避又は軽減することができるのであるから,原告には確認の利益があるということができる。 イ被告の主張(ア)原告の利益は,P1の本件建築確認を受けた法的地位を前提とするものであり,P1と原告との間の契約上の地位に基づくものであるところ,そもそも,本件建築確認を受けたP1自身は,本件建築確認に基づく工事の続行について,被告と争う姿勢を示していないのであるから,第三者である原告がP1の工事を行う権利の確認を求める利益は認められない。 (イ)具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度の下においては,義務違反の結果として将来何らかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけでは足りず,当該義務の履行によって損害を受ける権利の性質及びその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし,上記処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否を争ったのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがあることを要する(最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁。以下「47年判決」という。 。)そして,原告が,将来被告によって何らかの不利益を受けるか否か,,,,またその内容及び原告が主張する損害の性質程度回復の難易などはいずれも原告側の行為の有無,その程度いかんに係ることであって,現時点では具体性ないし明白性に欠ける。 また,工事遅延による経費の増大は,一時的な金銭的損害であって,,,事後的に回復可能なものであるしP1からの損害賠償請求については 仮に工事停止命令が違法であれば,原告が負うことはないし,工事停止命令が適法であれ の増大は,一時的な金銭的損害であって,,,事後的に回復可能なものであるしP1からの損害賠償請求については 仮に工事停止命令が違法であれば,原告が負うことはないし,工事停止命令が適法であれば,それは原告が自ら招いた不利益であり,当然受忍すべきものである。 (ウ)本件建物の建築工事は,平成19年9月25日に計画変更されており,本件建築確認の内容とは異なる工事がされていたのであるから,本件建築確認に基づく工事を行う権利の確認を求める利益はないというべきである。 (3)重大な損害を生ずるおそれの有無(争点4。本件差止請求にに関する本案前の争点)ア原告の主張建築主であるP1は,本件建物敷地を高層建物建築目的で購入して,その建築を原告に発注したものであり,敷地購入費及び建築費等の総額は10億円をはるかに超えるものである。 原告は,P1から設計,施工及び本件旧建物の解体を総額7億7700万円で請け負っており,仮に,本件建築確認に基づく工事を実施してこれに対し停止命令がされたときは,工事を継続することができなくなり,工事は大幅に遅延することになるのであって,これによる経費の増大,P1に対する信用失墜,P1からの損害賠償請求など,多岐多額にわたる損害を被るのであって,事後的に償いきれるものではない。 よって,重大な損害を生ずるおそれがあるというべきである。 イ被告の主張重大な損害を生ずるおそれがあるというためには,義務違反の結果として将来何らかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけでは足りず,当該義務の履行によって損害を受ける権利の性質及びその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし,上記処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否 を争ったのでは回復し難い重大な損害 及びその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし,上記処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否 を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあることを要する。 そして,工事遅延による経費の増大は,一時的な金銭的損害であって,事後的に回復可能なものであるし,P1からの損害賠償請求については,仮に工事停止命令が違法であれば,原告が負うことはないし,工事停止命令が適法であれば,それは原告が自ら招いた不利益であり,当然受忍すべきものである。 よって,本件は,重大な損害を生ずるおそれがある場合に当たらない。 (4)本件建物が工事中の建築物に当たるか(争点5。本件各請求に関する本案の争点)ア原告の主張(ア)当該工事が建築物の実現を直接の目的として完成まで継続して実施されるものであると客観的に認められる場合には,工事中の建築物に当たる。そして,以上の要件を充たすか否かの判断に当たっては,近隣住民の反対運動等の外部の事由により工事規模を制限された特段の事情が認められるときは,これを考慮するべきである。 (イ)被告が平成19年9月28日及び同月29日に実施した本件工事は,建築主であるP1が建築確認による建物完成を目的として工事着工を決断して原告に着工することを指示し,原告が工事請負契約に基づく建築物完成の契約義務の履行として施主の指示に従って行ったものであるから,建築物の実現を直接の目的として工事が開始されたことは明らかである。 また,その後も,本件通知を受領した同年11月1日まで工事を継続して実施していたのであって,本件通知がなければ,建物完成に至るまで工事を継続していたことも明らかである。 そして,同年9月28日及び同月29日の各工事は,いずれも人力による小規模な工事に 事を継続して実施していたのであって,本件通知がなければ,建物完成に至るまで工事を継続していたことも明らかである。 そして,同年9月28日及び同月29日の各工事は,いずれも人力による小規模な工事に止まったが,それは本件建物建築に反対する近隣住 民との突発事故を回避するためのやむを得ない選択であったのであり,それでも原告は,根切り工事に着手しており,建築主の建築意思及び工事着工の開始が客観的に認識できたからこそ,反対住民は作業員が現場に入ることを阻止するなどして工事を妨害したのであり,本件工事は,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達したものと認めることができる。 (ウ)なお,確かに,本件掘削部分は,本件建物の直下ではないが,これは,手掘による掘削の場合,土砂崩れを防止するために掘削部分を段切りにする必要があったためであり,本件工事も本件建物を建築する上で必要な工事である。また,U字溝があったため,その外側から掘ったのであり,これも本件建物の建築工事に不可欠である。 イ被告の主張本件工事は本件建物の完成を直接の目的とする工事としては極めて小規模な作業であること,後日,重機による掘削が予定されており,先行して人力で掘削する必要がないこと,本件掘削部分が被告が主張する段切りのさらに1m外側にずれた部分であること,本件建物の完成を直接の目的と,,,する工事の前に行われる既存建物の解体既存樹木・庭石等の撤去整地仮囲い,工事用の進入口の整備,資材・建築機械の搬入等の準備工事がされておらず,ほとんど既存の状態のままであったことなどからすれば,原告は,本件建物の工事に着工したとはいえず,本件建物は,工事中の建築物に当たらない。 なお,工事中の建築物に当たるか否かは客観的に工事内容から判断するべきであり,近隣住民と協議・ などからすれば,原告は,本件建物の工事に着工したとはいえず,本件建物は,工事中の建築物に当たらない。 なお,工事中の建築物に当たるか否かは客観的に工事内容から判断するべきであり,近隣住民と協議・調整中であったことなどは影響しない。 第3当裁判所の判断 争点1(本件通知に処分性が認められるか)について(1)争点に対する判断 ア原告が本件通知の取消しを求めるためには,本件通知が「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらなければならない(行訴法3条2項)ところ,これは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照。 )イ本件通知は,前記前提事実記載のとおり,本件条例が平成19年10月1日に施行されたこと,工事中の建築物に該当しない場合は,条例が適用されること及び本件建物は工事中の建築物に当たらないと被告が判断していることが記載されたもので,要するに,本件建物には本件条例が適用されると被告が判断していることを示すものである。 しかしながら,本件通知は,何ら建築基準法等の法令上の根拠を有するものではなく,およそ何らかの法的効果が付与されたものでもないのであって,これにより直接原告に何らかの権利を与え,又は義務を課すものでも,その範囲を確定するものでもない。また,そもそも本件通知は,P2名義でされているところ,同人は,建築基準法等の法令上,建築工事の許可等に関して処分権限を有する者でもない。 そうだとすれば,本件通知は,直接原告の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず「行政庁の,」 上,建築工事の許可等に関して処分権限を有する者でもない。 そうだとすれば,本件通知は,直接原告の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず「行政庁の,」。 処分その他公権力の行使に当たる行為には当たらないというべきである(2)原告の主張に対する判断アこれに対し,原告は,本件通知がされている以上,本件建物の建築工事を続行すれば,福岡市長により当該工事の停止命令が発されることは明らかであり,原告としては,停止命令を待つまでもなく,上記工事を中止せざるを得ないのであって,本件通知は,請負契約上,上記工事を履行する義務を負う原告のその法的地位に直接的な影響を及ぼすものである旨主張 する。 しかしながら,本件通知は,停止命令発令のための要件となっているものではなく,これがなくとも,原告が本件建物の建築工事を続行し,福岡市長がこれを工事中の建築物に該当しないものと判断すれば停止命令を,,発することができるものであり要するに停止命令の発せられる可能性は本件通知の存否とは直接関わりのないものである。 そして,確かに,本件通知後,原告は,本件建物の建築工事を中止していることが認められる(甲31,証人○○)が,これは,原告が自主的に行ったものにすぎず,このことから,本件通知に何らかの法的効果があるということもできない。 そうすると,本件通知により原告が工事を中止せざるを得なかったということはできず,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,実際に停止命令を受けた段階で抗告訴訟を提起するのでは,問題を先送りにするだけにすぎず,また,仮に停止命令に対する取消訴訟で原告の主張が容れられても,時間の経過によって,既に損害は拡大して,より回復困難なものとなるため,原告の権利利益の救済としては は,問題を先送りにするだけにすぎず,また,仮に停止命令に対する取消訴訟で原告の主張が容れられても,時間の経過によって,既に損害は拡大して,より回復困難なものとなるため,原告の権利利益の救済としては不十分である旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,工事停止命令は,本件通知の存否にかかわらずなされ得るものであり,仮に,本件通知が取り消されたとしても,当然に工事停止命令が禁止されるものでもないことからすれば,本件通知の取消しが本件紛争の適切な解決ないし救済となるともいえないのであり,原告の上記主張も採用できない。 (3)小括よって,本件取消請求に係る訴えは,その余の争点について判断するまでもなく,不適法であるから,却下を免れない。 争点3(本件確認請求における確認の利益の有無)について (1)争点に対する判断ア本件確認請求に係る訴えは,公法上の当事者訴訟のうち,行訴法4条により規定された「公法上の法律関係に関する確認の訴え」と解することができるところ,確認の訴えにおいて,確認の利益が訴訟要件となるのは,確認の訴えの性質上,その対象が無限定であるため,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保する必要があるからである。 この趣旨に照らせば,確認の利益は,原告の権利又は法的地位に危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要かつ有効,適切であるといえる場合には認められるべきである(なお,最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照。 )イそこで,本件確認請求が上記のような場合に該当するかどうかについてみると,(ア)前記前提事実記載のとおり,原告は,本件請負契約に基づき,本件建築確認に基づく本件建物の建築工事を請け負っており,P1に対し,同工事を履行する債務を 場合に該当するかどうかについてみると,(ア)前記前提事実記載のとおり,原告は,本件請負契約に基づき,本件建築確認に基づく本件建物の建築工事を請け負っており,P1に対し,同工事を履行する債務を負う。一方,本件建物は本件条例に抵触する建物であるところ,被告は,本件通知を通して,本件建物について,工事中の建物には当たらず,本件条例が適用されるものと判断することを明らかにしていることからすると,原告が本件建築確認に基づき本件建物の建築工事を続行すれば,福岡市長が,建築基準法9条1項に基づき,同工事の施工の停止を命ずることについて高度の蓋然性が認められ,このような停止命令を受けることにより,原告は後記のとおり重大な損害とまではいえないとしても,経済的ないし信用上の損害を受けるおそれがある。 すなわち,原告は,本件建築確認に基づく本件建物の建築工事を実施すべき義務を負うものの,同工事を実施すれば,福岡市長からその停止を命ぜられる蓋然性が高いという不安定な立場に立たされており,同工 事を断念するか,停止命令及びこれに伴う不利益の危険を冒して,あえて同工事を実行するかの二者択一を迫られている状況にあり,その権利ないし法的地位に危険,不安が現に存在しているということができる。 確かに,本件確認請求の対象は,P1が本件建築確認に基づく工事をする権利であって,第三者の権利ではあるものの,原告の履行すべき本件建築確認に基づく本件建物の建築工事は,P1の上記権利を前提とするものであるから,その存否によって,原告自身の権利ないし法的地位が左右されるものであることは明らかであり,確認対象が第三者の権利であることによって,上記認定判断が左右されるものではない。 ,,,(イ)そして本件確認請求が上記のような危険不安を除去するために必要かつ有効,適切 ことは明らかであり,確認対象が第三者の権利であることによって,上記認定判断が左右されるものではない。 ,,,(イ)そして本件確認請求が上記のような危険不安を除去するために必要かつ有効,適切であるといえるかについてみると,他に上記のための救済手段としては,本件取消請求や本件差止請求が考えられるが,前記及び後記のとおり,これらはいずれも不適法であると認められ,他に採り得る手段も見当たらないから,本件確認請求は必要なものであるといえる。なお,原告は,福岡市長により,本件建物の建築工事の停止を,,命じられた段階で同処分に対する抗告訴訟を提起することはできるが,,停止命令を受けることによる損害の危険不安を除去することについて同訴訟が有効適切であるとはいえず,このことは上記の認定判断を左右するものではない。 また,確認請求が認容されれば,その判決の効果として,被告が原告との間で,本件建物が工事中の建築物に当たらないとして,これに本件条例が適用されると判断することは許されなくなると考えられ,同請求は有効適切な手段というべきである。 ウよって,本件確認請求には,確認の利益が認められる。 (2)被告の主張に対する判断アこれに対し,被告は,本件建築確認を受けたP1自身が,本件建築確認 に基づく工事の続行について争う姿勢を示していないのであるから,第三者である原告がP1の工事を行う権利の確認を求める利益は認められない旨主張する。 しかしながら,一般に,確認の利益のある限り,第三者の権利関係の確認請求も認められるものと解され,公法上の法律関係に関する確認請求についても同様に解されるところ,前記のとおり,原告にはその利益が認められるというべきである。 また,P1も積極的に訴訟を提起しているものでもないが,本件建物に本件条例が適用され 係に関する確認請求についても同様に解されるところ,前記のとおり,原告にはその利益が認められるというべきである。 また,P1も積極的に訴訟を提起しているものでもないが,本件建物に本件条例が適用されることを認容していると認めるに足りる証拠もないのであって,P1がこの点を争う権利を放棄したとか,本件訴訟がP1の意思に反するといった事情も認めるに足りないから,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,被告は,47年判決を引用した上で,原告が,将来被告によって何らかの不利益を受けるか否か等は,現時点では具体性ないし明白性に欠けるし,工事遅延による経費の増大は,事後的に回復可能なものであり,また,P1からの損害賠償請求については,仮に工事停止命令が違法であれば,原告が負うことはないし,工事停止命令が適法であれば,それは原告が自ら招いた不利益であり,当然受忍すべきものである旨主張する。 しかしながら,47年判決は,判決自体から訴訟の形式をいずれと解したものかは必ずしも明らかでないが,無名抗告訴訟であると解したものとも考えられる訴訟に関する判決であるから,公法上の法律関係に関する確認の訴えである本件確認請求に係る訴えについても当然に妥当するものではない。 そして,行訴法4条は,公法上の法律関係に関する確認の訴えにつき,これによらなければ事後的に回復不可能な損害を被ることまで要件として規定しているものではなく,本件差止請求とは異なり,被告が主張する上 記のような厳格な要件を充たすことは要しないというべきである。 よって,被告の上記主張はいずれも前提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 ウ以上のほか,被告は,本件建物の建築工事は,平成19年9月25日に変更されており,本件建築確認に基づく工事とは異なる工事がされていたので 提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 ウ以上のほか,被告は,本件建物の建築工事は,平成19年9月25日に変更されており,本件建築確認に基づく工事とは異なる工事がされていたのであるから,本件建築確認に基づく工事の確認を求める利益はない等と主張するが,上記の時点で,本件建物の建築工事を変更するかどうかは決まっていなかったというのであり(証人○○,他に,本件建物の建築工)事が変更されたことを認めるに足りる証拠はないから,被告の上記主張は採用できない。 争点4(本件差止請求における重大な損害を生ずるおそれの有無)について(1)争点に対する判断ア行訴法3条7項の差止めの訴えは,同法37条の4第1項に「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り,提起することができる」と定められているとおり,重大な損害の発。 生のおそれがあることを訴訟要件とするものであるが,これは,差止めの訴えが,予想される行政処分に対する事前審査によって,行政庁に対し,一定の不作為義務を課すことを訴求するものであることから,司法審査の機能を強化しつつ,司法と行政との適切な機能分担を図る趣旨により規定されたものと解され,同訴えによる事前救済が得られる場合を,行政処分の取消しの訴え及びその提起を前提とする執行停止によって得られる事後の救済によっては実効的な救済を図ることができない場合に限定したものと解される。 そして,同条の4第2項が,上記の重大な損害が生ずるか否かの判断に当たっては「損害の回復の困難の程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする」旨。 規定するところに従い,原告の権利利益やこれに対する侵害の性質及び程度,当該処分によって達成すべき行政目的 し,損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする」旨。 規定するところに従い,原告の権利利益やこれに対する侵害の性質及び程度,当該処分によって達成すべき行政目的の緊急性,即時性の内容及び程度等を比較衡量し,当該処分によって原告に生じる損害が,当該処分の取消しの訴え及び執行停止によっては回復することが困難であるか否かという観点から判断すべきである。 イこれを本件についてみるに,原告は,建築主であるP1が本件建物建築のために要した費用が総額で10億円をはるかに超えるものであること及び原告のP1に対する請負代金の合計額は総額7億7700万円であることから,本件建築確認に基づく工事に対し停止命令がされたときは,同工事に大幅な遅延が生じ,経費の増大,P1に対する信用失墜,P1からの損害賠償請求など,多岐多額にわたる損害を被ることになり,事後的に償いきれるものではない旨主張する。 しかしながら,P1は,本件建物の建築工事の施主であり,本件に関する一連の事情を知っているものと考えられるから,仮に,同工事の停止が命ぜられ,これによって同工事が遅延しても,直ちに原告に損害賠償を請求するかは疑問であるし(実際,前示のとおり,本件建物の建築工事は,本件通知後中止されており,同工事は既に遅延しているものの,P1から原告に対して損害賠償請求がされたとの事実は証拠上認められない,。)原告のP1に対する信用が直ちに失墜するとも考え難い。 また,本件建物の建築に要する費用や請負代金が多額であるとしても,停止命令による損害がそのような多額のものになると直ちにいうことはで,,,きないし金銭的損害という損害の性質等に照らし事後の賠償によって損害の回復が困難であると認めるべき事情も特に見当たらない。 さらに,金銭的損害以外の損 多額のものになると直ちにいうことはで,,,きないし金銭的損害という損害の性質等に照らし事後の賠償によって損害の回復が困難であると認めるべき事情も特に見当たらない。 さらに,金銭的損害以外の損害についてみても,停止命令の取消訴訟等で原告が勝訴すれば,原告が主張するP1に対する信用喪失についても,事後的に回復可能であると考えられるのであり,損害の回復が困難である とはいえない。 ウ以上のとおり,本件の場合,福岡市長により,本件建築確認に基づく工事の停止が命ぜられたとしても原告に行訴法37条の4第1項にいう重,「大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められず,本件差止請求に係る訴えは,その余の点について判断するまでもなく,不適法であるから却下を免れない。 争点5(本件建物が工事中の建築物に当たるか)について(1)認定事実証拠(甲23,同24,同28,同31,乙1,同2,証人○○)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。 ア本件建物の建築については,周辺住民が反対しており,原告は,当初,平成19年9月28日に重機を搬入して工事を開始する計画を立てていたが,反対運動を懸念しこれを断念して,同年10月15日ころから重機による工事を開始する計画に変更し,同年9月28日午後零時ころから,合計8名の下請作業員により,打ち込み単管及び敷板を本件土地に搬入し,,,同日午後3時ころから午後4時30分ころまでの間6名の作業員によりスコップを用いた手作業により本件掘削部分の地面を掘削し横矢板を土中に入れたが,掘削した幅はせいぜい20cm程度で,長さも数メートルにすぎなかった。 イ原告は,同月29日午後3時ころから,4名の下請作業員により,本件掘削部分の掘削を継続した。被告職員は,同日午後,本件掘削部分付近を見分 いぜい20cm程度で,長さも数メートルにすぎなかった。 イ原告は,同月29日午後3時ころから,4名の下請作業員により,本件掘削部分の掘削を継続した。被告職員は,同日午後,本件掘削部分付近を見分して,その状況を確認した。原告は,同日午後4時ころ,近隣住民から原告P3支店に苦情の電話があったこと及び被告職員の上記見分が既に終わっていたことから,作業を終了した。 ,,,. ,結局原告は上記の2日間の合計で本件掘削部分を長さ約25m幅約30cm,深さ15ないし20cm掘削し,横矢板(足場板)1枚を 土中に入れたにすぎなかった。 また,原告は,翌30日には本件建物建築のための工事を行わず,同日までに,既存建物の解体・撤去工事,既存樹木・庭石等の撤去,整地,仮囲い,工事用の進入口の整備,資材・建築機械の搬入等の本件建物建築のための準備工事はいずれも行っていなかった。 ウ原告は,その後,同年10月1日から本件通知を受領した同年11月1日ころまで下請作業員2,3名が人力による掘削を行うなどの工事を行ったが,結局重機の使用にも至らなかった。 (2)争点に対する判断ア建築基準法3条2項は,新法等の適用に関する経過規定であり,新規定,,の施行又は適用時において工事中の建築物についてはその建築を許容しその限度で新規定による行政目的の達成を一部後退させて,建築主の期待を保護することとしたが,その反面において,この要件を満たさないものについては,適法に建築確認を受けた建築物であっても,新規定が適用され,これによる行政目的の達成が優先されるものである。 このように,上記規定は,行政目的の達成と建築物の完成に対する建築主の期待や経済的な利益の調整を図ったものであり,その文理及び趣旨に加え,これが行政庁による法規の適用の基準となるもので ものである。 このように,上記規定は,行政目的の達成と建築物の完成に対する建築主の期待や経済的な利益の調整を図ったものであり,その文理及び趣旨に加え,これが行政庁による法規の適用の基準となるものであることからすると,工事中の建築物に該当するというためには,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,新法規の施行等の日までに,その工事が継続して実施されていることを要するというべきである。 イこれを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告が本件工事を開始したのは,本件条例が施行される3日前のことであり,本件条例施行日までに行われた実際の作業時間は,合計約2時間30分程度に止まり,その内容も作業員数名がスコップによる手掘りで地面を掘削したにすぎず,そ の成果も,本件建物の外周部分からさらに約1メートル離れた本件掘削部分を,長さ約2.5m,幅約30cm,深さ15ないし20cm掘ったにすぎない。 そして,原告は,本来,重機を用いた工事を予定しており,本件工事が技術的にみて手作業でしか行えなかったという事情もなく,上記程度の作業量は,工事の進捗という観点からは,微々たるものにすぎないから,本件工事を行わず,後に重機を用いて工事をした場合とを比較して,本件工事を行ったとしても建築工事の技術的側面からはほとんどメリットはなく,経済的にはむしろ行わない方がよかったと考えられる。 そうすると,工事中の建築物に当たるとして,本件条例の規制を免れる可能性があったことを除けば,本件工事は,明らかに合理性を欠く作業であったというべきである。 また,前記認定のとおり,原告は,本件掘削部分を被告の職員が見分し,,,た後そのことを1つの理由としてなお作業の可能な時間もあったのに間もな らかに合理性を欠く作業であったというべきである。 また,前記認定のとおり,原告は,本件掘削部分を被告の職員が見分し,,,た後そのことを1つの理由としてなお作業の可能な時間もあったのに間もなく作業を終了するなどしたことが認められる。 これらの事情からすれば,本件工事は,合理的にみて,真に本件建物の建築工事の一環として行われたものとは評価することができず,専ら,本件条例の適用時において,工事中の建築物として,被告に認められるだけのために,行われたものというべきであり,建築物の実現を直接の目的とする工事とはいい難い。 また,上記のとおり,本件工事の成果も全く微々たるものであり,単なる側溝の工事と選ぶところはなく,これを見て,建物の建築工事であると判断することはとてもできない程度のものであったといわざるを得ず,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達していたともいえない。 ,,,これらのことからすれば本件建物について本件条例施行日の時点で いまだ建築物の実現を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,その工事が継続して実施されたとはいうことはできず,本件建物は,工事中の建築物に当たらないというべきである。 (3)原告の主張に対する判断ア原告は,本件工事は,土砂崩れを防止するため,掘削部分を段切りにする必要があったことから本件掘削部分を掘削したもので,本件建物建築上必要な工事であったと主張し,本件掘削部分の掘削は,位置関係や原告の建築計画に照らせば,本件建物のいわゆる根切り工事の一部に位置づけられるものとみられなくはない。そして,根切り工事は,通常,既存建物の解体・撤去や,整地などがされ,建築物を支持し得る地盤が確保されたことに引き続き,建築物の基礎躯 わゆる根切り工事の一部に位置づけられるものとみられなくはない。そして,根切り工事は,通常,既存建物の解体・撤去や,整地などがされ,建築物を支持し得る地盤が確保されたことに引き続き,建築物の基礎躯体や地下室部分を容れる空間を作り出すために,地盤面以下の土地を掘削する工事であるため,一般的には,工事の着手の目安となるものである。 しかしながら,前記認定のとおり,本件工事は,建築工事としての合理性を欠き,真に本件建物の建築工事の一環として行われたものとは評価することができないし,その成果も微々たるものであって,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達していたともいえないのであり,原告の上記の主張は,その主観面を述べるにすぎないものであって,本件工事の客観面や合理性を左右するものではないから,到底採用できない。 また,本件の場合,本件工事に至るまでに,他に既存建物の解体等準備的工事も一切行われておらず,本件工事の規模も前記のとおり極めて軽微なものであるから,これを根切り工事であると客観的に評価することも困難であって,このような工事を行ったとしても,建物の建築工事の着手があったとはいえない。 イ原告は,近隣住民の反対運動等の外部の事由により工事規模を制限された特段の事情が認められるときは,工事中の建築物に当たるか否かを判断する際に考慮されるべきであるとし,前記認定のとおり,本件では,近隣住民による反対運動があったことは認められる。 しかしながら,前記認定判断のとおり,本件工事は建築工事としての合理性を有しないことは明らかというべきであり,反対運動のため,合理的な建築工事ができなかったとはいい得るとしても,本件工事が合理的なもので建築物の実現を直接の目的とする工事と認められるということにはならないのであり,その他,反対運動 であり,反対運動のため,合理的な建築工事ができなかったとはいい得るとしても,本件工事が合理的なもので建築物の実現を直接の目的とする工事と認められるということにはならないのであり,その他,反対運動の存在が本件工事の合理性を基礎づけるとする理由は何ら見当たらない。 また,近隣住民の反対運動等による工事の妨害に対しては,あらかじめ工事妨害禁止の仮処分等を求めることも可能であり,これにより工事の妨害は回避し得るのであるから,工事中の建築物に当たるか否かの判断に際し,これらを殊更考慮しなければならないとも考え難い。 以上のとおり,原告の上記主張も採用することができない。 (4)小括したがって,本件建物は,建築基準法3条2項の工事中の建築物に当たらないというべきであり,P1が本件建築確認に基づいて本件建物を建築する権利を有するということはできない。 第4 結論 以上によれば,原告の本件取消請求及び本件差止請求に係る訴えはいずれも不適法であるから却下し,本件確認請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官増田隆久裁判官松永栄治裁判官古賀大督

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る