昭和50(オ)930 損害賠償等

裁判年月日・裁判所
昭和52年10月25日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所 昭和45(ネ)618
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判決文本文3,793 文字)

主文 一原判決中上告人(附帯被上告人)Aの弁護士費用に関する請求を棄却した部分を破棄し、右部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。二原判決中上告人(附帯被上告人)らが被上告人(附帯上告人)福岡県に対し各金三〇万円に対する昭和三七年一〇月一六日から昭和四四年九月三〇日まで年五分の割合による金員の支払を求める請求を棄却した部分を破棄する。三被上告人(附帯上告人)福岡県は上告人(附帯被上告人)らに対し各金三〇万円に対する昭和三七年一〇月一六日から昭和四四年九月三〇日まで年五分の割合による金員を支払え。四上告人(附帯被上告人)らのその余の上告を棄却する。五本件附帯上告を棄却する。六第二項、第三項に関する訴訟の総費用は被上告人(附帯上告人)福岡県の、第四項に関する上告費用は上告人(附帯被上告人)らの負担とし、附帯上告費用は附帯上告人(被上告人)福岡県の負担とする。理由 上告代理人徳本サダ子の上告理由第一点の第一について原審が適法に確定したところによれば、(1) 被上告人(附帯上告人)(以下「被上告人」という。)福岡県の設置管理する県立高等学校の三年生であつた上告人(附帯被上告人)(以下「上告人」という。)らの二男Dは、昭和三七年九月二五日の第二時限目に人文地理の授業中であるにもかかわらず、隣席の生徒二人と私語を続け、また机上には他の教科の参考書を置いていたので、E教諭はDら三名を教壇の横に立たせ、授業時間終了後には職員室に呼んで訓戒を与えた、(2)その結果Dらも納得したので、E教諭は第三時限目の授業開始(午前一〇時五〇分)とともにDらを教室に戻らせようとしたところ、Dの学級担任の被上告人B1がDを呼び- 1 -とめて職員室に隣接する応接室に 結果Dらも納得したので、E教諭は第三時限目の授業開始(午前一〇時五〇分)とともにDらを教室に戻らせようとしたところ、Dの学級担任の被上告人B1がDを呼び- 1 -とめて職員室に隣接する応接室に伴い、Dを詰問した、(3) 被上告人B1はそれまでにもしばしば生徒に体罰を加えており、Dも再三同被上告人から訓戒を受けて同被上告人に反感を持つていたため、反抗的態度をとり続け、同被上告人は応接室を飛び出したDを連れ戻すなどして説諭を続け、昼食時間になつてもDを教室に帰さず、その後もDを応接室に留めておいて反省を命じた、(4) 同日午後二時被上告人B1は授業を終えて同室に戻つたが、居合わせたE教諭がDがかつて喫煙したことやカンニングをした事実等をあげて反省を促したところ、Dがこれらの非行事実を認めたため、同被上告人は平手でDの頭部を数回殴打したうえ、翌日父親を学校に出頭させるようDに申し向け、午後二時三〇分ごろようやく同人を教室に帰した、(5) Dは帰宅後同日午後一一時ごろから翌二六日午前一時過ぎごろまでに級友にあてて被上告人B1を恨む、同被上告人の仕打ちは死んでも忘れない旨の手紙六通をしたため、同日午前六時四〇分ごろ自宅の倉庫で首つり自殺をした、(6)被上告人B1の右懲戒行為は、担任教師としての懲戒権を行使するにつき許容される限界を著しく逸脱した違法なものではあるが、それがされるに至つた経緯、その態様、これに対するDの態度、反応等からみて、被上告人B1が教師としての相当の注意義務を尽くしたとしても、Dが右懲戒行為によつて自殺を決意することを予見することは困難な状況にあつた、というのである。 日午前六時四〇分ごろ自宅の倉庫で首つり自殺をした、(6)被上告人B1の右懲戒行為は、担任教師としての懲戒権を行使するにつき許容される限界を著しく逸脱した違法なものではあるが、それがされるに至つた経緯、その態様、これに対するDの態度、反応等からみて、被上告人B1が教師としての相当の注意義務を尽くしたとしても、Dが右懲戒行為によつて自殺を決意することを予見することは困難な状況にあつた、というのである。以上の事実関係によれば、被上告人B1の懲戒行為とDの自殺との間に相当因果関係がないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法は ことは困難な状況にあつた、というのである。以上の事実関係によれば、被上告人B1の懲戒行為とDの自殺との間に相当因果関係がないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見地に立つて原判決を非難するものであり、採用することができない。同第一点の第二について公権力の行使に当たる国又は公共団体の公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人は与えた場合には、国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責に任ずるのであつて、公務員個人はその責任を負わないと解するの- 2 -が、相当である(最高裁昭和二八年(オ)第六二五号同三〇年四月一九日第三小法廷判決・民集九巻五号五三四頁)。したがつて、右と同趣旨の理由によつて上告人らの被上告人B2、同B1に対する請求を排斥した原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。同第二点について原審が適法に認定した事実関係のもとにおいて、被上告人B1のDに対する前記懲戒行為が違法であり、これによりDは被上告人福岡県に対し六〇万円相当の慰藉料請求権を取得し、Dの死亡により上告人らが各三〇万円づつを相続により取得した旨の原審の認定判断は、正当として是認することができる。そして、上告人らが被上告人福岡県に対し、右不法行為に基づく前示損害の賠償を求めて本訴を提起するのやむなきにいたり、弁護士に訴訟の追行を委任し、その手数料等を支払うことを約したとすれば、弁護士に支払うべき右手数料等もまた、前記不法行為によつて生じた損害として、その相当と認められる限度で、被上告人福岡県においてこれを賠償する責任があるというべきである。 原審の認定判断は、正当として是認することができる。そして、上告人らが被上告人福岡県に対し、右不法行為に基づく前示損害の賠償を求めて本訴を提起するのやむなきにいたり、弁護士に訴訟の追行を委任し、その手数料等を支払うことを約したとすれば、弁護士に支払うべき右手数料等もまた、前記不法行為によつて生じた損害として、その相当と認められる限度で、被上告人福岡県においてこれを賠償する責任があるというべきである。しかるに、原審が上告人Aの弁護士費用の請求について理由を示さずにこれを排斥したのは違法であり、右 て、その相当と認められる限度で、被上告人福岡県においてこれを賠償する責任があるというべきである。しかるに、原審が上告人Aの弁護士費用の請求について理由を示さずにこれを排斥したのは違法であり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。よつて、原判決中、上告人Aの弁護士費用に関する請求を棄却した部分を破棄し、右部分につき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。次に、原審において上告人らが損害賠償債権の遅延損害金の起算日を「昭和四四年一〇月一日」から本件訴状送達の日の翌日である「昭和三七年一〇月一六日」に変更し、請求を拡張したことは、本件記録により明らかである。したがつて、上告人らは被上告人福岡県に対し各三〇万円に対する昭和三七年一〇月一六日からその支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員の支払を求めうるというべきところ、原審が右拡張部分について理由を示さずにこれを排斥したのは違法であり、右違法- 3 -が判決に影響を及ぼすことは明らかである。よつて、原判決中、上告人らが被上告人福岡県に対し各金三〇万円に対する昭和三七年一〇月一六日から昭和四四年九月三〇日まで年五分の割合による金員の支払を求める請求を棄却した部分を破棄し、右範囲において上告人らの請求を正当として認容すべきである。その余の論旨は、判決に影響しない点につき原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。附帯上告代理人堤千秋、同植田夏樹の上告理由について所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。よつて、民訴法四〇七条、四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 は、判決に影響しない点につき原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。附帯上告代理人堤千秋、同植田夏樹の上告理由について所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。よつて、民訴法四〇七条、四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高 旨は、採用することができない。よつて、民訴法四〇七条、四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官服部高顯裁判官天野武一裁判官江里口清雄裁判官高辻正己裁判官環昌一- 4 -

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